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1950-04-10 第7回国会 参議院 法務委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月十日(月曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件(五井産業事件)  (右件に関し証人証言あり) ○証人喚問に関する件   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより法務委員長を開会いたします。検察及び裁判運営に関する調査について、五井産業事件に関する証人証言を求めることにいたします。  伊藤鑛壽さんですか。
  3. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お所はどちらですか。
  5. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 東京都品川区南品川一丁目二十一番地であります。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  7. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 四十歳です。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日は五井産業事件関係いたしましてあなたの御証言を求めたいと存じますから、これからお尋ねすることに嘘僞りがありますと処罰されることになります。  先ず宣誓をして頂くことにいたします。宣誓書を朗読して頂きます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に従つて事実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。         証人 伊藤 鑛壽
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴をちよつとおつしやつて頂きます。
  10. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私は岩手東岩手郡長島村字小島野田四十五番地に生れまして、郷里の小学校を卒業いたしました。農業を実家で手伝つておりまして、その後昭和五年上京いたしまして、二、三個所の会社に勤めまして、以来その間郷里に帰りまして、現在のところに昭和十二年から自営をいたしまして、今の青写真等事業を経営いたしておるのであります。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の会社はあなたが経営していらつしやいますか。
  12. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた社長ですね。
  14. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 資本金幾らですか。
  16. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 資本金、創立当時十万円でございましたが、百万円の増資の手続になつておりまして、まだ現在登記中でございます。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁土田精というお方といつ頃からどういう御関係ですか。
  18. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 土田さんとの関係を申上げます。昭和十九年四月頃と記憶しておりますが、当時土田さんは品川警察署長をしており、戦争中のことでございますが、私が従業員の傭い入れの関係労政事務のことにつきましていろいろ警察連絡が必要でございましたので、尚又生産方面に関しまして、当時の所轄警察署が軍に協力して生産増強というような宣伝を警察がやつておりましたので、その関係から私は当時の軍隊と警察によく連絡が必要でございましたので、これがために土田署長さんと会う機会がしばしばございました。つきまして土田さんを別に利用したことは一つもございません。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんが品川署長当時、土田さんが警視庁幹部を舟遊びに招待したと、そういうようなことはありますね。
  20. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございます。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それをあなたがお世話したことがありますか。
  22. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一、二回記憶ございます。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁幹部というとどのような人ですか。
  24. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 大分経つておりますので、はつきりした記憶はございません。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 世話するということはあなたが費用を出されたわけですか。
  26. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当費用はかかるでしよう。
  28. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 金額その他の点も大分経つておりますので忘れております。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か封鎖貯金現金に換えて呉れというようなことを頼まれて、現金に換えてやつたことがありますか。
  30. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございます。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又土田さんから土地売買等について頼まれて世話したこともありますね。
  32. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは私の近所土田さんと非常に懇意な方がございましたので、その方が私のところに話を持つて参りましたので、土田さんと直接の交渉ではございません。地所権利をその方に依頼されまして買つたことがございます。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたのところが強制疎開を受けるとか受けないとかということで、土田さんにお世話になつて強制疎開にならなかつたというようなことがあつたのですか。
  34. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 強制疎開のことにつきまして申上げたいと思います。今年の三月二十六日の新聞に私のことが掲載されておりますが、土田さんと私の関係疎開建物のことで私が土田さんのために巨利を得たという記事が出ておりますが、これはとんでもないことでございます。強制疎開のことにつきましては、土田さんに何もお世話になつた覚えはございません。私は軍関係の仕事をいたしておりましたので、その土地工場建物が数十軒ございましたが、その約半分ぐらいは強制疎開から免れております。工場と工員の寮は残つたのでございます。必要止むを得ないものだけは疎開を免除されたのでございます。当時土田さんは所轄警察署長でございましたが、当時家を壊す方の係は警察でやつておりましたけれども、こういつた関係強制疎開建物を残す等の権限は大体区役所が全部やつておりました。尚軍の係官の証明のようなものとか、軍からの口添があつて初めて区役所がそれを調査しまして残されたようなわけでございますので、私といたしましては、土田さんのために建物を半分残したというようなことは考えておりませんし、これは又ちよつとお見当違いなのでございます。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは加島警部に調べられたことがあるのですね。
  36. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございます。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 加島警部には、あなたは土田さんに大変世話になつたというようなことを言つておるのではないのですか。
  38. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 実は私は昨年の十二月八日に検挙されまして、商工省や、警視庁役人方々贈賄被疑者として、二十日間厳重な取調べを受けまして、この証人といたしましては、十二月が最も忙しいときでございましたので、一日も早くこうした問題を解決つけて帰さして頂きたいと思いまして、まあそんなんで夢中になつておつたものですから、大変記憶違いの点が多かつたことと存じます。今日この場で申上げさして頂くことには、間違いございません。加島さんのところで申上げたことは、大分記憶違いが出ておると存じます。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは加島さんに述べられたことは、あなたの事件に直接関係のないことですね。
  40. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういうことは、別にあなたが早く出たいからといつて心にもないことを述べるというようなことではないのではないですか。あなたの直接の事件なら別だけれども……。
  42. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これと申しますのも、私の祕書が贈收賄事件取調べを受けて、現在起訴されて、公訴中の体でございますが、それに伴つて加島さんのところでは、ここ数ヶ月前に、こういうことを私の附近とかいろいろな関係方面から傍証されて、大体加島さんの方でこうしたことをよく私に質問されましたので、まあこれは事件外のことだと思つたものですから、まあ大体いい加減に申上げておつたわけなんでありますが、この問題は事件とは筋が違うからということを、加島さんからおつしやられたわけなんでございます。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあとにかく土田さんとは、相当親密に御交際になつておつたわけなんですね。
  44. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その土田さんから、岡崎英城丹羽喬四郎中西久夫というような人を紹介を受けたのですね。
  46. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつ頃のことですか。
  48. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽岡崎中西さんの関係ちよつと申上げますが、丹羽喬四郎さんは、昭和二十年の六月頃と記憶いたしております。当時、品川警察署長でありましたところの土田さんより、警視庁官房主事の官舎が戰災に会つて困つておるから、丹羽さんに家を貸して貰えないかと依頼されまして、私の住んでおる住居を明けてお貸しいたしまして、土田さんとは前から知合関係でございましたので、土田さんの顏を立てるためにお貸ししたようなわけなんであります。その後丹羽さんは、終戰直後警視庁官房主事をお辞めになりまして、現在家屋はそのままになつてございます。尚丹羽さんと私の関係は、近所におりますので、私の会社顧問をいたしておりましたが、二十四年の九月に外の会社に行かれました。  又岡崎英城さんは、昭和二十四年の九月頃と記憶いたしております。終戰後でございますが、やはりこれも当時品川警察署長土田さんより、岡崎さんにも紹介して貰いたい、こう頼まれましたので、これも私の持つております家作を一軒明けてお貸しいたしました。その後、二十三年の四月に、岡崎さんの申出がありましたので、又別の所へ移転いたしましたが、これも私の家作でございます。  中西久夫さんは、昭和二十二年の七月頃と記憶いたしております。当時中西さんは、警視庁警務部長をやつておられました。土田さんは、当時警視庁警衞課長であつたと思います。元品川警察署長をしておられた関係で、私と知合なつておりましたが、これも土田さんの依頼で、土田さんの顏を立ててあげようというようなわけで、中西さんにお貸ししたわけでありますが、中西さんは、そのうち、御自分がお住いになるというわけでお貸ししたのでありますが、これを三菱地所部に転貸をされまして、現在は三菱地所部が寮に使つておるようなわけで、これもそのままになつております。  このようなわけでありますので、土田さんの顏は、相当無理をして顏を立てまして、丹羽さんや、岡崎さんや、中西さんに家を貸しておりますることは、事実であります。それも元品川所轄署長をやつておられました関係からなのでございますが、私は、三月二十六日の某新聞の朝刊に、私のことを掲載されてございますが、先程申上げましたような工合で、土田さんにこうした関係がございますけれども、強制疎開やその他のことにつきましては、この方には全然お世話なつておりません。かような事実がございますけれども、土田さんを利用して悪いことをした覚えはございません。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別にあなたが悪いことをしたとか、よいことをしたとかいうことをここでお聞きするわけじやないですから、御心配なく。その岡崎さん及び丹羽さんですね。まあ中西さんは転貸してしまつたのですから、どうなつておるか分りませんが、少くともこの岡崎さん、丹羽さんに対するのは、現在まだ住まつていらつしやるのだが、それはお貸ししてから家賃を頂いておりますか。
  50. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 頂いております。
  51. 伊藤修

  52. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽さんの方は、初めのうち百円でございましたが、この頃大分困つておるらしいのでございまして、家賃は頂いてございません。それから岡崎さんの方は、五百円でお貸ししてあります。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは貰つておるのですか。
  54. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 頂いております。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、丹羽さんだけですか、あなたの会社顧問は……。
  56. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 今どちらもやつておりませんです。
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 両方共顧問にお願いしたのではございませんか。
  58. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) いや、丹羽さんだけです。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで、顧問にお願いして、何か報酬をお拂いになつたのですか。
  60. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 拂いました。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 毎月幾らくらい。
  62. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 決つておりませんでしたが、大体一万円乃至二万円程度の面倒を見ておりますです。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かあなたの青写真商売に、顧問にお願いすることによつて相当利益があるのですか。
  64. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 別に利益はございませんでしたけれども、お役人を辞められまして、大変まあ困つておるような様子が見えましたものですから、まあ暫く面倒を見て差上げたいと、こういうような意味でございます。
  65. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に会社に、直接事業には御関係ないのですか。
  66. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい、さようでございます。
  67. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 面倒をみる意味で一万円づつ顧問料として差上げておる。
  68. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はいさようでございます。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特別にあなたの商売について、丹羽さんの手を煩したことがあるのですか。
  70. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございません。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんの方はどうですか。
  72. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 岡崎さんも関係ございません。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう生活の資料をお與えになつているんじやないのですか。
  74. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 出しておりません。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金銭的なことはありませんか。
  76. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございません。
  77. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことを申込まれたことはないのですか。
  78. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございません。
  79. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論顧問だから毎日あなたの会社に来ているわけじやないでしような。
  80. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。偶にお見えになる程度でございます。
  81. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 偶に雑談に来る程度ですか。
  82. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  83. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではですね、あなたがお持ちになつているのか、あなたの何か権利に属しているのか有楽町に電気倶楽部というのがありますね。
  84. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございます。
  85. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その二階の事務所をあなたお持ちになつているのですね。
  86. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  87. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこを昭和二十二年の八月頃から昭和二十四年の春頃まで、丹羽さんにお貸ししたのですね。
  88. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はいさようでございます。
  89. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お貸しになつているのですね。
  90. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 貸しておりましたが、これは年中使つているわけではございません。偶に何か御用の場合に使つてつたと思いますが。
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこにあなたの事務所もあるのですか。
  92. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私の部屋にしておつたのでございますけれども、丹羽さんの方でお使いになりたいと、こうおつしやられたもので、丹羽さんに鍵を渡して使わしておりました。
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結局丹羽さんの事務所になつたわけでございますね。
  94. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこで丹羽さんは商売でもおやりになつたのですか。そうではないのですか。
  96. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 何かおやりになりたいというようなお考だつたらしいのでございますけれども。これかと申しまして何もやれないでしまつたようなわけでございます。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か会合場所に常にお使いなつていたのですね。
  98. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) もとの丹羽さんのお知合の方方の、会合にときどき使われていたようでございます。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎丹羽という人がですね、その今の電気倶楽部事務所で毎週木曜日と土曜日会合を催しておつたということを御存じですか。
  100. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一週間に一度ぐらいはですね……。
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 木、土と決つてつたのですか。
  102. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 決つたわけでもございませんでした。木曜日もございましたし、土曜日もございましたようです。
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは毎週木曜日と土曜日会合することに決つてつたんじやないのですか。大体その日にしたんじやないのですか。
  104. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それもはつきりしたことは分かりませんのですが、集つたよう記憶がございます。
  105. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこでその会合に出席される人は大体いろんな人が出入りするでしようけれども、上村という人や、それから秋山、門叶、それから田中楢一、それから中西、先程言うたね、それから松尾英敏、それから藤田、こういうような人が集つてつたんじやないのですか。
  106. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そのうち藤田さんは余り私よくはつきり分つておりませんでしたが、藤田さん以外の方は記憶してございます。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんもときどき来たんじやないのですか。
  108. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一度ぐらい記憶はしております。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一度ぐらい記憶はあるのですか。
  110. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんもときどき出席したのじやないのですか。
  112. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 土田さんも来られたような記憶はしております。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 増田甲子七さんはどうですか。
  114. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) この方は記憶しておりません。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) おいでなつているんじやないのですか。
  116. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 増田さんはお見えにならないと思います。
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたお見えになつたようなことを言つておるんじやないのですか。
  118. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) よく増田さんの顔を、よくはつきり分かりませんです。
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた、加島警部には増田さんが来ておるようなことを言うておるんじやないのですか。
  120. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは大へん記憶違いのことを申上げまして……。何しろこれは取調中のことでございましたものですから、これは記憶違いでございます。
  121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 記憶違いでも微々たる人なら記憶違いもあるけれども、増田さんあたり名士記憶違いでその倶楽部の一名に加えるということはどうですかね。
  122. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 増田さんはお見えにならないように思つております。
  123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんや、土田さんあたりは回数が少いとおつしやるくらいによくお分りになつておるくらいなのに……。増田さんあたり名士を来たか来んぐらいのことを記憶違いでおつしやることはないじやありませんか。
  124. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは、よく増田さんの顔は私はつきりよく分かりません。
  125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた御存じじやないのですか。増田さんの顔は……。
  126. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はつきりしておりません。
  127. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなた知らんのですか。増田さんは知つているでしよう。あなたは……。
  128. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一度丹羽さんに紹介されて会つたようなことはございますけれども、別に親しいわけでもございませんし、増田さんには何も関係ないものでございますから……。
  129. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの郷里の方で葬式を営まれたときに、あなたは増田さんから花輪を貰つていらつしやるんじやないのですか。
  130. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは丹羽さんがなかに入つておりましたので、増田さんから直接頂いたのではないのです。
  131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんからにしろ、全然面識のないのに花輪を頂くということはないでしよう。
  132. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 大分古いことでございますけれども……。
  133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 古いことであるけれども御存じなんじやないかとお聞きするのです。知らんとあなたがおつしやるから……。
  134. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 全然知らないことではありませんけれども、そこらで会つたぐらいでは面識が殆んど分りません。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 存じ上げておるんじやないのですか。
  136. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 会う機会も……。
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 機会は少いでしよう。あなたと立場が違いますから。とにかく面識もあり、存じ上げている人じやないかと、こういうのです。
  138. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一度ぐらいは会つたよう記憶はございますが、増田さんは私ははつきり覚えておりません。
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特徴のある人だし、一遍お目にかかれば、名士だし記憶に残る人である、あなたも増田さんの知己を得ておるということを徳としてそういう花輪を飾られたのですから、知らないというようなことはないでしよう。
  140. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは花輪の件は丹羽さんのあれでございましたから……。
  141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 花輪の件を聞いておるんじやないのです。知つているか知らないかを聞いておるんです。
  142. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はつきりした面識ございません。
  143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではおいでになつたことはないと言い切れるんですか。それとも今記憶にないとおつしやるんですか。
  144. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 記憶にございません。
  145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 来たかも知れないと思うのですか。
  146. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 或いはこれは丹羽さんに聞いて頂きたいと思います。
  147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 丹羽さんに聞くことはよろしいのですよ、それは又別問題ですからね。あなたとして来たかも分からんけれども、今覚えがない……。
  148. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はつきりした記憶はございません。
  149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 記憶はないけれども、来たかも分らんがという意味か、全然ないという意味でおつしやるのかどちらですか。
  150. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは、まあ非常に曖昧なんでございまして、はつきりした記憶がないのでございます。
  151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 来たかも分らないけれどもはつきりした記憶がない、こういうのか、全然……。
  152. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 来たかも分りませんけれどもはつきりした記憶はございませんです。
  153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭和二十三年六月頃、一昨年の六月ですね、御承知でしようか、あの昭電事件がやかましかつた頃、御存じですね。
  154. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ、大体知つております。
  155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昭二十三年の初夏の頃ですね、その頃毎日今までは木曜日、土曜日に開いておつたが、その頃になると連日今の事務所へ、岡崎丹羽秋山、吉田、弁護士ですね、藤田、こういう人が会合しておつたようですね、御存じですね。
  156. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 会合されたように思いますが、その中の藤田次郎さんもこれははつきり分りませんが、その他の方々集つておられたような記憶はございますが、どういう集りか私には分りません。
  157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その会合は非常に嚴重を極めておつたようですね、というのはですね、いわゆるあなたが知つている土田さんが室のドアの前に立つて、いわゆる見張りをしておつたとかいう光景を呈しておつたんじやないですか。
  158. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) まあ見張りというかちよつと……。
  159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは見張りというような仰々しいものではないかも知れないけれども、少くとも土田さんが外に立つつていて、用のない人を入れないような態勢を整えていた…。
  160. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 大体におきましてその方々の以外の方は殆んど出入りいたしておりませんでした。
  161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ上田さんが見張役みたいなことをやつていたのですね。
  162. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それはちよつと記憶がございませんです。
  163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 表に立つておつたんでしよう。
  164. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 来られたような…、土田さんなんかも来られたような記憶はございますが、それも私ははつきりしたことは言い切れないのでございます。
  165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそのことについて加島警部はつきり言うておるのじやないのですか。
  166. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 加島警部さんに相当嚴重に聞かれましたのですが、私としましては、筋が贈収賄事件が本筋なんでございまして、こんなことは事件でもないと思いましたし、加島警部さんもこれは事件でもないし、問題になるものじやないからと、前置きがございましたので、私といたしましてはいいかげんの返事をして置いたと思いますが、その点もはつきりしておりません。
  167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの事件関係なければ尚更気安く本当のことが、真実が述べられる筈じやないですか、いいかげんに独断に、いいかげんに述べるというような、意識的に考えるということはちよつと不合理じやないですか。
  168. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 何しろ暮の忙しい……。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 自分のことには関係ないのだし、それこそあなたの知つているこれらのことを気楽に述べて差支ないことじやないですか。それを殊更に好い加減にしたとおつしやることはちよつと我々、聞き取れないですね。
  170. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは加島警部さんの質問に対して……。
  171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けど余りここで今日も好い加減におつしやると、偽証の制裁がありますぞ。
  172. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 加島警部さんに申上げましたことは、大分記憶の点に喰違いができておりますので、今日この場で申上げることは間違いございません。
  173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この岡崎さんあたりの今言つたメムバーの会合というものが、余りその項目につくといけないというので、ときどき場所を変えて、例えば中西の宅で開くとか、或いは霞ヶ関茶房にある増田さんの事務所や、或いは岡崎の宅、こういうところで、ときどき変えて会合を持つたのじやないですか。
  174. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これもはつきりした記憶はございませんが、何しろ追放者の方々でございますし、非常に私の見ますところが、追放ということにつきましては、相当引け目を感じられておつたような様子がありましたので、私も非常に、この方々はもとの内務省の大御所の方々でもあり、お気の毒だと思いまして、丹羽さんに全部お任せしておりましたので……。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや私のお聞きしておるのは、当時余り昭電事件やなんかやかましい時代ですから、そのみので会合を開いておるということは人の目につき易いから、増田さんの事務所とか、或いは岡崎さんの家とか、又中西の家とかいうところで会合を開いたんじやないかと聞いておるのです。
  176. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは私にはちよつと分りません。そういう記憶はございません。
  177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 分らんということはない。あなたも行つているところがあるのじやないですか。そう一概に言えますか。その会合の一つにはあなた出ておるんじやないですか。あなたが設営しているんじやないですか。
  178. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) いつか引越祝いにということで呼ばれたことがあります。
  179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 名目はどうでもいいです。会合しておるかどうかということを聞いておるのです。
  180. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それはちよつと私には記憶ございません。
  181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんのところへあなたはいろいろな酒肴の仕度や何かをあなたが一切万事切り盛りして、会合の斡旋をしたんじやないですか。
  182. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうことはございません。お祝いに何かお酒のようなものは持つて出たことはありますけれども、私の方で酒肴の準備したようなことはございません。
  183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんのところで会合したときにはあなたは行つておるのでしよう。
  184. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一度行つたよう記憶はございます。
  185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときはさつきいつたメンバーの外に原文兵衛、後藤田、倉井、河合、土田丹羽、吉武、石井こういう人が出席しておつたのでしよう。
  186. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうことが一度あつたよう記憶がございます。
  187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田という人は、丹羽五郎という人が昭電で検挙されたときに非常に各方面へ飛廻つて運動したということは知つておりますか。
  188. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それは記憶ございません。
  189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田という人はさつきいうたような会合に始終出入りして、そういう人々と交際しておる関係上、いわゆる警視庁の内部におけるところの人事や何かについても、例えば大里澁谷署長を保安課長に今度は転任させたらどうかということを、土田から岡崎に進言したことをあなた聞いて知つているでしよう。あなたもその席上におつたのですね。
  190. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それも大分古いことでございますし、酒の席でございますから……。
  191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは聞いているでしよう。
  192. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はつきりした記憶はございません。
  193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だけどそういうことは聞いたでしよう。
  194. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは私にははつきり……。
  195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いたことは聞いたけれども、今はつきりしないのでございますか。
  196. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はあ、さようでございます。はつきりいたしません。
  197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全くそういうような人事問題、警視庁なんかの人事問題から、要するに現職の人がこの岡崎さんとか、丹羽さんとかいう人を通じて若しくはそういう人に話して、そういう異動やなんかのこともいろいろ話合つたりなんかすることがあつたのですね。
  198. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それも記憶ございません。
  199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそういうようにいろいろ警視庁の旧幹部の人や現幹部の人といろいろ会合のときに一緒になる関係上、先程言うた人々と皆知合いになつておるわけなんですか。
  200. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程言うた外に絹川という人や、張本という人や、それから岡田秀男という人もあなた知合いになつておりますね。
  202. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) この方々は私はよく知りませんです。
  203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その方々とは……。
  204. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 絹川さんも知りませんし、張本さんも知りません。
  205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡田さんは。
  206. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 岡田さんも知りません。
  207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併しあなたは調査員の調査によると、あなたは岡田さんは知つている言うたじやないですか。
  208. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 岡田さんは一度会つたような気がします。当時商工局の役人をしておられた頃会つたような気がします。別に何か用があつて会つたのでもございませんし、向うの方で忘れておるだろうと思つたからでございます。
  209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんはあなたに公式に言つたわけじやなかろうが、いろいろ座談の中で言つたのでしようが、平素自分らはこういう優秀なメンバーの繋がりだから、警視庁の仕事は自分達でなければできないのだ、要するに警視庁の中の人事その他のあれは、自分達の支配下にあるというようなことを言つておつたのじやないですか。そういう口吻か、そういう趣旨のことを……。
  210. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうことは聞いておりません。
  211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは他の人からそういうような噂を聞いたことはないのですか。今言うたような趣旨を土田さんから聞かないにしても、或いは丹羽さんや誰かから……。
  212. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 誰かから聞いたというふうなことはございますけれども、これも忘れております。
  213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 誰かから聞いたことはあるけれども忘れておる。聞いたとすれば今の知合の中から、交際しているメンバーの中ですか。
  214. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうだと思います。
  215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外に聞くことはないからね。  あなたの今まで述べられたことは、加島警部に述べられたこと及び参議院の法務委員室の調査員に述べられたことと大分違うが、それでよろしいか。
  216. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 加島警部さんと参議院の法務委員さんの方々に述べられたこととは……、参議院で申上げますことは、現在こちらで申しますことは間違いございません。
  217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると調査員に述べたことも違うのですか、調査員に述べたことは正しいのですか。
  218. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) こちらで只今申しますことは……。
  219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いやそういう質問じやなしに、先に調査員にあなたがお述べになつたことがありますね。
  220. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのときに述べたことはどうですか。
  222. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 調査員に述べたことと只今申上げましたことと合つていると思います。
  223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大分違いますね。
  224. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようですか、多少の違いはあるかも分りませんが、大体合つております。
  225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 調査員に述べられたことは間違いないですか。
  226. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) こういうことでございましたのですか、大体今日私が……。
  227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 真実はあなたも事業をしていらつしやるのですからよくお分りのことと思いますが、真実は一つしかないのですから何遍述べたつて変るものじやない。加島さんに述べたことと、調査員に述べたことと、今日述べたことと一つ一つが違つて、その一つ一つが真実だとおつしやつて貰つてはどれが真実だか分らなくなつてしまう。
  228. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 只今申上げましたことは、真実でございます。
  229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この前調査会にあなたが述べられたことは、自由に述べられていらつしやるのだから、対談的に述べていらつしやるのだから、その述べていることは、大体加島警部にあなたが述べられたと同様な趣旨のことを述べていらつしやるのです。ところが今日のお話は、一転して肝腎のところは知らん知らんと逃げられるのです。いいですか、そこを指摘しているのです。
  230. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そんなことはない筈でございます。加島警部さんとのあの調べとは大分記憶違いがありますので違うかも知れませんが、法務委員の方には加島警部と同様な……。
  231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今読みますから聴いて違つておるところは指摘して下さい。    〔事務局燒ビルになつている電気クラブを購入し、青写真その他に使つています。延坪は千坪以上あります。地下室四十坪二つ、十五坪一つと三階二十六坪を私の方で使つています。ビル全体としては財団法人日本電気協会の所有でしたが、株主がばらばらにあり結局大株主が各自で修理して共有のような格恰となつております。昭和二十年終戦と同時に丹羽喬四郎警視庁をやめて私の会社顧問となり月二万円を支給しておりました。その仕事は大体官庁関係の紹介、折衝でありました。丹羽昭和二十一年中に半年ぐらいか丹羽事務所として同ビルの三階の二十六坪を使用していました。丹羽はその前から私が部屋の鍵を貸して、それで使つていました。いずれも無償でありました。丹羽は何か個人的仕事もしていたようですが、何をやつていたか存じません。三階の部屋は丹羽以外に私の会社の者はおらず、昨年春頃丹羽から返して貰つてから全然使つていません。岡崎英雄も終戦と同時に退職しましたが、家が焼かれて困つているというので、丹羽に頼まれ私の所有の家を貸しました。初めは私の南品川一ノ四の工場を住いに当て、その後大森海岸端の家作で延三十二坪程(敷地百坪)で月五百円で貸しています。それ以外に仕事の上では関係ありません。丹羽にも南品川一ノ九の家延三十八坪(敷地六十坪ぐらい)を昭和十九年官房主事時代に月百円で貸して私の会社顧問なつてからは無料であります。私は丹羽とは官房主事時代に知合いとなつたもので、それは当時の品川署長土田精丹羽が家を焼かれて困つているからと頼みましたことからであります。岡崎とはその後間もなく土田の紹介で同人から岡崎の家のことを頼まれて知合いとなりました。丹羽五郎は喬四郎の弟ですから、同人の紹介でその後間もなく知合いになりましたが、頭山は知りません。上村健太郎も丹羽の紹介で知りました。門叶、衣川、秋山丹羽関係で顔を知つている程度ですが、町村は存じません。吉武は終戦前から上田署長との関係で知つていますが、丹羽岡崎も同人とよく知つています。日野は存じません。藤田元刑事部長は丹羽官房主事当事丹羽の紹介で知つています。谷川昇は井出品川署長(現経理課長)に訪ねて来た当時、そのときちよつと知つた程度です。丹羽事務所へは岡崎が出入していたことは相違ないが、土田が一回か二回来たように思うが、吉武その他は分りません。ともかく種々な人が来ていたが、それは追放になつた人の前職場の人々が慰めるために晝飯を食つてその後の消息(生活、家庭の状況)を話合つている程度であります。二十年八月頃増田氏は私が丹羽を訪ねて霞ヶ関茶寮へ行つたとき丹羽に紹介されて一回だけ会つたことがあります。そこには増田事務所という看板が懸つていましたが、何をやつていたか分りません。これは終戦直後であります。丹羽増田とは相当親しいように聞いていますし、又さように見えますが、増田丹羽事務所へ来たかどうかという点は、私の記憶では一、二回来たように思います。増田丹羽が満洲から帰つて来たときに相当面倒をみていたとの事であります。岡崎増田との関係はよく分りません。加島警部補に取調べを受けたことがあります。それは昨年十二月八日で拘束されたのですが、内容は贈賄となつており、元通商産業技官上田鉄夫に小切手二十五万円と元警視庁警部飯澤源一郎に小切手二十五万円を貸借名簿で贈賄したということで本年二月十四日に起訴されました。私は二十日間拘束され、飯澤も二、三日拘束され、上田は臨床訊問だけでありました。その原因は昭和二十三年三月頃紙の事件で検挙された当時上田が世話になり、飯澤は主任捜査官であつたもので行政的に解決して刑事事件は送検せず握りつぶしになつた後、金を貸してくれと言われて出したのであります。加島警部取調べでは二回か三回調書に署名しましたが、その際先程の丹羽関係のことを訊れましたが、調書には書いてないと思います。その内容は土田精警視庁内で相当強引で嫌われているようで、私が土田関係丹羽岡崎に家を世話したので土田は内部で両名に恩を売つたというのでいろいろなことに口を出すということです。元来警視庁内には資格者派と成上り派との間の争いがあり、土田は後者の総帥で、松本は有資格者で土田をよく思つていないらしいのです。土田が強引なのは岡崎丹羽が糸を引いているのではないかと憶測しているらしいので、その関係で松本の部下である加島警部がそれらのことを聞いたのであります。丹羽関係加島に話したことは先程の程度で、或いは増田土田が来たことがあると言つたかも知れません。丹羽は現在は主として須田町(万世橋広瀬像近く)の足利繊維の副社長で私の方の顧問もやつてはいます。足利繊維には、秋山、川口(元兵庫警察部長)がおり、その関係で入つたものと考えます。私の社の仕事で丹羽の紹介を受けたのは、商工省、建設省、警視庁関係で昔の知合いである人々であります。岡田秀雄にも終戦直後に紹介され、桐山特別資材部長等で、警視庁関係は岩井会計課長(入札参加)等であります。原文兵ヱ、倉井潔、も知つていますが、どんな関係かは覚えありません。田中、齋藤氏も防犯協会の関係で知つています。私の事件の際には丹羽岡崎等は全然動いてはいません。同人等が昭電関係で動いたことは全く知りません。佐藤昇は全然知りません。政治家として交際のあるのは参議院の黒川、衆議院の淺利さんくらいで、丹羽岡崎は政治家と交際している様子はありません。以前のことは分りません。丹羽は初め霞ヶ関茶房を使つていたが増田に悪いというので、私のビルに移りました。日を決めて集つていたのですが、週に一、二回で余り目に立つし、多いときは五、六人から十人前後で目立つと工合が悪いというので解散しようという話があつたということですが、神田へ移つたのであります。神田へは私は出席したことはありません。渡邊完夫氏、福田氏、江花氏は存じません。丹羽方へ来たかどうかも知りません。私の事件の主任検事は井本良光で、弁護人は松本重雄、高野源進でこれらの弁護士は私自身が以前から知つていたからであります。關口照里は元近所にいた関係、坂信彌氏は何かの機会面識があり、岩田元二課長も知つています。警視庁幹部丹羽官房主事をやつていたので、同人の紹介や防犯協会の関係で知つています。中西警務部長土田の紹介で知りました。終戦直後に家を貸しましたが、大井関ヶ原で延四十五坪で家賃は貰つておりません。針本氏は土田関係で知り、間狩氏は碁の関係で、増井氏は警視庁に出入りしていて知つたことがあります。
  232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今読んだようなことをですね、あなたは言つていらつしやるのですが……。
  233. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) その中の多少違いましても……。改めて、訂正さして頂きます。私の事件贈収賄事件でもみ消したところの、警視庁の……。
  234. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは誰の調書ですか。
  235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛寿の……。
  236. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは誰が調べたのですか。
  237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤君。
  238. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 参議院の……。はあ。
  239. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私の事件贈収賄事件でございましたが、問題は、事の起りは、以前に青写真の隠退蔵物資で摘発されて、これがために握りつぶしてというようなことはございませんでした。これは立派に現在公判中になつておりますが、最終公判でなければはつきりしたことは分りませんけれども、金銭の問題は間違いございませんが、事件を握りつぶしたというようなことはございませんでした。
  240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことは何も書いてないのです。今の調書には……。
  241. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 調書の中に握りつぶしたと……。
  242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことは書いてないのです。
  243. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それから例の岡田秀男さんは丹羽さんに紹介されたのです。大体丹羽さんは患者関係の紹介程度でございました。
  244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから今読上げたことは、あなたが述べたことの趣旨に間違いないかどうかということです。違つておる点を指摘して下さい。
  245. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 違つておる点は、藤田次郎さんと懇意でないという点でございます。
  246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけですね。
  247. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はあ。
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは何か証人にお尋ねになることはありませんか。
  249. 大野幸一

    ○大野幸一君 岡崎さんはどんな仕事をしていらつしやつたのですか。どんな事業を……。
  250. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 旭梱包と申します会社を経営なさつております。
  251. 大野幸一

    ○大野幸一君 それであなたに金を融通してくれというような話があつたことはありますか。
  252. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございません。
  253. 大野幸一

    ○大野幸一君 四日の日にあなた診断書をここへ出しておりますが、四日の日の一日の行動、こちらで調べてあるのですが、あなたはどことどこへ行きましたか。
  254. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 四日の日ですか、朝から寝たり起きたりしておりましたが、十時頃と思います。参議院法務委員会から証人として出頭の御通知を頂きまして、そのときの使いの方に、今身体が悪いのですということを申上げましたところ、病気なら仕方がないだろうと、そういうふうに伝えますと、おつしやられて使いの方は帰りましたが、その後参議院の方からお電話がありまして、出られなければ手紙と医者の診断書を付けて、明日の、五日の午前中までに提出するようにというお電話がかかりましたので、その日千葉先生ともう一人の方が往診して下さつたものですから、よく診察して貰いましたところ、咽喉にできものができておりましたし、それから扁眺腺が少し痛んで声を出すのが大変苦痛だつたものですから、病気が、このときは治るまで延して頂きたいと思うのですということを医者に話しましたところ、私もそう考えますと、医者から診断書を作つて貰いまして、そのときに皮下注射をして頂いて、安静にするように、こういうふうに申されましたのですが、それから大変工合がよろしゆうございますので、よろしくなつたので、四、五日、三十日頃から私病気で寝たり起きたりしておりましたので、書類とか、その他商売上のことも気になりましたので、夕方、これもいきなり行つたのじやございませんで、警視庁の捜査二課の加島警部さんのところへ電話しておいて、自動車で私が参りました。行きましたわけは、昨年の十二月に取調べを受けましたときに、例の商工省や、警視庁役人に対する贈収賄被疑の関係書類がまだ残つておりまして、その中の一部を商売用にどうしても必要なんで、ときどき伺つておるのですが、向うへ行きますと、向うから、加島警部さんの方から書類は必要だろうけれども、もう暫らく預からして貰おうというようなお話で、間もなく自動車で又帰つておりますが、帰つて来ましたところ、非常に又熱が発熱しまして、夜発熱して、医者に診察して、貰つて注射して貰つて、寝んでおりましたところ、その夜手前どもに電話がかかりまして、十時頃と、十一時頃、二回電話がかかつておりますが、記憶しておりました点は、警視庁の捜査二課へお前何しに行くのだというような電話がかかつております。病人が起上つて警視庁なんかに何しに行くのだ、絶対に警視庁へ行つてはいけない、その辺にうろうろしている馬鹿があるか、というような脅迫のような奇怪な電話がかかつたのですが、そうしましてそのままになつて、それで五日の日も病気で一日寝んでおりました。七日の朝刊の新聞に大体これと同様の内容のことが新聞に出ましたので、非常にびつくりして、早速病気でもこれは無理して出なきやいけないのだと決心しまして、病気が大変よくなりましたから、是非出頭さして頂きたいという手紙を届けさしたようなわけでございまして、私といたしましては決して狡い考えを持つて、喚問されるのが嫌だとか、そういうような考えは持つておりませんでした。
  255. 大野幸一

    ○大野幸一君 その夜遅くなつて、出て歩いちや駄目じやないかということは誰が言つて来たのですか。それは誰か匿名で分らんのですか。
  256. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 電話で夜遅くなつて、病人が起上つて警視庁なんかへ出入りするな、行く馬鹿はないじやないかという非常に大きな声で怒鳴つて来たのでございますが、その後七日、八日までいろいろの電話がかかつて、脅迫のような電話がかかつておりますが……。
  257. 大野幸一

    ○大野幸一君 脅迫とはどんなのですか。
  258. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 僞名を使つて電話がかかつて来ましたり、変な不届なことを喋るやつがあるかというような電話がかかつて来ますので、それで一切夜明まで面会を……、一切誰にも会つておりませんが、まだ四日の五時頃と思いますが、約十分間余り警視庁へ自動車で行つて、商売上の書類を欲しいと思つて顔を出したのですが、向うの加島さんの方から、書類を欲しくてもまだもう暫く預らなければいけないというわけで帰つただけでありまして…。
  259. 大野幸一

    ○大野幸一君 奇怪というとどういう…。
  260. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 全然名前が分らないんですが、警視庁の捜査二課加島警部というような電話がかかつたり、或いは警視庁の予備隊長であるとか、市川代理とか、いろいろの電話がかかつておりまして、それで出て行きますと皆違うんでございまして、本人からの電話ではございませんのです。非常に私も、これは誰か私の身辺を附纒つて、奇怪なと思いましたので、一切外へ出ませんで、面会者が来ましても全部お断りしておりましたわけでございます。
  261. 大野幸一

    ○大野幸一君 それで新聞に…。あなた余計なことを言つては駄目じやないか、詰らんことを言うな、とこういう意味のことの電話ですか。
  262. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ、そうでございます。新聞にはその辺うろうろしておるというような、どこか出歩いて、うろついておるというふうに出ておりましたけれども、そうではなく、電話では警視庁なんかへ絶対行つてはいかんという電話がかかつておりました。
  263. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうするとあなたに本当のことを言われると困る人があるからそういうことを言う…。
  264. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 或いはそうじやないかとも思つておるわけなんでございます。
  265. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたに本当のことを喋られると困る人があるんではないか…。
  266. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それもそういうふうに考えられます。
  267. 大野幸一

    ○大野幸一君 というふうに考えられる…。
  268. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ。
  269. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたの資産というものはどのくらいですか。
  270. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) まだこれははつきり計算しておりませんからちよつと分りません。
  271. 大野幸一

    ○大野幸一君 大略でいいんです。
  272. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 二、三千万ぐらいかと思います。
  273. 大野幸一

    ○大野幸一君 それでは自分の住居を明けてまで丹羽にお貸しになつているわけですね。それは百円として昭和十九年頃ですかね。その次には岡崎さんに店子を明けてまで貸しているんですね。そういうことが、ただ管内の署長だからというのでは、余りに義理を立て過ぎるんですね。
  274. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 御尤でございます。私もこれは相当無理なことだと思つているんです。喜んでいるわけではございません。
  275. 大野幸一

    ○大野幸一君 終戰当時はどのくらいのあなたに財産がありましたか。
  276. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 終戰当時は何しろ強制疎開で普通の家屋というものは殆んど壊されてしまいまして、燒けたのもございますが、終戰当時はもう少しございました。五、六千万ぐらいございました。
  277. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから丹羽さんが困つている、家賃も拂えないと、こういうのですね。現在誰か丹羽さんを助けているような人があるかどうかということは知りませんか。経済的に…。
  278. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それは私にはちよつと分りませんでございます。
  279. 大野幸一

    ○大野幸一君 この警視庁にそれだけの知合があり、舟遊びをしたり、家を貸してやつたり、事務所を貸してやつたりしているんですが、丹羽岡崎という人は警視庁に出入することが仕事で、又警視庁の人達も先輩だといつて、慕つて交際しているということは間違いではないですか。そうでしようね、そう感じられるでしよう。
  280. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 警視庁へは出入りしていないようでございますね。
  281. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁の人達と常に交際している…。
  282. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 警視庁の人達と御懇意であるとは思いますが、出入りはしていないと思います。
  283. 大野幸一

    ○大野幸一君 参議院の専門員室で、調査員に対しては、あなた一、二回増田さんが来たことがあると、こう言われましたが。
  284. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それは大変記憶違いでございまして誠に申訳ございません。来ておらない思います。増田さんの事務所へは私訪ねて行つたことはございますけれども…。
  285. 大野幸一

    ○大野幸一君 警察で幾日間拘留を受けましてか。
  286. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 二十日間でございます。
  287. 大野幸一

    ○大野幸一君 そのときの調書に述べたんですが、参議院の専門調査員には、別に脅迫を受けていたわけでない、自白を強要されていたわけではないでしよう。そのときにどうして間違いを犯しましたか。
  288. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうことは言つていないと思います。どういうはずみで申上げたか…、私は増田さんの事務所には訪ねたことがありますけれども、増田さんは手前どもの所へは来たことはないと思います。
  289. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうするともう一つ尋ねますが、あなたは贈収賄事件でそういう…、増田さんもあなたの事務所に来たということを言えば、警視庁の人達が牽制できるから、あなたのいわゆる真実でないことをそういう方便で言つたともとれますね。
  290. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうわけでもございません。
  291. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると増田さんの名前が出て来た理由が分らないのだがね、警視庁及び専門調査員の前で…。これはどういうわけですか。
  292. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 専門調査員の前で…。
  293. 大野幸一

    ○大野幸一君 警視庁増田さんの名前が出て来たのはどういうわけですか。あなたの事務所へ来たということをはつぱをかけて増田さんを知つているぞと言うと自分を庇つて呉れる、こういうふうに考える場合がある。
  294. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 警視庁では大体丹羽岡崎さんのことについてよく私が…、これは副産物のような工合でありまして、先にお調べになつておられて分つているようでございました、相当前から…。
  295. 大野幸一

    ○大野幸一君 だから増田さんの関係が…。増田さんがあなたの所へ一、二度来だということが警視庁で出て来た理由がどうしても分らない。
  296. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私といたしましてもちよつと分らないのでございます。
  297. 大野幸一

    ○大野幸一君 余計なことを喋つてはいかんというのはそこを言つて、人の名前であなたのところに電話がかかつて来るのじやないですか。
  298. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) その点もちよつと私には分らないのです。
  299. 大野幸一

    ○大野幸一君 その点も分らないね。
  300. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  301. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 只今大野委員の御質問でちよつと不可解に考えますので、大野さんにお尋ねを許して頂きたいと思います。今大野委員は、証人に対してお尋ねの前提に、四日の証人に対する行動は俺の方で全部調査している、こういう御発言で段々お尋ねになつて行かれたのでありますが、そうすると、調査しておられまするから十分御承知のことと思いますが、あなたの御調査のうちでは、夕方でありますか、証人警視庁へ行つたというようなことを御調査なつております。それから、調査せられまして十分知つているということでありますが、見張をつけてお調べになつておつたのか、電話でもかけて調べられたのか。若し調査の内容がよくお分りになつていれば、他の委員といたしましても参考になりますからお話し願いたいと思います。
  302. 大野幸一

    ○大野幸一君 当日証人警視庁へ出頭しているということは、専門調査室から聞き及びました。専門調査室において出頭しているということを調査されているということであります。電話のことは今初めて聴いたのであります。以上お答えいたします。
  303. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると委員長さんにお尋ねいたしますが、専門委員から大野委員の所へ証人警視庁へ行つたり何かしてがたがたしているというような電話があつたそうでありますが、これは大野委員だけに特別お知らせになつたものであるか。私は聞いておりませんが私を除いたその他の委員にのみお通知になつたのかどうか。
  304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いやそうでないでしよう、私はよく分らないが。
  305. 小林英三

    ○小林英三君 専門員に聴いてみたらいい。
  306. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 どういうわけで大野君だけにお知らせになつたか。一人だけ知つておるのは以ての外だ。予め我々知つて置きたい。公平にやつて貰いたい。専門員の方に御答弁願います。
  307. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今聞きましたところが、ここで発表したときの……(「いや、そんなことは発表しない」と呼ぶ者もあり)電話で呼んだと大野君が言つておる。電話でそういうことをはつきり……。
  308. 大野幸一

    ○大野幸一君 よく聞いて下さい。同日警視庁証人が出頭しておるということは専門室から聞いた話しです。併しそれは事件に熱意があつて、何故にこういう診断書が出されたかというようなこと、何故に来ないかということを私は聞きにやつた。そうして伊藤鑛壽証人が本日出頭しないかということを聞いたときに、病気診断書が出ておるけれども、病気の診断書ではないそうだ。警視庁には証人として出頭したという噂もある。私の問に対して答えられた。お聞きになつ調査されたり、公平に一人々々に説明したわけではなしに、又漏らしたわけではありません。電話ではありません。私が確かに問に対して聞いた、ここで皆さんの前に言うたことである。座談として……。それから電話云々ということは、奇怪な電話がかかつて来たということは、今初めて証人から聞いたという話しです。
  309. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 奇怪な電話がどうのこうのということでなく、今大野委員の言われた、先程では電話というようなことを聞いたものですから聞いたんですが、その事情はよく分りましたから結構ですが、それではちよつと証人に対して、どうぞ向うの委員長さんの方にお向きになつておいて……、この奇怪な電話というものがかかつて来たということでありますが……。
  310. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  311. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 大野委員の声とは違いましたかどうですか。(笑声)相当調査しておられるのだからお尋ねいたします。
  312. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 相当大きな声で呶鳴られましたので、ちよつとそれはどなたの声か、聞き慣れない、初めて聞いた声でございましたから分りませんでした。
  313. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 この大野委員のお尋ねでは、何かこの打合せとか何かということがよく言われるのでありますが、どうも電話をかける人は何か証人が自身、この警視庁に行くときに打合せられると困るというので、却つて、その内容暴露でなくして、これを摘発しようという人の側から見て、あなたが警視庁や何かに、証人として出る前に出掛けて行くということは、これは物騒な話しだというので、えらくお叱りを豪つたようにも見られるのですが、それらはどういうことですか。奇怪な電話ということをどういうふうに思われますか。奇怪な電話ということにはいろいろな電話があるようだが……。
  314. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私といたしましては全然見当がつきませんが、どこからどういうふうになつておりますか、大体病気のために三月三十一日から私が日記をつけておりましたので、三月三十一日から扁眺腺が非常に悪くて、熱も大病ではありませんが三十八度位ございましたので、発熱の度、それから咽喉にまだ跡が残つております。
  315. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そこのところはよく分つておりますが、奇怪な電話が数回あつたということですから、その電話というものは一体まあどういうふうな方面の人がかけたと思いますか。これは警視庁に行つて打合せられてうまいことを一体言われては困るという人が、怪しからんじやないかというように電話をかけたように思われますが、一体そこはどういうことなんですか。大体分るでしよう。多少あなたが怪しげな電話がちよちよいかかつて来るということはどういう方面と思いますか。警視庁に行くのは怪しからんではないか、打合せをしないでそこに出てからにしろというようなことというような電話をかけた、いろんな電話……。
  316. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうふうにも考えられるのですが、警視庁へ私が行くということが、私の証拠品が警視庁に残つておるということもよく知らないで、何か打合せに行つたのではないかというふうにとつてかけられたのじやないかと思ますが、それにしても随分ちよつとひどい、連日でございましたが。大体電話がかかり始めたのがその四日の晩から八日まで続いておりましたが、それで毎日のようにかかつております。それで私も少し怖くなりまして、身辺が怖くなりましたものですから嚴重に戸締りしまして、誰が来ても一切こちらが出るまではお目にかからないからということになつた。だから新聞を読んで見ますと、東京新聞を読んで見ますと、伊藤は東京都内をうろつき廻つて某々所にも立寄つた形跡がある。法務委員会に出るのは困るということを放言しておるというようなあれがあります。それと大分繋がりがあるかのように考えられるのです。(笑声)
  317. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると最後に一点だけ聞くのですが、警視庁に行つて打合されるということ、打合されては困るというような人からの電話ですね。
  318. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そのように考えられます。
  319. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 結構です。
  320. 大野幸一

    ○大野幸一君 関連しておるから……今私の聞いたことと全然反対ではないか。どうですか。さつきの本当のことを言われると困るから本当のことを言つては困ると、こういうふうに言いました。速記録にちやんと書いてある。後で調べて見れば分る。
  321. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私は今日は誰にも誘導されないで本当のことを、証拠のあることだけを申上げたいと思いまして、この通り……。
  322. 大野幸一

    ○大野幸一君 速記録に書いてある。あなたは私の問に対しては、誰か本当のことを言われては困るから、詰らないことを言つては困る。警視庁あたり……参議院に病気で出られないと言いつつ警視庁に出掛けて行かけると……、詰らない軽卒なことをしてはいかんと、そうして本当のことを言われては困るから、困る方からそういう電話がかかつて来るだろうと、こういう答弁をしておるではないか。
  323. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうこともはつきり分りませんです。
  324. 大野幸一

    ○大野幸一君 さつきそう言つた。ちつともあなたの言うことは信用できないではないか。そうするともう一遍訊きますが、そういうことがあつて、それから又こういう人達と会つておりませんか。
  325. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 会つておりません。全然出ておりません。
  326. 大野幸一

    ○大野幸一君 僞名の電話をかけたのは多く警視庁の名前を使つておりますが……。
  327. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 使つております。警視庁の名前を。
  328. 大野幸一

    ○大野幸一君 では警視庁のことをよく知つておる人だな。
  329. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ、そうだと思います。
  330. 小林英三

    ○小林英三君 証人にお伺いしますが、先ず先程大野委員の質問の中で、法務委員会の調査書を読まれたようですが、私ちよつと聞き漏してしまつたのですけれども、増田さんが私の事務所には来たことがある。増田さんの所には一回行つたことがある。法務委員会の専門員の調査書の中に、伊藤証人の所に行つて聞いたということを言つてあるのですか。ちよつと専門員にお伺いしますが。私はさつきそういうことを聞かなかつたと思うのですが、その中に言つておるのですか。
  331. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや読み上げたのです。読み上げた通りです。
  332. 伊藤利夫

    ○事務局員(伊藤利夫君) 聞いたかも分らないが、はつきりした記憶はないと。
  333. 小林英三

    ○小林英三君 増田さんの事務所には一度行つたことがあるがということを読んだことを聞いております。証人の家に増田さんが来たということは聞いておりません。(笑声)
  334. 伊藤修

    委員長伊藤修君) さつきから聞いておつたのですが、大野さんの質問に、私の事務所ということは電気倶楽部のことを指しておるではないかと、私はそういう趣旨で聞いておりました。
  335. 大野幸一

    ○大野幸一君 詳しく言えば、私の質問のあれは元証人事務所であつて、後には丹羽に貸した事務所に行つたよう記憶するということを述べているが、それは詳細に述べているかという意味の質問です。
  336. 小林英三

    ○小林英三君 そうするというと、証人は先程の法務委員会の専門員の調べた調書の中で、私が間違つていると思うのは藤田さんの問題だけだと思います。というのはその通りですね。
  337. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はあ。
  338. 小林英三

    ○小林英三君 それからあなたが二十日間ばかり、十二月の八日から二十日間ばかり取調べを受けている最中に、こういうことを聞いているのですがね、大勢で、大声であなたのことを、証人のことをどなりながら調べたという……。
  339. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうです。
  340. 小林英三

    ○小林英三君 あつたということは……。
  341. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ありました。もうそれは……。
  342. 小林英三

    ○小林英三君 それから殆んどなんですか、二十日間の間、毎日のようでしたか。
  343. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 二十日間の間、約十日間ぐらいは、もう大勢で、大勢と申しましても、三人か四人ですが、三人以上なんですが、大きな声で、小さな部屋でどなられましたので、頭がもうちよつと変になりまして、大部精神が撹乱状態に陥つておりまして、どういうことを言つたちよつと只今思出せないところがあるのでございますが、それで帰つて来まして、調書を検察庁から、調書の写しを取つて見ますと、大部本当でないことが調書の中に入つておりますので。
  344. 小林英三

    ○小林英三君 それから、私の聞いたことだけ言つて下さい。それから何ですか、やはり日によつては随分遅くまで調べたことがありますか。
  345. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 遅いときは、九時ぐらい、朝九時過ぎから出されまして、夜九時ぐらいまで。
  346. 小林英三

    ○小林英三君 飯を食わすだけで……。
  347. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 飯を食う間だけで、後は嚴重取調べを頂いているのであります。
  348. 小林英三

    ○小林英三君 それからあなたの、あなた自身の事件、二十日間の間に、あなた自身の事件について、ずつとなんですか、ぶつ通し調べられたのですか、それとも何か、その外の、先程委員長の質問に対して、あなたちよつとお答えになつておつたようですが、つまり土田の問題であるとか、或いは日野の問題であるとか、そういう問題が大分、直接これは私の事件じやないという話があつたのですが、あなた自身の事件と、それからあなたが二十日間おられた間に、そういうあなたの事件関係のない、例えば日野だとか、土田とかいうような、いわゆる警視庁の内部の問題、そういう問題について聞かれた方が、時間が多かつたのですか。
  349. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 贈収賄事件としてでございますか。
  350. 小林英三

    ○小林英三君 つまりあなた自身の関係事件と、あなたの事件関係じやなくて、これは事件とは関係がないからという前置きをおいて調べがあつたというのですが、そういうことの方が時間が多かつたのですか、調べる時間は、二十日間の中において。
  351. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 半分半分ぐらいであります。
  352. 小林英三

    ○小林英三君 それから証人取調べはいつごろから始まつたのですか、十二月の八日に行つてから、あなたの調べは……。
  353. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 十二月八日に行きまして、朝、私七時頃令状を持つて来られまして自動車で行つたのでありますが、それから直ぐですね、一遍休みまして、直ぐ取調べにかかつたのでございますが……。それで逮捕令状というのは、新橋駅前の喫茶店ケーの二階において、商工省官吏上田鉄夫外一名に、一回二千円から七千円程度の饗応をなしたる件、五、六回なんですが、そういう逮捕令状になつておりましたから、安心して大したもんじやないと思つて、小さい事件だと思つて行きましたところが、行きましたら直ぐ取調べに入りまして、ちやんとそれまでには、全部警視庁の方では調べが全部できておりまして、金額が警視庁へ二十五万円、商工省に二十五万円というのが、警視庁の方ではつきり捜査が出ておりまして、令状の事件の……。
  354. 小林英三

    ○小林英三君 そういう問題について、十日間ぐらい、二十日のうち十日間くらいあなたの問題を調べたんですか、そういう問題……。
  355. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はあ、さようでございます。私が出て、それは四、五日くらいの間にはつきりしたことは分つたのですが……。
  356. 小林英三

    ○小林英三君 それからあなたの何ですね、三洋工業会社に、あなたの使つている雇人等についても内偵が始まつて、やつたという話を……。
  357. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  358. 小林英三

    ○小林英三君 それはいつごろから内偵を……。
  359. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 大分前に、私が検挙される前に調べられておりますし、それから役人の、商工省の上田関係もずつと前に、十月くらいに調べられて、これは事件に、こういうことは事件にしないからということを、商工省役人にも話しておいたそうであります。
  360. 小林英三

    ○小林英三君 あなたが入つてから何ですか、内偵が始まつたのじやないのですね。
  361. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 内偵はとうの前にできておつたのであります。約六ヶ月前に捜査の……。
  362. 小林英三

    ○小林英三君 それから先程委員長の質問の中で、今の、土田さんの問題、或いは日野さんの問題等について、何なり詳しく今の加島警部が調べているようですが、私の聞いたことだけ言つて下さい。外のことは要りませんから……。
  363. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ。
  364. 小林英三

    ○小林英三君 あなたは、証人は、品川の防犯協会長として歴代の署長と御懇意であつたのですが、どういうわけでなんでしようか、土田さんの問題を馬鹿に詳しく、しつこく聞いておるようですが、あなたの方でも、土田さんの問題について、かなり詳しく陳述しておる、調べにあるようですが、あなたの事件だけ述べればいいのを、あなたの直接事件関係のない、関係は、多少関連はありますけれども、土田さんのことについて馬鹿に詳しく述べておるというのは、どういうわけなんでしようか。
  365. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは直接、大体警視庁幹部の派閥抗争があるということは、もう前から想像しておりましたし、取調べの状態につきましても、その方が主じやないかというように考えられましたです。
  366. 小林英三

    ○小林英三君 それは取調べの模様によつて、そういうことを考えられたのですか。
  367. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい左様でございます。取調べの状態につきまして。
  368. 小林英三

    ○小林英三君 そうするとあなたの調べ中において、土田という警部、それから松本という第二捜査課長の間において、非常に派閥の対立の感情があるということは感ぜられたのですか。
  369. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 感ぜられたのです。
  370. 小林英三

    ○小林英三君 そういうこともあつたのですか。
  371. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは間違いございません。
  372. 小林英三

    ○小林英三君 それからあなたを調べた捜査第二課の加島警部が、あなたを取調べ中に、あなたが今言つたよう警視庁の中に、松本課長対その外の今の日野だとか或いは土田とかいう人が非常に感情の対立があるということを、やはり口吻から見えるのですか。
  373. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 加島さんは言わなかつたが、私はそうじやないかということを話しましたけれども、加島さんも、そのように思つておられたようですが、非常にいやな事件を取扱つたというような様子でございました。
  374. 小林英三

    ○小林英三君 それからもう一つお聞きしたしますが、松本第二課長ですね。これを証人はお呼びになつて、そうして御馳走したことがございますか。
  375. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございます。
  376. 小林英三

    ○小林英三君 どこで……。
  377. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは私が警察後援会長、防犯協会長をやつておりましたので、大体初めから申上げますが……。
  378. 小林英三

    ○小林英三君 簡單でいいです。
  379. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 警察が軍隊というものがなくなりまして、警察官に対して非常に私ども、保護指導の立場に当つて下さつて大きな敬意を拂つておりましたので、品川警察署の監察官として課長になられる前に担当されておつたんで、たまたま品川に来られまして、ここでも当時の署長さんと一緒に公私ともに、私達は松本さんのために好意を持つて接近しておりましたから……。はつきりした記憶は分りませんけれども、数回の御馳走をしております。
  380. 小林英三

    ○小林英三君 どこで……。
  381. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 手前どもの家で御馳走したこともありますし、又旅館で御馳走したこともあります。
  382. 小林英三

    ○小林英三君 松本さん一人ですか。
  383. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうじやございません。松本さんの及びその監察官付の方は集つております。
  384. 小林英三

    ○小林英三君 松本さんと御一緒の……。
  385. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ。
  386. 小林英三

    ○小林英三君 それからもう一つお伺いしたいと思いますことは、先程、あなたのお貸しになつておる電気クラブについては丹羽さんの事務所みたいになつておる。そこでは先程委員長とあなたとの質問応答を聞いておるうちに、私非常に感じたのですけれども、そういう何ですか、警察庁の旧幹部、現幹部の人々といろいろなことを相談しておるということに対して、いろいろ委員長が詳わしくあなたに聞いたようでしたけれども、あなたはそういう会合にいつも出て自分でも意見も言う、或いは向うの言つておる話を全部聞いておつたのですか。
  387. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 聞いておりません。
  388. 小林英三

    ○小林英三君 聞いていないのにどうしてあなたはそういう答えが出ますか。こういうこともあるとか、ああいうこともあるとか……。出ないわけでしよう、聞いていないなら……。
  389. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 見たこともありますけれども、大体どういう相談かどうかということは私にはちよつと分りません。
  390. 小林英三

    ○小林英三君 見たことがあるというのは、事務所を貸してしまつて……。
  391. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 出入りすることを見ておるだけであります。
  392. 小林英三

    ○小林英三君 どこで見ておるのですか。
  393. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私共自分の部屋もございますから……。三階ばかりじやなく地下室の方もありますから……。
  394. 小林英三

    ○小林英三君 外の部屋が……。
  395. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございます。
  396. 小林英三

    ○小林英三君 そうするとあなたの貸しておる部屋へいろいろな人が出入りするということは、そこであなたが携つておるわけじやありませんね。丹羽事務所については……。
  397. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございます。
  398. 小林英三

    ○小林英三君 あなたは外の人がそういうふうに出入りされたということだけ……。
  399. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  400. 小林英三

    ○小林英三君 非常にあなたが詳わしく知つておるので聞かれた……。あなたはその会合に全然顔を出したことはないのでございますね。
  401. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  402. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 伺いますが、あなたはこの防犯協会長というのは品川警察署管内の防犯協会長ですか。
  403. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  404. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それはいつからいつ頃までおやりになつておるのですか。
  405. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは終戰後でございます。昭和二十一年の春と記憶しております。
  406. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それからいつ頃までですか。
  407. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 現在こういう事件を惹き起しましたので辞表を出して、今出ておりませんのでございますが。
  408. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 現在やはりやつておることになつておるのですか。
  409. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私がやつておることになつておるのですが、誰もやる人がないので事件最中のものですから……。
  410. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 辞表はまだ出していないのですね。
  411. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 辞表は出しました。けれども、役員会及び総会を開きまして、事件が完結になるまでそのまま面倒見て貰いたいと……。外に適当な者はないからというんでそのまま保留の形になつておるのでございます。
  412. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 防犯協会というものの協会員はどんな人ですか。内容を……。
  413. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 約一万五千人ばかりでございますが……。
  414. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 一万五千人……。これは管内の有志ですか。
  415. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは管内の居住者全部です。
  416. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 管内居住者全部……。
  417. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございます。
  418. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは創立と同時に全部の人がこれに入つたことになるのですか。
  419. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  420. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでこの会員は、やはり会費でも取つておるのですか。
  421. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 会費を頂いております。
  422. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 会員の方から……。
  423. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  424. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どのくらいですか。
  425. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 各十ヶ所余りの……。約十支部に分けまして、支部を作りまして……。
  426. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 十支部……。
  427. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。各支部毎に地域を分担しまして、支部長がありまして、それでここで会費を徴收して本部の方へ頂くというような形になつております。
  428. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでその役員というのは、その支部の人とそれから本部とは別々になつておりますか。
  429. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 本部役員と支部役員と違つております。
  430. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 本部役員と支部役員は違つておりますか。
  431. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  432. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 無論あなたが会長ですね。
  433. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  434. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 副会長はあるのですか。
  435. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 副会長はございます。
  436. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何名ですか。
  437. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 三名でございます。
  438. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何という人ですか。
  439. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 副会長は渡邊一郎……。
  440. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 渡邊一郎……。
  441. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それから成瀬豊、それから佐々木、ちよつと名前を忘れましたが、佐々木という人がおります。
  442. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この三名が副会長ですか。
  443. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  444. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 結成当時にあなたがその会長に推薦されたのは会員のやはり総会において……。
  445. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。選挙で……。
  446. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 選挙で……。
  447. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  448. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたが会長になるのは何かその前に、やはりこの管内においてあなたとしては何か職にあられ平か。どういう縁故ですか。
  449. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 何もなかつたんでございますけれども、選挙の席上で、選挙でまあ常任理事の方々が会長を引受けてくれというので、持つて来られたので、会長に当選しておるから引受けて貰いたいというのでなつたわけでございます。
  450. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、あなたが協会長になつたところから土田氏と知合になつたのですか。
  451. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうじやございません。
  452. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 上田氏とはあなたが会長になる以前からでございますか。
  453. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  454. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 昭和十九年からあなたが土田氏と懇意になつたのですね。先程委員長の質問に言われておりましたね。昭和十九年の四月頃……。
  455. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  456. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この土田氏はそのときに品川署長をしておつたんですね。
  457. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  458. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 品川署長土田氏はいつ頃やつていたのですか。
  459. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) あれは終戰直後までやつておられましたです。
  460. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 終戰直後に……。そうするとあなたが会長になるときには上田氏はまだ署長であつた……。
  461. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 土田さんはもうおりませんでした。
  462. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 おらない……。
  463. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ、おりませんでした。
  464. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 土田さんはもうそのときには何になつておりました。
  465. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 澁谷の署長でおられましたです。
  466. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 品川から澁谷に行つたんですね。
  467. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  468. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それからは今度は何になつたんですか。
  469. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 警視庁の警衞課長。
  470. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 警衞課長……。
  471. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  472. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それから……。
  473. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それから今の予備隊長になられました。
  474. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 予備隊長というのは、中央区隊長ですか。
  475. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 中央区隊長も兼務をされておりました。
  476. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 中央区隊長と予備隊長とは違うのですね。
  477. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 中央区隊の中に予備隊があり、兼務されておつたようでございますね。
  478. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたが警察の人と懇意になるに至つたのは、土田氏を知つておつたことがそもそもの最初ですね。
  479. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 懇意になるというのは……。大体私は警察官を志したことがございましたし、軍隊と警察ということを大分好きだつたんでございます。それと申しますのは……。
  480. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それはようございますが、警視庁管内の幹部の方と知合が殊更深くなつたのは、土田氏と懇意なところから、土田氏の紹介によつてずつとあなたが幹部の諸君と懇意になるに至つた……。
  481. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  482. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうことですね。
  483. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はあ。
  484. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで先程委員長が聞かれたときにあなたがお答えになつておつたようですが、警視庁のさる幹部を大勢船遊びに招待して、相当なあなたが出費があつたのに、あなたが一人で以てそれを賄つたというような話ですね。
  485. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それは大したことじやないんです。
  486. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どのくらい……。
  487. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) その当時の金で千円か二千円だつたと、大したことはないんです。私ははつきりした記憶はないんです。舟を出して釣なんかやりましたけれども、土田さんに頼まれて舟を用意して舟遊びをやつたことはございますが……。
  488. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 大体何名ぐらい。
  489. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) まあ十名か十五名じやないかと思いますが、はつきりした記憶はないんです、古い話ですから。
  490. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 記憶がないということはない。記憶のあることを言つて下さい。記憶のないことをあなたが言う必要はない。御記憶のあることを言いなさい。又言わなければならんことを言いなさい。一言一句があなたの責任に拘わるのですから、若し一歩誤るならば直ちに僞証罪になるということになるんですから、全責任を負うて言つて頂かなければなりません。覚えのないことを言う必要はありません。  そうすると、十名ばかりの幹部というメンバーは凡そどんな人ですか。
  491. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 名前は忘れました。
  492. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 全部……。
  493. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 殆んど忘れましたです。
  494. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いや、殆んどといつてそんな無責任なことを言つてはいけません。十名の人ぐらい覚えがない筈はないでしよう。土田さんは入つているんですか。
  495. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 土田さんですか、入つております、これは署長ですから。
  496. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたは先程他の委員の諸君の尋ねに答えておりましたこの資格者派と、それから成上り派といわれるのはあるのだつたんですね、警視庁内に。
  497. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  498. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたのこの十名招かれたメンバーはどちらです。
  499. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さあ、それがどちらか分らないんでございますが……。
  500. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 分らない……先程委員長の質問にあなたが答えておりましたいろいろな人の名前が出ているようですが、いろいろな人、あなたの言われておつたようないろいろな人の名前は、大体において成上り派の方ですか。
  501. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) まあ、そうばかりも……、今はつきりしたことは分らないんでございますが……。
  502. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 土田さんとあなたが懇意だということから始まつているとするならば、大体土田派に属する人が多いんですか。
  503. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうじやないかと思うのでございますが……。
  504. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ところが先程から委員の方のお尋ねにあなたが答えておりましたのを、松本とかそれからその他の監察官の人なんですがね、松本そういう人もあなたの家に招いたこともあるんですね。そうすると、あなたとしては必らずしも一方に偏しているわけではないと……。
  505. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私は公平でございまして、誰に贔負ということはないのでございます。
  506. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 松本さんなんかをあなたのうちに呼んだのはどういうわけで、いつのことですか。
  507. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは松本さんが品川方面の監察官の当時でございますので……。
  508. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 前のことでございますね。
  509. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 前のことでございます。
  510. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二課長になつてからあとはないんですね。
  511. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ないんでございます。
  512. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 品川在勤当時に呼んだことがあるのですね。
  513. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  514. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 松本さんと今尚やはり元の親交を……。
  515. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私の方で……。
  516. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ちよつと、松本さんとあなたとの親交は……。品川に松本さんが在勤しているときの親交は、依然として今日継続しているのですか。
  517. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 特に親交というのではございませんで、私後援会副会長、防犯協会長などやつておりまして、来られまして、何か一夕を作る場合にお眼にかかつてですね、その程度のものでございまして、特に親交というあれじやないのです。
  518. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ところが、土田さんとあなたが懇意なために、土田さんは成上り派の総帥と目されておりますね。
  519. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そのように思います。
  520. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 目されておるとするならば、その土田さんとあなたと親交であるとすれば、松本派の方の資格者派の総帥たる松本さんとは自然と疎んぜられることもあるわけですか。
  521. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 昨年あたりまでは土田さんと松本さんは非常に仲がよかつたです。
  522. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 松本さんと土田さんとが仲がよかつた
  523. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) よかつたんです。
  524. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それから感情の問題で二派に分れたんですか。
  525. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうじやないかと思います。
  526. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それからあなたの電気クラブというのはあなたの所有……。
  527. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 部屋は、終戰後からで、部屋か幾つも使つております。権利を出しまして、電気クラブが一時燒けましたので整理して使つております。
  528. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何階あるのです。
  529. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 三階が二十六坪で、それから地下室が約四十坪というのが二部屋あります。小さいのがもう一つあるのですが、十五坪ばかりの部屋で工場なつております。
  530. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どこが……。
  531. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 地下室が。
  532. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたのビルというのはあなたの所有のビルですか。
  533. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ビルは私の所有ではない。
  534. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 借りておるのですな。
  535. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。権利だけ。
  536. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何階ですか。
  537. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 例の問題の部屋は三階です。
  538. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 例の問題は後で聞きますから、全部で……。
  539. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 七階ございます。
  540. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの借りておるのはどこですか。
  541. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 三階と地下室。
  542. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 三階をあなたの事務所にしておつたのですか、元。
  543. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  544. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いつ頃まで事務所にしておつたのですか。この件に貸すまでですか。
  545. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽さんの応接室のようになつておる。
  546. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 丹羽さんに貸すまではあなたの事務所にしておつたのですね。
  547. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  548. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 丹羽さんに貸してからはそれからは地下室ですか。
  549. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  550. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 結局丹羽さんに貸したのは、完全に丹羽さんに貸したのですか。
  551. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 只で使つておるのですから……。
  552. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの事務所が地下室に変つたの丹羽さんに貸したから変つたのでしよう。
  553. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 毎日でございませんから……、お使いになりたいというので……。
  554. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 臨時に貸したのですか。
  555. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 臨時のようなものですね。
  556. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 丹羽さんに貸切りしたんですか。
  557. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽さんたちがお使いになるときは殆んど私のところでは出入りしておりません。
  558. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの事務所と共同で使つてつたのですか。
  559. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それは事務はとつていませんでしたね。
  560. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの事務はとつておらない。
  561. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございます。
  562. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 丹羽さんの事務はとつておるわけですか。
  563. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 事務といつても、クラブみたいに便宜上の集りになる部屋に使つてつたわけです。
  564. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたはそうすると丹羽さんに貸してしまつたなら、あなたがそこに行くことができないでしよう。クラブ員として行くのか、或いはそれとも全然関係がない……。
  565. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうようなかたいあれではなかつたんですから。
  566. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 やわいかたいは別として、この三階を貸して以後はどういう関係になつたんですか。
  567. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽さんがおられないときはときどき行つていました。
  568. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 来ておるときは……。
  569. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) お見えになりましたら私共は出て参りました。早く言えば応接間みたいなものでした。
  570. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それでは管理は、貸した以後は丹羽さんが管理しておつたわけですね。
  571. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) いや、管理は私の方でやつておる。
  572. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたが管理しておつた
  573. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  574. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 最初丹羽さんは霞ヶ関の方の事務所使つてつたのでしよう。
  575. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  576. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どうもそれじや松本さんの方に御迷惑になるからというので、その事情をあなたに話されたので、それじや電気クラブに変つたのですね。
  577. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それでございます。
  578. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすれば丹羽さんに電気クラブを事務所として貸してあげておつたわけではないのですか。
  579. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうわけでございます。
  580. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうするとあなたが霞ヶ関の丹羽さんの事務所がありましたときには、霞ヶ関にあなたの方から丹羽さんを訪ねて行かれたことがあるのですか。
  581. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういえば一度ばかり行つたような気がします。
  582. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 一度ですか。
  583. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 一度ですか、二度ですかはつきり分りませんが、訪ねて行つたことがあります。
  584. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そのときにあなたは増田さんに丹羽さんから紹介を受けて増田さんと会つたのですね。
  585. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  586. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 増田さんに一回霞ヶ関に行つたときにあなたが行つて一回紹介を受けた、それ以外に行つたことはありませんか。
  587. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 行つたことはありません。
  588. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 行つても差支えないのですよ。遠慮する必要はない。
  589. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 行つたことはございません。
  590. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 併し丹羽さんが増田さんの事務所を使つた。非常に増田さんに御迷惑になるからということで迷惑をあなたがよく了解して、特にあなたの貴いビル、三階の二十六坪というものは大したものです。それを貸し與えたのですからね。相当にその辺のところはあなたと丹羽さんとは懇意にしてやつておつたのではないのですか。
  591. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 増田さんのことはちよつとこれはよく分らないのでございます。
  592. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 増田さんと丹羽さんのことは分らんでしようが、あなたと丹羽さんと……。クラブ問題とか、その他についても相当に親交の間であるならば、こういうわけで困るのだから、ああいうわけで困るから一つ君にこうして呉れというようなことにならなければ、有楽町というような、ああいう立派な場所で二十六坪のビルを貸すということは、なかなか軽々しくあなたは幾ら成金でもできんでしよう。その事情はよくお分りでしよう。どういうわけでここは困るからこちらのクラブにしようということで、あなたの方はそれを上げましようということになつたのは、もう少し事情がありそうにも思いますが……。
  593. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ちよつとそういう事情は分らなかつたのです。
  594. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その丹羽さんは事務所といつても何にするのですか。
  595. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) まあこれは私の想像でございますが、あの方は非常によい方ですから、元のパージになつた人のお知合方々と晝でも、御馳走でもあがつて消息をお話になる程度のものではないかと思います。
  596. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでこの電気クラブに丹羽さんが事務所を持つて行つた後、そのときにまだ土田さんは現職にあつたのですね。中央区隊長……。
  597. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 土田さんは現職でございました。
  598. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 土田さんは現職にあるうちに、クラブに制服を着けてときどき出入りしておりましたか。
  599. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい、したように思います。
  600. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで先程委員長から聞かれておりましたが、大分メンバーの諸君が密談があるということから土田さんが、大分私の方で皮肉つた尋ね方で非常にお困りかも知れませんが、本当のことを言つて頂ければよいのですが、大分密談があるということで、土田さんは制服を着けたまま出入口で以て監視をしておつたというようなことが、あつたようなことはありませんでしたか。
  601. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございますね、制服で来られたのをちよつと見たような気がしますが、それはどういう意味であるか分らん。
  602. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 入口に入つて来ていかんと貴方は止められたことがありますか。行こうとして……。
  603. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございません。
  604. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 入口でとにかく入つて来ることを制服を着たまま止めておつたようなことがありますか。
  605. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 入口におつたことがあるのは見たことがあります……。
  606. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 入口に理由もなくおりやあしませんから……。
  607. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 中で止めるということは、そういうことは記憶にないです。
  608. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何がために入口におるんでしようか。
  609. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それはちよつと私には分らないのです。
  610. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 長い時間いるのですか。
  611. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) その時間も私はちよつと分りませんけれど。
  612. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうことは何回かありましたか。
  613. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 何回もあつたように思います。
  614. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでですね。当時土田さんが中央区隊長という相当な現職にあられる人が、立番をして中の密談を外界に漏れないようにするということについては、貴方と丹羽さんとの関係の深さを考えますと、このいわゆる、会合が何が故にそんな会合であるかという位のことは貴方で推察ができませんでしたか。
  615. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) その会合はそこまで実は私も余り考えたことはございませんですから。
  616. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 子供の遊びじやないのですからね、何かあつたということは貴方の感覚を以てして何か考えそうなものですね……。それは昭電事件のときですか。
  617. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) それも分りません。
  618. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それも分らない……。時期的にはどうですか。その近所ですか。
  619. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 時期的にはややそのときでした。
  620. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこに集まるメンバーは大体そのメンバー中の幹部というのはどんな幹部ですか。
  621. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽さん、岡崎さん、門叶宗雄さん、川口正二郎さん、秋山さん、私の知つております人はその程度のものです。
  622. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 原文兵衛という人は……。この方は見たことはございませんか。
  623. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 見たことはございません。
  624. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ここに先程貴方がしつかり覚えがないとか、あるとかお話があつたのですが、その前後のときに増田さんが一、二回来たような気もする、来んような気もするというような、結局分らなかつたのですか。やはり来たような気がしますか。ときどき増田さんが来たような気がしますか。
  625. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 来たような気がいたしません。
  626. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 増田さんはあなたと何も関係がないのですか。
  627. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  628. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 丹羽さんと増田さんは親しかつたのですか。
  629. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 丹羽さんと増田さんは親しかつたような気がします。
  630. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 岡崎さんとも親しいのですか。
  631. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私はちよつと分りません。
  632. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたのそうすると幹部として知つておるのは、必らずしも成り上がりの者ばかりでないのですね。
  633. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はい。
  634. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 のべて知つておるのですね。
  635. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  636. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたは金があるものだから応援を得たいと思つて、あなたを百パーセント警視庁は利用したわけだね。
  637. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうも考えられますけれども、私としましてはそういう意味のつき合いではない。
  638. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 警察方面に理解が深いものだから……。
  639. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  640. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それであなたが例えば船で御馳走する、その他いろいろこういう料理屋の出費がかかる。そういうものは皆協会の金でなくて、あなた個人の金ですか。
  641. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 個人でございます。まあ警察方面に対して相当犠牲を拂つておりますが、御協力申上げると、かようなわけでございますけれども、併し警察官を私は私用のことで頼んだことはございません。
  642. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 加島警部があなたを調べたのは、あなたの涜職事件として調べたのですか。
  643. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。贈賄事件でございます。
  644. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 贈賄は分つておりますが、そういうことが、一体あなたの贈賄事件を取上げられるに至つたのは、どういうことから取上げられるに至つたのですか。例えば有資格者派、それから成り上り派の総帥と非常に懇意ですね。ですから今度有資格者派から見るというと、あなたは総帥の直く近くに行つておるものだから、あなたを倒すことは、やがて成り上り派の力を弱めることになる。なりますね。結果から見ると……。そういうつもりではなかろうけれども、何かそういうふうな派閥的の関係からあなたの手入れがあつたと思いませんか。
  645. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうふうにも思われます。その点もございます。
  646. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 思われますね。結局松本派一派の方からあなたが征伐されたわけですね。
  647. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうわけでございます。
  648. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そう思つておりますか。
  649. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうふうに思つております。
  650. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その犯罪の、あなたの贈賄の発覚の端緒はどういうところから始まつたのですか。
  651. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは昭和二十三年の二月でございますが、手前どもで……。
  652. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二十三年の二月ですね。
  653. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 二十三年の二月に……。
  654. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いや、あなたの罪状は分つておりますから、犯罪の発覚はどういうところから、ただ漠としてあなたを調べるに至つたのか、或いはあなたの検挙の……。
  655. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はつきりしております。それは商工省役人に……。
  656. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二十五万円の小切手をやつた……。
  657. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 五、六回御馳走したというので逮捕状を持つて検挙されたわけです。
  658. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 一番最初から加島警部が調べたのですか。
  659. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  660. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたは参議院の法務委員会で言うておりますところによると、可成り警視庁の内部に対して、あなたは深い縁故をもつておるようですが、これは大体において成り上がり派の方のが多いのですね。
  661. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございますね。
  662. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは成り上り派といいましても、その中のメンバーには岡崎さんとか、丹羽さんなどがおりますから、そうではないのですね。官僚派のちやきちやきですから……。
  663. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 無色透明の人です。(笑声)
  664. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それから先程大野委員からも聞かれましたが、あなたの尊い借家なり、あなたのお住居なりですね。今四十坪から三十幾坪なんというような家屋であるとすると大変な尊いものですが、それを一官吏にあなたが無償若しくは無償に等しい程度で貸してあるのは余りにも犠牲が多いようですが……。
  665. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうでございます。
  666. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 何かあなたにはまあさもしい反対給付を求めるわけでもありますまいけれども、貸さなければならない理由があつたのですか。
  667. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ないのでございます。ないのでございますけれども、つい私は人にものを、用を頼まれますと、なかなかいやだと断り切れない性質でございまして、頼まれると無理してでも、大抵言うことをやつて来たのでございます。そんなわけでございまして、つい土田さんとの関係も再々頼まれまして、止むを得ず仕方なくやりました。
  668. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 性格的に弱いのですか。
  669. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 弱いというか、どうも人に用を頼まれますと、人を喜ばして上げたいというような考えを持ちますから、はつきりお断わりするということのできない方でございます。
  670. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたが性格が弱いので、ここで法務委員会に証人としてあなたが立つというと何を言うか分らないというので、大分心配しておる人があるのじやないのですか。
  671. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 或いはあるかも知れません。
  672. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 或いはあるかも知れない……。その心配しておる人の方から何か証人に立つ以前に申入れはありませんでしたか。
  673. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ございませんでした。
  674. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 全然……。
  675. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はあ。
  676. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうようなところから診断書が出たり、出頭するのが期日に出なかつたりしたような事情はございませんでしたか。
  677. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そういうことは全然ございません。
  678. 大野幸一

    ○大野幸一君 議事進行についてですが、先程遠山委員長から奇怪なる発言を……、奇怪なる電話をかけた声は大野議員ではなかつたかとの問いは、これは国会法第百二十條……。
  679. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうことは証人のおる前で言われるのは……。
  680. 大野幸一

    ○大野幸一君 いや証人に取消して頂きたいのです。
  681. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうのは証人のおらない前で……。
  682. 大野幸一

    ○大野幸一君 国会法第百二十條「議院の会議又は委員会において、侮辱を被つた議員は、これを議院に訴えて処分を求めることができる。」と規定してあります通り私がこの委員会外において殊更に声を以て行動したごとき発言と認められます。よつて私は遠山委員をして今ここで取消されんことを希望いたします。若し取消さないならば、私はこの條項によつて、或いは処分を求めるかも知れませんから、遠山委員の一考を伺います。
  683. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 只今の大野委員の御要求でありますが、お答え申上げます。私は大野委員に対しまして重大なる侮辱を與うる目的も又意思も全然ありません。ただ大野委員からも証人に対しましてのお問いの中に、証人に対する四日の行動をすつかり調査をしておるのだということを前提として証人に問いを発しておられます、私はこういう問い方というものは、あとから出で来るべきものだと思つたのであります。先にそういうことを言わないで、証人からだんだん陳述を求めて違うようなことがあれば、俺が調査したところではこういうことがあるが、喰い違いはないかと、こうやつて来るのが普通の問いの形でありますが、前提として、そういうことを申された。そういうようなことが或いは証人の真実の証言を或いは抑圧しやせんか、こう私は考えたのであります。勿論行動を調査せらるるということになりますと、調査の方法はいろいろあると思いますけれども、或いは自分でお出掛けになるなり、或いは人を派してお調べになるなり、或いは電話をかけられてお調べになるので、お調べになつたことであろうと、私もこう考えたのでありまして、そういたしますと、或いは電話ででもお調べになつたのか知らんと、私はこう直観したものでありますから、私は只今大野委員の指摘せられたような問いを証人に発したのであります。併しながらこれはそういう言葉の一つの綾でありまして、前述の通り大野委員の名誉を失墜する目的、若しくは意思というものは全然持つておりません。  それで訂正の要求がありましたので、訂正に応じたいと考えているのであります。それは大野委員の声ではなかつたか、こういうようなことを私が尋ねておつたのでありまするが、それは次のごとく訂正いたしたいと思うのであります。「誰か記憶している者の声ではなかつたか」こういう工合に訂正をいたしておく次第であります。
  684. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 証人に質問したいことがあるのですが、防犯協会というのは常識的には分かりますが、大体どういう仕事をするのが防犯協会なんですか。
  685. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) お答え申上げます。この趣旨といたしましては……。
  686. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 簡單で結構です。
  687. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 側面から警察活動の一部分を御協力申上げるというような形になつておりますが、この防犯事業と申しますものは、捜査とは全然違いまして、未然に犯罪を防いで、殊に終戰後秩序の紊れた我が国の保護指導と申しますのは、ひとり防犯活動以外にないというところからできたところのものです。
  688. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 分りました。それで各警察署の方へ寄付が沢山あるようですけれども、それは防犯協会として出していますか、それとも個人として出しているんですか。
  689. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 防犯協会のもございますし、個人の場合もございます。
  690. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 その場合警察が、その寄付をどういうふうに取扱うのです。一遍出納帳に入れるのですか。
  691. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) これは警察では全然タツチいたしませんで、防犯協会が会計なり、会計監査人がありましてタツチしております。警察とは全然何ら関係のないものになつております。
  692. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうすると警察に寄付したその金というのは、警察とは関係なしに使つていいというわけですか。
  693. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 警察に寄付というのじやなくて、警察の防犯活動を援助する費用なつておりますので、警察がこの金を勝手に使えないのでございます。
  694. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 使えない……。
  695. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) さようでございます。
  696. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それから先程土田警部ですか、警視ですか、あなたに対して封鎖預金を現金に換えて呉れ、こう言つて来た。それは土田さんの封鎖預金ですか。
  697. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうです。土田さんの個人のものです。
  698. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 金額はいくらになつておりますか。
  699. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 四万五千と記憶しております。
  700. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それから霞ヶ関茶寮て増田官房長官と会つた、それは何時間ぐらい会つたのです。
  701. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ちよつと挨拶しただけでございます。
  702. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 お茶も飲まなかつたですか。
  703. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) ええ。
  704. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それから先程これは再三委員の方が尋ねておるのですが、はつきりしないことは、やはり丸の内の事務所に来たように思われるがはつきり来ないとは言えないということを先程言つておられたのですが。
  705. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 私が見たことはございませんです。
  706. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 来たことはない。見たことはない。
  707. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) そうです。
  708. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 併し噂には大体そういうことを聞いているのですか。
  709. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 噂のそれは分らないのであります。
  710. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一言だけ証人に伺いたいのですが、証人がさつき述べられておつた中に、岡崎さんと、丹羽さんとが初め増田さんの霞ヶ関の事務所で会つておられる、而もそれは増田さんに御迷惑だというので、電気クラブの方へ来られたということを言われましたが、それはいつ頃のことですか。
  711. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 有来町へお越しになる前でございます。ですから……。
  712. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有楽町へ来られたのはいつですか。
  713. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 昭和二十二年の夏頃と思います。
  714. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 二十二年の。
  715. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 左様です。
  716. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 何月頃から。
  717. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) はつきりした月はちよつと分り兼ねます。
  718. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはあなたの事務所をお貸しになつたのですから、そう曖昧な筈はないと思いますが。
  719. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 昭和二十二年の夏頃じやないかと思います。
  720. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 夏というと……。
  721. 伊藤鑛壽

    証人伊藤鑛壽君) 六七月頃じやなかつたかのように記憶しております。
  722. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。
  723. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御発言ありませんですか。それではどうも御苦労様でございました。ではこれで休憩いたしまして、午後は二時から続行いたします。    午後一時二十七分休憩    —————・—————    午後二時四十九分開会
  724. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では午前に引続き開会いたします。日野昇さんですね。
  725. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  726. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住いはどちらです。
  727. 日野昇

    証人(日野昇君) 千葉県の船橋市海神五丁目二千三百五十一番地。
  728. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年は幾つですか。
  729. 日野昇

    証人(日野昇君) 四十八であります。
  730. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日はいわゆる五井産業事件に関連しまして御出頭を願いました。
  731. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  732. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論偽証の制裁がありますから、宣誓して御証言を願います。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 日野  昇
  733. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴をおつしやつて下さい。
  734. 日野昇

    証人(日野昇君) 大正十五年の三月十日に警視庁巡査を拝命しまして、メモを持つておりませんので若干食違うかも分りません。
  735. 伊藤修

    委員長伊藤修君) メモをどうぞ……。
  736. 日野昇

    証人(日野昇君) 持つておりませんので、或いは若干拝命の月日が食違うかも分りません。昭和七年に巡査部長になりまして、昭和十二年の七月に警部補任官、昭和十八年の八月でしたか、警部に任官、昭和二十三年の九月頃と思いますが、警視に任官しまして、二十四年の八月三十日に中野警察署長を命ぜられまして、本年の二月七日に依願退職となつております。現在は何も職はありません。
  737. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の本庁にいらつしやつたのですね。
  738. 日野昇

    証人(日野昇君) 本庁は昭和十五年からずつと勤務をしております。
  739. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつまでに。
  740. 日野昇

    証人(日野昇君) 中野署長になるまでです。
  741. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁はどういうお仕事のところにいらつしやつたのですか。
  742. 日野昇

    証人(日野昇君) 昭和十五年からは、警視庁の官房情報課というのがありまして、その官房情報課で二十年の十月まで情報課に勤務しておりまして、それから警備課の勤務になりました。警備の主任警部をやり、続いて係長になりまして警視になり、そうして中野署長に出るまでは警備の勤務をしておつたのであります。
  743. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の方では官房と警備の方と両方に……。
  744. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  745. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤昇というのや御存じですね。
  746. 日野昇

    証人(日野昇君) 知つております。
  747. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤昇とのお知合いになつた関係は。
  748. 日野昇

    証人(日野昇君) これは昭和二十年の終戰の年の暮か、貰いは二十一年の春か、この点はつきり記憶ありませんが、本体において二十年の暮か翌年の春あたり知合つたと思います。
  749. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう御関係で。
  750. 日野昇

    証人(日野昇君) これは当時鐘紡に勤めておりました水野嘉雄という私の古い友達がおりまして、その友人が紹介して呉れたのが最初の機会であります。
  751. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤は柴田という人の紹介だと言つております。どちらでもよろしいのですけれども……。
  752. 日野昇

    証人(日野昇君) これは佐藤君の記憶の間違いじやないかと思います。
  753. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それからずつとお附合いになつていらつしやいますか。
  754. 日野昇

    証人(日野昇君) そうでございます。
  755. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤とあなたとの間に金銭の授受がありましたですね。
  756. 日野昇

    証人(日野昇君) あります。
  757. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今ちよつと申上げるからお聞きになつて下さい。
  758. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  759. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二十一年の九月に一万円、二十一年の十二月に一万円、二十二年の一月に一万円、二十二年の夏に二万円、二十二年の暮に三万円、二十三年の一月に一万円、二十三年の九月に一万円、二十四年の八月に一万円、合せますと十一万円になりますが、こういう金銭の授受がありましたですか。
  760. 日野昇

    証人(日野昇君) この点は、大体私はこの問題につきまして、監察官の取調べを受けたのでありますが、その当時の金銭の授受について、どういう記憶があるかというお尋ねがありましたのですが、そのときに私は私の記憶だけであるのでありますが、大体五、六回ぐらい金銭の授受の記憶がある。而もその日は大体において二十一年から二十三年春頃まで、或いは二十三年ははつきり記憶がないのだが、大体において主として昭和二十一年二十二年の間に五六回ぐらい金銭の授受があるという記憶があるということを監察官に申上げましたところが、いやもつとあるというお話なんであります。併し私ははつきりした日、或いは金額がはつきり記憶がないのでありますが、それはもつとあるとおつしやるならば、そのもつとあるという理由、或いは根拠、何か根拠があるのかということを私が監察官に反問しましたら、それは佐藤の調書によるものであるということでありますので、勿論佐藤氏が真実に申述べておる調書であるならば、私は佐藤君の自供した自供事実をこれを否定する理由は何もない。そこで大体佐藤君が正しく自供しておるとするならば、佐藤君の自供の通りでありますということを申上げましたのですが、先程申しましたように、私の記憶は五六回という記憶があるのであります。併し佐藤君が実際にそういうふうに自供しておるといたしますれば、そのことが正しいだろうと私は信じております。これは私は認めます。
  761. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五六回と言えば二十三年の一月までですか。あと二、三回だけですから……。
  762. 日野昇

    証人(日野昇君) 二十一年二年を通じて五六回という記憶があるのであります。
  763. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今申しましたお金は具体的に何にお使いになつたのですか。
  764. 日野昇

    証人(日野昇君) これは細かく具体的にここで一々申上げる私のはつきりした記憶はありませんが、大体におきまして、私が警備の仕事をやるその仕事に必要な、或いは警備の仕事を能率的にやるために必要な面に使つたのであります。
  765. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう警視庁の警備費用し他から寄付を受けるということができるのですか。
  766. 日野昇

    証人(日野昇君) これは佐藤君が私という人間を信じて呉れますし、更に又私の当時の立場を理解して呉れましたので、私個人に対する佐藤氏の純粋な意味の私は浄財である、私個人に対する協力の一つの形であるということで、私自身の責任において私が貰つたのでありまして、警備課が若し公式に一般民間の協力を受けるといたしますれば、当然これは正式な寄付の手続を経るのが正しいのであります。併し私の場合は勿論私の私的な面に使うために佐藤君が協力して呉れたというのでないことは明瞭でありますけれども、私個人に対する佐藤氏の純粋な援助である、そういうような考えから私個人の責任において私は貰つたのであります。
  767. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとあなた個人とおつしやるけれども、個人の私生活にもお使いになるわけではないですね。
  768. 日野昇

    証人(日野昇君) 私生活では絶対にないです。
  769. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 公の面にお使いになつたわけですね。
  770. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  771. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 公の面の何にお使いになつたのですか、例えば飲食費とか、旅費に使うとか、事務のことに使うとか、そういう面ですか。細かいことは一々お覚えはございませんでしようけれども。
  772. 日野昇

    証人(日野昇君) 大体におきまして、私は当時係員の終戦後における生活というものは非常に窮迫しておつたわけであります。ところで係員を能率的に仕事をさせますのには、やはり係員の苦しい面は救つて行かなければならん。要するに面倒を見なければいかんということを私は常に考えていたのであります。例えば係員の家庭が病気をしておるとか、或いは入院をしておるというような場合には、係員のそういう面における若干の援助も必要でありまして、この面にも使いますし、更に又仕事の上でいろいろと警備情報を蒐集するのでありますが、これといたしましてもやはり出版物或いは新聞通信、こういうような面から研究をしなきやなりませんので、こういう面にこの金を使つておりました。
  773. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうのは何か共済会とかいうものはないですか。
  774. 日野昇

    証人(日野昇君) ないのでございます。
  775. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の中に……。
  776. 日野昇

    証人(日野昇君) はい。
  777. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると各上官の人は皆そういうことをおやりになつていらつしやるのですね。あなたみたいな重要な立場にいらつしやるお方は部下に対して皆そういうふうなことをおやりになつていらつしやいますか。
  778. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私は知りません。
  779. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうのは何か庁内で然るべき方法ないのですかね。
  780. 日野昇

    証人(日野昇君) 当時はないのであります。
  781. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれどもそういうお気持のほどはよく分りますが、そういう金に充てるために庁内にそういう予算がないといたしました場合、一般からあなたを信頼する特定の個人からお貰いになるというのはちよつと好ましくないのじやないでしようか。
  782. 日野昇

    証人(日野昇君) それは了解できます。
  783. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあそのときのあなたのお気持としてどうですかね。
  784. 日野昇

    証人(日野昇君) これは私の責任において、責任あるとするならば私は盡く責任を負うつもりで私は金銭の授受をしたのでありまして、これが警察官の態度として好ましい態度でないことは私も了解しております。
  785. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か品物の授受もありましたですね。
  786. 日野昇

    証人(日野昇君) 盆とか暮とかに若干の品物を貰つた記憶があります。
  787. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなた個人にですか。
  788. 日野昇

    証人(日野昇君) これは私個人も貰いましたが、私はでき得る限り私の物としないで、でき得る限り係員に面倒を見るつもりで分配をしたような記憶がありますが……。
  789. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論そういうお金とか品物は佐藤から届いたというようなことはお伝えになつたことはないでしようね。
  790. 日野昇

    証人(日野昇君) それは伝えておりません。
  791. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは佐藤と会合をなさつていらつしやるのですね。
  792. 日野昇

    証人(日野昇君) はい。
  793. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お覚えなつていらつしやいますか。
  794. 日野昇

    証人(日野昇君) 明確な記憶はございませんが、一緒に会つて飯を食うというような機会はしばしばありました。
  795. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どつか池袋のですね……。
  796. 日野昇

    証人(日野昇君) これははつきり記憶がありませんが、大体あつたと思います。
  797. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから小石川のもみぢとか、それから向島の八百松とかいうところでおやりになつたのですか。
  798. 日野昇

    証人(日野昇君) やりました。
  799. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外にもあつたのですか。
  800. 日野昇

    証人(日野昇君) その外には神楽坂あたりで二、三度一緒に飯を食つた記憶があります。
  801. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 池袋のは石田池袋署長の栄転祝とかで石田、あなた……。
  802. 日野昇

    証人(日野昇君) 私が石田君を紹介して三人で会つたときだろうと思います。
  803. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたと上野藤五郎とか……。
  804. 日野昇

    証人(日野昇君) そうですか。そいつは記憶がなかつたです。
  805. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう人が御会合になつたそうですね。
  806. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  807. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから、もみぢは細田係長の栄転祝というので、細田、あなた、吉武、上田こういうような人がお寄りになつたのですか。
  808. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  809. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから向島の八百松では絹川氏の歓迎会とかいう名義で以て、絹川氏とあなたと吉武氏と、それから佐藤氏も勿論入つておりますが……。
  810. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  811. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 神楽坂はどなたでしたか。
  812. 日野昇

    証人(日野昇君) これははつきりした記憶はないのですが、少くとも我々の側の者は同席していなかつたと思います。佐藤氏の知合の人々であつたと思います。
  813. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 柴田氏は……。
  814. 日野昇

    証人(日野昇君) 柴田氏はおりました。
  815. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外……。
  816. 日野昇

    証人(日野昇君) その外は私の知つておる人はいなかつたと思います。
  817. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その外二、三回とおつしやつたのは……。
  818. 日野昇

    証人(日野昇君) 場所ですか。
  819. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ。
  820. 日野昇

    証人(日野昇君) 大体神楽坂は植木という家、それから菊川でしたか、そういうところで一、二回会いました。
  821. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 会合の人々は。
  822. 日野昇

    証人(日野昇君) 会合は今言つたように、柴田氏が顔を出しておつたの覚えておりますが、その外佐藤氏の友人が二、三人だつたと思いますので、はつきり記憶はありません。
  823. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは昭和二十三年の六月頃ですね、佐藤の紹介で藤井孝にお会いになつたですね。
  824. 日野昇

    証人(日野昇君) 昭電の藤井氏ですか、これは佐藤氏の事務所が永代にありまして、そこへぶらりと立寄つたときにたまたまそこに来ておつた人が藤井だというので、そこで紹介されたことはあります。
  825. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際佐藤があなたに対して言うのに、藤井から昭電事件の情報の提供をして貰えんかと頼まれたことがあつたのですか。
  826. 日野昇

    証人(日野昇君) そんなことはありません。
  827. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことはありませんですか。
  828. 日野昇

    証人(日野昇君) ありませんです。
  829. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後佐藤がしばしば警視庁に訪れて、そうしてあなたに同様なことを頼んだんじやないですか。
  830. 日野昇

    証人(日野昇君) いや、昭電について情報を提供して欲しいというような依頼は受けたことはありません。
  831. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か昭電はどうなつておるかというようなことをあなたに聴きやあしませんか。
  832. 日野昇

    証人(日野昇君) そういうことを頼んで来たとか、依頼して来たというのでなしに、当時昭電事件というのは大きな政治問題でありまして、話題として昭電問題がどうなるだろうというような、一般の雑談的に昭電事件が話題になつたことはあります。
  833. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時昭電事件警視庁方面から漏れるということが専らでしたね。我々もこの前それを調べてまして大体警視庁方面から漏れているように承知しておりますが……。
  834. 日野昇

    証人(日野昇君) 捜査の内容がですか。
  835. 伊藤修

    委員長伊藤修君) はあ。
  836. 日野昇

    証人(日野昇君) 少くとも昭電の捜査に関することは我々の関知するところではなくて、我々の與かり知らんことなんです。況んや警視庁の職員が而も警視庁幹部の席を穢しておる者が捜査の内容を秘かに窺うとか、或いは秘かにそれを聴きに行くというようなことは、警察官として絶対にできることじやありません。従つて捜査の内容等につきましては我々は何ら知りません。巷間伝えられておるところの噂話という程度のものは承知しておりましても、捜査の内容などは我々がタツチできるものじやありません。
  837. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 内容にはタツチしませんけれども、同じ部内にいらつしやると、いわゆる警視庁内における空気というものは察知できますからね。緊迫した空気だとか、或いはどういう面に発展するとかいう空気は多少察知できますからね、そういう情報は入手すべく佐藤の方から働きかけたのじやないですか、そいつに対してあなたはお答えになつたならんは別問題として……。
  838. 日野昇

    証人(日野昇君) 併し巷間伝えられておる昭電事件の噂話は会う機会には話が出ましたけれども、少くとも私が警視庁におつて、警視庁のその事件の進展のニユアンスを察知してそれを知らすというようなことは毛頭ありません。
  839. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か当時昭電は楽観が許されない、相当進展する模様だというような、あなたの座談かなんか意見を述べられたことはありませんか。
  840. 日野昇

    証人(日野昇君) それは或いは座談の席上で私のいわゆる勘ですな、勘としてこの事件は大問題だろうというようなことは言つたことがあるかも知れません。
  841. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤が昭電事件で以て土居警部に調べられましたね。
  842. 日野昇

    証人(日野昇君) それはあとになつて、そういう話は聞いたことがあります。
  843. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その調べる前に佐藤があなたのところに相談に行つて、どういうことで呼出しを受けているのか、これは心配だから聞きに行くのが当然で……それは人情においても察知されるですね、そのときにこれこれであるということをお話になつたのじやないですか。
  844. 日野昇

    証人(日野昇君) いや、それは知りません。
  845. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か百万円の領収書、仮想領収書を作つて問題になつておりますね、その点と小切手の点と、この二点だけだというふうにあなたが、内示、教えてやつた……。
  846. 日野昇

    証人(日野昇君) 私が若しそういうことを内示したとすれば、捜査をしておつた当時の捜査関係の者に、私が聞かなければそれは分らん筈です。ところが聞いた者がない筈です。私がそういうことを聞いたという人は恐らくないだろう。私はないのです。若し私がそういうものを取りに来て、情報を提供したという人があつたとするならば、私がそいつを調べたかも知れません。そういう人はないと思います。
  847. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本人は心配してあなたに相談に行つて大体内容を聞いたのですから、まあそんなことを言うなら安心です……翌日出て行つたというような……。
  848. 日野昇

    証人(日野昇君) それならば、私が誰かにその……私は小切手か何か知りませんよ、知りませんが、小切手の問題と、何かの何百万円とかの問題だということとを私が知つたとすれば、私が誰かからそれを聞いておらねばならん筈ですが……、私が聞いたという者がありましようか。私は、そういう警察官の一つの限界があります、やるべきことと、なすべからざることとの限界がはつきりしております、予め……。
  849. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時御承知の通り日野原という人は、あらゆる手を講じてこうした各方面に情報網を敷いておつた、その情報の片鱗をも掴むべく努力されたことは事実なんですよ。その情報網の中にあなたも巻添を食つておられたのですね。
  850. 日野昇

    証人(日野昇君) 併し、それは或いは昭電側で私らをいわゆる情報網として活用したか知りませんが、私は活用されていないという自信を持つております。
  851. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは佐藤に対して塩谷、上野、津久井、吉岡、張本、細田、石田というような人を紹介してやつたことがありますか。
  852. 日野昇

    証人(日野昇君) その紹介の関係は大体そうですが、その中で塩谷さんを紹介したというのが、佐藤君がそういう供述をしておるとすれば、佐藤君の記憶違いじやないかと思います。
  853. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その他はあなたが紹介してやつた
  854. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  855. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か佐藤君が自警会の出入り商人としていろいろな商品の納入することを紹介してやつたのですね。
  856. 日野昇

    証人(日野昇君) これはどういう関係で自警会の商人になつたかは、その経過は知りませんが、一番最初は何か、ちよつと私は記憶ありませんが、何か纖維品の格安のものがあるというので、これを、警視庁の職員も戰争半ばから戰後にかけて非常に苦しんでおる、生活も非常に苦しいから格安のものであるとすれば、これを職員に安く売つたらどうだろう、一般職員も若干でも助かるのじやないかという話がたまたま佐藤君と私の間にありまして、それは非常に結構だ、そうすれば幾ら幾らといつても警察官が救われるということは誠に結構なことだから、是非一つそういうような努力をして欲しいというので、私は上野藤五郎君が当時警務課の主計係の警部で自警会関係をやつておられたので、私はその人に一応口をきいて紹介したことはありますが、それがその後自警会への出入り商人になつた機会になつたとは思いますが、その後は取引或いは品物の納入関係の口をきいたことはありません。一番最初の機会を私は作つてやつたのです。
  857. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤は、あなたの紹介によつて警視庁の中にいろいろ知合が沢山できたわけですね。
  858. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  859. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 従つて警視庁の始終出入りしておつて、大体警視庁に来ると塩谷さんの部屋とかあなたの部屋とか吉岡さんの部屋、そういうところに頻繁に出入りしておつたわけですね。
  860. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  861. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤がこれだけあなたに知遇してやつたのですね。佐藤をこれだけいろいろ引廻してやつたのですが、そのあなたの佐藤に対するお心持はどういうふうだつたのですか。
  862. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は当初紹介されてしばしば会つて話を聞いておりましたが、非常に若いけれども、可なりすつきりしたスポーツマンらしい性格だと私は非常に好もしく感じておつたのです。殊に、商売のことにつきましては我々は全然分かりませんが、何と申しますか、由来少々金を儲けたりするととかく政治的な野心を持つたり人々はしたがるものでありますが、そういう野心がなくて、スポーツマン的な気持から当時の社会情勢を非常に心配しておる、日本の再建について非常に心から憂えておるというような、すつきりした日本人らしい気持に私は盡く信頼を持ち続けておるのであります。況んやその当時、彼が行く行く涜職事件に関與したり、或いは詐欺を犯すだろうというような予想などはもとよりしておらんのであります。私は彼を紳士として信頼しておつたのであります。
  863. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あれは前に、佐藤という男は経済事犯を犯したということは御存じですね。
  864. 日野昇

    証人(日野昇君) いや、それを私は知らなかつたのです。
  865. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 得てして戰後の俄か成金というものは、相当の官界及び政界の方面に出入りをして、その知遇の下に商権を拡張して行こう、こういう考え方が先ず根本になつておる。というのは御承知の通り、統制経済ですからね、商人を相手にしておつたのでは商売にならない。先ず官庁に力を得るということが戰後派の商人の行き方ですから、これは……。官庁に顔が利かないと物を拂下げてくれないし、融通もきかない。他面におきましては、今度はそれを売る場合に配給を受けた値段で売つては儲からんに決まつておる、これは闇をやらざるを得ない。儲ける以上は闇をやらなければならない、やる以上は経済事犯にひつかかる、従つてそれを睨んでおるところの警察官に渡りをつけておくというこの二面工作が戰後の商人の金を儲ける祕訣だつたというわけですね。そういうものにあなたは利用されておるとあなたはお考えにならなかつたのですか。
  866. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は遺憾ながらその点を疑つておらなかつたのです。
  867. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 商人の人やちよつとも色の変つた人が警察あたりに知遇を求めるべく渾身の努力を拂つたとも思えましようけれども、少くともふさわしからざる方面に交際を多く求めて来たというところにお疑いをお持ちにならなかつたのですか。
  868. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は当時疑つておりませんでした。
  869. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 得てして商人は、殊にあなた達のような立場を利用したがるものですからね。
  870. 日野昇

    証人(日野昇君) 併し私自身はそう大して佐藤君あたりがどう利用しようとしてもそう大して利用価値のある存在ではなかつたんです。
  871. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 存在ではなかつたにしても、少くともあなたの知遇を得て、裏付によつて幹部の人に渡りをつけて行く、渡りをつけるという言葉はいいか惡いか知らんけれども、とにかく知合なつて、顔を拡げて行くという一つのあなたが糸口になつたわけですね。
  872. 日野昇

    証人(日野昇君) 或いは結果的に、そうおつしやれば結論的にはそういう結果になるかも知れないが、私は当時はそういうような佐藤に対して疑いを持つておりませんでした。
  873. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ地方へ行きますと、御存じでしようけれども、いわゆるボスというものが、警察ボスというものがどこの地方にもあるのですね。その場合に警察の方の誰か一人知遇を得て、それからどんどん内部的に力を拡大して行つて、そうして警察に対するところの、いろいろな利用の用に供しようというのが多いのですね。そういうことになりますと、日本の警察界の根底が乱れて来ると思うんですね。殊にあなた達の大切な捜査権というものは、刑事訴訟法で委託しておるんですから、これが乱れたら日本の司法及び警察というものは根本的に破壊してしまうことになるのですから、この点を我我は非常に重大に関心を持つておるわけです。これは従来より以上、新らしい法則の下においては、あなた達の立場というものは非常に重大なものだと我々考えております。それから得てしてこういうような何か思惑があるような人を余り近付けんことですね。
  874. 日野昇

    証人(日野昇君) その御意見はよく分ります。
  875. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは増田さん、いわゆる今の官房長官をやつていらつしやる、それから上村健太郎、こういう人に知遇を得ていらつしやるのですか。
  876. 日野昇

    証人(日野昇君) 上村健太郎さん、この方は戦時中官房主事をしておられまして、私はその官房主事の下に情報課員でおつた関係で存じ上げておるのであります。
  877. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 増田さんは……。
  878. 日野昇

    証人(日野昇君) 官房長官ですか。全然関係はありません。
  879. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御面会になつたことはないのですか。
  880. 日野昇

    証人(日野昇君) ありません。
  881. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは昨年の秋に労組がデモ隊を組織して……。
  882. 日野昇

    証人(日野昇君) 二十四年何月でございますか。
  883. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年ですね。秋……。
  884. 日野昇

    証人(日野昇君) 秋でございますか。
  885. 伊藤修

    委員長伊藤修君) はあ。首相官邸を取巻いたことがありますね。
  886. 日野昇

    証人(日野昇君) 秋と申しますと、私は昨年の八月三十日に中野署へ出ておりました。
  887. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私もそれをお尋ねするのですが、デモ隊が首相官邸を取巻いたときに、中野署長なつておるにも拘わらず、その護衛隊長となつて指導されたことがあるのですね。
  888. 日野昇

    証人(日野昇君) 何の隊長ですか。
  889. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 護衛隊長ですか。なんですか、警戒に出動されたことがあるでしようか。
  890. 日野昇

    証人(日野昇君) さようなことは私のもう権限外です。さようなことであつたら私は重大なる責任問題です。私はさようなことはございません。
  891. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いらつしやつたかどうか聞いておるのです。
  892. 日野昇

    証人(日野昇君) ああそうですか。これは荒唐無稽ですね。
  893. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お出でになつたことはないのですね。
  894. 日野昇

    証人(日野昇君) ありません。出られる筋合のものじやないです。
  895. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつとおかしいですね。中野署にいらして……。
  896. 日野昇

    証人(日野昇君) 非常におかしいです。
  897. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ御承知でしようけれども、相当責任ある人から今のお尋ねしたことを聞いておりますからね。
  898. 日野昇

    証人(日野昇君) ああ、そうですか。
  899. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういう事実の有無をお尋ねしたわけです。
  900. 日野昇

    証人(日野昇君) ああ、そうですか。
  901. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 若しありとすれば非常の処置ですから、どういう関係で中野署長がそういうところへ出て見えるか。まあそういうところから結び付いて増田さんとの関係があるというところへ来るのじやないか。
  902. 日野昇

    証人(日野昇君) ああ、そうですか。
  903. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことはなかつたのですね。
  904. 日野昇

    証人(日野昇君) ありません。
  905. 伊藤修

    委員長伊藤修君) なんか応援にいらつしやつたことはありませんか。
  906. 日野昇

    証人(日野昇君) 私がわざわざそこまで応援に行かなくても、警視庁には予備隊がおります。
  907. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 全然行つたことはないのですね。
  908. 日野昇

    証人(日野昇君) 私から行く必要がありません。
  909. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは岡崎英城丹羽喬四郎、門叶宗雄、秋山博、中西久夫、こういう人は元の上官でしようね。
  910. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。直属の上官ではありませんけれども、大体上官関係でございます。
  911. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからこういう人達は御存知の筈ですが、この人達が追放されてからやはり御交際になつていらつしやるんですね。
  912. 日野昇

    証人(日野昇君) いや、別にこれは門叶総監は、順序に言いましよう。岡崎先生は、これは存じておりますけれども、私は直接使われたことはないのです。従つて特に私はこの方は訪問したこともなし、深い交際はありません。それからその次は誰でしよう。
  913. 伊藤修

  914. 日野昇

    証人(日野昇君) 丹羽さんは、この方はやはり戦時中の官房主事です。官房主事の下に私は情報課員として使われたことがあります。ですがこの方は終戦以来お目にかかつたことは一回位あるような気がしますが、それ以外はありません。門叶総監は、総監のときに私は直接お目にかかつたことはありますが、辞められてからは後はお目にかかつたことはありません。秋山さんは、この方は直接上官であつたことはありません。従つて深い交際もしておりません。
  915. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 中西
  916. 日野昇

    証人(日野昇君) 中西さんは、この方は警務部長としておられた当時に私らの現在の警備課が当時は警務部についておりましたので、直属の上官であつたのです。辞められた後は一度もお目にかかつておりません。
  917. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田土田、吉武、折田、こういう方は現職のお方ですね。
  918. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  919. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この人とは勿論現職でありますから、警視庁内では親しくしていらつしやるんでしようね。
  920. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  921. 伊藤修

    委員長伊藤修君) こういう人との間に何か、勿論それだけの自負がなくちやいかんと思いますが、自分等の力だけでは現在の警視庁を守つて行くことはできないのだというような意味のことをおつしやつて、話合つていらつしやるんじやないですか。
  922. 日野昇

    証人(日野昇君) それは結局今のお尋ねは、こういうものが一つの派閥を作つているのではないかというところに来るのじやないかと思うんです。
  923. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう意味でお尋ねしたんです。
  924. 日野昇

    証人(日野昇君) 私らは少くとも庁内において派閥を作らなければならないのだ、派閥を作らなければ自分の力が維持できないのだというような卑怯なことを考えておりません。私らは上官に意見を言うときでも、私らは脛一本、腕一本で来ているのでありまして、人の力を借りて或いは徒党を組んで自分達の私利私欲を図り、栄達を図るなどという愚劣な気持で二十四年警察官をやつたんじやない。私は役所などにいると、よく親分、子分などという言葉がありますけれども、私らは終始一貫腕一本、脛一本で渡つて来た男です。巡査のときは最善の巡査になろう、巡査部長のときは最善の巡査部長になろうと、決して地位の栄進や、出世を目標にしたことは一日もないつもりであります。従つて或る種の派閥を作り、或いは徒党を組んで、自分の栄進を図つたり、或いは自分利益を得ようと考えたことはありません。人はいろいろな上司関係などを、今度の事件なつ新聞などを見て見ますというと、何か特高グループとか、或いは庁内におけるところの派閥というようなことが盛んに伝えられておるのでありますが、警視庁はそんな私は妙な暗闇や或いは乱脈は私はないと思う。こう私は信じております。
  925. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお考えは結構なことです。お互いに現在の仕事に最善を盡すということがあつてこそ初めて仕事が成立つのですから……。そのお気持は非常に結構なことだが、あなたが意識的でなくても知らず識らずの間に気が合うというのですかね。大体今申されたような人と気が合うものですからそういう系統に属するのではないのですか。
  926. 日野昇

    証人(日野昇君) 人はそういうふうに見ているかも知れませんが、私はそういうつもりはないのであります。
  927. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそういう気持でないが、人はそういうふうに見るということは、そこに何らかの見えない一つの筋があるのではないのですか。
  928. 日野昇

    証人(日野昇君) それを私は……。
  929. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 別に派閥と言つていいか悪いか存じませんが……。
  930. 日野昇

    証人(日野昇君) 人は或いはそう言つておるかも知りませんが、併し例えば藤田閥というような言葉があるようでありますが、これあたり藤田さんにとつては誠に御迷惑千万だろうと思う。私らも又藤田閥というもののお先棒を昇いでおるとは思つておりません。いつでしたか、雑誌に「真相」という雑誌がありますが、この「真相」あたりでもしばしば私が藤田閥であるとかいうようなことが盛んに書いてありました。面白いことは藤田は元総監の丸山鶴吉の女婿であつて、警備の第二課長の日野は丸山鶴吉直系の男だということが盛んに書いてあつたのを見たことがあります。私は丸山鶴吉さんとは一度もお目にかかつたこともない。私が巡査のとき総監をしておられたので、お名前やあの風貌は存じておりますが、私は一度も会つたこともないのであります。その会つたこともない私が丸山鶴吉直系の男になつておる。こういうような見方が私はあるのじやないかと思う。
  931. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何となく人から見ると、あれは藤田閥だ、あれは土田閥だとか、そういうふうに見る人が言うのですね。
  932. 日野昇

    証人(日野昇君) どうもそうらしい。(笑声)これはその方にとつても誠に御迷惑千万だろうと私は思う。
  933. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 仕事をせられる上においても、大体自分と気持の合つた人と一緒に仕事をするとか、親しくするとか、交際するというような形で段々そういう形になつたのじやないのですか。
  934. 日野昇

    証人(日野昇君) 交際と言いましても、職務上の連絡や職務上の関係を私は交際と言うのかどうか知りませんが……。
  935. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 例えば一杯飲むときでも、そういう気の合つた人だけが集まるというようなことから段々そういうようになつて来るのじやないですか。
  936. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は吉武君とか折田君とは古い親友でして、一緒に酒を飲む場合もありますが、さればといつて常に一つ俺達が腕を組んでがつしりと警視庁を押廻してやろうというようなことは微塵も考えておりません。
  937. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは考えておらないけれども、大体そんなふうな空気があるのじやないですか。
  938. 日野昇

    証人(日野昇君) 外からそういうことを仮想して、何かあるのではないかという見方をすればそういうことになるかも知れませんが、それは飽くまでも仮想のことだと思う。
  939. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう閥という言葉が適当な言葉でないかも知れませんけれども、いわゆる藤田閥、土田閥、こういうものが、追放されたところの岡崎丹羽、こういう線に繋がつて、こういう人が常に人事とかいろいろなことに容喙するのじやないのですか。
  940. 日野昇

    証人(日野昇君) そういうことが、私が只今申しましたように、一つの仮想敵国を作つておる人があるのではないかと思います。私はさつき申しましたいろいろな人と面識はありますけれども、私は上村さんにしても、或いに丹羽さんにしても、岡崎さんにしても、これは尊敬をしておる人々ですが、そんなにふだん出入りをしたり、交際をしたり、或いは会つたりしておりません。併し私は尊敬しております。その尊敬をしておるということが直ちに関連があつて、一つの派閥があつて、而も部外の者が現在の警視庁の人事にまで容喙をしておるというような、この間の報導か何かで見ましたが、私はこれは大変な誤解だろうと思う。若し私らが尊敬をしておる人々が、或いは現在の現役の人事に容喙をしたり、或いは事件の貰い下げを勝手に部下に頼みに来るというような人であるならば、そういう人格の持主であるならば、恐らく私らは尊敬しないだろうと思う。これは私の臆測ですから、私の主観を申上げておるのですから、その点はつきりして置きますが、そういう一体、例えば人事に容喙をしたり、或いは事件の貰い下げをやつたり、而も部下にそれの揉消しをやらせるというような人々であるなら、我々の先輩として私らは尊敬をしない。あれ程の人ですから、私は曾て使つた部下は可愛いだろうと思う。そういう可愛い部下に失策を演じさすような人々でないと私は信じる。そういう部外の一つの勢力が常に庁内の一部のグループと提携して、そうして事件の揉消しをやる、或いは人事に干渉をしておるというような考え方があるようであります。そういうものが新聞や雑誌に出ておりますが、私はさようなことはない。警視庁は万全の態勢でおる。そういうふうに引つ掻き廻されたりする程警視庁は弱体ではないということをはつきり申上げて置きます。
  941. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう人が庁外で旧交を温めるとか、追放者お互いに生活を慰め合うという意味かも存じませんが、とにかく一つの会合を持つて、そこで毎週会合しておるのは事実であつて、そういう場合の話題というものは、恐らく過去におけるところの職域の範囲に限られると思う。又新らしいことも勿論話題に出るでしようけれども、多くはそういうことが話題に出て来ると思う。従つて警視庁の今日の在り方ではいかんとか、こういう人事ではいかん、あすこにはこういうものを据えたらいい。そういう話題が出て来ると思う。そういうことが、或いは藤田さんとか、土田さんとか、そういう進言という強いところではないかも知れないが、そういう人事にしたらいいだろうというような話があるのではないですか。
  942. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私はそういう会合に出たこともありませんし、そういう話を承つたこともありませんから、私はそういうことは存じませんと申上げる以外に何ものもありませんが、御想像されれば、或いはそういう御想像が成立つかも知れませんが……。
  943. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 庁内では、どうもこういう人が人事や何かについて口出しをして困る、非常に横暴だという批評があつたのでないですか。
  944. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私は知りません。聞いておりません。
  945. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは本年の二月七日にお辞めになりましたのですね。
  946. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  947. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際永杉監察官ですか、調べを受けられたですね。
  948. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  949. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 田中総監から辞職の勧告を受けられたですか。
  950. 日野昇

    証人(日野昇君) 受けません。
  951. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 受けないですか。何とも言われないですか、田中さんには。
  952. 日野昇

    証人(日野昇君) 私が退職をするについて総監にお目にかかつたことはありません。
  953. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 総監から何か退職について勧告されたとか、諭旨されたとか、何か話はありませんでしたか。
  954. 日野昇

    証人(日野昇君) ないです。
  955. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どこから話があつたのですか。
  956. 日野昇

    証人(日野昇君) これは一番最初は永杉監察官から話があつた。それはいわゆる佐藤自供というものを中心として、私に金銭の授受関係取調べがあつた。で、そのときには、私はさつき申しましたように、佐藤の自供というものが事実であるならば、そのことは全面的に私は認めます。そういう話であつたのですが、そのときには、私の進退については具体的な話はなかつたのであります。併しながら私はこの金銭の授受問題が苟くも私は法令にひつかかるということは毛頭考えておりませんので、そういう意味のことは何も考慮はしておりませんでしたが、併し私が金銭の授受関係を持つておるということが、警視庁に非常に御迷惑になるということであるとするならば、私は終始一貫生涯の大半を警視庁に捧げておりますが、その自分警視庁のために盡して来た、警視庁のために不為めになるということであるならば、私は責任を負つて辞めます。僕自身の責任をとつて辞めたいのだということを警務部長には申上げた。
  957. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで御自分からお辞めになつたんですか。
  958. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  959. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御自分の御意思でお辞めになつたんですか。
  960. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  961. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勧告を受けたわけでありませんね。
  962. 日野昇

    証人(日野昇君) ありません。
  963. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何かお尋ねがありますか。
  964. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたの部下というのは何人くらいありまして、というのは一万円若しくは二万円何人くらいに援助してやつたというか、分ち與えてやつたというのですか、何人くらいの範囲でございますか。
  965. 日野昇

    証人(日野昇君) 最初は三、四十人くらいから、一番最高は七十人くらいです。
  966. 大野幸一

    ○大野幸一君 それはやはり警備隊員ですね。
  967. 日野昇

    証人(日野昇君) 警備の第二係員でございます。警備課は二つ係がありまして、私らの方は第二係というのであります。第二係員だけが大体において最初は三十人くらいから、順次殖えて七十人くらいまでになつた
  968. 大野幸一

    ○大野幸一君 この警備隊の咄嗟の間に警備につかなければならんという場合の費用というものは、特別に要るわけでしようが、そういうのは別に外に、いわゆる余分の予算が取れるのですか。又取れないのですか。外にも差干はあるのですか。
  969. 日野昇

    証人(日野昇君) これは若干あるのです。
  970. 大野幸一

    ○大野幸一君 それでは足りない……。
  971. 日野昇

    証人(日野昇君) そうです。
  972. 大野幸一

    ○大野幸一君 でこの警備隊に所属しておる人は、あなたばかりでなく歴代そういうことがしきたりになつていたのですか。
  973. 日野昇

    証人(日野昇君) いや、そういうことはありません。これは私だけの一存です。
  974. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから現在あなた非常に元気にしてお答えになるのですがね……。
  975. 日野昇

    証人(日野昇君) 余り元気じやないです。
  976. 大野幸一

    ○大野幸一君 どうですか、自分のやつたことは正しいとまあ言われない程度なのか、まあこういうことを改良するためにどうしたらいいかということが、警視庁がこういう個人から個人に受けて、それを部下に與えなければならんという情勢は、今も尚続いておるのか、その必要が……。あなた今辞められて気楽になつたんだろうから、警視庁がどうしてこういうことを止めにできるか、警視庁はどうして清らかにできるかという点はどうお考えですか。
  977. 日野昇

    証人(日野昇君) これは私が第二係長をやり、或いは終戰後における非常に困難な場合において特に必要であつたのであります。もとよりこういういわゆる警備活動費というものが予算の面に組まれて沢山あるならば、それに越したことはありませんけれども、現在のような、若干これは、現在は治安状況も落ち着いておると思うのです。治安が落ち着いておるような現在の状態において、私がやつたように係長がどうでもこうでもして金を工面して来なければ係が動かれんかと言つたら、現在はさようなことはないのじやないか。併しながら警備活動費というものが予算の面で取れることは非常に結構なことで、こうありたいと思いますけれども、現在の状態において尚私がやつたように、私の責任において外から金を取つて来なければ警備活動は一日もできないかとおつしやるならば、現在はそういうことはないと思うのであります。
  978. 小林英三

    ○小林英三君 証人にお伺いしますが、いわゆる五井産業事件というものは外の委員の方はどう考えておるか知りませんが、私はこういうふうにこれをいろいろ……。いろいろな証人がお出でになつて、証人の訊問をしておる上において考えて来たのですが、つまり警視庁の内部における、例えば松本捜査第二係長というような人が、初めの起りは私憤と言いますか、或いは私怨と言いますか、私の怨みを晴そう、こういうふうなことから端緒があつたのではないかと思うのですが、先ず第一番にあなたにお伺いしたいと思いますことは、松本という捜査第二係長という人はどういう思想の持主ですか。
  979. 日野昇

    証人(日野昇君) これはもう大変むずかしい御質問だと思うのですが、苟くも人の思想の問題について……。
  980. 小林英三

    ○小林英三君 あなたのお考えになつておることだけで結構です。
  981. 日野昇

    証人(日野昇君) まあ人の思想がどうあろうかということは非常にむずかしい問題で、私はここで直ちに申上げるわけに行かんと思いますが、まあ松本課長は今日は傍聽しておられると思うのですが、その方の前で言うことは甚だ私として情において忍びない。少くとも思想の問題では私はとやかく言いませんが、まあ感情の点におきましては、御本人には誠にお気の毒ですが、非常に感情的な性格を持つておられると私は信じております。それから私らであつたらこの委員会は直接、松本課長の問題も証言される筈のこの傍聽に来られるという性格が、私らには納得できない性格だと思う。松本課長は、係長も来ておるし係員もうんとこの傍聽席に発見しておる筈です。課長みずからが非常に忙しい仕事を抛擲してこれを傍聽しなければならん理由はなかろうと思う。この傍聽席に、この委員会に出席して傍聽しておられることを見ても、この方の御性格は分るんじやないかと思う。
  982. 小林英三

    ○小林英三君 それから次にお伺いいたしたいと思いますが、まあ私はいろいろ警視庁の中にいろいろな派閥があるというような先程からいろいろお説もありましたが、大体今度の事件についてはこういうことも聞いておるのですがね。松本捜査第二係長が……。
  983. 日野昇

    証人(日野昇君) 課長でしよう。
  984. 小林英三

    ○小林英三君 松本捜査第二課長がいろいろ庁内の対立的の仲間がまあいる。いろいろの感情のもつれからして、これらの仲間をオミツトする。併し自分の力ではなかなかできない。たまたま証人もその一人であろうと思いますが、まあ証人或いは土田であるとか吉武であるとかいうような感情の平素もつれのある仲間がたまたま、いい悪いは別として、今の五井産業の佐藤社長と何かやつているらしい、若しこの五井産業事件において佐藤を引括れば、その結果として自分達と感情的の対立をしておる人間達がオミツトされるというような一つの私の怨みを晴そう、この機会において晴そう、こういうような意味から手を着けたんじやないかというようにも私共は思われて来ておるんですが、そこで証人はこれはずつと最初から引続いて今日までの間において、松本課長と極めて昵懇でありましたか、或いは又その途中において何か口論をしたとか、或いは感情的のもつれがあつたとか、或いは今日では殆んど反目しておつたというようなことがありましたか、どうですか。
  985. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は松本課長が警視庁に来られて監察官になられた当時から、私は直接余り交際はなかつたのでありますけれども、先ず吉武君あたりは非常に尊敬をしておつたようであります。そうしてこれは話によりますと、これは根拠ははつきりしませんが、とにもかくにも現在の監察官或いは現在の課長では先ず松本氏の右に出る課長はないだろうという程土田或いは吉武君あたりは松本課長を非常に尊敬をしておられたようであります。私としてはさようにまで承知していなかつたのでありますけれども、まま土田、吉武君あたりは、これは激賞をしておつたものです。私との関係におきましては……。その前に只今委員さんから御質問のありました、いわゆる怨みを残すようなことがあつたかどうかという御質問と承つていいですね。
  986. 小林英三

    ○小林英三君 いや、今までずつと証人は、松本課長と何ら意見の対立もなく、仲よく今日まであなたが辞任するときまでやつておられたかどうか、或いは中途において何か意見の対立があつたか、或いは場合によつては喧嘩口論したというようなこともあつたんですか。
  987. 日野昇

    証人(日野昇君) それに似たことはあつたのでありますが、私は意見の対立とか言いましても、我々は仕事についての意見は上司でもはつきりと申上げる。而も可なり私らは強く上司に対して、例えば何も松本課長に限りませんが、仕事の面におきましては上司に対してもはつきりと我々は意見を申上げるのであります。若しその意見が通らなくて、その意見でない方針に、一応方針が決まれば、我々は自分の意見が通らなかつたからといつて、その反対意見を唱えた者に反感を持つたりする程卑怯ではない。このことがはつきりと行われなれけば官庁とか、或いは組織の維持はできるものではありません。従つて我々は常に意見は強く上司に申上げますけれども、決定した限りは私らは常に唯々諸々として従つておるわけです。松本課長とは若干仕事の面において、公式の場合においても意見の対立はありました。併しながら私らは飽くまでもそれを固執するものではない。私らは意見として申上げる。我々が部下として上司の為になると信ずる意見を申上げるだけなんです。併しながら若干仕事の面においても意見の衝突は二、三あつた記憶はあります。更に又さつき喧嘩をやつたかどうかという話ですが、喧嘩などというものではありませんが、或る席上で、これはお酒の出ておる席であつたのでありますが、この席で、丁度これは多分昨年の五月三十日の公安條例反対デモンストレーシヨンが東京都庁で起つたその後だと思いますが、或席上でどういう調子でありましたか、松本課長が警視庁の予備隊は土田の私兵である、殊に警備課は土田の先棒を担ぐんでないぞというようなお話がありましたので、私はこれは警視庁の職員として私は了解できない。苟くも警視庁の予備隊が、土田がどれ程の人物か知りませんけれども、何千かの警視庁の職員が土田の私兵になるなどということは大変なことだ。現在而も重要な捜査二課長という席におられる責任のある人が、警視庁の予備隊が土田の私兵化しているというような御意見を吐かれたので、私はさようなことは承知ができない、これは警視庁を冐涜するものではないか、警視庁の組織自体を冐涜するものだと言つて、私は激しく議論をしたことがあります。そのときに、この間の何かの新聞で見ますと、私が拂腰で投げ飛ばしたなどと書いてありましたが、さようなことではなくて、それに類したトラブルがあつたことは記憶しております。
  988. 小林英三

    ○小林英三君 それからこの土田という人と松本という人の感情のもつれがあつたということを聞いているのですが、それは今のあなたがおつしやつた公安條例の反対デモ鎮圧の慰労会の席上でそれがあつたものですか。土田と松本課長との感情が非常にもつれたということは……。
  989. 日野昇

    証人(日野昇君) それは全然……。土田隊長が出席しているときでない、私と松本とトラブルがあつたという席は……。
  990. 小林英三

    ○小林英三君 どういうことから土田対松本の感情が非常にもつれて来たのですか。
  991. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私も非常に不思議でして、さつき申上げた土田とか吉武は、松本課長が監察官をやつておつたときには、これ程の人材はおらんと言つて信頼しておつたのに、いつのときにかその感情が非常に悪くなつたのですが、その理由は全然知りません。
  992. 小林英三

    ○小林英三君 全然存じありませんね。
  993. 日野昇

    証人(日野昇君) 知りません。
  994. 小林英三

    ○小林英三君 それからもう一つお伺いしたいことは吉武係長、松本課長の部下の相剋した。それはいろいろの問題があつただろうと思いますけれども、私共の聞いたところによりますというと、下山事件を廻つての自殺説であるとか、或いは他殺説であるというようなことからもつれたとか、或いは味の素の事件等から対立したということを聞いているのですが、あなた証人としてそういうことを何か御存じのことがありましたら承わりたいと思います。
  995. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は捜査二課長と捜査の第二係長とが感情がもつれたという原因はよく知りません。さようなことを吉武君から聞いたこともありませんが、ただ私が非常に不思議に思つているのは、もともと今度の五井産業事件がかくのごとく発展した最初の動機は、味の素事件の捜査が一番最初でなかつたか、これは間違いかも知れませんが、こう思うのでありますが、その味の素事件というのは結局吉武を中心として疑いがかかつたのじやないか。その証拠にその味の素事件の捜査を吉武係長に命じないで、その直接の部下に命じたというふうにも私は聞いているのでありますが、ですからそのときには吉武を信頼していない。ですから吉武を槍玉に上げなければならんということで味の素事件の捜査にかかつたのじやないかと思います。ですからすでにその前に感情に対立があつたとするならば、その前に何らの理由があつたのじやないか、こう私は考えます。
  996. 小林英三

    ○小林英三君 それから、昨日来佐藤証人それから本日午前中に伊藤証人、こういう人の陳述によりますというと、五井産業事件における佐藤自身の詐欺事件ということよりも、その取調べの全期間中におきまして、殆んど半分以上が、そういう証人自身であるとか、或いは吉武であるとか、或いは土田であるとかいうような人達の金をばら撒いた問題に対する、いわゆる涜職等の問題に対して調べている期間が多いのですがね、こういう点につきまして何か証人がお考えになつていることがありますか。
  997. 日野昇

    証人(日野昇君) さようなことは今になつて私は分つたのでありまして、当時佐藤君がどういう取調べを受けているかということについては我々全然知りませんでしたが、そのことを考えて見ましても、大体において私共を何とかして処置をするということが少くともその問題の一部にあつたのではないかという感じは受けております。更に又私は、実にこれは不思議に思つておりますのは、この五井産業事件の捜査を廻つて、常にこの新聞が非常に大きくこの事件を取上げておる事実であります。
  998. 小林英三

    ○小林英三君 それから、先程私が証人にお伺いしましたように、土田であるとか、或いは吉武であるとか、折田であるとか、塩谷であるとか、そういうふうな面に、大分その取調べが向けられているのですがね、詐欺事件そのものよりも、そういう方面の人々の、金をどこで貰つたかということについては、非常な追究が向けられていたんですけれども、この土田、吉武、折田、塩谷というような人々の関係は、どういうふうであつたか、御存じありましたらおつしやつて下さい。
  999. 日野昇

    証人(日野昇君) 私と……。
  1000. 小林英三

    ○小林英三君 いや、その証人と……。
  1001. 日野昇

    証人(日野昇君) 私との……。
  1002. 小林英三

    ○小林英三君 ええ、そうです。
  1003. 日野昇

    証人(日野昇君) これは、折田君或いは吉武君は、私共警部補時代からの古い親友でありまして、全く親しく交際しておるのであります。塩谷消防総監は、私は直接使われたこともありませんし、深い関係はない。
  1004. 小林英三

    ○小林英三君 土田はどうですか。
  1005. 日野昇

    証人(日野昇君) 土田氏は、これは非常に私は、その土田の子分というふうに誤解されておると思うのでありますが、それは、若しさように考えておられるとすると、これは大変な間違いなのでありまして、土田さんには、私は使われたことはないのです。予備隊長になつて来られて、初めて警備の仕事の面で連絡がありますので承知をしておるのでありますが、併しながら土田というあの人の、警視庁の職員としての態度、或いは職務に対する信念、こういう問題につきましては、私は心から尊敬をしておる関係だけであります。
  1006. 小林英三

    ○小林英三君 もう一つお伺いしたいのですが、これも証人が知つておられたならばお答えを願いたいのですが、この松本課長がですね、味の素の例の事件につきまして、揉消し運動に乗出したということを聞いておられなかつたかどうか。そういうことはありませんでしたか。
  1007. 日野昇

    証人(日野昇君) それは、そういつたそれに類したような噂話を聞いたことはありますけれども、具体的なことは私は存じません。
  1008. 小林英三

    ○小林英三君 類したような噂話というのはどういうことでしようか。
  1009. 日野昇

    証人(日野昇君) これは、どうも私は実はよく知らないのであります。
  1010. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に……。
  1011. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 証人にお伺いしたいのですが、先程証人は、松本課長が、この席に傍聴しておられるということを以て、その性格を判断することはできるということを揚言されました。それは逆に、証人の性格を証明するものであるということもお考えになりませんか。
  1012. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は考えません。
  1013. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第二に伺いたいのは、保安條例の場合の警視庁の警備隊の行動について、松本課長が、それが上田という人の私兵であるというように言われたということについて、その噂の当否は別といて、それに何か理由がないというふうにお考えになりますか。
  1014. 日野昇

    証人(日野昇君) それは公安條例に対する予備隊のとつた態度が私共であると言つたのではないのです。たまたまそれは公安條例のデモンストレーシヨンが済んだ後の或る一日の機会に、その話が出たのでありまして、公安條例のデモンストレーシヨンに予備隊のとつた態度を以て、これを私兵だと言つたのではないのであります。全体として土田は予備隊の私兵であるということを述べられたから、それは間違いだと言つた
  1015. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとそれを関連してですね、さつき委員長からのお問いに対して、あなた御自身も或る特殊の人から、警視庁幹部の方が金銭の援助を受けるということは好ましくないということはお認めになつたようですが、何故に好ましくないのでしよう。
  1016. 日野昇

    証人(日野昇君) これは、そういう特定の人から金銭の援助を受けるといたしますれば、これは、いわゆる寄付の手続によつて受けるべきものであつて、その手続を欠いて受けるということは、これは規律上好ましくない、こう考えるのであります。
  1017. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 形式的にはそうですが、実質的には、その寄付者の私兵となるからじやないですか。
  1018. 日野昇

    証人(日野昇君) 私は、例えば今度の五井産業事件の佐藤君が私に個人的に淨財的な援助をした、だからといつて、私は警察官としてなすべからざることまでもなして盡さなければならんということは、私は考えてない。従つてその点の私は心配はないと思う。
  1019. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それじや金を貰つても差支ない……。
  1020. 日野昇

    証人(日野昇君) いやいや、それは規律上受けるとするならば、正式な手続によつて受けるべきである。
  1021. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 然らば何故にそういう規律があるのです。
  1022. 日野昇

    証人(日野昇君) 規律は警察の、いわゆる……。
  1023. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その意味はどういう点にあるというふうに御了解になつているのです。ただ規律があるからという形式的にだけじやないのでしよう。規律があることについてのあなたの了解は、どういう内容的に、何故そういう規律があるだろう、そうお感じになりませんか。
  1024. 日野昇

    証人(日野昇君) これは一つの組織の、その組織の権威を維持するために規律というものはあると思う。
  1025. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 つまり公のものであつて、私のものでない、私兵にならないという……。
  1026. 日野昇

    証人(日野昇君) そういうことも含まれるでしよう。
  1027. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その次に伺いたいのは、下山事件について、あなたは特に特定の見解をお持ちだつたのですか。
  1028. 日野昇

    証人(日野昇君) 持ちません。
  1029. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 当時も……。
  1030. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  1031. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 何ら特定の見解を発表されたことはないのですか。
  1032. 日野昇

    証人(日野昇君) ありません。
  1033. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 発言されたことはないのですか。
  1034. 日野昇

    証人(日野昇君) ありません。
  1035. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたが主として蒐集されておつた情報というものは、どういう関係の情報主力を注がれたのですか。
  1036. 日野昇

    証人(日野昇君) 大体これは一般的に警備を具体的にやることに必要な一般的情報であります。
  1037. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そのうちで、あなたが特に力を注がれたのはどういうことですか。
  1038. 日野昇

    証人(日野昇君) 特別にですね、特定の一つのものに対して、特別な考慮を拂つたり、特別な努力をしたことはありません。要するに、警備の対象となるべきものは、すべていずれにも力を入れる。
  1039. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたが警視庁の中で情報係員ということになつておつたのは、普通にいわゆる特高ですか。
  1040. 日野昇

    証人(日野昇君) 特高じやないのです。
  1041. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 普通に何というのですか。
  1042. 日野昇

    証人(日野昇君) 官房情報課と言います。
  1043. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 特高とは……。
  1044. 日野昇

    証人(日野昇君) 全然関係が……。当時御存じでしようが、特高部というものと官房部というのがありまして、いずれも総監に属しておりますけれども、別個な組織になつている。
  1045. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、さつきあなたが述べられた味の素事件のときに、この吉武係長という方が省かれて、その方の部下が捜査に当られたということについては、吉武係長という方は何らかについて疑惑を受けられたのだと御想像になつたようですが、その疑惑に理由があるとお考えになりますか、ないとお考えになりますか。
  1046. 日野昇

    証人(日野昇君) この点は私は当時は全然分りませんでしたが、これは疑惑の事ですから私らは吉武を大いに信じておりますが、疑惑は或るところで起つたのは止むを得ないことで、私自身は吉武を信じておりますからさような疑惑はおかしいと思う。
  1047. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 吉武という方も佐藤という方もいろいろそうした金銭を受けておるのでしよう。
  1048. 日野昇

    証人(日野昇君) ないという話です。
  1049. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この鈴木君、味の素の常務の方が逮捕される前日にあなたにお会いになつたことがあるのでしよう。
  1050. 日野昇

    証人(日野昇君) ないですな。それは何か新聞にもさようなことが出ておりましたが、全然私はそのことについては知りません。会つておりません。又そういう話を聞いたこともありません。味の素の者が検挙されておるという噂も聞いたことはなかつたのです。
  1051. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとやはりさつきあなたの言われたことの中に何か私達を処置されようとする動きがあるようだというふうに言われましたが、それに対するなぜ処置されなければならないかという何か理由があるのですか。單なる感情かそれとも警視庁の内部……あなたの方としては言分があるでしようが、併し客観的によそから見て、あれはあなた方としては主観的には善意でやつておられるけれども、客観的にはああいうことをやつおられると警視庁が一部の人々の利益に必要以上に引ずられるのではないかという動きが生じ、又は疑いを受ける慮れがあるというふうに見られたのではありませんか。
  1052. 日野昇

    証人(日野昇君) その点は全然立場か違いますから私には全然分りません。
  1053. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 あなたの方でも多少そういう遺憾の点があつたのではないかという、反省されるお気持ちはありますか。
  1054. 日野昇

    証人(日野昇君) それはありません。
  1055. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 反省する気持ちは全然ない。
  1056. 日野昇

    証人(日野昇君) 少くとも私個人に関する限りは、私は一部の者の利用されたり、或いは外部の勢力と繋がつておるという事実がありませんから、少くともその問題に対する限りは反省する余地はありません。
  1057. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併しあなたも相当の専門家なんですから……。
  1058. 日野昇

    証人(日野昇君) 何のですか。
  1059. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう犯罪に関して或いは面白からざることについての……だからプラトニツクな考え方だけでおられるわけじやないと思うんだが、特定の方から金銭上の援助を受けている、自分の主観としては、哲学的には誠に清らかなものであるかも知れないが、それが客観的に、殊に先程も委員長からお話があつたように、捜査権を依頼されておる方が、個人から、淨財ということも言われたが、これはいわゆる逆言葉であつて、実際金銭を受けておる以上、その人の犯罪を或いは庇い、或いはその今に便宜を図るということが生じて来るということは、普通の人にはあり得ることですね。あなたが御自分の場合にはないと思つても、若しそういう方をあなたが嫌疑をかけて検挙した場合には、当然そう判断されるでしようか。
  1060. 日野昇

    証人(日野昇君) これは一般的に警察官はいずれも捜査権を持つているのではないかということであれば、そうですが、私は少くとも警視庁における私の今の地位は犯罪の捜査という権限はないんです。ですから今先生がおつしやつたように、お前はちつともやましいところがないだろう、お前は綺麗だろうが、警察官が全般にそうすることは面白くないという意見は、それは勿論面白くないんです。
  1061. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると、客観的には好ましくないと判断されても止むを得ない。
  1062. 日野昇

    証人(日野昇君) それまあ考え方ですから、その考えられる方もありましようし……。
  1063. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 若しあなたがあなた御自身の場合でなく、第三者として眺めた場合には、そういう点が、そういう主観が除かれることを希望することは、さつきも言われておりますね。
  1064. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  1065. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから最後に伺いたいのは、五井産業事件について新聞が大きく扱つておる理由が分らないということをおつしやつたんですが、それはどういう意味なんです。
  1066. 日野昇

    証人(日野昇君) これはこの新聞はですね、もう常にいきなり五井産業事件で少くとも名前の出ておる現在の警察官なり或いは我々、これはすでにいわゆる収賄事件の被告のごとく扱われておるのが私は不思議だと思う。一般的の印象では、五井産業事件に名前を連ねている者は被疑者であるという一般的の印象を受けておる。
  1067. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 例えば新聞が平澤貞通という人について報道している態度はどうですか。
  1068. 日野昇

    証人(日野昇君) その公判の報道ですか。
  1069. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 逮捕当時やなんかの報道、一般的にあの場合とこの場合ではあの場合はいいけれども、この場合はいけないと……。
  1070. 日野昇

    証人(日野昇君) これはこの場合平澤の問題はよく考えておりません。咄嗟に先生に言われたのでよく分りませんが、少くとも私は涜職事件であると、要するに贈賄を自供したというふうに扱われておるとすれば、当然これはすでに涜職の被疑者というように取上げられたんだと思う。そういう取上げ方は私はまだ早いのじやないかと、そのために非常に、私自身は別といたしましても、大分迷惑を蒙つておる人が沢山あるのではないか、こういうことを私は心配しておるのであります。
  1071. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有難うございました。
  1072. 大野幸一

    ○大野幸一君 関連して聞きますが、自警会というのはどういうものですか。
  1073. 日野昇

    証人(日野昇君) 自警会というのは私も実はここではつきりと皆さんに御納得の行くように説明ができないのです。余りよく知らないのです。
  1074. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたとの職務の関係はどうなんですか。
  1075. 日野昇

    証人(日野昇君) 何にもないのです。
  1076. 大野幸一

    ○大野幸一君 何にもないというのはおかしいですね。自警会とあなたの警部というものと……、言葉も自主的に警備に当るという自治団体ですか自警会というものは。
  1077. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ、自警会ですか、私どういうことになつておるか実はそれは知つておらないですが……。
  1078. 大野幸一

    ○大野幸一君 ここに商人として斡旋したことはあるというのですか。
  1079. 日野昇

    証人(日野昇君) そうでございます。
  1080. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたが警視庁関係で警備課に勤めておると、こういうのですね。こういう商人を紹介したということでも商人が非常に有難い、紹介して呉れたと、それが職務の関係がある、あなとの間に、あなたが警備係長として紹介したんでしようから、個人としてしたんだろうが、あなたはこれを警備係長として紹介したんでしよう。そうして二、三回に金を貰つておるということは、あなたが決して今ここで良心に恥じないと言われていいものではない。贈賄罪と非常に広範囲に牽連性がある。とにかく警視庁関係のある自警会の出入りの商人に斡旋して、その人から金を貰うという場合も一つの謝礼関係があるのですから、あなたはそれは考えようによつては何も涜職としての一応の嫌疑をかけられて、調べられるということは止むを得ないことで、あなたが警察官だけに或る人から金を取つた、これは職務の関係において何かありはしないかということで取調べを受けることは止むを得ないことであり、そうして自警会の関係がどうなつておるかということを調ベが終らずに終つておるのだろうと思う。そういうことについては遺憾だとは思いませんか。嫌疑をかけられるのは止むを得ません。個人が金を受けておるだけに、而もその出した方の人が面白からん人であるということは、そう国民の前で俺は警備隊長としてやつたので、決して恥じることはないということを言われると却つて警察官の品位を害するのではないか。例えば今羽仁委員の言われた通り遺憾だということで反省して初めて今後の警察官の権威が保たれるのではないかと思うが……。
  1081. 日野昇

    証人(日野昇君) それはさつきこういう行為は好ましくないということを言いましたでしよう。
  1082. 大野幸一

    ○大野幸一君 その通り承つてよろしいですね。
  1083. 日野昇

    証人(日野昇君) はあ。
  1084. 大野幸一

    ○大野幸一君 松本課長が立派な人であるならば、それは佐藤事件をやつたためにあなた方が信頼の念がなくなつたということはおかしい。立派な人尊敬しておる人が何故に尊敬できなくなつたかという理由を説明しないで、佐藤事件をやつたためにそれから信頼がなくなつた。こう聞いてもよろしいですか。
  1085. 日野昇

    証人(日野昇君) それはそうでない。さようなことを私は申上げたと思つていないのですが。
  1086. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程非常に元は信頼しておつたが、今は信頼がない。こういう意味のように考えられるのですが……。
  1087. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私のことを言つたのではなくて、土田隊長と吉武君が当初において松本さんを非常に尊敬しておられた、だがいつの時にか感情に齟齬ができたようであるが、その理由は分らない。
  1088. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは佐藤事件に手をかけられたからじやないですか。
  1089. 日野昇

    証人(日野昇君) それはもつと前です。
  1090. 大野幸一

    ○大野幸一君 それはどういうことですか。
  1091. 日野昇

    証人(日野昇君) その原因はよく分らない。私よく知らないけれども、当初において非常に信頼しておられた。それがいつの時が感情に齟齬ができたように私は承つておる。
  1092. 大野幸一

    ○大野幸一君 尊敬しておる人は常に尊敬しなければならない。一旦自分が……。(笑声)
  1093. 日野昇

    証人(日野昇君) そういうことはないと思います。その感情の齟齬は……。
  1094. 伊藤修

    委員長伊藤修君) もう一点伺いますが、先程から各委員からいわゆる土田私兵問題が出ておりますが、これはこういう意味じやないですか。結局予備隊というものは捜査権を持つていないのですね。捜査権を持つていない予備隊が、この捜査第二課の指揮も受けずに勝手にデモを検挙することに検挙しても後の始末がつかんだろう。予備隊におる人は警察学校とかどこか出て来たような人でまだ出たての人ばかりで、そういう人では始末がつかない。又仮に始末がつくとすれば、少くとも捜査権を持つておる二課を受くベきが本筋ではないか。にも拘わらず二課の指揮も受けずに予備隊が行動をとつてデモ隊の検挙をするということは、それ自体がいわゆる土田の私兵化するのではないか。こういう意味でないのですか。
  1095. 日野昇

    証人(日野昇君) そういう点は……。
  1096. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それに対するあなたの見解が違つておつたのではないですか。
  1097. 日野昇

    証人(日野昇君) 少くとも私の承知しておる範囲におきましては、捜査二課を全然問題にしないで、予備隊、或いは警備課が、少くとも人を検挙するということはありません。常にこれは挙庁一体で行つておるのであります。
  1098. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一体で行つておるけれども、たまたまデモを検挙する場合に捜査二課の指揮を受けずに任意な行動に出たのではないですか。
  1099. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私承知しておりません。そういうことはないと思います。
  1100. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ないですか。そういうことがあつたためにそれではいわゆる土田の私兵だという意味のことでそこにあなたと口論されたのではないのですか。
  1101. 日野昇

    証人(日野昇君) 私はその席上ではそういう基本的に掘下げた議論じやなかつたのです。ただ單純に私兵云々が出たからそれは……。
  1102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはあなたは單純に外面の言葉で以て食つてかかつて……。
  1103. 日野昇

    証人(日野昇君) 挙庁一体を乱すものだ……。
  1104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 併し掘下げて言えばそういう意味になるのではないですか。
  1105. 日野昇

    証人(日野昇君) それは御当人に聞いて見なければよく分らん。私はよく分らん。
  1106. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたがそういう口論をされたのだから先程から大分述べられたようですが、口論されるにしてもあなたが納得の行かないような点があつたでしよう。その納得の行かない理由は……。
  1107. 日野昇

    証人(日野昇君) 予備隊ですか、その私兵だということは……。それは議論は少くとも我々は或いは警視庁幹部は常に外に向つては挙庁一体を唱えて来ておるが、而もその責任のある地位におる人が、みずから警視庁が或いは予備隊が私兵になつたり、或いは一人の隊長の私兵になつておるというものの言い方が挙庁一体を乱すのじやないか、こういう私は議論をしたのであつて、その根本的にどういうふうに具体的に……。
  1108. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 乱すという説であるならば、尚更命令系というものはあるのだから、職務権限というものもあるのだから、それを守つて挙庁一体で行くべきものではないでしようか、勝手に任意の行動をとるのであつたならば、それ自体挙庁一体の理念に反するのじやないのですか。
  1109. 日野昇

    証人(日野昇君) そういう私は予備隊が私兵的な行動をしたことは私は知つていない、常に私は……。
  1110. 伊藤修

    委員長伊藤修君) デモ隊検挙にときはどうですか。
  1111. 日野昇

    証人(日野昇君) これは常に打合せをしてやつておるのです。
  1112. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課から捜査命令が出たのですね。
  1113. 日野昇

    証人(日野昇君) そういう捜査命令というものじやないのですが……。
  1114. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 検挙する場合においてもあなたか勝手に検挙されるのですか。
  1115. 日野昇

    証人(日野昇君) そんなことはない。
  1116. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 現行犯として検挙されるのでしようが、検挙することが法律違反だと言つておるのではない。命令系統を聞いておるのですよ。
  1117. 日野昇

    証人(日野昇君) これは常に協議が行われて方針が決まつて検挙になつておる筈です。
  1118. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課は全然そういうことは検挙することについては協議に興つていないのじやないですか。
  1119. 日野昇

    証人(日野昇君) それは私は知らない。
  1120. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこだ、そこが行違いがあるのです。それをあなたが行違いを知らずしてあなたが勝手に喧嘩したのではないのですか。
  1121. 日野昇

    証人(日野昇君) 喧嘩ではないのです。大いに議論した。
  1122. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 議論されるのは結構ですが、よくそういう点を確かめて議論しないといかんですね。  他に御質問ございませんか。
  1123. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 全般的に証人証言を伺つておると非常に証人が無邪気なのか、それとも警視庁なりまあいわゆる権力を持つておる側のことは万事批判すべきではないというようなお考えになつておるのか。
  1124. 日野昇

    証人(日野昇君) そんな考えはありません。
  1125. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 警視庁の中でも面白くないことがあれば、例えば私兵化しておるような事実があれば、それはやはり先ず警視庁内部から批判されないと、後に外部から批判されるようなことになりますね。いきなり投げとばしたりするのは、甚だ無邪気なのか。批判をしないという意味なのか。ろくに原因も確かめないでいきなり議論をやる……。
  1126. 日野昇

    証人(日野昇君) 勿論それは酒を飲んでおつたのですから、若干私もそれは行過ぎもあつたと思います。
  1127. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると甚だ失敬な質問におとり下さつては困るのですが、あなたのような方は敗戰前の日本と敗戰後の日本とどちらがよいとお考えになりますか。
  1128. 日野昇

    証人(日野昇君) それは大変むずかしい問題ですが、私らは民主化された新らしい日本というものは全的に信頼しておる。これでよろしいと思います。
  1129. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは有難い。それからもう一つ伺つて置きたいのは、元捜査二課長をしておられた岩田という方とあなたと何か御関係はどうですか。
  1130. 日野昇

    証人(日野昇君) 殆んどありません。勿論顔ぐらいは知つております。
  1131. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質問はありませんか。ではお忙しいところ有難うございました。お帰り下さつて結構です。    〔証人折田二雄君着席〕
  1132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 折田二雄さんですか。
  1133. 折田二雄

    証人(折田二雄君) さようでございます。
  1134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お所はどこですか。
  1135. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 杉並区永福町三百六十二番地。
  1136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年は。
  1137. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 一つ若くなりましたから三十八歳です。
  1138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今日は五井産業事件についてあなたの御関係の部分について証言を求めたいと思います。証言をして頂く上において宣誓をお願いいたします。宣誓の上若し嘘、偽りがありますと制裁がありますから……。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 折田 二雄
  1139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴は……。
  1140. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私は昭和七年に警視庁巡査を拜命しまして今日に至つておりますが、大体十八年間警視庁に奉職しております。
  1141. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 職務関係は……。
  1142. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 現在第一方面の監察官附の警部をしております。
  1143. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いつ頃からですか。
  1144. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 昨年の三月からだと思います。その前は第三方面の監察官附をやつておりました。
  1145. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その前は何をやつておりましたか。
  1146. 折田二雄

    証人(折田二雄君) その前は国家地方警察本部、東京都本部の教養係長兼監察官附をやつておりました。
  1147. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岩田元捜査二課長というのは御存知ですか。
  1148. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 知つております。
  1149. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどういう御関係御存じですか。
  1150. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私が警務課に教官をしておりました当時の捜査二課長をやつておりましたので知つております。
  1151. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが昨年の八月頃その岩田という人から……今辞めておるらしいですが、捜査二課の宗像主任を紹介して呉と頼まれて紹介してやつたことがありますか。
  1152. 折田二雄

    証人(折田二雄君) やりました。
  1153. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その依頼を受けた日にち、場所を御存知ですか。
  1154. 折田二雄

    証人(折田二雄君) はつきりした日にちは記憶しておりませんが、確か暑い時分だと思います。白パナマをかぶつて私の部屋に見えましたから。
  1155. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 依頼の趣旨は……。
  1156. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 当時確か第二係長をしておりました吉武さんがおいでにならないので、私の部屋に宗像主任を紹介して呉れと言つて来られたと思います。
  1157. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういうことを、話の内容は……。
  1158. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 細かく記憶しておりませんが、確か山之内製薬のことで社長が何か出頭するとか、出頭しないとかという内容だと思います。私は事件関係は知りませんからまあ一応紹介して上げましようと言つて、宗像主任を私の部屋に呼びまして、そして紹介して会わしてやりました。
  1159. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 山之内製薬の社長ですか、松島という人ですね。
  1160. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そのようでございます。
  1161. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その人の取調ベについて何か穏便に処理して貰いたいということを宗像をあなたの部屋に呼んで紹介したついでにお話になつたのではないのですか。
  1162. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 紹介してやつたことはありますけれども、その宗像主任と岩田氏との話の内容については細かく記憶しておりません。
  1163. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの部屋で話されたのですね。
  1164. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の部屋ではありませんが、私の部屋の別室というのがありまして、そこで会つて行かれました。
  1165. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに紹介して呉れというのだから、結局はその当面の事件を穏便に取計らつて貰いたいと……。
  1166. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そんなことではなかつたかと思います。
  1167. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 訪ねて来るのだからそういうことでしようね。
  1168. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そんなことだと思います。
  1169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 宗像はこれを拒んだということですよね。断つたということですね。
  1170. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そういうことは聞いておりません。
  1171. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか。その後岩田氏が宗像主任のところに菓子折を持つて参つたそうですね。お聞きになりましたか。
  1172. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そういうことは私は実は新聞で見ましたので、誠に奇怪なことがあるものだと思つておりましたが、菓子折を持つて行つた云々ということは知りませんでした。
  1173. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存知なかつたのですね。
  1174. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 知りません。
  1175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岩田という人は追放者ですか。
  1176. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 追放者ですか、私はよく分りませんが、確か警視庁から他府県に出られたことは……課長か何かで出られたと思いますが、現在追放になつているかどうか分りません。
  1177. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その後あなたが昨年の十月頃、第一方面監察官附としてあなたが宗像主任と、及びその部下の身辺を何か内偵されたことがありますか。
  1178. 折田二雄

    証人(折田二雄君) ございます。
  1179. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは内偵するいきさつはどういういきさつですか。
  1180. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 確か昨年の十月中旬だと思いますが、四十七号室というのが宗像主任の部屋でございますが、そこで不正、非行といいますか、密告がありましたので、事実であるかどうか、或いは中傷であるかどうかという点について、私の部下の警部補にその内偵を命じたわけであります。
  1181. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで内偵の結果は……。
  1182. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 内偵の結果、全部終了はしておりませんが、途中で実は中止したわけであります。中止した理由は関係方面から誤解を受ける虞れがあるという御注意がありましたので中止しました。
  1183. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 関係方面というのはお堀端のことですか。
  1184. 折田二雄

    証人(折田二雄君) いや、私の上司です。
  1185. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ここで関係方面をお堀端という代名詞で使つておりますから……。
  1186. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の上司です。山之内製薬とその外一つの会社調査しただけで中止して今日に至つております。
  1187. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上司というのはどういう人ですか。
  1188. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の直属の監察官或いは警務部長
  1189. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは内偵された結果の内容を差支なかつたらおつしやつて頂きたい。
  1190. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 山之内製薬からはホルモン剤外二、三種類の薬品を貰つておるという事実が分かりました。赤坂の日本曹達からも若干貰つておるという事実が分りましたし、その外にも非行があつたことを聞しておりますが、そこまでは手が伸びないうちに中止するようになつたわけです。
  1191. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは薬ですか。
  1192. 折田二雄

    証人(折田二雄君) ホルモン剤の注射薬とそれから何か二、三種類あつたと思います。
  1193. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは多額のものですか。
  1194. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 生産者価格ですからどのくらいになりますか、はつきり値段の点は聞いておりませんが、五箱とか、十箱とか三箱とか或いはその外二、三種類あつたよう記憶いたします。
  1195. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは代金を拂つて買つておりますか。
  1196. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 山之内とか日曹というのは町の薬局と違いまして、個人の会社ではないと思います。私の調べたときでは無償であります。
  1197. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのことは上司に進言なさつたんですか。
  1198. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 話してございます。
  1199. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最初の動機ですね。調査に至る動機は密告とおつしやつたが、誰から密告があつたのですか。
  1200. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 密告という点につきまして具体的に名前を申上あげるということは今後……監察官室というのは一般の密告とか投書があるところでありますから、一々名前を申上げてもどうかと思うのでございます。この点御了承を願いたいと思います。
  1201. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 部内ですか。
  1202. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 部内でございます。
  1203. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 部内は本庁ですか。
  1204. 折田二雄

    証人(折田二雄君) はあ。警視庁本部内の密告でございます。
  1205. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 相当の地位の人ですか。
  1206. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 巡査、巡査部長の階級の人です。
  1207. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 数人ですか。
  1208. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 確か二人だと思います。
  1209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 時たまたま宗像警部が佐藤昇事件の捜査にかかりましたですね。それを牽制するためにあなたの親友の吉武氏がそういうことを捜査するような、という一つの、牽制策として行われたものじやないですか。
  1210. 折田二雄

    証人(折田二雄君) いやそれは全然ですね、私は、向うがどんな仕事をしているか、或いは捜査二課だけ目標だけ調べるか、そういう点はすでにお分りだと思うのでありますが、第一方面という監察官室は、警視庁本庁の全部のものの非違非行につきましてタツチしておりますので、どんな仕事を今やつているかということは内偵の時期には分らないのであります。いよいよ本人を呼んで調べる段階に至りますと、その部内の上司から、実はこういう非行で調べたいから寄越して貰いたいという了解を受けて呼んで調べているのでありますが、内偵の時期におきましては、本人も恐らく知る場合もあるし知らん場合もあると思うのでありますが、本人の仕事には差支のないようにやつているのであります。当時何の仕事をしておつたか、私は実は知らなかつたのであります。
  1211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時あなたが極く近しいらしいですが、土田とか吉武という人と……。
  1212. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 土田氏につきましては、私は親しい交りはしておりません。吉武氏にしても昭和十六年に、約一年間ぐらい警務課で、一緒に仕事をしておりましたからこれはよく知つております。
  1213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武氏から、まあ職務上でなくても茶呑み話でも、そういう佐藤事件に着手しているということはお聞きになりませんでしたか。
  1214. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 聞きません。
  1215. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは吉武氏とは非常にお近しいらしくて、あなたの元の部下ですか何だか……、吉武氏の部下ですか。
  1216. 折田二雄

    証人(折田二雄君) はあ……。
  1217. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武氏の部下か、あなたの部下か知らないけれども、牧という元刑事をやつた人があるね。今飲食店をやつている。
  1218. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の部下ではありません。
  1219. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこへしばしば一緒に呑みに行つたことがあるでしよう。
  1220. 折田二雄

    証人(折田二雄君) しばしば行つたことはありません。私の記憶のあるには確かに一回だと思います。
  1221. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうときにでも話があつたのじやないですか。
  1222. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の行つたには牧氏のところに行きましたのはずつと前の話であります。
  1223. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうも吉武氏の好まない人の事件を立てるという場合に、吉武氏という人も快く思わないでしよう。それを逆にあなたの方から逆捜査をするという形がどうも変に思われるのですがね。
  1224. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私は逆捜査なんという言葉を新聞で見て、実はよく分らなかつたのであります。ですから逆捜査というのはどういう意味でおつしやるのか、よく私には了解できないのでありますが、監察官室の仕事は、捜査の者も経済の者も調べるのでありまして、みんなそういう意味で御解釈願えば逆捜査になると思います。
  1225. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一般的に見ればそうだが……。
  1226. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の方は当然の仕事であるから……。
  1227. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当然の仕事ですけれども、たまたまそういう事件が起つている場合に、その事件を調べるということが、表面的に見ると何だかそこに意図があるように考えられるが……。
  1228. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 歪められて解釈されればそうだと思う。
  1229. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたとしては……。
  1230. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私の方は監察官附として正当の仕事をやつたに過ぎない。
  1231. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの職務範囲は本庁ばかりじやないんですね。
  1232. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 第一方面は十五の警察と本部、警察学校、予備隊本部、中央区隊と持つております。
  1233. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 部下、あなたの手足となるのは……。
  1234. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 大体警部補四人であります。
  1235. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 四人だけですか。
  1236. 折田二雄

    証人(折田二雄君) はあ。
  1237. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それだけでお仕事をなさつたのですね。
  1238. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それで仕事をやつております。
  1239. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは全力を挙げて宗像氏を調べたのですね。
  1240. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 全力を挙げておりません。実は甚だ職務懈怠になるかも知れませんが、そう急いで証拠湮滅をするとか、或いは逃亡するような内容のものでありませんから、仕事の合間に実はやつたのであります。
  1241. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その係は鈴木さんとか、久保さんですか。
  1242. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 鈴木警部補並びに久保警部補外二人ありますから……。
  1243. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 半数使つたわけですね。宗像氏の問題をやつた人が。
  1244. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そうであります。
  1245. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 半分。
  1246. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 半分です。
  1247. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田さんという人は岡崎さんの捜査二課長時代に非常に敏腕を揮われ人だつたそうですね。
  1248. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そういう話を聞いております。
  1249. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんの部下として……。
  1250. 折田二雄

    証人(折田二雄君) まあその岡崎さんの部下というわけでなくて、私の聞いているのは土田さんという係長はやはり仕事の面においては相当実力を持つておられる方ということは聞いております。岡崎さんとの繋がりにつきましては私は実は詳しいことは知りません。
  1251. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 藤田さんと何か会合や何かなさつたことはありますか。
  1252. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 公的は面におきましては一緒に勤務したこともございませんが、一、二回私の会合で顔を合したことがございます。
  1253. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう席上で土田さんが岡崎の下に集まる多くの警察幹部でなくては捜査二課のごとき重要な仕事はできないのだというような口吻を漏しておつたことがありますか。
  1254. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それは階級が私とは違いますし、又警視庁の二千数百の予備隊を掌握しておる隊長でありますから……私共は近しい話はいたしません。
  1255. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたが監察官附になつたことも、それから吉武氏が捜査二課の二係長になつたの土田の盡力ではないですか。土田さんというのは相当お仕事の方面で腕はしつかりした人らしいですからね。庁内におけるところの勢力も相当しつかりしていらつしやると思いますが……。
  1256. 折田二雄

    証人(折田二雄君) その勢力という点につきましてどういう意味か私は分りませんが、仕事はできる人だということは承知しております。
  1257. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 要するに土田さんの言葉によつて相当いろいろの他の部の方を牽制されるというようなことはないですか。
  1258. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そういうことは私はないと思います。
  1259. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いはそれが余り権限が逸脱して丁度土田君は横暴だ逸脱だという非難はありませんでしたか。
  1260. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そういう声は聞いておりません。
  1261. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたは土田さんか又は吉武さん、そういう方の紹介で俗に言う追放者と称せられる、警視庁の追放者と称せられる人がクラブを持つておりますね、そういう人々と御交際をなすつていらつしやいますか。
  1262. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 交際をしたことはありません。どういう人か分りませんが名前を挙げて頂けば……。
  1263. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎さんとか丹羽さん。
  1264. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 会合したこともありませんし、会つたこともありません。
  1265. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上村さんとか秋山さんは。
  1266. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 名前は聞いたことはありますが、クラブに出入りしたことはありません。
  1267. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御交際はないわけですね。
  1268. 折田二雄

    証人(折田二雄君) はあ。
  1269. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何か他に……。
  1270. 大野幸一

    ○大野幸一君 監察官というのは警察官の非行というのですか、その非行の中の犯罪事実ばかりでなくて好ましからざることですね、例えば中野署長、日野さんが署長の当時でないでしようが、あなたが警視庁にいた当時、一私人から金を貰つてそれを部下へ給與していたということ、そういうようなことは監察官として構いませんか。
  1271. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 監察官としてやはりタツチしておる問題であります。
  1272. 大野幸一

    ○大野幸一君 そういうことは監察官として庁内の……。
  1273. 折田二雄

    証人(折田二雄君) やはり一応私の方面でありませんから、他の方面でありますから一応監察官がお調べになつたと思います。
  1274. 大野幸一

    ○大野幸一君 併しこれは日にちを見ると二十一年頃から始まつておるようですがね、警視庁にいたのですね、中野警察に行つたのは二十四年からですがね。
  1275. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 併しその当時は表面に分らなかつたのだと思います。表面に分つておれば、或いは何らかの相談があつたかと思うのでありますが……。
  1276. 大野幸一

    ○大野幸一君 五井産業事件が起きない前に、監察官として、こういうのを早く粛正というか、警視庁へ出入りする好ましからざる人物の一掃はできなかつたものでしようか。
  1277. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私も五井産業の佐藤さんという人を知つておりませんので、どういうことをされたかも今度私の……。
  1278. 大野幸一

    ○大野幸一君 知つていないことが、どうも職務上どうかと思うのですが、こういうのを早く知るということに努力はしないのですか。
  1279. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それは、何か捜査の切掛けで出て来れば別でありますけれども、私の方でも努力はしますけれども、全然表面に、具体的に非違非行が出て来なければ分らない問題であります。
  1280. 大野幸一

    ○大野幸一君 今、警察官は非常に給料も安い時代もあつたり、物の高い時代もあつて、皆こういう人から援助して貰わなければ、当時やつて行かれなかつた時代があつたのじやないのですか。
  1281. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それは、そういう時代があつたかも知れません。
  1282. 大野幸一

    ○大野幸一君 今はどうですか。
  1283. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 今は、それはおのおの生活程度というものがありますから、一律にはそう言えないと思うのです。一巡査でも、現在の俸給で満足している者もあるかも知れませんが、或いは又、そうでない者もあると思うのです。
  1284. 大野幸一

    ○大野幸一君 だから、こういうことを洗い立てれば殆んど全部にあるのじやないですか、殆んどというわけじやないけれども、堅い人もありますが、その人は除外して、これは一、二に止まらない……。
  1285. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 全部が全部とは言えないと思います。或いは一、二あるかも知れません。
  1286. 大野幸一

    ○大野幸一君 今後どういうふうに粛正されて行くと考えておられますか。監察官として……。
  1287. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私一個人の考えでは処理できない問題でありまして、給料だとか、諸手当だとか、いろいろ待遇面の向上と言いますか、上司の方々にお願いしい、そういう方面からも検討して頂くし、又或いは後援会とか或いは協力会というようなものから援助を受けている方面も或る程度予算を貰つて、予算の面で、できる範囲内のことをやつて行けば余り間違いもないのじやないかと思つておりますが、今までそれ程予算を十分に頂戴していないのじやなかろうかと考えております。
  1288. 大野幸一

    ○大野幸一君 そういう援護の後援会とか、協力会というののメンバーが、多くは闇商人がそこへ入つて来たという傾向はないですか、今から顧みて……。
  1289. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そう沢山ないと思います。或いは若干選考が、そういう間違つた方面が出て来た例も或いはあるかも知れませんが、恐らく私は、殆んど大部分が皆善良な人ではなかろうかと思うのであります。
  1290. 大野幸一

    ○大野幸一君 その、上司から中止せよというのであつたのですが、そのときには、どういう話で中止しろ、その中止の理由は何ですか。今、佐藤事件を調べているから誤解が出ていけないという意味ですか。
  1291. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それはこういうことがあつたのです。私が内偵を命じた主任の二課長の松下さんが呼ばれまして、ひどくお叱りになりましたので、私も責任上、どういう理由でお叱りになつたか確かめに行つたわけなんです。そのときに、いろいろタツチするに至つた動機というものを聞きたかつたようなお言葉でありましたし、それから監察官としても綺麗ではないのだといつたよう意味のことを言われて、徹底的にやるというようなお話も記憶に残つておりますが、そういうことで私も誤解を受けるのだなあという気持もあつたし、又上司の方もそういう点で考慮に入れて私に暫く待てということを言われたのじやないかと思います。
  1292. 大野幸一

    ○大野幸一君 上司というのは誰ですか。
  1293. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 先程申上げました通りであります。
  1294. 大野幸一

    ○大野幸一君 誰ですか名前で言えば……。
  1295. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 監察官と警務部長であります。
  1296. 大野幸一

    ○大野幸一君 警務部長というのは誰ですか。
  1297. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 大園警務部長
  1298. 大野幸一

    ○大野幸一君 監察官の方は……。
  1299. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 藤澤監察官。
  1300. 大野幸一

    ○大野幸一君 よろしうございます。
  1301. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他にお尋ねになる方はございませんか。
  1302. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 警察方面の寄付行為について何か監察したことがありますか。
  1303. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 寄付行為はこれは私の方の所管ではありませんが、大体警務課の方でやつているのではなかろうかと思います。何かそういう行為で不正或いは不純なものがあれば、その方面々々の警察の担当の監察官が調べることになつております。
  1304. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 寄付行為をするのはどんな手続でするのですか、今は……。
  1305. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 詳しいことは私も分りませんが、大体警務課に便宜を図つて貰うのではないかと思います。
  1306. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 二、三伺いたいのですが、どうもさつきのお答えが私は全然腑に落ちないのです。客観的に見て……例えば日野昇という方は、何か凡そ十一万円に及ぶ金を佐藤という方から受取つておられるらしいのですが、それについては全然御承知がなくて、そうしてこの宗像という方が薬を五箱とか六箱貰つたという方は警部さんだか何か二人を動かして調査された、そのことの軽重を余りにも失しているのじやないでしようか。
  1307. 折田二雄

    証人(折田二雄君) よく質問の趣旨は分りますが、これから申上げます。日野氏につきましてはこれは三方面の監察官がタツチしておる問題であります。私のタツチすべき性質のものではないのであります。よその方面に警察官がおりますので、私の方はいわゆる警視庁本部に勤務しておるものにつきましてまあ内偵をしたわけであります。おのずからその軽重の度はありますけれども、所管が違うのです。同じ監察官室でも監察官四人おりますし、おのおの担当が分れておりますから……。
  1308. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その当時は日野という方は本庁におられたのじやないですか。
  1309. 折田二雄

    証人(折田二雄君) これが分つたのは中野署長に日野氏が出られたあとであります。
  1310. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 だからさ、その監察官というものはちよつと密告でも来ないとあとは晝寢しておるように聞えるのですよ。
  1311. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そういうことはありません。
  1312. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併し佐藤という人は警視庁にしばしば出入しておる。あなたは警視庁にお勤めになつておるのでしよう。
  1313. 折田二雄

    証人(折田二雄君) はあ。
  1314. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そこへ佐藤という人はしばしば出入して相当有名な顔利きらしいですね。で、監察官は御承知ない。我々が知らないのは当り前ですよ。
  1315. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私は監察官室に入つて来て一年半になりますが、その間において佐藤氏は知らないし、又その間において日野氏が金を貰つたということも聞いておりません。恐らくそのずつと前の話ではないかと思いますね。
  1316. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 監察官という方の主なお仕事は何ですか。
  1317. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 本来の仕事は、警視庁本部と第一線警察署との事務運営、能率向上、本部の計画立案したものが各警察署にどういうふうに消化され、どういうふうな能率を挙げたかということが主たる目標です。併せて警察官の士気の昂揚とか規律の振粛とか、こういう部面も担当しております。
  1318. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとずつと過去のことであろうと何であろうと、そういう佐藤昇といえば素人は知らないかも知れないが、大体そつちの関係の人は知つておる。警察ボスというものであるらしいな。本人が、警視庁のことなら俺は何でも始末をつけるというぐらいのことを冗談にも言う程の人なんだから、我々が眼が届かないということはしようがないが、この本庁におられる監察官が第一、第二、第三、第四と、どういうふうに分れておるか知らないが、併しそのいずれにせよそれを全然知らない、而も一年お勤めになつておる方が全然知らないというのは、何か機構上の欠陥でもあるのかね。
  1319. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私は一年半の間知りませんし、恐らく監察官室に四十名近い職員がおりますが、佐藤氏を知つておるのは、私は大部分知らないのじやないかと思います。
  1320. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併し佐藤という方は、これはあなたの可なりお親しい土田さんなり吉武さんという方とは、特に吉武という人のところには毎日のように顔を出されておられたようですがね。
  1321. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私は一遍も会つたことはありません。
  1322. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうすると監察官は本庁に外部の人が来ても余り気にしないのですか。
  1323. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それは、警視庁には沢山の各部長或いは課長なり係長と仕事の分担が分れておりますから、特にそういう必要のあるところへしか行きませんので、私の部屋に多くの客がたびたび来ればこれは分ります。必要のあるところだけしか訪問しないお客につきましては私共余り関心を持つておりません。或いは手配されておる泥棒か何かであれば、これは勿論注意しなくちやなりませんが……。
  1324. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併し手配されておる泥棒よりもつと危険ですね。警視庁幹部の人のところに殆んど毎日のように来て、そうしてその人と密接な関係を持つということは、警視庁の客観的の機構を損することは夥しいように思いますが……。
  1325. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それは上司の方が、訪問を受ける側の方でいい悪いはおのずから判断されると思うのです。私共は上司のところに来るお客についてとやかくと言う立場におりませんから……。
  1326. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからもう一つ伺つて置きたいのは、監察官としてのあなたは、警察官に金を呉れる人には大体その人を疑いますか。その人を信用しますか。
  1327. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 一応私としましては、これはどういう意図があるか、或いは善意であるか、本当に純粋の気持から我々の収入が少いという点で援助して呉れるのか、或いは公的な考えからやるのか、何か意図があつてやるのかということは一応確かめなくちやならん。
  1328. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その場合に先ず疑いますか。それとも先ず信じますか。
  1329. 折田二雄

    証人(折田二雄君) やはり一応疑うですね。
  1330. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは非常に重要な問題だと思う。警察官の生活がお楽でないということについては、それは社会が十分に考えなければならないことですが、そうだからといつてその人に金を呉れるという人は、大体において客観的に考えて善意とは考えられないですね。
  1331. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 一応そう考えます。
  1332. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有難うございます。
  1333. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの警視庁の第一監察官附であるとすれば、あなた方から御覧になつて、現在警視庁管内の現状において、官紀は相当に振粛されておると御覧になつておりますか。
  1334. 折田二雄

    証人(折田二雄君) 私は一応振粛されておると思います。
  1335. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 現有のままにして差支ないと……。
  1336. 折田二雄

    証人(折田二雄君) いや、それは放つて置くということはよくありませんが、やはりいろいろな創意、工夫を凝らして、都民の御期待に応え得るだけの努力はして行かなくちやならんと思いますが、現在の段階において私は綱紀は紊乱しておるというような気持は持つておりません。
  1337. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 綱紀紊乱に対しては一点の憂いを持つておりませんね。
  1338. 折田二雄

    証人(折田二雄君) いや、一点の憂いという程でありませんが、それは少しお言葉が過ぎるのじやないかと思いますが、或る程度あるかも知れませんが、そう心配する程の段階ではないと思つております。
  1339. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それだとどうもあれなんですが、さつきあなたの一つ前に日野昇という方が証人所してそこに御出席になりまして、そうして敗戰後警察官の生活が非常に苦しかつたというので、警察官としての機能を発揮する上から金銭上の補助をしなければならないという考えで、佐藤という方から多額の金額を受取られるということについてのまあ遺憾の意を表されたのですが、そういうことは面白くない、自分自身としてはやましい心持というものはないけれども、警察というものは、そういう形であつては到底フエアーな警察としては機能を発揮することはできない。やはり金を貰つた人の、私の関係に引かれるということだつたのですが、そのことと関連をして、その日野さんという方と相当密接の関係にある方々が現在警視庁の中におられるようですが、大体同じようなお考えでないかと思うのですがね。
  1340. 折田二雄

    証人(折田二雄君) その何と言いますか、外部から寄付を貰うことがですね。
  1341. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  1342. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それがいいか悪いかという……。
  1343. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうなんです。
  1344. 折田二雄

    証人(折田二雄君) それは勿論悪いことなんですね。それについては先程も申上げましたように、都の予算なり何かを増額していて、後援会とか協力会とかいうものの援助が要らないような対策というものを上司の方ですか、或いは都会議員の皆さん方からやはり協力して頂いて、この予算というもので賄つて行けるようになれば、私はそういう心配はないと思います。
  1345. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは勿論言うまでもないのですが、その警察なり警視庁なりが、本当に民衆の友であるという感じがあれば、やはり国民全体が警察官に対する支持する気持があり、従つて予算も出て来ると思うのです。警察官が一部の特権階級だけの保護に当つておるようなふうだと、それはどうしても国民全体が、警察官が我々の、いわゆる人民の警察官という感じはなかなかしないということもあると思うのですね。それでさつき伺つておつたのは、日野さんという方はお辞めになつたようですが、外の方はおやめになつていないのですね。そこに事情が、根本的に同じような事情があるように思いますがね。
  1346. 折田二雄

    証人(折田二雄君) これはまあ外の例えばやめておられないという人は、どんな人か分りませんが、又日野前署長がやめられた気持というものも聞いておりませんけれども、やはりその気持、良心的な或いは道義的な気持と言いますか、そういう気持でおやめになつたのではなかろうかと、私は想像しております。
  1347. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それではもう一遍念のために伺つて置きたいのですが、我々から客観的に見ますと、その面白からざる疑いを受けるような人から多額の金をお貰いになるような警察官というものは、非常に危険な気がするのです。信頼できないような気がね。我々現に警察庁へときどき伺つて、金銭をばら撒いたりするように人物を、非常に危険な人物というふうに我々は考えるのです。つまり国なり自治体の警察を腐敗させようとしておる人物ですね。ところがそういう方が相手をなされることが平気でいるような方がおつて、又日野さんのごときはその佐藤さんの人物を賞揚されたりしているのだな。立派な人でスポーツマンで日本人らしい。どうも日本人というものは皆警察へ行つて警察官を買収するようなことになつたら大変だと思うのです。そういうような考え方が多分に残つておるのじやないか。警察庁の中に、警視庁に来て金でも呉れるような人は人格高潔、日本人らしいなんて……。
  1348. 折田二雄

    証人(折田二雄君) そんなことはないと思います。
  1349. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 なければ結構ですが、あつたならば……。
  1350. 折田二雄

    証人(折田二雄君) やはりそれは粛正して行くべきであると私は思います。
  1351. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから……まあこのくらいで終りにしましよう。
  1352. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではお忙しいところ……お帰り下さい。  本日の証人はこれを以て終了いたしますが、明日は吉武辰男、土田精三、塩谷隆雄、田中榮一以上四名を喚問することにいたします。  それから明後日は丹羽喬四郎岡崎英城、上田良三三名を喚問することにいたします。  明日は午前十時から開会いたします。  本日はこれを以て散会いたします。    午後五時九分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            大畠農夫雄君            小林 英三君            遠山 丙市君            羽仁 五郎君   事務局側    事務補佐員    (常任委員会勤    務)      伊藤 利夫君   証人    三洋工業社長  伊藤 鑛壽君    元中野警察署長 日野  昇君    警視庁第一方面    監察官附警部  折田 二雄君