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国務大臣(
池田勇人君) 遅れましたので初めの
質問のことが分りませんでございましたが、一—三月の危機ということで今安本長官が
お答えにな
つたようでございます。総じて、いつ危機があるということを世間の人が言う場合には、余り危機のないものでございます。而も又一—三月の危機説の根拠は、
政府が財政
経済政策を何もしない場合に、昨年の租税
徴收が一—三月で千六百億円で、今年が二千億円になるから、それで、これは危機が来るだろうと、こういう漠然たる論拠に立
つておると思うのであります。私はこの際、一—三月になぜ危機がないかということを重ねて
青木安本長官の御
答弁に補足いたしたいと思います。
大体昨年は租税の
徴收が一—三月に非常に片寄
つて参りました。三千百億円の租税の收入の半額以上を一—三月に
徴收いたしたのであります。然るに今年は、二千百億円に対しまして五千百億円の租税收入が、十二月までにもう六割以上取れております。従いまして、昨年よりは
数字はちよつと殖えておりますけれども、パーセンテージに
至つては非常に少いのであります。而も又、米の供出が昨年より相当遅れております。大体三百万石から四百万石遅れておる。これによりまする
政府の支拂が一—三月に参ります。その他、見返
資金が出なか
つたのが今度どんどん出るようになります。又見返
資金による国債の償還も、
予算に示してありますように百数十億円もできることに相成
つておる。従いまして、昨年度の一般会計、或いは特別会計、
政府関係機関を通じまして、
預金部の
預金までも入れてや
つたところにおいて、昨年度は千二百数十億円の引上げ超過である。併し事務当局の計算におきますると、或いは今年は千二百数十億円より
減つて、九百億円とか、或いは千百億円とか、いろいろの
数字を出しておりまするが、大体これは昨年度よりも二三百億円引上げ超過を少くする考えで行
つておるのであります。これは
大蔵大臣の仕事であります。これは
金融財政を預か
つておる私の仕事でありまして、昨年の引上げ超過より、いわゆる
経済は膨らんでおりますけれども、引上げ超過は少くしますから、どうか御安心願いたい。従
つて危機はございません。
次に財政
計画の問題もありましたが、私は、大体
日本の
経済が安定して参りました。今までは来年度即ち
昭和二十五年度の
予算について云々する
程度であ
つたのでありまするが、私は別の機会に二十六年度の
予算の全貌もお話し申上げてもよい
程度にまで行
つておるのであります。従いまして
財政演説におきまして、二十六年度においては相当額を減税する、これが私は言い得ることに
なつたのであります。これは結局
日本の財政
経済が安定した、戰後において二年先のことを言
つたような内閣はないのでありまするが、私は、
はつきり次の機会に、二十六年度の財政の全貌はこういう考えであるということをお話し申上げることを得るでありましよう。これは結局
日本の財政
経済が安定したという証拠であるのであります。(「單なる考えでは駄目だ」と呼ぶ者あり)
次に
デイス・インフレの問題でありますが、まあ
インフレとか
デフレとかいうのは、
一つの
経済のボーダー・ラインでありまして、これから
インフレになるか
デフレになるかというのが
本当の
議論でありましよう。
日本は過去十数年間
インフレの波に浚われまして、殊に戰後においてはその度が強か
つた。そこで我々は
インフレというものが普通のものだと思
つておる。戰後の過度の
インフレというものが
本当の
インフレだと思
つておるのでありますが、これは大きな考えの誤まりでありまして、私は今
インフレとか
デフレの
議論はいたしませんが、今の
日本の
経済が、先ず
物価が安定して、而も
賃金が安定しておる、(「何が安定しておるか」「
賃金は安定していない」と呼ぶ者あり)而も
生産は殖えておる、そうして通貨は非常な動きを見せないという場合において、一部に労働者の
失業者が或る
程度あ
つたからとい
つて、これは
デフレとか何とかという問題ではないと思います。これが
デイス・インフレであります。
物価が安定し、
賃金が安定し、通貨も横這いである、而も又
生産が上昇しておるときは、これが
デフレということは、ためにする
議論だというのが私の考えであります。決して
インフレでないと同時に、
デフレでもございません。併しそこが非常なかねあいの問題でありまするから、我々は得てして
デフレに向おうとするところを、極力
デイス・インフレの線で財政
経済政策をや
つて行こうといたしておるのであります。
次に
資金の問題につきまして、和田君は、
預金に対して貸出が非常に殖えて来た、
預金に対して貸出が非常に殖えて来たから、これは不健全だと
言つておられます。
預金に対して貸出が殖えて来るのは当然です。何故かと申しますると、国債は発行いたしません。今まで発行してお
つた復金債は、すでに千億円のものを、一般会当から三百億円出し、或いは見返り
資金から今年度内に六百二十四億円、とにかく千億円近くのものを出して復金債を償還しようとする。普通
銀行の持
つておる復金債は少くな
つて来る。これは財政
経済政策が
はつきりしておる。国債は発行しないし、今までの借金は返して行くというのだから、
有価証券が少くな
つて来るのは当然である。而も償還された金は、
銀行としては
産業復興に金を使わざるを得ない。
預金に対して貸出が殖えるのは、今の
現象としては当然であ
つて、
銀行の内容が何も悪いのではありません。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)これは統計を飜
つて御覧に
なつたら分りましよう。
昭和元年においては、
預金に対しまして貸出は八〇何%、今と同じであります。ただ一時
政府が国債をどんどん出したり、或いは復金債をどんどん出して、市中
銀行に滅茶苦茶に
有価証券を持たしたから多くな
つておる。そういう
政治は、財政
経済政策としてよくないと考えておるのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)
銀行の内容がよい悪いは、それが復金債を持
つておるからその内容がよくて、優良な事業に貸出をしたからその内容が悪いという
議論じやないと思います。
尚、次に
資本の
蓄積の問題でありますが、
資本の
蓄積は
日本産業復興に最も重要なることであります。殊に
長期資金につきましては、我々は十分意を用いておるのであります。(「あんたは病気だ、病人は引つ込め引つ込め」と呼ぶ者あり)二十三年度におきまする
長期資金は、大体千十億円と計算されております。二十四年度はどれだけになるかという
見通しを付けますると、二十三年度の千十億円に対しましては復金から六百八十億円の
長期資金を出しております。この六百八十億円の
長期資金が二十四年度は出ません。而して私は前年度
程度に
長期資金を賄わなければいかんというので、増資もやりました。社債も発行いたしました。そうして
銀行の方から、興業
銀行の興業債券を殖やして、そうして今年度二百億円ぐらい出す予定で、大体二十三年度と同じ
程度に今年度の
長期資金も行くと思うのでありますが、併しこのままでは行きません。二十五年度におきましては、
財政演説で申上げましたように、できるだけの
長期資金を賄う機構を整備しようと思
つておるのであります。来年度はこれ以上になると思います。而も又
長期設備
資金では、会社の自己
資本の増加ということを忘れてはいけません。従いまして、減税をいたしましたり資産の再評価をいたしまして、
長期資金ができるだけ潤沢になるようにいたして行きたいと考えておるのであります。尚、
予算の方におきましても、建設
資金は、
財政演説で申しましたように、二千百億円、昨年の千数百億円に比べまして七割の増を見込んであります。殆んど七割の増の建設
資金を財政面から出すことに
計画いたしておるのであります。これがいわゆる私の言う
復興予算であるのであります。
最後に
資金ベースにつきましては、大体のことは
財政演説で申上げております。
物価と
賃金の悪循環については、これは
議論はありましよう。それは人事院のような見方もあります。役人に拂う金はこれだけであるから、これだけしか
物価は上らない、即ち全
国民の消費量の一・何%だから
物価には影響しないという考えでありますが、これは
政府ばかりではありません。地方公共団体もあります。而も又地方公共団体より別に、或いは
農業協同組合だとか、或いは
政府に
関係しておる
政府の
予算を通さない外郭団体もこれに従
つて俸給が上
つて来るということになりますと、六百億円以上のものになるのであります。いろいろなことを考えますると、これが
物価に及ぼします影響は非常に大きい。或いは又、いわゆる役人だけで、外の
民間ベースには
関係ないと申しますけれども、電気
産業関係の者の基準
賃金を決めますときは、役人の俸給が非常な重大なる、参考に
なつたということは、和田君も御存じだと思います。又石炭の方につきましても、役人の月給と石炭坑夫の月給が全然無
関係だとは言い得られないと思います。こういうことを考えますと、なかなかこのベースというものは、そう一概に人事院の言う
通りに上げられるものではないのであります。いろいろな、今の安定の状況を見まして考えなければならない。我々としましては、今の
公務員の
給與が一般
民間の
給與以上でないということは当然非常に少いという
議論がありますことを念査いたします。併し、一般の
賃金、労務者の
賃金と役人を比べますときに、今の統計で出ておりまするところの全
産業のいわゆる平均八千四百何ぼというものは、あれは大
産業だけを調べた
数字であるのであります。大
産業だけを調べた
数字でありまして、若し
中小企業関係の労務者の
賃金を調べたならば、私は八千四百円よりも相当下廻るという
見通しを付けておるのであります。これは古い統計で、
昭和二十三年、一昨年調べた統計におきますと、あの大
産業の
企業平均
賃金に比べまして、三割低いということを聞いておるのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)これを考えますと、八千四百円と六千三百円ベースを直ちに比較するということは、これは考えられないのであります。而も六千三百円ベースというものを実際に計算いたしますと、六千三百円ではございません。これは相当上にな
つておる。
昭和二十五年度におきましては超過勤務手当なんかを殖やします
関係上、和田君の御想像になるように一般の労務者の
賃金と
公務員の
賃金との差はそうないのであります。これは委員会で又詳しく御
説明申上げますが、いずれにいたしましても、我々はこの際、今まで過去三、四年間や
つて来たように、
賃金と
物価の悪循環には懲り懲りしているのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)何とかして悪循環のないように、我々は八千万
国民がお互いに助け合
つて、とにかく安定の
状態を行こうというのが私の
賃金政策であるのであります。(「働く者は犠牲だ」と呼ぶ者あり)
〔
国務大臣稻垣平太郎君
登壇、
拍手〕