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1950-01-23 第7回国会 参議院 本会議 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年一月二十三日(月曜日)    午後四時三十七分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第七号   昭和二十五年一月二十三日    午後三時開議  第一 国務大臣演説に関する件  第二 最高裁判所裁判官国民審査管理委員選挙     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際、新たに議席に着かれました議員を御紹介いたします。議席第百十番、地方選出議員、兵庫県選出岡崎真一君。    〔岡崎真一起立拍手
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 議席第百七十番、地方選出議員、福岡県選出吉田法晴君。    〔吉田法晴起立拍手〕      ——————————
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) この際、お諮りいたします。米国議会制度並びに運営状況を視察のため、高田寛君、大野木秀次郎君、櫻内辰郎君、波多野鼎君から、それぞれ四十一日間請暇の申出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。吉田内閣総理大臣青木国務大臣及び池田大蔵大臣から発言を求められております。これより順次発言を許可いたします。吉田内閣総理大臣。    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 第七国会開会に際し、ここに施政方針を述ぶるは、私の欣快とするところであります。 終戰以来四ケ年有余、同情ある外援国民努力により、食糧事情は緩和せられ、生産漸次回復し、貿易も又増進し、財政均衡を得ると共に、インフレ終熄し、今や国家復興鮮らんとする国民意気頓に旺盛なるの概あるは、誠に御同慶至りであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、笑声、拍手)  経済の安定は自然政情の安定を促し、民主主義国民の間に根柢を固め、健全なる発達をいたしております。過激思想に対し国民は正確なる判断の下にこれを支持せざる事実は、しばしば行わるる各種選挙によつて各政党の得票に徴し明瞭であります。労働運動は、矯激挑発的傾向より、合法手段によりて労働段級利益保護増進に努めんとし、穏健なる歩調を辿つております。我が政治経済の安定は、自然、連合国好意と期待とを以て迎えられ、対日講和の機運を釀成しつつあるは、諸君の御承知通りであります。  さて、隣邦諸邦の状況を顧みますると、中国の政情は甚だしく安定を欠くのみならず、その外交関係において頻りに紛糾を加え、東南アジアも又共産分子活動に非常な脅威を感じているのであります。極東の平和のために誠に憂うべき事態であると考うるのであります。この間ひとり我が国復興再建の曙光に一層の希望を抱き、新年を迎えて新日本建設決意を新たにするの状あるは、邦家の大慶と申すべきことでございまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)又国民講和実現国家復興、東洋の平和のために相率いてますます努力をいたすべきときであると考うるのであります。幸いに講和條約成り、国際団体の一員として再び国際間に活動の自由を得るにおきましては、我が国民は一段の矜持を高むると共に、新たなる希望に燃えて政治経済活動に一層の光彩を加うるに至るものと考えます。その機会の一日も速かに到来せんことを切望して止まないのであります。  さきに臨時国会において講和問題につき種々論議せられましたが、全面講和の何人もこれを希望いたすことはもとよりでありますが、これは一に国際客観情勢によることでありまして、この客観情勢我が国現状において如何ともできないところであります。(「何故努力しない」と呼ぶ者あり)又我が国将来の安全保障につき、多大の関心の生じていることは当然のことでありますが、我が憲法において嚴正に宣言せられたる戰争軍備放棄趣旨に徹し、平和を愛好する世界の輿論を背景に、飽くまでも世界の平和と文明と繁栄とに貢献せんとする国民決意それ自身が、我が国安全保障の中核をなすものであります。(拍手戰争放棄趣旨に徹することは自衛権の放棄を意味しておるのではないのであります。(「不明瞭だよ」と呼ぶ者あり)我が国家の政策民主主義平和主義に徹底し、終始この趣意を嚴守して行動せんとする国民決意が、平和を愛好する民主主義国家信頼確保するにおきましては、この相互信頼こそ、我が国を守る安全保障であり、又この相互信頼が、民主国家相互利益のため、我が国安全確保の途を講ぜんとする国際協力を誘致するゆえんであると信ずるのであります。今回ここに提出いたしました明年度予算は、本年度同樣、総合均衡予算原則を堅持いたすものであります。又既定の経済安定復興政策を更に積極的に遂行いたさんとするものであります。総合均衡予算既往昭和六年以来初めて現内閣においてここに編成せられたものであります。ただに真の均衡確保し得たるのみならず、明年度は、本年度に比し約八百億円の歳出入節約を断行し、九百億円の減税実現し、約一千億円の公共事業費を計上し、我が国経済積極的復興を図ると共に、教育費に約四百億円、災害復旧に四百七十億円、失業対策等社会政策諸費に五百六億円、その他の重要な行政費相当額を計上し、国民生活の安定、向上に資せんとするものであります。  税制改革国民多年の要望であり、又政治の源であります。政府シヤウプ博士勧告に基き、前国会に引続き、中央地方を通じ、全面的税制の大改正を行わんといたしておりまするが、尚、進んでますます行政簡素化、官庁、官業の合理化乃至統合を遂行して、更に、財政の緊縮、課税軽減を行い、尚、地方行政調整委員会議調査と相持つて地方制度をも改革し、健全なる自治の発達地方財政の確立を図らんとするものであります。地方県民諸君政府趣旨のあるところを了解せられ、地方制度簡素化、支出の節約府県民の負担の軽減を自主的に実現して、政府協力せられるよう切望して止まないのであります。  政府は、今回の公務員給與ベースに関する人事院勧告には応じ難しとの結論に達したのであります。現給與は、実質的には昨年三月改定せられたものでありまして、爾来物価逐月低落傾向にあるにも拘わらず、若し給與引上げを行いまするならば、遂に物価賃金の悪循環を引起し、再びインフレーシヨンに逆行いたすと考えられまするから、減税各種手当の適正なる支給、社会施設充実整備等実質賃金向上において、公務員生活保証に努めんとするものであります。併し政府も目下の給與を以て甘んずるものではないのであります。財政の余裕を持つて更に検討を加えたき考えでありますから、公務員諸君も暫らく忍んで国力回復協力せられんことを切望いたします。  統制整理撤廃は我が党年来の政策であつて政府も努めてその実現に力をいたして、統制品目の大部分を整理いたしましたが、明年度において更に大幅にこれを減少し、残存品目はこれを最小必要限度に止めたい見込であります。(拍手)  鉱工業年度生産は、戰前の八〇%に達し、二昨年に比し二割余の増加を示しておりまするが、殊に質的方面における向上跡顯著なるものがあります。貿易は漸次増進し、昨年の輸出は一昨年の倍額に上つております。最近、輸出入共管理貿易より民間自由貿易に移行せしめておりまするが、尚、他面、通商協定海外渡航政府出先機関、商社の支店設置船舶増加に伴う可及的自国船による通商等貿易條件改善に力をいたしております。  食糧問題は著しく好転いたしておりますが、政府は、能う限り国内食糧を増産いたしまして、自給度向上を図るべき根本方針を飽くまでもこれを堅持いたしたいと思つておるのであります。又新たに農政審議会を設け、農地改良保全、農産物の最低価格維持等農家経済改善安定に資する施策に万全を期したいと考えておるのであります。  その他重要なる諸般の問題につきましては、主管閣僚において説明するところによつて承知を願いたいと思います。  最後に特に一言いたしたいことは、海外抑留同胞のことであります。今尚、ソ連地区に残留しておる多数同胞実情調査に関しましては、先般東京においてシーボルト議長の下に開かれたる対日理事会の討議に基きまして米国及び濠洲政府の採られたる措置に対し、政府は深甚なる謝意を表したいと思うのであります。政府は引続き本問題の迅速満足なる解決に全力を傾倒いたしたいと考えておるところであります。(拍手
  9. 佐藤尚武

  10. 青木孝義

    国務大臣青木孝義君) 本日、第七国会の再開に当りまして、日本経済に関する諸情勢重要施策につき一言申述べる機会を得ましたことは、私の欣快とするところであります。  我が国経済の諸情勢が、昨年春の均衡予算編成と單一為替レート設定中心とする経済安定諸施策実施によつて、急速に安定化の途を辿つて参りましたことは、先ず以て御同慶至りに堪えないところであります。(拍手)  日銀券発行高は、一昨年末の三千五百五十三億円から昨年に入りまして收縮を続け、七月末二千九百五十五億円に相成り、年末は一昨年末とほぼ同額を以て越年し、概ね正常な季節的変動の型に落着く姿を見せておるのであります。物価につきましても、補給金削減為替レート設定等に伴い若干公定価格の値上りはありましたが、一方、自由価格は昨年以来低落を続けておりますので、これらを総合いたしました実効物価は、昨年初頭以来大体同一水準にあり、平均賃金も概ね横這いの状態であります。これらの経済諸指標について見まするのに、我が国経済はここに、ほぼ安定の線に立帰りつつあると申上げ得るのであります。  右のごとく我が国経済は、正に安定の傾向著しきものがありますと共に、生産は昨年度に比して二割程度上昇を示し、需給均衡は次第に回復して参りました。かような情勢に応じ、政府統制大幅廃止に努めつつあり、この統制廃止需給均衡は、自由競争範囲拡大して、企業経営合理化を初め、経済の一般的な正常化に大いに貢献しているのであります。(拍手貿易について見ましても、輸出は、海外市況の不振、ポンド切下げ等、困難な條件の下においても、全国民協力努力によつて、昨年度に比して二倍近くに上昇する予想であります。かく経済が安定し、生産貿易上昇したので、国民生活もおのずから落着きを示す傾向にあり、これらはいずれも我が国経済の各分野において拂われた全国民経済再建への努力と熱意によるものでありまして、ここに深く感謝の意を表するものであります。(拍手)  併しながら一歩顧みて我が国民経済基盤思いをいたしますならば、我が国は未だ巨額の輸入超過状況を免れず、その赤字は一に米国の援助によつて賄われていることは御存じの通りであります。又国土復旧は思うに任せず、企業資本は減耗し、我が国経済の将来の発展基礎は未だ十分でないと言わなければならないのであります。更に目前の問題といたしましても、産業資金確保の困難、一部商品の相対的過剩と輸出入滯貨等現状から、生産の伸び悩みの傾向も見られるのであります。  以上申述べましたような残された長期的な問題と共に、我々の当面している現実の諸困難を打開して、我が国経済の真の自立を得るためには、尚、各界の一層の努力によつて国民経済規模の着実な拡大に努めなければならないと信ずるのでありまして、以下これがための重要なる諸施策について所見を申述べたいと存ずる次第であります。  先ず貿易振興策でありますが、貧弱な国土資源の下に厖大な人口を抱えている我が国経済としては、将来の自立発展は一にかかつた貿易振興にありと申しても過言ではないのであります。政府といたしましてもこの点に施策の最重点を置き、これが推進について鋭意努力している次第であります。  先般第六臨時国会において成立を見ました外国為替及び外国貿易管理法の施行は、終戰後我が国貿易にとつて正に画期的な意義を有するものでありまして、すでに諸般の法令の整理もほぼ完了し、輸出貿易につきましては、昨年十二月一日から政府許可制度原則としてこれを廃止し、業界は従来の煩雑な手続から解放されて、極めて自由に輸出業務に従事することができることとなりました。又輸入貿易につきましても、本年一月一日から従来の政府輸入が大幅に民間輸入に切り替えられ、すでに本年一月乃至三月分として受取勘定一億七千百万ドル、支拂勘定一億四千八百万ドルの外貨予算編成が完了いたし、民間輸入実施の第一歩を踏み出すことになつたのであります。かくしてここに民間貿易の領域は著しく拡大せられ、業界創意と経験による貿易規模拡大に期待するところ誠に大なるものがあると申さなければなりません。  併しながら貿易飛躍的増大を期するためには、これと同時に更に各般施策が強力に推進せらるることが必要であります。  先ず第一に、海外輸出市場拡大を図ることが最も重要であります。これがため貿易協定範囲を更に拡大して行きますと共に、協定運用に当つて協定国相互間において積極的に買い進むことによりまして、協定額拡大的均衡を達成することが期待されるのであります。更に戰前において我が国貿易の五〇%以上を占めていたアジア諸地域との貿易につきましては、その我が国貿易の上において占める地位の重要性に鑑み、極力その回復増大を図つて行きたい次第であります。これがため我が国買付市場を極力これらの地域に転換する等の措置により、これらの地域における輸入力不足の打開に資したい所存であります。  第二に、貿易條件改善を図ることが刻下の喫緊事であります。すでに昨年来、連合諸国好意により、或いは外貨保留制度運用等によりまして、貿易関係者海外渡航は相当件数に上つており、いわゆる「めくら」貿易打開に貢献しておりますると共に、昨年秋にはフロア・プライス制度が撤廃になり、又本年一月からCIF輸出FOB輸入取引実施されることになり、大いに取引條件改善が期待されることになつたのであります。政府といたしましては、今後とも貿易関係者海外渡航を更に促進いたし、且つ通商代表海外派遣を速かに実現すると共に、海外市場調査機能を整備強化して、「めくら」貿易打開のために一層努力し、併せて邦船外航就航を期待して外航船の建造を促進し、貿易收支改善を図りたい所存でございます。  第三に、国際物価低落傾向海外市場のいわゆる買手市場化傾向、及びポンドを初めとする各国の為替切下げ等により、輸出面における競争は誠に熾烈を極めているのでありまして、この間に伍して我が国輸出貿易を伸長させて行くためには、産業の全面的な合理化推進が要請せられるのであり、輸出コスト切下げ品質改善に向つて産業挙げて努力を傾倒しなければならないと考える次第であります。政府といたしましても、産業合理化推進に積極的に協力して参りますと共に、特に輸出産業につきましては、資材資金等確保において最優先の取扱をなし、これが育成努力して行きたい所存であります。  以上の諸施策につきまして、幸い連合諸国好意ある配慮を得て、国民挙げて貿易第一のために努力を惜しまないならば、貿易振興は期して待つべきものがあると信ずるものであります。  尚この際外資導入について一言いたします。申すまでもなく日本経済再建のためには外資導入に期待するところ誠に大なるものがありますが、政府といたしましては、目下利子利潤等海外送金確保外国人課税に対する特例等につき、その具体的方策を鋭意検討いたしておる次第でありまして、これらの施策により、又国内経済安定向上の趨勢とも相待つて外資導入は今後大いに促進されるものと信ずるものであります。  次に生産について申述べますと、戰後我が国鉱工業生産国民各位努力政府施策とによりまして逐年増加の一路を辿り、戰前比約八割の回復を示すに至つております。併し国際経済への全面的参加を急ぐべき日本産業の立場から考えまするならば、原材料及び製品の品質向上コスト及び原單位の引下げ労働能率改善等、緊急に解決を要すべき重要な問題が幾多残されていると言わなければならないのであります。もとよりかような企業合理化への努力は、昨年以来の経済正常化の進捗に伴い著しく推進されつつあり、すでに相当程度成果收めつつあることは誠に喜ばしいところであります。政府といたしましては、今後企業合理化を尚一層推進するために各企業がみずからの創意工夫を生かして自主的な合理化努力をなし得るよう、又、自由競争原理導入により各企業競つて経営合理化を進め、その成果收め得るよう、そのための諸條件を整えることに万全を期して行きたい所存であります。最近における経済統制の大幅の廃止は、かかる見地から見て極めて重要な意義を有するのであります。即ち当初二百五十二品目に及んでいた指定生産資材に関する割当統制は、昨年中における大幅に統制廃止に引続き、更に本年に入り八十一品目統制廃止した結果、現在概ね四分の一程度に縮小するに至つております。又、物価統制についても逐次その幅を縮小して現在概ね二分の一程度になつております。今後も更にこの方針を推し進め、経済正常化基盤育成して行く所存であります。更に又、各企業がみずからの合理化を全面的に推進するためには、当然老朽設備補修改良近代的設備導入が要求せられ、これれによる労働能率向上と、それらの前提となるべき工業技術改善が切実に要請されるのであります。又この点につき、今後積極的な外資導入に伴い、新らしい技術導入が期待せられているのでありますが、政府といたしても、工業技術振興技術導入に一層の努力を傾けて行きますと共に、産業設備合理化のためのいわゆる合理化資金確保に支援を惜しまぬ方針でありますが、各企業に対しては、更に一層合理化への努力を拂うよう重ねて要望して止まぬ次第であります。  尚、ここで中小企業の問題について申上げます。我が国における中小企業国民経済において占むる役割の誠に重要なことについてはすでに御承知通りでありまして、殊に当面する輸出振興の建前から申しましても、これら中小企業がみずから経営合理化して、その特質を発揮し、十分その使命を達成し得るか否かは、今後の日本貿易に至大の関係を有するものであります。政府といたしましても、我が国中小企業実情に即しつつ、その企業内容の強化、金融上の措置技術指導等につき許す限りの努力を傾けておる次第であります。更にこれらの施策と関連して資産再評価の問題を控えております。政府はこれによつて企業資本の充実を促進し、経営正常化に貢献することを期待しているのでありますが、その実施に当つてはできるだけ企業経済実情に即した方法により、実施の円滑と成果を期して行きたい所存であります。  以上のごとき産業合理化への努力によつて我が国経済は逐次その基礎條件を強化して行くべきことが期待せられるのでありますが、更に今後における我が国人口構成と、これに応ずべき国民経済規模産業構造等をも併せて深く思いをいたしますならば、我が国経済自立発展基盤は尚脆弱たるを免れないのでありまして、この際敢えて各般の困難を克服しつつ能り限り我が国経済基盤育成健全化を図り、以て将来に備うべきことが要請せられるのであります。このため政府は、例えば我が国生産力の基幹となるべき電源開発につきあらゆる努力を重ねてその実施推進に努める外、鉄鋼、石炭等重要産業生産設備更新改良等を更に積極的に進めますと共に、外航路建造等にも力を盡して行きたい所在であります。  経済基盤育成の問題は更に農業生産についても同じく重要なるものがあります。農民諸君の久しきに亘る努力輸入食糧増加等により、最近における食糧事情は著しく緩和せられて来たのでありますが、この半面、農村人口増大農業経営零細化農家所得減退等によつて農業経営は困難を加えつつあります。而して、いわゆる農村インフレによつて蔽われていた農業生産基盤の脆弱さが漸く表面化せんとするやに懸念せられ、殊に将来日本農業外国農業競争関係に立つべきときをも考えますると、幾多重大な問題を将来に控えていると言わなければならないのであります。政府は、ここに思いをいたし、農業生産基盤確保のために、耕地その他の災害復旧や水利及び土地改良等農地改良造成その他の農業施策国力の許す限り促進して、農業経営の安定に資したい所存であります。尚、水産については連合国好意による漁区の拡張が認められ、漁獲高も漸次回復して参りましたが、今後におきましても、水産物が国民蛋白質給源として最も重要であることに鑑み、特に水産資源保持育成とその利用の高度化推進して行きたいと考えるのであります。  併しながら只今申上げましたような鉱工業農業等各部面における国内資源利用開発に当つては、その施策は最も総合的且つ基本的なるを要するのでありまして、政府は、これがため今後更に広く、治山、治水、利水、電源開発、及びこれに関連した産業立地等について総合的な国土開発と強力なる建設を推し進めて行きたいと存ずるのであります。  併しながら、以上のように生産を充実し、経済基盤育成するための諸施策実施するに当つては、特に所要の設備資金確保の問題に当面するのであります。先ずこの点につき重要な役割を果すべき見返資金運用でありますが、政府はもとよりその早期有効なる運用に一層の工夫改善を凝らして行く所存でありまして、これにより効果的且つ迅速な役資目的の達成を目指すものであります。二十五年度の見返資金総額は前年度からの繰越を加え約千五百八十億円と見積られ、その運用に当つて国有鉄道通信事業国有林野等に使用する外、住宅建設や道路、河川工事等公共事業に対しても相当額を活用することとし、更に私企業につきましては、現下喫緊電源開発船舶の新造及び改造の外、重要鉱工業及び農業面に対しても投資の円滑を期して行きたい考えであります。又、二十五年度におきましても、相当額政府債務の償還により、大量の資金金融機関に還流することが予想せられております。  政府はこの還流資金が有効なる投資に向うよう、日本銀行の市場操作中心とする活溌なる融資斡旋等に期待しますと共に、更に日本興業銀行その他長期金融機関の増資による債券発行拡張等融資活動積極化を図らんとするものであります。尚又、増資起債によつて企業自己資金調達円滑化を図る等、これらの証施策を併せて正常なる長期資金供給に力をいたします外、預金部資金産業資金への活用についても、その実現を期する所存であります。このような諸方策に即応した金融機関の積極的な協力によりまして、健全にして正常なる金融確保せられると共に、金利の引下げによる生産コスト引下げをも期待して止まぬのであります。  更に政府は、セメント、鉄鋼等の良好な生産現況に鑑み、財政面におきましても、災害復旧治山治水等重点を置いた公共事業費増加住宅資金新規計上等建設資金確保財政力において許す限りの努力を示しますと共に、これらの面からも有効需要雇用機会増大に資せんとしたのであります。  以上申述べました施策を適時適切に実施いたしました場合の昭和二十五年度生産貿易の見通しにつき、ここに一言いたしますならば、概ね次の通りであります。先ず二十五年度鉱工業生産は二十四年度に比しまして約二割の上昇が期待できるのであります。今重要部門について一応推算いたしますと、一部機械類非鉄金属等で、補給金削減需給関係等により生産上昇を期待し難いものもありますけれども、重要基礎資材について見れば、例えば電力は約三百八十億キロワツト・アワー、普通鋼々材約二百五十万トン、セメント約四百万トン等を予想せられるのであります。これらの数字を昭和七—十一年の水準と比較いたしますと、鉱工業生産は九〇%程度に当り、終戰直後の甚だしい資材難の当時と比べますと格段の上昇復興とを認め得るわけでありまして、又同時に輸入の増大企業合理化の進捗等によりまして、相当なコスト切下げ品質向上を期待し得ると信ずるのであります。他面、貿易におきましても、前に述べました民間貿易体制の実施により、二十五年度は輸入約十億ドル、輸出六億ドルを超ゆるものと予想せられるのでありまして、このうち輸出は二十四年度輸出見込と比較いたしましても二割以上の増加となり、これを併せ考えますれば、一部困難な事情や部面もありましようけれども、全国民の積極的なる問題打開への努力によつて、総じて明るい見通しを抱いてよいと信ずるものであります。  最後に、以上の諸施策と関連して国民生活安定の問題でありますが、申すまでもなく、国民生活の安定は、基本的には生産上昇貿易振興による国民所得の増加物価安定の効果的達成によるべきものでありまして、生産及び貿易については前に申述べた通りであります。物価につきましては、経済正常化の要請から、補給金削減に伴う一部公定価格の引上げ、並びに昨年末以来、貨物運賃、電力料金、消費者米価等の引上げを実施したのでありますが、他面、輸入の増大生産合理化によるコストの低下と、織物消費税、取引高税、物品税等、間接税の撤廃乃至軽減実施、並びにこれに伴う一部自由価格の下落傾向を併せ考えますならば、実効物価としてはその水準に大きな変動はなく、又今後もこの傾向を持続するものと考える次第であります。而してこのような物價水準の下において、政府といたしましては、今後とも物価体系の正常化と三百六十円レートを基準とする国際物価水準への鞘寄せ等、所要の調整に留意して参りたい所存であります。更に又政府はこのような物価安定への一層の努力と共に、税制改革による所得税軽減措置を以て財政事情の許す限り国民負担の軽減を図り、生計費への圧迫を防止して実質賃金の充実に努めることといたした次第であります。  又この実質賃金の充実のためには、衣食住に亘る国民生活の安定がその根本でありますが、この点については当初五十四品目あつた指定配給物資の割当統制は概ね半減し、生活必需物資の需給は全般的に次第に緩和して参つたのであります。特に主食につきましては、今後相当量の小麦、米等の輸入が期待せられますので、政府は配給食糧の質的向上に努めることとしたのでありますが、尚、今後においても需給の見通しが明確になる時期において配給量についても検討を加えたい所存であります。又棉花、羊毛等の原料輸入の増加によつて国民の衣料事情は大いに改善せられ、一人当り四ポンド近くに当る見込でありますが、特に国民の最も要望する綿製品につきましては、現在の見通しでは約二ポンドで、本年度の一倍近くを配給することができる見込であります。更に、依然として深刻な住宅問題に対処いたしまして、公共事業費による庶民住宅の建設、住宅金融機関の創設等の諸施策によつて住宅建設を促進し、住宅不足の緩和を図つて行く考えであります。かくして政府は、実質賃金の充実と国民生活の安定が漸次達成せらるべきことを念願するのでありますが、現在の経済條件の制約の下においては、雇用の問題は極めて重要な問題となるのであります。勿論、雇用の機会は根本的には各種産業活動拡大貿易振興によつて増大して行くべきものと考えるのでありますが、前に述べました通り政府としては一般的な産業及び貿易振興と共に、公共事業費増加や見返資金等による建設投資の促進によつて、積極的に雇用機会増大を図つて行くことに全力を傾注する所信でありますが、この間不幸にして発生した失業者に対しては、失業対策費の適切な運用、失業保險制度等の充実によつてつて参りたい所存であります。  以上我が国経済現状及び将来につき、政府の諸政策と見通しの大要を申述べたのでありますが、これを達観いたしまするに、我が国経済は漸く安定の域に達し、今後更に全国民の積極的な再建への熱意と努力が展開せられ、これと共に施策のよろしきを得まするならば、少くとも二十五年度経済は、本年度に比して一段の前進を期待し得ることと信ずるのであります。併しながら、その前途には国内的にも国際的にも幾多の克服すべき困難な問題が横たわつているのでありまして、国民を挙げて更に決意を新たにすべきことを重ねて要望して止まぬ次第であります。国民経済の真の自立と再建こそ真の政治自立の基本であります。戰後のあの混乱と障害とを切抜けて、ここまで到達することを得た我が国民の熱意と努力とを以てするならば、必ずや明るい希望を以て国際社会に参加し、自立と自由の国民として立つ日の遠からぬことを信ずるのであります。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 池田大蔵大臣。    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  12. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 政府財政金融政策につきましては、先に第六回国会において昭和二十四年度補正予算案の審議を煩わしました際、その大綱を明らかにいたしまして、各方面の批判に問うたのでありますが、ここに昭和二十五年度予算案の提出に際しまして重ねて所信を申述べる機会を得ましたことは、私の最も欣快とするところであります。  昭和二十五年度予算案編成の基本構想は、前国会において申述べましたところと何ら変りはございません。即ち本年度補正予算及び来年度予算案を不可分の一体として取扱い、一年有余に亘る経済界の見通しと照応し、経済の安定及び復興のための諸施策を、本年度に比し一層積極的に、本格的に実現することに努力いたしたのであります。以下本予算案の内容の主なる点を申上げます。  先ず第一は、いわゆる総合予算の真の均衡を堅持したことであります。来年度予算案は、一般会計において歳入歳出とも総額六千六百十四億円余となつておりまして、その他の特別会計及び政府関係機関を通じまして、收支の均衡は嚴に確保いたしております。政府は来年度予算案におきましては、單に量的に收支の辻褄を合せるだけでなく、国民経済財政との調和に最も意を用い、本年度に比し約八百億円にも上る歳出の大幅な節減を断行いたしまして、国民負担の画期的な経減を併せ行いつつ、予算の均衡を確立いたしたのであります。戰前及び戰後を通じて増加の一途を辿つて参りました財政負担が名実共に減少いたしましたことは、実に十数年来のことでありまして、将来の正常財政への第一歩がここに印せられたものと確信いたします。  第二に、歳出を節減いたしました主なるものは、先ず本年度補正予算の場合と同様、価格調整補給金でございます。本年度当初予算に比して、その半額以下の九百億円に止まつておりますが、この価格調整補給金整理によりまする影響は、極力企業努力等によりまして吸收することにし、一般物価への影響は僅少に止め得る見込であります。次に貿易、食糧管理その他の特別会計並びに復金等の政府関係機関に対する一般会計からの繰入、出資等は、本年度の約千二百八十億円に対し、来年度は約二百二十億円と大幅に減少いたしたのであります。これは経済安定の進捗によつて、これらの会計等の運営が正常状態に立戻つて来たことを示すものに外ならないのであります。尚、経済運営の正常化に伴つて政府諸般経済統制、公団方式等についても根本的検討を加え、最少限度必要とする範囲のものを除き、極力廃止する方針の下に著々整理実施し来たつたのであります。その結果、予算の面におきまして、歳出の節約に寄與したところも決して少くないのであります。又本年度に実行いたしました行政整理につきましては、この統制整理に伴う事務の減少とも相待ちまして、その財政的効果を保持することに努力し、人員の増加及び機構の拡充は極めて例外的な場合を除いては計上していないのであります。  第三に、歳出の減少に伴いまして、本格的な税制改革を来年度を期していよいよ実施することにいたしました。その結果、来年度の一般会計歳入中、租税及び印紙收入の総額は四千四百四十六億円となり、本年度に比し七百億円以上の減少を示しておるのであります。本年一月一日からすでに実施されました一部の減税措置を併せて考慮いたしまするなれば、実質的には本年度に対し約九百億円程度減税となりますことは、前国会において申述べた通りであります。  税制改革についての詳細な説明は法案提出の際に讓ることといたしまするが、その大要は、先ず所得税については基礎控除、勤労控除、扶養控除、税率等について、現下の事態に即応するように改正を行うことといたしました。特に勤労控除、基礎控除等につきましては、シヤウプ勧告に示された以上の緩和の措置を講ずることとし、我が国実情に照して国民負担の合理的な軽減を図りました外、高額資産者に対して新たに富裕税を課することといたしました。又、法人につきましては、経済界の実情に即応し、資産の再評価を行い、超過所得、清算所得に対する法人税の課税撤廃し、その経理を適正化することによつて企業経営基礎を確立し、現在最も緊要な資本の蓄積に資することといたました。その他相続税等についても相当大幅な改正を行なつております。尚これと関連いたしまして、政府は近く煙草の値下げを行うことを考慮いたしておるのであります。これらの改正によつて、後にも申述べまするような地方税の改革によりまする若干の負担の増加を考慮いたしましても、国民の租税負担は総体として相当軽減することは明瞭であります。尚、税務行政の面におきましても、シヤウプ勧告の次第もあり、又、今般の税制改革が税法の忠実な励行を前提としておることに思いをいたしまして、その運営の刷新につきまして格段の努力をいたす必要があるのであります。その一端として、政府は徴税機構を更に充実し、他面、青色申告書制度の採用、異議申立に関する協議団の新設等、新らしい制度を採用し、徴税の合理化に資することといたしました。これらの措置と相待つて政府は今後極力納税の円滑化努力する所存でありまするが、国民各位におかれましても、申告の励行、滯納の一掃に特段の御協力をお願いする次第であります。  第四に、公共事業費等、建設的な資金について思いつて多額を計上することにいたしました。先ず公共事業費でありまするが、本年度に対し約六割増の九百九十億円を計上し、災害の復旧、資源の培護、開発等、経済復興基盤の倍養に努め、又従来とかく不十分でありました文教施設につきましても相当額を計上し、その充実を期したのであります。又、鉄道、通信等の事業における建設的な経費につきましても、本年度に比し相当大幅な増額を行なつております。次に、見返資金特別会計におきましても、鉄道及び通信事業の外、公企業及び公共事業に対しても投資することとし、合計四百億円をこれに予定いたしております。この外、私企業に対する直接投資は四百億円程度が可能となる見込であるのであります。従いまして、一般会計、特別会計、政府関係機関を通じ、建設面に向けられた経費の総額は実に二千百五十億円に達するのでありまして、本年度の総額約千二百七十億円に対し約七割の増加と相成るのであります。かくのごとく多額の建設資金を計上することができました結果、今後におきまする有効需要の振起、失業者の吸收、経済の再建に寄與するところが極めて大きいと確信いたしておるのであります。  第五には、引揚者対策、失業対策、困窮者の生活保護、保健及び衛生、その他の社会政策的事業につきましても、相当の多額の経費を計上し、国民生活の安定に資することといたしました。特に住宅対策につきましては、住宅需給現状に鑑み、公共事業費中に、住宅建設資金として三十六億円を計上すると共に、五十億円を出資して住宅金融公庫を設立することとし、又別途百億円に上る見返資金のこの方面への運用とも相待つて、庶民住宅対策に万全を期することといたしたのであります。尚、科学研究費、国立大学関係経費、育英資金、国宝保存費等、文化的な施設につきましても積極的な方針を以て臨み、文化国家としての発展に資しておるのであります。  第六に、本年度予算以来の特色となつておりまする債務償還の問題でありまして、来年度の予算におきましても、一般会計、特別会計を通じて七百八十六億円を計上し、更に見返資金特別会計におきましても五百億円を計上しておるのであります。債務償還は現段階における経済安定の手段として、又、最も確実な資本蓄積の方法として、特に重要視しなければならないのでありまして、今後その運用に当りましては、経済界の推移に即応し、愼重な配慮を以て臨む所存であります。  第七に地方財政の問題であります。シヤウプ報告書は、中央及び地方財政問題を一体として取上げ、地方財政の制度につきましても極めて適切な改革を勧告しておるのであります。政府はその趣旨を汲みまして、地方自治団体の財政基礎充実に資するため、地方配付税制度を廃止して、新たに地方財政平衡交付金制度を創設し、千五十億円を計上いたしました。尚、地方税につきましても、国税体系との関連をも考慮し、附加価値税、固定資務税、住民税の増徴等を行い、その半面、不動産取得税を廃止し、入場税を軽減する等、全面的改革が予定されており、不日、本国会に提出される見込であります。これらの措置に伴い相当の收入が見込まれるので、地方財政は来年度以降格段の充実を示し、地方公共団体の自主的活動を促進することになると存じます。  第八に、本年度予算案編成基礎となつております物価及び給與ベースについて一言いたします。物価は概ね現行の水準を維持するものとし、その基礎の上に立つておりまするが、最近いわゆる消費者実効価格も全く安定いたしており、政府は今後ますますその安定を強化し、更に低落傾向にも導きたいと努力いたしておる次第であります。特に国家公務員給與ベースにつきましては、先般人事院より改訂の勧告もありましたが、政府といたしましては、給與ベースの変更は、これを行わない考えであります。即ち現行のベースが完全に実施せられました昨年三月以降におきまする消費者物価指数は、横這い或いはむしろ低落の趨勢にあるのでありまして、実質給與はその後決して低下していないのが実情であります。又国家公務員給與ベースの改訂は、実際問題として民間給與に相当の影響を及ぼす虞れなしとしないのであります。尚、仮に先般の勧告を実行いたしますとすれば、中央地方を通じて一ケ月当り約五十億円、年額約六百億円の財源を必要とするのでありまして、このためには、一般会計においては予定されておる減税を取止めるか、或いは特別会計においては運賃、料金等の引上げ、地方財政においては平衡交付金の増額或いは地方税の引上げなどの措置を講ずる必要が起つて参るのであります。かような事態に立ち至りますれば、現在我が国経済安定のための基礎的な政策がすべて破壤せられることになるのは明らかであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)賃金水準、物価水準の安定こそは、経済安定のための不可欠の條件であります。(拍手)従いまして、政府といたしましては、給與ベースの改訂を行うという安易な方法を排し、勤労所得について特にシヤウプ勧告以上の減税を行い、又福利施設の充実、消費者実効価格の引下げ等によつて、実質給與向上を図る考えであります。国家公務員諸君におかれましても、経済安定の現段階を篤と認識せられまして、一時の苦しさに堪えて経済安定に協力せられんことを切望いたす次第であります。(拍手)  以上、昭和二十五年度予算案の特色を申述べましたが、財政政策と不可分の関係にありまする金融政策根本方針について、簡單に所見を申述べることといたします。  政府は、本年度予算の実施以来、国民経済に占める金融重要性に鑑み、適時積極的な方策を採ることに努力して来ましたことは御承知通りであります。来年度においては、一般会計、見返資金特別会計、預金部などの政府部門に蓄積せられる資金は相当巨額に上る見込でありまして、今後の金融施策重点は、これらの資金がその他の一般の蓄積資金と共に、我が国経済の再建に真に役立つような方面に積極的に再放出されるように指導調整することにあると信ずるのであります。従いまして政府は巨額の債務の償還に際しましても、その償還資金が日銀を通じ或いは直接市中金融機関から緊要産業に再び放出されるよう適切な指導を加えたいと存じます。又見返資金預金部資金等についても、適時に適量を放出することといたしまして、日本銀行の積極的な市場操作とも相待つて、極力適正な通貨量を維持し、以て経済の円滑な発展を図りたいと存じておるのであります。  資金の供給について政府が従来最も力を注いで参りましたところは、長期設備資金、農林水産関係資金及び中小事業資金の供給の諸点であります。特に長期設備資金の供給については、日本興業銀行その他の金融機関に優先株式を発行せしめ、見返資金がその全額を引受けることによつて、自己資本充実を図り、併せて長期金融債の発行限度を拡充するため、諸般の準備を取急いでおります。本措置によつて長期設備資金の供給は一段と順調になるものと信ずるのであります。次に農林水産関係資金についても、既定方針に基き農林中央金庫の増資を行い、他方同じく見返資金の引受によつて優先株式を発行せしむることを考慮中であるのであります。中小事業金融につきましても、すでに市中銀行を通ずる見返資金融資の制度が発足しておりますが、更に商工組合中央金庫の増資による拡充を行う外、右に準ずる優先株式発行の方法についても鋭意研究中であります。尚、預金部資金については、昨年末百億円を市中金融機関に預託して、銀行のみならず、広く庶民金融機関への資金還元を図り、以て年末金融の緩和に資するところがあつたのでありますが、今後ものその活用について一段と工夫を凝らしたい所存であります。 併しながら長期資金企業の自己資金によつてこれを賄うのが本来の建前でありますから、政府といたしましても企業が自己資金の調達を容易に行い得るような素地を育成することに努力いたしたいと存じます。  これがために必要なことは、第一には、企業経営合理化であります。企業経営合理化はすでに昨年以来相当進捗を示しているところではありますが、今後国際経済との関連の上に我が国企業を再建して行くためには、インフレーシヨンのために不当に歪められました企業の経理を、この際一日も速かに正常な健全な姿に立て直さなければなりません。政府はかかる観点から今回資産の再評価を実施し、企業経理の適正化に資することといたしたのであります。各企業においても、我が国経済の現段階を篤と認識せられ、企業の健全な発達に格段の努力をいたされんことを要望いたしております。  第二には、証券市場の現況に照らし、株式による資金の調達を容易ならしむるため積極的な措置を講ずることであります。証券市場の健全な発達経済再建の重要な條件の一つであることは論を待たないところでありまするが、最近における証券市場は、諸般の原因から意外の不振を示しておるのでありまして、かくては企業の長期資金の調達も困難を来たす虞れがあります。政府はこのような情勢打開するため、先般来証券金融の優遇を図る措置を講じ、又各方面の協力を得まして、日本銀行のオぺレーシヨンの活用、放出株の調節、企業再建整備等によりまする増資の時期的調整、その他株式取引の円滑化を図つてつたのでありまするが、今後とも更に積極的方策を講じ、健全な証券市場の育成投資家大衆の保護を図りたいと存じます。  尚、市中金融機関の一般貸出金利については、我が国経済国際的地位に顧み、この際一層銀行経営の健全合理化を図る必要があり、又産業界における合理化を促進するためにも、貸出金利を更に引下げることを適当と考えまして、二月一日から原則として二厘方引下げを行うことといたしたのであります。  次に、この際貯蓄について一言申上げますと、本年度における貯蓄実績は、昨年末に早くも目標額二千五百億円を突破する好成績を示しました。又預金と通貨の比率、預金総額に占める定期性預金の比率等も、次第に戰前の健全な常態に復帰しつつありますことは、誠に御同慶に堪えないところであります。このような著しい貯蓄成績を挙げ得ましたことは、昭和二十一年十一月、国会の総意に基いて設立せられました通貨安定対策本部の四年有余に亘る活動によるところが実に大きいのでありまして、昨末有終の美を以て解散せられました同本部の多年に亘る御協力に対し衷心よりこの機会に謝意を表する次第であります。(拍手)  次に国際收支の問題について所信を申述べます。国内経済の安定がその緒について今日、速かに国際收支の改善実現することが、今後我が国経済に課せられました最も重大なる課題であることは申すまでもありません。これがためには先ず輸出振興を図ることが大切でありまするが、ポンド切下げ直後一時憂慮せられました輸出の停滞も、最近においては幸いにして完全に回復するに至つたことは御同慶に堪えません。政府としては今後既定の方針をますます推進すると共に、先般確立された新方式による民間貿易の活溌化を図り、又貿易外の收支の改善についても積極的に各般施策推進する予定であります。尚これと関連し、外資導入につきましても、利潤等海外送金、外国人並びに外国資本に対する課税等に問題を速かに解決し、経済再建に貢献する優良な外資導入を期待いたしておる次第であります。外国為替管理につきましては、世界経済に直接連結する態勢の下に、海外金融機関とのコルレス契約の実現等、漸次その途を開拓しているのでありまして、適正な外国為替管理を実施し、信を世界に得たいと考えております。これらのあらゆる施策を通じて、今後における米国の対日援助の漸減に対処し、経済自立の態勢を整えたいと存じておるのであります。  以上、昭和二十五年度予算案を中心として、政府財政金融政策の概要を申述べたのでありまするが、しばしば繰返しましたように、政府政策の基調はデイス・インフレーシヨンでありまして、決してデフレーシヨンではありません。(笑声)況んやインフレーシヨンでないということは言うまでもないのであります。巷間一部では、政府の策及びその結果としての国民経済現状をデフレ的と評し、(「その通り」と呼ぶ者あり)経済不安を云々する者がありますが、その誤まりであることは、主要な経済指数の上に明瞭であります。(拍手)例えば通貨は昨春来特に異常と認められる動きを見せておりません。物価賃金も全く安定しております。(拍手生産水準は上昇しており、昨年十一月のごときは、戰後最高の水準をさえ示しておるではありませんか。かかる状態は、正にデイス・インフレーシヨンであると確信するものであります。(拍手)この現状を率直に認識することを回避して徒らに経済の不安定を説くことは、いわゆる「ためにする議論」に過ぎないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、拍手)  来年度予算は、このすでに築かれましたデイス・インフレの基盤の上に、安定を強化しつつ、国民経済を安定から更に復興へと躍進せしめんとするものであります。これがため、(滯貨をどうするか」と呼ぶ者あり)国民経済に調和するように国の財政規模を縮小し、これに伴つて画期的な減税を断行し、この縮小された範囲内で大幅の債務償還を実現し、他方においては、公共事業費その他の建設資金をできるだけ多く計上し、又見返資金の有効適切な活用によつて、輝道、通信施設の建設、改良、電力、船舶その種の基幹産業の拡充を図つておるのであります。(拍手)かくのごとく、政府施策は耐乏の一面、巨大な建設を予定しておるのでありまして、このような充実した財政政策は、近来我が国にその例を見ないところであります。(拍手、笑声)これらの予算上の施策は、国民経済に健全な資本の蓄積を可能ならしめ、適切な金融政策と相待つて我が国経済の真の再建、生産上昇の素地を作ることに寄與することができると確信いたします。  これを要するに、財政金融政策の全般を通じまして、当座の困難に惑わされ、徒らに施策の緩和を望むような安易な考え方は、絶対に排すべきでありまして、(「その通り」と呼ぶ者あり)予算の運用に当りましても、飽くまでも既定の方針を貫き、先ず経済の安定を強化することに全力を挙げ、然る後、安定せる基盤の上に、安定の度合に応じて経済復興の諸施策を着実に推進して行くことが現下の急務であります。(「そうだ」「その通り」と呼ぶ者あり)私は国民各位政府財政金融政策を十分理解せられ、その一層積極的な御協力を得て、来たるべき昭和二十五年度を、経済安定から復興再建への歩みを進める年とすることを切望して止まないのであります。(拍手)  この一年を全国民努力を以て乘切りますならば、昭和二十六年度には更に減税が可能となり、資金の供給も一層潤沢になり、その他、経済生活のあらゆる面において一段と明るい希望に満ちた年となることを、ここに私は公言して憚からない次第であります。(拍手
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 只今の国務大臣演説に対しまして質疑の通告がございますが、この質疑は明後日に譲りまして、本日はこれにて延会いたしたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。次会は明後二十五日午前十時より開会いたします。議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十六分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、新議員の紹介  一、議員の請暇  一、日程第一 国務大臣演説に関する件