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栗山良夫君 私はこれから電産
争議と
ゼネスト問題につきまして、緊急な
要点について
質問をいたしたいと存じます。
去る六日、
増田官房長官が
新聞記者団との会見におきまして、「
重要産業の
ストライキは單産の
ストライキと雖もこれを
ゼネストとみなして、
マツカーサー元帥の二月一日
ゼネスト禁止命令違反として
取締る」ということを
言明せられましたが、この
言明に対しまして、昨日
吉田首相は
衆議院の予算
委員会におきまして特に
発言を求められて、長官の
言明と全く同
意見であるということを述べられております。従いましてこの
言明こそ吉田内閣の卒直な労働政策に対する意思表示であると認めなければなりません。この
言明を一見いたしますると、
ゼネストという、遅れた日本の国民に対しまして一種の恐怖感を與えるような言葉を使いまして、労働組合員の内部を撹乱し、動搖を與え、又一般国民の電産
争議に対する悪感情を誘発せしめんとするところの考えである、即ち
政府の電産
争議のスト破りであると言わなければならない極めて重要な
発言であると私は考えるのであります。
現在電産の労組が、組合員の生活権を確保するために純経済要求の貫徹のために、極めて合法的に展開いたしておりまする
争議に対しまして、労働
関係の国内法の枠を超えて、明白に国御を納得せしめ得るような
理由を欠きましてこれを彈圧せんとしておりますることは、日本の合法的労働運動の発展を阻害し、且つ労働意欲の向上を前提として電力
事業の再建に微力を盡さんとしておる電産労働者の愛国的熱情を冷却し、且つこれを蹂躙せんとするものであると言わなければなりません。従
つて私は
緊急質問の
要点を申上げまする前に、
只今行われておりまするところの電産
争議の真相につきまして、その合法性につきまして先ず一言いたしたいと思うのであります。
御承知の
通りに、今次電産
争議は、昨年の五月電産の
全国大会におきまして決定いたしました賃金ベース
改正の純経済的要求貫徹の
争議でありまして、全くこれ以外に他意はないのであります。電産労組は五月の
全国大会のこの決定に基きまして賃金ベース変更の交渉を経営者団と行な
つておりましたが、遂に問題が落着いたしませんために、昨年十一月十日遂に中央労働
委員会に提訴いたしたのであります。労働
関係調整法第十
八條によりまして提訴をいたしたのであります。こういう道順を経て、極めて合法的に、電産労働組合は昨年十二月十日に労働
関係調整法の第三十七條によりまして
争議権を獲得いたしたのであります。電産は一応調停案が中央労働
委員会から発表せられるまで、襟度を広く持ちまして、去る二月七日調停案が労資双方に提示せらるるまで、
争議のための
争議を行うというようなことを避けまして、靜穏にその推移を見守
つて来たのであります。然るに去る三月三日電気
事業経営者が中央労働
委員会の調停案を全面的に拒否するに及びまして、遂に問題が惡化して参
つたのであります。又今次
争議解決のために実力行使を決定いたしました去る二月下旬の電産の中央執行
委員会におきましては、その活動
方針の決定に当り、左右両派が鋭く対立をいたしまして、共産党系約三十名が退場したことは公知の事実であります。退場の
諸君は各地区で自由に実力行使を断行したいということを強く主張し、右派の
諸君は、このような実力行使は地域人御闘争となり、労働組合の活動の枠を越え、政治闘争へ発展する虞れがあるとして、これを参く排斥いたしました。遂に電産労組としましては、
全国的に強い規律と統制力の下に、中央が指導をいたしまして実力行使を行うことに決定をせられたるやに聞いております。これこそ民主的な労働組合としまして現行法規の精神に完全に則る
争議行為であると断じなければなりません。又公益
事業関係の労働組合といたしまして、その実力行使に対しましては労働
関係調整法によ
つて幾多の制約を受けておるにも拘わらず、労調法に完全に従
つて、極めて合法的にその活動を展開いたしておるのであります。このような合法的電産の
争議に対しまして
政府のとらんとしておりまする対策は、
ストライキを、同盟罷業を
ゼネストと僣称することによりまして、
政府みずからが労働法規の枠を越えた非合法の労働
行政を行わんとしておるものであります。従
つて私はこの
争議の
取締を行うということにつきまして何としても理解に苦しむのであります。私は首相及び
関係大臣の見解を天下に表明せられるために
質問をいたしたいのでありますが、特に鈴木労働大臣にお願いをして置きます。私が首相以下
関係大臣に
質問いたしました点につきましては、重ねて労働
行政の担当大臣としまして、各項に亘
つてその所信を被瀝して頂きたいのであります。
吉田内閣が労働者の全面的な反対を退けまして成立させましたところの労働
関係調整法の中で、
争議行為を次のように定義をいたしております。「同盟罷業、怠業、作業所閉鎖その他労働
関係の当事者が、その主張を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為であ
つて、業務の正常なる
運営を阻害するものをいう」と謳
つておるのであります。この定義は公益
事業関係の労資間におきましても何ら制限されていないのであります。そうしてこの労調法第七條で定義しておりますところの同盟罷業即ち
ストライキこそ、現在の日本国内法における最も強い
争議行為であることは申すまでもございません。これこそ單一組合の
ストライキなのであります。従
つて政府は現労働組合法又は労働
関係調整法その他国内法を以ては、電産
争議の
取締はできない筈であります。現国内法としての労働
関係諸法規の全面的な
改正を行わないで
取締を強行せんとするならば、それこそ先程私が申上げましたように、
政府みずから非合法な労働
行政を行うものであると断ぜざるを得ないのであります。そこで
政府はこの増田長官の
言明に即応するように労働
関係法規の
改正をせられる意図があるかどうか。又若しそれをせられないといたしますならば、如何なる法規に基いてこれをせられようとしておるのか。それを先ず伺いたいのであります。国内労働
関係法の
改正なくしてその
争議を禁止し得るものは占領軍
当局のみであります。即ち占領軍
当局は、労働組合に対する極東十六原則の第五項によりまして、「
ストライキその他の作業停止は、占領軍
当局が占領目的乃至必要に直接不利益をもたらすと考えたときにのみ禁止せられる」と明言しております。この例は有名な二十二年二月一日のゼネラル・
ストライキに対する
マツカーサー元帥の禁止
命令がこれであります。而もこの禁止
命令は、その主文の冒頭におきまして、「連合軍最高司令官としての余に與えられた
権限に基き、
ゼネスト遂行の目的のために連合した諸労働組合の指導者」、重ねて申します、「連合した諸労働組合の指導者に対し、余は、現在の日本の困窮した事態において、
かくも恐るべき社会的武器の行使を許さない旨の通告、同時にかかる行動をこれ以上進行させることを中止させるように指令した、」と述べられていることから判断いたしましても、一單産の
ストライキを
ゼネストとみなすがごときことは誠に過ちであることは明々白々であります。現に今次電産
争議に関する増田長官の
言明に対しまして、エーミス労働課長は、「増田長官が如何なる根拠でさような
言明をされたかは知らない。單産ストに対して
マツカーサー元帥の二・一ストにおける禁止
命令を持出すことは好ましくない。」こういう工合に増田長官の
言明をきめつけておられるのであります。
吉田首相は、増田長官の
言明のごとくに、電産の合法的單一組合の
ストライキを
ゼネストと僣称して、占領政策違反の行為であると断定せられるのかどうか。若しこのような合法的
争議に対して
国家権力を以て
法律を曲げて強行せんとするならば、
政府みずからが、先程からも繰返して申上げておりますように労働
行政を曲げて行うことを
意味するものでありまして、従
つて私は
吉田首相に明白に伺いたい点は、増田長官の
言明を取消されて電産
争議の合法性を確認せられるか、或いは
政府のとらんとしておる今度の電産
争議取締の
措置は、非合法な労働
行政であると確認せられるか、この
二つよりないと思いまするので、明白にお答えを願いたいと思うのであります。
次に増田長官に伺います。今次電産
争議を
ゼネスト云々と言われますけれども、電産
争議は飽くまでも労働
関係の諸法規によりまして経済的要求貫徹のための同盟罷業、即ち
ストライキであります。日本の労働
関係法には、ゼネラル・
ストライキに関する何らの定義も又その処置も明らかにしていないのであります。私は如何なる
理由を以で
ゼネストと断定するのか、具体的にその
理由をお聞かせ願いたいのであります。又長官は電産
争議の成行きを見た断を下すと
言明しておられますけれども、併しながら電産においては、法規に明らかにないことなので、現に行い又行わんとしておることは、すべて合法運動として固く信じておるようでありますから、断圧することが目的である、即ち組合員を牢獄へ放り込むことが目的であるならば別でありますが、
争議の円満解決、事態の惡化を防止する熱意がありまするならば、具体的に法規に基く
理由を、こういう
ストライキをやればこういう断圧をするということを、天下に公表せられまして、大義名分の立つ途を講ぜらるべきであろうと思うのであります。さもなくば徒らに社会混乱を
政府みずから誘致するものであると言わなければなりません。電産の過去において行
なつた
ストライキにおいても、多種多様の
方法によ
つて実行されましたから、これらの
実績から、具体的に、
政府が断圧の対象とせんとしておるところの
争議の
内容を明示せられたいことを要求するものであります。
次に通産大臣に
質問をいたします。現
政府は
争議の解決に対する具体的な熱意が乏しいと言わなければなりません。このために、円満にして且つ短期に收拾し得る
争議を徒らに長引かせ、事態を紛糾させておりますことは極めて遺憾であります。このたびの電産の
争議も、
会社側が調停案を全面的に拒否したことから発端しておるのでありまして、
政府並びに
政府の強い統制下にある電気
事業経営者の嚴重なる反省を求めますると共に、
政府の具体的な解決の
方針及びその時期等を承わりたいのであります。エーミス労働課長は増田長官のあの
言明の直後に、最後の段階まで追込まないうちに
政府は国内の法的
機関を広く利用して
争議解決のために努力をすべきであると、
政府に戒めておられる筈であります。
それから特に通産大臣に伺いたいことは、今度の電産の調停案は、中央労働
委員会がその見解を発表いたしておりまするように、電気
事業が過去一筒年間営々として経営の合理化をやりました結果、今度の調停案の実施に対しましては、経済の三原則或いは経済の九原則の枠の中で十分に実行し得るものであるということが述べられておるのであります。通産大臣はあの調停案の
内容について中央労働
委員会の見解と全く同じくせられるかどうか、これを伺いたいのであります。次に、若しそういう工合に中央労働
委員会の見解と全く同じような見解をとられるとしまするならば、従来電産の経営は私企業でありますけれども、強い
国家の統制によりましてなかなか思うように
運営ができなか
つたのであります。曾ての電産
争議の解決のいつの場合を見ましても、常にその解決を遅らせたのは
政府であつた筈であります。従
つてこの経済の三原則、経済の九原則が日本の労働條件の改善にいろいろと問題にな
つておる点でありますけれども、この枠の中で十分にやり得ると中央労働
委員会が申しておりまするから、若し今度のこの中央労働
委員会の線を是認されましたならば、
政府はこの線に沿
つて至急に電気
事業の経営者に対して問題の解決の促進を指導する用意があるかどうか、何ら中央労働
委員会なり或いは電気
事業の経営者なりに干渉がましいことをしないと、はつきり
言明されるかどうか、その点を伺いたいのであります。次に、電気
事業におきましては、先程申上げましたように昨年以来従業員の懸命な努力によりまして着々経営の合理化が行われて参りました。今申上げましたように、経済の三原則、九原則の枠内においても今度の調停案が呑み得るような状態にな
つておりますけれども、若し従来
政府がとりましたところの態度によりまして、基幹産業、基礎産業であるという故を以て、
国家公務員或いは鉄道、專売公社のある
職員の労働條件と同じような形で電産労働者に臨まんとしておられるならば、それを伺いたいのでありますが、臨まんとせられるならば、これこそ電気
事業の発展のために、基幹産業として非常な使命を持ちますところの電気
事業の発展のために誠に惜しむべきことである。又日本の民主的な労働組合運動の発展のために
政府みずからが非常なる障害をなしておるものであると言わなければならないのであります。
以上の点につきまして通産大臣の具体的な御返事を伺いたいと思います。
私の
質問はこれで終りますが、時間が余
つておりましたならば再
質問の保留をいたして置きます。(
拍手)
〔国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕