○太田敏兄君
只今議題となりました議員小川友三君の懲罰事犯の件に関する委員会の審議の経過並びに結果について御
報告申上げます。
本件は去る四月四日の本
会議における
議長宣告の
通り、
国会法第百二十一條第一項の規定に基き、
議長職権を以て本委員会に付託されたものでありまして、
議長は、小川友三君が
昭和二十五年度
一般会計予算外三件の審議に際し、
会議の基本的原則を無視して委員会における表決及び本
会議における討論し相反する表決を本
会議において行うと共に、この問極めてまじめさを欠く
発言をなしたことは、議員の体面を汚した行為と認めたものであります。本委員会におきましては、同日直ちに委員会を開きまして、その審査を開始し、
議長より付託の事由等について説明を聞きました上、翌五日及び今七日には本人小川友三君を本委員会に召喚し、一身上の弁明を聽取すると共に、尋問を行い、更に
関係者として議員伊達源一郎君及び岩男仁藏君の
発言を求めまして、愼重に審議をいたしました結果、本日討論採決を行い、本件に関する審議を結了した次第であります。
次に委員会における審査の経過につきましてその大要を申上げますると、先ず本件が本委員会に付託されました際に、
議長から、この事犯の審査に当
つては、議員小川友三君が
昭和二十五年度
一般会計予算外三件の審査に際して、同君の委員会の表決及び本
会議における討論に相反する表決を本
会議において行
なつた事実の裏面には、何らかの工作が行われたのではないかとの疑念を差挾む余地があるので、その背後
関係をも併せて調査すること、及び本事犯の審査は成るべく早く結了することを希望するとの
申入れがございました。よ
つて本委員会におきましては、本懲罰事犯及びその
申入れの内容につきまして、
議長より詳細なる御説明を承わりました上、翌五日には本人小川友三君の一身上の弁明を聞くと共に、主として本事犯の
原因に関して質疑を行い、
議長のお
申入れの
趣旨に副
つて審議を行
なつたのであります。
次に本人小川友三君の委員会における一身上の弁明並びに同君に対する質疑応答に関しまして御説明申上げます。先ず
議長の宣告によりますると、その事犯の
一つとして予算委員会における表決から本
会議における表決の間において極めてまじめさを欠く
発言をなしたとのことでありましたが、委員会における本人小川友三君の
答弁からその言葉を借りてそれを要約いたしますと、予算委員会においては熱意を以て
反対討論を行い、次いで本
会議においては三十分間も討論の
発言を
許可されたのは今回が初めてで、この点、処女演説であつたため非常にいい気持にな
つて調子を落して討論したのであるが、予算委員会におけると同様
反対の
意思を表明するつもりで
登壇し、本心から真劔に
反対の討論を行
なつたつもりであるとのことであります。又
議長の賛否表明に関する注意につきましては、その際、
議長が時間を二分間超過したと言われたと思つたので、まだ原稿が十枚程度残
つていたのでありますが、降壇したのである。併し
反対討論として
登壇している以上
反対討論と解釈されるものと思
つていたのであり、
従つて二度目の
登壇の際には
反対の
意思を明確にしたのであるとのことであります。次に重大な事犯として、同君が
会議の基本的原則を無視して委員会における表決及び本
会議における討論と相反する表決を本
会議において行
なつたということが挙げられておりまするが、委員会における審議もこの点に集中されたのであります。かかる行動をされるに至つた
原因につきまして、同君は一身上の弁明及び
答弁において、大要次のように述ベているのであります。これを同君の言葉を借りつつ説明をいたしますると、先ず予算委員会及び本
会議の討論で
政府原案に
反対した理由は、
政府の怠慢を是正し、又池田大蔵大臣が昨今非常にのぼせているので、これに大衝撃を與えて、大いに勉強させる必要を認め、又一方ではその政策の
一つに勤労というのがあるので、社会党と提携して警鐘を乱打し、猛追撃をする意味で
反対したのである。そうして予算委員会で
反対したその興奮と感激の抜け切れないうちに本
会議における
反対討論の通告をしたのであるとのことである。それではどうして本
会議の表決に賛成投票をされたのかという点につきましては、同君は、すでに予算委員会においては
政府原案を否決し、吉田内閣も参議院においては弱いものであるので、弱い者をいじめるのは小川君の政策の中の博愛という政策に反することなると共に、(笑声)勤労という政策からは
反対すべきであるが、本予算に対しては親米に白、博愛も白、勤労は青であるが故に、賛否の比率は二対一であり、結局賛成したのであるとのことであります。又当日午前中に、同君は與党、野党各派の議員の登院数を算定して、すでに予算の成立を見越して、自分の一票はどちらに入れても全般には影響をもたらさないものと判断し、同君の言葉を借りれば、博愛主義から言えば、すでに野党さんには御奉公は済んだので、今度は與党側に一票入れてもいいと思
つていたということ、及び
日本の現状からして、又親米政治家としての
立場からして、白票を投ずることが妥当であると信じたからであるとも述べているのであります。又同君の言によりますると、予算採決の当日、同君の控室には国鉄労組の人達が予算
反対の
懇請に多数見えていたのであるが、その労組から発行している
新聞によれば、次期
参議院議員選挙に際して、その労組の支持する人名の中に小川友三の名前は載
つていなかつたので、敢えてその
懇請を受入れる気にならなかつたと申されておるのであります。又同君は去る
昭和二十三年十二月の給與法の審議に当
つて、委員会における同君の表決と本
会議のそれとが異な
つていた先例があるので、別段惡いことではないと思
つていたこと又同君は一人一党で一々党議に諮る必要もないので、君子豹変したのだとも申されているのであります。然らばいつ君子の豹変を行
なつたのであるかという点につきましては、一委員からの
質問に対しましては、二度目の討論が済んでから表決に至るまでの間においてであると言われ、又一委員によ
つて明らかにせられたところによりますと、青、白二票を共にポケツトに入れて
登壇し、遂に白票を出したのであるとも答えられております。
従つて同君が先に述べられたように、賛成の
意思を持たれるに至つたこととの間に時間的に明確な区別を知ろうとすることは困難で、同君が一委員よりのこの点の矛盾についての
質問に対しまして、常にジグザグコースを辿
つていたのであると答えられたのであります。それでは、こうした事犯について小川君の現在の心境はどうであるのかという委員の
質問に対しては、小川君は、委員会の表決と本
会議の表決が異
なつたことは以前にもあつたことであるし、惡いことであるとは思
つていなかつたが、それがいけないならば改め、又は
発言中不穏当な言葉があつたらこれを取消し、更に青白二票を所持して
登壇するようなことは今後は愼しむ旨を述べられ、更に懲罰事犯として付託されたということを聞いた際には、議員の投票権にまで干渉するのか、ちよつと意外であつた旨も述べられたのであります。
更に同君の表決に関連する同君の行動及びその風評について種々質疑が行われたのでありまするが、その主なるものについて申上げますると、先ず同君が投票を終
つて自分の席に帰られるときに、某議員の所に行
つて愉快そうに握手をされたということにつきまして、同君は次のように答えられました。即ち以前、今
国会において
政府案
反対をして降壇の際に、共産党の中野議員と総理大臣の前で党々と握手したことがある。そこでどこでも手を出せば握手するという主義でおるので、降壇してから握手をしたことは沢山あるが、当日は降壇してから握手はしなかつた。ただ近道をせずにふらふら廻
つて行
つて、「よう」と言
つて通つただけであるとのことであります。又、現内閣の閣僚との
関係についての
質問に対する同君の
答弁は、現閣僚の中で最もよくこちらえ来いと言われるのは総理大臣である。吉田総理は
昭和二十三年の二月十一日参議院の
首相指名の際二票勝つたときに、小川友三君のお蔭であるということを感謝いたしまして、翌日お茶を飲みに来いというので、車をよこして呉れました。君はなかなか政治家だ、民自党に正式に入党しなさいということを言われました。私は小なりと雖も一党の総裁ですから、あなたは七十二歳で大きいけれども、私は四十五歳なんだから、後三十年もやれば民自党は負かしてしまう。ほう、なかなか君は面白い男だ。面白いじやない、そういう信念で闘
つているのですから、私は民自党には入りません。あなたが親米民自党にすれば入りましようと、こうやつたわけです。元来私は親米政治家で、博愛で勤労党であるからこそ、票が入るのである。だから民自党に入ればその票が落ちてしまうし、又特異の行き方であるから入党はしないということで、私はお断わりした云々と答え、又同君は、山口国務相と食堂において懇談したとの
新聞報道に関して、山口国務相と合つたのは四月三日の日に議員食堂で行き合つたのが初めてであ
つて、
報道にあるごとく酒など御馳走に
なつたことはない。自分の酒を飲んだのであると弁明され、又その際の談話の内容についての質疑に対しても、「山口君と会
つて、何だこれが山口かというので、こんなのが大臣になれるなら俺も直きになれるような気がしたのです。そこで、小川君今度はどうするのだと言うから、それはあなた、一党の総裁だから私は白紙だよと言つたので、他に何にも言
つておりません」と述べ、更に同君の感じとしては、山口国務相のこの言葉は、六〇%ぐらいは賛成投票を要求されたのだと思つたとの
答弁でありました。次に或る
自由党の有力者から同君に対して政務次官に推薦することに盡力するとの話があつたということにつきましては、今日まで票が決戰になると何十回となく風評を立てられたことがあり、最近も冗談に言われたことはあるが聞き流しているので、誰が言つたか覚えていないとの
答弁があり、又同様の
趣旨の書付けを四月二日の予算委員会開会当日同僚議員に見せられたということについての同君の
答弁は、現内閣は
自由党員でなければ大臣にも政務次官にもなれないと思う。自分の党を解体してまで
自由党に入党することは、以前から勧められてはいたが、政務次官ということぐらいで飛び込む気にはなれない。それについては何の証明も貰
つていないとのことであり、更に同君が示した書付けは、同君が自分で自分の便箋にボールペンで書いたものであり、いわば落書であり、その署名人の氏名は同君がでたらめに書いたものであるため、現在記憶しておらず、且つ捺印は自分の判を三ケ所に押したものである、とのことでありましたが、この点に関しては伊達議員より、同君が自分で朗読されたのであるが、内容は大体そのような
趣旨であつたと記憶する、又その書類には三つぐらい捺印してあつたと思うとの御証言がありました。又このような誤解を産み易いことをみずからされた理由につきましては、同君の言葉を借りて申しますると、ちよいちよい漫談をやりに各控室に行
つているので、懇意な伊達議員、田村議員に対しまして、道化半分に漫談的にやつたことで、断じて他意はないとの
答弁であります。更に緑風会及び
自由党所属議員と予算問題に関連する投票権の行使について話をされたことがあつたのではないかとの疑点、採決のあつた本
会議開会の直前、衆議院の議員と
自由党控室前において談合されたこと、或いは本
会議における討論及び投票の後に同僚議員が注意したのに対して、最後まで賛否を不明にしてダークホースで行くと言われたこと、並びに懲罰が恐くて大政治家になれるかと言われたとのこと等に関しましては、同君は、すべてそのような事実のないことを述べられ、否定をされたのであります。又同君が議場開鎖になると同時に逃亡的な行動をされた事実については、本人はこれを認め、玄関にエンジンをかけた自動車を待たせてあつたとのことであります。かかる行動をされましたゆえんは、同君が賛否いずれに投票されましても、いわゆる左右両派のいずれかの人々から暴行を加えられる運命にあつたことを感ぜられたからであると言われ、又この同君の不安に対し院内警察は信頼するに足りなかつたとも述べておられるのであります。その他、各委員より詳細なる
質問がございましたが、それらは速記録に讓りたいと思います。尚、同君の
答弁につきましては、委員より、正直に誠意を以て
答弁せられたい旨の
発言がありましたことを附言いたします。
次いで討論に入りましたところ、社会党島清委員より、本事犯は通常の感覚を備えた人間の行為とは思われず、法に規定するところがないからとい
つて、民主主義の当然自明の基本的原則を無視するということは許し難いことであり、
国民の前に襟を正して謝罪し、
国会の名誉を保つために極刑即ち除名の懲罰を科すべきものであり、又青白いずれの票を投じても危害を蒙むる虞れがあつたと言うがごときは、それ自体自己の不正の暴露しているものである。尚、憲法によ
つて保障されている議員の
地位に基く安全を
脅威されたということは、議会史上の痛恨事であるが、本事犯の審査の対象外のことであるため、後日これを他の機関によ
つて究明すべきものである旨の討論がありました。次に民主党前之園喜一郎委員から、事犯の内容は明らかにせられたが、その背後
関係の調査においては時間も少く、十分その真相の把握ができなかつたのを遺憾とする。併しながら過去三年に近い間、小川君と議員
生活を共にしたが、この間、同君が幾多の醜聞と汚名を残して来たのであり、且つこの事犯のあつた後も何ら反省の態度は見えず、本委員会における陳述も支離滅裂であり、でたらめであつたこと等から、すでに情状酌量の余地は認められない。政治の浄化と議院の名誉のために同君に除名の懲罰を科すべきであるとの
趣旨の討論がございました。次に緑風会の
松井道夫君は、議員の生命である本
会議の壇上において、
国民との公約を即刻に変更して恬として恥じざることは、
国民を瞞著し、議院の名誉を傷ける行為であり、政治道徳上許し難いことである、かかる行為は議員としての自殺行為であり、過去においてもその例なく、又将来においても恐らくあり得ない行為であると思う。よ
つて小川友三君には除名の懲罰を科すべしとの
趣旨の討論がございました。最後に緑風会の小杉イ子委員から、前三者と同様の理由、並びに小川君には盧僞の言動が多く、同君が引続き議員とな
つておることは国政上の損害であり、当面には議事の運営を妨害するものである。以上の理由によ
つて同君を除名すべきであるとの
趣旨の討論がございました。
かくて討論を終り、採決の結果、全会一致を以て議員小川友三君に対し
国会法第百二十二條第四号により除名すべきものと議決した次第であります。
以上を以ちまして、議員小川友三君の懲罰事犯に関する本委員会の審査の経過並びに結果についての御
報告を終ります。(
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