○
国務大臣(池田勇人君)
政府の
財政金融政策につきましては、先に第六回
国会において
昭和二十四
年度補正予算案の審議を煩わしました際、その大綱を明らかにいたしまして、各方面の批判に問うたのでありますが、ここに
昭和二十五
年度予算案の提出に際しまして重ねて所信を申述べる
機会を得ましたことは、私の最も
欣快とするところであります。
昭和二十五
年度予算案
編成の基本構想は、前
国会において申述べましたところと何ら変りはございません。即ち本
年度補正予算及び来
年度予算案を不可分の一体として取扱い、一年有余に亘る
経済界の見通しと照応し、
経済の安定及び
復興のための諸
施策を、本
年度に比し一層積極的に、本格的に
実現することに
努力いたしたのであります。以下本予算案の内容の主なる点を申上げます。
先ず第一は、いわゆる総合予算の真の
均衡を堅持したことであります。来
年度予算案は、一般会計において歳入歳出とも総額六千六百十四億円余とな
つておりまして、その他の特別会計及び
政府関係機関を通じまして、收支の
均衡は嚴に
確保いたしております。
政府は来
年度予算案におきましては、單に量的に收支の辻褄を合せるだけでなく、
国民経済と
財政との調和に最も意を用い、本
年度に比し約八百億円にも上る歳出の大幅な節減を断行いたしまして、
国民負担の画期的な経減を併せ行いつつ、予算の
均衡を確立いたしたのであります。
戰前及び戰後を通じて
増加の一途を辿
つて参りました
財政負担が名実共に減少いたしましたことは、実に十数年来のことでありまして、将来の正常
財政への第一歩がここに印せられたものと確信いたします。
第二に、歳出を節減いたしました主なるものは、先ず本
年度補正予算の場合と同様、価格調整
補給金でございます。本
年度当初予算に比して、その半額以下の九百億円に止ま
つておりますが、この価格調整
補給金の
整理によりまする影響は、極力
企業努力等によりまして吸收することにし、一般
物価への影響は僅少に止め得る見込であります。次に
貿易、食糧管理その他の特別会計並びに復金等の
政府関係機関に対する一般会計からの繰入、出資等は、本
年度の約千二百八十億円に対し、来
年度は約二百二十億円と大幅に減少いたしたのであります。これは
経済安定の進捗によ
つて、これらの会計等の運営が正常状態に立戻
つて来たことを示すものに外ならないのであります。尚、
経済運営の
正常化に伴
つて、
政府の
諸般の
経済統制、公団方式等についても根本的検討を加え、最少限度必要とする
範囲のものを除き、極力
廃止する
方針の下に著々
整理を
実施し来た
つたのであります。その結果、予算の面におきまして、歳出の
節約に寄與したところも決して少くないのであります。又本
年度に実行いたしました
行政整理につきましては、この
統制の
整理に伴う事務の減少とも相待ちまして、その
財政的効果を保持することに
努力し、人員の
増加及び機構の拡充は極めて例外的な場合を除いては計上していないのであります。
第三に、歳出の減少に伴いまして、本格的な
税制改革を来
年度を期していよいよ
実施することにいたしました。その結果、来
年度の一般会計歳入中、租税及び印紙收入の総額は四千四百四十六億円となり、本
年度に比し七百億円以上の減少を示しておるのであります。本年一月一日からすでに
実施されました一部の
減税措置を併せて考慮いたしまするなれば、実質的には本
年度に対し約九百億円
程度の
減税となりますことは、前
国会において申述べた
通りであります。
税制改革についての詳細な説明は法案提出の際に讓ることといたしまするが、その大要は、先ず所得税については
基礎控除、勤労控除、扶養控除、税率等について、現下の事態に即応するように改正を行うことといたしました。特に勤労控除、
基礎控除等につきましては、シヤウプ
勧告に示された以上の緩和の
措置を講ずることとし、
我が国の
実情に照して
国民負担の合理的な
軽減を図りました外、高額資産者に対して新たに富裕税を課することといたしました。又、法人につきましては、
経済界の
実情に即応し、資産の再評価を行い、超過所得、清算所得に対する法人税の
課税を
撤廃し、その経理を適正化することによ
つて、
企業経営の
基礎を確立し、現在最も緊要な
資本の蓄積に資することといたました。その他相続税等についても相当大幅な改正を行な
つております。尚これと関連いたしまして、
政府は近く煙草の値下げを行うことを考慮いたしておるのであります。これらの改正によ
つて、後にも申述べまするような
地方税の改革によりまする若干の負担の
増加を考慮いたしましても、
国民の租税負担は総体として相当
軽減することは明瞭であります。尚、税務
行政の面におきましても、シヤウプ
勧告の次第もあり、又、今般の
税制改革が税法の忠実な励行を前提としておることに
思いをいたしまして、その運営の刷新につきまして格段の
努力をいたす必要があるのであります。その一端として、
政府は徴税機構を更に
充実し、他面、青色申告書制度の採用、
異議申立に関する協議団の新設等、新らしい制度を採用し、徴税の
合理化に資することといたしました。これらの
措置と相待
つて、
政府は今後極力納税の
円滑化に
努力する
所存でありまするが、
国民各位におかれましても、申告の励行、滯納の一掃に特段の御
協力をお願いする次第であります。
第四に、
公共事業費等、
建設的な
資金について
思い切
つて多額を計上することにいたしました。先ず
公共事業費でありまするが、本
年度に対し約六割増の九百九十億円を計上し、災害の
復旧、資源の培護、
開発等、
経済復興の
基盤の倍養に努め、又従来とかく不十分でありました文教施設につきましても
相当額を計上し、その
充実を期したのであります。又、鉄道、通信等の事業における
建設的な経費につきましても、本
年度に比し相当大幅な増額を行な
つております。次に、見返
資金特別会計におきましても、鉄道及び
通信事業の外、公
企業及び
公共事業に対しても
投資することとし、合計四百億円をこれに予定いたしております。この外、私
企業に対する直接
投資は四百億円
程度が可能となる見込であるのであります。従いまして、一般会計、特別会計、
政府関係機関を通じ、
建設面に向けられた経費の総額は実に二千百五十億円に達するのでありまして、本
年度の総額約千二百七十億円に対し約七割の
増加と相成るのであります。かくのごとく多額の
建設的
資金を計上することができました結果、今後におきまする
有効需要の振起、失業者の吸收、
経済の再建に寄與するところが極めて大きいと確信いたしておるのであります。
第五には、引揚者対策、失業対策、困窮者の生活保護、保健及び衛生、その他の社会
政策的事業につきましても、相当の多額の経費を計上し、
国民生活の安定に資することといたしました。特に住宅対策につきましては、住宅
需給の
現状に鑑み、
公共事業費中に、住宅
建設資金として三十六億円を計上すると共に、五十億円を出資して住宅
金融公庫を設立することとし、又別途百億円に上る見返
資金のこの方面への
運用とも相待
つて、庶民住宅対策に万全を期することといたしたのであります。尚、科学研究費、国立大学
関係経費、育英
資金、国宝保存費等、文化的な施設につきましても積極的な
方針を以て臨み、文化
国家としての
発展に資しておるのであります。
第六に、本
年度予算以来の特色とな
つておりまする債務償還の問題でありまして、来
年度の予算におきましても、一般会計、特別会計を通じて七百八十六億円を計上し、更に見返
資金特別会計におきましても五百億円を計上しておるのであります。債務償還は現段階における
経済安定の手段として、又、最も確実な
資本蓄積の方法として、特に重要視しなければならないのでありまして、今後その
運用に当りましては、
経済界の推移に即応し、愼重な配慮を以て臨む
所存であります。
第七に
地方財政の問題であります。シヤウプ報告書は、中央及び
地方の
財政問題を一体として取上げ、
地方財政の制度につきましても極めて適切な改革を
勧告しておるのであります。
政府はその
趣旨を汲みまして、
地方自治団体の
財政基礎の
充実に資するため、
地方配付税制度を
廃止して、新たに
地方財政平衡交付金制度を創設し、千五十億円を計上いたしました。尚、
地方税につきましても、国税体系との関連をも考慮し、附加価値税、固定資務税、住民税の増徴等を行い、その半面、不動産取得税を
廃止し、入場税を
軽減する等、全面的改革が予定されており、不日、本
国会に提出される見込であります。これらの
措置に伴い相当の收入が見込まれるので、
地方財政は来
年度以降格段の
充実を示し、
地方公共団体の自主的
活動を促進することになると存じます。
第八に、本
年度予算案
編成の
基礎とな
つております
物価及び
給與ベースについて一言いたします。
物価は概ね現行の水準を維持するものとし、その
基礎の上に立
つておりまするが、最近いわゆる消費者実効価格も全く安定いたしており、
政府は今後ますますその安定を強化し、更に
低落の
傾向にも導きたいと
努力いたしておる次第であります。特に
国家公務員の
給與ベースにつきましては、先般人事院より改訂の
勧告もありましたが、
政府といたしましては、
給與ベースの変更は、これを行わない
考えであります。即ち現行のベースが完全に
実施せられました昨年三月以降におきまする消費者
物価指数は、横這い或いはむしろ
低落の趨勢にあるのでありまして、実質
給與はその後決して低下していないのが
実情であります。又
国家公務員の
給與ベースの改訂は、実際問題として
民間給與に相当の影響を及ぼす虞れなしとしないのであります。尚、仮に先般の
勧告を実行いたしますとすれば、
中央地方を通じて一ケ月当り約五十億円、年額約六百億円の財源を必要とするのでありまして、このためには、一般会計においては予定されておる
減税を取止めるか、或いは特別会計においては運賃、料金等の引上げ、
地方財政においては平衡交付金の増額或いは
地方税の引上げなどの
措置を講ずる必要が起
つて参るのであります。かような事態に立ち
至りますれば、現在
我が国の
経済安定のための
基礎的な
政策がすべて破壤せられることになるのは明らかであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)
賃金水準、
物価水準の安定こそは、
経済安定のための不可欠の
條件であります。(
拍手)従いまして、
政府といたしましては、
給與ベースの改訂を行うという安易な方法を排し、勤労所得について特にシヤウプ
勧告以上の
減税を行い、又福利施設の
充実、消費者実効価格の
引下げ等によ
つて、実質
給與の
向上を図る
考えであります。
国家公務員諸君におかれましても、
経済安定の現段階を篤と認識せられまして、一時の苦しさに堪えて
経済安定に
協力せられんことを切望いたす次第であります。(
拍手)
以上、
昭和二十五
年度予算案の特色を申述べましたが、
財政政策と不可分の
関係にありまする
金融政策の
根本方針について、簡單に所見を申述べることといたします。
政府は、本
年度予算の
実施以来、
国民経済に占める
金融の
重要性に鑑み、適時積極的な
方策を採ることに
努力して来ましたことは御
承知の
通りであります。来
年度においては、一般会計、見返
資金特別会計、預金部などの
政府部門に蓄積せられる
資金は相当巨額に上る見込でありまして、今後の
金融施策の
重点は、これらの
資金がその他の一般の蓄積
資金と共に、
我が国経済の再建に真に役立つような方面に積極的に再放出されるように指導調整することにあると信ずるのであります。従いまして
政府は巨額の債務の償還に際しましても、その償還
資金が日銀を通じ或いは直接市中
金融機関から緊要
産業に再び放出されるよう適切な指導を加えたいと存じます。又見返
資金、
預金部資金等についても、適時に適量を放出することといたしまして、日本銀行の積極的な
市場操作とも相待
つて、極力適正な通貨量を維持し、以て
経済の円滑な
発展を図りたいと存じておるのであります。
資金の供給について
政府が従来最も力を注いで参りましたところは、長期設備
資金、農林
水産関係資金及び中小事業
資金の供給の諸点であります。特に長期設備
資金の供給については、日本興業銀行その他の
金融機関に優先株式を発行せしめ、見返
資金がその全額を引受けることによ
つて、自己
資本の
充実を図り、併せて長期
金融債の発行限度を拡充するため、
諸般の準備を取急いでおります。本
措置によ
つて長期設備
資金の供給は一段と順調になるものと信ずるのであります。次に農林
水産関係資金についても、既定
方針に基き農林中央金庫の
増資を行い、他方同じく見返
資金の引受によ
つて優先株式を発行せしむることを考慮中であるのであります。中小事業
金融につきましても、すでに市中銀行を通ずる見返
資金融資の制度が発足しておりますが、更に商工組合中央金庫の
増資による拡充を行う外、右に準ずる優先株式発行の方法についても鋭意研究中であります。尚、
預金部資金については、昨年末百億円を市中
金融機関に預託して、銀行のみならず、広く庶民
金融機関への
資金還元を図り、以て年末
金融の緩和に資するところがあ
つたのでありますが、今後ものその活用について一段と
工夫を凝らしたい
所存であります。 併しながら長期
資金は
企業の自己
資金によ
つてこれを賄うのが本来の建前でありますから、
政府といたしましても
企業が自己
資金の調達を容易に行い得るような素地を
育成することに
努力いたしたいと存じます。
これがために必要なことは、第一には、
企業経営の
合理化であります。
企業経営の
合理化はすでに昨年以来相当進捗を示しているところではありますが、今後
国際経済との関連の上に
我が国の
企業を再建して行くためには、インフレーシヨンのために不当に歪められました
企業の経理を、この際一日も速かに正常な健全な姿に立て直さなければなりません。
政府はかかる観点から今回資産の再評価を
実施し、
企業経理の適正化に資することといたしたのであります。各
企業においても、
我が国経済の現段階を篤と認識せられ、
企業の健全な
発達に格段の
努力をいたされんことを要望いたしております。
第二には、証券市場の現況に照らし、株式による
資金の調達を容易ならしむるため積極的な
措置を講ずることであります。証券市場の健全な
発達が
経済再建の重要な
條件の一つであることは論を待たないところでありまするが、最近における証券市場は、
諸般の原因から意外の不振を示しておるのでありまして、かくては
企業の長期
資金の調達も困難を来たす虞れがあります。
政府はこのような
情勢を
打開するため、先般来証券
金融の優遇を図る
措置を講じ、又各方面の
協力を得まして、日本銀行のオぺレーシヨンの活用、放出株の調節、
企業再建整備等によりまする
増資の時期的調整、その他株式取引の
円滑化を図
つて参
つたのでありまするが、今後とも更に積極的
方策を講じ、健全な証券市場の
育成と
投資家大衆の保護を図りたいと存じます。
尚、市中
金融機関の一般貸出金利については、
我が国経済の
国際的地位に顧み、この際一層銀行
経営の健全
合理化を図る必要があり、又
産業界における
合理化を促進するためにも、貸出金利を更に
引下げることを適当と
考えまして、二月一日から
原則として二厘方
引下げを行うことといたしたのであります。
次に、この際貯蓄について一言申上げますと、本
年度における貯蓄実績は、昨年末に早くも目標額二千五百億円を突破する好成績を示しました。又預金と通貨の比率、預金総額に占める定期性預金の比率等も、次第に
戰前の健全な常態に復帰しつつありますことは、誠に御
同慶に堪えないところであります。このような著しい貯蓄成績を挙げ得ましたことは、
昭和二十一年十一月、
国会の総意に基いて設立せられました通貨安定対策本部の四年有余に亘る
活動によるところが実に大きいのでありまして、昨末有終の美を以て解散せられました同本部の多年に亘る御
協力に対し衷心よりこの
機会に謝意を表する次第であります。(
拍手)
次に
国際收支の問題について所信を申述べます。
国内経済の安定がその緒について今日、速かに
国際收支の
改善を
実現することが、今後
我が国経済に課せられました最も重大なる課題であることは申すまでもありません。これがためには先ず
輸出の
振興を図ることが大切でありまするが、
ポンド切下げ直後一時憂慮せられました
輸出の停滞も、最近においては幸いにして完全に
回復するに至つたことは御
同慶に堪えません。
政府としては今後既定の
方針をますます
推進すると共に、先般確立された新方式による
民間貿易の活溌化を図り、又
貿易外の收支の
改善についても積極的に
各般の
施策を
推進する予定であります。尚これと関連し、
外資導入につきましても、
利潤等の
海外送金、外国人並びに外国
資本に対する
課税等に問題を速かに
解決し、
経済再建に貢献する優良な
外資の
導入を期待いたしておる次第であります。
外国為替管理につきましては、
世界経済に直接連結する態勢の下に、海外
金融機関とのコルレス契約の
実現等、漸次その途を開拓しているのでありまして、適正な
外国為替管理を
実施し、信を
世界に得たいと
考えております。これらのあらゆる
施策を通じて、今後における
米国の対日援助の漸減に対処し、
経済自立の態勢を整えたいと存じておるのであります。
以上、
昭和二十五
年度予算案を
中心として、
政府の
財政金融政策の概要を申述べたのでありまするが、しばしば繰返しましたように、
政府の
政策の基調はデイス・インフレーシヨンでありまして、決してデフレーシヨンではありません。(笑声)況んやインフレーシヨンでないということは言うまでもないのであります。巷間一部では、
政府の策及びその結果としての
国民経済の
現状をデフレ的と評し、(「その
通り」と呼ぶ者あり)
経済不安を云々する者がありますが、その誤まりであることは、主要な
経済指数の上に明瞭であります。(
拍手)例えば通貨は昨春来特に異常と認められる動きを見せておりません。
物価も
賃金も全く安定しております。(
拍手)
生産水準は
上昇しており、昨年十一月のごときは、戰後最高の水準をさえ示しておるではありませんか。かかる状態は、正にデイス・インフレーシヨンであると確信するものであります。(
拍手)この
現状を率直に認識することを回避して徒らに
経済の不安定を説くことは、いわゆる「ためにする議論」に過ぎないのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり、
拍手)
来
年度予算は、このすでに築かれましたデイス・インフレの
基盤の上に、安定を強化しつつ、
国民経済を安定から更に
復興へと躍進せしめんとするものであります。これがため、(滯貨をどうするか」と呼ぶ者あり)
国民経済に調和するように国の
財政規模を縮小し、これに伴
つて画期的な
減税を断行し、この縮小された
範囲内で大幅の債務償還を
実現し、他方においては、
公共事業費その他の
建設的
資金をできるだけ多く計上し、又見返
資金の有効適切な活用によ
つて、輝道、通信施設の
建設、改良、電力、
船舶その種の基幹
産業の拡充を図
つておるのであります。(
拍手)かくのごとく、
政府の
施策は耐乏の一面、巨大な
建設を予定しておるのでありまして、このような
充実した
財政政策は、近来
我が国にその例を見ないところであります。(
拍手、笑声)これらの予算上の
施策は、
国民経済に健全な
資本の蓄積を可能ならしめ、適切な
金融政策と相待
つて、
我が国経済の真の再建、
生産の
上昇の素地を作ることに寄與することができると確信いたします。
これを要するに、
財政金融政策の全般を通じまして、当座の困難に惑わされ、徒らに
施策の緩和を望むような安易な
考え方は、絶対に排すべきでありまして、(「その
通り」と呼ぶ者あり)予算の
運用に当りましても、飽くまでも既定の
方針を貫き、先ず
経済の安定を強化することに全力を挙げ、然る後、安定せる
基盤の上に、安定の度合に応じて
経済復興の諸
施策を着実に
推進して行くことが現下の急務であります。(「そうだ」「その
通り」と呼ぶ者あり)私は
国民各位が
政府の
財政金融政策を十分理解せられ、その一層積極的な御
協力を得て、来たるべき
昭和二十五
年度を、
経済安定から
復興再建への歩みを進める年とすることを切望して止まないのであります。(
拍手)
この一年を全
国民の
努力を以て乘切りますならば、
昭和二十六
年度には更に
減税が可能となり、
資金の供給も一層潤沢になり、その他、
経済生活のあらゆる面において一段と明るい
希望に満ちた年となることを、ここに私は公言して憚からない次第であります。(
拍手)