○岡本愛祐君 只今上程されました地方税法案について、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
今次地方税制の
改正は、地方税制の自主性を
強化して地方自治の根基を培うことを第一の目標とし、地方税負担の合理化及び均衡化を確保することを第二の目標としておるのでありまして、我が国地方税制創始以来の画期的な
改正であり、特に附加価値税及び市町村民税、固定資産税の三大新税の創設、都府県税体系と市町村税体系との分離等の点において特色を有しているのであります。
以下具体的な
改正の内容につき御報告申上げます。第一には、財産
課税の重課、流通
課税の
整理、消費
課税の減少
軽減、所得
課税の
増加、事業
課税の
軽減、雑税の
整理等を行い、地方税全般に亘つてその負担の合理化と均等化を徹底せんとするものであります。第二には、
課税標準、税率等に関する地方団体の権限を拡充して地方税制の自主性を
強化すると共に、道府県税と市町村税とを完全に分離し、以て税務行政の責任の帰属を明確にせんとするものであります。これによつて道府県税としたものは、普通税で附加価値税、入場税、遊興飲食税、自動車税、鉱区税、漁業権税及び狩猟者税の七種目、目的税で水利地益税であり、市町村税としたものは、普通税で市町村民税、固定資産税、自転車税、荷車税、電気ガス税、鉱産税、木材引取税、広告税、入湯税及び接客人税の十種目であり、目的税で水利地益税及び共同施設税であります。第三には、有力なる直接税を市町村税として、住民の市町村行政に対する関心の増大を求め、以て地方自治の基礎を培うと共に、民主政治の推進を期するものであります。第四は、特別徴收に関する規定を整備すること、納税秩序を
強化すること等により、税收入確保の方途を講ぜんとするものであります。第五は、税率を各税目に亘つて明確に規定することにより、地域間における地方税負担の衡平化を期することであります。これによつて
昭和二十五年度において地方団体が收入することのできる税額は千九百八億円となる見込でありまして、
昭和二十四年度千五百二十四億円と比較すると、三百八十四億円の増税となります。
次に新設された税目の意図するところについて説明申上げます。
第一に附加価値税は、従来の事業税及び特別所得税を廃止すると共に、これらの
課税客体である事業の附加価値に対し、附加価値額を
課税標準として道府県において
課税するものであります。従来の事業税では收益
課税たる本質上、非転嫁的なものでありますから、今日のごとく所得の上に累積的に
課税されているときにおいては、事業に対する負担が堪え難いまでに重くなります。又事業税によるときは、所得のない者は常に
課税を免れるのでありますが、事業を継続している以上は常に
地方公共団体の施設の恩惠に浴しておるのでありますから、事業はすべて応分の地方税負担をすべきであります。かくのごとく事業税の欠陷を有するのに対して附加価値税においてはこれらの欠陷を在しない長所があり、更に進んで固定設備の購入代金が
課税標準から控除されるが故に、現下の我が国経済にとつて最も必要であるところの産業の有機的構成の高度化を促進するという効果も又期待できるというのであります。而して附加価値税は、農業、林業並びに鉱物の掘採及び採取の事業に対しては非
課税の取扱といたしております。その理由は、前二者については、主として固定資産税の負担が相当重くなつておることによるものであり、後者につきましては別途鉱産税が存置されているからであります。次に附加価値税の税率は、標準税率を四%とし、最高税率を八%としておるのでありますが、原始産業、自由業等につきましては、標準税率を三%、最高税率を六%とし、免税点はいずれも九万円を原則といたしております。又
昭和二十五年度限りの
課税標準算定の特例として、金融業、運送業及び倉庫業につきましては、その選択によつて、総売上金額の一定額を以て附加価値額とすることができるものとしておりますが、その理由は、主として差当り負担の急変を避けようとする趣旨に出たものであります。この附加価値税の收入見込額は
昭和二十五年度四百十九億円、平年度四百四十一億円であります。
新税のその二は市町村民税であります。本税は従前の住民税の性格を一変しているのでありまして、従来の市町村民税と異なります点は、第一には、世帶主を納税義務者とする家族主義的な構成をとつていたものを、所得のある限りは、成年者をすべて納税義務者とする個人主義的な構成をとつていることであります。第二には、均等割、資産割及び所得割の二者によつて
課税していたのを、資産割を廃止しまして、均等割と所得割の二者によつて
課税することであります。第三には、法人に対しては均等割しか
課税しないことにしたのであります。而して均等割の額は、人口五十万以上の市において、個人は八百円を標準として最高千円、法人は二千四百円を標準として最高四千円、人口五万以上五十万未満の市において、個人は六百円を標準とし最高七百五十円、法人は千八百円を標準とし最高三千円、これら以外の市町村においては、個人は四百円を標準とし最高五百円、法人は千二百円を標準とし、最高二千円としているのであります。他方、所得割につきましては、前年の所得税額を
課税標準とし、その百分の十八を標準とし百分の二十を最高とする方式、及び前年の
課税総所得金額を
課税標準とし百分の十を最高とする方式、並びに前年の
課税総所得金額から所得税額を控除した後の金額を
課税標準とし百分の二十を最高とする方式の三つの方式のうち、いずれかを選択し得るものとしておりますが、
昭和二十五年度におきましては第一の方式のみを採用することといたしております。又收入見込額は、
昭和二十五年度において五百七十五億円、平年度において四百八十七億円であります。
新税のその三は固定資産税であります。固定資産税は、土地、家屋及び減価償却の可能な有形固定資産に対し、その価格を標準とし、原則として所有者に課するところの税であります。これは従来の地租、家屋税を拡充したものでありまして、その主な相違点は、
課税客体が土地、家屋の外に償却資産の加えられていること、
課税標準が賃貸価格と異なり資産価格であることであります。但し
昭和二十五年度分の固定資産税の
課税標準に限り、農地以外の土地及び家屋については賃貸価格の九百倍の額、農地については自作農創設特別措置法による買收農地の対価に二二・五を乘じて得た額とするものとしております。固定資産税の税率は百分の一・七五を標準としておりますが、当分の間百分の三を最高とし、且つ
昭和二十五年度分に限り百分の一・七五に一定してあります。尚、大規模の工場や発電施設が近隣の市町村の公共費の支出に直接且つ重要な影響を與えたり、これらの地方における経済と直接且つ重要な関連を有する場合においては、地方財政委員会がこれらの固定資産を
指定し、これを評価してその価格を決定し、固定資産の存在する市町村の如何に拘わらず、その価格を関係市町村に配分することができることとなつております。これは税源の極端な偏在を防止しようとする趣旨であります。又船舶、車輛その他二以上の市町村に亘つて使用される償却資産及び鉄道、軌道、発送配電施設その他二以上の市町村に亘つて所在する固定資産のうち、地方財政委員会が
指定したものについては、地方財政委員会が価格を決定し、その価格を関係市町村に配分するものとしておりますが、その趣旨は主として関係市町村間における評価の適正を期そうとするところにあるわけであります。本税の收入見込額は、
昭和二十五年度において約五百二十億円であり、平年度において五百七十八億円であります。
次に既存税目に対して加えられた変更としては、その一は、入場税に関して新たに
課税除外の規定を設け、学校、社会
教育団体、社会事業の経営者等が主催するもので、学生、生徒、兒童又は素人の行う催しが行われる場所への入場に対しては、その催物の純益がすべて学校、社会
教育、社会事業等のため支出され且つ関係者が何らの報酬を受けない場合に限つて、入場税を課さないことができるものとしてあります。その二は、遊興飲食税に関し、現行の税率十五割、八割、五割及び二割を、十割、四割及び二割に引下げ、以て負担の
軽減と徴税の
適正化を図らんとしております。その三は、自動車税、漁業権税、自転車税、荷車税、広告税、入場税及び接客入税についても新たに標準税率を定め、以て地域間の負担の均衡化を図ると共に、その
課税手続、
救済、罰則等に関する規定を整備して、納税者の理解に便ならしめようとしたことであります。
次にこれらの税の賦課徴收について諸種の
改正を加えました。
尚、今次
改正によつて廃止される税は、先に成立いたしました地方税法の一部を
改正する
法律と合せ、道府県民税、地租、家屋税、事業税、特別所得税、不動産取得税、酒消費税、電話税、軌道税、電柱税、船舶税、舟税、金庫税、と畜税、使用人税、漁業権の取得に対する漁業権税、自動車の取得に対する自動車税、自転車の取得に対する自転車税、荷車の取得に対する荷車税、都市計画税等の多数に上るのであります。
本法案は諸般の事情によりその提案が甚だ遅延し、三月二十三日に至つて予備審査のため付託となり、四月二十一日に至つて漸く本審査に移つたのでありますが、地方行政委員会におきましては、本法案が地方住民の生活に及ぼす影響の重大なるに鑑み、愼重に審議に当り、三月三十日公聽会を開いて国民の世論を聞き、又各方面から議長又は委員長に提出せられた夥しい
請願陳情を精査し、更に政府当局にあらゆる資料の提出を求めて検討し、実に委員会を開催すること十七回、大蔵委員会との連合委員会を開催すること四回、休日、祭日の別なく最善の審議を盡したのであります。この間、運輸、文部、農林、水産、厚生の各委員長から原案の
修正の要求書の提出がありました。
今委員会における質疑の主なるものを二三御報告申上げますと、第一に、政府は国民の負担は
軽減されると言うが、地方税制改革により四百億円の増税となるではないかという質問に対しては、政府は、国税、地方税を通じて総合的な税制改革を行なつたものであり、全体としては三百億程度国民負担は
軽減されているから、最も適切な改革案であると信ずるという答弁がありました。第二に、税制
改正の結果、地代、家賃、私鉄
料金、電力
料金等での値上りにより国民の生計費へ及ぼす影響はどうかという質問に対しては、政府は、私鉄、
電気料金については、企業の状況、租税負担並びに国民生活に対する影響等を勘案の上、価格改訂の要否を愼重に検討する方針で、地代、家賃については極力合理的なものに改訂する方針である。又二十五年度の勤労者家計の見通しについては、生活物資の価格改訂と税制
改正の影響を織り込んでも尚且つ標準世帶において四・七九%の負担
軽減になるという答弁がありました。第三に、今回の地方税制改革は、附加価値税といい、又固定資産税といい、我が国経済の現段階において今直ちにこれを実施することに無理があるから、若干の準備期間を置いて実施してはどうかという質問に対しては、政府は、附加価値税は従来の事業税に比較して決して実施上困難なものでない。又現在事業税はその税額の約九〇%は個人営業者が納めるのであるが、附加価値税は個人納税が約四〇%に減じ、法人の納税額が
増加する点から言つて、大多数の中小商工業者は減税されるのであるから、決して大衆
課税ではない。又償却資産
課税についても資産評価と関連して本年度から実施することが適当であるという答弁がありました。尚、本法案の罰則は重きに過ぎる、殊に自転車税のごとく税額年二百円に過ぎないのに対し罰則が三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金とあるのは甚だ苛酷であるという質問に対しては、政府は、法令の統一上止むを得ずかかる規定を設けたものであるが、実際の適用に当つては裁判所は実情に即した適当な判決をするものと信ずるという答弁がありました。その他各委員から極めて重要な質疑が行われましたが、詳細は速記録に讓りたいと存じます。
かくて質疑を終り、討論に入りましたところ、社会党の吉川末次郎君、国民民主党の岩木哲夫君、緑風会の西郷吉之助君、純無所属の濱田寅藏君より反対意見の開陳があり、自由党の堀末治君、緑風会の柏木庫治君、同じく鈴木直人君より原案賛成の意見の開陳があり、討論を終結し、採決いたしましたところ、賛成五人反対八人でありまして、原案は否決すべきものと決定いたしました。
右御報告申上げます。
次に地方財政委員会設置法案につきまして委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
政府提案の理由といたしますところは、先に内務省が廃止されて以来、政府部内にあつて地方自治に関する業務を担当する機関については幾度か機構の改革が行われ、現在は地方自治庁がその任に当つておるのでありますが、シヤウプ税制調査団の勧告の趣旨を尊重し、特に地方自治の弱点である地方財政関係の確立に強い力を持つ機関を設置するため、現存の地方自治庁とは別個の機関として新たに内閣総理大臣の所轄の下に地方財政委員会を設置せんとするのであります。
次に本法案の内容は五つの部分から成立つております。
先ずその第一は本委員会の任務及び所掌事務の範囲でありますが、本委員会は形式的には総理府の外局でありますが、総理大臣との関係をその所轄の下に設置せられるものと表現して独立性の強いものとし、地方財政自主権の確立を推進し、地方財政に対する一方的な国家意思の支配を排除すると共に、国家財政、地方財政及び
地方公共団体の財政相互間の調整を図らんとするものでありまして、地方財政平衡交付金の総額を見積り、各
地方公共団体に交付すべき交付金の額を決定し、その他、
地方公共団体の財政の運営に関し助言すること、又法定外普通税の新設又は変更を許可し、その他、
地方公共団体の税制の運営に関し助言すること等を所掌しております。その第二は委員会の組織でありまして、本委員会は地方自治に関し優れた識見を在する者について両院の同意を得て内閣総理大臣が任命する五人の委員を以て組織することとし、委員長は委員のうちから互選えることとし、委員のうち三人は、全国都道府県知事の連合組織、全国市長会の連合組織及び全国町村長会の連合組織がそれぞれ推薦した者を含まなければならないこととし、その利益代表機関としての色彩を組織の上に強く反映せしむることとしてあります。その第三は、委員会の権限でありまして、従来内閣総理大臣の権限に属しておりました地方税財政に関する諸権限のうち、地方税財政制度に関する
法律案の企画立案権を除きまして、他はすべて挙げてこれを本委員会に委讓することとし、その独立性を
強化するために、地方財政委員会規則の制定権及び委員会の所要経費確保に関する請求権を付與し、随時地方財政に関する必要なる意見を国会、内閣及び関係機関に申し出る権限を與えると共に、地方財政の状況を毎年国会及び内閣に報告する義務を課して、国会及び内閣との連絡の緊密化を図り、聽聞の権限及び義務を規定して、その業務運営の適正を期しておるのであります。その第四は委員会の事務部局の組織でありまして、事務局には事務局長を置き、事務部局としては、官房の外、財務部と税務部の二部とい、前者は地方財政平衡交付金法及び地方税関係法規を除く地方財政関係法令の施行の事務の当り、後者は地方税関係事務の執行に任ずることといたしております。その第五は、地方自治庁設置法の一部
改正及びその他関係諸法令の一部
改正であります。即ち地方導政委員会が設置せられます結果、地方自治庁は国と
地方公共団体相互間の連絡機関たることを主要性格とし、地方行政財政及び地方公務員制度に関する法令案の立案に当ると共に、併せて地方自治に関する内閣総理大臣の権限行使の補佐に当ることをその任務とすると共に、従来の地方自治委員会議は、その性格を地方自治庁の諮問機関に改め、その構成人員もその性格にふさわしいものに
改正することといたしたのであります。
本案に対しましては衆議院において
修正議決されました。
修正の要点の一つは、地方財政委員のうち、全国の都道府県知事、市長、町村長の各連合組織が推薦する者となつていた規定を
修正して、おのおのこれらの議会の議長の連合組織と共同推薦した者と改めたことであります。他の一つは、本法施行の際、国会が閉会の場合は、両議院の同意を得ないで委員会の最初の委員を任命することができることとしたことであります。
委員会におきましては内閣委員会と連合委員会をも開催して愼重審議をいたしました。今その主なる意見を御報告申上げますと、第一に、内閣委員側から、本委員会は一つの行政機関である以上、国家行政組織法に根拠を置いて設置するのが例である。單に「設置する」という表現を用いたのは甚だしい異例ではないかという質問に対しまして、政府側は、委員会は内閣に対しできるだけ独立性を保たしめたいと考えて、かかる表現方法をとつたという答弁がありました。これに対しまして河井内閣委員長より、右は甚だ不満であるとの意見の表明がありました。次に地方財政委員会と自治庁とがいずれも地方財政に関する事務を掌理し、一は
法律機関で、他は実施機関であるというのであるが、行政事務の無用の摩擦を避けるためこれを一元化する必要がないかという質問に対しましては、財政委員会は地方自治体の利益
擁護の機関であるから、性格上別個の機関が法令の立案に当ることがよいと思う、これによつて生ずる欠点は運用によつて遺憾なきを期したいという答弁がありました。尚、特に殖田法務総裁の出席を求めまして、前国会で地方行政委員会におきまして地方行政調査委員会議法案の審議に当りましたときに、「内閣総理大臣の所轄の下に」設置するという形式は今後とらないという法務総裁の答弁があつたのでありますが、今回再びこの形をとつた理由如何との質問に対しまして、殖田法務総裁から、成るべくこの字句を使用しない方針であつたが、この委員会の独立性を保たせる必要上止むを得ず使用したという答弁がありました。
かくて質疑を終り、討論採決に入りましたところ、全会一致を以て衆議院の
修正案を含めて原案通り可決すべきものと決定をいたしました。右御報告を申上げます。(拍手)
次に地方財政平衡交付金法案について委員会における審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
政府の提案の理由といたしますところは、地方自治の確立を企図するシヤウプ使節団の勧告の趣旨に鑑み、地方税財政制度の根本的改革に際し、国が補助金、負担金を通じて行う自治干渉乃至中央支配の途を排除し、
地方公共団体の自主的権能を尊重しつつ、従来の財政的均衡化の方式に画期的な変更を加えると共に、総合的な地方財政調整の徹底を期し、地方税制の改革を相俟つて、地方行政の計画的運営と地方団体の独立性を
強化することを目途として、現行地方配付税制度を廃止し、新たに地方財政平衡交付金制度を創設するというのであります。
以下法案の内容の概略について申上げますと、先ず第一に、この交付金制度の地方財政均衡化の方式は、一定の方法によつて各地方団体ごとに測定した財政需要額と財政收入額とを比較し、財政需要額が財政收入額を超える額を補填するという方式によつております。
第二に、毎年度交付すべき交付金の総額は、一定の方法により測定しました当該年度における財政需要額が財政收入額を超えると認められる
地方公共団体の、その超過額の見込額の合算額を基礎として定めることといたしまして、その算定は、
地方公共団体並びに国の関係行政機関に必要な資料の提出を求め、これを参考として地方財政委員会が行うことといたしております。
第三に、交付金はその総額を各地方団体の基準財政需要額が基準財政收入額を超える額に按分して算定することといたしております。
第四に、現段階におきまして、各地方団体の
課税力及び財政需要を的確に捉えますことは遺憾ながら困難でありますので、この欠陷を補うため、
昭和二十五年度及び
昭和二十六年度の暫定措置として、交付金総額の十分の一に相当する額を総額とする特別交付金を設けることとしてあります。
而してこの制度の運営の如何によつては地方自治の中央集権化的傾向を誘致する虞れがありますので、この制度と地方自治との調和を図る方法を講じております。即ち第一に、その総額は、地方財政の均衡化の機能を果すに必要な限度とすると共に、その運営は、内閣に対して十分その独立性を保持し且つ地方団体の利益を容易に反映することのできる構成をとるところの地方財政委員会をして行わしめ、又その交付方法に関する主要な規定はすべて
法律を以て定め、細目の規定と雖も成るべく地方財政委員会規則において定めることといたし、第二に、国は地方自治の本旨を尊重し、交付金の交付に当り、或いは條件を附し或いは使途を制限するがごときことは一切これを行わないことを以て、この制度運営の基本方針の一といたしております。従いまして地方行政の種類ごとに財政需要は裁定いたしますが、これは原則として平衡交付金交付額算定のための便法に過ぎないのでありまして、これによりまして直ちに各
地方公共団体の歳出計画に一定の枠を嵌めるものではないのでありまして、交付金の使途は地方団体の自由に委ねるのであります。第三に、交付金の額の算定の基礎につき不服がある場合には、地方財政委員会に対し審査の請求を認め、又交付金を減額し若しくは返還せしめられる場合には異議の申立を認め、以て地方団体の利益を
保護を図ることといたしますと共に、地方財政委員会がその権限を行使する場合に必要があると認めるときは関係地方団体について聽関することができることとし、又委員会が行いました交付金の額の決定、又減額返還等の処分について、関係地方団体が十分な証拠を添えてその決定又は処分が衡平又は公正を欠くものがある旨を申出たときは、公開による聽聞を行わなければならないこととしております。
委員会は大蔵及び文部委員会と連合委員会を開き、標準義務
教育費確保に関する問題と関連し愼重審議いたしましたが、その詳細は速記録に讓ることといたしたいと存じます。かくて質疑を終り、討論採決に入りましたところ、全会一致を以て原案を可決すべきものと決定いたしました。右御報告申上げます。(拍手)
最後に予防接種法等による国庫負担の特例等に関する
法律案について委員会の審議の経過並びに結果を御報告申上げます。
政府提案の理由とするところは、地方財政平衡交付金法の実施に伴い、厚生省の所管にかかる
法律中、地方財政平衡交付金に繰入れられる国庫及び都道府県の負担に関する規定の適用を停止する等の必要を生じたというのであります。
次にこの
法律案の内容は、第一に、予防接種法、トラホーム予防法、食品衛生法、民生委員法、
身体障害者福祉法、兒童
福祉法及び伝染病予防法によつて国庫が負担すべき経費が財政平衡交付金に繰入れられるため、これらの
法律の負担に関する規定を
昭和二十五年度に限りその適用を停止せんとするものであります。その適用の停止を二十五年度に限りましたのは、地方財政平衡交付金法附則第十五項と歩調を揃えるためであります。又伝染病予防法第十六條の二を
改正して、都道府県又は市町村に対し平常時及び臨時応急時に行う鼠族、昆虫駆除の実施を義務付けると共に、この実施人員の設置、薬品等の整備についての基準を政令で定め得ることとし、これによつて地方財政平衡交付金制度の下において、鼠族、昆虫駆除の実施に法的根拠を與えんとするものであります。
本案に対しては衆議院の
修正議決があります。即ち原案はこの
法律は「二十五年四月一日から施行する」とありましたのを、「この
法律は、公布の日から施行し、
昭和二十五年四月一日から適用する」と
修正したことであります。
委員会は愼重審議の結果、全会一致原案通り可決すべきものと決定いたしました。右御報告申上げます。(拍手)