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1950-01-28 第7回国会 参議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十八日(土曜日)    午前十時三十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十一号   昭和二十五年一月二十八日    午前十時開議  第一 常任委員長辞任の件  第二 国務大臣演説に関する件(第五日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りいたします。川上嘉市君より病気のため三十二日間請暇の申出がございました。許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次にお諮りして決定したいことがございます。議員中西功君より辞表が提出されております。参事をして朗読いたさせます。    〔海保参事朗読〕     辞職願      参議院議員 中西  功   昭和二十五年一月二十六日    参議院議長佐藤尚武殿  今般共産党から除名されましたので、共産党公認として当選した私の共産主義者としての政治的進退を明かにするため、議員辞職を御許可願います。
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中西功君の辞職を許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて中西功君の辞職は許可することに決しました。      ——————————
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、常任委員長辞任の件。一昨二十六日、郵政委員長山田佐一君及び予算委員長黒川武雄からそれぞれ委員長を辞任いたしたい旨の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて常任委員長辞任の件は決定いたしました。      ——————————
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、日程に追加して、只今欠員となりました郵政委員長及び予算委員長選挙を行いたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  12. 鈴木直人

    鈴木直人君 郵政委員長及び予算委員長選挙は、成規手続を省略して、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  13. 山下義信

    山下義信君 只今鈴木君の動議に賛成いたします。
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 鈴木君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長は、郵政委員長水久保甚作君を、予算委員長山田佐一君を指名いたします。(拍手)      ——————————
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、国務大臣演説に関する件。昨日に引続き順次質疑を許します。中野重治君。    〔中野重治登壇拍手
  17. 中野重治

    中野重治君 日本共産党は、吉田総理大臣その他の二、三の係り大臣にお尋ねします。ついては初に一つのことを言つて置きます。それは新聞のことについてであります。とかく総理大臣新聞報道を、新聞報道だからというので軽くあしらうように努めているように見える。現に衆議院沖繩軍事基地化日本人経費負担との関係が問題になつたときも、新聞記事を土台として質問を出されては困るという意味のことを答えている。成る程新聞記事は間違いもあります。政府筋と何らか関係のあるらしい記事が特に疑わしい。(笑声)だからといつてこれを無視してはならない。新聞記事に誤まりがあれば、これは取消させればよい。意見に誤まりがあればこれは反駁すればよい。新聞記事だからといつていなそうとするのは政治家して非常に卑怯である。殊に問題は日本人にとつて極めて真劍であります。発言者ヴオアリーズ・アメリカ陸軍次官であります。多くの日本人は、アメリカ人言葉に非常に聞き耳を立てるように癖を付けられている。新聞記者達にしても決して伊達や醉興で記事を書いているのではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり)武器を棄てた日本軍事基地化されるといえば、新しい戰争日本が引込まれる可能性が生れるということであつて、平和を願うすべての日本人がそれについて心配をしているのである。それですから、APのブラインズ氏の言葉などについても非常に我々は心配している。ブラインズ氏はこういうことを言つております。「今や北海道から九州に至るまで数多くの飛行場占領軍費の一部により日本人を使つて作られた。これらの飛行場アメリカの優秀な飛行隊一つを含む戰闘機のためにも使われる。それは日本進駐車とその航空機とを保護するために必要なのである。コンクリートの滑走路アメリカ最大爆撃機を発着させることができる。横須賀は恐らく戰争危機においてこの地域の軍隊を維持する多量の供給物資のための重要基地となるであろう。」こう書いております。而もブラインズ氏の言葉を載せた日本新聞の多くが、私が今読み上げた部分をわざと拔かした事実から見て、日本人心配はそれだけ大きくなるのである。日本人ならば誰しも持つているこの大きくなる心配、この心配からどうして正しい方法で逃れるかについて真劍に考えている日本人にとつて、今度の総理大臣政治方針演説は余りにあほらしく聞える。のみならず、まじめに心配している。眞劍に努力している日本国民に対する露骨な敵意さえもそこに聽き取られるのである。世界並びに日本実情に関して、国民の眼、耳を外から無理に抑えて、心理的には暴力的に政府に従わせようとする意向がそこに見られるのであります。これは政府教育方針にも現われています。  そこで教育について先ず尋ねます。教育のことについては非常に多くの問題があつて、六・三制の問題、経費の問題、馬小屋教室の問題などの非常に沢山のことがある。併し教育費を削る予算案文部大臣が真つ先に賛成投票をしておる有様でありますから、私は多くのことを尋ねませんが、ただ教育内容についてお尋ねします。一体政府日本人のすべて、特に国の未来を背負うべき青少年に何のためにあれ程劣等民族意識を注ぎ込んでいるのか。他の国に頼る外はないという隷属精神を吹込んでいるのか。国の費用で厖大な量の教科書を作つて社会主義国人民民主主議国は悪者であるというような詰込み教育を強行しているのか。政府やり方はコア・カリキュラム方式の最近の教育によく現われておりますが、もともとあの方式日本実情にふさわしくないものである。それを無理に押し付けて、その結果、生徒学力ががたがた落ちて来ている。そこで、まじめな教師が仙台で実地調査をして、コア・カリキユラムでは学力が落ちるということを言つた。ところが政府はその教師を忽ち首切つている。一方、別のことも現われている。このコア・カリキユラム方式は昔の文部省詰込み教育とは違つていると、それは社会生活の実相に合せてする新しい教育やり方であるという、うわべの触れ込みを信じて、まじめな教師生徒が協力して勉強した所もある。そうしたところが、その結果、例えば百六十万人の一〇%は二十七万人でないから、ソヴイエト同盟に残つておる日本人の数が三十七万というのは嘘らしいということが明らかになつて来た。又通商局輸入第四課の言うような、シヤム米は六千八百円、メキシコ米は八千二百円で買う、併し日本の農民の作つた日本米は四千二百五十円で買うというような方式は、日本農業の崩壊をもくろむものだということが明らかになつて来た。(拍手)そうすると、文部省は、コア・カリキユラムはよろしくないということを言い出して、あれは「りんご」の肉を食わずに蕊だけを噛じるようなものだから止めろということを言い出した。而も文書でなしに、去年の下半期あたりから人を諸方にやつて、証拠が残らぬように口で説き廻つている。そういうていたらくである。そうして、日本現実に既して生徒教育しようという教師に対してはいろいろなレツテルを貼つて、東京では武装警官を配置して、この首切りを決定している。何のために政府はそれ程にまでして日本民族歴史日本族現状を、国の未来を背負うべき青少年の眼から隠そうとしているのか。以前に、侵略主義的な日本は、朝鮮青少年朝鮮歴史を忘れさせ、朝鮮民族実情に眼隠しさせて、毎朝彼らを講堂に集めて、一つ、我らは皇国臣民であります云々ということを唱えさせておる。それは朝鮮民族のためではなくて、日本帝国主義利益のためにこういうことをやつた。吉田内閣はこれに甚だよく似たことを何者利益のために敢えてやつているのか。総理大臣並びに文部大臣にこれを尋ねます。  第二は、総理大臣の言う日本の安定しアジアの不安定の問題であります。総理大臣は、中国東南アジア諸国を通じて大きな不安定が生れておる、そのために総理大臣は不安と脅威を感じておる、こう言つておる。実際はどうか、アジアの国々、アジアの諸民族は、長い植民地、半植民地的状態から独立しつつある。明らかに自己の民族民主的国家を現に創りつつある。中華人民共和国の誕生はその花というべきものであります。これは日本について言うならば、これらの国に侵略の手を伸ばしていた過去の日本帝国主義に対して歴史の審判が下されたということである。新らしい中国先頭とするアジアにおいて、何者の力によつても妨げることのできないところの歴史法則による正しい安定がもたらされつつあるということである。講和と独立とを前にして、我が日本民族は、中国先頭とするアジアの変化に模範激励とを見出しておる。総理大臣は何のためにこの模範激励に対して心理的に不安とおびえを感じるのか。何のためにそれを感じるのか。それは総理大臣が今もやはり過去の日本帝国主義侵略的精神から拔け切つていないからではなかろうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)曾て総理大臣はこの演壇で日本帝国ということを口走つて、これを指摘されて、これを取消しておる。併しながら現状から言えば、総理大臣は口ではそれを取消しても、心では取消していないのではなかろうか。一方、総理大臣は、アジアの不安定の中で日本だけが安定しておる、そのことに安心感じておるということを言つておるが、実情はどうか。仮定ではない。実情はどうか。先にも触れましたように、貿易日本産業衰弱する方式で行われておる。教育青少年を無智にして、外国に頼るより外はないという劣等民族意識を吹き込むように行われておる。失業者は国に溢れておる。失業者に関しては、昨日ここで羽仁君の質問に対して、鈴木労働大臣が何か呟きました。(笑声)併し労働大臣日本失業者のことを言つたところで誰がまじめに取上げるか、先刻御案内のことであろう。(「そうだ」と呼ぶ者あり)百八十万以上のやもめは殆んど見捨てられておる。重い税金は自殺者を出しておる。不安と混乱のために子供の自殺者さえもどしどし出しておる。働く者の権利は大幅に且つ暴力的に破壞されつつある。而も総理大臣講和方式についての国民の論議に口かせを嵌めたいという感じ願望を露骨に現わしておる。(「ノー」「そうだそうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)これは大きな不安である。我が日本人民族としての衰弱以外の何ものでもない。(「暴力革命はどうした」と呼ぶ者あり)国民を挙げての生活苦痛、不安、民族的衰弱、この事実を見て、ここに安定を感じ喜び感じるという吉田総理大臣は、どこの日本人でありますか。(笑声)彼は日本人民族衰弱喜びを見出す人々のための総理大臣ということになるのではないか。民族を売る「やつこ」ということが言われておるのも、こういうところから由来しておると思う。アジアの不安定とそのために総理大臣感じる不安とおびえ、日本の安定とそのために総理大臣感じておる喜び安心、これは今述べたアジア現実日本現実に即して果してどうであるか。もう一度ここではつきり答えて頂きたいと思う。(「ソ連に行つて聞いて来い」と呼ぶ者あり)  第三は貿易の問題であります。特に不当なクレーム損害賠償の問題であります。この問題はすでに衆議院でも出ておる。問題は明らかである。日本貿易業者が不当に蒙むらされた損害について、日本裁判所がそれは相手方によつて賠償さるべきものであるという判決を下したけれども、この賠償実地には取れないという簡單な事実であります。日本裁判所日本人被害者利益を守ることができないということである。日本裁判所の正しい判決も、外国貿易業者による日本商品買い叩きのために結果として門を開いておるという事実である。これに対しまして日本政府はどういう対策を立てて実行しておられるか、これをお尋ねいたします。衆議院答弁では総理大臣はこう言つておる。「現在裁判協力の條約は結ばれていないから賠償が取れないのは当り前でございます。」こう答えている。併し私はそういう三百代言的の弁解をここで求めておるのではありません。  マリアルーズ号のことは皆樣御承知のことだと思います。一八七二年にペルーマリアルーズ号は二百三十人余りの中国人労働者を奴隸として乘せて横浜に入つて来た。あの時の神奈川県の権令大江直は、ペルー日本とが條約を結んでいなかつたにも拘わらず、又司法卿江藤新平初め国内に大きな反対があつたにも拘わらず、又当時のフランス公使アメリカ公使、その他外国代表者の側からの異論があつたにも拘わらず、奴隸解放は正しいと確信して、断呼としてこの二百三十人の中国人奴隸を解放して、それを故国中国に帰したのであります。これは他国人のことであります。又條約の結ばれていない国との間のことであります。今から七十八年前のことであります。而も大江のやつたこの処置はいろいろ困難に遭遇したけれども、遂に世界の正しい輿論の認めるところとなつております。繰返して言いますが、この時の大江は決して総理大臣でもなければ外務大臣でもありませんでした。神奈川県の権令ですから、県知事か、たかだか副知事に過ぎなかつた。総理大臣並びに外務大臣はこのことを思い出して恥を感じにならないかどうか。  私は無論、條約を無視せよというのでは決してない、これはどこまでも重んじなければならない。併しながら日本政府としては、日本人業者、並びに当の品物を作つた日本労働者の受けた不当な被害について、被害者加害者から守られるような何らかの手を打ち、何らかの手続をとつて、局面の実際的好転を図る政治的責任があると、こう考えます。「條約がありませんから当り前でございます」というだけならば、総理大臣日本人貿易業者立場よりはその反対者立場に一層近く立つものであると、こういうことになる。日本輸出業者、分けても多くの中小の業者に対して買い叩きに出ようとする人々利益代表者という立場に立つものということになる。それならば、それは政府が唱えて来た貿易繁昌のお題目とは直接に衝突するのみならず、あのお題目の本当の中味は何であるかということを暴露することになる。一体総理大臣日本政府代表として、この問題に関して日本人被害者のために、條約問題以外どういう具体的手続をとつて来ておられるか。何らかの手続とつたとすればどの程度の実効に漕ぎ付けておるか。その点をお答え願いたい。  最後講和の問題についてお尋ねいたします。この問題は簡單であります。講和の問題、特に全面講和單独講和かの問題については、すでに日本民族全体の結論が、希望として明らかな形をとつておる。今まで総理大臣は手を変え品を変えして、民族のこの希望が明らかになることは講和問題そのものを妨げると、こういうことを言つておる。そういうやり方によつて国民願望として明らかなことを塞ごうとするやり方がもうすでに打ち碎かれておる。そこで即ち全面講和單独講和かというようなことを言うのは講和問題をこじらせると言つたのですが、実は政府のもくろんでいる單独講和方式が碎かれるということを恐れての言葉であるということが今日明らかになつたのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)この、戰争に引き込まれる大きな可能性のある單独講和方式は、総理大臣の努力にも拘わらず、日本人民願望として完全に碎かれました。そこで政府は一層狡猾な挙に出ようとしておる。これはもう單独でも全面でも何でも構わん、占領終止になればよい、これが終りさえすればよい、こういうことを唱え出そうとしておるように新聞なんかでは伝えておる。併しながらこういう考えが若しあるとするならば、一層罪深い仮面で單独講和を保持しようとするものである。  このことはすでに官房長官増田君の新聞記者に対する談話にも発表されておる。ここに告白がなされておる。増田君によれば、政府與党とは單独講和に決めておる、こう言つておる。(「もう時間だよ」と呼ぶ者あり)全面講和が望ましいことは議論の余地がありません。又これは世界人民平和勢力民主勢力、によつて、実現の可能性が刻々に高まりつつある。ところが増田長官談話によれば、彼らはこの望ましく且つ可能な全面講和を裏から破壞しようとして妄動しておるものであり、彼らは世界平和を日本講和の問題の結び目において食い破ろうとする獅子身中の虫である。明らかに民族の敵である。(拍手、「共産党にそんなことを言う資格があるか」と呼ぶ者あり)新聞には、勿論増田長官が慌ててこれを取消した、こう言つております。これは取消す筈である。併しその場合、新聞増田長官のことを家来とが番頭とか呼んでおる。これは恐らく総理大臣との関係においてこう呼んでおるのでありましよう。(笑声)手代、番頭を通じて主人の肚はよく見え透いておる。ここに至つてあれやこれや言つたつて、すべて望ましく且つ可能なこの全面講和に対して裏からこれを破壞しようとするもくろみである。ただ平和を求める日本人民のみが考え且つ実行することである。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)我々はこれを徹底的に排斥してこういう勢力を駆逐しなければならぬ。若しそうでないとすれば、それに対して総理大臣の明確な答弁を求めたい。こう日本共産党は求めます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。新聞記事については政府責任を負いません。当該新聞社はその記事について責任を負いましようが、政府として責任を負わない。又取消したらよかろう、一々取消すということは、とても煩に堪えませんから取消しません。又取消せば、取消さない記事政府責任を負うかということになりますから、一々取消の手続はいたしません。(拍手)  又軍事基地の交渉は受けておりませんから、この点もお答えはしない。  又日本の安定は、私は安定しておるものと考えて喜んでおります。又その安定についてはた又單独講和をなすもくろみかというような、私の考えについての揣摩臆測は、今日においては責任を持ちません。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉登壇拍手
  19. 殖田俊吉

    国務大臣殖田俊吉君) 私のお答えすることは、多分例の外国貿易クレームのお話でございますけれども、法律上の見解では、講和條約が成立いたしますまでは、恐らく裁判共助の條約ができないものと考えます。従つて裁判共助の成立しておりません今日、如何ともいたし難いことでございます。講和條約の成立を急ぎますことは、又かような矛盾を取り去ることになることと考えます。(拍手、「三百代言だ」と呼ぶ者あり)
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 文部大臣関係方面に出向いておりますので、答弁は留保いたします。姫井伊介君。    〔中野重治君「簡單に再質問いたしたいと思います」と述ぶ〕
  21. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中野重治君の特ち時間は時間一杯でありました。よつて質問は許しません。     —————————————    〔姫井伊介登壇拍手
  22. 姫井伊介

    姫井伊介君 総理安本大蔵、三大臣演説に対しまして、国民生活国家経済の安定に関する立場から質問をいたします。  政治の目標を通俗的に考えますると、国民の誰もが能力に応じて働き得るようにしなければならないこと、国民の誰もが健康で文化的な標準生活を営み得るようにしなければならないことだと思うのでございます。そこで質問の第一の内容は、完全生産完全雇用を実現するための政策についてでありまして、質問要目は後で結論的に申上げます。  総理施政方針演説におきまして、総理は、経済の安定は自然政情の安定を促がし、民主主義国民の間に根柢を固め、健全な発達をしておると述べられております。安本長官は、我が国民経済基礎は未だ巨額の輸入超過状態を免れず、又国土の復旧は思うに任せず、企業の資本は減つており、我が経済発展基礎は未だ十分でないと言つておられます。大蔵大臣は、徒らに経済の不安を説くことは、いわゆる、ためにする議論に過ぎないと言つておられます。それぞれそこに若干の食い違いを見出ずのでありますが、それはともかくといたしまして、眼前の事実はどうでありますか。経済不安、生活不安、社会不安はますます深刻化するの樣相にあります。ここに経済不安、生活不安の一現象である失業問題を取り上げて見ましよう。失業の原因、失業者状態につきましては略します。併し失業者が漸次その数を増しつつあるという現実は御承知通りであります。これに対しまして、即ち失業対策といたしましては、輸出産業及び一般産業の振興、公共事業及び見返資金の活用、失業対策事業失業保險制度充実等が挙げられております。これで処理のできない最後の段階は生活保護法で受止めるということになるのでありますが、それでも未だ不十分であります。一方、健康保險国民健康保險の運営の行詰りは御承知通りであります。これら社会保險その他公共福祉等事業を打つて一丸といたしましたところの社会保障制度が確立されなければならないので、すでに審議会によつて熱心に考究せられておりまするけれども、未だ遅々として目鼻が付いておりません。この審議会の二度の勧告に対しまして、政府はどういう措置をとられましたか。どういう態度をとられましたか。私共はつきりそれはしていないと思うのであります。政府はこの制度確立につきまして積極的推進の熱意があるのかどうか、疑わざるを得ないのであります。総理大臣失業対策など社会政策諸費に五百六億計上したと言われるのであります。これは一般会計特別会当の総計から重複した額を差引いた純計金額の一兆七千四百億円の僅か三%弱であります。政府の出されました予算編成の特色の第五を見ますると、教育文化及び社新政策関係費充実を図つたこと、とある。教育文化費を除いて、国民の一割に当る不遇生活者生活を保障して、且つ自立、自活の途を與えるところの経費が、僅かこのぐらいで十分なりとお考えになつておりますか。大蔵大臣一般会計特別会計政府関係機関を通じ、建設面に向けられる経費総額二千百五十億に達すると言われております。更に主として産業資金に充てられるべきところの債務償還総額は一千三百八十六億に及んでおります。これを合せますと三千五百三十六億になつて会計総額の二〇%強に当るのであります。この姿は、生産建設の主力であるところの人を主とせず、物を重んずる片寄つた政策の現われではないでしようか。適材適所、適能適職政治理想は少しも認められないのであります。病人を治療することと共に、病気にならぬように予防措置をとることが必要であると同じように、不徹底な失業救済よりも失業防止方策が根本的に必要でありましよう。一昨日でありましたか、赤木議員質問の要旨を借りて申しますならば、河川工事の必要もあるが、砂防工事が行われなければならないと話されております。それと同様であります。即ち完全生産完全雇用のための計画経済が絶対に必要であるというゆえんであります。諸外国におきましても、この完全生産完全雇用実施促進方策が講ぜられておりますことは御承知通りであります。  ここで私の質問の第一は、社会保障制度国民と国の負担力考えて漸進的に整備して行かなければならぬが、その第一段階実施の第一歩を二十五年度において踏み出すの意図ありやどうか。並びに社会保障制度審議会勧告の受入体制は用意されておるかどうかということ。  第二は、資本主義的自由経済の中で、言訳だけの計画経済でなく、計画経済の中で自由経済産業政策をとるの考えがないか。若しその考えがないとしたならば、その理由が承わりたいのであります。  質問第二の内容生活の安定に関する政策についてでありまして、三大臣演説を伺いますと、徹頭徹尾、経済安定から生活安定への理論に立つておられるようであります。即ち物を主とし人を従とする物主人従主義と思われるのであります。そういたしますならば、共産主義の唯物史観が或いは笑われぬでしよう。適例を国家公務員の給與ベースの問題にとつて見ましよう。総理大臣は、政府は今回の公務員給與ベースに関する人事院勧告には応じ難しとの結論に達した。給與引上げを行えば物価と賃金の悪循環を引き起し、再びインフレに逆行する。政府も目下の給與を以て足れりとするものではない。財政の余裕を待つて更に検討を加えたい考えであるから、公務員諸君も暫らく忍んで国力の回復に協力せられんことを希望する。これは私は国民側から考えると、恐るべき邪見の言葉であると思うのであります。大蔵大臣はこれについて、給與ベースは変更しない。賃金水準、物価水準の安定こそは経済安定のための不可欠の條件である。先ず経済の安定を強化することに全力を挙げ、然る後云々、更に曰く、人事院勧告を実施すれば中央地方を通じ、一ケ月当り約五十億、年額約六百億の財源を必要とする。経済安定のための基本的政策がすべて破壞されると言つておられます。  ここで私共が考えべきことは、然らば第一、給與額は適正であるかどうかということであります。総理大臣みずから目下の給與を以て足れりとするものではないと言つておられる。二十三年七月、生計費と民間給與実態調査による六千三百七円ベース算定の当時から、生計費も民間給與額も上昇しております。そこにスライド制は行われておりません。公務員給與は均衡を失し、適正を欠いておる。即ち現給與額は適正ならずと断定せざるを得ないのであります。第二、給與と物価は安定しているか。総理は、物価は月を追うて低落の傾向にある。これは一部の観察に過ぎない。安本長官は、公定価格と自由価格を総合した実効物価は昨年初頭以来大体同一水準にありと言つておられます。これは相当ごまかしがあると思うのであります。大蔵大臣は、物価も賃金も全く安定していると言つておられます。給與の方はいわゆる統制的措置でこれを釘付けにして置いて、物価の多くは自由に流して、而してこれが両方が安定していると言えましようか。重い物価と軽い給與の天秤は決して安定していないのであります。総理は「新年を迎えて新日本建設の決意を新たにするの状あるは」と言つて楽観されておりますが、国民の多くは年末年始を泣いて通つたのであります。  第三、給與を適正にすればインフレに逆行するか。経済安定の基本的政策がすべて破壞されるかどうか。過去のインフレは給與賃金による消費インフレではなかつたのであります。適正の給與は生活を安定させ、勤労能率を高め、適度の購売力を培い、有効需要を起し、貯蓄もできることになるのであります。資本蓄積は勤労大衆の手でも行えるようにならなければならない。即ち資本の御主化の要があるのであります。そこにこそ経済安定の基礎は確立されると考えるのであります。  第四、財政に余裕がないのか。産業資金面に対しましては、見返資金活用、金融機関の増資、債券の発行、企業の起債、優先株式の発行、証券金融の優遇、証券市場の育成助長、あらゆる資本主義的の手を打つておられるのであります。而も投資大衆の保護を図ると公言されております。投資家大衆とは誰でしようか。この莫大なる資金放出が流れる中間に或る吸い取りが行われるのであります。莫大なる額であります。そこに資本家、企業家の生活が最大限度に賄われ、勤労者には最小限度のお裾分けしか出て来ないのであります。大蔵大臣は、見返資金、預金部資金などについても適時に適量に放出して、極力適正な通貨量を維持したいと言つておられる。その預金部資金とは何です。その中には百七十一億という厚生年金の剩金積立金があるのであります。これは明らかに勤労者の手によつて積立てられ、勤労者の福祉施設に使われるものでありまするが、それが産業資金へと横滑りをしておるのであります。情けないかな、勤労者には適所適量の放出が行われていないのであります。  予算編成の特色の第六には、前年度に引続き相当額の債務の償還費を計上する等、財政上の剩余による経済の安定化を図つたこと、とある。大蔵大臣は、債務償還金で日銀を通じ或いは直接市中金融機関から緊要産業に放出されることが、経済安定の手段、最も確実な識本蓄積の方法だから、特に重要視すると言う。さればこそ銀行職員の給與は一般給與より非然に高く、ベースは一万円以上とさえ言われておる。その償還額は一千三百二十六億で、そのうちの剩余金及び積立金は六百九十六億が算出されておるのであります。二十四年度の予算補正におきまして、六・三制のための経費国民全体が叫び続けて要望した、四苦八苦して捻り出されたものが十五億であります。一方、薪炭需給特別会計におきましては、五十四億七千万円があつたという間に出てしまつておるのであります。これでも財政の差し繰りが付かないのか。給與には税金のはね返りもあるのであります。本当に政府に誠意があるならば、三百億や四百億出しても、経済は安定こそすれ、決して破壞はされないのであります。  第五、暫らく忍ばねばならぬかということであります。もはや忍ぶべくして忍び得ざる状態にある。罷業権が抑えられて、心に苦悶の焔を燃やして泣いておるのであります。総理は労働運動の穏健化を讚えられるのでありますが、   (議長退席、副議長着席)  良き馬も去勢されては駄馬に等しくなる。封建的な、封建時代の農民のような駄馬を好まれるのではございますまい。国力の回復に真劍に協力するには、協力し得るように仕向けられなければ協力ができないのであります。かくのごとく勤労者を犠牲にしての安定工作は無理であり、封建的の良からぬ政治であつて、人道的には罪悪ではないでしようか。伸び行く子供、その子供に対して、お前は去年までは配給量が二百二十グラムであつた、そのときお前の身体にもその着物がきちんと合つておつた、お前が今日太つたが、併しながら先ず昔の三百二十グラムで我慢をしておれ、身幅が合わない丈の短かい着物を着て我慢をして働け、家計の安定ができたら何とかしてやろうということは、これは無慈悲な親だとして世間から非難されるのではないでしようか。産業復興、経済安定の必要なことは無論でありまするが、併しその産業は人のためなんであります。又人の力で働かせる、興さるべきものであります。一部の強者とも申しますか、仕合せな地位のある人を利して、多くの弱者を一層弱者に陷れる、弱肉強食の自由経済は、多数の不自由なる人間を作るのであります。私は民主自由の名に背きはしないかと思うのであります。国家公務員と産業勤労者とは違うといつたような錯覚にも陷つて頂きたくないのであります。更に人事院の勧告並びに公労法によるところの仲裁裁定の取扱、若しも今のように政府が否認し否定し続けられまするならば、法の威力は一体どこにある。又それらの機関はどうすればいいのか。幾ら努力しても駄目だということになる。これも又恐るべきことだと考えるのであります。  そこで質問の要綱に移ります。  第三の質問は、民主安定と経済安定の比重を同じくし、社会厚生政策産業経済政策を同列に置いて、物を主とする物主主義から民主主義へ展換して、真の民主政治に立ち直る御意思はありませんか。その意思があるならば公務員の給與ベースの問題などは直ちに解決するのであります。  第四の質問は、国家公務員給與ベース改訂について、首相の言葉のごとく、再検討して善処して、愉快に本気に働かせる政治良識と親切があるかないか。それとも無理押し付けに苦痛と不満の生活を続けさせられる御意思なんでありますか。以上お尋ねいたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  23. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  いろいろお尋ねがありましたが、これは主管大臣からしてお答えをいたさせます。    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  24. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 姫井議員の只今の御質問に対してお答えを申上げます。  第一に、施政方針の演説のうち、特に経済政策について私が申述べました中に、日本経済の自然的な諸條件或いは基盤的な問題に触れて申上げた点が、総理大臣及び大蔵大臣の御説明と矛盾すると思うがどうか、こういう御質問でありまするが、これは決して矛盾をいたしてはおらぬ。その諸條件、日本経済の諸條件及び自然的諸條件、及び基盤的な問題に触れて申上げた点でありまするので、それは十分御了承が願えると確信をいたして申上げている次第であります。  尚、実効価格の問題について、何かごまかしているといつたような御非難があつたと存じますが、決してごまかして好い加減なあの我々の研究の結果を発表しているわけではございませんので、十分御信頼を頂きたいと存じます。  それから第三点でありまするが、経済計画と自由経済関係についてのお話であります。この点は、日本経済を再建いたしまするためには、必要な部門に投資して、生産の基盤の拡大や雇用の増大を考え図りますることが必要なことは勿論のことでございまするが、このために如何なる程度の計画と統制が必要且つ効果的であるか、こういうことを考えまするならば、経済実情如何によつて判断しなければならないと考えるのであります。政府といたしましても、何の見通しも調整もせずに経済を自由に放任しようとするものではございません。ただできる限り個人の自由と創意を活用いたしまして、時宜に適した方策をとつて行く方針であります。  第四点でありまするが、完全生産完全雇用の実現を期する政策云々、産業政策の用意ありや否や、それから生活保障と安定に関する政策についての所見、この点でございまするが、完全操業と完全雇用は財政経済政策の窮極の目的であることは同感であります。政府といたしましては、経済を逐次正常化して、産業界の創意と自主的活動の範囲を極力拡大して行くことによつて資本蓄積と産業活動の活溌化を図ることが、日本経済の安定と再建並びに雇用機会の増大を期する最善の方法であることを信じて、諸般の経済政策を実施いたしておる次第でございます。併し経済の安定と再建は、国民生活の安定なくしてあり得ないということは、政府としても十分認識いたしておるところでございます。減税とか生活必需物資の増配、住宅建設の促進等によつて実質賃金の充実を図ると共に、失業保險費、失業対策費、生活及び兒童保護費等の増額によつて、社会厚生施設を能う限り充実することに努めておりまするし、今後においても社会保障の問題には十分意を用いてその方針を定めて参りたいと存じておる次第であります。    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  25. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お答え申上げます。  御質問の第一点は、社会保障制度をいつから実施するかという御質問でございまするが、御承知通りに、社会保障制度審議会を設けまして目下鋭意検討中でございます。で二十五年度におきましては、昨年度よりも審議会の費用を沢山計上いたしまして、できるだけ早く立派な結論が出るように努力いたしておるのであります。結論が出ましたならば、政府といたしましてもできるだけ早く実施に移したいと考えております。  次に公務員の給與の問題で縷々お述べになりました。要するに私は、経済の安定か、生活の安定か、どちらが先かというお話でございましたが、何と申しましても経済の安定がなければ国民生活の安定はございません。私は日本経済の安定をできるだけ早く実現いたしたいというので努力して参りまして、大体財政演説において申上げましたように、大体安定の軌道に乘つたと考えておるのであります。ただ議論をいたしますると、今のように物価高で而も賃金が安くては、これは安定とは言えぬと、こういう議論がありますが、これは如何せん、非常な痛手を蒙むつたのでございます。いわゆる貧乏ながらも安定の途で行く、そうして金持になろうとするのが現状であるのであります。それは戰争しなかつた国とか或いは戰争に勝つた国に比べますると、それは非常に條件が悪うございまするが、併し條件が悪い中に不安定であるよりも、條件が悪い中で安定した方がいいというので、先ず安定をやつておるのであります。而して賃金ベースにつきまして四ケ條に亙つて質問がございましたが、これにつきまして私の考えを申述べることにいたします。  先ず賃金ベースにつきましての、今の給與額は適正なりやという問題でございます。で、給與が適正かどうかということは何を標準にしてやつて行くかという問題であります。私は、やはりその基本をなすものは経済の安定だと思います。而して公務員の給與は、先般来、財政演説或いは御質問に対してのお答えで申上げましたように、昨年の三月を一〇〇といたしますると、実質賃金は非常に上つておるのであります。而も又今年度におきまして減税をいたします。そうしますと、又実質賃金が上つて来るのであります。支してこの次の問題といたしましては、それじや公務員の給與の一般労務者の給與との問題はどうか、その比較論になつて参ります。併しその比較論は、遺憾ながら我が国には立派な統計がございません。概ね比較せられておるのは、大産業の労務者を基準といたしまして、統計に出ておりまする一月八千四百数十円を基本にして六千三百円ベースを論議せられておるのでありまするが、この八千四百円というのは全国一般の労務員の給與平均ではないのであります。これは二十三年度の統計によりますと、工業賃金平均八千四百円に対しまして、二十三年度においては中小商工業関係の労務者は二、三割程度低いのが実際であるのであります。こういうことを考え、又公務員の六千三百円ベースも、その後の昇給それ他によりまして、各官庁で違いまするが、平均六千四、五百円に相成つておると思つております。而も又本年度、二十五年度におきましては、超過勤務手当なんかがそれに加わつて参りますので、この八千四百円という、平均よりも高い部分に比べましても、税引きの関係は一割程度しか低くなつていない。而も中小商工業の労務者の今の現状、賃金を考えますと、必ずしも官吏が非常に低いということも言い得られぬと思います。この数字につきましては、いずれ委員会で詳しく御説明申上げてもいいと思うのであります。  次に、第二点の給與と物価は安定せりやという問題であります。私は一昨年の賃金三原則が出ましてから、大体安定しておると見ております。これは先程も申上げましたように、これは負けた関係上、物価は高くて賃金は安い。この條件はこれはいたし方ないのでありますが、高いなら高いなりに、低いなら低いなりに、過去三、四年間のような悪循環はなくて、一応安定しておると言い得ると思います。これは経済諸指標が示しておる通りであります。  次に、若し官吏の給與を上げたならば悪循環ありやという問題であります。人事院は悪循環なし、こう言つておりまするが、これは私は非常な誤まりであると思うのであります。これは歴史が示すではございませんか。終戰後昭和二十年の時に、官吏の平均俸給は六百円でありました。それが千二百円になり、千六百円になり、或いは二千九百円になり、三千七百円になり、六千三百円になつたのであります。この間に物価を、片山内閣では新物価体系として物価を決めましたが、賃金を決めておりません。従つて物価は決めた、一昨々年の七月から物価は決めましたけれども、賃金を決めていないために、どんどんその翌日から上つた。芦田内閣で又新々物価体系を決めましたが、賃金を放つて置いたから、そのままにどんどん上つて来た。吉田内閣ができてから、一昨年十一月吉田内閣ができてから、賃金三原則を本当に決められなかつたために、いたし方なしに、吉田内閣も追加予算として四十七億円の追加予算を出したではありませんか。こういうようにして、事実が証明する。而も又月に五十億円、そうして年六百億円のこの財源はどこから賄うか、併し私はこの六百億円というのは、国家公務員と地方公務員だけでありますが、これ以外に農業協同組合、或いは官吏、役人待遇の給與を出しておる組合とかいろいろなものがあるのであります。又石炭関係にしても、殊に電気関係の労務者につきましては、役人の給與を基準にして決めておるのであります。だから若し年六百億円ぐらいとお考えなつたら大変でございまして、経済界にはこれ以上のいわゆる購買力を非常に発生いたします。そうして終戰後の二、三年間のように賃金と給與の悪循環をやる。これはもう鉄道にしましても、或いは食管にしましても、どうしても運賃を値上げしなければならぬ。或いは一般会計におきましても、減税を止めなければならぬ。これが物価に及ぼす影響というものは、これは過去の事実が示しております。(「迷論々々」と呼ぶ者あり)  次に、財政に出す余裕がないか。財政に出す余裕がございません。私は今のように、今大体実質賃金は上りつつあるのでありますから、できるだけ早く日本経済を安定して、そうして国民経済を、国民生活を安定に導かなければならぬと考えておるのであります。(「実質賃金が上つておる事実を示せ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  26. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 姫井委員にお答えをいたします。  社会保障制度の問題につきましては、姫井議員と全く私共は感を同じういたしておるので、鋭意これが促進をいたしたいつもりでおるわけであります。ただ併しながら、何分にも広汎に亙つたところの問題でおりまして、未だその具体的の案というものはお示しするまでに至つておりません。従いまして幸いにお話のありました通りに、審議会というものが著々進んでおりまするから、その具体案の答申がありました場合においては、その結果ともよく勘案をいたしまして善処いたしたいと考えるわけであります。尚、先程大蔵大臣もお話もございました通りに、これが具体案ができるようになりましたならば、厚生省と大蔵省とは共に研究をいたしまして、その実現を早からしめたいと考えておるわけであります。  尚、諸種の保險の整備統合などにつきましても、これは第一に考慮すべき問題と考えておりまして、健康保險であるとか、或いは国民健康保險、船員保險、厚生年金保險、又国家公務員共済組合、或いは恩給制度というような現行の社会保險制度の統合の問題もよく調整をいたしまして、これらの問題を解決いたしまして、シヤウプ勧告の次第もあり、早急にこの問題が具体化されることと考えるわけであります。(拍手)     —————————————
  27. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 木村禧八郎君。    〔木村禧八郎登壇拍手
  28. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 私は先ず講和問題につきまして、二つの点を吉田首相に御質問いたしたいのであります。  第一は、首相は我が国の政治経済現状について、現実の不安定を無視されまして極端な楽観論を述べておられますが、これは早期單独講和の実現を希望するための外交的ゼスチユアではないでしようか。実際には周知の通り政治経済は安定していないのに、安定していないと正直に言いますと早期單独講和が遅れるので、安定していないのに安定しておるかのごとく見せかけて、早期單独講和の條件を無理に作り上げようとしておるのではないでありましようか。(「ノーノー」「そうだ」と呼ぶ者あり)  過日の社会党和田議員の質問に対する首相の御答弁はそういう印象を私に強く與えたのであります。この点、速記録を御覽になればよくお分りであると思うのであります。要するに、余りに首相は小乘的な外交に偏した政治経済観をお持ちになつていると、こういうふうに私は認めざるを得ないのであります。この結果は、丁度戰争中、日本の軍部が日本の国力を国民に誇大に歪曲して宣伝し、真実を知つているのは外国のみであつて日本国民は実際を知らず、遂に国を誤まつたと同じような事態を招来する危險があると思うのであります。従いまして、この点に対しまして、首相のはつきりした御見解を伺いたいのであります。つまり楽観論は意識的な外交的ゼスチユアであるのかないのか、そうでないといたしましたならば、その根拠はどういうところにおありであるか、この点を先ず伺いたい。(「それは外交辞令だよ」と呼ぶ者あり)  それから第二の質問、二十七日附の夕刊中外の報道によりますれば、二十六日の記者団会見で増田官房長官は、「閣僚は随時外務省当局から世界情勢の情報を聞いているから、早期單独講和の方が有利だと考えている」と述べているのであります。單独でも全面でも何でも、早く講和さえ開けば大使や公使に出世できると考えているような外務省の役人の情勢分析に基いて、早期單独講和が有利だと考えるようなことがありましたならば、これは飛んでもないことである。(「浅ましい、浅ましい」と呼ぶ者あり)丁度戰前、戰争中、軍部や外務省役人が、米国と戰争すれば負けることは分かり切つていても、強硬論を主張しなければ、首相や、大臣や、大将、その他の地位を失い、或いは出世できないので、強硬論に引ずられて、遂に国を誤まつたのと同じ過ちを犯す危險があります。(「好一対」と呼ぶ者あり)一部の早期單独講和論は、自己保身、出世主義から出ているように感ぜられる。国を再び誤まるものと思いますが、首相の所見は如何でありましようか。  次に政府のデイス・インフレ論、経済安定楽観論につきまして、池田大蔵大臣……稻垣通産大臣はおられませんが、青木安本長官に対しまして御質問申上げたいのであります。  政府のデイス・インフレ、経済安定論の論拠は、通貨にしても、物価にしても、賃金にしても、ただその数字の外形が動かない、固定している、こういう点だけにあります。その数字の内容の質的変化を無視しております。質的変化から見ますれば、現状は明らかにデフレであります。この観点から次の質問を試みますから、所管大臣は具体的に答弁して頂きたいのであります。  第一に、周知のごとくドツジ・ラインは、一ドル三百六十円の為替相場の設定と超均衡予算の二つの面からインフレを收束したのであります。ところが成る程一ドル三百六十円の為替相場は依然として三百六十円に安定しております。併しながらその内容は、設定した当時より質的変化を来たして、著しい円高になつているのであります。この著しい円高が、何と強弁しようとも、デフレの基本的な最大の原因となつているのであります。例えば一ドル三百六十円設定以後即ち昨年四月二十五日以後、アメリカの物価は低落しているのであります。然るに日本貿易に関する卸売物価は上つております。更にポンドその他の通貨は約三割切下げられておる。その上にポンド切下げによつてポンドは公定相場の二ドル八十セントから更に低落して、パリでは二ドル五十セントまでブラツク・マーケツトは低落しております。この結果として、昨年十月米国の小売物価と日本の小売物価との比較して、購売力平価は四百二十円乃至四百三十円であります。ドルの闇相場は約五百円と言われております。このような著しい円高を無理して維持して輸出を増進しようとしますから、企業は賃金を切下げなくてはならない、人員を整理しなければならぬ、労働強化をしなければならない、そうして無理に物価を下げなくてはならない、このために低い公務員の給與を引上げるどころか、民間賃金を低い公務員の給與に鞘寄せしなければならぬということを、大蔵大臣はこの前の国会で言つております。更に超均衡予算を組んで国民生活を必要以上に低下させ、そうして滯貨を生ぜしめなければならなくなつておるのであります。これが対外価値の側面から来るデフレでなくて何でありましよう。このような円高の対外価値を固定して動かせないとすれば、日本経済の彈力性、自主性は全くなくなるのであります。こんの間違つた政策はないと思います。大蔵大臣或いは吉田首相も御覽になつたと思うのでありますが、「研辰の討たれ」という芝居がございます。この研辰は、出世をするためにはどんな手段でも選ばない、お殿樣に頬をなぐられても、どうも有難うございますと言つて、そうして喜んでおる、これが出世の糸口だと思つて喜んでおる、こういう男でありました。(「誰かに似ているぞ」と呼ぶ者あり、笑声)私は失礼であるが、大蔵大蔵の態度は研辰の態度に似ていると思います。(拍手)三百六十円の円高になぐられて国民が苦しんでおるにも拘わらず、へえ、どうも有難うござんす……経済は安定しておる、こういうふうに言つてお褒めに預かつておるようなものである。少くとも円の対外価値の基調はデイス・インフレではなく、明らかにデフレであります。従つてデイス・インフレを主張するならば、政府は先ず対外価値をデイス・インフレの線に調整すべきだと思います。円価調整の意思がおありかどうか。円価切下げによる輸入物資の騰貴は価格調整費の作用を活用すれば調整できます。この円高をこのまま持続いたしますれば、私は恐慌の段階に突入する危險が相当あると思います。池田大蔵大臣、稻垣通産大臣、青木安本長官の御答弁を煩わしたいのであります。  第二に、大蔵大臣安本長官も、経済安定、デイス・インフレの指標として、通貨の量の安定を挙げておられます。これは私は間違いだろうと思います。なぜならば、先ず第一に、安本長官大蔵大臣も預金通貨を含めてお考えかどうか。預金通貨を含めて考えますと、通貨の量はむしろ殖えておるのであります。従つて通貨の量が殖えないで物価が安定するというならば、その通貨数量論拠に従えば物価は上らなければならぬ。にも拘わらず消費者物価はこれは余り上つてない。併し預金通貨を含めての通貨量が殖えているにも拘わらずデフレなんであります。なぜであるか。それは通貨に質的な変化が生じているからであります。即ち政府は財政的デフレを信用インフレで補つて、従つて通貨の量は変りませんけれども、政府が財政支出するこの通貨は單なる購買力、支拂手段に過ぎないけれども、国民から吸い上げて、この金を国債償還、復金債償還で銀行に渡し、銀行がこれを放出する場合には、その通貨は單なる購買力ではなくて、これは利子の附いた利附貸付資本となるのであります。そういう通貨が殖えておるのであります。従いまして利附貸付資本は金利が附きます。回收されます。ところがそういう利附貸付資本として出された通貨は滯貨金融になつておる。滯貨金融になつておるから、これは生産的に使われないから利潤が浮いて来ない。そういう金が出ておる。従つて通貨の量は変りませんけれども、通貨の質の変化が来ておる。これを大蔵大臣は見逃しておられると思うのです。従いまして、通貨の量は同じであるけれども、それがデフレの作用をしておる。又銀行貸出として、信用インフレとして殖えた通貨は、滯貨金融であるから通貨の流通速度が減つております。流通速度を考えれば、同じ通貨量でもやはりデフレになります。この点、私は大蔵大臣は見逃しておるのではないかと思うのです。更に又通貨量は例えば三千五百億で変らないとしても、出ておる通貨の発行量は変らなくても、或いは預金部或いは見返資金或いは復金などで回收されて使われなかつたならば、これが遊金、アイドル・フアンドとなつておるならば、通貨の量は減つて、これはデフレになります。流通通貨はデフレになります。大蔵大臣は発行通貨と流通通貨を混同されておる。流通通貨は明らかにデフレである。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)こういう点は全然見逃しておる。通貨の質的変化を見逃しておる。更に政府は安定指標として何故株式の指数を挙げないか。株式相場は経済の最も総合的な指標であります。その最も総合的な株式相場はどうでありましようか。現在大暴落しておる。今株式恐慌であります。この株式恐慌の影響は非常に深刻であります。今政府がどんなに慌てふためいてこの株式対策に狂奔されておるか、これは毎日の新聞が明らかに示しております。特に生命保險、証券会社の打撃は甚大であります。私はこれは放つて置けばパニツクが来る危險性があると思います。その詳細についてはここで述べることを避けましよう。どういう証券会社がどうなつておるか、どういう生命保險会社がどうなつておるかということについては、私は述べません。併しながらこの株式暴落の原因は、結局はこれは政府のデフレ政策、ドツジ・ラインに基く円高超均衡予算、その皺がこの株式相場に出て来ておる。これが経済の総合的指標なのである。総合的指標が大暴落しておる。これを以てデフレでないとどうして言えるでありましよよか。この点について大蔵大臣は、株式相場の最近の暴落の原因はどこにあるとお考えでありますか。そうして又証券民主化の名の下に大衆に株を沢山買わせて、銀行の不良貸を大衆に転嫁せしめてしまつてから、かくのごとく株を暴落して大衆に損失を與えた責任は私は大きいと思う。(「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)この面からパニックが現われる危險がある。大蔵大臣は如何なる対策をお持ちでありますか。その対策について具体的にお伺いしたいと思うのであります。
  29. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 木村君、時間が経過いたしました。
  30. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君(続) 更にいろいろ御質問申上げたいことがあります。特に予算編成基礎なつた米価につきまして、政府は農産物のパリテイ指数を上げることに計算されております。本年十月には二六八にパリテイ指数が上ることになるにも拘わず、政府は物価が上らないと言つておる。二十五年度予算の編成の基礎になつておるパリテイ指数は上る計算になつておるにも拘わらず、政府は物価が上らないと言われておるのはどういうわけであるか。(拍手)私はその矛盾を大蔵大臣にお伺いしたいのであります。時間がございませんので、沢山質問申上げたいこともございますが、後は委員会その他において御質問することといたしまして、私の質問は以上を以て終りたいと思ます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  31. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 小林君にお答えします。(「違うよ」と呼ぶ者あり)とにかくお答えいたします。政府の財政経済の安定性という論拠は、これはしばしばここにおいて御説明を申しております。従つて外交的ゼスチユアではないのであります。又私は全面講和が望ましいということは申しておるが、單独講和がよろしいとは一度も申しておらないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)従つて外務省の官吏の出世のために單独講和をなす内心だということは、あなたの臆測に過ぎません。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  32. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 木村君にお答え申上げます。  御質問の第一は、三百六十円は円高である、従つて国民が苦しんでおる、こういうお話であります。私は円高とは思つておりません。あなたのおつしやる円高は、昨年の上半期において米国において物価が一割乃至一割五分下落した、或いはポンドを引下げた、或いは日本の物価が或る程度上つた、こういうことを論拠にせられておりますが、我々は三百六十円を決めるときに、これだけのことを皆頭に入れて決めたわけでありす。(「大したものだ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)そうして三百六十円なるが故に滯貨が増大したとおつしやいますが、滯貨の状況は七、八、九月と増大いたしましたが、その後、滯貨は増大いたしません。(「今幾ら」と呼ぶ者あり)貿易は予想以上に殖えております。ポンドが下れば輸出は殖えないのが本当でありますが、下つても輸出は殖えておるのであります。(拍手)そこで滯貨の数字は幾らとおつしやいますが、滯貨というものは仲何なるものを滯貨と言うかということは、そのときの金融情勢によつて違うのであります。その点は御質問ではございませんが、お答えして置きます。(「そこをはつきり」と呼ぶ者あり)  そこでイギリスにおきましてポンドを切下げた以後の状況は審かにいたしませんが、クリツプスは小売物価は一%しか上げないと頑張つておるが、卸売物価は七%上つております。若しこれで、三百六十円レートを円高と言つて、四百円、四百五十円といたしますならば、日本の物価はどうなりましようか。輸出超過の国ならいざ知らず、十億ドルの輸入で六億ドルの輸出の我が国におきましては、国民の苦しみは非常なものになつて来ることをお考え願いたいと思います。(拍手)そこであなたは、これは価格調整費で補正すればいいじやないかと言われるが、価格調整費は誰が出すか。国民が出すことをお考えなつたら、三百六十円は動かすべからざることはお分りになると思います。(拍手)そうして、あなたはポンドの闇が二ドル三十五セントと言つておられますが、そんならフランの闇は幾ら、リラの闇は幾ら、日本の円の闇は四百五十円と言つておりますが、四百五十円というのは少し前のことでございましよう。ポンドに対して闇のないのはベルギーだけであります。それは今の世界情勢から見て当然だと思います。今、円の闇が日本で四百円とか四百二十円とか言つておりますが、これは日本にドルが流通しておるからで、我々はできるだけ早い機会にやめたいと思うのであります。とにかく三百六十円は我々の希望としては、これは三百三十円くらいにしたいと思うのであります。私の理想はそうなんです。そうすることが日本経済の安定に役立つのであります。我々の努力目標をそこにあるのです。徒らに易きを望んで国民を塗炭の苦しみに落すことは、私は採らないのであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)  次に通貨の問題についておつしやつておりますが、通貨の質的変化と通貨の量、どうも論拠が分りませんが、委員会で又お聞きいたしましよう。税を取り上げてこれで以て国債を償還したときに、通貨の質が違う、これは私はちよつと呑み込みかねまするが、とにかくいずれにいたしましても(「とぼけるな」と呼ぶ者あり)通貨は大体横這いであつて、あなたがおつしやつた、この前、去年の三月頃おつしやつたように日本経済は非常に悪いんじやない。あなたは千五六百億の貯蓄ができるかどうかと言つておりますが、どうです、もう三千億超えたじやありませんか。こういうふうに……。(「それは両建だ」と呼ぶ者あり)両建ではありません。これは毎月三百億くらい来るのであります。それは九月の決算期には両建の分が四五百億ありますが、決して両建ではない。これがいわゆる経済が安定して、通貨が本当の力を現わしたのであります。御質問の点は後から又委員会でお答えしたいと思います。  次に株の問題であります。これはお話の通りに相当下落しております。併しインフレからデイス・インフレに変るときにいろいろのものが、どこかに皺が寄るのであります。この株の下落が皺であります。これはそのうちこの皺を直しまして、そうして株式民主化のための被害者の出ないようにいたします。今ここで株式対策を申上げてもよろしうございますが、昨月も縷々この株価下落の原因とその対策について申上げております。いろいろの手を打ちました。で、ある人は株もたれが一番の原因だから、早く株を買占めて、株もたれをなくしたらいいんだというような議論がありますが、これも一つ議論であります。併しその株を買上げて株もたれを緩和するということは、これは最後の手段であります。一番先に採る手段ではありません。従いまして、これは株の金融の問題につきまして、丙から乙に、乙から甲にやりまして、同時に金融機関に外資等を慫慂し、或いは名義書換を無期延期したり、又放出株を取り止めたり、企業再建整備会社の株もたれのあれを緩和しておるのであります。あの手、この手で行つております。併しこれでも何とか行かなければ、これは最後とは申しませんが、もつとうまい案を今考えておりますから、いずれそのうち御説明申上げます。(拍手)  次に物価は横這いである、物価は動かないと言いながら、農産物のパリテイは上つたじやないか。これは物価を決めますときには、御承知通りに今後補給金の残つておるものがあります。鉄、肥料、このために、鉄と肥料とのために米の生産者価格が上るだけでありまして、消費者価格は上げないように、昭和二十五年中は上げないように、一月からもう決まつておるのであります。而して肥料と鉄が上つたならば一般物価水準に影響があるかと申しますると、殆んど影響はないのであります。それよりも増産によつて下ることも考えられますので、米の生産者価格のパリテイが上つたからと言つて物価が上るということは、それは思い過ぎの議論だと言わざるを得ないのであります。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣青木孝義君登壇
  33. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 木村さんの御質問に対してお答え申上げますが、大体大蔵大臣が御質問の要点についてはお答えいたしたと存じますので、私は木村さんの、生産は増加しておるが変態的増加だと、安定の指標にはならぬかのような御質問でございますが、生産の増加が変態であるかどうかは、その実質と原因とを長期的に観察して初めて判断できるものでありますが、このいずれの観点からも、現在の生産は正常な上昇を示しておるというのが我々の見解でございます。
  34. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 松嶋喜作

    ○副議長(松嶋喜作君) 御異議ないと認めます。次会は明後三十日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、議員の請暇  一、議員中西功辞職の件  一、日程第一 常任委員長辞任の件  一、常任委員長選挙  一、日程第二 国務大臣演説に関する件(第五日)