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1950-03-17 第7回国会 参議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月十七日(金曜日)    午後一時五十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十五年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 只今から会議を開きます。  農林大臣に対する質疑の通告順によつて発言を許可いたします。羽生三七君。
  3. 羽生三七

    羽生三七君 先日本会議緊急質問で当面の農業問題についてお尋ねいたしましたが、そのお答えで満足できないものがありまするので、尚改めて二、三点お尋ねいたしたいと思います。  本来、私が冒頭に申上げることは、これは農林大臣よりもむしろ大蔵大臣にお尋ねすべき性質のものでありますが、関連上農林大臣お答えも頂きたいと思いますが、大体ドツジ・ラインで国際経済に鞘寄せるために日本企業合理化というものを促進しておるわけでありますが、そのことのよし悪しは別個の問題といたしまして、農業の場合の合理化はどういうふうにお考えになつておるのか。今考えられておるのは、大企業或いは中小企業の、一般企業合理化国際経済にマツチさせるための仕事としておやりになつておるわけでありますけれども、大体日本経済の重要な基盤をなす農業についての合理化というものは別にやる必要はないのかどうか。これはまあ実際農林大臣というよりもむしろ大蔵大臣にお尋ねすべきものでありますが、問題の性質上この点を明らかにして頂きたいと思います。なぜこういうことを申上げるかと言いますれば、先日も私本会議で申上げましたように、将来輸入補給金の問題、或いはガリオア資金等の問題が全部正常な、ノーマルな状態に帰り、全く自由価格競争状態が参りますならば、日本農業というものは初めてその過程において国際経済の一環として対外競争力を持たなければならず、又その競争にさらされるわけでありますが、そういう場合に、他の企業合理化はできても日本農業が少しも合理化できておらないという場合には、対外競争力に打勝てる筈はないのであります。ところがこれが打勝てなかつたならば、やはりこれが日本の産業の一種の基礎構造といいますか、下部構造をなすのでありますから、日本経済の構成を考えまして、必ずしもこれは正当な仕組みと考えられないのであります。そういう点で、私共が日本農業の真の意味合理化考えます場合に、とにかく現在、世間では多少誤つた考えがあるのではないかと思うのでありますが、それは補給金或いは価格調整金によつて日本農業は支えられておるという考え方を持つておるのでありますが、これは全く逆でありまして、消費者補給金によつて或る程度の利益を受けておりますが、農業はむしろこれによつたその発展を阻害されておる、そういう解釈が成り立つのであります。なぜなら岩木委員も先日この席で御指摘がありましたが、外国の、アメリカその他の小麦にいたしましても、或いはタイ、ビルマ等の米にいたしましても、日本国内生産者買価格より遥かに高い価格買入れられておるのであります。これを国際価格と、国外の農産物価格日本国内生産物価格とを昏迷ならしめておるものは、むしろ輸入補給金であります。そうでなかつたならば、正常な状態で取引されるならば、現在の当面の段階では、むしろ日本農産物価格はやや値段が上廻るという状態に置かれておると思うのであります。ところが今のような補給金の使い方によりまして、実際には農産物価格は非常に国際価格から現在のところでは下廻つておるけれども、これは先日も申上げましたように、やがて平常の状態になり、又且つ国際小麦協定参加して、ちよつと今日の新聞を見ますとこの参加は一時保留されておるようであります。ドイツだけが加入を認められたようでありますが、仮に将来参加が認められて加入した場合におきましては、二、三年後におきましては非常に小麦価格が下つて来る、或いはその他いろいろな貿易関係におきましても正常な状況に帰りまして、種々の制約が解除されましたならば、当然今よりも安い値段世界穀物相場が……安い値段穀物相場がなるということは今日想像されるのであります。そういう場合に日本農業国際的競争力を全然持つておらない、対外競争に耐え得るだけの力を全然持つておらないということが想定できるのでありますが、そういう場合に日本農業を本当に合理化して、対外競争力に打勝てるような素地を作らなかつたならば、大企業だけが合理化をやりましても、全体の日本経済としては絶対に私は正当な形ではないと思つております、そういう意味日本農業合理化をやる場合におきましては、先日申上げましたようにこの裏付となるべき物的の條件が要る、その物的條件とは要するに土地改良促進であるとか、或いは又農地改革促進であるとか、或いは農業改良費関係費目増額であるとか、そういうことが予定されるのであります。ところが御承知のように土地改良につきましては継続中の国営及び都道府県営以外のものは殆ど打切られて、農家自己資金融資に委ねられるという結果になつて来ておるわけであります。農家自己資金土地改良をやらせる程余力がないことはすでに申上げるまでもないのであります。すでにそういう場合に一昨日も吉田総理大臣は、そういう農政問題については今度の予算を見て呉れれば分るというお答えをされておりますけれども、予算を見ますと今申上げましたような予算になつておる、そうして或いは当局では全体としての農地関係予算増額を強調されるかも知れませんが、併しこれは主として災害復旧関係のものでありまして、平常なる状態において農業改良促進するような費目というものは極めて少い、これは人件費或いはその他部局の改廃等によつて若干増加されておる面もあるし、或いは一部面におきましては農業災害補償等において若干の増加も見られておりますけれども、全体としては余り見るべきものがない、こういうふうに考えることができると思うのであります。特に農地改革費におきましては、御承知のように農地委員会を、市町村農地委員会を本年八月までに廃止して、農業委員会に統合する案も進められておるわけでありますが、こうした、むしろ逆に日本農業発展ブレーキをかけられるような状態に進められておる、こういう状態で果して日本農業国際対外競争力に打勝つことができる素地を作られるかどうか、非常に疑問なきを得ないのであります。更に又本日の新聞にも行政機構改革問題として伝えられておるところによりますと、農業改良局も廃止の運命にあるやに伝えられておる。これは事実かどうかあとから大臣の御答弁を聞かなければ分りませんが、そういう状態で全体としては、少くとも先程来申上げましたように国際競争に対応できるだけの日本の強力な農業基礎構造を作るための国家の投資というものは極めて貧弱なものである、こういうように言わざるを得ないのであります。特にそういう場合に先日も申上げましたことでありますが、最近主要食糧の管理問題が再検討されて参りまして、本日の新聞を見ますというと、農林大臣の談として、米麦の今直ぐ本年度中に特別に供出制度を改革する意思はないというふうに言われておりますけれども、とにかく雑穀はすでにお考えになつておるし、「いも」類は食管法の一部改政法律案の中に入つて来ておる、そういうふうに漸次農家は今までの状態違つた形において自分たち生活を維持しなければならない状態に置かれておるわけであります。こういうような場合にとにかくどういう形におきましても日本農業が拡大再生産ができるような素地発展さして行く形だとは受取れないのであります。むしろ逆に世界農業に徹底的に叩かれるような形に漸次追込まれて行く、その事のよし悪しは別として、取敢えず大企業だけは合理化されて行くけれども、農業における合理化というものは、輸入食糧がどんどん入つて来て農家がどんどん叩かれればそこに又新らしい工夫が生まれるだろうというような形で進められて行くとするならば、いわゆる農業の将来は恐るべきものがあると思うのであります。もとより農林大臣が非常な苦心をされて、恐らく国内農業のためにいろいろな苦心を重ねられておるということは十分これは了解することができますけれども、併し全体の見通しとしてやはり今申上げたような個々の当面の小さい枝葉末節の問題の解決では追付かず、全体として当然近い将来に徹底的に国際農業競争にさらされるという建前から、そういう見通しの下において予算を我々考える場合におきまして、今申上げました通り災害復旧費を除きますならば、他においてはこれという見るべきものがない、或いは先日板野議員土地改良費は毎年減らされているということを指摘されましたけれども、私は正確な数字を持つておりませんので、それが正当であるかどうか分りませんが、とにかく今申上げましたように国営或いは都道府県営以外のものは全部農家自己資金融資に委ねられるというような、非常な貧しい結果になつて来ておる。こういう形で日本農業が果して国際農業競争に対応できるとお考えになるかどうか、先ずこの点をお伺いしたいと思います。
  4. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。国際関係国内関係と、事情を二つに考えなければならんと思いますが、我が国におきましては、食糧問題は、国内におきましてあらゆる食糧増産を図るということを目的としなければならんと存じております。それに対しまして、あらゆる施策を施して行く、併し御承知の人口の増加率は、日本の限りある食糧生産力を更にオーバーするのであるから、ここに海外の食糧によらなければならんという現実が生まれて来るのでありますが、只今におきましては御承知通り外国食糧が高いのでありますが、今後これが自由な立場に置かれまして、ガリオアとしての食糧も入つて来ないという場合において、補給金は出すというようなことはでき得ないのであります。その場合に、外国食糧が安く入つて来た場合におきましては、内地の農業保護政策として、これをしなければならんと、かように考えておるのであります。若し将来安い外国食糧が入つて参りますならば、その安い食糧の入つて来るについて、関税政策を以て農業を保護して行くべきは当然であるのであります。これは外国食糧に対する政策といたさなければならんと存じております。  国内におきましては、あらゆる角度から食糧増産を図つて行く、これがただ一つ目的でなければならんのでありますから、今日までとり来たつておりますところの食糧増産政策を、今日の時代に合うようにこれを指導して行く施策を練つて行くということでなければならんと存じます。  予算が昨年とは減つているという板野議員の御議論もありましたが、大体公共事業費に対する比率の問題を考えられての御議論考えておるのであります。昨年とは予算の総額において増額いたしておるのでありますから、前年度より減少しているわけはないのであります。農業奬励施策といたしましては、今日新らしい刮目すべき政策があるわけではないのであります。今日まであらゆる角度から歴代の内閣施策して参りましたことを、それぞれの悪い所を直して、そうしていい所を伸ばして行く。而も今日のように災害が年々繰返されるのでありまするから、この災害をできるだけ少くするようにいたしまして、耕地の、耕作安全性を高めて行くということに力を盡くし、又科学的にはこの裁培法の改善、或いは品種の改良、技術の滲透等をやつて行くということを主眼といたしておるのであります。  農地委員農業調整委員とを、これを一つにいたしますということが、農地改革に対して何だか退歩するようなお考えがあるかも知れませんが、すでに農地改革は一応のめどに達しまして、もはや完成の域に近付いておるのであります。ただ登記事務が尚完了いたさないのでありまするが、今後この町村における農地委員会の役は大体これで終つたのでありますから、今後の土地交換分合等によりまして、農地改革目的を汚さないように、落さないように更にこれを高めて行くための処置でありますので、農業委員会というものによつてこれをいたしましても、結局これが退歩するようなことは毛頭ないと存じておるのであります。  尚改良局伝々の記事が今日新聞に出ておりましたが、大体これは行政審議会でありますか、それの案として出ているのでありまして、まだ私も今日新聞で見ただけでありまして、まだ政府にこの答申案も参つておりません。これはまだ確定的なものではないのであります。どういう所から出ましたかまだ政府に対しましては、何の審議会における意思表示もないのであります。これは一応の案としてあるのでありまして、政府といたしましては、この案について更に研究を進めるベきであろうと、かように考えておるわけであります。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 今大臣の御答弁中に国内食糧自給のためにできるだけ努力をしてというお話がございましたが、それはまあ当然そうあるべきだと思うのでありますけれども、その場合に例えば先程私がちよつと申上げましたように、食糧管理法を一部改正して「いも」を四億万貫の買入に制限し、或いは雑穀供出後は自由販売制考える、或いは供出制度というものをなくするかも分らん、そういう段階に来ておるのでありますが、そういうことになつて日本農業生産力、つまり自給度が更に高まるとお考えになるか、高まるというように施策をしているというように大臣お答えになつておりましたが、高まるとお考えになるかどうか。  それからもう一つは、これも先日申上げたことでありますが、二合七勺の配給ベースで行きます場合に、今の三百七十四万トンの輸入計画が完全に実施された場合におきましては、相当持越米が過剩になり、その場合にそれは過剩部分として公団のストツクにして置きますのか、或いは一定量以外過剩の部分はできるだけ輸入しないようにブレーキを掛けて行くのか、その点をちよつと明らかにして頂きたいと思います。
  6. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 食糧供出制度改正のことは、新聞にも私の意見を発表しておつたわけでありますが、来年の三月末日を以て一応現在の制度を変えなければならん段階に入るのであります。その場合において手放しでいいかという問題でありますが、まだまだこの主要食糧につきましては、相当の統制をして行かなければならないと、かように考えておるわけであります。然らばどういうふうにしてこれをやつて行くかということは、生産力を、いわゆる農家生産意欲を落さないように供出制度考えて行きたい、かように考えております。これは現在の制度が、多く作つてとればとる程これを供出せしめるというような、いわゆる励み甲斐のないようなやり方になつておりまするので、遂にこれが真実を言わないというようなことが、今日供出割当についての苦情の基になつておるのであります。それでありますから、そういうようなことのないように今日の制度をいたしたい、かように今研究を練つておるわけであります。従つていも」を一部解除いたしましたことは、主要食糧としての一部に加えるという意味において、四億万貫を買つたのであります。雑穀の問題も一応めどが付きまして、七月になつて二十六米穀年度事情が大体目当てが付きました場合においては、私の常に皆様に申上げておりますような、雑穀の中で主要ならざるものは、これはもう主要食糧としての取扱いをせなくてもいいというような段階に入ることは、七月以後の見通しによつて決めるわけであります。  次のお尋ねの、三百七十四万トンの輸入を予定しておる、それでは端境期にそんなに必要があるのか、そうすれば二合七勺を二合八勺にも二合九勺にもできるのではないかというような御議論も一応成立つわけでありますが、この三百七十四万トンの中に、食糧として考えているのが三百四十万トンであります。その中ガリオアで参るのが約百四十四万トンと考えておりますが、その残りはいわゆる日本輸出力によつて輸入する。こういう建前に一応予算が立つておるのであります。ガリオア食糧は、これはこの六月までのアメリカ会計年度において輸入をされると考えますが、それ以外のものは、日本のいわゆる輸出力によつてこれを獲得するというわけでありますので、一応そういうめどを立てて予算の編成をいたしておるのでありますが、これは結論において日本輸出力如何ということによりまするので、この数字の上から、端境期にそんなに多く持たなくてもいいのではないかという議論が立つわけでありますが、一応日本食糧事情、又日本の今日までの農業生産状態から見まして、できるだけの計画を立てて置くということが妥当であるという意味で、この輸入計画を立てたわけであります。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 次にお尋ねしたいことは、農地問題で、農地改革の問題でありますが、これに関連して、恐らく近いうちに自作農創設法の一部改正法律案が出、これに関連して地代等の問題も再検討されると思うのでありますが、何か伝えられるところによりますと、現行小作料の七倍ということが予定されておるそうですが、それは事実そういう形で問題を処理されるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  8. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 現在の耕地売買価格というものがないのであります。ただ農地法を制定いたしましたときに、全国賃貸価格平均が十九円一銭となつております。それを田におきましては四十倍、こういうことによつて一応標準価格を決めておるのであります。そうして小作料は、二石五斗とれる田、これを標準の田と見まして、この二石五斗とれる田の年貢が、従来の米年貢にしまして一石である、それだからこれに七十五円というものを小作料と見て来たのであります。これはいつかここでどなたでありましたか、御議論したことがありますが、一反が七十五円ということではなしに、一石当りが七十五円、田には御承知のように二俵の年貢の習慣の付いている田もあります。或いは二俵半或いは三俵、一俵半というようにいろいろまちまちに地力によつて小作料が決まつておるのであります。これはまちまちの小作料でありますが、一石に対して七十五円、これを平均小作料と見ておるのであります。ところが二十四年度におきまして、百分の五百という地租が上りまして、そうすると平均十九円一銭ですから、これを二十円と見ますと、百円という地租がかかつて来ておるのであります。そうすると七十五円の小作料では、二十五円余の税金が納められない、不足する。こういうことになるのであります。それで今回いろいろの計数から事務的に考えまして、七倍に小作料を上げて行く。昭和二十七年十月から土地価格というものを更に制定するのでありますが、それまでの暫定措置として七倍にするということを一応考えたのであります。併し年度の途中でありますので、今ここで七倍の約五百円という小作料に上げることは、年度の途中の段階であるから、それはよろしくないという注意がありましたので、一応小作しておる者が、水利費とか土地改良費というようなものは、耕作者が負担するという過去の実例もありますので、公租の上つただけはこれは耕作者が出す、いわゆる小作料として加算するということの了承を得まして、そういうふうな取計らいをいたしたいと考えておるのであります。明年度からはこれを七倍にしまして、その確定を見たいと、かように考えておるわけであります。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 大体七倍値上案がいずれ政府の案として出るということが考えられることになつたわけでありますが、この場合私共は考えなければならないことがあるのであります。それは他の物価が上つて来る、或いは地租上つたから、小作料幾らでも上げてもいい……幾らでもと言うと語弊がありますが、そういう形をとつていいように予定されておりますが、私は農地問題だけは少し違うと思うのであります。これはずつと前、昨年の暮でありましたが、やはり緊急質問の際に農林大臣に申上げたことがありますが、この問題は、他の物価との比較でやるべき性質の問題ではないのでありまして、農地問題はやはり連合軍日本を管理するようになつた最初の非常に大きな命令で、そういう形からも実行して行かなければならないし、尚且つ又そういう命令があつたかないかということは別にいたしましても、私はこの日本の封建的な小作制度というものが、日本を今日まで非民主的な国家として、発展と言うと語弊がありますが、今日に至らしめた非常に大きな原因をなしておると思うのであります。今度の小作料とそれが一体何の関係があるかと言うかも知れませんが、これが数倍の値上になつた場合を予定いたしますならば、恐らく私の想像では、小作人耕作地放棄というものが相当起つて来ると思うのであります。現在の数倍で数百円の小作料を拂うことはなかなか困難になつて来る。そこで又地主自身も、統計を見ますならば、一人の地主が保有しておる面積全国平均三、四反歩と言われておる、非常に微々たるものであります。つまり地主自身自分耕作する以外に小作地として保有しておる面積であります。そういう小さいささやかな面積を以て地主自身生活できる筈がない。又小作人は今申上げました通り、今すら困つておる生活が漸次困つて行くときに、数百円の小作料を拂える筈がない。そういう状態で、恐らく私は耕作放棄が非常に多くなつて来ると思うのであります。もう一つは、恐らく他の企業におきましてもそうでありますが、例えば会社の株を持つておりましても、会社利益がなければ、配当がある筈がない。つまり幾ら配当して呉れと株主が要求したところで利益がなければ株主配当はいたしません。それと同じように、小作人自身利益がないのに一方的に公定小作料を引上げて行くということは、私は非常に矛盾しておると思います。現に農林省統計によりますならば、單作地帶農家が一年に二万或いは二万数千円の赤字を出しておるということが明記されておる。そういう状態の下において、私は数倍に小作料を値上されるというようなことを考えることは、非常な大きな矛盾があると思う。従つてこのことは他の物価と比較いたしまして、他の物価上つたから、或いは地租が一部上つたから上げなければならないという理由は私は成立たないと思います。むしろそういうことで小作人に影響を與えるならば、地租を上げない方がよろしい。或いは又もつと進んで考えるならば、まあ三反歩や四反歩耕作面積小作人に貸し與えておつても、地主自身生活ができる筈がないのでありますから、もつと根本的な解決考えられた方がいいので、今度の諸般の情勢を見ておりますと、いろいろ口では、政府当局農地改革を打切る意思はないと言つておりますが、実際には私は打切られるのではないか、そういう方向に向つておられるのではないか、私はこういうふうに想像せざるを得ないのであります。無論政府が積極的な助成をして、まあこれは一部分費目の中に組まれておりますが、土地交換分合や、或いはその他に積極的に指導されるような面も、予算上多少は計上されておりますけれども、問題はむしろ今申上げましたように、小作料の値上ということではなしに、積極的に農地交換分合等をやつて、或いは土地改良をやりまして、小作人が積極的にもつと生産意欲を持てるような形に発展させなければならない。それが今お話のように七倍に値上するということが実行されます場合には、恐らく多数の耕作地放棄の問題が起つて来るし、それから今申上げましたように、この問題は他の物価と比較して考えることは間違いである。これはもう日本封建制を廃止して行くための基礎的な條件だと考えております。  それからもう一つは、先程申上げましたように、普通の個人の利益会社でも利益がなければ配当がないのでありますから、明らかに農林省統計では相当の赤字の出ておる農家にこれ以上その負担を過重せしめるということは、私は少くとも政府農業国内自給度を増進することを考えられておる先程来の農林大臣の言明と極めて矛盾すると考えますが、これに対して農林大臣はどういうようにお考えになつておりますか。
  10. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 余り時間がありませんので簡單にお答えいたしますが、農地改革目的は、今羽生委員のお考えのように、封建的な地主、小作農階級を打破して、そうして民主的ないわゆる作る者が自分の田を所有するという自作農創定が尚一歩強化された改正であつたのでありまして、これは土地というものは自分のものだという信念、人から借受けているのではないという気持で、精魂を自分土地に打込んで増産を図つて行く、ここに農地改良目的一つあると考えておるのであります。併し日本農業は御承知通り家族労力であります。家族の労力によつて農業が営まれておるのでありまして、この家族労力というものは実に変転極まりないものがあります。働き盛りの者がおりましても、嫁に行くとか、或いは養子に行くとかいつて他へ労力が失われて行く、又働き盛りの人が亡くなるとかいうので、一定しない家族労力を以て耕地を耕やして行くのでありまするから、そこに非常な変化が伴つて来るのであります。例えば働き盛りの子供が学校へ行つた、もう三年すれば学校から帰つて来る。或いは又地方の要望によつて町村長をやる、或いは県会議員をやる、暫く自分の農耕を離れなければならないような場合に、そのときに若し耕作ができなかつた場合に、これを農地保護の原則に基いて売つてしまわなければならんということになれば、折角自分が獲得した農地が更に小さくなつて行く、それでありますからその間暫く二年なら二年、三年なら三年の間この土地を他人に耕作さして見る、頼む、これが小作の制度でありまして、昔の小作制度とは違う、それで労力が殖えて来ればそれを約束通り返して貰つて自分耕作する。それで一応小作地というものを全然なくすという御議論が第三次農地改革として叫ばれておりますが、そうしますと家族労力の変転によりまして、常に耕作地政府に渡す、今は政府に渡すことは要らん、直接農地委員会がやることになりますが、そういうふうにして折角自作農になつたものが、家族労力の変化によつて直ぐに放棄してしまわなければならん、必ず二年か三年の間に自家労力が補充されることは分つてつて土地を離さなければならんという不自然なことが、不合理なことができて来るから、ここに或る一定限度の地主の小作面積を保有いたしまして、そうして土地をいつまでも自分土地として愛護して行くということを考えて、こういう制度を私は残して置くことが日本農業の実態に合う、かような考えを持つておるのであります。而も小作料が高いから耕作放棄するということは私は実際問題として恐らくそういうことはないと考えております。私の知つておる範囲におきましても小作を、仮に私の小作をしておる者が君、買いなさい、公定価格で売つてやるから買いなさいと申しましても、やはり石七十五円の小作料耕作をさして頂いた方が、いろいろの收入の面からいつても都合がいい、七十五円というと大きいようでありますけれども、これを農産物の価格にいたしますと、米ですると一升ちよつとのものでありますから、これよりもむしろ自分地主となることが困るような耕作者も実はあります。だから小作料が少し上つたからといつて耕作放棄する、或いはこれを捨ててしまうというようなことは、恐らく事実において私はないと、かように考えておるのであります。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 それでは大臣はお急ぎのようでありますので明日に讓りまして、今の点だけ簡單に、御答弁があつてもなくてもよろしいが、耕作地放棄を起らないという御想像のようでありますが、現に起つておる場合もある。私の言うのは七倍に引上げた場合に、そういうことも起り得るだろうということであります。それから先程の一部の特殊な人が耕作放棄した場合のことをお考えになつて、新らしい農地調整法の改正をお考えになつておるようでありますが、私はそういう場合も勿論あるでありましよう。併しそういう場合はむしろ新らしい意味の市町村の土地管理組合なんかを作つて、そこで合理的に解決できる問題で、それを今度のような改正案に持つて行くことには大分私は意見が違うのであります。併し又日を改めて、時間がないようでありますから、申上げたいと思います。
  12. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 主税局長が来ておりますから主税局長に……それでは速記を止めて。    〔速記中止〕
  13. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それでは速記を始めて。通告順によつて発言を許可いたします。岩男君にお願いいたします。
  14. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 ドツジの原則に則つて内閣の財政政策といいますか、池田財政といいますが、それによつて提出されました本年度予算、これについての総括的の質問は同僚の田村、或いは岩木その他の諸君からいろいろ論議されて大臣の非常に頑固な超均衡予算を堅持するというようなお考え承知いたしたのでありますが、この問題について重ねていろいろ論議する必要はないと思います。で私は具体的の二、三の問題について單刀直入に一つお尋ねしたい。  その前に申上げたいことは、この農村方面或いは中小商工業の方面が恐慌といいますか、どん底の不景気といいますか、非常に悲惨な状態に陷つておるにも拘わらず、これをそのまま看過するというこの現政府の態度については、私は賛成はできないのであります。大蔵大臣は一国の財政を担当されておるお医者になつて貰いたい。お医者でも籔医者では駄目であります。いわゆる名医になつて頂きたい。さつき申上げましたように、中小商工業者が三人或いは五人と倒産、或いは死ぬ、三人、五人ではありません。これは同じく農業方面もその通りであります。非常に苦境に追い込まれておるということは現実の問題であります。この現実の問題に対して目を蔽うて飽くまでもインフレを收束させるためには国民に堪え難きを忍んで貰わなければならん。こういう行き方が果して立派なお医者さんと言い得るでありましようか。最初の処方箋、病気を診断いたしまして、これは盲腸炎だ、胃潰瘍だ、その処方箋を最初からお終いまで変えずして病気が治るものではありません。いわゆる名医は対症療法をやるのであります。その病状の経過によりまして処方箋は変つて来ます。この点について私は御答弁を頂きません。大蔵大臣の御反省といいますか、近き将来に起らんとするところのこの問題に対して強い警告を発して置きたいと思うのであります。これが冐頭であります。第一にお伺いいたしたい問題は食糧政策の問題であります。日本食糧は人口と比べて非常に食糧が足りない。足りないものを外国から輸入する。今年は三百七十五万トンかの輸入の予定をしております。これは結構なことであります。併し今の内閣、殊に総理の施政方針演説にもはつきりと述べられておりますように、食糧増産をして自給度を高めるための有効適切な農業政策を打立てる、こういうようなことをはつきり示しております。先般同僚の羽生君が緊急質問を本会議でいたしまして、この点についていろいろと申されたのでありますが、総理は実に不親切な答弁をやつております。それは本年度提出した予算を見ろ、ところが予算を見ても、どこにも食糧増産して自給度を高めるような、そういう施策が講ぜられておらないということを私は遺憾と思うものであります。無論災害による耕地の復旧の費用は増しております。土地改良費はどうでございましようか。ああいう金額で以て果して食糧増産ができ、自給度を高め得るかどうか、足りない分は外国から取ればいいじやないか、国際的には食糧は非常に余つておる、殊にアメリカのごときは恐らく日本の一年分の食糧の三倍以上が余つておるということを新聞は伝えておる、カナダや東南アジアなど生産過剩で困つておるかも知れません。それを我が国に直接輸入すればそれで事足れりというような政策では私は駄目だと思う、飜つて曾つの日本農業の恐慌時代に、小麦に例を取ると、一千万石に減じておりましたところの小麦が、農林省増産五ケ年計画によつて僅に四年足らずを以て三千五百万石に殖えております。又我が国においては今日平年作において六千二、三百万石、而も昭和十二、三年頃は七千三百万石の生産をいたしておる記憶があるのであります。農業政策よろしきを得れば、これは私は国内食糧の自給自足不可能ではあらんと、こういう確信を持つておるのであります。これに対して大蔵当局は如何なるお考えをお持ちでありますか、承わりたいのであります。
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の財政経済政策に対しまして、病人のお医者の例をお引きになつて、御警告を頂いて恐縮に存ずるのでありますが、私はそのお答えといたしまして、こういうお答えをしたいのであります。チブス患者が一命を取止めまして、今恢復期に入つておるのであります。重湯から段段固い御飯に移つて参るのでありますが、重湯ではいやだから固い御飯にしろといつても、これを許す名医はなかなかない、私はそれはもう少し暫らくお持ち願いたい、段々おまじりにし、普通の御飯にして行きたい。こういう例えでお答え申上げたいと思うのであります。  次に我が国の農業政策が、とにかく食糧関係についてどういう考えを持つておるかというお話でございます。これは私は專門外でございますが、御承知通りに我が国従来の農業政策というものは、朝鮮米、台湾米のことを頭に置きながら、即ち、植民地統治という観点から相当賄なわれておつたのでありますが、御承知通り朝鮮、台湾を加えますと大体毎年千四、五百万石ぐらいは輸入されておつたのであります。これがなくなつて参りまして、而も片つ方では、千数百万人の人口が増加しております。ここにいわゆる日本農業政策の何んと申しますか、事情変化が来ておるのであります。お話通りにできるだけ自給態勢を整えて行かなければなりません。従いまして先ず治山、治水に金をかけ、又できるだけ土地改良、開墾その他に経費を持つてつておるのでございます。これは予算を御覧下されば、土地改良を加えまして、土地改良につきましても相当増加しておるのであります。これを一気にすぐ沢山出せ、こう言われましても、これは国民負担等も考えなければなりません。経済全体について見て行かなければなりませんので、できるだけ早くはいたしますが、財政経済の事情上、今御審議願つており程度にしか至つておらないのであります。私は全体の経済がはつきり確立いたしますならば、もうどうしても足らない主食の増産に力を入れて行きたいと考えておる次第であります。
  16. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 財政の関係からもう少し出したいが出せないというような御答弁のように伺つたのでありますが、それでは私甚だ失礼でございますが、財源を差上げましよう。物事には緩急があります。又本末があります。前後があります。本当に現内閣食糧自給度を高めて自給自足の域までやりたいというその強いお考え、熱意といいますか、熱意があるならば、やり方はあるのであります。これはたびたび先輩の同僚からも御意見の発表があつたようでありますが、千二百八十億の債務償還、これは如何なものでございますか、我々は本年度予算でこういう巨額の債務償還をする必要がどこにあるか、又受ける方の側から言つて必要がないということをはつきり、先般のこの予算委員会における公聽会で公述人からも異口同音にその意見の発表があつたのであります。その中には銀行の頭取、相当の権威者でありますが、そういう方もはつきりとそういう公述を述べられておるのであります。私はこの公述者に共鳴をいたした一人でありますが、どうか一つ外国からの食糧輸入、これに依存せずに八千万国民を自給自足によつてつて行く、こういう熱意の下に、予算のやり繰り、財政的の工面の措置を講ぜられておれば、私はこの金を、数字はこれははつきり言えませんが、五百億ぐらい、或いは三百億ぐらい、全部それを私は農業政策、この面に持つて行けというのではありません。食糧政策の面に持つて行けというのではありませんが、相当そういうやり繰りのできることを、組替えができることを考えておりますが、これについての御所見を伺いたいのであります。
  17. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 本国会中賃金問題を中心にたびたび議論を交したのでありますが、昨日も債務償還の必要につきましては申上げたのでお許しを願いたいと思いまするが、私は農地改良が必要だからというので、そればかりに力を入れて行くということも如何なものか、やはり経済の自立態勢を徐々に整えて行くやり方が一番いいと考えまして御審議願つておるような予算にしたのであります。決して農業をおろそかにしておるのではありません。災害復旧その他の費用について前年度とお比べになりますれば、相当我我の農業に対する力の入れようがお分りになると考えます。
  18. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 これ以上いろいろ議論を交す必要はないと思います。ただ申上げて置きたいことは、吉田内閣はどうも農業政策、中小商工方面の政策は甚だ貧困である、これは国民の合言葉に今なつておるということだけは一つ、これは苦言か知りませんが、これをはつきり申上げてこの質問を打切ります。  次にお伺いしたいことは、これは前の国会、その前の国会からの問題でありますが、これは私その外の委員からもいろいろと質問がなされて、又責任ある大臣或いは大蔵大臣の御答弁を承つておるのでありますが、それの実現ができないから私繰返してお尋ねするのであります。それは農業に関する長期金融の問題であります。この前の第六国会の補正予算の出たときの大蔵大臣の御答弁は、今直ぐになるようなお話であつた農林大臣に聞いても今直ぐに、その準備が着々できて、今直ぐにでも実行する……段々月日は流れて行きます。併しこれは呑気に扱うべき性質のものではない、事は極めて重大であります。これについてはどういうお考えをお持ちになつておるか一つ御発表願いたいのであります。
  19. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 長期資金の円滑を図りますために、只今国会に提案いたしまして銀行等の債券発行に関する法律案を御審議願つておるのであります、この内容につきましては、特定の銀行を予想しておりますが、例えば農林中央金庫、或いは商工中央金庫に出資をいたしまして、そうして長期の債券を発行する、それによつて農林中央金庫は農林水産業に長期資金を融通して行こう、こういう考えで進んでおるのであります。
  20. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 次に農地証券の償還の問題についてお伺いしたいのであります。実はこれは前の国会で十億でありますか、今度は四十二億五千万円、合計五十二億五千万円ばかりの農地証券の償還をしたのであります。これは誠に結構なことと思うのでありますが、尚残りが相当額あるわけでありますが、全部これを償還するところの御意思があるかどうか、その大体の見通しをお伺いしたいのであります。
  21. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これも実はお話の債務償還の中に入つておるわけであります。全体の金額は百億足らずだつたかと思います。それが予定よりも非常に早く入つて参りまして、二十三年度では十億、二十四年度では二十五億償還することになつておるのであります。今の状況から申しますると、そんなに長く待たなくても、予定は二十年くらいでございましたか、相当早く入つて参ります。又入つて参りましたら、できるだけ早急に償還いたしたいという考えであります。
  22. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 次にもう一つお伺いしたいのでありますが、それはこの農地の担保力、担保権と言いますか、その問題であります。農地改革の結果によりまして、これははつきりした数字は言えませんが、凡そ五百億円以上の農地の担保力が完全に喪失されているのであります。これが農村金融を阻害するところの一つの大きな原因となつております。これについて大蔵大臣としてはどういうお考えをお持ちになつておりますか。
  23. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話通り農地改革以後、農地の担保力が非常に経済的に、或いは法制的に削減されたということは同感に存じております。
  24. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 実はこれは漁業権の方は担保権があるのですが、ひとり農業方面にないのであります。これは私の知つている範囲では関係方面に覚書らしいのでありますが、これについて一つ、これは農村金融の面から非常に大きい事柄でありますからして、大蔵当局は熱意を持つてその筋と御交渉して、早く実現のできるようになさる御意思があるかどうかということをお尋ねしたいのであります。
  25. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今その担保権の問題で検討いたしておりまするが、何分にもあの農地改革考え方は堅く言つておりますので、検討はいたしておりますが、まだ公表するとかいうまでに至つておりません。    〔木村禧八郎君「緊急質問をいたします。」と述ぶ〕
  26. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 緊急でなしに、あなたの順ですから……。
  27. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 併し、今までの申合せで大体定足数がなくても審議することになつておりますけれども、とにかくこれで四十五名の委員のうち我々六人だけです。こういうことで一体重要な予算審議をですね、それは程度の問題ですけれども、余りにひど過ぎるのじやないかと思います。こういう状態は……。
  28. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 御尤もですから、大体は登院しておられると思いますから呼びにやりました。時間の都合上審議だけはお進め願いとうございます。
  29. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 では、大蔵大臣に御質問申上げたいのですが、先ず予算の編成の根本方針の問題から御質問申上げて行きたいと思います。  我々に配布されました昭和二十五年度予算の説明、こういう書類がございますが、これを見ますと、八月六日に閣議決定を見ました予算編成方針が掲げられてありまして、この編成方針に基いて予算を編成したということになつておりますが、それを見ますと「総合予算の真の均衡をあくまで堅持し、既にその緒についた経済安定を確保するとともに、経済基盤の充実と輸出貿易の振興とを基軸として、経済の合理的かつ自主的運営態勢を推進する」ことを建前として編成された、こういうふうになつておりますが、ここで先ずこの予算編成の根本の問題としてお伺いいたしたいのは、この予算を実施することによつて経済の合理的態勢を推進するということはどういうことであるか。それから経済の「自主的運営態勢を推進する」というのは、具体的にどういうことか、先ずこの二点についてお伺いいたしたい。
  30. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それは予算の説明書の冒頭に掲げてありますように、ああいう九つの施策をやつて行くことが、合理的或いは自主的な経済態勢の確立になるということであります。
  31. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう抽象的な御答弁を聽いているのじやない。成る程予算の特色、予算編成の條件、いろいろ掲げてありますが、この中で具体的に合理的というのはどういうことであるか、例えば補給金を削つて経済統制を撤廃して行く、自由経済にして行く、そういう形で経済を運営して行くように予算を編成するというのが合理的なのであるか、その合理的の意味ですが、これを具体的に、この中からどこを指して合理的といわれるのか、その点を承わりたい。
  32. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今お話のような点も合理的でありますが、そうして又減税したり、或いは公共事業費を殖やしたり、或いは債務償還をする、そういうことも合理的、自主的な経済態勢であると考えております。
  33. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは分りましたが、それは今後の御質問によつてそれが果して合理的であるか、或いはむしろ逆に不合理であるか、この予算を実行することによつて不合理を推進することになるかどうかは、今後具体的に私はその点について御質問申上げたいと思うのです。  それから「自主的運営態勢を推進する」、この「自主的運営態勢」ということはどういうことなのですか。
  34. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは統制経済の撤廃、補給金の削減等を意味しておるのであります。
  35. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは自立的な態勢への推進であつて、自主的ということではないのじやないですか。
  36. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは考え方の問題でございまするが、今の統制経済の撤廃、或いは価格補給金の撤廃の線に向つて行くこと、或いは経済の自立を図るために輸出貿易を振興する、いろいろな点があると思うのであります。
  37. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 普通社会通念によりますと、自主的ということは政府において、その政策政府の意見において運営するとか、或いは国会の議決に基いて政府がその法律案を運営するとか、又は日本の経済の運営する場合において、日本国民の自主的な立場において経済を運営することができる。こういうことが自主的と思うのですが、その点についてはどうお考えですか。
  38. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私が書いた意味はそういう意堤ではないのであります。今は日本は米国の援助によつて相当賄つておるのであります。この援助なくして、自立経済の態勢を強化することを意味しておるのであります。
  39. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは私が今言つたような意味ではこの自主的なその運営というものはできない。占領下においては自主的な運営はできない、そういうふうに解釈してよろしいのですか。
  40. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私の予算編成方針並びに説明に書いておるのは、そういう意味ではないのでございます。今お答えした通り意味でございます。
  41. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは分りました。この間総理大臣答弁されたように、例えば地方税の問題でも司令部がオーケーを呉れなければ仕方がない、或いは又我々がこの予算を修正しようと思つてもそれができない、こういう意味での自主性がない。我々はその自主性がないと思うのですが、そういう意味の自主的という意味ではないわけですね。
  42. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今の予算編成方針の自主的というのは経済的、自主経済の確立、自立経済の確立に使つておるのであります。而して占領治下における政治問題として総理はどうお考えなつたか知りませんが、占領治下においては或い程度の制約を受けることは当然であります。
  43. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その制約という言葉は、その枠内において自主的にする、運営できるということは、これは可能であると思うのです。それで今お話を聽きますと、この自主的という意味は、例えば自由経済に持つて行くというように考えられるのです。段々統制を撤廃して補給金を削減して、そうして自由経済にして行く、それで企業者が政府の干渉を受けずに自由に経済を運営して行くように、し得るように持つて行く、それが合理的であり且つ自主的である、こういう意味なのですか。
  44. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先程来御答えした通りであります。その意味もありますし、又我が国の自立経済の確立、輸出振興或いは産業を復興いたしまして、援助を成るべく少くするように自分の力で自分でやつて行こうということが、予算編成に書きました意味であるのであります。
  45. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 自立経済ということもこれに含まれているわけでございますね。それならばあとでは自立経済というものが一つの特色になつておる。この予算は自立復興予算である、こういうふうに書いてあるのですが、それなら分るのですが、特に自主的運営ということを強調されておりますので、自主的運営というのは例えば我々の見解によれば、今度の貿易協定でも、貿易する場合日本輸入しなくともいいものを輸入しなければならないというような貿易の場合において自主性がないわけです。そういうような自主性のない貿易を成るべくやらないようにして行く、要らないものは輸入しないようにする、そういう経済運営の自主性、そういう態勢を促進するということは含まれておらないのです。それから更に例えばアメリカのエード・フアンド、援助資金なんかを借りた場合、これをドルで自由に使えるようにして貰えれば、日本の経済に非常に自主性が出て来て、貿易なんかもやりいいようになつて来る。そういうようなことに努力されるという意味ではなくして、そうしてただ自立経済、成るべくアメリカの援助を少くするという、そういうことだけであるのですか、この点は今後の予算審議の上に、又政府の今後の政策を検討する上に非常に今重要な点であり、私は自主態勢を推進するということを今申上げましたような意味に解釈して、それならばこれは政府は非常なる決意を持つて、そうして今までの本当に自主性のない戰領政策の枠内においても、我々から見て自主性のないような経済運営のし方をしておるから、それをもつと自主性のあるように回復したいという意図が含まれておるのだと思うが、非常にくどいようでありますが、この点もう一度お伺いいたします。
  46. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それはあなたの思い過ぎでございまして、私は予算編成につきまして、外交問題を編成方針で規律しようという方針は持つておりません。別個の問題として考究すべきものと思つております。
  47. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そういう御答弁であれば又お尋ねしますが、私は外交問題を言つておるのではない。本当に日本の経済を再建する場合に、国民負担を軽くしたり、又貿易でも日本が有利になるようにする場合、これは外交問題になるかも知れないが、基本は経済です。例えば非常に高いものを買わされておるとか、或いは安く売らされておるとか、これはマーシヤル計画なんかにおいても問題になつたのです。ポンド切下の前に、アメリカの援助資金の使途が制限されておる。例えばアメリカだけからイギリスが援助資金で小麦を買わなければいけないというのを、協定によつていろいろカナダから買つてもいいとか、そういうように改められて行つた。これは非常にイギリスの貿易にとつて有利だと思う。これは外交問題でもありますが、そういう日本経済を有利にするように努力する、無論懇請して努力する、そういう意図が私は含まれておると思いまして、そうしてこれは成る程政府は非常に日本の経済運営の再建のためにいいことを謳つた、自主的ということはいいことである、そういう解釈……、ところがそれは思い過ぎであつて政府はそういうことは考えていない。やはり占領下ではし方がない、思うまま、言われるままにそういうように日本経済再建に有利なように努力する意思はないのであると、そういう意味に我々は解釈せざるを得ないのですが、それでよろしうございますか。
  48. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 予算編成方針の自立ということは、あなたがお考えになつておるようなことを意味しておりません。あなたが別にお考えになつておるようなことは、我が国の政治問題として私は別個に考慮いたしておるのであります。(「切離して考えられない」と呼ぶ者あり)
  49. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはもう全く政治とか外交とかそういうものを切離して考える……これは常識論です。政治と経済、政治と外交を分離できないことは明らかである。苟くも大蔵大臣たるものが経済の何たるもの、政治の何たるものを理解しておらないのだと思います。それは單にここで私の質問に対して、それを当座予算というような狭い見地からそれを答弁する、そういうあれに過ぎないと思うのです。今後やはり財政と予算の問題を考える場合に、政治も外交も経済も全部引括めて予算の問題を考えなければ、これは近代の経済の下における大蔵大臣としての私は資格はないのじやないかと思います。これ以上大蔵大臣予算編成の考え方についてお伺いしても無意味でありますから、質問を続けますが、結論として、大蔵大臣は政治も外交も経済もこれを総合的に考えていない、財政の編成を、ただ技術の点のみからこの予算編成というものを考えておる、こういうふうに私は解釈して質問を進めたいと思います。  この予算編成の基礎として一番重大な点は、これは本会議でも御質問申上げましたが、併しあのときの御答弁では満足できないので、もう一度ここで改めてお伺いして置きたいのですが、それはいわゆる日本経済が安定しておる、そういう認識に基いて、更にこの安定をますます強化して復興に持つて行く、そういうお考えを基礎にしてこの予算の編成されておる。ところで大蔵大臣は安定をしておることの証拠として、日本銀行券が昭和二十三年度に三千五百五十二億、二十二年度が三千五百五十三億、日本銀行券の発行高が変らないということを以て、通貨には何らさしたる異常がないということを以て安定の指標、安定の証拠としておられますが、大蔵大臣は通貨と経済の問題を考える場合に、預金通貨というものをお考えに入れないで考えてよろしいのでありますか。
  50. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問はお答えを繰返すようでありまするが、この予算編成方針にあつた自立経済というものの文句の意味はどうかというので答えておるのであります。大蔵大臣国務大臣としての政策の問題は又別個に考えなければならんと思うのであります。私の答えは予算編成方針にありましたあの字句のことについてお答えしたのであります。  次に日本の経済の安定が軌道に乘つて来た。これからますます安定から復興へ進むのだという考え方には間違いない。そこでどうしてそういうふうなことになつたかと申しますると、これは通貨の面におきましては、御承知通りああいうふうに大体横這いで行つております。生産も上昇に向つてつておるのであります。こういういろいろな経済の諸情勢の下において私は申上げたのであります。勿論通貨を論じますときは預金通貨を頭に入れておることは当然であります。
  51. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それではお尋ねいたしますが、預金通貨を含めますと通貨は殖えておるのであります。即ち昭和二十四年の十月をとつて見ますと、預金通貨を入れますと三千六百九十三億、二十三年は三千二百七十八億で、四百十五億も通貨は殖えております。預金通貨を入れますと通貨は殖えておるのであります。併しながら日本銀行券の発行高は変つておりません。これでも通貨は横這いであるということは言えるでしようか。四百十五億も殖えておる。この点はどういうふうにお考えですか。
  52. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは二十三年と二十四年とを比べますというと、物価の状況も変つておりますし、そうして生産の状況も変つておりますから、通貨プラス預金通貨としては殖えておりましよう。これは当然のことであると思います。
  53. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは大蔵大臣は何故経済安定事情の場合に、生産が殖えておるということをおつしやるのですか。生産が殖えておりながら日本銀行券はこれは変らないという場合には、これはデフレになるのです。生産は二割四分殖えておると言われます。生産が殖えておるのに日本銀行券が変らない、この生産日本銀行券との関係はどうなんですか。
  54. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日本銀行券はいろいろな情勢によつてつて来るのであります。御承知通りに昔は相当増発その他があつたのでありまするが、それが経済界の安定、通貨信用の安定によりまして預金にどんどん廻つて来たことも御承知通りであるのであります。だから全体の問題として私は論ずべきだと考えます。
  55. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 どうもその御答弁が納得できないのですが、経済が安定している証拠として、日本銀行券の発行高が変らないということを以て一つの証拠としておられるのですが、ところが通貨と経済の問題を考える場合には、預金通貨も含めて考えるべきであるということについては、大蔵大臣は承服されたのです。ところで預金通貨を含めて通貨の流通量を見ますと、四百十五億も殖えておる。この殖えておるのは、それは取引が殖えたから殖えておるので、生産も殖えたから殖えておる、そんなら日本銀行券も殖えなければならん。なぜ預金通貨が殖えたか、これが問題なんです。どういう形で預金通貨が殖えているか、これは取引が殖え、生産が順調に行つたからではないと思うのです。滯貨金融の貸出しその他によつて、そういうために非常な他のいわゆる支拂手段、債務の償還というものは、購買の支拂によらなければならんので、いわゆる支拂額としての通貨が殖えておると思う、これは経済が安定している証拠じやないと思う。大蔵大臣は今後国民に経済の安定している指標として示すべきは、日本銀行券の発行高ではなくて、預金通貨を含めた通貨流通量をこれを安定指標として示すべきではないでしようか。
  56. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 発表の形式によりまして、含める場合もありますし、含めない場合もあるのであります。それは必ずしも日本銀行券の発行高に預金通貨を常に含めなければならんとは私は考えておりません。
  57. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはお説の通りであります。併しながら経済が安定しておる証拠として指標を掲げる場合には、預金通貨を含めなければこれは一般の常識に反すると思うのです。通貨という場合に、これはもう前にイギリスなんかにおいても御承知のように、このイングランド銀行の改正に当つて、そういう議論が起つてつた。單に現金通貨だけを以て、そうして通貨流通量と考えるのは、近代の信用通貨の下においてはこれは間違である。預金通貨も含めて行くべきで、それと経済との関係考える。そうすると日本銀行券の発行高が変らないということだけで経済が安定しているということにはならない。  そこでもう一度お伺いしたいのですが、大蔵大臣が、本会議における私の質問に対して、よく分らないということをおつしやいましたが、仮に日本銀行券が三千五百五十二億程度で変らないとしましても、流通している日本銀行券の内容の変化ということをお考えなつたことがあるか。それは債務の償還のために国民から税金をとる、その税金が国民の懐にある場合には、これは單なる購買力だが、税金をとつて債務償還として銀行に金を渡す、そうして旧債の償還としてその金を税金からとるから財政的にはデフレが生じます。このデフレを銀行に旧債の償還として渡した金を、貸出によつて今緩和しておるのが実情だと思う。それをいわゆるデイス・インフレと言つておるのです。そうして財政的なものを信用インフレで補つて、そうして通貨の発行高が変らないからデイス・インフレと言つておるのですが、銀行から今度貸出す場合を考えなければならん。我我が手許に持つていたときのこの金とは違うと思う。銀行から貸出すものは利子が付きます。期限が来れば回收するのです。従つて通貨の性質は変つているのです。最近個々で流通している通貨も、税として我々からとつて債務償還をしなければ、購買力として流通しておるのですが、多くの人は、中小業者でも或いはその他の企業者でも、懐にある金はまだ持つておりますが、その金は銀行から借りて金利の付いた金を持つておる。従つてその金利を支拂わなければならん。そういう通貨が流通しておる。非常に多く流通しておる。そうして金利を拂うためには、これは金利は利潤から生じて来るのですから、利潤の中から金利を拂わなければならん。ところが御承知のように滯貨が非常に沢山あつて企業は儲からない。儲からないから、その金利を拂うために企業の整理をしたり、或いは賃金の切下をしたり、労働強化をしたりして、そういうふうになつていわゆるデフレ的の影響が来る。従つて通貨の量は変らなくても、流通しておる通貨の性質が変つて来たために、それがデフレ的な影響を與えた。それが金詰りという形をとつて来ておる。この通貨の、流通しておる通貨の性質の変化については大蔵大臣考えられたことがあるのでありますか。
  58. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そういうことは私は考えたことはございますが、大した問題ではないと思つております。
  59. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そこに大蔵大臣のいわゆるデイス・インフレ論が生まれて来るので、それは余りにも形式的である。近代社会における通貨の役割ということを全然お分りになつていないと思う。銀行貸出というものは、今の経済界を動かしておる一番大きな量にもなつておりますし、それから支配力にもなつておる。大蔵大臣も御承知通りに、銀行預金の大体八割、九割というものは貸出になつている。最近の金融は証券界が非常に情勢が悪いので、銀行貸にうんと力を入れておる。それが大きく経済界を支配しておる。最近では、私の考えによればいわゆる貸付資本の過剰、貸付資金の過剰がこういうようなデフレとか、或いは恐慌というようなものになつて来ておる。その資金が資金としては蓄積されておつても、現実資本として運転して行かない、こういうところにある。それも大した影響がない、それでは日本の経済の実情を、現在における実情を何ら全然私は御認識がないと思う。それでこの財政、予算を……そういう考え予算を編成されておる。そうしてこの予算編成によるところの経済の影響というものをそういうようにお考えになつておれば、これは全く私は見当違いであると思う。それがためにますます経済が混乱して行く。事実復興どころではない、私はむしろ非常に不安定の状態が増して来ると思う。そうでなければ金融政策について、それでは今まで通り政策を強行して行つたらいいということになる。それでも大蔵大臣は大したことはないという意味にお考えになつておりますか。
  60. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は木村さんの御議論がどこにあるか分らないのです。日本銀行券の発行高に通貨を加えなければいかん、それから自分の懐にあるものが貸出に廻つて、それから流通高の性質が違つて来る、それから又預金の金詰りの問題が起つて来る、それから今度は預金に対して貸出しの増加が沢山ある銀行経済はどうかと思う、ここに何の繋がりがあるか、私は了解に苦しむのであります。
  61. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それはあとでお帰りになつて、靜かに考えて頂きますれば一連の関係が分る。(笑声)それは大蔵大臣がデイス・インフレと言いながら、経済の統計の指標の上だけでは安定しておるように見えながら、実際の経済実態が非常なデフレ的な状態になつて来ておる、その証拠なんです。この一連の関係がお分りになれば、私の質問も分ると思うのです。それではそのように頭が混乱されておれば、(笑声)いたし方がありませんから、次にもう一つの重要な問題について御質問したい。  大蔵大臣、或いはこれは安本長官にもお伺いしたのですが、生産増加しておるということを以て経済の安定している指標、証拠としておられる。ところが生産増加は何に基いて起つたか、その原因は大蔵大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  62. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国民の増産意欲もありますし、又原価引下の関係もございます。いろいろな問題の結果で起つているのであります。やはり経済界の状況を見るのには全体として私は見て行かなければならんと思うのであります。インフレ時代から安定へのときには一時滯貨の増加もこれはございましよう。ちよつと滯貨が増加したからといつて、これは非常なデフレ傾向だというふうに思い過ぎてはいけないのであります。今まで辿つて来た路を考え、将来辿つて行く路を見通して、そうしていろいろな施策をやつて行き、デイス・インフレにしようといたしているのであります。個々の問題、特異性の問題をそういう見方でなしに他の方面から見て判断を下すということは、これは早計ではないかと考えております。
  63. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは大蔵大臣は、今になつてそういうことをおつしやられるのはおかしいと思う。実はこのデイス・インフレはバランスド・バジエツトの中においてデイス・インフレになるというお考えの筈です。二十四年度予算を編成されて、即ち五千七百八十億のあの予算を閣議で決定した、あれがデイス・インフレの線なんです。あれこそがデイス・インフレの線なんです。ところがドツジ・ラインによつて超均衡予算なつたバランスド・バジエツトじやなくてスーパー・バランスド・バジエツトになつた、超均衡予算なつたからデフレになつて来ている。それを大蔵大臣は今になつてデイス・インフレだと言つておられるのはおかしいので、ドツジ予算を本当にデイス・インフレ予算とおつしやられるならば、最初に二十四年度予算を編成したときにあの五千七百八十億、政府の公債一千億を認め、日本銀行券の増加も約五百四十億を認めたあの線がデイス・インフレの線だと思う。ところが超均衡予算を組んでしまつたから、実は非常なデフレになつた。それを信用インフレで補おうとしているんですけれども、信用インフレの場合は、銀行貸出という形で通貨が出て来るので、それがデフレになつて来る。銀行貸出も、それもどんどん再生産のために使われるならばそうではないのでありますけれども、滯貨金融という形に使われている、こういう状態であるから私はデイス・インフレでなくてデフレになつて来ていると思う。大蔵大臣は超均衡予算ということを言つておりますが、その超という意味はどういうことなんですか、均衡を通り越していると、こういう意味なんでありますが、大蔵大臣はどういうふうなお考えですか。
  64. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 均衡を通り越している予算ではない、完全に均衡予算になつているということです。(笑声)それから五千七百億円のドツジ氏の経済九原則によりまする考え方を聞く前の予算というものは、私はこう考えておつたのであります。アメリカの援助というものは暫く続く、従つてこの分は今まで通りにやつて行こう、それで徐々に回復して行こうという考えに立つてつたのであります。併し予算編成に当つての経済九原則の意味はこういう意味です。そこでインフレを急激に止めて行く今の七千百億円の案と、五千七百億円の案で非常な議論をしたわけであります。併し経済九原則はこういう意味だからというので、そうしてドツジ氏の案を検討した上急激にやつて行こうということに閣議決定になつたのでありまするから、こういうふうになつたのであります。私の五千七百億円の予算をやつてつたならば二、三年、三、四年で今の状態になつて来ましよう。併しドツジ氏の考え方はそうでなしに、対日援助というものは別にしなければいかん。こうなつて参りまして五千七百億円予算が七千百億円予算なつたのであります。この間の事情は木村さんはお分りになつておると思うのでありますが、ただステップを早くとるか、ゆつくり行くかという問題であつたのであります。結果から申しますと、私はドツジ氏のあの経済九原則の確立によりまして、急激な措置をとつた方がいいという考え方になつて二十四年度予算をああいうふうにしたのであります。均衡予算には変りありませんが、ただ超均衡予算というのはどこから見ても中央地方を通じ、而も又特別会計政府関係機関を通じて絶対に均衡がとれたということを超均衡予算というのであります。
  65. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その経過はそれで分りましたが、只今お話ですと、急激にインフレをストツプさせる、私はドツジさんのこのインフレ処理のし方には賛成なんです。今までインフレは止まらない、止まらないと言つて、おつた。誰がやつてもインフレは止まらない、いたし方ない、敗戰後においては仕方ないと言つて来た。我々は政策のやり方でインフレは止まると主張して来た。ところがドツジ氏はああいう僅かの間に一挙に止めた。止めたけれども、ドツジさんの考え方は通貨と金融、そういうマネタリ・スタビリゼーシヨンに非常に重きを置いておる。そうして外国為替相場も三百六十円に一挙に固定さしてしまつて、そうして大蔵大臣のおつしやるように急激にやつた、急激にやつたからそのシヨツクが必ず現われる、そのシヨツクが今のデフレなんです。その超均衡予算、例えば物が進行しておるとき、必要以上に引張らなければ物が中間に止まらないから、ドツジさんは恐らく超均衡予算にしたと思う。船が止まるときに逆に廻るようにしたと思う、それがデフレとなつて来たと思う。それがためにこういう最近のシヨツクが現われて、デフレ状態が現われて来た。私は今の状態は率直に大蔵大臣は認めるべきだと思う。それをドツジさんの考えが、そういう船が止まるときにむしろ逆に廻るような形で止めたのでそのシヨツクが来ておる、それがデフレなんで、それを大蔵大臣はどうしても認めない。現在デイス・インフレ、デイス・インフレで安定しておると言つておるけれども、この安定に行くまでには、ドツジさんの考えは自由経済にこれを持つてつて、恐慌を経、必ず安定の恐慌に行かなければならない、恐慌を経なければこれはどうしても安定しません。その恐慌を開始しておるのが今信用インフレです。一応滯貨金融をやつたりして物価の下るのを抑えて恐慌の訪れるのを変則的に抑えておる。ドツジさんの考えはむしろ恐慌の段階に行つて、恐慌に行つてそうして資本主義の原則によつて暴力的に鎭圧する。それを今の大蔵大臣や、政府のやり方はむしろドツジさんの考え方から言えば、変則をやつてデイス・インフレというように言つておるのですが、併しその実態は飽くまでもデフレなんです。急激に止めたということを大蔵大臣はおつしやつておるけれども、それには必ず反動が来る、それが長期なものであるか短期なものであるかは、又今後の政策の如何によつてつて来ますが、現在現われておる状態、失業者が殖え、職よこせで始終デモが行われ、従つて自殺する人、心中する人、そういう状態を現われて来ておるのに、安定しておるとはどうしても言えない。又そういう社会不安でなく経済の再生産の均衡の上から行つて滯貨がこんなに殖えてしまつて政府でも余裕金、使わない余裕金がうんと生じておる、こういうようなことはちつとも均衡を得ていない、経済も財政も……。これを以て大蔵大臣は安定していると言いますが、私はそれはどうしても承服できない。大蔵大臣はもつと率直に実際現在デフレなんだから、このデフレ状態を治すようにいろいろな施策考える、そういうふうに言われれば分る。従つてドツジさんのやり方は、デフレである、マネタリ・スタビリゼーシヨンに余り重きを置き過ぎておる。古典的である。であるからドツジさんの政策をやるならば、第二、第三のこれによつて生ずるデフレ的影響を救うところの政策を用意していなければならない。当初政府はさつき大蔵大臣お話のように、九原則を見ないうちに五千百八十億の予算を作つて、それでやつて行くつもりであつた、ところが急にドツジさんの予算を見たので、ドツジさんの言う通り予算を組んだから用意が全然なかつた、全然なかつた従つてこういうデフレの状態なつた。ですから大蔵大臣は率直に急激にインフレを止めた結果、今ここに現われておる状態はデフレであるということを認めて政策をやるべきだと思うのです。やはり飽くまでもデフレでないと、こういうふうにお考えでしようか。
  66. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 言葉の点で議論するのはどうかと思いますが、あなたがデフレとお考えになるのは差支ありません。私はこういう状態を予想し、これをデイス・インフレと言つておるのであります。而して直接需要を起すとか、或いはデイス・インフレの線を堅持するためには、昭和二十四年度予算よりも二十五年度予算が変つて来るところは、一年やつて見てこういう状態が来るからこの次の年度からこういうふうにやるという長い目で御覧願いたいと思います。
  67. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 いつでも大蔵大臣は言葉の上とか、見解の相違とか言われますが、私は今度の大蔵大臣に質問しておる場合には、同じ資本主義の経済の建前において御質問しておるのです。資本の論理の上に立つて御質問しておるのです。従つて資本の論理に立つて質問すれば見解の相違ということはない。どつちかが間違つておるのです。どつちかの考えが間違つておる、見解の相違でない。私は資本の論理の上に立つて御質問しておるのです。ですからそういうふうに言葉の違いとか、それから現在の状態大蔵大臣がデイス・インフレだとおつしやるならば、これは私は経済問題に対する学校で教育をする場合に非常に困ると思う、学校の先生が……。(笑声)これは高瀬文部大臣にも私はお伺いしたい。こういう状態をデイス・インフレと池田大蔵大臣は定義したが、これは世界に通用しないのです。これは理論的に我々分析して誰が見てもデフレなんです。デイス・インフレじやないのです。だからデイス・インフレに努力するならよろしい。政府の基本方針はデイス・インフレにするというならよろしいけれども、デイス・インフレにしようと思つた、ところがデイス・インフレにならないのです。大蔵大臣幾ら頑張つてもそれは駄目だと思うのです。  そこで大蔵大臣は見解の相違とか、言葉の相違とか言われますから、そういう相違が出て来ない点について御質問申上げたいのですが、先程生産増強は、いろいろな原因によつて増加して来るといわれますけれども、生産増強の原因ははつきりしておるのです。この公聽会でも日新紡の櫻田武氏、ああいう実業家も証言されております。最近の生産増加は、滯貨が非常に多くなつて業者がコストを下げるために操業度を無理に高めて、そのために売れないにも拘わらず無理に生産しておる。これが第一の原因であると言つております。更に又第二は、補給金が十月頃までに次々に削減されるから補給金を貰おうと思つて無理に増産しておるという点、第三は生産増加させないと、生産が殖えて景気がよいように見せかけないと銀行が金を貸して呉れない、だから銀行から金を貸りるために無理に生産をやる。だからこれはノーマルな生産状態ではない、ノーマルな状態において殖えるならば有効需要が殖えて生産増加すべきなんです。ところがそうやつて殖えた生産は売れない、滯貨が生じておる、これがノーマルの生産増加といえるでありましようか、この点について大蔵大臣にお伺いしたい。
  68. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) デイス・インフレとデフレの点は、私はこれをデイス・インフレの状態と見ておるのであります。従つてお話申上げますが、遺憾ながら、安定へ参りますときには、個々の現象におきましてはデフレ現象もありましよう、これは例えば纖維品におきましてまずかつた、私はそういう派生的のものを言つておるのでなく、全体の動きとして何とこれを見るかということを言つておるのであります。  次に生産増強をしたのはいろいろの原因から来ておるので、何も好ましくない原因も相当ある、こう言われますが、生産が増強したということは非常に望ましいことであるのであります。滯貨の問題もございましよう。これは今国際貿易関係が殆んどバーター制によつております、又保護関税を用いまして各国が輸入政策ということについて非常に臆病になつております関係上滯貨はございます。これは長い目で見て行くべきじやないか、例えば人絹なんかにつきましても、南米との取引ができますれば滯貨を一掃してしまう、こういう状況であるのであります。インフレからデイス・インフレの過渡期におきまして或る程度の滯貨が増大することは、これは止むを得ないことであるのであります。滯貨が増大したからデフレだと、こう驚く必要はないと私は考えております。
  69. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは成る程、程度の問題であると思います。インフレから一挙にデフレに持つてつたためにこういうような形になつた、これはこういう場合もあり得ることは認めるのですが、併し最近の経済が安定しておる証拠として、生産増強を挙げるということは私はそれはどうもおかしいと思う。大体ノーマルな生産増加というものは、消費が殖えて生産増加するのが私は当り前だと思う。この点は私は経済安定の指標にならないと見るのですが、大蔵大臣は経済安定の指標になると御覧になるのですが、これ以上この点について追及いたしません。次にもう一つ経済安定の指標としてお挙げになつておるのに物価と賃金があります。物価が安定しておるとおつしやることは、これはどういう意味なのですか。
  70. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 物価が横這いの状況であるということであります。
  71. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは公定価格のことですか、闇価格のことですか。
  72. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは御承知通り補給金の付いておるものは今後も上つて参りましよう。それから闇価格は御覧の通り相当下つて来つつあります。公定価格につきましても大体補給金以外のものについては動かせるような状況になつておりません。全体を通じて物価水準が横這いになつておる、こういうことであります。
  73. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それを安定の指標としておとりになることは問題だと思います。というのは、公定価格が上つて行くと勤労者が影響を受け生活が苦しくなる、それから闇価格が暴落すれば生産者が非常に困る、ですから單に闇価格と公定価格平均した実効価格が横這いであるということを以て経済が安定しておる証拠とすることは間違である。更に賃金が安定しておると考えるのはどういう意味ですか。
  74. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 大体物価が安定しておるということは、昭和二十二、三年の状況を考えまして、ああいうところから比較して安定しておると私は考えておるのであります。
  75. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 最近はむしろ物価は安定よりも下り気味になつておる。大蔵大臣は前から物価は横這いということを言つておられ、今後は物価を下げたいということを言われ、それに応ずるがごとく、為替相場を三百六十円から三百三十円に持つて行くことが理想である、こういうことを言つておられる、今後の物価見通しについては、どういう見通しを立てて、この予算をお組みになつたか、それを伺いたい。
  76. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 物価水準といたしましては、昨年の九月を基準といたしまして横這いを予想して予算を組んでおります。私は横這いと安定ということを財政演説で言つております。同時に物価は低落の傾向に向わしたいという希望的なことを言つておるのでありますが、果せるかな最近は或る程度下りつつあるのであります。
  77. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それならば大蔵大臣の言われるデイス・インフレということと違うと思う。デイス・インフレというのは大蔵大臣の言われるように物価を横這いにして行く、そうしてインフレは止めるがデフレにはしない、賃金も安定させ物価も横這いにさして行く、ところが物価は低落しておる、低落気味にある。これは決して私は安定はしてないと思う。物価は安定させるのが一番いいことは分つている。むしろこれは物価が低落して行くのです。この状態大蔵大臣は放つて置いていいというお考えですか。デイス・インフレの線ですと物価は下げさせない、暴落させない、そうして安定さして行くというのがデイス・インフレの線だと思う。にも拘わらず物価は下つて行く、物価は急激に上つても、インフレみたいに上つてもいけませんが、物価が急激に下るということも経済界に相当大きなデフレ的傾向を與えて経済界を混乱させる、最近はそういう情勢が現われている。これを大蔵大臣はこの状態を直すために何か手を打たれないか、或いは物価はどんどん下げて行かなければいけないと、こういうふうにお考えになるとデイス・インフレのお考えと違うように思うがこの点はどうですか。
  78. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今の実効価額の問題は、下る傾向にあります。それから一般公定価格、一般の物価補給金を外しますと大体横這いで行く、相当上つて来るものがあると思う。物価はどうなるかということになりますと闇を入れたものにつきましては、経済が正常の形になつて来ますと、闇を入れても、下つて来るようになりましよう。
  79. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣の大体物価は下げて下きたいということは、公定価格についてではなく、公定価格の外に自由価格、闇価格がありますが、この二つについておつしやつておるわけですか。
  80. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 原則として自由価格で言つております。
  81. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 自由価格物価を下げて行くと、こういうふうにお考えになつているのですね。併しこれから公定価格を、段々価格制度を自由にして行く、それが支配的になつて来ると思う、物価も支配的になつて来ると思う、それを大蔵大臣は下げさして行く、そういうお考えであると了解してよろしいですか。
  82. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 物価は成るべく下つて行くのに越したことはないのです。併しこれは国際物価が左右する関係上それは下らんものもありましよう。或いは上つて行くものもありましよう。併し自由価格としての日本物価は大体私は横這いになつて行く、併し生計費から見ますと闇価格というものは下つて行き、闇の分量が少くなつて参りますと、生計費の方から行くと生計費指数は下つて行く、こういうことを言つておるのであります。
  83. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣のやはり物価を今後上げさして行きたいという考え方はよく分るのです。それは結局三百六十円の為替相場が円高にすぎるということだと思う。国際物価標準にすれば三百六十円の為替相場では物価がもつと下らなければ輸出に困難である。そういう意味で三百六十円レートを基準にすれば、今の日本物価は貿易を考えた場合に高過ぎる。だからもう少し物価を下げて、国内物価を下げてそうして輸出に有利になるようにすると、こういうお考えじやないですか。
  84. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) そこまで言つておりません。三百六十円で大体調整して行きたいと考えている。従いまして日本の経済がもう少し復興して参りますと、生産も再開し外国に対しても競争力が出て来る、強まつて行く、そうして将来理想としては三百円でなしに三百三十円に持つて行く理想の下に経済を復興させて行きたい、これが念願である。
  85. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは理想としては海外価値が高い方が、輸入が多い場合には有利であると思う。併し実際問題として我々が経済を考える場合に始終経済の均衡を考えなければならないと思う。経済の均衡の問題、雇傭を十分にして失業者が出ないようにする。そうして生活が安定するように、そういう均衡を考えながら経済の運行を考えなければならないのですが、その場合大蔵大臣は三百三十円に持つて行きたいという考えは、それは分るのです。どうしても日本輸入が多くなりますから海外価値は高い程いいのですけれども、それをやるにはもう非常なデフレをやらなければならない。だから三百六十円を決める場合に、大蔵大臣はその後の円高の材料は皆見込んでおやりになつたということですけれども、例えばシヤウプ税制改革による資産再評価の問題、それによる公定価格物価の値上り、それから補給金削減による公定価格の引上、それからポンドの切下後におけるポンドの闇相場の下落、それからこの三百六十円を決めた以後におけるアメリカ物価の低落、こういう円高の要素は皆お考えなつたと、こういうふうに了解してよろしいのですか。
  86. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お話通り初は三百円とか、或いは三百三十円というふうなことで行つてつたのであります。で世界の情勢を見て大事をとるために三百六十円と決まつたと私は了承いたしております。三百六十円に決まりますまでに、この問題について二、三回ドツジ氏と話したことがあります。そのことから想像いたしましてそういうことも加味せられたかというふうに自分は感じておるのであります。
  87. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この為替の問題は私は非常に重要な問題だと思うのです。で、まあ私の考えではこの三百六十円がデフレになつた原因だと思う。一番大きな問題だと思うのです。根本の問題だと思うのです。そこで今まで政府の御答弁は三百円乃至三百三十円くらいに決めたいと、これは昨年の一月頃のことであろうと思うのです。ところがその後、一月以後四月二十五日為替相場を決める日までにアメリカ物価が一割低落している。アメリカ物価の一割低落を見込んでですね、そうして三百三十円の一割円安、即ち三百六十円、こういうふうに決めたように我々は聞いておるのです。了解しておるのです。併しその後の円高を見越したということになれば、私は三百六十円よりもつと円安に決めなければならない、而も資産の再評価、シヤウプ税制勧告による資産の再評価とか補給金の削減までも二十五年度予算を編成する前に決まつたわけですから、三百六十円は……。ですからその後に、さつき大蔵大臣がおつしやつたのは五千七百八十億の予算を組んだあとで、経済九原則によるドツジさんの予算を見て、そうして七千四百億のこの予算を実行することになつたとおつしやつた、その間に三百六十円に決めるときに、そういう要素は考えられておらないと思うのです。それは答弁として苦しいからそういうことを言われて、あとで考えられた理屈ではないかと思うのです。ポンド切下げは、或いはポンドを切下げたあとに闇相場が更に下がる、そういうことまで私は見通している筈がないと思う。なぜそう言うかと言えば、これは為替相場が固定化されているということ、それから三百六十円は円高であるということ、それからこれはエラステイツクがないということ、彈力性がないということだ。日本の経済の彈力性をどれだけなくしているか、非常に重要であると思うのでくどくお尋ねしているのですが、大蔵大臣がこの三百三十円にするというような考えを持つたのは私は逆だと思うのです。それは本当の理屈として、理想としてはいいのです、輸入が多い場合はいいのですけれども、実際問題としては何らかの形でこの三百六十円を、円安に調整しなければ、日本の経済の均弁ということを考えた場合に非常に問題が起ると思う。で大蔵大臣は三百六十円を堅持するというならまだ話が分る。三百三十円へ持つて行こうとなると、今よりもつと生産費、コストを切下げなければならない、そういうお考えだから日本国内物価を段々低落させて行く、そういうふうにお考えになつているんじやないか。やはり理想としては三百三十円くらいに最後には持つて行きたい、実際問題としてです。單なる理想じやなくしてそういう方向で御努力されておるんでございますか。
  88. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 三百六十円レートが決つた前提といたしてのあなたの言葉には事実と違うところがあるのであります。それは一月に決まつたのではございません。四月二十五日から施行いたしたのでありますが、四月十日頃くらいまではまだやはり三百円、三百三十円にするという議論があつたのであります。アメリカの分は一昨年の八月を最高にいたしまして、昨年の一月頃ずつと下つて参りました。そういうことは織込み済みであるのであります。そうして又ポンドの切下もこれは八月か九月に行われたのでありますが、あの当時におきましても二割五分切下げるということは考えておりませんでしたでしよう。併し二割程度切下げられるということは、もう闇相場から言つても当然であつたのであります。而して日本の輸出の大宗である纖維品につきましてもその程度下る、下つてもいいように計算して行つてつたのであります。そこでただ見込みが違つたものはポンドを二割五分下げるか二割下げるかというだけの問題でありまして、私は今お話のような点は全然考えに置かずに三百六十円を決めたというのではないのであります。相当部分もう考えられておつたのであります。そこで今度は三百六十円レートを堅持するということは、これは私の信念であります。動かしません。三百六十円に彈力性を持たしたら経済は立たないのであります。これは飽くまで堅持しなければならない。併し三百三十円ということを言つたが、これは私の理想でありまして、日本の経済が段々よくなつて行けばそういうふうなことにもなつて来るであろうという理想を言つておるのでありまして、今は絶対に三百六十円を堅持しておるのであります。而してその後の貿易状況を見ましても、日本が三百六十円はまだ円高であるとは私は考えておりません。全体から申しまして三百六十円で相当輸出入契約はできるのであります。ただ先程申上げましたように、バーター制をやつておりましても、いろいろな事情によりましてライセンスが出ないために一時遅れておるということはあるのでございますが、三百六十円が円高であつて輸出に非常に困るということは全体的には考えておりません。
  89. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 これも公聽会で実業家の人の公述によつてつたのでありますが、実際問題として、三百六十円が相当円高に作用して輸出に影響を與えておるという証言があつたのです。やはり櫻田さんが言つてつたのです。が、最近の輸出貿易を見ると、綿製品が殆んど大部分で、それから纖維製品でも綿製品以外は余り行かない。又印度あたりから機関車の注文が来ても、非常に何ですか円高でこれをうんと生産費を切下げなければ引合いがない、契約ができない。引合いはあるんだけれども契約できない。これはやはり円高、円高というよりもむしろポンドあたりが更に闇が下つているということもあると思うのですが、そういう点から実際に貿易にやはり影響が現われて来ていると思うのですが、その程度ですな、その程度は今後相当日本の貿易に重大な影響を與えるような状態にあるのかどうか、公述人のそういう証言は單に部分的であるのか、或いは相当外の、免税品以外の、引合いが合つても取引できないと言つておるのですが、そういうことは通産大臣としてもどういう実情にあるか、ちよつとお答え願いたいのです。
  90. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先程お答え申上げました中に、ポンド二割五分と申しましたが、三割の記憶違いでございます。今輸出が非常に不振であるということを言われておるのでありますが、私は実はそう考えていないのであります。ただスターリング地域につきましては予定より非常に少くなつておりますが、ドル地域は予定通りつておるのであります。一月の輸出がちよつと停頓したというのは外の事情があつたのであります。三百六十円のためにどうこうという問題ではありません。三百六十円といたしましても、先程お話申上げましたように、人絹なんかについて、南米との分は値段の問題ではない、値段はやはり向うよりも相当安いのであります。三百六十円の問題でどうこうということはないのでありますが、ただ輸出業者の中には円安になつた方が非常に利益があるというので、円安を希望する向きはございましよう。併し日本の経済は輸入で立つているのでございまするから、私は円安にすることが非常に経済界に変動を及ぼします。又三百六十円で価格の点について余り問題はないと思いますので、三百六十円レートを堅持すると言つておるのであります。
  91. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今後の日本の貿易がどうなるかということが、この予算編成の一つの基礎になつておりますので、更に貿易の問題についてお伺いしたいのですが、農林大臣にこの間伺いましたが、この食糧輸入です、二十五年度三百四十万トン輸入するうち、百四十万トンがガリオア、いわゆるエイド・フアンドで、その残りが日本の自力による輸入、いわゆるコンマーシヤル・フアンドで輸入する、そういうことになつているわけですか。それで二十五年度には、エイド・フアンドとしてはどのくらいのトン数の輸入があるのですか、その点。
  92. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今エイド・フアンドによつて昭和二十五年度にどれだけ輸入するか、或いは一般の貿易関係でスターリング地域からどれだけするかという数字は私覚えておりませんが、これは一応の予定でございまして、状況によりまして違つて来ることがあるのであります。例えば石油の場合にいたしましても、ペルシヤの方から持つて来る予定のものがアメリカになりまして、ガリオアになることもありますし、そして又ドル地域から輸入する食糧が、例えば東南アジア或いは朝鮮ということになることもあるのであります。これはその時の情勢によつて動くことと御了承願いたいと思います。
  93. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 この二十四年度食糧輸入は、二百二十万トンぐらい要請したところを二百九十万トンぐらい入るというふうに聞いておりますが、その数字は確かでありますかどうか。それからそのうちエイド・フアンドとしてどのくらい入つて来るのでありますか、その点……。
  94. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 二十四年度は主食が二百九十万トン、それから大豆が二十万トンと記憶いたしております。エイド・フアンドがどれだけかということは、今記憶いたしておりません。二十五年度と同様に……。
  95. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その点は後でその数字をお伺いしたいのです。どうしてかと申しますと、二十五年度において、コンマーシヤル・アカウントで入るのが相当大きくなつているわけです。そこでそういう貿易によつて入る食糧が多くなることは、日本がよそに輸出する時には関税がかかると思うのです。全然無税じやないと思う。その時に今度貿易勘定で輸入する食糧が無税であるということ、これは相当問題だと思うのですが、エイド・フアンドで入る時にはこれは関税の問題は一応仕方がないと思うのです。無税で入るということは……。ところがコンマーシヤル・フアンドで入る時に無税であるということは、これはどうもおかしい。こつちの輸出するものが関税がかかり、向うから輸入するものが関税がかからないということはおかしいと思うのですが、この点について最近新聞でも問題になつているようですが、この実情はどうなんでしようか。今後それが永久にそういうふうに関税がかからないようになると非常に重大な問題になると思うのですが。
  96. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今のところ国内の主食は外国の主食を輸入した場合のCIFより非常に安いのであります。この意味で関税の問題にならないと思います。ただ今問題にしておりますのは、将来の日本農産物価格外国農産物価格とを見まして、永久に無税というのはよくないから我々はやはり保護関税の建前をとつて、而して現状では国内の物資は非常に安いのでありますから、ここに持つてつて関税をかけるのは意味をなさんから、暫定的には無税の措置をとる、こういう工合に話を進めておるのであります。
  97. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それは今お話を進めているわけであつて、そういうことになつたというわけではないのですね。
  98. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 新聞にこのことが載つておりましたので、関税定率法の改正について仕事をしておる者を呼びまして聞きましたところが、只今向うといろいろな点で折衝中だということでございます。
  99. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それからこの前にもちよつとお伺いしたのですが、最近大蔵大臣は、この国会における質疑に対しての御答弁として、十月頃にやはり経済安定の見通しがある、こういうお話ですが、その十月安定論というのはどういうのですか。この前にもお伺いしたのですが、はつきりしませんでしたが、或る一部では統制をどんどん撤廃して行く、自由経済にして行く、そうなると最近の中小業者みたいにどんどん潰れて行つて、潰れるものは潰れてしまう、そうして資力が強いものは残る、失業する者は失業し、自殺する者は自殺し、心中する者はしで、生活能力のない者は亡びてしまつて生き残たつ者はそこで存続して行く、そういう意味で整理がそこで十月頃までに大体終つて、そうして安定する、こういう意味なんですか。
  100. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 衆議院の予算委員会で答えたのを御覧願いたいと思いますが、私はそんな意味で言つておるのではないのであります。とにかく日本の経済が竹馬である、而してその竹馬の一本の足は価格補給金だ、こういうことを言われておるのであります。私もそう思つておるのであります。そこで価格補給金がとにかく早ければ十月頃までにはなくなる恰好になります。そういたしますると他の條件が非常に安定して来た場合におきましては、その最後にやはり昭和二十五年度産米の米価というものが補給金がなくなつた場合を想定して考えると、十一月頃から補給金がなくなつた経済になつて来るのでないか、こういうことを言つただけのことであります。
  101. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 次にお伺いいたしたいのですが、この予算説明書にある予算編成の基礎條件についてお伺いしたいのです。それでこの昭和二十五年度予算説明書には、大体四つの條件を基礎としてこの予算を編成されておるようであります。その第一が給與ベースを引上げない。それから物価においては大蔵大臣の言われるように横這い、それから統制は撤廃して自由経済にして行く、第四は貿易は対日援助が減つて輸出貿易を殖やして行く、この四つが予算編成の基礎條件になつておるという説明でございますが、そこで第一の給與ベースを引上げない根拠です。大蔵大臣の財政演説とそれから総理大臣の施政演説においては理由は違うわけなんです。総理大臣の方の理由は、物価と賃金と悪循環するから引上げない。大蔵大臣の御説明ですと、給與ベースを引上げますと仮に人事院の勧告案通り引上げても約六百億財源が要る、従つて給與ベースを人事院勧告の線まで引上げた場合は減税もできなくなる或いは鉄道運賃、郵便料金等も引上げなければならないからできないというふうに言つておられるのですが、給與ベースの問題は今重要な問題になつておりますので、この際給與ベースが引上げられないことの根拠、政府の意見としてはつきりどの点、どういう点であるかということをお伺いしたいのです。
  102. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 度々本会議或いは他の機会に申上げておるのでありますが、財政上支出が殖えて参りますし、又公共企業体の賃金も引上げなければならぬ。従つてこれが物価の悪循環を起すいろいろな條件で引上げないことにいたしたのであります。政府から発表しました給與白書にも相当のことが載つておると考えております。
  103. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと理由はこれを分析してみますと、財源がない、それから物価と賃金が悪循環する、これが内容なんでございますか。
  104. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) さようでございます。尚又一般には民間賃金との比較論が出ておりまするが、それは役人の方が或る程度工業賃金に比べまして安いけれど、今までの工業賃金に載つていない、もつと低い階級の労務者もおられるのであるから、この際我慢して頂きたいというのも理由の一つであります。
  105. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうしますと、若しかこの三つの理由、財源の問題、物価と賃金の悪循環の問題、それから民間の給與との比較において公務員よりも更に低い賃金の人がある、それだから我慢して呉れい、若しこの三つの理由が間違つている、正しくないということが、論証されて、財源もあり物価と賃金も悪循環しない、それから民間の非常に低い賃金の人、公務員よりも更に低い賃金の人があるから我慢して呉れということも間違つている、この三つがはつきりと間違つているということが明らかになれば、給與ベースの引上は行うか。
  106. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それがはつきり間違つているという場合に、引上げるかどうかということは申上げられません。
  107. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それでは給與ベースを引上げない根拠にならないと思います。理由がはつきりなくて引上げない。それならばこの三つの理由以外に他に理由があるのじやないか。その理由はこの予算を編成するときに、聞くところによれば八つの條項を出された、その八つの條項の中には賃金給與ベースは引上げない、即ちこの一條項がある、そのために引上げられない。これがやはりもう一つ加わりました理由ではなかつたでせうか。
  108. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) それは私がここで表向きにお答えする事柄でないのであります。従つて今の三つのことが絶対に誤りだという意味におきまして、私が上げるか上げないかということを決める場合の材料になるかも分りませんが、私はそれが八つか九つかあつたということはここで申上げることはできません。
  109. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それではこの予算審議の過程において、やはり財源の問題、賃金の物価の悪循環の問題、民間の低賃金者との比較の問題、この三つの点について給與ベースを引上げない理由にならないということが段々明らかになつて来たならば、大蔵大臣は給與ベースの引上に努力されるかどうか。或いは絶対にもう引上げないということを言われておりましたが、そういう事情が明らかになりましたならば努力されるかどうか、その点をお伺いしたい。
  110. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 木村さんにちよつとお諮りいたしますが、大臣中小企業者の団体が見えておりますので、三分間か五分間で直ぐ帰つて来るそうですから、それまで休憩してお待ちいたしましようか。
  111. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 今の御答弁だけ……。
  112. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は公務員の待遇改善につきましては、人後に落ちない努力を拂うことは申上げるまでもないのであります。併し引上げますと、物価と賃金の悪循環を起し、財政支出が非常に殖える。そういういろいろなことを考えまして、今は上げることができない、こういう結論になつておるのであります。
  113. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) では休憩にいたします。    午後四時二十一分休憩    —————・—————    午後四時二十二分開会
  114. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) それでは開会いたします。  では岩男委員お始め願います。
  115. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 さつき私が農村金融のことについて大臣にお伺いしたのでありますが、実は長期金融についての大臣のお考えを聽きまして、了承いたしました。ただ問題は長期金融でありますからして、低金利でどつしりと一つ沢山のお金を出して頂きたい、これを一つ考え願いたい。  今一つは、御承知のように農村は非常に金詰りで、このために食糧増産或いは農業生産に非常な支障を来しておるのであります。農業手形を出して、これが相当に有効に使われておりますが、これもおのずから限度があります。何とかしてこの窮状を打開するためには、さつき私が質問申上げました農地証券の償還であります、五十二億ばかり二十五年度に予定されておりますが、発行額も約九十億を越えるものと私は思つております。あと三十八億乃至四十億が残るのでありますが、これを近き将来、いや私は近き将来というよりも、むしろ二十五年度に全部償還して貰いたい。その影響は非常に大きいと思つておりますが、これについて関係方面その他に御折衝願つて、実現ができる可能性があるかどうかということを更にお尋ねいたしたいのであります。
  116. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 農業等の原始産業につきましては、できるだけ金利を安くしなければならないということは御説の通りであります。私は今後共この方面に努力いたしたいと考えております。  又先程御質問のありました農地証券の償還の問題でございまするが、今年度十億円、昭和二十五年度四十二億円、合計五十二億円を償還することになつてつたのでありまするが、私といたしましては、できるだけ早い機会にこれを償還した方がいいという考えの下に、先般来話を進めておりましたところ、昭和二十五年度の債務償還で全額拂つていいということに話がまとまりましたので、予算が通過いたしますれば、できるだけ早い機会に、二十五年度と申しましても一年ありますが、できるだけ早い機会に返したい、又返すことに相成ります。御了承願います。
  117. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 先程に引続きまして御質問申上げたいのですが、官公吏の待遇改善に努力するには吝でない、そういう熱意を持つておられるということは、只今の御答弁で明らかになつたのでありますが、その場合にやはり官公吏の給與を引上げれば、物価が悪循環するし、財源もない、こういうことを言われましたが、先ず財源の点からお尋ねしたいのですが、財源がないということはどういうわけでありますか。我々了解に苦しむのは、財源は必ずあると思う。政府は六百億円財源が要ると言つておられますが、果して六百億円要るものでありましようか。このうちいわゆる税金のはね返りを考えれば、私はもつと減ると思うのですが、税金のはね返りを考慮に入れればどのくらいの予算で足りるものでありますか。
  118. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 人事院勧告通りにいたしますと、大体地方公共団体の職員を加えまして六百億円要るのであります。六百億円拂いますと、これははね返りで、所得税が相当金額入つて来ることは確かでございます。どの程度所得税が入るかということになりますと、なかなか計算が困難でありまして、各会計別に算出しなければ到底むずかしいのでありますが、大体一割五分の控除をいたします関係等からいたしまして、二割見当ではないかと思つております。
  119. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 その二割であるかどうかは、又計算して見なければ分らないと思うのですが、それにしても二割としても、百二十億は財源上節約になるのですから、四百八十億。我々は二割とは思えないのですが、もう少し上の方ですから、もう少し多くなるのじやないかと思いますが、それにしても四百八十億の財源は、これは捻出できないことはないと思うのです。それはもう何回も言われておりますが、大蔵大臣は資本蓄積のために債務償還をすると言つておられますが、資本蓄積については、二十五年度においては二重に資本蓄積をしようとしておると思うのです。その一つは債務償還、もう一つはシヤウプ税制勧告で、法人とか或いは配当所得者とかそれから高額所得者に非常に税制上優遇を與えて、その方面からも資本蓄積をやろうとしておるわけです。従つて二十四年度においては債務償還一本で資本蓄積を強行したのですが……一本じやない、それに主をおいてやつたのですが、二十五年度においては、税制を通じて資本蓄積をやり、而も又一千二百億の資本蓄積を強制的にやる。これでは二重にやるのであつて、シヤウプ税制を通じて資本蓄積をやるならば、少くとも一般会計における七百三十何億ですか、そのうちの二十五年度に償還期限が来たものを除いた五百億は、これは資本蓄積に廻さないで、給與の引上の方へ廻す。そうすると給與引上の方において余裕ができて、それはシヤウプ税制勧告の方による任意的資本蓄積の方に順次に廻つて行く。そういう考えをとることはできないのでしようか。
  120. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨日本委員会におきまして、一時間半ばかりやつたのでありまするが、私は二重に資本蓄積をやつておるとは考えておりません。或いはあなたのようなお考えから言えば、三重にも五重にもやつておるかも知れません。併し資本蓄積は必要であるというので、債務償還をやることにいたしたのでございます。
  121. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 大蔵大臣は資本蓄積ということを言われておりますが、これは前に和田議員も言われたのですが、資金は蓄積されておるけれども、資本は蓄積されていないのじやないですか。資本の蓄積と資金の蓄積とは違うのです。それはむしろ資金が蓄積され過ぎちやつて、それが資本の蓄積になつていないと思う。この点が非常に問題じやないかと思うのですが、その辺はどういうふうにお考えですか。
  122. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は資本蓄積として考えておるのであります。
  123. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そうすると資本の蓄積、これは現物の資本の蓄積ですが、それと資金の蓄積の間にギヤツプがあるのです。ギヤツプがあるんですから、資金の蓄積は少しゆるめたらどうかと思うのです。そういうことによつてこの旧債務償還は一時停止して、それに廻すことができると思うのですが、この点については飽くまでも大蔵大臣がやつぱり今のような形で旧債務償還をして行かなければならないという、そういうお考えであると思いますから、更に又質問しても無駄と思うのです。併し我々としてはそこに財源があるのに、なぜそれをやらないかということが我々了解が付かない。財源上引上げることはできないという理由にはならない。これは私が言うだけでなく、これは常識として、一般の常識としてそう思えないと思うのです。更にこの財源の問題として、この予算は、私は物価が、この予算を積算する場合に、物価が上る計算になつていると思うのです。大蔵大臣物価は横這いということになつていますが、少くとも食糧管理特別会計の予算を編成するとき、パリテイ指数、この間伺いましたが、昨年の九月から大体一割、一五四の指数が本年十月には一六八になるという数字ですが、大体一割上る計算になつている。これは大蔵委員会においても政府委員に伺つたんですが、予算を積算する場合にこのパリテイ指数も考慮に入れる、それから補給金を撤廃する場合のマル公価格を上げて行くということも考慮に入れる、いろいろ考慮に入れて算定したと、こういうことを言つているのです。そうなりますと、大体物価は一割くらい上る計算においてこの予算は編成されていると思うのです。その点はどういうふうになつているのですか、予算の積算の基礎……。
  124. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 米の生産価格は一応一六八として計算いたしましたので、生産価格は上りますが、全体のものにつきましては横這いと考えております。
  125. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 そこでおかしいのですが、生産価格を決めるときに、一六八の指数でパリテイ指数を決めるということは、農産物価格に比較して農家が買うところの生活必需品がそれだけ上るということなんです。農家の買う生活必需品が一割上るということは、これは物価が、いわゆる消費物価が上るということだと思うのです。ですからそのパリテイ指数で、積算の基礎にして予算を編成したとすれば、どうしてもそれだけから言つても、実際横這いだけでなく、少くとも一割上る計算になつておる、そういうふうに解釈しなくてはならないと思うのですが、この点はどうなんですか。
  126. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 補給金を出しておりまする肥料の影響が、米の生産価格に非常に影響いたしますので、米の生産価格に特に一割上ることを見たので、これは鉄鋼の分も米の生産価格に影響いたしますので、そういうふうに米の生産価格については上る、外の部分につきましては下る條件もありますので、全般的に見て動かないと見ておるのであります。
  127. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 どうもその点はつきりしないのですが、パリテイ指数というものは、肥料の値段が上ると言つても、それはやはりウエイトがあると思うのです。肥料の価格の値上りですから、外のウエイトを計算してもやはり肥料が上る、それだから全体の農家のパリテイ指数がそれだけ上るというふうに計算したらおかしいと思う。それだけではないと思うのです。ですから結局パリテイ指数の基礎になるのは、農家の買うところの生活費指数が上るということになる、そのパリテイ指数がこの予算積算の全部の基礎じやないと思うのですが、或いは安定帶物資についてマル公価格が上る、そういうことも考慮に入れて積算したと思うのですが、そうなると政府は横這い横這いと言つていますけれど、どうしてもこの予算の見積りには今後の物価の下落を考えないでも、積算の基礎としてどうしても私は一割物価が上つて来ている積算なんだ、特に昨年の九月を大体基準にしておるのですから、そうなりますと昨年九月から本年一杯の物価考えれば、先程大蔵大臣は大体下つて行くというお話ですが、最近幸いに実効価格も下りつつある、こういうお話なんです。そうしますと予算を編成するときに物価が横這いにならん、上る計算になつてつて予算を実行する場合には物価が下ることになる。従つてその間に物件費が相当節約ができる筈だと思うのです。その点はどういうふうにお考えになりますか。
  128. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) 木村さんにお諮りしますが、大蔵大臣は向うの方へおいでになるそうですが、もう直きに済みますか、保留いたしますか、どういたしますか。
  129. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 全国の中小商工業者が集まりまして大会を開いて、それの代表者でございますからね、五分や十分じやいかんかも知れません。
  130. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 それじやよろしゆうございます。又明日でもよろしゆうございます。
  131. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) では今日はこの程度において明日に保留いたしますか、どうです。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  132. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) じや今のお答えだけ……。
  133. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは見方の相違でございますが、農業パリテイには肥料も影響いたしましよう。鉄鋼も影響いたしますけれども、下り気味の纖維製品も影響があるのであります。而も又闇も影響しておるのであります。それで一六八かどうかという問題につきましては相当議論があると思いますが、私は米だけについて、価格からいつて一般物価が上るとは断定はできないと考えております。
  134. 山田佐一

    ○委員長(山田佐一君) じや本日はこれを以て散会いたします。    午後四時三十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            岩木 哲夫君            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            岡田 宗司君            羽生 三七君           池田宇右衞門君            石坂 豊一君            岡崎 真一君            小林米三郎君            團  伊能君            堀  末治君            小林 勝馬君           前之園喜一郎君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            佐伯卯四郎君            藤野 繁雄君            帆足  計君  国務大臣    大 蔵 大 臣    通商産業大臣  池田 勇人君    農 林 大 臣 森 幸太郎君  政府委員    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主税局長)  平田敬一郎君    大蔵事務官    (理財局長)  伊原  隆君    大蔵事務官    (主税局調査課    長)      忠  佐市君    通商産業事務官    (大臣官房長) 永山 時雄君