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1950-02-08 第7回国会 参議院 本会議 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月八日(水曜日)    午前十時三十八分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十四号   昭和二十五年二月八日    午前十時開議  第一 常任委員長辞任の件  第二 国会法第三十九條但書規定による国会議決に関する件(高松地方專売公社調停委員会委員)  第三 自由討議     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。西園寺公一君から病気のため十四日間、赤松常子君から海外旅行のため会期中それぞれ請暇の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、常任委員長辞任の件。昨日、電気通信委員長大島定吉君及び建設委員長石坂豊一君からそれぞれ委員長を選任いたしたい旨の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて常任委員長辞任の件は決定いたしました。      ——————————
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、只今欠員となりました電気通信委員長及び建設委員長選挙を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  9. 鈴木直人

    鈴木直人君 只今電気通信委員長及び建設委員長選挙は、成規手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  10. 小林勝馬

    小林勝馬君 鈴木君の動議に賛成いたします。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 鈴木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長電気通信委員長松野喜内君を、建設委員長中川幸平君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、国会法第三十九條但書規定による国会議決に関する件(高松地方專売公社調停委員会委員)を議題といたします。一月三十日、内閣総理大臣から、高松地方專売公社調停委員会委員衆議院議員成田知巳君を委嘱することについて、本院の議決を求めて参りました。内閣総理大臣の申出通り高松地方專売公社調停委員会委員衆議院議員成田知巳君を委嘱することに賛成の諸君の起立を求めます。    〔起立者多数〕    〔「共産党分裂か」と呼ぶ者あり〕
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本件議決せられました。      ——————————
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過日の川上嘉君の質疑に対し内閣総理大臣から答弁のため発言を求められました。この際許可いたします。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この前、川上君から奄美大島本土交通状況についてお尋ねがありましたについて、調査の結果を御報告いたします。奄美大島本土との交通状況につきましては、実は奄美大島への往復は、司令部に申請すれば、同情すべき理由ある場合に限り許可されるといつて交通は現にあるのであります。又同島から本土に参ります場合でも、同じように司令部に申請して、その許可を得て本土に来るという、そういう状況になつております。取調べの結果を御報告いたします。(拍手)      ——————————    〔木下源吾発言許可を求む〕
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下源吾君。
  18. 木下源吾

    木下源吾君 本員はこの際、賃金ベース改訂人事院勧告に関して緊急質問をすることの動議を提出いたします。
  19. 小林勝馬

    小林勝馬君 木下君の動議に賛成いたします。
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言許可いたします。木下源吾君。    〔木下源吾登壇拍手
  22. 木下源吾

    木下源吾君 私がこの際政府に対して質問をいたしますことは、御案内通り内閣の施策の結果といたしまして、すでに全国組織労働者の大部分を占める国会共鬪委員会がゼネストの用意あることを宣言いたしておるのであります。従つて現下国内事情というものは、これらを契機といたしまして深刻なる危機に直面しておると考えるのであります。この際、私は政府に対しまして二三質問をし、(「元気を出せ」と呼ぶ者あり)そしてこの事態收拾に対する政府見解を求めたいと思うのであります。従つて私の質問は單なる質問ではなく、政府一大警告を與え、且つ進んでは反省を求めるという意味を含んでおることを御了承願います。  先ず第一は、人事院勧告本質的意義についてであります。第二点は、罷業権行使に関する合法の見解についてであります。第三点は、政治力を以て法律を蹂躪する代りに、みずから法に従う意思があるかどうかということであります。第四点は、マツカーサー元帥書簡に対する政治道徳上の責任は当然政府が負うべきであると思うが、これに対する見解。第五点は、人事院勧告無視の結果当然起るべき事態に対する一切の責任政府の負うべきものであると考えるが、政府はどう思うか。以上の諸点でございます。  政府はしばしばベース改訂を行わないということを発表しておりまするが、このベース改訂は直接的には人事院勧告に端を発しておる。又この人事院勧告国家公務員法の二十八條が基準になつておる。改正国家公務員法は、御承知通り、一九四八年の七月二十二日のマッカーサー元帥書簡によつて作られておる。当時の書簡の趣旨は、今更申上げるまでもなく、公務員の職責を極めて嚴格に分析し、従つてこれがいろいろの行動に対する制約を加えております。同時に公務員保護するところの手段に対しましては、政府はこれが責任を負うべきものであるということが明確に言われておる。その結果といたしまして、政府国家公務員法を改正し、同法第九十八條によつて公務員の有する基本的人権を縛つた。同法百二條によつて政治活動を縛つた。又公共企業体職員に対しましては公労法作つたのであります。これらの一連を私は今考えて見まして、人事院勧告のこれは單なる字句ではない。凡そマ書簡の発するところ、公務員法公企労法等、一貫せる公務員保護手段を講ずるためにこの勧告が用いられなければならないという明確なる事実であります。公企労法においては、御承知通り勧告代りに三段階において調整、調停仲裁のことが設けられておる。そうして仲裁委員会裁定当事者双方がこれに服従しなければならないと規定してある。同法十六條においては予算措置のことも規定しておる。ところが国家公務員法においては、これらの手続は何ら示されておらない。單に勧告するというこの点で止めてあるのでありまして、思うの公企労法のこれらの手続がないことは、却つて国家公務員法勧告は、政府人事院勧告の内容に従つてこれを実現すべき重い責任意義が含まれておると私は考えるのであります。この実体法の起源をなすところの各條文と、そうして私共は実体法精神を追及するならば、当然この勧告只今私が申上げたような意味に解すべきものと思うのであります。政府はこれに対して如何なる見解を持つておられるのか。  第二点は、このように国家公務員が一方において基本的人権を制限せられ、他面において政府がこの保護手段を講ずべき義務を負わされておるにも拘わらず、この義務政府が果さない場合においては、公務員はみずからを防衛するために一体何に頼つてよいのであろうか。現政府の言うように、公務員は食えるではないか、辛抱して食えるではないか、生きて行けるではないかという見解に立つならば別でありますが、苟くもマ書簡の発するところ、公務員保護法律によつて規定せられておる、こういう場合において、一方に政府責任義務を果さないという場合においては、公務員は法に従うという精神から、国民の一人ととて、進んで民主主義達成のためには断乎として法を守らなければならないのである。法を守るというのは言うまでもなく、ここに至つて憲法の二十八條に立ち返り、団体行動の権利を行使することが唯一の道であると私は考えるのであります。(拍手)従いまして、現内閣只今までとられておる態度からして、私は国家公務員が当然民主主義国家におけるみずからの責任を果すために、断乎として法を守り、罷業権を行使することに一点の疑義もないと考えまするが、政府は如何なる見解を持つておられるか。  第三点は、すでにマ書簡に基くところの仲裁裁定によりましての国鉄裁定が、今又專売裁定が、微塵に現政府によつて蹂躪し去られんとしておるのである。言うまでもなく、これは政府が任命したところの委員によつて、その委員は又政府の一切の財政上、我が国経済状態考慮の上に、極めて賢明なる裁定を下しておるのであるにも拘わらず、しばしば政府はこれを取扱う上において法律を蹂躪するがごとき疑いが多い態度をとつておるのである。政府は現在の情勢において、政治の力を以て法律を蹂躪することが正しく日本民主主義を発展するゆえんと考えておるのであるか。逆に又、みずから政府が法に従うという現実の行動を以て、あらゆる我が国の不安なる状況に対して極めて良好なる影響を與えることが正しいと考えておるのであるか。この点について私は明快なる政府所信を伺いたいのであります。  更に進んで、七月のマ書簡に対する政府の回答は、私が申上げるまでもなく、総理大臣すでに胸に手を当てて考えて見れば分る通りである。このことについて繰返してくどくど言うまでもない。若し政府法律上において責任ないと、かように愚かにも考えたとしても、進んで占領下におけるこの事情を考えて、マ書簡に対する政治的責任を如何に考えておるか。これが総理大臣に伺いたい要点であります。  而して御案内通り、世論も又その他の一般の観測も、今日の政府態度は極めて遺憾であるという、こういう表現が圧倒的である。この際において政治の力を以てあらゆる正義を蹂躪し去つた場合に、一方は、これに報復する手段ではなく、これらの政府の不明なる極めて愚劣なるかくのごとき態度に対して報復する手段ではなく、当然みずからを防衛し、憲法を守り、かかる見解からゼネラル・ストライキが決行されるという事態、かかる事態に対する一切の責任は現内閣の現在とれるところに政策の結果であるということに対して、私のその責任は現内閣の負うべきものであるというこの見解に対して、政府所信を承わりたいのであります。  ベース改訂に対して、往々に財政の問題で小手先の争いが政府人事院の間において交されておるのであります。我々はかかる子供の火遊びのようなことを好まない。総理大臣が言われるように、真に今日の公務員が劣悪なる経済條件とあらゆる過重労働を強いられておるこの現状に対して、総理大臣はその実情を卒直に認めておるのである。思うに私は吉田総理大臣の閣僚が、不明にして、この親の心子知らず、あらゆる無理を固執しておるものと考えます。総理大臣はこの際、かかる重大なる危機に直面しておる一歩手前、その明快なる所信を披瀝し、この国の民主主義前進のために極めて有効な御見解を発表せられんことに切に願うのであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。人事院勧告及び公共企業体仲裁裁定については、政府愼重に考えて、いろいろ研究いたしました結果、法律の上においても、又財政の上から考え見ましても、いろいろ愼重審議をいたした結果の結論は、その人事院裁定勧告には服せない。又公共企業体仲裁裁定に対しても、政府としては独自の見解で以て進むよりいたし方ない。漸く財政経済が安定しかかつて来たときに、(「そんなことを聞いているのじやない、法理上の見解」と呼ぶ者あり)いや聞き給え。この公務員給與ベース改訂等によつて財政の全般が狂う、経済の安定を欠くということは、政府責任においてとれないことでありまするから、人事院勧告は、研究いたした結果、遂にこれを容認しないことにいたしたのであります。法律上の見解に対しては主義大臣からお答えいたさせます。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉登壇拍手
  24. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 私は、(「人事院廃止」と呼ぶ者あり)人事院勧告に対しての法律上の意義についてお答えをいたしたいと思います。人事院勧告に対しまして、政府がこれを十分に検討し、考慮を加えることは、勿論政府義務であります。併しながらそれはそういう検討考慮を加える義務というだけでありまして、そのために、この人事院勧告を直ちに受入れなければならぬという法律上の拘束力意味するのではないのであります。勧告は飽くまで勧告であります。(「そんなものは止めたらいい、盲膓盲膓だ」と呼ぶ者あり)それから又木下さんのお話に、罷業権云々の問題がございましたが、国家公務員法九十八條公労法十七條におきまして、いずれも明らかに罷業権を禁止いたしておるのであります。然る上は、政府のやり方がこれらの法律精神に反する、これは反しませんと思いますが、そういう單に一方的な見解だけを以て憲法二十八條に立返つて罷業ができるということはないのであります。この国家公務員法なり或いは公労法を遵守しますることが憲法の本当の精神に順応するゆえんであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)それを曲解することは決して憲法精神ではないのであります。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文登壇拍手
  25. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 公共企業体の関係の裁定、それに対する取扱等につきましては、すでにしばしば申上げた通りであります。可能なものは直ちに効力を持ち、予算上、資金上不可能なものは不可能として国会審議に待つということが、法で決めておる根本方式でありまして、政府は今回の專売の裁定につきましても、予算上、資金上不可能であるという見解の下に、国会審議を仰いでおるのであります。従つてその観点は、焦点は、一に計数の問題であつて予算上、資金上可能であるか不可能かという検討は、これを国会審議に待つべきものと思つておるのでありまして、こういうような法律に定められた成規手続を経て、成規の方法を以て国会審議に待つておる、その際に一方において争議権が発生するというような考え方は成立たないと考えております。(拍手)    〔木下源吾発言許可を求む〕
  26. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 木下源吾君。
  27. 木下源吾

    木下源吾君 私は総理大臣答弁は極めて不親切であり、そうして的外れだと考えます。ただ一点です。一昨年の七月、マ書簡に現われているこの点に対しまして、政府政治的、いわゆる道徳上の責任を如何に考えるか。この点について重ねて私は答弁を要求するものであります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。政府のとつている態度、或いは考え方は、マ書簡精神に合致しておるものと考えておるのであります。(拍手、笑声)      ——————————    〔田中利勝発言許可を求む〕
  29. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 田中利勝君。
  30. 田中利勝

    田中利勝君 本員はこの際、貿易政策産金政策文教政策に関して緊急質問することの動議を提出します。
  31. 小林勝馬

    小林勝馬君 田中利勝君の動議に賛成します。
  32. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 田中君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつてこれより発言許可いたします。田中利勝君。    〔田中利勝登壇拍手
  34. 田中利勝

    田中利勝君 私は貿易政策産金政策並びに文教政策の三点について、簡單に政府所見をお伺いしたいと思うのであります。  先ず第一に、昨年の四月以来我が国経済の安定と自立を目標にして、ドツジ・ラインによる強力な措置が講ぜられ、日本経済は大きな転換を示しつつあるのであります。その自立経済を実現するためには、單一為替レートの設定に伴う貿易の振興が極めて重要な意義を有することは申すまでもないのであります。ところで二十五年度におきましては、輸入約十億ドル、輸出は約六億ドルを予定され、輸出は二十四年度の輸出見込と比較して二割以上の増加を予定されておるのであります。昨年度以来、いわゆるローガン構想によつて貿易手続は著しく簡素化され、又管理貿易の諸制度も大いに撤廃されて、民間貿易の門戸が次第に広く開放されて来ておるのであります。従つて貿易量増大が予想されておるのでありますが、世界経済現状から考えまするならば、我が国輸出貿易の前途は決して楽観を許す状況にあるとは申せないのであります。我が国貿易は戰前においてアジア地域が重要な地位を占めておつたのでありますが、戰後においては米洲地域がその首位を占めるに至つたのであります。而も尚アジア地域との貿易の度合は漸次その比率増大して参つておることは明らかな事実であります。そうして、そのうちでも、特にポンド地域中国とが今後の我が国輸出貿易の面で重要視されなければならんと思うのであります。  ところで昨年九月ポンド切下げ直後には、我が国輸出契約高は激減して、十一月に至つて漸く輸出の回復を示して来たのでありますが、本年一月には十二月に比較して再び減少を来たし、特に雑貨は約七分の一、綿製品は約半分以下に減退したのであります。このことはイギリスを初めドル不足に悩む各国経済不況が依然として緩和されていないためであると申さねばならないのであります。ポンド地域について考えましても、成る程第二次日英通商協定が成立したとはいえ、切下げ後の、ドル地域からの輸入を極力制限すると共に、ポンド地域内の相互貿易増進によるブロツク経済化の傾向が見受けられるのでありまして、この意味において日本輸出が抑制される虞れが多分にあることも決して忘れてはならぬと思うのであります。従つて、又、できるだけ多くのものを買うことによつて、できるだけ多くのものを売るという、ローガン構想に基く輸入優先方式による輸出増進楽観を許さぬものと考えるのであります。而も各国との競争が今後一層激化して参りますならば、結局日本商品のコストの切下げと品質の改善なくしては、到底輸出市場において他国の商品と競争して打ち勝つことができないのであります。この点につきまして、日本の現在の経済状態からして政府が言うがごとく楽観を許さないのであります。而も單に労働者犠牲負担を強いるところの企業合理化にのみ頼るということは不十分であり、尚大きな危險すら感ずるのであります。青木安本長官はその経済演説の中において、輸出産業に対しては資材資金を優先的に確保すると申されておるのでありますが、輸出入滯貨その他の資金に面において、即ち以上のごとき貿易上の障害を打破して輸出産業を積極的に振興するために、如何なる具体的な金融措置を講ぜられる用意があるか。その点、青木安本長官の詳細なる御説明を承わりたいのであります。  更に日華貿易について考えて見まするならば、戰前昭和十一年度において、輸出は二四・四%、輸入は一四%の比率を示し、又中国側から見ましても、輸出は一四・五%、輸入は一六・五%も示し、日本米国に次ぐ第二位を占めていたのであります。更に、戰後における昨年九月の天津貿易においては、輸入では米国が四一・五%であります。日本が二一・五%で第二位であります。輸出では米国が五二・二%、香港が四一%を占め、他方我が国香港経由三角貿易を行なつているに過ぎないのでありますが、イギリス中共承認によつて、この香港貿易は今後ますます活溌化するものと想像されるのであります。ところで、日本中国に是非求めねばならない安価な物資は、開らん炭鉱の強粘結炭であり、長江沿岸或いは海南島の鉄鉱石、長廬塩山東塩工業塩でありますが、その外、大豆豚毛、桐油などを加えますならば、少くとも七千万ドルの貿易が可能と考えるのであります。従つてそれだけの日本からの輸出が必要となつて来るのであります。併しながら中共日本に最も欲しているものは機関車、車輛、レールその他機械、建設資材等の重資材でありまして、これらのものは戰略物資としてその輸出が禁止され、又は禁止される可能性が多いものと言われておるのであります。して見まするならば、戰略物資の範囲をどう決めるかということが今後の日華貿易の発展上に及ぼす影響が極めて重大であると思うのであります。この点についてイギリスその他第三国と同一條件の下に許可せられるべきものと考えるのであります。中共貿易重要性についてはすでにローガン氏がこれに言及され、更にアチロン国務長官もその声明の中で力説されておるのであります。総司令部中共貿易を正式に許可する場合、今後の日華貿易の見通しと共に、以上の点をも考慮して政府は如何なる積極的対策を用意されているか。稻垣通大臣にその所見をお伺いしたいのであります。  第二に、産金政策についてお尋ねしたいのであります。一般的に申せば、政府は石炭を除いて金属鉱山に対しては殆んど何らの増産対策を講ぜず、今日まで放置して来たのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)而も銅、鉛、亜鉛等に対する価格差補給金の打切りによつて、これらの鉱山は甚だしい経営困難に陷り、又その或るものは休坑の止むなきに至つておる状態であります。他方工業労働者に比較して遥かに劣悪なる労働條件と、低賃金の下に、鉱山労働者は日夜復興のために献身的に働いておるのであります。鉱産物の資源に乏しい我が国においては、政府は急速に鉱業政策を確立すべきであると特に思うのであります。特に今日において、金の増産について、政府の注意を喚起したいのであります。我が国資金昭和十四年度に二十六トンを産出したのであります。戰時中昭和十八年に全国金山が整理縮小されて、僅かに六鉱山のみが資源的に保坑鉱山に指定されて保持されて来ておるのであります。その結果、二十年度において金は二トン程度に減産するに至つたのであります。最近漸く四トン程度に回復する見込が付いたのでありますが、金山復興の更に努力いたすならば、年間優に十トンの産出は不可能でないと考えられておるのであります。輸出増大によりドル資金を獲得することはもとより重要でありますが、先に述べましたように、これにはおのずから一定の限界があるのであります。国際貿易の最後の決済手段として金が利用されるばかりではなく、将来ブレトン・ウツヅ協定による国際通貨基金に参加する建前からも、産金奬励は特に重要視されなければならぬのであります。従来、政府国内産金のコスト割高であるために、むしろ採算の有利な商品輸出に力を注ぐべきであるとの考え方を持つていたのでありますが、今日においてはかような考え方を一擲して、金の増産のために積極的に努力しなければならぬと考えるのであります。鉱山復興はその性質からいたしまして数年を要し、設備の復旧費或いは深鉱費新規開発等のために相当な資金を必要とするのであります。政府資金奬励のために現在の一グラム三百八十五円を四百円程度引上げることを考慮しておると聞いておるのでありますが、もとより金価格引上げも必要とするのでありますが、この際、金の増産根本対策としてその復興計画を樹立することが急務であると考えるのでありまして、特にその資金計画について政府は如何なる方針を持つておられるか。稻垣通大臣の御説明を承わりたいのであります。  第三に文教政策についてお尋ねしたいのであります。我が党は六・三制の完全実施を強く要望し、その予算の増額を主張して来たのでありますが、二十五年度四十五億円、前年度十五億円、合計六十億円は、我々の七十億円の要求額から見れば尚不十分と言えるのであります。併しながら漸く六・三制の財政的基礎は固まりつつあるとも言えるのであります。併し他方二十四年度において定員定額制が新たに実施された結果、本年度内に全国で三万人近くの教職員が整理の対象となり、彼らはその生活の不安に怯えているのであります。その義務教育費国庫補助の定額化の基準は、山間僻地の学校の分教場化や、学級を受持たぬ養護教員等の特殊な事情を何ら考慮せずして、單に予算節減のために機械的に決定された不合理なものでありまして、かような教育の実情に副わない教職員の定員化は、折角の六・三制教育の内容を傷けるものであると言わなければならないのであります。従つてその不合理な基準を是正して、これがための予算措置を講ずべきだと思うのであります。政府はその意思ありや否や、お尋ねいたしたいのであります。  次に、シヤウプ勧告による税制改革の結果、従来の地方配付税配付金に代つて一般平衡交付金制度が新たに設けられて、義務教育費の国庫負担金が廃止され、その教育費は一括して地方公共団体の権限に委ねられるに至つたのであります。従つて真に教育の財政的基礎を確立するためには、教育費が政治力の強い土木、保健衛生、警察等の費用に流用されることを防ぎ、平衡交付金のうちに含まれる標準教育費を確保する措置が講ぜられることが絶対に必要であると考えるのであります。若しこのことがなされなければ、必要な教員数、教員の平均給與等の教育の最低経費が保証されないのみならず、教育費の二分の一乃至三分の一をすでに寄附金によつてつているPTAの負担というものを更に増大せしめる虞れがあるのであります。かくしては義務教育の財政的基礎を根柢から破壊することとなり、教育の自主性も失われるものであります。従つて一般平衡交付金制度の実施に伴い、義務教育の標準教育費を確保するために法的措置を講ずべきものと考えるのでありますが、政府はその用意を有しておられるかどうか、お尋ねしたいのであります。即ち以上の定員定額制と標準教育費に関する二点について、高瀬文部大臣の御見解を承わりたいのであります。    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  35. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 只今の私に対する御質問についてお答えを申上げます。御承知通りローガン構想に基きまする輸出貿易の前途というものについて、今日の状態では非観的ではないかという御質問であると要約いたします。ローガン構想は、申すまでもなく今日の世界経済状況の下におきましては、これは協定貿易貿易協定を主として貿易が行われておりまする関係上、どうしても先ず輸出増大しようと思えば輸入を図らなければならぬ、こういう意味におきまして、御承知通り各国共、貿易の振興策が実行に移されつつある、こう考えておるのでありますが、我が国におきましても、昨年の十二月の一日から輸出貿易が、今年の一月一日から、輸入貿易民間貿易に移されまして、それと共に従来の盲貿易から、逐次正常な貿易を自由貿易的な方向において行なつて行こうという努力が拂われておる次第であります。それにつきまして、一体企業の合理化を行い、且つ我が国貿易を促進する、特に輸出振興策というものが、重点となつておるけれども、国内的には相当の滯貨があつて、そうしてこれについての金融が必要であり、又国内における一般企業の設備改善であるとか、或いは又操業度を高めるとか、その他各般の処置によつてその生産を増強する、こういう点において、政府は合理化を強く主張しておるけれども、合理化を主張するのみによつては、その目的は達成せられ得ないというふうなお考えの下に御意見があつたと思いまするけれども、これらの点も政府としては十分配慮をいたしております。と申しますのは、企業に対する資金の対策、そういう問題についても、一応我々としてはその態度を示し得ると思います。例えば日銀の枠を拡張いたしまして、三十二億円、例えば興銀に十三億五千万円であるとか、或いは勧銀に四億五千万円であるとか、商工中金に十四億円であるとか、こういつた方面で枠を拡大して資金の円滑化を図りたい、こういうことでありますし、又見返金資を十五億円、これは一般銀行に通して貸出しまするので、それは更に一般銀行から十五億、両方で三十億というような計画も立て、これを実行に移すということでありますし、又商工中金の枠を拡げると同時に資金金を増加するというようなことにおきまして、商工中金を資金金を一億五千万円を二十億程に増加いたしまして、そうして百八十億程度の債券発行を認めるというような措置も近々に講じて参るというような考えであります。それから又その外、市街地信用組合とか、或いは又信用保証関係、そういう方面におきましても、逐次政府としては合理化の線に伴つて、合理化資金とはつきり申しておりませんけれども、設備資金等に対して相当金融政策を実行に移す準備もでき、又現に実行に移しておるような次第でございます。更にそれだけではございません。輸出の振興と民間輸入方式の開始に伴いまして、貿易業者に対する国内貿易金融に対する対策も講じておる次第でありまして、輸出の場合につきましては、従来からのいわゆる貿易手形制度によります金融の必要な改正を加えまして、そうして輸出契約の成立した輸出品の製造乃至は買取りのための所要資金の優先確保並びにこの優遇措置等を促進いたしておる次第であります。これがために貿易手形の市中銀行によりまする金利につきましても、一般の貸出金利よりも低位に抑える方針を堅持いたしておりまして、昨年八月より一般金利日歩二銭八厘に対して二銭六厘を最高限といたして参りました。併しながら今回一般金利の最高限の引下げに伴いまして、貿易手形につきましても更に二厘を引下げて、日歩二銭四厘を最高とすることに決定をいたしまして、二月一日から実行に移しております。それから貿易手形については、日本銀行の再割引適格手形として、再割引歩合日歩一銭四厘とし、且つ高率適用から除外するものとして優遇いたしますし、これが金融の円滑化を期しておる次第であります。  それから輸出の場合につきましては、今回民間輸入の実施に伴いまして、輸入業者に対する輸入為替決済資金の供給の問題が新たに発生するわけでありまするから、この資金供給につきましては、先に述べました輸出の場合の貿易手形に準じまして金融上の措置を講ずる方針でありまするし、又輸入業者は輸入貨物の送状の写しを附した單名手形によりまして市中銀行より融資を受けて、日本銀行は輸出貿易手形の場合と同様に、かかる手形の再割引に応じまして、再割引日歩も一銭四厘とし、且つ高率適用から除外するという優先的措置を講ずることといたして、資金調達を容易ならしめるような方針をとつておる次第であります。  それから国内銀行の為替業務開始に伴いまして、為替銀行に対する金融上の措置についてでありますが、大分細かいことになるようで恐れ入りますが、外国為替銀行としての認可はありましても、現在のところ外国銀行とのコルレス契約並びに外貨集中の方針などが最終的の決定を見るに至つておりません今日といたしましては、国内銀行の外国為替業務は完全な姿で行われるに至つておりません。そこで詳細の説明については又別の機会に改めて申上げますけれども、極力外国銀行側と公正なる競争力を確保せしめまして、貿易手形、貿易関係の金融方面にも十分意を用いまして、貿易振興に資したいと存じておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇
  36. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) 田中さんの御質問お答え申上げます。  第一の御質問は、対中共貿易の問題であつたと存じます。この問題については、しばしばこの前の緊急質問のときにもお答えを申上げておるのでありますが、対中共貿易日本貿易にとつて重要であるという点については、何人も異議のない点であります。そこで従来の中共貿易は、香港を通じて、例えば昨年度は我々は三千万ドル程香港を通じて輸出いたしておりますが、これらは大部分は中共の中に入つて、直接中共の所要物資となつておると存じますが、そういつた方式の外、最近におきましてはいわゆるエスクロ方式によるところのバーターによりまして、天津、青島、そういつたようなバイヤーとの間に相当取引が行われておるのであります。対中共貿易は或る意味におきまして、従来から比べれば、相当我々の期待、ということを言うことはどうかと思いますけれども、少くとも好い足取りで進んでおるということが言えると存ずるわけであります。  御承知のように、先程御指摘になりました開らん炭のごときも、すでに我々は向うから入れておりますし、或いは又大豆その他も先方から入つて来るような状態になつております。最近新聞を賑わしております撫順炭の問題につきましても目下折衝を続けておるような次第でありまして、ただ御指摘の、我々の方から向うに送る場合にはどういうものを送るかという問題でありますが、現在送りましたものは、電線類であるとか、紡績の機械類とか、その部品でありますとか、そういつたような、いわゆるこの点については田中さんは戰略物資と言われましたが、指定許可物資、そういうものについても向うにやはり輸出されておるのでありますが、指定許可物資はこれは何も中央だけに制限されておるのではありませんで、我々が輸出をいたしますときに、指定許可物資については一応許可を得る、こういうことになつておりますので、そこに区別があるわけではないのであります。ただ今後貿易を促進して行きます上において、できるだけそういつた指定許可物資についても我々といたしましては簡單に手続ができるようにいたしたいものだと、かように考えておるのであります。  第二の点は、産金の問題でありますが、これは日本の地下資源……貿易が必要であると同時に地下資源の開発は非常に今日急務である、この点は私も同感であります。そうして我々といたしましては、地下資源の問題、殊に金属鉱山その他についての対策についても苦心いたしておるのであります。お尋ねの産金政策の問題でありますが、御指摘のように、昨年は大体三トン見当、或いは三・五トン見当、最近鴻ノ舞の選鉱場ができましたから、恐らく四トン程度には行くものだと、かように御知いたしております。我々はこの三年間に十トン計画を立てておるのであります。そうして十四鉱業所の人達と相談いたしまして、これが促進を図りたい。或いは選鉱場、或いは青化製錬所というものの設立について努力をいたしたいと存じております。直接これらの十四鉱業所の方々と御相談いたしました結果、これがためには新らしく設備するため十二億ばかりの資金が要るであろうというお話であつたのでありまして、我々が斡旋によつて賄い得る、市中銀行から賄い得るところは市中銀行から斡旋によつてつて貰う。それからどうしても賄い得られないだろうと思うところ、例えば中外鉱業の持越でありますとか、或いは帝国鉱発の鯛生とか或いは大口、或いは千歳鉱業の千歳鉱山、こういつたような方面はなかなか融資が困難かと存じまするので、この点について今見返資金をこれに向けるということについて安本と折衝いたしておるような次第であります。資金面の措置はそういつたようなことで私は十分やつて行けると、かように存じます。  尚、価格の面については、先程お話のように、三百八十五円、大体一オンス三十五ドルの国際価格に鞘寄せするという意味において大体四百円、或いは四百五円になりますか、とにかく四百円見当でやつて行きたい。又二重価格についても検討して行かなければならない。  それから探鉱費の問題につきましても、御承知のように今年の計上は僅かに千四百万円でありますが、大体一メートル四千五百円ということについては、これは実行して行きたい、尚今後こういう点についても十分考えて行かなければならぬ、かように存じておるわけであります。いずれにいたしましても、この産金ということは我々は十分なる関心を持ちたいと存ずるのでありまして、この三年間に十トン計画を是非実行いたしたい、かように存じておる次第であります。    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇
  37. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。定員定額制の問題についてお質問がありましたが、定員定額制というものは二十四年度から初めて実施いたしたのでありまして、最初の実施でありましたために、推定数等に多少実情に合わなかつたというような点があつたことは事実であります。併し補正予算によりまして二億八千万円額をいたしてその調整をいたしましたので、それ程重大な故障はなかつたと思つております。尚、二十五年度につきましては、義務教育を充実したいという見地から、この定員定額予算に対します部分も非常に増額をいたして計上をしております。いわゆる定員定額で、二十四年度におきましては、小学校は教員の数を五十人の級に対して一・三五、中学校は一・七ということにして計算されておつたのでありますけれども、二十五年度につきましては、小学校は一・三五を一・五に引上げております。又中学校は一・七を一・八に引上げました。尚その上に結核教員の数は別枠にする、又女教員の産前産後の休養はこれを別に計算するということになりまして、二十四年度に比べて二十数億円この方面の予算で計上されておる筈であります。従つてこの問題は二十五年度においては非常に楽になるものと御承知を願いたいのであります。  併し次の平衡交付金についての御質問のうちにありましたように、新らしい予算編成の方式によりますと、今までのいわゆる定員定額制というようなやり方は廃止されることになりまして、一般平衡交付金のうちにこれに相当する部分が算入されて地方教育費に対する国庫補助が行われる、こういうことになります。それならば定員定額に当るような部分は一体どうして計算されるのかと申しますと、これは平衡交付金の計算の仕方の中にこれが入つておるのでありまして、各地方の団体で教育費についての標準的計算をするわけであります。標準的な教育費の計算をいたします、その場合にいわゆる定員定額に当るようなものが考慮されて計算される、そうして各地方でそういう教育についての標準的経費の計算をするように、その他の経費についても同じような計算をいたしまして、地方の必要な経費総額というものが算出され、そうして又一方、收入総額が算出をされまして、その不足の部分が平衡交付金として補助される、こういう順序になるわけであります。ですから定員定額というものも無論考慮されることになります。そうして平衡交付金の中に含めて補助されます。地方教育費に対する国庫補助というものが地方でそれが確実に教育のために使用されまして、地方教育の水準、殊に義務教育の水準が確実に維持されるようにしなければならない。これは文部省の方針であります。ですから、この方針の下に如何なる具体的法律措置をとるべきかということにつきまして、目下準備を進めておる次第であります。(拍手)      ——————————
  38. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第三、自由討議。本日の自由討議は本院規則第百四十七條によるものといたします。一人の発言時間は二十分間といたします。各発言者はそれぞれ発言時間を遵守せられんことを望みます。これより発言を許します。    〔鈴木直人発言者指名の許可を求む〕
  39. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 鈴木直人君。
  40. 鈴木直人

    鈴木直人君 緑風会は小杉イ子君を指名いたします。
  41. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 小杉イ子君    〔小杉イ子君登壇拍手
  42. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 緑風会の小杉イ子でございます。  私は前泉山大蔵大臣が無駄をしているところから財源を捻出すると申されたことに対し大いに期待しておりましたが、或る日大臣は桃色の顏で重大事の議場に現われ、苦しそうに頬のあたりを撫で廻し、そうして歳入は増酒によると申されたので驚きました。その数日後、世界的ニユースを出来されました。併しそれはおかしい愛でも恋でもなく、偉大なアルコールの作用によつて倒れ、倒されたのであります。私は大臣が財源捻出と言われたその言葉につけて、税制改革、シヤウプ勧告の第九章のAB、即ち酒税と煙草に関する種々の問題と、歳入、歳出、減税方法につきまして、專門的でも理論的でもない、ただ見たまま、信ずるままを自由討議といたしたいのでございます。  時に、今全国的に各省、各庁、市町村並びに有識者による少年不良化防止行事は、巡回相談、不良兒等の発見、兒童生徒の自治組織の結成、俗悪書の駆逐等々で、僅かに禁酒も盛られておりますが、私はこの防止策だけでは六億円の予算を食う割りに効果は少いと思つております。なぜならば、これらの不良兒は統計の示す通り、飲酒家、犯罪者に生れた因果の子が主で、それ以外は初めから不良に生れたものではありません。それは食糧不足や文房具不足、両親の慈愛、又冷靜な判断、教育の不足に原因いたしますが、最も少年の小遣いと、身分不相応に高いところの酒、煙草を飲みたいために不良となつた者が大多数で、昔から少年審判所でも殆んどが飲酒、喫煙者であることを発表しております。その例は、或る薬屋に相当月給で勤めていた最も優良であつた青年が酒を飲み煙草を吸い続けておりました。貯金もない者がどこからこの金が出るかと見ておりましたところ、果した高価注射液の箱に僞造注射液を入れて売つておりました。又一つは、第二回国会で青少年禁酒法案審議の際に来た広島からの手紙に、十八歳の次男が酒を飲みたいばかりに盗みをして近所に迷惑をかけ、一向仕事も手伝わず家族を困らしております、どうかこのような者は体刑として下さるよう、重刑として下さるよう家族一同からお願い申します、とあります。親は詰らぬ子でも褒めて貰いたいもの、又誇りたいものでございますのに、又中には配給米を持出して市場で煙草に代え、小学校の裏で数名で吸つております。又中学生数名が先生に見付けられて、慌てて吸い殻を屑籠に投げ入れたため全校舍を燒きました。中毒すれば意思強固でも止められません。前鈴木法務総裁は犯罪の五割五分は青少年だと申されましたが、今は九人に一人の割の二十五万六百六十一件、うち強盗窃盗が十七万五千六百件、傷害二万三千七百件、而も十三歳未満の学童が二千三百件とあります。それに不良化の根源をなすところの酒、煙草については、本会議においての質問でも答弁でも一言も聞き得ませなんだ。それに又少年の飲酒宣伝となつた虚僞を教え錯覚させたところの養老の滝等は、削除を要望してから二十四五年かかつて削除されました。それに又、今では中学校第一学年用として「私達の科学」四の所に、書き方の前後によつて少年に飲酒を奬励しております。これを文部省が削除し、厚生省や社会善導指導家達がもつと親切に研究をされるならば、赤信号一歩手前に幾百万の青少年が救われるか分りません。これによつても多額の国家歳出減となります。酒、煙草は最も重税をかけ易く、昨年度は酒税七百五十二億円以上、煙草税千二百億円という一大国家の財源ではありますが、これは競馬、競輪、富くじ以上に悪因果を含むところのプラス、マイナス税どころか、政府は直接間接にあらゆる方面に大負担をさせられております。それにまだ主食三合配給もできず、非農家議員を初め下々に至るまで二、三倍高の闇米を買わせたり、闇値品を見逃すことは、政府そのものからが全く闇政府に支給されている形であります。それに去年二月頃でも、正規酒と、一級酒のレツテルを付けた闇酒と、嫌われて戻された特配酒が氾濫して、一升と五合のくじ付きでも売れず、それに又近頃は猪口呑み、コツプ酒では捌けぬのか、明日の元気を出すため枡呑み歓迎というビラを酒屋にかけて、一升枡を並べております。それでも政府は昨年度は八千五百万貫の「いも」で三倍量の燒酌を作り、四十六万石の酒米で三割の酒を増しておりますが、本年度も増酒をするのでしようか。去る十一月十九日大蔵大臣は、五千万貫の「いも」が手に入つたと申されましたが、それは予定造酒分でありましようか、それとも増酒分でありましようか。それから釀造家が原価で作つた酒、燒酌を、政府は時にはそれを十五六倍価で売ると申しますが、そうでございますならば、正規釀造家でも自然に密造をすることになりはいたしますまいか。それから酒、煙草は、嗜好品とか又は必需品として六千三百七円ベースに加算されてあるのでしようか。又給與ベースは、その時以上は物価は上らぬものとして私共は賛成したのでありました。それに十一月十九日安本長官は物価は下ると申され、全く闇値がマル公に接近したかのように聞えましたけれども、その反対に白木綿などは誠に粗末で闇価に近付いております。又正月前に三百円の帶締が、半額として三百円で売つております。政府の闇値食い止め不可能を幸いに、闇値は付け放題であります。又或る漁村では、ここはよく「ぶり」がとれますが、闇値横流しでないとやつて行けませんと税吏は申し、闇値で売らせ闇価で徴税いたしております。金のある経済家は、古い魚を安く買うよりも闇値が安いと申し、一部国民と同歩調で闇値を増長さすことは、政府の注意、指導、制裁の実行されぬからで、いつまでも闇値を食い止め得られぬことは、前内閣、前々内閣とちつとも変りません。これでは失職者の多い今日、職を分け合わねばならぬ今日、内職もできぬとすれば、数千円の酒や煙草を飲む人は増給を要求することは当然でございます。併しながら今は現職にある人よりも、命令によつて職を失つた人、引揚直後の人、子を持つ戰災未亡人、給與ベースも論ぜられぬ、控除、扶養にもあずかれぬ人達にこそ出せるだけの予算を分け與えるときであります。今は殆んど物が揃いました。物品税は廃止しても、すべての商品物品に公定を付けて、違反をしたものは直ぐに赤札を付け、二三度付けても尚守らぬときは断然営業停止とすれば、正直店だけが並ぶことになつて、そういたしましたならば二千円や三千円の要求をする人はございません。  又、安本長官から二割の輸出超過と聞きますと思わず朗らかになりますけれども、某店のミシンは不合格品、某店の絹服地は戻され物と聞きますと、貿易は戰わずして国土を広める、又金も入ると思う心が憂欝になります。又政府は高利金で以て多量に生産する前に、なぜ注意をしないか。又業者の経済道徳を離れて粗製濫造をするということが、職業を不安定にさせ、これは国家の歳入減となります。  次に伝染病流行時季に蠅を取れというビラを貼られましたけれども、同じ屋根続きでも両隣は蠅も蚊も南京虫もいますが、中の家は一匹もおらず蚊帳も吊りません。又常に清潔法によつて出るところの塵は全部燃料と肥料といたしますと、清掃夫も不要で、これが全国的にビラも消毒薬も人件費も運搬費も不要となると、これは政府でも驚くばかりの歳入となります。又清潔による健康人こそ文化生活者で、国家に負担させません。  又電気、水道などの不要のときは、全国民がもつと親切にこれを節電、節水されますれば、石炭が浮いて、休水も停電もなく減税となります。  又先日田舍で風呂の焚き木にすると申しまして、堂々たる「ひのき」を伐りましたので勿体ないと申しましたところ、表面は立派でも虫食いで役に立たぬと申しました。それから私はついでに車で二三十分山へ山へ、奥へ奥へと登りますと、本当に政府でも苦心しておるところの虫食いの杉や松の大木の森林を見ました。それが若し民間所有ならば政府は少々援助してでも捌かせてはどうか、又国有ならば希望者に無料で分け與えて土地を利用し代えてはどうかと思いました。時と物によつては無料放出も又国家のため却つて経済となることがございます。私はまだまだ野に山に、特に川に、国民の心に、足許に、行政に、大きな財源があると信じております。  次に昔、松前の殿様はアイヌ滅亡の目的で飲酒を奬励しました。又全世界の生命保險会社は少量の飲酒でも十三年早死すると発表しました。それならば人口調節、産兒制限の今日、この飲酒方法でも相当脳隘血その他で調節されております。ところが大方の人は酒を飲めば嬉しくなり、疲労を癒し金も儲ける。ときには法案まで通過さすところの重宝なものであると申されますけれども、酒を飲めば白血球の殺菌作用は失われ、精虫は醉い、第一、道徳観念を掌るところの大脳を冒され、変態性慾を発揮し、ために性病に罹り易いので、そのために不良不具劣等兒を生むことは、これこそ直接間接に国家国民の大なる負担と増税であります。又酒を飲めば、表面は温かいようでも酸素燃燒のために体温が低下するので、酒自由販売の直後の或る駅の最終下車泥醉者の中には構外で多数凍死いたしました。壽命を全うせず夫に残された母子も又我々国民の税負担となります。  次に議員は、議会とそうして委員会に出席覚悟の上で議員になられたものだと私は思います。いろいろの方法をとられましたが、相変らず見るも恥かしい出席率でございます。このため法案は勿論のこと、この請願陳情にも定足数に至らず、流会、延期とすることは国民の増税でございます。私は視察、出張、交渉、診断書による病気以外の欠席者は、今後は滯在費を全部、党費、会費として潔く寄附されたらどうかと思います。(「大いに賛成だ」と呼ぶ者あり)  次に未成年禁酒励行の文明国では、大人の酒醉の歩行は国の恥として、又保護意味で酒の醒めるまで一、二日でも留め置き、宿泊料を罰金を納めさせて帰します。吉田総理大臣は講和を要求するに至り恥かしからぬ国民であることを希望されました。成る程恥にもいろいろありますけれども、行儀の卑しい国民として諸国から尊敬を受け得られぬようでは、諸條件につき永遠に大大損害を受けることになります。元一松厚生大臣は青少年禁酒法は取締に予算がないと言われましたが、取締には別に立看板やビラなどは要りません。文明の器具ラジオで至る所から間断なく指導放送することであります。又それも守らぬ人は、酒醉とか放尿者、こういう人はどしどし科料、罰金を徴收することであります。  又一つは姦通削除後は恋愛は自由だ、趣味だと申し、妻子を捨て夫を捨てて家出する者が殖えまして、ここからも不良兒が出ております。再三申しますが、これらは防止策として特に妾宅には住宅税として重税をかけるべきだと思います。社会国家の分子たる家庭が恨み悩んでおりまするようでは、何が世界平和でございましようか。ユネスコでございましようか。  終りに私は絶対禁酒禁煙論者でありながら、酒は少し作り高く売れば、釀造家も困らず、税收も食糧も減らず、今日は盃一杯頂いて来たというふうで、酒を最も高価品として扱うならば、心身に及ぼす害も少いと政見発表もいたしております。ところで宴会嫌いのシヤウプ博士は、酒による種々の醜態を素つ破抜き、又左の通り勧告されました。即ち配給酒、自由販売酒共に現在の酒税を大幅に引上げることを勧告する、又穀物の不法使用に対する取締を強化されねばならぬ、酒税は日本において取締に大いに努力を増すことによつて多大の利益が上る、又全く酒類は今日の日本で特に重税の適したものである、それは贅沢品である、煙草にも更に増して酒類は富裕者の特別消費物である、特にそれ自身が所得税、法人税の脱税の途である、会社の催す豪華な宴会で消費されるものであるとあります。これはただ酒税についてだけでありますが、これ程勇敢に酒について発表した男子議員が明治以後果して幾人おるでありましようか。今は一人の酒醉も見当らぬという禁酒国でもないアメリカのシヤウプ博士の勧告通り、酒に重税が課せられ、国家の大收入となつて、大いに減税されんことを私は切望いたします。又その上、一本吸い込めば二十グラムの血液を無にする、一時間壽命を縮める、抵抗力なき青少年が吸えば、脳の発育を阻止して不良化する、吸い穀は火災原因の第一位で、建築資材を騰貴さす、脳溢血、胃癌その他の病源となるニコチン、アルコール、性病毒を受けた子は、断じてすくすくと育ちません。この病毒を受けさせぬように守ることこそ、親と国家の責任で、憲法第二十五條に示された通り、すくすくと育ち得た子供こそ、次代国家の一大財源であります。そうして国民に対する減税方法でもございます。終りといたします。(拍手
  43. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 議事の都合により、本日の自由討議は明後十日引続き行うこととし、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明後十日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、日程第一 常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、日程第二 国会法第三十九條但書規定による国会議決に関する件(高松地方專売公社調停委員会委員)  一、川上嘉君の質疑に対する内閣総理大臣答弁  一、賃金ベース改訂人事院勧告に関する緊急質問  一、貿易政策産金政策文教政策に関する緊急質問  一、日程第三 自由討議