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1950-01-27 第7回国会 参議院 本会議 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十七日(金曜日)    午前十時二十五分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第十号   昭和二十五年一月二十七日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第四日)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件。  昨日に引続き順次質疑を許します。小川久義君。    〔小川久義登壇拍手
  4. 小川久義

    小川久義君 私は新政クラブを代表して、首相並びに他の国務大臣演説に対するお尋ねをいたします。  先ず質問に先立ちまして、国務大臣にお願いしたいと思います。この第六国会の十一月二十一日に私の行いました質問に対して、大蔵大臣農林省所管事項に対して御答弁があり、農林大臣大蔵大臣答弁と同様であるから遠慮さして頂きたいという参事の方から連絡がありまして、同じであればよろしいということを答えて置きましたが、その後、農林大臣答弁大蔵大臣答弁を否定しておるのであります。かかる答弁のないように前以てお願いして置きます。  首相演説は單に盾の一面のみを強調した抽象的な楽観論に終始していたことは、すでにしばしば批判されている通りでありますが、これは国家の当面せる重大問題に対して、真劍にして率直なる検討を回避したものであり、国民経済の困難なる現実ら目を蔽うものと言わねばならない。このような楽観論は、現内閣が多数の農民中小企業者並びに失業不安におののく勤労大衆等生活から遊離した立場と感覚に基いて政治を行なつていることを端的に示すものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)以下私は專ら農業政策を中心として、政府楽観論が皮相の見解であつて幾多の問題が存在する事実を指摘し、政府見解方針を明らかにされんことを要求したいのであります。  農政問題に入る前に、外交上の問題に対して一つだけ明らかにして置きたいのでありますが、それは首相が、戰争放棄の趣旨に徹することは自衛権放棄意味しないと言つて点についてであります。我が国民と諸国民との相互信頼という精神的要素を唯一の安全保障の途として強調する首相が、戰争放棄自衛権放棄意味しないと説くことは、極めて重大な意味を持つておると考えざるを得ないのであります。それは一体如何なる実際的意味を持つているのか。首相国民の前に明らかにする必要がある。自衛権発動を予想することは、それ自身相互信頼の不可能なる立場を予想しており、或いは相互信頼の破綻を予想していると言わなければならないが、これに対して先ず首相見解を承わりたい。若し然りとすれば、相互信頼を以て安全保障の途と断定することは矛盾というの外はないのであります。又武力なき国家自衛権発動如何なる方法によつてなされるか承わりたい。首相は曾て、武力による自衛権はないが、外交その他の手段による自衛権はあると答えているようだが、外交その他の手段如何にして自衛の効果を持ち得るか明らかでない。外交その他の手段による自衛権なるものが、若し他国に武力による援助乃至干渉を要請する場合を含むとすれば、それは、是非はともかくとして、有効な自衛手段であると言い得るが、首相の言う自衛権発動は、かかる手段をも含むものであるかどうか承わりたい。若し武力なき国家が、かくのごとき方法以外に実効ある自衛手段を持ち得るとすれば、それは如何なる具体的方法なのであるから示されたい。又相互信頼を強調する立場を貫く以上、それは如何なる名目にもせよ、講和後に外国軍隊の駐屯を否認するが当然の帰結と思うのであるが、念のため首相見解を質したいのであります。以上はいずれも仮定の問題ではないのであります。首相は、仮定の問題には答えられないと言つて答弁を回避されることのないよう、予め念を押して置く次第であります。  農業政策については、前国会において三好議員より、今後予想される農政の根本的問題について質したのに対し、農林大臣の長い答弁にも拘わらず、本質的な要点が回避されたのであるが、それは今回の首相演説においても繰返されているに過ぎない。首相は、できるだけ国内食糧増産して自給度向上を図るべき根本方針は飽くまで堅持すると言つているが、これだけでは、今日の実情から考えて、何ら現実に即した具体的な方針の発表とは言えないのであります。今日の農業政策上、食糧自給度向上を問題にする場合は、單に戰争中考えられたような食糧増産による自給度向上が重要問題なのではありません。今日の段階では、海外食糧輸入によつて国内食糧生産が相対的に減少せんとする傾向に向うのを、政策的に如何にして引上げるかが問題の焦点なのであります。もつと具体的に言えば、将来、内外食糧価格の変化によつて外国食糧輸入が増大する場合、政府如何なる方法を講じて自由競争状態の下で起る食糧自給度の低下を食い止めんとするのであるか。これが今日の問題であります。かかる状態は、單なる仮定の問題ではなく、極めて近い将来に発生する公算が大きいと見なければならない。従つて政府食糧自給度向上を問題とする以上は、当然にこの問題に対して明確な解答を用意している筈である。私は先ずその点に対してお尋ねいたします。  政府国内工業生産の増進によつて食糧輸入力を確保すればよいと考えておるようだが、農民はこの点について深刻な不安を感じておるのである。我々の見解によると、政府日本農業生産性を高めるため、予算上、金融上、農業政策上格段の努力を拂うことが急務であると考えるのであるが、政府は、一体これに対して如何なる用意を持つておるのか明らかにされたい。又直接的には農産価格政策が問題になるが、首相の言う農産物最低価格の維持は如何なる方法によつて行うのか。お示しを願いたい。  首相農政審議会を設置して農政を審議する方法を明らかにしたのであるが、農政審議会如何なる機構と運営が予定されておるかどうか示されたい。現内閣は、一方において行政機構簡素化を主張しながら、他方ではむやみに審議会等を濫設しておるのであるが、その数は昨年九月一日現在で各省庁を通じて三百五十二の多数に上つておる。而もその中には設置法によらないものが多数含まれておるのであるが、これは政府の無能をカバーし、カモフラージユしながら、一方では與党勢力の増大を図るものであり、反国会的な態度であると言わねばならぬ。このような現状から見ても、我々は首相の言う農政審議会とは如何なるものであるか明確にされたい。  次に課税問題であるが、政府臨時国会以来、国民租税負担軽減を誇示しつつあるが、少くとも農民課税に関して、私は幾多の疑問を持たざるを得ないのであります。今日までの課税が、如何農民経済実情を無視し、農民生活実態を知らない冷酷な課税であるかは、農家経済の内部に入つて考えれば極めて明らかな事実であるが、これに対して改めるかどうかに対しては、政府の言うがごとき楽観論に満足することができない。私の調査した富山県内篤農家の例では、昭和二十三年度の総收入が二十八万九千四百四十八円に対し、所得税が六万五千円であつたのが、昭和二十四年度は、水稻不作の收穫減により総收入が二十四万九千五百円に低下しておるにも拘わらず、所得税は八万五千円と約三割増を内示されておるのであります。又一反歩当り所得見積りが、二十三年度の七千円に対し、二十四年度は一万八百円と三割以上の増加を見込んでおるのである。このような出たらめの基礎の上に立つて、單に税率を動かしただけで、果して実質的減税になるかならないかは明白な事実である。大蔵大臣農民租税負担軽減を常に口にしながら、收入が減少したにも拘わらず税金が三割以上も多くなつておる事態に対して、これでも減税だと言うのか。(拍手)具体的に納得の行くような説明を願いたい。又かような事実に対しては如何なる措置をとるつもりか併せて承わりたい。  農業金融についても、農林中央金庫の増資を行い、又見返資金引受けによつて優先株式発行を考慮しておるとのことであるが、農業金融は一般的には特に低利且つ長期でなければならぬ特殊性があるので、單に増資を認めるだけで問題が解決されるものではない。大蔵大臣農業金融特殊性に基く特別の考慮を拂う用意があるかないか承わりたい。尚、現在農業手形制度があるが、本年はその内容の一部を変更して、対象が発生することに幾分ずつか貸出すとのことであるが、これは徒らに手数をかけることとなるが、従来の通りにする意思があるかないか承わりたい。曾て戰争中から終戰後にかけて肥料配給の不手際が問題になつておるのであるが、最近特に悪くなつておる。例えば水田九割に畑一割の富山県に対して、水田に極めて不適当な硝安昭和二十四年度の割当が四百トンであつたにも拘わらず、二十五年度は驚くなかれ二千四百五十一トンという配給がある。又最近聞くところによると、割当はしたが、必要でなければ買わなくてもいいと係官などが言つているそうであるが、特に富山県の立地的條件から、購入申込数量は二百五トンである。かかる事例全国に亙つて各所にあると思うが、農林大臣は立地的に不適当な、而も農民の好まない高価な硝安を何故割当配給するのか。而も押売りするのか。その点を承わりたい。(笑声)  農村工業振興については、すでにしばしば農林大臣が強調せられて来たことは周知の事実でありますが、今日は抽象的に農村工業を唱える段階から、具体的に農村工業著手上起りつつある困難に対し政策的な助成を講ずべき段階に来ている。政府農村工業振興のため、金融上、技術指導上、その他積極的な如何なる用意があるか承わりたい。  最後に食糧事務所定員について政府考えを質したいのであります。本問題は臨時国会以来、本会議及び委員会においてしばしば真劍な論議が行われたことは、関係大臣のよく知つている通りであります。最近の実情を詳細に調査して見ると、至るところに不合理が現われている。例えば町村農業協同組合や役場がその補助をなし、甚だしいのは專任職員をこの団体が雇つて補佐し、そのため惠まれざる農民負担が加重されている。又食糧検査員自分の俸給を割いて補助員を雇い、過重な事務を処理している者もあれば、過労のため倒れた者が九%に達している食糧事務所もある。過労原因で死亡した非常勤職員が法規上死亡賜金が出ないため、僅かに職員組合のお悔みだけで済まされている実例もある。かかる事例は稀に起つた特殊の現象ではなくて、一般化しようとする傾向が認められるのであつて、断じて放置すべきでないと思うのであります。ここに私は食糧事務所実態に即した定員増加非常勤職員減少等に関する農林大臣並びに本多国務大臣の責任ある答弁を求める次第であります。  以上を以て私の質疑を終りますが、不満足な答弁があれば再質問いたしたいと思います。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 小川君にお答えをいたします。  私の施政の演説において、相互信頼は我が国の安全保障であると申したことに対して、これは自衛権の存在と矛盾をする、こういう御議論でありますが、私はそうは考えません。例を戰前の状態について考えて見ますると、日本が強大なる海陸軍を持つているにも拘わらず、次々に今日に至つたということは、日本に対して、日本外交に対して、各国が、或いは世界信頼をしなかつた日本の国は領土拡張若しくは世界の平和を脅かす国である、この世界の不信の念が遂に戰争となり、今日の敗戰至つたのであります。即ち列国の、或いは世界日本に対する信頼、或いは日本は平和を以てその国是としておるという日本国家及び国民に対する信頼、これによつて列国日本外交に、日本政策信頼を置いておるということが、日本安全保障であると私は申すのであつて、決して相互信頼自衛権と相矛盾するものではない、自衛権安全保障矛盾はしておらないということを申すゆえんであります。又自衞権内容を示せと、こういうお話でありますが、自衞権は、外国の侵入とか、或いは日本の自衞権を行使しなければならなかつた理由自体においての自衞権でありまして、如何なる状態において日本が自衞権発動するか、発動を余儀なくせられた形によつて衞権発動するのでありまして、ここで具体的に申せと言われても、これは結局仮定の問題でありますから、お答えはいたしません。  又食糧自給についてのお話がありましたが、これは予算内容を御検討になれば、政府方針なり私の申しておることが自然お分りになると思います。又審議会もこれは漸次今整理いたしております。従つて現在幾つになつておるか私も覚えておりませんが、整理中であります。半分以上に減つた筈であります。又この審議会の構成若しくはこれの運用等につきましては、所管大臣からお答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎登壇拍手
  6. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。  食糧自給度向上でありますが、自給と申しましても、日本の国でとつたものでなければ日本人は食わないというような、そういう島国根性でなしに、日本国民の力によつて必要な食糧を確保するということを自給度向上考えておるのであります。この手段といたしましては、国内食糧の飽くなき増産ということを考えることは当然でありまするが、増加する人口に対しましては局限されたる耕土においてこれを養い得ないことは当然であります。従つて日本国民輸出力によつて、そうして以て食糧を確保する、こういうようなことを将来考えて行かなければ、これは食糧問題と人口問題は解決せないと考えておるのであります。従つて然らば日本食糧増産に対する施策は如何ということにつきましては、曾て三好議員に詳しくお答えいたしました。これは農業政策といたしましては、そう短期間に変更するものでございませんから、あのお答えいたしましたことによつて、現内閣がどういう農業政策をとつておるということを御了承を願いたいと存ずるのであります。  次にこの審議会の問題でありまするが、これは総理から今お答えがありましたが、農業と申しましても各般の問題に触れておるのでありまするから、各般学識経験者意見を徴しまして、そうして国策決定の参考にいたしたい、かような考え方から、その筋々の権威者意見を徴するという程度にこの審議会考えておることを御承知を願いたいと存じます。  尚、硝安配給につきましては、曾て御質問がありましたが、政府といたしましては、水田硝安肥効率のことはよく承知いたしております。これは水田反別報告等調査も違いがあるのかどうか存じませんが、政府といたしましては断じて水田硝安配給いたしておりません。今お話のように二千四百五十トンというような配給があるということでございますが、これは実態をよく取調べますが、決して私は水田硝安配給するというような非合理的なことは断じて政府としてはやつておりません。  食糧事務所に対する職員の問題でありまするが、これは食糧事務所における供出に対する検査事務執行につきましては、時期的な問題であるのであります。これを恒久職員とすべきか或いは臨時職員とすべきかという問題でありまするが、これは時期的な問題でありますので、臨時的職員として今日これをいたしておるのであります。今日まで富山県といたしましても、この米の供出のごときは全国に先んじて供出をして頂きまして、決して検査執行についての差支があるとは考えておらないのであります。できるだけこの食糧供出等につきましての検査の澁滯しないように組織を持つて行きたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手、「思い上つた答弁をするな」と呼ぶ者あり〕
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 小川君の御質問に対しましてお答え申上げます。  先ず農家に対しまする所得税その他の税の問題でありまするが、御承知通りシヤウプ勧告案がありまして、又私は今の負担現状から考えまして、その勧告案以上の減税考えておるのであります。御承知通り基礎控除、或いは扶養家族控除、或いは税率等につきまして相当軽減をいたしておる。殊に農家につきましては、従来から問題になつておりまする專従者の方では、いわゆる成年であつて農業所得に参加しておる人につきましても控除を認めることにいたしました、従いまして所得税は大体前年に対しまして半分以下になるのであります。計数を申上げますと、大体農業所得七万円の方で扶養家族の四人ある方は、国税はもう納めなくてもよろしいのでございます。十万円の方で従来は一万五千六百円の所得税があつたのが、これが四千六百円になります。で、或いは地方税が非常に殖えるから全体としては減らないだろうと、こうおつしやいますが、いずれ地方関係税法もそのうち御審議願うことになると存じますが、一応シヤウプ勧告案について計算いたしますと、十万円の農家の方は従来一千七百七十円の負担であつたのが、三倍の五千三百円程度に相成ります。こうしますと、十万円の所得というものは従来大体平均農家でありますが、国税地方税を通じまして一万七千四百円は負担しておつた者が、今度は地方税が三倍になりましても九千九百九十七円で済むのであります。殊に一人の專従者があつた場合、いわゆる成年男女農業所得に参加をしている者は一万二千円の控除をいたしますから、これが七千二百円になる。こういう軽減を私は考えておるのであります。專従者が二人あつた場合はこれは又減つて来るのであります。而してこれは税法上の問題だ、税務署が非常な無理をして所得額に無茶な査定をするという問題が起ると思いますから、御審議願います税法につきましては、青色申告制度を布きまして、納税者自分所得を克明に記載して下さいまして税務署に申告なさるならば、税務署は今までのような更正決定はできない、調査をしなければ更正決定はできないということにいたしております。而も納税者におきまして異議があります場合におきましては、異議申立処理機関を新設いたします。そうして十分納税員意見を聞いて、税務署のやり方に不備があればこれを直さす、こういう制度を置くことにいたしておるのであります。税率の引下げ或いは異議申立機関青色申告制度を設けまして、とかく課税に無理のないように、又不足のないように、万全の措置を講ずる考えであるのであります。御了承願いたいと思います。  次に農業金融の問題でございます。農業手形の問題も出ましたが、昨年農業手形制度を施行いたしまして、春肥におきましては大体百億円近い融資をいたしております。又農機具の改善につきましても四十数億円の融資をいたしておるのであります。この農業手形は非常に結果がいいのでございまして、我々は今後におきましてもこの適用範囲を拡充いたします。又手続を簡素化して、農業者或いは漁業手形による漁業者金融につきまして万全を期したいと考えておるのであります。而して資金の問題につきましては、今まで農業関係におきましては農林中金を通じまして日本銀行から別枠の融資をいたしておりますが、これでは十分でありません。農業協同組合等組合関係資金もこれ又十分でありませんので、先般財政演説で申上げましたように、農林中金は今の四億円の資金を八億円に増資すると同時に、見返資金から相当の額を出しまして、そうして債券発行する。債券発行というのは長期債券でございます。長期債券発行して、そうしてこれが引受は預金部或いは市中銀行に引受けしめて、そうして長期農林水産金融を図るべく考慮いたしておるのであります。  以上は小川委員の御質問に対してのお答えでございますが、この機会に昨日私が欠席いたしましたので、鈴木議員並びに赤木議員の御質問に対しましてお答え申上げたいと思います。  鈴木議員の御質問の第一点は、政府物価は安定しておると言いながら、又別に大蔵大臣物価を将来下落の傾向に持つて行きたいということは矛盾ではないか、こういうお話でございました。併しこれはです、物価補給金撤廃等によりまして一部物資の値上りもありましよう。併し一般的には私は物価水準としては横這いのことを考えておるのでありますが、食糧その他の消費物資の需給の改善によりまして、実効価格は下つて行くことを期待しておるという意味であるのでありまして、決して矛盾ではないと考えております。  次に債券償還その他によりまして、財政金融に鞘寄せする、従つて金融機関内容が悪くなるのではないかという御質問でございますが、これは和田議員のときにもお答えしたと思いますが、とにかくアメリカから相当援助を貰つております。又相当減税もしたことから考えますと、一般会計におきまして五百億円程度債務償還は適当である。而も地方において三百億円余りの地方債発行することを考慮すれば、中央地方を通じては税による債務償還は殆んどないということを考えてもいい状態でありますので、この程度債務償還日本経済復興再建には必要であると考えておるのであります。従いまして、千三百億円の国債を償還すると申しましても、この償還金は主として市中銀行に先ず持つて行く。而して又預金部に持つて行く。その金を産業資金に持つて行こうとしておるのであります。或る人は、金融機関預金に対して貸出の率が多いと、非常にそれは内容が不健全だ、こういうことを言う人が多いのであります。併し考えて見ましても、銀行預金を持つて、それを貸出にするか、有価証券の投資にするか、これは一つの問題でありましよう。併し今日の日本におきましては、国債を償還したり或いは復金債を償還したりしまして、新たに政府から債券発行することがないのでありますから、銀行が金を遊ばして置くわけには行きませんから、優良な方面に貸出すのは当然であります。預金に対しまして貸出が八二%になつたからこれは不健全であるということは、これは考え方が間違つておる、今の日本経済実情を知らないのである。(笑声)で、昔のことを申すと恐縮でございますが、昭和元年から五、六年までの安定したときにおきましては、銀行預金に対する貸出はやはり七、八〇%を維持しているのであります。併し私はこの状態を或る程度直すべく、先程申上げましたように、農林中金から長期債券発行したり、或いは興業銀行勧業銀行をして長期資金を調達せしめるために、数百億の債券発行しようとしていることは、財政演説で申上げた通りであります。この興銀、勧銀農林中金、商工中金から数百億円或いは行く行くは千億も発行するようになりましたならば、これは預金部或いは市中銀行が持つことになると思います。然らば預金に対する貸出率も低下するのであります。一時の現象として、何も心配は要らないと私は考えておる次第であるのであります。  次に証券市場対策の問題をお聞きになりましたと聞いておるのであります。この証券市場につきましては、御承知通りに非常な暴落を来たしております。この暴落をいたしました原因考えて見ますると、昨年の上半期におきまして大体四百二三十億円の株式発行があつたのであります。四百二三十億円の株式発行と申しますると、日本におきまして株式会社制度を或いは会社制度を置きましてからこの敗戰までの拂込資本金、七十何年間に亘る拂込資本金が四百億円、これを一気に六ケ月の間に四百何十億円もやつたのであります。なぜそうしたかと申しますと、復金の貸金がなくなりましたために、長期資金を一にも二にも増資によつてやろうと、こういう考えでやつたのであります。従つて株もたれがいたしました。又持株整理委員会が持つております株を四月から九月までに七、八十億も売出したのであります。株もたれがしたのが一つ原因であります。又もう一つは、企業再建整備によりまして第二会社の立て直しをしようとすれば、計画を立てまして、当然数倍或いは十倍ぐらいの増資を余儀なくされる。こういうので、急にどんどん増資をいたしたのも原因でありましよう。併し又ここにシヤウプ勧告案によりまして、名義書換を一ケ月以内にしろと、こういう強い勧告案が出ております。今まで株主は名義書換をせずに、ずつと売買を、白紙委任状附で売買をしていたのであります。これを売買ごとに一ケ月して登録するということになると、取引を非常に阻害することになります。こういうことも株価低落の主なる原因であつたのであります。いろいろな問題もありますが、大体そういうところが株価低落の主な原因であつたのであります。従いましてこれが対策といたしましては……もう一つ原因があります。銀行株式を担保に融通しないとか、或いは銀行が株に対して関心を持つていない。こういうのも株価下落の原因であるのであります。昔は株式担保の金融は大体貸付の二割乃至三割であつたのであります。併し今は一%にも足りません。二、三〇%あつたのが一%にも足らん。私の調査によりますと、昨年の十二月頃は全銀行貸出六千億のうちに株式担保の金融が六十億か七十億、昔の割合で行きますと、千二三百億の株式担保の金融がなければならぬ。又銀行株式を所有しておつたのが殆んど所有していない。こういう状態株式の低落の原因であつたのであります。そこで私は対策といたしましては、先ず第一に、株もたれがしているから、この株もたれを止めなければいかん。その方法としましては、閉鎖機関或いは持株整理委員会の持つている売出すべき株の売出しを止めさせました。企業再建整備を六ケ月以内にしろというのを、これを延ばさせまして、そして又一般会社増資はできるだけ社債によるようにいたしまして、去年の十二月頃から社債の発行をいたしまして、増資に代えております。これが対策の一つ。第二には、今まで株式担保の金融は丙種に属しておりましたのを、八月に乙種に移し、十二月に甲にしまして、円滑を図ると同時に、銀行家をしてできるだけ株式金融並びに株式所有に進むように指導をしておるのであります。又名義の書換の問題もシヤウプ勧告があつたのでありますが、私は無期延期いたしました。無期延期いたしまして、株式の取引の円滑を期する等いろいろな手を盡しましたが、まだ十分でありません。従いまして先般新聞にもありましたように、東京証券会社、いわゆる東京証券会社、株を貸したり、或いは株に対する金融をやるのでありますが、一千万円の資本で、これではとても問題にならないということで二億五千万円に増資をいたしまして、日本金融会社と社名を改めしめ、又大阪におきましても大阪証券金融会社を一億円で設立いたしまして、名古屋におきましても設立いたしまして、取敢えずこれらの証券金融会社の資産を、殖やすと同時に金融機関或いは金融界をしてできるだけ資金の融通の途を講ずるようにさしておるのであります。これでいけなければ、どうしても株もたれを緩和するためにできるだけ大きな資本をここに投げ出して、そうして浮動株の引上げをなす方法を講じなければならぬかと考えて、只今考慮いたしておるのであります。大体そこで安定しております。これ以上は下がらぬと思いますが、そこで安定しておりますから、そこで安定したのを上に持つて行こうと、今百方研究を続けております。いずれそのうちに適当な方策が講ぜられると思います。(拍手)  次に赤木君の御質問につきましてお答え申上げます。  政府は砂防事業に余り熱意がないのではないか、こういうお話でありますが、砂防事業は災害対策といたしまして最も必要であるのであります。治山治水は吉田内閣の今年度予算の最も重要なる施策でありますので、砂防費につきましては、前年度において六億円であつたのを十八億円と三倍に殖やしております。又災害調査にしましても、できるだけ実地に調査いたしまして、適正な方法を講じておるのであります。尚、河川の維持管理については地方に委してやつておる、こういうお話でございました。これはいたし方のないことでありまして、河川の維持管理は、やはり地方費でやつて頂くのが本当だと思います。これがために平衡交付金も出しておるのであります。併し全部の河川を地方でやつて頂くというのも、これはあれでございますが、利根川とか淀川或いは北上川とか、数府県に亙る大きい河川につきましては、国が直接維持管理をやつておるのであります。その経費も三億数千万円を計上しております。大きい河川は国で維持管理をやつておりますが、府県單位の小さい河川につきましては、今のところ地方で維持管理して頂くより仕方がないことであります。これが経費につきましては平衡交付金その他で考えることにいたしておるのであります。(拍手)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  8. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 食糧事務所定員につきましては、農林大臣からお話のありました通り、時期的に繁忙を極むる性質の仕事でもありますので、相当非常勤職員を用いるということは止むを得ないことと存じますが、来年度の定員につきましては目下鋭意研究中でありまして、速かに結論を出してお示しいたしたいと考えております。(拍手)    〔小川久義君「農林大臣の御答弁に対しましてお尋ね申上げます」と述ぶ〕
  9. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) ちよつとお待ち下さい。小川君の質疑時間はまだ三分の余裕がありますので、その範囲内において再質疑をして下さい。
  10. 小川久義

    小川久義君 農林大臣は肥料の問題をお掴みになつていないのではなかろうか。御存じにならなければお教えいたしますが、これは次官通牒を以て全国に通達されております。硝安配給量は、全国的には全窒素肥料に対して一四%である。名古屋地区は一三%である。富山は名古屋地区に属しておりますが、先程申上げました通り富山県は水田が九割で畑地が一割、隣りの石川県は御承知通り水田が六割で畑地が四割である。愛知県は半々くらいである。然るにその比率からしますと、名古屋は一三%である。隣りの石川県は一一%である。水は九割を持つている富山県は一二%である。これでどうして畑地以外に硝安配給をしていないと言えるか。四分六分である石川県より多く配給して、九割の富山県の水田配給していないでおるということがどうして言えるか。その点明瞭にお答え願います。  それから食糧輸入する方がいいというようなお考えですが、私は反対だ。どこまでも国内自給できる態勢を整えるには、増産に主力を置くべきである。(「そこだ、そこだ」と呼ぶ者あり)然るに足らぬものは買えばいいじやないか、而も農民が日夜、夜の目も寢ずに作つたような農産物を買わないでおいて、高梁や「とうもろこし」の粉のような消費者の好まないようなものを何故多量に入れなければならぬか。この点に対してお答えを願いたい。それから農村工業に対しての御答弁が抜けております。お答え願います。  それから大蔵大臣に重ねてお伺いしますが、大臣の御答弁は将来に対する御針なり考え方であつたと思う。私のお尋ねしたいのは、昭和二十三年と二十四年に比較してこういう無理な課税が行われておる。これに対してどうお考えか。それが事実とすればどういう措置をおとりになるかということをお伺いしたいのである。明瞭に両大臣共御答弁をお願いしたいと思います。    〔国務大臣森幸太郎登壇拍手
  11. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。徒らに外国食糧に依存するのではありません。国内食糧の飽くなき増産を図つて、尚且つ足らぬ分に対して外国食糧輸入に待つのであります。而もこれは我が国の生産力によつて外国食糧輸入するのであります。これが食糧自給度を高めるということを申上げたのであります。(拍手、「了解々々」と呼ぶ者あり)  硝安に対しましては、その府県の畑地に対する反別に比例しておることは勿論であります。決して水田に対して硝安配給いたしません。これはその比率が県の調査と或いは農林省の調査と食い違つているかも知れませんが、農林省の調査いたしました畑地に対して硝安を使うように配給いたしております。決して水田には硝安配給いたしません。  農村工業につきましてお答えが漏れておつたので恐縮でございますが、農村工業はその地方における農業の余剩労力を都合よく利用するということを目的として考えるのであります。従つて全国画一的に農村工業という種類を挙げることはでき得ません。何百種という農村工業の種類の中から、その地方々々に適切なる工業を選んで、そうしてこの余剩労力をうまく利用するということを主眼として指導して行くつもりであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お答え申上げます。二十三年度、二十四年度の所得決定につきまして不都合がございましたならば、税法の規定する通りにやつて行きます。従つて具体的に申上げますと、若し税務署の査定につきまして不服があれが、適当な国税局なり、或いは国税庁にお申出でを願います。(拍手)     —————————————
  13. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 平岡市三君。    〔平岡市三君登壇拍手
  14. 平岡市三

    ○平岡市三君 先日大蔵大臣、安本長官及び総理大臣の我が料経済の安定復興に関して力強い言明を拜聽いたしまして、大いに意を強ういたした次第であります。ここに各大臣の演説中多少危惧せられる点を指摘いたしまして、断片的ではありますが、敢えて質問を試みる次第であります。  さしも猛威を逞しういたしましたインフレも收束の遂につき、復興への途を一歩踏み出したのであります。併しインフレの危機は未だ去つていないと見るのが至当であろうと思うのであります。それ故にこそ政府は人事院の勧告に対しても、公務員の給與ベースの改訂を行わないと決意されて、鋭意実質賃金の充実に努力されておるものと推察されるのであります。併しながらインフレを恐れるの余りデイス・インフレの線を越えて、世上しばしば言われるようにデフレ政策に落ち込んでおるのではないかと思われるのであります。(「そうで」と呼ぶ者あり)例えば日銀の統計によりますと、昨年十月の預金通貨と流通通貨とを合せて、その量は昭和十年より十二年の百八十一倍であります。然るに昨年十月の物価昭和九年より十一年の二百十三倍であります。基準年度のとり方に一年のズレはありますが、物価に比して通貨量が少いのであります。このことは金詰りの一つの指標になろうと思います。又一昨年の十月の鉱工業生産指数は基準年度の昭和七年より十一年の六十七であり、昨年十月のそれは八十でありまして、生産数量は昨年は一昨年の約二〇%増になつておるのであります。然るに通貨の方は、一昨年十月は昨年十月の約一二%増に過ぎないのであります。而も農業生産は戰前の九〇%程度に回復いたしておるのでありますから、デフレ的兆候と見ざるを得ないのであります。要するに事業の活動量に対応いたしまして、これにマツチするだけの適正な通貨量が維持せられていないために、デフレ的傾向になり、金詰りになるのであります。この点につきまして大蔵大臣の御所見をお尋ねいたす次第であります。  又本年度予算において、一般、特別両会計から千三百億余円を債務償還に充てるとのことでありますが、これは金融機関を通して産業に還流するといたしましても、相当に金詰りが起るのではないかと懸念されるのであります。すでに周知のごとく国民負担において積立てられる通貨でありまするが、これが国庫なり金融機関なりを通る間の時間的ズレがあり、又そこに溜り水として停滯するのが必然であるからであります。見返資金の放出にいたしましても、昨年十二月十二日現在では四百五十四億円の余裕金があるように統計で拜見したのであります。而も民間投資は電力と海運関係に僅か五億円程度であつたと記憶いたしております。そこで、この際、現在の見返資金勘定の本年度予定受入未済額と、現在の余裕金額と、これまでの業種別の投資額をお示し願いたいのであります。ついでに見返資金の速かなる放出を併せてお願いいたす次第であります。そうでないとデイス・インフレがデフレになり、金詰りによつて正常な流通経済を阻害する危險が顯著であるからであります。  次に二十五年度の産業設備資金の計画についてお尋ねいたします。昨年十一月二十日の産業決済新聞には設備資金計画として一千三百三十余億円が掲載されておりましたが、今日の数字は如何程になつておるのでありましようか。そのうち財政資金に依存する分と自己資本の調達として予定せられておる分とを分けてお示しを願いたいのであります。今日の証券市場の状況から見て、又有効需要の状態から見まして、株式募集による自己資本の調達は極めて困難であると推測されますから、財政資金への依存度が勢い大になると考えるのであります。  尚ついでながら大蔵大臣は前国会におきまして、銀行制度について一県一行主義を固執することなく、適当と認めるものはこれが免許をなすと述べられましたが、今日の情勢下では新銀行を免許するがごときことは殆んど不可能であろうと思うのであります。むしろ支店の開設を容易にいたしまして、銀行の独善的態度の是正を図るべきであると考えますが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  次に配給食糧についてお尋ねいたしますが、去る第六国会において二十五年度は三百六十万トンの食糧輸入せられる由を承りました。その後において更にタイ国との貿易協定により相当量が輸入せられるので、相当増配せられるものと考えておつたのであります。然るに過般の新聞紙上では、政府の発表した二合八勺の増配も必ずしも実現しそうもないような記事を拜見いたしたのであります。この点に関しまして、安本長官及び農林大臣にお尋ねいたす次第であります。  次に私は、事業者団体法の改正により、事業者団体のより強力な組織的な活動が許容されることを希望いたすものであります。周知のように事業者団体は、生産も、販売も、株式社債等の保有も禁止され、又融資、集金、輸送、保管、紛争仲裁等々も禁ぜられて、極めて微弱な存在となつておるのであります。今後、法律の改正により事業者団体の活動をもう少し自由にするお考えがありましようかどうか。或いはこうした構想についてどういうお考えをお持ちになつておられますか。又昨年この法律の一部改正が企図されたように伝えられておりましたが、その後如何になりましたか。青木長官にお尋ねする次第であります。  次は行政機構の合理化による国家経費の節約の問題であります。例えば公正取引委員会、証券取引委員会、証券処理調整協議会、外国為替管理委員会、持株会社整理委員会、閉鎖機関整理委員会、その他いろいろの機関がありますが、一般の方々には、どういう仕事をする役所で、普通の官庁とどう違うのかよく分らないような状態であります。どうして普通の官庁にこれらの仕事を担当させては不都合なのか了解し難い点もあり、こうした一連の経済関係の政府機関は、経済安定本部に統合するなり、大蔵省に吸收するなりしたらどうであろうかと考えるのであります。安定本部の機構縮小が伝えられる折柄でもあり、又大臣級の役人を沢山抱えておつたのでは貧弱な国家財政の上からも甚だ不経済なことでありますので、もう少しすつきりした少数の機関で行政を運用して頂きたいのであります。(拍手)この点に関しまして青木長官及び本多国務大臣の御見解を承わる次第であります。  次に電力問題について種々お伺いいたしたいのでありますが、詳細は委員会に讓ることといたしまして、ここには深夜余剰電力と農業用電力の問題について通産大臣及び農林大臣にお伺いいたします。  深夜余剰電力を有効に利用することは、生産増強の立場から極めて重要なことは申すまでもありません。然るに某地方におきましては、仕事の性質上深夜余剰電力を使用して来たのでありますが、今回の電力料金の改訂以来その送電が中止せられたのであります。これに対し日発及び配電会社は、深夜余剰電力の料金はキロ当り二十四銭の極めて低率のため、この電力の供給をなすときは、高率料金の電力使用を手控えいたしまして、従つてその料金收入が総体的に減少するために、水を脇に流して発電を止め、深夜余剰電力がないと称して、これが供給をしないのであると業者は申しておるのであります。若しかかる事実がありとするならば事極めて重大であります。電力料金改訂により、某工場を例にとつて見ますと、支拂電力料金において七倍強の高騰となり、原価比率において四・五倍強となるのであります。深夜余剰電力の使用ができますれば、生産が増大すると同時に原価比率も低くなるのでありますが、これが停止されますと業者は非常な苦境に立たざるを得ないのであります。通産大臣は、日発が出力ある水を無駄に流して深夜余剰電力の発電と送電を故意に停止しておるような事実をお聞きになつておりますかどうか。若しそうした事実がありとするならば、如何なる対策をおとりになるつもりでありますか。御意見を伺いたいのであります。尚、電力料金の改訂により、農業用電力殊に灌漑排水用の電力の確保のため、農業経済相当圧迫を受けるものと推測されるのであります。これが対策について農林大臣の御所見をお伺いいたす次第であります。  次に我が国経済の安定復興のためには耐乏と努力は勿論必要でありますが、国全体の経済のバランスがとられなければ、その達成は困難であるのであります。インフレ政策は多少生産を刺激するといたしましても、その麻薬的作用は国民経済を弱体化させ、富の偏在、吹き溜りを作らせることとなります。これでデフレ政策によつて再分配し、地ならしをいたそうといたしますれば、恐慌を招きます。このように押しつ押されついたしたのでは、満員電車の乘客と同じように、この狹い国土の中で国民は疲れ果ててしまうのであります。そこで米国の援助国民の耐乏を槓杆とするデイス・インフレ政策が極めて重要な意義を持つて来るのでありまして、政府のこの基本政策を称讃するにやぶかさでないのであります。(「同感」と呼ぶ者あり)併しながら、ただそれだけでは分配の問題でありまして、絶対量が不足すれば、この基本線も崩壞せざるを得ないのであります。と申しますのは、この狹小な国土の超満員の国民を奪うことは容易ならざる事柄であるからであります。最近の証券市場の軟調、従つて長期産業資金調達の困難も、窮極には我が国民経済の貧困を物語る指標に過ぎないと思うのであります。そこで、外資導入と貿易振興に政府の施策が集中せざるを得ないことは当然のコースであります。一連の貿易関係法令の整備の共に、民間自由貿易が一段と飛躍せんとする機運にありますことは、誠に御同慶の至りであります。ところで国際收支の均衡のみを気にするならば、次第に財布の紐を引締めて、輸入の減少、従つて輸出の減少を招いて、次第に貿易規模は低下縮小する傾向をとるでありましよう。勿論国際收支のバランスはどうでもよいというのではありません。今日巨大な輸入超過となつているが、この輸入超過はできるだけ運賃收入等の貿易外收入によつて賄うのが望ましいことであります。そこで商船隊の再建の問題になつて来るのでありますが、本年度の外洋船の建造計画及び現存保有量について運輸大臣からお聞かせを願いたいのであります。又将来の我が国の商船保有量がどのくらいまで許されるお見通しでありますか。新聞紙上にも二百万トンというような数字が外電として伝えられたようでありますが、又これは講和会議の問題ともなるでありましようが、運輸大臣としての御希望だけでもお漏らしを願いたいのであります。  次に外資導入に対して、政府はその受入体制について種々検討準備せられており、今後大いに促進されるものと確信せられているようでありますが、過般ドレーパー氏が来朝をせられ、青木長官或いは稻垣大臣と会談され、その一部が断片的に新聞紙上に散見せられましたが、この際総括的に、導入可能の業種、時期、金額等についてお見通しを御発表願いたいのであります。  最後に文部大臣及び大蔵大臣にお伺いいたします。私立学校は大学において六〇%、高等学校において二五%を占め、義務教育において千二百余校、四十七万の生徒を持ち、又幼稚園において八五%を占めておるのであります。文化国家建設の基盤となる学校教育において、私立学校の占める重要性は極めて大なるものがあることは申すまでもありません。然るに現状の下においては、私立学校の経営は極めて苦境に立たされておるのであります。第六国会におきまして私立学校法が制定されまして、その第五十九條には、私立学校の助成に関する規定が存在いたしておるのであります。然るに二十五年度の予算案には、僅かに戰災復興貸付金といたしまして二億七千万円が計上されておるのみであります。私学団体としては極めて不満の意を表しておるのであります。今後、学校施設の充実を図るには相当多額の資金を必要とするのであります。この点に関しまして、第三国会において参議院は、私学振興のための教育金融機関設置に関する決議を行い、政府は速かにその具体的対策を立て、これを本院に報告することを要請せられておりましたが、その後政府如何なる具体策をお立てになつておられますか。この外、見返資金又は預金部資金より私学経営費の貸付の実現、寄附金に対する免税、その他特に考慮されておりまする事柄がありましたら、併せてお知らせを願いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇
  15. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 平岡議員の御質問に対しましてお答え申上げます。  御質問の第一点は、生産が殖えておるに拘わらず通貨が余り殖えていないではないか、これがデフレの傾向ではないか、こういうお話でございます。これは一面を御覽になつた考え方でございまして、大体生産資金といたしましては通貨よりも預金が第一でございます。銀行資金が第一でございます。で、銀行貸出し得ます金は、一昨年の十二月には三千四五百億円しかなかつたのでありまするが、最近は非常に殖えまして六千億になつております。而も又その関係から通貨の代りをなしまする手形の交換高は殖えておるのであります。こうやつて見ますと、決して通貨量は減つておりません。大体日本におきましては、三千億の通貨に対しまして預金が六千億というのは、預金が少な過ぎる。今まで信用が確立しなかつたからであります。幸いに昨年から通貨の価値が安定しまして、信用が確立したから、予定以上に預金が殖えた。各国の例を申上げますると、イギリスもアメリカも、通貨に対しまして、五、六倍、六、七倍が通例でございます。脆弱な経済であるフランスにおきましても、一時、預金が三倍半ぐらいであつたのが、最近は四倍半くらいになつておる。我々は通貨をどうこうするよりも、通信を確立し、経済を安定して、産業資金に向ける預金を殖やすのが第一であると考えておるのであります。決して今の通貨はいろいろのことから考えまして少な過ぎるとは言えない。それよりもむしろ信用をもつと大きくしなければならぬ。信用を大きくするためには経済を安定しなければならぬということになると思うのであります。  次に長期資金の問題から見返資金の運用についての御質問でございまするが、これはどうも今まで十分徹底していないようでありますから、見返資金の運用の状況につきまして御説明いたします。  予算は千五百八億円でございましたが、輸入その他の関係で、大体今年度は千四百億円余と考えられております。只今見返資金へ繰入れました金額は千百三十一億円でございます。そのうち貿易会計から繰入れたのが千百二十四億円で、運用收入が六億円、従いまして千百三十一億円をどういうふうに運用したかと申しますと、復金債の償還に四百十五億円使つております。そうして公共企業体、即ち国鉄と通信関係に二百二十二億円出しております。内訳は、国鉄に百三十九億円、電気通信関係に八十二億円でございます。而して問題になつております私企業、いわゆる直接投資、これは一月二十六日までに六十三億円出しております。その内訳は、電力が三十五億円、海運が二十一億円、石炭関係二億円、化学肥料関係が五千万円、鉄鋼関係が三億六千万円、こういうふうにいたしますると千百三十一億円のうち七百億円はもう使つておるのであります。そして残りの四百三十億円につきましては、これは遊ばせて置くわけに行きませんから、農林中金発行いたします食糧証券を、四百三十億円のうち四百二十七億円買つておるのであります。この見返資金食糧証券を買つておるから金融の引締りを来たさない。見返資金が買わなかつたならば普通銀行かどこかが買わなければならない。或いは日本銀行も買う手がありましよう。それを買つて、見返資金が余裕金の殆んど全部を、残りの全部を使つておるのであります。従いまして、千百三十億円の中で以て、見返資金が遊金として遊ばせておるのは三億円しかございません。こういう状況に相成つておるのでございます。今後一月から三月までに貿易会計から繰入れます金額は、大体輸入の状況によつて違いますが、三百億円か三百五十億円予定いたしております。そうすると三月までに今の食糧証券に運用しました四百億円と三百億円、七百億円ばかりありますが、私の考えでは五百億円前後を三月までに、復金債の償還二百二十五億、或いは直接投資二百億、或いは国債の償還百二十五億、こういうことを目標に、三月までにこれを運用しようといたしておるのであります。  次に長期設備資金の問題でございますが、昭和二十四年度は可なり窮屈でございました。総体から申しますと、二十三年度には大体長期設備資金は千十億円使いました。そのうち復金からの融資が六百八十億円、こういたしますと、三百三十億円が直接投資とか銀行融資であつたのであります。今年は六百八十億円の復金債がございません。従いまして見返資金でどんどん出して行こうといたしましたが、今までのところは六十三億しか出ておりません。今後三月までに相当出ます。併しこれにいたしましても六百八十億円の復金債に比べては非常に少うございますから、先程申上げましたような直接投資、即ち増資とか、或いは興業債券によりまして百数十億円を出すとかして、何とか二十三年度の千十億円程度長期資金は二十四年度でも出す大体見込みが立ちました。二十五年度におきましてはこれでは足りませんので、私は大体千五百億円くらいの長期資金は少くとも調達いたしたい。その内訳を申上げますると、見返資金の方から私企業投資の四百億円、又興銀、勧銀、或いは農林中金等の社債発行によりまして五百億円前後、或いは又直接投資によりまして三百億円程度、或いは又会社の留保資金、即ち会社が利益を留保いたしまして設備に充てる資金につきましても二三百億円、或いは四五百億円、こういうふうな計画を立てまして、千五百億円前後或いはそれ以上の長期設備資金を計画いたしておるのであります。  次は銀行の支店の問題でございます。一県一行主義を廃止いたしまして新たに銀行を設ける計画であります。今のように一県一行主義では、どうしても銀行が独善的になり易い、こういう弊害を認めましたので、去る国会におきましても、一県一行主義はやめまして、適正な銀行の設立の申立であるならば認可する、こういう態度をとつたのであります。まだ認可したのはございませんが、私のところに来ておりますのには二、三行あるのであります。これは一県一行主義では、いわゆる庶民階級、普通の金融、中小商工企業の金融に欠くるところがあると存じますので、今後適当な銀行がどんどん出て行くことを期待いたしております。次に支店設置の問題であります。今の支店を、私は数をどんどん殖やすということは余り感心いたしません。支店の配置転換ならば、これは認めて行つていいと思うのであります。併しながら私は支店の配置転換というよりも、もつと一県一行主義を打破して、新たなる銀行ができることを期待しておる状況であるのであります。  次に私学の問題でありまするが、これは我々も努力して参りましたが、なかなか歳出を減らそうという場合におきまして、そう多額を計上することのできなかつたことは誠に遺憾でありまするが、今後私学の復興につきましては財政的にも十分努力いたしたいと思います。昨年に比べましては、先程申上げましたように、戰災復興の私学に対しまして一億数千万円を出したような状態であります。ただ財政面だけでなしに、税の面から申しましても、公益法人でありますところの私学に対しまする寄附金の免税につきましては考慮いたしまして、不日御審議願うことに相成ると思うのであります。(拍手)    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  16. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 昨日私に対する鈴木議員からの御質問がございましたので、先ず先にその点をお答え申上げたいと存じます。  鈴木議員からの御質問は、民間資本の蓄積、国民所得の配分関係は忘れられているが、これが対策はどうか、こういう御質問であつたようでございます。我が国経済の再建のためには、資本の蓄積は根本的に重要な問題でございまして、今日の税制の改革、特に資産の再評価等は、これが促進の対策でございまして、その他の金融政策もすべてこれを助長するように努めておる次第でございます。国民所得の合理的配分についても意を用いているところでありまして、減税配給物資増加であるとか、或いは物価の安定によつて勤労者の実質所得の充実を図ることにいたしますると共に、この福利厚生のための公共事業及び中小企業その他農山漁村に対する対策等は、いずれもこの意図に出ずるものでありまして、十分意を用いてこれが実行に移して参りたいと存ずる次第でございます。  それから只今の平岡議員の御質問に対しましてお答えを申し上げたいと存じます。  先ず第一に平岡議員の御質問は、私に対しても食糧増配についてどうか、こういう御質問であつたと思います。食糧増配につきましては我々も検討中でありまするが、予算と需給の関係よりいたしまして、まだその実施については確乎たる見通しを得るに至つておりません。  それから第二点として、外資導入に関する最近の具体的なケース、その実現の見通しについてどうかと、こういう点であります。外資導入の必要が論ぜられ、国民挙げまして熱望すること大体ここに二年であると思いまするが、今日までの実績は、事業活動として商業、サービス業、財産取得としては個人の株式取得のごとき小規模のものが大体にして多く、一般に期待せられる程の実績は今のところまだ上つておりません。これは国内経済受入体制の未成熟等による点もあろうかと存じまするけれども、最近は国内受入体制等につき、経済事情一般も改善整備せられつつありまするので、外資導入の成果は今後に期待されるものと信じておる次第であります。今日まで導入せられました民間外資で本格的な外資提携と見られるものは、石油会社関係が三件であります。それから造船関係が二件であります。それから機械関係が四件、化学関係が四件、計十三件で、その内容は、株式を取得して資本参加をしようとするもの、又は外国会社の持つている特許の実施権を日本会社に與える契約が大部分でございます。尚、将来の見通しといたしましては、外資導入を阻害する要因とされまする税制の改革、統制の緩和、それから為替管理制度の整備、集中排除、再建整備の完了、賠償取立の不安の解消等々、順調に解決の方向に進んでおります。国内経済、それからこの経済のインフレの点についても、先程から御質問の中にもございましたように大体收束を見ておる。それから経済正常化、安定化の前進によりまして、受入体制は着々整備せられておりまするので、大いに将来は期待せられるものと信じておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎登壇拍手
  17. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) お答えいたします。  電力料の規則は、今日電力の現状から修正された次第でありまして、この問題について農村が灌漑用排水のために受ける影響は相当甚大なものがあるのであります。併しながら電力料の改正も又今日の現段階として止むを得ない事情の下にあるのでありまして、この改正されました電力料金によつて、この灌漑用排水、農業の利用のために、今後これに対する影響をできるだけ少くするという方法の万全の策を研究をいたして善処いたしたいと、かように考えておるわけであります。(拍手)    〔国務大臣本多市郎君登壇拍手
  18. 本多市郎

    国務大臣(本多市郎君) 今日の国家行政機関が誠に複雑多岐であるというお話でございますが、この点につきましては政府といたしましても、このことが延いては国民負担の重圧の原因ともなることでございますので、でき得る限り簡素化いたしたいと努力いたしておるのでありますが、如何せん、御承知のごとく行政の民主的運営という建前から、各種の委員会が独立の外局として次々に殖えて行くような傾向にあるのでございます。これも行政民主化の建前から止むを得ないこととは存じまするけれども、こういた外局もでき得る限り内局へ統合するように処置して行きたい考えであります。今日のところ、この統制の撤廃に伴いまする機構、人員の縮減を徹底するという仕事を鋭意進めておるのでございますが、更に続いて根本的な行政改革ということを実行いたしたい考えを以ちまして、行政審議会等にも今日御協力を願つておるような次第でございます。将来、今回設けられました地方行政調査委員会議等におきまして、国の事務の範囲、府県の事務の範囲、市町村の事務の範囲等が明確にいたされましたならば、政府の所期しておりますところの根本的な行政機構の簡素化、改革ということも実現されるものと考えております。以上のような考えを以ちまして対処しておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  19. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) お答え申上げます。  配電会社が高率料金の收入を確保するために低廉な深夜電力の供給を停止しておると、こういうお話であつたようでありますが、大体におきまして冬季におきましては、余剩電力の生ずることは稀なのであります。ただ出水が非常に多いような場合に余力が生ずる場合もあり得ると思うのでありますが、お話のような事態があることは私存じませんが、尚、御指摘の点もありましたので、十分調査いたしまして、若しさような事態がある場合には、電気業者に対して十分警告いたすつもりでおります。(拍手)    〔国務大臣大屋晋三君登壇
  20. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 平岡君にお答えいたします。  現在の我が国の外航適格船はどういうふうに相成つておるか、或いは又新造、改造の状態はどうかという御質問でございますが、昭和二十五年一月現在の外航適格船は十八隻、十万二千トンでございます。更に昭和二十五年三月末日に相成りますると、これが二十二隻に増加いたしまして、十一万六千トンと相成ります。更に来年の昭和二十六年三月末日におきましては百三十二隻、八十六万七千トンの外航適格船が所有できるという目標の下に、目下新造並びに改造を続けておる次第であります。  尚又将来日本の保有し、保有せんとする船舶のトン数はどの程度かという御質問でございますが、現在は我が国の所有の船舶量は二百三十万トン、これは重量トンでございますが、この中の殆んどもう八〇%余は、いわゆる船齢の古い老朽船並びに戰時中に急に建造いたしました劣悪な船が殆んど大部分を占めておりまするので、これを逐次改造、或いは新規の新造を以てこれを代替いたすという考えをいたしております。尚、将来の保有量は、これは恐らく講和会議等によりまして決定をいたされるべきものと存じまするが、要は我が日本の経費が自立し得るために必要であるべき数量を保有しなければならないと私は考えておりまするが、只今何百万トン云々ということは申上げる段階に達しておりません。    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇拍手
  21. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。二十五年度の予算に計上されております私学の戰災復旧貸付金二億七千万円は甚だ少いという御説でありますが、確かに私学が蒙むりました戰災の莫大な金額や、現在私学が当面しております財政の窮乏等を考えますと、甚だ不十分だと考えております。併しこの金額は国立の学校の戰災復旧と大体同じ比率で計上されておるわけでありまして、そういう点及び現在の日本財政の非常に困難な状況と考え合せますと、先ず止むを得ないと考えております。けれども今後日本財政の回復に従いまして、漸次これは増額されるべきものと考えております。尚、私学に対する金融問題と関連いたしまして、先年来問題となつておりました教育金融金庫というような案につきましては、長い間検討を加えておるのでありますけれども、いろいろの点で技術的に困難な点がありまして、まだ決定をするに至つておらないのであります。次に見返資金とか預金部資金を私学復興方面に使つたらどうだというような御意見もありましたが、これは御承知のように、なかなか使用につきましていろいろ嚴重な制約がありますので、容易にそういうことはできないだろうと思つております。私学に対する寄附金については大蔵大臣からお答えがありましたが、御承知のようにすでに戰災復旧のための寄附金につきましては税金が免除されることになつておるのであります。その他の寄附金につきましても、性質上、無論十分の考慮を加えなければならないと考えておりまして、税制改革と関連して目下検討をいたしております。(拍手)     —————————————
  22. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 羽仁五郎君。    〔羽仁五郎君登壇拍手
  23. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 吉田内閣は、国民の幸福を保障する能力がないのではないか、無能政府ではないかということが最近の内外の印象でありますが、果して如何でありますか。以下七つの点について質疑をいたします。  第一に、主として首相に講和問題についてお尋ねをしたいのですが、現在国民の最大の関心が集中しておる講和問題について、首相の態度の不透明であるということは、首相国民の要望を代表して献身する能力がないのではないか。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)或いはひそかに隠すところがあるのかを思わせて、国民をしていたく失望させております。昨晩の東京新聞のごときは、首相は地獄に落ちるべきだということを書いております。仮定の問題には答えない、或いは我輩に一任しろとか、(「飛んでもないこつちや」と呼ぶ者あり)或いは御自分の主宰される民自党自体に対しても猿ぐつわをはめて、講和問題については言つちやいかんというふうなことをなさつておられる。こういう官僚的な態度、或いは議会答弁を以て事足れりとしておられるような態度、これを一擲されて、国民の要望に従つて努力する能力がおありになるかどうか。(「そうだ」と呼ぶ者あり)  次に具体的にお尋ねをしますが、日本の将来の幸福が全面講和より外にないということは、すでに御承知のように安倍能成、或いは大内兵衛とか、そういう人々を以て組織しておる平和問題懇談会が、全面講和、中立不可侵、国連の保障、中井貿易の促進、軍事基地には絶対に反対というような決議をされて、これを朝日新聞のような代表的な言論機関が支持しておる。南風原大総長が老躯を提げてアメリカにおいて努力をせられたことも又この方向にあります。首相日本の有識者がこれらの決議に到達した理由を御了解になる能力がないのではないか。世界の対立の禍の原因とならないで、世界の調和の幸福の原因となれということは、先頃朝日新聞の特派員に向つてフランスのダラデイエ氏が忠告しておるところでもある。自衛権の問題について首相は先日から水掛論を繰返しておられるが、マツカーサー元帥の声明の二番煎じをやつておられるのではないか。一体自衛権日本にとつて何を意味するか、御了解になつておるであろうか。言うまでもなく軍備を持たない日本自衛権というものは二つしかない。或る国がそれを守るか、それとも国際保障によつてこれを守るか、二つしかないのであります。そうして或る国がこれを守ろうとすれば、必ず日本は他の国との対立にさらされる。米ソが原子爆彈を持つておる今日、或る一国によつて日本自衛権を守ろうとすれば、必ず他国の原爆に日本はさらされるんです。この二十四日の日本タイムスに、アメリカの有力な政治評論家であるワルター・リツプマンがどういうことを書いておられるか、お読みになつたと思う。アメリカの原爆の独占を打破することがソ連によつて成功して以来、毛沢東が中国革命の指導に成功して以来、世界の情勢は一変しておる。アメリカのドイツ及び日本に対する政策は変えなければならないのではないか。いわゆるソ連を包囲するというような政策、或いはドイツ又は日本をアメリカに接近させようとする政策はすでに失敗であることが明らかになつておる。強いてこれをやれば必ず日本を反対側に接近させるということになるのではないか。(「よく聞いとけ」と呼ぶ者あり)リツプマンはそう言つております。リツプマンは日本及びドイツにすでにそういう現象が現われておると言つておる。ドイツのごときは、新聞を御覧になつても分るように、そういう現象が現われておる。従つてリツプマンは、アメリカの対独、対日新政策は、ドイツ及び日本に中立を嚴守して貰うという方向に行くべきであるということを書いておるではありませんか。(「自分見解だ」と呼ぶ者あり)首相は政治の道徳性を説かれましたが、單独講和でも早い方がいいということ程いわゆる打算的な考え方はありません。そこには一片の道徳もありません。  次に日本の民主化の徹底ということが講和の前提であるは首相もお認めになつておる。併し日本民主化の徹底ということに現内閣は果して能力があるのか。農地改革の推進ということを口に言うだけであつて、実際にはその逆転を許しておるではありませんか。労働條件の改善を実行しておられるかどうか。労働基準の低下ということは、国際的に悪影響のあることは言うまでもありません。或いは失業問題を真に重視しておられるかどうか。朝日新聞の世論調査を見ても、現在日本人は三人に一人はこの一年の間に失業するかも知れないという不安におののいておる。この鼻先に向つて経済安定、社会保障制度を早く確立しなければならないのだが、その能力があおりになるのかどうか。  又中国問題に関しては、首相は中国は極めて不安定で、極東平和のために甚だ遺憾であるというようなことを言つておる。(笑声)中国は日本帝国主義の侵略のために数十年の戰禍に苦んだのです。その戰争から最近救われつつあるのであります。その事実を英国も承認しておるではありませんか。現に首相がああいうことを言われたその当日、外電は、アメリカの政府がマツカーサー元帥に向つて日本の中共貿易を促進すべきことを勧告しておられる。能力がないばかりじやない。見通しもない。(拍手)  対日理事会の融和的の進行を図るべき責任があると我々は考えるのですが、日本政府はこの引揚残留者の数字を再検討するようなお考えは恐らくまあないだろうと思う。各地の世話課の当惑の事実も御承知がないのだろうと思う。  首相は一体米ソ間の対立を悲しんでおられるのか、喜んでおられるのか。(「そこだ」と呼ぶ者あり)先頃アメリカのダンヴアー大学の世論調査においても、現在米ソの対立の主たる責任はソ連にはないという答が八三%になつている。アイゼンハウアーが一九四五年当時を回顧して、ソ連と西欧民主主義とが併存し得ないという理由は発見できなかつたと言つておる。(「宣伝演説」と呼ぶ者あり)米ソ対立を挑発して、反共を挑発して、実は日本帝国主義の復活を陰謀しておるのではないか。(「ノーノー」「その通り」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)戰前、戰時において、あらゆる進歩的な、良心的な分子をいわゆる赤としていじめ拔いた蛮風が今再びやつて来ておる。町の子供までが赤やーいと言つておる。実に嘆くべき状態じやないかということを、これは僕が言うのじやない。東京新聞が嘆いておるのです。(笑声)英国のエコノミストが、日本政府と資本家とは、野蛮な反共の叫び声を揚げて、実は日本の労働條件を引下げ、日本の大衆を失業に投げ込み、そのために日本の労働組合運動を潰滅させようとする、こういう政府は講和担当の資格がないということをエコノミストが指摘しておる。APのラツセル・プラインズも、首相演説に対して、軍事基地反対の問題について首相が回避しておるということを指摘しております。これらの点について、首相国民のために、私に答えろというのではない、国民のためにはつきり答えて頂きたい。  次に首相並びに大蔵大臣、或いは人事院総裁は今日見えておられませんが、首相に特にお考え願いたいと思うのは、一体現在の政府は法律を本気で尊重するのかどうか。国家公務員法に関する人事院の勧告、いわゆる公共企業体労働関係法による最終的に裁定を尊重するしかないのか。これは一言で申上げますれば、公務員の給與の実情が悪いということは政府も御承知になつておる。それから予算を動かさないでもやる措置があるということは、それぞれ專門家が指摘しておるところである。第二に、物価に重大な影響がないということは、人事院の証言しておるところである。民間の給與が昨年度において三〇%上つておる。この時に公務員だけを除外するということはどうしても納得できないということは、毎日新聞すら言つておる。(笑声)而も若しも政府がこの人事院の勧告や裁定を無視されるならば、そこに自働的に争議権と団体交渉権が発生して来るのです。(「アカハタは何と言つておるか」「君は無銭飲食者だ」と呼ぶ者あり)現にこの二十二日に、いわゆる穏健派である全逓の従業員組合の方が、穏健派ですらも、政府が法律を無視するならば、合法鬪争として争議を考えるということを決議しておられる。これは單なる財政的な問題ではないのです。財政の体裁に目が眩んで政治的判断を誤まりつつあるのではないか。  第三に、日本経済の自立ということを言うけれども、日本は資本は立つけれども、日本の労働は倒れつつある。こんな自立はあり得ないのです。  第四に、労働調査協議会の調査によれば、昨年末の失業は二千万人だと言う。それに対する政府の失業対策というものは如何に哀れなものであるか。日本の過去の最大の恐慌であつた昭和四、五年当時の失業者は二百万人であつたのが、それが現在二千万人になつておる。これに対して政府の失業対策というものは貧弱極まる。即ち無能力を指摘されるゆえんである。  農村の農地改革の問題についても、促進すると言いながら、登記は三〇%にしかなつていない。いつ逆転するか分らない。而も農業恐慌に対する何らの具体的の対策がない。  国民生活に対しても、住宅不足が三百五十万戸、緊急産業住宅の不足が三十万戸というのに、二十五年度において八万戸しか建てられない。これではどうしても無能力と断定せざるを得ない。(笑声)或いは社会保障制度も容易に行わない。日本では主婦や母親も社会保障制度の対象とせよというのが世論であるのに、これらを実現される能力があるのかないのか。結核対策の場合にも、国立病院や国立療養所を縮小したりして、財政的な見地からこういうことをやつておる間に、結核は国民の間に蔓延をして行く。結核の予防費に対して僅かに二億の予算しか組めないのかどうか伺いたい。  文化問題についても、政府日本学術会議というものを果して尊重する能力がおありになるかどうか。日本学術会議は、大学の自由によつて、又大学その他研究所の財政について、湯川君がノーベル賞を受けておる間に、彼の研究室は潰されて行くというような状態にある、或いは学校、研究所に対する寄附金の免税というような問題について、或いは勧告し、或いは決議を重ねておるのであるが、果してそれらが尊重されておるか。それから六・三制の予算は依然として低調を続け、教員の待遇が悪いために師範学校の入学の志望者は減退を続けておる。これは日本の子供の不幸です。図書館法を今度出されるというのですが、これに一文の予算も付けない。或いは付ける能力がないか。併しこの間の「成人の日」に学生や子供達はああいう署名運動をやつておる。決して首相の白足袋を非難するのでないが、こういう子供達の素足に温かさを與える政治が欲しいということを世論は言つておる。七億程度予算があれば図書館法は立派に発足できるのだが、この七億程度予算を付けるということがおできにならないのかどうか。入場税のごときも十五割から十割にお下げになつたが、併しこれは依然として芸者の花子と同じだ。これは日本学術会議のようなものがあるのだから、そういうところに諮問して、そうして優秀な映画というものについては減税或いは免税をお考えになるということができないか。  最後に基本的人権の尊重、この重大な問題について依然として人権蹂躪の非難が絶えない。又事実も絶えない。これは国民の生きる権利というものを首相は尊重されているのか。現在非惨極まりない親子心中の数が激増している。東京都内だけでも昨年一ケ年間に主として生活苦を原因として一千人の人がみずからの生命を断つているのだ。或いは人権蹂躪の事実についても、警察官や検事などの頭を切換えるために、具体的にどういう努力をしておられるのか。この前、質問したときに、人権擁護局の問題については我々も承知しておりましたが、人権が蹂躪されてから擁護するのじやいけない、人権蹂躪を予防する、即ち警察主義というものによるべきでないということがはつきりお分りになつていないのじやないか。警官に最近ピストルを持たせ、警官が自分を許婚を撃つたり、或いは自分の弟を撃つたり、同僚を撃つたりしている。ピストルによつて治安を維持するというような警察主義を一擲して、基本的人権を尊重することによつて真の治安を維持すべきである。最近アメリカの有識者のアンケートに、日本人の永久に斥くべきことは、天孫民族というような優越国家主義或いは天皇崇拜を中心とするような権威に対する無條件の服従、これらを斥けなければならぬ、それで日本の将来は基本的人権の尊重から始めなければならないということに言つている。  以上殊に講和問題については、首相に西独のアデナウアー首相程の節操があるならば、内閣の運命を賭してまでも、眼前の勢力を超越して、日本の本当の将来の幸福のためにはつきりした態度をおとりになり、殊の全面講和、軍事基地反対というような国民の要望を代表なさる能力がないかどうか。以上国民の前にはつきりお答えを願いたい。国民は知る権利があるのです。(「答弁の必要なし」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。博学なる羽仁博士からいろいろお教えを受けまして、誠に欣快に存じます。(「まじめに答えろ」と呼ぶ者あり)まじめに答えられない、そういうことに。  先ず私は、無能力なる政府にながながと御質問になる羽仁博士の常識に対して私、了解ができない。誠に不敏にして了解ができない。即ち無能力をここに白状せざるを得ないのであります。又新聞を御覽になる余裕があつたらば、私の施政の方針についても篤と御覽を願いたいと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)私の施政の方針の中には、あなたが、お話になつた、提起された質問のすべてが答えられておりまするから、私の施政の演説を以て御了承を願いたい。(「再質問、再質問」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣高瀬荘太郎君登壇拍手
  25. 高瀬荘太郎

    国務大臣(高瀬荘太郎君) お答えいたします。日本学術会議の重要性につきましては、私もその会員の一人といたしまして、十分に承知して尊重をいたしておるつもりでございます。そこで決議されました学問の自由ということにつきましても、鋭意これを尊重することに努力しておる次第でありまして、大学の政治的中立性を嚴格に守らなければならないという方針でやつておりますことも、私は大学の自由、学問の自由を守るゆえんであると考えておるのであります。  それから大学予算、研究所予算等につきまして、学術会議で決議がされたのでありますが、現在の財政状態からいつて無論思うようには参つておりません。甚だ不十分ではありますけれども、昭和二十五年度におきましては国立大学予算で約十二三億円は増額されることになります。又大学の研究費も約六億は増額される予定であります。又研究所につきましても一億以上は計上されております。  次に教員の養成についてのお話がありましたが、これにつきましても内閣としては十分考慮をいたしておりまして、来年度予算では日本育英会の予算を約六億増額いたしまして十五億にいたしました。その中の大きな部分は学芸学部或いは教育学部の教員志望の学生に対する奨学金に充てられる筈でありまして、これによりまして相当教員志望者に対する優遇の途が講ぜられると考えております。  次に今度の国会に提出を予定しております図書館法につきまして、予算の裏付けが全然ないということを御指摘になりました。確かに今度の国会に図書館法と関連する予算の提案はできませんでしたが、併し今まで法的根拠のなかつた公共図書館が、この法律によりまして法的根拠が與えられて、その施設や機構や運営につきまして一定の基準が作られるということは、社会教育上私は十分の意味があると考えております。併し現在の地方財政の状況から申しますと、これを十分に充実することは甚だ困難な実情にありますので、できるならば国家補助をしたいのであります。ですから今後財政の許す限りにおきましては、できるだけ国庫補助をもいたしまして、折角図書館法によつてできます公共図書館を十分に普及拡充して参りたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇拍手
  26. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 羽仁議員の私に対する御質問は、どこから持つて来られたか知りませんが、二千万の失業者の云々という点を中心にしてだと思います。私達はその数字の根拠は存じませんが、そういうふうな数字を信頼しておりません。政府がこの点に対する見通しは、唯一の日本にある資料は総理府の統計でありまして、これは前にも申し上げましたように、五月において四百万人前後の追加労働の志望者があつた。そのうち半分以上は三十五時間働いておるのだから、これは失業者というよりは生活事情の問題である、残りの百数十万についてこれが変化して行く、これが大体の見通しであります。これに対しまして二十五年度予算においては二百二十五万乃至二百八十三万の吸收計画ができ上つておりますということは、過日この会議で以て御説明申上げた通りであります。尚、詳細につきましては委員会等で以て資料を以て明確にお答えいたします。(拍手)    〔国務大臣池田勇人登壇拍手
  27. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 羽仁議員の私に対する御質問は、公務員の給與ベースの問題と住宅問題だと思います。公務員の給與ベースにつきましては、財政演説並びに本議場におきまする答弁で御了承願いたいと思います。住宅問題につきましては、三百万戸も不足しておるのに、八万戸ぐらいではとても問題にならんじやないか、こういうお話でございまするが、今まで住宅問題に対しまして、一昨年は余り出ておりません。昨年は三十億程度でございます。今年は三十七億の公共事業費、住宅金庫の五十億円、見返資金から百億円を出そうとしておるのであります。もうこの程度が今の最大限度だと思うのであります。三百万戸を一遍にやれというふうなお考えは、丁度給與ベースと同じように、地に付いた議論でないと私は考えております。(「何年で解決するか」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣森幸太郎登壇拍手
  28. 森幸太郎

    国務大臣森幸太郎君) 農地改革が反動的になつておる、或いは後退いたしておるというような御意見でありましたが、農地改革につきましては、昨年マツカーサー司令官が書面を出されたごとくに、よくもよくもこの農地改革をここまで推進したという、非常な称讃の言葉を頂いておるのであります。政府といたしましては、この農地改革を維持することについて、諸般の法の改正等をいたして答えて行きたいと、かように考えておるわけであります。決して反動的でもなく、又後退もいたしておりません。(拍手)    〔国務大臣林讓治君登壇拍手
  29. 林讓治

    国務大臣(林讓治君) 社会保障制度の問題でございますが、これはすでに先般も申上げました通り、目下審議会の答申を持ちまして、そうしてその結果によつて善処いたしたいと考えております。問題が非常に広汎なのでありますから、凡そ緊急を要します問題は、本年の六月頃にその答申が出るのではないかと存じております。  それから結核予防対策の問題でありますが、近時結核死亡者というものは漸減をいたす傾向を示しております。併しながら尚今日私共の想定いたしておりますのは、今日約十四万五千人ぐらいの患者があるように考えまして、これにつきましては総合的の計画を立てております。それは、その第一に予防といたしましては、健康診断、特に集団生活者の検診を強化いたしまして、それらに対して予防接種法に基くところの結核予防の徹底をいたしたいと考えております。従つてこれらを実行いたしまするがためには、第一線の機関といたしまして保健所の整備拡充に努力をいたしております。それから、なりました者に対するところの病床は、今までは七万五千床ぐらいありましたのを、今年度は九千床殖やしまして、国立のみにおいても八万床の設備をいたしたいと考えておるわけであります。幸いにいたしまして、昨今は人工気胸であるとか、或いは外科治療が非常に進歩いたしましたのと、連合軍の御心配によりましてストレプトマイシンの活用を図つてつておりますのと、これらの薬を国内においても生産のできるように、目下準備をいたしておるような状況に立ち至つておりますし、予算などにつきましても、本年などから比べますると約六億八千万円ぐらい上廻るような計画を立てておりますので、御期待に副い得られると考えるばかりでなく、尚、患者の保護などの問題につきましては、結核予防法を全面的に改正をいたして、そうして目的を果して行きたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣殖田俊吉君登壇拍手
  30. 殖田俊吉

    国務大臣(殖田俊吉君) 人権擁護の重大なことにつきましては、昨年の本会議におきまして羽仁先生にお答えをいたしたと思うのであります。人権蹂躪がまだ跡を絶たないではないかというお話でありますが、人権蹂躪或いは人権擁護というごとき、この国家生活の最も根本的な問題が、單に政府の決心とか或いは政府の態度如何でさように豹変し得るものではございません。これは我々が日本国民として最も根本的に考えなければならぬ問題であろうと思うのであります。私共は人権の擁護につきまして、法律を作り、各般制度を設け、或いは委員を任命する等によりまして、いろいろな努力をいたしておりまするが、私の最も大事と思いまする点は、この日本国民の意識の中に、個人の人格の独立とその尊重、或いは言を換えて申せば、いわゆる人間の自由ということの真に徹底したる認識が発生しません限りは、私は人権蹂躪は跡を絶たないものであると考えるのであります。そういう点につきましては、單に官憲のみがその認識を新たにするというのでは足りません。国民全体がさような認識に徹底することが何より必要であると考えます。(拍手従つて私は先ず教育によりまして、この国民の本当の肚からの人格の尊重、自由の認識を培つて行きたいと思うのであります。私はこの人権蹂躪を絶滅するために全力を挙げて鬪うつもりではございまするが、これは長い月日と、そうして容易ならぬ忍耐を以て達成するより外に途がないものと考えております。  更に警察官が武器を持つことについてのお話がありましたが、今日の日本の社会におきまして、警察官が武器を持たずして治安に当り得るかどうか、これは考える必要もない程明瞭なことであると思うのであります。(拍手)但しピストルを持ちましたと申しましても、これを濫用しては相成らんのでありまして、その点につきましては十分注意をいたすつもりであります。(拍手
  31. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  32. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十八分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第四日)