○深川タマヱ君 政治は暴力に
なつてはなりません。政治は暴力に流れてはいけないと存じます。(「そり
通り」と呼ぶ者あり)私の政治
生活はまだ誠に短かいのでございますけれども、その間に政治というものがどんなに大きく
国民の幸、不幸を左右するものであるかということを痛切に
感じております。生殺與奪の権を時に握
つておると思うのでありますが、それ程大きい力を持つ政治であるだけに、一歩これが取扱を誤まりますと全く暴力に陷ると存じます。政治は
国民の生命財産を
保護するということを第一の使命と
考えていなければならないと存じます。(「然り然り」と呼ぶ者あり)敗戰以来の
日本の政治は、とかく筋道も道理もなく、暴風のような時がしばしばあ
つたと思うのでありますが、
国民はまじめに働いていただけでは暮して行けなく、而も規則に背きますならば容赦なく刑罰に処される道だけはちやんと準備されておるという、誠に矛盾に満ちたことがしばしば行われて参りましたが、その中の最も代表的でないかと思われることは、昨日新聞紙上に掲載されました
大蔵大臣の
日本の
中小商工業者の
対策に対する談話であ
つたと思うのであります。(
拍手)
御就任以来、
大蔵大臣は病躯を押して誠によく努力されまして、
日本のインフレ克服のために異常な御勉強をなさ
つておいでになりますことを、他党の私共もよく認めて敬意を表していた次第でございますので、昨日のあの新聞紙上の談話は誠に大臣のために私は惜しいと思
つております。併しあの記事が私は間違いであろう、間違いであ
つて呉れればいいと、大臣のためにも
国民のためにも祈
つたのでございますが、昨日
衆議院の
予算委員室における大臣に対する御
質問に対する御
答弁を新聞で伺いますと、残念ながらあの談話を更に上塗りするようなものであ
つたと思うのであります。(「そんなことない」「そうだそうだ」「そんなことあるか」「その
通りだ」と呼ぶ者あり)そこで私は
予算委員室、
衆議院の
予算委員室におきましてすでに質疑の行われた問題でございますので、或いは二番茶であるかも知れませんが、参議院は参議院独自の立場におきましてどうしてもこの問題を取
扱いませんと、参議院の見識にかかわることでございますし、(
拍手)野党が若しこの問題を放任に対して置きますならば、
国民全体から野党不信任案を提出される問題だと思うのであります。そんなことはないという野次が出ているようでありますが、私はその
方々にもついでに
お尋ねいたしたい程でございますが、苟くもあの言葉は、
国民の生命財産を守ることを第一の使命としていなければならない筈の政治でありますのに、五人や十人
中小商工業者が死んでも仕方がないと、全く
国民の生命というものを塵のように軽く取扱
つている上に、財産保持に至りましては、
中小商工業者が税金が拂えないなれば差押えをして貰えという言葉があります。してみますと、
日本の全体の
中小商工業者が全部税金を納めないで差押えを食
つてしま
つたならば、その後数日にして
政府はどんどんそれを競売に付して、それで
国家の財政を賄
つておいでになるおつもりでございますか。これが一体政治でございましようか。私は一体
大蔵大臣は、ふだんはよく勉強しておいでになると思いますけれども、政治家として最も大切であるところの
国民に対する情を欠いだ政治であるが故に、画龍点睛を欠く、政治家としまして誠に惜しいと思うのでありますが、ふだんの大臣は、靜かにお
考えになりますと、こういう暴言はお吐きにならなか
つたかも知れないが、最近の政治の余りの忙しさのために、若干神経がお疲れに
なつていらつしやるがために、こういう御
発言をなさ
つたのではないかと、むしろ私は善意に解するのでございますけれども、(「それが本音だ」と呼ぶ者あり)若しそれならば尚更のこと、暫らく御靜養になりまして、本当に
大蔵大臣のお心の底から、立派な智情意揃
つた、智情意三つ揃
つた立派な政治家として再出発をして頂きたいのでございます。至誠の人であることには間違いございません。ヘルツの人であることには間違いございません。確かに頭脳明晰の政治家であるということは私一人が認めるどころではないのでございますが、惜しいかな情を欠いた、
国民に対する温情を欠いた政治家は、最も大切なる
一つの要素を欠いていると存じますので、
日本の
中小商工業者を慰安し、激励する
意味におきましても、どうしても暫らく
大蔵大臣に神経がまじめに動きますように休養をして頂かなければならないと思うのであります。(
拍手)同時に、時の総理大臣である吉田さんに対しましても、この問題に対しまして十分深甚なる御
考慮を煩わしたいと存じますし、こういう現況にとどめますと、
中小商工業者は、この政策は
日本の国の民主自由党……
只今自由党になりましたが、自由党の政策であるとお
感じになるのであります。(「そんなことはないぞ」と呼ぶ者あり)この頃
日本の政治は、農村は恐慌に喘いでおります。都会では
中小商工業者に対しましては飽くまでも温情を欠いた虐政が行われておる。一番
保護されているのは誰かと申しますならば、再び独占金融資本が復活しようという大
資本家擁護の政策であるということを、これを
国民は自由党の政策であると認めて、自由党全体の信用を落しますが故に、(「詭弁だ」と呼ぶ者あり)今のうちに
国民に対して心機一転をさせるために、自由党は
責任を負
つて総辞職をなすべき問題ではないかとさえ思います。(
拍手)併し私共も全く
大蔵大臣や、自由党や、吉田さんだけを責めるものでこございません。この
内閣を選んだのは私達の
責任でございますので、私も議員の一人といたしまして、実は
日本の
中小商工業者に対しまして少からず
責任を
感じまして、心からお詫びを申上げておる次第であります。恐らく今日の
日本の
中小商工業者は、この議会の一点に向いまして怨みを持
つているだろうと思います。この頃自分達の世帶持ちが悪いために、こんなに自分の経営がまずいのだろうかと、夜の目も寢ないように一生懸命努力していたときでございましようのに、この談話を聞きまして瞬間、これは自分達の努力の足らないためでなく、政治のために自分達がこんなに苦しみつつあるんだということを改めて認識しただろうと思うのであります。敗戰以来
日本の
国民は、誠に暴政に近いようなことが頻りと行われますので、塗炭の苦しみに喘いでおりますのに、そこに一点の情のないこういう言葉を時の大臣から聞かされますと、再び立ち上る勇気も挫けてしまうのではないかと思います。若しこういうことを、こういうインフレ克服の誠に過激な政策が行われておる時でございますので、
大蔵大臣はむしろ反対に、この頃おつしや
つているように、今朝新聞で見ている記事のように、暫らくインフレを克服するためにはこういうふうな政策もなさなければならない、暫らく
日本の
中小商工業者は苦しいであろうが、十月頃までにはこうしてお前達の立ち上る方策を決めるから、暫らく辛抱しておれ、死んではならない、死ぬ程苦しいなら相談に来るようにと(「
大蔵大臣やれよ」と呼ぶ者あり)そういうことをおつしやりながら、あらゆる政治的な努力をなすべきであ
つただろうと思います。(「その
通りだよ」と呼ぶ者あり)同時に大臣は、
日本のインフレは正に消費インフレであるが故に、これらに対しまして強い下剤をかけなければならないと
言つております。正に或る
意味におきまして、インフレ克服には
相当過激な手段も必要と存じます。それにはどうしても温情が、人情が伴わなければならないと存じます。併し一旦御辞職を勧めましたけれども、大臣がお
考えになりまして、どうしても御自分が
考え違いしているということに飜然とお気付きになりますならば、その御
意思をここに表明して頂きたいと思います。大臣に……。総理大臣からも……。(「分
つた分
つた」と呼ぶ者あり)
ついでに申上げますならば、それならば一体雨降
つて地固まるということもございますので、最近
中小商工業者一家十人の自殺をきつかけにいたしまして、
方々に税金旋風のために
犠牲になりつつある
中小商工業者もございますし、この度の大藏大臣の暴言というのも重ねまして、これをきつかけにいたしまして、
日本の
中小商工業者救済のために議会を挙げて新らしい
対策を以て行わなければならないと思うのであります。若しそうだといたしますならば、今後一体
大蔵大臣は、
日本の
中小商工業者救済のために果してどういう政策をお持ち合せになるか、これをここで
一つ端的に御表明して頂きたいのでございますが、私共の
考えますところは、今日、
日本の
中小商工業者の
困窮の原因は、従前はもとより、
日本の金融政策が大きい誤まりを犯しつつあるということ、もう
一つは購買力の欠如であると思うのでありますが、この頃の税金に対して附加価格税その外固定資産税ですか、ああいう問題に対しましては、
衆議院でも野党が結束いたしまして修正案を出すために努力いたしておりますが、なかなか修正が
通りそうにもございません。こういう問題に対しましては、是非とも修正して、
中小商工業者の税金に対しましては大幅に軽減の
処置が講じられなければならないと思います故に、金融の面におきましては、千二百億円の国債償還などというものは、その時期ではございません。(「そうそう」と呼ぶ者あり)成る程
国民は酒を飲んだり女狂いに使う金じやないからいいようなものですけれども、借金を拂いますには、おのずからその時期と
方法がございます。
国民が贅沢いたしておりますならば強制資本蓄積もよいでありましようが、
国民を飢えさして置きまして強制資本蓄積では筋が通らないと思います。そこで私共の
考えますのは、ああいうふうな借金を返しますのは暫らく
国民が復活するまで猶予いたしまして、あの金で全部そつくりそのまま、一方に失業救済をなすなり、一方におきましては
資金難に窮しておる
中小商工業者に大幅に金融の
措置を講じて貰いたい。昨年などは、
政府は金を持
つてお
つて、多額の見返
資金をちやんと懷ろに用意して置いて、それを
国民に貸したならばよいのに、それを
国民に貸さないで置いて、今年も最近二十五年度の見返
資金の用途は大体発表されましたが、一体何月頃どれだけするかというような案が全然ございませんので、
予算審議に当りましても私達は手の打ちようがございません。早くああいう見返
資金に対しましても、大企業中心ではなく、
中小商工業者にどんどん金融をされる、及びこの頃この大きい
日本の金融を掌
つておりますところのこの銀行に対しまして、銀行に沢山の国債償還の金が集まる、見返
資金が集まる、その銀行は
国民に貸したければ貸す、貸したくなければ貸さないでもよい、全く大金が個人の自由裁量に任されておりますが、これは
国民の公益に違反するところが甚だしいと存じますので、国債償還を中止されまして、銀行にこの金を貸すのでなく、直接
国家があれを適当に
処置なさることがよいと
考えます。
更に、
中小商工業者の金融機関に対しましては特別の
措置をお講じになることを望むのでありますが、更に購買力を復活さしますことについては、
政府はただ單に、来年度になりましたならば貿易振興その他
政府資金が沢山放散されますので、それでどんどん購買力は復活されると言うけれども、なかなかこれだけでは
中小商工業者を満足さすことができないと思いますので、非常に負担に苦しんでいる
中小商工業者に対しまして、この席から
一つ大蔵大臣は懇切丁寧に御
発言を願いたいと思います。同時に附加えますが、今日の
日本は完全なる独立国ではございません。━━━━━━━━━━━
国会、
政府は、
国民一致結束いたしまして、即時講和会議の開催につきまして側面掩護の猛運動に展開すべきだと存じます。
これを以て終りにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇、
拍手〕
〔「しつかり」と呼ぶ者あり〕