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1950-04-11 第7回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十一日(火曜日)    午前十時四十四分開会   ―――――――――――――   本日の会議に附した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件(五井産業事件)  (右件に関し証人証言あり) ○証人喚問に関する件   ―――――――――――――
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより法務委員会を開きます。検察裁判運営について、五井産業事件に関する証人証言を求めることにいたします。吉武辰男さんでございますか。
  3. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住まいはどちらですか。
  5. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 千代田区隼町十三番地。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お歳は。
  7. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 三十九歳。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五井産業事件につきまして証人として証言を頂くことになりました。
  9. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 分りました。
  10. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これから述べて頂くことについて嘘、僞りがないということを宣誓をして頂きます。宣誓をして、若し間違いがありますと制裁を受けることになります。    〔総員起立証人は次のような宣誓行つた。〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 吉武 辰夫
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴をおつしやつて頂きます。
  12. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 昭和六年二月に警視庁巡査を拝命いたしました。昭和九年の二月巡査部長、それから昭和十二年の八月には警部補、十九年の五月に警部、それから二十四年の十二月警視であります。その間二年ばかり南方に行つておりました。  勤務は最初戸塚、板橋、淀橋の各警察署におりまして、特別警備隊、それから丸之内、捜査二課、それから荏原、それから警務課駒込警衛課捜査二課、こういうことになつております。それから上野になつております。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁捜査二課は、いつからいつまでですか。
  14. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 捜査二課は、警部補のときに、昭和十三年から十六年ですか、確か十五年だつたかと思いますが、それと二十三年の三月から二十四年の十二月までです。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十四年の……
  16. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 十二月までであります。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これはどこの……
  18. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 捜査二課の第二係長
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課の係長ですね。
  20. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) はあ。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、警視庁は二課ばかりですか。
  22. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 警務課とそれから独立警備隊であります。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警務課はいつから。
  24. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは昭和十七年の確か一月だつたかと思いますが、ことによると違つておるかも知れません。それから十九年の五月まで
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは警務課ですね。
  26. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤昇とのお知合いになつた動機は。
  28. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは確か昭和二十三年の三月頃だつたと思いますが、日野紹介細田君の栄転祝かなんかで、小石川もみぢというところで会合をしたときに、初めて紹介を受けたと思つております。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭和二十三年四月頃小石川もみぢで。細田氏の栄転祝ですか。
  30. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうだつたと思います。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのとき日野さんとあなたと細田さんと上田さんが参つたのですね。そのことをおつしやるのですね。
  32. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それと上野さんです。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことをおつしやるのですね。
  34. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。そのとき初めてでございます。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからの佐藤君との御関係は。
  36. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その後日野の役所の席に行つたとき、ときどき会つたり、或いは廊下や何かで行き合つて挨拶をするというような程度だと思います。去年の七月の五日御承知下山事件が起きまして、それから七月の十日前後だつたと思いますが、日野のところに或る方面情報收集するのについて、一番適当な人物紹介してくれと話をしたところが、それならば佐藤を使つたらいいじやないかということで佐藤君に協力を頼んだ。それから佐藤君が約一カ月、一カ月半ぐらいたびたび私の部屋に出入りしたのであります。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か向島の八百松で絹川氏の歓迎会であるか、そのとき御一緒つたのですね。
  38. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、これはですね。その頃絹川さんと、佐藤君が知合だということを私はよく知らなかつたのです。ところが絹川さんの大家さんが佐藤氏の何とと申しますか、事業の非常に大きなパトロンだつたらしいので、事業関係で神戸へ行つたり何かした頃、佐藤絹川さんのところに行つて御馳走になつたり、お土産を貰つて帰つたりしておつたらしいのです。絹川さんが出て来られたら是非一回会合を設けたいと、こういう話を私を介して頼まれたわけなんです。そこで丁度八月の若し記憶に誤りがないとするならば七日頃、例の都市対抗の野球で出て来られた、その旨私に通じてそれならば出掛けようというので、佐藤氏の主催した宴会に臨んだわけです。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは佐藤氏の発言ですか。
  40. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 佐藤君の発言です。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日にちは八月の七日頃ですか。
  42. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) えーと七日から確か都市対抗始つたと思いますから、そして一回戦で敗れて帰つたのですから、確か八月十日前後だと思います。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 都市対抗始つて幾日目くらいですか。
  44. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 二、三日たつた頃と思いますが、たしか日にちはつきり分りませんが。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこが敗れたのです。
  46. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 絹川会社が敗れた。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 敗れた日にですか。
  48. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 敗れた日だつたかその後だつたか、丁度その頃と思います。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前後ですね。
  50. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その前後なんです。
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丁度その頃ですね、佐藤君から捜査費用の、捜査費用というのは下山事件のことだろうと思いますがね。
  52. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五万円ばかり佐藤君の方から寄附すると言つたのですか。あなたの方から申出たのですか。
  54. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その頃だつたかその前だかよく覚えてないのですが、確かありました。それは下山事件で大分苦労しているようだから、何か金が少しばかり入つたから捜査費用寄附したいという、こういう話があつたのです。幾らぐらいあるのだと聞いたところが五万円ぐらいという話がありまして、そこで額が分つたのです。寄附したいというこういう申出があつたのでそこでそれならばやつて貰いたい。どういう手続をとつたらいいかというので、それならばこれは総務課の方の主管だから手柴刑事部総務課長から通じて刑事部長承認を得て、若しいいというなら有難く頂く、こういう話をしておきました。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどうなつたんですか。
  56. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうしたところがその後二、三日してからと思いますが、間に合つているということを言われたというのでそのままになつてしまつた
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのままというのは寄附を受けなかつたのですか。
  58. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ受けません。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 持つて来て返したのですか。
  60. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然金は見ないのです。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方では。
  62. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 手柴課長の方では分らんのですね。
  64. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 手柴課長はただそういう手続を取るというだけの話だつた手続をしたところが金が間に合つているという話だつたので金は恐らく見たかどうか、手柴課長はよく知りませんが、私の方では全然タッチしておりません。
  65. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 手柴課長からその後どうなつたかということはお聞きにならなかつたのですか。
  66. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ聞きません。
  67. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなた方に直接申出たのですか。手柴課長の方に申出られたのですか。
  68. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 寄附をする申出は私の方にあつた。それから手続として総務課に行つてくれ、それで刑事部長承認を得てくれ、手続は向うでやるので刑事部長佐藤君の話でやるのであるから……
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方に現金を持つて来たのではないのですか。
  70. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ何も持つて来ません。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただそういう話があつただけ。
  72. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ話だけです。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤がその頃あなたの方へ酒だとか或いは罐詰だとかそういうものを何か持つて来たのですか。
  74. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いいえ全然持つて来ません。これは私この間佐藤調書というものが新聞に出まして、初めて罐詰だとか何だとかいうものが問題になつているということを知つたわけです。そこで新聞によりますと鹽川という私の部屋にいた巡査を通じてという、こういう話だつた新聞書振りつた。それでお前どうしたんだということを私は鹽川に聞いて見たところが、罐詰の方は鹽川の庁内の何か友人が売つてくれということを鹽川に頼んだらしい。そこへ丁度佐藤が私の部屋に来ておつたので、私のいない留守だつたらしいので、それじや私の方で売つてやるとか買つてやるとか言つてそうして持つた行つた。金を持つて来たところが清水という私の給仕がいたわけです。丁度鹽川がいなくつて清水がいたんで、清水鹽川さんがやつて来たらその金を一万円か一万五千円か知りませんがその金を渡してくれと、こういうことで佐藤が帰つたらしい。ところでその後鹽川が受取つて頼まれた鹽川友人にその金は渡した。こういう話を鹽川から私は聽いたわけなんで、これは新聞に出てから後なんで、それから何か酒の話も鹽川に聞いてみましたところが、鹽川が丁度盲腸をやつて手術をして入院しておつた事実がある。それはいつ頃だつたか私はつきりしないのですが、その全快祝とか何とかで酒をやるとか何とかいう話があつたんだが、実際は貰わなかつたと私に鹽川は話をしておりました。私共と全然関係はありません。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か酒を数回やつてつたようなことは……
  76. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 酒を数回やつてつたようなことは全然ありません。事実調書新聞の通りだとすれば、恐らく仲介に鹽川というのが入つておるのですから、鹽川を調べると私共の方に来ておるかどうかということがはつきりするわけですが、私が鹽川に聞いたところでは、その点はまだ全然捜査二課から調べられておらないということで、私非常に心外に感じておるわけです。
  77. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鹽川という人は酒を受取つておるのじやないですか。
  78. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは分りません。鹽川は私には受取つておらないということを言つておりました。
  79. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤警視庁に来るとあなたの部屋に始終来るのですか。
  80. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いいえ、始終というわけじやないのですけれども、その当時は殆ど隔日或いは三日置、或いは又四日置というようなふうに来ていました。
  81. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時というと……
  82. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 下山事件直後です。昭和二十四年の七月中旬頃からです。約一カ月から一カ月半ぐらいだと思います。
  83. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前もちよちよこ来たことは来たのですね。
  84. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやその前は私の部屋に来たことはありません。全然ないと思います。
  85. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがさつきおつしやつた二十三年の三月、四月頃もみぢで知り合いになつてから……
  86. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 下山事件までですか。
  87. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その間一年半くらいありますね。
  88. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その間来たことはないと思います。私の部屋は恐らく知らなかつたでしよう。
  89. 伊藤修

    委員長伊藤修君) するとその頃から頻繁という言葉はどうか知りませんが、来るようになつたんですね。
  90. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 下山事件の頃から頻繁に来ていました。
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その下山事件について先程ちよつとおつしやつたようですが、それは日野君を通じて適当な……
  92. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 人物紹介して貰いたい……
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) というのは鍋山貞親のことですか。
  94. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやそうじやなくて或る方面に対する情報收集が私の方で必要だつたわけなんです。その方面に対する一番適当な人物紹介して欲しい、こういう話を私は日野のところへ持つて……
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 紹介して貰つただけで……外に何か捜査について仕事をさしたわけですか。
  96. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤に。
  98. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) はあ。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎日来るような用事があつたわけですね。
  100. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 毎日という程でもない……
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 隔日か……
  102. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは主としてどんな用事なんですか。
  104. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それはちよつとまだ捜査中のことでございますから言えないと思います。
  105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その頃いわゆる味の素事件というのが起つたこと御存じですね。
  106. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ知つております。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃から味の素事件というのは起つたんですか。
  108. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 味の素事件は七月の終り頃か八月の初めだつたと思つております。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体七月頃のように聞いていますが。
  110. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうふうに私も記憶しております。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 味の素事件が始まつた、まあいつ頃か日にちは分りませんが、間もなく佐藤から味の素事件について何かあなたにお頼みしたことがあるんですか。
  112. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 味の素事件が始まつて間もなくじやなかつたと思つておりますが、この点ははつきり分らないのですが、最初味の素会社のものを検挙したのは、確か齋藤とかいう或る課長つたわけです。それと田代という二人を検挙したわけです。それが七月の中旬の終りだと思いますが、その直後じやないです。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その直後ですか。
  114. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その直後じやありません。それからずつとして、鈴木という常務がいるんですが、それを検挙する前だつた検挙後だつたかちよつとはつきりしないのですが、要するにその頃なんです。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その頃何と言つて参つたのですか。
  116. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私ははつきりした記憶はないのですが、検挙しなければならんのかというような話もあつたような気もしますし、或いは又検挙後ならば成るたけ早く、取調が済んだらば早く身柄を釈放して貰えないだろうかというような話があつたと思いますが……
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに検挙前に鈴木検挙しなくちやならんのか、若しくは成るべく検挙されないようにならんものかというようなことをあなたに意見を聞きに来たか、そういうようなことはなかつたのですか。
  118. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そのところははつきり覚えてないのです。この間の佐藤氏の証言新聞で見ますと、何だか検挙後に成るたけ早く調べて欲しいというような話が……
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 検挙後には勿論行つておりますが……
  120. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうだつたかも知れません。
  121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから検挙前に鈴木まで伸びないように、そういう具体的な……
  122. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことはありません。
  123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 具体的に言うたかどうか知りませんけれども、少くとも何とかならんものかということをあなたのところへ相談に行つたか、或いは意見を聽きに行つた情報を知りに行つたか、そういうことがあつたのじやないですか。
  124. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) こいつははつきり記憶しませんです。
  125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際ですか、その頃ですか知らんですが、あなたの同僚が一体誰だ……佐藤があなたの部屋へそういうことを話に来たときに、外の同僚があなたに対してあの人物はどういう人物だというようなことを聞かれた場合に、あなたがあれは鹽谷施設祕書だということをお話になつたのじやないですか。
  126. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 記憶はありません。鹽谷さんの施設祕書だということは私知らないですから、そういうことはないと思います。
  127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰か同僚の人におつしやつたのじやないですか。
  128. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 名前を言つて貰えば思出すかも知れません。
  129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたに最初話に来たときに、鹽谷さんに頼まれたんだというようなことを言つてつたのじやないですか。
  130. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 鹽谷さんの話は出ないと思います。
  131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 実は鹽谷さんに頼まれたんだが、鈴木に対して何とかならんかというふうにあなたは話し掛けたんじやないですか。
  132. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然聞きません。
  133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木は当日逮捕されるということは大体事前に知つてつたらしいのですが、巷間伝うるところによると、あなたと鈴木佐藤とが築地の田中屋でその前に会合されて、逮捕止むを得ぬという状況つたということをお話合になつたということですが……
  134. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 絶対にありません。鈴木は恐らく私の顔を知らないでしよう。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論それは一面識の人でしよう。
  136. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 一面識もない筈です。
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 面識があれば勿論あなたに直接頼みに来るでしよう。
  138. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 未だに一回も鈴木には顔を合しておりません。
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木にお会いにならんでも佐藤氏との間にどうも逮捕必至だ、免れぬというようなことをお話はなさつたのじやないですか。
  140. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういう話は言つたかも知れませんがはつきりしたことは覚えないです。
  141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう証言があれば逮捕は免れぬぞ……
  142. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 最初から鈴木逮捕を免れぬということは関係者はよく分つているわけです。
  143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうお話をなさつたこともあるか分らんですね。
  144. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) あるかも知れんがそういう記憶はないです。これは御承知のように誰にでも話すことなんで、例えばこの中に弁護士をしておられる方はよくお分りだと思いますが、何とかならんか、いやあれはもう駄目だということは言つておるのが捜査官として妥当な方法じやないかというわけなんです。と申しますのは、今御説明のように弁護人被疑者交通権というものが認められております関係上、もう共犯があればどれくらいまで取調が進行して、そうしてあとは残つている共犯がどういう状態に置かれるかということはもう十分に知つているわけなんですから……。まあ併し佐藤氏の証言が正しいということになれば私は一般的にどういうこともままあつたかも知れないというだけの話で、佐藤氏が若しないというならばそつちの方が正しいかも知れないと思います。
  145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 捜査関係しておりますから、こういう官庁にお勤めになつていらつしやれば大体そういうことは空気としてでも察知されますから、逮捕は免れぬぞということをおつしやつたことはあり得る……
  146. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 被疑者の方にはよく分つておるわけですね。そういうことは……
  147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木逮捕状宗像から意見を述べられて逮捕状を出すのだといつてあなたのところに稟請して来るわけですね。どうしてあなたのところでそれを握り潰したのですか。
  148. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 握り潰しはしません。実はこれはこういう状況つたのでございます。八月の初め頃だつたですか、松本課長に呼ばれまして厚生省役人がこの事件については悪いのだ、勿論課長の言われるように厚生省役人というのは非常に悪質な貰い方をしておつたわけなんです。鈴木は単に田代なり或いは斎藤だつたか覚えがありませんが、それから厚生省役人意向を聞いて、そうしてそれに同意したに過ぎないのだ。これは身柄拘束でも調べられるのじやないかというような意味言葉があつたわけなんです。そうして不拘束にして調べてくれという意味に私は松本課長意図を解したわけなんです。ところが私といたしましては現場に近い係長としましてはこれは駄目だ、その鈴木の下の田代なり或いは齋藤というものが身柄拘束を受けて、そうして鈴木だけを不拘束にするということについては均衡を失する。更に又見方によつたのでは鈴木承認をしなければ贈收賄事件は起らないじやないか、こういう点も考えられる。松本課長の言われたことも成る程一理あるわけなんです。鈴木に悪意というものは極めて少いのじやないか、従つて身柄拘束にして調べても差支ないじやないかというような意向も一理はあるわけなんです。併しながら私としましてはその当時の状況から見て部屋の方の空気もあり、これは検挙して調べた方がより妥当じやないか、こういう考えを持つてつたわけなんです。  これにつきましてはその当時私よりも先に恐らくその部屋主任宗像警部補あたり松本課長のそういう消極的な意向というものはよく知つてつたのじやないかと思います。と申しますのは私が外に出ておる間に私の部屋棟方部長というのが宗像主任の下におりますが、それが私の部屋に来て、鹽川という私の係長付がいるのですが、それに課長鈴木を引張ることについて極めて消極的だから係長は積極的だろうかどうだろうか、係長意向にかかつているのだというような話をしたというのです。それで私は鹽川に対しまして絶対大丈夫だから心配せずに一生懸命やれということを言つておけということを私は話をしておつた。そうしますと課長の私に対するお言葉とそれから棟方部長の祕書官に対する言葉と総合してみますと、課長がこの事件に対しては極めて消極的だというような私は感じを持つたわけなんです。そこでそうするうちに誰だつたかちよつと相手は分らないのでございますが、課長が自分の友人からこの問題について鈴木をできるならば不拘束にして調べて貰いたいという依頼を、赤坂の小笠原という待合で饗応を受けて、そうしてそれを引受けて来たという話を私は聞いた。  そこで私といたしましては、課長立場というものは引受けて来た以上は非常に苦しい立場にある。そこで私も一旦課長申出を断りましたのですが、必ず引張るということを私は言つた、引張らなければいかんということを言つたわけです。併しながら考えてみると、課長立場というものは非常に苦しい立場にあるのじやないかというので、私もこれは暫く考えた。それ でその一つ方法がまだ残されておつた。と申しますのは、鈴木がその当時出て来ておつたのは二百二十万円くらいの贈賄事件なんです。確か小川というのと竹前というのと五味、この三人の事務官に対してでございますが、それが単に二級のいわば下の方の事務官だけでなくて、それだけの金が動いているならば、更に大きな所へこの事件というものは拡大するのではないか。そうしてそのためには小川なり或いは竹前なり或いは五味、これは誰か分りませんが、これをもう少し調べて、そうして上に発展させる必要があるというのと、もう一つ齋藤鈴木一緒厚生省の或る役人の所へ、高官の所に行つた事実を確か齋藤であつたと思いますが、その当時自供しておつた。そうしてそのときに鈴木がその高官に対して金包を持つて行つたというような漠然とした状況が出て来ておつたわけです。従つて鈴木が果してその高官の所へ金を持つて行つたかどうかということは、齋藤をもう少し徹底的に調べなくちやならぬ。それで齋藤を徹底的に調べることによつて、そうして鈴木の犯罪事実というものが、単に二百二十万円の贈賄以外にあるということになれば、私が仮に課長の意志に反して引張つても、やはりこれは引張つてよかつたのだ、課長には私の意図というものは後から分つて貰える、こういう考えを持つたわけです。従つて宗像警部補に対しては先ずともかく齋藤をもう少し徹底的に調べろということで四、五日くらい引延ばしたかも知れんと思います。  そうしてその間に又同じ人だつたのでありますが、当時私は相当それを事実として信用できると思つてつたわけなんでございますが、同じ人から実はあなたの転勤問題が出ている、こういう話があつたわけなんです。それでこれは事実か嘘か分りませんですが、赤坂の待合で第二回目の会合課長がされたときに、ともかく吉武が俺の言うことを聞かん、それでこれはどうしても引張らなければならんようになるかも分らん。吉武宗像を掴むことができないからこういうことになつたのだ。それで了承して貰いたいという話が出た。その後でどうせ吉武は変えなければならんという話が出たということを、まあ相当私は当時は本当だと思つてつた。よく信頼できる人からの話なんですが、とにもかくにも……。そうしてそれはなんだもんだから、私としては私が課長の意志に逆らつて鈴木を引張る考えを持つてつたので、課長としては非常に私を煙たがつているのではないか、こういう立場に立つてつた。そこで私の残された途というものはともかくどうしても別の犯罪事実を出してこれは課長、こういうふうに出たのだからやはり引張つておいてよかつたでしようというところまで持つて行かなければならなかつた。そこで私はその間の期間に外の犯罪容疑を調べさせるように私は宗像に命令さしておつた
  149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御意見も御意見だが、当時主任検事の加藤検事が即時逮捕を希望しておつた。又逮捕しなくちや駄目だというような強い意見もあつたらしいですが、宗像氏も勿論逮捕意見つたのですね。
  150. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そんな意見じやなかつたでしよう。加藤検事は逮捕しなくちやならんということを言つております。警視庁意向はどうですかということを聽いております。こういう報告はありましたです。
  151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに基いてか自主的にか知りませんけれども、いずれにしても宗像氏が逮捕の稟請をあなたの方へ持つて行つたわけでしよう。
  152. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそれに対して今あなたがおつしやるような理由でそれを拒否されたのですか。はつきり言わずしてただ握り潰したのでしよう。
  154. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そんなことはありません。拒否するということは絶対にありません。
  155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何故稟請を上へ持つて行かなかつたのですか。
  156. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 上へ持つて行かなかつたのは、私としては外の犯罪事実というものを確実にすることが絶対必要だつたわけです。時期的に若干遅れておつたということだけです。
  157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに対しては諾否は明示しなかつたのですね。逮捕状を出していいか悪いかということに対しては宗像氏に明示しなかつたのですね。
  158. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 明示しなつたと思います。
  159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとあなたの一存でそれを握つてつたわけですね。
  160. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 握つてつたわけじやありません。
  161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは稟請して来れば逮捕状は急を要するものですから……
  162. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そういうことはありません。
  163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し逮捕しろという意見に対してはそれは早いとか遅いとか……
  164. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) まだ早いからもう少し待てということだけは話して置きました。
  165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうしてその後二日三日して、あなたの手を経ずして逮捕状が出たわけでしよう。
  166. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私の手を経ずしてではないと思いますが。
  167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 直接課長……
  168. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私には内緒でですか。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたに稟請してもあなたが拒んでおるものだから、今度は課長と加藤検事この間で話をして逮捕状が出たのじやないでしようか。
  170. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そういうことはないでしよう、私の同意を得なければ……、私はその当時宗像に対してうんと叱責しておる筈です。私はそういう私の意志を無視して逮捕状を請求したりなんかするということに対しては、これは秩序を乱すものとして私は絶対に叱責しておりますから、その当時叱責したという記憶もありませんから、恐らく私の同意を得て貰つたものだと思います。
  171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからあなたに同意して頂くべく稟請したに拘わらず……
  172. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは同意をしておるのです。同意は私は最初からしているのです。時期の問題なんです。
  173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 時期の問題にして見解が違うでしよう。結局早く宗像氏としては出したいと思つたが……
  174. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 見解が違うのは今までの習慣では係長意向に従つておるのです。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 宗像氏はあなたのところへ稟請を出したけれども、あなたがそれに対して決裁して呉れないので、そうして課長を経て加藤検事の手を煩わして、逮捕状を漸く二、三日後入手したというふうに言つておりますがね。そういう趣旨のことを……
  176. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) どうもそれはちよつと納得できない言い方だと思いますがね。私が若し私の手を経ずして私の意向に反して引張つたということになれば、私は当然ひどく叱責している筈なんです。
  177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからあなたは逮捕状を即時出すことを躊躇されたということは、齋藤某に対して事件の拡大を期待してとおつしやるのですか。
  178. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それと加藤の意図というものを測つてつたわけなんです。
  179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 加藤はむしろ逮捕を主張しておつたのじやないのですか。
  180. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そうじやないのです。最初は絶対にそうじやありません。それを棟方部長あたりはよく知つておるわけです。
  181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 齋藤某に対するお調べはなさつたのですか。
  182. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええやつております。
  183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時にですか。そのときにですか。
  184. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 一番最初早く取りたいという話があつた時から二、三日の間は齋藤某に対する鈴木の他の犯罪の証拠固めに徹底的な調べを命じております。
  185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそのときの捜査の模様は分りませんけれども、ちよつと考えれば齋藤某に関するあれの方をお調べになれば、尚更鈴木を早く挙げて置いた方がいいと考えられますな。
  186. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そういうことは言えません。又私が知らない間に逮捕状が出されたということになつて来れば、私がその人に、あのデマが一体どこから出ておるのかよく分りませんが、私共の聞いておるところによりますと、やはり一部から出ておるというような話 を聞いているわけなんです。まあそういうデマは出て来ない筈なんです。
  187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうもそういうことと関連しましてお疑いしては悪いのですけれども、時が丁度たまたま今の絹川氏の歓迎会という名前を以て会合を設けられたということや、先程の五万円の寄附をしようというようなことを……
  188. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ちよつと待つて下さい。今の絹川氏の歓迎会の名前を以てじやないのです。
  189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは名前を以てではないでしようけれども、その歓迎会……
  190. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは全然その頃まで、まだ私は恐らく佐藤からその味の素の話は出てなかつたのじやないかと思います。
  191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丁度併し時間的には符合いたしますからね。先程の都市対抗の野球の日にちを調べれば直ぐ分りますが、丁度その頃と前後しているのです。それから今の金銭関係のことも前後しておりますし、要するにあなたに親しく接近するようになつた会合をたびたび設けられることが頻繁にその頃行われ、且つあなたの部屋にその頃になつてから、今あなたのお話によつても一カ月半ばかりの間、丁度その頃頻繁にあなたのとこへ……、その前には余り来ていない、その後にも来ていない、その頃のみに集中してあなたの部屋を訪れている。まあ下山事件について特別あなたが何か仕事をお頼みになつた、それは言えないとおつしやれば別問題だけれども、併しそれだけは……そういうふうにいろいろな事件がそこへ集中して参りますね。
  192. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ところがちよつと私、調べがあつたかどうか知りませんが、佐藤鈴木との関係はどういう関係か知りませんが、私が一回聽いたところによると、鈴木佐藤とは殆ど面識もないような関係らしいのです。それを佐藤が一体鈴木のために、その当時佐藤はよくなかつたのじやないかと思います。それに五万円なりなんなりを出すとか、或いは又絹川さんその外に名前を借りて招待するという恐らく関係じやないのじやないかと思います。それだけの自腹を切つてやる関係じやないのじやないかと思います。その点につきましては、これは鈴木は二十何日間も入れて調べられているわけですから、はつきりしているわけです。
  193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは佐藤は経済状態がそういう状態であつたかなかつたかということは別問題として、これはよく他の例でもままあることで、いわゆるそういう立場にある人が、鈴木から又その費用は賄われるのですから、佐藤はなくても……
  194. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木からそういう費用は賄われるのですから……
  196. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 賄われておりますか。
  197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや賄われるのですからね。佐藤がないと言つたつて鈴木において賄うことができるのですから、あるとかないとかいう問題じやないのです。
  198. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは全然違うのじやないのですか。鈴木から……
  199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、あなたの今のお説が、佐藤はそういう財産状態じやなかつたとおつしやるけれども、佐藤が一文も財産がなくても、そういう関係鈴木から費用が出されるということも考えられるということです。
  200. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは考えられますね。私が後で聽いた話によると……
  201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鈴木佐藤とは無論一面識もない。その前から一回も会つていない。併し外ならぬ鹽谷氏から頼まれて、鹽谷氏は警察に深い関係を持つています。直接言うてもよさそうなものだ。
  202. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然……
  203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それを佐藤を通じてあなたにお願いするということは、佐藤が余程警察ボスとして力を持つているという鹽谷氏の考えつたわけでしよう。
  204. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうじやないでしよう。鹽谷氏と私とは一面識もないから、一面識もない捜査二課の係長のところへ、そういう一面識もないところへ持つてつて事件を聽くということは、ちよつと非常識だというような気持じやないかと思いますがね。
  205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういう関係もあつて佐藤があなたと心易いから、それを通じて頼み得るということは、これは考えられるのですね。
  206. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ところが私はさつきも話しておるのですが、特別にどうしてくれ、こうしてくれという依頼はなかつたのです。
  207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 依頼の内容はどうであるかということは、あなたとしての何はないとおつしやるのですが、そういうことが少くとも佐藤としては意識的にいろんな形で以て、働きかけたんじやないかと、こういうことをお尋ねしたいのです。
  208. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) まあその当時はそういうことは全然考えませんでしたし……
  209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが不用意にそれを察知せずして、佐藤に利用せられていたかも知れませんね。
  210. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私はそういう点につきましては相当慎重に考えているつもりです。従いまして、その当時はそういう懸念も持ちませんし、現在そういうあれも持つておりませんのです。と申しますのは、若し佐藤のそういう意図というものが私、はつきりしているとするならば、後日釈放される前に、私は宗像警部補に、明日か明後日鈴木が満期で釈放になると、而も起訴にならずに釈放になるというような報告を受けておるのです。そこで私は非常に怒りまして……、と申しますのは私も一旦引張つて留置した以上、それが起訴にならずに釈放になるということについては、非常に自尊心を傷つけられるし又警視庁の名誉も考えなければならぬ、相当の相手は地位のある人ですから……。だからそんな馬鹿な話があるか、すぐに主任検事のところへ行つて喧嘩して来い、お前で話が分らんなら私が出掛けるからと言つて、私は極力起訴をあれしているのです。宗像警部補はすぐに加藤検事のところが、主任検事のところへ行つて……、私はむしろ主任検事のところへ行つて聞いたら分りますが、私の命令を受けて行つたのです。そうして話を伝えましたところ、意向を伝えまして、一時間か一時間半ばかりして帰つて来まして、意向を伝えたところ、実は加藤検事は横浜に転勤になつた、その後環検事であつたか誰だつた事件を受け継いだ。併しながら記録もよく見ていないような状況で、而も期日は満期でもう明日に迫つておる。こういうわけで在宅起訴にでもするかという話だつたのです。それで私は、一応そういう手続の遅れたために拘束中に起訴ができなかつたというならば、それは止むを得ないだろうということを言いまして、そうして私はそのまま引下がつた。そうしてその釈放になつた翌日か翌々日私は検察庁に行つております。そうして主任検事の上司であるところの布施検事だつたか、勝田検事だつたか、とにかくその事件は向うのあちらの方だというような話があつたのです。そこに行つて非常に遺憾だ、成るだけ早く手続の済み次第起訴して貰いたいということを私は強硬に申入れているのです。若し私が最初からそういう佐藤意向を汲んだとか、何とかいうことになつて来ますれば、私はそういう後までの強硬な態度というものは持さなかつたのです。これを以てみましても大体佐藤がどういうことを言つてつてかということは、今になつて大体凡そ想像がつくと思うのです。恐らくそういうどうしろ、こうしろという話はなかつただろうと思います。
  211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは岡田秀夫という人は御存じですか。
  212. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 知つております。
  213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡田秀夫から実際は佐藤から金が出ているのですが、要するに今の下山事件について生ビールですかを一度貰うということはどういう関係になるのですか、ああいうところから……
  214. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 岡田さんはどこの関係で知合つたか知りませんが、何の関係つたかちよつと記憶にないのですが、非常に立派な人だということを印象付けられておつたわけです。そのうち佐藤氏が出入りしているうちに、岡田さんがビールをあれすると言うから、陣中 見舞いをしたいと、こういうふうに何か岡田さんが、下山さんと何か知合つている、知合いだつたとか何かという話だつたのです。そこで陣中見舞をしたというような話がありました。こういうことを言つているがどうだというわけであります。ああ、岡田さんなら僕は頂いて差支えないということを言つておきました。それで私のところの係員をどこか、ニュートーキョーかどこかに取りにやつたわけであります。いつ幾日に来てくれというような話があつたらしいので取りにやりました。そして全員に飲ましてやりました。それでまあ非常にお世話になつたということで二、三日うちに、私は資源庁の役所に岡田さんを訪ねてお礼に行つております。
  215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) するとそれは真実岡田さんから出たものと思つたのですね。
  216. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 勿論そうです。
  217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ところが岡田さんは一官吏です。生活費にも困つている官吏ですがね。いいですか、その人が生ビールを、その時分では相当の額でしようが、呉れるという資力があるのですかね。
  218. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は苟くも局長になつた……
  219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 局長というても御承知の通り俸給は決つていますから、それ以上の俸給がある筈がないのですから……
  220. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ところが私はそういうふうには考えなかつたのです。と申しますのは、何かあすこは鉱山関係のあれで特殊な配給があるらしい、それで極めて安く入れるというような話も……
  221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鉱山関係で配給があつたといつてもそれは鉱山の労務者に渡すので、鉱山局が配給を貰うという理屈はないですからね。
  222. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、私は知りません、
  223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは坑夫の頭を刎ねるのです。坑夫の頭を刎ねたものをあなたが貰うという理屈はないでしよう。
  224. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そういうことを私に言われたところで極めて迷惑します。
  225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはだから官吏で、局長くらいの一官吏がそういう多額のものを陣中見舞に出すということがちよつと常識で考えられないのですが……
  226. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは私常識としてもう一局長ともなれば……
  227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特に、又警保局、まあ今は警保局はないけれども、あなたの方の仕事の関係にあるような方なら別だけれども、あなたの方の仕事とは全然関係のない商工省ですからね。
  228. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、そういう点については聊かの不安も感じておりませんでしたですね。
  229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは終戦南方からお帰りになつたのでございますね。
  230. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。
  231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで駒込にいらつしやつたのですね。
  232. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございますね。
  233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから土田さんの御盡力で、その時分土田さんは何か課長をしていらつしやつたのですか、警衛課へお入りになつたのですか。
  234. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) また盡力をしてくれたかどうか、そいつは分りませんが警衛課に入りました。
  235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんの推薦ですか。
  236. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、それは知りません。誰の推薦か知りませんが、土田課長の下に警衛課の主任警部に入りました。
  237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから土田さんが警衛課長をやめられたときにあなたが捜査二課にお入りになつたのでございますか。
  238. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。……その後ですな。
  239. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その時分に警視庁の人事に関係する人は、結局警務課長の後藤田という人ですね、それから刑事部長の藤田、捜査課長の秦野ですか、こういう人が大体捜査課の人事というものはなさつたのですね。
  240. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 警務課長、人事課長が一般的な人事をやつてつたわけです。自分の課の係員に対しては課長、部長というようなところです。
  241. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうわけですから、只今言うた人がいわゆる捜査二課の人事に携わる人ですね。
  242. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、捜査二課の……、まあ併し……、いや主任以上なつて参りますと大体係長……、或いは課長……
  243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 主任以上の人ですね。
  244. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。まあ大体そういうふうに考えても差支えないと思います。
  245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今申上げた後藤田とか、藤田とか、或いは秦野というような人は土田さんと非常に親交の深い人ですね。
  246. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 土田さんとですか。
  247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  248. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それ程でもないのじやないのですか。土田さんと、後藤田さん、秦野さんはそれ程でもないと私は考えておりますですがね。
  249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この土田さんという人は、元警視庁関係のあつた岡崎とか丹羽、こういうような人とやはり親交の深い人じやなかつたですか。
  250. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 気持では非常に尊敬しているでしよう、恐らく。
  251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この人は始終上司と交際、行き来しておりまかす。
  252. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは始終は行き来していないでしよう。それは土田予備隊長から聽いて見ればよく分ると思いますが、私自身ですか。
  253. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いいえ土田さんが……
  254. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それはちよつと私にはよく分りません。
  255. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことはあなたも御承知ではないのですか。
  256. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私もよく分りません。始終行き来しておるというようなことについてはよく分りません。併し前の上司として尊敬しているということは分ります。
  257. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなお話があつたのですか、そういうようなこと、土田さんから何かそう……
  258. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや話はありませんでしたが大体態度において分りますし、又当時一緒に私はやつておりましたから。
  259. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう人と同席されたこともありますか、あなたが。
  260. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうですね。ありますですね。
  261. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこで。
  262. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 岡崎さんの宅でしよう。
  263. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときは誰と誰がおつたんですか。
  264. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 大体盆暮、正月には欠かさずに私岡崎先生の所にはお伺いしておるわけなんですが、その外あそこで見かけた人というと、そうでございますね、土田さんと丹羽先生。
  265. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 原とか、後藤田とか、倉井さんとか、河合さん、土田さん、石井さん、こういう人ではありませんか。
  266. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 原さんもおられたことがあつたかも知れませんね。
  267. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんも一緒ではなかつたのですか。
  268. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 土田さんですか、土田さんは……、一緒になつたことがあります。
  269. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽という人も一緒になつたことがありますか。
  270. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 伊藤鑛壽という人も一緒になつたことがあるでしよう。
  271. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると大体こういうようなお方は岡崎さんを先輩として盆暮に挨拶に行くとか、ときたま何か会合があると……
  272. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ときたま会合といつても盆暮が一番主でしよう。
  273. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私淑しておるわけですね。尊敬しておるわけですね。
  274. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 尊敬しておるわけです。
  275. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体岡崎さんを尊敬する人のグループというものは大体そういうような人ですね。
  276. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) グループということはないでしよう。
  277. 伊藤修

    委員長伊藤修君) グループと言つていいか惡いか……
  278. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういう人は、大体昔長く警視庁におられまして、あの人を尊敬しておる人は相当あると思いますね。
  279. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでいろいろな職務上のお話やなんかも出るでしようね。
  280. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことは出ないでしよう。あの方は非常に公私の別の激しい人でして、仕事の話なんかということは殆ど出た記憶はありません。
  281. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最近警視庁はどうだというような話は出るでしよう。
  282. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そのくらいのことは出るでしよう。
  283. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何を誰がやつているかとか、結局先輩として当然出ること……
  284. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その程度のことでしよう、出るとしても。
  285. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あそこはあの課長を置いてはまずい、この署長はどうかというそういう話は出ないですか。
  286. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうお話は聞いたことがありません。
  287. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かそういう席上で、これは一例ですけれども大里澁谷署長、あれは署長に置いておくのはあれだから保安課長にでも持つて行つたらどうだというような話が出たんじやないですか。
  288. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私が行つたときにですか。
  289. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いやあなたが土田さんと伊藤さんといたときに。
  290. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 伊藤さんの所で。
  291. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤ではない、岡崎さんの所で。
  292. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういう記憶はありませんですな。
  293. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田と岡崎さんがそういう話をしておられたことを聽きませんか。
  294. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 恐らくそういう話は出ないでしよう。
  295. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは惡い意味でなく、古い警察畑に人々の集まりではそういうような話が出るということも想像されますね。
  296. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 出るということは想像されますが私共はそういう記憶はありませんね。恐らくそんなことはないでしよう。
  297. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは捜査上の仕事でやはり土田さんやなんかの指示を多く受けとられますか。
  298. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 土田さんは捜査二課の仕事というのは非常に詳しいわけです。それで大きな問題になるとときどき行つて指示を受けたことがあります。殊に大きな問題と申しましても、私がやつたときの問題は大きな問題と言つて下山事件とか、或いはそうですな、あのときも指示を受けたかも知れませんね、日本タイプの事件
  299. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仕事上のことを直属の課長を放つて置いて、よその課長の所へ始終相談に行かれるというのはどうですかな。
  300. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやそういうことはありません。課長を放つて置いてよその課長のところに行くというようなことは絶対にありません。
  301. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ただ参考のために。
  302. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ参考のために意見を聽きに行くだけです。
  303. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 参考のためには土田さんの、先輩の意見を聽くわけですか。
  304. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええそうです。
  305. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことが度が過ぎるのではありませんか。
  306. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやそんな……
  307. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 余り露骨に上司を蔑しろにして……
  308. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやとんでもない話です。上司を蔑しろになんか絶対いたしませんが、上司に報告することは報告して、指示を受けることは指示を受ける。ところが上司は御承知のようにまだ実際の捜査面を担当しておられたわけじやない。従つて技術的な小さな面になつて来ると、やはり十年近くもその道で叩き上げて来た者の意見を聽くということは、これは私は捜査官として非常に忠実な行き方だと思います。
  309. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんは相当敏腕家らしいですね。
  310. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。捜査二課の係長として……。現在残つている方では優秀な……
  311. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 優秀なお方らしいですな。
  312. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ昔優秀な……
  313. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなあれから土田さんとしては現在の警視庁はいわゆる土田さんの息の、言葉が惡いかも知れないけれども、息のかかつた人だけでやつて行かなければ二課というものはとても駄目だというようなことを言うのではありませんか。
  314. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことは言いません。
  315. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ乃公にあらずんば捜査二課は維持すること能わずというようなことを言つているのではありませんか。
  316. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことはありません。
  317. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうような気概を示しているのではありませんか。
  318. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやそういうことはありません。
  319. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた鹽も土田さんの下でなければ駄目だということを言つているのではありませんか。
  320. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いやそういうことはありません。
  321. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつき、鹽川さんに新聞に出た後に私が会つたと言いましたがね、いつ頃ですか。
  322. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いつ頃ですかね、新聞が出てから……
  323. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 六、七日頃からですか、今月の。
  324. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) と思いますね。
  325. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その日ですか。
  326. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) とにかく新聞がいつ出たか私もはつきり覚えておりません。
  327. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 四、五日頃出たんですね。
  328. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それではその日頃じやないでしようか、と思います。
  329. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこでお会いになつたんですか。
  330. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) どこだつたか、電話だつたですかね。
  331. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鹽川さんという人はあなたの部員ですか。
  332. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや違います。今大塚の警察です。
  333. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこでお会いになつたんですか。
  334. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) どこで会いましたか、会つたような記憶もないないようですな、電話だつたかも知れませんね。
  335. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 官庁電話で。
  336. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 電話だつたと思います。
  337. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 電話でお聽きになつたんですか。
  338. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 電話で聽いたと思いますですね。
  339. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきはお目にかかつてお話になつたというふうに伺つてんですが、速記録はそう出ておりましようが。
  340. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ああそうですか、電話じやなかつたかと思いますね。
  341. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お会いになつたことはないのじやないですか。
  342. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 会つたことはあります。
  343. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その話で。
  344. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その話で会つたときに出たのか、或いはその話は電話だつたか……
  345. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今のあなたここで述べられた、鹽川と話をしてそういう事情を聞いたとおつしやつたですけれども。
  346. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。鹽川に聞いたことは事実であります。
  347. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お会いになつての話じやないのでしよう。
  348. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 会つたときか電話だつたか、はつきりしたことは覚えないのであります。
  349. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 鹽川さんは、あなたと電話にしろ面会にしろ、その話に関する限りは会つていないように言つておりますが。
  350. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そうですか、それは鹽川記憶違いじやないですか、それは問い質しておりますから。
  351. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やはり御本人はそう言つているらしいです。
  352. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 本人の記憶違いでしよう。
  353. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方の記憶違いじやないですか。
  354. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) とにかく私は鹽川に聞いた事実はありますからね。
  355. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会つておれば、鹽川さんでも会つていることを会つていないとも言わないし、電話がかかつたら電話がかかつたというでしようから。
  356. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) もう一回お聞きになつたらよく分るでしよう。私はとにかく鹽川に事実聞いたことは間違いありません。
  357. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この際天田君の……
  358. 大野幸一

    ○大野幸一君 味の素事件というのを証人に……
  359. 小林英三

    ○小林英三君 このままこの証人を継続しますか。
  360. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 午前中に終わしてしまいたいと思います。
  361. 小林英三

    ○小林英三君 それから委員長にお願いしておきますが、私達は直ぐ補充訊問に移りたいと思つているのですが、委員長の問がくぎりがないので人に奪 われてしまう、はつきりして下さい。
  362. 伊藤修

    委員長伊藤修君) はい。
  363. 大野幸一

    ○大野幸一君 味の素事件というものは、厚生省予防衛生研究所の事件が高輪署に検挙されてから発展して、これが警視庁へ移送されて来た事件ですか。
  364. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、そうです。
  365. 大野幸一

    ○大野幸一君 そこでこれはどういうふうに終わつた
  366. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは結局なんでしよう、味の素が最後だつたんじやないかと思いますがね。
  367. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程のあなたの、この事件は相当広範囲といいますか、上の方へ波及することがある、こういうあなたのお考えには私は敬服するのですが、このときに味の素から出た金が二百万円以上だつたというお話つたのですね。
  368. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  369. 大野幸一

    ○大野幸一君 それが全部起訴事実になつておるのですか。
  370. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、確か一部だつたと思つております。
  371. 大野幸一

    ○大野幸一君 厚生省高官にね。
  372. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) はい。
  373. 大野幸一

    ○大野幸一君 齋藤鈴木一緒に会つて、そのときに金銭を贈與した疑があるという話、本件はもうすでに打切りになつておるのでしよう。
  374. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 打切りになつておるのでしよう。
  375. 大野幸一

    ○大野幸一君 高官というのはどなたです。
  376. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それはちよつと言えません。犯罪事実がなかつたということに現在のところなつておりますから。
  377. 大野幸一

    ○大野幸一君 なくつても、捜査関係がないのでしよう。
  378. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは人の名誉の問題じやないかと思います。後から御必要だつたら書面でも書いて……
  379. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうですか。この事件が途中で厚生省関係に波及していなかつたことに対して……
  380. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) え。
  381. 大野幸一

    ○大野幸一君 厚生省のいわゆる高官検挙に至らずして終つたことについて一部で疑問を持つておるのです。これはむしろ発展すべき性質のものであつたが、どうしてこれが発展せずして終つたかということについて疑問を持つておるから聞いたのですがね。
  382. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これはね、一部要するに確か五味竹前小川という三人の事務官が出た。三人の事務官の自供によりますと、私共の最初の感といたしましては、二百二十万という金が僅か三人の余り高くない事務官であれするわけじやない、こういう見込だつたのです。そこで三人の事務官につきまして、使途というものを非常に重要視しておつたわけであります。ところが宗像警部補の報告によりますと、使途は殆ど全部明快になつて来て、要するに上の方と三人の事務官との間に意思の連絡がなかつたということが、宗像警部補取調の結果判明したわけであります。そこで如何せん、上の方へ発展するという私の見通しというものが或る程度誤つてつたということも言えると思うのであります。
  383. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは何年頃の事件です。
  384. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さあ、昭和二十年、ことによると違うかも知れませんが、記憶がぼんやりしておるからそれは二十二年頃じやなかつたかと思います。
  385. 大野幸一

    ○大野幸一君 ところで高官に対する嫌疑のときには相当やりにくいのじやありませんか。
  386. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことはありません。むしろそつちの方がやりいいでしよう。
  387. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから前に戻りますがね、手柴課長が、五万円の寄附については、間に合つておると言わつてつたというのですね。
  388. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういう話を聞きました。
  389. 大野幸一

    ○大野幸一君 併しあの頃捜査室というものは相当幾らでも要るので、間にあつておるからと言つて断わつたのじやない、手柴課長としてはこれは佐藤から受取ることが危いと、こう見られたのじやありませんか。
  390. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さ、その点はよく私分りませんです。
  391. 大野幸一

    ○大野幸一君 それからもう一つ、一体あなた方事件をやつておいでになると、どういう人が事件に関してお願いに行くでしようか。例えば各種の議員とか、或いは又警視庁を退職された人とか、警察の後援会とか協力会、弁護士は別として、こういう人が行くものでしようね。
  392. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうですね、これも一概には言えないと思いますがね。家族の人が来ることもありますし、知人の紹介で来る人もありますし。
  393. 大野幸一

    ○大野幸一君 追放者であつて弁護士という人は、普通は追放者は行かれないわけでしよう、官庁には。それが一方には弁護士の資格があると行かれるわけですね。
  394. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  395. 大野幸一

    ○大野幸一君 そういう場合に行つておることがありますか。
  396. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 追放者で弁護士……
  397. 大野幸一

    ○大野幸一君 追放者で……
  398. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 追放者で弁護士というとどういう人達が追放になつておるかということは……
  399. 大野幸一

    ○大野幸一君 分らない……
  400. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 分らないのではつきりしたことは言えないと思います。
  401. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは委員外の天田君の発言を許すことに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  402. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは天田君。
  403. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 若し重複しております質問がありましたら委員長から御注意を願いします。  吉武さんは、昭和二十一年の九月に、谷中の添島署長の紹介で谷中清水町一番地の田代英一という人の家に同居されたと思つておりますが、その通りですか。
  404. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  405. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 爾来二十三年の十二月十九日に、現在おられる半蔵門の官舎にお越しになつたと思つておりますが、その通りですか。
  406. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 間違いありません。
  407. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 二十二年の六月頃、捜査二課の二係長になつて、二十五年の一月まで在職されたと記憶しておりますが……
  408. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 二十二年の、いや二十三年……、そうかな、二十二年の……、そうです、三月になりまして、二十四年の十二月……
  409. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) え……
  410. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 二年に、ちよつと三月足らず、昨年の十二月までいたわけであります。
  411. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十二年の三月六日でしよう。
  412. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。二十三年の三月六日です。
  413. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ……に発令していますね。
  414. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。
  415. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 田代方におられますときに、同じ二階に外園という現在中学の先生をしている人が同じように夫婦でおられたことは御承知でしようね。
  416. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 二階ではありません。二階は私が借りておりまして、外園という人は下だつたと思います。
  417. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 当時やはり下の離れ等に竹内とか吉岡という諸君がおつたのは御承知でしようね。
  418. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、吉岡という人は知つています。
  419. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) そこへ先程お話に出ました折田さんですか、当時はきつと鑑識課員ではなかつたかと思つておりますが、現在第一方面の観察室におる方、それから日野さん等がしばしばお訪ねになりましたね。
  420. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ときどき来ておつたでしよう。
  421. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 本員は折田氏にお眼にかかつておるのですから……
  422. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 確か来たことはあります。
  423. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それから当時あなたが、今考えて見れば、佐藤氏のダッチブラザーズの自動車に乗つてお帰りになつたと思いますが、そういうことはお認めになりますね。
  424. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、それは全然ありません。
  425. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 私、ダッチ自動車は珍らしいので私記憶しているのですが、全然使つた覚えはございませんか。
  426. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 佐藤君のですか。
  427. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) ええ。
  428. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然ありません。
  429. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) ではあなたが乗つてお帰りになつた自動車はどなたのですか。
  430. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) あれは私のです。役所で、私の所ではその当時は一台しか持ちませんでしたから、ある場合係の車です。ダッチじやないですね。
  431. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 質問を変えますが、佐藤さんはあなたの所へ来られたことがある筈なんですが、それはお認めになりますか。
  432. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私の所へですか。
  433. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) ええ。
  434. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私を訪ねてですか。
  435. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) ええ。
  436. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことはありませんね。
  437. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) これは私自身が田代氏を知つてつて、たびたび行きましたために、実はこういう事件が起きるというのは勿論その当時知らなかつたために大分記憶が薄れておるんですが、えらい立派な自動車が来ているということで、一体だれがここの家へ来るのかというような話で、あれは佐藤さんというブルジョアが来るのだという話を聞いた記憶を持つているので、そういうことを伺つているんです。
  438. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは何かの間違いでしよう。絶対ありません。私の家へ来たことは、佐藤君が、一回もない筈です。
  439. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) では質問を変えますが、当時警視庁ではしばしばパンなどの配給がありましたな。
  440. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) しばしば、何かこの五井産業事件関係……
  441. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 関係ありません。ありませんけれども、あなたの交友関係について私は聞いておるので、委員外の発言でありますので、全然外の方がお聞きにならないだろう点を聞いておる。
  442. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) しばしばパンの配給……毎日のパンの配給というのは食券で大体パンが多かつたように記憶しておりますがね。
  443. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) あなたの所では非常に食糧が余つて麦などの配給は田代君に譲つてつたようですが、それはあなた御承知ですね。
  444. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことは知りませんですな。
  445. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 私はあなたに配給されて来たというパンを頂戴したこともあるし、警視庁という所は非常に食糧が豊富な所で、僕の所などは田舎に大きな百姓を兄貴がしておるけれども食糧が足らないであなたの所から分けて貰つておるのだということをきいたことがあるわけです。
  446. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは何かの間違いでしよう。
  447. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 間違いではありません。今でも私は田代君と懇意にしておりますし、あなたの兄さんにもお目にかかつております。
  448. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、どうもそいつは困りますな、そういうことは私は全然……
  449. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) あなたが御存じないならそれでいいのです。奥さんはその通りお認めになります。
  450. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは困ります。私の所ではそういう生活はしておりません。今でも御覽になれば分りますように、一応家の中を見て頂けばいいのです。
  451. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) まあいいです、別に家庭内のことですから。警視庁内がそういう所であるかどうかということを立証されるだろうと思つてお聞きしておるのです。
  452. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然違います。
  453. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) あなたが、折田、日野さん等が来られて、又外の人が或いは来ておるかどうか私は知りませんが、折田さんなどはやはり向うはお忘れになつておるかも知れないが、私は当時顔を見てそれで多少知つておるわけですが、しよつちう飲食されて非常に賑やかに生活されて、まあ普通のなんで言えば非常に派手な生活であつた、こういう記憶なんですが、ちよちよいそれら仲間といいますか、友だちといいますか、或いは同僚といいますか、そういう人たちとしよつちう酒を飲み歩いて、いわゆる派手な生活をされておつた記憶しておりますが、それはお認めになりますか。
  454. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) とにかくそういう問に対しましては私の家庭を一応家の中に入つて見て頂きたい。それ以上お答えできません。
  455. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それは当時、要するに非常に公務員のベースが低い当時において、とにかくそういう生活ができたということは、一つの役所内における何かがあるんではないかと、非常に一面無礼な質問ではありますけれども、そういうことは要するに考えられるわけです。
  456. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私に言わせますると極めて無礼な質問だと思います。
  457. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それで、ただそれだけでは一つの無礼なようでありますが、田代氏の所で聞くに、あなたの田舎の兄さんという人は非常に理解があつて非常に送金があるのだ、こういうことをちらつと言つたことがあるわけなんです。そういう特別な親戚における御援助非常に長い期間お受けになつてつたわけですか。
  458. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は今日は五井産業の事件証人として出ておりますので、そういう問題については後で一つお聞き願いたいと思います。
  459. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 併しですね、当時佐藤氏が来たということを言つておるのでありますし、そうした生活上の派手さということもなんら関連があるであろうという観点から私は質問しておるのでありまして……
  460. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 若し佐藤が私の家に来たことがあるということをおつしやれば、それは何かの間違いか或いは聞き違いではないかと思います。
  461. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それは……
  462. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 ちよつと議事進行についてどうもこれはよい質問でありますが、今まで佐藤君をよく呼んで聞いておるのですが、佐藤さんは証人の家へ行つたということは一言も言つておらないように思いますが、今委員外の天田君が行つたというのは、何かここで佐藤君の証言を中心として御訊問でしようか、どうでしようか。何かの話じやないでしようか、どうでしようか。
  463. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 委員諸君に申上げますが、これはではないので、これは或る関係がありまして、これは小林委員なども、私がその人の名前を挙げれば御承知の人でありますけれども、その人が小石川におりました当時に、田代という人が近くにおつたが、戰災に会いまして上野に移つた。ときたまたま議員宿舎もなかつた当時でありますし、そういう関係で私は家を借りに行つた。そこで今証人に来られております吉武氏がおられるために、お空きになつたら貸せる、こういうことから私はしばしば行つた。そこで今言うような話も聞いておるのです。御了解願えましようか。(「異議なし」と呼ぶ者あり)それでその自動車が非常に立派なものがきておるので、一体えらい立派なものを置いてあるな、これが、田代氏がそういう質問を発したというのは田代氏みずからがタクシー業であつた、こういうことから彼が手に入れて再び商売をする緒口となるかどうかというようなことも、雑談にはやはり聞いたわけなんです。ところがそれは佐藤さんという友人の人が、その人が乘つて来るのだ、こういう話を聞いたからです。
  464. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 証人に対する質問を御継続願います。
  465. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) よいですか。そういうことでとにかくあなたにとつては全く覚えがない或いは……
  466. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は覚えがないとは申しません。絶対にありません。
  467. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) だから覚えがないのでしよう。
  468. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 覚えがないのではありません。絶対にないことは確実です。佐藤氏が訪ねて来たり、佐藤氏の車を私が使用したということは覚えがないというのではなく、絶対にないということであります。
  469. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それですから、私は質問を変えて、御無礼であるかないかはあとから聞かなければ分らんのであつて、私の言うのはだから……
  470. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 結局……
  471. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 今私が申したような疑惑の点でなしに、そうした家庭的な温かい送金等があつたために……。あるのかどうかということをお聞きしておるのです。
  472. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、私は送金もそうたびたび受けておるというわけでもありません。それでそういう余裕はありません。従つてあなたが言われるようなそういう派手な生活というものはやつておりません。ただ酒はときどき飲みます。
  473. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それは私が訪ねて行つたときに、たまたまそういう場面にぶつかつたからお聞きするのであつて、これは一つ聞くからあなたは無礼だと言うけれども、そういう……
  474. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全般の話としては……
  475. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) よいですか。ちよつと私の発言中ですから……田代夫人が、これは女のことですからどうやつたつて多少男より口が軽いわけです。その婦人の話に、あなたの奥さんから聞いたいことによれば、今言つたような家庭が非常に円満であつて、そこから送金があるのだという話を僕はちらつと聞いたことがあるから聞いておるのです。一方的に考えては困る。
  476. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは違います。
  477. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) そういうこともない。そうしますと、これはまあ警視庁のえらい人なんだろうけれども、ちよちよいそうして友達を呼んで飲む。普通酒が手に入らない時勢に、ということがこれ又雑談の中に出るのは当然なんで、当時非常に我々としても食糧に困つておる当時であるのでありますから、そういう話をしたら、今言つたようなことが出た。それから何しろ当時兵隊から帰つて来られて非常にお困りのようだという話もあり、その後ずつとたつて、今度はあなたがお越しになつたのが、確か二十三年の十二月の十九日だと記憶していますが、或いは記憶が間違いかも知れません。たまたま私がやはりそのときも訪ねて行つたわけなんです。ところが非常に沢山のお持物で、実は当時の公務員の生活から見ますると、極めて豊かな生活だ、こういうことを感じたわけなんです。あなたはこの間に相当多量の品物をお買いになつたと思いますけれども、それらは家庭からの御送金などというような関係ではないとおつしやるわけです。
  478. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) だから私の所へ、そういう品物があるかどうかということを見て頂けば分ります。
  479. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) それは見に行けば分るけれども、要するに……
  480. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私の所はそういうふうに言われるのが変な話でございますが、満足な座布団一つもないような、或いはおん袍一つ満足なものはないような生活です。
  481. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 質問を変えます。あなたのお宅は奥さんに女のお子さんが二人、男のお子さんが一人でしたね。この上のお孃さんが、今の年齢ではどうだか知りませんけれども、今までの数え年からいいますと十七、八ですか。
  482. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  483. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 確かこのお孃さんだと思つておりますが、移つたらピアノを買つて頂くのだ。(笑声)これは子どもの要するに希望というようなことでおつしやつたかも知れませんけれども、これも又私に取つてはえらい派手な生活の一つだというのが、今記憶に実は蘇つて来ておるのです。非常に惠まれておるということを羨ましそうに田代夫人が言われたのを知つております。そういう経済的な豊かな状態であつたと思いますが、当時友達間にいたしましても、しばしば酒を飲みに来るというようなことができた状況におかれておつたわけです。廻りくどい話でありますが。
  484. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 豊かな状況ではありません。
  485. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) そうすると今の私が引例したようなことは単なる子供が希望的に話した、こういう程度だということですね。
  486. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) まあそうでしよう、恐らく。
  487. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 実はこれは何げなしにこの間聞いたのですが、おいでになつた当時はさしたることでないけれども、聞いておる内に洋箪笥から、テーブルから、茶箪笥から、三つ組の箪笥から、ベビー箪笥に至るまで皆買つたという話をちよつとこの間聞いたわけですけれども、それ程そういうものをお買求めになつたということは全くないと、こう……
  488. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、その中に買つた品物もあります。
  489. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 今私が申上げたのはお買いになつたのですか。
  490. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうですね、箪笥を一棹買つたでしよう。それからなんですか、茶箪笥ですが、小さいのも一つつております。
  491. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) そうすると、これは僕も自動車の立派なのがあるのは自分の目で見のでありますが、佐藤さんが入るところを見たわけではない。これは要するに夫人同士の話で聞いたということを、私が又聞きなんであります。従つてこのことは本委員会で、そうした生活上の特に変化というようなことについては、五井産業と関係あるか否やの問題については、これは最後的には田代夫人を喚ぶか、或いはあなたの夫人を喚んで貰うかという以外に途がないわけなんであります。あなたとしては、今私がいろいろ申上げたことは全部否定する、最後の物を買つたということは別としまして否定する……
  492. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 佐藤昇関係でございますね。
  493. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 佐藤昇氏に関する限りですね、否定する、こういうことです……
  494. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 否定します。これは捜査二課で、この間のラジオ放送によると、私のことについて二週間も調べられた、ここでこういう証言をしたらしいのですが、捜査二課が私と佐藤との結び付きについて、それ程專門的な全機能と、それから全努力をかけてやつた以上は、私と佐藤との関係はつきり分つておるわけです。
  495. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) お聞きの通りであります。然るべく……
  496. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 議事進行につきまして……これからの証人を誰を喚べ、彼を喚べ、ということを今委員外議員から、御注文がありましたが、その点は私も結構でありまするが、これは只今いろいろ御質問になつたように、非常に過去の時代の事実をメモか何か知りませんが、よく知つておられるようでありますので、そういう工合に天田君が知つておられるといたしますると、過去に知り得たる事実を陳述して貰うということを、証人の形でやると却つて明らかになると思うのです。却つてそれが、事実を知つている人が又聞くという形よりは、証人のような形で、将来進行状況によつて又喚んだ方が、尚明らかになるのじやないかと思いますから……
  497. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 委員外発言でありますから、私別に何も注文しているのじやありません。委員長並びに委員の方でお決め願うのであつて……
  498. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 非常に私の家財道具のことについてあれらしいのでございますが、家財道具というものは御覽になれば分るほど何もありませんですが、ただ前の絹川刑事部長がこちらに家を持つておりまして、野方の管内に倉庫を一つ借りまして、そうして刑事部長から、兵庫県の警察署にいたときに、家財道具を相当置いて行つたわけであります。今の東京で生活するつもりで置いて行つたわけであります。それが向うでパージになりまして、そうしてこちらから必要なものだけ向うへ持つてつて、こちらに家財道具というものを置いておつたわけでありますが、こち らの倉庫を開けなくちやならん、こういうわけで、私の方に御苦労だがどうか預かつてくれと言われて、これの中で預かつている品物は相当あります。この点一つ……
  499. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) だからお怒りにならんでお聞きなさいと言つている。
  500. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 非常に何ですね、質問が……
  501. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 生活に急に変化があれば疑惑を持つのが当然なんですよ。
  502. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 紳士的なあれじやないと思う。それを佐藤事件として結び付けられるということは、つまり非紳士的じやないかと思います。
  503. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 非紳士的でも何でも、こういう当然生活に急激な変化があれば、一応疑いを持つのが当り前なんです。私は親切に、あなたの奥さんを通じて田代夫人が言われた……
  504. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 議論はあとにして質問の要点を……
  505. 天田勝正

    ○委員外議員(天田勝正君) 食つてかかるから言うだけのことなんであります。
  506. 小林英三

    ○小林英三君 証人に六、七件お伺いします。大体この五井産業事件の問題につきましては、今までいろいろの証人を呼んで、私共が話をしたところによりますと、これは五井産業事件の起つた端緒というものが非常に微妙な点があると思つております。  先ず第一番にお伺いしたいと思いますことは、松本捜査第二課長、この松本捜査第二課長証人との間におきまして、相当感情の対立があつたというように考えられる点が、いろいろな証人の訊問からあるのです。それは先程委員長証人に対する質問の中で、今の味の素事件につきまして、松本課長はこれを非拘束のままで喚問しよう、それから証人はいろいろな関係から、今述べられましたようないろいろな関係からして、これを拘束して召喚しようというようないろいろな話が委員長との答弁の中にあつたのです。こういうような味の素事件のいわゆる鈴木恭二の拘束、非拘束という問題のみによつて、松本捜査第二課長証人との間に感情の対立が起つたのですか。或いはその外にもいろいろ感情の対立が、あつたかどうか知りませんが、私共あつたように考えるのですが、その点についてどうです。
  507. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は感情の対立というものはないと思うのであります。私は飽くまでも受動的な立場に立つておりまして、この事件全部を通じて私は考えておることは、松本課長が全面的に私を排除しようという一方的な感情に駆られてやられた、こういうふうに考えるわけです。それで今の御質問の味の素事件の以前にどういうことがあつたかという御質問なんでありますが、これはいろいろ公務の問題につきましては、私は率直に自分の所信を披瀝してそうして課長意見を具申する、或いは又反省を求める、こういう態度に始終出て来たわけなのであります。それを率直に受入れて頂けなかつたのじやないかと思います。そういうことが度重なつて私に対する松本課長の感情というものは相当悪化しておつたのじやないか、こういうふうに考えられるわけなんであります。
  508. 小林英三

    ○小林英三君 そうすると、今のこういうことが正しいということについては課長に遠慮なく証人はおつしやつておられたわけですね。それと同じようなことが今の下山事件に対するいわゆる他殺説或いは自殺説というような問題ついても、課長証人との間に捜査上の意見の対立があつたのですか。
  509. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 下山事件課長は、御承知かも知れませんが、ときどき意見の変る方でありまして、自殺の方の話を聞かれると自殺に傾き、他殺の方の話を聞くとそれも尤もだ、こういうような、ときどき変る方であります。私といたしましては、いろいろな現場その他いろいろな経過から絶対他殺説を取つて始終動かなかつたのです。その間の具体的な個々の捜査に関しまして相当突込んだ意見というものは具申いたしまして、まあこれは入れられなかつたというようのことも二、三あつたわけであります。その間にやはり若干の私に対する感情も或いはあつたと思うのであります。
  510. 小林英三

    ○小林英三君 それから今もあなたの証言の中にちよつとあつたのですが、五井産業事件捜査の常道から行きますと、これは課長が、係長であつた証人にこれを命令してやる、そしてやらすということが当然なんですが、今までのいろんな証人お話によりますというと、当時直接の自分の係長であるから直接あなたに相談してやらなくちやならんものが、五井産業事件だけは証人をオミットして、これが宗像証人に直接やらした、こういうように我々は分つて来たんですけれども、それはどういうわけであなたをオミットして宗像主任だけにやらしたということなんでしようか。
  511. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) もう私の考えとすれば、私が佐藤昇と何らかの醜関係があるというようなふうに考えられて私をオミットした、こういうふうに見るより外仕方がないわけであります。併しながら我々の捜査の常識なり、或いは捜査の何と申しますか、礼儀と申しますか、或いは秩序というものから考えますと、私の部下をして私を通ぜずに、或いは又更にその当時からそういう気持があつたとするならば、私の尻を洗わせるというようなことは、これは我々の今までの捜査の常識、或いは秩序の維持、或いは又更に礼儀というものと極めて著しくかけ離れたやり方である、こういうふうに考えるわけであります。
  512. 小林英三

    ○小林英三君 それからこの間佐藤証人を呼びましたときに、今ちよつとあなたの話にもありましたけれども、私が佐藤証人に聞いた中に、五十日間の勾留中において、詐欺事件のことは本当にぽつちりばかりであつて、その五十日間の取調べ中を通じまして、証人に対する取調べが二週間も続いておつた。それから日野前中野署長に対する取調日野と何か関係があつたか、吉武と何か関係があつたかというようなことが一週間も通して取調をした。それから又その外の証人から聞き及んだことから総合して見ますというと、この五井産業事件の起りというものは、松本捜査第二課長が自分と感情的に対立しているところの人々、或いはこれをオミットしてやろうというような人々、こういうものをオミットするために、そういう意図からたまたまこれらの人々が関係があると見られておつたいわゆる佐藤をこれを問題にして、いわゆる詐欺事件、或いは金をばら撒いたという事件について佐藤を引上げた、そうしてその取調べ中においては殆どそれらの取調べに対して終始しておつたということなんですが、松本課長五井産業事件のその問題については、証人吉武さん、それから日野前中野署長、それから土田、折田、こういう人達をいろいろな関係からして、意見の対立からしてオミットしよう、葬つてしまおう、こういう目的を以て最初から五井産業事件捜査を開始した。それがいろいろな下らんというか、いろいろな天下の誤解を招くような問題にまで発展して来た、こういうように考えられる節が沢山ありますが、この点に対してはどうでしようか。
  513. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は別に感情の対立ということは私の方では考えておらないのであります。今度の問題はこういうケースを辿つてこういう結果になつて来たわけなんであります。併しながら私も若し感情の対立ということになれば、私も四百五十人の現在の部下の中に相当数の刑事を擁しておるわけであります。従つてそういつた対立的な闘争だということになつて来まするならば、それは私でも部下の刑事を使つて松本課長なりの不正を探すというような方法を以て報いることができる立場におるわけであります。併しながら私共は飽くまでも今度は最後まで頭を下げて、そうして敵……敵と申しますか、松本課長が打つままに任しておつたわけであります。従いましてここに対立的な空気というものは全然ないわけであります。私は少くとも一方的に松本課長のなさるるがままに、今まであらゆる名誉を傷付けられ、或いは身辺を捜査されても何らこれに対して対抗す る手段というものを講じて来ていないわけであります。この点御承知願いたい。同時に今度の問題は、まあ私並びに今申しました日野、土田予備隊長、或いは折田、こういう連中に対するところの松本課長の公の意見の相違を私憤といたしまして、感情のみを以てそうして捜査権を私した、公の捜査権を私したというふうに考える以外に私といたしましては考え方はないと思います。御承知のようにそういうことは非常に常識的には考えられないことでありますが、併しながら苟くも私の部下を以て私の非違を摘発させるというようなことは、これは凡そ普通の常識なり或いは官吏の道徳、役人の道徳というものを持つておる人には私はできないんじやないかと思います。若しこれが私をして逆の立場に立たしめるならば、先ず第一に私自身を呼んで、頭から惡いところがあれば是正すべきであり、或いに叱正すべきだと思います。更に又それでもいかんということになれば外に係もあるわけであります。私の第二係以外に係もあるわけであります。その係を通じてやるというような方法もあるのであります。それを敢て私の部下をして私の非違を摘発せしめるという、警視庁の従来の秩序だとか道徳だとかいうものを全然無視したやり方をやつて来られたわけであります。この点につきましては、松本課長が本当の常軌を逸した非常識な気持で調べ、私の感情を満足させるのに捜査権を私したと断ずるより私としては考え方がないと思います。
  514. 小林英三

    ○小林英三君 今の宗像主任がいろいろそういう取調をしておる最中に、捜査第二課ではやはりあなたも毎日同じ所におられたわけでありますか。
  515. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうであります。
  516. 小林英三

    ○小林英三君 それであなたを除外してそういう取調をやつておてたんですか。
  517. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  518. 小林英三

    ○小林英三君 そうすると、あなた自身では毎日感知できておりましたか。
  519. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) まあ或る程度は分つておりました。
  520. 小林英三

    ○小林英三君 そうすると宗像主任は松本捜査第二課長と毎日連絡をして、二週間の間あなたを調べておつたわけですね。
  521. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私じやなくて、直接には佐藤の……
  522. 小林英三

    ○小林英三君 佐藤についてあなたを調べさせておつたわけですか。
  523. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 捜査のことについては、具体的な話は申上げられないと思いますが……
  524. 小林英三

    ○小林英三君 それから我々が法務委員として五井産業事件を取扱つておる中に、一番私共が普通に考えると新聞の発表でありますが、これはそもそもの一番最初新聞に出たことは今日尚疑問に考えております。ところが四月の四日の夕刊、確か五つばかり出ておると思います。それから五日の朝刊ですか、こういう問題に対してどうも可なり細かいことが、これは嘘も本当もありましよう、或いは想像されたことも書いてありますが、新聞に出ておる。非常に我々はこれを遺憾に考えておるのであります。これは捜査第二課から出たんだか、どこから出たんだか分りませんけれども、従来の捜査第二課が取扱つておられるような事件につきまして、事件捜査中にこの種の内容が新聞その他に発表されたというようなことが従来あつたでしようか、外の事件で……
  525. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 従来ありませんでしたね。こういう形式なり、こういう恰好で外部に漏れるというようなことは従来ちよつと記憶はありませんですね。
  526. 小林英三

    ○小林英三君 どうでしよう、あなたの証人のお考えでよいですが、どういう方面からこの問題が漏れたという見当が付きませんか。
  527. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) こいつはちよつと見当が付きません。これはいずれ部内だとするならば、又外の係で調査すべきだと思います。部内、部外ということは分りません。
  528. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二、三、伺います。あなたが下山事件について誰か適当な人を手伝つて貰いたいと思うが、誰かないだろうかということを日野氏に相談をいたしたのはいつ頃ですか。
  529. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 下山事件が起きてから四、五日経つてからと思います。
  530. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると凡そいつ頃ですか。
  531. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 七月十日前後でしよう。
  532. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 このあなたの捜査上の手伝いをさせるという趣旨はどういうことを手伝いをして貰いたいということなんですか。
  533. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それはちよつと先にも委員長に申上げましたように、具体的な内容はちよつとここでは現在まだ下山事件検察庁でも捜査第二課でも捜査中であろうと思います。その方の関係もありますから、ちよつとお話申上げにくいと思います。
  534. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 併しどういうことを手伝つて貰うということは……
  535. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは先程申上げましたように、情報蒐集であると思います。
  536. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで日野氏の推挙のよつて佐藤氏を煩わすことになつたのですね。
  537. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。
  538. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 佐藤氏は一ヶ月ばかり手伝つて呉れたということですが、どういう手伝いをするのです、毎日来るのですか。
  539. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 毎日は来ません。先にも話しましたように隔日のときもあれば、三日置きのこともあり、四日置きのこともあります。
  540. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 各所で見聞した情報をあなたのところに通知して来るだけですか。
  541. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それが主だつたように記憶しております。外にもありましたが……
  542. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたからああいうことを調査して呉れろ、こういうことを調査して呉れと言われることもあるのですな。
  543. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうこともあります。それは佐藤自身が調査に行くのではなくして、佐藤の知人を通じてですね。
  544. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 佐藤自身が行くのではなくして、佐藤の部下ですかね、佐藤の知人を煩わしてそうして各方面の調査の情報を集める、こういう趣旨ですね。
  545. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  546. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 民間人を使うということは警視庁でやはり重要な事件とか、そういう場合には慣例としてやつてつたのですか。
  547. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 民間人で協力して貰える方には十分協力して頂いております。
  548. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうことはやはりあるのですね。
  549. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは強盗の事件でも何でも一生懸命で協力して呉れる人には協力を頂いております。
  550. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それで佐藤君に手伝つて貰うといううのは、情報を集めるばかりでなく、その他やはり資金面等についても援助して貰うというようなこともあなたは差支ないと考えておつたのですか。
  551. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そんなことは差支ないとは考えておりません。ただ公式に刑事部長捜査費として受領して、刑事部長が受領して私のところに刑事部長の名前で捜査費として貰うことならば差支ないと、私はこういうふうに考えております。
  552. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 公式にいうと、公式に民間人から捜査費に使つて呉れということで寄附申出があつたことですね。そういうこともやはり時折あるのですか。
  553. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 警視庁にある筈です。この間の佐藤調書なんかの話でも帝銀事件のときなんかも援助したという話をしております。
  554. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの扱われた事件及び知つた事件で以てそういうふうに公式のやはり金の援助を受けて、犯罪捜査に使われたふうな先例がありますか。
  555. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 手続をしたのはあります。
  556. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 最近ですか。
  557. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 最近、下山事件です。
  558. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 下山事件佐藤以外のことですか。
  559. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  560. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 佐藤の五万円というのはあなたからですか、向うから申出があつたのですか。
  561. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 向うからだつたと思います。
  562. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 誰のところに申出がありましたか。
  563. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私のところに申出がありました。
  564. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたはそれを誰に指揮を仰ぎましたか。
  565. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことは総務課の方で取扱つておるらしいので、そこで総務課の方に話をして総務課長から刑事部長承認を得て正式な寄附として取扱つた。こういう話を受けました。
  566. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それはやはり松本課長なんかは相談に與つていないのですか。
  567. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さあ、それは手柴総務課長から話があつたかどうかという問題ですが、私からはしてなかつたと思います。
  568. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 当時松本課長はあなたの直接の上司ですか。
  569. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。
  570. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういう民間からの寄附金などの所管はやはり総務課に属するのですか。
  571. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 二課でも差支えないだろうと思います。二課の場合も総務課の場合もあるだろうと思います。
  572. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それはあなたから松本課長に、佐藤の方から援助するという申出があつたということについて、あなたから言わなかつたのですか。
  573. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さあ、そこのところは話をしたかしなかつたかということについては記憶ありません。どうせ刑事部長から話をするということになれば、これは下山事件ですから、私のところだけでなく、捜査一課も下山事件をやつておるので、それで両方の課に跨る場合はやはり一応総務課を通ずるのが普通の行き方だろうと思います。
  574. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 松本課長の手によつて公式に民間人から捜査費用の援助を受けたというような先例は知りませんか。
  575. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 確かあります。
  576. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの知る範囲で何件ありますか。
  577. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 一件だつた記憶します。
  578. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どの事件ですか。
  579. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 下山事件です。
  580. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 佐藤以外にですね。誰ですか。
  581. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 確か鉄道関係の人だつたと思います。松本課長が受けて領收書を出しておるわけであります。最初私の部下に話があつて、その部下を私松本課長のところにやつて松本課長に会つて頂いた筈だと思います。私の方からも松本課長にこういう話が来ておるが、どうしましようという話をして承認を受けております。
  582. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうした民間人から寄附申出があつたときには、その寄附者のやはり経歴、素行、行状などについて勿論調べましようね。
  583. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さあ、そんなに深くは調べないと思います。それは寄附を受ける方で、直接受けるところで調べるわけなんです。
  584. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 併し警察権力のありますところに出金をするには往々にして心して出金する場合が多いのですね。従つてこれは十二分の注意を拂つて、若しもためにせんがための寄附であるとするならばいけませんわね。だからそんな簡単なことじやないのですよ。やはり相当調べて、そうしてこの人ならば貰つて差支ない人だということの見極めがつかなければ……
  585. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういう点は相当真劍に考えているのでしよう。
  586. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いけませんね。あなたは佐藤がその前か後ですか知らんが、何かやはり闇事件か何かで以て若干の間拘束を受けておつたことのあるというようなことは知らなかつたのですか。
  587. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然知りませんですね。
  588. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何か嫌疑を受けて拘束されたとか。
  589. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ああ、昭和電工の関係であれを受けておつたというのは私は知つております。これは新聞でよく拜見しております。
  590. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなた方の当時見ておつた佐藤としては、何ら非難さるべきものでなく、極めて正しい人だというふうに考えておつたわけですね。
  591. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私もそう大しい惡い男じやないと思つておりましたですね。だけどまあはつきり分らないから、寄附申出があつた場合には一課と二課とに下山事件というものは跨つておることだから、一応総務課の方ではつきりと調査して受けていいならば受けて呉れるだろうし、受けて惡いというならば受けないだろうし、そういうことは総務課に任しておつたのです。
  592. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 結局調べた結果、これはやはり受けるべきものにあらずということになつたのですか。
  593. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは私はよく知りません。
  594. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 受けたのですか。
  595. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 受けないです。
  596. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どういうわけで。
  597. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは分りません、総務課の方で、警務部長と総務課長で決定したことです。
  598. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 併し何ら差支ない人ならば幾ら受けても差支ないと、さつきの御意見でしたね。
  599. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) だから差支あるないということは、現実に寄附を受けるところのものが一応考えるわけなんですね。だからその場合は警務部長なり総務部長なりが一応聞いて、恐らく今話をされた何かあんな事件を起こしたとか何とかいうことが分つたのかも知れません。その点は、私はよく分りません。
  600. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの佐藤を見たる見方と、それから総務課の方で見たる佐藤とは多少事情が違つたところから拒絶したわけですね。
  601. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは私は拒絶した理由というものは分りませんですよ、分りませんが、若しそうだとするならば、それは見方が違つたかも知れない。
  602. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 先程松本課長がこの五井産業を調べるに当つてあなたをオミットして、宗像某に命じて調べることになつたということですね。それはあなたとしては甚だ平かならない気持であつたわけですね、ところが佐藤とあなたと今のようなふうに相当にやはり交際があることになつていますね、この捜査を助けて呉れたり何かしましてね。この佐藤五井産業事件について嫌疑の中心となるというような場合には、あなたが若しこの捜査に当るということになつたならばこれはいけませんわね。あなたが若し五井産業の捜査の指揮をするということになれば、少くとも外界の人からあなたの行動に対して、誰かやはり瓜田に履を納れぬ……
  603. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私自身については、佐藤の問題については何らありませんよ。
  604. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 これは佐藤の問題を、五井産業の問題を他の者にやらせるということは私はむしろ或いは適当じやないかと思うのです。あなた自身はこういうふうな場合にはあなた自身から回避すべきものだと思うのですが、どうです。
  605. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは回避しております。ただ私は外に第一係という、同じことをする係があるのです。一係長というのがあるわけです。その方の係りを通じてもできるわけです。ただ私の直接の部下を使つて私の関係しておると思われるような事件をやらせるというようなところに私は常識を外れていると思うのです。
  606. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 宗像というのはあなたの直接の部下ですか。
  607. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。やはり委員の方々でも十分お分りだろうと思うが、自分の祕書を通じてそうして委員の方々の不正をあばかせるというようなことがあつたら、これはもう怪しからん話だと思うのです。況んや警視庁のごとき大きな組織体の秩序と規律というものを以て運用しておる所におきましては、尚更こういうことは回避すべきものじやないかと私は考えます。この冷静なる第三者といたしまして、第一係というものがちやんと現存しておるわけです。
  608. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたはこの下山事件捜査をされておりまするときには、もうすでに松本課長とはやはり感情的に面白くなかつたですか。
  609. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 松本課長はそういうふうな感 情があつたかも知れません。私はこれは上司でありますから、仮に松本課長がどういうふうに思われておろうが、私といたしましては最後まで補佐する任務を持つておるわけです。
  610. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 他の者からはやはり両者の間がじつくり行つてなかつたというふうに見られておることがこの下山事件のときには……
  611. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さあ他の者……まあ他の者はどういうふうに言つておるかということは具体的に聞いておりませんが……
  612. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたと松本課長と感情的に面白くないようになつたのは、やはりその以前に調べた例の味の素事件のときなどから……
  613. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その事件じやありません。それは下山事件の方が前です。下山事件はそのあとも続いておるが……
  614. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 昨年の四月じやなかつたですか。
  615. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは八月です。同じ……まあ前後して起きたわけであります。
  616. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 六月じやないですか。
  617. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 味の素事件ですか、これは味の素事件が起きたのは七月か八月だと思います。七月中旬以後か八月頃だと思います。
  618. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 六月ですよ。最初厚生省の方の汚職事件として捜査を開始されたのは。
  619. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは八月の中旬頃ですから。
  620. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 これはあなたが調べたのですか。
  621. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、私の部下の宗像警部補をして調べさせました。
  622. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたが指揮して。
  623. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございます。
  624. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 もう一つ伺いますが、これはもうあなただけでなく警視庁の犯罪捜査方面を担当しておられる各課共にやはり民間人を捜査に手伝わせるというようなことの慣例は事実あるのですか。
  625. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ありますですね。どういうふうな手伝いの仕方ということにつきましては、私はまだ話をしておりませんから、話をここで私の手伝わせ法というものが同じようなものがあるかどうかということを言われますと、これはちよつと困るわけでありますが、要するに犯罪捜査について民間人の協力を得るということについては、従来も現在もやつております。
  626. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 先程他の委員の方から鈴木恭二が金を送られた厚生省の何某かに対する問題ですね、それは犯罪にならないのであるがためにここで言うことは憚りたいという御意見でしたね。冒頭に委員長からあなたに申されましたごとくに、宣誓の上ここでお尋ねいたしますれば、あなたが尋ねることに対する取捨をなさつては、あなたの誓約にも違うことになります。
  627. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私はそれで委員の方の御了承を得たいと、若し御必要ならば、私後から個人的な書面でも何でも出しますということを申上げて、御承認を得たいと思つてつたわけです。その当時御承認を得たと思つておるのですが……
  628. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 承認はともかくとして、それは考え方としまして、こんなことを言えば何某にどういうふうに響くとか、こういうことを言えばどういう人が迷惑するかということをあなたが考えて、そこで取捨されては、これは宣誓が何のことか分らんです。あなたがここで証言に立つておるということは、正しいことを言つて、我々に正しい判断を與えるということが、今日あなたが証言されることによつて、これが即ち国家のためになる。内緒にやつたり何かすることはよくないから、やはり公然とこういう場所で以てあなたに堂々と宣誓して貰つて証言して頂くことが、これが一番私共の欲するところです。
  629. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ただこの問題は、某高官と言えば、A氏であろうが、B氏であろうが、私としてはこの証言の内容なり精神というものは、全然変りはないと思います。従いまして、その点をここで名を発表しなければどうしてもいかんという場合の某氏であるならば、これは勿論発表しなくちやならんわけです。従いまして、若し私から発表せずに済ませられるものならば、その方の名誉のために済ませたいと、こういうわけであります。
  630. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで伺いますが、この味の素事件のために鈴木氏の当時出されました額は、総額二百万円以上ですか。
  631. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 鈴木氏ではないのです。これは恐らく味の素の会社からだと思つております。百万円、百万円、二十万円と、全部で二百二十万円と、こういうふうに記憶いたしております。合計二百二十万円です。
  632. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 厚生省の官吏ですか。
  633. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや……
  634. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 貰つた方の人は三名ですか。
  635. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 確か三名だつたと思つております。
  636. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 貰つた人であつても、起訴されない人もあるのですか。
  637. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 貰つた人で起訴されない人はないと記憶いたしておりますが、その点の記憶はあやふやですが。
  638. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二百二十万円の金を貰つた人は。
  639. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは分らないのです。私の記憶にないのです。
  640. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 三名とも起訴されておりますか。
  641. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 確か三名されたような気もするし、一名が何か執行猶予になつたような気もしますが、分配の方法とか何とかは、詳細に記憶はないのです。
  642. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 斎藤興一という人ですか。
  643. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 斎藤という苗字は憶えておりますが……
  644. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 田代……
  645. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そつちの三名のことを言われたのですか。
  646. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いや、二百二十万円のことを言つておるのです。
  647. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) どちらも三名だつたと思います。
  648. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 贈つた方も貰つた方も……
  649. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうです。
  650. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その二百二十万円の行き方というものは、どことどこへ行つたのですか。
  651. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは詳しいことは、どれだけがどこへ行つたかどうかということは覚えておりませんが、これは宗像主任に聞いて頂けばよく分かると思います。
  652. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたが記憶されております、先程言われておつた厚生省高官……
  653. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それとは全然別問題です。二百二十万円とは別問題です。別な犯罪がある疑いがあつたのです。だから、それを徹底的に調べて証拠をがつちりと固めておけというのが、私の宗像主任に対する命令だつたのです。
  654. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この味の素事件とは別な事件ですか。
  655. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、味の素事件に関連はしておりますが、要するに二百二十万円とは別問題なのであります。
  656. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、結局それは涜職とか何とかいう問題には根本的にならなかつた問題ですか。
  657. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、ならなかつたのです。
  658. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 金品の授受はあつたのですか。
  659. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 授受も、はつきりと恐らく出て来なかつたわけです。
  660. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 金品の授受ということがはつきりしなかつた……
  661. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) しなかつたわけです。
  662. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二百二十万円の行き方というものは、はつきりしておつたわけですね。
  663. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは大体はつきりしておつたわけです。
  664. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、あなたの先程言いわれておつた厚生省高官という問題は、これは金が一体行つていなかつたのだと、こういうことですね。
  665. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 行つとつたという報告は受けておりませんな。
  666. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 だから、あなたの方で……
  667. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 最初齋藤証言では、事実見たとこういう証言があつたわけなんです。従つてそれがどうもそうだつたらしいというような話があつたわけです。ところが話を聞いて見ると、それは不明確なんで、この齋藤という者をもつと徹底的に調べて、そうしてこれが事実鈴木からその人に行つておるのかどうかということで、齋藤証言を非常に重要視したわけなんです。それで、齋藤を調べるということに重点が注がれるとうな捜査の過程にあつたわけです。そうして鈴木を引張り、鈴木を調べて見て、更に齋藤を調べると、そうしたところがその事件というものは確かになかつたというような報告を私は受けております。
  668. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 確かになかつたならば、名誉にも関せんじやありませんか。
  669. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 関しなければ、尚更その必要はないと思います。
  670. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その必要、不必要は私の方で考えるのですから、あなたの方では言つて欲しいですね。
  671. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ああ、そうですか、それは慶松という薬務局長です。
  672. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この人に幾ら行つておると言つたのですか、その齋藤という人が……
  673. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 確か五万とか三万とかいうような話だつたのでございますが、それくらいの金額らしいという話だつたのです。
  674. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 事実は行つていなかつた……
  675. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 行つていたように聞いておりません。
  676. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この外にはないですか。
  677. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 何がですか。
  678. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 曖昧になつて分らなかつたもの。
  679. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その外にはなかつたような気がしますな。
  680. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 齋藤言つてつたのは……
  681. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その外には気が付かなかつたですな。
  682. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 大分時間も遅くなつたので恐縮なんですが、簡単に数点について伺つて置きたいのですが、すでに証人から証言を得ておるので、重複するかも知れませんが、念のために第一に伺つて置きたいのは、証人は、この佐藤昇という方と金銭の授受はどういうふうになつておりますか。
  683. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 金銭の授受は全然ありません。金銭、物品の授受は絶対にありません。
  684. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 伊藤鑛壽という方は……
  685. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これも金銭、物品の授受はありません。
  686. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから次に伺いたいのは、証人は、宗像警部補という方に向つて、土田という方が、松本課長の言うことを聞く必要がないというふうなことを言われたということを、お聞きになつたことがありますか。
  687. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そういうことは聞いておりませんですね。これは事情を説明申上げましようか。
  688. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、よろしいです。
  689. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 併し、これは誤解があるので、ちよつと私の方から説明をさして頂きたいと思いますが、どうでしようか。
  690. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは簡単にどうぞ。
  691. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは確か私の考えでは、六、七月、或いはそのちよつと前だつたのではないかとも思われるのですが、前に、御承知の豊沢一馬といういわゆる狸御殿の被疑者宗像主任のところでやつてつたのです。私の記憶ではこのときに宗像主任がそれの、逃走中の豊沢の居所が大阪にいるということが分つたのです。それで丁度それを逮捕しに行つたところが、丁度まあ読売新聞にすでに特種記事として豊沢の逃げておるところの写真が出たのです。私はこの問題について宗像が帰つて来るのを……それから豊沢が和歌山に逃げたのをどうにかこうにか捕まえて来たのですが、そのときの特種記事の記者という者が、この間私共のいろいろなあれを書いた読売の記者なんでありますが、これが帰つて来たときに、宗像警部補部屋から洩れなければ洩れない事件なんで、これで私は宗像を呼んで非常に叱責したことがあつた。ところが宗像は非常にしよげておる。意気沮喪しておるというような話を聞いたので、土田予備隊長がまあ宗像を前使つたことがあるので、ひとつ意気消沈しておるそうだから激励してやつて欲しいということを頼んだわけです。ところが漸くして宗像が私のところに来て、いや有難うございました。予備隊長からすつかり話を伺いまして、係長がそれ程私のことを惡く思つていないということについて了解が行きましたというような話をしておりました。まあこのことの話の行き違いじやないかと思いますが、それだとすれば、私の記憶ではそれに恐らく間違いないと思いますが、この間宗像証言にはその当時何か警部試験の話が出た、吉武もお前の警部試験に一生懸命になつてつているんだというような話が出たということを宗像証人も話しておるようでございますが、そうであるとすれば警部試験は六月の五日か六日に施行されております。それから口述試験が七月のやはり上旬に施行されております。まあその当時の話の模様じやないかと思いますが、私が要するにそれをあれしたのは、津田記者と通謀してそしてまああの特種記事を事前に洩らしたんじやないかということで、宗像を非常に叱責したのです。
  692. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、それは今質問したので大体そういう事件があつたということは分りましたが、そうするとそのときに土田という方は宗像警部補に向つて、松本第二課長の言うことを聞く必要はないと、吉武さんつまりあなたです、証人の言うこと、命令だけを聞いておればいいというようなことを言われたようですね。
  693. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ああそうでございますか。私はあとで何かの折りに言つたときに、あれにはよく君の気持というものは話しておつたからという予備隊長の話だつたのです。
  694. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたの証言の中に感情的な対立はない、松本第二課長の方からだけの誤解があつたというような御証言があつたのですが、今のように反対の事実もあるようですね。
  695. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうでございますか、それは私とは全然関係がないことでございます。
  696. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから第二に伺いたいことは、あなたは昨年の十二月五日にこの捜査第二課から上野に御転出になつた、これはどういう理由ですか。
  697. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは理由は分りません。
  698. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは理由を御承知なくて転出されたのですか。
  699. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ、これは私共のあれで、どういう理由で転出するかどうかというようなことはこれはまあ全然分りません。
  700. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そのときに田中総監にお会いになつたことはありませんか。
  701. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 総監に……辞令を貰うときには、いつも総監には挨拶に行くわけですが、そのとき会つたかどうかということは記憶にありません。総監、各部長のところには……
  702. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その前にですね、辞令が出る前に……
  703. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 田中総監ですか。辞令が出る前、私はその日まで辞令の出るのを知らなかつたわけなんですが、その前にですか。
  704. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  705. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) その前に会つたこともあるでしよう、恐らく。
  706. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その問題についてはない……
  707. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) どの問題についてですか。
  708. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今あなたの転出するということ……
  709. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや全然ありません。私はその日十時に集まれということであつたが、九時ちよつと前に出勤して、そのとき初めて今日転勤になるのだということを知つたわけです。
  710. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その転勤については、あなたは一応納得されたわけですね。その理由ありとして……
  711. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  712. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その転出には理由ありとして納得されたわけですね。
  713. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 理由とか何とかいう……警視 庁の転出というものは、異動というものは、理由とか何とかいうことは比較的あれしないわけです。
  714. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併し非常に納得できない理由があれば、なぜこういうことをなさるかということを抗議されるとか、或いは聞かれるとか……
  715. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、そういうことはありません。
  716. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 全然……
  717. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや一応あそこに、刑事部長のところには私行きました。これは手柴総務課長が立会だからよくお分りのことだと思いますが、まあどうも私には寝耳に水だつたものですから、どういう理由だろうということを言つたところが、今度は栄転するのだと、こういう話だつたのです。
  718. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからちよつとこれは念のために伺つて置きたいのですが、神田小川町にセノオ・ビルというのがあるのは御承知ですか。
  719. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) セノオ・ビル……知りませんですね。
  720. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 東亜紙業、紙の会社がある。
  721. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 東亜紙業……何という人が経営しているのですか。
  722. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、そのことだけで……
  723. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 東亜紙業……
  724. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 知らない……
  725. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 知りませんですね、記憶にありません。
  726. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからもう少し伺つて置きたいのは、味の素の鈴木さんとあなたと佐藤さんとが「八百松」といぅところでお会いになつたことがあるのですか。
  727. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ありません。
  728. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ない……
  729. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 味の素の鈴木でしよう。ありません。
  730. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 次に伺いたいのは、この一番最初に味の素の鈴木という方に対する第一回の逮捕請求書を宗像警部補が出されたのをあなたのところへ出されているのです。
  731. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ええ。
  732. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは結局どうされましたか。
  733. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) さあそれはどうしましたですかな。持つてつたのじやないですか、宗像警部補は……
  734. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、それは執行されなかつたのですか。
  735. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それはどうなつてますか、分かりませんですな。
  736. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併しそういうような曖昧なことでいいのですか。
  737. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは大したことじやない。幾らでも作れるのですから……(笑声)なくなればなくなつてもまだ決済を貰つていないうち、私のところで幾らでも作つて出されるのです。
  738. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その次に又伺いますが、下山事件の当時に、あなたは土田予備隊長から現金を受け取られましたか。
  739. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 現金は受け取つた覚えはありません。酒だとか焼酎だとかいうものは頂きましたけれども、現金は恐らくいただいてない。
  740. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 酒とか焼酎とかいうものは、価格はどれくらいのものですか。
  741. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それはどのくらいのものか私も実は余り知らないのです。
  742. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 相当多額なんですか、それほどでもないのですか。ただ使う程度のものですか。
  743. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、下山事件の慰労として貰いました。
  744. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに一万円予備隊長から封筒に入れて貰つたんじやないのですか、
  745. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は貰つておるものならば帳面に付けておりますが……
  746. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんからですね。
  747. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私はそういう記憶はありませんが、若し頂いておるということになればちやんと帳面がありますから見て来ても差支ないです。
  748. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊長はときどきあなたの方にお金を渡すのですか。
  749. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いえいえ。
  750. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときだけですか。
  751. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そのときも金はどうだつたですか、頂いていなかつたと思います。そんなことはないでしよう恐らく……。まあ併しときどき激励の酒だとか焼酎だとかいうものを慰労してやつて呉れということで頂いておりましたが、これは予備隊長のみならず外の課長からなり部長からも頂いておりますが……
  752. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この味の素事件の進行中にですね、この味の素事件について可なり密接な関係を持つていると当然想像される佐藤昇という方と会食せられたことはありませんか。
  753. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 味の素事件の進行中ですか。
  754. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  755. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 進行中といいますと、いつ頃からいつ頃ですか、もう七月から入つているのですから、味の素事件はやつているのですから……。先にも申しましたように八月七日から十二日までの間に一回絹川さんと日野と四人で「八百松」で会食している。それきりです。
  756. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 「大増」というところで会食されたことはありませんか。
  757. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 「大増」……知りません。
  758. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 絹川さんの歓迎会というふうにさつき言われたが……
  759. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は歓迎会とは申しません。
  760. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 何ですか。
  761. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私はさつきも詳しく話したように、絹川さんの神戸の家の持主と佐藤関係がああして非常に密接なもので、佐藤絹川さんの所ヘ行つたところが、御馳走になつたり、或いは又土産に灘の酒を貰つて来たという話を佐藤はしておられる、絹川さんが出て来られたら夕飯でも一緒にとりたいから連絡をとつて呉れないかという話しで、歓迎会というほど大形なものではない……
  762. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この前後に絹川という方は東京には月に何回ぐらい……
  763. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうですな。月に一回ぐらいじやないですかね。
  764. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからあなたはさつきも証言の中で、直接の上司として監督指揮を受ける必要は必ずしもない。土田という方にしばしば、会つておられたようですが、それはどの程度会つておられたのですか。
  765. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうですね。今さつきも申しましたように、一週問に二三回か、多いときは三四回、役所内ですからね、直ぐ近くですから……ところが今さつきも話しましたように、下山事件捜査のことについては、下山事件、それとあの日本タイプの事件ですね……
  766. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それで佐藤という方を通じてあなたが下山事件に関して紹介を受けた人というのはどういう方ですか。
  767. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは御勘弁願えないですかな、今まだ御承知のように検察庁で捜査中ですが……
  768. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、警視庁の中であなたは特に最も親しいという方はどういう方ですか。
  769. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そうですね、やはり日野だとかいうのは一番親しいですね。先輩では親しくしている人は沢山あるのですが……
  770. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 最後に、これはさつきも他の委員からも御質問があつたのですが、民間人の協力を受けるということについて、差支がないようなお考えを持つておられたようですが、併し民間人の協力を受けるという場合には、民間人がその事件について利害関係を持つておるかも知れないという場合には十分お考えになつておるのですね。
  771. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) これは大体考えております、その事件について利害関係のある場合は、それに対してそういうことが分つてから民間人の協力を受けるということは絶対にありません。
  772. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一般には……
  773. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私の言う協力と申しますのは、情報の蒐集だとかいうような例えて申しますれば、情報の蒐集という具体的なあれでございまして、決して金銭的な協力の意味ではない。
  774. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたは日野という方と非常に親しいと言われましたが、日野という方が佐藤という方から金品を受けられておつたということは当時御承知なかつたのですか。
  775. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 全然知りません。
  776. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 佐藤という方はさつきもおつしやつたように、下山事件当時あなたの所に随分繁々と出入しておられたようですね。殆どあなたの所に毎日来られたようですね。
  777. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それほどでもありません。
  778. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことは現在からお考えになつて、余りいいことではなかつたとお考えになりますか。
  779. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) いや、考えておりません。ちつとも差支えないとおもつております。
  780. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併しその佐藤という方が、当時日野という方に多額の金品を……
  781. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは私は全然分つておりませんから。当時というのはいつ頃ですか。去年の八月か……、いつ頃のことですか。
  782. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いや、併しこの警視庁の、或る一部の人々に金品を贈るということが善良なる市民のなすべきことではないということは、あなたも認識されるでしよう。
  783. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことも考えられますね。
  784. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 従つて佐藤という方が、そういうことをしておつたという事実があるのです。従つてそういうことをされておるということは……
  785. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私の考えました……、私の方に関する限り、佐藤からは何ら事件に関して饗応を受けたためしもないし、物品も頂いたこともないし、ただ積極的に向こうがいわば無報酬の労務を提供して呉れておつたわけですから、そういうことを受けるということについては何ら差支ないと思つております。
  786. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併しさつき他の委員からも御質問があつたように、警視庁のそういう警察権を持つておる人に無報酬で奉仕するとか、或いは五万円の寄附を申込むとかいうことが、あなたは善良なる市民がそういうことをしていいと思いますか。
  787. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それは、そういうことはあり得るのではないですか。例えば議員の選挙費用として浄財を寄附するということが、必ずしも議員が当選した場合に何とか面倒を見て貰いたいという意味じやないだろうと思います。
  788. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことを伺つているのではない。
  789. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) それと大体同じような意味で……
  790. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたはさつきも議員を例に引いておられるが、そういうことを聞いているのじやない。識員の秘書を通じて……不正があるかないか……
  791. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことはどうも……、どうですか……
  792. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 不正があるかないかが問題です。
  793. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) ところが私の場合ですと、やはり不正があるかないかが問題であると同時に、要するに警顧庁の組織というものを……、
  794. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 聞いておることだけにお答えになればよろしい。
  795. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) はあ。
  796. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 佐藤という方が問題の、凝惑のある人物だということは明らかなんですね。
  797. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 今になつて見ればですね。
  798. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 当時あなたは、専門家としてその人に何らの疑惑を持たなかつたということが我々は納得できないですが。
  799. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 一々人を見たら泥棒と思えという行き方じや、却つて警察としては困るのではないでしようか。
  800. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう冗談のことじやなく……
  801. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私も冗談じやない……
  802. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 実際の問題として、警視庁にしばしば出入する、その人が何らの意図を持たないで、純潔の意味警視庁を援助するというふうなことは通じませんよ。警視庁を援助しようとすれば他に方法がありますよ。堂々たる方法がね。警視庁の方に出入する……次に、昨日日野という方にもあれしたしたのですが、どうも警視庁の方に、そういうことに対する一種の不感症というか、そういうことに開して、それはよくないことだという感じが麻痺しておられるのではないか。警察官に近寄つて援助しようとする人に対して、何かその人を善意に見ようとい感じがあるような……
  803. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) そういうことはないけれども、佐藤がやはり悪いことをしようとすれば、やはり援助を受けていてもいなくても、警察官としてやらなければならんことはちやんとやりますよ。警察官たるものはそれくらいのあれは持つております。いいはいい、悪いは悪いとして、その場合の協力までも全部悪意に解釈するということは私はどうかと思うのですがね。
  804. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併し私の今伺いたいのは、民間人の協力を受けるということは建前上あるべからざることです、警視庁というものが存在し、或いは警察というものが存在しておる。それが全責任を負うてやるべきである、軽々しく民間人の協力を受けるべきではないというようにはお考えにならないか。
  805. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は協力をして呉れるというわけで大きな意味の協力ならば、皆防犯的な或いは犯罪捜査についての協力というのはやはりやつて呉れる人があつたならば、十分それを受けても差支ないじやないかと思いますがね。
  806. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。
  807. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつともう一点、あなたは唐澤俊樹という人を御存じですか。
  808. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 唐澤俊樹というのは知つております。
  809. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私淑されておりますか。
  810. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 私は人柄というものは余りよく……一回か二回会つたきりなんですから、そう大して知らない。
  811. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 唐澤さんを伴つて二回御紹介になつたことがありますか。
  812. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) あります。
  813. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 唐澤さんは二回いらつしておられますか。
  814. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 何かあそこまで来たということを言つております。
  815. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこでもよろしいが、来たことがありますか。
  816. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 来られました。
  817. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 唐澤さんは警視庁に入れるのですか。
  818. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 入られるのではないでしようか。あの人は警視庁におられなかつた筈です、確かに。
  819. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 有難うございました。どうもお忙がしいところを。  では午後正二時半からということに……休憩します。」    午後一時三十一分休憩    ―――――・―――――    午後二時四十五分開会
  820. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 午前に引続きまして開会いたします。田中榮一さんですか。
  821. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうであります。
  822. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いはどちらですか。
  823. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 東京都港区芝車町四十五番地。
  824. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  825. 吉武辰雄

    証人吉武辰雄君) 明治三十四年十月八日ですから、四十八です。
  826. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんは住いはどちらですか。
  827. 土田精

    証人(土田精君) 千代田区麹町一の十二でございます。
  828. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  829. 土田精

    証人(土田精君) 四十一年。
  830. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本日は五井産業事件につきまして御証言をお願いするために御出頭を願いました。御証言をお願いする前に宣誓をして頂きますが、宣誓の上は御承知の通りの制裁がありますから。御注意申上げます。それでは宜誓をお願いいたします。    〔総員起立証人は次のように宜誓を行なつた〕    宜誓書 良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。        証人 田中榮一        証人 土田 精
  831. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは田中さんからお尋ねいたします。田中さんは警視総監にいつからおなりになりましたか。
  832. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 昭和二十三年の三月七日、新らしい警察法が施行されましてから総監を拜命いたしました。
  833. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 引続き現在までお勤めでございますか。
  834. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうでございます。
  835. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは佐藤昇という名前をお聞きになつたことがありますか。
  836. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 名前は聞いておりますが、全然会つたことも又話したこともありません。
  837. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつ頃お聞きになりましたですか。
  838. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 昨年の八月か九月頃だと記憶しております。
  839. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤警視庁と始終出入しているというようなことをお聞きになつたことがありますですか。
  840. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 只今申し上げました通り、昨年の八、九月の頃に佐藤昇という人が警視庁であるとか消防庁であるとか、その他官庁方面に出入をしておつて好ましからざる人間であるということを私はうすうす聞いておりました。
  841. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁は主としてどういう所へ出入をしているとお聞きになりましたか。
  842. 田中榮一

    証人(田中榮一君) どういうふうに出入をしておるかということは、私は存じませんが、御承知の通り警視庁の建物の中には警視庁も、消防庁も、東京都管区本部もみんなごつたになつておりますので、とにかくまああの建物に出入しておるということを薄々聞いておりました。
  843. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時、日野氏の部屋とか、或いは吉武氏の部屋とか、そういう所に出入しておるということはお聞きにならなかつたのですか。
  844. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういう詳しいことは私は存じません。
  845. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤警視庁の幹部の人はよく知つておるから、警視庁のことなら自分がどうにでもなるというようなことを豪語しておつたということはお聞きになつたことがありますか。
  846. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういうような意味ではありませんが、とにかく何か警視庁に出入しておるということを聞いておりまりたので、私としましても警察民主化のためには、こうした官庁ボスをできるだけ排除して行くことが警察の民主化であるという考えを持ちまして、何とかしなくちやならんという考えを持つておりました。
  847. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その当時はお聞きになつて何とかしようというお考えはおありになつたのですが、何かそれに対してお手当はなさつたのですか。
  848. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私としましてほ、適当な方法で本人にも注意をするとか、第三者をして注意さして、できるだけ必要以外は出入を遠慮して貰つた方がいいんじやないかということは考えておりました。まだ具体的の手は打ちませんでした。
  849. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お打ちになりませんですか。
  850. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 打ちませんでした。
  851. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 味の素事件について、佐藤がいわゆろ揉消しに介在しておるということはお聞きにならたかつたですか。
  852. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 揉消しに介在しておるかどうか存じませんが、ともかく佐藤も何か関係があつたんじやないかということは薄々聞きました。
  853. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃ですか。やはり昨年の八月頃ですか。
  854. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 九月だと思いましたね。
  855. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 九月頃……
  856. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  857. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると味の素事件が大分進展してからですね。
  858. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうであります。
  859. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤事件は、捜査にかかるということはいつ頃お聞きになつたですか。
  860. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それは十月頃でありましたか。松本捜査課長及び坂本刑事部長から佐藤昇氏に関してですな、何らかの詐欺事件があるというような話を聞きましたので、徹底的に捜査しろということを命じました。
  861. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前には聞きにならなかつたですか。
  862. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その前には聞きませんでした。
  863. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞きませんでした……
  864. 田中榮一

    証人(田中榮一君) はあ。
  865. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武氏が鈴木恭二氏という味の素の社長でありますか、重役ですか、この逮捕状を握り潰したことについて、何かお耳に入つたことがありますか。
  866. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それはこの五井産業事件が相当やかましく言われましてから承知いたしました。
  867. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、その当時は御存じありませんでしたか。
  868. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 存じませんでした。
  869. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう何か縺れがあるということを報告を受けなかつたですか。
  870. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その当時は受けませんでした。
  871. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武氏を転出さした事情はどういうわけですか。
  872. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 吉武警部が転出いたしました理由は、当時松本課長吉武君とは相当性格が激しい方でありまして、多少意見の相違もあるようでありましたし、又丁度異動の時期になつておりましたので、吉武警部級の者が全部警視になつて異動いたしましたので、当然吉武警部も警視に昇進いたしまして、上野の次席に転任をさせたのであります。
  873. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他に先程お述べ願いました佐藤事件を手を着けるという関係上、佐藤吉武氏とは昵懇にあるから、この事件を立てて行く上において差支を生ずるから、従つて吉武氏をこの際転出せしめた方がいいんだというような意味合いも含まれておるのではないですか。
  874. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういう意味合いは含まれておりませんので、要するにこの本事件につきましては、やはり捜査二課がやりますから、仮に吉武がおりましても敢えて支障はなかろうと思つております。ただ一般の異動と一諸に、当然吉武君も警視にすべき人物でありますから、これを警視として異動させたのであります。
  875. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 坂本前刑事部長はそんなような意味合いも含んでと言うておりますがね。
  876. 田中榮一

    証人(田中榮一君) ちよつと恐れ入りますが、もう一回……
  877. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 坂本前刑事部長は、只今私がお尋ねしたような趣旨も含んで転出せしめておるというようなことを述べておるのですがね。
  878. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうでございますか。私はそれよりも一般異動として、吉武警部を転任させるのが至当と考えまして、そういうふうにしました。
  879. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤逮捕する場合、その逮捕状を請求することについて、事前にあなたにお話か若くは報告があつたのでありますか。
  880. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論ございました。
  881. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときのあなたの御意見はどうだつたのですか。
  882. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私の意見としましては、成るべく早く逮捕しろということをかねがね言つておりました。そこで十二月の七日の日でありますが、地検の方へ連絡を取りまして、一応逮捕令状の請求をいたしまして、逮捕令状を取つて置きました。そこで坂本刑事部長といたしましては、当初吉村商店のノイル生地の三十五万円の詐欺事件について逮捕令状を取つたのでありますが、更に念を押す意味におきまして、坂本刑事部長自体が地方検察庁の馬場次席検事に面会をいたしまして、これによつて佐藤昇氏を逮捕して、この事件を立てたいということを申したのであります。その際に馬場次席検事の意見としては、尚起訴を確実にするためには、坂本刑事部長の説明した北海道並びに宮城におきまして、二千万に上る詐欺事件があると聞いておる。むしろそれを主体に置いて、その方の裏付捜査をして、その上で逮捕した方がこれが捜査の常道であろう。至急一つ裏付け捜査をして欲しいという御注意がありました。そこで坂本刑事部長としましては、九日の日に北海道並びに仙台にそれぞれ刑事三名を派遣いたしまして、裏付捜査をしたわけであります。そのことを私坂本部長から報告として承つてつたのです。松本二課長が証拠隠滅の虞れがあるから早急に逮捕したいという意見を私に陳述して参りましたが、私は勿論自分も逮捕を急いでおる、併しながら飽くまでもこれは人権擁護のために軽々しくやつてはいかん、更に大きな事件の裏付捜査をしてからでも決して遅くはないから、至急その方の手配をするようにということを私が命じまして、松本課長も了承いたしまして、直ちに部下と連絡を取りまして、さような処置をしたわけでありす。そして十三日の日に仙台に行つた刑事から電話がありまして、被害者がすでに東京に上京しておる。直接本庁の方においてその被害者と連絡を取つて欲しいという連絡がありましたので、直ちに仙台よりの被害者に連絡を取りましたところが、被害の事実がはつきりいたしましたので、逮捕して差支えないという決心がつきまして、そして係官も又同様な意見であつた。十三日の日に佐藤昇氏の弟の所へ本人を検挙すべく係官が出向いたのであります。ところがあいにく佐藤昇氏の弟さんが不幸がありまして、お通夜か何かをしておつたということでありました。係官といたしましてもこれは人権擁護の上から、こういう不幸の際に佐藤昇氏を逮捕することは面白くないというので、翌日に延ばしたいからというようなことを本部の方へ連絡があつたそうであります。従つて課長も部長も当然その措置が正しいというので同意いたしまして、そして十四日の日に、午後でありますが、佐藤昇氏を検挙した次第であります。
  883. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又そういう捜査の技術面から割出して逮捕状の執行が遅れておつたわけですな。
  884. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういうわけでございます。
  885. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に何か他意があつたわけではないのですね。
  886. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 全然ありません。
  887. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから、まあ逮捕を少し延期して呉れとか何とかいうことのお話があつて、そういうふうな行動に出たというわけではないのですね。
  888. 田中榮一

    証人(田中榮一君) この佐藤昇氏の事件につきましては、私の所へ何人も揉み消しであるとか、或いはそれから干渉であるとか、或いは引延ばしであるとか、全然そういう何がありませんで、私としては極めて自由な立場において処理ができたと考えております。
  889. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから主として坂本刑事部長の御報告に基いてそういう御意見を述べられたのですね。
  890. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうであります。
  891. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそういうふうに慎重を期せられた趣旨は勿論人権擁護の趣旨も含まれておりましようが、又他面においては、佐藤というのは政界及び官界方面に相当の知己をも持つておるし、殊に警視庁の各幹部の人にいろいろ親しくしておるから、これを挙げるには相当な慎重を期さなくちやいかんというような趣旨も含まれているのですね。
  892. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういう趣旨はありませんです。我々としましては、ただ軽い事件検挙いたしまして、これが不起訴になつたり、全然起訴されないということになりますと、これこそ私は人権擁護の立場から、捜査官としてはまあ非常な失敗であろうという良心的な考えからやつたのでありまして、もとよりこの佐藤昇氏を検挙する場合におきましては、いろいろ各方面にも関係があるということも薄々知つておりますから、まあいろいろな点で障害があるかも知らんということは自分も前以て考えておりましたが、併しこれを除去することが我々の民主警察の目標であるという考えからやつたわけであります。
  893. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程伺いましたこの吉武を転出させましたその直後、佐藤事件に手を付けたということはちよつと皮肉にも考えられますが……
  894. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 偶然まあ時期がそうなつておりますので、一応皮肉的に見えるかも知れませんが、全然そういう意図はなかつたのであります。
  895. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。二課の宗像という人がありますね、この人の何か素行について折田警部がいわゆる第一方面監察官が内偵しておるということはいつ御承知になりましたか。
  896. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それは松本捜査課長が、折田警部か宗像主任の身辺について何か山之内製薬について調査しておるというようなことを聞きまして、これは非常に捜査の妨害になるのではないかという申出がありましたので、私といたしましては時期が悪いという考えから大園警務部長にその点を指示いたしまして、直ちに中止させました。
  897. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう部内で以て部内の人を調査する場合、あなたに事前に報告でもあるんですか。
  898. 田中榮一

    証人(田中榮一君) まあ幹部でありますね、少くとも署長級であるとか、警視級の場合におきましては、一応私の耳にも入れる場合がありますけれども、まあ大体において細微の問題につきましては人事権を持つております人事を主管しております警務部長の耳に入れまして、警務部長の指揮によつて調査をするということになつております。
  899. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か吉武さんが監察官の人に、折田さんに話をして内偵を始めたのではないですか。
  900. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その点は私は存じませんが、宗像主任部屋の者が何か折田警部の所にこういうようなことがあるということを報告しまして、その報告に基いて折田警部が直ちに山之内製薬会社の調査に当つていた、こういうふうに私は聞いております。
  901. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それについて何か報告はありましたですか。
  902. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 何ですか。
  903. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことについて何か報告がありましたのですか。
  904. 田中榮一

    証人(田中榮一君) ええ、中止いたしまして、尚私の方も監察官をしてその間の状況を十分に調査させました。その報告書につきましては、法務委員会の方ヘ書面として差上げてある筈でありますから、御覧頂きたいと思います。
  905. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か当時味の素事件について吉武氏が捜査を多少妨害しておるというような噂でもあつたのですか。
  906. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういうようなことも聞きましたので、直ちに監察官をして吉武……現在の上野の次席の吉武警視を監察官をして調査させました。その結果についてはまだ確たる結論はつけかねるのでありますが、吉武警部の側の意見としましても、必ずしも捜査を妨害したとか、揉み消しをやつたというようなふうにも考えられない節もありますので、この点は私としましては今少し事実を調査する必要があるのではないかと考えております。
  907. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそういうような場合ですね、吉武さんのような場合は、吉武さんは折田さんとは非常に御親交の間柄らしいのですが、そういう場合は他の監察官に調査させることはできないのですか。
  908. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それはですね、それは池田監察官をして調査さしたわけであります。
  909. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外の人は……
  910. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿諭外の監察官をして調査さしたわけです。折田警部は監察官付警部でありまして、第一方面藤澤監察官の下であります。そうして……失札しました。折田警部につきましては本庁勤務のものでありますので、直属上官である藤澤第一方面監察官が本庁の監察をやる職権を持つておりますので藤澤監察官をして折田監察官付警部を調査さしたわけであります。そうして吉武警視につきましては担任の池田監察官をして調査さしたわけであります。
  911. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると両方とも結論を得ていないわけですね。
  912. 田中榮一

    証人(田中榮一君) はつきりした結論は得ておりません。私の考えとしましては、双方にそれぞれ理由があるのではないかと考えております。
  913. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中間報告はお聞きになつたわけですね。
  914. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういうようなふうに聞いております。
  915. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中間報告から受けた感じはどうですか。
  916. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 感じは今申上げた通り、それぞれ双方に理由があるようにも私は考えておりますけれども、まだはつきり結論は申上げられません。
  917. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 理由があるということは、そういう事実はなかつたという意味ですか、それとも今の……
  918. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そこをはつきり申上げかねると思いますけれども。
  919. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 日野昇という人は在職して見えましたですね。
  920. 田中榮一

    証人(田中榮一君) おりました。
  921. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この人と佐藤との金銭関係についてはいつ頃お知りになつたのですか。
  922. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは捜査二課で調べました結果、日野昇前中野署長が佐藤から十一万円でありましたか、個人的に受領しておつたということを捜査二課の調査によつて私は知りました。
  923. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは監察に付したのですか。
  924. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論本件につきましては監察官をして調査いたせました。
  925. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつおやりになつたのですか。
  926. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 期日ははつきり私は覚えておりませんが、直ちに調査させました。
  927. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その結果はどうでしたか。
  928. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 結果につきましては、日野前署長もはつきり警察活動費として自分の責任において、個人として佐藤昇氏から金銭を受領したということをはつきり陳述いたしております。
  929. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは主としてどういう方面に使つたのですか、監察官の調査の結果は。
  930. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは日野前署長の語るところによりますれば、警察活動費に使つております。尚監察官としても掘下げて調査いたしたのでありまするが、当時終戦直後でありまして、非常に社会情勢が混乱いたしておりまして、警察も相当長いこと徹夜したり或いは夜遅くまで勤務したりして、或いに中には課員の中で疾病に倒れる者があるというようなことで、或いは夜勤の場合の食事代になつたり、或いは又そうした疾病になつた者の薬代になつたり、そういうようなことに使つてつたようでありました。で全然私したことは絶対にないと思います。
  931. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、主として厚生方面に使つたとこういうのですね。
  932. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 厚生といいますか、やはり夜遅く勤務して腹も空きますから、雑炊ぐらいはやはり食わせなければいかんと思いますが、そうしたことも警視庁に誠に財政が苦しくて当時は全然そうした支出の方も十分でなかつたと思いますので、恐らくそういう方面に使用して部下をねぎらつたのではないかとかように考えております。
  933. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その使途は全部明細に堀下げたわけですか。
  934. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 明細には掘下げておりませんが、一応日野署長の陳述を私共は信用せねばならんと思つております。
  935. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは何ですか、勿論部下の人にいろいろなふうにして飯を食わせたり、物をやつたりなんかしたのでしようが、それを貰つた側、受けた側も監察官は調べたわけですか。
  936. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 当時おつた者も或いは転勤したりしておりますから、一応私共といたしましては、そこまでは調べておりません。
  937. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お調べにならなかつたのですか。
  938. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 調べておりません。
  939. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると日野氏の供述だけですね。
  940. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  941. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 監察官のお調べとしてそれでよろしいでしようかね。
  942. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 署長の日野君の人格に信頼したわけです。
  943. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうも如何に終戦後警視庁の財政が苦しいとは言いながら、当然警視庁で以てそういうことは考えなくちやならん方面に、それを一個人が個人の責任において一般市民からそういう金の拠出を受けて、それを以て賄うというのは職務執行の上においていろいろの弊害を生ずるのじやないでしようか。
  944. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私も同感です。弊害を生ずるものと思つております。従つて当時はそういうようなこともやつておりましたが、現在ではできるだけそういつた措置を止めたい。警察活動費は原則として公費を以て賄うべきが至当であるという考えから、現在は乏しい予算でありますが、できるだけそういう措置をとつております。
  945. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程吉武氏でしたかね、貰うことほ貰つたが、ところが職務は職務で必らずやると、こういうような御意見のようでしたけれども、どうもそれは理窟はそうですけれども、人情がそうは行かないですから、平素やはりいろいろな援助を受けておりますれば、そういう人に対するところの職務執行については躊躇されることはままあり得るわけですからね。
  946. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 吉武君の考えも私は全く同感でありますが、やはり誤解を外部から……勿諭金を貰つても執行するときは当然これは警察官でありますから、執行いたしますが、私の考えとしてはできるだけ誤解を受ける虞れがあるから、こういうことは避けた方がよいと思います。
  947. 伊藤修

    委員長伊藤修君) とにかくあなた達は一面において権力を持つていらつしやるから、権力の前においてそういう寄附行為をまあ要求するとか、受けるとかいうことはどうも好ましくないですね、どうしても社会の非難の的になりやすいですから……。あなたは日野さんを諭示免職ですか、辞職を勧告なさつたのですか。
  948. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は辞職は勧告いたした覚えはありません。ただ日野君自身として、非常に自分のやつた行為に対して警視庁の名声は御迷惑をかけることは申訳ないという責任観念から、警務部長の方にみずから退職を申出て来ました。それで本人の意思を生かしまして、依願免職にいたしたわけであります。
  949. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かその因果を含めるためにどつか一席を設けられて、その席上で因果を含めらたとか……
  950. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 何か前に、予算委員会のときにそういう御質問がありましたが、いつでありましたか、二月の三日でありましたか、どこかの料亭に日野署長を招いてやつたとか言いますがね、丁度私はそのとき京部に十大都市の警察長会議がありまして出張した留守でありまして、当時委員の方からアリバイが成立したということを言われたことを覚えておりますが、全然そういうことはありません。
  951. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか、それは噂に過ぎないのですか。
  952. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 噂に過ぎません。
  953. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 庁内でそういうお話をなさつたのですか。
  954. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は直接日野君は呼びませんでした。警務部長と会つて話を付けたわけであります。
  955. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときあなたがちよつと異例な声明書をお出しになりましたですね、あれはどういう趣旨ですか。
  956. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは私個人として、日野がそこまで責任を感じて、みずから道徳的の責任を感じて止めた点、それから日野が非常に終戦直後の混乱した社会情勢下におきまして、首都の治安確保の上に大きな功績を残した男でありまして、できればああした者をもつと長く置きまして、将来の警視庁の治安確保に役立たしたならば非常によかつたと思うのであります。惜しい人物でありますので、私としては泣いて野に送つたわけであります。そういうことにおきまして、私個人としまして、自分の私情の発露として、まあ総監談話といいますか、そういうむずかしいものではなかつたのでありますが、当時おつた記者諸君に私の心情を話したわけであります。それが総監談話として伝えられたのであります。
  957. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの暖い心と思いやりはよく了解できるのですが、それか却つて治安確保の上において人心に及ぼす影響というものをお考えになりませんでしたか。
  958. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私はその当時考えませんで、あとからああ、或いはそうしなかつた方がよかつたということを考えました。
  959. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ私情としてはあなたのお気持はよく分ります。こういうこともなんか巷間に伝えられておりますから、お尋ねいたすのですが、昭和二十五年の今年の二月頃、何か警視庁詰めの新聞記者諸君をどこかへ御招待になりまして、警視庁の内部関係についての何というか、口止めですかをお話になつたことがあるのですか。
  960. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は今年になつてからまだ記者諸君と会食したことは全然でございませんです。
  961. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたの部下の大園警務部長がそういうことをやつたのですか、そういうことはないのですか。
  962. 田中榮一

    証人(田中榮一君) あとで聞きましたけれども、大園警務部長がどこか新年宴会か何かで、どこかへ一緒行つたということは私あとから聞きましたけれども、当時私は全然関知しておりませんでした。
  963. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは岡崎英城という人を御存じですか。
  964. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 知つております。
  965. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう御関係ですか。
  966. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 岡崎君が警視庁捜査課長をしておりますときに、私は警視庁の保安課長、それから経済保安課長をしておりました。個人的にはよく知つております。
  967. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは御昵懇ですね。
  968. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 昵懇という程でもありませんけれども、とにかく内務省及び警視庁同僚として知つております。
  969. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽喬四郎さんは。
  970. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 丹羽君は私はよく知りません。内務省の役人という程度は知つておりますが、非常に親しいということはありません。
  971. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんが何か警視庁の組織やいろいろなことについてあなたに進言するのですか、御注意申上げるとかそういうことはありませんでしたか。
  972. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 岡崎とは殆んど警視庁に来ましてから会つておりませんです。岡崎も私達の立場をよく理解して含れておりますので、少くも私の所には出入りはしておりませんです。それから尚岡崎の性格をよく知つておりますけれども、そういうように警視庁の内部に干渉するような男ではないと私は信じております。
  973. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあれですか、岡崎さんが直接あなたじやなくて、外の人を通じてあなたにいろいろ意見を申達して呉れるようなことはありませんでしたか。
  974. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 全然ありませんです。
  975. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎とか、丹羽というお方は警視庁つての駿敏な方で、優秀なお方だつたらしいですね。
  976. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 非常に私は彼はできる男と信じております。
  977. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又他面岡崎さんは非常に親分肌のところがあるそうですね。
  978. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 皆から愛される……
  979. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 愛されるということが結局親分肌という……
  980. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういう何があるかも知れませんが、併し岡崎個人としては、本人としてはその自己の能力を扶殖するというような考えは毛頭私持つていないと考えます。
  981. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 意識的にはそういうことはないでしようが、結局、ですから尊敬されるというところからいろいろの人が集つて来るわけなんですね。
  982. 田中榮一

    証人(田中榮一君) まあ彼の所へ集まることがあるだろうと思つております。
  983. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 教えを受ける意味で……
  984. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 出入りすることはあるかも知れません。
  985. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう関係で自然親分、子分という関係ではなかろうけれども、結局後輩を面倒を見て行くというような形になつていくんじやないでしようかね。
  986. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私の考え方としましては、警察官には上司があり、非常に公私共に世話になつたものがその者の所へ或いは年末年始に、或いは帰郷、上京の各度に私は出入りすることは決して悪いことじやないと私は考えております。ただこれは結局本人の自制と反省によつて判断をして行くべき問題だと、こういう問題につきましては私共は一々私生活に干渉すべきものじやないと、本人の自覚に待つべきものだということを考えております。
  987. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体そんなような空気からいたしまして、岡崎さんの下にはいろいろな優秀な人が段々集つて行くというので一つの岡崎さんの集い、岡崎さんの系統というものが出て来るんじやないでしようか。
  988. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私はそういうことはないと思つております。
  989. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから岡崎さんが最も敏腕を振われた捜査課長時代に、そういう根ざしができていたんじやないでしようかね。
  990. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そう私は感じませんけれども……そう考えません。
  991. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんが二課長当時からそういうことになり、又特高の第二課長になり、或いは警保局の第一課長になり、特高部長になり、こういう経路を経て段々それが培われて来て、強化されたというふうな形になつて一つの岡崎系統というものが隠然として警視庁内部に存在するのじやないでしようか。
  992. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 警察官は、今私が申上げました通りに、世話になつた上司に対しましては、個人的な情誼としてお附合いをしておりますが、苟も警察官たる以上はそうした公のことに派閥的な観念を取入れることは絶対にないと私は深く信じておりますけれども、又最近いろいろ警視庁のことにつきまして極く少数の名前が出ておりますが、これらの事柄を顕微鏡的に拡大して、警視庁に派閥闘争があるかのごとき、非常に錯覚をしておられるのでありますが、現在の状態におきましては絶対に派閥闘争のようなものはございません。又警視庁自体としてましても、派閥闘争をしておるような暇がないのであります。毎日忙がしいですから、警察業務を処理して行く上におきまして、我々は派閥闘争というようなものは考えられない状態でありまして、特に殆んど全部その日その日の治安確保に全部がもう努力いたしております。こういうことを宣伝されるということは、少くも私は二万五千の警察官全部が迷惑しているということだろうと思います。
  993. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 我々といたしましても、それが故に日本の全警察の機構の枢要とも言うべき警視庁内において、そういうことがありといたしますれば、これは我々として無関心でおるわけには参りませんので、その点について非常に我々として憂慮しておる余り今日御出頭願つて証言願うわけですから……
  994. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 尚御不審の点がありますれば、徹底的にお調べになつて……絶対に私はそういうことはないと信じておりますので十分御審議になつても結構であります。
  995. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ人の集いというものは御承知の通り派閥とか、何とかいう関係でなくて、一つの信頼感とか、或いは肌触りがいいとか悪いとか、そういう意味からして自然に繋がりというものができて来て、それが人から見れば派閥だけれども、当人同志は派閥とは考えておりません。心酔した余り、畏敬した余りという関係上、常にそういう人と一つの親しみの繋がりというものができて来る。第三者から見ればこれは派閥ということかも知れない、そういうことはあるでしようね。
  996. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 御承知のように警視庁は一般警察官が二万五千人おります。一般の職員が二千数百名で二万七千数百名の大世帯であります。その二万七千名が面の異なるごとくに、それぞれ皆違つた思想も感覚も感情も皆持つておるわけです。従いまして、これらの者が数人がいわゆる好き同志でと言いますか、趣味の合致した者であるとか、そういう者がお互いに会合したり、そういうことはあり得ると思います。これはひとり警察社会のみならず、至るところの社会にこの現象は見られると思います。私といたしましては、たとえこんな趣味の集団であるとか、或いは多少の考え方を持つておる者が集まり、交際があつても、大事を前において全部が結束すれば、敢て私は治安確保にこうしたものは支障ないという考え方で二万七千人を統率いたしております。
  997. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 我々が心配することは、いわゆる好ましからざる人として追放をされた、いわゆる曾つて警視庁の俊敏なお方がおつて警視庁の幹部の方々に指導命令と言つては語弊があるのですが、或いは進言するとか、いろいろに協力されるというあり方があるといたしますれば、これは由々しき問題だと思います。そういう点について我々実に心配するわけです。
  998. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私総監になりまして二年一ヶ月経過いたしております。今まで警視庁の方針、人事、それは全部私の責任において実施いたしております。すべて私の下において最終の決定をやつておりますので、外部からのそういつた干渉であるとか、容喙であるとか、そういうものは絶対ないと私は信じております。又今お話の岡崎、丹羽、こうした各位におかれても、警視庁のそうしたことごとに一々干渉するような人間ではないと私は信頼いたしております。
  999. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 人事や何かは勿論責任者としてはあなたが御決裁願うのですが、大体警務課において、それと担当の各課において協議されて、大体の人事の具体的のものが纏まつて、そうしてあなたの御決裁を願う、こういう形になつて行くのじやないのですか。事実上の推挙権、推挙のチャンスを掴む人は警務課の主要な人と、その当面の課の主要な人ということによつてそのチャンスは握られておるわけじやないのですか。
  1000. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 幹部におきましては、絶対にそういうことはありません。むしろ私共の意見が主になりまして、それから要するに総合監査と言いまして、毎年一回警察は各署の非常な綿密な総合監査を実施いたしております。それからその総合監査における各署の主任及び署長の人望及び手腕、それから又本人の裁量、本人の得意、不得意、長所、欠点もあります。そうしたものを十分に審査いたしまして、公平無私な、又適材適所主義の人事をやつております。これらにつきましては私も警視庁に長いことおりまして、課長もやつておりましたし、部長もやつておりました。総監も今回で三回目でありまして、少くとも幹部の個性、長所、短所、それからどういう主義であるかということくらいは、私自身がよく知つておりますので、単に鵜呑みにするようなことは絶対にございません。相当私自身としても民主警察実現のために、自分の信ずるところの意見を具現いたしております。
  1001. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さん及び藤田さん、今お辞めになつている人達、こういう人は要するに岡崎さんの系統の人であるのであつて、これらの人が岡崎さんの有形無形の意思を代表して、いろいろな人事に容喙するのではないのでしようか。又人事のチャンスを握るのではないのですか。
  1002. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 土田予備隊長は藤田皇宮警察本部長とは親しいと思いますけれども、必らずしも、親分子分の関係は絶対ないと思います。又土田予備隊長が人事に干渉するようなことは、予備隊長として絶対できぬことになつておりますし、又そうした事実もございません。
  1003. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の両氏の人がいわゆる岡崎閥としての警視庁内部における現職の幹部じやないですか。閥ということは語弊があるかも知れませんが。
  1004. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 藤田前刑事部長とは親しいことは親しいと思つておりますが、別に閥であるとは私は考えられないのであります。
  1005. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんも親しいですね。
  1006. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 親しかつたと思います。
  1007. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田とか、藤田という人は、要するに岡崎さんとか、丹羽さんというような旧警視庁の幹部の方、そういう背景を持つているという意味からいたしましても、警視庁内で相当の勢力をもつていらしやつたのではないですか。
  1008. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勢力は持つておるかどうか私は存じません。
  1009. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういつた目に余るようなことはないですか。
  1010. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういうことも全然ございません。
  1011. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当弊害があるとか、横暴にしているという噂でもお聞きになつたことはないですか。
  1012. 田中榮一

    証人(田中榮一君) ありません。
  1013. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の財政的のあれもあるでしようけども、先程もちよつとお伺いしましたが、いろいろ警視庁の職務によりまして、援助を一般市民から求めるということに対してあなたの今日のお考えはどうですか。
  1014. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私の考えとしましては、先程申述べましたごとくに、できるだけ警察活動がかかわり合いのない活動をしたい。それには警察活動費は全部公費を以て賄うというのが私の理想であります。ただ現在の都の財政の状況からいたしまして、そのような理想の実現ができないのは誠に遺憾でございます。けれども、その場合におきましては、現在警察後援会の制度を利用いたしております。これも相当嚴重に監督をいたしております。弊害を最小限度に止める、弊害のないように、絶対に弊害のないように、これを運用するというのが私の理想であります。
  1015. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知の通り例の本庄事件におきましても、いわゆる警察後援会長という地位を利用いたしまして、警察にどんどん食入つている。そうして警察を自分のもののごとくにして行くという地方ボスもありますが、警視庁あたりは大世帯ですから、そうは行かないと思いますが、少くとも警視庁の中の或る一部局ぐらいは、そういうように自分の勢力下、ボスの勢力下に置くという形に段々進展して来るのではないかと思いますね。ですからやはり一般からそういう警察費を徴収する、徴収はおかしいですが、寄付を受けておるということは好ましくないのではないですか。
  1016. 田中榮一

    証人(田中榮一君) この警察後援会の問題は相当大きな問題だと思つておりますが、将来は警察後援会というものが廃止されれば非常に私は結構だと考えております。これはひとり警視庁のみならず、全国の警察もそうでありますが、できるだけ国なり地方が経費を助成して、全部公費を以て賄うということになれば、私は非常に結構だと考えております。現在の状況ではなかなかそれは困難じやないかと思います。
  1017. 伊藤修

    委員長伊藤修君) できないとは雖もも、検察庁とか、警察というものが、一面絶対の権力を持つて、日本の治安を維持して行く重要な立場にあられる人が、他面においては、いわゆるその対象たるところの者から寄附を受けるということは、どうも弊害が段々伴つて行くと思うのですが、職務執行の上においても、又一面においては、そういう金をとるということ自体が……快く出す者は少い。警察から言われるから仕方がなく出すという部類もあると思いますね。
  1018. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私も先程申述べました委員長と大体御意見においては同感であります。将来そういうようなことを実現すべく努力したいと考えております。
  1019. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体私の質問は終りましたが……
  1020. 小林英三

    ○小林英三君 田中証人にお伺いしたいと思いますが、大体委員長の御質問によりまして、大体了解したのですが、尚、念のためにもう一遍承わりたいと思いますが、簡単にお答え願えれば結構であります。いわゆる旧特高グループとされておりますところの岡崎栄城、それから丹羽喬四郎さん等が警視庁の人事には一切関係していないということは、その通りでありますか。
  1021. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  1022. 小林英三

    ○小林英三君 それからこの五井産業事件捜査に当りまして、政治的の圧迫が加えられたかどうかという事実はございませんか。
  1023. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 全然そういう事実はございません。
  1024. 小林英三

    ○小林英三君 それから今私が委員長の御質問に対しまする証人のお答えに対して、私も同感だと思うこともあるのですが、ここにこういうパンフレットが、これは委員長の方から我々法務委員に配られたのですが、これには昭電事件味の素事件、繊維事件その他いろいろな事件〇〇事件、〇〇事件は何故に葬り去られたか、又何故に葬り去られようとしているか。それから一番上は、陰謀の走狗警視庁を民衆の手で粛正せよとか、或いはこの警視庁が追放特高ボスの伏魔殿と化しているとかいうような見出しの下に、いろいろその警視庁の内部の人事、機構等につきまして、こういうものが参考資料として我々の手に配られておるんですが、これを御覧に入れますから、こういうことがあるかないかということにつきまして、はつきりと一つ……。赤い線を付けて置きましたから……
  1025. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 少くとも現在の警察は御承知のごとくに画然と政治から隔離されております。時の政治に関係せず、飽くまで純然たる警察職務を執行するというのが現在の警察の制度の目的でございます。従いまして少くも今の警察は、時の政府のその勢力下にいるということは、警察法の建前から、そういう点は禁じられており、又絶対にそういうことはないわけであります。公平無私に民衆の公僕として民主警察の実現に努力いたしております。従いまして、かような表は私共から見ますると、極めて荒唐無稽なものでありまして、非常に滑稽なものであるというように感じます。
  1026. 小林英三

    ○小林英三君 そのパンフレットは、総監として二万七千人の警察官の名誉のために、十分に御証言になられるのですね。
  1027. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論そうであります。
  1028. 小林英三

    ○小林英三君 それから今度のこの五井産業事件というものが、これ程までに有名になつた、という言葉を使いますということは当らないかも知れませんが、まあ天下の疑惑と言いますか、非常にこの法務委員会におきましても、いずれの証人尋問につきましても、他の委員会に見られないようなこういう盛んな状況を呈している。これは私の考えといたしましては、今までずつとこの事件に当りまして私が考えたことでありますが、これにつきまして証人にお伺いいたすのでありますが、たまたまこういうように有名になつたと言いますか、これはたまたまいわゆる昭和二十三年の春頃に五井産業の社長の佐藤昇君が金をばら撒いた。それから二十四年の暮頃に今の五つの詐欺事件を引続いて起した。これは相当古いこともありますし、昨年のこともあるのであります。これらの佐藤昇君の調書の中に、たまたまその荻外荘というものを通じましての、まあ吉田さんが荻外荘にとき来られるから、吉田さんの名前がぽつんと出た。或いは渡邊良夫君を通じまして増田官房長官の名前が出て来た。当時は勿論総理大臣でもなかつたし、官房長官でもなかつたわけであります。この問題につきましては、私たびたびそのときの証人にもお伺いしておりますし、殊に岡崎捜査部長検事にもはつきりと聞いておりますが、岡崎捜査部長検事はこの法務委員会におきまして、こういう吉田さんの問題、或いは増田さんの問題という、こういうことは、嫌疑をかけることはおかしいのだということをはつきりとこの席において証言されているのであります。そこで私は証人にお伺いいたしたいと思いますことは、この五井産業の取調べの進展に伴いまして、総監であるあなたは、これらの吉田、増田というような問題につきまして、どういうふうに考えておられますか、はつきりとお伺いしたいと思います。つまり嫌疑をかける要ありや否やという問題につきまして、どういうふうにお考えになつておりますか。
  1029. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 警視庁といたしましては、この五井産業事件捜査は飽くまで純粋に刑事事件として、詐欺事件として事件捜査いたしております。ただこの詐欺事件に直接間接に関連をいたしまして、金の使途、経理関係、そういつたものを調査して参つたところが、こういう事実が出て来たわけでありまして、併し我々といたしましては、飽くまで詐欺事件として捜査をいたしておりますので、これらに関連した問題につきましては、挙げて検察庁若しくは特審局でお取調べ願うことが至当と考えまして、一切を検察庁に引継ぎをしたわけであります。従いまして一応表面的な事実のみを我々は了知いたしておりまするが、更に掘下げて調査いたしておりませんので、岡崎特捜部長がそういう御意見でありますから、警視庁といたしましては、岡崎特捜部長の御意見を信頼する外ないかと思つております。
  1030. 小林英三

    ○小林英三君 それから私共この五井産業事件の一番最初の発表以来、新聞にいろいろな内容が暴露されておると言いますか、発表されておるのです。で先程もこの吉武証人でありましたか、承わりましたのですか、従来こういうような、その警察の警視庁捜査第二課におきまして捜査中の事件が、事細かに新聞に発表されておるというようなことは、従来の事件の上にはなかつたのであります。然るに今回は事細かに発表されておる、一々発表されておる。一番最初の発表以来、四月の四日の夕刊数紙に発表されております。五日の朝刊にも発表されております。非常に我々はこの点は不思議に思つておるのでありまするが、そこで私はこの事件取調べの今日までの経過を判断いたしまして、この問題は何者かが一つの芝居を企らんで、そうして多くの国民に疑惑をかけさせたのじやないかというように私は考えるのでありますが、この五井産業事件の特質というものは、今までのこの昭電問題とはおのずから変つておると私は考えておりますが、この証人である総監は、この五井産業事件に対しまして、そういうふうなお考え方をお持ちになつたことはございませんでしようか。
  1031. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は本件につきましては飽くまで詐欺事件である。詐欺事件として事件を立てて、警視庁といたしましては詐欺事件としてこれを処理いたしておりますので今お話のような何人かが狂言を作つたのではないかというようなことにつきましては全然考えておりません。又この恰かも警視庁新聞紙にひそかに何者かが発表をしておるか、或いは情を通じて機密をが洩しておるのではないかというようなお疑いがあるようでございますが、この点につきましては、勿論捜査の係官を松本捜査課長が一人々々自分の室に呼んで聞き質したのでありまするが、そうしたこともございませんし、又司法警察官として、現在手がけておる取調中の事件を外部に漏洩するがごときことは、当然司法警察官としてはなすまじき行為でありまして、この点は全部の司法警察官が心得ている筈でありまして、警視庁から外部にそうした記事が、事項が漏洩したということは絶対ないと確信いたしております。又最近のこの新聞紙の傾向を見ましても、最近の新聞紙はそれぞれ相当な費用を使いまして、自由な立場において取材活動を実施いたしておりまして、新聞社の自由な取材活動に対しましては、我々はこれを掣肘することができないのでありまして、御了承願いたいと思います。
  1032. 小林英三

    ○小林英三君 今のお話でございますけれども、こういう事件の内容がこまかく漏れると言うことについては、これは警視庁から漏れたのではないということでありますから、それはその通りでありましよう。併し証人として、これはおかしい、不思議じやないか、こういうような事こまかく新聞に出るということは不思議でないというようにお考えになるのでしようか。
  1033. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 最後に自供調書というものが一斉に新聞に発表されたのでありますが、この点につきましては、私は今後の司法事件捜査の上に再びこうしたことが繰返されるということは、捜査の上に非常に妨害になるということを痛感いたしております。将来こうしたことのないことを私は念願いたしております。
  1034. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 昨年佐藤に対して逮捕令状の請求をいたしました当時には、最初は罪状はどういう罪状で令状を求めたのでありますか。
  1035. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 最初の令状の請求の内容につきましては詳しく了知いたしておりません。只今のお話によりますと、吉村商店のノイル生地を消防庁に世話すると言つて、ノイル生地を買取りまして、消防庁に極少量入れて他に横流しをしたというような罪状を請求したと心得ております。
  1036. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうしますと、統制令違反でしたか、何でしたか。
  1037. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 統制令にはかかつていなかつたのではないかと思いますが、私その点は詳しく了承いたしておりません。
  1038. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 先程あなたの証言によりますと、詐欺事件というのは、後に至つて検事の注意によつて、北海道並びに仙台方面に特に刑事を派して事実を明確にならしめた後に、初めて令状の執行をした、こうありましたね、そういたしますと、詐欺事件というものが、佐藤に対する最初の嫌疑の第一歩ではなかつたのですか。
  1039. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論第一歩の嫌疑でありまして、次に北海道、仙台方面に二千万円に上る詐欺事件が容疑として浮び上つてつたのであります。それを一応裏付捜査をいたしまして、むしろその方が大きいから、その方の裏付捜査をするために証拠蒐集をする、同時にこれを一つ起訴の材料に使つたらどうだろうか、こういう馬場次席検事よりの御注意がありましたので、それに従つたわけであります。
  1040. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうしますと、最初逮捕令状を請求しましたときには、すでに二千万円の詐欺事件というものは、大体警視庁の方では一応掴えておつたわけですね。
  1041. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 事実を掴えたわけではありませんが、そういうことの風評と言いますか、そういう程度の経緯、内偵の結果そういう程度の風評しか集まつていなかつた
  1042. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 最初の令状請求の事実だけでは根拠は薄弱だというふうな見方でありましたか。或いは五井産業の事件というものを併せてやることの方が、事件が大体輪郭を掴えることができるという趣旨でなつつたのですか。その点はどうなんですね。
  1043. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論私共が令状を請求いたしましたときには、その三十五万円の詐欺事件でも起訴確実なりという考え方から令状を請求したわけでありますが、尚、起訴を更に確実にするためには、その二千万円の詐欺事件の傍証を固める、裏付捜査をするということが起訴を確実にするのであるから、その方に一つ努力をして貰いたいという次席のお話があつたのでありますから、従つて傍証固めに刑事を派遣したわけであります。
  1044. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 十二月七日に令状を警視庁の受取つておりますね。それから執行されたのが十四日ですね。この間七日間ありますし、又先程来の証言によりますると、この間北海道、仙台等に更に傍証固めのために刑事を特派して、事実を確実にした。そういうことで以て凡そ明確になつたことから執行をしたと、こういうことですね。
  1045. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうであります。
  1046. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうしますと、この令状の執行当時には、最初得ました十二月七日の当時の令状で執行したのですか。或いは後に追加された二千何百万円の詐欺事件も併せて第二回の令状を取替えをして執行したわけですか。これはどうなつておりますか。
  1047. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 恐らく前の令状を執行したのではないかと、私は実は甚だ申訳ないのでありますが、そういう事務的な詳しいことは今予知しておりませんから、又この点は後程書面でお答えしたいと思います。
  1048. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この事件についていろいろと疑心暗鬼を生じておりまするが、逮捕令状の請求をなして、すでに令状は七日の日にあなたの方で、警視庁の方で入手しておるに拘わらず、それがたまたま佐藤氏が警視庁に非常に深い関係を持つておるというようなところから、そこで令状執行について七日間というようなふうな余裕の期限が置かれたときに、何だかその間警視庁の縁故によつて、特に情実によつてその執行が遷延されたのだというふうな一般から疑いを持たれておりまするのが、警視庁に対する非常な皆の懐疑の眼を持つておるゆえんだと思う。で令状の執行が最初に、当初七日の日に得た令状が、その後十四日に変えられたときには、只今あなたの証言されましたごとくに、二千数百万円という大事件がこれに追加されたという事実があるのであるならば、一見明瞭になりますから、その点どうかと思つてつたのですが、はつきりいたしませんか。
  1049. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 一週間延びましたのは、先程私からも委員長に説明した通りでありますし、又この点につきましては、岡崎特捜部長からも具体的に証明があつたものと考えておりますが、冒頭に申述べましたがごとくに、私自身も又坂本刑事部長佐藤昇氏には個人的に何ら関係も何も持つておりません。従つて佐藤昇氏を庇護するために私が令状を握り潰すとか、或いは又逮捕を遷延するという必要は毛頭ないのでありまして、やはり或る程度こうした問題は慎重に、且つ飽くまで人権を擁護するという立場におきまして慎重を期したわけであります。事件を握り潰すというような意思は毛頭なかつたのであります。この点は御了承願いたいと思います。
  1050. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 佐藤氏に対しまする警視庁の供述調書は二十数回に亘つて当時取られておるようですね。その内容は事極めて重大なる陳情もあるようです。これがまあ真偽は別であります。定めて総監として、この佐藤調書は一応御覧になりましたか。
  1051. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 全部は見ておりません。一部を見ております。肝腎のところは見ておりますけれども、その他のものにつきましては全部を私は目は通しておりません。
  1052. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どの点を肝腎と御覧になつたのですか。
  1053. 田中榮一

    ○田中証人 詐欺事件は、これは事件の中心でありますので、詐欺事件に関しては見ております。その外の参考調書につきましては、極く大体のことを目を通しております。
  1054. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたのお立場としては、併し二千万円の詐欺事件について特にそれを重点的に御覧になるよりも、むしろ私は余りも突飛な陳述が沢山ありまするところから、図らずもこうした世の疑惑を招いておりますことについては、あなたの立場としては逆に考えておつたのではないのですか。むしろそういう参考書類として附いておつたものに重点を置かれて、その方の調書だけを見ておつたのではないのですか。まあ御覧になるべき筋合いのものじやないかと思います。
  1055. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういう点はございません。参考書類につきましては、最近それを見たのです。
  1056. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、佐藤が各方面に対して金をばら撒いたという陳述が供述調書にありますね。それは全然あなたは御覧にならなかつたのですか。
  1057. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 最近それを見ました。
  1058. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 最近ですか。
  1059. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  1060. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは最近は事件検察庁に、記録は送致されておりますが……
  1061. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 送致する寫しがございますので、寫しを私は見ました。尚それらの点につきましたは、私も非常に劇職でございますので、一々事件調書を総監が見る必要は私はなかろうと思います。従いましてこれは刑事部長なり、捜査課長から時々事件進行の状況は口頭で報告を受けております。その外私は綿密に供述調書なんかは見ておりません。
  1062. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いや、私はあなたが総監という劇職にあられまするから、すべての刑事記録をあなたは一々御覧になつておるとは勿論思いません。併しながら先程来委員の方からもお尋ねがありましたごとくに、本件はたまたま高官の名前がこの中に連なつておるというようなところから、世間の疑惑が一段と高められておるということでありますから、あなたの立場としては、併し当然この点に対しては最も深い関心を持たれて、その真否をあなたみずからが陣頭に立つて確かめるべき立場ではなかろうかと私は思います。それだけ無関心でおられましたか。
  1063. 田中榮一

    証人(田中榮一君) いや、私は絶対に無関心でおつたわけではないのであります。この点につきましては、先程証言いたしました通りに、むしろ非常に取調におきましては困難な点も伴うし、又相当長期間にもかかるであろうし、又当事者の意思解釈も非常にむずかしいという点から、これらにつきましては供述調書を参考書類として全部これを検察庁に引継いで、そうしてあと検察庁にお任せする。これは私の意見ではなくして、係官全部がそういう意見でありました。
  1064. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いやあなたが手続上については勿論そうあるべきだと思いますが、あなたとしてそれだけ重要な陳述をなしたる内容を持つ供述調書を、御覧にならないとは私もどうもちよつとどうかと思いますが間違いありませんか。
  1065. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは見なくとも時々部下から報告を受けておりますので、私は見る必要はないと考えておりました。
  1066. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでこの調書を御覧になつたというのは、事件を送致してから後に警視庁に控えを取つて、その控えにようて御覧になつたというのですか。
  1067. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 控えと言いますか、メモと言いますか、そういうものをちよつと見ただけでありまして……
  1068. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 メモですか。
  1069. 田中榮一

    証人(田中榮一君) どういうものか知りませんが、そういうものがありましたので、それをちよつと見ただけであります。
  1070. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 最近ですか。
  1071. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 最近であります。
  1072. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いつ頃ですか。
  1073. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 一週間も前でありましようか。
  1074. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 とにかくあなたの所管内においてこれ程騒がれております大事件が、新聞にも喧伝されておりまするのであつて、それが併し七日前にメモの僅かを見たというのは、どうも少し加減がありませんか。加減しておるのではありませんか。陳述に……
  1075. 田中榮一

    証人(田中榮一君) いや、そんなことはありません。事実のままを申上げたわけです。
  1076. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでそういたしますと、口頭報告を受けましたときに、凡そどういうような方の名前が佐藤の供述調書中にあると聞きましたか、報告を受けましたか。
  1077. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 最近新聞紙で発表になりました供述調書に記載されておつたような名前が、やはり報告を受けました。
  1078. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 新聞に報道されておつたようなことを当時……
  1079. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 名前が、名前を報告を受けました。
  1080. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その当時やはり受けましたか。
  1081. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その当時受けました。
  1082. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その当時そういう重要報告を受けましたときに、あなたの取りました態度はどういうふうでした。
  1083. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 警視庁としては、飽くまで詐欺事件で行こう、そうして爾余の事件については、その都度検察庁にもそのことを報告して置け、そうしてできた調書につきましては、一切これを警視庁に残さずに全部検察庁に引継げ、あとのことについては、検察庁なり、特審局の御調査を待つがよかろう、こういう方針で進んでおりました。
  1084. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その事件はその程度でよろしうございますが、先程やはり委員長からも聞かれましたし、私共もこの事件に関連いたしまして、あなたの部下の方数人からも証言を承わりましたが、重要事件の場合であろうと存じますけれども、犯罪の捜査に特に民間人の援助を受けるというふうなことが警視庁においては慣例的に行われておりますか。
  1085. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 慣例的には行われておりません。
  1086. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ときにはありますか。
  1087. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 例えば一昨二十三年にございました帝銀事件でありますが、あの事件につきましては、津々浦々から警視庁に対しまして激励鼓舞の手紙が来たわけですが、中には小学校の生徒が僅かの金を拠金いたしまして送つてきたり、或いは非常に熱心な方から激励の意味において金を送つて来たりなんかしたことがあります。捜査本部は、これらに対しましては、本当の国民の心から迸しる真情といたしまして、有難くこれを頂戴いたしまして、規定の手続を経てこれを捜査費の中に入れたことがございます。そうしたこと以外におきましては、できるだけ犯罪捜査に民間側の援助を受けることは成るべく差控えるという考えであります。
  1088. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 警視庁管内のことは存じませんが、署管内におきましては、ときどき警察の方へ、例えば博徒の親分であるとか、或いはその外相当世評、世の批判を受けておりますような人を警察の刑事などが使つて、そうしてまあ犯罪の捜査上に益せしめる、便宜を得ておるということですね、それがためにいろいろな副作用が起つて、却つて警察に特殊な弊害などを招くようなことを私共は聞くのでありますが、そのために、この事件について一、二の証人は、やはり警視庁管内におきましても、特に人手を借りて、人の手伝いを受けてやつておるというようなふうな片鱗が見えましたので、あなたの方針としてやはりそれは、そういう場合には刑事警察の実績を挙げる上において必要であるならば、民間人の手伝いを受けてもよろしいというふうな方針になつておるわけでありますか。
  1089. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論犯罪の防遏並びに検挙につきましては、これはひとり警察だけが大童わになりましてもなかなか徹底いたしません。実績を挙げることがむずかしいと思います。従いまして、国民の間にいわゆる防犯思想を普及いたしまして、そうして犯罪防止に御協力を願う、いわゆる精神的方面と申しまするか、いろいろの施設につきまして、いろいろ御協力を願うということは、私は是非警察から進んで御協力を願わねばならんと存じておりますが、ただ財政的な関係につきましては、金銭上の点につきましては、弊害を伴うことがありますので、できるだけ避けた方が正しい警察の執行ができるのじやないかと思う考えであります。
  1090. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 本件の問題になつております佐藤昇氏から、下山氏の事件の当時に五万円の援助の寄附申出があつたということがありましたか。
  1091. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 部下からそういう話を聞いております。併しこれは多分断わつたと私は考えております。
  1092. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その断わつたというのは、あなたの、その当時にお耳に入つて、あなたとしてはこれは適当でないというところの決裁をされて、あなたの命令によつて拒絶したわけなんですか。
  1093. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは私はあとから聞きましたので、恐らく手柴総務課長の独自の決によつてつたものと考えます。
  1094. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 若しそういうような金品の援助等があります場合には、やはり総監或いはその他の責任ある重要な地位にある方のやはり意見によつて決しなければならんのでしようね。その許しを受けなければいけないのですか。
  1095. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。一応警察署長に個人的な寄附があつた場合には、建前としては一応警務部長まで意見を上申いたしまして、その承認を得なければならないことになつております。ただ警察後援会等に寄附される場合におきましては、これは後援会の会計は警察と分離、独立されておりまして、これは飽くまでも後援会には民間当事者の団体になつておりますので、後援会に対する寄附等につきましては警察は承認を與えるとか、そういう点はいたしておりません。
  1096. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 警察後援会のことは別といたしまして、その他の方からこれまで警視庁としてやはり金品の寄附等は相当受けておりますか。前例は……
  1097. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 終戦直後二十一年から二十二年の初め頃までは、まだ警察の機構もどうなるかはつきり分らぬ。社会情勢が混沌としていたと同様に、警察制度そのものも非常に将来の見通しがはつきりいたしておりませんでしたので、又予算も極めて貧弱でありましたので、或いは警察費……、警察への寄附を受入れたというようなことがあつたかも知れませんが、併しこれも大体所定の手続を経てやつておるものと私は考えております。何ら不審はなかつたのではないかと思います。
  1098. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 警視庁管内の警察後援会は現に大規模なものができておりますか。
  1099. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 各警察署一つずつ後援会というものができております。それを纏めまして東京都警察後援会というものができております。
  1100. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 総合的なものが……
  1101. 田中榮一

    証人(田中榮一君) はあ。
  1102. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは警視庁管内を一丸となしたる後援会としては相当なやはり資力を持つておりますか。
  1103. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 後援会の内容については私は、十分に了知いたしておりませんけれども、そう大きな資力を持つてはいないと考えております。
  1104. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 警察官のやはり給與等に対しましても、後援会の方から援助を受けておるようなことがありますか。
  1105. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 給與等につきましては援助を受けておりません。これは飽くまで公費を以て賄つております。
  1106. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 最後に、丁度新聞にもありまして、あなたの先程来証言もありましたが、本件のやはり中心問題になつております増田官房長官、或いは吉田総理をあなたは御存じですか。
  1107. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 知つております。
  1108. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 勿論お会いになつたことはしばしばあるでしようね。
  1109. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 当然私の職務上報告すべきことは、首都の治安の責任上、報告すべきことは報告に参つております。
  1110. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この佐藤の問題について、こういう誤まり伝えられておるのか、或いは真実か分りませんが、例えば新聞に報道されておりますごとく、佐藤の出された金が、増田さんなり或いは吉田総理に関係があるがごときことを言うておりまする点について、総理或いは増田さんに事情をあなたから直接報告されたことがありますか。
  1111. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 全然ございません。
  1112. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 聞こうともしなかつたのですか。
  1113. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 聞こうともいたしませんでした。
  1114. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 よろしうございます。
  1115. 大野幸一

    ○大野幸一君 拜聴していますと、あなたのお人柄は理解できますが、但しちよつと配慮し過ぎてお答えになつている点がある。そういうところに気を配らないで一つお答えして貰いたいと思います。  先ず第一に、最初の答弁を聞いて見ると、委員長に対する答弁を聞いて見ると、非常に奇妙に聞える。これは速記録によつてあとで分りますが、昭和二十四年八、九月頃から佐藤昇警視庁に出入しているということを知つていたとか、感じていたとか仰せられました。そうですね。
  1116. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  1117. 大野幸一

    ○大野幸一君 そこでそれはどこに来ているのかという御質問に対しては、警視庁は建物が大きいから分らぬという、こういうお話です。例えば消防庁もあれば、国警もあるから、建物の中に出入しているということでは、警視庁に出入りしているという意味にはならない。警視庁用事に来るとか、行商人は出入りではない。ところでその当時から消防総監及び日野さんのところに来ているということは感じられていたのではなかつたのですか。ぶらぶらしているというので出入りというなら、それは警視総監じやない、衛視なんかでいいわけなんですね。(笑声)
  1118. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 消防庁に来ておる。それから同時に警視庁のどこかに来ておるということは聞いておりましたが、消防庁のどこに来ているかということはよく知りません。
  1119. 大野幸一

    ○大野幸一君 そこまで気を配らなくつていい。消防庁のどこというのでなくて、消防庁のところなら、最初総監のところへ来ている、こういうことは警視総監でなくても、陳述をしたものの中に、そういうことは証言をしている。総監自身が、佐藤が出入りしているぞと、こういうことを聞いていて、消防庁に来ているけれども、消防総監のところに来ていることは知らなかつたのですか、知つていたのじやないですか。
  1120. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 消防庁のどこかへ来ていたことは知つておりましたが……
  1121. 大野幸一

    ○大野幸一君 ところが佐藤がその年の暮に逮捕されるまで、自分には何ら具体的な手が打てなかつたとおつしやるのですが、何故打てなかつたのですか。好ましからぬ人物警視庁に出入りしている。而もこの下級の人が、犯罪事実として彼を検挙するまで、警視総監は手を拱いていなければならなかつた理由はどういうわけですか。
  1122. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これにつきましては、私はその佐藤昇氏が、とにかく官庁ボスであるという噂も聞いておるし、かたがた十月頃から佐藤昇氏の詐欺容疑事件が線上に浮び上つておりますから、むしろその線を強く一つ掘り下げて、そうしてこれを一つ摘発する、それが私は打つべき手だと、かように考えておりました。
  1123. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたも長く警視庁においでになつたのですが、警視庁内部のことをやり出せば、お互いに叩けばほこりの出る身で、皆がやり合うというようなことから、どうにもしようがないように感じられたというわけではないのですか。
  1124. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は若し佐藤昇が不幸にして警視庁に非常に食つ付いておるという場合においては、犠牲者が出るということは、これは覚悟の上でやつてつたのであります。当然のことであります。
  1125. 大野幸一

    ○大野幸一君 それじやその点は分りましたが、宗像警部を監察官に付した、こういうときにそれは宗像部屋の者が折田警部のところへ、宗像にはこういういうことがあるということを申出たのが端緒だ、こういうふうにお聞きしましたが、その通りですか。
  1126. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私の聞いた範囲では、宗像主任の部下が折田監察官附警部のところへ、こういうような事実があるらしいということを告げた、それによつて折田警部は、当然これは監察官附警部の職権としまして、そういう届出なり、密告なり、投書があつた場合は、必要があるならば即座にこれを調査するのが監察官の職権でありますから、直ちに取調べるために山内製薬会社について取調べをしたわけであります。
  1127. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは誰からお聞きになりましたか。折田警部ですね。
  1128. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論折田警部。
  1129. 大野幸一

    ○大野幸一君 折田警部からそういう報告を受けたのですね。
  1130. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 尚折田警部以外に外からも聞きました。監察官からも、警務部長からも……
  1131. 大野幸一

    ○大野幸一君 まだそのときには佐藤事件宗像がやつておるということは知らなかつたのですか。知つていたのですか。
  1132. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 恐らく私は知らなかつたのじやないかと思います。捜査二課の宗像主任部屋と折田とは全然関係がないことであります。恐らく私は全然知らないでやつたと思つております。
  1133. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると、折田氏の部屋の下僚が上官のことを告げに行くわけですね。そういうような機構でお互いに仕事ができますか。そういうことも結構ですよ、犯罪はお互いにやり合うというために綺麗になれば結構だが、そういうような雰囲気で仕事ができますでしようか。
  1134. 田中榮一

    証人(田中榮一君) この点につきましては、私共は十分今後も指導して行かなければならん、警察官として又考えねばならん点が多々あると考えております。今後十分一つ私は指導したいと考えております。
  1135. 大野幸一

    ○大野幸一君 監察官が無能で、監察官制度の欠点があつて、お互いにあばき合わなければならんというのでは、これは小さい一つの刑事部屋でしようが、大きく考えると、やはり警視庁一つの派閥がある。あなたはちつとも派閥がない、ちつとも都民に心配をかけない、これは警察官の名誉のために断言するとおつしやるが、実際は現われたところのものが、現実そのもので、その点はどうなんですか。
  1136. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私はそうしたことは派閥であるとは考えておりません。従つて警視庁としましては、何ら治安確保に支障ない、私はこう思つております。そうした小さなことは派閥であるとは絶対に考えておりません。
  1137. 大野幸一

    ○大野幸一君 日野署長は辞職したのである、こうおつしやるが、若し辞職しなくて頑張るとしたら、あなたはどういう措置をとるか、そのまま留めて置きましたか。或いは懲戒にかけるということもあるでしよう。そのままで置きましたか。
  1138. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論私は日野君に、若し日野君がどうしても辞職しないという場合は、私としても何らかの方法をとつたろうと思います。
  1139. 大野幸一

    ○大野幸一君 何らかの方法をとつた……
  1140. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  1141. 大野幸一

    ○大野幸一君 追放者ですね、前に警視庁に勤めていた人で追放者でも、自分が恩誼がある人は慕つて行くことは構わないと言いますが、役所内における恩誼というものがありますか。
  1142. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは私は役人にも公私いろいろ、公の上におきましてもいろいろ未熟の者を指導して呉れる、これは上司の恩誼というものがあるわけであります。又私におきましても、いろいろお世話になるという場合があるのであります。従いまして公私の恩誼というものは当然あるのじやないかと思います。
  1143. 大野幸一

    ○大野幸一君 公けを別にした私的意味の恩義ですね。
  1144. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうであります。
  1145. 大野幸一

    ○大野幸一君 ところが公私は混同し易いものであつてその人達とつき合うということ、親密なる交際を持つということが好ましいことではないと思うが、どうでしようかね。
  1146. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは、先程私が申上げましたごとくに、お互いに警察官として、いわゆる越してはならぬ線は当然これは守らなくてはならないと考えております。従つて警察官として、曾ての上司におつき合いするということは、これは私的関係でありますから、差支えないと思つておりますが、ただいろいろの問題について請託を入れたり、或いはその者のために特別に法を曲げたり、そういうことはこれは警察官として越すべからざる線でありますので、かかる点は、お互いの自制と反省と申しまするか、そういう点で考えていかなければならん、こういう意味を申上げておるのであります。
  1147. 大野幸一

    ○大野幸一君 鹽谷総監が五万円佐藤昇から貰つたとか、提供されたとかいう調書については注意を拂いましたか。
  1148. 田中榮一

    証人(田中榮一君) この点につきましては、部下から報告を受けました。
  1149. 大野幸一

    ○大野幸一君 報告を受けましたか。
  1150. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 受けました。
  1151. 大野幸一

    ○大野幸一君 その報告の中に、一度鹽谷総監に五万円贈つたという事実があつて、それから日にちを異にして、或る新聞社の記者に五万円貸したという、それは金の使途を明白にするために、そういう日にちを異にして鹽谷総監に五万円、それから新聞記者の人に五万円貸したというような調書が二回別々にできておるという事実をあなた御存じですか。
  1152. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは鹽谷総監に、当時佐藤昇氏が非常に頭が混乱しておりまして、どうもはつきり覚えていないが、五万円をやつたような気もするというような、まあ供述調書になつております。そこで私共としましては、一応その供述調書を取りまして検察庁の方へ送つたのであります。その後総監からの申出で、そういう事実はないのだということでありますので、弁護人からもそういう事実が、訂正の事実があつたようでございますが、併しその点は又検察庁において再度お取調べがあるので、その際に又はつきりした陳述をするからというので、そのままで向うへ送つたのであります。そのときに警視庁としましては、鹽谷総監は五万円貰つていなかつたという心証を得ております。
  1153. 大野幸一

    ○大野幸一君 詐欺事件だけに主力を注いで、涜職という点ですね。この疑のあるものは検察庁に任したというお話ですね。それはどういう意味ですか。若し犯罪事実の嫌疑があれば、詐欺事件だけをあなたがやらなければならんということはないので、それで涜職のことも自分みずから自動的に働いてもいいように思うのでありますが、これを検察庁に任された理由は……
  1154. 田中榮一

    証人(田中榮一君) いや、私が申したのは詐欺事件と、ちよつと言葉が足りないので訂正いたしますが、詐欺事件と涜職事件について併せて警視庁取調べをして、事件として検察庁へ送つた、その外のいわゆる政治献金のような行為につきましては、これは先程も述べた通りに、時期的にも非常に困難な点があり、それから又いろいろ当事者の関係とか、或いは事実の認定等非常に長時間かかるというような関係から、一応一切を明白にして、検察庁にその都度連絡を取りつつ、纏まつたものを検察庁へ送つた、そういつたことにつきましては、その都度検察庁に常に連絡をとつてつたわけであります。
  1155. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから佐藤昇取調べたことについて、人権蹂躙があるというようなことが後に叫ばれて来たんですが、それについてあなたは人権蹂躙があつたかどうかということを、監察官なり又は自分で調べられたようなことがありますか。
  1156. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 監察官は取調べはいたしておりませんが、係りの者に大体の状況を聞き質したわけでありますが、別に人権蹂躙的のことはございません。いろいろできるだけのことは、普通と同じようにできるだけの便宜は鹽谷つたと思つております。
  1157. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 小さいことでございますが、二、三お伺いいたします。逮捕状の請求や、それを執行なさいますときに、警視総監に相談して行くというような、事件のこの線はどこで引かれますのでございましようか。
  1158. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 普通は一々逮捕令状の請求とか、或いは執行につきましては総監のところに参りません。ただ大きな事件のときにおいてのみ、一応総監の方に事後報告、若しくは事前の打合わせということをいたします。
  1159. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 今度のこの佐藤昇事件については、係官が報告に参ります前に、どなたか総監のところにこの話を持込んだのじやございませんでしようか。
  1160. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私のところには松本捜査課長が直ぐ逮捕令状を執行したいからということを言つて来たのが初めてであります。私といたしましては、成るべくやはり逮捕した方がよかろうということをかねて言つておりましたので、先程証言した通り、検察庁との話合もあるので、松本捜査課長が直ぐ令状を執行したいからという申出がありましたが、私は当の事件捜査してから逮捕した方がよかろうかということを、松本捜査課長もよく納得いたしましたので、それでそういう措置をとつたわけであります。
  1161. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それからこの五井産業事件におきまして、検察庁の方の係検事には誰と誰にお会いになりましたでしようか。
  1162. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は直接会つておりません。それは主として検察庁との交渉は坂本刑事部長、若しくは松本捜査課長、或いはその下の飯塚係長宗像刑事というところが事務的の折衝はしておつたようであります。私自身としましては検察庁とは交渉いたしておりません。
  1163. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 分りました。それから今一点、警視庁が大きい事件捜査をなさいますときに、陣中見舞ということをしているのでございますが、それは警視総監或いは検事正といつたような、直接指揮をいたしておりますものからございます以外にございますね、どういう範囲のものが今まで黙認されておりましたでしようか。
  1164. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 今まで陣中見舞として来たのは、二十三年の帝銀事件、あのときに、これはもう全国から鼓舞激励の意味で陣中見舞と言いますか、頂いております。これにつきましてはそれぞれ礼状をはつきり出しております。而もこれはそれぞれ所定の手続を経て処理いたしております。
  1165. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 そういう場合に、何か事件関係はないかというような、例えば下山事件なんというのは随分広い範囲の捜査だと思いますけれども、そういう調査をなさいました上で、それを受取りになるというような手続はございましようか。
  1166. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それはやつていないと思います。
  1167. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 ああそうでございますか。今日の午前中の吉武さんのときに、係員の慰労という名前で、岡田さんでございますか、岡田さんから頂いたのを無條件で安心して受取つたというお話があつたのでございますけれども、ところで係官の慰労ということになると、その名目に名を籍りて、或いは間違つたことが起るんじやないかというような感じは持ちますけれども、そういう御心配はございませんですか。
  1168. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 先程私は一応審理せずして受取ると申上げましたが、一応そういつた金銭の寄附があつた場合には、まあ一応はこういうものを貰つていいかどうかということは一応考えて、審理した上で貰つておるというふうに私訂正さして頂きたいと思います。
  1169. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 最後の責任者は誰でございますか。
  1170. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 最後の責任者は勿論私でございます。総監が最後の責任者であろうと思います。ただこまかいことでありますから、庁内の庶務細則によつて、或る事項につきましては部長に一任し、又更にこまかいことにつきましては課長に一任し、又更にこまかいことにつきましては係長に一任するということが、庶務細則にも決まつておりますから、必ずしも総監が一々承認する必要はない。
  1171. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 証人に二、三の点を伺いたいと思いますが、さつきからの御証言を伺つておる間に、第一に伺いたいと思つておりますことは、証人が御自身の良心というものと、それから部下についての御判断というものとは少し混同しているんじやないかと思うのです。例えば証人は、御自身が佐藤という方と関係がないということははつきりおつしやつておりますが、併しあなたの部下がその人と重要な、可なり密接な関係を持つということに対して、総監としてのあなたは責任がおありがないでしようか。
  1172. 田中榮一

    証人(田中榮一君) いや、これは私は責任がないとは申上げませんけれども、部下の中でかかる人物と若し非常な深い点があつたという点につきましては、甚だ申訳ないと思います。
  1173. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第二は、そうすると、さつき若し日野という方が自発的に退職されたような場合には、処置を考えておられたとおつしやるのは、何を理由として処置なさいますか。
  1174. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 警察官としてふさわしくない行為をしたということであろうと考えておりますが、要するに警察官の日野が特定の個人から貰つてそれを使用した。勿論これは私に使用したことではないのでありまするが、かかることが外部から非常な誤解を受けるということであります。従つてかかる行為は警察官としてふさわしくない、まあ卒直に言えば、綱紀粛正の上から面白からざる行為であるということになると思います。
  1175. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点は今の御証言でも少し曖昧なところがあるようですが、日野という方の御証言のときにも少し曖昧で、何も疚しいことはないのである。誤解があるといけないからという程度のことだつたんですが、そこにはちよつと本質的な違いがあるように思いますが、正しいことをやつていたんだけれども、誤解を受けるといけないからという言い方を普通しますが、併し本質的にはそういうことがふさわしくないのじやないかというふうには御了解ならないでしようか。或いは日野という方は御自身そういうふうに理解されていないようですか。
  1176. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は現在の状態におきましては、お説の通り本質的には正しいことでなかつたかと考えておりまするが、ただその当時の客観情勢がそうせざるを得ないような状態に追い込まれておつたという、いわゆる客観情勢ということを考えると、直ちにこれを本質的に不正行為であるということは言い得ないのじやないかと考えております。
  1177. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第三に伺いたいのは、昨年の十二月の七日前後に、佐藤という人に対して逮捕を協議されたことがおありでしようか。
  1178. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 十二月七日ですか。
  1179. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ、七日以前に……
  1180. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 協議はいたしませんが、坂本刑事部長を通じて、若し証拠が固まるならば、成るべく早く逮捕した方がよかろうということは坂本刑事部長には私申伝えたと思います。はつきり覚えておりません。
  1181. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そのときに、佐藤という人を逮捕することは、吉武という人の追討ちのようになるからということをあなたはおつしやつたことがありますか。
  1182. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そういうことは覚えておりません。どういうふうな意味言つたか、自分自身としては覚えておりません。
  1183. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 恐らく想像では、吉武という方がそのとき上野へ転出されている筈であります。追討ちというのは、上野へ転出した、それを又追つかけるようになるという意味ではございませんか。
  1184. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それは佐藤逮捕することがですか。そうい意味じやないと思います。私もはつきりどういう際に言つたか覚えておりませんが、要するに吉武の、何か岡田秀雄事件じやないかと思います。そのときに何かビールを貰つたとか、貰わぬとかいう事件があつた。それを一つ調べたらというような話もあつたんです。その問題はいずれあとで分ることでもあるし、吉武が警視として、上野の次席に行つたばかりであるからして、上野の次席に行つたところへ、直ぐそういつたことをやることは、次席としての権威にかかわることである。そうしたことは急ぐ必要がないんだからということで言つたかと思います。何か佐藤昇氏を逮捕することは、吉武に追討ちになるという意味はなかつたと私は思つておりますが。
  1185. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第四に伺いたいのは、あなたは警視庁を外部から御覧になつたことはありますか。
  1186. 田中榮一

    証人(田中榮一君) あります。履歴は申上げなかつたと思いますが、東京都におりましたし、終戦連絡事務局におりましたので、私は或る程度外部から見た警視庁ということも知つている筈であります。
  1187. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点につきまして、私共はあなたに非常に期待するのですが、警視庁の中だけにおられる方は、特定の感覚はどうもある。今東京都におられ、或いは終戦連絡事務局におられたと言われますが、私の言う外部というのは、役所の外から、まあ国民の一人として、人民の一人として見たことはおありになりますか。
  1188. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私もできるだけ人民の一人として、警視庁のやり方、自分のやり方を常に反省はしておりましたが、不敏にしてその中に入り切つてしまうと、大変に自分というものを分らなくなるということを非常に憂えております。
  1189. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでその点から伺いたいが、現在あなた方の警視庁においては、追放者についてはどんなふうにお考えになつておりますか。
  1190. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論追放者については、追放者の守るべき、追放者自身が守るべき規定もありますし、我々においても、法的においては当然警察官として守らなければならん点は遵守しているのでございます。
  1191. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それに関係して伺いたいのですが、例えば現職の警察官が追放者を訪問されるということは、まあ正月とか、或いは暮とかというような場合には、いわゆる私の関係として許されることがあるかも知れないが、許されるということもあるかも知れないが、毎週面会するようなことは許されるべきことでしようか。
  1192. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは私はその本人の自覚に待つべきだと考えておりますが、余りこうしたことは、むしろ遠慮した方がいいのじやないかと考えております。
  1193. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 本人の自覚だけでなくて、現職の警察官が追放者と毎週一回ぐらい会うということについては、あなたはそれは不当だとはお考えになりませんか。
  1194. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私に会うのならば必ずしもこれが不当だとは考えておりませんが、ただ相手が追放者でありますから、余程その点は十分に自覚と反省によつて正しい判断の下に行動をとつて欲しいというように思つております。
  1195. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併し親戚とか、家族的な関係とか、職業的な関係とかということがあれば別ですが、そうでない場合に毎週一回、二回会うということは、単にプライベートな会見とは思えませんね。
  1196. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その点は私はよく分りません。事実はプライベートの会見であつたかどうかは私よく知りません。
  1197. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことを伺つておるのじやない。総監としてあなたの部下の現職の警察官、殊に重要なポストにおる人が追放者と毎週会われるようなことは、これはどなたであるということに関係なく、その場合にそれはプライベートであるとみなすか、何かそこにプライベートを越えて……
  1198. 田中榮一

    証人(田中榮一君) プライベートで会うのならば、私は更にそう詮議立てる必要はないのじやないかと、こう思つております。
  1199. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その場合にはプライベートであるかないかをお調べになるわけですね。
  1200. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それは私の方は調べません。
  1201. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 なぜお調べにならないのですか。
  1202. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 調べる必要はないと考えます。本人はその程度警察官として当然自覚を持つておると私は考えます。
  1203. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 続いて伺いたいのですが、そういうような件で、我々がその外部から警視庁を眺めて行きますと、今証人がおつしやるような、警視庁の重要なポストにおる方が十分の自覚を持つて行動されておると信じたいのですが、恐らく警視庁の内部におられるために、そういう感覚が麻痺し、我々が外部から眺めた場合には、思わしくないと思える人と非常に密接な関係を持つておられるということがあつたのじやないかと思いますが、そういう点は、例えばこの佐藤という方が警視庁に出入されるというのについても、さつき証人はそういう人が警視庁に出入しておるということについて、非常に嚴格にはお考えになつていなかつたようで、それから又土田という方が、予備隊長という方ですが、この方がこの追放者の会合にしばしば出席しておられ、我々外部から見ると、どうもプライベートなものじやないように思えるのですが。
  1204. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 結果から言いますと、先程吉武証人言つてつたように思いまするが、結果から見ると、佐藤昇氏が詐欺事件の容疑者として、これらの人々と附合つたということは、道徳的にどうかと思う節もありまするが、実際問題としてお考え願いたいと思いますが、警視庁には日に数千人の人が出入りいたしております。それから又幹部のところにも時に要件があつて来るのであります。客観的に見て、これが非常に好ましからざるボスであるということの認定が非常にむずかしいわけであります。これらの点につきましては、まあ十分我々も一つ内部的にお互いが自己反省をするという立場において十分に連絡をとつてつて、若しそうしたことがあるならば、お互いに注意して行かなくちやならん、こういうように考えております。成るべく今の委員のお話のように、自分が麻痺しないように、常に自己反省して行かなくちやならんと考えております。
  1205. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 例えばまあごく大雑把な例を言うと、警視庁の中に行つて警視庁の籠抜け詐欺なんというのは、始終でないかも知れないが、ときどきあるようです。我々の家庭ではそういうことはない、なかなかないのです。それはどうしてかと言うと、やはり我我は警視庁というものを非常に信じておる。ところが内部においては必ずしもそれだけの信頼に応ずるだけの嚴格さというものが保たれていないということがあるのじやないか。日本は御承知のように、特に偽刑事というものが前から非常に多かつた、外国じや余りないことでありますが、ちよつと刑事だからと言われると、我々人民は先ず大体信じて、身体も、財産も全部預けてしまうということが、しばしばあると思う。これは人民が愚かである。或いは偽刑事をやる奴が怪しからんということだけでないと思う。そこにやはり警察行政上考えなければならん点もある。なぜ日本には多くて外国には少いか。外国には偽刑事事件というものが御承知の通り非常に少ない、日本には非常に多い。これらとも関係して、この今のような問題があるのじやないか。従つてさつきから委員が御質問にもなつているいわゆる陣中見舞というようなものも、これは外国には余りないことですが、日本ではそれが多い、割にこれに対して無感覚にお受けになつておる。さつきも一応は調べて見るということですが、私は昨日か一昨日かも日野さんにも言つた質問ですが、警察の幹部に金をよこすという人は、我々の国民の常識では先ず大体悪い人と思うですね。ところが昨日お話を伺つていると、それがなかなか警察に協力する良い人というようにお考えになつているらしいのです。そういう……
  1206. 田中榮一

    証人(田中榮一君) まあ今の委員の御質問に対しましては、十分一つ我々もできるだけこの民主警察を明るく、明朗に、力強くすべく今後十分努力したいと考えておる次第であります。
  1207. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 具体的には、さつきも当時の事情としては止むないことであるということをおつしやつていましたが、当事の事情として止むないということを、例えば昨日日野証人吉武証人にも伺つて見ると、当時として止むを得なかつたということは如何にも了承できるんですが、併し当時であればこそ、或る意味においては一層そういう点を国民と共に辛抱されて、これは必ずしもまだ明らかになつていませんでしたが、この午前中の証人に対する質問の中に当時、これは今の証人じやない、午前中の証人ですが、その方の生活というものが必ずしも当時のような逼迫した社会情勢において、国民と共に苦しい生活をしておられいのじやないかというように察知せられなければならない。疑いを受けるような点もあつたようであります。今最後に伺つておきたいのは、御承知のように、日本の古い警察の観念というものが可なりありますけれども、警察官は大体いわゆる有力者と親しくなり、そして人民に対してはお威張りになるという風はまあ昔からあつたのです。例えば総監は最近市中で上映された「暴力の街」という映画を御覧になりましたか。
  1208. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 見ました。
  1209. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あの中に、お気附きになつたと思いますが、銀行に勤めている女の人が、ボスにひどい目に遭つた。告訴をしよう、訴えよう。それに対して警察官が、ああいう方を訴えるということは飛んでもないことだ、あの人は地位があるのだ、地位があつて金があるということは人格者だということを言つておりますが、あれは一つの映画ではありますけれども、併し今までの警察観念を現わしておるとはお考えになりませんか。
  1210. 田中榮一

    証人(田中榮一君) あれは映画でありますから、非常に誇張化しておりますけれども、私共としましては、あの映面は非常に今の日本の警察を侮辱したものだという感じを持つておりますから、少くとも全国の警察はああいつた「暴力の街」のような警察ではないと思つておりますから、私はまああれは映画でありますから、我々も文句は言いませんけれども、ああした映画を見せて貰うということは、警察に対する国民の認識を非常に誤まらしめるものだという私は考えをもつておりますから、もう少し映画も正しく警察を見て頂きたい。常に警察は、民主警察におきましては、警察は一番宣伝が下手なんですから、(笑声)それで特に心ない国民から罵倒されましても、警察はこれに対して抗弁の余地はないのであります。従つて私共は歯を食いしばつて、苦しい中をこの治安碓保に邁進いたしておりますから、従いましてああいつた映画は、本当に警察の職務を正しく認識して下さる方があつたならば、あの映画は実に警察官の士気を非常に低下させるものだとして、非常に残念に考えております。まあ、委員は非常にあの映画について感心されておりますが、私共といたしましては、本当に正しく警察を認識して頂くような立派な文化を作つて頂きたいと、こういうふうに思つております。
  1211. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 これは警察を、あなたも現在の警察を民主化しなければならない。或いは浄化しなければならないということはお感じになつておられるのですね。
  1212. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論私はその信念で二万七千人の警察官を、不敏ではありますが、引率して、今民主警察の樹立に邁進いたしております。
  1213. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その民主化し、浄化するためには、弊風があれば、それを批判しなければならないということをお考えになりますか。
  1214. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論批判しなければならないと出います。直ちに悪い点は、これを改善しなければならないと思います。
  1215. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 いわゆる臭いものにはふたをするという考えはないのですね。
  1216. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  1217. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 弊風は十分批判しなければならない。今の「暴力の街」という映画についても、非常に多くの国民がそれを見て非常に共鳴するところがあるのですね。
  1218. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その点は私共も「暴力の街」に現われた警察の今までの古い行き方につきましては、これは十分に是正しなければならない。併し又警察を余りにも片寄つたものであり、間違つたものであるという宣伝と言いますか、文化宣伝のやり方は今少しく考えて頂きたい。我々は決して自分の批判されることをどうというのではないのでありますが、少くとも私は本当にこの混乱した情勢におきまして、全部私は恐らく生命を的にして真剣にやつておりますから……
  1219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 羽仁さん、「暴力の街」は、当委員会の本庄事件の調査も批判をしておりますから、それで御勘弁願いたいと思います。(笑声)
  1220. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今証人に伺つて置きたかつたのは、いわゆる旧警察観念を如何にして脱却し、新らしい民主警察の観念に移行せられたかということについて伺いたかつたのであります。御承知のように、敗戦直後に総司令都がニューヨーク警察を担当しておられたヴァレンタインという人を日本に招かれた。そうして特に日本の警視庁を中心に改革をされようとしたのでありますが、我々の聞いておるところでは、ヴァレンタインという人は日本の警察を民主化するということは到底自分にはできない。それで予定を早めて帰られたということを聞いておりますが、これは恐らく私の聞き違いだろうと思つておりますが、日本の警察も十分急速に民主化されつつあると思つておりますが、そういう意味において、旧警察観念というものは非常に憎むべきものである。それをどうにかして脱却しなければならない。そういう意味で今のお考えを伺つたのであります。
  1221. 小林英三

    ○小林英三君 議事進行について……
  1222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつとお待ち下さい。
  1223. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 証人のような方に対して、我々としましても非常に期待をしておりますけれども、今申上げたような点で、まだ幾分私共証人証言で納得の行かない点があるという点を御承知つて私の質問を終ります。どうも有難うございました。
  1224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先に証人だけお済まし願つて、あとで質問して頂きたいと思います。
  1225. 小林英三

    ○小林英三君 いや、いいです。質問じやないです。
  1226. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 二、三お聞きしますが、この佐藤事件逮捕状が出る前に総監はその話を承つてつた。こういうわけでして、総監が話を承わることは大抵警視庁の大事件は承わるけれども、その外のものは知らなくてもいいんだ。知らないんだ。こういうお話でありましたけれども、この事件警視庁としては大事件つたのですか。
  1227. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私は普通の事件考えております。何もこれが大事件だとは考えておりません。今でもそういう考えです。
  1228. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それに何故総監の所へそれが行つたのですかね。
  1229. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それは恐らく松本捜査課長が坂本刑事部長から、まあ待てと言われたので、私の決裁を得るべく来たのではないかと考えます。それで私の耳に入つたのだろうと考えております。
  1230. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 大体においてそのときは事件の内容は勿論分らない筈ですが、大体その前に官房長官とか、吉田首相の名が出るような危険があるというようなことはあなたは分らなかつたのですか。そういうことは全然分らなかつたのですか。
  1231. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 当初は全然分りませんでした。
  1232. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それから日野昇が辞職をいたしましたね。そのとき監察官が日野氏を監察した筈なんですが、そのとき五万円貰つたというようなこと、その外に何か貰つてはおりませんでしようね。外の人からも……
  1233. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 日野昇前中野署長は佐藤昇から十一万円を数回に分けて貰つたということを陳述いたしましたが、その外の物品等については何も貰つていないと私は聞いております。
  1234. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 その外の人から貰つておりませんでしようね。
  1235. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その外の人から貰つておりません。
  1236. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 特に佐藤にのみ貰つたというわけですね。
  1237. 田中榮一

    証人(田中榮一君) そうです。
  1238. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 この佐藤というのは、方々の警察なんかに関係しておりますが、又方々の警察関係では、先程申しましたように、後援会とか、防犯協会とかいうところから盛んに寄附を受けておるのですが、そういつた受けた寄附というものは、勝手に警察署で使われるのですか。
  1239. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 防犯協会とか、警察後援会に受入れました寄附は、これは飽くまで団体の寄附でありまして、そうして若し警察の方で防犯協会の、例えば防犯週間等におきまして、或いはビラであるとか、宣伝立看板等を作るという場合におきましては、防犯協会が作つて警察に渡すと、こういうような方法をとつております。それから警察後援会等が、例えば自転車が少ないからというので、自転車を買つた場合には、警察後援会が自転車を警察に引渡す。警察は正式に警務部長に上申しまして、その承認を得る。そうしてこれを都の財産の台帳に記入するということになつております。
  1240. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そういう場合は大体問題はないのでありますけれども、金銭を直接寄附される場合がございますね。そういうは場合は総監の方へ一応稟議をして、その結果使うのですか。それともその警察署寄附されたものはその警察で勝手に使つてよいのですか。
  1241. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 成るべく警察署が個人その他団体から直接寄附を受けることは努めて避けております。若しそういう申出があつたならば、警察後援会にこれを受入れさせる。そうして真に止むを得ず受入れるというような場合は、それぞれ所定の手続を経まして所属の上司の承認……最後は警務部長でありますが、警務部長等の承認によつてこれを受ける。併し成るべくそうしたものは警察後援会の方へ寄附を受けさせるということになつております。
  1242. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 では、こういうことを御存じですか、佐藤でしたか、神田とか、富坂、それから日本橋でしたか、あの辺に現金の寄附があつたというようなことを御存じでしたか。
  1243. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは知つております。部下からその事情を聴取いたしましたが、これはいずれも警察後援会に正式な手続きによつて受理したものでありまして、何ら違法性はないと私は思つております。
  1244. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 その使途については別に監察事務は行なわないのですか。
  1245. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは成るべく物を買つて物を渡すということになつております。若し金を渡した場合においては、恐らく署長の方から警察後援会長にその結果を報告することになつております。
  1246. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 この寄附行為ですが、民間の寄附行為というものは非常にやかましく言われております。いろいろな弊害もあるからでしようが、警察の寄附行為は簡単に受付けるということになると、これは又大きな誤解を招くということになるのですが、将来こういうことについて、総監として敢て禁止しなくてもいいというお考えなのでしようか。
  1247. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 先程この点につきましては申述べたのでありますが、できるだけ公費を似て支弁する。民間よりの寄附は成るべくこれを避けたい、こういう方針で行きたいと思います。
  1248. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 成るべくということはあつた場合においてはあつてもよろしいという意味ですか。
  1249. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 止むを得ない場合においては差支えないと思います。
  1250. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 止むを得ない場合というのは……
  1251. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 例えば警察署で改築いたしますときに、現在の都財政の困窮状況からいたしまして、建物は作る、併し備品は地元の寄附でやる。これはひとり警察のみならず、区役所、学校その他公共物につきましては、従来そういうような方針がとられております。従つて都財政の状況から見て真に止むを得ざるような場合におきましては、そういう方法をとらざるを得ないと思つております。併しこれにつきましては正しい手続きによつて処理したいと、こう考えております。
  1252. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうしますと、この日野氏のとつたような行動ですね。個人が金を貰つたというようなこと、これは実際において今までも他の警察もこういうようなことがあるのだということを日野氏が言つておるように思われたのですが、そういうようなことがありました場合は、嚴然たる態度を以て臨む、こういう意思でございますか。
  1253. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 勿論そういう意思でございます。
  1254. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今のに関連して一言だけあれして置きたいのですが、止むを得ざる場合、その備品などを地元で寄附をするということを認められるということですね。できるだけ早く廃止されたいとおつしやいますので、強いて追及をしないのですが、これはつまり今までの警察というものは弱い方の味方をされないで、そういう金があるとか、顔がきくとかいう方の味方をしておるという点が、つまり旧警察観念の困る点じやないかと思うのです。だから警察署の備品を購入するということになると、やはりいわゆる勢力がある人がそういうことをするわけで、弱い貧しい人達はそういうことはできないのです。そうすると、それが利用されて、弱い人がそうしたボスなどに苦しめられる、そのときに警察が弱い人の側に立つて、それを保護してやることができにくくなるということがあるので、できるだけ早くそういう点を脱却して頂きたいと考えるのであります。
  1255. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 私も又同感でありますが、これは逐次改善して行くことに努力いたしたいと思います。
  1256. 松井道夫

    ○松井道夫君 警察後援会という話が出ましたが、警察後援会というのはどんな人が組織しているのですか。
  1257. 田中榮一

    証人(田中榮一君) どんな人と一概に言えないのですが、管内の人々が自然的に組織してやつている団体です。
  1258. 松井道夫

    ○松井道夫君 やはり管内の有力者、要するに一部の人が組織しているのですか、或いはその住民全部ということになるのですか。
  1259. 田中榮一

    証人(田中榮一君) それは区々だろうと思つておりますが、有力者の人々で作つている所もありますし、又管内の住民が全部これに加入している所もあるようでございます。その辺は私具体的には存じておりません。
  1260. 松井道夫

    ○松井道夫君 その後援会は一体何をするのですか。後援するのでしようが、後援するというと、やはり金品の寄贈をしたりなどいたすのですか。
  1261. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 大体物を買つて、例えばインクであるとか、用紙であるとか、そういう物は当然これは公費でやらねばならぬことになつておるのです。ところがそれが財政の窮乏からできない場合に、そうした物を後援会で買つて渡す、こういうことになるのです。
  1262. 松井道夫

    ○松井道夫君 その地区の住民全部ということになると、それは一種の税金みたいなことになりますね。それから一部の人ということになると、先程からいろいろ議論されているような弊害が考えられるし、結局今の状況としては警察後援会は必要なんですか、どうですか。
  1263. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 現在の状態では、これを急に廃止するということは非常に至難ではないかと考えておりますが、将来この後援会が廃止されれば警察としても非常に恩典だろうと思つております。
  1264. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから今の個人から警視庁寄附する、或いは警察署寄附するというときには、これは原則としてその人柄なども見るという趣旨を言われたと思うのですが、警察後援会あたりから寄附を受けるについては、これは警視庁なら警視庁からいろいろ監督と言いますか、そういうことは全然ないわけですね。
  1265. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 警視庁から直接警察後援会は監督いたしません。これは飽くまで民間当事者団体になつておりますから、監督はいたしませんが、併し予算の編成、決算の承認等は必らずさせように慫慂いたしております。
  1266. 松井道夫

    ○松井道夫君 実際にそれは行われているのですか。
  1267. 田中榮一

    証人(田中榮一君) やつております。
  1268. 松井道夫

    ○松井道夫君 併しながらこれは警察後援会が第三者から寄附を受けるということについて、どれだけの注意をしているかということは、これは警視庁としては直接分らぬわけですね。
  1269. 田中榮一

    証人(田中榮一君) ときどき例えば監督官等が行きまして、後援会そのものは監察はしませんが、成るべく一時的の寄附によらずに一般会員制度でやるとか、そういうようなことについて署長の意見等も聴取いたして、それによつて若し不適当の点があるならば、署長を通じてこれを是正せしめるというような措置をとつております。
  1270. 松井道夫

    ○松井道夫君 そういう工合に指導しておられる。併し現に今の佐藤昇ですね、これが直接五万円を寄附しようと思つたところが、これは総務課長ですかから、まあ謝絶でしようが、謝絶された。然るに同じ佐藤は警察後援会とか、防犯協会というものがあるそうですが、そういうものに対しては相当額を寄附しているようですね。
  1271. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 寄附しております。
  1272. 松井道夫

    ○松井道夫君 そういうところを見ると、そういう警察後援会あたりが寄附を受付けるということは、これはちよつと考えものである、即ち警視庁にじかに金を持つて行く代りとして、そういう所へ持つてつて、間接に警察に一つのインフルーエンスを與えようとする。今度はそういう様子があるように考えられるのですが、その点はどう考えておられますか。
  1273. 田中榮一

    証人(田中榮一君) これは寄附を受ける受けないは後援会長の意思によりますから、今まで来たものを受けるなというわけにも行きませんし、又その点は後援会長の判断によつて受入れるだろうと思いますから、この点はどうも署長としても止むを得ぬことじやないかと思います。
  1274. 松井道夫

    ○松井道夫君 多少の弊害は起きても、今のところは止むを得ぬというわけですか。
  1275. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 若し管内にこういうものがあつた場合において、恐らく後援会長から、非常に後援会長自体も自己の判断によつて、こういう者から寄附を受けることは警察のためにいい影響でないという場合においては、恐らく後援会長自体がこれを拒否されるであろうと思います。若し分らぬときには、警察署長の意見を徴する場合もあると思いますが、大体において後援会長も警察署立場ということを考え寄附を受入れて貰つておると考えます。
  1276. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたはそう考えられておられて、頗る理想的な場合を考えておるわけでありますが、そういつた弊害を生ずることも予想されるわけでありますね。それはお認めになりませんか。
  1277. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 予想される場合もありましよう。
  1278. 松井道夫

    ○松井道夫君 その余地はあるのですね。
  1279. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 余地はありましよう。
  1280. 松井道夫

    ○松井道夫君 それからもう一つお尋ねしたいのですが、これは私が遅く参つてあなたの証言を聞かなかつたのでありますが、こういう趣旨の尋問事項があるのです。岡崎と丹羽との関係、同人等が警察署内に関し、各種の口出しをしたことがあるや、こういう趣旨の尋問事項があるのですが、この各種の口出しをしたことがあるやという、この点はどういうことですか。
  1281. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その点は先程私が証言いたしましたから……
  1282. 松井道夫

    ○松井道夫君 結論だけは……
  1283. 田中榮一

    証人(田中榮一君) ありません。
  1284. 松井道夫

    ○松井道夫君 ありません。
  1285. 田中榮一

    証人(田中榮一君) はい。
  1286. 松井道夫

    ○松井道夫君 それで伺うのですが、先程の各委員のあなたに対する質問によりますと、どうも警視庁の現職の警察官が、追放を受けた人達のところにまあ出入りしておるという事実があると思われるのですが、そういうことはですね、場合によつてその追放された人の警視庁なら警視庁に対する影響力ですね、それをいわゆるまあ温存と言いますか、温存する何らかの、直接総監には口出しはしないにしても、その追放された人達の意思を警視庁運営の上に現わす余地を残すということは考えらませんか。
  1287. 田中榮一

    証人(田中榮一君) その点は先程も再三お答えしておりますので、結論だけ申上げますと、その心配は私なかろうと思います。ないと思つております。
  1288. 松井道夫

    ○松井道夫君 併しあなたは御承知の通り追放に関する法令には、追放を受けた者は自分の曾て追放される地位におつた役所には出入できないというふうになつております。然るにこつちの方から押かけて行つて、いろいろ座談の会に行つたら、何々警部がどうなつたとか、どこに転任になつたとかという話も出るし、あの課長はどうもあなたのことをよく言つてないというような話も出る、その間におのずからその今の法令の趣旨に反するような影響力がここに出て来るということは当然考えられると思うのです。あなたはそういう心配はないと、あなたは先程伺つておると一番最悪でなくて、最良の結果をいろいろ述べておられるようですが、最悪の場合も例外的には、殊に犯罪者だつて出るのですから、警察署の中からでも最悪の場合には、そういうこともお考えになつて、今の追放者に関する関係など余程日常注意されて、多少の指導ぐらいを與えられる必要があるのじやないですかね。或いは訓示の中に入れるとか……
  1289. 田中榮一

    証人(田中榮一君) 先程も私お答えしたのでありますが、勿論この追放者のところに私的交際で……
  1290. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや先程の御答弁は聞いておるのです。併しその御答弁を伺うと、どうもあなたの考え方が、まだ追放の関係に対する考え方が徹底していないように考えられるのです。
  1291. 田中榮一

    証人(田中榮一君) この点に関しましては私共も十分注意をいたしております。署員にも注意をしており、又署長会議の席上においても、各人の正しい判断によつて行動すべしということを注意いたしております。
  1292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にございませんですか……。どうもお忙しところを長時間恐れ入りました。本日は大変遅くなりましたですから、爾余の証人は明日午前に廻すことにいたします。明日は従つて遅れれまして、午前を鹽谷さんにしまして、午後は岡崎さんと丹羽さんとを呼ぶことにいたします。本日はこれを以て散会いたします。    午後五時二十六分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            大畠農夫雄君            小野 光洋君            小林 英三君            遠山 丙市君            松井 道夫君            松村眞一郎君            羽仁 五郎君   委員外議員            天田 勝正君   証人    上野署次席   吉武 辰雄君    警 視 総 監 田中 榮一君    警視庁予備隊長 土田  精君