運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-02-13 第7回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月十三日(月曜日)    午前十時三十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十六号   昭和二十五年二月十三日    午前十時開議  第一 常任委員長辞任の件  第二 自由討議(前会の続)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、常任委員長辞任の件。議院運営委員長高田寛君から委員長を辞任いたしたい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて本件許可することに決しました。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、只今欠員となりました議院運営委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  7. 大隈信幸

    大隈信幸君 只今議院運営委員長選挙は、成規の手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  8. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 只今の大隅君の動議に賛成いたすものであります。
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大隈信幸君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長議院運営委員長竹下豐次君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、自由討議。本日の自由討議は前会の続きでございます。発言者はそれぞれ発言時間を遵守せられんことを望みます。これより発言を許します。    〔三木治朗発言者指名許可を求む〕
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 三木治朗君。
  13. 三木治朗

    三木治朗君 日本社会党木下源吾君を指名いたします。
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下源吾君の発言を許します。    〔木下源吾恒登壇拍手
  15. 木下源吾

    木下源吾君 私は本日の自由討議に、ベース改訂財政、こういうことを申上げて、実は各位に一つ御相談でございます。ベース改訂を行うということは、人事院勧告趣旨は全く今世論が支持しておるのであります。世論が支持しておるということは單なる支持でありません。御主憲法下において公務員がすでにいろいろな行動の制限を受けておるのであつて、その半面に、これが公務員の福祉を保障する、こういう保護をするという義務民主王義国家においてはすでに実行せられておる、こういうことをマ書簡の中に書いておるのでありまして、従つて国家といたしまして、この公務員を保護する、而も権威を保たしめる、このことが当然の義務でなければならないのであります。而も法律によつて、かかる趣旨により制定せられた国家公務員法によつて人事院がこれを勧告しておるのでありまして、この場合において政府はこの勧告を單なる字句の上の勧告ということに受取つておる。国会又これに対して何らの意思表示をしようとしていない。公務員の側に立つて見れば誠にやるせない思いであろうと考えるのであります。で、そもそも政府がこの公務員給與ベース改訂しないという根拠は極めて薄弱である。一方民主国家といたしまして、人事院法律によつて定められたこの精神に従い、條文従つて、而も科学的具体的な計数を現わして、而も一方においては公務員人権を尊重して、民主主義的であり、科学的であり、合法的にこれが勧告を行なつておる。而もこの勧告たるや單なる勧告ではないのであるけれども、先ず政府はこれに対しまして答えておることはどういうことであるかと言えば、公務員給與は極めて悪い、そのことは十分に認めておるけれども、これを財政の上からはやられないのだ、こう言つております。而もその理由の中には、昨年の三月に六千三百円ベースが完全に実施せられたのである、その以後物価は横這いしておるのだから、公務員はこれは食える筈である、こういうよう言つておるのであります。私はこのことは非常に重大なことだと思うのであります。この給與本質は、食えるからこれでいいんだ、こういうのではない。ここで人事院態度政府態度とは全く違つておる。一方は合法的に、民主的に、科学的にこれを勧告しておるのであるし、一方は封建的に、公務員奴隷雇用関係の下に実施しようとしておる。このことは、この二つを対照すれば明確である。私は、現政府はみずから民主主義の政治を行なつておると、こう言つておりますが、底に流れているこの考え方は誠に封建的である。食えさへすればいいんだ、極めてこれは公務員の不安であり、そうしてかかる雇用主に使われておるということは、民主主義国家の一員として極めて不愉快であると私は思う。そうでなければならぬ。私はかく申上げることは決して独断ではありません。一昨日の予算委員会において、山下人事官にこのことを私は明確に質問いたしましたところが、人事院においては、そのことは非常に心配しておることであるが、事実はあなたのおつしやる通りでありますと、かように申しておるのである。私共参議院といたしまして、民主主義を達成するためには極めて愼重でなければならないし、又参議院本来の使命を達成する上においてこの点は非常に重大だと思うのであります。  さて、然らば政府の言うところの財政上これは不可能であるかどうか。私は決して不可能だとは思わない。なぜならば、第六国会におきまするあの補正予算、あの場合に、政府は当初一銭も公務員の要求に対しては出すことはできないと言うて、而も最後にいろいろのいきさつを経て最後に五十数億を出しておる。この予算は言うまでもなく三ケ月間の予算であります。あの補正予算は三ケ月間の予算である。この中から五十数億を出しておるのであります。二十五年度のは大体四倍である十二ケ月の予算であります。これは五十億の四倍二百億は、この予算の中に潜んであることを私はここで確言して疑わない。なぜならば、補正予算に組まれておる人件費物件費、旅費、苟くも補正予算で五十億捻出した、このような予算が前年度予算よりも二十五年度予算は殖えておるのでありまして、決して減つておらないのであります。この一つを見ましても、私は財源の上において政府は不可能だということを断じて言わせられない。政府がかかる自明な理窟も尚蹂躪しようとするのは、別に意図があるということは誰しも考えられるのであります。そのことは言うまでもなく一番弱い雇用者資本の力を以て圧迫する、その方に極めて忠実である故に、雇用者、使用人、労働者の苦痛を顧みない。これを裏返して言うならば、我が国インフレを止める、或いは又経済安定をするために、公務員並びに全労働者の、もつと附加えるならば農民中小企業をも引つくるめて、これらの犠牲において我が国の経済を安定しようと、かようにもくろんでおるのである。この根柢あればこそ、あらゆる法を無視し、あらゆる合理を曲げて、そうして多数を以て衆議院においてこれを阻止する、このこと以外にありません。私はこのことは、そんならばお前の独断である、詭弁であると申されるかも知れませんけれども、それは違う。專売裁定におきまして、この一事をとつて見ましようか。政府財政上、資金上不可能だと、かように申しておりますけれども、これは私は昨日日曜で横になつておりましたところが、吉田官房長官は何らかの討論会で言つておりましたが、(「増田だ」と呼ぶ者あり)増田官房長官は言うております。どういうことを言つておるかといえば、專売には予算がないのだ、若しこれを強いて出そうとすれば、千百九十億かの利益、この利益は税と同じものである、それを食い込む以外にないのだ、かように言つておるのであります。税を食い込むのだ、こう言つておる。これは詭弁も甚だしい。決してこれを財政の上に食い込まなければならぬことはない。なぜなれば、今年度は諸君が御承知通り二十四年度の補正予算において專売は二十五億円ぐらいは予備金を持つてつたのでありましよう。この前の国会で我々はそのうち一億を残して、十億は利益が少いというものを補填し、十四億円の金を以て十二万トンの塩を買入れることを決議したではありませんか。そうして今專売にはデラ台風のために三十数億の不用の資金がある。この資金があるやつで何をしようとしておるかといえば、大蔵大臣は部分の権限限りにおいて二十万トンの塩を買おうとしておるのである。先には十二万トンの塩を買うために国会にこれを議決を求め、今二十万トンを買うのに大蔵大臣だけでこれをやろうとしております。そうして一方には、專売裁定の結果、一億二千八百万円で、それだけあれば今裁定に従える、この金を国会に持込んで不承認の承認を求めようとしておるのである。かかる矛盾は一体どこから出て来るのでありましようか。而も專売会計経理する分において、三十億のデラ台風で不用になつたこの金の中で塩を買う。今買う塩は十五万トンは翌年度に倉庫の中につましておく、こういう予算であります。而もあの会計の内容を見ますというと、それは全部切捨ててしまつて、お互いならば棚卸しをして、やはり計算の中に入れるべきものを、全部これを切捨ててしまうところの予算である。そのような予算措置大蔵大臣国会に諮らないでやうろとしておる。そういうことを引つくるめて、この予算において四億何ぼの赤字が出る、かように申しておるのである。誠に奇怪千万であります。国鉄の場合でも、政府は昨日の増田長官の話によりますというと、裁定に従えば運賃を上げにやならぬ、こういうことを言つておる。尚この前の国会で何十億かの金を一般会計から貸してやつておる、こういうことを言つておるのでありますが、そういう理窟は、私共は二十五年度予算を見ますというと、そういう理窟に我々は承服することはできない。何故なれば、国鉄は二十四年度において見返資金から百五十億円かの建設資金を繰入れておる。本年はこの見返資金はぐつと減つておる。減つておるが、前年度よりも余計に金を注ぎ込んで仕事をすることをこの予算の中に盛り込んでおるのである。このことを見るならば、国鉄は明らかに国鉄の営業において金を生み出して行つておることが明らかでありませんか。何故に公務員の、或いは公共企業体国鉄職員のこのベース改訂する金だけがないと言うか。何故それを出す努力をしないのか。私共は予算を具さに見まして、現政府のやり方は誠に皆さんも腑に落ちないのであろうし、国民も腑に落ちないであろうと考え、私共はこのことを国民の前に明瞭にすることが必要だと考えます。今ベース改訂をすれば六百億の金が要つて、それは税金国民から取らなければならないと、かように無責任にも増田君や或いは大蔵大臣が放送しておるのである。諸君我が国公務員は、政府職員は八十七万何千人の定員法で決められておつて、現にまだ八十五万人以下であることは御承知通りでありましよう。七千八百七十七円のベースに切替えて千五百数十円の昇給になります。ベースが高くなるが、尚この中から所得税の撥ね返りを引けば、ベースは一人前千二百円程度よりなりません。この千二百円を八十五万人に掛けて見れば、子供でも分る、一月に十億幾らかでありましよう。一ケ年に百二十億ぐらいにしかなりません。政府の言うのは、その他の鉄道專売も公団も、あらゆるいろいろなものをここへ持つて来るのでありますが、鉄道專売なんというのは、これは政府職員とは違うのである。これは違うのであります。又地方公務員の場合も持つて来ておりますが、地方公務員でも何も政府から金をやらなければならんことはありません。今度の税制改革において御案内の通り、独自に賄い、又その予算において幾らでも地方においては按配することができるのでありまして、六百億の金が直ちに皆から政府税金で取らなければならんということは全く詭弁であります。そういうことは断じてありません。殊に現在の政府機関、いわゆる政府の直接な一般会計ではなく、特別会計政府機関におきましては、現に六千三百七円ベース以上の給與をやつておる所が沢山あるのでありまして、私共はこのことについては、参議院においてこそ、是非とも諸君の賢明なる努力によつて、現在の予算範員において、我々はドツジ・ラインを、いわゆるこの方式を崩さない範囲において幾らでも捻出できるのであるという確信を持つて諸君の力、我々共にこれを捻出しなければならないと、かように考えるのであります。又政府は、賃金物価悪循環を言つておりますが、このことは笑止千万である。六千三百七円のある六〇%もいわゆるベース改訂で高くなつた場合でも、物価には何も関係ありませんし、況んやこのインフレというものは、ベースが先になつて物価が上るのではなく、物価上つてそうしてベースが僅かにそれに追従して行つておるのである。賃金ベースが追従して行つておるのであります。あの当時のインフレと今のデフレと考えて見ても分りますように、殊の我々の注目しなければならんことは、インフレはどういうところから起きておるか。簡單に言うならば、我が国インフレ消費インフレである。ドツジ氏が第二回に来て帰られるときに、まだ我が国にはインフレの要因が残つておると、こういうことを言つておられるが、ベースを上げるなということは言つておられない。残つておるということはどういうことか。政府補助金国民税金によつて事業を行なつておるものは、これらの事業自分達のそういう安易な式によつてまだ物価を上げる可能性を持つておるということを指摘されておるのである。でありますから、我々は真にインフレを克服しようとするならば、補助金の面、或いは我々の税によつて事業を営んでおる面を極力警戒する必要があのである。その方へは現政府は何ら一指も触れておらない。ただベース改訂が国を亡ぼすもののごとき、かような口吻を漏らしておる。極めて我我は不思議を堪えないのであります。然らば諸君、我々は、局長にまで乘用車を與えておるような、そうしてこう言つておる間にでも全国どこかでは宴会を開いておるような、かかる消費的な予算を我々の力を以て徹底的に検討をいたしまして、真に働く者のために公平な本当の均衡予算、この予算を作るために諸君と共に努力をしたいと考えます。私は持ち時間がありませんので、これで終ります。(拍手)     —————————————    〔板野勝次発言者指名許可を求む〕
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 板野勝次君。
  17. 板野勝次

    板野勝次君 日本共産党岩間正男君を指名いたします。
  18. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 岩間正男君の発言を許します。    〔岩間正男登壇拍手
  19. 岩間正男

    岩間正男君 給與問題について、日本共産党を代表して討論します。  先に国鉄裁定を踏みにじり、人事院勧告を無視した政府は、今又專売裁定をないがしろにし、一方それを合理化しようとして給與白書を発表しておるのであります。給與白書欺瞞性については、さすが内股膏薬の人事院でさえその不当を指摘し、痛烈に反駁しておる程であります。だが、我々の見るところでは、給與白書の最も特徴的な点は、人事院勧告通り賃上げを行えば約六百億の財源が必要であり、その結果平衡交付金の増額、地方税の引上げ、国鉄運賃郵便料金等の値上げを行なつて大衆負担を増加するか、若しくは新たに公務員大量首切りによつてその費用を削減するか以外に方法はないと言つておる点であります。これは正に負担強化ということを口実にして国民大衆を欺瞞し、一方首切りの「あいくち」を擬して勤労階級を脅迫せんとする態度であります。ここに吉田内閣の最も悪質な宣伝政策があり、その魂胆はごろつきと何らえらぶところがないと言わざるを得ない。だが勤労大衆は今日ではすでに知つております。昨年の七月、国鉄を皮切りに行われたところの大量の首切りが果して何をもたらしたかということを、その意味するものが何であつたかということを、身を以て体験しておるのであります。首切りによつて労働者賃金は一向に上らなかつたばかりでなく、そこには却つて物凄い労働強化がもたらされ、服務規律の圧迫と職制の強化は完全に労働階級自主性を奪い、職場を権力追従の暗黒な恐怖の淵に投げ込んでおるのであります。一方、失業者は町に氾濫し、当然に賃金下向現象強制労働現象を惹起し、労働不安は著しく釀成されているのであります。その結果は又農民中小企業者に対しまして深刻な不景気を惹起している。農民は、低米価政策によつて目下深刻にその足元を襲いつつあるところの農村恐慌が、元来如何に低賃金政策切つても切り離すことのできない関係にあるものであるかということをいやという程知らされた。又中小企業者は、重税、金詰り、不景気の真の原因が何であつたかということを、ここ一ケ年の血の出るようなみずからの体験を通じて深刻に味わわされたのであります。だから今日ではもはや国民の大多数は吉田内閣の低賃金政策を支持しないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これは現実の新聞紙の世論が何よりも雄弁に物語つているところではないか。よく、馬鹿の一つ覚えのように、賃金物価悪循環ということを政府は繰返していますが、もはや無理にもこれを信じようとしているのは吉田首相とその側近のお茶坊主だけであります。(「その通り、その通り」と呼ぶ者あり)現状でも低賃金による国内資本の搾取が苛酷に行われ、物価では終局的に外国独占資本が大きくこれを收奪しているのである。いわば物価賃金日本の人民を二重に收奪する搾め木の作用をやつているということは争えない事実である。この事実を誰よりも知つておればこそ、吉田首相とその側近は臆面もなく循環論を繰返しているのであります。而も給與問題の焦点は今日ではもう明らかに変化していると言わなければならない。これを決定しているものは国際情勢であります。従つて給與の問題を單にその枠内だけに限定して論議し、その背後にめぐらされている国際関連の網というものを見ることがなかつたならば、全くその姿は明らかにされないと言わなければならない。ところで給與問題は今や新らしい段階に突入しています。新らしい段階とは何であるか、それは目下我が国を滔々として襲いつつあるところのこの軍事基地化の問題であります。言うまでもなく、目下世界恐慌の波に喘いでいる国際独占資本とその手先共は、恐慌のはけ口としての戰争により多くの期待を寄せて、機会あるごとにそれを挑発せんとしております。取分け東亜における最大拠点としての日本を軍事的に再編成することを急いでいる。こうして最近頻々と伝えられるアジア・マーシヤル・プランの意図するところも我々は察知するに難くないのであります。そのためには人口過剩、豊富低廉な日本労働力が、軍事奴隷として何よりの餌食となつているのである。狡猾な国際独占資本が逸早くこれに目を着けないわけはない。こうして売弁的な吉田内閣労働政策はその手先としての役割を果し、低賃金はますますこれを押付け、労働強化首切り、更に厖大な失業者の大群を製造して、これを軍事的な切換に急いでいるのであります。又これに伴う彈圧態勢強化、警察の軍事化団体等規正令強制適用等を通じ、更に他方においては買收懐柔政策並びに分裂政策を以てやつている。これは国際的規模において民同を培養育成した、こういうような事実の中にもはつきり現われている。これら一連政策こそは、日本勤労大衆国際独占資本の毒牙に売渡そうとするところの野望であります。最近特に著しくなつた戰時的労務管理、協約の破撃、既得権の剥奪、労働基準法無視等現象は、皆これら一連政策の現われであります。以上のような吉田内閣労働政策こそは、特に官公吏公務員において先ず犠牲的に強行され、賃金ベースの釘付けとしてその咽喉を絞めているのが現状であります。元来ベース賃金というものは、一九四七年に片山内閣のとき始められたものでありますが、その最初のペース千八百円を決定する際の実情を我々は具さに検討すれば、その本来の性格がはつきりするのである。即ちそれは労働者を先ず食わせ、その最低生活権を保障する建前から出発したものではないのであります。鉄鋼だとか、石炭等独占企業において、飽くまでも大資本にのみ採算がとれ、十分にその利潤を確保するために、その挺子として先ず官公吏賃金を決めるいわゆるベース賃金方式がとられたのであります。こうして大資本家本位の低賃金が天下り的に押付けられた。これと同時に一方では又パリテイ計算によつて賃金と飽くまでも見合うところの低米価が設定されたのであります。こうして低賃金、低米価は、日本再建のそもそものコース、即ち第一国会の当初から反人民的、反労働者的性格を以て決定され、依然として資本主義的收奪の二つの鍵として取残されたのであります。大幅の補給金が又決められまして一層この收奪を促進した実情であります。従つてその後において数度賃金ベース改訂をされましたが、その基本的に方式には何ら変更を加えることがなかつたので、今日ではこれがますます労働階級の枠となり、或いは首かせとなつて、我々を苦しめているのが実情であります。而も物価は、高い輸入、安い輸出を通じまして外国資本に收奪されるような建前になつています。これがベース賃金の前提であり、それ故にこの場合の低賃金は、植民地的低賃金、即ち初めから食えないことが分つている餓死的な低賃がてあります。而も政府は以上の政策を遂行するために、公務員法の改悪による基本的人権の抑圧並びに直接的な彈圧政策を強行する一方におきましては、労働階級の下からの反撃に備える懷柔政策として、部分的に讓歩してここに人事院というものを作つたのであります。そうしてベース改訂勧告制度を設けた。従つて前述の諸政策というものと人事院勧告というものとはもともと違つたものではない、実は同じ根柢から出発したところの同心異体に過ぎない、いわば同じ穴の「むじな」に過ぎないのであります。民主的僞裝にために、ともすれば我々はこの人事院性格に瞞され易いのでありますが、本質は誠にはつきりしております。人事院はいわば対外的には目隠しであり、対内的には煙幕である、こうした性格を持つています。従つて今日予算的に何ら実効を持たないところの人事院によつて事を解決しようなどというのは、正に林によつて魚を求めるところの空しいわざであり、このことはすでに遠く始まつているのであります。ポツダム宣言並び極東委員会十六原則、日本憲法の指向するところは、基本的人権の確立にあり、そのためには徹底的に戰争禍根を一掃しなければならないのであります。それには国内平和産業の無制限拡大を通じて労働者最低生活権を確保する以外に途はない。然るにベース賃金並びに人事院の設定に当つて政府は初めから反労働者的であり、反人民的であり、食えない奴隷賃金を押付けるためにその手段を選ばなかつた。而も今やその結果は、日本労働力を来たるべき戰争に備えて軍事的再編成にまで導いてしまつたのであります。最近沖繩への募集人夫が十数万に及ぶと伝えられていますが、この現実が何よりもこのことを物語つている。つまり失業者を一方で沢山作つて、それを安い賃金軍事的編成をしようという性格で出ているのであります。  我々はここで飜つて考えなければならない。そもそも大東亜侵略戰争の前後を通じて、如何に日本帝国主義勤労者階級に低賃金、低米価を押付け、それを挺子としてソシアル・ダンピングに導いたか、それが如何に世界の市場を撹乱し、他民族を圧迫し、恐怖と戰慄の渦を巻き起したかということは、今尚我々の記憶に新たなところであります。而も敗戰後すでに五ケ年、これらの禍根は一掃されないのみか、最近は再び戰前の現象が物凄く立ち現われているのであります。その例を挙げると、最も代表的なのは何といつて繊維産業であります。我が国の綿布の輸出量を見ますと、昨年の一九四九年の末までにすでに七億ヤードに上つております。本年の三月までには八億ヤードを突破しようとしております。これに対して昨年度の米国の綿布の輸出量は九億四千万ヤード、英国は七億六千万ヤードであります。つまり日本の綿布輸出量は最近もう米英の水準にまで接近しているということが明らかなのであります。然るにその生産コストを検討して見ますると、日、英、米の綿業における原料綿花代を仮に今一〇〇としますれば、労働賃金部分即ち紡積賃、織工賃、これを調べて見ますと、原綿の一〇〇に対しまして日本では労働賃金部分が二八・九%、米国では、これに対して一〇二・二%、英国では一四二・一%となつております。即ち日本の工賃は原綿代の三〇%にも足りない。これを米英に比較するというと四分の一或いは五分の一に過ぎないのであります。このように物凄い低賃金の復活は、正に昭和恐慌時代におけるあの細井和喜蔵氏の「女工哀史」の再現であり、世界の紡積市場へ大きな脅威を與えているのであります。現に米国のパターソン商業会議所会頭エドワード・J・マツクユーアン氏は、日本のダンピングについて一九四九年十二月七日UP記者に語つております。「アメリカの実業家の一部は、毎年数百万ドルに上る日本製品がアメリカの市場にダンピングされるために脅威を受けている。この競争を受けているアメリカの産業をどうして救うかについて、関係アメリカ産業家の会議を開くべきである」ということを言つております。又カナダの綿業協会長のW・S・バリル氏は昨年末の同協会の年次大会におきまして、「世界市場は日本の安価な製品に脅かされている。低価格の表示であつたところのメイド・イン・ジヤパンのマークは早くも復活して来た。戰前の労働條件と甚だしい低生活水準を改善するため、日本において実施される筈の社会的、経済的政策は未だに何ら効果を奏していない」ことを報告している。青少年婦女子の物凄い搾取によつて賃金政策に基礎付けられましたところのメイド・イン・ジヤパンの戰慄は、早くも世界の市場を圧迫し始めているというのが、その実情であります。これは綿工業を以て立つイギリスにおいてはより一層深刻であることは、幾多の事例によつても我々は明示することができる。例えば最近の香港紙のチヤイナ・メールによると、ロドニー・キヤンベル氏は米英の日本綿業視察団の入国が拒否されたことを伝えています。これは同記事によりますと、日本綿業のダイピングを隠蔽するためだと言われております。 以上挙げた諸種の事例を以てしましても、世界関係者が如何に、日本の低賃金を嫌つているかということがはつきりするのであります。而もメイド・イン・ジヤパンの戰慄というものは、常に戰争への連想を伴つているということによつて、一層深刻であり特徴的であるということは我々は思わなければならないのである。我々はこの歴史的因業の深い低賃金の鉄鎖を今や敢然と断ち切らなければならないと思います。これが日本労働階級に課せられたところの歴史的な任務であり、又要請である。世界の人民大衆、取分け国際プロレタリアートの絶えざる期待と注視も又ここにあるのであります。而もそれは同時に平和と興隆への道であり、ポツダム宣言の嚴正実施によるところの全面講和への全人民的な課題でもあることを、私ははつきりと信ずるのであります。だから低賃金値上げの鬪争は、單なる賃上げの鬪争ではないのみか、民族の平和、自由、独立を確保せんとするところの止むに止まれないところの人民的な鬪いになつているのであります。  最近国会共鬪委員会の諸君がゼネストを以て吉田内閣の無謀に挑戰せんことを宣言した。思えば昨年の七月国鉄民同諸君は、スト論議を中心としてその戰線を分裂させたのであります。而も今同じ諸君が従来の主張を捨ててゼネストを声明した。過去半ケ年間の吉田内閣のあり方とこれに対する諸君の実踐が、その主観的意図にも拘わらず、今やどうにもならない壁に突き当つたのであります。又下からの目覚めと要求の盛り上りが、又これを決定せしめたところの大きな原因でもあることは争えない事実であります。労働階級労働階級としてその本来の立場に立つ限りにおきまして、これは当然の帰結である。我々は今やどうにもならないこの奴隷的な窮乏を打開すると共に、真の民族の自由、独立、平和のために鬪わねばならないのであります。今や民同もなく産別もない、ひとしく労働者としての自党に立ち、戰線を統一して日本の危機のために鬪うべきときであることを私は申上げたい。そのために我々は又如何なる協力と努力をも惜しむものではないのであります。 以上申述べましたが、以上を要約しますならば、賃金の引上げと即時公正なる全面講和とは、全く不可分な、全く一つの問題でありまして、我々は今窮乏の淵に落されてあるこの労働階級のいわば自衛権の発動によるこの鬪い、この鬪いを通じまして、今断崖の上に立たされておりますところのこの日本の民族の危機のために鬪わなければならないということを申上げまして、私の結論といたします。(拍手)     —————————————    〔油井賢太郎君発言者指名許可を求む〕
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 油井賢太郎君。
  21. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 民主党は門屋盛一君を指名いたします。
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 門屋盛一君の発言を許します。    〔門屋盛一君登壇拍手
  23. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 自由討議の運営の方法が少し変えられまして、自由討議でも質問に亘つてもよろしいということになりましたので、私の討議は聊か質問になる点があると考えまして、本日大蔵大臣と労働大臣の出席要求がしてあるのでありますが、衆議院における予算委員会関係上、大臣は御出席になれないということで、政務次官が御出席になつているようでありますから、私の討議の中の所管質問事項に対しましては、政務次官で御答弁できる範囲のものは直ちに御答弁願いたい。御答弁できないものは大臣の答弁は後日に讓つてもよろしい。ただお座なりの答弁をして貰いたくないと、こういうことだけを申上げて置きます。  大体現内閣ができまして自主的予算ということを非常に強調されているのでありますが、私は自主的予算というものは国民の希望に副う予算でなければならないと考えているのであります。現在日本の経済を立て直しますために、ドツジ・ラインの枠内において組まれる予算でありますから、なかなか国民の全部の希望に副うような予算の組めないことは、我々よく了解しておるのであります。予算全体のことに対しましては予算委員会その他の所で討議する機会がありますから、ここで私は今最も大きい、本年度予算で最も大きい問題になる点を二点だけ論じてみたいと思うのであります。  この施政方針演説に対する質疑応答を見ておりましても、聞いておりましても、大蔵大臣は、如何にも立派な予算を組んだという自負心満々たるものがあるのであります。その大蔵大臣が立派な予算であると称するところの本年度予算に、我が国の今後において、今年度はもとより、来年度も再来年度も、長い間民国の苦しむ原因が作られておるということだけを一つ取上げて論じてみたいと思うのであります。即ち昨年度百四十五億幾らしかなかつたところに債務償還が本年度は千二百億に急に殖えておることであります。これが大蔵大臣が、日本大蔵大臣として自主的に考えて、日本将来のためにどうしても本年度千二百億の借金を返さなければならんということを心から考えておるとしたならば、大変な間違いになる。そういう大蔵大臣であつたならば直ちにやめて貰わなければならない。なぜならば、好ましからざる戰争をしたために莫大の借金が我が国には殖えておる。これは借金は飽くまで借金である。絶対に返さなければならない。孫子の代までかかつても返さなければならないということは国民は覚悟しておる。併しこの債務を返すのにはおのずから時期があり、方法があると思うのであります。戰争のためにぶち壞されてしまつたところの日本の産業、又、長い間の戰時期間中、風水害の暴れるがままに任せておいたところの我が国土は、どこを歩いて見ましても、川は荒れつぱなし、山崩れは山崩れのそのままで何らの手当がしてない。年利四分乃至五分の安い債務を返して、そうして毎年この風水害のために五百億乃至七百億、これは年々この水害、災害の被害は大きくなる一方なのであります。私は昨日も利根川筋の視察に行つて参りましたが、利根川筋は昭和二十二年の水害の跡始末ができていないために、一雨降るごとに僅かの出水でも川の西岸が洗われておる。平坦部の方はまだしものこと、山間部に入りますならば、切つ立つておる山の根を水が洗い壞して行きますから、この災害は年々年々大きくなる。私は予算編成に当つても、国の政治をとる上からもですね、官僚に任せて置くことが一番間違いであつた。現在でも間違いである。池田大蔵大臣は大蔵出身の官僚としてのトツプの人である。官僚であるが故に均衡財政というものは数字の上だけの均衡に重きを置き過ぎている。又関係方面の指示に対して、本当に国家のためを思うて、自分の一身を犠牲にして十分の説明をして、この予算編成のラインを変えることに努力が足りなかつたということを私は痛感しておるのであります。本当に大蔵大臣が、一国の財政を料理し、日本の産業の再建を考え、国土の保全を図るという観念がありましたならば、今金利の安い債務の償還をして、今年七百億なり八百億の災害復旧をやらなければならぬものに対する金の支出を惜しんで、その災害復旧をやらないために又今度も来年も年々多額の災害が増加する。これらは平つたい言葉で言いますならば、安いところの銀行、利子の借金を拂つて高利貸の金を借りて使うのと同じなんです。こういう大蔵大臣がですね、おつたならばですよ。数字の上では辻褄が合うかも知らないけれども、我らの子孫に対して荒れ果てた使い途にならない国土を讓らなければならない結果を招来することを憂うるものである。(拍手)要約するに、大蔵大臣は債務償還を千二百億計画なさつておるときに、我が国の国土計画と長期建設事業との関係を如何に考えてこの千二百億というものを算出したか。(拍手)今日の国の予算を組むに当つて日本本位に組んでおるか、我が国本位の予算を果して組んでおるということが言い得るか、この点を質したいのであります。定められた時間に制限がありますので、爾余のことはその他の委員会でまだまだ徹底的に突くことがあります。我々はこの客観情勢の下における内閣は非常に仕事のやりにくいといことはい、曾ての二ケ年間の與党生活において十分に体得しております。でありますから、民主党は野党の立場におりながら、常に政府に協力する態勢をこの参議院はとつて来ておる。併し必ずその一国会に二点か三点は絶対に協力し得ない面が現われて来る。私は恐らく今国会を通じて如何に考え直しても、この債務償還と国家の長期資金の釣合いがそう簡單に政府に賛成し得ない問題であるということを警告を発して置く。  次に労働大臣に質したいのであるが今日の日本の労働問題の中で、いろいろのことが先程来論じられておりますが、先ず我々はその日その日を生活して行く、食べて行くということが一番大切なことである。二十四年度及び二十五年度の失業者がどれだけ出るかという見通しについて、私は昨年以来私の関係のあります委員会、労働委員会で、労働大臣、大蔵大臣、経済安定本部長官としばしば論議を鬪わしたのでありますが、遂に私の意見と労働大臣の意見とは一致せずに、二十四年度予算と二十四年度補正予算は定められておるのであります。併し議論でなくして、現実労働者失業者の出て来る状態は私の見通しと一つも変つていないではないか。私は曾ての委員会で発言してありますが、失業者が一番沢山出て来るのはこの二月から六月までの間である。この間に対する失業対策が立つていない。昭和三十四年度の失業対策、緊急失業対策予算なるものは、当初予算において八億三千万円、補正予算で八億五千万円、これだけしか盛り込まれていない。それがために現在どこの都市を廻つて見ましても、我々の僅かな暇で地方を出て行くところ、どこの都市でも、その都市の市長は失業者に取巻かれてどうすることもできない。市長室に罐詰になつておる市長は三ケ所や四ケ所でない。(「その通り」と呼ぶ者あり)恐らくこれは、如何に無関心、如何に官僚式に運営しておる労働省と雖もこの報告を聞いておる筈である。(「頬被りしているのだよ」と呼ぶ者あり、笑声)我々はこれは二十四年度予算審議を当つて警告を與えてある。そのときの労働大臣の答弁は、失業保險経済は非常に健全なものであるから、先ず失業保險を以て賄うから失業者が出ても心配ないということであるが、失業保險は一定の期間だけである。六ケ月を経過したならば失業保險じやそれをカバーすることはできなくなつておる。昨年の七月 八月から企業合理化にかかつたところの産業は、本年の二月からその失業保險も切れて本当の失業状態に入つておる。これに対して現在政府から各自治体に割振つておるところの予算では到底賄つて行けない。而も今地方に割振る予算の五〇%以上は地方の負担になつておる。況んや政策の転換によつて現われて来たところの失業者に対して、大きな政策転換に何らの責任のないところの地方都道府県都市が、これに対して苦しい地方財政の中から五〇%を負担してまで失業者を養わなければならない義務がどこにあるか。(拍手)それでも市町村長は目の前に現われて来ておるところの失業者を何とかしなければならないという熱意によつて、苦しい地方財政をやり繰つて、その負担を忍びながら中央の割当の陳情に来ておるのであります。今日、本日現在でも何万人という地方の陳情団が上京しておる。この何万人という地方の陳情者を上京させるのは何がためか。公共事業費が足りない、建設面の予算が不足しておるからである。又失業対策予算昭和二十五年度において僅かに四十億しか見てない。この四十億は三百日を養うものとすれば九万三千人の失業者しか養えないのであります。賢明なる労働大臣か、愚昧なる労働大臣か知らないが、失業洪水の中で九万三千人の失業救済をすれば事足りると考えておるのか。昨年以来しばしば委員会において主張して、二十五年度においては百億又は八十億を必ず組みますということを公約して置いて、翌年予算編成のいきさつによつてこれが四十億に減つたが、而もこの四十億は昨年来の公約を無視して、やはり半分が国庫負担であつて、半分が地方費負担である。こういうことで地方財政がやつて行けるかどうか。これと、先程大蔵大臣に聞きましたところの千二百億の債務償還をする余力があるならば、而も千二百億の債務償還の中の(八百数十億)は一般会計から出すのである。国民税金から搾り取つたものから借金を拂うのである。拂える時期に拂うのならば当り前だけれども、今借金を拂う時期か。国民が先ず食う時期である。食べる時期である。国民は食べながら、国土を洗い流されないように、又国の産業が隆々と興つて行くところの建設事業を始めなければならないときであると思うのであります。一般会計から八百数十億の債務償還をするだけの財源があるならば、何故労働大臣は失業対策にもう少し金を貰うことができなかつたか。労働大臣は文字通りの伴食大臣であるのか。(笑声)それとも日本の労働問題、民自党の諸君に怒られるかも知れないが、民自党は優秀である。優秀であるけれども、欠けておるものは労働問題である。この労働問題が欠けておる労働大臣であるならば、吉田内閣の三〇%のウエートを担つていなければならないところの鈴木労働大臣は、如何なる予算編成の閣議の交渉によつて僅か四十億しか、よう取らなかつたのであるか、この点を私は質したい。又大蔵大臣も如何なる点に基礎を置いて、八百数十億の安い利子の借金を拂つて、年々七百億から九百億の国土を荒されているものを何がために等閑に付すのか。曰く、本年度は公共事業費が倍見てある。倍と決まつたことじやない。倍でも三層倍でも、国土を洗い流されないように長期建設を立てて、国民所得が殖えて国民に力の付いたとき借金を拂えばいいと思う。時間がないようでありますから、この点を政務次官からはつきりした御答弁があれば承服いたしますが、御答弁がなければ大臣が後日御答弁下さつてもよろしいと思います。  時間の関係上、甚だ簡單でありますが、私の自由討議をこれで終ります。(拍手)    〔政府委員水田三喜男君登壇拍手
  24. 水田三喜男

    政府委員(水田三喜男君) 只今の御質問でございますが、一般会計から七百八十億、見返り資金から五百億、計千二百八十億の債務償還をすることは不当であるというような御意見でございましたが、この債務償還を非常に大きくして、同時に公共事業費を思い切つて大幅に予算に盛る、これが本予算のむしろ特徴でございまして、これだけ国民負担を非常に多くかけ過ぎるという問題がございますが、その観点からだけこの問題は取扱えないと思います。日本経済を急速に自立させるための方法として、又同時にインイレーシヨンを抑え付けて経済を安定させる方法として、自主的な資本蓄積に頼つて行く余裕が現在の日本にはない。従つて強制的な資本蓄積方法もここで併せて考えなければ国家経済の急速な復興ができない、こういう現実に直面しておりますので、こういう意味におきまして、国民の負担によつて(「観点が違う」と呼ぶ者あり)組立てた(「違う、答弁にならん」と呼ぶ者あり)対日援助の見返資金勘定の設定というようなことを、この債務償還というようなものは、同時にこれが国民経済復興に別の意味において役立つ、こういう機能を見逃すことはできないと思います。こういう点に関しましては、先程打合せして参りましたが、詳しくは後で大蔵大臣から答弁する、こういうことになつておりますので御了承願いたいと思います。    〔政府委員新谷寅三郎君登壇拍手
  25. 新谷寅三郎

    政府委員(新谷寅三郎君) 只今の門屋議員の御質問の中で、労働省に関係する部分につきましてお答え申上げます。  政府といたしましては、失業救済の対策として、失業救済策と緊急失業対策事業の外に、公共事業或いは輸出産業の振興等による民間雇用量の問題、或いは見返資金の活用の問題等を併せて考究いたしまして、いわゆる総合的な失業対策を企画し実施しておるものであります。御承知のように二十五年度の予算におきましては、公共事業費は昨年の約倍額に相成つておるのでありまして、昨年二十四年度におきまして、公共事業費におきまして約五十万の失業者労働力を吸收したのでありますが、二十五年度におきましてはその約倍額、百万人程度の労働者を吸收し得る計画になつておるのであります。仰せのように、失業対策費の方は四十億でございますが、二十五年度におきましては、只今申上げました公共事業費方面におきまして特に重点を置いて、労働力の吸收効率を上げるように運用上実施したいと考えておりますので、目下の情勢からいたしますと、二十五年度におきましては、この程度の失業対策費を以て、十分とは申せませんが賄つて行けると考えておる次第であります。(拍手
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 大蔵大臣の答弁は他日出席の際まで留保いたします。    〔門屋盛一君発言許可を求む〕
  27. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 門屋盛一君。
  28. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 時間が余つておりますから、大蔵政務次官の私の質問に対する答弁には重大なる勘違いがあると思うので、再質問を願います。(「質問を許せ」と呼ぶ者あり)
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 時間は三分程余つております。再質問を許します。    〔「やれやれ」と呼ぶ者あり〕    〔門屋盛一君登壇拍手
  30. 門屋盛一

    ○門屋盛一君 大蔵政務次官は、債務償還は千二百億であるが、見返資金から五百億、一般会計から七百数十億、これは間違いない。これ債務償還をしなければ、何らかの形で外資導入でもできないかのようなことをおつしやつておる。私は決して債務償還をしなくていいと言つているのではない、債務償還には時期がある、殊に昨年は百四十数億で済んだ、その間の折衝が、国土を思い、国の長期建設を思うたならば、七百五十億にしろ、八百億にしろ、そういう多額の債務償還はやらなくても、そのうちの三百億でも五百億のものでも、今災害復旧ができずに、一雨々々国土の洗い流されておるところの状況を見たならば、そういう方面に使うべきではないか、こう言つたのだ。(「その通り」と呼ぶ者あり)外資導入ができれば、それはどういう方面に使われるか。外資導入は主として民間企業の方に廻つて行く。国民の税の負担になるところの国土の荒れて行くところの砂防とか河川とかいうものは、これは見返資金ができないということははつきり分つておる。その点を突いておる。大臣の再答弁の折に、ここで数字のお茶を濁すということでなしに、心から自分の信念で組んだ予算であるか、止むを得ずこういう予算を組んだか、はつきり言うて貰いたい。  又労働政務次官の答弁のうちに、一般公共事業費があるから、これでコントロールできると言うけれども、コントロールできておるものなら、日々、本日現在でも調べれば、各都市で幾らの求職者があつて、肉ら職に就くことができておるか、数字は一年を通じてバランスはとれるであろうが、我々生きておる人間は毎日々々食つて行かなければならない。であるから、私は日本の政治を官僚に任して置くことはできない。官僚に任して置くから、こういう結果になるのであるということを附加えて置きます。(拍手)    〔政府委員水田三喜男君登壇拍手
  31. 水田三喜男

    政府委員(水田三喜男君) 今門屋さんこそが聞き違いをなさつておるのじやないかと思います。外資導入とは全然関係のないことでございまして、債務償還の根拠を申しますと、均衡予算という建前から二百六億は当然会計法上返すべき債務であり、あとの五百億というのは、例えば地方起債を三百億か四百億許可する、政府関係機関でもまだ借金がございますので、借りる一方、政府は放して行つて、そうして中央地方の均衡をとるというようなことと、見返資金勘定から返すということは、これがそのまま国民の負担で、ただ借金をきつく返したというだけじやなくて、そういう金は全部金融機関を通じ、その外を通じて、廻り廻つてこれは立派に日本の産業の建設資金に(「民間企業は潰れておる」と呼ぶ者あり)なつて来るのでありますから、若し(「行つていないから問題になる」と呼ぶ者あり)ここで多量の公共事業費を支出するとすれば、所詮はやはり同じ国民税金から出るのだ。これを債務償還という形によつてやるのと、そこに若干のやり方の違いがありますが、この場合いずれにしましても、自主的な資本蓄積を待つておられない部門が日本経済にある。今申しました債務償還にしろ、見返資金について、国民に安く援助物資を配給したその残りの差額を国民税金で穴埋めして、そうして日銀に積んで置く、この見返資金の大部分も国民税金でありますが、こういう形でこういう経済を作るということは、これは一つ国家による強制的な資本蓄積の手段である、そういう角度からこの問題を見ないでいたら、問題の重点を外らすことになりはせんか、このことを申上げただけでありまして、外資導入というような問題とは一切関係ございません。
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて今日の自由討議は終了いたしました。次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 常任委員長辞任の件 一、常任委員長選挙  一、日程第二 自由討議(前会の続)