○門屋盛一君
自由討議の運営の方法が少し変えられまして、
自由討議でも質問に亘
つてもよろしいということになりましたので、私の討議は聊か質問になる点があると考えまして、本日
大蔵大臣と労働大臣の出席要求がしてあるのでありますが、衆議院における
予算委員会の
関係上、大臣は御出席になれないということで、政務次官が御出席にな
つているようでありますから、私の討議の中の所管質問事項に対しましては、政務次官で御答弁できる範囲のものは直ちに御答弁願いたい。御答弁できないものは大臣の答弁は後日に讓
つてもよろしい。ただお座なりの答弁をして貰いたくないと、こういうことだけを申上げて置きます。
大体現内閣ができまして自主的
予算ということを非常に強調されているのでありますが、私は自主的
予算というものは
国民の希望に副う
予算でなければならないと考えているのであります。現在
日本の経済を立て直しますために、ドツジ・ラインの枠内において組まれる
予算でありますから、なかなか
国民の全部の希望に副うような
予算の組めないことは、我々よく了解しておるのであります。
予算全体のことに対しましては
予算委員会その他の所で討議する機会がありますから、ここで私は今最も大きい、本年度
予算で最も大きい問題になる点を二点だけ論じてみたいと思うのであります。
この施政方針演説に対する質疑応答を見ておりましても、聞いておりましても、
大蔵大臣は、如何にも立派な
予算を組んだという自負心満々たるものがあるのであります。その
大蔵大臣が立派な
予算であると称するところの本年度
予算に、
我が国の今後において、今年度はもとより、来年度も再来年度も、長い間民国の苦しむ原因が作られておるということだけを
一つ取上げて論じてみたいと思うのであります。即ち昨年度百四十五億
幾らしかなか
つたところに債務償還が本年度は千二百億に急に殖えておることであります。これが
大蔵大臣が、
日本の
大蔵大臣として自主的に考えて、
日本将来のためにどうしても本年度千二百億の借金を返さなければならんということを心から考えておるとしたならば、大変な間違いになる。そういう
大蔵大臣であ
つたならば直ちにやめて貰わなければならない。なぜならば、好ましからざる
戰争をしたために莫大の借金が
我が国には殖えておる。これは借金は飽くまで借金である。絶対に返さなければならない。孫子の代までかか
つても返さなければならないということは
国民は覚悟しておる。併しこの債務を返すのにはおのずから時期があり、方法があると思うのであります。
戰争のためにぶち壞されてしま
つたところの
日本の産業、又、長い間の戰時期間中、風水害の暴れるがままに任せておいたところの
我が国土は、どこを歩いて見ましても、川は荒れつぱなし、山崩れは山崩れのそのままで何らの手当がしてない。年利四分乃至五分の安い債務を返して、そうして毎年この風水害のために五百億乃至七百億、これは年々この水害、災害の被害は大きくなる一方なのであります。私は昨日も利根川筋の視察に行
つて参りましたが、利根川筋は
昭和二十二年の水害の跡始末ができていないために、一雨降るごとに僅かの出水でも川の西岸が洗われておる。平坦部の方はまだしものこと、山間部に入りますならば、切つ立
つておる山の根を水が洗い壞して行きますから、この災害は年々年々大きくなる。私は
予算の
編成に当
つても、国の政治をとる上からもですね、官僚に任せて置くことが一番間違いであ
つた。現在でも間違いである。池田
大蔵大臣は大蔵出身の官僚としてのトツプの人である。官僚であるが故に均衡
財政というものは数字の上だけの均衡に重きを置き過ぎている。又
関係方面の指示に対して、本当に
国家のためを思うて、自分の一身を犠牲にして十分の説明をして、この
予算編成のラインを変えることに
努力が足りなか
つたということを私は痛感しておるのであります。本当に
大蔵大臣が、一国の
財政を料理し、
日本の産業の再建を考え、国土の保全を図るという観念がありましたならば、今金利の安い債務の償還をして、今年七百億なり八百億の災害復旧をやらなければならぬものに対する金の支出を惜しんで、その災害復旧をやらないために又今度も来年も年々多額の災害が増加する。これらは平
つたい言葉で言いますならば、安いところの銀行、利子の借金を拂
つて高利貸の金を借りて使うのと同じなんです。こういう
大蔵大臣がですね、お
つたならばですよ。数字の上では辻褄が合うかも知らないけれども、我らの子孫に対して荒れ果てた使い途にならない国土を讓らなければならない結果を招来することを憂うるものである。(
拍手)要約するに、
大蔵大臣は債務償還を千二百億計画なさ
つておるときに、
我が国の国土計画と長期建設
事業との
関係を如何に考えてこの千二百億というものを算出したか。(
拍手)今日の国の
予算を組むに当
つて、
日本本位に組んでおるか、
我が国本位の
予算を果して組んでおるということが言い得るか、この点を質したいのであります。定められた時間に
制限がありますので、爾余のことはその他の委員会でまだまだ徹底的に突くことがあります。我々はこの客観情勢の下における内閣は非常に仕事のやりにくいといことはい、曾ての二ケ年間の與党生活において十分に体得しております。でありますから、民主党は野党の立場におりながら、常に
政府に協力する態勢をこの
参議院はと
つて来ておる。併し必ずその一
国会に二点か三点は絶対に協力し得ない面が現われて来る。私は恐らく今
国会を通じて如何に考え直しても、この債務償還と
国家の長期
資金の釣合いがそう簡單に
政府に賛成し得ない問題であるということを警告を発して置く。
次に労働大臣に質したいのであるが今日の
日本の労働問題の中で、いろいろのことが先程来論じられておりますが、先ず我々はその日その日を生活して行く、食べて行くということが一番大切なことである。二十四年度及び二十五年度の
失業者がどれだけ出るかという見通しについて、私は昨年以来私の
関係のあります委員会、労働委員会で、労働大臣、
大蔵大臣、経済安定本部長官としばしば論議を鬪わしたのでありますが、遂に私の意見と労働大臣の意見とは一致せずに、二十四年度
予算と二十四年度
補正予算は定められておるのであります。併し議論でなくして、
現実に
労働者の
失業者の出て来る状態は私の見通しと
一つも変
つていないではないか。私は曾ての委員会で
発言してありますが、
失業者が一番沢山出て来るのはこの二月から六月までの間である。この間に対する失業対策が立
つていない。
昭和三十四年度の失業対策、緊急失業対策
予算なるものは、当初
予算において八億三千万円、
補正予算で八億五千万円、これだけしか盛り込まれていない。それがために現在どこの都市を廻
つて見ましても、我々の僅かな暇で
地方を出て行くところ、どこの都市でも、その都市の市長は
失業者に取巻かれてどうすることもできない。市長室に罐詰にな
つておる市長は三ケ所や四ケ所でない。(「その
通り」と呼ぶ者あり)恐らくこれは、如何に無関心、如何に官僚式に運営しておる労働省と雖もこの報告を聞いておる筈である。(「頬被りしているのだよ」と呼ぶ者あり、笑声)我々はこれは二十四年度
予算審議を当
つて警告を與えてある。そのときの労働大臣の答弁は、失業保險経済は非常に健全なものであるから、先ず失業保險を以て賄うから
失業者が出ても心配ないということであるが、失業保險は一定の期間だけである。六ケ月を経過したならば失業保險じやそれをカバーすることはできなくな
つておる。昨年の七月 八月から企業合理化にかか
つたところの産業は、本年の二月からその失業保險も切れて本当の失業状態に入
つておる。これに対して現在
政府から各自治体に割振
つておるところの
予算では到底賄
つて行けない。而も今
地方に割振る
予算の五〇%以上は
地方の負担にな
つておる。況んや
政策の転換によ
つて現われて来たところの
失業者に対して、大きな
政策転換に何らの責任のないところの
地方都道府県都市が、これに対して苦しい
地方財政の中から五〇%を負担してまで
失業者を養わなければならない
義務がどこにあるか。(
拍手)それでも市町村長は目の前に現われて来ておるところの
失業者を何とかしなければならないという熱意によ
つて、苦しい
地方財政をやり繰
つて、その負担を忍びながら中央の割当の陳情に来ておるのであります。今日、本日現在でも何万人という
地方の陳情団が上京しておる。この何万人という
地方の陳情者を上京させるのは何がためか。公共
事業費が足りない、建設面の
予算が不足しておるからである。又失業対策
予算は
昭和二十五年度において僅かに四十億しか見てない。この四十億は三百日を養うものとすれば九万三千人の
失業者しか養えないのであります。賢明なる労働大臣か、愚昧なる労働大臣か知らないが、失業洪水の中で九万三千人の失業救済をすれば事足りると考えておるのか。昨年以来しばしば委員会において主張して、二十五年度においては百億又は八十億を必ず組みますということを公約して置いて、翌年
予算編成のいきさつによ
つてこれが四十億に減
つたが、而もこの四十億は昨年来の公約を無視して、やはり半分が国庫負担であ
つて、半分が
地方費負担である。こういうことで
地方財政がや
つて行けるかどうか。これと、先程
大蔵大臣に聞きましたところの千二百億の債務償還をする余力があるならば、而も千二百億の債務償還の中の(八百数十億)は
一般会計から出すのである。
国民の
税金から搾り取
つたものから借金を拂うのである。拂える時期に拂うのならば当り前だけれども、今借金を拂う時期か。
国民が先ず食う時期である。食べる時期である。
国民は食べながら、国土を洗い流されないように、又国の産業が隆々と興
つて行くところの建設
事業を始めなければならないときであると思うのであります。
一般会計から八百数十億の債務償還をするだけの
財源があるならば、何故労働大臣は失業対策にもう少し金を貰うことができなか
つたか。労働大臣は文字
通りの伴食大臣であるのか。(笑声)それとも
日本の労働問題、民自党の
諸君に怒られるかも知れないが、民自党は優秀である。優秀であるけれども、欠けておるものは労働問題である。この労働問題が欠けておる労働大臣であるならば、
吉田内閣の三〇%のウエートを担
つていなければならないところの鈴木労働大臣は、如何なる
予算編成の閣議の交渉によ
つて僅か四十億しか、よう取らなか
つたのであるか、この点を私は質したい。又
大蔵大臣も如何なる点に基礎を置いて、八百数十億の安い利子の借金を拂
つて、年々七百億から九百億の国土を荒されているものを何がために等閑に付すのか。曰く、本年度は公共
事業費が倍見てある。倍と決ま
つたことじやない。倍でも三層倍でも、国土を洗い流されないように長期建設を立てて、
国民所得が殖えて
国民に力の付いたとき借金を拂えばいいと思う。時間がないようでありますから、この点を政務次官からはつきりした御答弁があれば承服いたしますが、御答弁がなければ大臣が後日御答弁下さ
つてもよろしいと思います。
時間の
関係上、甚だ簡單でありますが、私の
自由討議をこれで終ります。(
拍手)
〔
政府委員水田三喜男君
登壇、
拍手〕