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1950-04-13 第7回国会 参議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十三日(木曜日)    午前十一時十四分開会   —————————————   委員の異動 四月十二日委員小野光洋辞任につ き、その補欠として石原幹市郎君を議 長において指名した。 本日委員大畠農夫雄辞任につき、そ の補欠として岡田宗司君を議長におい て指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件(五井産業事件)  (右件に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これより法務委員会を開きます。検察及び裁判運営等に関する調査として五井産業事件に対して証人証言を求めることにいたします。  姓をおつしやつて頂きます。
  3. 土田精

    証人土田精君) 土田精と申します。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ご住居はどちらですか。
  5. 土田精

    証人土田精君) 目黒区衾町千三百九十九。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年は。
  7. 土田精

    証人土田精君) 四十八。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日は五井産業事件について、あなたに御証言をお願いいたしたいと思います。御証言をお願いいたす前に宣誓をお願いいたします。証言に誤まりがありますと、制裁がありますから、御注意申上げて置きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 土田   精
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴をおつしやつて頂きます。
  10. 土田精

    証人土田精君) 巡査から申しましようか。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  12. 土田精

    証人土田精君) 大正十一年の一月の七日と思います。警視庁巡査を命じられました。二月二十七日に四谷の警察へ参りまして、それから中途世田谷警察に変つておると思います。それから警務課に変りまして、そうして大正十四年の十一月の三十日に巡査部長になつておると思います。それから巡査部長警務課でずつと勤務したつもりです。それから十三年の六月の一日に警部補に任官しました。そうしてこれは本郷の駒込警察署勤務しております。それから昭和五年の八月と私は記憶するのですが、多少違うかも知れませんが、刑事部搜査第二課勤務をいたしております。これは警部補としてであります。それから昭和七年一月の十七日頃と思うのでありますが、これも多少日が違うか知れませんが、代々木の警察署勤務を受けております。警部補のままであります。それから同年の八月と思いますが、八月の二十幾日ではないかと思いますが、警衛課警備係勤務を命ぜられております。それから昭和九年三月頃だと思うのでありますが、監察官附をやつております。それから昭和十年三月五日に警部に任官しまして、そうしてこれは寺島警察署勤務を命ぜられております。それから同年の六月二十幾日かと思いますが、これは搜査二課の勤務を命ぜられております。それから昭和十三年の八月でありますか、搜査第二課の係長を命ぜられております。それから十四年の十一月と思うのでありますが、これは経済保安課燃料係長であります。それから十七年の二月と思うのでありますが、五、六日頃かと思いますが、目黒警察署長を命ぜられております。それから十七年の六月一日警視に任官いたしまして、寺島警察署長であります。それから昭和十八年の五月三十一日でしようか、品川警察署長であります。それから昭和二十年の十二月六日でありますか、渋谷警察署長、それから昭和二十二年ですか、三月六日ですか、警衛課長であります。それから昭和二十三年の三月六日防衛課長であります。それから昭和二十三年の五月二十五日でありますか、これは予備隊長であります。現在に至つております。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十二年頃、岡崎英城さんが搜査課長をおやりになつておる時分に、あなたはその下で何か係長をおやりになつていらつしやるのですか。
  14. 土田精

    証人土田精君) 岡崎課長のときには主任を暫くやりまして、同課長在任中に十三年の八月係長をやりまして、岡崎課長が愛知県に転出するまで仕えておりました。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時岡崎さんは非常に名課長として名声が高かつたらしいですね。
  16. 土田精

    証人土田精君) はあ。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ岡崎さんは非常に親分肌お方であつて、無論頭もよいですが、従つて少壮の人が皆岡崎さんの下に蝟集して来るという傾向があつて、将来岡崎警視庁を背負つて立つという噂もされておつたのですか。
  18. 土田精

    証人土田精君) 将来警視庁を背負つて立つという噂はあつたでしようが、若い人が全部その下に集まるというのは、私はちよつと聞いておらないのですが。岡崎さん自身私淑している若い人々は相当あつたと思うのです。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) みんな集まるという言葉はちよつと大げさかも知れませんが。
  20. 土田精

    証人土田精君) そうですな。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに俊敏な錚々たる人が、将来有望な人が、そういうように段々岡崎さんの下に、私淑という形において附いて行くという……。
  22. 土田精

    証人土田精君) まあ傾向はあつたと思うのです。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなような関係からいたしまして、岡崎さんが転出された後で、吉尾課長お出でになつたのですね。
  24. 土田精

    証人土田精君) 参りました。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんに比べて非常に劣るというような感じが強くて、あなたといたしましても、二課をまあ好ましくないというので、何か他の方へ転出されたというようなことがあるのですか。
  26. 土田精

    証人土田精君) 私が好ましくないというのではありませんで、当時あれでしよう、吉尾さんとしましては、私でなく他の適当なものを使つて行つた方がいいという考えがあつたと思うのですな。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに、吉尾課長とあなた達のお考え方としては、しつくり行かないから、搜査二課のためにも転出されたと、こういう意味ですな。
  28. 土田精

    証人土田精君) 私ですな。主としてこれは……。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論二課のお方錚々たるお方がお勤めになる場所らしいのですがね。あなた達としても岡崎さんとしても、あなた達と、そういうようなコンビの方で二課を維持して行くということが、一番好ましいと、まあ自負していらつしやつたわけですね。
  30. 土田精

    証人土田精君) そうですな。その点は。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのくらいのプライドがなくちやできないでしよう。
  32. 土田精

    証人土田精君) まあそういう考えもあつたかも知れませんな。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような岡崎さんに対する私淑とか、敬愛とか、尊敬というような関係上、従来岡崎さんとは随分親しくお附合いになつていらつしやつたのですか。
  34. 土田精

    証人土田精君) そうですな。私よりも親しい人はあつたのですがね。これは恐らくあれでしよう、追放になつておりましたのですな。特高関係や何かで……。私が使われたのは一回だけなんです。岡崎さん自身に対して私淑をしているかどうかということになれば、これはまあ私淑していることは間違いありません。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは品川の先程おつしやつた署長時代に、そんなような従来の御関係もおありになるためか、岡崎さん及び丹羽さんというようなお方のお家を探してやつたりなんかしたことがありますね。
  36. 土田精

    証人土田精君) あります。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中西久夫氏という人の家も借りてやつたことがございますね。
  38. 土田精

    証人土田精君) ございます。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 品川署長時代に、何か船遊びか、釣か存じませんが、何かお催しになつた、それはどういうあれですか。
  40. 土田精

    証人土田精君) 私はそいつはなかつたのですがね。私が署長をやりましたのは、只今も申上げましたように、昭和二十年の十二月の六日なんでございます。丁度終戰の直後になるわけでございます。ですから私自身は釣は随分やります。釣はやりますが、人を招待して、船の上に招待して釣の遊びをしたというようなことは、私はないつもりでおるのですがね。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か伊藤鑛壽氏はそういうようなことを言つておりますがね。
  42. 土田精

    証人土田精君) 私もそういう点を聞きまして、実は意外に思つているのですが、何か私が警視庁幹部を呼んだとかという話ですが、私は大体警察署長を四ケ所やつているのですが、警視庁幹部というものは、一回も署長としては呼んだことのないわけですから。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから岡崎さんも招かれて同席されたとか、そうじやないのですか。
  44. 土田精

    証人土田精君) 記憶がございませんね。そういうことは……。伊藤と二人で釣に行つたことはあります。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お二人だけで。
  46. 土田精

    証人土田精君) 二人で……。今一人ぐらい警防団の副団長が何かまじりまして、その記憶はございますが。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か大がかりで以て、警視庁幹部の人や岡崎さんなんかを御招待になつたことはないのですか。
  48. 土田精

    証人土田精君) 伊藤記憶違いではございませんでしようか。あるとするならば、代が違うんじやないでしようか。私と……。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽とは相当お親しかつたらしいですな。
  50. 土田精

    証人土田精君) そうです。割合に親しい方です。
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か伊藤鑛壽強制疎開免除についてお世話になつたんだそうですな。
  52. 土田精

    証人土田精君) これも私意外に思つておるのですが、あの昭和二十年の強制疎開のつまり何と言いますか、疎開免除の問題ですが、この権限は区長にあるのです。私は当時は伊藤とは余り近しくないのです。伊藤と近しくなりましたのは終戰後釣に行くようになつてから、一緒に釣に行くようになつてからやや親しくなつただけで、その当時は町会長をしておりました長谷川耕南というのがあります。警視庁巡査で、それが主としてその疎開の問題については動いておつたようです。これが主として区の方に話をして、長谷川耕南から私はこういう話しがあつたと思う。伊藤の工場は軍の指定を受けておる。区の方では大体延期する予定だ、それについては、丁度その頃には警察の方が疎開の実施を引受けたのもですから、この際に一つ壊さないで呉れ。こういう話があつた。これは区からそういう指定があれば、延期の指定があれば当然除外しなければならん。その関係で除外した。ですからこの問題については私が骨折つたということは、これは間違つておるのではないかと思います。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か伊藤鑛壽防犯協会会長とか、副会長に御推薦になつたことはございませんか。
  54. 土田精

    証人土田精君) ございません。それは私の後でしよう。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの後ですか。
  56. 土田精

    証人土田精君) ええ。
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの在任中はそういうことはありませんか。
  58. 土田精

    証人土田精君) 私の在任中は一印刷業者です。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう会長や副会長に就任しておりませんか。
  60. 土田精

    証人土田精君) 全然就任しておりません。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か品川のお台場終戰当時木炭が沢山放置されておつた。それをあんな放置して置くのはもつたいないから持つて来いと言つて伊藤に持ち出させたというようなことがおありになるのですか。
  62. 土田精

    証人土田精君) ございません。これはですなあ、お台場のあの当時の権限海軍にあつたと思います。陣地や何か海軍の……経理学校があそこにあつたわけです。ここの衞兵の副司令か、それの許可を得て持つて来たのではないかと思います。私はそう言うことを許可する権限がありませんし……。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論海軍の方の管理であつたでしようけれども……。
  64. 土田精

    証人土田精君) 何ですか。
  65. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 海軍の方の管理であつたでしようけれども、その当時のどさくさに軍、関係の人はすべて物資を放棄して行つてまつたんじやないですか。
  66. 土田精

    証人土田精君) 衞兵司令はおつたようです。
  67. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 残つておる物があるから、放つて置いてはもつたいないというので、あなたは持つて来いという話をしたことは。
  68. 土田精

    証人土田精君) ございません。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽は持つて来たことはありますね。
  70. 土田精

    証人土田精君) 伊藤鑛壽が持つて来たということは後で聞いた。最近に聞いた。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどこか手続きをして持つて来たことになるのですか。
  72. 土田精

    証人土田精君) それは何か話は海軍経理学校衞兵司令、これから許可を得て持つて来たという話を聞いております。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時は衞兵司令とか、そういう軍の者はいなかつたのではないですか。
  74. 土田精

    証人土田精君) 終戰後衞兵司令はいたでしよう。その点は伊藤にお聞き下さい。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰後の話ですが。
  76. 土田精

    証人土田精君) 終戰後もやはりそういう人間がおつたのではないでしようか。残務整理か何かで……。
  77. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当の数量であつたそうですね。
  78. 土田精

    証人土田精君) 数量は分つておりません。
  79. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か封鎖預金伊藤現金に替えて頂いたということがあるのですか。
  80. 土田精

    証人土田精君) 封鎖預金でなくて、戰災特殊預金じやないですか、戰災特殊預金でしよう。これはそうですね、伊藤じやなくて、私は伊藤の手を通じて替えて貰つているような気がします、私の記憶は……。それはどうしてかと申しますと、私の郷里が宇都宮です。ここの家屋七棟で百八十五坪、これは大体父親から相続した不動産なんですが、これに対して五万円保険に入つてたと思います。五千円だけ現金で貰いまして、あと残額特殊預金で貰つていると思います。あとに丁度私のおふくろがあるものですから、その関係で家を建てなければならないから現金に替えたいと思つておりましたところが、伊藤がやつて来まして、三菱銀行の品川支店長知合いの者が封鎖預金と替えてもよいというような話があつたわけなんです。それで伊藤の手を通じてこれは替えて貰つたように思います。
  81. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か土地周旋売買をお頼みになつたことがあるのですか、伊藤に……。
  82. 土田精

    証人土田精君) ございません。
  83. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそういうようなことで御関係になつたことは……。
  84. 土田精

    証人土田精君) どういうことですか……。
  85. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土地売買について……。
  86. 土田精

    証人土田精君) ございません。
  87. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは丹羽さんともお心易いわけですね。
  88. 土田精

    証人土田精君) 知つております。
  89. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは岡崎さんを通じてお心易くなつたわけですか。
  90. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんなり、丹羽さんを通じて上村さんとか。
  92. 土田精

    証人土田精君) 岡崎さんを通じてというわけじやありませんで、知つたの岡崎さんを通じて知つたのですが、岡崎さんが搜査課長時代紹介されたのです。官房主事が来られまして、それで大体あれしておるわけです。
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんのことは。
  94. 土田精

    証人土田精君) はあ。
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう御両氏の方を通じてか、或いはこういう人と同席する関係上か、いずれにしても御両氏を介して上村さんとか、秋山さんとか、中西さんとか、今松さんとか、門叶さんとか、唐澤さんとか、藤田さんとか、原さんとか、後藤田さん、こういうような人とお親しくなつたわけですね。
  96. 土田精

    証人土田精君) それは岡崎さんを通じてというのじやないのも、こういうものの中にはあります。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一人ぐらいはいましよう。
  98. 土田精

    証人土田精君) 今おつしやるのは誰々ですか。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上村さんは。
  100. 土田精

    証人土田精君) 上村さんは警視庁特高部長をしておりました。その関係岡崎さんから紹介をされておりません。警視庁署長もしておりました。その次は誰ですか。
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 秋山さんは。
  102. 土田精

    証人土田精君) 秋山さんは警視庁監察官刑事部長をされたという関係で……
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中西さんは。
  104. 土田精

    証人土田精君) 中西さんは私使われておりましたから。
  105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今松さんは。
  106. 土田精

    証人土田精君) 今松さんは全然……。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 門叶さんは。
  108. 土田精

    証人土田精君) 門叶さんは総監として使われておりました。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 唐澤さんは。
  110. 土田精

    証人土田精君) 唐澤さんは、これは全然使われたこともございませんし、ただ知つているのは昭和十年に暴力団狩りをやりました。その際にあの人が警保局長でありましたので、一回ぐらい呼ばれたことがあります。あとは知らない。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんは。
  112. 土田精

    証人土田精君) これは監察官もされており、警視庁刑事部長警務課長警防課長をされたので知つております。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 原さんは。
  114. 土田精

    証人土田精君) 原さんは私の上司でございますから。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 後藤田さんは。
  116. 土田精

    証人土田精君) これは警視庁警務課長をしております。
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、今言われた方方は、岡崎さん、丹羽さんを通じてお知りになつたわけじやないのですね。
  118. 土田精

    証人土田精君) そうじやありません。
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又紹介を受けたとか、こういうわけじやないのですね。
  120. 土田精

    証人土田精君) そうじやなかつたです。
  121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 増田甲子七さんとはいつ頃お知合いになりましたか。
  122. 土田精

    証人土田精君) 増田甲子七さんとは私は会つたことはございません。
  123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍も会つたことはございませんか。
  124. 土田精

    証人土田精君) 会つておりません。
  125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日まで。
  126. 土田精

    証人土田精君) 会つておりません。
  127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 増田さんの謦咳に接したことはありませんか。
  128. 土田精

    証人土田精君) ありません。
  129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 職務の上でも御存じないですか。
  130. 土田精

    証人土田精君) ありません。
  131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽丹羽喬四郎に、伊藤鑛壽の支配にかかるところの電気クラブの三階の事務所をお貸ししたことは御存じですか。
  132. 土田精

    証人土田精君) 丹羽さんにですね。
  133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) はい。
  134. 土田精

    証人土田精君) それは知つております。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事務所へあなたはお出でになつたことがございますね。
  136. 土田精

    証人土田精君) 二回程あります。
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときはどういう人がお出でになつたですか。
  138. 土田精

    証人土田精君) 初めに参りましたのは、これは事務所が開設されて間もなく、伊藤が来て呉れというので私は行つたと思います。そのときにおつた人はちよつと記憶がないのでございますが、まあ伊藤がおつたことは、これは間違いないわけですが、それからその次は昭和二十三年の十月末か、十一月の初め頃でしようか、藤田部長刑事部長を辞められる前ですね、そのときに藤田部長一緒行つたことがあります。
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六、七月頃にお出でになつたのじやないですか。
  140. 土田精

    証人土田精君) 六、七月頃は私は行つていないつもりです。
  141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六、七月頃に岡崎さんとか、丹羽さんとか、秋山さんとか、藤田さん、こういうお方が連日その部屋に集まつて、いろいろ協議をしていらつしやつたらしいのですがね。あなたはその部屋の前にお立ちになつてつて伊藤がたまたまその部屋に入ろうとしたら出入りを阻止して入ることを断わつたそうですね。
  142. 土田精

    証人土田精君) そんなことはございません。
  143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日こういう集会をしていることは非常に秘密なことだからというので、堅く口止めされたということですが。
  144. 土田精

    証人土田精君) 私は大体二十三年の五、六月頃というのは……。
  145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六、七月頃ですね。
  146. 土田精

    証人土田精君) その頃というのは丁度今の予備隊というのができたばかりなんです。丁度創設される前後でありまして、盛んに増員をやつているときでありまして、そうして部下の訓練その他に追われまして、殆んど寧日なしというのが当時の状態でありまして、そんな出歩きなどは私には殆んどできないときでございました、そのときは。
  147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時警視庁といたしましては例の昭電事件に血道を上げておつて、殆んど刑事部では総力を挙げて御努力になつてつた時代ですね、そういう時代であつたのですが、そういうことについて何かの御連絡のためにお出でになつたのじやないですか。
  148. 土田精

    証人土田精君) 全然ありません。私は搜査二課におつたときに、大きな事件の事後の問題というのは必ずいろいろ問題が起きて来るのですね、ですからそういうことについては、よそから聞かれてもこれは断わりますし、又人にもそういう渦中には入るなということを始終言つておりますから、そういうことはないと思います。絶対に。
  149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、あなたのおつしやる最初にいらつしやつたとき、伊藤が来て呉れというのはどういう御用件が……。
  150. 土田精

    証人土田精君) これは事務所が開かれたから、その事務所を一遍見て呉れというわけですね。
  151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤が来て呉れ。
  152. 土田精

    証人土田精君) 来て呉れというわけです。
  153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽君が開いたから、丹羽君が見て呉れ。
  154. 土田精

    証人土田精君) これは丹羽さんじやないのです。一番最初伊藤君が開いて、その部屋丹羽さんが借りられたのじやないかと、私はこういうように記憶しております。
  155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときは伊藤が……。
  156. 土田精

    証人土田精君) 伊藤がおつたことは記憶しております。
  157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田行つたときは。
  158. 土田精

    証人土田精君) そのときは丹羽さんだけだつたと思つております。
  159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何しにいらつしやつたのですか。
  160. 土田精

    証人土田精君) これは藤田部長が丁度変られる前で、身体の工合が惡かつたのです。そんな関係で行かれて、何か強健法なんかをやる人があるということで、その話をされておつたようです。
  161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんとお出でになるのは、どちらがお誘いになつたのですか。
  162. 土田精

    証人土田精君) 私が藤田部長の方に行きまして、どちらともなく一遍行こうというので出かけたと思います。
  163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 遊びに行こうというのですか。
  164. 土田精

    証人土田精君) 藤田さんの話は、強壮術か何かの、それを聞きに行きたい、大体事務所の所在が分らないから、それじや私が案内しよう、こういうことになりまして、私が案内しました。
  165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、あなたは特段に用はなかつたのですか。
  166. 土田精

    証人土田精君) 私は別に用はなかつたのです。
  167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、藤田さんが何かお母さんのことで、病気のことで聞きたいから行くが案内して呉れということじやないのですか。
  168. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か外の……電話でも分りそうなものですね。電話はあるでしよう。
  170. 土田精

    証人土田精君) それは、今も申しますように暫く会わないということもございました。
  171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会つて見たいとは思つた
  172. 土田精

    証人土田精君) 会つて見たいという、そういう意味もあつたと思います。
  173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会つて見たいというのは、丹羽君に会つて見たい。
  174. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき官服を着ていらつしやつたんじやないですか。
  176. 土田精

    証人土田精君) 私は殆んど出るときは大体官服なんです。私服で出ることは殆んどないです。
  177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時は丹羽さんは追放の身でしよう。
  178. 土田精

    証人土田精君) 二十三年の……、そうですかな、その頃は。
  179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは十月とおつしやるんですから、昭和二十三年の七月頃に追放になつておりますからね。
  180. 土田精

    証人土田精君) そうでしよう。
  181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、官服追放者のところへお訪ねになるということは、何かいろいろ疑惑を招くんじやないですかね。
  182. 土田精

    証人土田精君) まあそういう点はあるかも知れません。併しまあ別に役所の話をするわけじやなし、世間話程度で帰つたわけなんですから。
  183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) するわけじやないけれども、したかどうかということは世間の人には分かりませんね。
  184. 土田精

    証人土田精君) それは私を御信用頂くより外仕方ありません、その点については。
  185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんの健康法というのはどういうことですか。どんな話だつたんですか。
  186. 土田精

    証人土田精君) 何か強壮術かなんかの話でしたね。体操かなんかでやるような。
  187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんがやるんですか。
  188. 土田精

    証人土田精君) そうじやなくて、そういうものを知つているわけです。
  189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんが。
  190. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんはちよこちよこ丹羽さんとお会いになるんですね。
  192. 土田精

    証人土田精君) ちよこちよこじやないでしよう、そのときだけじやないですか。
  193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんがそういうことを知つているというのは、どうして知つているんですか。
  194. 土田精

    証人土田精君) この前に何かお会いする機会があつたのでしよう。そのとき聞いておるんじやないですか。
  195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが知つているわけじやないのですね。
  196. 土田精

    証人土田精君) 私は知りません。
  197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、丹羽さんがその前に少くとも又会つているわけですね。
  198. 土田精

    証人土田精君) そうですね。いつお会いになつたか知りませんが、正月でもお会いになつたんじやないですか。
  199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると、藤田さんらは丹羽さんと始終交友されていらつしやるんですね。
  200. 土田精

    証人土田精君) それは私には分りません。
  201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう今の話の段階から考え合せますと……。
  202. 土田精

    証人土田精君) それはしよつ中会わなくても、二三年前にそういう話を聞いて、そうしてその話を今思い出しても、そういう結論にはなりますから。
  203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこでいろいろな連日会合を開いておるということについて、何かお聞きになつたことはありませんか。
  204. 土田精

    証人土田精君) 全然聞いておりません。
  205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時昭電の問題が警視庁方面から洩れるということは御存じでしようね。
  206. 土田精

    証人土田精君) そういう話も聞いておりません。私は余り……。
  207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の部内においでになれば、そういうふうな風評は十分御承知のことと思います。
  208. 土田精

    証人土田精君) 私は警視庁内部なんでございますが、建物は御承知の通り別館になつております。
  209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんとは心易いんだから、藤田さんがそういう疑惑の中心になつてつたということは御存じじやないのですか。藤田さんから、そういうことが……、我々腐つてしまうということくらいおつしやられているんじやないですか。
  210. 土田精

    証人土田精君) 一応そういうふうな、藤田さんが疑惑にかかつたということだけは私は関知しております。関知しておりますが、併し昭電疑獄事件について漏れておるかどうかということは、私は分りません。
  211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは断定して申上げるわけではないけれども、少くともそういう噂があつて藤田さんとしては面白からざる生活を送つていらつしやつたのじやないですか。そういうことはお心易いあなたにお漏らしになることはあり得ると思うのですが。
  212. 土田精

    証人土田精君) 私には申しませんでした。そういう疑惑がかかつて困るということは申しておりません。
  213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは御承知ではあつたのですね。
  214. 土田精

    証人土田精君) 大体そんなふうな空気はあつたようです、多少は……。併し藤田部長という人は、これは委員長お会いになつておるかどうか知りませんが、そういう点では実に立派な人です。
  215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お人柄はよくこの前からも知つておりますが……。そういうような風評があるにも拘わらず、その風評の、疑惑の出る根源地のような、こういう電気クラブへお寄付きになるということはどうでしようか、余計疑惑を深からしむるのじやないでしようか。
  216. 土田精

    証人土田精君) これは御尤もの話ですが、そのときはすでに事件は検事局の手に移つてつたのじやないですか、私はそう考えております。
  217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 移る前の移つた後にかかつておるわけですね。
  218. 土田精

    証人土田精君) 藤田部長の参りましたのは、恐らく事件が検事局に移つてからと私は記憶しております。
  219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十月とおつしやればそうなりますけれども、十月以前も一度おいでになつていらつしやるのですから。
  220. 土田精

    証人土田精君) 誰が。
  221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた。
  222. 土田精

    証人土田精君) 私は二十二年ですよ。事務所ができたときですから。
  223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、大分その間があるわけですね。
  224. 土田精

    証人土田精君) 間があるわけです。
  225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが丹羽さんをお訪ねになつたときに、丹羽さんとの間にいろいろ政治問題のことや或いは昭電問題のお話が出たんじやないでしようか。
  226. 土田精

    証人土田精君) 出ません。一般世間の話だけです。
  227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんがその当時増田さんの選挙に応援に行つたとか、行くんだとかいう話があつたのじやないですか。
  228. 土田精

    証人土田精君) 聞きません。
  229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭電事件についていろいろそこの部屋で対策を協議したらしいのですが、あなたが御存じなければよろしいけれども、そういう関係事件が段々進展して来て、丹羽五郎という人も検挙せらるるに至つた。これは丹羽喬四郎さんの御兄弟です。従つてあなたと丹羽さんとがお近しいのですから、その丹羽五郎さんの身柄についていろいろあなたは御盡力なさつたのじやないですか。
  230. 土田精

    証人土田精君) 全然ございません。丹羽五郎さんは私は知つております。これは私が二課の係長をしておりますときでしようか。中島知久平さんが例の薬王寺の四つ角で狙撃された事件がありましたな。あのときの犯人を検挙したのです。これは渡部道春という拳闘家でございます。この先生の知合いで私のところへ会いに来たと思つております。そのとき会つてつておりますが、そういう運動はした覚えはありません。
  231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時御承知のように、日野原という人はあらゆる知己を頼り、知合いの範囲は悉く手を延ばしていろいろ働きかけてお願いしているわけです。従つてそういう最もいいルートに対して、あなたの立場を利用しないということもちよつと考えられないのですが、どうでしようか。
  232. 土田精

    証人土田精君) 私はそういうことはしておりません。
  233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたに頼みには来なかつたんですか。お断りになつたか知りませんが。
  234. 土田精

    証人土田精君) 頼みには来ておりません、全然。
  235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは岡崎さんから昭電事件の話はお聞きになつたことはありますか。
  236. 土田精

    証人土田精君) それは昭和二十三年の五月か、六月頃でございましようか、私が岡崎さんの家に参りましたのは、今入つている家の家賃か何かの問題じやなかつたかと思うのです。その話じやなかつたかと思います。その際に岡崎さんから話がありまして、金額はちよつと忘れたんですが、非常に莫大な金額だつたと思うのでありますが、その金額がこういう工合に使われておるんだが、これは一体背任罪になるものだろうか、どうだろうかと、こういうふうな話がありました。それからそれは一体重役会議の決議を得ておるのか、得ていないのか、こういつたところが、重役会議の決議を得ておるという話を聞いているのです。金の使途については、それなればそれはちよつと背任横領の起訴はむつかしいのじやないか、こういう話をしておるのです。それに対して岡崎さんが、いや私が岡崎さんに聞いたのですが、一体それはどこの会社の問題だといつたところが、昭和電工の問題だ、そのときに私は話したんです。昭和電工の問題というのは、当時新聞にも叩かれておりまして、相当大きな問題ですから、これはあとで必ず問題が起きるから、あなたは口を出さない方がいい、手を引かれた方がいいということを私はそこで話をしておるわけです。
  237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは岡崎さんの家ですか。
  238. 土田精

    証人土田精君) 岡崎さんの自宅と私は考えております。
  239. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは日野原か、藤井にお会いになつたのですか。
  240. 土田精

    証人土田精君) 私ですか、会つておりません。岡崎さんは会つておられたんじやないでしようかね。私ははつきりした点は存じておりませんが、話の前後の感じはそういうふうな感じをしております。
  241. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か藤田さんの家へいらつしやつたのじやないですか。
  242. 土田精

    証人土田精君) 私ですか、参りません。
  243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か藤田さんにお口添えになつたのじやないのですか。
  244. 土田精

    証人土田精君) 私がですね。いやそんなことはございません。私を介しなくても、岡崎さんと藤田さんとの間には幾らでも話ができるわけですから、そんなことはありません。
  245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か昭電事件の進展についての情報というようなことを岡崎さんにお話になつたことはないのですか。
  246. 土田精

    証人土田精君) ありません。
  247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何ですか、先程伺つたように、外の家賃か何かの話のときにいらしたときに、そういうお話がたまたま出たのですか。
  248. 土田精

    証人土田精君) そうです。そういうふうに記憶しております。
  249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か電話があつて呼付けられたわけじやないのですか。
  250. 土田精

    証人土田精君) そうじやありません。
  251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから家賃の話しがしたいから、頼みたいから来て呉れというのじやなかつたですか。
  252. 土田精

    証人土田精君) そうじやありません。でそこで伊藤との間の話がどうもなかなかうまく行かない。それで一遍その話をして貰いたいというような話が私はあつたと思います。それで私の方から出向いたと思うのですが。
  253. 伊藤修

    委員長伊藤修君) わざわざ。
  254. 土田精

    証人土田精君) はあ。
  255. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは日野原が勿論逮捕される前ですね。
  256. 土田精

    証人土田精君) 無論です。
  257. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらい前なのですか。
  258. 土田精

    証人土田精君) 日野原が逮捕されたのはいつ頃ですかなあ。私は記憶がないのですが、私の記憶では相当期間があつたと思います。
  259. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 七月の中頃か、末、二十日前後だつたと思いますが。
  260. 土田精

    証人土田精君) はあそうですか、一ケ月以上ありますね。
  261. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六月の末から七月の初めですね。
  262. 土田精

    証人土田精君) いや、それよりずつと前です。六月の上旬か、五月の下旬頃じやないですか。
  263. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 家宅搜査があつた頃ですね。
  264. 土田精

    証人土田精君) 取かかる前、取かかり始めた頃です。家宅搜査があつた直後あたりでしよう。
  265. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野原が慌てておる時分ですね。
  266. 土田精

    証人土田精君) そうですなあ。
  267. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんの方へ日野原から金が十五万円ばかり廻つておるんですがね。丹羽五郎の方には、四、五十万円金が廻つて来ておるのですが、このようないろいろな関係であなたの方に誘惑が伸びておつたのじやないですか。
  268. 土田精

    証人土田精君) そんなことございません。大体岡崎さんという人は、民間に入られてから、私もその金を受取つたということを聞くのですが、最近になつて聞いておるのですが、そういうようなものを取られるようになつたのですが、役人としては実に清廉な人だつたですよ。この人は、ですから後輩をそういうようなところに引き込むようなことはしていないと思いますよ。あの人は……。
  269. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か岡崎さんの宅で、岡崎さん、丹羽さん、原さん、倉井さん、後藤田さん、吉武さん、それから伊藤鑛壽さん、石井さん、こういう人がお集まりになつたことはありますね。
  270. 土田精

    証人土田精君) あります。ありますが、吉武君はおつたでしようかなあ。そこには私は吉武君は記憶はありませんが。
  271. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あつたというのですがね。
  272. 土田精

    証人土田精君) そうですか、私は吉武君は記憶しておりません。あとは大体おつたように思います。
  273. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その席上で岡崎さんが、大里澁谷署長に保安課長にどうかというようなお話が座談にあつたんじやないですか。岡崎さんがあなたに。
  274. 土田精

    証人土田精君) ございません。そういう話は全然出ていません。大体大里君は、委員長御存じかどうか知りませんが、この人はまあ署長としては一〇〇%の人ですよ。併し庁内の課長としては署長として働らく程の、ま何と言いますか、器量は出て来ないんじやないですかな。そういう話は出ません。と、私は見ておるんです。
  275. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが話を……。
  276. 土田精

    証人土田精君) 私もそういう話をしておりません。
  277. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんのところへ、たびたび岡崎さんを尊敬する私淑する人が始終こうやつてお集まりになるんじやないですか。
  278. 土田精

    証人土田精君) 集まることはございません。そのときは家の移転か何かの祝じやなかつたですかな、私はそう考えておりますが。
  279. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ときどきお集まりになるとか、單独でおいでになつて、いろいろ庁内のことの指示を受けるとか、或いは相談するとか、意見を聞くとかいうようなことがおありになるんじやないですか。
  280. 土田精

    証人土田精君) そういうことはございませんね。
  281. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはどうですか。
  282. 土田精

    証人土田精君) 私はございません。私は大体まあ正月とか、盆あたりに顔を出す程度です。
  283. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう際に、今日の警視庁ではあなたがおいでになつた当時よりは甚だ手緩いとか、機構が惡いとか、人物がいないとかいうような批判的なお話があるのじやないですかな。
  284. 土田精

    証人土田精君) あの人は何と言いますか、役人をされておるときから、人事問題等については非常に口の堅い人なんですね。ですからそういう話をすると嫌がるんですな。あの人は。
  285. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今のようなメンバーで中西の宅でもお集まりになつたことがあるのじやないですか。
  286. 土田精

    証人土田精君) 中西さんの……全然ございません。
  287. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の岡崎の家に集まつた引越祝なんというのはいつのことですか。
  288. 土田精

    証人土田精君) 二十三年の秋頃じやなかつたですかな、秋か夏ですかな。二十二年ですかな。二十二年ですな。
  289. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十二年の秋。
  290. 土田精

    証人土田精君) 秋じやないですかな。
  291. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが現在部内で親しくなさつていらつしやるお方はどういうお方ですか。
  292. 土田精

    証人土田精君) 部内と言いますと警視庁全体ですか。
  293. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁本庁で。
  294. 土田精

    証人土田精君) 親しくというのはどういう意味なんですか。
  295. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特段に気が合うとか、特殊の連絡がおありになるとか。
  296. 土田精

    証人土田精君) そうですな。私があれですな、親しくしているのは吉武君ですな、それから橋本君ですか、この二人が……一番親しいのは……。
  297. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 折田さんはどうですか。
  298. 土田精

    証人土田精君) 折田君はいろいろ評判されるのですが、これは余り関係ないですな。
  299. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 原さんは。
  300. 土田精

    証人土田精君) 原さんはこれは上司でございますね。
  301. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 気がよく合うんじやないですか。
  302. 土田精

    証人土田精君) 気質が私と違うんですな。
  303. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 職務上の考え方とかいろいろな……。
  304. 土田精

    証人土田精君) 職務上の考え方は違うこともありますよ。気質が違います。
  305. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたとの意見が合うというわけじやないんですか。
  306. 土田精

    証人土田精君) これは私の意見を向うが採択する場合もありますし、私が向うの意見に服することもありますし、これは一定しておりません。
  307. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 倉井さんはどうですか。
  308. 土田精

    証人土田精君) 倉井課長ですか、倉井課長はこれは私と同じ組なのです。同県の出身なもんですから。
  309. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では親しいですね。
  310. 土田精

    証人土田精君) 割合に親しくしております。
  311. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 後藤さんは。
  312. 土田精

    証人土田精君) 後藤さんとも割合に親しくしております。
  313. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 石田さんはどうですか。
  314. 土田精

    証人土田精君) 私は石田君も、これは私前に防護課長で、一緒にやつた男ですから。
  315. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 木村さんは。
  316. 土田精

    証人土田精君) 木村さんはよく知りません。
  317. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 手島さんは親しいですか。
  318. 土田精

    証人土田精君) これは親しいです。
  319. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 衛藤さんは。
  320. 土田精

    証人土田精君) 衛藤さんは警務課時代一緒巡査つたのですから、親しくしております。
  321. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤澤三郎さんは。
  322. 土田精

    証人土田精君) 藤澤さんとは私交際しません。
  323. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 畑野さんは。
  324. 土田精

    証人土田精君) 畑野とも余り交際がないです。普通程度です。
  325. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 以上のお方と私的関係においてはどうですか。
  326. 土田精

    証人土田精君) 私的関係で特に親しいというのはございませんが。
  327. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一緒にお暇のあるときに飲んで廻つたとか、訪問し合うというようなことは。
  328. 土田精

    証人土田精君) 訪問し合う程度ではありませんな。
  329. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武君が終戰後南方から帰られて、駒込署に復職して間もなく、あなたが推挙されて警務課にお入れになつたのですか。
  330. 土田精

    証人土田精君) 警務課については、これは私は推挙はしませんですが、警務課の方で私のところに持つて来たのです。私としては誠に迷惑至極に考えた次第なのですが、前に搜査二課で一緒におつたから、又一緒になるということは、これはいろいろ世間であれこれ言われるので、私としては非常に迷惑至極に思えて、当時の係長まではその事実は申しておるわけで、私は別に推挙をして彼を私のところに取つたわけではございません。
  331. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後あなたが課長を辞められたときに、藤田、畑野、後藤田という人に吉武氏を推薦して、搜査二課へ入れ、間もなく係長にせしめたというようなことはあるのですか。
  332. 土田精

    証人土田精君) これは係長の年限の問題と言いますと、質問の御趣旨とちよつと違うかも知れませんが、年限から行きますと、これはもう係長になつていいわけです。それから搜査二課の係長に向いたということは、彼の警部補時代の功績、これを見ればよく分るのです。これは別に私が推薦したわけではないと思います。推薦しなくても大体搜査二課の係長に、今の警視庁では大体彼の以外にないのです。こういう輿論になつて来るのです。
  333. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう意味で適任とお考えになつたのですね。
  334. 土田精

    証人土田精君) 考えておりましたが、別に推薦したわけではありません。吉武君を係長にして呉れなんということは……。
  335. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは庁内で人事のときに参考に総務課ですか、警務課から聞かれることがあるのですね。
  336. 土田精

    証人土田精君) これは一遍委員長警務課長をお呼びになつて、人事問題についてお聞き願いたいのですが、これは私共の容啄できないところですよ。全然……。これは例えば私のところに副隊長がおるのです。副隊長というのは刑事ですね。これは三月ですか、交代したのですが、そのときもこれは全然話がないのですよ。私には一言の話もなく、私のところで使つておる奴さえ、女房役ですね、いわば……これさえも話がないんですから、この点については委員長の従来の頭を切換えて貰わなければ困る問題じやないかと思います。(笑声)一遍一つお呼びを願つて、そういう御質問が出るのは……。
  337. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうに噂されておりますから、そういう噂が正しいかどうかということをここでお尋ねしたので、私の頭が……。
  338. 土田精

    証人土田精君) 私も少し言い過ぎましたから……。
  339. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうに固定しているという意味ではありません。(笑声)
  340. 土田精

    証人土田精君) 分かりました。
  341. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それをそういうふうにお聞きになつては困る、世間、巷間にいろいろな噂が流布されておりますから、そういう真僞をここで明らかにして、そうしてそういう疑惑を国民の前に解くべきものならば解かなければならん。あるべきものならば、そういうことを直して頂くという我々が示唆をする、それが我々の役目ですから、そういう意味でお尋ねしているのですから、お気に入らぬこともあるかも存じませんが、お気に入らぬことは……。巷間に伝わつておりますから、それをここで頬被りして通るわけに行かぬから、あなたにお確かめするわけです。ですから真実を述べて頂けば、それに対する判断は各委員諸公が適切に処理判断して下さるので、私はそれを代弁してお尋ねしているわけです。
  342. 土田精

    証人土田精君) よく分りました。
  343. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私はそういう頭を固定して聞いているわけではありませんから、それは誤解せずに。
  344. 土田精

    証人土田精君) それでは前言取消しますから。
  345. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人事の異動ですね。今のお説ですと、誰にも挨拶がなかつたとおつしやるけれども、責任者の意見も徴して、そうして警務課の方でこの人事の大体の原案というものを作つて、そうして長官のところに持つて行くのじやないのですか。
  346. 土田精

    証人土田精君) そうじやないのですね。やはり警務課長監察官あたりが、大体あれじやないでしようかね。相談するのじやないのですか。大体我々のところへ来るときには、自然お前のところからして警部を取つて、今度はどこへ持つて行くから承知して呉れという程度です。例えて言うならば……後にはどういうものを持つて行くから、その承知をして呉れ、大体こういう程度です。
  347. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときにこれは責任者の、まああなたに限りませんけれども、責任者の意見は述べられるのですね。
  348. 土田精

    証人土田精君) 述べられます。ところが本年の三月のやつは遺憾ながら話がないのです。
  349. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 拔打ちにやられたのですね。
  350. 土田精

    証人土田精君) 拔打ちですね。
  351. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体常識としては、予めそういう意見を述べる機会を與えられるわけですね。
  352. 土田精

    証人土田精君) 今も申しますように、それはイエスかノーの話だけで、つまりそれでは困るというだけで、然らばこれはどうだかということになるので、どれを呉れと言つても、警務課の方では警視庁全般と睨み合さなければならないから、なかなか私共の要求通りのものが通らぬ。大方の場合は向うで振り当てて来るということになります。
  353. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えばあなたの部下で立派な人がいる。いつまでも俺のところに置いておくわけに行かぬ。こういうところに転出さして呉れということを述べられるのですか。
  354. 土田精

    証人土田精君) 述べられます。
  355. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは吉武さんの方がそう考えたのか、あなたの御推挙と考えて、それを徳としていたか、或いは又あなたのいわゆる二課の仕事の従来における御功績、それから手腕というものを信頼して、相当あなたの二課におけるところの手腕というものが高く評価されているのですね。私もそう感じておりますが、従つて吉武氏が二課の職務執行の上において、いろいろあなたの御指示、御教導を受けるのに、吉武氏があなたの部屋に訪れるのじやないのですか。
  356. 土田精

    証人土田精君) そうですね。下山事件ですね。下山事件昭和二十三年にありました日本タイプの事件ですね。これは私の方が出勤して大体あの際やつた仕事なんですが、その関係については本人はときどき来て私の意見というよりも、情勢を話しまして、そうしていろいろ相談をかけておつたようです。それについては私も大体相談には乗つておりました。
  357. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外の事件はどうですか。
  358. 土田精

    証人土田精君) その外の事件は私は全然タツチしておりませんから……それから本人も大体私には相談しておりません。大きい事件だけです。
  359. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大きい事件というと、下山事件だけですか。
  360. 土田精

    証人土田精君) 下山事件だけですね。最近では……。
  361. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外にあなたの御指示を受けに、お知慧を借りに来るということは、そういうことはありませんか。
  362. 土田精

    証人土田精君) ないです。全然そういうことはありません。
  363. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かいわゆる直上の搜査の責任者があるに拘わらず、他の部下の上官たるあなたが、横から二課係長ですね、に指揮命令するというような形になつて来たわけじやないのですかね。
  364. 土田精

    証人土田精君) そうですね。私が申しておりますことは、本人に対しての拘束力はないのですからね。
  365. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論拘束力はないのです。
  366. 土田精

    証人土田精君) ですから、そういうふうな見方が、私考えるのですが、ちよつと偏狭なんじやないですか。つまり警視庁のためを思えば、これはあらゆる意見を結集して、そうして一つの方策を決めて行くということが、これは私は妥当なんじやないかと思う。そういう点では私はそういうふうに信じております。又彼、吉武君が私の意見だけに拘束されて、それだけで行くというような男だつたらば、彼は今の搜査二課の係長というものは吉武君でなければならんというような私はことにはならんと思う、私はそう信じております。
  367. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武君としては、要するにそう申しては失礼ですが、現在の直上上官の腕とあなたと比較して、あなたの方にいわゆる尊敬してというか、信頼しておつて、そうして仕事の面についてはあなたにいろいろお知慧を借りるというような態度を始終とつていらしたのではないのですか。
  368. 土田精

    証人土田精君) そんなことはありませんね。ただ下山事件だけは御承知のように相当大きな国家的な事件でありますから、彼は私の所に相談に来たと思うのです。これは私の言う通りには彼は必ずしもやつていなかつたと、こういうふうに私は記憶しております。
  369. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことが度重なつて吉武氏としては課長の言うことは、課長に相談して、あなたに相談してそうして仕事をどんどん進めて行くというような傾向になつたのではないでしようかな。
  370. 土田精

    証人土田精君) そういうことは吉武君はないでしような、なかなか苦労されておりますから。私が丁度やはり吉武君よりちよつと若い年配の時に係長をしておるのですが、その点では吉武君はこれは非常にできている男だと私は考えておりますから。
  371. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今お話の下山事件についていろいろ御苦労になつたことは我々もよく察しておりますが、知つておりますが、そういうようなことで、あなたも非常に第一線の人が苦労をしていらつしやるという意味からいたしまして、何か吉武氏に一万円おやりになつたそうですね。
  372. 土田精

    証人土田精君) 金ですか、金はやつておりません私は。やつた覚えは全然ありません。
  373. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か封筒に入れておやりになつたことはございませんか。
  374. 土田精

    証人土田精君) いや、ございません。
  375. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 若しやつたとすれば、そういう場合は普通課長か何かを通じてやるのですね。
  376. 土田精

    証人土田精君) やる場合ですか。
  377. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  378. 土田精

    証人土田精君) どうなりましようかな。私もやつたことはありませんから。直接やつても差支ないのじやないですかね。
  379. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か昭和二十四年の一月頃ですか、昨年の一月頃ですか、高橋正八郎という人が立候補されましたですね。その際元情報課長をやつてつた江尻という人からあなたに選挙の援助だか、応援をお頼みになつたことはございませんか。
  380. 土田精

    証人土田精君) ございません。それはあれじやないですかね。一遍何か江尻さんが検挙になる前に私共が江尻さんと一緒に飲んだことがあるのですよ。それを何か搜査二課がちよつと問題にしたことがあつたことは聞いております。それは東横の專務の西本さんという人から、今專務をやつておりますな、この人は古くから私可なり知つておるのです、前に警視庁署長をしておつたものですから、この人が来まして、一席設けたいから是非来て呉れと言うので、私前に澁谷の署長をしておつた関係で招ばれて行つたわけです、そこへ江尻さんがやつて来たわけです。私共はその際に参りまして、そうして帰り際に西本氏に御馳走になつたつもりですから、西本氏に、どうも大変御馳走になつた言つて帰りましたのですね。そうしましたら後で聞きましたのですが、その席の金が何ぼか額は分りませんが、江尻氏から出ておるという話はこれは後で帰つて聞いたわけです。そういう事件があつたのです。
  381. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その江尻氏から出たということは、江尻氏は高橋氏の何か事務長か何かをやつてつたのですね。
  382. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  383. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 高橋候補者の。
  384. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  385. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう選挙の関係であつたのですね、結局は、結論は。
  386. 土田精

    証人土田精君) 外から見ればそういうことになります。
  387. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは御存じなくおいでになつたのですか。
  388. 土田精

    証人土田精君) 行つてつて来るまでは知らなかつたのです。後で検挙になつて初めて分つたのです。大体江尻氏と西本氏とは同じ熊本の出身であつたと思います。その関係で私はそこへ来ておると考えました。
  389. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時は江尻氏が高橋候補者の事務長をやつておるということは御存じなかつたのですか。
  390. 土田精

    証人土田精君) とにかくまずいのが来たと、行つた時に考えました。併し何しろ始めた時からちよつと遅れて来たので仕方なく最後までいたのですが、お金は大体東横の西本專務から出しておると、こういうふうに考えておつたものですから。
  391. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃であつたのですか。やはり一月頃。
  392. 土田精

    証人土田精君) そうですな。投票日の二十日くらい前ではないかと思います。
  393. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこで会合されたのですか。
  394. 土田精

    証人土田精君) これは銀座の裏の方でしたな、裏の素人の家、元警視庁の刑事がやつてつた飲食店。
  395. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 牧という家じやないですか。
  396. 土田精

    証人土田精君) ええ、牧の家です。二号さんか何かの家ではないですか。
  397. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 俗に牧の家と言つておりますね。
  398. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  399. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後高橋氏が落選いたしまして、それで而も選挙違反を出された。その時に吉武氏が麻布署へそれの取調について何か依頼に行つたということはありますか。
  400. 土田精

    証人土田精君) 聞きませんな、全然。
  401. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御指示ではなかつたですか。
  402. 土田精

    証人土田精君) 全然聞きません。私も渦中の人物なんですから、それが動いたら変なものですから私はじつと見ておりました。一応結果的に見るとやはり渦中の人物になるわけですから。
  403. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武氏が行かれたことは御存じないですか。
  404. 土田精

    証人土田精君) 全然知りません。
  405. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 行つたかどうかも。
  406. 土田精

    証人土田精君) いや、今初めてです、そういう話を聽くのは。上田係長の主管でやつてつたのです。今の飯塚警部ですね、あの飯塚警部が主でやつたのです。
  407. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二係の。
  408. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  409. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはさつきおつしやつた牧の家へはしばしばいらつしやつたのですか。
  410. 土田精

    証人土田精君) いや、その時が初めてです。図面を書いて貰つて漸く知つたのですから、西本さんが私の部屋に来ましてですね。
  411. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは二十四年の十月頃、宗像という人がありますね、二課に、この方をお呼びになつて吉武の言うことを聽け、松本の言うことは聽かなくてもよいのだということをおつしやつたことがありますか。
  412. 土田精

    証人土田精君) 第一内容が違いますし時が違うのじやないですか。時は五月下旬か六月の初旬と思います。これは。吉武君が私の部屋に参りまして、私は何が原因だか分りませんが、記憶してないのですがな。何か叱言を言つたらしいのです。その際にどうも少し叱言を強く言い過ぎた。一遍宗像君を呼んで私がよく話をして呉れ、その要旨は大体次に述べるような要旨なんです。  宗像君を呼びまして、君が吉武君に叱られたのかと言つたところが、叱られたというのです。吉武君が君を叱るのは、君を将来一人前の搜査官にしようがために叱つているのだ、だから君もこれは率直に受けなければいけないと思う、それで、今やつておる警部試験ですな、これについても吉武君は相当骨を折つているらしい、とにかく吉武という男も将来のある男なんだから、だから君はよく一つ吉武君の、何といいますか、指導ですか、率直に受けてやつた方がいいだろうと、こう言う話を私はした記憶があります。  で、その警部試験が六月の初旬に筆記試験が行われまして、七月の十一日に多分発表になつておると思うのです。これは一遍警視庁の方へ照会でもお出しになつてお聞き願いたいと思うのです。昨年は一回きりありませんから。
  413. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊で犯罪検挙の応援する場合には必ず搜査課と連絡なさいますのですかね。
  414. 土田精

    証人土田精君) 搜査課と大体連絡するのですが、犯罪検挙というのも、そういう件事がありますと警備課が中心になりまして、そうして両方連絡するわけですな。
  415. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊が独自の立場において犯罪検挙をやるときがあるのですか。
  416. 土田精

    証人土田精君) 予備隊が独自の立場というのは滅多ないのですが、何か今まであつたでしようか。
  417. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 若しあるとすれば搜査課と連絡しておやりになるのですね。
  418. 土田精

    証人土田精君) 大体連絡すべきが妥当だと思うのですが。
  419. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の公安條例反対デモが都議会ですかどつかにありましたですね。その際予備隊独自の立場において検挙されたのですか。それはどういう理由ですか。
  420. 土田精

    証人土田精君) これは独自の立場というのも、ちよつと詳しくなりますが申上げます。申上げないと分らないと思いますが、丁度あれは五月の三十日でしたか、末日で三十日だつたと思います。二十九日に、橋本金二が前夜に死んでおるのです。その前の晩のやり口がちよつと手ぬるいというので、相当これは向うからきつい指示が来ておるのです。その翌日ですな、午後のあれは二時から四時頃まで集つておりましたのは三千名ぐらい。そのときに大体丸の内署長が現場で指揮しておつたのです。時間は四時頃までになつております。それ以上経過しますと、これは一応無届のデモになるわけなんです。まあ解散を命ずる、こういうふうな順序に行くと思うのです。それで四時三十分頃、三十五分頃ですか、私の方がまあその先に急ぎまして出てしまつたのです。いつも私の方から搜査二課に直接連絡しておりませんものですから、私は大体警備課の方で連絡があると思つた、ところが警備課の方で搜査二課に連絡をしなかつた、これが実情なんでしような。
  421. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か先程出た下山事件搜査報告書ですな、漏洩問題について、それは松本課長の責任だと言つて、あなたが御追求になつたことがありますですか。
  422. 土田精

    証人土田精君) いやございません。そんなことは全然。あの搜査なんですか。
  423. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 搜査報告書の漏洩。
  424. 土田精

    証人土田精君) そんなことは……、この間出ておりました下山白書ですか、全然ございません。
  425. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが憤慨されたとか、何かお怒になつたとか。
  426. 土田精

    証人土田精君) いや全然ございません。
  427. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 責任を追求するとか。
  428. 土田精

    証人土田精君) いや全然ございません。私はそんなことは申しておりません。
  429. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の中には、これは抽象的な話ですけれども、いわゆる総監派とか、反総監派とか、或いは実力派とかいう有資格者派とか、独身派とか、或いは友好的な関係の派閥があるとかいうふうに、いろいろなふうなことがまあきちつとしたものはないでしようが、そういうふうな例があるのじやないですかね。
  430. 土田精

    証人土田精君) ありません。
  431. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。大体質疑は終りましたから、お尋ねになることがありましたら……。
  432. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 証人と松本課長との間に、意見というか、感情というものの対立関係があつたようにいろいろ他の証人言つておりますが、そういう点はどういうふうに。
  433. 土田精

    証人土田精君) どうもその点は私も何といいますか、誠にそういうことを言い触らされて実は困つておる点なのです。ただその点を強いて挙げれば、まあ今まで、昨年起きました枝川町事件ですとか、或いは都庁事件ですとか、そういうものにつきまして公開の席上でいろいろその意見の相違はあつたわけです。この意見を闘わせたことはあるわけです。併しこれは何といいますか、警視庁が手落のない仕事をするという意味の、つまり意見の相違なんですから。まあ今まであつたのはそれだけなんです。それにですな、まあその私と松本課長の間にいろいろ対立感情があるということを言われるのは、これは松本課長も非常に残念に思つておるところじやないかと思うのですがな。
  434. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから松本二課長はその伊藤鑛壽を指揮して検挙しておりますが、それは何か外に意図があつたのじやないでしようか。何か御承知置あればお答えを願いたい。
  435. 土田精

    証人土田精君) これはまあそれは何といいますか、客観的の観察になるかもしれませんが、例えて言うならば品川警察署長というのが私から以降に四、五代人間が変つておるのですな。で、伊藤鑛壽を調べたことについてはこれはまあ搜査二課としては涜職の端緒として調べたことだから、これは当然だと思うのですが、調べておる事柄は私だけなんですよ、中心にして、外の人は殆んど調べられておらないのじやないかと思うのですよ。これが一つですな。それからいま一つは、搜査二課が調べるとすればこれは当然犯罪事実だけを調べる場合なんですよ。ところが今委員長からの話を聞いておりますと、私の封鎖預金をどうも現金に替えたいというようなことまでにも調べておるわけなんですよ。これはまあ私は委員長言つているのじやないのですよ。搜査二課に言つているのですよ。そういう点が、それから或いはその何ですが、私は五井産業事件とは全然関係がないのですな。又、佐藤の顔を私が知らないというのは事実なんです、一面識もないんですから。それにも拘わらず五ケ月も前にあつた事件を十月まで引張り延ばして、そうして而も内容を変えて私が何かどうも事件の牽制でもやつたようにくつつけた点、こういう点から客観的に考えていろいろ世間では批判しておるのじやないか、こういうふうに私は考えております。
  436. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると松本課長伊藤鑛壽を引張つたということは涜職事件には関係あるのだが、そういうことは全然まるきり調べないで結局はあれですか、承認を最初から狙つた形でやつてつたのじやないですか。
  437. 土田精

    証人土田精君) そのことは松本課長の性格もよく知つておりますが、私の官舎と隣合せておるのです。ですからそういう常識を欠いたことはないと私は信じておるのです、これは松本課長には。併し結論的にいうとどうもそういう恰好になつて来たわけですね。併しその点については私は松本課長も立派な男なんですから、そう馬鹿なことはしない、こういうふうに信じております。
  438. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから吉武、折田、日野こういう連中と松本課長との間に、やはり先程委員長さんが言われましたようないろいろな関係で、感情上その他のことで折合いがうまく行つていないような事実はあつたでしようか。
  439. 土田精

    証人土田精君) そうですね。日野君、折田君、吉武君の問題は私はあまり知りません。そういうふうな噂は聞いております。
  440. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから次は松本課長伊藤鑛壽から何か饗応にでも與かつた、こういうような噂を聞いたことはありませんか。そういうことはお耳に入つたことはありませんか。
  441. 土田精

    証人土田精君) 噂に聞いております。
  442. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから味の素事件でですね。吉武当時の係長が何か揉消をしたというようなことも言われておりますが、そういうふうなことは事実はどうですか。
  443. 土田精

    証人土田精君) それは吉武君に限つてそんなことはないでしようね。例えて言うならば私の記憶なんですが、昨年の八月の末か九月頃じやないでしようか、丁度味の素の鈴木が在宅起訴になつた時ですが、あのとき私の所に来て非常に怒つておりました。本人は在宅起訴なんということは未だ曾てないことだということを本人は言つておりました。それで検事局に宗像主任をやつて抗議を申込むというようなことを言つておりました。
  444. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そういうようなことを吉武が言つておるとすれば、味の素事件で吉武は揉消をしたというようなことはなかつたわけですね。
  445. 土田精

    証人土田精君) ないと私は信じております。又彼の性格から見てそういうことのできる男じやないのです、吉武という男は。
  446. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それでは松本課長が特に吉武を排斥というか、毛嫌いしておるとかそういうようなことを御覧になつたことはありませんか、特に。
  447. 土田精

    証人土田精君) そうですね、吉武君からの丁度下山事件で私の所に来ておるときのその頃の話では、そういう話はちらちら出ておりましたな。
  448. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 最後に一点。五井産業事件というものが新聞で非常に大きく書き立てられておりますが、この五井産業事件、それから伊藤鑛壽事件という、一体なぜこういうような形で大きくなつて来たか、いわゆる警視庁という一つの機構の中の本当の小さい、いわゆるこの中の又一部分である二課の又その下の方の主任の所にやつて来て、小さい事件がこのように大きく現れて来ておるのですが、何かこれについて特別の御感想でもありますか。
  449. 土田精

    証人土田精君) そうですね。私はやはり今警視庁の何といいますか、現職の警察官の中では搜査二課の経験というものは私が一番多いのです。調べに当つて感情を交えることが一番惡いのじやないか。冷静な立場で冷静に判断すれば事件というものは大体真実が浮び上つて来ると思うのです。ところがそこに私情が入つて来ると、どうしても事件が無理になつて来るのです。今度の事件なんか見ましても恐らく第一線を調べた諸君、例えて言うならば宗像君にしても加島君にしてもそういう点について多分私情が入つて来て、それがために事件というものが非常に歪められておる。こういうふうに私は考えております。例えて言うならばですよ、二度繰返して言いますが五ケ月前にあつたことを、常識で考えても五ケ月後にくつ付けて、而もその上に先程も言いますように全然趣旨が違うにも拘わらず、事件に対して牽制をしたというに至つては、これはそういう点ではつきり分るのじやないかと思います。私は大体そういう感じだけ持つております。
  450. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから犯罪があるないは別として搜査のすべての事件搜査の段階にあり、そうしてそれが又公判請求ということもあつたという場合、実際に事件にも何もならなかつたというようなものが、事前に例えば今月の四日、五日に殆んど日本中の新聞に出た。我々がここでいろいろとお尋ねしようと思つても、ああいうようなことがもう詳細に新聞に発表になるというようなこと。これはその人の名誉のためにも誠に残念なことでありますが、一体どういう形でああいうようなことになつたのかということで何か聞き及んだというようなことはございませんか。
  451. 土田精

    証人土田精君) 別に私は……。
  452. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 何か事情があつて、誰かがああいう話をしたものか。そういうことは庁内においていつか話が出るであろうと思いますが、何かお耳に入つているようなことはございませんか。
  453. 土田精

    証人土田精君) 別に聞いておりません。ただああいう発表というものは、事件の生れるというのは、検事局のやはり調べた方の責任者より外にないでしようね。他は誰も知らないわけですから。
  454. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると、検事局ばかりでなしに警視庁でも相当の係の方は知つているわけですね。
  455. 土田精

    証人土田精君) それ以外には内容を知つた者はないのですから、ああいうものは。
  456. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 ああいうようなことは、ちよいちよい事件の進行中にやはり発表せられたこともあるのですか、警視庁で。
  457. 土田精

    証人土田精君) 前古未曾有のことでしようね。私の聞くところでは未だ曾てこういうことはないでしよう。
  458. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 我々もそういう工合に承知しているのでありますが、あまり詳細にもう殆んどあれが全部事実として見ると、どなたも喚んで調べる必要がないかのように思う。我々もいろいろ証人を尋問する場合においても、あの新聞を種にして調べて行く方が誠に簡明であつて、一面においては非常に助けにもなつておる。こう思つておりますが、珍しいことが行われたと思いますので御承知であればと思つてお尋ねしたのですが、よろしうございます。
  459. 大野幸一

    ○大野幸一君 ちよつとお尋ねしますが、先程吉武さんというのが搜査の二係長であなたが予備隊長であつたのですね。
  460. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  461. 大野幸一

    ○大野幸一君 それで仮に一万円を贈つても差支ないじやないかというお話なんですが、どういう金を仮にやつても差支ないというのですか。自分の金を小遣いとしてやるのは差支ない、こういう意味ですか。
  462. 土田精

    証人土田精君) 私は一万円やつてもかまわないじやないかとは言いません。先程委員長からの質問は、こういう質問ですよ。
  463. 大野幸一

    ○大野幸一君 仮にやつてもいいじやないかという。
  464. 土田精

    証人土田精君) いやそうじやないのです。委員長からの御質問はこういう質問です、金は課長を通じてやるべきものか、それから直接やつていいものか、こういうことです。分つたですか。吉武君ですね、ですからそれならば、何も課長を通じないでも、吉武君に直接やつて差支ないのじやないか、こういう話をしたのです。一万円の問題は言つていないのです。
  465. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうですか。仮にあなたが一万円吉武にやるというようなことは、これは惡いことですね。個人的に庁内においてやはり一部の人が金をやるということは、政党の中で……。
  466. 土田精

    証人土田精君) あなたのは観念論ですか、実際論ですか。
  467. 大野幸一

    ○大野幸一君 観念論。
  468. 土田精

    証人土田精君) 観念論なら差支ない、小遣は誰がやつたつて差支ないでしようね。
  469. 大野幸一

    ○大野幸一君 ところが政党内部でも理想的政党からいうと、一部の人が代議士に金をやるのは、やはり派閥を生じてよくないという議論があるくらいで、ましてや役人が一部の人に金をやると、金によつてそこに派閥が生じやしないか、こういう意味でお尋ねしているのです。
  470. 土田精

    証人土田精君) そうですかそういう点から言いますとお説の通りですな。
  471. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから、何かあなたが、宗像さんを喚んだときですがね、この間宗像さんのお話によると、その何とかの試験についても骨を折つたと、こういうことを言つた、骨を折つたのは吉武ではなかつたかという話だつたが、あなたは骨折つておると、こういう。それは試験が済んだあとか、前なんですか。
  472. 土田精

    証人土田精君) 骨折つたならば、彼は合格しているでしよう。
  473. 大野幸一

    ○大野幸一君 吉武さんが骨折つたのですか。
  474. 土田精

    証人土田精君) ですから、吉武君が骨折つておるというのです。これなら話ができるのです。本人が落第したのに骨折つたといつたつて、骨を折つたことにならないでしよう。ですから話しは前だということになる。だから私の話が本当だ、こういうことになるのですね。
  475. 大野幸一

    ○大野幸一君 けれども骨折つたけれども駄目だという場合もある。
  476. 土田精

    証人土田精君) そういう話はありますね。あるかも知れませんね。
  477. 大野幸一

    ○大野幸一君 季節の関係では何月頃ですか。例えばどんな服装ですか。
  478. 土田精

    証人土田精君) 私の服装ですか。
  479. 大野幸一

    ○大野幸一君 関係者。
  480. 土田精

    証人土田精君) これは夏ですよ。
  481. 大野幸一

    ○大野幸一君 私はちよつと、若しこれから二、三聽いて重複したら注意して下さい。伊藤鑛壽が洋紙の闇にひつかかつたことがありますね。これは御存じですか。
  482. 土田精

    証人土田精君) あとで聽きました。
  483. 大野幸一

    ○大野幸一君 いや、あとでというのはいつ頃、事件がどうなつてから。
  484. 土田精

    証人土田精君) その事件の直後ですね。
  485. 大野幸一

    ○大野幸一君 事件が起きて直後。
  486. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  487. 大野幸一

    ○大野幸一君 その事件はどうなりました。
  488. 土田精

    証人土田精君) その事件は私は知りません。
  489. 大野幸一

    ○大野幸一君 伊藤とあなたとの間は相当懇意であつて伊藤が訪ねて行くようなことはなかつたのですか。
  490. 土田精

    証人土田精君) 伊藤ですか。
  491. 大野幸一

    ○大野幸一君 ええ。
  492. 土田精

    証人土田精君) 伊藤はあれですな、その後私の聽きましたのは、私と伊藤との間ですが、これはまあ失礼ですが、あなたは弁護士ですか、資格は持つておられるのですか。
  493. 大野幸一

    ○大野幸一君 うん。
  494. 土田精

    証人土田精君) それならお分りだと思いますが、大体あれでしよう、私と伊藤との間というものはいろいろ私的の関係がありますが、それで私は動けないでしよう。それはどうですか。
  495. 大野幸一

    ○大野幸一君 そんな立派な態度を……。
  496. 土田精

    証人土田精君) それはそうだと思います。私はそういう良心を持つておりますよ。なければ動けますね。あれば動けませんよ。ですから私はその問題については全然動いておりません。
  497. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁内部で皆そういう考えを持つておりますか。
  498. 土田精

    証人土田精君) 良心のある警察官はそうでしようね。私はそう思いますね。自分が関係しておつて、そうしてそれで動いたのじや動けないでしよう。
  499. 大野幸一

    ○大野幸一君 警察署長をやつておると月に何回ぐらい御馳走になる、会食になるのですか。
  500. 土田精

    証人土田精君) こいつはどうもあれでしよう、その場所によつて違うでしようね、警察署のある場所によつて
  501. 大野幸一

    ○大野幸一君 それはそういうときには、今日一席設けたいというと、差支なければ行くものですか、実際問題として。
  502. 土田精

    証人土田精君) そうですな、私は今まで警察署長を二ケ所もやつておるのですが、一番多かつたのは澁谷です。大体においては私は断つていた方です。それでまあ止むを得ない、例えて言うならば組合とかなんとか半公的なものですね。そういうものには出ています。
  503. 大野幸一

    ○大野幸一君 さつき委員長の聽かれた、澁谷の人が呼んだら行つたというのは、あれはどういう関係ですか、関係はないですね。
  504. 土田精

    証人土田精君) これは今言います通り私共の大先輩なんですよ。
  505. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁の。
  506. 土田精

    証人土田精君) そういう関係です。
  507. 大野幸一

    ○大野幸一君 何かものを頼むときには人の名義でやつて置いて、あとからぽつと本人が出て挨拶で誤魔化す……。
  508. 土田精

    証人土田精君) そういうこともありますね。私は調べておつてそういうことは始終出ております。その場合はそこでの話は選挙の話は出ていないのですから。
  509. 大野幸一

    ○大野幸一君 出さなくても向うは了解を得たと思うだろうが。
  510. 土田精

    証人土田精君) 江副さんにしたところで私共の先輩なんです。警視庁で情報課長もやりそれから警察署長もやつているのですから。
  511. 大野幸一

    ○大野幸一君 そこでやはり先輩が来るのが危いように思うがね。先輩に御馳走になるということが、先輩から先輩に通じて手ずるで働きかける……。
  512. 土田精

    証人土田精君) 仰せの通りです。
  513. 大野幸一

    ○大野幸一君 そういうわけですね。
  514. 土田精

    証人土田精君) はあ。
  515. 小林英三

    ○小林英三君 土田証人にお伺いしますが、この五井産業事件のそもそも最初に、これは我々法務委員会というやつは五井産業事件を中心として、裁判並びに検察の運営に関する問題としてこの問題を扱つているわけなんですが、委員長から最初この法務委員会にこういうパンフレツトを配られている。御覧に入れますが、これは私はその当時委員長にこういう責任者の書いてない、むしろ我々から見れば怪文書だと思うようなものを、神聖なこの法務委員会に配ることはどうだということの質問をしたのですが、これは委員長として一つの参考資料、警視庁人事の組織を列記してある参考資料、こういうようなお言葉で我々は今までこれを持つているのですが、そこで土田証人警視庁におきましても相当な地位にあられるのでありますし、陰謀の走狗警察庁を民衆の手によつて粛正せよ、それから昭電事件、味の素事件、繊維事件、何々事件、何々事件は何故葬り去られたか、又葬り去られようとしているか、それから警視庁追放と特攻ボスの伏魔殿と化している、こういうような大きな見出しの下に、警視庁の人事いわゆる特攻グループとか何とかいうような関係が列記してある。これは現在こういうものが一種の怪文書ぐらいにしか考えておりませんけれども、併し委員長は一つの参考資料としてという意味で、一番最初お配りになつた。誰か印刷したやつをお配り下さつているのですが、これはあなたに一応御覧に入れて、こういう警視庁内における人事の組織というか、或いはグループの繋がりというものがあるかどうかということをはつきりお聽きしたいと思います。
  516. 土田精

    証人土田精君) 田中総監以下のものはいいと思うのですが、あとはないでしよう、こういうものは。田中総監、大園警務部長、原部長、それから私共、これはもうしようがないでしようがね、あとは想像じやないのですか。私はそう思いますね。
  517. 小林英三

    ○小林英三君 問題にならないですね、上の方は。
  518. 土田精

    証人土田精君) まあ私はそう思いますね。想像ですね、これは一つ。
  519. 小林英三

    ○小林英三君 それからこの五井産業事件という問題は、私共が従来法務委員会を何回も今日まで重ねまして、いろいろこれの関係証人お出でを願つて、いろいろお訊きしておるのですが、先程の遠山委員からもちよつとそういう質問があつたようですけれども、我々は最も奇異に考えることは、この内容というものは佐藤昇の、いわゆる金を最初二十三年春頃から撒いた問題、昨年暮あたりに五つの詐欺事件を起こしておる問題、これはまあ取調によつてどうなるか分りませんが、まあ詐欺事件を起しておる問題、取調が進行中である問題、もう一つは伊藤鑛壽という人もいろいろ関係しておるというようなことになつておる。ところがこれだけの今まで我々が調べた問題を、いわゆる五井産業事件として天下に国民の疑惑を持つに至つたことは、先程遠山委員からも御質問がありましたように、我々が信ずることのできないようなこの内容を、如何にも事あれかしに新聞その他に発表する何者かがある。これは何を利用しようとして言つたか分りませんけれども、とにかく何者かがあると我々は見なくちやならん。我々がいろいろ関係者を証人に喚んで、そうして詳らかにしようとしておりますこの経過におきまして、我々は今日この問題を考えますと、何者かが後で踊つて、そうしてまあ我々が政治問題として、或いは天下に国民の疑惑を生ぜしめるような問題でないものを、恰も問題であるかのごとくにしてやつておるように強く思われる。でどうでしようか、先程遠山委員も御質問がありましたようですけれども、従来のこういう取調中において、事件がこう細かく外に発表されるということはないということを、先程証人がおつしやつておりましたけれども、この問題は証人としてどういうふうにお考えになるでしようか。それが若し証人として御意見が述べられれば一つ述べて頂きたい。
  520. 土田精

    証人土田精君) この事件の背後に何かあるという問題ですか。
  521. 小林英三

    ○小林英三君 ええ。
  522. 土田精

    証人土田精君) そうですな。まあ松本課長の性格からしますと、これはまあ委員会でも彼は大体お分りと思いますが、そう腹の太い大胆な人とはちよつと私共も思わないのですがね。ですから背後に何かあると思うのですが、併し私はその背後は何ものかということは私にはこれは分りませんな。
  523. 小林英三

    ○小林英三君 先ず読売新聞でありましたか、最初にこの問題を取上げた際につまり調書を基として記述されましたが、あれは我々から考えますと、苟くも專門家であつてみれば、この問題は、これが問題になる、これは問題にならんということはまあ大体分るわけで、はつきりしておるわけで、併しその外の問題は問題になるか問題にならんかということは、これは検察当局に渡つて行かなければ分りませんけれども、素人が考えつて問題になるか問題にならんかは分つておる。例えば増田官房長官の問題、或いは荻外荘の吉田現総理の問題、こういう問題が問題になる、ならんか、はつきり分つておる。素人が考えても分つておるわけで、これを殊更に取上げて、そうして一連の五井産業事件というものを天下に発表するという、このことには何らかそこに大きな糸を操るやつがおつて、これを例えば自由党の来たるべき参議院選挙における妨害をするとか、何か意図があつてつておるものと考えなくちやならんのですが、それから出所というものも、やはりそういう方面にも誰かが結託してやつておるというように想像できるのですが、どうですか。
  524. 土田精

    証人土田精君) そういう点になると私も分らないのですがね。政治の問題に余り関心を持つておりませんから、ちよつと分りかねますが、ただ事件全体としてあらゆるところに無理があるということは私も考えております。例えて言うならば、まあ佐藤あたりの事情を見ても、大体これは主任が若いですよ、私に言わせるならば、調べた主任が経験も少いし若いのです。そこへ持つて来て私情が入つておるものですから、段段常識で判断できないような結論を出して来るわけなんです。そういう点が私はあると思います。例えて言うならば現金をやつたとしても、この現金をやつたことは職務に関しなければ、これは駄目なのですから、向うが職務権限がなければ犯罪が成立しないのですから、それにも拘わらず何もかも押付けてしまう。それから伊藤あたりの問題にしても、良識のある搜査主任ならば、疎開の話が出ても、あの当時警察署長疎開認許の権限を持つてつたかどうかということは一応調べて、その上でこれは調書に私は取らなければならんと思うですね。それから先程のお台場の炭の問題にしても、私共は誠に意外と考えておるのですがね、そういうところは。まあその程度です、私の考えておりますことは。
  525. 小林英三

    ○小林英三君 今証人の遠山委員の質問に対するお答えの、いわゆる五井産業事件というものは曲げられておるというようなことなんですね、結局。委員長、私はこれで結構です。
  526. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 証人に二、三伺いたいのですが、吉武さん或いは日野さんという方は証人と非常にお近しい関係にあるのですか。
  527. 土田精

    証人土田精君) いや、ですから先程もちよつと申上げたんですが、あなた御出席なかつたと思うのですが、吉武君だけは二回一緒の所で仕事しておるのです。だから、これは親しくないといつたところが通らん話ですが、併しその外の人はこれは私は全然育ちも別ですし、それから一緒に仕事したこともないのですよ。
  528. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうして吉武さんとは密接な関係をお持ちになつておられた。
  529. 土田精

    証人土田精君) これはあります、或る程度まで。
  530. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、吉武さんが佐藤という方と非常に親しいということは、いつ頃から御承知だつたんでしようか。
  531. 土田精

    証人土田精君) 私は親しいという話は聞いておりませんね、最後まで。余り親しくないでしよう、彼は。そうたびたび会つていないわけですよ、これは。私はそういうふうに聞いておりますな。
  532. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その警視庁の中で、あなたのいつもいらつしやる所と吉武さんのいらつしやる所とは、相当離れておるのですか。
  533. 土田精

    証人土田精君) 別棟なんです。私のは警視庁の裏側に別に庁舎がございましてそこに私がおります。
  534. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 予備隊
  535. 土田精

    証人土田精君) 予備隊の庁舎ですな。
  536. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その吉武さんの御自身の御証言で、昨年の七月中頃から、下山事件当時なんでしよう、佐藤さんが毎日見えていたというのですね。
  537. 土田精

    証人土田精君) どこにですか。
  538. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 吉武さんの所へ。
  539. 土田精

    証人土田精君) 私は知りません、それは。
  540. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうしてそれは田中総監の御証言では、田中総監も昨年の八、九月頃から、田中総監のお言葉通り引用しますと、佐藤という方が警視庁及び消防総監、その他官庁に頻繁に出入りする好ましからざる人物又は官庁ボスだとして、これは警戒しなければならんというように御承知になつていたという御証言なんです。それであなたが御承知がないとすれば、まあこれは止むを得ないのですが、あなたの御承知がないことでも、まあこれは吉武さんを中心に起つて来る誤解なんですが、つまりあなたは吉武さんを信じておられる。併し地面においてはあなたの御承知のない関係において、吉武さんの所へ佐藤さんという方がしばしば見えて、それが好ましからざる官庁ボスであるということである、こういう場合に吉武さんに関する問題で、あなたの御判断と田中総監なり或いは他の方の御判断と食い違いが起つて来ることはありますね。
  541. 土田精

    証人土田精君) どういう点ですか、それは食い違いの点は。
  542. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 食い違いの点は、今申上げたように、吉武さんの主観的な意図は全然純潔であつた考えてもいいのですが、併し客観的に好ましからざる官庁ボスが大変そこに出入しておられる。そうしますと、客観的にはその佐藤という方が関係しておるような事件には、吉武さんが直接関係されない方がよいという判断がなされるのですね。
  543. 土田精

    証人土田精君) その近しいというのは程度の問題ですな。これは頻繁に会うから必ずしも近いのじやないし、これは数多く会わなくても、親交があるというのは別の問題ですから、回数とそれとは別個の問題ですね。
  544. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、そういうことを伺つているのではなくて。
  545. 土田精

    証人土田精君) 率直に一つお聽きして呉れませんか。
  546. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、そうじやないのですよ。
  547. 土田精

    証人土田精君) 私は非常に気が短いものですから、ぐつと要点だけ一つお聽き願いたいと思いますが。
  548. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 気を短くしないでゆつくり伺つて下さい。
  549. 土田精

    証人土田精君) 私、頭が惡いですから、あなたのお話を伺つている間に、先の方を忘れて来るのです。頭が惡いのでしようね、どうも。
  550. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 余計なことをおつしやらんでもよろしい。殊にあなたさつき言われるように、搜査のことに関しては自分が最も練達だというふうに聞えるようなことまでおつしやつていたですから、つまり問題が非常に縺れて来ておることの一つに、今もあちらの委員からお尋ねがありましたが、派閥というものがあるかないか分らないが、併し或る人が自分の判断だけが正しいというように考えて来ると、他の人の意見と合わない、そういう場合が生じて来る。ですから吉武さんという方を中心に、一方からは疑惑が吉武さんにかかつているわけではないでしようけれども、併し吉武さんの周囲には疑惑のかかつている人物が、あなたのおつしやる通り、どの程度親しいか分らないが、かなり頻繁に出入しているという事実がはつきり分つている。そういうような判断に基いて、吉武さんに対していろいろな判断が行われている。それを、そういう事実を御承知ないあなたから見れば理解できない。従つてその場合に、そつちの方面から判断されているような吉武さんに関する判断に対して、あなたとしては違う判断が出て来るわけですね。そうすると客観的に見ると、何かあなたが吉武さんを不当に庇護しているのじやないかという感じが抱かれて来るというようにはお考えになりませんか。
  551. 土田精

    証人土田精君) 私ですか、そうですな、私はそういう考えは持つてないのですがね。或いは客観的に見るとそういう説も成り立つかも知れませんよ。
  552. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、あなたが搜査の專門家として、あなた御自身の場合でなく客観的に眺めてみて、そういう場合には客観的に見ると、あなたは佐藤さんという人を知つておるのか知らないか分らないのですが……。
  553. 土田精

    証人土田精君) 知らないですな。
  554. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 客観的に見れば知らないのかも知れない、或いは知つておるのかも知れない。その事情を知つておれば、吉武という方について、あなたとは意見が一致すべきなのにそれが一致しない。そうすると、これはつまり不当に庇護しておるのじやないか。つまり派閥的に動いたのじやないかという判断も、客観的に下されることをお認めになるかというのです。これは非常に重要な問題だと思のです。
  555. 土田精

    証人土田精君) あれですか、吉武君と佐藤が非常に親しいという、こういう前提なんですか、あなたの御前提は。
  556. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 吉武さん御自身がお認めになつているのです。親しいというよりも頻繁に佐藤という方が……。
  557. 土田精

    証人土田精君) だからその前提をもう一遍御検討しなければ駄目なんじやないですか。後の結論は出ないのじやないですか。親しいということとそれから回数多く会うということは、これは別個の問題ですね。
  558. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 別個の問題ですが、併しあなたが客観的に御覧になつて、私情を交えてはならんということをしばしば言つておられたが、私情を交えないで、或る警察官の所に或る疑惑のある人物が頻繁に出入する、親しいかどうか分らない、親しくなければ非常に結構であるが、併し頻繁に出入するからには、多少親しくなるのじやないかという疑惑、用心深くお考えになる方が、恐らく至当じやないかと思のです。
  559. 土田精

    証人土田精君) そういう議論も一応成り立ちますね。併し全面的に私はあなたの前提には賛成しかねますね、役所で回数を沢山会つたから親しいというような前提は。
  560. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併しそういう点にもあなたが少し独断的というか、あなたは私情を交えないというふうにさつき頻りに言われますが、これはあなたの場合には当てはまらないと思うが、心理学上或る方が或ることを言われるのは、むしろ御自分にそういうことがある場合に多いのです。例えば戰争中に愛国者とかそういうことを非常に言われた方がありますが、戰争中愛国者と言つた方は、本当に国を愛する方でなかつた場合が多いのです。そういうようにこれを心理学的に見る場合に、私情を交えてはいかんということは、これはあなたがおつしやるまでもなく当然な御主張なわけです。それをあなたが声を大にして言われることは、あなた御自身の自己反省というものが十分あることと私は信ずるのです。そういう意味で、今のようなこれは行政上というか、司法上というか、そういう直接に搜査権などを持つておられる方の所に、好ましからざる人物が殆んど隔日又は毎日というふうに、吉武さん御自身がおつしやつておるが、それが見えて、吉武さんは勿論志操堅固の方ですから、毎日見えようと夜見えようと、動かされないということは信じられるのですが、併し客観的に眺めてみると、それは吉武さんは飽くまでも信じたいが、併しその人の所に毎日好ましからざる人物が来ておる。そうして吉武さんの方ではそういうように認めないでも、好ましからざる人物が他の方面に行つては、自分は吉武さんと親しいということは言い得るのですから、ですから私情を交えないであなたが御判断になれば、これはこの際吉武さんには非常にお気の毒だけれども、本人はそういう気持はないのだが、いろいろな誤解が生ずる。従つて佐藤君なり何なりが関係しておる事件については、吉武さんは直接関係されない方がいいんじやないかという判断を下すということは、客観的に見て妥当じやないでしようか。
  561. 土田精

    証人土田精君) これは私は言つておきますが、役人の機構というものはそういうものじやありませんね。例えて言うならば搜査二課には主任は二十人近くもおるでしよう。その主任の誰を使おうと差支ないのですよ。いいですか。これは課長の随意で誰を使つてもいい。而も役所の機構としては仕事をするのには、課長から係長それから主任という順序になつておるのです。吉武君を抜き係長を抜いて主任にやらせるということは、これはその方が大きな罪じやないですか。私はそう思いますね。これはやはり、それならばその主任でなく、外に係があるのですから、上田君の係の主任にやらせるのが本当でしよう。
  562. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことをあなたは私にお聽きになるのですか。
  563. 土田精

    証人土田精君) あなたに答弁するということですがね。あなたに聽くのじやなく答えておるのですが。
  564. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大変あなたはどうも独断的なような心証を受けるのですがね。
  565. 土田精

    証人土田精君) そうですか、私は独断とは思えないのですが。これは役人として大体常識です。
  566. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私の言うことを、あなたは何ら御理解にならないで。
  567. 土田精

    証人土田精君) いや、あなたの言うことを聽いておるのですが、どの点を理解しないのですか。あなたの質問はぴつと来ないですよ。やつぱり私は頭が惡いのですよ。もう少し率直に言つて下さい。
  568. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 本当にあなたは頭が惡いとお考えなんですか。
  569. 土田精

    証人土田精君) 本当に私は頭がよくないと思つております。あなたの話が理解できないのですからしようがないと思います。
  570. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私はつまり警察行政とか或いは検察とかということについて、日本が過去においてはいろいろ間違いが多かつた。これは御承知の通りです。短い間に民主化をしなければならぬ。それについてどういうところに尚いろいろな問題があるのかということを明かにしなければならないので、あなた御自身とか今問題になつておる人の個人だけを必ずしも問題にしておるでのはない。併しいわゆるさつきから御質問があるように、派閥があるのじやないか、感情の対立があるのじやないかというような点ですね。
  571. 土田精

    証人土田精君) 結論はどうなんですか、結局何ですか、吉武君の所へ佐藤がしよつちう出入しておつた、それをつまり宗像君に搜査させるのには吉武君を除いて搜査させてもいいのじやないか、こういう御質問なんですね。
  572. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そんなことは聽いていません。
  573. 土田精

    証人土田精君) 分らんな、私はちよつと分りませんな。
  574. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 分ろうとなさらない。それから第二にそれじや伺いたいのは、さつき委員からの御質問もありましたが、この現在の事件が新聞紙に盛んに発表される、これを前古未曾有だというふうにあなたはおつしやつたのだが、これはあなたのお考えとしては、今日の新聞紙がその自由な取材活動を以て、いろいろな問題について成るべく早く国民の注意を喚起するという自由を、八月十五日以前よりも全く違つた意味において持つているという意味を否定なさるわけじやありませんね。
  575. 土田精

    証人土田精君) そうじやありません。あなたのお説の通りです。
  576. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから最後に伺いたいのですが、この伊藤さんに最近、と申しますのは四月になつてからお会いになつたり、或いは電話をおかけになつたことがおありですか。
  577. 土田精

    証人土田精君) 会つたことはありますな。
  578. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いつ。
  579. 土田精

    証人土田精君) そうですな、四月の三、四日頃でしような。
  580. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 三、四日というと、新聞に非常に大きく発表されたのは四月五日のことですが、その前ですか。
  581. 土田精

    証人土田精君) 前でしような。
  582. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはどういう……。
  583. 土田精

    証人土田精君) それはね、こういう意味なんです。私が本年二月ごろですか病気をしたのですよ、そのときに彼が見舞に来ていますがね。二月から三月頃にかけてですか見舞に来ております。そのとき伊藤の話ではですな、これは私は成るべく話したくないと考えておつたのですが。
  584. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや差支ない。
  585. 土田精

    証人土田精君) まあ話しますよ、あなたにそう聽かれた以上しようがないですからね。何といいますか、搜査二課に検挙されて、そうして殆んど私を中心に調べられたと、こう言うのです。この話を彼するわけなんです。それから例えて言うならば彼の……。
  586. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 私とおつしやるのは土田さん……。
  587. 土田精

    証人土田精君) そうです、それから彼の何といいますか、雇人等の搜査を昨年の六月頃から始めたと、こう言うのです。これはまあ伊藤君というのは話が変るものですから、どこまで真実性があるか分らないのですよ、その点については。私は一応その話をこれはできるならば答申書にとつて、そうして今日のこの法務委員会に持つて来て、ここでお見せしたい、こういうふうに考えていたのです。そのために会つたわけなんです。これは不幸にして取り得ませんでした。
  588. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ありがとうございました。
  589. 松井道夫

    ○松井道夫君 私からお尋ねいたしますが、警視庁予備隊というのはどういうことをするものなんですか。
  590. 土田精

    証人土田精君) 予備隊ですか、暴動その他の鎮圧、警戒ですな。これが目的でしような、主として。
  591. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから更にお尋ねしますが、先程から搜査二課の搜査に私情が入つてつたと認められるという趣旨の御陳述がありましたね。それは伊藤事件、佐藤事件ですね、それを通じてそう感じておられるわけですね。
  592. 土田精

    証人土田精君) 私はそう感じております。
  593. 松井道夫

    ○松井道夫君 私情というのは一体何ですか、あなたの言われる私情というのは。
  594. 土田精

    証人土田精君) 感情でしような。
  595. 松井道夫

    ○松井道夫君 どういう感情。あなたそこまで考えておられない……。
  596. 土田精

    証人土田精君) 例えて言うならば……。
  597. 松井道夫

    ○松井道夫君 例えるのでなしに、具体的の事件としてどういう感情が入つておられる。
  598. 土田精

    証人土田精君) 私なら私に対して憎しみを感ずるでしような。
  599. 松井道夫

    ○松井道夫君 それは伊藤事件ですね。
  600. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  601. 松井道夫

    ○松井道夫君 佐藤事件については。
  602. 土田精

    証人土田精君) これは私直接タツチしておりませんから想像の話になりますね。
  603. 松井道夫

    ○松井道夫君 的確なことは言えないわけですね。
  604. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  605. 松井道夫

    ○松井道夫君 ところであなたは今の佐藤事件に関してだろうと思いますが、吉武係長を除外して宗像主任から直接松本課長の指揮を受けてやつてつた、そういうことは先程の委員からのお尋ねですね。そういう結論は出て来ないのかと言われたのですが、そういう事実はあなた承知していらつしやるのですか。
  606. 土田精

    証人土田精君) それは吉武君から聞きました。
  607. 松井道夫

    ○松井道夫君 いつ頃お聞きになりました。
  608. 土田精

    証人土田精君) それは下山事件の話の間にちよつと聞いておりました。
  609. 松井道夫

    ○松井道夫君 下山事件
  610. 土田精

    証人土田精君) 事件の話の間に。
  611. 松井道夫

    ○松井道夫君 それは佐藤事件についてじやないのですか。
  612. 土田精

    証人土田精君) そうじやないのです。自分が狙われておるらしいという話。
  613. 松井道夫

    ○松井道夫君 狙われておる。
  614. 土田精

    証人土田精君) 吉武君自身を目標にしてやつておるらしいという話を。
  615. 松井道夫

    ○松井道夫君 何事件ですか。
  616. 土田精

    証人土田精君) つまり……。
  617. 松井道夫

    ○松井道夫君 佐藤……。
  618. 土田精

    証人土田精君) はじめの頃は佐藤事件とは聞いておりませんでした。何かやつておるらしいという話をちよろりと聞きました。
  619. 松井道夫

    ○松井道夫君 その後今の佐藤事件について吉武氏から自分を除外してやつておるというような話をお聞きになりませんですか。
  620. 土田精

    証人土田精君) そういう話を聞いたか知りませんな。
  621. 松井道夫

    ○松井道夫君 聞いたか知らん……。それで先程あなたは宗像主任に対して今の事件に関連して話した、こう言われたのですが、その外に宗像主任に今私の聞いた吉武係長を除外してやつておるというような関係でお話になつたような事実はありませんか。
  622. 土田精

    証人土田精君) ありませんね。一遍しか会つておりませんので。
  623. 松井道夫

    ○松井道夫君 宗像主任には一遍しか会わない。
  624. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  625. 松井道夫

    ○松井道夫君 呼んだのは一遍だけ。
  626. 土田精

    証人土田精君) そうです。
  627. 松井道夫

    ○松井道夫君 結構です。
  628. 土田精

    証人土田精君) あなた搜査に非常に長い間の経験ですから、本当のあなたの何といいますか、経験から来る御判断を求めたいと思うのだが、被疑者をばつと逮捕して来ますと、一体幾日目くらいにぽつぽつ本当のことを言うものですか。ぱつと来てその日に言うことが多いか、四五日が多いか、十日くらいか、こういうのですがね、どうですか。
  629. 土田精

    証人土田精君) それは被疑者にもよるでしような。
  630. 大野幸一

    ○大野幸一君 通常。
  631. 土田精

    証人土田精君) 大体あれでしような、一週間以内ですね、一週間というのが山でないでしようかね。
  632. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから犯罪事実と犯罪事実以外のことに対してとは、被疑者は警戒を異にしている、犯罪事実以外のことに対しては比較的すらすら述べるものじやないでしようか。
  633. 土田精

    証人土田精君) まあね、被疑者の性格にもよるですね。
  634. 大野幸一

    ○大野幸一君 通常。
  635. 土田精

    証人土田精君) 通常はあなたの説になるでしようね。併し被疑者の性格によるです。
  636. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから今警視庁の取調、あなたは、終戰後あの臨時措置法あたりで大分変りましたわね、あれから以後の警視庁の取扱については被疑者に余り無理を強いて供述されるようなことはないですか、それは。
  637. 土田精

    証人土田精君) 分りませんな、全然。
  638. 大野幸一

    ○大野幸一君 いや、あなたはどうですか、あなただつたら。
  639. 土田精

    証人土田精君) 私といいましても、想像のつかんところですな。
  640. 大野幸一

    ○大野幸一君 いやそれはおかしいですね、だからちよつと羽仁委員の言う通り、あなたの主観はおかしいと思のです。すべてああいうところへ入ると頭が少しどうかなると思うのです。あなたは、要するに近頃警視庁は余り昔のように拷問したり、無理な調書を作るか作らないかということに関して、あなたはどう考えるかということです。
  641. 土田精

    証人土田精君) それはまあ主任にもよるでしような。
  642. 大野幸一

    ○大野幸一君 主任にもよつてはあるのでしようか。
  643. 土田精

    証人土田精君) あるかないか私には分りませんな。
  644. 大野幸一

    ○大野幸一君 分りませんか。
  645. 土田精

    証人土田精君) 分りませんな、私には。
  646. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁証言というものは、あなた方自身が否定しているのですか。
  647. 土田精

    証人土田精君) 警視庁証言というのはどういうことですか。
  648. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁の調書を、そんなことが分らないか、主任によつて違うか違わないか分らないか。それで警視庁全体の名誉を保たれるのですか。
  649. 土田精

    証人土田精君) これは併ししようがないでしような、その主任によつてそういうことがありますですな。
  650. 大野幸一

    ○大野幸一君 はあ。
  651. 土田精

    証人土田精君) それから被告の状況にもよりますが、これはまあ私の言うのが本当でしよう。それを全般的に一率にして私から証言を求めるというのが無理でしよう。
  652. 大野幸一

    ○大野幸一君 制度としてはどうなつているのです。制度は昔と今と違いますか。
  653. 土田精

    証人土田精君) ええ……。
  654. 大野幸一

    ○大野幸一君 取調べの方法が。
  655. 土田精

    証人土田精君) 制度としてはあれでしよう、昔から見れば今は人権が非常にやかましくなつているからそういうことはないわけでしよう。
  656. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから頻繁に会つたと言うのに親しいということはないと言つて、あなたは論争されたが、両方聞いていると、それは職務上の関係で頻繁に毎日会つても親しくない場合があるでしよう。併し佐藤というのと吉武というのとは……、大体吉武というのは何でしよう、搜査の人でしよう、別に代金を納入したり品物を何したりして仕事関係で来る人じやないのですね。それが頻繁に来るのは、即ちそれが親しくなるか、親しくなつているからじやないのかな。そういう意味で羽仁委員は聞いているのです。それをだつて、それは分らないというのか。
  657. 土田精

    証人土田精君) それも全般的にはすべて律しられないでしよう。
  658. 大野幸一

    ○大野幸一君 佐藤の場合はどうでしよう、佐藤は何にも用がないのです、吉武に、普通ならそれはしばしば会つたというのは、親しいから会つた、そのくらいな素直さは持つたらどうですか。
  659. 土田精

    証人土田精君) 素直じやありませんが、僕は。
  660. 大野幸一

    ○大野幸一君 どうもそう考えられますよ。
  661. 土田精

    証人土田精君) それは見解の相違ですよ。
  662. 大野幸一

    ○大野幸一君 その場合でも親しくない、それは分らないと、あなたは羽仁委員のと同様に答えられるのですか。私はあなたの証言の全体の心証にそれをしようと思うのですが。
  663. 土田精

    証人土田精君) どうぞ御自由になすつて下さい、その点は。
  664. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは答えられないのですか。私の説に賛成できないのですか。
  665. 土田精

    証人土田精君) 今の問題ですか。
  666. 大野幸一

    ○大野幸一君 はあ。
  667. 土田精

    証人土田精君) それはその場合々々で違うでしよう。
  668. 大野幸一

    ○大野幸一君 いや、佐藤と吉武の場合と。じや初めから聞きましよう。この具体的な場合、佐藤と吉武と頻繁に会つた場合、その点は佐藤と吉武と親しかつたという関係にならないか、こういうことを聞いている。
  669. 土田精

    証人土田精君) なるか、ならないか、それは私には分らない。
  670. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうですか。
  671. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではお忙しいところ有難うございました。  じやこれで休憩いたしまして、午後は正二時半から再開いたします。    午後一時二十四分休憩    —————・—————    午後二時五十五分開会
  672. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 休憩前に引続きまして法務委員会を開きます。  上田良三さんですね。
  673. 上田良三

    証人(上田良三君) はい。
  674. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住居はどちらですか。
  675. 上田良三

    証人(上田良三君) 千代田区隼町十三番地です。
  676. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年は幾つです。
  677. 上田良三

    証人(上田良三君) 四十七歳です。
  678. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飯塚堅藏さんですか。
  679. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうです。
  680. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住居はどちらですか。
  681. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 世田谷区世田谷四丁目六百九十番地です。
  682. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  683. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 五十歳です。
  684. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日は五井産業事件に関連しましていろいろ御証言をお願いいたしたいと思います。御証言をお願いいたします前に宣誓をお願いいたしたいと思います。宣誓の上若し御証言を僞られますと、制裁の規定がありますから、御注意申上げます。宣誓は各人朗読して頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 上田 良三    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 飯塚 堅藏
  685. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれからお尋ねいたしたいと存じます。飯塚さん、御迷惑でも少しお待ち願いたいと思います。    〔証人飯塚堅藏君退席〕
  686. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの履歴をおつしやつて頂きます。
  687. 上田良三

    証人(上田良三君) 昭和二年十月二十六日附巡査を拜命いたしました。富坂警察署鑑識課に勤務しまして、昭和八年の十月巡査部長、日暮里警察署鑑識課に勤務昭和十年三月警部補に任官して、日本堤坂本鑑識課に勤務しております。昭和二十年の九月六日警部に任官しまして、搜査二課勤務になりました。昭和二十二年七月搜査一課の第三係長になりました。昭和二十三年の三月搜査二課の第一係長になりまして現在に及んでおります。
  688. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知でしようが、佐藤昇の事件及び伊藤鑛壽事件警視庁において搜査されたことがありますですね。
  689. 上田良三

    証人(上田良三君) いたしました。
  690. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その搜査経過を述べて頂きたいと思います。
  691. 上田良三

    証人(上田良三君) 佐藤昇の事件は第二係でやつたものですから、細かい点に対しては私分りません。ただ大筋を断片的に聞いております。伊藤鑛壽事件は私の方の係でやらせました。
  692. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、佐藤及び伊藤鑛壽事件に対しましては、大体内容は御存じでございますね。
  693. 上田良三

    証人(上田良三君) 大体知つております。
  694. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か両事件の本筋の事件以外に両人が述べていることがありますですね。
  695. 上田良三

    証人(上田良三君) あります。佐藤の事件は検挙しまして詐欺事件として事件を送致しております。伊藤鑛壽事件は涜職罪としてやはり送致、いずれも起訴になつております。
  696. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤のはいわゆる詐欺事件ですね。
  697. 上田良三

    証人(上田良三君) そうでございます。
  698. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから伊藤鑛壽のは涜職事件……。
  699. 上田良三

    証人(上田良三君) そうでございます。
  700. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この佐藤事件についてですね。詐欺事件以外のことで述べたことについて、何か佐藤が自分であなたの方に書面か何か出したことがあるのですか。
  701. 上田良三

    証人(上田良三君) 政界、官界に金をばらまいた点、それから伊藤鑛壽の場合には特高グループといいますか、追放といいますか、そういうのが会合した点を聞いております。
  702. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいずれも調書にお取りになりましたね。
  703. 上田良三

    証人(上田良三君) いずにも調書に取つております。
  704. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 調書に取つた以外に、よく警察あたりでは本人に何か書かせることがありますが、上申とかメモとか、そんなものはあるのですか。
  705. 上田良三

    証人(上田良三君) 大体書かせずに、直接簡單な場合は調書を取りますが、非常に沢山の人間に金をばらまいたとか、或いは細かい幾つも山のようにものがある場合は、見覚えに一応本人に書かせることはあります。
  706. 伊藤修

    委員長伊藤修君) よくありますね。そういうものがお手許にあるのですか。
  707. 上田良三

    証人(上田良三君) あります。
  708. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ここにお持ちになつておりますか。
  709. 上田良三

    証人(上田良三君) 実はちよつと余計なことですが、先日佐藤証言及び伊藤証言において、搜査の調書というものを全面的に間違いであるというようなことを証言されたという点で、私は非常に遺憾に思つておりました。それで機会がありましたら、この場合にそういうものではないという裏付を一応しなきやいけないと思いまして、私ここにも持つて来ております。
  710. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一遍それはお見せ願いましようか。そこでお読みになつても結構ですが……。
  711. 上田良三

    証人(上田良三君) ここへは政治関係だけしか持つて来ていないのですが、「政治関係。福田、計七十万、二、三回、直接。渡邊良夫、計二十万、二、三回、直接。江花靜、計三十万くらい、二、三回、塩谷氏の紹介で直接渡す。東、計九万、三回、藤井孝に依頼され、一時立替として直接渡す。(藤井氏賃金)。渡邊年之助、計十五万、三、四回、直接。降旗氏外、十二、三万、西森を通じて。」降旗氏外の後七字が読めません。「支拂い。増田甲子七、計六十万、その下に、これは六十万から八十万という意味です。最初は渡邊良夫氏の紹介丹羽岡崎両氏来社され、増田氏を後援して呉れとの依頼により、丹羽岡崎両氏に(増田氏後援の意味で)渡し、二回目以後は、前述のような意味で来られましたので、それも両氏に渡しました。」これは本人が直接私の前でなく、調べの係りの刑事の前で直接これは書いたものです。
  712. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その係り刑事はどなたですか。
  713. 上田良三

    証人(上田良三君) これは二係りでやつたものですから、調べておれば飯塚係長、それから大窪部長、岸田刑事あたりの前だと思います。
  714. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今読上げられました書面は、佐藤の自筆ですか。
  715. 上田良三

    証人(上田良三君) そうであります。
  716. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはお貸し願えませんですか。
  717. 上田良三

    証人(上田良三君) これはやはり公のものですから、私が今日ここへ持つて来ましたが、若し御入用なら正式に一つ……。
  718. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方のメモではないのですか。
  719. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、メモですけれども、後でいろいろなことを言つて、すつたもんだという場合に困りますし、又先程申上げましたように、書かしたメモは事件の終結まで大抵取つて置きます。この外にも書いたのがあります。恐らく飯塚君の手許に三通や五通書いておるのがあります。
  720. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは本人がそういうふうにメモして渡したものがあるのですね。
  721. 上田良三

    証人(上田良三君) この紙も鉛筆も私の方で渡しますが、書くのは本人が書きます。
  722. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方でメモを取つていらつしやるものがあるのですか。
  723. 上田良三

    証人(上田良三君) メモも調書に……。大体取つたのがあります。
  724. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤は当委員会におきまして、増田関係について全く矛盾しておる供述をしておるのですが、それについてどうお考えになりますか。
  725. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らく私達の所で述べたのが真実の証言でないかと思います。というのは、ここで聞いておりますと、暴行とか或いは搜査官の追及が余り激しいので言つた、或いは口に出したというようなことを言つておるようですが、決して今の時代はそういうことはできないのです。うつかりそんなことをしたら、事件そのものがマイナスになります、潰れてしまいますから、非常に調べでは慎重を期しております。現に伊藤証言で、朝早くから夜遅くまで非常に追及されたと言いますが、伊藤あたりは、釈放後三回も四回も調べ官の所へ感謝の意味で挨拶に来ております。又私の松本課長の所へも二回程挨拶に来ております。そうして夜遅くまでと言うので、若し係りがそういうことをしたのじやないかと思いまして、私がその時間を調べました。ところが夜遅いというのは、一番遅いのは検挙した二日目の、つまり十二月九日の八時五十分に入監をさしております。これは夕方の五時三十五分くらいに出しまして、恐らくこれは差入れがあつたのだろうと思います。それで御飯を食べさせて、その日に調べて八時五十分に入監しておる、これが一番遅い一回です。その外に十二月の二十一日に、これは飯澤を検挙した日ですが、この日は午後の五時十分に出して、八時に入監しております。勿論晝間も出しておりますが、これは一々その都度附けます。飯澤のときは、飯澤君との証言の陳述の食い違いから何か出して調べたとき、八時になつたのじやないかと思いますし、この八時五十分という一回は、恐らくすでに四十八時間が切迫して、検察庁へ送致しなければならんその時間の関係で、八時五十分になつたのだと思います。それ以外は御覧の通り書いてありますが、いずれも夜なんかに亘つて調べておりません。
  726. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは誰のですか。
  727. 上田良三

    証人(上田良三君) これは留置場の出入簿というものを私が書いて来たのです。
  728. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関係は佐藤ですか、伊藤ですか。
  729. 上田良三

    証人(上田良三君) これは伊藤です。
  730. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤の分については調べになつておりますか。
  731. 上田良三

    証人(上田良三君) 直接でないもんですから、そこまで調べておりません。
  732. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁にそういう帳簿があるのですね。
  733. 上田良三

    証人(上田良三君) 出入簿は留置場の出し入れごとに、出したときには前に時計がありまして、その時間を書き、又入れたときには入れた時間を記入します。
  734. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程お尋ねいたしました増田氏に関係のある部分について矛盾しておるのですが、何かそれについてあなたのメモはお持ちになりませんか。
  735. 上田良三

    証人(上田良三君) 持つております。メモではないのですが、つまり搜査官の追及が激しくて、本人が心にもないことを言つたのでなくて、自然の陳述のように思われたもんですから、一応私が自分の手帳へその部分だけ書き取つて参りました。
  736. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよとその書き取つたところをお読み願いませんか。
  737. 上田良三

    証人(上田良三君) 前の方を省略しまして、「昭和二十二年九月か十月頃、民自党代議士渡邊良夫氏から電話で、近く岡崎丹羽両氏が我が党の代議士増田甲子七氏の政治資金の援助のことで君の所へ行くそうだが、何とか便宜を図つて貰いたい」。これは佐藤の言うことです。「その後二、三日過ぎてから神保町の会社へ私を岡崎丹羽両氏が自動車で訪ねて参りました。両氏からの話では、渡邊氏からも紹介があつたと思いますが、是非増田さんからよろしく援助して貰いたいという申入れがあり、大したこともできないが承知しましたと、その場で現金紙包にして金二十万円を手渡しました。次に昭和二十三年春頃、両氏が永代橋の事務所に私を訪ねて来て、又増田先生に後援して貰えまいかと申込まれ、その場で現金紙包みで三十万円程手渡したのであります。そこでこの頃私は両氏から一度増田先生に会つて貰いたいということなので、内幸町の増田先生の事務所を訪ねたところが、増田先生が私に、いろいろ御援助願つておりますが、今後共よろしく願いますと辞を低うして謝礼を受けております。このとき先生は北海道長官時代の部下として伊能芳雄氏を経済部長であつた関係で、伊能氏のことも岡田包義君のことも将来よろしく御援助願いますと附言されたことを記憶しております。次に昭和二十三年六月、七月頃丹羽氏が永代橋事務所に私を訪ねて来て、増田先生に又援助願えますかと申入れがありましたので、その場で十万円を同氏に手渡しております。その後今年十一月頃私は偶然議会の、衆議院玄関付近で増田先生に出合い、挨拶されいろいろ常にお世話になつておりますと謝辞を述べられ、どこかへ出掛けられるときと見えて、先生は直ぐに自動車で出て行かれました。そのように私は岡崎丹羽両氏を通じて前後三回に亘り六十万円の金を増田先生に対し政治資金を援助しておりますが、その都度増田先生から直接謝辞を受けておりますので、確かに届いているものと考えております。」以下省略、これは一月十六日の調書の一部です。
  738. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 塩谷氏の関係についてはどうですか。
  739. 上田良三

    証人(上田良三君) 余り細かいことは分りません。
  740. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはメモをしておりませんか。
  741. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、これは伊藤鑛壽氏事件は私が担当した係長ですから、これを知らないということは言われませんが、片つ方は余り細かい点は聽いてないです。
  742. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤個人に対してはあなたは御関係ですが、それに対するメモはお持ちですか。
  743. 上田良三

    証人(上田良三君) 持つております。
  744. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽藤田岡崎との間に人事進言に関するところの話をしておりますね、そういう点に対するところのメモはおありになるのですか。
  745. 上田良三

    証人(上田良三君) ちよつと調書に載つていたようでしたが、これにはただ何か……。
  746. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは……。
  747. 上田良三

    証人(上田良三君) 社長、課長に何とかというような話でしたが、これには出ていません。
  748. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽の調書の写しかメモをお持ちにならないですか。
  749. 上田良三

    証人(上田良三君) 何か昭和電工事件で必要であるというので、調書は検察庁の方へ渡したものですから……。
  750. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 控えはおありでないのですか。
  751. 上田良三

    証人(上田良三君) 控えというようなものはありますが、三通あつたのですが、私は一通しか持つて来ていないのです。
  752. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その控えの分はどの部分ですか。
  753. 上田良三

    証人(上田良三君) 電気クラブです。
  754. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ、朗読をお願いできませんか。
  755. 上田良三

    証人(上田良三君) 「昨年の六月頃、昭和電工社長が検挙され新聞を賑わせておりました当時は、毎日のように岡崎丹羽秋山、吉田弁護士、藤田さんその他二、三人が来て、三階の事務所の奥八畳の部屋でお茶だけで協議しておりました。」……これ全部必要でございますか。
  756. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 読んで頂きたいのですね、どこが必要だか分らんですから……。お貸し願えればよろしいけれども、お貸し願えなければお読み願いたいのです。
  757. 上田良三

    証人(上田良三君) ……「協議しておりました。藤田さんが来るときはいつも土田隊長が一緒に来て三階の室の入口の方で張り番をしておりました。私は入口の六坪くらいある事務所に入りましたが、奥の八畳には土田さんが行つてはいかんと言うので、遠慮して殆んど入りませんでしたから、何の話をしていたか分りませんが、その場の空気では事件の揉み消しに何か関係があるようでした。土田さんは私に、藤田さんや僕が来たことは絶対秘密にして呉れということを言われました。そのことから察して、私は重大な協議だと思つておりました。一ケ月くらいの間は殆んど毎日のように来ておりました。昭和電工事件が下火になつてから又以前のように木、土曜日ぐらいに集まるようになりました。申し落しましたが、追放グループの会には、ときどき増田甲子七先生が来て懇談しておりました。今年五、六月頃増田さんの事務所が神田方面にできたというようなことで事務所は明渡たされました。」以下省略します。
  758. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤や伊藤はですね、当委員会におきまして、お取調べの際に大声でまあ嚇かされたと、又深更まで調べられたというようなことを述べて、暗に人権蹂躙があつたがごとき口吻を洩らしておりますがね、今の深更まで調べたことはないということは先程の書面によつて分りますが、大声でまあ威迫的な言動があつたわけですか、どうですか。
  759. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、そういうことは絶対にありません。恐らく今私がここで尋問を受けますよりも被疑者はもうちつと気が楽ではないかと思います。お茶を飲ませ、煙草を喫ませ、そうして火鉢を抱えながら……。成る程調書をとるときにはまじめにやりますけれども、大勢取巻いて云々と申しますが、大勢取巻いて頭をこずいたとか、何とかいうことは恐らく今の時代にやつたら、立派な本当の事件が駄目になつてしまいますから、これは絶対にしません。恐らく今度の佐藤の場合も、伊藤の場合も私は直接調べませんが、そういうことがないことを確信しております。
  760. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あつてはならんことですな。両名はまあ佐藤昇、伊藤鑛壽ですね、両名は当委員会において取調べの当時精神状態が混乱しておつて、心にもないことや記憶違いのことを述べたというようなことを供述しておりますが、そのときにおけるところの本人達の供述の模様はどうですか。
  761. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らく調書を取るまでには、もう出たらめを言つておるときには調書は取りませんから、まじめに言つたと思う調書をそこに載せるのです。而も読み聞かせて間違えば直すのですから、無理に手を持つて拇印させるわけでもありませんし、本人の眼に字が見えるようにし、見えなければ本人に読ませる、本人が読まない場合にはこつちで読んで渡しておりますから……、その前にメモがありましたり、何かしたりしますから、そう頭が混乱したり何かは恐らくあり得ないと思います。
  762. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程お示しの佐藤のメモがあるのですから、混乱して心にもないことを書かされたというふうにも考えられませんが、本人達はそんなことを言つておりますから……。
  763. 上田良三

    証人(上田良三君) 釈放されてから或る程度の期間がありましたから、そこで前に言つたことが思い違いだというように考え直したのかどうか知りませんが、恐らくあすこに留置されて取調べられておるときの何は実際真実を語つております。
  764. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた達も真実を語つておると確信を持たれるのですか。
  765. 上田良三

    証人(上田良三君) 確信を持つて調書を取つたわけです。ただあの調書の中に、日とか、時間という問題になりますと、これはなかなか記憶が薄れますから……。
  766. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは我々でも分ります。
  767. 上田良三

    証人(上田良三君) 本人が日誌か何か持つているからには、その本筋には間違いはありません。
  768. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かこの両事件ですね、伊藤鑛壽事件、佐藤昇事件、これを二課において捜査されたということは、まあ敵本主義で部内の土田、吉武に対する私怨というものが含まれて、こういう事案が取上げられたというふうなことを土田及び吉武は言うておるのですがね、そういうことはどうですか。
  769. 上田良三

    証人(上田良三君) 絶対にありません。大体そういうことがあれば刑事そのものが動きません。よく新聞なんかを見ますと、土田、松本の喧嘩であるというふうに出ておりますが、二人の喧嘩に、仮に私達が刑事にあすこに行け、こつちに行けということは可哀そうで処置ができません。この佐藤事件におきましても暮から正月休みもなしに、北海道に行つて詐欺の事件を固めに行つた。而も応援で私の方の刑事も出しておりますから、実に可哀そうだと思つております。これが仮に私的のものでしたら、本人もしないでしようし、私達も刑事が可哀そうで命令はできません。而もこの事件は後でいろいろな派生的な問題が起きたために、あれだこれだと言われますが、大体詐欺事件を検挙しなかつたならば、こういう問題は起きなかつたと思います。或いは電気クラブ事件も、伊藤の涜職事件も、詐欺事件を検挙しなければこの事件は起きなかつた。而も総監閣下が証言されたように、現に佐藤昇の事件を嚴重に調査するように命じたということはここで言明されておる。而もそれで刑事が動いたとすれば、そこに松本対土田という喧嘩はある筈のものではない。而も敵本と言いますが、その二つの事件が立派に検察庁で起訴になつておるわけです。恐らくそういう私的のことを最初から持つて行くならば、果してこの事件も詐欺になるかどうかということも疑問ですし、或いは伊藤鑛壽事件が涜職になるかということも疑問なんです。大体伊藤事件を去年、ちよつと月は忘れましたが、紙業課長と当時の紙業組合の理事長とが相反目して喧嘩したということが新聞に出たのですが、内容に涜職が含まれておるような様子だというところで、これが搜査の端緒を、そこから涜職を探し始めて行つた最初から狙つておるならば何もそういうことをせずに、いきなりもうちつと出せばいいのですが、そういう目的があるかないか分らんでそういう事件はできるものではない。涜職ができた。それで派生的問題で、こういう今当院で問題になつておるような、そういうような本人の陳述がせられたのが事実でありまして、最初からそういうことを予想して、果してそういうようなことがないか。伊藤を検挙して見て分るか。佐藤を検挙して見て分るかということは疑問なんです。
  770. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田氏や吉武氏は大変にその点を強調しておりますですがね。
  771. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らく私はそういうことはないと確信しております。で、この仕事もそのまま遂行して来ておるわけです。
  772. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 平素土田氏と松本氏との間はそういういさかいか何かあるのですか。
  773. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、そんなことはないと思いますです。それは仕事の上では或いはお互いの意見を吐かれることはあるだろうと思います。これは誰しも同じことですな。その外に喧嘩とかなんとかということは私は耳にしたことはありません。
  774. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 反目嫉視しておることはありませんですね。
  775. 上田良三

    証人(上田良三君) そういうことは恐らくありません。
  776. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ二課というのは警視庁のいわゆる心臓みたいな所ですね。大体……。
  777. 上田良三

    証人(上田良三君) 心臓というわけじやないですが、どうもやはりあそこで上層部へ及ぶ事件とかなんとかいうものは、結局二課でやらなかつた日には、まるで真つ暗な世の中みたいなものになりますから、やはり時と場合には、これは止むを得ず自分の同僚でも曳かなければならないような羽目に陥ることもあります。それは非常に……、私達としては喜んでなんか決してやつておりません。
  778. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから重要な事件、殊に官界とか政界とかいう方面に及ぶような事件は常に二課において取扱われるわけですね。
  779. 上田良三

    証人(上田良三君) そうでございます。
  780. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 従つて取扱われる事件の中で、たまたま同僚にそういう者ができた場合においても、これに対しては私心を挟まず職務を遂行すると、こういうことになるわけですね。
  781. 上田良三

    証人(上田良三君) はあ。
  782. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは岡崎さんという人は御存じですか。
  783. 上田良三

    証人(上田良三君) 岡崎さんという人には仕えたことはありません。名前だけは前から聞いておりますが……。
  784. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんはどうですか。
  785. 上田良三

    証人(上田良三君) 丹羽さんという人は岡崎さん以上に私の覚えが薄いのです。
  786. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併しこういう人の噂をお聞きになつたことはありますですか。
  787. 上田良三

    証人(上田良三君) どういう噂ですか。
  788. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁内におけるところの人望ですね。
  789. 上田良三

    証人(上田良三君) 丹羽さんはよく知りませんが、岡崎さんは相当やはり皆に慕われている方のようなことを聞いております。
  790. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現在現職の方々においても岡崎さんを慕つておる人が相当おありになるんですね、或いは岡崎さんを崇拜しておるとか……。
  791. 上田良三

    証人(上田良三君) 相当あると思いますが、併しさて誰かというと、確信を持つてその人を言うような点はありません。
  792. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんは相当親分肌の人だつたらしいですね。
  793. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、岡崎さん、丹羽さんというその人の人柄という程深く知らないんです。
  794. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないですか……特高部長時代搜査課長時代のことは伝え聞いていらつしやらないですか。
  795. 上田良三

    証人(上田良三君) そうですね、惡口かどうか知りませんが、岡崎閥というようなことはよく噂に、耳にしたことがあります。
  796. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その岡崎閥にいわゆる藤田土田という人があるんではないですか。
  797. 上田良三

    証人(上田良三君) その点は分りませんです。
  798. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ忌憚なく言つて頂いた方がいいですな。あるならあると……。
  799. 上田良三

    証人(上田良三君) そうですね、私よく分りません。
  800. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんや藤田さんは岡崎さんにとにかく好意を受けていらつしやるわけですね。慕つておる人なんですね。或いは指導を受けておるとか、両氏の方から言わせれば岡崎さんを崇拜していると……。
  801. 上田良三

    証人(上田良三君) 当時やはり搜査二課に曾て岡崎さんも課長をしておられたそうですし、その当時係長として土田さんが仕えたりした関係親しくなつておるのかも知れません。
  802. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに、警視庁におけるところの岡崎さんの曾ての搜査課長としての敏腕なることが警視庁の非常な衆望の的となつてつて岡崎さんを尊敬しておるというような人々らが常に岡崎さんを中心にして、いろいろ御交際を願つているのではないでしようかね。岡崎さんの人望の然らしむるところかも分りませんがね。
  803. 上田良三

    証人(上田良三君) そういう点はよく知りませんが、今度の伊藤鑛壽の陳述でそういうようなことが私は分つたわけです。
  804. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽の陳述を通して、岡崎さんの下に、いわゆる警視庁の曾ての幹部、今では追放グループ及び現職の土田とか吉武とか或いは藤田とか、こういう人が岡崎さんを中心にして時々会合しているということは御承知になつたんでしようね。
  805. 上田良三

    証人(上田良三君) 伊藤の供述によつて知りました。
  806. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その供述というものは、あなたが庁内においていろいろな空気から察してどうですか、真実かどうかという点についてどうです、あなたの認識は。伊藤が出たらめを言つていると思つていらつしやいますか。
  807. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、伊藤は出たらめを言つていないと思います。
  808. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では伊藤の供述は、庁内におけるところのいろいろの動き、いろいろの空気、そういう点から察して真実性があるとお考えになるのですか。
  809. 上田良三

    証人(上田良三君) やはり皆仲のいい人達じやないかというようなことは私も多少感じでおります。
  810. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 従つて伊藤が調書において述べておるこれらのグループ関係というものについての真実性をお認めになる考えですね。
  811. 上田良三

    証人(上田良三君) グループというか……分りませんが……。
  812. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 言葉はどうか、その集いを持つていろいろなお話合をなさつておるということは窺われますね。
  813. 上田良三

    証人(上田良三君) 大体窺われます。
  814. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ警視庁の二課のごとき重要な組織は、いわゆる岡崎閥に属する人々らにされなければ到底息ができないのだというようなことをお聞きになつたことはありませんか。
  815. 上田良三

    証人(上田良三君) 私は聞いておりません。
  816. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんなんかそういうことを豪語しておるのではありませんか、常に大剛にあらずんばというようなことを言つておるのではありませんか。若しくは岡崎……。
  817. 上田良三

    証人(上田良三君) 土田さんと余り接触というものはありませんからよく分りませんです。
  818. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊は犯罪の検挙については搜査課と連絡の上するものですか。單独でできるものですか。
  819. 上田良三

    証人(上田良三君) 犯罪の検挙は予備隊ではやりません。ただ大衆の犯罪という場合はやはり搜査課と協力いたしまして、丁度昔言う検束指揮のああいうようなときはやはり予備隊がやりますが、つまり普通私達が一般にやつておる内偵をして検挙するということは予備隊には関係ないことであります。
  820. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大衆のデモなんかのときに、予め今日は騒擾が起きるということは予知されるときがあるでしようね。
  821. 上田良三

    証人(上田良三君) あります。
  822. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう場合、今日は検挙するかも分らんということがあなたの方に連絡があるんですか。それともそういうことを行き当たりばつたりで予備隊の方でやつてしまうのですか。
  823. 上田良三

    証人(上田良三君) 行き当たりばつた予備隊が勝手に検挙するということはありません。ああいうことが起きるということは予め分りますから、私の方と警備課とが連絡して、予備隊は我々の方から直接出せるのではなくて、警備課を通じて出すわけです。警備課を通じて予備隊というものを動かして出して来るわけです。現場に行きまして、つまり適当なときに私の方でも勿論やりますが、向うでも検挙をやるわけであります。
  824. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊が勝手にどんどん検挙なんか、デモやなんかのときなさることはないのですね。まあ突発的なことは別ですが……。
  825. 上田良三

    証人(上田良三君) 全然話がはつきりしておるものは何でしようけれども、デモなんかで予備隊だけが出動して行つて検挙に臨むということはあり得ないと思いますが……。
  826. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 公安條例のときはどうだつたんですか。
  827. 上田良三

    証人(上田良三君) あのときは私の方の第三係がその任に当つたものですから、詳しいことは私分りません。
  828. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊土田の私兵だというような話があつたんですが、それはどういうことですか。
  829. 上田良三

    証人(上田良三君) 私分りませんですが……。
  830. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その意味が分らんのですか。
  831. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ。
  832. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武が鈴木恭二の事件、いわゆる味の素事件について搜査を妨害したというようなことはお聞きにならなかつたですか。
  833. 上田良三

    証人(上田良三君) 噂は聞いております。
  834. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことですか。
  835. 上田良三

    証人(上田良三君) 何か、当時の担当主任をしていた宗像警部補が逮捕状を請求したところが、それに対して承認を與えなかつた。それで宗像警部補が直接検察庁の方から早く逮捕しろ、逮捕しなければ我々の方でやるぞという話があつたので、宗像警部補が困つて、松下課長の下へ行つて別に逮捕状を認めて、課長の承認を受けて請求したというふうに私が聞いていたのですが……。
  836. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、第一の逮捕状の申請は吉武のところで握りつぶされたわけですね。
  837. 上田良三

    証人(上田良三君) そうですね、主任の話ではそんなようになつております。
  838. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この逮捕状の出ることが事前に漏れたということはお聞きにならないですか。
  839. 上田良三

    証人(上田良三君) そうですね、はつきり聞いておりません。当時はまだ吉武係長がいたわけですから、私も一係長としてあの課におりましたけれども、味の素の事件をやつていたか、やつていないかということは全然分らない。
  840. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方では……。
  841. 上田良三

    証人(上田良三君) はあ。
  842. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一係の方では分らない……。
  843. 上田良三

    証人(上田良三君) はあ、私が分つたのは詐欺で検挙する、検挙するが、北海道へ行かなければならん、宮城へ行かなければならん、これではとても手が足らんから、応援を出せという上司の命令があつたものですから、そのときに私の方の係の手を割いて、詐欺事件を固めるべく北海道、仙台、神戸、福井、四、五ケ所に飛ばしております。
  844. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤の事件ですね。
  845. 上田良三

    証人(上田良三君) そうです。
  846. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武が誰から頼まれたか、こちらで聞いているのは要するに塩谷さんから頼まれて、鈴木の事件の揉み消し若しくは了解運動というようなことを吉武氏に頼み込んだのじやないですかね。そういうことはお聞きにならなかつたですか。
  847. 上田良三

    証人(上田良三君) その当時のことは分らなかつたのです。こういう今後の事件になりましてから、主任あたりがそういう話をしたということを聞いております。
  848. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤がその頃頻繁に吉武の部屋に出入りしておつたことはどうですか。
  849. 上田良三

    証人(上田良三君) その頃私の所の鉤の手になつて離れておりまして、ちよつと分らないです。
  850. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤がその頃吉武を「八百松」とか、そこら中の料理屋に招いているということは御存じでしようか。
  851. 上田良三

    証人(上田良三君) それは後から完像主任からそういう話を聞きました。
  852. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件に関しまして、松本課長が鈴木恭二に在宅調べを頼まれたというような風評があつたと、吉武は言うているんですがね。これはどうですか。
  853. 上田良三

    証人(上田良三君) それで実は課長にそのことを聞いたのです。そういう話があると言われた、この間、夕刊の中外ですか、何かではつきり松本課長暗躍というような何が大きな見出しで出ましたから、その点について課長に聞いたのですが、課長はそういうことは絶対にない、あの事件のときに自分がわざわざ検察庁へ電話して、鈴木を起訴しないか、起訴しなければいけないのじやないかという強い交渉をしているわけです。そういう点を見ても課長が事実動いたという点は恐らく何かの間違いじやないかと思うのです。
  854. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤は警視庁に頻繁に出入りしておつたのですか。
  855. 上田良三

    証人(上田良三君) 出入りしておるという風評はありましたが、私は直接会つていないから分からないです。一回だけ……、いつですか、二十三年の三、四月頃小石川の料亭「もみぢ」へ行つて饗応を私も受けたのです。当時日野君が私のところへ来まして、細田君の栄転祝いに行こうじやないか、吉武君も祝いに行かれるから二課の係長一緒に行こうという誘いを受けたのです。併し佐藤誰ということは分つていなかつたから行つて見て坐つて何したところが、のつこり出て来たのが佐藤なのです。併しそのとき見ただけで、その後は顔を忘れて知りませんでした。若し廊下で会つたとしても恐らく私は分からんと思います。
  856. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤というような好ましくない、いわゆる警視庁ボスが始終頻繁に出入りして、警視庁の内部におけるところの各幹部の人に近付きを持つていて、いろいろ事件の揉み消しをやるとか、暗躍しておるというようなことはお聞きにならなかつたでしようか。
  857. 上田良三

    証人(上田良三君) この事件が浮び上つてからそういうやつだということが分つたのですが、その以前は知りませんでした。
  858. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いえ、総監の耳にも入つているのだからねその当時から……好ましくない人間だ、何とかしなくちやならんと総監すら言つておるのだから、あなた達御存じないですか。
  859. 上田良三

    証人(上田良三君) そうですね、確信を以てそういう評判があつたということは私言えないのです。
  860. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすれば、なぜ佐藤事件を検挙する場合に吉武を除いて、そうして宗像主任にやらしたのですか。
  861. 上田良三

    証人(上田良三君) いや大体二課は、搜査の邪魔をするというような、そういうようなインチキ野郎は片つ端から検挙しなければいかんというのが恐らく今の課長の方針だと思います。私もそういう点には大賛成しております。若し邪魔が入つて搜査ができないというようなことになると、殊に都合のいい人にはいいかも知れませんが、一般の者が非常に迷惑しますから、とにかくその邪魔は強力になればなるほど我々は全力を挙げてもその人間をやらなければいけない、こういう方針の下にやつておりますから、当時味の素事件というようなことも、他の係がおつて知りませんし、そういう噂が出て、佐藤を検挙せよというように私もちよつとその相談にはまだ與つていなかつたような気がしたのです。応援を出したのは、十二月八日か九日頃じやなかつたかと思います。その頃になりましてから、私の方にはつきりその事件が分りました。自分も自分の直接の部下を応援しておりますから非常に関心を持つております。
  862. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課というところは大切なところであり、むしろ日本の治安を維持する心臓と言つても過言でないと思うのですがね。そういうところの搜査の邪魔をするところの人間はどうしても検挙しなければならんと、こうお考えになつたのですね。
  863. 上田良三

    証人(上田良三君) そうです。
  864. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういうような人間であるということは、あなたも事前から御存じなかつたのですかということを聞いておるのです。
  865. 上田良三

    証人(上田良三君) 佐藤が出入りしておるというようなことは、課長から相談を受けて、やりましようと言いましたがね。余り詳しくは私は知らないです。今ここで……。
  866. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、佐藤と吉武の繋がりがあるから、先ず以て佐藤を検挙するのには部内の陣容を建直さなくちやならんという結果、吉武を転出せしめたのじやないですか。
  867. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、転出は、その頃吉武君の転出したのは十二月の六日なのです。それから味の素事件というのはすでに八月、九月に起つた事件ですから、相当の期間がそこにありますが、吉武を転出させてそれであとをやるというそういう意味のことは私分りませんでした。
  868. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうです。現在のような状態で以て警視庁における搜査の機能というものの完璧が期せられますか、どうですか。
  869. 上田良三

    証人(上田良三君) 一生懸命やつて期するつもりです。
  870. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いろいろ警視庁の空気はどうですか。
  871. 上田良三

    証人(上田良三君) 空気といいますか、よく新聞なんかにああいうように派閥の争いなんかが出ておりますが、そんなひどい派閥の喧嘩じやないと思います。大体この事件をやつて派閥だとか課長同志の喧嘩だと言われますが、事件をまじめになつてつておる私らには非常におかしい。どうしてあれを派閥に持つてつたのか、どうして課長の喧嘩に持つてつたのかというような点は……結局我々には派閥も何もあるわけがない。大体課長警視庁に入つたの昭和二十一年でございます。それまでは警視庁のけの字も知らない人です。それが世田ケ谷の署長をやつており、それから本庁に入つたので、そういう派閥ができる筈もない。ただこの事件をやることによつて不利の蒙つておる人達が派閥とか或いは部内の争いだという、こういうようなことを言つておるのではないかと思つております。
  872. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう不利を蒙つた人がむしろ派閥なんですね。
  873. 上田良三

    証人(上田良三君) 派閥か何か知りませんが、それ以外に派閥というのはどこから起つておるか不思議です。
  874. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう人達が派閥を作つてあなた達を攻撃するのではないですか。
  875. 上田良三

    証人(上田良三君) それはけつを掘るとか、狙つてつたとかいうことは……。二課の知能犯事件というものは、大体一課の殺人や強盗と違いまして、殺人や強盗はここに事件が起つて初めてここに搜査を開始し、犯人がどこの誰かということに主眼を置いて開始する。二課の事件はあの会社がもやもやした空気である。あの税務署が非常に業者のインチキと組んで賄賂を取つておる。こういうようなもやもやした惡い空気があるというところに視線を向けてここに犯罪があるかないかということを探して行くのです。やられた人から見ればおれのけつを掘つたということになりましよう。知能犯事件というものは犯罪あり、人を求むという一課や三課の事件と違つて、人あり罪を求むで、或るところの隠れたる犯罪を摘発して行こうというのが大体知能犯事件である。そういう点から推して行くと、けつを掘つたのでも何でもない。
  876. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 若し或る会社と手を組んでたまたま……こんなこと言うと失礼ですが、総監のけつに火が付いても仕方がないわけですね。
  877. 上田良三

    証人(上田良三君) 惡いことをすれば仕方がないですね。そういうことはあり得ると思います。
  878. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 況んや土田や岩田に火を付けるというのが目的ではないのでしよう。
  879. 上田良三

    証人(上田良三君) 目的でないばかりでなく、この佐藤の詐欺事件、或いは伊藤事件が起きまして、あと派生的の問題が出てこれには困つた、正直のところそれが出て来て非常に困りました。それであの事件は一応どうしようと迷つて、全部が犯罪になるわけでもありませんから、検討しなければならんので、いきなり全部を一緒に調書を送つたわけでない。あれは裁判所に送つたのは、委員会の問題が起きてからです。それから電気クラブの三通の調書のこの事件は、やはり手に持つておりましたけれども、やはり問題が起きましてから、三月初め頃昭和電工関係の参考資料として必要だからというので、やはり三通やりました。
  880. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽の調書の三通というのは、お手許に残して置きましたか。
  881. 上田良三

    証人(上田良三君) 残しておりません。検察庁から昭和電工事件の参考資料として欲しいというので、私直接岡崎部長の所に手渡しました。
  882. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当委員会において書類の所在を究明してからですか。
  883. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、あの頃は検察庁に行つてつたわけです。
  884. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 加島警部が当委員会に呼ばれた頃は行つてつたのですか、行つていないのですか。
  885. 上田良三

    証人(上田良三君) 行つてつたと思います。こちらから要求がありましたときに、こういう要求があつたが、その内容の写を出すべきかどうかということを検察庁に問合せをした、そうしたら今暫くそれは調査中のものだからというわけで、その意味のことをこちらに御返事申上げたのであります。
  886. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当委員会から書類を請求したときには御手許になかつたのですか。
  887. 上田良三

    証人(上田良三君) あのときは手許になかつた筈です。あのときの内容を御覧下されば分りますが、こう言つて来ておるがどうするかということを向うに相談をしていたときです。
  888. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときはもうすでになかつたのですか、三通は……。
  889. 上田良三

    証人(上田良三君) なかつたと思いますが……、あそこの御返事に書いてある通りなんです。
  890. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 加島警部を呼んで、この書類の処在を追及してから書類は行つたのではないですか。
  891. 上田良三

    証人(上田良三君) 最初の要求がありましたときは、伊藤鑛壽事件を送れというような要求の筈だと思います。そのときにはあの三通というのはいわゆる事件としてまだ立つていなかつた
  892. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから最初はあなたの方に残つてつたのではないのですか。
  893. 上田良三

    証人(上田良三君) 残つてつたかどうか覚えておりませんが、伊藤鑛壽事件はこういうふうになつておると御回答申上げておつたと思います。
  894. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽事件の書類は当委員会では必要ないわけですが、この三通がお手許にあるかどうかということを加島警部に聞いたところ、あるというので請求したのです。
  895. 上田良三

    証人(上田良三君) 最初私の机の内に入れて置きましたが、伊藤鑛壽事件はすでに送致しておるので、そのときは要り用ないと思つてああいう返事をしたが、第二回目に要求がありましたときは検察庁に行つてつたように思います。
  896. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私の方では第一回目の漫然と伊藤鑛壽関係書類とこうやつたので、別に扱われておるとは思つておらなかつたのです。
  897. 上田良三

    証人(上田良三君) そうですか。
  898. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三通お手許に残つておるということを加島警部がここで証言したので請求したのですが、請求すると外部に発表されますので、それで検事局は時を移さず書類を取寄せたのでしようが、今頃になつて昭電事件の書類を取寄せるということは馬鹿々々しいことじやありませんか。どうもそんなように事件を何とか抑えようという傾きがあるようですね。大体私の質問はこれで終ります。
  899. 大野幸一

    ○大野幸一君 伊藤鑛壽の贈賄事件というのはどういう内容ですか。
  900. 上田良三

    証人(上田良三君) 商工省の紙業課の役人と、それから業者である伊藤鑛壽とが、便宜を図つてつた云々というわけで、金を貰つたり、やつたりしたという事件です。
  901. 大野幸一

    ○大野幸一君 それでは闇事件が係続したということはありますか。
  902. 上田良三

    証人(上田良三君) ええありました。あれは経済で伊藤が隱退蔵物資として摘発を受けたわけです。その頃は私共知らなかつたのです。それがその時の問題でうまく收まつてから、つまり礼に金をやつたり取つたりというのが、私の方で摘まみ上げた事件です。
  903. 大野幸一

    ○大野幸一君 誰にお礼をやつたのですか。
  904. 上田良三

    証人(上田良三君) 前川という技官ですね、商工省の技官、それに官吏としては飯澤という私達の同僚警部です。この二人にやつていたのです。
  905. 大野幸一

    ○大野幸一君 その飯澤という同僚警部については贈收賄の嫌疑があつたのですか。
  906. 上田良三

    証人(上田良三君) それは丁度伊藤が隱退蔵物資を摘発された時の、取扱の主任が飯澤だつたのです。当時警視庁経済におりました、それで伊藤との関係でやつた、取つたということが事件になつたのです。
  907. 大野幸一

    ○大野幸一君 それで警視庁関係で闇事件というのがあつたわけでしよう。経済でやつた事件……。
  908. 上田良三

    証人(上田良三君) あれは私は知りません。
  909. 大野幸一

    ○大野幸一君 知りませんか。私の聞きたいのは、経済の闇事件があつたというのは御存じでしよう。経済で調べたことがあるという闇事件を……。紙の闇事件はなかつたのですか。
  910. 上田良三

    証人(上田良三君) それは聞いておりませんです。感光紙という青写真なんかに使うあの紙の問題で……。
  911. 大野幸一

    ○大野幸一君 商工省に対する贈賄事件ですか、そうすると。
  912. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ、結局、商工省と警視庁経済に対する贈賄になるわけですね。
  913. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁経済に対する贈賄事件というか、闇……統制違反とか、闇とか、取調べたから、警部に贈賄したのじやないですか。
  914. 上田良三

    証人(上田良三君) いや取調べて、あれを隱退蔵物資として取調べたのですが、それが行政処分で済んだのです。その紙を先生買溜めして、それで隱しておつたのを、摘発されたのですから……。それが投書があつたので経済がこれを摘発して……。
  915. 大野幸一

    ○大野幸一君 経済が摘発して……。
  916. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ、摘発して、その時の取調べが飯澤警部、そうしてこの事件は一応これは済んだわけです。
  917. 大野幸一

    ○大野幸一君 どうして済んだのですか。嫌疑がなかつたのですか。
  918. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、行政処分となつた……。
  919. 大野幸一

    ○大野幸一君 行政処分に……。
  920. 上田良三

    証人(上田良三君) 全部自分が隱退蔵して持つてつたから、全部吐き出した。それで行政処分として、つまりこれを供出さして、そうして供出したものをみんなに配給するという、こういうようにして片が付いたんです。
  921. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは寛大なるやり方じやないですか。その外にみんなが拘置されたり、刑罰を科せられたりしておるのですよ。
  922. 上田良三

    証人(上田良三君) その点はよく知らないのですが……。
  923. 大野幸一

    ○大野幸一君 その点は捜査はやらなかつたのですか、贈賄関係がありはしないかというので……。
  924. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、その事件伊藤から飯澤が金を二十五万円貰つて、その派生の問題が、今の三通の調書云々という事件になつて来るのです。
  925. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると増田さんの事件が調書になつて来たのは、その外に金をやつたことがないかということから言い出したのですか。どうしてこの増田さんの調書ができて来たか、その外に官界に金をやつたことがあるかという話から……。
  926. 上田良三

    証人(上田良三君) 一応大体聞ければその人間からそれを聞く、とにかく綺麗に出せるだけ出さすのが腕がいいのですから、そうして事件を大きく展開して行くというのが刑事の非常に気持のいいところ、我々の嬉しいところなのですから、やはりその人間に付く惡というものがあるかないかということも見極めなければ……。ごまかしてそのまま通したのじやいけませんから。
  927. 大野幸一

    ○大野幸一君 それで、今まで警視庁のことは余りあばかないような惡習があつたんじやないですか。
  928. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、そんなことはありませんよ。
  929. 大野幸一

    ○大野幸一君 だつて警視庁のことをやられると、あれは俺の身許を洗つておると憤慨する人があるとすれば、警視庁は何か特権階級、治外法権のような場所で、警視庁というところは。だからやらないんだという惡習があつたんじやないですか。
  930. 上田良三

    証人(上田良三君) いやそれはないと思います。私達は大反対の方ですから……。
  931. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなた方まあそういう正義的にやるのならば、今の捜査二課で、こういう智能犯のある東京都の治安が保たれる自信があるんですか、今の二課で。
  932. 上田良三

    証人(上田良三君) あります。
  933. 大野幸一

    ○大野幸一君 併しそういうふうにあなた方やり出すと、外から圧迫が来るというようなことはないですか。圧迫を断じて排除してやる意思がありますか。
  934. 上田良三

    証人(上田良三君) 今まで昭和電工事件或は日本シルク事件、或は繊維疑獄事件、こういう事件を私全部係長でやりましたけれども、そういう強い圧迫は来ませんでしたがね。
  935. 大野幸一

    ○大野幸一君 併し今度内部と呼応して、内部の人が派閥々々と言い出して、内部と外部と呼応してあなた方を圧迫するようなことはないですか。
  936. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、ですから今度の事件で派閥とか何とかいうことをいうのは、私は非常に心外なんです。
  937. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから細かいことですが、あなたが伊藤ですか、伊藤に饗応になつた結果になつたことがあると……。
  938. 上田良三

    証人(上田良三君) 伊藤にはありません。
  939. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤じやない佐藤です。
  940. 大野幸一

    ○大野幸一君 佐藤ですか。
  941. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ。
  942. 大野幸一

    ○大野幸一君 その時のメンバーを覚えているだけさつき委員長に答えましたか、答えなかつたですか。
  943. 上田良三

    証人(上田良三君) その時の三人の係長です。
  944. 大野幸一

    ○大野幸一君 誰と誰ですか。
  945. 上田良三

    証人(上田良三君) 私と吉武と細田と。
  946. 大野幸一

    ○大野幸一君 その外にないですか。
  947. 上田良三

    証人(上田良三君) 日野君の誘いで……。
  948. 大野幸一

    ○大野幸一君 その以外にはないですか。
  949. 上田良三

    証人(上田良三君) それ以外にはいないように思つております。
  950. 岡田宗司

    岡田宗司君 先程伊藤の調書を読上げられたときに、電気クラブの問題ですが、土田が制服のままでそこに参加しておつてですね、何か会合があるときに張り番をしておつたというようなことを聞いたんですが、これは非常に重大な問題だろうと思うんです。特に警視庁の内部の者がそういうことをしておるときに、これはまあ警視庁にとりましても相当大きな問題になるんですが、こういうような場合には、警視総監にそういう旨があつたことは報告されますか。あの調書をとられて、土田がそういうことをしたということが出て来たときに、あなたの方から警視総監に報告されましたか。
  951. 上田良三

    証人(上田良三君) 課長からしているんじやないかと思いますが……。私達は直接総監に行くようなことはそうありませんから……。
  952. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 課長には報告したんですか。
  953. 上田良三

    証人(上田良三君) 課長には逐一報告申上げます。課長は恐らく部長に報告申上げて、部長が総監に申上げるというのが、これが大体の建前です。
  954. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうするとなんですか、大体課長の方から警視総監に報告してあつたと見ていいわけですな。
  955. 上田良三

    証人(上田良三君) してあると思いますが……。
  956. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうして若し警視総監が本当に警察官としての任務ということをよく認識されておるならば、こういうことがあつたときに、更にもつと土田の問題について深く掘り下げろというような命令なり或は内示なりしなければならんと思うのですが、そういうことはあなた方の課長に対してありませんでしたか。
  957. 上田良三

    証人(上田良三君) よく聞いておりません。それで、今ちよつと一つ申上げますが、あの事件がもつとはつきりしたものなら、今の三通の事件、はつきりした犯罪と立証するに足るものがあればですが、十分にはつきりしていない点があるんです。なぜならば、伊藤はその席に入つていないわけですから、どういう話をしたかということは、伊藤の調書にも言つておる通り知らんわけです。知らなければ事件に摘まみ上げられるかどうかということは、見通しをして危いものですから……。
  958. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからあなたが伊藤鑛壽をお調べになつたときに、伊藤鑛壽岡崎英城、それから丹羽ですね。同人との関係についてお調べになつたのですか。
  959. 上田良三

    証人(上田良三君) 一応聞いております。
  960. 岡田宗司

    岡田宗司君 一応……。それで伊藤鑛壽岡崎丹羽との関係ですね、特に借家を借りたとかいろいろ問題が出ておるようですが、そういう点についてあなたが聞かれた範囲をちよつと知らせて頂きたい。
  961. 上田良三

    証人(上田良三君) 伊藤がですね、いろんな会合のときに、つまり岡崎丹羽その他の人の会合のときに、自分は後援をしている、援助をしている、私は体のいい後援者です、でありますから隱退蔵物資の摘発のときに、丹羽さんが顔を利かして、俺が運動してやるからと言われたものですから、幹部の人には一銭も金を使つておりませんという伊藤の陳述です。
  962. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと先程伊藤が何か紙の事件で紙業課の役人に賄賂を使つた、更に自分を取調べた飯澤警部に賄賂を使つた、こういうことになるのですが……。
  963. 上田良三

    証人(上田良三君) そうです。
  964. 岡田宗司

    岡田宗司君 この伊藤と飯澤警部との間に丹羽が介在しておつたかどうか。
  965. 上田良三

    証人(上田良三君) これは私の方の調書が、検察庁の検事が伊藤に対してとつた調書が、これははつきり記憶はありませんが、丹羽伊藤を連れて時の経済の課長のところに揉み消しに来たというようなことを聞いております。併しこれは一体どこの調書かまだ記憶がはつきりしません。
  966. 岡田宗司

    岡田宗司君 その課長というのは、行つた課長というのは何という人ですか。
  967. 上田良三

    証人(上田良三君) 誰だか分らんです。
  968. 岡田宗司

    岡田宗司君 その課長課長の下に飯澤という人がいたのですか。それともそうでない別の関係ですか。
  969. 上田良三

    証人(上田良三君) はて、何課に付いていたか、実はこの紙の問題はややこしいのでしてね、マ司令部の調査というのとそれから普通の紙の調査は違うのです。隱退蔵の方で調査部の調査になると一課になります。紙という関係になると二課になります。それでちよつとややこしいので、ちよつと私には分りませんが。
  970. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと伊藤の陳述によれば、丹羽伊藤一緒に揉み消し運動をやつたということを伊藤言つておるわけですが、その丹羽の揉み消し運動の関係については、あなたが取調の際にそれ以上追及はされなかつたのですか。
  971. 上田良三

    証人(上田良三君) いや直接私が調べたのじやないのですが、私の方の部下の加島警部が調べたのですが、追及しているのですけれども、確実な何かは握られなかつたのではないか、いずれにしてもこれは検察庁の検事がその関係者を調べている筈だと思うのです。
  972. 岡田宗司

    岡田宗司君 若し検察庁の検事がその関係を調べているとすると、追放せられておる丹羽が、当然入つてはならない警視庁に出入して揉み消しをしておるということは、これは追放令の違反になる大きな問題だと思うのです。それで丹羽の昨日の陳述とは大分違うと思うのです。これは若し検察庁の方でそういう調べが進んでおるとしたら、これは取寄せて明かにして行く必要があるのじやないかと思います。
  973. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その問題は特審の方で調査が大体できそうで、終了しそうですから、終了できますれば我々の方で取寄せることになつております。
  974. 岡田宗司

    岡田宗司君 次にですね、伊藤鑛壽岡崎関係ですが、これについてあなたのお調べになつた範囲を一つ……。
  975. 上田良三

    証人(上田良三君) いや家を貸してやつてから懇意になつたというわけです。
  976. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一問一答でどうぞ……。
  977. 岡田宗司

    岡田宗司君 この家を貸すことについて、何かその以前に関係があつて家を貸したのか、單に何かの偶然のことから家を貸して、それから関係が付いたのか、その点はお分りになりませんでしたか。
  978. 上田良三

    証人(上田良三君) あれは当時の署長である、土田さんが世話して貸したのだというように私は思つております。
  979. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと伊藤土田という者との関係が先であつて、そうして土田岡崎伊藤紹介した、こういうことになりますか。
  980. 上田良三

    証人(上田良三君) 岡崎さんが伊藤に……。
  981. 岡田宗司

    岡田宗司君 つまり土田が中に入つて岡崎伊藤紹介した。
  982. 上田良三

    証人(上田良三君) 調書ではそういうように記憶しております。
  983. 岡田宗司

    岡田宗司君 土田伊藤との関係はいつ頃から生じていますか。
  984. 上田良三

    証人(上田良三君) これは当時警察署長さんでしたからではないかと思いますが、そういう点は何ら調べておりません。
  985. 岡田宗司

    岡田宗司君 そのときに伊藤鑛壽の紙の問題が起つたときに、土田がすでに本庁に来ておつたわけですか。
  986. 上田良三

    証人(上田良三君) 伊藤鑛壽の紙の事件の頃は……そうです。
  987. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうしますと、土田はその伊藤鑛壽の紙の事件を揉み消すというようなことを昔にやつておりませんですか。
  988. 上田良三

    証人(上田良三君) 私はその点に対しては知りません。
  989. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に電気クラブの会合で、伊藤は内容を知らない、併し昭和電工事件の頃に殆んど毎日寄つてつたというふうに先程言われたと思うのですが。
  990. 上田良三

    証人(上田良三君) はあ。
  991. 岡田宗司

    岡田宗司君 これについてあなたは何か昭和電工事件についてですね、そういう連中が揉み消し運動をやるために毎日集まつていたのだというような感じを取調の最中にお受けになりませんでしたか。
  992. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、その時分は受けませんでしたですね。
  993. 岡田宗司

    岡田宗司君 あとになつてそうだということが分りませんでしたか。
  994. 上田良三

    証人(上田良三君) そうじやない、警視庁全部手を引け、全部事件検察庁にやれという命令が来ました。私はその命令が何のためが未だに不思議に思つております。
  995. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その命令はいつ頃来たのですか。
  996. 上田良三

    証人(上田良三君) あれはいつ頃ですか、秋になつてからだと思います。
  997. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつの秋……。
  998. 上田良三

    証人(上田良三君) 手を引けと言われた、その理由を聞くために、検察庁に二回も三回も行つて、こんなにやつているのに何のために手を引けと言うのかといつたら、それはいずれあとで分る、あとで分るということを検察庁の検事が言つております。
  999. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは二十三年の九月二日のことですね。
  1000. 上田良三

    証人(上田良三君) ああそうですか。私は記憶はありませんが、何でも九月か十月頃と思つております。
  1001. 岡田宗司

    岡田宗司君 電気クラブの会合にはときどき増田さんが出ておつた……。
  1002. 上田良三

    証人(上田良三君) ということを伊藤言つております。
  1003. 岡田宗司

    岡田宗司君 伊藤がはつきり言つておるわけですね。
  1004. 上田良三

    証人(上田良三君) はあ。
  1005. 岡田宗司

    岡田宗司君 それで伊藤は、現在の増田官房長官がその頃にやはりそういう問題で大いに活躍しておつたというようなことは言つておりませんでしたか。
  1006. 上田良三

    証人(上田良三君) それは聞いておりません。
  1007. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから先程の伊藤の陳述によるとですね、丹羽、それから岡崎が使いになつて金を貰いに来たというようなことになつておるようで……。
  1008. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、佐藤からです。伊藤じやない、佐藤です。
  1009. 岡田宗司

    岡田宗司君 佐藤の陳述によると、それについて佐藤は非常に曖昧な答えをしておる。それから岡崎丹羽言つていることも曖昧であり、金額も佐藤の調書の点で非常な食違いがある。でこの点が増田氏の問題については非常に重大なことだと思うのですが、この佐藤はですね、この取調に当つて圧迫されたというような、或いは頭が混乱したというようなことを言つているのだが、まあそういう点はなかつたというようにあなたはお考えでしような。
  1010. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ、絶対になかつたと思いますね。大体頭が狂つたか何かというのならば調書の何が違いますよ、ああすらすら出るものじやありません。
  1011. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 二、三伺つて置きたいと思うのですが、さつき読上げられました佐藤昇と書いて自筆の政界関係へのお金を上げた、連記されたのがありましたが、これはいつ頃のお調べのときに出ておるか分りませんか。
  1012. 上田良三

    証人(上田良三君) ちよつと私は覚えておりませんが、時のなにに聞いて頂ければ……四、五枚、こういうことを書いたような様子ですから……。
  1013. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 つまり大体さつきそれに続いて朗読された一月十六日の調書の一部、その前後にできたものですね。
  1014. 上田良三

    証人(上田良三君) いやこの一月十六日というのは伊藤事件……、いや違います……。
  1015. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 佐藤さんのね。
  1016. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らくその前後だろうと思いますが。
  1017. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その次に伊藤鑛壽という方の調書の一部をさつきやはり朗読されましたが、これは電気クラブ藤田さん、土田さんという……又増田さんが見えたという、これはこの調書をおとりになつた日がお分りでしようか。
  1018. 上田良三

    証人(上田良三君) あれは十二月二十一日です。
  1019. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから次に伺いたいのは、さつきちよつと聞き漏したので、もう一遍述べて頂きたいのですが、二十三年の九月の二日頃に検事局の方から、警視庁から手を引けというのは、何の事件から手を引けというのですか。
  1020. 上田良三

    証人(上田良三君) あれは警視庁から引けじやないので……。
  1021. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あれは昭電事件なんです。
  1022. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 昭電事件ですか。
  1023. 上田良三

    証人(上田良三君) 昭和電工事件からです。
  1024. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから最後にもう一つ伺つて置きたいのは、この委員会で数日前に伊藤鑛壽という方の証言を願つたときには、これは電気クラブ増田さんが出席せられたということについて非常に曖昧で、顔をよく覚えていないとか見えたか見えないかはつきりしない、見えたような見えないようなことだつたのですが、その調書の前後は今そこにお持ちでないでしようか。電気クラブ増田さんが見えたと……。
  1025. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ、ときどき見えましたというのですね。さつきちよつと申上げましたが、ときどき増田さんが見えて懇談しておりましたということを伊藤言つております。
  1026. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ときどき増田さんが見えて懇談していたということを述べておるのですね。
  1027. 上田良三

    証人(上田良三君) はあ。
  1028. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。
  1029. 松井道夫

    ○松井道夫君 私からお尋ねしますが、あなたは、この佐藤の関係は余り詳細には御存知ないわけですね。
  1030. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ。
  1031. 松井道夫

    ○松井道夫君 佐藤の関係岡崎丹羽、今の六十万円ですか、おやりになつたと思うのですが、それを渡した関係をあなたがお知りになつたのは、これはいつどうしてこういうことをお知りになつたのですか。
  1032. 上田良三

    証人(上田良三君) 岡崎に……。
  1033. 松井道夫

    ○松井道夫君 岡崎丹羽、佐藤が合計六十万円、三回に六十万円ですね、その関係はいつどうしてお聞きになつたのです。
  1034. 上田良三

    証人(上田良三君) いいえ、あの頃ですね、やはりもうすでに私の方の部下も応援さしておりましたし……、そうして飯塚係長課長へ報告する、私もそこにいる場合には聞いております。そういう関係で知りました。
  1035. 松井道夫

    ○松井道夫君 その外、佐藤がまあ警察関係その他官界いろいろ金を出しておるわけですがね。そういう関係もやはり同時にお知りになつたのですか。同時にそういつた関係が多少でも犯罪に関係があるかどうかというようなことの検討にあなた参加されたことはないのですか、或いはそういう相談を受けられたことはないですか。
  1036. 上田良三

    証人(上田良三君) いいえこの事件どうかという相談も受けませんが、大体調書だけの、全部を見て犯罪になるというようなものは、あの中で例の第二回目に逮捕状を請求しました岡田秀男のあの分が、あの中に一番犯罪濃厚じやないか、あの中では濃厚じやないかというので、あれを摘まみ上げたのです。こういうことです。
  1037. 松井道夫

    ○松井道夫君 その外に多少でも犯罪の臭いがする、というようなものはなかつたですか。
  1038. 上田良三

    証人(上田良三君) やはり細かく検討すれば臭いのするのがあつたかも知れませんが、まだそこまで行つておりません。
  1039. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたとしてはそこまで検討していないというのですか。
  1040. 上田良三

    証人(上田良三君) 検討というのは、直接はしておりませんが……。
  1041. 松井道夫

    ○松井道夫君 併しあなたとして、犯罪的の性格を持つておるのもあるかも知らんと思つていらつしやるのですか。或いはそういうものはもう今の岡田関係ですか、それ以外に絶対にない……。
  1042. 上田良三

    証人(上田良三君) 絶対にないということは言えない。あの中やはり期間というような問題、或いはその捜査の裏付というのを見てからでないと、仮に二十三年の七月から政治資金規正法ができた、その以前のものだつたらこれは問題にならなくなる。やはり実際にこれは二十三年七月か何かという裏付が必要になる。或いは金を渡したか渡していないか、小切手を渡した、銀行に渡したというならば、銀行の調査が必要になつて来るし、やはり一概にこれはなるという断定はできない。
  1043. 松井道夫

    ○松井道夫君 ならんとも断定できない。そういうものを一体第二係ですか、そつちの方で一体検討したのですか、しないのですか。
  1044. 上田良三

    証人(上田良三君) 検討したと思いますが、やはりあの事件にして上げるまでが相当むつかしいですがね。ちよつと足らなくてもなかなか逮捕状も出ない場合もありますし、出ても二日で放り出される場合もありますし、若し進んでも十日目の起訴不起訴の場合に放り出される場合もあります。やはり十日前に放り出されるというような事件は、ちよつと我々の方では余り手をかけたくないですね。
  1045. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたは岡崎とか丹羽とかいう人は、追放されておる人だということは今の金を受取つたといつたようなことは、あなたがお知りになつたとき、その当時は知つておられないのですか、どうですか。
  1046. 上田良三

    証人(上田良三君) 追放になつておると思いました。
  1047. 松井道夫

    ○松井道夫君 知つてつたわけですね。私共が疑問に思うのは、とにかくまあ相当な大事件であるのに、どうしてですね、まあ佐藤の搜査としてだけでなく、外の人達にも被疑者が出るかも知れない、どうして今のあなたのおつしやるいわゆる裏付けというようなことを搜査なさらなかつたのか、それがまあ疑問なんですがね。これは相当の大官が関係しておるから軽々に手を付けちや始末のいかんことになるというようなことで躊躇されたのか、或いは上部からこういつたような性質のものは、上部に連絡してからやらなければならんというような関係があつて、そつちの方からまあ待てということであつたのか、或いは全然犯罪が成立しないという見解であつたのか、そういうところがはつきりしないからお聞きするのです。
  1048. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、上から待てというようなことは一つもありません。それでこの事件を放棄したかと言われれば、私はまだ放棄していない、まだ結末を付けずに取つておる。
  1049. 松井道夫

    ○松井道夫君 併し例えばまあ増田さんの名前が出て来るといつたような性質の事件なら、当然総監まで、搜査をするなら総監まで申出てその命令がなければやれないのじやないですか、どういうことになつておるのですか、取扱は……。
  1050. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、一応そういう重要な人の名前が出た場合、或いは重大事件になりますと、勿論上司にそれぞれ報告をされると思います。
  1051. 松井道夫

    ○松井道夫君 指揮を受けるわけでしよう。その指揮までは、報告までは行つていないのですか、どうなんですか。
  1052. 上田良三

    証人(上田良三君) 報告はされたかも知らんが、事件は伏せるというような、そういうような結末は出ていないのです。
  1053. 松井道夫

    ○松井道夫君 それは二課としてでしよう、二課としてのことをおつしやるのでしよう。
  1054. 上田良三

    証人(上田良三君) 私として……。
  1055. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたとして、
  1056. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ。
  1057. 松井道夫

    ○松井道夫君 上司はどう考えておるか分らないわけですね。
  1058. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らく或る確証を握つて、こういう事件だからやりますという進言をすれば恐らくやるなということは言われないだろうと思いますが、まだ、どうこう確信を持つて事件を立てるというところまでは進んでいない。
  1059. 松井道夫

    ○松井道夫君 警視総監に何も報告、或いは指揮なしにそういう搜査もできるのですか。要するに総監からしつかりした命令が、その程度なら得られるといつた程度の下調の搜査ならできるのですか。
  1060. 上田良三

    証人(上田良三君) いや、これは内偵といつて、或る程度の内偵は、これは言わないうちに内偵できます。やるやらんは別として……。
  1061. 松井道夫

    ○松井道夫君 総監の指揮がなくてもできる……。
  1062. 上田良三

    証人(上田良三君) そうしないと一々総監に聞いておるのですと搜査第一、第二、第三、経済第一、第二、第三と厖大な事件を扱うので、聞いたつて頭へ入るものではないのです。私一人でも十の部屋を持つおります、その十の人達の事件を聞くだけでも一ぱいですね。
  1063. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから先程ちよつとお読みになつた、今の岡崎丹羽関係の調書を写して来られたのですが、あなたのお読みになつたのをお聞きして、ちよつと腑に落ちなかつたのは、非常に簡單で、果して真実を言つておるのかどうか、読み聞かされたのではぴんと来ないような状況である、例えば渡邊代議士から電話が掛かつて来た、増田政治献金を岡崎丹羽らが貰うそうだから一つよろしく頼むという……、一体幾らという金額もないし、金額は一体どこで決まつたのか、佐藤が自分で考えてやつたのか、或いは予め金額の話があつてつたのか、まあちよつと一例ですが、そういつたことも頗る真実性を把握しにくい程度になつておる、どうせそういうものが出て来たら、いつ、どこで、どういう工合にというようにきつちりととりそうなものですがね。そういう点はどうですか。
  1064. 上田良三

    証人(上田良三君) それは併し、さつきの調書は佐藤の言つたままですが……。
  1065. 松井道夫

    ○松井道夫君 言つたままでも、更に追つかけて、例えば金額は誰がどうして決めたかということは当然聞かなければならんことではないかと思うのですがね。
  1066. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らく決まつていなかつたのだろうと思います。決まつておればそれが調書に謳われてると思います。
  1067. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや、先程実は、取調べに当つた係官は経験も少いし、若いし、だからまあ真実に副わない調書もできる可能性があるのだといつたよう証言もあつたので、それででたらめをそう言つておるからそうなつたのか、或いは係官が押えるべきところを押えないで、その点を決定的に調べないのでそういうことになつたのか、要するに若いからと言いますか、慣れていないから……、まあその辺をお聞きしたいと思うのですが、二課というと相当僕達が考えれば、練達な人を充てておるのだろうと思うのですが、やはりそういう非難は免れないのですか。若くて慣れないから碌な調書ができないといつたような非難は免れないのですか。
  1068. 上田良三

    証人(上田良三君) 伊藤を調べた加島主任は、私の部屋では非常に重宝で何にでも使える、今暴力団もあれが大抵担当してやつて使える、搜査としては恐らく落ちがないと思います。それから宗像主任は佐藤を調べたのでありますが、これは第二係長の方ですから、私はその人間をどうこうということを自信を持つて申上げられませんが、私の見たところでは宗像は警部としては立派な腕を持つておると思います。
  1069. 松井道夫

    ○松井道夫君 先程おつしやつた岡崎丹羽関係の調書をおとりになつたのは誰ですか。今の飯塚さんですか、宗像さんですか、誰ですか。
  1070. 上田良三

    証人(上田良三君) 調書は宗像氏がとつたのであります。
  1071. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤のは宗像さんではないのですか。
  1072. 上田良三

    証人(上田良三君) 伊藤のは加島警部であります。
  1073. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 電気クラブ土田さんが制服で張番をしておつた、そうすると土田という者の動きというものが誠に重大でありますが、その部下の宗像さんが調書をとられたというのでありますが、そうすると証人事件を担当して調べておる間において、たとえその事件の及ぶところを警視総監が断つても止むを得ないと言われた非常な決心でやつておられるようでありますが、そうするとそういうような土田の動きというものが誠に重大でありますが、土田を呼んでですね、お前こうこうこういうような動きをしておつたというようなことは、調書か何かでおとりになつて確かめられたことがありますか。
  1074. 上田良三

    証人(上田良三君) ありません。
  1075. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 どういうわけですか。片一方だけが、そういうような、土田がですね、制服を着て、そしてその張番のようなことをやつておる。而も中では重要なことを会議をしておるらしいというようなことを、調書に出ておるとして見るとですね、果してその土田がそういうことをやつたかどうか、これはやつぱりあなたの部下の宗像さんがお調べになつて……。
  1076. 上田良三

    証人(上田良三君) 宗像じやない加島ですね。
  1077. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 加島さんですか。これは重要なことだからたとえ上司であろうと何であろうと、果して真実を把握する上においては必要なことだが、あれも呼んで聞くとか、呼ばんまでもですね、何かの形で探りを入れて、真実性を的確にするために、究めるということが、あなたのお仕事じやなかろうかと思いますが……。
  1078. 上田良三

    証人(上田良三君) これはまだ結了になつていないのです。
  1079. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 結了にいたしておらんということは、たびたび承わりましたが、併し大体事件はですね、掘つて見れば幾らでもありましようが、本筋はすでにあなたの方の手許を離れまして、検事のところに行つて起訴されたのもあるでしようし、起訴にならない程度のものもあるであろうと思いますが、そこまで至つておるのに、非常に日が経つておるのに、まだ事件が終了していないから、あとからでも追い込めるのだというお考えから、土田なんかの肚を、真実性を聞いておらないか、聞くまでもないのだ、土田がそこにおつたかおらないかということは確かめなくても、やつの言つておることははつきりしておるから、呼ばないというおつもりなのか、それともあなたが言われるような、まだ事件は結論を得ていないから後日でも聞くというおつもりでおられるのですか。
  1080. 上田良三

    証人(上田良三君) 事件を立てる場合には、勿論これはやはり何かの形で聞かなければ立ちませんですね。一方的ですから。
  1081. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 一方的ですからね。
  1082. 上田良三

    証人(上田良三君) 併し少くとも伊藤が、追及が余り強いので頭が狂つてつたのだということに対して、私はこの調書の通り正しいものである。伊藤の言つたことが少くとも本当のことを言つていると認めます。
  1083. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それは第一線でやつておる人としては、あなたの方でおとりになつた調書の真実性というものは、どこまでも貫きたいということは、それはよく分かりますけれども、併しよく公判に参りましてですね、被疑者が被告人と変つて、被告人が調書を否認するということになれば、証拠という関係が、今の新らしい訴訟法では、誠に駄目になつてしまうということですから、余程あなたの方も決心してやらなければならんのに拘わらず、その一方そこに立会つてつたという土田を聊かもお調べにならん。呼びもせん。片一方だけがあれがやつた、制服を着ておつた、中では重要なことをやつてつたということがはつきりしておるのに、今以てお呼びにならんということは、あなたの、非常な熱意で犯罪捜査に当つておられる人、殊に繰返すようでありますが、犯罪の及ぶところたとえ警視総監の身辺に及んでも……。
  1084. 上田良三

    証人(上田良三君) いやいや、警視総監に及んでということは、少くとも二課では……邪魔をする或いはインチキをやればいかんという気持を申上げたのです。総監に及んでは首が幾らあつても足りません。併し少くともそういう気持でなければ二課の仕事はできんということを申上げたのです。
  1085. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 結局事件がまだ進んでおらん、まだ結論を結んでおるわけではないから、何とか将来でも事情によつて土田を呼んで明らかにすることもあるかも知れん……。
  1086. 上田良三

    証人(上田良三君) 私が呼ばんでも上司から、監察官の方から自然呼ばれると思います。
  1087. 大野幸一

    ○大野幸一君 弁護士が伊藤鑛壽に付きましたか。
  1088. 上田良三

    証人(上田良三君) 付きました。
  1089. 大野幸一

    ○大野幸一君 何人付きましたか。
  1090. 上田良三

    証人(上田良三君) 何人か記憶いたしませんが、元検事をしておつた松本さんですか、この方は私記憶しております。
  1091. 大野幸一

    ○大野幸一君 その外何人ぐらいですか、一人じやないでしよう。
  1092. 上田良三

    証人(上田良三君) 一人か二人か、その点よく記憶しておりません。
  1093. 大野幸一

    ○大野幸一君 直ぐ付いたようですか。
  1094. 上田良三

    証人(上田良三君) じき付かれたようです。
  1095. 大野幸一

    ○大野幸一君 弁護士との接見は、あれは検事の許可が要るので、会わせて付けなければならないわけですね。
  1096. 上田良三

    証人(上田良三君) ええ。
  1097. 大野幸一

    ○大野幸一君 求めによつて会わせたのですか。
  1098. 上田良三

    証人(上田良三君) 恐らく来て会わせないということはありません。ただ、今調べておれば場所を探すとか、或いはちよつと待つて貰うとか、そういう点がありますが、断るということはちよつとまずいですから。
  1099. 大野幸一

    ○大野幸一君 拘留中の調書の書換を弁護士なり、又は本人から請求したことはありませんな。
  1100. 上田良三

    証人(上田良三君) それは私直接聞いておりません。
  1101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いやどうもお忙しいところ有難うございました。まだ外にちよつとお聞きすることがあるかも知れませんから控室にお待ちを願いたい。    〔証人上田良三君退席〕   —————————————    〔証人飯塚堅藏君着席〕
  1102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 飯塚さんですか。
  1103. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようでございます。
  1104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課の二係長をおやりになりましたか。
  1105. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようでございます。
  1106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴をおつしやつて下さい。
  1107. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 大正十一年に警視庁巡査を拜命しまして、昭和八年に巡査部長昭和十四年に警部補、二十一年に警部、昨年の十二月第二係長、大体勤務場所は万世橋、世田ケ谷警察署、新場橋警察署、監察官附、それから捜査二課、大体は殆んど捜査二課でございます。
  1108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 捜査二課にお入りになる前に、捜査に御関係になりましたことがありましたか。
  1109. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 万世橋警察署で刑事係。
  1110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのくらいやりましたか。
  1111. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 約一年余りやつたと思います。
  1112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外にはおありにならないのですか。
  1113. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると二課の在職年限は。
  1115. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 捜査二課ができまして昭和二年に参りまして、巡査部長になつた昭和八年まででございます。それから世田ケ谷署の刑事係の部長に参りまして、昭和十一年に又捜査二課に戻りまして、それから十四年に警部補になりまして、新場橋署の捜査主任になりました。同年に又監察官附になりまして、十五年の十二月に捜査二課に参りまして、それから引続き……。
  1116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課は相当長いわけですね。
  1117. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤昇の事件は御担任になりましたね。
  1119. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようでございます。
  1120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのお取調べになる過程におきまして、本人の供述が自由に述べられない程度の大声で威嚇というような取調の方法があつたですか、どうですか。
  1121. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようなことは絶対にありません。大体捜査二課の取調というものは、新憲法以前から、取調を受ける人達が相当の地位もあり、名誉もあり、有識の人でありますから、そういう点についてはかねがねもう昔も今も変りがないように注意をしまして、そうして取調をしておるのであります。尚捜査二課の調べというものは決して強制をしたり、そういうようなことをしては、本当の調べはできないのであります。結局お互いの真心と真心が通うような、至誠天に通ずるような気持で取調をしなければ、決して相手が本当の供述をしないのであります。従つて強要したり、大声を上げるとか、そういうようなことは絶対にありません。
  1122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か取調で以て深更に及んだようなことがあるのですか。
  1123. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そう深更に及んだことはありません。ただ多少雑談をしたり、差入れの関係で若干遅くなつたと思いますけれども、深更に及ぶというようなことは絶対にありません。
  1124. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことはしばしばあつたのですか。
  1125. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そう何回もないと思います。
  1126. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一番遅くなつたときはどのくらいですか。
  1127. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 九時頃じやないかと思いますが、はつきりいたしませんが、それは留置場から出したり、入れたりするときに時間を付けてありますから、それをお調べになれば分かると思います。それから検事さんの調べも大分受けまして、検事局から帰るのを待つて、さようなことでまあ遅くなつたこともありますけれども、深更に及ぶというようなことは絶対にありません。
  1128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤は当委員会におきましては、取調を受ける当時、精神状態が混乱しておつて、心にもないことや、記憶違いのことを述べたんだというようなことを述べておりますが……。
  1129. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようなことは絶対にないと思いますが、取調に対しては、私が大体各係を指揮をしまして、取調をみずからもし、又させたのでありますけれども、今申上げたように、我々の取調というものは、決してもう相手に或る一定の枠を嵌めるとか、或いは強制するとか、そういうような取調をしたのでは、本当の相手の真実の供述を得ることはできないのであります。従つて本当に虚心坦懐にお互いの血と血が通うような気持になつて、そうして話をし合うのでありまして、当時佐藤さんもこだわりのない、本当に明るい気持で供述をし話をし合つたのでありまして、恐らくそんなことはなかつたのであります。さようなことを申上げるとするならば、佐藤さんが出てから何かそこに心境の変化があつたのじやないかと考えられるのであります。その実例としましては、佐藤さんが我々の取調に対しては常に感謝の気持でおつたことは、これはもう我々もよく感じているのであります。その例としましては、釈放されてからわざわざ私のところに、係のところにも、いろいろお世話になつた言つて足を運んでお礼に来ております。それはちよつと当時の心境と現在の心境とが違つているのじやないかというふうに私は考えられるのであります。
  1130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時佐藤が供述していることは、自由に任意に述べているわけですね。
  1131. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようであります。それはもう佐藤さんもなかなかしつかりした方であつて、我々が仮に何かそんな強要がましいことをしたとしても、そんなことに怖れるような、そんな人格じやないと私は信じております。我々も佐藤さんはなかなかしつかりした方である、我々の気持も分り、我々も佐藤さんの気持がよく分つて、そうして本当に事実の真相を明らかにする、こういうお互いに理解し合つて、本当に明るい気持で取調べたのであります。従つて佐藤さんに対して強要がましいようなお取調をしたことは、絶対にありません。
  1132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時佐藤が述べていることは、どうですか、真実を述べているふうにお考えになつたのですか。或いはでたらめにはつたりをかけているようにお考えになつたのですか。
  1133. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは今言つたように、佐藤さんも虚心坦懐な明るい気持で話をされたのでありますし、私はもう盡くこれは真実間違いないと確信しておつたのであります。尚私達はこの搜査に当つては綿密な搜査をしまして、例えば経理関係におきましても、銀行等の経理関係はもう一万円以上の出入りは盡く取調をする、こういうふうな綿密な搜査をしたのでありますが、それに適合するように話が出て来るので、いろいろの裏付があるので、佐藤さんの話は、もう絶対間違いないと確信しておつたのであります。
  1134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、佐藤の本件のいわゆる詐欺事件ですね、これに関連いたしまして、いろいろ政界、官界、警察方面に金をばら撒いたということを述べるに至つた理由ですね、どういうわけですか。
  1135. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは詐欺事犯の取調は大体本人の性行、来歴、生計状態、経理関係、経理関係におきましても、そういう従来古い関係から取調をして、綿密な搜査をして行かなければあとでこれは取調を受ける者の考えの含みのあるものは、あとでいろいろな切札を持つて来る場合がありますから、財産がないと言つておりながら大いにある。或るいはこういう事実があるにも拘わらず、それを伏せて置いて、公判廷に行つてから出して来る。そういうふうな虞れもあるのであつて、この搜査については、そういうような詐欺事犯の搜査につきましては、そういう虞れもあるので綿密な経理関係搜査した関係から、佐藤さんがあのような事実を申述べるようになつて来た……。
  1136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは経理関係をお調べになるために、段々そういうふうに供述するように至つたのですか。従つてその述べられたことが果して真実であるかどうかということもお調べになつたんですね。
  1137. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは先程申上げたように、綿密な銀行の調査その他の経理関係を取調べた結果、それに適合するような話、いわゆる話の内容について裏付するような点があるので、これはもう真実の供述に間違いないと思うのであります。
  1138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) すると例えば福田氏に七十万円とか渡した、合計してですね、という場合にはそれをお調べになりましたのですね。
  1139. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 調べました。
  1140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういうふうな工合になつておりましたか。
  1141. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは佐藤さんのお話では五十万円の際に、三十万円は小切手、それから二十万円は現金、こういうようなお話であつたのですが、その三十万円の小切手が確か福田さん関係の方に渡つておるというようなこともありまして、これは間違いないと思います。
  1142. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 三十万円福田さんに渡つているんですか。
  1143. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは受取人は蜂谷輝雄さんになつておりますが、その外に吉田茂さんのお名前もありました。佐藤さんの話によればその三十万円は荻外莊に民自党の事務所を設けるその費用だ、こういうようなお話であつたんです。そんな関係で吉田さんの方に渡つたかどうか、吉田さんのお名前が、小切手の裏にありました。
  1144. 伊藤修

    委員長伊藤修君) するとその小切手はどこの小切手だつたんですか。
  1145. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 三和銀行丸の内支店です。
  1146. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 小切手は銀行で取つたんですか、交換に廻つたんですか。
  1147. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは吉田茂さんの口座の東京銀行に廻つております。
  1148. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは銀行をお調べになつておりますか。
  1149. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 調べました。
  1150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそれに関する書類をお持ちですか。
  1151. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あります。
  1152. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 若しありましたらお見せ願いたい。
  1153. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 持つていることは持つております。
  1154. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 朗読して頂きます。表と裏を朗読して頂きます。
  1155. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 株式会社三和銀行の小切手で、振出しは佐藤昇であります。小切手の番号は、はれ〇六一六四五、金額は三十万円也とし、右金額小切手持参人に支拂い下されたく候、昭和二十三年二月十三日振出し東京、銀行の所在地は東京都千代田区内幸町二ノ一株式会社三和銀行丸の内支店、それで、これは交換に廻つております。
  1156. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 交換はどこの……。
  1157. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 交換は東京銀行です。交換に廻つたのは二十三年の二月の十四日、裏書人は一番右に吉田茂と書いてあります。その次に本人としてこれは判がよく分りませんが、佐藤昇の印じやないかと思います。その次東京都杉並区西荻窪三ノ八十八蜂谷輝雄としてそこにローマ字でサインしてあります。小切手は大体そうでありますが、それから東京銀行を調べますというと、東京銀行本店に吉田茂さんの口座で……。
  1158. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 東京銀行の本店ですか。
  1159. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 本店です。
  1160. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこですか。
  1161. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) これは元の正金銀行のところですから、日本橋室町のところです。別口に……。
  1162. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう口座名前ですか。
  1163. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 吉田茂。別口になつております。それに二十三年の二月の十四日、他手三十万円入金となつております。
  1164. 伊藤修

    委員長伊藤修君) するとそういうようなふうに一々、お調べになつたんですね。
  1165. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 銀行は、大体一万円以上の小切手の受取人を全部調査することになつております。
  1166. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 行き場所は全部つき止めたわけですね。
  1167. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 全部つき止めたというわけでもありませんが、裏の状態をどういうふうに動いているかということを調査します。
  1168. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それによつていわゆる佐藤の供述されたところの金の撒布状態というものは真実性があるものと、こうお認めになつたんですね。
  1169. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ、そういうふうに確信しております。
  1170. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その場合蜂谷さんとか福田さんはお聞きになつたんですか。
  1171. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 聞いておりません。
  1172. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いておらない、割合経路がはつきりしているから。
  1173. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1174. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あの場合はどうですか。岡崎丹羽に渡したという金は。
  1175. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あれは渡邊良夫さんから電話増田さんの政治資金を援助して貰いたい、岡崎さんと丹羽さんを使いにやらせるからとこういうような電話を受けて、それを承諾されて、そのあと丹羽さんと岡崎さんが佐藤さんのところに見えて金を受取つて、確かあれは三回だと思いますが、三回とも同様な趣旨で佐藤さんは渡したと言つております。これについては佐藤さんが内幸町の増田さんの事務所行つたときにお礼を言われた、だから確かにあの金は増田さんの方に届いているだろう、こういうふうに言つておりました。尚その際に増田さんから岡田包義さん、それから伊能さん、あの二人の方も面倒を見てやつて呉れというようなお話を承つた、こう言つておりますので、これに関してもやはり岡田包義さんについても、伊能さんについても、佐藤さんの方が相当援助している事実がありまして、そういうような点からいたしまして、この話の内容は真実間違いないと確信しておつたのです。
  1176. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 塩谷消防総監ですね、金をやつた言つております、その点はどうですか。
  1177. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あの二人も確か五万円差上げたということは間違いないと確信しております。それというのはあの自動車を売る際に、確か値段の点が、佐藤さんの方は高く買つて欲しい、消防庁の方は予算がないから安く売つて欲しいというようなわけで折衝があつて、結局五万円を更に消防庁の方で出すことにして、そうして八十万円で話が付いたと思います。
  1178. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 九十万円じやないですか。
  1179. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 八十万円か九十万円だつたと思います。これについては消防庁の方でも、この五万円の支出について相当苦心されたような形跡もありまして、そのような意味合からして、その五万円も渡したことは間違いないと、こういうふうに考えております。
  1180. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その供述に対しては弁護士立会で以て取消したというようなことがあるのですが、そうですか。
  1181. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは私は直接は聞いておりませんです。そういうような、佐藤さんからそのような意味合の話を私は聞いておりませんです。
  1182. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いていない……。そういう事実もないのですね。
  1183. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あつたかどうか、私以外に或いは話があればあるでしようが、私はそういう話は知りませんです。
  1184. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し二課の誰かの係の人にお話があれがあなたに御報告になるわけですね。
  1185. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは一々私は前申上げたように、まあ佐藤さんの供述はそれはもう一方ではそういう……。
  1186. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう取消しのことがあれば、あなたが主任ですからあなたにそういう報告がある筈ですね。
  1187. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あるのが普通だと思います。私は聞いておりませんが……。
  1188. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いていないのですね。
  1189. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1190. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 塩谷さんに五万円をやるといつたときに、同時に、同じときにですね、同時に朝日の川手という人に五万円やつたということを述べておるんですか。
  1191. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは塩谷さんの関係で、それは江花さん、それから長井といいましたかなあ、それから山田順子さんです、その外沢山、幾つか金の関係がありまして、その中にやはり川手さんとの金の関係がありましたです。それは今詳しく覚えておりませんですが、そういうような塩谷さんに上げた五万円の外に金の関係が幾つかありまして、その中にも確か五万円か幾らか川手さんとの金の関係があつたよう記憶があります。
  1192. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私のお聞きすることは、塩谷さんに五万円やつたということも言つておる。川手さんにも五万円やつたということを……。
  1193. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは別口じやないかと思うんです。
  1194. 伊藤修

    委員長伊藤修君) と言うておるんですが、両方が一つである……。
  1195. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1196. 伊藤修

    委員長伊藤修君) というようなことは当時言うつてないのですか。
  1197. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 全然時期的に内容が違つておるんです。
  1198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 違つておるからですね。区別して言うておるんですね。
  1199. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さように思います。
  1200. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 江花さんとの金銭の取引については……。
  1201. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは塩谷さんに江花さんが何か近しい方であつて、総監室で紹介を受けて、そうして江花さんを援助してやつて呉れ、こういうようなお話があつて、佐藤さんの話では、塩谷さんの顔を立ててやる意味において金を何回か出しておつたんだ、こういうふうな気持だつた記憶しております。調書を見ればはつきりするのですが……。
  1202. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実際はね。
  1203. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあ塩谷さんの顔を立て、塩谷さんのためにそういうふうにして置けばまあ都合がいいだろうというような意味合でやつたよう意味のことを申上げました。
  1204. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 渡邊良夫に対しては。
  1205. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 渡邊さんはあれは福田さんの紹介だと言つておるので、水明ホテルかどこかで福田さんの紹介を受けて、それから出した、これで立候補するとか、立候補したらというような話があつて、それに援助して呉れたような意味で、確か何回か二十万円ぐらい出された、こういうように聞いております。
  1206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような金銭出入の供述は、先程土田さんから拜見いたしました、いわゆる佐藤氏が自分で書いたもの、そういうものを土台にしてお聞きになつてつたのですね。
  1207. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは書いた、ものを土台と言えば、書くというのは本人が記憶を、沢山の記憶がありますから、記憶を正確にする意味において、そうしてこの通りであつた、これが間違いないというように書いて出したのです。それを基本にしまして取調べをしてこの調書になつたのであります。
  1208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは本人が自由にあなたの目の前で書いたのですか。
  1209. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 私の目の前で書いた場合もありますし、又他の係の前で書いたものもあります。
  1210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう佐藤の書いたメモ式のものは何枚くらいあるのですか。
  1211. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 何枚か、大体一通りは書いてあると思いますが……。
  1212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきは上田さんに一枚お見せ願つたのでありますが……。
  1213. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まだ何枚かあります。
  1214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何枚くらいありますか。
  1215. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 何枚ですか、何枚かありましたが、ちよつと……調べて見ます。
  1216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体本人が自分で記憶を呼び出して、自分で書いた、だからまあその数字とかそういうやり取りということについては誤りないわけですね。
  1217. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) その方はそういうふうに考えております。
  1218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 供述に基いてその金の行く先を一々お調べになつたのですから、多少の時日とかいうズレはあるでしようが、内容においては誤りないと……。
  1219. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうふうに考えております。
  1220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 確信しているわけですね。
  1221. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はい。
  1222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは岡崎さんというのは御存じですか。
  1223. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 存じております。
  1224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんは……。
  1225. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 存じませんです。
  1226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんにお世話になつた人で、土田さんとか、或いは藤田さんという人が庁内においては相当優秀な立場にいらつしやるのですか。
  1227. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうふうに考えております。
  1228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その下に又吉武さんというのがいらつしやるのですね。
  1229. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はい。
  1230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんな関係で吉武さんは、結局直上の二課長の指揮を受けないというわけではなかろうが、土田さんの方にいろいろ指示を受けるとか、相談に行くとかいうようなことはなかつたかどうか、どう思いますか。
  1231. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうはつきり自分でそのようなことを見ておつたわけではありませんが、そのような噂のあつたことは確かであります。
  1232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんと吉武さんと折田さんと、こういう人は常に一緒に会食やなんか飲み歩いていらつしやるようですが、そんなことはあるのですか。
  1233. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そこまでは分りませんが、非常にまあ心易くしておるというようなふうに聞いております。
  1234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 親しいのですね、こういう方々は……今これに藤田さんを加えてそのような人はよく岡崎さんのところにお集まりになるのではありませんか。
  1235. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さあ、それは噂では聞きましたけれども、事実集つたかどうか、そういう具体的のことは知りません。
  1236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんの予備隊が、土田さんの私兵化すという何か話があるのですか。
  1237. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうような具体的なことは知りませんですが、まあ予備隊では絶対の権限を持つて活動されておるというように聞いております。
  1238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに犯罪検挙や何かに、二課と連絡しなければならないのに、予備隊が独自の行動を取つて検挙するというようなことがあつたのではないですか。
  1239. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういう方面に私は予備隊一緒に仕事をしたことがありませんので、具体的なことを知りませんですが、何かそういうような雰囲気があつたように聞いております。
  1240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その今申上げた吉武さんというのは、佐藤というのと非常に心易いらしいですね。
  1241. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 大分親しくされておつたという、会食されたこともある、こういうようなふうに、これはもう今度の取調によつてそういうことが事実の上に現われて来たのであります。
  1242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 取調の前においても、そういう風評があつたのじやないのですかね。いわゆる警視庁にしげしげ出入りいたしまして、いろいろ警視庁内に対して幹部諸氏に心易い関係上、佐藤というものが相当警視庁に勢力を持つているという関係にあつたのじやないですかね。
  1243. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは私はもう全然知りませんでした。私が昨年の暮に係長になつて、今度の佐藤の事件をやることになつて、そういう実情のあつたということを知り、又取調によつてそういう事実がはつきり分つたので、その前にはそういう具体的なことは全然知りませんでした。
  1244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ土田とか、或いは吉武さんに言わせると、いわゆる五井産業事件とか、或いは伊藤鑛壽に対する事件というものは、要するに土田とか、吉武というものに対抗するために、惡く言えば失脚させるために、殊更にこういうものを作つたのだというようなことを言うておりますが、あなた達のお気持はどうですか。
  1245. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはもうそういうような話を聞きますので、誠に心外に堪えない。非常に残念に思つております。私としましてはもう佐藤さんのこと、これはもう全然係長になるまでは知りませんでした。自分が係長になつて、今度の事件を私の部下の宗像と……それでまあいろいろこの経過を聞きますし、もう搜査二課として非常に残念な点がある。これは搜査二課のためにはつきりしなくちやいかんと、こういうふうに考えて、ただその搜査二課、搜査二課の将来というものを考えて、ただその信念でこの佐藤さんの事件をやりましたのでありまして、そんな考えは毛頭ありませんです。第一私も搜査二課に長くおりますですが、事件搜査というものは、これはもう私心を挾んだり、邪念があつては決して成功しないのです。やはり公平無私な、本当に虚心坦懐な気持でやらなければこの搜査というものは絶対成功しないものと、そういう信念を持つておるのです。従つて私が仮にもそういうような私心、或いは邪念があつたならば恐らくこの搜査も成功しなかつたろうと思います。のみならず先程申上げましたように、佐藤さんにしても本当に虚心坦懐な気持で事実を我々の前に率直に話をするということは絶対になかつたと思うのです。その点を何かそのような含みがあるようなふうに言われる節があるらしいですが、それは我々が神聖な気持でやつたこの仕事を、誠に穢いものによつて冒涜されるような、誠に残念な気持に考えております。ついでに詳しく申上げますと、宗像主任が昨年の四月か五、六月頃からこの厚生省事件をやりまして、この厚生省事件というものは相当発展する、こういうふうな期待を持ち、又上下共にそういうような期待を持つてその搜査に努力しておつたらしいです。ところが味の素の鈴木恭二の逮捕の段階になつて、宗像主任に対して地検の担当検事の加藤検事さんから、若し鈴木を逮捕できないならば、検事局で直接逮捕する、こういうふうに強硬な申入れを受けた。ところが当時の吉武さんは、任意出頭で取調べる方が適当だろう、その方がいいじやないかというような意向で以てですね、その後宗像主任が加藤検事さんからどうする、こういうふうな催促を受けて、それで宗像主任としてもとにかくすでに鈴木さんの下の課長二人は起訴されて、而も二百万円を、厚生省の予防研究所の役人に二百万円という多額の金を渡しておる。当然これはもう鈴木さんも関係があるのみならず、その両課長の自供によつても鈴木さんと相談してやつた、やつておると、こういうふうにはつきりその話をしておるのですね、而もその責任者は当然の責任者であるところの鈴木さんを逃して、下の方の課長だけを縛るというようなことは、これはもう搜査の常道から外れておるもので、金額も二百万円、そういうような大きな事件でありますので、それを任意出頭でやるということは大体これは間違いだ、検事としてもそれは当然逮捕して取調べるのがこれはもう当然のことなんです。それに対して任意出頭で取調するというようなことはですね、これはもう搜査二課の、搜査の常道から外れておることなんです。当時宗像主任もその気持で以て、それで係長の吉武さんに話したところが吉武さんがそういうふうな意向であつて、自分も立場に困つて、それで課長に話をした。ところが課長は直ぐにやれ、直ぐに逮捕しろと、こういうふうに言うたので直ぐ逮捕することになつたのです。その際に宗像主任の当時の話を聞きましてですね、吉武さんにその逮捕状を、先ず加藤検事がこういう意向だからどうしても逮捕してやらなくちやいかんと言うて、逮捕状を請求する決裁を求めたところが、吉武さんは課長の意向でちよつと待てというようなことで、それを取上げたまま返さない。こういうような事情があつた。大体搜査二課が、これはその検察庁から、お前の方でやれない事情があるならば、俺の方でやるという、こういうようなことを言われるということは、これはもうこれまでに搜査二課の生命をこれは一度に失墜することになる重大な問題だと思う。私ならば、検事がそういう意向ならば、どういうわけでそういうことを言うか。僕は警視庁が、私がこういうふうに、検事の方に直談判に行かなくちやならんところの事態だと思うのです。ところがこれに反して、この検事のそういう意向にも拘わらず、任意出頭でやるというので、逮捕状の請求書をそのままにして返さない。こういうようなことは、これはもう搜査二課のために非常にこれは悲しむべき事態であつたと思うのです。その後において鈴木恭二の取調をしたけれども、勾留期間満了に際して、起訴にならずに、課長は起訴になつておるにも拘わらず、ならずに、処分保留のまま保釈された。こういうような事態があつて、当時宗像主任もこれはいかん、どうも変だ、これには何かそのもう裏があるのじやないかというようなことから考えてですね、その意向を課長に話をし、課長もやつぱり主任と同じような意向であつたのです。これを最初宗像主任はこの厚生省事件について大きな期待をかけておつたけれども、なかなかこの調子でやつたのでは、幾ら搜査を進めても次々にそういうような事態が生じたのではこれはもう徒労に帰する。先ずその何か裏にあるものを、これを排除してから更に搜査を進めなければこれはもう目的を達成し得ない。まあ多少廻り道になつても仕様がないから、その方が先方問題として、殊にその介在する裏面の搜査を始めて行つて、初めはもう何ものだか分らなかつたらしいです。何か相当いろいろ相談……搜査した結果、この結果、何かもう神田方面におる佐藤が警視庁に出入りしておる。そうしてボス的存在であつて事件の裏に介在しておる。こういうようなことが分つて、それから更に搜査を進めて行つて、それが前の昭電事件にも連坐した佐藤昇さんであるということが分つて、それでまあいろいろの事実が段々分つて来たので、搜査を進めて行つて、今度のような事件になつたのです。で、尚そのことにつきまして、何か最近その松本課長が何か赤坂の待合で鈴木恭二の味の素から何か請託を受けた。こういうような話も聞きましたので、私もさようなことならば、これはもう自分の考えておつたこと、自分の信念がもう一時にひつくり返るような気持でございましたので、実はその後も課長にそういうことがあつたのかどうか尋ねましたところ、課長は絶対にそのようなことはない。あるならば、自分にそのようなことがあるならば、この事件を、これをやるわけがないじやないか。当時その鈴木恭二が処分保留のまま釈放になつたので、そのことについては宗像主任と共に検事局に抗議を申込んで行つておる。その事実を以てしてもそれは明らかじやないか。自分は絶対にそんなことはない。こういうふうに言いますし、私も課長はそんな人じやないと信じておりまして、これは、そういうようなことは甚だ心外のことだというふうに私は考えておつた。今申上げたように、我々の今度やつた事件は、まあ搜査二課というものに対しては社会から相当期待されておる面があるのではないかと思う。この搜査二課が外部の圧力で公平な搜査ができなくなつたならば、これはもう由々しき問題であると思う。のみならず、現在搜査二課には百八十名おりますけれども、この将来後に続くところの搜査二課員に対して我々は相済まん。こういうような考えを持つて、ただ搜査二課を真直ぐに社会が期待するような方に持つて行きたい。持つて行かなければならんというような考えでやつたのであつて、そこに一分一厘の私心もなければ邪念もない。これが私の信念であり、私は確信を持つて今度の事件をやつたのでありまして、絶対にそのようなことはないのであります。その点よく御了解を願いたいと思います。そういうように考えられるならば、我々としても本当に我々の気持を、もうどぶに投げ捨てられたような気持で、誠に残念に思うのであります。
  1246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最後にもう一点お尋ねしたいのですが、これも土田さんの言葉の信憑力についてお伺いしたいのですが、吉武氏に対して土田さんが一万円やつたことはどうですか。
  1247. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは果たしてどうだかはつきりいたしませんが、たまたまそういうようなふうなことを考えられるものがありましたので、事実はどうだか分りませんが、そう言われればそのようなことがあつたのじやないかというようなふうにも、考えれば考えられんことはないと思います。
  1248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かその一万円を入れてあつた封筒か何かが机の上にあつたのじやないですか。
  1249. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ありました。
  1250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなものはお持ちになつておりませんですか。
  1251. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 持つております。
  1252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつとお出しになつて読んで頂きたいと思います。どういう文字が書いてありますか。
  1253. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 予備隊長より一万と書いてあります。金だか何だか分りません。祝、七・一八、これは七月十八日と思いますね。六千五百と書いて、残り六千八百ですか、これはよく分りませんが、下に三千二百と書いてあります。それから裏の方に飯と書いてありますが、これは飯塚、私のことじやないかと思います。その脇に四と書いてありますが、これは四というのは部屋の人員じやないかと思います。室員じやないかと思います。その下に天と書いてありますが、これは天海警部補じやないかと思います。これの横にやはり四と書いてあります。その下に小林。これは小林主任じやないかと思います。これは五と書いてあります。その下に淺と書いてあります。これは淺野主任じやないかと思うのでありますが、これは七と書いてあります。その下に岩と書いてありますが、その横に四と書いてありますが、これは大体下山事件搜査した主任級の人間じやないかと思います。
  1254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうふうなところから見れば、土田さんが慰労の意味において吉武氏にそういう慰労の金を交付したということは言い得るわけですね。
  1255. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうふうに考えれば考えられないこともないと思いますが、事実はどうか分りませんが、あつたことと思います。
  1256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 恐れ入りますが、先程の小切手と銀行の口座についてお見せ願いたいと思います。後で直ぐお返しいたしますから……。何か御質問がありましたらどうぞその間に御質問願いたいと思います。
  1257. 岡田宗司

    岡田宗司君 先ず委員に一つ廻してお見せ願いたいと思います。
  1258. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 委員長の質問に対して証人は眼に涙を浮かべて証言しておられたのですが、数日来さまざまの証人から本委員会はさまざまの証言を受けておりますが、委員会の委員各位は必ず正しい結論に到達されることであろうと期待をいたしますが、二、三今の証人に伺いたいのでありますが、只今の小切手の署名については、それは筆蹟はどんなふうにお考えになつておりますか。
  1259. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 筆蹟は蜂谷さんの署名は御本人に間違いないと思いますが、吉田茂と書いてあつたのは、これは筆蹟が違いますから、或いは福田さんの筆蹟かどうか、どなたかの筆蹟かと、こういうふうに考えます。
  1260. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 吉田さん御本人の筆蹟かどうかお調べになりませんでしたか。
  1261. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 調べておりません。
  1262. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 福田さんの筆蹟と一致するかどうか、お調べになりませんでしたか。
  1263. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それも調べておりません。
  1264. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 佐藤昇の筆蹟と同じですか。
  1265. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ただその本人と書いてある筆蹟が佐藤さんの筆蹟ではないかと思いますが、その下にある判が角の水晶判で、どうもはつきり分らんのですが、多分佐藤さんの判じやないかと思いますがね。それは私の考えでは、本人として裏判……本人と書いて佐藤の判を捺して置けば、銀行に行けば直ちにそのまま下して貰える。外の使の者であつても、預金者本人でありますから何ら問題なく下すことができる。そういうふうにすれば他のそこに書いてあります蜂谷さんとか、吉田さんという名前を出さずに証拠を残さずに金を引出すために書いたのじやないかというふうに、我々の感覚から行けばそういうふうに考えられるのです。但しそれは佐藤さんの筆蹟であるかどうか分りません。
  1266. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから次に伺いたいのは、岡崎丹羽さんに佐藤さんから渡された三回に亘るお金というのはいずれも現金なんですか。
  1267. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 確か現金であつた考えております。何か新聞で包んであつた、紙で包んであつたというような話だつたと思います。
  1268. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次に伺いたいのは先程の御証言の中に、塩谷消防総監が五万円受取られたと推定されるその根拠として、その五万円の支出について消防庁が苦心をしたらしいという御証言がありましたが、それをもう少し詳しく述べて頂けますか。
  1269. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは何か修繕費というような支拂勘定に作り上げて出しているように思つております。それは自動車の八十万円だつたか九十万円だつたか、はつきり分りませんが、そこに五万円の差があるのです、両方の話合ですね。佐藤さんの話合を受けるために、容れるために、予算関係がなかつた関係上、その五万円だけは修繕費というようなふうに作り上げて、その五万円を何してやつたように思います。
  1270. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうしてそれは消防庁の方の会計をお調べになつたのですか。
  1271. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 会計を完像主任が調べたその報告を私は聽いております。
  1272. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから先程の佐藤昇という方が渡邊さんからの電話で、岡崎丹羽という二人の方にお金を渡したということについて、岡崎丹羽という二人の方はいずれもこれが増田さんとは何ら関係がない。それで岡崎という方が経営しておられる旭梱包という会社の増資のために融資して貰つたのだということを証言されているのですが、そういうふうにも考えられましようか。
  1273. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは佐藤さんの供述には全然そのような話はおくびだにも出ておりませんでしたし、私は調書を見れば分りますが、あの調書は本当の佐藤さんの僞らざるところのお話だと確信しております。
  1274. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから最後に伺いたいのは、先程、最初に伺い漏れたのですが、あなたは搜査二課というのにお働きになつて何年になられますか。
  1275. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 搜査二課に、約二十年になりましようか、約二十年近くなると思います。
  1276. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 約二十年ですか。それで昨日或いは一昨日あたり、いろいろな方の搜査警視庁関係証言を頂いたときに、どうも我々に理解の行きかねる点があつたのですが、その一つに今日の御証言と非常に違うのはその吉武さん……。
  1277. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、何か……。
  1278. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点を整理してあとから申上げます。
  1279. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなたが佐藤をお調べになつておる最中に、佐藤、岡崎丹羽との関係が現われて来たと思いますが、その佐藤が岡崎丹羽を知るに至つた事情、それからその何と申しますか、交友関係の深さというものについて、佐藤はあなたにどう述べていましたか。
  1280. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 詳しいことは記憶ありません。沢山の関係で……。
  1281. 岡田宗司

    岡田宗司君 岡崎丹羽両氏警視庁におつて特高関係をやつてつた追放になつておる。併し特に岡崎氏は警視庁の中に岡崎閥というものを築いた程の勢力家であつたということがよく言われておる。その岡崎氏は現在の警視庁幹部の中において、どういう人と一番懇意な関係にあるか、まあ土田という人、その外沢山おるだろうと思いますが、それについてあなたの知つておることをお聽きしたいのです。
  1282. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 岡崎さんは、私は岡崎さんが課長時代に使われておりまして、実は岡崎さんは尊敬しておりますのです。現在でも尊敬しております。ただその当時からやはり岡崎さんの部下であつた土田さん、吉武さん、それからその他の者がおります。今やめられております方もあります。それから又岡崎さんは特高部長になられまして沢山、恐らく警視庁人であるならば岡崎さんを知らない者はないと思います。ただ何か岡崎さんが警視庁内に勢力を持つて派閥を作つておると、こういうようなことを言われておる、風評がありますが、私の平素の考えとすれば岡崎さんであろうが、その他の方であろうが、これは皆将来警視庁を背負つて立たれるところの本当の優秀な伸びて行く方だと私は信じており、又警視庁の方はそう信じておると思います。ただそういう岡崎さんを中心に集まる方々が、具体的に私は何も御説明はできませんけれども、何か岡崎さんを中心に一つのそこに何かグループがあるがごとく見られるような行動をされるということは、これは警視庁の最高幹部のために、又将来の警視庁の最高幹部になる人方に対してもそういうような雰囲気が警視庁内にあるということは、これは警視庁二万七千の職員のために甚だこれは好ましくないところの影響を與え、のみならず又そういう優秀な人に対しても誠に私としては気の毒なように感じておりますが、事実あるかどうか、私は具体的に御説明はできませんけれども、そういうものがあればこれはこういうことが警視庁の一つの癌となり、又そういう有能な人に対してもこれは部下として申訳ないことになるのじやないかと、こういうふうに実は考えております。
  1283. 岡田宗司

    岡田宗司君 そういう現在の警視庁でいわゆる岡崎氏の息のかかつた諸君が、岡崎氏が追放後においてもしよつちう岡崎氏の家へ出入りをして、あそこでいろいろ会食だの会合だのをやつておるというようなことがいわれておつたのですが、あなたはそういうことについてお聞きになつたことがありますか。
  1284. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうことについては具体的に聞いておりません。ただ伊藤鑛壽事件ですね、これは上田第一係長の方でありましたが、その事件の話を聞きますと、そういうような事実があつたということを聞いております。
  1285. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に佐藤の調書によりますと、電気クラブの会合のことが大変詳しく述べられておるのです。その際岡崎系と見られる土田氏が制服のままで出ておつた。そうしてその何か重要な会合があるので、その外で番人をしておつたというようなことが言われておつたのであります。これは警視庁の綱紀にとりましても極めて重大な問題である。それはあなたの手許でお分りになつたときに、あなたはその事実をあなた自身はやらなかつたかも知らんが、上司に報告して、そうして警視総監の耳までそれが達するような方法をお取りになつたかどうか。
  1286. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは私は直接関係しておりませんので分りませんが、それは上田係長課長それから刑事部長がどういうような措置を取りましたか、ちよつと私には見当つきません。
  1287. 岡田宗司

    岡田宗司君 その佐藤の調書の電気クラブに関する件は、特に直接犯罪に関する部分ではないので、私共はあなた方が強圧を加えたとか何とかという理由はないと思いますが、これは佐藤が真直ぐに極めて率直な態度で述べられたものと解してよろしうございますか。
  1288. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようでございます。
  1289. 岡田宗司

    岡田宗司君 それからよくいろいろな点で言われるのですが、いわゆる岡崎氏、丹羽追放組の諸君がしよつちう警視庁へ出入りをし、いろいろな関係を持つていろいろな事件の揉消し運動に顔を出しておる。例えば伊藤鑛壽事件丹羽氏が頭を出しておるというようなことが出て来ておるのです。この岡崎氏或いは丹羽氏がそういう揉消し事件に活動した点についてあなたがお知りになつていることはありませんか。
  1290. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 具体的に余り知りませんが、一昨年でしたか昭和電工事件はやはり私もこの搜査に当りましたのですが、これは途中から加わりましたけれども、その当時まあ岡崎さんの元の部下であつた人達が搜査二課に出入りをして、そうして何か情報を取りつつある、こういうような噂もあり、又その一部の人は昭和電工から若干金を貰つておる、こういうような事実もあつたように思つております。
  1291. 岡田宗司

    岡田宗司君 その昭和電工のときに日野原が情報を知つて早く逃げたとか何とかいうことがあつたようですが、その情報はやはりそういう所から出たものですか。
  1292. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは当時どこから出たというような問題がありましたですが、この具体的のことはちよつと忘れました。
  1293. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから先程あなたが言われた昭和電工事件のときに、情報を取つた人というのはその後免職になりましたか。
  1294. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはすでに退職されておつたのです。
  1295. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでその人は昭和電工事件に関連して取調べましたか。
  1296. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) いやさようなことはありません。
  1297. 岡田宗司

    岡田宗司君 調べてない。
  1298. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ないと思います。
  1299. 岡田宗司

    岡田宗司君 その人は明らかに岡崎氏の系統の人ですか。
  1300. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあえそのように岡崎さんに使われたことがあります。系統といいますかどういいますか、そういうふうに感ぜられる点があります。
  1301. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから電気クラブの件についてですが、昭和電工の事件の頃しよつちう電気クラブに寄つて岡崎氏その他も会合をやつてつた増田氏もそれに時々顔を出した。こういうことが先程の佐藤の調書の中にあつたのですが、これはやはりその昭和電工の揉消し運動と関連があるものとあなたはお考えになりますか。
  1302. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは伊藤じやないですか。
  1303. 岡田宗司

    岡田宗司君 伊藤ですか。
  1304. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあ我々搜査官の感覚から行けば、或いはそういうような疑いが持たれるような気もします。
  1305. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから佐藤が政界方面に金をばら撒いている、その金の行先をずつとあなたが追及をされたうちに、たまたまこの吉田氏の口座に小切手が入つたことがお分りになつたと思うのですが、この小切手の行方、つまり東京銀行の調べ、これはあなた自身でおやりになつたのですか。
  1306. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 私がまあ大体みずから調査し、或いは係の人に……。
  1307. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでこの蜂谷氏の署名があつて、その所書きが書いてありますが、この裏書の所書きは吉田氏の荻外莊ですか。
  1308. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは分りませんですが、多分西荻窪ですから、私は荻外莊がどの辺にあるか分りませんが、何かそこか、その近くのような感じがしますけれども、はつきり分りません。
  1309. 岡田宗司

    岡田宗司君 蜂谷氏と吉田氏との関係についてお調べになりましたか。
  1310. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 別に調べておりませんが、何か吉田さんの祕書官をやられておるというようなことに……。
  1311. 岡田宗司

    岡田宗司君 そうすると、あの小切手は佐藤から福田篤泰氏が受取つて、そうしてそれを蜂谷氏なり何なりに渡して、蜂谷氏が吉田さんの代理として銀行へ持つてつて預け入れた、そういうふうな関係になつておりますが。
  1312. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 筋から言えばそういうような筋になるのじやないかと思います。
  1313. 岡田宗司

    岡田宗司君 蜂谷氏という人は、この吉田氏の東京銀行の金の出し入れを全部扱つておる方ですか。
  1314. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはもう全然調べておりませんが、ただ秘書官をやられておつた方だと、こういうふうにだけは分ります。
  1315. 岡田宗司

    岡田宗司君 それでは次に、この岡崎と、それから吉武との関係ですね、これはどういう関係になりますか。
  1316. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 岡崎氏と吉武さんですか、これはやはり岡崎さんが課長時代に、私は同様やはり搜査二課で、岡崎さんの部下として使われた関係があります。
  1317. 岡田宗司

    岡田宗司君 まあ吉武氏は搜査二課から移られたわけですが、その移られた理由は、吉武氏が岡崎系と目された土田若しくは岡崎に直接いろいろ情報を漏らしておつたというようなことから、搜査二課の権威に係わるというので、吉武氏が動かされたかどうか。
  1318. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは分りませんです。
  1319. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから私共として非常に不思議に思うのは、土田氏が今何か封筒の上に書いておつたものから判断すると、金が渡されているように見えるのですが、一体課の関係からいうと、そういうことはあり得ない筈なんだが、それがああいう問題が起つておるということについて、あなたは直ぐに疑惑を持たれましたか。
  1320. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 別にそれはもう果して金であつたか、真実土田さんから行つたものか、たまたまそういうものがあつたというだけでありますから、別に疑惑という点までは考えられたかつたのですが、ただ土田さんと吉武さんの間は密接な関係がありますから、或いはそういうようなこともあり得るのじやないかということは考えられます。
  1321. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから宗像警部補は直接指揮下にあつたのですか。
  1322. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さようでございます。
  1323. 岡田宗司

    岡田宗司君 宗像警部補の逆搜査事件ですが、あれに対してあなたはどの程度まで知つておられたか、そうして又それに対するあなた見方ですね。どうしてああいうことが行われたか、それについてお伺いしたい。
  1324. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは当時そのようなことがあつたかどうか私は全然知りませんでしたけれど、今度係長になりまして、宗像氏の方でこの事件をおやりになりまして、いろいろそれまでの一切の事情を聽きまして、そういうことがあつた、まあ逆搜査と言いますか、何と言いますか、そういうようなことがあつたということを聽きました、それは佐藤さんのいわゆる味の素事件、厚生省事件ですね、これを何か裏で邪魔する者がある、こういうような観点から宗像氏のところで、その関係を内偵を始めて、これは九月から始めたと思いますが、ですから十月頃になつて監察官附の折田さんから、宗像主任が山之内製薬から何か薬品類を貰つておる、こういうようなことで、そういうような事項があるということを調査された。而も宗像主任から聽きますと、この前折田さんから、宗像主任が山之内製薬の社長を任意取調べようとしたところ、その出頭の日に本人が来ないで、折田さんから電話で呼ばれて行つたところが、君に紹介する人があると言つて監察官部屋で、そうして元の二課長をされた岩田さんを紹介された。岩田さんは山之内製薬の顧問だつた。社長を呼んでいるようだが何とかならないか、こういうようなふうに話があつたそうですが、宗像主任はすでに呼出しを掛けてあるのだから、これは中止するわけに行かない。だから早く出て来るようにして下さい。そう言つて引き下つたそうですが、その日は来ないで、その翌日社長が出て来た。出て来たけれども、まあその調べがうまく成功しないで、そのまま帰つてしまつた。こういうようないきさつがあつたそうですが、何かそういうようなことで、折田さんが何か考えておられたのじやないか、こういうような感じがすると宗像主任が言つておりましたが、宗像主任の話を聽きまして、これは我々がこの呼び出しをしました際に、事件搜査しておる場合に、自分より上司の者から、君、あれはどうだつた、こういうくらいのことを言われただけでも、これはもう搜査の腰を折られるような影響を受けるのです。のみならず山之内の社長がその日に来ないで、その翌日に来るということは、すでに向うがもう警視庁を甘く見ている、こういうふうな考えを持つているのではないかという、こういう感じもするので、一方取調べをする者にすれば、やはりそういうようなことからして、やはり搜査上の影響を受けることは、これはもう我々調べ官としては体験しておることなんですが、その時に、そのようなことで、そんな経緯もあつたし、それから尚折田さん、吉武さん、土田さん、こういう人達はやはり親密な間柄にあるので、主任の方から考えれば、何かそこに一連の関係があつて、佐藤の事件を、今内偵を開始した佐藤事件調査を、佐藤が検挙されると何か影響があるのではないかというので、搜査を牽制するためにやつたのじやないか、こういうふうに主任は感じた。私もその話を聞いて、その通り感じました。尚その折田さんの部下で、直接宗像主任の身辺搜査をした方々は、元駒込署におられて、吉武さんと一緒に駒込署におられた人達らしいのですね。そういうような話も聽いておられます。そんなような関係で、何かやつぱりそこに一連の関係があるのではないか。尚その外に張本さんが元経済の係長をしておつた関係で、自分の当時の部下を、宗像主任が経済部に勤務しておつたので、何かその関係がないかというので、張本さんが元の自分の経済部におる部下を使つて宗像の搜査をした。そういうようなことも聽いております。それから土田さんが、やはり、これは宗像主任の記憶によりますと、十月頃だと思うと言うのですが、突然使いが来て、来て呉れと言うので行つたところが、君は吉武係長に何か怒られたのを気にしておりはせんか、あれはいい男なのだ、あんな馬鹿野郎の松元課長の言うことなど聽く必要はないのだ、係長の言うことを聽け、こういうようなお話をされて、その外、君のためには、吉武係長は、警部試験を通してやるために人事係の方に行つて、これはもう必死の努力をしてやつたのだ。こういうような話をされたので、何が何やら宗像主任はさつぱりどういう意味だか見当の付かないようなことで、まあ、よろしくお願いしますというようなことで引下つた。こういうこともあつた。これらの関係を見ますと、そこに何か相通ずる関係があつて、そういうふうに動いたのじやないかというような感じを、主任も持たれたし、私も話を聽いてそういうふうに感じたのであります。
  1325. 岡田宗司

    岡田宗司君 土田と張本、それから折田、こういう人々はいわゆる岡崎閥と言われるものの有力者ですな。
  1326. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そんな閥というようなものは私はないと思いますが、ただその人々が岡崎さんを尊敬し、まあ気持もよく合うので、岡崎さんに可愛がられておるのだと思います。
  1327. 岡田宗司

    岡田宗司君 次に、さつき折田監察官のことを言われましたが、監察官というのは、自分で搜査する権限を持つておるのですか。
  1328. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 監察官は、私はちよつと半年ばかりおつたことがありますが、やはり警察官吏に非行がある、そういうような場合は調査をする任務を持つております。
  1329. 岡田宗司

    岡田宗司君 先程折田監察官がどうだとか言つた、よろしく頼むと言つたか、ちよつとあなたの言つた言葉は忘れたのですか、折田検察官が宗像主任を呼んで言つた言葉は、まあいい加減に止めて呉れというふうに取れるのですが、そういう意味を含んでいたと見られますか。
  1330. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 何か話を聽くと、何とかならないかと、こういうふうな意味の話だつたと言いますから、止めて呉れと、そういうようなことは、これはもう言えることでないですから、まあよろしく頼むと、こういう意味じやないかと考えます。
  1331. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから先程あなたが言われた昭電の情報蒐集をしたという人は、前に搜査二課にいた年森という人ですか。
  1332. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はつきり記憶はありませんが、そんなような気持がいたします。
  1333. 岡田宗司

    岡田宗司君 その年森という人は、土田氏とは非常に関係が深かつたのですか。
  1334. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 元はやはり搜査二課におりましたですから、まあ親密な間柄であつたと思います。
  1335. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから昭電事件のときに、年森という人が搜査二課に働きかけておつたというのですが、そういう事実はありましたか。
  1336. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) どなたがですか。
  1337. 岡田宗司

    岡田宗司君 年森。
  1338. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 何か情報を取りに出入りしておると、こういうようなことを聞いておりました。
  1339. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから後藤田という人はどうですか。
  1340. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 私はどうも、全然私共の方と関係がない方ですから、殆んど分りません。
  1341. 岡田宗司

    岡田宗司君 何か揉み消し運動に関係したということを聞きませんか。
  1342. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 聞いておりません。
  1343. 岡田宗司

    岡田宗司君 あなたがその佐藤のばらまいた政治資金の行衞をずつと追及されて行きまして、あなたの受けた感じは、佐藤は全部あなたにそのことを話しておるか、それは單に氷山の一角で、尚それ以外にもあるというふうな感じをお受けになりましたか。
  1344. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 私は大体、佐藤さんはあのような心境であつたですから、話をしたのじやないかと思つております。
  1345. 岡田宗司

    岡田宗司君 それから佐藤氏は昭電揉み消し運動に大分活躍しておるようですが、日野原氏と佐藤氏との関係は、非常に深いものだつたのですか。
  1346. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 前から知つておられて、はつきりした記憶がありませんが、何か西尾さんを紹介したのも佐藤さんじやなかつたかというふうにも思いますが。
  1347. 岡田宗司

    岡田宗司君 それで佐藤氏と塩谷消防総監ですか、これとの関係は非常に深いわけですが、塩谷氏がやはり岡崎氏と非常に親交があるのでしようか。
  1348. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) さあ、まあ幹部の方でありますから、まあお付き合いはあると思いますがその程度は分りませんです。
  1349. 岡田宗司

    岡田宗司君 塩谷氏は今度の五井産業事件について、あなた方のほうに対して何かこれの揉み消しのような働きかけをしましたか。
  1350. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 搜査が始まつてからですか。
  1351. 岡田宗司

    岡田宗司君 始まつてから。
  1352. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうような感じは全然受けておりませんです。
  1353. 大野幸一

    ○大野幸一君 その第一回十万円、第二回十万円、第三回目五十万円というのを福田篤泰氏に佐藤氏が出したというわけですね。
  1354. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) いや、それは今のはちよつと順序が違うような気がします。
  1355. 大野幸一

    ○大野幸一君 とにかく五十万円のときに三十万円を別口小切手にしたのは、これは福田篤泰氏にやる分とは別な意味で小切手に出したように感じられるのですがね。その三十万円は荻外莊に使うということははつきりしていたわけですね。
  1356. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 荻外莊の自由党の事務所の準備資金に要るからと、こういうような話であつたと、こういうふうに聞いておつたわけです。
  1357. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程塩谷総監に五万円云々という折に、非常に五万円出すのに苦心したという意味は、五万円を高く買うために非常に苦心した、こういう意味ですか。
  1358. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) いや、高く買うというのは話が合わないからだつたと思うですね。高く買うとか何とかいう、当時の相場はどうだか分りませんが、あれは佐藤さんから言えばもつと高く売りたかつたかも知れませんし、消防庁から言えば安く買いたかつたのかも知れません。まあその話が付くのにそういうような差が生じたようです。
  1359. 大野幸一

    ○大野幸一君 それで佐藤氏の言うようになつたわけですか。
  1360. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 佐藤さんの言う……佐藤さんは何でも、もつと高く百万円くらいで讓りたいような意向を持つてつたとか何とか言つたよう記憶もありません。
  1361. 大野幸一

    ○大野幸一君 最後の開きが五万円になつて、苦心して消防庁のほうから出した、こういう意味なんですか。
  1362. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1363. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程のあなたの一万円を土田予備隊長から吉武係長ですかに渡したらしいというこの封筒の裏面に、何か符牒のようなものと数字というようなものがあるが、これは解釈するとどういう意味の符牒なんですか。あなた方に分配するという意味の符牒なんですか。
  1364. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そう、前のほうに部屋へと書いてありますし、それからその後の符牒のようなのが、当時下山事件をやつてつた部屋の主任の名前と大体その部屋搜査係員の員数に合致するのではないかと思いますから、或いはそういうふうなほうに分配したのじやないかというふうに感じられます。
  1365. 大野幸一

    ○大野幸一君 その名前の中にあなたの名前もあるわけですね。
  1366. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あります。
  1367. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなた貰いましたか。
  1368. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 私が七月ごろ幾らか下山事件を私も担当いたしまして、二百円か三百円、はつきりしませんですが、まあ二百円ぐらいだつたかと思いますが、貰つたのです。
  1369. 大野幸一

    ○大野幸一君 誰から貰いました。
  1370. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは封筒に入れて確か吉武さんから貰つたのです。
  1371. 大野幸一

    ○大野幸一君 どういう金だといつて貰いました。
  1372. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ああいうような事件の場合にはいろいろそういうような金が出ますから、別に不思議に思わずに、これは当然部長の方からでも出た金じやないかと思つて、私も……。
  1373. 大野幸一

    ○大野幸一君 これは土田予備隊長からだという念はなかつたですか。
  1374. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そんなことは全然聞きませんです。
  1375. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程あなたメモ式のもの、例えば佐藤が供述しようとしてメモに自筆で書いたというものもありますがというお話ですが、今持つておいでになるじやないですか。持つておられるのなら、それを大したものじやないから出して……。
  1376. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 全部纒めて持つておりませんですから。
  1377. 大野幸一

    ○大野幸一君 それじや委員会の方から請求すれば、出す用意はしても差支ないわけですね。
  1378. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは上司の意向通りにします。
  1379. 岡田宗司

    岡田宗司君 今上司の意向通りと言われたが、それはやはり警視総監ですか、それとも……。
  1380. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 課長です。
  1381. 大野幸一

    ○大野幸一君 こういうように世の中がなつて来ましてね。昔と違つて民主主義になつて来て、国会で時の総理大臣のことに関してでも遠慮なく証言ができるような時代になつた。ところがそういう時代を解しない輩の人が世の中にあるかも分らない。そこで今後搜査二課に対して、そういう方面の圧迫が来るのじやないかと我々は心配するのだが、そのときに、あなた方搜査二課の課員は、日本の治安を守るために団結して断乎としてあなた方の所信を貫く用意があるか。それとも、そういう場合にあなた方としてどう考えられるか。それを一つ承わつて置きたい。
  1382. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 搜査二課は、終戰前からわし等搜査二課はしつかりして行かなきやならん、如何なる外部の圧力にも押されることなく、やはり貴賤上下の差別なく公平に搜査しなくちやいかん、こういうふうに考えて、私はこれが搜査二課精神じやないかと思います。で、今度のような事件も、先程申上げたように、実は何も分らなかつたのです。係長など分らなかつた。やはり宗像主任の経緯ができまして、もうこれに屈するようなことがあつたのでは搜査二課はおしまいだ、もう駄目だ、やはり搜査二課のあの信念を生かして行くためには、我々は搜査二課の捨て石となつてもこれはやらなくちやならん。こういうような精神を以て私はやつて来たのでありまして、やはりこういうことによつて搜査二課は大丈夫だ、こういうふうな気で社会からも見て貰いたいし、又後に続く課員もそういうような気持で進んで貰いたい、それだけが我々の希望であり、又望みでもあるのです。
  1383. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 二三お伺いしたいと思います。佐藤の供述、殊にメモのようなものを多く書いたというのは、留置されてから何日目ぐらいに作つたのですか。
  1384. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはよくはつきり記憶がありませんですが……。
  1385. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 大よそ、留置されて間もなくですか。もう大分日にちが経つてから、そういうものを書いたのかどうか。
  1386. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 大体起訴になつたのは一月の四日でありますが、それまではこの詐欺事犯の証拠固めをするために、その方にまあ全力を集中しておりましたが、ところが全部は起訴になりませんで……、最初になつたのは、北海道繊維と宮城繊維の事件が一月四日、後に残つた問題が起訴にならなかつたのであります。それはいずれも追起訴段階に至るというような検事さんの話もありまして、私共の方はそれと合せまして、追起訴の関係、いわゆる又前に起訴された事実につきましても、更に証拠、傍証固めを明らかにするために、経理関係の万全を期するために搜査を進めておつたので、その後だと思います。
  1387. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 相当留置されて日にちが経つてからということは言い得るわけですか。
  1388. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうですね。
  1389. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 大分日にちが経つておりますね。当時検事局なんかに呼び出されて行くと並行していろいろ調べが進められていた……。
  1390. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうです。
  1391. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 毎日ずうつと呼び出されて調べを受けておりますか。
  1392. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 毎日……。それは検事さんの方も約二十日近く、十七日か十八日まで検事さんの方で調べております。交互に調べたような関係になつております。その間にまあいろいろな都合で、その後、傍証関係も調べなくちやならんので、傍証の関係の調書を、これなども相当多量取つておりますから、その関係もありまして、連続してそればかり調べるということでなく、一方では傍証も明らかにし、又調べると、こういうわけです。
  1393. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 一日の……検事局とあなたの所では別かも知れませんが、最高というか、平均というか、大体何時間ぐらい調べられておりましたか。
  1394. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それが、その日によつて……。
  1395. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 日によつて勿論違うでしようが……。
  1396. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) もうちよつと、すぐ出して行つてしまうというような場合もありますし、平均してまあ三、四時間ぐらいではないかと思います。三、四時間か、せいぜい四、五時間程度ではないかと思いますね。
  1397. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 佐藤は、こういう事件に引掛つたとか留置されたとかいうことは初めてですか。今まで前にある……、こういう体験を経ておるのですか。
  1398. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) こういう体験は経ております。確か実刑四ケ月を受けているのではないですか。はつきりしないですが、経済事犯なんかで……。
  1399. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 佐藤のいた房はですね、勿論雑居の大勢のおる所……。
  1400. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうです。
  1401. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 で、調べられておる間に、境遇の激変というか、そういうようなことで、不眠症とか神経衰弱になつておるというような気配は見えませんでしたか。お調べになつている間に……。
  1402. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) もう頗る何か運動家とか言いましてですね、元気でありましたです。
  1403. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 それからいろいろまあ政治家によく献金したことを言つてつたわけですが、その相手方については、まあ参考的にか何かにでも、調べてみたとか、聞いてみたようなことはございますか。全然ありませんか。例えばまあ例を挙げては惡いですが、江花代議士に三万円とか何か言つているが、江花君から何かそういうことを参考に調べてみたとか、聞いてみたということはありませんか。この搜査の過程に……。
  1404. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはですね、まあ変な話ですが、やはりいろいろ佐藤さんの供述の中に、警察関係も沢山ありまして、そういうのはまあ逆に我々の方に、いや俺の方はこれくらいしか貰つてないのだというようなふうに、調べをしなくても、そういうような佐藤さんの自供と合致するような話がもう入つて来まして、まあそれは盡く陳述と大体合致すると、こういうふうに考えて、ただ政界関係の方はそれはもう我々は軽率にそんなことはできませんから、その他のそういうことを申上げたように、いろいろ経理関係を調べた書類もありますし、又実証する証拠もありましたですがね。それで大体間違いないということは確信しておつたのです。
  1405. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 相手の方を何らの調べもなしに、これは真実なりと私は確信しておる、確信するというようなことをここで言われるということは、どうでしよう。それはまあ搜査の任に当られたあなたとして、そういう気持を持つておられることはいいですが、相手方を何も調べておらないで、これをそういうことを言われるということについてのあなたのお気持はどうですか。構わんですか。
  1406. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 実はただ私が、それはもう佐藤さんの当時の供述ですね。その心境、態度ですね。それから又経理面の搜査によつて合致するのがあるから、これは間違いない。佐藤さんは本当に僞わらざるところの供述をしておるのでだ。こういうふうに私もう感じておつたものですから、実はもうそういう佐藤さんの当時の供述したことは僞わらないと今でも確信しております。
  1407. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 経理面というのは佐藤の方のいろいろな搜査その他からと、佐藤の供述の面とが大体合つているということですね。経理面というのは相手の方じやないわけだな。
  1408. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは佐藤の原稿を調べたり、それからその外のいろいろの書類ですね、書類に、それに大体それはもう盡くそんなものは一々書いてはないけれども、それに合致するような証拠が見受けられるので、実はもう……。
  1409. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 じや、その証拠というのは、金の動きが出ておるということで、これを渡邊にやつたとか、江花にやつたとかということは書いてはないのですね。そういう符牒でも何かあつたとか、どうとかいうのでないのだな。
  1410. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはまあ、よく証拠を見てみなければ分りませんですがね。大体それは名前の出ておるのがありますから……。
  1411. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 というのは、まあこういういろいろの経理の非常に大きいなんだから、たまたまいろいろの所へ食つ付けて、二十万やつた、三十万、五十万、動いておるのはよくあるだろうと思います。だから、それに丁度話が合うように、この二十万が、これはこれです、この三十万がこれだということは、僕はよくあり得ると思うのですがね。そこで極めて真実性を、被疑者の供述を裏付けるのならば、まあ相手方の何かを聞いて固めてみなけりや、これは真実なんということは、僕はやはり言い得ないのじやないかと、まあ私は思うのだがね。
  1412. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはもう相手を調べて、そうして証拠もきちつと合致すれば、それは間違いないことは、これはもうなにしますが、ただ私らの取調官としてのいわゆる角度において、これは事実に間違いない、こういうふうに私共はもう考えておるのであります。
  1413. 石原幹市郎

    石原幹市郎君 よろしうございます。
  1414. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの先程来からのこの委員会における証言と、それから、これまでこの事件について調べました委員会に対する佐藤初めの関係者の公述とが、大分食い違う点が多いのです。そこで伺いますが、あなたの今日の証言は勿論宣誓の上の証言でありますから、良心に従つて真実を述べておるのもと私は一応信じますが、それについて更にあなたの証言の確実なることを証する証拠と申しまするか、人証でも物証でもよろしうございますが、あなたがお分りならば、この際聽かして頂きたいと思います。例えば佐藤がかようかようなことを陳述しておつたというようなことについて、あなたの庁内であなたと同様なことを聽いておつた人があるならばその人の名前ですね、或いは又傍証その他の物証がありましたならば、この際お伺いして見たいと思います。
  1415. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 大体今まで申上げたような通りでありますが……。
  1416. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ちよつとお待ち下さい。そこで、あなたが先程来からここで証言された事実は、佐藤の供述調書があるわけですね。
  1417. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは検事局に送つたものはあります。
  1418. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは調書に書いたものですね。あなたの今日証言されたことは……。
  1419. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 本人が署名捺印した調書があります。
  1420. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その調書、それから陳述を聽いておつた人は誰ですか。
  1421. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは、調書をとつたのは主任がとりまして……。
  1422. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 宗像主任ですね。その外に知つている人は誰ですか。
  1423. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) その外に知つているのは、取調べに当つた者は、これはときどき交互に取調をいたしますから、主任や私が部分的になる場合もありますけれども、棟方部長ですね。
  1424. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 これは警部補と違いますね。棟方何というのですか。
  1425. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 棟方、何と言いましたか。
  1426. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 棟方巡査部長ですね。
  1427. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうです。それから大久保部長、それから岸田刑事等は……。
  1428. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 直接調べて聽いているのですね。
  1429. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 部分的になる場合が多いのですけれども、大体分るんではないかと存じます。
  1430. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その他の人では……。
  1431. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) その他の人は課長ですね、課長は知つております。報告しますから。
  1432. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二課長ですか。
  1433. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ええ、そうです。
  1434. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それから……。
  1435. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) その上は刑事部長なり総監になりますけれども……。
  1436. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなた方の報告を受けた人ですね。その上の人は誰ですか。
  1437. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 私の方は課長までです。
  1438. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 課長は併し更にその上に報告するんですね。
  1439. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあ、そういう順序になつております。
  1440. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 直接に聽いた者はこれ以外にはありませんか。
  1441. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 外にありません。
  1442. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 検察官の方では、この外に誰が佐藤を調べたのですか。
  1443. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 佐藤をお調べになつた検察官は稻田さんですね。
  1444. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 稻田検事さん……。これは警視庁に来て調べましたか。
  1445. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 警視庁に来られたこともありますが、大体佐藤さんが検察庁の方へ行きました。
  1446. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 行つて調べたんですね。稻田検事と、それから誰です。
  1447. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 岩松検事さん。
  1448. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それから。
  1449. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それから河合検事さん、それから岡崎部長検事さん。
  1450. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それだけですか。
  1451. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうです。
  1452. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 これは佐藤の、大体あなたが今日証言されましたる政界方面に金をばら撒いております事実を聞いた検事はこれだけですか。
  1453. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 検事さん、どういうふうにお聞きになつたか知りませんが、私の方はそのような調書を送つておりますし、連絡してありますから、大体……。
  1454. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 佐藤の事件は御承知の通りに二通りありますね、詐欺事件というのは大体どの検事が扱つておりますか。
  1455. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 大体稻田さんが詐欺事件を……。
  1456. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 稻田さんが詐欺事件あとの方は……。
  1457. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あとの方は岩松さんが岡田秀男さんの関係ですね。その他の金を送つたという関係……
  1458. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうですか。そうすると河合さんは……。
  1459. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 河合さんは昭電関係の方をお調べになつたのです。
  1460. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何かこの外に物証はありませんか。あなたの今出されました二つ以外に……。この外に物証として、例えば佐藤の金銭出納とか、そういうものを傍証として調べられただろうと思いますが……。
  1461. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは帰つてよく調べてみれば……。
  1462. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ありますか。
  1463. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) あるかないかはつきりすると思います。
  1464. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それで、あなたの今記憶されているものの物証としては、顕著なものとしては今の書面ぐらいなものですか。まだ外に顕著なものが……、これが事実であるということに対するあなたの陳述が真実であるということの裏書になるべき証拠を私は承わりたいのであります。
  1465. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは先程から申上げているのですが、帰つてよく調査をしますれば、はつきりしたことを申上げられると思います。
  1466. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私はそれでは最後にちよつとあなたに伺うのですが、先程来羽仁委員からも訊かれましたが、委員長が先程来お調べ中にあなたは涙を呑んで言われているように私はこちらで拜見しました。それはどういう御趣旨の……あなたが何かに感動したのですか。或いは義憤に燃えたのですか。
  1467. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) いや、そうでないのです。ただ私は、今度の事件が何か派閥とか何か私心あり邪念があつて、含みがあつてつたというような気持はみじんもないのです。だた搜査二課はこうなくちやならん、こういうふうに持つて行かなくちやならんというふうに、そういうような気持でやつた事件に対して、何かそういうふうに感ぜられる向があるならば、それが残念で……。まあ残念の悔し涙です。
  1468. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 併し委員長から訊かれましたときのあなたに対する問は、あなた方の行動について格段不純な、派閥的にあなた方が行動しているようには私は聽かなかつたのですがね。委員長は……。
  1469. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは私達も別に派閥とか、そんな考えは持つておりません。
  1470. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いや、そういうことは訊かなかつた
  1471. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そういうようなことは訊かれないけれども、私が今度の事件をやる……どういう関係であつたということを委員長さんが訊かれましたから、私は今度の事件は、我々はこういう考えでやつているのだということを申上げるのに附加えて申上げただけです。そういうような純粋な気持でやつたのだということを……。
  1472. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなた方が正しく職務を嚴然として行なつているに拘わらず、ややともすると歪曲されているというふうに世間で言われ、或いは又何かその間にあなた方が私心を以て根本的の問題を扱つておるということの譏りを受けておるということに対してあなたは憤りの気持があるのじやないのですか。
  1473. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) もう一遍今の問を……。
  1474. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなた方が正しく生々堂々としてやつたに拘わらず、何か私心によつてあなた方が行動しておるがごとき批判を他から受けるというようなことについて、これは以ての外だという憤りがあつたのじやないのですか。そういうような憤りというか……。
  1475. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 残念だということですね。
  1476. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの正義感からですか。
  1477. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 正義感というか、まあ自分の信念から見まして、もう人を調べる者が私心や邪念があつては人を調べることができない。本当に真心……結局真心と真心のぶつつかり合いでなければ人を調べることができません。真実を調べることはできません。
  1478. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなた方がこの事件を扱われたのであるから、勿論この委員会で毎日関係者を調べておる動向について、直接か間接か深き関心を持たれて承知しておられましようね。
  1479. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 関心を持つております。
  1480. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 新聞その他によつて関係者の供述等も凡そお分りでしようね。
  1481. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 関心を持つておりますから分つております。
  1482. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういたしますると、あなたの陳述と相当大きな、重要な点について食違いが生じて参りますが、そこで、そうしますと、何れが真なりやという問題になります。そこで私は先程来あなたの陳述の正しきことについての裏書になるべき資料があれば、この際資料を出して頂きますれば、一段とあなたの正しいことが委員各位にお分りになるのじやないかと思うので、資料がありましたらお出しして頂くような用意がありますか。
  1483. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあ帰つてよく調査しまして、又上司と相談しまして、そういうふうに努力いたしたいと思います。
  1484. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今鬼丸委員から諄々とお話がありました通り、この段階に至りましては、もうお互いに個人の問題ではなく、国家のために正しい搜査の確立という面から考えまして、又全日本の警察の名誉のためにも、この点は十分お含み置き願いたいと思います。又資料がありましたら進んで一つお出し願うように御協力をお願いいたします。
  1485. 松井道夫

    ○松井道夫君 今度私からちよつとお聞きしたいと思いますが、(「大分遅いから」と呼ぶ者あり)今の佐藤が官界、政界等に金をばらまいたようですが、その金は、大体で結構ですがどのくらいになりますか。
  1486. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあ合計五、六百万円……。
  1487. 松井道夫

    ○松井道夫君 五、六百万円くらいに大体覚えて……。
  1488. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そうじやないかと思いますが、はつきりした御返答は申上げられないのです。
  1489. 松井道夫

    ○松井道夫君 まあ相当の大金ですが、佐藤という人は元来から相当の資産家ですか。それとも戰時中儲けたとか、或いは戰後儲けたとか、どうなんですか。
  1490. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 終戰後儲けたのです。
  1491. 松井道夫

    ○松井道夫君 一体今のばらまいた金はどういう金が、そういうことはお調べにならなかつたのですか。
  1492. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 佐藤さんの事業で一番儲かつたのは繊維製品です。
  1493. 松井道夫

    ○松井道夫君 繊維製品ですか。
  1494. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1495. 松井道夫

    ○松井道夫君 それはやはり正当な業務で儲かつたものとあなた方は大体認めておつたのですか。或いは当時は闇というものが非常に横行したわけですが、やはりそういつた傾向がなければ儲からないという金でしたか。どういう金ですか。
  1496. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあいろいろ調べをしている間に、参考人その他からいろいろ私は聞きましたですけれども、まあ、闇で儲けたかどうかというところまで、そこまでは調べてありませんですね。はつきりしたことは申上げられませんが、まあ大分うまく儲けただろうということは考えられます。
  1497. 松井道夫

    ○松井道夫君 その程度で留めて結構です。それから味の素事件という、鈴木というあの関係ですがね、それを吉武係長が逮捕状を握つておるという御証言がありましたね。そういうふうに聞いたのですね。
  1498. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ええ。
  1499. 松井道夫

    ○松井道夫君 それはそうでなくて、厚生省の大官に今の涜職関係の嫌疑があつて、それを逮捕してしまえとか、多少警戒させるというような意味でしようか、それを調べるために内偵と言いますか、内偵するために暫く逮捕を待つて、そうして係員に命じてそれを調べさしたという事実じやないのですか。
  1500. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) まあ、それはどうかよく分りませんですが、もうすでに鈴木常務の下の両課長が取調べを受けて起訴されておりますから……。
  1501. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや、そういうあれは別として……。
  1502. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 当然これはもう……。これはもう二百万円の大金を、課長が一存で常識から考えて出せるわけはないのです。当然これは常務と重役の承認がなくて出せるわけではないのですが、のみならず課長も共謀だということを言つておりますから、一遍起訴になつておりますが、起訴になると直ぐ保釈になる惧れがありますから、直ぐこれはもう逮捕して取調べて固めて行かなければならん、これは搜査の常道からいつて先ずやつて行く、この事件を固めてから……。
  1503. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや、時間が遅いのですから……。それで、あなたのその事件関係だけから言えば、あなたのおつしやるのは当然かも知らんが、外に、今の外の関係の、全然別個の関係の鈴木の関係ですけれども、某高官に関する涜職の嫌疑がある、それを調べるために、搜査の技術上逮捕を暫らく延ばした、そういう事実じやなかつたのですか。
  1504. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) そこまでは私もう聞いておりませんです。
  1505. 松井道夫

    ○松井道夫君 聞いておらない。
  1506. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) はあ。
  1507. 松井道夫

    ○松井道夫君 それからもう一点お訊ねしたいのは、あなたのお話によると、相当まあ自白だけで処罰できないとか、そういつた関係は別として、あなたの調べから言つて、相当証拠十分な犯罪的の事実があるのですね。そこで第二課の立場としては、これをどうする、どうしたいと考えておられたのですか。
  1508. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) この詐欺事件以外の関係ですか。
  1509. 松井道夫

    ○松井道夫君 ええ。
  1510. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはまあ取敢えず岡田さんの関係ですね、これはいろ涜職務関係等も大体一月一杯ぐらいで、もう保釈になるだろうという検事さんのお話もありましたので……。そういう面も併せて、岡田さんの方の関係は一番濃厚だと考え搜査をしておつて、岡田さんの関係では金が二十万円も行つておるし、岡田さんが特殊財務部長と、それから総務部長と、こういうような関係で、その間に製品の枠を貰うについて便宜を図つたような疑いもありますので、まあ調べたという関係になつたのですが、その他の関係は、これはまあ嫌疑のあるものを私らとしては調べて行きたいという、こういう気持はいたしておりましたけれども……。
  1511. 松井道夫

    ○松井道夫君 嫌疑のあるものは何ですか。
  1512. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) これはよく……これは犯罪になるかならないかはよく検討して見なければ分らんですから、その他の関係についても非常に嫌疑は持つておりましたけれども、検事局の方で、これはやはり釈放するのが妥当だと、こういうような話があつたので、まあ我々も検事局のやはり意向に従わなければ、これは搜査して行つても実は無駄なことでありますし……。
  1513. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや、あなた方のお考えだけを聞いて……要するにこの事件も罪となるべきものは搜査の上摘発するという建前でおられたのですな。
  1514. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはそういう建前をとつておりましたが……。
  1515. 松井道夫

    ○松井道夫君 一体今の金をばら撒いた関係の調書ですね、それは今のなんですか、詐欺関係の記録と一緒に検事局に送られたのですか。検察庁に送られたのですか。
  1516. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それは後から送られました。詐欺関係は先に送りまして、取り敢えず一月四日起訴事件についてはすでにもう沢山その書類を送つております。それは起訴後の書類が大体多いのですから、余罪関係ですね、追起訴の関係の書類の搜査と併せて一緒にやりましたから、大分後から遅れて……。
  1517. 松井道夫

    ○松井道夫君 要するに岡田の関係の外は……、調書としては……。
  1518. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 岡田さんの方は直ぐ送りましたけれども、その外の関係は後から送りました。
  1519. 松井道夫

    ○松井道夫君 後から送つた……。何時頃送られたのですか。
  1520. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) それはもう一月の末か二月になつてからと思いますが、はつきりしませんが……。
  1521. 松井道夫

    ○松井道夫君 二月になつてから……。
  1522. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 一月末か二月になつて……。
  1523. 松井道夫

    ○松井道夫君 まだ今のこの事件の、金をばら撒いた関係の噂などはまだ別に出ない頃ですね。出てからですか。
  1524. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) ちよつと記録を見ないとはつきり申上げられませんが……。
  1525. 松井道夫

    ○松井道夫君 それは検察庁の要求でやつてつたのですか。或いはあなたの方の方で自発的に送られたのですか、どうですか。
  1526. 飯塚堅藏

    証人(飯塚堅藏君) 実は私の方で課長がやりまして、一切書類を送ろうということで送りました。
  1527. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは本日の調査に関するところのいろいろの証拠の申出がありましたので、至急各委員から申出願いたいと思います。じや本日は遅くなりましたので、それじやお帰り願います。    〔証人飯塚堅藏君退席〕
  1528. 岡田宗司

    岡田宗司君 前の証人と今日のとで食い違いが非常に多いので、場合によると僞証問題が続々と起るようになつて来るのですが、これをどう委員長の方で取扱われるか、それが一つ。それから先程これは今日の二人の証言を聞いておりますと、警視庁の内部で非常な綱紀の緩んでおる問題が起つておるのです。そういうことから、果して警視総監に取調べの最中に出て来る土田氏の問題やなんかを報告されて、警視総監はすでにそれを知つてつてつておるのか、或いはそれが報告されておらないのか、そういうことについて一つ委員長の方でお調べを願いたいと思うのですが、これは五井産業事件そのものも非常な問題ですが、同時に日本の警察、特に東京都の首都の警察のこういう問題というものは見逃せない問題である。責任者である警視総監の態度というものは重大問題だと思う。その点一つの委員長において十分な考慮を拂われてお進め願いたい。こういうふうに思います。
  1529. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 僞証かどうかという点に対するところのいろいろの資料はこれから專門調査員をして十分調査いたさせまして、その結果を御報告申上げまして、そういう手続にするかどうかということの御審議を願うことにいたします。それまで十分調査いたさせますし、又第二の点に対しましても專門調査員をして調査させまして御報告いたさせることにいたします。尚その上に調査のご御要求がありますれば、お申出がありますれば直ちに手配いたしますから至急お申出を願いたいと思います。  では本日はこれを以て散会いたしまして、明後日は午前十時より法案に対する審議をいたします。    午後七時十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君    委員            大野 幸一君            岡田 宗司君            石原幹市郎君            小林 英三君            遠山 丙市君            松井 道夫君            松村眞一郎君            羽仁 五郎君   証人    警視庁予備隊長 土田  精君    警視庁搜査第二    課第一係長   上田 良三君    警視庁搜査第二    課第二係長   飯塚 堅藏君