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1950-01-25 第7回国会 参議院 本会議 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十五日(水曜日)    午後零時十一分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第八号   昭和二十五年一月二十五日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  第二 最高裁判所裁判官国民審査管理委員の選挙     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第百二十番、地方選出議員、福島県選出石原幹市郎君。    〔石原幹市郎君起立、拍手〕      ——————————
  4. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。一昨日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。和田博雄君。    〔和田博雄登壇拍手
  5. 和田博雄

    和田博雄君 過日行われました吉田総理大臣池田大蔵大臣青木安本長官演説に対しまして、二三の質疑を試みたいと思います。  吉田総理大臣はその施政方針演説におきまして、我が国の置かれておりまする国際的な地位に言及いたしまして、講和問題に対する態度を声明なされたのであります。昨年中国中共政権が樹立されて以来、昨年の末から本年の初頭にかけまして、インド、イギリス等がこれを承認し、そして国際的な環境は、その焦点をヨーロツパからアジアに移し、ここに新たに日本国際的な地位が大きく浮び上つて参りました。アメリカアチソン国務長官も又極東政策を闡明するに当つて日本アジアにおきまする共産主義の主要な防壁として再建せねばならないと言い、又イギリスベヴイン外相も、先般コロンボにおいて行われたイギリス連邦外相会議において又緊急に対日講和の問題を取上げて、これを促進すべきことを満場一致決議いたしておるのであります。ところが最近におきまするアメリカの状況を見てみますと、必ずしも対日講和が速急に行われないがごとき情勢も伝えられておるのであります。とにかく日本を取巻く世界情勢は、大きく、且つ微妙に動いておるのであります。こういうときに当つて吉田総理講和の問題に対し、全面講和国民全部がこれを希求しておると言い、併しこれは客観的な情勢によつて如何ともし難いと述べられ、且つマツカーサー元帥の声明の年頭の辞をそのまま承け継がれて、自衛権の問題にも触れられておるのであります。尚、考えて見ますると、先日来続々とこの講和の問題に対し、この筋の権威の方々日本に来られておる。そうして吉田総理は親しくそれらの方々と交渉を持たれておられるのであります。私はこういう際において、客観的な国際情勢について、又その情勢の下において具体的に動いておられる吉田総理とせられては、国際の客観的な情勢をこの際明確にして、国民はそれを知りたがつておる、権威ある客観的な情勢を具体的に知りたがつておる、それを十分に明らかにせられて、講和の問題に対して主要なる内容をなす講和の形式である全面的講和であるとか、或いは賠償の問題であるとか、或いは産業水準の問題であるとか、少くとも講和に関する主要なる問題については、政府としてこの際具体的な方針はつきりと明示されて、そしてこれを国民の前に示され、国民世論を統一し、この変転する国際情勢の中にあつて、我々が毅然として平和に対する信念を確保し、そして平和のために鬪うところの情熱を失わないように、国民世論を統一するように、そして客観的な情勢を、その自主的な、国民的な態度の上に少しでも打開するように、政府としては努められてはどうかと思うのであります。(拍手)私はこの点について、外交の問題に関しましては達見を持つておられると言われておる吉田総理の率直なる御意見をお伺いしたいと考えます。  私の質問の第二点は、日本経済の現状に関する政府認識と、そして経済復興に関しまする基本的な構想に関連しております。総理大臣も、経済安定本部総務長官も、池田大蔵大臣も、口を揃えて、日本経済は安定し、復興への基礎ができ上りつつあると、こう今度の方針を述べられた際に呼号されておるのであります。併しながら私はこれに対して疑問を挾まざるを得ない。私だけではございません。アメリカアチソン国務長官すら、一月十二日にその極東政策を闡明した演説の中ではつきりと、マツカーサー政治の面では非常に成功しておるが、経済面では我々は政治方面における程成功していないということを言われておるのであります。  さて、ドツジ・ラインによりまする二十四年の予算は、その予算自体、その中に非常なデフレ要因を含んでおるのであります。多額の債務償還、又多くの租税の徴收といつたようデフレ要因を含んでおる。併し又一面において輸出振興であるとか、見返資金の運用であるとか、半面においてインフレ要因を含んでおるのであります。ドツジは古典的、自由経済的な立派な立場から、このインフレ要因デフレ要因とを巧みに理論的には結合して、そうして二十四年度の予算を組んで、これを政府実行する段取りになつたのであります。併し二十四年度の、本年の予算の今までにおける実施経過はどうか。過去一年におけるこの方式実施経過は明らかにデフレであります。決して池田君の言うごとくデイス・インフレではない。政府は盛んに生産増大を言うのでありまするが、去年の四月デフレ予算実施に移したときに比べて、鉱工業生産指数基準年次に比べて八〇%の程度を低迷しておるに過ぎない。又政府は、輸出が去年に比べて二倍になり、約五億になんなんとすると言つておるのであるが、青木長官が去年示されたその計画は確か六億であつたと思う。計画通りには行つていない。むしろ輸出そのものも、去年を振返つて見るときに、不振に悩んだ。ポンドの切下げという大きな要因があつたにしても不振に悩んだ。そうして計画通りには行つていないのであります。最近は多少持ち直して来ておるというものの、これは一時的な現象である。こういうふうに、政府生産が上るとか、輸出増大したとき言つておるが、併し盾の半面を見ていない。生産が如何に増加しても、その生産されたものが国内において売れず、外国において売れなかつた場合には、生産増大は如何なる意味を持つのであるか。(拍手)何らの意味もない。やはり生産増大した以上は、それらのものが十分に各産業部門に使用されて、これが経済復興に役立ち、国民生活の上昇に役立つてこそ、初めて生産増大を呼号し、経済増大したと私は叫ぶべきだと思う。(拍手)然るにどうであるか。輸出滯貨を含め、国内市場における滯貨を含めて、とにかく滯貨というものは去年から段々と殖えて来ておる。一進一退はあつたが、非常に減つてはいない。それのみならず、一方において日本が持つておる一番大きな資源であるところの労働力の点については、失業は殖えこそすれ減つてはいないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)況んや我々のような貧弱な国において持つておる一番大きなものについて、そこに、より多くの遊休的な資源があるということは、これは決してデイス・インフレではない。イギリスデイス・インフレをやつておりますが、失業は少い。完全雇用状態を維持せんとしておるのであります。日本はその点において根本的に違つておる。この大量の失業を抱いておつて、尚且つこれをすらデイス・インフレと言うに至つては、私は経済の実情に対する認識を疑わざるを得ないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)この誤まつた経済認識に立つが故にこそ、政府経済復興に対してただ統制を外して自由な経済への復帰だけを考えておるのであります。併し諸君、今貿易の面をとつて見ても、国際経済の面をとつて見ても、国内経済の面をとつて見ても、価格や為替率が、かの十九世紀における自由経済の時のように経済の自働調節の役割を完全に果してはいないのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)日本経済構造は十九世紀におけるそれとは根本的に変つて来ておる。我々はその構造の大きな変化の中において経済を運営しておるのであります。戰時中或いは戰後における不足時代統制を外して、そして官僚的の統制が外されて行き、企業が自由を持つて来ることは、私も賛成である。併し個々企業に従らに統制を押付け、そう統制を外すということと、国民経済全体の運営について一つ計画性を持つということとは全くの別問題であります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)我々はこの複雑なる経済を運営して行くときに、個々の業者がその全貌を見渡して、そして日本経済の行くべき方向をみずから定めることは到底できないのであります。これは近代国家がその機能一つとして経済国民生活向上なる或いは復興なりのことを行うためには、経済計画的に少くとも大きく動かして行く機能を果さなければならんのであります。現に資本主義に立つアメリカにおいてすら、大統領は毎年二回教書を国会に送つて、そしてその国の経済の行くべき方向はつきりと示しておるのであります。一例をとつて言うならば、この点は後にも触れますが、現に金融が非常に梗塞しておると言うが、貸す方からすれば、将来の経済がどうなるのか見通しのないときにどうして長期資金を貸せるか。これ一つつて見ても、少くとも政府として国民経済を運営して行く上においては、そこに、はつきりとした計画性を私は持つべきであろうと思います。(拍手)我々が今度の青木長官演説を見まするというと、国土開発ということを盛んに言われておるのであります。国土を開発して日本の持つておる資源を十分に活用して行くということについては我々は賛成である。治山、治水、電源開発、これらの国土開発が行われることは、今後における日本にとつて本当に必要であります。併し一つの家を建てるについても、やはりそこには、きちんとした図面が必要なのである。青木長官の言うように国土開発について雄大なる計画を立てられる以上は、そこにやはり私は立派な計画がなければならんと思う。若しもそういうものがないとすれば、丁度青木長官演説が具体的にそれを示しておるように、産業政策も、物価政策も、資金計画も、財政政策も、てんでんばらばらであつて、それが一体内面的にどういう関連に立つておるのか、何ら明示されていない。(「その通り」と呼ぶ者あり)これなくして、ただ国土開発計画を作文に如何に書いても、私はそれが決して実現されるとは思わないし、(拍手)又それらのものについて多くを期待することができないのであります。私は日本経済復興には二つの大きな重点があると思う。一つ資本蓄積の量的の問題であるが、これを急激にやらなければならぬ。もう一つ経済構造、の資本蓄積が如何なる経済構造を予定しておるかの質的の問題であると思います。この点に関する限り私は政府に何らの考慮のないことを心から悲しんでおるのであります。政府は一体如何なる日本産業の構成を予想しつつ日本経済復興政策を進めておられるのか。その点について若し御構想がおありであるならば、この際明確に示して、日本産業の行くべき方向、又我々勤労者が同時に闘うべきところの目標はつきりと示して貰いたい。(拍手)これが私が政府にお尋ねする第二点であります。  質問の第三点は、二十五年度の予算編成方針関係したものでございます。この観点から、私は資本蓄積の問題と、輸出振興の問題と、中小企業及び日本農業の運命に関する問題について御質問申上げます。池田大蔵大臣は今度の財政演説の中で債務償還経済安定の手段であり、又最も確実な資本蓄積の方法であると言つて、相も変らずドツジ方式を万篇一律に繰返しておるのであります。果してそうであろうかどうとかいう点について、少しく分析をして質問を続けて行きたいと思う。ドツジ方式は、結局資本蓄積銀行の手によつて行い、又投資もこれによつて行なつて行こうというのでありますが、今、銀行状態を見てみますというと、預金に比べて実際貸出が殖えております。その数字は、私は時間の関係上述べませんが、殖えておる。又第一、日銀の国債買入操作を続けて来た関係上、預金準備であるところの有価証券預金との割合が非常に平素の状態より異なつたものとなつておるのであります。而も銀行が貸出した金は、本来の資本蓄積に決して使われていない。一番端的な表現は、あれだけ貸付の方が殖えたに拘わらず、長期資金、本来の経済基盤の拡大に役立つべき長期資金についてはどうでありますか。産業界挙げてこれが欠乏を伝えておるではないか。出たところの金はすべて運転資金か、又その多くの部分はいわゆる滯貨金融廻つてつて日本産業基盤を養うべき優秀な機械を購入し、或いは近代的な工場設備を拡大し、新技術を導入するために、決して多くを使われていないのであります。これは当り前であります。資本主義の営利的な観点に立ち、そうして公共性の少い銀行が、何で自分で危險を負担して、そうして政府において全然先の見通しのない、計画のない日本企業に、戰争によつて甚だ脆弱になつ企業に、何で長期の金を貸すでありましよう。これは当り前であります。(拍手)これは池田君が何と抗弁されようとも、経済論理は、資本主義の持つておる経済論理自体は、ごまかすわけには参らんのであります。(拍手)としまするならば、ドツジ池田大蔵大臣が予定しておつたよう資本蓄積は現実的には行われていない。私はこの点について青木長官或いは池田大蔵大臣にお聞きしたい。一体二十四年度の予算実行において、ドツジ考え方であつたこの予算実行において、果して日本産業はどれだけ本格的な、本当の現物的な資本蓄積をやつたか。ただ單に貯金が殖えたとか或いはそういうことではなく、日本本当資本蓄積が一体どの程度に行われたか。そうして将来において、この点について政府はどうしてこれを促進する具体的な政策を持つておられるかをお聞きしたい。  次に、私は、この二十五年度の予算が依然として超均衡予算である、今言つたよう考え方によつて決まつたことが実行されておる以上、私は日本農業及び中小企業というものは本年こそ本格的にますます困つて来ると思う。言い換えますと、ドツジ・ラインによるところの経済復興の大きな基盤であるところの中小企業なり農業などがますます疲弊することによつて国内的な市場がますます狹隘になることによつて輸出振興そのもの危殆に瀕し、資本蓄積そのもの危殆に瀕し、言い換えますと、この点はどこかにおいて修正せざるを得ないことになると私は確信いたすのであります。(拍手)この点について、当の責任者である農林大臣なり或いは通産大臣はどういう対案を持つておられるのか。殊に青木安本長官は、貿易振興について、或いは来年は六億であるとか何とか言つておられるのでありまするが、併しこれは一体どういう前提の下にそういう数字を出したのであるか。今我我が一番必要とする、日本経済構造の上から言つて密接不可分である中共との貿易を無視して、そうしてその計画を立てられたということは、そこに根本的なものを欠いておると思う。この中共との貿易の打開について果して政府はどういう案を持つておられるかをこの際お聞きしたい。  第四点は、有効需要賃金ベース及び雇用に関する問題であります。私は経済の安定とは、ただ單に通貨や物価を安定させ、そうして賃金をストツプすることだけではないと思う。やはりそれによつて生産が殖え、貿易が殖え、雇用が殖え、国民大衆生活が、言い換えると国民生活水準が上り、国民福祉がそこに確保されることによつて、初めて諸般政治産業政策が実を結ぶものだと思う。これがやはり政治目標でなければならんと思うのであります。今、日本が陷つておるデフレを打開するために有効需要の問題が大きく取り上げられておるのである。有効需要をここに殖やすためには、税を減らすことによつてその目的は達成されます。併し今度の税制をよく見てみますると、政府は税の軽減を叫んではおりまするが、併し物価の値上り、その他いろいろの條件を勘案して見るときに、殊に日本のように所得の分配が極めて不均等な国において、低額所得者においては、今回の税の改正は余り大きな有効需要を起し購買力を與える役割をなしません。(「その通り」と呼ぶ者あり)とするならば、私は今現にデフレの進行の際に処して、国民生活水準というものを上げて行くように、或いは有効需要を殖やして行くためには、税制改正に多くを期待できない。とするならば、最も低い賃金を貰つておる公務員のために、給與ベースは、その面からだけ言つても、もつと政府はこれを改訂して、そうして国民大衆にやはり大きな購買力を與えて行くべきではないかと思う。この点に関する物価賃金との悪循環の池田君の議論は、私は経済発展段階を全く取違えた、前提條件において全く誤まつた認識の上に立つておられると考える。時間がありませんから、この点は詳しく論評はいたしません。いずれ予算委員会の時にこの点を私は大蔵大臣と論戰するつもりである。(「やれやれ」と呼ぶ者あり)併しこれでも尚且つ池田君は、或いは総理は、公務員給與ベース改訂は行わないと言われるかどうか。殊に日本の今の給與賃金の問題を見て行くときに、その間に、民間産業公務員におけるアンバランスは非常であります。昭和二十二年においては、大体金融業関係の者と、全鉱工業方面の者と、そうして官公吏との賃金水準は大体同一水準にあつた。ところが現在はどうかというと、むしろ金融方面におけるところの銀行その他の業務の従業員の職員の給與が最も高く、二十二年を一〇〇とすれば一七五%ぐらい、官公吏は七五%と遥かに下にあるのであります。こういう状態を以てしても、賃金に対する一つ改訂を行なつて民間における賃金並びに給與との是正を図ることが必要であろうと思うのであります。  最後に私は、あらゆる政治が、結局は我が国民生活向上であり、福祉増大というところに実を結ばなければならんと、かように確信いたします。その点になつて参りまするというと、今のやり方においては、雇用なり或いは福祉の点について政府態度は極めて冷淡であります。(拍手失業問題一つつて見ましても、これに対する積極的な政策は非常に欠けておる。雇者増大については言うまでもない。確か去年の国会において鈴木労働大臣は、迫り来る多くの首切りから生ずるところの失業問題に対して、その対策として、輸出産業を新たに起して、その方面において何十万かの雇題増大するということを言われたのであります。併しこれはあの交易條件の悪いときに、そうして貿易自主性のないときに、日本の新らしい輸出産業を起して、そこに雇用増大するなんということは、これはナンセンスであります。(拍手)果せるかな、私は新らしい輸出産業方面において雇用の聊かの増大の跡も見ない。政府は今回、今現に潜在的な失業者を合せるならば一千万にもなんなんとする、そうしてその多くのものはあの零細な力のない日本農業が全く抱え込んでおる、こういう状態において、一体政府はどこにこの失業者を吸收し、或いは雇用増大を図り、国民生活全般向上を図る考えであるか。その点について明確な御答弁を願いたい。  私はやはり我々が主張しておるように、我々この日本の国に棲息する人は、すべて一つの立派な社会保障制度によつて、その人権の本当の基本であるところのものを保障し、その上に立つて、そうして我々働く勤労大衆が互いに手を組んで、日本経済復興なり産業なりを図ることなくしては、私達の将来は誠に暗いものであるということを一言申述べまして、そうしてこのためには、我々は身命を賭して、そうして勤労大衆と共に鬪うであろうことを言いまして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 和田議員お答えをいたします。私の施政方針演説の中に、容観情勢説明が甚だ足りないということでありますが、御質問は御尤もであります。併しながら私といたしては、今日在外機関を持つておらない日本政府としては、客観情勢の詳細な説明をいたしたくはありますが、できないのであります。尚且つ主観的の観測を言えとおつしやれば、多少私の感じたところだけをここにお答えをして、そうして答弁といたします。  これは、この前の議会においても、しばしば一応の主観的な説明は申述べましたが、終戰以来連合国その他が日本に対する気持は、先ず連合国側としては段々好転しつつあるということは、概念的に申し得ると思うのでありますが、これは和田議員の言われたように、アチソン長官にしても、ベヴイン外務大臣にしても、日本の対日講和を促進せよ、促進すべしという、こういう議論をせられるということは、結局日本に対する感じが、敵国関係を離れて、日本の再建、日本復興を希望しての議論であろうと私は想像いたしまして、対日講和促進という提案は、誠に日本としては好感を以てこれを歓迎すべきことと考えておるのであります。併しながら何を申しましても、大世界戰争をなした今日において、日本に対する猜疑心と申すか、敵愾心と申すか、全然日本に対する感情好感を持つ国のみを以て満たされておるのではないのみならず、好感を持つ国々においても、尚、日本に対して相当恨みと申しますか、戰争に参與し戰争を起した事柄について冬愉快に感じておるということは、これは拭うべからざる事実である。こう私は考えるのであります。殊に極東において、お話の通り中国状態においても、東南アジア状態においても、共産主義の勢力、その出現が非常な脅威を與えておることが事実であり、又これが日本においても一つ脅威である。この情勢に対してどう処するかということは、これ又対日講和を促進するという一つの原因になつたでありましようが、同時に日本における状態はどうであるか、日本における共産主義発展はどうであるか、これが世界の平和にどう影響を及ぼすであろうかということは、一つの問題として、各国政府に與えておる一つの問題である、こう思います。故に私は日本国内情勢が安定をしつつある、又日本産業が興りつつある、日本経済日本政治が安定しつつあるという事実を示すことによつて世界安定感世界の平和を促進する日本を再建せしむることによつて日本復興を援助することによつて世界の平和が確保し得るという観音を列国に與えることが先ず第一必要である。こう私は考えて、私の施政演説の中にも、日本戰争を放棄し、防備を撤去した、この憲法の條章、真意を飽くまでも日本が嚴守するのみならず、世界の平和、世界の繁栄を、日本列国と共に相協力してこれを増進せしむるという国民の決意を明瞭ならしむることが、世界列国日本に対する好感を維持するゆえんであり、又好感増大するゆえんである、こう私は確信して疑わないのであります。私の承知いたすところ、主観的の承知するところによりますると、濠洲その他の国の日本に対する感じは漸次よくなりつつある。現に濠州の外務大臣も、対日講和促進すべしという持論であるということも新聞に出ておりますが、これのごときも一つのよい……日本にとつては誠に喜ばしき一つ現象であると思うのであります。又アメリカ等においては、アメリカに往復した人の話によつて見ましても、又外国人の話によりましても、日本経済は再建さしてやりたいものである。日本輸出は増加せしむるように指導してやりたいものである。或いは在留アメリカ人のこれに対する気持も非常に最近において違つておるのみならず、日本から参つた旅行者に対する感じ、待遇も、殆んど元敵国であつたというような感じを與えることが毛頭ないのみならず、親しい友人であるかのごとく、年来の友人であるかのごとくこれを扱われた事実が沢山あるのであります。故にアメリカにおける対日感情は非常によくなつたと思いますし、(「他の各国はどうだ」と呼ぶ者あり)又私がイギリスその他の友人から受取るところの手紙によつて見ましても、日本に対する感情は漸次緩和しつつあると、こう私は確信いたすものであります。更に極東において、中国は勿論のこと、東南アジアにおいても事態甚だ安定を欠いておるという現在の状況が、日本に望みを嘱する、日本をして東亜の安定勢力たらしめることがいい、極東の平和に貢献するものであるという感じを、私は常に感じられるのでありますが、この感じが即ち対日講和を促進すべしという議論になつて現われつつあるのであると思います。今申すところは、先程申した通り客観的観察ではなくて、私の会います、私が往来する、或いは私が面会をした極く少数の人から得た主観でありまして、客観的観察として、こういうことがある、ああいうことがあると申すだけの資料を持つておりませんから、(「その通り」と呼ぶ者あり)私の施政演説の中においては各客情勢説明は控え目にいたした次第であることを御了承願いたいと思います。私の考えでは、この日本の安定が各国の認めるところであり、又日本国民世界の平和を増進せしめ繁栄せしむるという決心が顯著なればなるほど、日本をして東洋の安定勢力たらしむるのみならず、更に世界の平和にも貢献せしめ、繁栄にも貢献せしむる国に仕立てたい、復興せしめたいという気持がますます強くなると考えまするから、日本に対する感情の漸次よくなると共に、日本自身における国力の発展、或いは安定ということを如実に世界に示すことが、対日講和を促進せしむるゆえんと私は確信いたすのであります。これを以て私のお答えといたします。(拍手)    〔国務大臣青木孝義君登壇拍手
  7. 青木孝義

    国務大臣(青木孝義君) 和田議員の御質問に対してお答えを申上げます。  第一は安定恐慌に対する認識如何という点だと存じます。世間で申しますように、三月までの期間において、租税の徴收を主として相当巨額の資金が国庫に引上げられるだろう。そこでこれを私共政府の立場から見ますれば、御承知の通り昨年十二月末は三千五百億を超える通貨の状況でありまして、通貨が再び收縮せられて来るというその過程については、皆様の御承知の通り昨年の同期と大して変りがないという状況にございます。そこで、この間の情勢を考えますれば、通貨金融上の急激な行き詰りを来たさないと一応考えることができるのであります。そこで政府といたしましては、政府支拂の促進或いは見返資金の相当まとまつた放出を成るべく早くやる、それから日本銀行のマーケツト・オペレーシヨンの遂行、その他、政府としては必要なる金融上の措置を講ずることによりまして、先ずお説のような恐慌状態を惹き起すことはないと確信をいたしておる次第でございます。  それから第二点は、財政経済全般に亘るところの総合的な計画がない、であるから日本経済の将来にとつて不安である、こういうようなお説であつたと存じまするが、この点につきましては、今日の事態におきまして、例えば五ケ年先を見通したいわゆる五ケ年計画のごときものを立案発表することは、必ずしも適当でないと存じます。そこで少くとも明年度の経済については、総合的な観点から、明年度におきましても勿論この財政、経済金融の各部面において何らの行き詰りを来たすことなく、生産の上昇であるとか、或いは輸出の増進、国民生活の或る程度の充実を来たし得る方策を立てております。而して物価は総合的に申上げまするならば、御承知の通り安定の線を保持しております。そうして賃金においても安定の線に沿いつつ実質賃金向上を見込んでおる次第でございます。財政上の債務償還費につきましては、一般会計において七百億円、それから見返資金におきまして五百億円、これを計上しておりまするが、これらは金融機能を通じてその全部を産業資金として国民経済に放出還元する政策を持つておる次第でございまして、この面においても、インフレもなく且つ又デフレもなく、いわゆるデイス・インフレ政策の下に産業資金の適切なる供給を計画いたしておる次第でありまして、尚、詳細につきましては委員会等で資料を差出しまして御承解を得たいと存じております。(拍手)  それから第三点は有効需要の問題でありますが、有効需要の維持増大ということは民国経済発展のために極めて重要でありまして、二十五年度におきましては、輸出増大国内投資の増加等によりまして、二十四年度に比べて相当増加の見込であります。それから現下の必要なことは投資的有効需要でありまして、給與ベースの引上げはこれは有効需要の若干の増加になりまするが、この目的には必ずしも一致しないので、給與ベースの問題と有効需要との関係は(「大いにある」と呼ぶ者あり)更に愼重に検討、考慮いたしまして、申述べたいと存じます。  大体その三点に要約してお答えを申上げる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 遅れましたので初めの質問のことが分りませんでございましたが、一—三月の危機ということで今安本長官がお答えになつたようでございます。総じて、いつ危機があるということを世間の人が言う場合には、余り危機のないものでございます。而も又一—三月の危機説の根拠は、政府が財政経済政策を何もしない場合に、昨年の租税徴收が一—三月で千六百億円で、今年が二千億円になるから、それで、これは危機が来るだろうと、こういう漠然たる論拠に立つておると思うのであります。私はこの際、一—三月になぜ危機がないかということを重ねて青木安本長官の御答弁に補足いたしたいと思います。  大体昨年は租税の徴收が一—三月に非常に片寄つて参りました。三千百億円の租税の收入の半額以上を一—三月に徴收いたしたのであります。然るに今年は、二千百億円に対しまして五千百億円の租税收入が、十二月までにもう六割以上取れております。従いまして、昨年よりは数字はちよつと殖えておりますけれども、パーセンテージに至つては非常に少いのであります。而も又、米の供出が昨年より相当遅れております。大体三百万石から四百万石遅れておる。これによりまする政府の支拂が一—三月に参ります。その他、見返資金が出なかつたのが今度どんどん出るようになります。又見返資金による国債の償還も、予算に示してありますように百数十億円もできることに相成つておる。従いまして、昨年度の一般会計、或いは特別会計、政府関係機関を通じまして、預金部の預金までも入れてやつたところにおいて、昨年度は千二百数十億円の引上げ超過である。併し事務当局の計算におきますると、或いは今年は千二百数十億円より減つて、九百億円とか、或いは千百億円とか、いろいろの数字を出しておりまするが、大体これは昨年度よりも二三百億円引上げ超過を少くする考えで行つておるのであります。これは大蔵大臣の仕事であります。これは金融財政を預かつておる私の仕事でありまして、昨年の引上げ超過より、いわゆる経済は膨らんでおりますけれども、引上げ超過は少くしますから、どうか御安心願いたい。従つて危機はございません。  次に財政計画の問題もありましたが、私は、大体日本経済が安定して参りました。今までは来年度即ち昭和二十五年度の予算について云々する程度であつたのでありまするが、私は別の機会に二十六年度の予算の全貌もお話し申上げてもよい程度にまで行つておるのであります。従いまして財政演説におきまして、二十六年度においては相当額を減税する、これが私は言い得ることになつたのであります。これは結局日本の財政経済が安定した、戰後において二年先のことを言つたような内閣はないのでありまするが、私は、はつきり次の機会に、二十六年度の財政の全貌はこういう考えであるということをお話し申上げることを得るでありましよう。これは結局日本の財政経済が安定したという証拠であるのであります。(「單なる考えでは駄目だ」と呼ぶ者あり)  次にデイス・インフレの問題でありますが、まあインフレとかデフレとかいうのは、一つ経済のボーダー・ラインでありまして、これからインフレになるかデフレになるかというのが本当議論でありましよう。日本は過去十数年間インフレの波に浚われまして、殊に戰後においてはその度が強かつた。そこで我々はインフレというものが普通のものだと思つておる。戰後の過度のインフレというものが本当インフレだと思つておるのでありますが、これは大きな考えの誤まりでありまして、私は今インフレとかデフレ議論はいたしませんが、今の日本経済が、先ず物価が安定して、而も賃金が安定しておる、(「何が安定しておるか」「賃金は安定していない」と呼ぶ者あり)而も生産は殖えておる、そうして通貨は非常な動きを見せないという場合において、一部に労働者の失業者が或る程度つたからといつて、これはデフレとか何とかという問題ではないと思います。これがデイス・インフレであります。物価が安定し、賃金が安定し、通貨も横這いである、而も又生産が上昇しておるときは、これがデフレということは、ためにする議論だというのが私の考えであります。決してインフレでないと同時に、デフレでもございません。併しそこが非常なかねあいの問題でありまするから、我々は得てしてデフレに向おうとするところを、極力デイス・インフレの線で財政経済政策をやつて行こうといたしておるのであります。  次に資金の問題につきまして、和田君は、預金に対して貸出が非常に殖えて来た、預金に対して貸出が非常に殖えて来たから、これは不健全だと言つておられます。預金に対して貸出が殖えて来るのは当然です。何故かと申しますると、国債は発行いたしません。今まで発行しておつた復金債は、すでに千億円のものを、一般会当から三百億円出し、或いは見返り資金から今年度内に六百二十四億円、とにかく千億円近くのものを出して復金債を償還しようとする。普通銀行の持つておる復金債は少くなつて来る。これは財政経済政策はつきりしておる。国債は発行しないし、今までの借金は返して行くというのだから、有価証券が少くなつて来るのは当然である。而も償還された金は、銀行としては産業復興に金を使わざるを得ない。預金に対して貸出が殖えるのは、今の現象としては当然であつて銀行の内容が何も悪いのではありません。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)これは統計を飜つて御覧になつたら分りましよう。昭和元年においては、預金に対しまして貸出は八〇何%、今と同じであります。ただ一時政府が国債をどんどん出したり、或いは復金債をどんどん出して、市中銀行に滅茶苦茶に有価証券を持たしたから多くなつておる。そういう政治は、財政経済政策としてよくないと考えておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)銀行の内容がよい悪いは、それが復金債を持つておるからその内容がよくて、優良な事業に貸出をしたからその内容が悪いという議論じやないと思います。  尚、次に資本蓄積の問題でありますが、資本蓄積日本産業復興に最も重要なることであります。殊に長期資金につきましては、我々は十分意を用いておるのであります。(「あんたは病気だ、病人は引つ込め引つ込め」と呼ぶ者あり)二十三年度におきまする長期資金は、大体千十億円と計算されております。二十四年度はどれだけになるかという見通しを付けますると、二十三年度の千十億円に対しましては復金から六百八十億円の長期資金を出しております。この六百八十億円の長期資金が二十四年度は出ません。而して私は前年度程度長期資金を賄わなければいかんというので、増資もやりました。社債も発行いたしました。そうして銀行の方から、興業銀行の興業債券を殖やして、そうして今年度二百億円ぐらい出す予定で、大体二十三年度と同じ程度に今年度の長期資金も行くと思うのでありますが、併しこのままでは行きません。二十五年度におきましては、財政演説で申上げましたように、できるだけの長期資金を賄う機構を整備しようと思つておるのであります。来年度はこれ以上になると思います。而も又長期設備資金では、会社の自己資本の増加ということを忘れてはいけません。従いまして、減税をいたしましたり資産の再評価をいたしまして、長期資金ができるだけ潤沢になるようにいたして行きたいと考えておるのであります。尚、予算の方におきましても、建設資金は、財政演説で申しましたように、二千百億円、昨年の千数百億円に比べまして七割の増を見込んであります。殆んど七割の増の建設資金を財政面から出すことに計画いたしておるのであります。これがいわゆる私の言う復興予算であるのであります。  最後に資金ベースにつきましては、大体のことは財政演説で申上げております。物価賃金の悪循環については、これは議論はありましよう。それは人事院のような見方もあります。役人に拂う金はこれだけであるから、これだけしか物価は上らない、即ち全国民の消費量の一・何%だから物価には影響しないという考えでありますが、これは政府ばかりではありません。地方公共団体もあります。而も又地方公共団体より別に、或いは農業協同組合だとか、或いは政府関係しておる政府予算を通さない外郭団体もこれに従つて俸給が上つて来るということになりますと、六百億円以上のものになるのであります。いろいろなことを考えますると、これが物価に及ぼします影響は非常に大きい。或いは又、いわゆる役人だけで、外の民間ベースには関係ないと申しますけれども、電気産業関係の者の基準賃金を決めますときは、役人の俸給が非常な重大なる、参考になつたということは、和田君も御存じだと思います。又石炭の方につきましても、役人の月給と石炭坑夫の月給が全然無関係だとは言い得られないと思います。こういうことを考えますと、なかなかこのベースというものは、そう一概に人事院の言う通りに上げられるものではないのであります。いろいろな、今の安定の状況を見まして考えなければならない。我々としましては、今の公務員給與が一般民間給與以上でないということは当然非常に少いという議論がありますことを念査いたします。併し、一般の賃金、労務者の賃金と役人を比べますときに、今の統計で出ておりまするところの全産業のいわゆる平均八千四百何ぼというものは、あれは大産業だけを調べた数字であるのであります。大産業だけを調べた数字でありまして、若し中小企業関係の労務者の賃金を調べたならば、私は八千四百円よりも相当下廻るという見通しを付けておるのであります。これは古い統計で、昭和二十三年、一昨年調べた統計におきますと、あの大産業企業平均賃金に比べまして、三割低いということを聞いておるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)これを考えますと、八千四百円と六千三百円ベースを直ちに比較するということは、これは考えられないのであります。而も六千三百円ベースというものを実際に計算いたしますと、六千三百円ではございません。これは相当上になつておる。昭和二十五年度におきましては超過勤務手当なんかを殖やします関係上、和田君の御想像になるように一般の労務者の賃金公務員賃金との差はそうないのであります。これは委員会で又詳しく御説明申上げますが、いずれにいたしましても、我々はこの際、今まで過去三、四年間やつて来たように、賃金物価の悪循環には懲り懲りしているのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)何とかして悪循環のないように、我々は八千万国民がお互いに助け合つて、とにかく安定の状態を行こうというのが私の賃金政策であるのであります。(「働く者は犠牲だ」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣稻垣平太郎君登壇拍手
  9. 稻垣平太郎

    国務大臣(稻垣平太郎君) お答えします。  中小企業の対策についてのお尋ねでありましたが、資金面におきましては大体この運転資金といたしまして二十億円を目途といたしまして、見返資金から日銀のオペレーシヨンによつて行わしめたい。又設備資金に対しては十五億円の限度におきましてこれが融資をいたしたい。又商工中金の増資或いは債券発行等については、目下関係筋と交渉中であります。尚この中小企業の組織化の問題につきましても、できるだけこれが促進を図る方針の下にいろいろ工作をいたしておるのであります。これらに対する協同組合法による協同化、又協同施設等につきましては、通産省といたしまして本年度一億円の補助金を計上いたしております。その外、いわゆる簡易な簿記制度或いは企業合理化のための工場診断等を行うことについて、いろいろ各担当官が県当局その他同業者と連絡をとつて実施いたしておるような次第であります。  次に中共貿易についてお尋ねがありましたが、対中国貿易が非常に重要であることはもとよりであります。併しながら我々目下管理下にありまする関係で、司令部の政策に沿うて行動いたすべきであると存じておるのであります。但し実際におきましては、随時この中共との間の実際の個々の取引は漸増いたしております。或いは天津の、或いは青島の、或いは香港のバイヤーを通じまして、それぞれ取引が行われておりまするし、最近におきましても、向うから買いたいというもの、或いは又我々の方から送りたいというものについての話合いが可なり頻繁に行われておる事実があるのであります。やがてこういつたことが重なりまするならば、全面的に対中国貿易も非常に促進され、まあ我々が以前の状態に戻るのはとにかくといたしまして、相当の期待をいたし得られるのではないかと、かように考えておるのであります。(拍手)    〔国務大臣森幸太郎君登壇拍手
  10. 森幸太郎

    国務大臣(森幸太郎君) 農業政策に少しお触れになりましてのお尋ねがありましたので、私から簡單に申上げたいと思います。  御承知の通り農業政策と申しましても、非常に広汎に亘つて考えなければならんのでありまして、これは委員会において詳細に申上げたいと存ずるのであります。ただ概略申上げますると、御承知の通り今日まで海外より食糧輸入を受けておりました。その輸入の形式が漸次変化されるような態勢にあるのであります。日本といたしましては何を措いてもこの食糧の自給度を高めて行くということでなければならんと考えております。然らばどういうふうにしてこの自給度を高めるかということについては、国内の食糧の増産ということを最も重要な問題といたしまして、その増産をどうして可能ならしむるかということにいろいろの施策を考えて行かなければならんと、かように考えておるのであります。これらの対策につきましては、いずれ予算委員会において詳細に亘つて政府の考えておりまする政策を申上げたいと思います。(拍手)    〔国務大臣鈴木正文君登壇拍手
  11. 鈴木正文

    国務大臣(鈴木正文君) 和田議員の私に対する御質問の中心は、国民経済の中の雇用量の変化を中心として、失業対策をどういうふうに当面的に考えておるか、こういう意味であつたと存じます。失業対策の根本は(「何もできておらん」と呼ぶ者あり)單なる緊急的な失業対策でなくして、国民経済の中にある雇用量の中に問題があるという考え方におきましては、全く和田議員と同感でございます。政府自体の昨年以来の失業対策もそういつた観点の下に立つてつたのでありまして、その主要なる実体は、国民経済全体の動き、それからもう一つは見返資金の導入による雇用増大、それからもう一つは公共事業による、これは永久的ではないのでありまするけれども、半永久的な雇用の安定、その三つを柱としたところの雇用力の睨み合せであり、更に時間的にこれらの諸政策にはいろいろのズレがあるのでありますから、それに対応するために緊急的の失業対策、或いは最終的には失業保險を以てこれに充てて行くという、これらの諸政策を組合せたものが政府全体の失業対策であるという考え方でありまして、御質問の冒頭にありました和田議員考え方と私共の考え方とは、その根本的の考え方においては隔たつておらないと存じます。詳細に亘りましては委員会等におきまして資料を提出して申上げまするけれども、御質問にあずかりましたこの機会に、二十五年度予算に只今申しましたような考え方が具体的にどう盛られておるかということをやや詳細に申上げて置きたいと存じます。(「輸出産業振興はどうしたんだ」と呼ぶ者あり)  先程申しましたように、輸出産業振興を以て国民経済雇用の中心として考える。極めて重要な一環として考えるという考え方は、昨年においても今年においても同樣でございますけれども、国民経済雇用力の上昇の全部が輸出産業にあるなどというようなことは毛頭申したことはないのでありまして、輸出産業をも含めたところの国民経済雇用力は、昭和二十四年度においては三十万乃至四十万ということを発表したのでありまして、二十四年度の職業安定行政その他の推移を見まして、この程度雇用がなかつたなどということは実績に照らしても考えられないのであります。私共の言いまするのは、お断わりして置きますが、一方において離職者がある、一方において雇用が生れる、その離職者をすべて救済して差引尚四十万の余力があるというようなことを申したのではないのでありまして、離職の問題、失業の問題は別個の角度から検討するとして、如何なる事態においても、これだけ大きな国民経済の中に、二十四年度のうちに四十万程度雇用力の生れて来るということが予想されるということは、而も確実な調査に基いて申上げたのでありまして、同じ意味で今年度の予算を検討いたしますときに、ここにそういう意味において八十万前後の新らしい雇用力というものが、本予算を運用して行くその過程において生れて来るというその計算は、二十五年度予算に対しまして、安本、大蔵省、労働省等が精密な計算をしておるのであります。その内容等につきましては、追つて委員会等において申上げます。更に見返資金が撤布されるとどの程度雇用が生れるか。この見通しは三十万乃至四十万人、それから公共事業が昨年五百億円前後であつたものが一千億程度になるといたしますならば、五百億程度におきまして五十万人の人が雇用されておつたとすると、一千億になると共に百万人、二十五年度においてはすでに、増加はこの面から約五十万人が予想される。これらを合せたところの百六十万乃至百七十万というものは、失業対策の中の恒久的或いはやや安定的な雇用力の計算であるという計算を、二十五年度予算としまして私共はいたしておるのであります。それから一方におきまして、先程申しましたように、時間的ズレに対応すべき緊急対策は予算においてどうなつているか。これは緊急失業対策、昨年は一年間を通じて約八億円であつたものが、二十五年度には四十億円になつておりますので、この面から毎日十万人くらいの失業者を救済して行く、現にしております。二十四年度の第四・四半期におきましては、現にこの二十五年度の予算と同じだけの量を消化しておるのであります。更にそれから職業補導の方法を充実することによつて毎日約五万人を消化して行く。  それから最後には、失業保險であります。失業保險は幸いにして健全な経理状態を辿つておるのでありまして、差当つて一般の失業保險においては四十五万人前後の吸收の計画を立てておりまするけれども、現在政府の予備金を使い、更に積立金をも使うといたしましたならば、八十五万人までは何らの苦痛なくして吸收できる計画ができ上つております。従つて二十五年度においては、最低四十万人、非常の場合においては八十五万人を、一般の失業保險において吸收することができるということを明確に申上げられます。更に本年一月から給付を開始いたしましたところの日雇失業保險、この方面予算的措置はすでに済んでおるのでありますが、毎日十三万人くらい吸收して行くことができる準備ができております。従つてこれらを合計いたしまして六十八万人乃至百十三万人の準備ができております。勿論前の方の安定雇用の性格と失業保險の性格とは、一時的のものと全体の恒久的のものとの差はありますけれども、当面はこの二つを援用することによりまして、二百二十八万乃至二百八十三万を吸收し、或いは雇用の中に持つて行くことができる。そうしてこれを繰返して行くと共に、和田議員も御指摘になりましたように、失業対策の根本は政府全体の経済政策の中にあるのでありまして、一労働大臣の手中などにはないのであります。(笑声)我が内閣の全体の政策が成功する日を待てば、失業問題は決してたやすい問題ではありませんけれども、皆さんの申しますようなそういう段階に突き当るということはない、この予算においてそれだけ準備をしておりますということを申上げて置きます。
  12. 和田博雄

    和田博雄君 各所管大臣の私に対する答弁の中に、問題を全く取り違えて池田君及び青木君は答弁された。従いまして私はこれに対して甚だ不満であるという意思を表明し、委員会において徹底的にやるということを申して置きます。
  13. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 国務大臣演説に対する質疑は尚ございますが、議事の都合により本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 佐藤尚武

    ○議長(佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十四分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、新議員の紹介  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)