○板野勝次君
政府は去る七日、政令三百八十四号で食糧確保のための臨時
措置に関する政令を出しまして、即日施行したのでありますが、この政令の基礎をなします勅令第五百四十二号は、すでにしばしば我が党も
指摘いたしましたごとく、新憲法と共に消滅したものでありまして、明らかに憲法違反であります。吉田
内閣は、憲法無視の
内閣であり、法律無視の
内閣であります。すでに
国鉄裁定の問題をめぐります法律無視の態度によりましても明らかでありまして、今回の政令公布に当りましては、野党各派は直ちに
政府に対して次のように抗議を申入れておるのであります。「
国会提出を避けてポツダム政令で強引に実施した
政府の態度は、民意を蹂躪し、民主主義政治の原則たる議会主義を否認し、全農民に挑戰するものである。
政府の度重なる
国会無視の非立憲的態度に対し、野党各派は挙げてこれに
反対する」と申入書を出しておるのでありまするが、明らかに吉田
内閣が農政に対する全く政治的な貧困を暴露したものというべきでありまして、この政令を出します根拠にな
つたと言われておりますところの主要食糧の集荷に関する件と称するスキヤツピンは、すでに御存じの
通り昨年十二月二十四日附で出されておるのでありまして、すでに一年以前のものであります。而も前々
国会以来
審議を重ねて参りましたのに、
参議院における三日間の
審議では、到底
審議を了することのできない事情にあ
つたのにも拘わらず、この
審議未了にな
つたことを口実にいたしまして、
国会の
審議権を無視するような態度は、断じて私達は農民と共に許すことのできない
政府のフアツシヨ的な態度と断ぜざるを得ないのであります。而も現在一年を経過した今日、何ら緊急性がないということは、すでに農林大臣が食確法
審議の際に強権発動をしないということを言明しておりまするし、更にポ政令を出しまするに当りまして、官房長官も、これは伝家の宝刀である、こういうことを申しておるのでありまして、何ら意味のないものでありますならば、何故に政令を出すに至
つたのか。憲法を無視してまでも政令を出すに至
つたのか。明らかに我々が理解し得られることは、吉田
内閣は農業
政策の失敗を蔽い隠すために政令を以て摺り替えたものである。そうして
国会の
審議権を無視しようとするこのような態度は許されるべきでないのでありまして、速かに
政府はこのような
国会審議権を無視するような政令の撤回をすべきでありましようし、
審議の経過からいたしまして、
審議未了の
責任はむしろ
政府が負うべきでありまするから、この際、
審議未了の
責任を負い、吉田
内閣の農業
政策の貧困であ
つたという全
責任を負
つて、吉田
内閣は即時退陣すべきであると思うのでありますが、総理大臣の率直明快なる答弁を望むものであります。
質問の第二点は、十二月四日号の農業省弘報課が編集しておる「弘報だより」によりまする農相の談によりますると、第六
国会では前回の
参議院の修正案
通り衆議院が可決したにも拘わらず、
参議院においては
審議未了にな
つたと、その談話を発表しておるのでありますが、すでに前の本
会議場におきまして楠見農林
委員長が、増田官房長官の談話に対する一身上の弁明の中にも明らかに
指摘されておりますごとく、
政府のとりました農政自体では、到底農業の増産を確保することができないのであります。我が党は
賛成いたさなか
つたのでありますけれども、これを生かすために食糧増産確保基本法が附帶されておる。この事実を見落して、この「弘報だより」にながながと農相談を、繰り言を重ねておるのでありますが、これは明らかに我が
参議院を侮辱し、我が
農林委員会のと
つて参りました愼重なる態度に対して、全く無視した態度と言わざるを得ないのでありまするし、事実を歪曲するも又甚だしいと言わざるを得ないのであります。これは私は何といたしましても農林大臣の失言であると断ぜざるを得ないのでありますから、本議場を通じて、このような事実を歪曲した談話を取消す意思が農林大臣におありかどうか。
第三点は、又農相談の中には、政令の公布は、
国会を含む
国民全体の
責任において、ポツダム宣言受諾下に余りにも当然な道としてや
つたんだ、こういうふうに談話を発表されておるのでありますけれども、これは明らかに
政府の
責任回避の繰り言に過ぎないのでありまして、吉田
内閣の無為無策であると申しまするよりも、むしろ農民をいわゆる特約的な賃金奴隸にしようとしておるものでありまして、指令を具体化するに当りまして、これをむしろ悪用し、そうしてポツダム宣言の受諾の精神を農林大臣自身蹂躙しておるものと言わざるを得ないのであります。果して農林大臣はポツダム宣言をどのように理解しておられるのか。ポツダム宣言の中には、日本の
国民を奴隸化しないこと、平和産業は無條件に拡大されるべきであること、
〔副
議長退席、
議長着席〕
更に軍国主義を徹底的に拂拭して民主主義的な傾向の復活強化に対するすべての障害を除去しなければならない、このことが
指摘されておるのにも拘わりませず、この民主主義的な傾向に逆行するような天下り的な処置をと
つた、正に民主主義に反する農林大臣こそ追放されるべきものでありましようが、果して農林大臣はこのポツダム宣言を如何に理解しておられるか。この機会に、果して農林大臣がお読みにな
つておられるかどうかさえも疑わしいのでありまして、この理解に対する態度について承わりたいと思うのであります。
第四点は、私はすでに
農林委員会においても
指摘した点でありますが、昨年の食確法
審議の際におきまして、農林大臣は当時野党の
立場において次のようなことを
言つておられます。それは食確法自体に対する森農林委員の態度として、「この法律に、農民が納得するような
割当をするといううまい
言葉を使
つておられるが、これはカモフラージユした一つのやり方であ
つて、やはり強制的な供出を行わせなければならないという結果になるのではないかと思うがどうか」と
言つて政府に迫られておる。更に報奬
措置につきましても、「
政府は供出に対してどういう奨励の
措置を講じておられるか。供出以外のものに対しては三倍で買う、これが奬励の
措置とは言えないではないか」と
言つて追及され、「価格の面におきましても
生産者が満足するような価格にして、報奬物資で釣るということは止めてはどうか」、「無理な供出
割当と、そうして課税が苛酷であるために、耕地の返還が非常に多いではないか」、こういうふうなことについて報奬
措置に対する森農林委員の見解を明らかにされ、更に供出のやり方につきましては、次のように
速記録には書いてあります。「この田からはこれだけ穫れるからこれだけの余分が出て来る。それが部落から町村、町村から郡、郡から県に集ま
つて、何処の県は「いも」はどれだけ、米はどれだけ供出する能力がある。それが本当の供出の
割当だと思う。今は大まかに知事をして、これは連合軍とも相談したのだからということで、これだけ供出せよと上から天下り的にやる。ここに無理な、適正ならざる不合理な
割当があると思う」と
言つて追及されておるのであります。当時私はスキヤツピンに基く改正案が上程されました時に、この
速記録を引用して農林大臣の見解を質した。果してこのごとき
言葉をそのまま農政の上に実現しようとしておられるか。若しこのことが実現できなか
つたならば潔く農林大臣の椅子を退くべきではないか。(要らんこつちや」と呼ぶ者あり)それこそ真に農政を生かす途ではないかということを迫
つたときに、農林大臣は今尚その信念に変りはないが、年度の途中であるから実現でき得ないということを言われたが、すでにその
言葉を聞いて八ケ月、果して農林大臣が就任以来農村のために何をやられたのでありましよう。スキヤツピンの第一には、主要食糧をでき得る限り
最大限に集荷するということと同時に、次には主要食糧の
生産と供出に対して、農民に報奬を與える
措置をも含めて、主要食糧の
生産を
最大にする必要の処置を講ずる点が
指摘されておるのであります。然るにも拘わらず、このような報奬の
措置に対しては、逆に超過供出の買上げ価格を三倍から二倍に切下げて行く。
民自党みずから選んで参りました米価
審議会の米価
決定に当りましても、それを下廻るような低米価を押し付けて来、更に農村の必要とする肥料その他の物資におきましても大幅な値上をされて来ておる。明らかにスキヤツピンの
指摘いたしております報奬
措置どころか、逆に農村を虐待するような
措置でありまして、何ら改善の跡は一つも認めていないのであります。農産物と工産品とのシエーレの差は拡大し、農家の預貯金は減少して、負債はますます大きくな
つて行く。租税の
負担はますます過重にな
つて来ておるのでありますが、果して農林大臣が就任されて以来今日まで如何なる改善の跡を示されたか。私はただ農林大臣が、吉田
内閣が米券制度以外には何ら農政改革の意図のなか
つたことが、その八ケ月間において明らかにされておると思うのであります。このような何ら農政を改善することのできなか
つた農林大臣が、果して農林大臣の椅子に就き得る状態にあるかどうか。潔く、農政が実現し得ないのならば、この際農林大臣の椅子を退いて、何故に我が国の農業が保護されないかの事実を全農民の前に明らかにしてこそ、真に農林大臣としての、政治家としての進むべき途があると思うのであります。農林大臣のこの点に対する見解を伺
つて置きたいのであります。
第五の点は、農臣大臣は農業恐慌につきまして、外国の安い食糧が窓を開いて入
つて来る(「時間だ」と呼ぶ者あり)こういうふうな誤解の上に立
つておりますけれども、現在の農業恐慌は、大資本本位の
統制政策から来ますところの低賃金
政策、低米価
政策による恐慌を断じて見逃すことができないのであります。外国食糧も上陸しまして日本の低米価格
政策に遭
つてむしろ顔負けをするような状態であり、国内の低賃金、低米価にマツチさせるためには、輸入食糧が増大すれば大衆課税による補給金が殖えて来る、輸入食糧は高く買
つて来て安く配給しなければならないために、農民の
負担も大衆の
負担も重いのであります。
そこで私は最後に総理大臣に伺
つて置きたい第二の点は、
農林委員会におきまして、私が
政府の食糧輸入
政策と国内の自給体制について
質問いたしました際に、農林大臣は、我が国の食糧
政策については自主性がないのだと答弁し、青木安本長官は自主性があるのだと言われたのであります。果して我が国の食糧の自給体制或いは食糧の輸入
政策について、
政府に自主性があるのかないのか。この二人の大臣の答弁の食い違いを、総理の口から、どのような事態にな
つているか、この点を明らかにして頂きたいと思うのであります。(
拍手)
私は最後に農業の保護
政策について伺いたいのでありますが、すでに
質問の時間がなくなりましたので、他の諸点につきましては別に
農林委員会において
質問をいたすこととして、この際、
質問事項を留保いたして置きたいと思うのであります。(
拍手)
〔国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕