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1950-03-06 第7回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月六日(月曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十五年度一般会計予算内閣  送付) ○昭和二十五年度特別会計予算内閣  送付) ○昭和二十五年政府関係機関予算(内  閣送付)   —————————————
  2. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 只今から会議を開きます。  通告順によつて発言を許します。堀越君。
  3. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 私は、昭和二十五年度総合資金需給見込について安本の方から資料を頂いたのでありますが、その資料の御説明を願いたいと思うのでありますが、見込書の裏面に大体の説明は加えてあるようでありますけれども、もう一つ腑に落ちないところがありますので、御説明を願いたいと思いますが、その前に多少不審と思われる私の意見を附加えて置きまするで、それに対しての御説明を願えれば結構であると思います。これは安本事務当局の方から御説明願えればそれで結構だと思います。  第一表でありますが、資金供給金融機関預貯金という欄、三千四百億円となつております。昭和二十四年度実績見込が三千五百四十億円、むしろ減つておる形でありますが、昭和二十四年度預貯金実績は必ずしも本年それに似たものは望まれないのじやないか。昭和二十四年度においては相当いろいろな宣伝なり、或いはいろいろな事情によつて地方の人が自分の箪笥預金を預けたということがあり、相当な無理な預金があつて、三千五百四十億円という数字見込まれておると思いますが、大体出盡したと思われる節もあるので、本年度においては昨年の実績を見るということは、これは非常に危いのじやないか。現に我々がこの表を頂いた以前に、衆議院の方に提出されたと聞いているのには、それよりも少く、二千九百億円をお考えなつているようであります。つまり昨年の金融機関預貯金というものより更に下廻るということをやはり予想しておられるのじやないか。それが更に数字を変えて、殖やされたということは、何らかの意図があつて、実際の見込よりも水増しをして、一つの何らかの計画の下にその数字を殖やされたのじやないかということを私達は考えるのであります。その資金供給会計においても六千六百四十二億円となつておりますが、以前には、先に我々に示されない衆議院の方のでは五千七百八十七億となつていたようであります。その数字を何らかの意図の下に、昨年の実績を更に踏襲するように数字を殖やされたというような疑念を持つのであります。その疑念はどこから出て来るかと申しますと、第二表の設備資金において一、二、三のプラスしたものが一千八百六億円となつておる。これを殖やすために、設備資金を殖やすために第一表の方の数字を私は水増しされたと、こういう疑念を持つのであります。衆議院の方に示された、その後訂正されたかと思いますが、最初の案では、確か設備資金は千二百四十億円となつているように聞いておるのであります。その千二百四十億円を千八百六億円に増すために、第一表において非常に見込以上に、安本が実際に考えておられる以上にこの数字を膨らまされたものでないかという、こういう疑念を私達は持つのであります。  それから資金配分において最後に第四番目の産業資金の直接投資という、これも昨年より多少殖えております。昨年は株の投資などについて非常に宣伝をされて、非常に投資も多かつたようでありますが、株の暴落などから考えてその計数基礎というものは余り確実でない。むしろ私はこれは過大に見積つておられるのじやないかという疑念を相当もつのであります。これは私のみならず、この表を御覧になつた方も相当そういう考えをお持ちのようであります。その表の作成に当つて実際にその基礎を掴んでおられる安本事務当局の方から、こういう点も加えてこの需給見込についての詳細なる御説明を承わりたいと思うのであります。
  4. 西原直廉

    政府委員西原直廉君) それでは昭和二十五年度総合資金需給見込につきまして御説明を申上げたいと思います。  差出しました需給見込表について御説明を申上げますが、第一表に、昭和二十五年度総合資金需給見込というのがございます。この左の方の欄が資金供給見込額でございまして、右の方が資金配分見込額なつております。資金供給見込額は、金融機関預貯金が二十五年度見込は三千四百億ということになつておりまして、昭和二十四年度実績見込三千五百四十億に比較いたしますと、只今指摘ございました点に触れるわけでございますが、百四十億だけ少い数字なつているのでございます。昭和二十四年度実績見込は、この附録の表の第一表にございますように、大体三千五百三十八億になるものと考えられております。附録第一表を御覧頂きますと、第一表の1というところに、一般預金という数字がございます。これがこの本表の第一表の金融機関預貯金というのに当るわけでございまして、第四四半期までの合計として三千五百三十八億という数字なつておりますので、この数字を大体丸くいたしまして、三千五百四十億というのが実績見込である、このように考えたわけでございます。でこれは金融機関預貯金として、各銀行の預貯金なり、或いは郵便貯金なり、それ自体の数字でございますが、実際の預貯金純増と申しますか、実際の増加額は、この下の方に調整項目というのがございまして、この中に金融機関手許現金増という欄がございます。そうして三角の印が増加でございますが、この増を差引いて頂きました数字が、大体預貯金純増額に相当するということになるわけでございます。これによりますれば、昭和二十四年度実績見込は、三千五百四十億からこの下の金融機関手許現金増の五百四十億を差引きました三千億が、大体二十四年度預貯金純増額になる。こういうふうに見込まれております。又二十五年度は、三千四百億から三百億を引きました三千百億というのが預貯金純増額として大体見込まれる数字でございます。三千億に対して三千百億というのは、少し数字が大き過ぎるのではないだろうかというお話でございますが、そういう点は、現在の預貯金趨勢等から見まして、非常に御尤もな点でございまして、私共としてもいろいろと検討して見たのでございます。本年二十四年度に比較いたしまして二十五年度におきましては、或いは従来の箪笥預金というようなものもなくなるというような点も考えますれば、やはり預貯金は減るのではなかろうかというようも点も出て参るのでございますが、それと同時に二十五年度における財政基模と申しますか、税收入その他の点も考えますれば、その点においては預貯金の方に向けるべき資金の量というものが若干殖えるのじやなかろうかというふうに考えられるわけでございます。  先ず第一に税の関係もございますし、それ以外にも財政面からする民間への資金の還流、つまり公共事業費にいたしましても、また見返資金からの投融資額にいたしましても、その他工業関係建設資金のことを考えますと、二十四年度に比較いたしまして二十五年度資金は非常に殖えるわけでございます。又見返資金及び一般会計特別会計から大体二十四年度と同様に財政償還金が千二百億前後でございます。これがやはり廻り廻つて預貯金増加になるだろうというふうにも考えられるわけでございます。その他生産の状況考えて見ますると、二十四年度に比較しまして二十五年度は大体二割増加すると考えられております。また貿易の面におきましても輸入も若干殖え得るだろうと存じますし、また輸出の方はやはり二三割程度増加し得るというふうに見込み得るのでございまして、そういう面から考えまして二十五年度における預貯金は減る面もございまするが、殖える要因が相当ございますので大体二十四年度とほぼ同額程度ということに推定いたしまして差支ないのじやなかろうか、こういうふうに見込まれましたので三千四百億を預貯金増加額とし、そのうち手許現金の増が大体三百億ぐらいになるだろうというように見込みまして純増額として二十四年度実績見込の三千億とほぼ同額の三千百億という計数にいたしたわけでございます。  それからその次は金融機関資金でございますが、これは附録の第一表の1にございます。公金預金とか農林中央金庫に対する前渡金等でございまして、大体本年度と同様の実績になるだろうというので昭和二十四年度見込の五百五十億に対しまして昭和二十五年度もほぼ同額見込んだわけでございます。  第三番目に政府投融資でございますが、これにつきましては附録の第三表を御覧頂きますと内訳がございます。昭和二十四年度の七十九億の内訳国民金融公庫五億及びその更生資金五億、開拓者資金融通も十五億、船舶公団出資五十四億、この合計でございまして、二十五年度予算につきましては国民金融公庫出資が十二億、それの更生資金が五億、住宅金融が五十億、開拓者資金融通十三億、合計して八十億これを計上したわけでございます。第四は財政償還金でございます。ここに書いてございます財政償還金一般会計特別会計から日本銀行及び民間金融機関に対して償還されるもののみを計上したのでございます。これは附録の第四表をおあけ頂きますれば詳細内容が書いてございます。概略を申上げますと、二十四年度公債償還は三百四十六億でございますが、二十五年度におきましては公債償還が六百四十六億ということになつております。一般会計からは六百四十四億、特別会計からは一億二千万、こういう数字に相成つております。公債償還以外には借入金返済とか、或いは短期債償還でございます。借入金は二十四年度は二百九十億の返済ということになつておりまして、二十五年度におきましては約十四億の借入金返済というものが計上してございます。短期債は二十四年度は二十六億でございますが、二十五年度におきましてはここに何もそういう償還計画がございません。これが合計いたしまして二十四年度が六百六十二億、二十五年度が六百六十億という数字なつておりますが、これ以外に財政償還金といたしましては見返資金からの償還があるわけでございます。見返資金からの償還はその下の5の欄の見返資金というところの第二番目のところに債務償還というのがございます。ここに書いてございますが、これも只今説明申上げました附録の第四表の財政償還金額という中にございます。二十五年度は見返資金から五百億でございまして、二十四年度は六百二十五億ということになつております。この六百二十五億は復金債償還のために交付された交付公債償還に相当するわけでございます。  見返資金からの資金供給債務償還以外に、私企業及び公企業に対する投融資があるわけでありまして、二十四年度などは八百八十三億という数字に相成りまするし、又二十五年度におきましては千八十一億という数字に相成つておるわけでございます。これは両方とも見返資金予算額から債務償還額を差引きました大体残額に相当するわけでございます。二十四年度の見返資金予算額は千五百八億という数字に相成つておりますので、この六百二十五億を差引きます残額が八百八十三億になりますが、これが見返資金からの資金供給額ということに相成るわけでございます。同様に二十五年度見込といたしましても予算上千五百八十一億という数字なつておりますが、これから只今申上げました債務償還額五百億を差引きました千八十一億というものが見返資金からの投融資関係資金供給額というわけに相成るわけでございます。  次に直接投資でございますが、直接投資は二十四年度実績見込が千百十四億、二十五年度実績見込が千百三十五億ということに一応計算されております。この内訳は直ぐその紙の第二表の昭和二十五年度産業資金需給見込の中に若干書いてあるのでございます。需給見込の一、二、三というところに直接投資という欄がございます。この直接投資の欄の合計の欄を御覧頂きますと、二十四年度見込が千百十四億、二十五年度見込が千百三十五億というふうに相成つておるのであります。その内訳証券に対する直接投資が二十四年度が七百四億、二十五年度五百四十五億というふうに相成つております。そうして証券に対する直接投資株式社債とに分れるわけでございまして、株式が二十四年度は七百一億、二十五年五百三十五億というのでございます。社債は二十四年度三億で、二十五年度十億でございます。直接投資にはこの証券に対する直接の投資企業内部における社内留保がございますので、社内留保資金といたしましては二十四年度見込が大体四百十億でございまして、二十五年度見込は五百九十億という額になつておるのでございます。若干これについて実績の方を申上げますと、附録の第五表は二十四年度中の株式実績拂込の見込でございまして、これによりますれば十二月までは実績は出ておりますが、又一、二、三月も大体推定はできるわけでございますが、これによりますと二十四年度株式の拂込の見込は大体七百九十一億ということに決定しているわけでございます。それから株式発行によりまする手取資金使途別の調べがその下にございます。設備資金運転資金借入金返済というのもあるわけでございますが、設備資金が大体二十七%、運転資金がやはり二十七%近く、借入金返済に充当するものが四十六%ということになつております。株式以外の社債のつきましては、実際社債が出る金額はここの十億と三十億という数字ではございません。上のこのやはり第二表の昭和二十五年度産業資金需給見込の1の金融機関の欄の三つ目社債という欄がございます。大体この社債という欄、この社債と直接投資の中の社債、これを合計して頂きましたものが二十四年度及び二十五年度のそれぞれの社債発行見込ということになるわけでございまして、二十四年度におきましてはまあ二百八十三億程度社債発行できる。又二十五年度においては二十四年度よりも非常に社債発行はよくなることだろうというふうに考えられますので、大体五百十億程度というものをここに計上したわけでございます。で直接投資といたしましては大体社債金融機関によつて引受けられるような情勢でございますので、直接投資の分としてはこの附録の第七表にございますように、従来の社債発行総額に対する各個人の引受実績を見まして、これによつて出したわけでございます。  次は調整項目でございますが、先程御説明申上げましたように預貯金増加額といたしましては額面そのままの金額をここに計上してございます。ところがそれはさつき申上げましたようにまあウインド・ドレツシングと申しますか、いろいろな関係からどうしても預貯金増額伴つて或る程度金融機関現金が殖えるわけでありまして、その額をここに計上いたしまして、これを差引きまして預貯金純額を出すということにしまして、それが金融機関手許現金増調整項目としてここに掲げた理由でございますが、見返資金につきましては実は本年度予算において千五百八億の收入があるというように一応予算上計上したわけでございますが、この十二月までの貨物の輸入状況を見ますると、どうも百五十億前後の実際上の收入が入つて来ないということになるように考えられるのでありまして、従いまして見返資金からの資金供給額は千五百八億でなくて、むしろそれから百五十億円を差引きました千三百五十億円程度というものが実額になるだろうというふうに考えられますので、百五十億だけここに調整項目としてマイナス勘定を挙げたのでございます。更に債務償還につきましても財政償還金六百六十二億のうち、この表で先程ちよつて説明申上げました附録第四表を御覽頂きましてもはつきりいたしますかと思いますが、この財政償還金貿易会計等借入金返済相当額になるわけでございますが、どうも最近における貿易会計等の現状を見ますると、ここまで債務償還ができるかどうか若干疑問がございます。又債務償還をいたすにいたしましてもその他金融の方法によつてつけることによつて、更にこの債務償還を実行するかというような面もあるかと考えられますので、調整項目としては三百五十億程度をこの面において調整して行く方が適当ではなかろうか、このように考えて三百五十億というものをマイナス面として納めたわけでございます。その結果只今申上げましたところを合計いたしますと、資金供給は、昭和二十四年度における実績見込が、大体六千四百十三億ということになるわけであります。二十五年度の方は、見返資金においては二百三十八億というのが二十四年度からの繰越金になりますので、これを調整いたし、又債務償還につきましても、若干の調整が必要かというふうに考えられましたので、それを二百六億程度計上いたしまして、合計いたしまして二十五年度資金供給見込が六千六百四十二億というふうに考えたわけでございます。  次は資金配分の方でございますが、資金配分の第一は、地方公共団体に対する資金供給でありますが、大体二十四年度実績見込は、地方債発行及び若干の借入金見込みまして、三百四十億程度になるものと考えられます。これに対しまして二十五年度においては四百億前後というものの地方債発行及び借入金というものを考え得るのでなかろうかというふうに考えられますので、ここで四百億という数字を計上したわけであります。2の政府融資では、先程申上げました資金供給の欄の3の政府融資と見合う勘定でございます。3は見返資金公企業投資でございますが、二十四年度の二百七十億は、鉄道及び電気通信に対する投融資でございます。又二十五年度の四百億は、鉄道及び電気通信国有林野その他のものに対するものでございまして、予算に出ておりますように四百億円ということになつているわけであります。4は産業資金でございますが、産業資金の五千七百六十二億及び五千七百二十四億につきましては、第二表に内訳を書いてございますので、むしろ第二表によりまして或る程度説明申上げた方が便宜かとも思います。産業資金需給見込額といたしましては、二十四年度金融機関からの供給額が四千三百六十九億ということになつておりますが、そのうち貸出しが四千二十億、社債が二百八十億、株式が八十五億ということになつておるわけであります。二十五年度におきましては、金融機関からは貸出しの増が三千六百五十七億、社債が五百億、株式が七十億ということになつております。それから見返資金からは大体全部設備資金でございまして、二十四年度におきましては二百二十五億、大体供給額として二百五十億くらいになるだろうと思いますが、実際に出る金としては、二百二十五億程度ではなかろうかというふうに考えられますので、二百二十五億といたしました。二十五年度予算にございますように私企業投資が四百億という数字なつておりますが、この資金をここに掲げたのでございます。第三は直接投資でございますが、これはさつき申上げましたように、株式に対するものは七百一億、社債が三億、社内留保が四百十億という数字なつております。株式につきましては、さつき御指摘がありましたように、いろいろと最近の証券事情におきまして、いろいろな将来……現在と申しますか、二十四年度のような株式発行を期待し得るかどうかというのは非常に問題があるわけであります。従いまして大体さつき申上げましたと思いますが、株式発行見込額は、昭和二十四年度においては七百九十一億程度になるだろうというふうに考えておりますが、二十五年度におきましては大体六百億という数字考えておるわけであります。約二百億近い減少ということを考慮いたしております。で設備資金につきましてお話を伺いましたわけでございますが、設備資金につきましては大体需要見込が、はつきりまだいたしませんけれども、十表に掲げましたように、鉱業関係で百八十五億、金属工業で百十億、機械工業で百四十億、纖維工業で百億、化学工業で百五十億、窯業が十五億、電気が三百六十億、ガスが三十億、交通業が四百十億、農林水産業が二百億、その他百六億、合計して千八百六億程度需要があるというふうに計算しております。又供給面から考えますと、株式につきまして只今申上げましたように、大体約六百億、社債が五百億、社内留保資金も資産再評価等によりまして、来年度においては増加するというようなことを考え併せまして、産業資金供給額として五千七百六十二億、大体二十四年度と同様の額の供給が二十五年度においてもあるものと考慮いたしたわけであります。あと二十五年度運転資金につきましては、第九表に説明をつけてございます。簡單でございますが……。
  5. 堀越儀郎

    堀越儀郎君 先程、衆議院に提出された案と数字に変つている理由を御説明願いたい。設備資金においても千二百四十億となつているが、この本欄においては千八百六億となつております。非常な増加になりますので、そういう点についての疑念を晴して頂きたいと思います。
  6. 西原直廉

    政府委員西原直廉君) 経過的にはいろいろと数字を検討いたしておりまして、その過程において一々設備資金供給し得る見込額というものはそれ程多くないのじやなかろうかと検討いたしております。幸い金融機関に対する見返資金からの優先株の引受けということが認められましたので七百億程度という全起債が、来年度において発行し得るという見込が立ちました。片つ方設備資金に対する需要額は非常に多いのであります。両方見合せて設備資金関係では千八百億程度というものを供給いたしたのであります。そういうような関係その他からいたしまして、経過的にはいろいろと数字を検討いたしております。一時、六千億前後という数字考えたのでありますが、先程来御説明申上げましたような計算及び推定、想定に基きまして、ここに差上げましたように来年度見込としては六千六百四十二億という数字及び設備資金については千八百六億という数字結論としてなりました。
  7. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それではこの際本多国務大臣がお見えになりましてございますから通告順によつて発言を許します。
  8. 赤木正雄

    赤木正雄君 この前の国会人員整理に関連いたしまして、行政の一部が改まりました。併し根本行政機構は成るべく次の国会でお出し願うように我々は要望したのであります。恐らくこの国会根本行政機構をお出しになるかと予期していますが、今以てお出しになりませんが、この国会にお出しになるお考えありや否や。又行政制度審議会というのがありますからこの審議会の結果をお待ちにならない以上は大臣としての御構想はお持ちにならないのか。先ずこの三点からお伺いしたい。
  9. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) お尋ねになりました御趣旨の通り行政機構改革を是非やりたいと考えておるのでございますが、その心組を以て行政制度審議会にも御研究を願つておるのでございます。でき得ることならば、この議会に間に合せたいと考えておつたのでございますが、何分にも調査が複雑でありますし、根本的に考慮を頂いております関係から、もう近々のうちに結論出して頂ける情勢に来ておるとは存じますけれども、未だ御答申を頂くことができないのであります。政府といたしましても行政制度審議会結論を得た上で態度を、方針を決定してお諮りいたしたいと考えておりますので、只今のところは見通しといたしましてはこの議会に提案することは困難でございます。併しその御答申も大体の予想では今後一ケ月くらいのうちに答申して頂く考えでございますので、その御答申と更に政府研究とを総合いたしまして立案いたさなければなりませんので、この議会には困難かと存じますが、次の特別国会においては提案できようかと考えております。この行政機構改革について主管大臣として私が構想を持つておるかというお話でございますが、これは実はいろいろと概念的には考えを持つておるのでございます。併しこれを具体的に各省に嵌めて申上げますということはまだ政府方針が決定いたしておりませんので、できない段階にあるのでございます。抽象的に申上げますと今日の各省各庁間の行政事務の再配分という見地から根本改革をいたしたいと存じております。従つてこれに伴つて省の廃合等も勿論考慮されるものと考えておる次第でございます。
  10. 赤木正雄

    赤木正雄君 今大臣お話によりまして私はここでお尋ねしても或いは効果がないことになるかも知れません。けれども行政機構を最も急速に改める必要のある一、二の例を申して大臣に是非この問題を早く取扱つて貰いたい、このことから申上げます。例えて申しますと災害問題にいたしましても、運輸省では港湾関係から災害問題を取上げられる、又建設省でこれは海岸の部面からいわゆる海岸の災害を処理しております。初め運輸省でこれを処理した場合一つの港湾に対して相当多額の災害復旧費を認めていたのであります。ところがこれはむしろ建設省の所管すべきものである、こういう観点から建設省の方にそれが移つた。ところが建設省ではその災害復旧費に対して運輸省で査定したよりも遥かに少額の国費を出しております。こういう事例が方々にある。一つの港湾、一つの個所に起つた事柄、これを二つの省で所管しておるために非常にその間損をしておる。こういう事例のあることを先ず申上げます。それから水の問題にしても同じことです。先ず国土計画の必要のあることは今更申すまでもありません。併し根本的な国土計画がまだ立つていない今日の利水政策にしても治水政策にいたしましても殆んど目先だけの考えでやつております。ですから本当の利水も治水も起つてない。一つの水を農林省と建設省とめいめい勝手に取扱つて、水の方では迷惑千万である。その自然の水を両方で使つておるから本当のものが起つていない、そういう情勢なんです。私長年この問題をやかましく言つておりますが、何回国会が変つても一向この問題を根本的に考えておらないことはこれは大臣も御承知のことと思います。そのために同じ一つの費用、或いは場合によつては通産省の電力問題から、或いは農林省の方の利水問題から、或いは建設省の治水問題から同じ問題に対して三方から事務費を出しておる、或いは調査費を出しておる。こういう三重の馬鹿げたことをされておる。一つの例がそういうふうでありますから、これを一日も早く改めて頂きたい。先程申しましたように、今やつておる仕事は全部目先の、本当の根本の仕事をやらないで目先ばかりの仕事をやつておる。でありますからこの際根本的の国土計画を立てない以上は何にもできない。それがためには行政機構根本的に改めないでは何もできない。こういう実情にありますから、この国家再建という観点からしても、一日も早くこの行政機構根本的に改めて下さるように、特にお願いします。のみならず、これに対して今までいろいろな関心もあります。恐らく大臣の耳にはいろいろなことをお聞きになり、又手許にもいろいろなことを言つて来ておると思います。でありますが、又行政制度審議会の方でもこれは多くの人を集められていろいろと研究されたと思いますが、併しややもすると、本当の自然を無視して人為的にやつておりますからして、いわゆる自然を大原則とし、そうしない以上は、人為的でやつたものは本当のことが行えないのでありますからして、僅か些細のことに囚われないで、根本的に一日も早くこの行政機構を改めるようにお願いいたします。  尚、具体的なことは、いろいろありますが、その機構の問題が出た場合に質問することにして、今日はこれは保留いたします。
  11. 山田佐一

    委員長山田佐一君) よろしうございますか。  次にやはり通告順によりまして、伊達君に発言を許します。伊達君。
  12. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 私は本多国務大臣に新聞の用紙統制撤廃の問題でお尋ねしたいと思います。政府は新聞の用紙統制撤廃を非常に急いでおられるようであります。併しこれは時宜を得ませんと大変困つた事態を惹き起すのであります。私共、新聞は統制されるようなことなく、極めて自由であつて、そうしてその自由の下によき新聞を作るということでなければならないと思いまして、統制撤廃ということには異議のあるものではありません。ただその時期であります。新聞用紙の生産力が新聞の需要に伴いませんときに撤廃いたしますと、ここに資本新聞の用紙買占め等によつて値段は上ります。中小新聞は紙を得る方法がなくなり、ここに混乱を起しまして、新聞組織全体に非常に困つた影響を及ぼすのであります。政府は紙がないときに、紙が足りないときに、無理に撤廃を断行しようとする意図を示しておられますことは、今年の一月から用紙統制撤廃を断行しようとされたのでありますけれども、その筋のO・Kが得られないために、延び延びになつておつて、そうして前の稻垣通産大臣は、四月にはどうしてもやると言つておられました。今度新らしく通産大臣になられた池田さんは、四月はどうも、むずかしいと言つておられます。青木安本長官は適当な機会にできるだけ早くという、えらい分らんことを言つておられます。その適当な機会、適当な條件が備わるということはいつのことであるか。政府はどういう見通しを持つておられるか。成るべく早い時期と言われるが、成るべく早い時期をどこに見ておられるか。私はこの点を本多国務大臣に第一の質問としてお尋ねしたいのであります。
  13. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) 新聞用紙の統制割当の撤廃の及ぼす影響につきましては、お話のような点は特に注意しなければならんところであると考えております。実はお話の通り、昨年暮あたり、この統制紙と自由の紙の値段が殆んど接近いたしました際に、これは統制を撤廃する機会ではないかという考えで、実は関係方面とも今後の見通しについて話合つて見たのでございますが、丁度その後夕刊が発行せられることになりまして、自由紙の方が相当逼迫し、価格も騰貴いたして参つております。併し今日の実情から考えますと、配給を全然していない夕刊が日に四百万枚も自由紙を以て発行されている状態でありますから、私の所管いたしております新聞用紙の割当という事務も、余り権威を高めることができない実情にあるのであります。こうした関係にありますけれども、併し今直ちに撤廃をすることはどうであるか、更に自由紙の値段も騰貴するような傾向もなしとしないと考えられます。更に地方紙におきましても、企業的に相当大きな影響を受ける面も考慮しなければならんと考えております。こうした点から、この渇水期を過ぎて、紙の増産等の進行状況と睨み合せて、将来の見通しを立て、確信の持てるところで撤廃すベきであると考えております。併し大体の状況といたしましては、只今申上げました通り、配給以外の紙で四百万枚の毎日夕刊が出ている状況でありますから、私の所管におきましても、誠にやりにくい事情なつておるのでございます。
  14. 山田佐一

    委員長山田佐一君) よろしうございますか。伊達君。
  15. 伊達源一郎

    ○伊達源一郎君 お話はよく分りましてございますが、見通しの、つまり適当な時期というものをいつ頃に考えておいでになるかということがお尋ねしたいのであります。私共の要求しますところ、考えますところは、資本新聞も買占めをする必要がなく、中小新聞も自由に紙が得られるという段階が、この統制を解くべきときだろうと思います。そのときに至らないで、統制を解きますと、先刻から申上げる混乱状態が起ると思いますが、大臣はやつぱりそういう時期をお考えでしようか。適当なる時期というものをどういう條件を以て考えておいでになりますか。それをお伺いしたいと思います。
  16. 本多市郎

    国務大臣本多市郎君) 割当廃止の時期につきまして、何月が適当であるという時期を切つて申上げることはできませんけれども、その時期はお話のような心配のない時期を、確信を以て捉えなければならないと思つております。  只今申上げましたような事情でありますので、今日のところでは、この配給の紙以外で夕刊を四百万枚も出して行かなければならんという実状に大新聞がありますので、是非ともこれから先の紙を確保しなければならんというので、特に紙の買占めということも行われるのではないかと思いますけれども、統制が撤廃されましたあとは、それぞれ今割当をいたしておりまする新聞用の紙の大増産等を見込まれますので、そうしたことがどういう結果になるかということも勘案いたしまして、適当な時期を掴まえなければならんと思つております。
  17. 山田佐一

    委員長山田佐一君) よろしうございますか。  この際お諮りいたします。午後は労働大臣及び厚生大臣がお見えになりまするから皆さんの御出席を願います。御質疑の方は成るべく委員長の手許まで御通告をお願いいたします。  この際休憩いたしまして午後一時半から開会いたしたいと思いますが、如何ですか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それでは午後一時半まで休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩    —————・—————    午後二時七分開会
  19. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 休憩に引続きまして只今から会議を開きます。先ず労働大臣に対する質疑を開始いたします。通告順によつて発言を許可いたします。田村文吉君。
  20. 田村文吉

    ○田村文吉君 簡單な問題から一つお尋ねしたいと思います。今まではインフレの時代でありましたので、各種のこの科料ではないか、延滞金というようなものが一日二十銭というようなものを取つておられる。例えば労災保にいたしましても、失業保險にいたしましてもそういうふうになつておりますが、今度所得税の改正によりまして、所得税の方では今まで二十銭のものを四銭に下げるというようなことに案が出ております。この労災保と失業保險の審議の場合に、特に私からその点が非常に苛酷であるということを申上げて、当時御注意を喚起いたしたのでありますが、現在では二十銭になつておるのであります。これは当然今度の国会に御修正なさる、修正案をお出しになる意図大臣お持ちになつておりますかどうか。現在の実際の状況から申しますと、非常にこの滞納が多いのであります。で税金に痛めつけられたり、或いは財界の悲境に遭遇いたしております関係上、業者としてはなかなか失業保險料と災保が困難な事情にあるのであります。早急これは改正されなければならないと考えております。  それが一つと、もう一つ実際の税金攻勢等で中小企業関係、大工場でも同じでありますが、現在そういう延滞金の莫大な金額が非常に困つて事実拂えないという状況下にありますので、善意の人と、よく拂つた人とそうでない人と差別がつくようでありまして、この保險金の性質がそういう性質のものでありますので、実際のお計らいは多分に心配をされていると考えておりますけれども、実際どういうふうになつておりますか。又それに対してはどういうお考えで御処置なさる方針か。これを先ずお伺いいたしたいと思います。
  21. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 只今御質問にありました労災保險の件でありますが、一面において田村委員の御指摘の通りであります。失業保險の方は極めて経理が健全に強力に推移しておりますけれども、労災保險の方は田村委員の御指摘のように、相当困難な面も出て来ることは事実でございます。併しながら私共の根本的な考えといたしましては、経営者の方達にも可なりお苦しいところがあり、特に只今指摘のような二月、三月というような時期におきましては、一層他の條件からして苦しい点があるということも重々お察しするのでありますけれども、労働省といたしましては、何と申しましてもこれは経営者の立場は構わないという意味では毛頭ございません。私も国務大臣の一人でございますからして、そういう意味の全体の政策というものも併せて考えることは勿論でございますけれども、労働行政の基本は何と申しましても労働者諸君の立場を守る、それからそういう方面からの労働生産性を維持向上させるという点にあるのでございまして、労災保險は経理の方面におきましては、失業保險のように健全とは言い得ない推移を辿つておりますけれども、その実際に挙げておるところの効果という点に至りましては、労働者諸君からも非常に感謝され、又同時に安んじて毎日の仕事をやつて行けるという点につきまして、今日まで敢て労働省関係ではなく、各方面でやつたところの社会保障的な一つの方法の中で実際的には最もいい意味の効果を挙げておる保險制度だと考えて、私共はこれを将来も充実して行こうという考え根本でございます。それで御質問の中心でありますところの点につきましてお答えいたしまするけれども、二月、三月というふうな苦しい時期における経営者の方達の苦しい立場はよくお察しいたすのでございますけれども、労災補償は今申しましたような関係で以ていわゆる社会保障の中でも別扱いで以てこれは扱われておるのでございまして、労働省といたしましては、次の国会、次の国会というふうな将来の問題については別でありますけれども、現在においては御指摘のような処置をとつてこれに応じて行くという考え方を以ておらないし、その準備をも進めておらないのでありまして、今の方式で尚この制度は運営して参りたいと考えております。
  22. 田村文吉

    ○田村文吉君 只今の御答弁では、今の組織のままでというお話ですが、私の問題を簡單なのでありまして、日歩二十銭というような非常に高い延滞金をお取りになつたのじや、ますます納められない。こういうことになりますというと、運用の面でもお困りになるだろうし、何故高い二十銭の延滞金を取るかということを先ず御質問申上げます。この制度が改正になりましてから、所得税の加算税が二十銭になつておるから、それに対して二十銭ということは高いのではないというような御答弁があつたのでありますが、私はこの加算税が四銭なりに減るということで法律案になつておりますが、当然労働関係の立法にも、実際に非常に困難な状況にある保險金の納付者の立場もお考えになりまして、そういうふうにお直しになるのが言われなくても当然なことだろうぐらいに考えていたのでありますが、それについて大臣は全然お考えはないか、する意思はないとこうおつしやるのでありますか。
  23. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) これは高い延滞金を置けばそれが怖くて早く納めるだろう、こういうような冷酷な考え方を以て臨んでおるわけでございませんし、従つて田村委員の今おつしやいましたように、むしろその点は軽減して納めよくした上で、延滞した者もどんどん納めよくした方がよいのじやないかという考え方も十分成り立つと思います。将来に亘つては十分検討いたしたいと存じますけれども、今のところ今国会に臨むに当りまして、私共は現在の労災保險の独自の立場から言つて、現状のままで以てこの問題はやつて行くという方針をとつたわけでございます。
  24. 田村文吉

    ○田村文吉君 今の問題は労働大臣の御答弁で明瞭になりましたから、これは或いは国会へ提出いたしますとか……労働大臣がそういうことを全然お考えなつてないので、私は非常に不満でありますが、尚今後の措置をとるべきであると私は考えております。  次に労働大臣には大変お気に入らんことを申上げる次第でありますが、先般来天下の問題と相成つておりまする裁定に関する問題でありまして、この公共企業体労働関係法ができ上つたのは一昨年の十二月でございましたが、当時鈴木労働大臣は政務次官をおやりになつておつた。それで私共は公共企業体の審議をいたしまして、この法案が施行されるように相成つた次第であります。そこで今日非常に問題に相成つておりまする日本鉄道の裁定、今度問題になつておりまする專売公社の裁定……私共はいろいろの政府考え方、種々の事情によつて公務員の給料は直したくない、直したくないから従つて影響を及ぼすであろうところの国鉄の裁定も、衆参両院の意見が違つたのを以て承認とならざりしものとして不承認という形をとりました。今度專売公社の問題につきましても、恐らくは同じ径路をおとりになろうと私は考えておりますが、われわれはそういう政府のお苦しい御事情もさることでありまするが、この法律を作つて、そうしてその法律の趣旨が果してどういう趣旨であるかということを、今日はもう議論するまでもなくはつきりと私共は感得いたしておるのでありまするので、恐らくはそれに対しても労働大臣も同じお考えではないかと思うのであります。先般労政局長さんがお書きになつた著書の問題が問題に相成つたのでありまするが、恐らくは労政局長ならずとも、あの当時の次官か或いは大臣がお書きになつたとしても、やはり同じことをお書きになつただろうということは私共も常識ではつきりと判断をしておるのであります。そこで苦衷は苦衷、苦しいことはお苦しいだろうが、かりそめにもあの頃の労働立法に携わつて説明をして、そうして今日法律になつたものを運用なさる労働大臣としましては、どうも私は徳義的に許されない点があり、又納得の行かない、良心の許さない点をお考えなつていらつしやるのではないか。こういうような諸般の状況で困難であるという場合に、それを作つて又運用しておる労働大臣としては、徳義的に非常な責任をお感じになるべきではないか。言い換えれば職を賭してもこの問題のためにはあなたとしてはお鬪いになり、飽くまでも法律というものを立派に運用し遂げるという御決心があるのじやないかと私は考えるのであります。私はすべての大臣がそうであるとは申しませんが、この法律はまだまだ生々しい作つたばかりの法律でございまして、我々もその審議をした点から考えますと、私共自身も非常に責任の重大なことに実は痛感しておるのであります。法律上いろいろな解釈も出ましよう。こういう点については公判ではつきりいたすこともございましようが、私共はそういう細かい点を言うのではありませんが、こういう常識的にはつきりした、而も自分の御良心に咎めるところはないかという問題は、我々の常識で十分判断できるのでありまするので、労働大臣としてはこの点についてどういうふうにお考えなつておりますか。誠にお厭なことをお伺いするようでありますけれども、この点についての御所信を承わりたいと思います。
  25. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 田村さんに皮肉を言うわけではありませんけれども、今の御質問、別に厭な質問とも何とも思つておりません。当然私に対しておありの質問だと思つております。ただこれは、私は細かい法規的な問題になりましたならば、法律の素人でございますからして、或いは言い間違いがあるかも知れませんけれども、そんなことに拘泥せずに端的に自分の考えだけを申上げますからして、そういう意味でお聽き願いたいと思いますが、この間も参議院の本会議で門屋議員からあの法律を作つたところの趣旨というものについて、冐頭にその前提があつて、それから二つ、三つの質問をされたのでありますが、そのときにお答えした通り、法律を作つたところの趣旨というものについては、門屋議員、従つて又多くの議員の方達と同じでございます。私もそう考えておりましたし、今でもそう考えておりますということを前提としてお答えしたわけであります。ただ取扱の問題になりまするというと、現在も問題になつておるところの仲裁委員会、三十五條によつて示されておる強制権を持つたところの仲裁委員会というものの強力性という原則については、一応も二応も私もそう考えますけれども、併しこれは十六條を盾にとるわけでもございませんけれども、明らかに不可能の場合が出て来る。その場合の措置を如何にすべきかということは十六條で以て示されておるのでありまして、端的に結論を申上げますというと、裁定をいつでも呑まなければ公労法を蹂躙したものである、公労法の立法の趣旨に副わないものであるというふうには、私共は最初も考えておらなかつたし、今も考えておらないのでございます。ということをお答えした通りでありますので、考え方からするところの法的の手続、裁判所の判決に対して政府がどういう方針で行くかというふうなことは、すでに官房長官等から、或いは法務総裁等から意見の開陳があつた筈でございます。私共は法的には、これを極く平面的に読みましても、立法の趣旨からいたしましても、全部これはいつでも呑まなければならないかというと、呑めない場合があるだろうということを予想しておつて、そうしてそのときの措置も同じ法律の中に示されておるのでありまするからして、そのときの情勢に従つて呑む場合もあり、或いは一部呑む場合、それから全然呑めない場合もあるということ自体は、公営法の趣旨を没却したものでもなければ、或いは又それを蹂躙したものでもないと考えております。併しながら衷心からの希望を申しまするならば、この際においてできるだけ多く、大巾にその裁定を実現することができたならば、ということは、労働大臣としては勿論でありまするけれども、これは外の大臣と雖も必ずしも最初から蹴ることを前提として措置して来たということはないと思うのでございまして、それに対して幾多の検討、接衝、努力をいたしましたが、諸般の情勢といいまするよりは……諸般の情勢と言うとこれは公労法の解釈の違いになるかも知れませんけれども、不可能ということが現実に明らかとなつておる今日においては、これは不可能として国会の意思に問うより外止むを得ない状態になつておりますけれども、私共の一面における考え方といたしましては、只今田村委員から御指摘のあつたような趣旨を以てあの法律は立てられておるのであつて、今後もできるだけ諸條件を出して、可能な分を多くして、全部が可能ならば勿論いいでありましようけれども、裁定自体は国会の承認を得られないという意思を決定したときに、法律論としては債権債務を発生せずしてと、私共は考えておりますけれども、一方において二項、三項、四項というような方は、これは不可能というものではなくして、概念的には拘束力を持つて、将来に亘つて団体交渉等によつてそれを具体化して、そうして実際的に可能付けるという余地が残されて、この裁定は残つているものと考えております。従つて、話が御質問の点より少し横へ外れるかも知れませんけれども、現在諸般の情勢上不可能なものはどうしても不可能でありますので、止むを得ないといたしまして、今の交渉制度、これは国鉄の方にも專売の方にも重要な裁定の一項目として挙げられているのでありますけれども、これを諸般の関係の許す範囲において、できるだけ広義に解釈して、新らしい公共企業体になつたが故に、公務員と違つて相当特殊の性格を持たせ得るということは、私は可能と考えておりますので、そういう形において、この裁定の意思というものをできる限り大巾に生かして行く、将来に亘つて生かして行くという方法をとりたいと思つておりますし、現在においての可能の線はそこだと思つております。尚将来に互つて申しますならば、公共企業体は明らかに公務員とは違うものでありまして、公共企業体自身の性格と経理と成績とに応じて、これらの問題を、将来に互つては広い巾を持つて片附けて行き得るような形に、何しろ出発以来まだ一ケ年足らずでありますけれども、そういうふうに持つて行くべきであり、盡くに国会に持つて来て、公労法の解釈を挿し挾んで、計画をするということは下の下でありまして、そこに一つの巾を持つて行き得るところの運営の方針考えて行くということによつて、公労法立法の本当の趣旨を生かし得る方法が将来に亘つて拡げられると存じております。未経験の一回、二回だけに、なかなかうまく行かなくてお互いに苦労しましたけれども、どうぞ直ちにそれを以て公労法が駄目だとか、公労法を蹂躙したとかいう結論にまで直ちに持つて行かずに、私共も渾身そういう方法を以て公労法を生かすように努力しますから、国会においてもそういう点で御協力と御指導をお願いしたいと考えます。
  26. 田村文吉

    ○田村文吉君 余り私はこの問題について理窟ばつたことは申したくなかつたのであります。今お言葉の中の、国会へ持ち込むことが下の下であるということは同感であります。その下の下のところまで持つて来なければならなくなつたこの点については、特に私は労働大臣から考えて頂くべきことじやないか、こう私は考えるのであります。第一、この公共企業体に移して、すべての紛議を仲裁によつて解決しようと、これは非常に高い精神から出たものでありまして、私はしばしばその討論においても申上げておりまように、日本の国内においてあらゆる紛議鬪争というふうなことをなくしたい。でき得るならば一般労働争議もすべて仲裁によつて、そのことが少し経営者側に不利であり、或いは労働者側に不利であつても、その仲裁によつて争議にならないならば、今日のような国歩艱難の場合に、国を再建するに足る、こういうような広い精神を織込まれた公共企業体労働関係法規でありまして、そこに仲裁の制度というものが設けられた。然るに第一番目に出ました裁定に、何のかんのと理窟を付けて皆拂わない、これを履行しないということになりますると、何の信あつて労働大臣は今後の労働行政がやつて行けるか、こう言いたい。それは法律的の理窟からいつたら予算上できないことはできないのだ、こういうふうに一言にいわれますが、すでに国家は予算を作りまして、予算の審議を経て、それの実行に移つておるのでありますから、莫大な予備費というものを用意しない限りにおいては、そういう費用というものが臨時に殖えます場合に、賄う方法はないと一遍に言つてしまえばそれきりであります。ところが過去のいろいろの場合を、労働大臣も御承知の通りでありますが、ないないと言つておるところから手品をしてどこからか金が出て来る、これが必要であり、裁定によつてどうしても拂わなければならんということになれば、大蔵大臣はどこからでもその金は出せる筈であります。それは我々過去において幾度か経験しておるのでありまして、別に新奇のことを申上げるわけではない、そうすると国が予算上拂えないということはこれは言い逃れである。その源は公務員の給社等全部が上ることになつては困るということから、そういう意図から、今のような仲裁を忌避なさるような態度に出たものと私は考える。さようなことで今後労働行政大臣おやりになつていらつしやるということを言われても、信を天下に失つては、これはできんのであります。その点私は余り理窟を申すのではありませんが、労働大臣としては、十分にこの点についての御深慮が要るのではないかと考えます。敢えて私は答弁を要求しません。答弁を要求しませんが、これは今日のような誠に国歩艱難の時代においては、廟堂に立つ政治家は、余程その点についての責任を明らかにして、初めて天下に向つて進めるのであります。若し名を法律に藉り、名を一片の理窟に藉りて、若しそれを免れることがありましては、これは国の責任が立ちません。そういう点を私憂慮いたしますので、甚だ苦言を呈する次第でありますけれども、お互いにそういうことについては考えて、責任を取るべきときではないか、こういうふうに考えますので申上げたのでありますが、敢えて私は労働大臣のこれに対する答弁を伺わなくて結構であります。これで私の質問を打切ります。
  27. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 次の通告者岩間正男君の発言を許します。
  28. 岩間正男

    ○岩間正男君 予算の審議が非常にこちらの方では本格的にならないようでありますが、先ず多い中で、労働問題というような、労働問題を論ずるのは、どうかと思われるのでありますが、併し非常に問題が多岐に亘りますから、今日は全部を盡すということにはならないかも知れませんが、今当面した問題について質問にいたしたいと思います。  只今田村委員からお話のありました国鉄裁定の問題、專売裁定の問題、これについては全然我々は政府考え方と所見を異にするのであります。むしろ政府の現在取つておる態度はもう法的な違反であり、更に公社というものが新らしく昨年度から発足した精神に、根本的にこれは違反するものであるというふうに考えられます。現在公社は一応政府から建前としては分離しておるという形になつておるのであります。併しながら実際は経済的に同じ基盤の上に立つておる。そこに公社の二重性格がある。その二重性格が政府によつて巧みに使われておるのです。そうして今日のような問題を起しておるということを、我々はここではつきり言い切らなければならないのであります。併しこの論議を私はここで改めてやろうと思いません。これは別な機会にやりたいと思うのであります。ただこのような吉田内閣の労働政策によつて現在起つておるところの問題、まあこれを集約して言いますと、低賃金の政策、更にこれと連環して低米価の政策、こういうようなものがどのような影響を與えて、そうしてそれが将来に対してどういうような大きな崩壊を導くかというような点については、率直に労相の答弁を求めたいと思います。過般給與白書が出されたのでありますが、この給與白書の中でいろいろ言われておる條件というものについて挙げませんが、やはりあの給與白書で一番意図されておることを考えますというと、若しも人事院の勧告通りに政府が実施するというと、つまり七千八百円ベースを実施するというと、約六百億の予算が要る、そういうことをやると非常にこれは国民に対して負担が来る。運賃の引上げ、郵便料金の引上げ、或いは税金の引上げ、それをやるか、若しくは公務員に対して又再び整理をしなくちやならん、つまり大量の首切りを以てやらなければ、こういうような状態を免かれることはできない、こういうような点を非常に強調しておるのであります。この問題がいわゆる物価と賃金との悪循環と言つて、吉田内閣が今まで賃金問題に対して説明するときに、盾としてとつて来たところの態度でありますが、この態度を、一体こういうような説明のし方で今日の現状を本当によく説明することができるかどうか、これは最近池田暴言によつて問題になつておりますところの中小企業との問題、中小企業の全面的の崩壊の問題、この問題と一体労働問題というものは関連がないのであるか、我々においてはこれは実に深い関係があるということを言わざるを得ない。何故ならば、中小企業の今日の不況に立ち至つたところの一番基本的な原因は何であるかといいますと、これは国内におけるところの購買力が低下したという問題でありますが、有効需要が非常に減退したという問題、これが何といつて根本問題であります。金融の問題とか、重税の問題が更に輪をかけておりますけれども、やはり基本的に言いますならば、この政府の低賃金政策というものに大きく影響されておると思います。従つてこの給與白書で政府説明しておるように、物価と賃金の悪循環、更に又消費インフレが起るというような説明によつてい、殆んど現実の事態を説明することはできないのじやないか、こういうふうに考えるのでありますが、労働大臣はやはりこういうような実情に対しまして、あくまでも賃金と物価の悪循環論というものを建前とされて、今日の事態を処理されんとするかどうか、この点まず第一に伺いたいと思います。
  29. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 低賃金政策ということを岩間委員は言葉で言われましたけれども、現在の内閣が低賃金で行こうという基本的の政策を確立しておるかどうかという問題は別であります。私共は、少し時間をかけて御説明申上げますけれども、そうではなくして、賃金を安定せしめて、そうして実質的にいわゆる実質賃金、これは前からしばしば言つておる通りでありますが、それの充実、それから向上させるという考え方のうちにこそ経済の安定もあり、それから労働者諸君をも無論引つ括めたところの全体の生活の向上というものがあると窮極においては、その方向をとらなければいけないんだという考えの下に終始しておるのであります。従つて只今お挙げになりました公務員の給與を地方、中央を通じ、それから外郭的なものまで上げて行くと、何百億かの給與が余計に支拂われて、そうして物価との間に又悪循環を惹き起すという説明は成る程大蔵大臣も、或いは安本長官も本会議その他で以てしたのであります。私も聞いておりました。岩間さんと同じように何らの悪循環を惹き起さないのみでなく、むしろそれによつて有効需要を喚起することによつて、生産が引上げられバランスがとれて来ると、この考え方そのことは直ちに私は賛成いたしませんけれども、私が聞いておつたところでも成る程大蔵大臣も、安本長官もそういうことを一つの、例えばこれこれの支障がある、例えばこれこれの差支えがあると幾つか挙げて、そのケースの中の一つとして、今の説明もしたということを私も聞いておりましたけれども、それのみをたつた一つの根拠として、今政府のとつておるところの給與問題の説明に当てたでもなければ、その根拠としておるところでもないと思います。ただそれだけでありましたならば、極めて私は消極的であり、政府といたしましても、この難局を乘り切る政府といたしましても余りにも消極的な政策に過ぎないし、御質問に対しても消極的な説明に過ぎないと思います。一つのそういう傾向があるということは、私は大蔵大臣と共に認めますけれども、それが一切の給與の問題を解決して行く、方向付ける全部の基本であるとは考えておりません。  その基本は一体何であるかと言いますると、先刻も申しましたようにここで安定線を引く、確立する、そのことがなくしては、賃金について申しますれば、名目賃金を従来と同じように引上げて行く。それから物価であつてもそういう方を繰返して行つたならば上つて来るでしよう。幾ら上るかというふうな計数的の問題は一応拔きといたしまして、上つて来るでしよう。そういう方向の中にはすでに戰後数年、三年以上、我々は歩んで来た経験から徴して艱難を解決する方向はない。どうしても今ここで以て申上げました方向で、新しい日本再建のレールを敷かなければならないという考え方が内閣の基本なんでありまして、賃金の問題もそういつた観点から実質的の物価と、それからそれらの平均をとつた一つの安定線を確立すさという上に立つての物価政策であり、賃金政策なのであります。そういう意味で以て現在……。それからもう一つは差当つて財政予算の、はつきり申しますれば、ドツジ氏の布かれた予算との関係等もございます。それらの関係上、今公務員の皆さんの賃金のベース自体を変更するということは不可能であり、不適当でもあるという結論に立つておるのでありまして、御指摘のような悪循環云々という問題、それもあると思います。ないとは私は思いませんけれども、何も五百億、六百億というという金が出て行く場合に、唯單に有効需要として、生産と消費のバランスを合わせる面にのみ役立つて、弊害は一つも起きて来ないだろうということは私は申しませんけれども、併しながらその問題は賃金給與の全部的な基本的な問題でなくして、むしろ安定という観念が政府考え方の根本でありますと、こうお答え申上げるより外はないと思います。
  30. 岩間正男

    ○岩間正男君 只今の御答弁、靜かに冷靜に聽いて、今議論された問題でももう一遍聞き直すということになれば、非常に曖昧、どうも分らないどうも……。私の聞いたのは、物価と賃金の悪循環論を、これは労相も支持されるかどうかという問題でありますけれども、それに対しまして、どうもそれを支持するのかしないのか分らない。幾らか影響がないどもないし、併しはつきりそれだけではない。蔵相の答弁の中においては、蔵相は單にこのことだけをですね、大きな原因として、そうして賃金を上げないと言つたのじやないか。こういうことを言つて更に安定論というようなことを言われております。併しどうも甚だ曖昧だという感じを免れない。併し今安定論をここでやつても仕方がないのでありますが、安定論、安定論といつて、それに逃げ込もうとするが、これは一体何が安定しているかというと、一体この低賃金のために、労働者がいろいろな……、どういうふうな生活実体を持つているか。これは労相が一番よく知つておられるのであつて、中小企業の問題が一番問題になりましたけれども、併しそ根本には労働者の生計の破壊の問題がある。これは最近の失業者が国内に溢れている姿をあなたは一番よく知つておられるのであります。職業安定所で最近どんな問題が起つておるか。八王子や世田ケ谷や澁谷で起つておるのは何か。これらを御覧になつたか。一体安定しておるとはどこが安定しておるのか。上層部で安定しておるのであつて、雲の上のことで、実際の日本のことではない。こういうような観点に立つてあなたの説明である安定論という煙幕を張られても、我々は絶対に承服することができないのであります。私は今のお話しから……。私の聞きたいのは、池田蔵相が賃金を上げない原因とされたものはいろいろあると言われておりますけれども、一番大きなものは賃金を上げると物価が上がる。そこに悪循環が起る。これが大半、今まで繰り返された一番重要な理由だというふうに我々は聞いておるし、恐らくそうだろうと思うのでありますが、その外にどういうような点を挙げられたか、一番それは労相が説明されれば明らかなんであります。この点について先ず伺いたい。どういう点を挙げられたか。
  31. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 一々同僚の答弁を全部聞いておつたわけじやありませんから、それはちよつと無理な御質問だと思いますけれども、併し私が今挙げたより基本的な安定論に至つては、これはもう随所で以て、予算説明の当初から基本をなして来た説明であつて、それで以てこの説明は繰り返されておると思います。
  32. 岩間正男

    ○岩間正男君 私も労相をそんなに無理なところに追い込むような気持はないのでありますが、併し池田蔵相の説明された一番中心は、やはり今の点だと思うのであります。  それから低賃金政策の問題でありますが、この低賃金政策でないということ、これは低賃金政策かどうかというようなことを言われたのでありますが、これもまあ本当の今の実情を見れば、これは問題にならない議論ではないかと思います。例を挙げなくても、日本の今の労働賃金が低賃金でないということば一体言えるかどうか。これは一番簡單な例を挙げるとすれば、例えば棉工業において例を取りますと、そうすると原料百に対しまして、日本の労働賃金は二八・九ということになります。これに対しまして、例えばアメリカの場合は原棉  一〇〇に対しまして一〇四、イギリスの場合は一四二という、こういうような労働賃金の指数が出ておるのですけれども、これでも労相は日本の労働者の賃金は低賃金でないということをおつしやるかどうか。この点を承わりたい。
  33. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 無謀な戰をして大敗戰をした日本と、それからアメリカその他と直ちに比較するということは、周囲の諸條件の上からこれは無理だと思います。だから低賃金のままで、低賃金といいますか、今のままでいいという結論出しておるのではありません。程度のことですが、私はさつき実質賃金を高めるべきであるという根本的の考え方を申上げましたが、実質賃金は或る程度高まつて来ておる。併し戰前に比べれば相当低い。だからこれを高めるべき努力は今後も、ぐんぐんやらなければならんということは言わなくても明らかだと、そういう意味であります。  それから低賃金であるかどうか。つまりアメリカと比較して低いかどうかということは、今比較するのは意味を持つておらんと思います。私は現内閣と雖も、低賃金を以て政策の根本として行こうという、そういう立案の下には立つておるのではございませんということを申し上げたのであります。
  34. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の労相の答弁は、そのままやはり吉田内閣の性格を現わしておると思います。敗けた日本の現状ではやはり労働者のこういうような状態は止むを得ない。これは一応どこにも通用するようでありますが、非常にこれは皮相な見解であります。むしろ問題は戰争に狩り出したところの経済的な原因は何であるか、この点を深く追求することによつてこの問題が逆になるのではないか、むしろ敗けた日本が新たに本当に正しい平和国家を建設して立ち上るという、そういうことのためには、その経済的な基礎が確立されなくちやならない。それでどうしても労働者の生活を、勤労階級の生活を本当に安定させる、そして食うに足るだけの賃金を確立するということは、これはポツダム宣言の命令するところでもあり、それからそれを確立するかどうかというところに、日本の平和の将来がかかつておるとはつきりこういうことができる。そういう点から考えるときに、敗けた日本は止むを得ないから、それで労働者の賃金も今の状態で忍ばなくちやならない、こういうような議論というものは私はこれは非常におかしな議論じやないかというふうに思うのです。  そこで私はお聞きしたいのでありますが、一体この日本の低賃金ですね、この低賃金と、それから日本の過去の侵略戰争というものはこれは深い関係にある。この点は私くどく申上げる必要もないと思う。これは低米価と低賃金の二つの挺子が日本の大衆を締めて、そして一方で日本の独占資本が大きくこれを收奪した。国内市場が狹隘になつて、有効需要が非常に減つて、止むを得ずダンピングせざるを得ないというところに追込まれたのがこれが帝国主義侵略戰争の大きな原因である。従つてそのような低賃金の政策を断切るかどうかというところに、実は日本の平和か戰争かという大きな将来の運命がかかつておる。これを私ははつきり断定せざるを得ないのであります。そういう点から考えて現在採つておるところのこの政府の政策の中で以て、果してそういうふうなものが確立できるかどうか、これはさつき質問いたしましたが、現在実に国内に失業者が溢れておる。そうして只今自殺者とか、それから親子心中とかそういうことが頻々として起つておる。例えば横浜におけるところの最近の例を取りますと、或る日に六十八人も自殺者があつた。これは二十分間に一人ずつ死亡者があつたことになる。こういうような姿さえ今日出ておる。こういうようなことが再び戰争を招来する大きな原因だというふうに考えるのでありますが、この点に対して一体政府はどういう見解を持たれるか、この点を聞きたいのです。
  35. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) くどいようでありますけれども、もう一度だけさつきのことを申上げて置きます。敗けたんだから食えないのは当り前だ、それで止むを得ないという答弁は絶対にしたわけではないのであります。アメリカと比較されて、敗れた日本の賃金の考え方を直ちに今のアメリカと比較するのは無理があるというだけのことでありまして、敗れた国の労働者諸君と雖も国力の許す限り充実した生活を図る権利もあり、又その方向に持つて行かなければならないという考え方におきましては岩間さんと毛頭違うところはない筈なのであります。この点は明確にもう一度お答えして置きます。  それから戰争の原因、この問題は共産党の方達が、近頃あらゆる角度からこの問題に一つの公式として角度を合わして言つて来られる問題で、非常に各方面に関係のある大きな問題ではございますけれども、短い時間のうちに戰争論を手際よくまとめてお答えするということはなかなかできませんので、同僚の閣僚等もあらゆる機会において敢てこの問題をはさんでなくても、例えば講和問題、或いはその他のいろいろな問題で、公式論として共産党から提起されておる、その都度に私の同僚、私もですけれども十分お答えした。そういうことを総合して現内閣の答えとしてお考えを頂きたいと思います。余りに今ここで取上げるには問題が大き過ぎるのであります。ただ戰争を起さないための賃金政策という問題につきましての御質問でありましたならば、相当重要な関係があると思います。結論といたしましては、私共はそうであるならば、私共の唱えるところの消費物資の分量を多くしてそうして価格を引下げて、そうして実質賃金を充実向上せしめて行くという、とに角可能なこの方向を強力に辿る必要があればある程、あると確信しているのでありまして、その方向を今の内閣全体として取つているのであります。若し賃金を戰争回避のための、賃金政策という場合には共産党はどういう賃金政策を掲げられるか知りませんけれども、一方には生産が行詰り、一方には国家の財政が成立たないような、そういう枠の中におけるところの徒らな名目賃金の引上ということのみを以てしては、公式論的に戰争が回避できると割切ることはできないと私共は考えておるのであります。
  36. 岩間正男

    ○岩間正男君 ここで広汎な議論を展開しても時間がかかると思うのでありますが、それなら吉田内閣は一体労働者を食わせるという政策を建てているか聞いた方が早いかと思います。とに角現在のやり方において実質賃金を上げると、この点だけ言われて、一も二も実質賃金、実質賃金と言われるのでありますが、一体現在の労働政策の中で労働者の生活を向上させる方向を取つているかどうか実際向上しつつあるかどうか、こういう点について改めてお聞きしたいと思います。
  37. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 日本全体の多難な再建途上の中において必らずしも敢えて労働者諸君といわず、すべて楽なコースを辿つておる、そういうふうに楽観的な結論をつけておりませんし又考えておりません。併しながら私共の言うところの実質賃金の考え方は、すでにしばしば申上げました通りに、一方においては減税その他によつて負担を軽減して行く。それから一方においては消費物資の質並びに量という方面において格段の力を入れて行く。それから従来の配給的な価格及びそれから生まれて来るところの特異の闇価格というものの跳梁する面を圧縮して行つて、正常な自由価格に切替えて行く。その過程において併せて価格の下落をも庶幾することができる、これらの考え方が実質賃金論の根本であります。一つ一つの事例をとつて参りまするというと、幾多の議論は見る角度によつて議論がおありでしよう。それから又大きな政策が一挙に一月、半月で以て実を結ぶとも楽観をしておりませんけれども、この方向が最近において最終的の消費物資というものがどういうふうな形で以て市場に出廻つておるか、その価格が実際上つておるか下つておるかというような問題、それから近く国会に現れて来て御審議を願うところのあの減税案というもの、これも現段階において一挙に国民の各層が又労働者諸君が拍手喝采して頂けるような、そんな減税が一挙にできるというまでのものではありませんけれども、併し與えられた條件の中でもつて政府が誠意をもつてどれだけその実質的な減税について努力したかという問題、これだけでも大きな問題でありますけれども、近くその審議が行われると思います。そういつたものも仔細に吟味して頂きたいのであります。そういたしますれば、私の先程から申しましたところの実質賃金、ただ徒らに物価等を引上げるような、或いは又闇物資の跳梁に委ねるというような、形の中における賃金政策よりは、遥かに実質的に充実したところの賃金というものを期待することができるという情勢が一歩々々進んでいるということは肯けることと私共は考えているのであります。
  38. 岩間正男

    ○岩間正男君 それは政府説明の範囲を出ないと思うのです。今例えば今度の予算の大きな項目を見れば分りますが、例えば千二百億に余るところの債務償還によつて金融資本を非常に強化させるような方策を取つてつて、そうして一方においてこれと関連して、非常に労働者の生活というものは、賃金は抑えつけられる。それから今減税のお話がありましたが、これはどこの国のことかと言いたいくらい。直接国税だけの問題、この問題そのものも仔細に検討すれば明らかであります。ここで仔細に亘つて申上げませんが、更にこれに対する地方税の負担、これを考えるときに実は非常に大きな重税になる。更に問題なのは国民の生活水準が今どこにあるかというところがこれは何といつたつて問題。最近殊に農民なんかの間に起つておる報獎物資をも取る力がなくなつて来ておる。こういうような滯貨が非常に殖えて来ておる。こういうような面、それから私が上げたところの失業者が溢れておる。これは後で詳しく失業者の問題は入りたいと思うのですが、こういうような現状を労働相が、本当に掴んでおられるのかどうか、現実にそういうところにタツチしておられるのかどうか。單に説明のように実質賃金、実質賃金というようなことが言われたにしても、とても現状のこういうような苦しいところを本当に説明しておるとは言えない。ところが一方において、二、三日前から国会共闘の諸君が首相官邸にあのような一つの運動が始まつているのであります。こういうような一体実情をあなたの説明で切拔け得ると考えておられるのかどうか。そのことが非常に滑稽なことに類すると考えられる。これはいろいろな細かい資料について申上げているときりがありませんから、その点は省きたいと思いますけれども、とにかく單に労働相として、もう一つはつきりここで考えて貰いたいのは、一体労働者の問題を労働省だけの……労働者の生活を何とか保護するとか、そういつた対策だけの問題として取上げておつたんでは、これはやはり非常に問題が小さくなると思うんです。如何に労働者の低賃金それからベースの釘付というものが大きな動搖を国民の他の方面に與えておるか。この点が非常に大きな問題であつて、これを一環として掴んで大きく打出すということが、労働対策としても今日においては必要になつておると考えられます。戰争直後の状態において農民は割にまあ小春日和のような状態で、米の、実際闇相場が高いとか、そういうようなことで、そういうような関係があつて経済的な條件は比較的よかつた。併し労働者は終戰後において御承知のように、ああいうような工業の大破壞によりましてこれは非常に苦しいところに落されておる。ここに大きなギヤツプがあつたわけでありますが、それに対して吉田第一次内閣以来ですね、これはそこに楔を打込むように如何にも労働者の賃金を上げる、その上げることが国民の負担を増加することである。農民も困るんだ、中小商工業も困るんだということを強調して来たんです。併し今日ではこんなばかげた説明を信用する者はないと思います。例えば中小企業の問題が先程も話したようにこんなに深刻化したという原因は、はつきりとこれは労働者の購買力が非常に低下した。そうして赤字が非常に殖えておる。一人月々二千円、三千円というような赤字が出ている。或いは一戸当り二万円にも余る赤字を持つておるという、こういうような苦しい、そうして購買力の減少と、こういうような生活状態がはつきりですね、今の中小企業なんかをここに落したということが身を以て体験されたと思う。だから吉田内閣がどんなに終戰後の或る特殊な状態、そういう状態の間に、中小企業や農民と労働者とを切離すために放つたところの説明というものは、如何に意味をなさんかということは明らかである。農民もそう考えております。農民が、如何に低い賃金が、如何に低いところの米価と深い関係があるか。低米価と低賃金ということは切つても切離すことができない関連がある。こういうことをはつきり掴んだと思うのであります。こういう点からしますと、どうしてももつと総合的に労働政策、そうして賃金の問題の持つておる意味というものは非常に深いものであり、国民の経済に與える意味の広さをはつきり把握して、今後の情勢に処する必要がある、こういうふうに考えるのであります。  そこでもう一つ聽きたいのでありますが、この低賃金の問題ですが、日本の低賃金が一体世界の経済界においてどういうふうにこれは扱われておるか。これに対してどういうふうな反響があるか。これは非常に、例えばさつき挙げました民業の場合でありますけれども、これは低賃金政策というものは現在世界の嫌われものである。メイド・イン・ジヤパンが復活するということは、再び過去の日本の復活を見るということで、非常に大きな脅威を外の国の企業に與えておる。こういう実情が出ておるのでありますけれども、こういうようなものに対して、吉田内閣は一体どういうふうなこれは態度を持たれるか。この点を聽きたいと思います。
  39. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) いろいろ御意見がありましたけれども、一番終いの対外関係におけるいわゆるソシアル・ダンピングの譏りを免れないという、従来からあつた御議論だつたと思います。その点につきましては毛頭反対はないのでありまして、その点は大いに警戒しなければならんと吉田内閣もそう考えておりますし、第一終戰後日本の労働規準法等ができ上りまして、労働條件を維持する、一面においては経営者側では、あの当時の混乱した経済界においてはやや苦しくはないかと思われるような諸條件をも克服して、規準法を強硬に実施して来たというような点、それから賃金の問題についても、細目の点につきましては岩間さんたちと大分その立場も視覚の角度も変つておるように拜聽いたしましたけれども、全体としてソシアル・ダンピングというふうなことは、現に過去の実情に徴しても、これを戒めるべきであるという考え方に至つては何ら変るところはありません。私たちもそう思つております。ただ現実の賃金自体の問題になりますというと、拜聽しておつて私たちと立場が違うと申上げるより仕方がない点もあるようでありますが、ソシアル・ダンピングの点は以上のようであります。
  40. 岩間正男

    ○岩間正男君 ソシアル・ダンピングに反対されるという態度は確認していいようですが、反対される労相がですね、今の賃金政策に対して賛成だと、こう言われておるのですか。これは止むを得ない。それからそういうものに陷らないというように考えておられるのですか。その点をお聽きしたい。
  41. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) ソシアル・ダンピングを警戒するその裏付としては、賃金自体を実質的に充実して行かなければならないという考え方になつて来るのでありまして、その考え方の凡そアウト・ラインというものは先程から申上げておる通りであります。
  42. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、これは実質賃金、実質賃金の線だけをどこまでもこう説明されて、それが一つ覚えのようにいつでも繰返されておるのでありますが、今のベースは実質賃金を以てしてはソシアル・ダンピングを引起すということが現実に起つていない。こういうふうにおつしやるのですか。その点もう一度……。
  43. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 日本の終戰後歩み来つた中に、特殊の事情はあるかも知れませんけれども、全体として敗戰日本としてはよくその問題をも乘切つておる。これは吉田内閣だけではありません。前内閣の労働政策をくるめてよくこの中を乘切つて来たと考えております。
  44. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう中途な説明なんでありますが、これは事実はどうですか、事実は非常にそういう傾向が最近助長されて、そうせざるを得ない原因が非常に経済的に出ておる。ここで例えば簡單な一、二の例を挙げて見れば、最近における貿易の状態を見れば、これははつきりするのじやないか、そういうふうに思われます。非常に貿易がこれは政府計画通りにいつていない。吉田内閣貿易政策が最近その通り進行していない。これは外貨予算が非常に少ない。ドル予算もポンドの予算も少い、こういうようなところから来ておる、従つて最初本年度立てられた計画、そういうような計画を果すだけの実行予算が足りないために実施がされていない、こういう措置がはつきり出ておると思うのであります。例えば輸入において十億ドル、それから輸出において六億ドル。ところがその十億ドルを果すためにも予算外貨が非常に不足しておつて、六億七千万円というようなスタート時代の予算であつては、とても話にならん。どうしてもこれをやるためには一億か二億二千万ドルはどうしても必要だ、外貨予算が非常に不足なために輸入が十分できない。当然最初の計画通りの輸出をやつて行く。そういうふうになれば、そこにどうしてもこれはダンピングというような方法で以て貿易をやらざるを得ない。そうして輸出をやつて外貨を作る、こういうような方法を取るより他にないというところに追い込まれておる。そうして又昨年からのドツジ・ラインによるところの集中生産の方向がはつきり出て来ておる。あらゆる面でそういうような方向に政策が転換されておる。その結果が現在のような低賃金となり、又首切りとなる。それから一方においてこれは中小企業に対するところの資材も融資もやらないという方向にはつきりこれは線が出て来ておるのでありますが、そういう点から考えて今の低賃金とソシヤル・ダンピングに関係がない、こういうふうに労相は言い切られますか、その点もう少し説明して貰いたい。
  45. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) これは逃げるわけではありませんけれども、外資手当、その他の專門的な数字及びテクニツク等を加えたところの貿易政策というものに対しましては、どうぞ別の機会に專門の方から聽いて頂きたいと存じます。私も何とかつくろつて岩間さんにお答えする程度のことは閣議で聽いておりますけれども、他に專任の分つた人がおるのでありますからして、責任もその方で取る人がおりますからしてその方で聽いて頂きたいと思います。  ただ貿易の問題は昨年も中途においてジグザグのコースを通つて、これでは貿易は殆んど駄目になつてしまうのじやないか、お前の方は……話がちよつと横道にそれますが、四十万の雇用を、これは貿易を含めたところのものでありますが、国民経済の中で失業対策の一環として労相は考えておるけれども、とてもそんなものは出て来ないのじやないかという批評が八月、九月から痛烈に行われた。十一月、十二月になると尻上りになつて取戻された。そのまま三月まで行けば結構だつたが、又いろいろな條件が出て来た、こういうようなジグザグな條件は今のむずかしい而も変転極まりない国際情勢の中では出て来るだろうと思います。併し全体として昨年二十四年度に予定した線を著しく割つてしまつて、どうにもこうにも計画が立たないというような推移は全体として辿つておりません。そういうことが言えると思います。これも話が横にそれますが、四十万の雇用は後で或いは岩間さんあたりから失業問題の御質問が出るかも知れませんけれども、一方においては離職者はあつたが、四十万の雇用、これは敢えて貿易とは言わないが、貿易の方もひつ括めたところの四十万の雇用がないということの結論はつかない、明かにあつたと結論がつく推移を辿つておるのであります。勿論悪い方面だけを総合的に集約して来ればいろいろな説明はつくと思いますけれども、貿易の全体はそういうふうに考えて頂きたいと思います。  それから貿易の滯貨があるということも事実であります。併しながらこれを明確なるソシヤル・ダンピングの形で処理するのだということは政府はまだそういうことは言つたことはない筈であります。国内の需要関係で或いはいろいろな方法は考えておるのでありましようけれども、それを直ちにソシヤル・ダンピングで以て処理してしまうという考え方は、それは国際的に成立つ筈はありませんし、政府もそんなことは言つた筈はないと思います。
  46. 岩間正男

    ○岩間正男君 私の質問に対する明確な答弁がなかつたのでありますが、その点は一つ労相も單に労働問題というようなものが、そんなに又広汎な関連を持つものだという観点からもう少しこの点に注意されて頂きたいと思います。現在の取られておるところの政策は、昔のいわゆる日本の帝国主義華やかなりし時代のソシヤル・ダンピングの形では行われていないでありましよう。別の形をとつております。併しその本質においては全くそれと同じような傾向が最近強化されておる。そういうような強化を前提としてのいろいろな産業の切り替え、それから一方におけるところの低賃金、賃金の釘付け、それから失業者のそれに伴うところの氾濫、更にそれと関連しまして、国内需要の非常な低下、それによる中小企業の崩壞的な事実、一方において又農村恐慌が非常に顯然と現われて来た。こういう一連の関連、そうしてこういうような抽象的な説明では、こんなのでは言葉が足りないのであつて、実態が……、この院内の赤絨氈の外では何が起つておるかということを、もう少し掴めばはつきりこの問題は片附くと思います。併しこの問題にいつまでも拘わつておると堂々廻りでありますから、もう少し労相は失業問題の点について突き詰めて見れば問題が闡明されると思うのであります。  失業者の問題に入ります。失業者の数でありますが、これは政府は全国で四、五十万というふうに発表されたと思うのであります。これは現在中小企業の崩壞とか、それからその後進められた金融の非常な梗塞とか、更に農村におけるところの不況、こういうようなものの結果、最近失業者がどういうふうに増大しつつあるか、この問題は全国にどれだけというような漠然としたものだけでは足りませんので、できたら各府県で一体どれくらいあるか、全国でこれくらいある、それを各府県別に分ければ一体どれくらいあるか、そういうような統計は少くとも労働省にはできてあるだろうと思います。まだできていないとすればそういうものをはつきり作つて、その実態の上に起たない労働政策というものはあり得ないから、これは是非示して貰いたいと思いますが、この点如何ですか。
  47. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 各府県毎の詳細な資料云々、これは当該課長も来ておりますから、その方から出して貰いますけれども、今岩間さんの言われたような明確な府県別の数字というようなものはないと思つております。私から概括的にお答えしておいて、そうしていずれにせよ、やや詳細に当該の局長或いは課長から説明して貰うことにしますし、労働省にあります資料はお渡するようにしたいと思います。私の方が先廻りしてお答えするようになるかも知れませんけれども、起つた序に、失業者の数の問題が必らず出るだろうと思いますから、局長、課長にお答えして貰う前に私の方から説明の節約上大体の考え方を申上げます。岩間さん達の方では、一千万或いは二千万という数を挙げられるかも知れませんが、私達はそういう数字は信頼しておりません。衆議院でも共産党の方々がそういう数字を挙げておりますけれども、これは観点が違います。私達はそういう考え方は分らないと申したのであります。それから今日本にどれだけの、これは全国の問題でありますが、どれだけの失業者がいるかという問題、これは実に実態の掴みようがないのでありまして、例えば全国的の調査などを始めましても、集計されるまでには数ケ月かかる間に、もう実態はどんどん変つてしまうというような数字でありまするから、今日本で捕まえ得るところの二つの形と言いまするか、明確にする一つは総理府の統計であります。それによりまするというと、四十万前後の、純粹の、狭義の中の、極く狭義の失業者というものが、四十万前後という数字が出ていることはしばしば申上げた通りであります。併しこれはお答えしておきますが、そのときの不完全就業者というものは、例えば昨年の五月を例に引きますと、四百二、三十万はあつたわけであります。そのうちに今の、狭義の失業者、例えば現にその調査のときまでに一週間、調査の直前一週間、一時間も働いておらない、同時にその一週間の間に必ず安定所を通じてなり、或いは知人を通じてなり、就職運動をしたことがある。こういうような枠をかけてそうしてその枠の中に入つた人達が、これも推定であります。この調査をした。それが四十万前後と、こうなつているのでありまするからして、極端に言えば八日前に就職運動をした人ではこの枠に入らない、二時間働いた人も、五時間働いた人も入らないという結果になるのでありまして、この四十万前後という数に註釈をつけて考えるべきものだと思つております。併しそれは不完全就業者、四百二十万の中の最低のところにそういう人達がいる。それから今度は二百万以上は、三十五時間以上働いている場合の不完全就業者で、不完全失業者じやなくて不完全就業者であります。三十五時間以上働いて、併し生活をもう少し充実したいからもう少し余計働きたいという希望の人が、この四百二十万の中で二百万以上いるのであります。これは成る程失業とも考えられるかもしれませんけれども、むしろ生活充実の問題であると考えて至当ではないかと、解釈の問題でありますが考えております。それをそういうふうに考えると、あと二百万前後が残る、而もその中には、四十万という狭義の枠をかけて考えたところの、表れて来たところの失業者がある。あとの百五、六十万は一体どうなるのか、これは三十五時間以下働いている。それから段階的に一時間きり働いておらないというふうにいくつか分けられると思う。これは一体不完全失業者と見るべきか、それとも、もう失業者と見るべきかという解釈は経済界の推移によつて、例えば十九時間以上三十五時間まで働いたという人達が、どんどん下の方に降りて来ることもありましようし、経済が立ち直つて来るときには、三十五時間以上働いておるという層の中に入つて行く人達もあります。これはいわゆる変動するところの層、と同時にこの頃には今の完全失業者、嚴重な枠をかけて、事実上は完全失業者という人達も入つて来るというふうに考えなければならない。併し実態の明確な数字は掴めない、内訳は大体そうなつている。もう一度繰返して申しますというと、当時四百二、三十万の不完全就業者があり、半分は不完全就業者と雖も、言わば形の上で、生活充実の問題であると考えられ、それから残りの二百万ぐらいの下の方は完全失業者であり、真中の方はときに完全失業者に転落する可能性が十分あり、ときに上の方に上つて行く可能性がある者併せて二百万ぐらい、これが内閣の総理府の統計が示す。それにコメントをつけて考えたところの解釈なのであります。それ以上この統計に絶対性を持つたところの分析は今のところはないのであります。これと労働省の職業安定所に現れて来るところの趨勢、これを見まするというと、その月々に労働省の職業安定所に就職の斡施を申し込んで来て置いて、そうしてできなかつたという人たちの数字というものは、実際相当数で以て多く現れておる。これはそれを全部失業者と言い得るかどうかと申しまするというと、あつちこつちに口をかけて置いて、いつか知らんうちに就業しておつたという人たちもありまするし、又全然一週間働いておらないのではない、相当働いておる。いろいろの人たちがありますから、その数をただ失業者ということはできませんけれども、その数は今の内閣の統計局に現われた今の完全失業者よりも相当多くなる。これらを先ず総合して、私たちはやはり明確な数字、府県毎にどれだけある。何月にはどれだけあつて、何月にはどれだけあつたという数字は正直のところ掴まえられません。併しこれを目あてに考えるときに、百万乃至二百万の失業者と言いまするか、離職者及び追加労働希望者に対するところの措置というものを、予算的にも政策的にも失業対策全体として組合てて置く必要があり、多々益々便ずであるけれども、そこまでして置けば一応次の機会まで持つことができるという考え方の上に、つまりこの前申上げたように、これは失業保險制度の援用をも含んで、新らしい雇用等をも含めまして、二百万人ちよつとぐらいの吸收計画というものを、この二十五年度予算の各方面に、この労働省予算だけではありません、公共企業全般を通じまして、労働省の予算を通じましてそれが組立てられて、そうして挿入しておりますということを、すでに衆議院で御説明申上げた通りであります。私たちの失業者に対する数の凡その見通しはそうでありまして、それに対応するところの対策の組み立て方というものは、大体そういうふうに考えておるわけであります。尚御質問がありましたならば、もつと詳細にこれは相当具体的に一々実数を挙げて安本計画、大蔵省の数字等と照し合して、二百万前後の吸收力というものはあるのかということを、これは具体的に労働者の失業者の数の各府県毎の把握と違いまして、申上げることができるということを一応お答して置きます。尚詳細は政府委員より説明いたします。
  48. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の四十万というのはいつ現在ですか。
  49. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 労働省の失業対策課長であります。只今大臣からお話がありましたうち、総理府の労働力調査の数字を申上げますと、これは毎月出ておりますが……。
  50. 岩間正男

    ○岩間正男君 今の四十万というのは。
  51. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 十二月のは一番最近の数字でございます。総理府の労働力調査の、今大臣の申された狭義の意味の失業者の数は、二十四年度十二月は三十四万人になつております。それから大臣の申されました安定所の全国の公共職業安定所の申込就職の数字を申上げますと、昨年の十二月は求職者が八十八万七千人、就職が二十万六千人、概算しますと、差引きまして、約七十万人足らずの者が未就職ということになつておりますが、これらの数字は月々の数字も分つております。又安定所の窓口の数字につきましては各府県別の、或いは各安定所別の数字もございます。
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 最近の統計を貰えば判るのですが、増加の傾向にあるのかどうか、これはどうですか。
  53. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 増加の傾向にございます。総理府の労働力調査の数字は一長一短で、例えば昨年の一月、二十四年の一月は三十一万人、それから二月が四十六万人、それから三月四月と三十八万人、四十三万人、四十四万人というように増減いたしておりますが、安定所の受付けました数は漸増いたしております。例えば本年の六月におきましては、先程の八十八万七千人に対応する数字が五十五万八千人でございます。それから就職者は十三万四千人でございますが、それが八月には七十八万五千人になり、九月には八十三万七千人になり、十月には八十五万一千人、十一月には八十六万八千人というように、昨年度の当初に比べますと、年末になるに従つて増加をいたしております。
  54. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうも委員もいなくなつて変になつたのですが、今のお話聞いていなかつたのですが、増加の方向ですね、増加の傾向にあるということはさつきお話がありましたね、ちよつとお聞きしていなかつたのですが……それで、今の労働省の統計の問題ですが、この統計の取り方が非常に問題になつて来るのじやないかと思います。つまり労働省では、職業安定所ですね、その職安を通じて、そういうふうな機構だけで通られているだけでありますが、果してこれが実態に合つているかどうか、この点が非常に大きな問題になつている。と言いますのは、第一に登録制の問題ですが、登録をしよう、こういうようなことで離職者が登録をする場合には、民生委員の証明が要る、ところが民生委員の証明書がなかなか認められない。最近においてはなかなか就職がうまく行かない、自由労働者なんかもあぶれることなどが続いていると、関係している民生委員がなかなかこれを書かない、いろいろな條件をそこに與えている。例えば家内の中で一人でもちよつとでも仕事をやつている者があるというと、これに対して証明書をくれない。そこが一つ大きな難関になつているのであります。従つてこれは登録に出掛けない、さて愈々民生委員の証明を貰つて、それから職安に出掛けるというのでありますが、なかなかそれが登録がむずかしい、又登録するまでの手続き、それから離職者にとつては非常に負担になるところの交通費の問題、こういうようなことで、單に窓口だけで覗いて、失業者の実態を掴んでいない、こういう実情が出ていると思うのでありますが、こういう点については、これはどういうふうな対策を以て正確なる数を掴まえんと努力されておるか、これはどうですか。
  55. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 概括論だけ私からお答えして、民生委員との関係は課長から御説明いたします。  御説の通りであります。職業安定所に現れ、そうしてこれは前月からずつと帶になつて流れて来るのでありますから、毎月七十万も出るわけじやありません。それは岩間さんも御了解頂けると思いますが、その七十万という数字を今課長が挙げましたが、それが失業者の殆んど全部であり、そうしてそれに対して対策をすればいいのだというふうに、労働省としても考えておりません。先程申しましたように、内閣の統計局の極めて嚴重な篩をかけたのも、これは実際と必ずしも合うとは言えませんし、それから安定所の方は、これは実際の数字であります七十万という、数字全部が安定所に来るわけでもありませんからして、日本における失業者がそれでいいのだという結論は下しておりませんし、同時にその七十万の中には、実際に就職している人々、大部分三十時間働いて追加労働に相当する人もあるでしよう。けれどもその詳細は分りません。そういうような諸要素を睨み合して、昨年の九月四百二十万と実績を申上げましたのですが、その方をも考慮して、結局明確なる失業者の数は七十万、八十万というどころではない。或いはこれは百万も超えるだろうけれども、それでは二百七十万とか、二百八十万とか、それは押えられない。今の統計では、いろいろな意味の追加労働希望者の裾の方をも加えて、そうして七十万という自体が、最終的な、結論的な失業者の数とは言えないという前提に立つて、そうして二百万人の吸收計画を立てたと、さつき申上げたのであります。尚その他の細かい点につきましては課長からお答えいたします。
  56. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 安定所の登録の問題でありますが、ちよつと誤解があると思いますから説明いたして置きたいと思います。職業安定法によりまして、安定所は求職の申込みがありましたならば、これは受付けなければならないことになつております。受付けと申しますのは、安定所の仕事が適職の紹介、斡旋でありまするから、本人の身体の状況、職業の経験、能力、家庭の事情、そういうような事柄もいろいろ詳しく調べなければならないわけであります。求職の申込みに対するそういうような職業紹介のためのいろいろな職業相談と申しますか、そういうような事項はいろいろやつておるのであります。でお話の点は恐らく現在労働省でやつております、各地方でやつております失業対策事業に対する就労の希望者の問題であろうと思います。この就労希望者に対しましては、先程当然そのものが失業者であるかどうか、又その事業に適当と認められるかどうかというような事柄には、民生委員その他と照会をしなければなりませんし、又仕事の内容と本人の適合がうまく行くかというようなことにつきましては相談しなければならない。これは当然そうしなければならないのでありまして、求職の受付けの部門と、それに暫くそれによりまして紹介ができません場合におきまして、現在各地方でやつております失業対策事業に果して就職せしめるのが適当であるのかどうかというような点につきまして、本人の身上を調査して、民生委員と連絡するのが東京都の現状であります。そういうことになつております。
  57. 岩間正男

    ○岩間正男君 この民生委員の仕事が非常に最近系統化された、そういうことのために私は一方非常に強化されているのが実情ではないか、従つてどうも民生委員の権限が拡大され、非常にボス化しておる。そういうことのために、実際失業者の苦しい人達の要求がそのまま通らないというような現実が非常に多くあるというように考えられるのでありますが、この点についてはこれは十分対策が立つておるのかどうか、それからここでお聞きしたいのですが、これはまあ東京都の場合はつきり出たのですが、一軒から二人以上就労させない。それとか、それから女の人は成るたけ遠慮させるとか、そのために一軒から二人出させないために米穀通帳を持つて来させるとか、こういうような手段が行われておるのでありますが、これはどうなんですか。二人以上就職させないというようなことは職安定に対して正しい施行じやないと思いますが、何か労働省はこれに対してそういうような通牒でも出されるのか、或いは何かそういうような命令でも出されておるのかこの点を伺います。
  58. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 民生委員との連絡につきまして、尚具体的にどういうような連絡をするとか、或いは不当な調査をするというようなことがございませんように、今後東京都の方と連絡いたしてみたいと思います。それから先程申しましように、一軒で一人の者とか、或いは女子はいけないとかいうようなことにつきましては、これは職業紹介の面では勿論ございません。職業紹介につきましては本人の能力に応じて適職を斡旋する建前でございますから、職業紹介につきましてはそういうような取扱いはいたしておりません。併し失業対策事業の就労の場合におきましては、我々の方といたしまして、できるだけ多数の世帶に失業対策事業のものを就労させたいという趣旨からいたしまして、主たる家庭の担当者を優先的に対策事業には就労斡旋するというようにはいたしております。但し女子について、女だからいけないという取扱いは絶対いたしておりません。
  59. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると今の御答弁を聞いておりますというと、政府のつまり失業対策というものが、如何に不完全なものだということが出て来るのじやないか。つまり一軒から二人のそういう失業の希望者があるが、それを十分收容することができない。そういうことのために、何かそういうような一つの労働省から方針を出されて、そうしてそれが末端においては実際実施されておる、こういう形になると思いますが、それはどうですか。例えばさつき労相は、二百万くらい吸收するところの労働対策について大いに呼号されたように思うのですが、これはどうですか。そこは非常に矛盾のように思うのです。どうですか。それは全部吸收したら、それだけちやんと政府はつきりした方策を持つて臨んでおられるならば……。
  60. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) これはちよつと別に呼号したわけではありませんけれども、先程申上げました関係上、今の御質問と関連のある点について御説明申し上げます。全体で申しますると、計画が確かに二百万人以上の吸收はでき上つております。それから今問題となつておりますのは、日雇労働者を中心とした緊急失業対策の吸收の問題でありますが、これは二百万人の吸收計画の中のどれだけのウエイトを占めておるかというと、現在予算に計上されておるところの四十億円を以てしては、毎日十万人の人を一年間吸收して行くというので盡るわけであります。従つて二百万人の吸收計画といたしましても、この中には消極的な失業保險による一時的な給付によるものも含んでおりますが、とにかく全体の二十分の一前後のウエイトを持つておるのでありまして、失業対策全体は、決して労働省の緊急失業対策によるところの日雇労働者諸君の救助、それが中心と言いますか、全部でも何でもないのでありまして、むしろ実態は、見返資金の撒布による本当の雇用の上昇、それから今年度、二十五年度において五百億円から千億円近くに引上げられたところの公共事業による約百万人の吸收というようなものの方が数的に、又全面的に実態をなすものであります。現在日雇労働者の諸君として、緊急失業対策の対象となつておられる方達でありましても、心身が健康にして、労働力の高い人達が、公共事業の方に廻つていけないという制約は一向ないのでありまして、この方には十万でなくて、その十倍の百万の雇用力があることは明確であります。これらの点は、予算が通りましたならば、公共事業と新しく結び附けて、労働省の失業対策として運用して行くという考え方が、二十五年度における根本なつておりますと同時に、これは必ずでき上るかどうかお約束できませんけれども、参議院の委員会、労働委員会等においても要望がありまして、四十億の外に、地方公共団体が失業対策をやる場合には、起債を許すべきではないかという議論が前々からありまして、この問題は今必ずできますということは言えませんが、地方自治庁の折衝では、極めて有望な形でできております。これができ上れば四十億円プラスアルテアー、そのアルフアーは今折衝中でありますが、それで公共事業と直接結び附けて行くということによつて、昨年一年を通じて八億円前後の緊急対策は予算面で四十億円、それから実質的には七十億円、八十億円に匹敵するところの雇用量を生み出すということも、今申上げた考え方で運用して行けば、不可能でないと思います。それにいたしましても、吸收の実態がむしろ公共事業、見返り資金等の方面にあるのでありまして、どうぞ一つこの問題を根本的に吟味するに当りましては、單に十万人の人達の吸收の巾だけを考えず、全体との釣合とで考えて頂きたい。それが現在の政府の採つておるところの戰後の配置転換を含むところの、根本的の失業対策であるという原則論だけもう一度繰返して申上げておきます。
  61. 岩間正男

    ○岩間正男君 今尚我々が失業問題を論ずる上に非常に忘れられておる面があるのですが、農村における潜在失業者の問題であります。この問題については、これは衆議院なんかでも非常に論議され、最近は又毎日新聞あたりでもこういうような実態調査に乗り出したりしておるのでありますが、政府は農村の潜在失業者の実態について調査されておるかどうか。それから若し調査されておるとするならば、そういう統計のようなものがあつたら示して頂きたい。かように思いますが、その点お聞きして置きたい。
  62. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 農村の最近におきまする、殊に私の関係といたしましては労務の吸收、現在終戰後相当多数の者が農村に入り込んでおります。そういうような点から労働省といたしまして、一応これらの点について調査した資料もございますが、本日は持参しておりませんので、必要に応じまして御連絡を申上げます。
  63. 岩間正男

    ○岩間正男君 その資料も是非頂きたいと思います。というのはやはりこれを総合的に見ないと、この問題は解決付かないのです。農村の現在の恐慌の進度が非常に最近深まつて来ておるのですが、この状態と、それから都市労働者の失業状態というようなものは、これは相対的に非常に深い関連を持つのでありますから、吉田内閣の失業対策というものは、もつと総合的にそういう点まで深く入らなければ、実態に即したところの対策というものはできないと思うのであります。そこで先程労相から説明があつたのでありますが、一体現状では、これは如何にも失業対策が相当高度に行われておるような説明があつたのでありますが、果してそうか。この点は非常に大きい問題だと思います。それでこれは一々議論するよりも、一二の例を挙げて論ずればはつきりするのぢやないかと思います。例えばここに呉市の問題がありますが、呉市の失業対策係長、これは市の対策係長でありますが、この人が呉の失業者同盟の人と最近一緒に国会にやつて来た。そうして国会に陳情請願する。こういう事態さえできておる。それで何故そうしなくちやならないかというと、これは今までの政府の対策では、とても来年は何とか賄うことができない。こういう窮状に追い込まれまして、止むを得ずこれは同盟の人達と一緒にやつて来ておる。それの調査を、我々はここでその実情を聞いておるのでありますが、例えば市の調査によりますと、十二月におけるところの失業者が、これは完全失業者でありますが、一万四百二十七人あつた。そのうち日傭労働者が四千百三十七人、今年度の一月末になりますと、これが失業者の数が一万六百六十八人に殖えておる。日傭労働者が六千二百六十人に殖えておる。ところがこれに対してどのような收容状況なつておるかと申しますと、大体これに対して今の第四四半期の枠を以てしますというと、日傭労働者は六千二百六十人に対して、一千六百五十人しか、これは就労させることができないというような形が出ておる。而も年末が非常に苦しかつたので、まあそういう日傭労働者達の運動があつて、一部繰上施行がされたために、現在では一千百八十人しか收容できない。こういうような実情が起つておる。つまり日傭労働者の申込が六千人ある中に約千人しか、六分の一しか就労していない。つまりこれを具体的に言えば六人に一人、或いは六日に一日と、これしかできない。それで賃金はどういう工合かというと、これに対しまして大体手取り一日百五、六十円ということになりますと、これを一月の就労日数五日、こういうものとして考えて見ますというと、月收が約八百円、八百円で以てこういう形で以て、これは呉のような軍事都市であつて、それが戰後の破壊で極端に無論現われている点も考えられるのでありますけれども、こういうようなことで失業対策になつておるかどうか、政府は非常に今お話のようないろいろな対策の点を強調されて、今年度においては昨年度よりも、予算の面においても五倍も取つておる、それから公共事業費、その他の施策を総合するというと、優に現在の失業状態を賄うに足るというようなお話であつたと思うのでありますが、その実態を見ますと、これは実際就労している場合においても、僅かに月收八百円というような形であります。これではまるで失業対策にはならないんじやないか、こういうふうに考えられます。尤もこれに対してさつきの労相のお話によつて、二十五年度は大分いいじやないかといいますが、二十五年度の大体枠でやつて行くとしますというと、二千九百人ということになります。二千九百人でありますから、仮に日雇労働者のそういう要求が今後殖えないにしても、従来の半分もこれは就くことができない、而も今後のそういうような失業者の激増ということを考えますときに、果してこれでやつて行けるかどうか、こういう点についてもつと具体的な計画をされておられるかどうか、不完全だが何とも止むを得ない、こういうふうにされるのであるか、その点をもつと明らかにして頂きたいと思います。
  64. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 私の先程申しましたのは極く全般的な、全国的な計数を挙げたのであります。後で重ねて御質問が出るかも知れませんが、呉は無論、彦根も、それから日立もといつた工合で、特殊の事情による特殊な動きの所はございます。それらの点につきましては特殊な事情を考慮して、政府としては善処して行きたいと思う次第であります。詳細の点は課長から答えさせます。
  65. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 只今呉市のことにつきまして御質問がありましたが、これにつきましてはすでに共産党の春日議員から質問書が参つておりまして、詳しくこの質問に対する答弁を私の方から差出してございますから、それで御承知を願いたいと思いますが、只今お聽きした土地で就労日数が六日に一回、五日に一回というようなことは絶対にございません。これは呉市の人、或いは広島県の労働部長も、又すでに私の方に出されておりまする日数報告等によりましても、大体労働者によつて違いまするけれども、十日乃至十五日程度は平均いたしまして就労日数が本年の一月には確保されております。併しながらおつしやる通り十日乃至十五日程度の就労日数では、これで暮せと言つてもこれは尤も無理な点でございまして、我々の方といたしましては、呉のような場合は特殊な、特別な場合と考えているのでございますが、少くとも日雇失業保險が取れます程度の就労日数は確保いたしたい。たとえて申しますと、月十六日程度は確保いたしたいと思つて、これについて努力をいたしております。それのために呉市に対しましては、二月の十五日以降労働省の失業対策事業の数を若干でございますが増しました。更に広島県が国庫補助以外の失業対策事業を、県独自の失業対策事業を二月十五日からは二百人、三月からは約三百人やる予定にいたしております。又県の報告によりますると、呉市自体においても三月から二百人程度の失業対策事業を起すようにしたいというようなことを、先般広島県の労働部長が参りまして報告いたしておりますが、いずれにいたしましてもおつしやる通り、特に呉市におきましては先程大臣が申上げましたような各都市、或いはその他の若干の都市におきましても同じ場合が実はあるのでありますが、就労日数がそのように全般に比べて低い地域がございますので、これにつきましては労働省といたしましては、失業対策事業の枠を増加いたしましたし、又県の方にも臨時的なそういう措置を講じて、先程申上げましたような就労日数の増加を図るように手配をすでにいたしておりましたし、更に来年度のこの失業対策事業の実施につきましては、まだ予算が決定はいたしておりませんが、でき得る限りそういう地域に重点的に失業対策事業を実施するように努力するつもりであります。
  66. 岩間正男

    ○岩間正男君 時間も何ですから、もう二、三点だけで簡單に切上げたいと思います。無論これは後で問題をぐつと堀下げなくちやならんのでありますが、保留したいと思います。今の特別のそういう地域に対しては特殊の手を打たれるというのですが、今お話を聞きますと、二百人程度と、こういうようなことになるのであります。それから我が党の春日君の質問書に対する答弁書でありますが、あの答弁書そのものが、どうも我々はあのままで納得できない点があるから、再質問的に又ここで質問しておるのでありますけれども、とにかく我々の聞きましたのは、向うの直接その仕事をやつておる失業対策係長、そういう人達がやつて来て、そういう実態をこれは話しておる。こういう点において大分そこに食い違いがあるのですが、もう少しこういう点については、尚実態に迫つて行かなくちやならんと思うのであります。  それからもう一つ、地方の、仮に国庫から三分の二のそういうような負担があつたにしましても、三分の一は地方財政でこれは賄わなくちやならない、こういうようなことが起つて来るのでありますが、呉市の場合でありますと、これはどうしても完全に呉市がこういう雇用をやるとするような方策をとるというと、約六億要るというようなことをいわれておる。ところが呉市の現在の税收入を見るというと、配付税を拔いてでありますが、年額一億数千万、こういうことになつておるので、失業対策費だけでもこれは非常に追われて来る。こういう現状にありますが、こういうことに対して特殊な考慮を拂う方法をとつておるのかどうか、今の対策費でこれは賄い切れるかどうか、こういう現状を見ますと、全額国庫負担を取らなくちや失業対策ということは十分でないと考えられるが、これはどういう方策になつておりますか。
  67. 海老塚政治

    説明員(海老塚政治君) 呉市の二十四年度の失業対策事業につきましては、相当多額の地方起債が認められております。はつきりした数字は今覚えておりませんが、相当多額な地方起債が認められておることは事実であります。もう一つ呉のような財政の窮迫しております地域に対しましては県営の事業、県の負担で呉市に事業を起す、県営の事業を現在もやつておりますが、県営の事業を起すように県の方と相談いたしたいというふうに考えております。更にもう一つ先程大臣からお話があつたのでございますが、只今までは失業対策事業そのものにつきましては起債が認められていなかつたのであります。起債の性質にもよるのでございますが、目下折衝中でございますが、来年度につきましては一定金額まで失業対策事業に対する起債を認めるというふうに大体話が進んでおります。それが実現いたしますると、地方財政全体の面から失業対策事業の経費を出すのでございますから、地方財政のゆとりということが可なりできて来るのではないだろうか、こういう点に努力いたしておるのでございまして、こういうことによりまして、来年度四十億計上されておりまする失業対策事業費の実施を、窮迫しておる地域におきましても、できる限り計画通りの数は実施することができるように取り進めたいと考えておる次第でございます。
  68. 岩間正男

    ○岩間正男君 大臣も帰られたし、後主要な四、五点を残しておるのでありますが、大体ここで打切りたいと思うのでありますが、今までいろいろ政府の答弁を聽きまして感ずることを最後に申したいと思いますのは、いろいろの対策が端から話されたのでありますが、私が一例を呉市で挙げましたことは、單に呉市だけで起つておる問題ではないと思う。殊に又農村における潜在失業者、これとの連関、こういうような問題も私は問題にせざるを得ないというのは、例えば最近青森県でもそういうことが起つておる。非常に一月頃から日傭労働者があぶれがあつても、そうしてでも何ともならない。そういうことからそういう人達が相当強硬な運動を起しておる。そうして或る程度ここで就労することができた。それを聞きつけた。ところがそういう可能性が出て来たということになりますというと、附近の近郷近在から十数倍の人達が押かけて来た。そうしてその人達が二月二十日頃でありますが、どうしても就労させろというので午前二時頃まで県会議事堂を占拠して事態の收拾がつかないまでに陷つた、こういうような事情なつておる。そこに現在の特長がある。政府の取つておる労働対策といつても、職安に行つても職にありつけない。最初からそれをやつていてはかなはない。手続が非常に面倒で、民生委員の面倒な質問に答えなければならない。手続もしなければならない。高い電車賃を拂つてつて登録などに手数を食つておる。あぶれた、ところが干上つてしまうから利用ができない。そこで十分利用をしない。その利用しないところの状態を持つて来て、それを基礎にして統計を作り上げておる。そうしてそういう統計に基いて施策をやつておるところに、そこに一連の現実から離れた架空の失業対策というものが立てられているということをはつきり言えると思うのであります。こういうことではやはり池田蔵相がここ二、三日起した問題が労働問題の上にも起らないと言えない、現実をどれだけ把握しているかということが一番政治の要諦なんであります。こういう点から吉田内閣における労働対働というものは、実に架空の一つの問題を徹底してそうしてそれにふさわしいような方法で以て方策を立て、それでこの失業対策は取られておるというふうに言つておりますけれども、政策面と現実の起りつつあるところの問題というものは、非常に大きな食違いができて来て、それが逆に政府に対して大きな脅威になつておると、こういうふうに考えざるを得ないところがあるのでありますが、こういう点についてもつと沢山いろいろな問題も残しております。例えば最近起つておりますところのこれに対して警官を配置した問題、そうしてこれらの失業者を押靜、いろいろなふうに紛争を起した問題、果してこれが政府方針であるかという点、更には一方伝えられますところの、こういうような国内に充満したところの失業者の群を最近においては、沖繩あたりに何とか移すというような方策が暗々に進められておるのじやないか、こういう問題、こういうような点につきましても、我々は質問しなくちやならないし、そうしてこれが日本の今の吉田内閣のあらゆる経済政策、その不完全さから起つて来たところの失業問題、こういうふうな問題が更に何を提示し、何を招来するか、こういう点において民族の将来と非常に深い関係を持つ問題でありますから、是非この点につきましては私達は日を改めて質問を展開したいと思うのでありますが、今日は大臣もおられませんから、このぐらいで私の質問を打切りたいと思います。
  69. 山田佐一

    委員長山田佐一君) 本日はこの程度で散会いたしたいと思いますが御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 山田佐一

    委員長山田佐一君) それでは本日はこれを以て散会いたします。    午後四時五分散会  出席者は左の通り。    委員長     山田 佐一君    理事            高橋龍太郎君            田村 文吉君            寺尾  博君            堀越 儀郎君            岩間 正男君            木村禧八郎君            岩男 仁藏君    委員            羽生 三七君           池田宇右衞門君            岡崎 真一君            小林米三郎君            團  伊能君            平岡 市三君            深水 六郎君            小林 勝馬君            赤木 正雄君            飯田精太郎君            井上なつゑ君            西郷吉之助君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            帆足  計君            松村眞一郎君            川上  嘉君            藤田 芳雄君            小川 友三君  国務大臣    労 働 大 臣 鈴木 正文君    国 務 大 臣 本多 市郎君  政府委員    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主計局次長) 石原 周夫君    労働基準監督官    (労働基準局    長)      寺本 広作君    経済安定事務官    (財政金融局次    長)      西原 直廉君  説明員    労働事務官    (職業安定局失    業対策課長)  海老塚政治君