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1950-03-03 第7回国会 参議院 本会議 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三日(金曜日)    午前十時五十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第二十一号   昭和二十五年三月三日    午前十時開議  第一 失業保險特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第二 物資の割当に関する手数料等徴收に関する法律を廃止する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第三 農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣提出)(委員長報告)  第四 雪害地方税軽減および課税方法改善に関する請願委員長報告)  第五 山林関係税制改革等に関する請願委員長報告)  第六 雪害地方課税方法改善に関する請願委員長報告)  第七 倉庫業諸税改善に関する請願委員長報告)  第八 土建労働者に対する税法改正請願委員長報告)  第九 中小商工業者に対する税制改革請願委員長報告)  第一〇 理容業者所得税課税額査定改正に関する請願委員長報告)  第一一 港湾運送業者税制改革に関する請願委員長報告)  第一二 白水晶およびその製品物品税率改訂に関する請願委員長報告)  第一三 広島港を塩等の輸入港に指定の請願委員長報告)  第一四 陶磁器製タイル物品税改正に関する請願委員長報告)  第一五 ソリユーシヨンの物品税軽減に関する請願委員長報告)  第一六 漆器の免税点引上げ等に関する請願委員長報告)  第一七 楽器の物品税軽減に関する請願委員長報告)  第一八 喫煙用具免税点設定に関する請願委員長報告)  第一九 身体障害者に対する税法改正請願委員長報告)  第二〇 水晶、めのうならびにその製品に対する物品税率変更陳情委員長報告)  第二一 めのうおよびその製品物品税軽減に関する陳情委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) これより本日の会議を開きます。      ——————————    〔太田敏兄発言の許可を求む〕
  4. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 太田敏兄君。
  5. 太田敏兄

    太田敏兄君 本員はこの際、遺族援護に関する緊急質問をすることに動議を提出いたします。
  6. 鈴木直人

    鈴木直人君 只今太田敏兄君の動議に賛成いたします。
  7. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 太田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許可いたします。太田敏兄君。    〔太田敏兄登壇拍手
  9. 太田敏兄

    太田敏兄君 戰争犠牲、その数ありし犠牲の中におきましても、最も悲惨を極めましたのは遺家族現状であります。この故に、昨年五月十四日には衆議院において遺族援護に関する決議を、更に又同月十六日には参議院におきまして未亡人並びに戰歿遺族の福祉に関する決議を、それぞれ満場一致を以て可決し、政府にその善処方を要望いたしたのであります。その際、林国務大臣はこの壇上におきましてかように述べられておるのであります。「本日御決議になりました事項の中には、政府のみでは処理いたしかねる事項も多いと思いまするけれども、このような誠に気の毒な方々援護は一日もゆるがせにすべきものではないのでありまするから、今回の決議の御趣旨を十分に体得いたしまして、その速かなる実現最大の努力を拂うことをお誓い申上げる次第であります。」これは衆議院における発言でありまするが、当院におきましても、又同じ意味発言をされておるのであります。この言葉こそは勿論林国務大臣吉田内閣を代表して言われたのでありまして、即ち現内閣責任において国民に誓われたのであると思うのであります。これにつきまして、我々はもとより、全国一千万の遺家族はこの政府の言明を信じ、その実現の一日も早からんことを鶴首して心から待ち詫びていたのであります。然るに爾来十ケ月、政府はこの間にその公約をどれだけ果して呉れたか。最近におきましても遺族人々をめぐつて幾多悲惨なる事実は日々我々の耳に入るのでありまして、一々その例をここに挙げますることは避けまするが、中には周囲の冷やかなる態度に失意の極、みずから火を放つて自分の家を燒いたとか、或いは激昂いたして愛兒を投げ殺したとか、涙なくしては聞く能わざるような哀話は、実に無数にあると言つても敢えて過言ではないのであります。今日私が敢えてこの緊急質問をいたしましたゆえんは、今国会に入りましてから、全国各地から、遺族援護決議の具現に関する請願が殺到しつつあるのであります。これを以て見ますれば、折角両院決議いたしました決議も、その結果から見まして、或いは一場の線香花火に終つておるのではないかという疑念をさえ起さしめるのであります。そして恰かもこれを裏書きするかのように、先に申しました遺族家庭を中心にいたしまして惹起されておる悲惨事は、誠に耳聞くに忍びず、眼見る能わざるものがあるのであります。今、世間で言われておる三月危機も、單なる野党の合言葉ではなくして、中小企業者も、農民も、その他一般勤労大衆も、金詰りと、苛酷な課税と、かかる政府の無策のために国民大衆は前途の不安におののいておるのであります。かかる暗澹たる世相の中におきまして、一家支柱失つた寄るべなき遺族達がその日の糧にも追われてさ迷いつつある者も少くないのでありまして、実に我々はこれを傍観し能わざるものがあるのであります。故に私はこの機会に、吉田首相以下各責任大臣からこれに対しまして、両院決議以後今日までに如何にその決議に盛られた要望事項を実行して来ておられるか、又未だ実行されていないならば、いない條項は今後それをどう実行して行くつもりかを率直に聞きたいと思うのであります。  そこで私は先ず吉田首相お尋ね申上げたい。即ちその第一の遺族に対する国民感情の問題でありますが、これは戰争指導者であつたところの軍閥首脳部兵隊とは全く別個に考えなければならないのでありまして、当時、高度の全く独裁的彈圧下にあつた善良なる国民がどんどん兵隊に引張られて行つた。そして戰死して遺骨なつて帰つた。これを遇するに冷たい態度を以てする。その結果は、世に言う正直者が馬鹿を見たことになる。かようなことでありましては、これが今後の国民思想上に及ぼす悪影響は測り知るべからざるものがあると思うのであります。今や国家再建の重大なる時期に直面いたしまして、私は甚だ深憂に堪えないものがあると思うのであります。政府はこれら不幸な遺族人々に対しまして、能う限りの温かい心を以て精神的に慰案し、又その生活困窮者に対しましては行届いた保護を加える、こういうようにして頂きたいのであります。勿論このことは言わずとも当然のことであるのでありまするが、併し組閣以来の吉田内閣の政策を見ますれば、概ね一部の大資本家には極めて親切であるが、併し一般勤労大衆には甚だ冷たいのである。故に私はこれに対しまして敢えて吉田首相の所感を求めるのであります。第二は遺族年金或いは弔慰金の問題、これは両院決議中におきましても最も中心的な問題であつたのでありまして、政府もこの趣旨には勿論賛成されていたと思いまするが、然るに昨年十一月二十二日の吉田首相報告におきましては、現在困難であると記載されておるのであります。これは一体どういうわけであるのか。私はこの機会吉田首相からその事情をつぶさに承わりたいと思うのであります。第三には、子女育英、特にあとに残されましたか弱い未亡人子女育英に関しましては、両院決議におきましても特別の施策を構ずべきことを要請いたしておるのであります。若しもその夫が戰死することなくして復員いたしておりましたならば、その子女に対して相当教育も受けさせることができたでありましようが、今はその望みも全く絶えておる現状であるのであります。そうした犠牲者に対しまして、国家はその責任においてこれを援護し、特別の便宜に供與すべきことは当然であると思われるのであります、これに対しましてその後政府が行なつた実績と、更に今後における方針を具体的に承わりたいと思うのであります。  次に池田大蔵大臣お尋ねする。  遺族年金及び弔慰金の問題につきまして、その基本的な方針につきましては吉田首相からお答えが願えると思いますが、更に大蔵当局といたしまして、若しもこれを実現するといたすならば財政上どの程度まで可能かの所見を承わりたいと思うのであります。御承知のように二十五年度予算を見ますと、国家債務償還には一般会計と見返資金の中から二千二百億という厖大なる金額を計上しておるのでありますが、私はその債務償還が不必要だとは申しませんが、併し凡そ物には緩急先後の別があるのでありまして、こういう重大なる目前の遺族の極度の困窮を全く無視して行うごとき態度は、甚だ我々の了解に苦しむところであります。ひとり国債償還だけではありませんが、もう少し予算を上手にやりくりして遺族年金なり弔慰金を捻り出す方法はないか。  次に課税の問題でございますが、この問題につきましては、私は二つの観点から申上げて見たいと思うのであります。その一つは、前の決議のときにも提案者から説明されたのでありますが、世帶主が生きておれば当然扶養家族の地位にあるべき婦人が、主人が戰死したために世帶主となり、扶養家族から一転して納税義務者になりまして、扶養控除がなくなるという、それは非常に不合理であると思うのであります。これにつきまして、今度の税制改正ではシヤウプ勧告によりまして特別控除というのがあるのでありまして、納税義務者又はその扶養親族不具者である者、或いは震災、風水害、火災その他これに類する災害、又は盗難による損害、又は医療費等についても、これを所得金額から控除する條項がありますが、戰死の場合はこれ以上の、いわば最大犠牲であつたのであります。従つて独立世帶を営む戰争未亡人などは当然この特別控除の枠の中に入れて、この一項目として挿入することが妥当であると考えられるのであります。これに対する大蔵大臣所見如何。その二は農業所得税の賦課に関しまして、老人又は婦女子ばかりの家庭におきましては、自然牛馬を使役するような作業やその他において人を雇う場合が甚だ多いのであります。従つてそういう農家においては、結果において農業生産費が非常に高く付いておる。そこで、これに対して一般農家と同じような標準課税をいたしますると、非常に不合理なことになるのであります。たださえ生活困窮に喘いでおる者が一層の窮状にさらされることになるのでありまして、そこでこれが対策としまして、課税標準におきまして何らかの措置が必要となつて来るのであります。そこで、例えば人を雇う場合にはこれを必要経費の中に入れるといつたように、その経費算定方法において、特別の考慮を拂うべきであると思うのであります。これに対しまして大蔵大臣答弁を求めます。  次に文部大臣に対して、第一に未亡人子女育英に関しては先に首相お尋ねした通りでありまするが、文部当局としてこれに対し何らかの構想があれば承わりたいのであります。第二に、学校が主催して神社仏閣訪問する場合に文部省通牒があつたのであります。これによりますると、普通の神社仏閣訪問することは差支ないが、但し護国神社とか靖国神社はこれを除外することになつておるのであります。この通牒の二になつておるのでありますが、こうした事実を通じまして何らか一般の文民と分け隔てをして、恰かも遺族を敬遠し別扱いにするような感じを抱かしめるのであります。私は敢えてこの除外例を削除するつもりはないか、このことを文部当局としての意見を伺いたいと思うのであります。  次に森農林大臣お尋ねしたい。第一は農地開放に関してでありますが、かねて引揚者引揚地主には、自作農創設特別措置法に特例を設けまして、二十年十一月一日現在不在であつて一旦政府に買上げました農地も、これを引揚後返して貰える便法が講じられておるのでありますが、然るに戰死者遺族は、つまり遺骨なつ帰つた遺族に対しては、この恩典と申しまするか、そういう便宜が與えられていないのであります。それがために遺族は非常に困つておるのであります。農林省ではこの点につきましてもつと親切に善処する方法をお考えなつておらないか。又農産物の供出につきまして過酷な割当が来る。これは敢えて遺族のみではありません。一般割当の過重なるに困つておるのでありますが、特に老人未亡人等、か弱い者には一層それがひどいのでありまして、この点十分斟酌されるように特に農林当局の御配慮を願う次第でありまするが、これに対しまして森農林大臣所見を伺いたい。  尚、生活保護の問題に関しましては、目下厚生委員会において生活保護法が立案されており、遺族援護に関する一般的事項もこの中に取入れられておるようでありまするが、併し一般遺族人々の間では、それは甚だその程度では、現在の程度では甚だ生ぬるいという感じを強く持つておられるのであります。むしろ竿頭一歩を進めまして遺族保護法を作れというような声もあるのであります。これに対しまして厚生大臣意見を承わりたい。これにつきましては第五国会における審議の際、林厚生大臣も、戰死者は公務による死亡者であるということを確認されておるのであります。である以上は、他の一般義務員における遺族に対する待遇と差別をせず、十分誠意を以てこれに対処すべきものと思うのでありますが、厚生大臣の御所見を承わりたい。  以上遺族援護に関しまして、各般の事項に亘り質問をいたしました。その要は、全国一千万に及ぶ不幸なる遺族、その多くは一家支柱を失い、すでに忍苦の生活通り越しまして悲惨の極に呻吟しておるのであります。この状態を徒らに放任して顧みませんならば、今後如何なる事態が発生しないとも保証し得ないのであります。吉田首相以下各関係閣僚諸公は、いつものような一時逃れの言辞を弄せないで、十分誠意を披瀝して納得の行く答弁をされるよう特に希望をいたしまして、私の質問を打切ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 太田議員お答えをいたします。  第五国会における決議に対しましては、すでに前回の国会において一応書面を以て回答をいたしておきましたが、軍人遺族状態については、御意見通り政府といたしても甚だその救済保護等については同情に堪えないのみならず、それぞれ適当な処置を施行いたしております。ただ特に軍人遺族であるがために特別な扱いをするということになりますと、尚、日本においては軍国主義が、政府としても、国家としても軍国主義であるかのごとき感じを與える危險がありましたために、従来政府といたしても十分いたしたいこともいたさずに、することができなかつたのでありますが、併しながらすでに終戰後五ケ年、漸次日本軍国主義に対する疑いも拭われつつあると考えまするから、将来において尚一層進んで適当の処置を講じたいと思います。思いますが、今日まで十分できなかつた事情は、かくのごとき国際的の感情残つてつたということもお考えを願いたいと思います。  又生活保護法その他について、軍人遺族に対する保護はできるだけのことはいたしております。又遺兒の教育その他についても、政府としてはできるだけの処置各省との間に連絡をとつて講じておりますが、詳細のことは主管大臣からお聽きを願いたいと思います。  尚この際、内村清次君の質問に対するお答えを留保いたして置きましたが、お答えをいたします。加賀山総裁を罷免する意思がないか、これは政府においては罷免いたす意思は毛頭ないのであります。又これに対する政府としての見解は、すでに関係大臣からしてお答えをいたしております通りであります。  又星野芳樹君の御質問に対して答弁を留保いたしておりましたが、これに対してこの際お答えをいたします。星野君の質問の要旨は、世界史的背景において日本平和主義に徹して、永世中立を承認せられると思うがどうであるかということであります。平和主義に徹することについては、私は施政の方針その他においてしばしば述べておるところであり、日本国家として、又国民として、飽くまでも平和主義徹底すべきである、徹底するために各種の方法を盡すということは常に述べておる通りであります。併しながら同時に永世中立問題につきましては、これは将来に属することでありますから、今日私はこれに対してお答えをいたしません。(拍手)    〔国務大臣林讓治登壇拍手
  11. 林讓治

    国務大臣林讓治君) 太田議員お答えいたします。  遺族援護につきましては、政府といたしましても、かねてから種々方策を講じておりますが、この遺族方々援護ということは、精神面或いは物質面を分けて考えるべきものではないと考えまして、将来生きて行くことに一つ希望を持たせることが必要であろうかと私共は考えるわけであります。例えば住宅の供給、子女修学等と一体をなすものと考えるわけであります。この援護対策につきましては関係各省が協力いたしまして、それぞれの担当分野においてこれを樹立いたしております。例えば母子寮保育所などは、幸いにいたしまして、昭和二十五年度におきましては相当の数を増設し得られるようになつておるわけであります。又就業能力のない寡婦のためには授産所利用を図り、又先程総理のお話もございましたように、今後生活保護法改正などによりまして、新らしい法的扶助制度を確立いたしまして、その合理的な運用を行うことなどを厚生省におきましては行なつて参つておるわけであります。又労働省におきましても、婦人対象といたします職業補導所を増設することになつておりまするし、又一面、国民金融公庫による更生資金貸付には、引揚者の外に未亡人対象なつておりまして、昨今においては相当利用者が増加をいたしておるわけであります。尚、子女教育のことにつきましては、文部大臣からお話もございましようが、父のない学生は相当與率を増して参つたわけであります。尚、課税の問題につきましては大蔵大臣お話があると考えますが、まだこの辺の施策につきまして遺族の方方に十分に徹底をいたしておらぬ点があるのではなかろうかと考えます。今後におきましては、これを十分周知徹底せしめるようにいたしまして、その実効を将来期しておるわけであります。つきましては、地方公共団体などを十分に指導いたしまして、管内の遺族方々について十分に援護に努めるように指導いたしたいと考えておるわけであります。この結果、相当の数の府県においては、生業資金貸付生活相談内職斡旋等の具体的な対策を実施し始めておりますので、その成果というものはやがて相当に現われて参るものと考えるわけであります。  終りに臨みまして、遺族援護につきましては今後とも国民諸君の一層の温かい御同情と御協力のお願いをいたしまして答弁に代えたいと思います。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 旧軍人遺族に対しまする給與といたしましては、未復員者給與法によりまして、死亡者に対しましては埋葬費として一人千五百円、又遺骨引取旅費として千七百円を基本といたしまして、引揚費の中に合計八千八百八十万円程の経費を計上いたしておるのであります。尚、軍人遺族年金につきましては、御承知通り軍人恩給停止に関する司令部の覚書が昭和二十年の十一月二十五日に出まして、誠にお気の毒ではございまするが、遺族年金を支拂うことができない状態に相成つておるのであります。只今のところ如何ともいたしかねますので、他の手をいろいろに工夫をいたしておる状態であるのであります。  次に、未亡人に対しまする課税特別措置につきましては、従来議論のあるところでございます。やはり所得はその人の所得の性質並びに多寡によりまして、税率その他でいろいろな手を打つておるのでありまするが、未亡人なるが故に特別の措置を講じますことは、今の所得税の建前からはなかなか困難な問題があるのであります。ただ実情相当考えなければなりませんので、今後も検討を続けて行きたいと考えております。  次に、老人或いは未成年者等の事業につきましては、雇入れ使用人等関係から非常に所得が少い、経費が非常に嵩んで来る、これに対して適当の措置をとるべきではないかという御意見でございますが、誠に御尤もでございまして、所得税收入を得るに必要なる経費は全部引くことにいたしておりまするから、かかる場合におきましても、使用人給料等経費として引きますので、それだけ所得が減つて来ると思うのであります。ただ実際面におきまして、そういう特殊事情考えずに標準率等でやる場合があると思うのであります。かような場合におきましては、特に特殊事情を税務署にお申出下されば実情に副うように課税が行われることと考えております。    〔国務大臣高瀬荘太郎登壇
  13. 高瀬荘太郎

    国務大臣高瀬荘太郎君) お答えいたします。  戰歿者の遺兒の育英について特別な考慮をする必要があるという点についてのお尋ねでありましたが、無論この点につきましては十分に考えておる次第であります。先ず日本育英会から奬学資金の貸與をいたしておりますが、その場合に戰歿者の遺兒等については家庭事情等に特殊な考慮を加えておりまするし、又貸與を受けます者の成績條件につきましても、一般では大体成績が二割程度の者までという條件なつておりますけれども、戰歿者の遺兒等につきましては五割程度まで差支がないというふうにいたして、できるだけの考慮をいたしております。それから先程厚生大臣からお答えがありましたように、生活保護法でも遺兒の育英につきましては特殊な考慮が拂われておりまして、生活扶助を受けておりませんでも育英についての扶助は受けられるというようになつておりますし、今度の改正でも、特に育英のための扶助につきましては別の枠で以て予算が作られておる筈であります。約七億六千万円くらいが別に育英のための予算ということになつておる筈だと思います。又その運用につきましても、今までは扶助を受けておる家庭にまとめて與えられたのでありますけれども、それではつい教育以外の方面に使われる虞れもあるというようなところから、学校を通して扶助した方がよくはないかというようなことで、そういうことも考えられておるわけであります。  それから第二の、神社仏閣訪問につきましての昨年の文部省通牒で、特に靖国神社護国神社等については、これを別に除外しておるという点についてのお尋ねがありました。家は昨年の通牒学校生徒団体参拜等について神社仏閣への訪問が許されるということになりましたのは、これは專ら神社仏閣の文化財としての観覽研究というような趣旨でこれが許されたわけであります。従つて招魂社等につきましてはそういう趣旨での意味が含まれておりませんので、これが除外されたわけであります。併し学校生徒が団体的な参拜ができないというだけでありまして、生徒が個人的に招魂社等参拜されるというようなことは少しも差支えがないのであります。    〔国務大臣森幸太郎登壇拍手
  14. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。  農地問題につきましては、当初よりすでに引揚者或いは遺家族等に対しての愼重な態度をとつて参つたのでありますが、昨年局長通牒を以ちましてその徹底方を通知をしたのでありますが、尚末端にその趣旨徹底を欠いておる点もあるように御指摘になつたわけでありますが、更に政府といたしましてはこの趣旨を再通牒いたしまして、御趣旨に副うようにこの趣旨徹底を期したいと存じております。  尚供出の問題は、御承知通り土地というものを標準として割当をいたしておるのでありまして、その生産額を予定いたしまして、そうしてその家庭における必要な量を控除して供出をいたしておるのであります。従つてその営農の実態が婦女子であるとかいう意味において供出程度を変更することは許されないのでありますが、実際の生産力に合う適当な供出量を定めたいと考えるのであります。何分末端へ参りましてこの趣旨が機械的に流れ、公正を欠くような点も決してないではないと存ずるのでありますが、できるだけ公正な供出割当制度を実行いたしたいと考えております。殊にこの経営の面が婦女子等によつて行われる場合におきましては、その農業計画の面におきましても特別な考慮を拂つて、そうして供出制度が公正になるように更に極力改善を加えて行きたい、かように考える次第であります。      ——————————    〔深川タマヱ君発言の許可を求む〕
  15. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 深川タマヱ君。
  16. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 私はこの際、中小商工業者に対する大蔵大臣の談話に対しまして緊急質問動議を提出いたします。
  17. 宇都宮登

    ○宇都宮登君 深川君の動議に賛成いたします。
  18. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 深川君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許可いたします。深川タマヱ君。
  20. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 総理大臣の御出席をお願いいたします。(「総理大臣どうした」と呼ぶ者あり)
  21. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 内閣総理大臣は只今支障がありますので、後の機会に御答弁いたしたい趣きであります。    〔深川タマヱ君登壇拍手
  22. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 政治は暴力になつてはなりません。政治は暴力に流れてはいけないと存じます。(「そり通り」と呼ぶ者あり)私の政治生活はまだ誠に短かいのでございますけれども、その間に政治というものがどんなに大きく国民の幸、不幸を左右するものであるかということを痛切に感じております。生殺與奪の権を時に握つておると思うのでありますが、それ程大きい力を持つ政治であるだけに、一歩これが取扱を誤まりますと全く暴力に陷ると存じます。政治は国民の生命財産を保護するということを第一の使命と考えていなければならないと存じます。(「然り然り」と呼ぶ者あり)敗戰以来の日本の政治は、とかく筋道も道理もなく、暴風のような時がしばしばあつたと思うのでありますが、国民はまじめに働いていただけでは暮して行けなく、而も規則に背きますならば容赦なく刑罰に処される道だけはちやんと準備されておるという、誠に矛盾に満ちたことがしばしば行われて参りましたが、その中の最も代表的でないかと思われることは、昨日新聞紙上に掲載されました大蔵大臣日本中小商工業者対策に対する談話であつたと思うのであります。(拍手)  御就任以来、大蔵大臣は病躯を押して誠によく努力されまして、日本のインフレ克服のために異常な御勉強をなさつておいでになりますことを、他党の私共もよく認めて敬意を表していた次第でございますので、昨日のあの新聞紙上の談話は誠に大臣のために私は惜しいと思つております。併しあの記事が私は間違いであろう、間違いであつて呉れればいいと、大臣のためにも国民のためにも祈つたのでございますが、昨日衆議院予算委員室における大臣に対する御質問に対する御答弁を新聞で伺いますと、残念ながらあの談話を更に上塗りするようなものであつたと思うのであります。(「そんなことない」「そうだそうだ」「そんなことあるか」「その通りだ」と呼ぶ者あり)そこで私は予算委員室、衆議院予算委員室におきましてすでに質疑の行われた問題でございますので、或いは二番茶であるかも知れませんが、参議院は参議院独自の立場におきましてどうしてもこの問題を取扱いませんと、参議院の見識にかかわることでございますし、(拍手)野党が若しこの問題を放任に対して置きますならば、国民全体から野党不信任案を提出される問題だと思うのであります。そんなことはないという野次が出ているようでありますが、私はその方々にもついでにお尋ねいたしたい程でございますが、苟くもあの言葉は、国民の生命財産を守ることを第一の使命としていなければならない筈の政治でありますのに、五人や十人中小商工業者が死んでも仕方がないと、全く国民の生命というものを塵のように軽く取扱つている上に、財産保持に至りましては、中小商工業者が税金が拂えないなれば差押えをして貰えという言葉があります。してみますと、日本の全体の中小商工業者が全部税金を納めないで差押えを食つてしまつたならば、その後数日にして政府はどんどんそれを競売に付して、それで国家の財政を賄つておいでになるおつもりでございますか。これが一体政治でございましようか。私は一体大蔵大臣は、ふだんはよく勉強しておいでになると思いますけれども、政治家として最も大切であるところの国民に対する情を欠いだ政治であるが故に、画龍点睛を欠く、政治家としまして誠に惜しいと思うのでありますが、ふだんの大臣は、靜かにお考えになりますと、こういう暴言はお吐きにならなかつたかも知れないが、最近の政治の余りの忙しさのために、若干神経がお疲れになつていらつしやるがために、こういう御発言をなさつたのではないかと、むしろ私は善意に解するのでございますけれども、(「それが本音だ」と呼ぶ者あり)若しそれならば尚更のこと、暫らく御靜養になりまして、本当に大蔵大臣のお心の底から、立派な智情意揃つた、智情意三つ揃つた立派な政治家として再出発をして頂きたいのでございます。至誠の人であることには間違いございません。ヘルツの人であることには間違いございません。確かに頭脳明晰の政治家であるということは私一人が認めるどころではないのでございますが、惜しいかな情を欠いた、国民に対する温情を欠いた政治家は、最も大切なる一つの要素を欠いていると存じますので、日本中小商工業者を慰安し、激励する意味におきましても、どうしても暫らく大蔵大臣に神経がまじめに動きますように休養をして頂かなければならないと思うのであります。(拍手)同時に、時の総理大臣である吉田さんに対しましても、この問題に対しまして十分深甚なる御考慮を煩わしたいと存じますし、こういう現況にとどめますと、中小商工業者は、この政策は日本の国の民主自由党……只今自由党になりましたが、自由党の政策であるとお感じになるのであります。(「そんなことはないぞ」と呼ぶ者あり)この頃日本の政治は、農村は恐慌に喘いでおります。都会では中小商工業者に対しましては飽くまでも温情を欠いた虐政が行われておる。一番保護されているのは誰かと申しますならば、再び独占金融資本が復活しようという大資本家擁護の政策であるということを、これを国民は自由党の政策であると認めて、自由党全体の信用を落しますが故に、(「詭弁だ」と呼ぶ者あり)今のうちに国民に対して心機一転をさせるために、自由党は責任を負つて総辞職をなすべき問題ではないかとさえ思います。(拍手)併し私共も全く大蔵大臣や、自由党や、吉田さんだけを責めるものでこございません。この内閣を選んだのは私達の責任でございますので、私も議員の一人といたしまして、実は日本中小商工業者に対しまして少からず責任感じまして、心からお詫びを申上げておる次第であります。恐らく今日の日本中小商工業者は、この議会の一点に向いまして怨みを持つているだろうと思います。この頃自分達の世帶持ちが悪いために、こんなに自分の経営がまずいのだろうかと、夜の目も寢ないように一生懸命努力していたときでございましようのに、この談話を聞きまして瞬間、これは自分達の努力の足らないためでなく、政治のために自分達がこんなに苦しみつつあるんだということを改めて認識しただろうと思うのであります。敗戰以来日本国民は、誠に暴政に近いようなことが頻りと行われますので、塗炭の苦しみに喘いでおりますのに、そこに一点の情のないこういう言葉を時の大臣から聞かされますと、再び立ち上る勇気も挫けてしまうのではないかと思います。若しこういうことを、こういうインフレ克服の誠に過激な政策が行われておる時でございますので、大蔵大臣はむしろ反対に、この頃おつしやつているように、今朝新聞で見ている記事のように、暫らくインフレを克服するためにはこういうふうな政策もなさなければならない、暫らく日本中小商工業者は苦しいであろうが、十月頃までにはこうしてお前達の立ち上る方策を決めるから、暫らく辛抱しておれ、死んではならない、死ぬ程苦しいなら相談に来るようにと(「大蔵大臣やれよ」と呼ぶ者あり)そういうことをおつしやりながら、あらゆる政治的な努力をなすべきであつただろうと思います。(「その通りだよ」と呼ぶ者あり)同時に大臣は、日本のインフレは正に消費インフレであるが故に、これらに対しまして強い下剤をかけなければならないと言つております。正に或る意味におきまして、インフレ克服には相当過激な手段も必要と存じます。それにはどうしても温情が、人情が伴わなければならないと存じます。併し一旦御辞職を勧めましたけれども、大臣がお考えになりまして、どうしても御自分が考え違いしているということに飜然とお気付きになりますならば、その御意思をここに表明して頂きたいと思います。大臣に……。総理大臣からも……。(「分つたつた」と呼ぶ者あり)  ついでに申上げますならば、それならば一体雨降つて地固まるということもございますので、最近中小商工業者一家十人の自殺をきつかけにいたしまして、方々に税金旋風のために犠牲になりつつある中小商工業者もございますし、この度の大藏大臣の暴言というのも重ねまして、これをきつかけにいたしまして、日本中小商工業者救済のために議会を挙げて新らしい対策を以て行わなければならないと思うのであります。若しそうだといたしますならば、今後一体大蔵大臣は、日本中小商工業者救済のために果してどういう政策をお持ち合せになるか、これをここで一つ端的に御表明して頂きたいのでございますが、私共の考えますところは、今日、日本中小商工業者困窮の原因は、従前はもとより、日本の金融政策が大きい誤まりを犯しつつあるということ、もう一つは購買力の欠如であると思うのでありますが、この頃の税金に対して附加価格税その外固定資産税ですか、ああいう問題に対しましては、衆議院でも野党が結束いたしまして修正案を出すために努力いたしておりますが、なかなか修正が通りそうにもございません。こういう問題に対しましては、是非とも修正して、中小商工業者の税金に対しましては大幅に軽減の処置が講じられなければならないと思います故に、金融の面におきましては、千二百億円の国債償還などというものは、その時期ではございません。(「そうそう」と呼ぶ者あり)成る程国民は酒を飲んだり女狂いに使う金じやないからいいようなものですけれども、借金を拂いますには、おのずからその時期と方法がございます。国民が贅沢いたしておりますならば強制資本蓄積もよいでありましようが、国民を飢えさして置きまして強制資本蓄積では筋が通らないと思います。そこで私共の考えますのは、ああいうふうな借金を返しますのは暫らく国民が復活するまで猶予いたしまして、あの金で全部そつくりそのまま、一方に失業救済をなすなり、一方におきましては資金難に窮しておる中小商工業者に大幅に金融の措置を講じて貰いたい。昨年などは、政府は金を持つてつて、多額の見返資金をちやんと懷ろに用意して置いて、それを国民に貸したならばよいのに、それを国民に貸さないで置いて、今年も最近二十五年度の見返資金の用途は大体発表されましたが、一体何月頃どれだけするかというような案が全然ございませんので、予算審議に当りましても私達は手の打ちようがございません。早くああいう見返資金に対しましても、大企業中心ではなく、中小商工業者にどんどん金融をされる、及びこの頃この大きい日本の金融を掌つておりますところのこの銀行に対しまして、銀行に沢山の国債償還の金が集まる、見返資金が集まる、その銀行は国民に貸したければ貸す、貸したくなければ貸さないでもよい、全く大金が個人の自由裁量に任されておりますが、これは国民の公益に違反するところが甚だしいと存じますので、国債償還を中止されまして、銀行にこの金を貸すのでなく、直接国家があれを適当に処置なさることがよいと考えます。  更に、中小商工業者の金融機関に対しましては特別の措置をお講じになることを望むのでありますが、更に購買力を復活さしますことについては、政府はただ單に、来年度になりましたならば貿易振興その他政府資金が沢山放散されますので、それでどんどん購買力は復活されると言うけれども、なかなかこれだけでは中小商工業者を満足さすことができないと思いますので、非常に負担に苦しんでいる中小商工業者に対しまして、この席から一つ大蔵大臣は懇切丁寧に御発言を願いたいと思います。同時に附加えますが、今日の日本は完全なる独立国ではございません。━━━━━━━━━━━国会政府は、国民一致結束いたしまして、即時講和会議の開催につきまして側面掩護の猛運動に展開すべきだと存じます。  これを以て終りにいたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手〕    〔「しつかり」と呼ぶ者あり〕
  23. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。  政治の要諦は、国民全部がおのおのその堵に安んじ、生命財産の保護に万全を期することであることは申すまでもないのであります。私はこの意味におきまして、就任以来我が国の経済再建、政治の独立に向つて邁進して参つたのでありますが、如何にも敗戰後の数年間のあのインフレと統制経済とを一挙に自由主義の経済に持つて参ります場合におきましては、相当の混乱があることを覚悟しなければならないのであります。これは中小企業の問題ばかりではございません。公務員の給與の問題にいたしましても、いろいろな「しわ」が今寄つて来ておることは認めざるを得ないのであります。この「しわ」は我々国民の努力によつて越え得る「しわ」であるのであります。伸ばし得る「しわ」であるのであります。而して私は日夜国民経済の自立に努力いたしてあらゆる手を打つておるのでありまするが、いろいろな手を打つた場合、その目的は万人がその所を得るようにする努力であるのであります。(「死んでからじや駄目だ」と呼ぶ者あり)併しいろいろな問題のために、私としては一人の落伍者もないように熱望してやつておるのでありますが、若しそういうようなことが起つた場合においてはどうするかということを聞かれましたら、これは起らないように努力はいたしますが、若し万一起つた場合はこれはいたし方のないことで、自分としてはそういうことのないように努力しておるということであります。丁度これは失業問題も同じことであるのでありまして、私は今後とも身を粉にしてでも国民経済の自立に邁進する考えであるのであります。従いまして、自分でどうこう言うことはできませんが、私の心境といたしましては今休養するような気持ちを持つておりません。死んでも日本経済再建に邁進する覚悟でおるのであります。尚、過日いろいろな点で私が喋つたことが全部載つていないために誤解を受けたことは遺憾でありますが、(「全部載つたらもつとひどいぞ」と呼ぶ者あり)お話にもありました税金を納めるのに非常に困る、そうして納めなかつたなら追徴税、加算税が乘つかつた来る、これは非常に納めにくいところに持つて来て、追徴税、加算税が溜つて来ては困るというような質問がありましたが、そういう場合においては、私は方針としては、今暫らくは公売処分をしないという指令を出しておりますから、加算税や追徴税で非常に困るというふうな場合には、例外的に一時差押えて貰つて、加算税、追徴税を免かれる、軽減する方法もあるということを申したのでありまして、全部差押えて貰うというようなことは毛頭考えてはないのであります。而して最後に、将来の中小企業振興対策としてどういう考えを持つておるか、この中小企業対策といたしましては、お話通りに金融、租税、購買力の増加、これが要点であると考えておるのであります。金融につきましては昨年八月以来いろいろな手を打ちました。大企業に金を出すことによつて中小企業が潤う場合もあります。又大企業でなしに、日本の昔の経済状態から言つて、あの問屋の占むる地位を考えまして、問屋に対しての金融をやつて中小企業を助ける途もあるのであります。例を問屋にとりますと、昨年八月問屋に対しまする金融の順位を上げまして、八月に百八十億円くらいであつたのが四百数十億円の問屋金融になつておる。これは一例でありますが、政府は預金部資金を出しますのみならず、復興金融金庫にあります金を全部使うようにいたしまして、できるだけ金融の途を図つておるのであります。ただお話のように、来年度になりますると、政府が国債償還をいたしますその金が銀行、預金部に流れます。今までのように市中銀行に来る金を直接使わすことは、金融制度として又今までの実情として十分でないのを見まして、審議をお願いいたしますように、農林中金、商工中金、或いは興銀、勧銀にその償還せられた資金を集める。そうして中小企業に向けようといたしておるのであります。その他いろいろの手を考えておりますが、中心はそこであります。金融をうんと円滑にいたしまして中小企業の育成を図りますと同時に、今年度におきましては、中小商工業者につきましても非常な減税になるのでありまして、今年度……は間違えましたが、昭和二十五年度におきましては非常な減税になります。後刻数字を示してよろしうございますが、農民、中小商工業者は勤労階級以上の減税に今年度から浴することに相成るのであります。私はまだこれくらいの減税で満足いたしておるのではありません。私が今深川さんの御意見に反して債務償還を今年あれだけいたしますことは、昭和二十六年度において尚今年にも劣らないような減税をする見込の下にやつておるのであります。(拍手)勿論私は国民生活水準を上げないというのではありません。又実際上げつつあるのであります。今ここにもお話するように、占領治下であつてアメリカから援助を受けておりますときには、アメリカの援助によつて急激に生活水準を上げるわけには行かないのであります。私は減税によつて生活水準を上げると共に、債務償還をして、若しアメリカの援助がなくなつても国民が塗炭の苦しみに陷らないような準備の下に今あらゆる施策をやつておる次第であるのでございます。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり、この他発言する者多し)ただ私は、今暫らくこれを我慢をすれば、昭和二十五年度と同様に二十六年度におきましても相当の減税をいたしまして、中小商工業者の育成に当りたいと考えておるのであります。尚又購買力の点につきましては、お説の通り滯貨もあります。併し滯貨があるからと言つて直ぐ購買力を増大いたしますと、終戰後の三年間のような消費インフレが起るのであります。この消費インフレが危いのでございまして、私は生活水準を上げながら日本の再建に役立つような方面に購買力を向けるよう予算を編成いたしました。日本国土再建並びに経済復興の方面に極力お金を使い、直接需要を殖やそうといたしておるのであります。  これを要しまするに、中小商工業者は勿論、勤労階級も、又農民の方にも、この経済再建の関門を越える場合におきましては非常に苦痛があるのであります。国民おのおのその苦痛を分けて、手を握り合つて、この難関を突破しようということを念願しております。その中に落伍者が一人もないことを熱望しておるのでありまするが、ただ如何にも難事業でございまして、その間に一人でも落伍者が出た場合に、これは仕方がない。私は一人もないように努力いたしておりまするし、又今後とも命のある限り再建に邁進いたしたいと考えております。(拍手)      ——————————    〔柏木庫治君発言の許可を求む〕
  24. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 柏木庫治君。
  25. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 本員はこの際、中小企業問題についての大蔵大臣の談話に関して緊急質問をすることの動議を提出いたします。
  26. 大隈信幸

    ○大隈信幸君 只今動議に賛成いたします。
  27. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 柏木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許可いたします。柏木庫治君。    〔柏木庫治君登壇拍手
  29. 柏木庫治

    ○柏木庫治君 私は、現内閣の強力さをますます強力に、そうしてこの難局を立派に担当して頂きたいという意味においてお尋ねをいたすのであります。  池田蔵相は一日の記者団との会見席上、中小企業者が五人や十人倒産するも止むを得ない、こういう言葉を出されたそうであります。そこで私は池田さんへお尋ねをする。あなたの住いいたしている心の世界は一体どこですか、こう聞きたいのであります。私は大臣と雖も、否、大臣であるならば、特に民衆と共に、民衆の中に住いして頂きたいと思います。中小企業者が五人十人倒産するも止むなし、こういう言葉を聞いた時に、私はこの人は民衆の外、少くも民衆の心の外に住んでいる人だなあと考えさせられました。金融資本の中に温かく住んで、民衆の生活を外に考えておられるのではないかとさえ考えたのであります。(「そんなことはない」「その通り」と呼ぶ者あり)というのは、努力が足らずに一〇〇%の苦痛があつたときに人が倒れるといたしますならば、五人十人倒産者があつたときには、それに続いておる者が非常に多いということをお知り願いたいと思うのであります。申上げるまでもなく中小企業者が極度に苦しむということであります。池田蔵相の大先輩であられます高橋是清さんが曾て大蔵大臣のときに、あの人の唯一の嗜好といたしておりました煙草をぽつきりやめたことがあります。側近の者が、あなたのただ一つの楽しみである煙草を何でやめたか、こう聞きましたときに蔵相は、国民に苦しい思いをして貰わなければならないんで、私がこれを一つやめたことが国家の経済にそんなに関係はなくても、先んじて私がこの苦しみをするんだと、蔵相の先輩が仰せられたことは、私は誠に人の上に立つ者の心構えであると存ずるのであります。然るに一日のあの蔵相の言葉を蔵相今お考えなつて当然のことだと思うならば、私は心の底にむごいものを持つておると思います。(「その通り」「そんなことはない」と呼ぶ者あり)不用意に出た言葉であるとするならば、まだ人間ができてないなあと、こう考えます。倒産者が一人あつたときに、高橋蔵相であつたら、きつと涙しただろうと思うのであります。むごい心やら、できてない心では、大臣の椅子に少しふさわしくないものがあるのじやないか、こういうふうに私には考えられました。(「全然駄目だ」と呼ぶ者あり)私は蔵相の今日の御答弁を聞きましても、この難局を切り拔けるのに非常な努力と熱と、而も豊富な経験を持つて、世の多くの人が現内閣の大黒柱とまで言われるだけの熱も迫力も持つておるなあと敬意を表します。(「その通り」と呼ぶ者あり)併しああいう言葉をみずから出して当然でと考えるならば、その大黒柱に白蟻が食い込む隙があるんだということを政治家として思つておるかどうか。私は蔵相みずから顧みて、人の上に立つ者があの言を吐いたことによつて国民が心の底に寒さを感じたというのも一つ感じであります。上に立つ者の責任としてみずから反省するところなきや否や、その態度を承わりたいと存ずるのであります。(「休養するそうです」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 柏木さんにお答え申上げます。  一日の新聞記者諸君との会見の一問一答が出たのでありまするが、勿論、日本経済再建の中途において、誠に遺憾ではあるが、若しそういうふうな落伍者が出ても、これはもういたし方がないというこの言葉は正しく申しました。併しこれには前後いろいろなことがあるのであります。初めから落伍者が出てもそれは止むを得んぞと、こういう捨鉢の気持では全然ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは十分私の先程来申述べましたことからお酌み取り願いたい。私は将来政治家として立つ以上は、又立たんとする私としては、民衆の中にあり、民衆に融け込むことが絶対要件であるということは十分承知いたしております。併し現在の事情その他から申しまして、あらゆる努力をするんだと、而も努力をしても現にそういう人があるということは新聞に出ておるのであります。こういう時はどうするかといつたときに、何人も涙を呑んで止むを得ないと答えるより外にはないのであります。決して私はこれに対して、捨てた、捨鉢な気持で言つておるのではありません。これが実情だ。(「それが吉田内閣の政治だ」と呼ぶ者あり)そこで私としましては、極力努力して、一人の落伍者もないように日夜努力いたします。今後もするつもりであります。ただ遺憾な点は、十分私の真意が新聞に皆載らなかつたということにつきましては遺憾の意を表するに吝かではございません。今後ああいう場合におきましては余程注意しなければならぬということは分つておりまするが、私の気持は決してそういうものではないということをお酌み取り願いたいと思います。(「了解」と呼ぶ者あり)      ——————————    〔姫井伊介君発言の許可を求む〕
  31. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 姫井伊介君。
  32. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 私はこの際、大蔵並びに通産大臣の中小企業に対する見解発表に関しまして緊急質問をすることの動議を提出いたします。
  33. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 只今の姫井君の動議に賛成いたします。
  34. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 姫井君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言を許可いたします。姫井伊介君。    〔姫井伊介君登壇拍手
  36. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 ボス的な事業経営者がありまして、自分の工場の維持、家族の生活のためには相当の努力をするのでありますが、それがために、そこに働いておる従業者の生活は深く顧みないで、ときには自分の事業の経営上給料の減額もする、支拂の遅欠もやる、お前達困つておるならば、家の道具も売つてしまえ、先行きの不安に対して何もじたばたしないでも、俺の経営方針従つて行けば命つなぎができる、借金のできないのはお前の信用の不足のためじやないか、税金が納められないならば差押えも受けてみろ、この従業者の多数家族の生活考えないで、ときには破産も或いは悲惨な自殺ということも止むを得ないではないか……重労働、長時間勤務を課しまして、増産は従業者の生産意欲によるものだと、うそぶいておるような、そうした事業家がおつたといたしまするならば、世間はどういう批判をいたすでありましようか。あれは我利々々亡者だ、無血冷酷漢だ、弱肉強食の鬼だと指さすでありましよう。  大蔵並びに通産大臣の報道記者会談のお言葉、並びに衆議院における答弁のお言葉、これを考え合せまして、どうなんでございましよう。  更に二月二十二日のことでありますが、日教組と高瀬文相との会談におきまして、給與改訂並びに産業界の窮状を訴えましたことに対しまして、高瀬文相は答えて曰く、「三、四ケ月経つてみねば分らないが、それまでに潰れるものは潰れる、死ぬる者に薬はない」と言われたということが教育新聞に報道されております。この一連の考え方を合せてみますと、正しくそれは現内閣のとつておるところの一つ方針ではないか、(「その通り」と呼ぶ者あり)かように考えるのであります。  去る二日、中小企業庁の蜷川前中小企業庁長官の送別式におきまして、総司令部経済科学局のアンチ・トラスト・カルテル課長のウエルシユ氏はかように言つておられるのであります。「中小企業の振興なくして日本産業の振興はあり得ない」。これは政府も時にそういうことを言つておられる。国内産業の振興並びに貿易を伸張させるためには中小企業を守り立てなければならないと言つておられまするが、それは口ばかりであつて、真にその重要性を認識しておられまするならば、たとえ幾らかの誤まり伝えがあつたといたしましても、今の新聞に報道されておりますようなお答えはでき得ない筈のものだと私は考えるのであります。(「然り」と呼ぶ者あり)結局お話によりましてその根源を考えてみますると、資本主義的自由経済政策をとられたために、いわゆる優勝劣敗、この線が強く浮び出て来るのであります。成る程優勝劣敗ということは人間の本能でありますが、それは主として動物的の本能なのであります。政治方面から考えますると、相互扶助の人間的本能というものが重視されなければならない。政治は力なりと申しますが、一方、政治は徳でなければならない。現政府が経済安定はこれを大産業企業者、金融業者中心に考えておられるのでありまして、金融措置のごときものも先程大臣みずからお述べになりましたような操作がとられるのであります。即ち中小企業というものを全く軽視いたしまして、これの計画的育成助長については深きお考えが欠けておるやに思われるのであります。大産業並びに先程お話がありました問屋制度を通じて資金は流す、最後に受取りますところの涙金によつて一体中小企業の発達ができるものでありましようか。中小企業者の倒産の五人や十人の問題ではないのであります。国民生活の上から申しますると、それに結び付くところの多くの勤労者の家族もあるということを忘れてはならない。まさしくお言葉から出ましたところのその内容は、資本主義的自由経済政策の矛盾と、暴君振りと、悲哀と、幻滅を表明するものであると思うのであります。(「ヒヤヒヤ」「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)万人おのおのその所を得せしむるというお言葉がありまするならば、もう少し徹底したことが考えられなければならない。例えば死に行く者は仕方がないではない、その人の罪によつて死んだのではない、政治的の原因、社会的の原因、あらゆるものがありまして、そこに倒産若しくは自殺の悲惨事が起る。その場合に仕方がないとして手を組んでおることが本当の政治家の態度でありましようか。(「それが自由主義だ」と呼ぶ者あり)むしろ私共はそうした悲惨事が起きたことの原因について責任感じなければならない。(「その通り」「ヒヤヒヤ」と呼ぶ者あり)家族の者が、自分の子供が不幸な目に会いましたときに、その死骸に抱き付いて、「許して呉れ、俺がお前に温かい着物を着せなかつた、食べ物を與えなかつたためにお前はみじめに死んで行くのだ」、この気持なんです。死に行く人を抱きしめる親心であります。而も死に行くのではない、倒産に瀕する、生活に窮する者に対して、仕方がないでなくして、その前にできるだけの手を盡さなければならないということは、当然政治家のなすべき仕事でなければならない。  従いまして私はお尋ねといたしましては、これらの問題につきまして政府は政治的責任をお感じになりませんか。中小企業育成助長の積極的の合理的の政策如何、これは先程お答えがありましたからお答えなくてもよい。又今のような冷酷なお言葉が真であろうとあるまいと、一度世間に報ぜられましたならば、それによつて打撃を受けるところの中小企業者並びにそこの従業員、勤労者多数の人の心理上の打撃はどうなんでありましよう。全くどうすればいい、俺達の生活又前途は暗黒の闇に突き込まれたのである、健全な発達に寄與しようといたしましても、その意欲を失う、これらの心理上の責任に対しまして、又政府といたしましては如何なる善後措置をおとりになりますか。  いま一つは金融面でありまして、大産業若しくは金融機関、問屋制度を経て資金を流すということでありましたが、何故に今日行われておりますところの協同組合組織、これを助長活用されないかということであります。即ち中小の人達が打つて一丸として作り上げたところのこの協同組合こそ、この金融操作の中心機関とされることにおきまして、初めてそこに中間を通らないで、直接、金融はその業者に流れて行く。而も業者は協同組合によつて、共同責任によつて、この借入並びに返済の義務を盡し得るのであります。然るに一方、新らしい制度でありますところの信用協同組合でありますが、これらの設立さえなかなか認可が下りないで地方では非常に苦しんでいる。この実情も御存じだと思います。従いまして、こういうふうな協同組合組織を活用せしめるということにつきましてお考えがございませんか。  以上お尋ねをいたします。    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 姫井議員にお答え申上げます。  私は決して手を拱いて見ているのではございません。御承知通り極力努力をいたしておるのであります。足らざるところは尚一層努力いたしまして、中小企業並びに日本経済再建に邁進する覚悟であります。従いまして、政治的責任をとつて、どうこうという考えは持つておりません。  中小企業の育成につきまして、先程大金融から問屋金融のことを申上げましたが、個々の金融につきましても十分考えておるのでありますお話通りに協同組合組織を利用する。ことに対しまして極力やつております。即ち預金部の金にいたしましても、又政府資金にいたしましても、先ず信用組合、今の言葉で申しますると信用協同組合、無盡、商工中金、こういうものに先ず優先的に出すようにいたしまして、(拍手)そうして、その次には地方銀行、こういうふうにいたしておるのであります。決して協同組合組織をないがしろにいたしておりません。私は通産大臣を兼ねましてから特にこの方面に力を入れまして、中小企業の育成について力を入れております。尚この機会に申上げて置きまするが、中小企業庁の予算は前年度は三千万円程度であつたのでありまするが、本年度は二億円に増加いたしております。これは増加いたしまして、各個々の企業の診断を行い、融資すべきものにはどしどし銀行を誘つて融資せしめるようにいたしております。先般調査いたしました中小企業庁並びに各府県の調査によりますと、中小企業に向つて七十億円ほどの長期資金の要求がありました。これを精査いたしますると、先ず取敢えず四十億円は早急に出すべきであろうという結論が出まして、四五日前から大蔵省並びに通産省におきまして、各金融家を集めて先ずこれらの方から出す、そうして金の準備はこういうふうにすると、こういうふうにやつておるのであります。私は今回若し中小商工業者に対しまして無用な刺戟を與えたといたしまするならば、今後この刺戟をよくするように、善後措置につきまして、金融において又その他のことにおきまして全力を盡して行きたいと考えております。(拍手)    〔姫井伊介君発言の許可を求む〕
  38. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 議事の都合により本日はこれにて延会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 松嶋喜作

    ○副議長松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。  次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十五分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、遺族援護に関する緊急質問  一、中小商工業者に対する大蔵大臣の談話に関する緊急質問  一、中小企業問題に対する大蔵大臣の談話に関する緊急質問  一、大蔵大臣兼通商産業大臣の中小企業に対する見解発表に関する緊急質問