○小杉イ子君 緑風会の小杉イ子でございます。
私は前泉山大蔵
大臣が無駄をしているところから財源を捻出すると申されたことに対し大いに期待しておりましたが、或る日
大臣は桃色の顏で重大事の議場に現われ、苦しそうに頬のあたりを撫で廻し、そうして歳入は増酒によると申されたので驚きました。その数日後、世界的ニユースを出来されました。併しそれはおかしい愛でも恋でもなく、偉大なアルコールの作用によ
つて倒れ、倒されたのであります。私は
大臣が財源捻出と言われたその言葉につけて、税制改革、シヤウプ
勧告の第九章のAB、即ち酒税と煙草に関する種々の問題と、歳入、歳出、減税方法につきまして、專門的でも理論的でもない、ただ見たまま、信ずるままを
自由討議といたしたいのでございます。
時に、今
全国的に各省、各庁、市町村並びに有識者による少年不良化防止行事は、巡回相談、不良兒等の発見、兒童生徒の自治組織の結成、俗悪書の駆逐等々で、僅かに禁酒も盛られておりますが、私はこの防止策だけでは六億円の
予算を食う割りに効果は少いと思
つております。なぜならば、これらの不良兒は統計の示す
通り、飲酒家、犯罪者に生れた因果の子が主で、それ以外は初めから不良に生れたものではありません。それは食糧不足や文房具不足、両親の慈愛、又冷靜な判断、教育の不足に原因いたしますが、最も少年の小遣いと、身分不相応に高いところの酒、煙草を飲みたいために不良と
なつた者が大多数で、昔から少年審判所でも殆んどが飲酒、喫煙者であることを発表しております。その例は、或る薬屋に相当月給で勤めていた最も優良であつた青年が酒を飲み煙草を吸い続けておりました。貯金もない者がどこからこの金が出るかと見ておりましたところ、果した高価注射液の箱に僞造注射液を入れて売
つておりました。又一つは、第二回
国会で青少年禁酒法案
審議の際に来た広島からの手紙に、十八歳の次男が酒を飲みたいばかりに盗みをして近所に迷惑をかけ、一向仕事も手伝わず家族を困らしております、どうかこのような者は体刑として下さるよう、重刑として下さるよう家族一同からお願い申します、とあります。親は詰らぬ子でも褒めて貰いたいもの、又誇りたいものでございますのに、又中には配給米を持出して市場で煙草に代え、小学校の裏で数名で吸
つております。又中学生数名が先生に見付けられて、慌てて吸い殻を屑籠に投げ入れたため全校舍を燒きました。中毒すれば意思強固でも止められません。前
鈴木法務総裁は犯罪の五割五分は青少年だと申されましたが、今は九人に一人の割の二十五万六百六十一件、うち強盗窃盗が十七万五千六百件、傷害二万三千七百件、而も十三歳未満の学童が二千三百件とあります。それに不良化の根源をなすところの酒、煙草については、本会議においての
質問でも
答弁でも一言も聞き得ませなんだ。それに又少年の飲酒宣伝と
なつた虚僞を教え錯覚させたところの養老の滝等は、削除を要望してから二十四五年かか
つて削除されました。それに又、今では中学校第一学年用として「私達の科学」四の所に、書き方の前後によ
つて少年に飲酒を奬励しております。これを文部省が削除し、厚生省や社会善導指導家達がもつと親切に研究をされるならば、赤信号一歩手前に幾百万の青少年が救われるか分りません。これによ
つても多額の国家歳出減となります。酒、煙草は最も重税をかけ易く、昨年度は酒税七百五十二億円以上、煙草税千二百億円という一大国家の財源ではありますが、これは競馬、競輪、富くじ以上に悪因果を含むところのプラス、マイナス税どころか、
政府は直接間接にあらゆる方面に大負担をさせられております。それにまだ主食三合配給もできず、非農家議員を初め下々に至るまで二、三倍高の闇米を買わせたり、闇値品を見逃すことは、
政府そのものからが全く闇
政府に支給されている形であります。それに去年二月頃でも、正規酒と、一級酒のレツテルを付けた闇酒と、嫌われて戻された特配酒が氾濫して、一升と五合のくじ付きでも売れず、それに又近頃は猪口呑み、コツプ酒では捌けぬのか、明日の元気を出すため枡呑み歓迎というビラを酒屋にかけて、一升枡を並べております。それでも
政府は昨年度は八千五百万貫の「いも」で三倍量の燒酌を作り、四十六万石の酒米で三割の酒を増しておりますが、本年度も増酒をするのでしようか。去る十一月十九日大蔵
大臣は、五千万貫の「いも」が手に入つたと申されましたが、それは予定造酒分でありましようか、それとも増酒分でありましようか。それから釀造家が原価で作つた酒、燒酌を、
政府は時にはそれを十五六倍価で売ると申しますが、そうでございますならば、正規釀造家でも自然に密造をすることになりはいたしますまいか。それから酒、煙草は、嗜好品とか又は必需品として六千三百七円ベースに加算されてあるのでしようか。又給與ベースは、その時以上は物価は上らぬものとして私共は賛成したのでありました。それに十一月十九日安本長官は物価は下ると申され、全く闇値がマル公に接近したかのように聞えましたけれども、その反対に白木綿などは誠に粗末で闇価に近付いております。又正月前に三百円の帶締が、半額として三百円で売
つております。
政府の闇値食い止め不可能を幸いに、闇値は付け放題であります。又或る漁村では、ここはよく「ぶり」がとれますが、闇値横流しでないとや
つて行けませんと税吏は申し、闇値で売らせ闇価で徴税いたしております。金のある
経済家は、古い魚を安く買うよりも闇値が安いと申し、一部国民と同歩調で闇値を増長さすことは、
政府の注意、指導、制裁の実行されぬからで、いつまでも闇値を食い止め得られぬことは、前
内閣、前々
内閣とちつとも変りません。これでは失職者の多い今日、職を分け合わねばならぬ今日、内職もできぬとすれば、数千円の酒や煙草を飲む人は増給を要求することは当然でございます。併しながら今は現職にある人よりも、命令によ
つて職を失つた人、引揚直後の人、子を持つ戰災未亡人、給與ベースも論ぜられぬ、控除、扶養にもあずかれぬ人達にこそ出せるだけの
予算を分け與えるときであります。今は殆んど物が揃いました。物品税は廃止しても、すべての
商品物品に公定を付けて、違反をしたものは直ぐに赤札を付け、二三度付けても尚守らぬときは断然営業停止とすれば、正直店だけが並ぶことにな
つて、そういたしましたならば二千円や三千円の要求をする人はございません。
又、安本長官から二割の
輸出超過と聞きますと思わず朗らかになりますけれども、某店のミシンは不合格品、某店の絹服地は戻され物と聞きますと、
貿易は戰わずして国土を広める、又金も入ると思う心が憂欝になります。又
政府は高利金で以て多量に生産する前に、なぜ注意をしないか。又業者の
経済と
道徳を離れて粗製濫造をするということが、職業を不安定にさせ、これは国家の歳入減となります。
次に伝染病流行時季に蠅を取れというビラを貼られましたけれども、同じ屋根続きでも両隣は蠅も蚊も南京虫もいますが、中の家は一匹もおらず蚊帳も吊りません。又常に清潔法によ
つて出るところの塵は全部燃料と肥料といたしますと、清掃夫も不要で、これが
全国的にビラも消毒薬も人件費も運搬費も不要となると、これは
政府でも驚くばかりの歳入となります。又清潔による健康人こそ文化生活者で、国家に負担させません。
又電気、水道などの不要のときは、
全国民がもつと親切にこれを節電、節水されますれば、石炭が浮いて、休水も停電もなく減税となります。
又先日田舍で風呂の焚き木にすると申しまして、堂々たる「ひのき」を伐りましたので勿体ないと申しましたところ、表面は立派でも虫食いで役に立たぬと申しました。それから私はついでに車で二三十分山へ山へ、奥へ奥へと登りますと、本当に
政府でも苦心しておるところの虫食いの杉や松の大木の森林を見ました。それが若し民間所有ならば
政府は少々援助してでも捌かせてはどうか、又国有ならば希望者に無料で分け與えて土地を利用し代えてはどうかと思いました。時と物によ
つては無料放出も又国家のため却
つて経済となることがございます。私はまだまだ野に山に、特に川に、国民の心に、足許に、行政に、大きな財源があると信じております。
次に昔、松前の殿様はアイヌ滅亡の目的で飲酒を奬励しました。又全世界の生命保險会社は少量の飲酒でも十三年早死すると発表しました。それならば人口調節、産兒制限の今日、この飲酒方法でも相当脳隘血その他で調節されております。ところが大方の人は酒を飲めば嬉しくなり、疲労を癒し金も儲ける。ときには法案まで通過さすところの重宝なものであると申されますけれども、酒を飲めば白血球の殺菌作用は失われ、精虫は醉い、第一、
道徳観念を掌るところの大脳を冒され、変態性慾を発揮し、ために性病に罹り易いので、そのために不良不具劣等兒を生むことは、これこそ直接間接に国家国民の大なる負担と増税であります。又酒を飲めば、表面は温かいようでも酸素燃燒のために体温が低下するので、酒自由販売の直後の或る駅の最終下車泥醉者の中には構外で多数凍死いたしました。壽命を全うせず夫に残された母子も又我々国民の税負担となります。
次に議員は、議会とそうして
委員会に出席覚悟の上で議員になられたものだと私は思います。いろいろの方法をとられましたが、相変らず見るも恥かしい出席率でございます。このため法案は勿論のこと、この請願陳情にも定足数に至らず、流会、延期とすることは国民の増税でございます。私は視察、出張、交渉、診断書による病気以外の欠席者は、今後は滯在費を全部、党費、会費として潔く寄附されたらどうかと思います。(「大いに賛成だ」と呼ぶ者あり)
次に未成年禁酒励行の文明国では、大人の酒醉の歩行は国の恥として、又
保護の
意味で酒の醒めるまで一、二日でも留め置き、宿泊料を罰金を納めさせて帰します。
吉田総理大臣は講和を要求するに至り恥かしからぬ国民であることを希望されました。成る程恥にもいろいろありますけれども、行儀の卑しい国民として諸国から尊敬を受け得られぬようでは、諸條件につき永遠に大大損害を受けることになります。元一松厚生
大臣は青少年禁酒法は取締に
予算がないと言われましたが、取締には別に立看板やビラなどは要りません。文明の器具ラジオで至る所から間断なく指導放送することであります。又それも守らぬ人は、酒醉とか放尿者、こういう人はどしどし科料、罰金を徴收することであります。
又一つは姦通削除後は恋愛は自由だ、趣味だと申し、妻子を捨て夫を捨てて家出する者が殖えまして、ここからも不良兒が出ております。再三申しますが、これらは防止策として特に妾宅には住宅税として重税をかけるべきだと思います。社会国家の分子たる家庭が恨み悩んでおりまするようでは、何が世界平和でございましようか。ユネスコでございましようか。
終りに私は絶対禁酒禁煙論者でありながら、酒は少し作り高く売れば、釀造家も困らず、税收も食糧も減らず、今日は盃一杯頂いて来たというふうで、酒を最も高価品として扱うならば、心身に及ぼす害も少いと政見発表もいたしております。ところで宴会嫌いのシヤウプ博士は、酒による種々の醜態を素つ破抜き、又左の
通り勧告されました。即ち配給酒、自由販売酒共に現在の酒税を大幅に
引上げることを
勧告する、又穀物の不法使用に対する取締を強化されねばならぬ、酒税は
日本において取締に大いに努力を増すことによ
つて多大の利益が上る、又全く酒類は今日の
日本で特に重税の適したものである、それは贅沢品である、煙草にも更に増して酒類は富裕者の特別消費物である、特にそれ自身が所得税、法人税の脱税の途である、会社の催す豪華な宴会で消費されるものであるとあります。これはただ酒税についてだけでありますが、これ程勇敢に酒について発表した男子議員が明治以後果して幾人おるでありましようか。今は一人の酒醉も見当らぬという禁酒国でもないアメリカのシヤウプ博士の
勧告通り、酒に重税が課せられ、国家の大收入とな
つて、大いに減税されんことを私は切望いたします。又その上、一本吸い込めば二十グラムの血液を無にする、一時間壽命を縮める、抵抗力なき青少年が吸えば、脳の発育を阻止して不良化する、吸い穀は火災原因の第一位で、建築
資材を騰貴さす、脳溢血、胃癌その他の病源となるニコチン、アルコール、性病毒を受けた子は、断じてすくすくと育ちません。この病毒を受けさせぬように守ることこそ、親と国家の
責任で、
憲法第二十五條に示された
通り、すくすくと育ち得た子供こそ、次代国家の一大財源であります。そうして国民に対する減税方法でもございます。終りといたします。(
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