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1950-04-06 第7回国会 参議院 法務委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月六日(木曜日)    午後一時四十分開会   —————————————   委員の異動 本日委員鈴木安孝君辞任につき、その 補欠として小野光洋君を議長において 指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件(五井産業事件)  (右件に関し証人証言あり) ○証人喚問に関する件   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それではこれより法務委員会を開会いたします。  本日は検察並び裁判運営調査について、五井産業事件に関するところの証人証言を求めることにいたします。  岡崎格さんですね。お忙しいところどうも恐れ入りました。今日は御承知の、五井産業事件について、それに関連する事項についてお尋ねいたしたいと思います。御証言をお願いいたします。御証言をお願いする前に、宣誓をお願いいたします。勿論宣誓につきましては、制裁の規定があることを御了承下さい。御注意申上げます。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 岡崎  格
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お住居はどちらでいらつしやいますか。
  4. 岡崎格

    証人岡崎格君) 中野区塔山十番地。
  5. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  6. 岡崎格

    証人岡崎格君) 満四十歳。
  7. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 只今お仕事は東京地方検察庁特捜部長検事にお勤めでございますね。
  8. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうでございます。
  9. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤昇に対する詐欺及び贈賄被疑事件に関する捜査経過を簡単に一つお述べ願いたいと思います。
  10. 岡崎格

    証人岡崎格君) メモを見てよろしうございますか。
  11. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どうぞ。
  12. 岡崎格

    証人岡崎格君) 佐藤昇に対する詐欺贈賄事件捜査経過でありますが、昨年の十二月七日に逮捕状が発付されまして、十二月十四日に逮捕、十二月十六日に検察庁身柄送致になりましたので、その日に勾留請求をいたしまして、本年一月四日に詐欺の事実の一部を起訴いたしまして、引続き詐欺余罪その他の関係について捜査しておつたのでありますが、一月三十日に保釈決定がありましたために、一旦釈放しまして、その日に贈賄の事実で再び警視庁から逮捕状請求がありまして、逮捕状発付なつ逮捕いたしました。その贈賄事件が二月一日に検察庁送致になりまして、検事の方で二十四時間の手持時間一杯に調べをいたしましたが、贈賄容疑の点が非常に疑わしくなりましたために、二月二日に釈放いたしております。詐欺余罪の事実につきまして、二月十一日に追起訴をいたしております。で目下贈賄の事実の点につきましてはまだ捜査中になつております。
  13. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その佐藤昇に対する司法警察官及び検事供述録取書ですが、そういうものがある筈でありますね。これはいつ頃からいつ頃までの間に何回ぐらいとられておりますか。
  14. 岡崎格

    証人岡崎格君) 司法警察員調書は昨年十二月十四日から本年二月一日までに二十七回とられております。これらは本人の分だけでございます。それから検事調書は昨年の十二月十六日から本年の二月十までに十二回とられております。
  15. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その只今お話のありました供述書の中に、これから申上げるようなことが述べられておるかどうか一つお答え願いたいと思います。第一に佐藤経歴前科等ですね。それから第二に岡田秀男との交際金品授受会食商品の納入、知事に紹介等、第三に東舜英渡邊年之助、渡邊良夫江花靜との間の金品授受、第四に福田篤泰との間の金員授受、その使途吉田茂氏との関係小切手受取人吉田大磯私邸訪問の事実、第五岡崎英城丹羽喬四郎との知合関係金員授受、その使途会食関係、第六増田甲子七氏との知合交際関係増田氏より礼を言われた経過、第七藤井孝との知合交際関係昭電事件前後の証人との関係藤井より釈放請求書領收証の交付や情報蒐集依頼した事実、日野昇を同人に紹介経過日野昇との、日野その他より情報を集めた経過、第八に日野との知合交際関係金品授受関係会食関係出入商人として斡旋を受けた、その他警察官紹介された関係昭電事件情報蒐集依頼された経過、第九監谷隆雄との知合交際関係会食関係金品授受佐藤自動車消防庁に売つた経過鈴木恭二事件に関して種々依頼を受けた経過消防庁衣料特別割当について依頼を受け盡力した経過警視庁幹部江花氏を紹介された経過消防庁商品を納入した事実、第十自警会上野藤五郎津久井萬太郎吉里貞雄遠藤竹頼山崎謙次綱井輝男金品寄付した事実、第十一間狩信義和歌山へ転出する際絹靴下千足をマル公で売つた事実、第十二中西久夫追放退職送別会を行い、事業資金を融通した事実、第十三自警会警視庁消防庁商品を納入している事実、第十四昭電事件鈴木恭二事件に関し情報蒐集了解工作をした事実、第十五吉武辰男氏との知合交際関係係金品授受会食関係鈴木恭二の件について依頼した事実、以上の諸点に対する佐藤供述事実について御存知のことをお述べ願いたいと思います。
  16. 岡崎格

    証人岡崎格君) 先ず第一の経歴の点でありますが、昭和十一年の三月に中央大学の商学部の三年を中途退学いたしまして、その年鐘紡に入社しております。その後株式会社五井製作所を経営して、終戰後の二十一年の二月に、五井産業株式会社を経営するようになつたのであります。それと同時に二十一年の八月頃から國友商事、これは國富繊維と改称されましたが、これを國富繊維株式会社を経営することになつたのであります。そう間終戰後物価統制令違反で一度罰金刑なつておりますが、これはその事実だけを申上げます。岡田秀男との知合関係でありますが、昭和八年頃に知合いまして、昭和十一年佐藤鐘紡に入りました後に、岡田商工省商務局にいた関係で、鐘紡にしばしば出入をしておつた、その関係で懇意になつたのでありますが、特に終戰後岡田と懇意になつた。で、岡田秀男に対して佐藤が金をやりましたのは、昭和二十一年の春頃から二十四年の春頃までに合計二十三万円ぐらいを出しております。このうち岡田職務関係といたしまして、職務に関しと認められる疑いのあるものは昭和二十二年頃の二万円についてであります。岡田から紹介を受けて、進駐軍関係へカーテン、布地などを納入した事実はあります。尚紹介を受けた中には岡田秀男氏の叔父にあたる岡田包義などの紹介を受けております。それから東舜英との関係でありますが、これは昭和二十三年の七月頃に昭和電工藤井総務部長から紹介をされまして、当時九万円を贈つております。但しこの九万円につきましては、藤井総務部長から自分のために立替えて置いて呉れということで贈つております。次にこの渡邊年之助の関係でありますが、昭和二十二年春頃から二十四年初め頃にかけまして合計十一万円を贈つております。これは知合になつたという関係は、二十二年の春頃に福家俊一氏に紹介されておるということであります。次に渡邊良夫関係でありますが、二十二年の春頃に福田篤泰紹介知合つて、当時合計二十万円を贈つております。次に江花靜関係でありますが、二十三年春頃塩谷隆雄より紹介を受けまして、その頃から二十四年の二月頃にかけまして合計三十八万円を贈つております。福田篤泰関係でありますが、二十三年の春頃から二十三年の暮頃にかけまして合計七十万円行つております。そのうち三十万円の小切手は、これは自由党の事務所に使う費用として荻外荘の方に贈つたということであります。その使途につきましてはまだ判明いたしておりません。福田との知合友人柴田記者から紹介を受けている。で、二十三年の春頃に福田と共に大磯吉田邸を訪れていることが一回ありますが、これは別段その会談の内容等については何もありません。次に岡崎丹羽関係でありますが、二十二年の九月頃から渡邊良夫より紹介を受けまして、二十二年の秋頃から二十三年の六、七月頃におけて合計六十万円を贈つております。これは増田甲子代議士に援助して呉れということで贈つたと申しております。増田甲子代議士との関係につきましては二十三年の春頃に岡崎丹羽に連れられて増田氏の事務所を訪問したことがある。その後一回国会附近で会つたことがある。その際いろいろお世話になつて有難うとお礼を言われたことがある。それから藤井孝との関係でありますが、その関係につきましては昭和電工事件関係として係検事が詳細に取調べをいたしておりまして、私の方にはその関係については詳しく分つておりません。二十三年の六月頃にこの藤井から昭和電工事件の成行きがどうなるかというようなことについて、できるだけ情報を知らして貰いたいということを佐藤は頼まれまして、その後当時警視庁警備係長でありました日野昇を数回訪ねた際に、いろいろその捜査内容について聞いておりますけれども、詳しい内容は話せない、で簡単に行く事件ではないぞということを言われているだけで、具体的な事情について話をされたことはないと言つております。日野昇との関係でありますが、昭和二十一年の春頃に先程申し上げました柴田記者から紹介をされましてねいろいろ社会情勢等について話をして、非常に自分も共鳴をした。そこで情報を取るにはいろいろ金も要るだろうからというので、一回五千円或いは一万円程度の金を贈るようになりまして、二十四年暮頃までの間に合計十一万円を贈つております。次にその塩谷隆雄関係でありますが、二十二年の春頃に佐藤東京警察後援会寄付をしたいということで、寄付をするについて日野昇から当時の保安部長でありました塩谷隆雄紹介をされまして、そのとき初めて知つた。で昭和二十四年頃に佐藤の所有しておりました自動車一台を消防庁買つて貰つた事情がありますが、これは消防庁の方で車を欲しいと言つておるときに、それでは自分の持ている車を売ろうということで売つたのであります。その際警視庁調書には、塩谷に五万円機密費として贈つたということが載つておりますが、検事調べの際にはこの点についてよく考えて見たところが、これは自分友人である某新聞記者がその際来合せておつて自分はそれに、そんな金があるならば俺に借して呉れと言われたので、そちらに借したように記憶するというふうに検事調べでは訂正いたしております。尚この塩谷隆雄から、味の素の鈴木常務取調べについて吉武警部の方に、成るべく早く調べをして貰つて一日も早く出られれば皆安心するから一応話をして見て呉れということを頼まれて、そのことを吉武警部に話をした事実はあります。併しそのとき吉武警部は、これは飽くまでやらなければならない事実だと、それから自分知合の者から成るべく早く調べて貰いたいという頼みを受けたのだがどうだろうと言つたら、やつて見なくては分らないが、できるだけ早くやるという答えであつたということであります。江花紹介関係については、前に申上げましたから省略いたします。尚消防庁の方で警視庁から独立した後に、自警会と同じように消防官の被服も消防庁に独立して入れて貰うように骨折つて貰いたいという話を塩谷からいたしまして、二十三年の五月頃に商工省関係者会食をしている事実はあります。警察後援会等寄付した事実につきましては、二十二年の暮頃、先程申上げましたように東京警察後援会に二十万円寄付いたしております。それから二十二年の暮頃及び二十三年の六月頃に、警視庁警務課に五万円ずつ合計十万円寄付している事実があります。それから二十三年の二月頃、帝銀事件捜査費用として、足りないだろうからといつて刑事部へ五万円寄付している事実があります。その外神田警察署後援会に、二十二年の春頃から二十四年の春頃にかけまして合計十五万円を寄付しております。尚富坂警察署後援会に二十二年から二十三年にかけて合計五万円を寄付しております。尚京橋警察署後援会に三万円を寄付しております。この東京警察後援会並び警視庁警務課刑事部、それから神田富坂京橋警察後援会にはいずれも正当な寄付の手続を取つて寄付をいたしているのであります。中西久夫に対しまして、昭和二十三年四月広中西追放で辞めたときに送別会をいたしまして、尚十一万円を贈つている事実があります。吉武辰男に対する関係でありますが、これは二十三年の四月頃に日野昇から紹介されて知つております。その後二回日野その他と会食をいたした事実があります。尚佐藤から酒の寄付を受けた事実もあり、又二十四年九月頃一万円の寄付を受けた事実もありますが、これは最後の一万円というのは、当時吉武部屋で何か会をやるについて、金が足りないから缶詰を買つて呉れないかという申出を受けたので、それで買つてやろうということで、その代金と共に一万円を部屋寄付したようになつております。大体以上の通りであります。
  17. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 間狩信義の分を……。
  18. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは和歌山県の警察部長へ転出の際に絹靴下一千足を、まあ初めは贈ろうとしたのでありますが、これは向うへ転任の後に和歌山県の警察官にこれを配給しまして、マル公価格で返して貰つております。結局マル公で売つたということになつております。
  19. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤経歴のところで昭和十七年懲役四ヶ年が落ちておりますね。
  20. 岡崎格

    証人岡崎格君) それはちよつと私の方でも失念いたしまして……。
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あるのですね。
  22. 岡崎格

    証人岡崎格君) 今はつきりいたしておりません。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御記憶がない……。
  24. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ、調書を見れば分りますが……。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程の三十万円、福田篤泰の十三万円は荻外荘費用とかいうようなものですが、その余の分についてはどうなつておりますか。
  26. 岡崎格

    証人岡崎格君) その余の分は福田の方へ献金したということになつております。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは現金と小切手ですか。
  28. 岡崎格

    証人岡崎格君) その三十万円だけが小切手で、他の金と一緒に福田へ渡して、福田から荻外荘事務所費用として渡したわけであります。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると小切手が三十万円なんですね。
  30. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  31. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その小切手は誰が受取つたのですか。
  32. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点はまだ捜査中です。
  33. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 検察庁佐藤昇事件をお取調べになつた係検事の方は、稲田、岩松、河合三検事の外にあなたと伺つておりますが……。
  34. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうであります。はあ。
  35. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 以上のお係の四人の検事の方々が、佐藤をお調べになる途中におきまして、佐藤警察において拷問を受けたとかいうような旨を述べたというようなことはありますですか。
  36. 岡崎格

    証人岡崎格君) 拷問を受けたということは聴いておりませんが、多少記憶違いの点だとか、或いはこの調書に無理な点がある、特に金の出所なんかについて無理な点があるということは述べております。
  37. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特段威迫とか、或いはその他の身体拘束について、不当な行為があつたということは聴いておりませんか。
  38. 岡崎格

    証人岡崎格君) 聴いておりません。
  39. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 又本人も愬えておりませんね。
  40. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  41. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勾留中におけるところの佐藤健康状態、或いは心理状態特段にお気付になつたことがありますか。
  42. 岡崎格

    証人岡崎格君) 別段ございません。
  43. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると通常状態つたのですか。
  44. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  45. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤逮捕状が十二月七日に出されましたですね。それがいわゆる有効期間最終日であるところの十二月十四日まで執行が遅れておつた、その経緯はどうですか。
  46. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは私の特捜部長になる前のことに属しますが、当時の係の検事に確かめたところによりますと、昨年の十二月初め頃に警視庁松本課長から当時の部長福島検事に対しまして、佐藤昇吉村商店から繊維製品ノイルというものですが、これを価格にして約三十数万円、このノイルを詐取したという事実が発覚したので、佐藤逮捕したいという相談があつたのです。そこでこの佐藤吉村商店とは永年の取引関係がありますので、福島部長はそれは一応逮捕して取調べる必要はあると思うけれども、この事実だけで外に余罪が出ないとすれば、起訴できるかどうかは疑わしいというふうに答えましたところが、松本課長はとにかく本人逮捕されることを多少感ずいているらしい。そこで逃亡の虞れもあるから至急逮捕の必要があるというので、それならいいでしようと言つて、十二月七日に逮捕状請求があつたので承認した。ところが、その直後坂本刑事部長から馬場次席検事に対しまして、佐藤逮捕状が出ておるが、確実に起訴できるかどうかということを聴いて来たのであります。そこで馬場次席検事は、起訴が確実かどうかということは今引受けられないと答えたところが、刑事部長は別に北海道宮城関係に二千万円に近い詐欺余罪があるが、どうかという話があつたです。次席検事が、そんなら新刑訴の下で勾留期間も短かいことであるから、その方の証拠固めをしてから逮捕するのが本筋ではないか、こう言つたところが刑事部長も了承して直ちに北海道東北方面刑事を派遣して証拠固めを行なつたという事情であります。そして十二月十三日に佐藤逮捕に行きましたところが、丁度佐藤の弟が亡くなつて、お通夜の日であつた。そういう関係で翌日の十四日に逮捕するようになつたとこういう事情なんであります。で結果的に見まして、その後まあ捜査をしたところが勾留期間内にこの吉村商店関係の事実は証拠固めが非常に困難であるというので、北海道宮城関係詐欺事件について一月四日にこれを起訴し、吉村商店関係の事実は最後に二月十一日に追起訴をしておるのです。こういう事情であります。で従つてまあ新聞等でその点非常に疑惑を持たれておるようでありますけれども、今申上げたような事情でありまして、警視庁幹部がこの逮捕を好まなかつたから特に抑えたというような噂は全然ないと、そういう事実は全然ないと考えております。
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ巷間伝えられるいろいろな噂によりますと、佐藤警視庁幹部と非常に親しい、又行過ぎたところの交際関係にあるとかいう面からいたしまして、いわゆる幹部の方からこの逮捕状が殊更に執行されなかつたというようなことが伝えられておりますが、その点に対しまして御見解は如何ですか。
  48. 岡崎格

    証人岡崎格君) この点は馬場次席検事福島部長なんかに事情を聞きましたところ、以上申上げたような事情で現実に起訴を確実にするために、北海道方面にまで事前に人を派遣して証拠固めをいたしております。即ちその結果起訴が確実になつておるわけでありますから、より愼重を期したというふうに考えております。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 次にこの二十五年の一月三十日に佐藤に対して涜職容疑逮捕状が執行されましたですね。にも拘わらずその涜職容疑岡田秀男ですかを一遍も調べることなく佐藤釈放されておりますね。こういうことはちよつと異例のように考えられますが、この点は如何ですか。
  50. 岡崎格

    証人岡崎格君) でまあ普通でありますと、涜職事件捜査は、先ず事前贈賄者側についてできるだけ傍証を固めまして、それから尚收賄者側職務関係等も極秘にできるだけ調査しまして、或る程度の確信を持つた後に贈賄者逮捕して、その後收賄者逮捕する。こういう段取になるわけであります。ところがこの岡田秀男に対する贈賄容疑事実というのは詐欺罪起訴して勾留中発覚した事実なんであります。で、この場合本来ならば、その余罪については改めて逮捕状請求して勾留して調べる筈でありますけれども、そうすれば却つて結果的に見れば、留置期間が長くなり、或いは勾留の蒸返しというような非難を受ける虞れもありますので、勾留中に引続き余罪捜査をするという事例もしばしばあるのであります。本件の場合もそれに倣つて勾留中に余罪捜査をしたわけであります。併しまあ詐欺積として一旦起訴されておりますので、新刑訴の下ではいつ検事釈放釈放されるかも知れないと、こちらの方では尚起訴した事実の傍証関係についても、又詐欺余罪の取調についても、証拠固めが必要であるからというので、保釈請求には一応反対の意見を附けて置いたのでありまして、まあ弁護人の方も大体一月一杯ぐらいは無理だろうと、こういうことであつたのであります。警視庁の方に対しましても、すでに保釈請求が出ておるとそういつまでも置けないかも知れない。従つてできるだけ早急にこの余罪全貌を明らかにするようにということを話して置いたんでありますが、何分にも先程来申上げましたように、非常に沢山な関係者が出るわけでありまして、この事実の全貌を明らかにするだけでもまあ相当な日を要した。で岡田のこの職務関係につきましても大体の目安はついたんでありますけれども、細かい職務関係調査するまでに至らない間に、一月三十日に保釈になつたのであります。そこで警視庁の方でも、少くともこの岡田に対する贈賄の事実については尚嫌疑があるからというので、逮捕状請求を求めて参りましたので、私の方でも職務関係をもう少しはつきりさせる必要があるということで、逮捕状請求を承認しまして、当日逮捕状が出て、再逮捕したのでありますが、警視庁に対しましてもこれはもうすでに一ヶ月余に亘つて勾留しておるのだから、できるだけその逮捕期間中に職務関係についても分るものなら分るようにして貰いたいということで、二月一日に事件送致になつたわけであります。でその警視庁職務関係調査検事の方で、事実の関係並びに職務関係を仔細に検討して見ますと、合計二十三万円くらいの金が行つておるのでありますが、職務を転々として変つておりますために、問題になります点は先程申上げました昭和二十二年の商工省特別資材部長当時の二万円について職務の問題が起つて来る。併しながらこの点につきましても、佐藤の方は当時岡田病気をして休んでおつたので、病気見舞として贈つたという弁解も出しておりまして、そのはつきり職務に関して贈賄をしたということがなかなかデリケートな関係にありますために、逮捕後も相当日も経つておりますし、又保釈決定にもなつておる、こういう事情を考慮しまして、これ以上勾留して捜査するということは妥当でないという考えから、上司とも協議いたしまして、釈放した次第であります。で、この釈放するにつきましては、予め坂本刑事部長にもその事情を話しましたところ了承したしまして、尚宗像警部補にも来て貰いまして、その事情を話して了解を得てやつておるのであります。
  51. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ事情はよく分りましたけれども、この種の事件において当事者釈放されますれば、事後におけるところの証拠湮滅だとかいうことが容易に企てられることになりますので、立検上において大変お差支のことと存じますが。
  52. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点は確かにそうでございますが、まあ保釈になつたものを再逮捕して、又勾留する場合には、相当な起訴の見通しまで持つておりませんと、徒らに勾留の蒸返しというようなことにもなりますので、まあ昭和二十二年、当時の二万円といたしますと、その職務関係にも尚多少の疑念が残つておりますけれども、額の点から申しましても余り大きな額でもないということからまあ在宅で調べるのも止むを得ないと思う、こういうことで釈放したのです。
  53. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 或いは巷間伝えられるように、当事者身柄を拘束しておつたならば、今の通産省、当時の商工省関係佐藤との間にもその他のいろんなものがある得たかも分らないのですね。
  54. 岡崎格

    証人岡崎格君) いやこれは少くとも佐藤の方は、もうすでに詐欺の事実以来、逮捕して詐欺起訴しました後一月近く、一月四日以後三十日まで、その他の事実について金をやつた先を調べておりますので、佐藤自身が金を出した関係については大体もうこれ以上の新事実が出るという見通しはちよつと立たないのです。
  55. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤に対する涜職事件の主任検事が当初屋代検事であつたようですね。
  56. 岡崎格

    証人岡崎格君) いやこの点が非常に又誤まり伝えられておりますが、詐欺の最初の事件は稻田検事が担当しておりまして、丁度今年の一月から特別捜査部の機構が少し拡張されましたので、稻田検事を涜職の係にしたんであります。で涜職の関係は屋代検事を主任にいたしましたが、丁度その屋代検事が昨年以来刑事部から引続いて持つておりました強盗、強姦致死事件捜査に専従しておりまして、これが一月の二十三日に拘留満期になるというので、それまでは全然手が出ない、又その後二月の初めまで傍証固めに練馬警察署の方に連日出張しておりましたような事情で、これはまあ屋代検事にやらそうという心組で警視庁の方にもそのことを話したんでありますけれども、到頭屋代検事の方にやらせる暇なくして、まあ岩松検事が一月中旬に転任になつたために、岩松検事に担当させるということになつたんであります。
  57. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽に関することについてお尋ねいたしますが、伊藤鑛壽に対する涜職被疑事件を御捜査中において、同人が三回に亘つて警視庁内部の問題に関して供述しておりますが、その供述書があるそうでありますね。
  58. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうでございます。この事件刑事部捜査した事件なんでありますが、この三通の調書につきましては、最近まで警視庁にありました。ところが丁度昭和電工事件の公判の進行につれまして、まあこれもそれに非常に密接な関連性を持つからというので、検察庁に取寄せたわけなんでありまして、現在検察庁にございます。
  59. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは検察庁の方で自発的にお取寄せになつたのですか。向うから送つてつたのですか。
  60. 岡崎格

    証人岡崎格君) これはこちらの方から取寄せたわけなんです。
  61. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方から……。それはいつお取寄せになりましたか。
  62. 岡崎格

    証人岡崎格君) 三月二十日に取寄せました。
  63. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その供述書の中に、これから申上げるようなことがありますかどうか、お答え願いたいと思いますが、第一に土田精三との交際関係、特に土田が品川署長在任中の行動に関する事実や、土田のために世話したり、土田の世話になつたりした事実、第二に岡崎英城丹羽喬四郎等との知合関係のこと、電気クラブに貸して、それを丹羽に返して貰ろうまでの経過、第三に電気クラブで岡崎丹羽が会合を開いた回数、出席者氏名中に、両名の外、上村とか、秋山、中西、町村、相川、田中楢一、松尾英敏、藤田次郎、土田精、吉武辰男の名が出ていたかいないか。増田甲子七は如何。次に昭和二十三年六月頃昭電事件がやかましかつた当時、右事務所で行われた会合の回数、出席者氏名中に誰々がおつたか、例えば岡崎丹羽、藤田、秋山、土田、吉田弁護士等の氏名……。次に伊藤鑛壽は右会合の目的について如何なる観察を述べておるか。それから次に岡崎丹羽等の会合場所としてどこどこを挙げているか。次に岡崎宅で行われた会合の回数、出席者氏名、原文兵衞、後藤田正味、倉井、河合、土田、吉武、石井等の関係、以上の点についてメモがありましたらお述べ願いたいと思います。
  64. 岡崎格

    証人岡崎格君) この土田精三と伊藤鑛壽が知合いになりましたのは、土田が品川署長の頃に、伊藤が協会長の紹介で初めて紹介をされた。そうして伊藤は品川防犯協会長、それから後援会の副会長に就任した、こういう関係なんであります。終戦前その土田署長の依頼で、昭和十九年頃に丹羽喬四郎岡崎英城の二人のために、戦災に遭つたの自分の持家を貸しております。尚土田署長のために封鎖預金を新円に交換してやつたりなどいたしておりますが、まあ一面この土田署長の世話で自分事務所、工場が戦時中の強制疎開の対象になつておつたのを、その疎開の対象から除いて貰つた、こういう世話を受けたこともあるのであります。岡崎丹羽との関係につきましては、前に申しましたように土田署長の紹介で知つて家を貸してやつたんでありますが、昭和二十二年の夏頃、丹羽から電気クラブの中のこの伊藤の事務所を会合の場合に貸して呉れという申込を受けて、まあ土曜、木曜あたりにこれを貸しておつた。で二十三年の六月頃に昭電の事件で、丁度日野原社長が検挙された当時は、約一ヶ月間は、毎日のごとくそこに会合が開かれておつて岡崎丹羽、藤田、秋山、吉田弁護士、その他数名が集まつてつた。土田もそこに行つてつた。勿論その会合の目的につきましては、自分は中へ入れて貰えず、秘密な会合だからというので、自分としてもよく分らない。で、会合場所は、まあそういつた電気クラブ等であつたのでありますが、岡崎英城の家へも会合したことが二回ばかりある。それには勿論土田も出席しておる、こういうようなことであります。
  65. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 増田甲子七氏も出席している……。
  66. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは何か一回ぐらいあつたように記憶する……それは電気クラブの方なんでありますね。
  67. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、電気クラブの方……伊藤鑛壽が同人の涜職事件取調べを受けた際、丹羽を通じて後藤田経済二課長に運動したということは述べているそうですね。
  68. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点はよくはつきりしておりませんが、記録をちよつと見ないと分りません。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽はお調べになりましたですね。
  70. 岡崎格

    証人岡崎格君) 私は調べません。
  71. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか……係検事の方から御報告はお受けになりますか。こちらの問題が起つてから御報告をお受けになつたのですか。
  72. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ、受けました。
  73. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その係検事の報告中に、いわゆる伊藤鑛壽は警視庁調べについて不満を抱いている、例えば拷問を受けているとか何とかということは言つておりませんでしたか。
  74. 岡崎格

    証人岡崎格君) 別段聞いておりません。
  75. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いておりません……何か証人にお尋ねの方はありますか。
  76. 大野幸一

    ○大野幸一君 先ず最初、あなたのメモを見て、最初の供述中には、自由党の事務費用として三十万円を荻外荘において渡した、こういうようにお聞きしたのですが……。
  77. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、それは福田代議士が、佐藤さんの方に、自由党の事務所費用として、金が要るからということを申したので、その費用として三十万円の小切手と、他に現金を一緒に福田代議士に渡した…‥。
  78. 大野幸一

    ○大野幸一君 福田代議士に渡した……福田代議士がそういう話であつたから、その趣旨に基いて渡した、こういうわけですね。
  79. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  80. 大野幸一

    ○大野幸一君 場所はどこですか。
  81. 岡崎格

    証人岡崎格君) 場所は、確か佐藤昇事務所ではなかつたかと思いますが、記録上はつきりしておりません。記録しておりません。
  82. 大野幸一

    ○大野幸一君 岡田秀男という人が、特別資材部長在任当時というのは、丁度二十二年の、病気治療代としての二十万円に相当するのですか。
  83. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  84. 大野幸一

    ○大野幸一君 特別資材部長というのは、どういう仕事をするのですか。
  85. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは繊維製品進駐軍関係に入れる場合の配給等の認可の権限を持つておる……。
  86. 大野幸一

    ○大野幸一君 佐藤進駐軍関係に品物を入れていたわけですね。
  87. 岡崎格

    証人岡崎格君) 入れておりましたが……。
  88. 大野幸一

    ○大野幸一君 私の答弁に、がと言う必要はないのです。入れていたのですね。
  89. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  90. 大野幸一

    ○大野幸一君 その外に切符の割当、これを岡田がやる権限があつたのじやないですか。
  91. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありました。
  92. 大野幸一

    ○大野幸一君 岡田に対して綿糸若くは綿布の多額の切符が発行されておるということは今までにおいては分つておりませんか。
  93. 岡崎格

    証人岡崎格君) 分つておりません。これは佐藤の方は入れる額が小さいのです。これは地方PDの方で大体問題が処理されるので、岡田秀男関係は中央PDになりますので、多少そこに間接的なことになるわけなんであります。
  94. 大野幸一

    ○大野幸一君 その時期に二万円を受取つた贈賄は、そのあとに金を貰つても、職務関係が転勤したあとでその当時のお礼に、職務関係が変つてからでもその当時のお礼に金を貰えば贈賄になるのでしよう。
  95. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  96. 大野幸一

    ○大野幸一君 そういう見方をすると二十何万円というものが、ただ二万円だけじやなくて、二十二万円という見方もできるわけですね。
  97. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。ただこれが二十一年頃から生活費の援助をやつておりまして、それがずつとあとまで継続しておる。
  98. 大野幸一

    ○大野幸一君 いやちよつと待つて下さい。あなたはこれを弁護するつもりでおるようですが、そんなつもりじやないのです。私は公平に聞いているのです。そういう場合には、私の言うそういう観点から考えれば、あとで貰つた金も贈賄になるのですね。そういうわけですね。
  99. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  100. 大野幸一

    ○大野幸一君 これで送つて来た調書の中には増田さんの名前や吉田さんの名前が出て来るということが直ぐ分りましたか。
  101. 岡崎格

    証人岡崎格君) 分りません。その部分の調書は二月二十七日に追送になつております。
  102. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは二月ですか。一月じやないですか。
  103. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや二月です。
  104. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 一月の二十七日じやないですか。
  105. 岡崎格

    証人岡崎格君) 二月です。
  106. 大野幸一

    ○大野幸一君 記録が離されて送つて来たのですか、二月二十七日というと……。
  107. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。勿論その間に非公式にはこちらの方へ相談を受けておりますけれども……。
  108. 大野幸一

    ○大野幸一君 相談を受けるときには増田さんの名前も吉田さんの名前も出ておるということは知つていますか。
  109. 岡崎格

    証人岡崎格君) 知つています。
  110. 大野幸一

    ○大野幸一君 調書は見なかつたけれどもすでに記録が、そういつた吉田さんの名前も、或いは増田さんの名前もあつたということは分つておりますか。
  111. 岡崎格

    証人岡崎格君) 分つております。
  112. 大野幸一

    ○大野幸一君 それを上司に報告されてありますね。
  113. 岡崎格

    証人岡崎格君) 報告してあります。
  114. 大野幸一

    ○大野幸一君 上司は何と言いましたか。別に愼重にやれということもなかつたでしようか、どうですか。
  115. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは調べるだけは十分に調べなければならない。すべて私の方でもそのつもりで捜査は徹底的にやる、併し法律的に駄目なものは仕方がない、こういうことです。
  116. 大野幸一

    ○大野幸一君 国民の疑惑を解くためですがね、普通の場合は只今委員長の言われた通り、職務関係において、友人関係であつて、そうしてその仕事の関係があつて、その友人関係たる友達に金を送つた場合に、今まで東京検察庁のやり方が、後に公判になつて無罪になることはあるかも分らない、併しながら不起訴になつた例は少いでしよう。
  117. 岡崎格

    証人岡崎格君) それはあります。
  118. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは少いでしよう。
  119. 岡崎格

    証人岡崎格君) 額が‥‥。
  120. 大野幸一

    ○大野幸一君 いや、例えば例が少いでしよう。私は友人関係でこういうふうに生活費を貰いました、家がないから家を建てて貰いました、といつた弁解をする場合はあるでしよう。
  121. 岡崎格

    証人岡崎格君) あります。
  122. 大野幸一

    ○大野幸一君 ところがあなた方はいつも検察庁としては一応犯罪の嫌疑ありとして起訴されておるのが通例じやありませんか。
  123. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  124. 大野幸一

    ○大野幸一君 そこで吉田さんの名前が出て来たり、増田さんの名前が出て来たり、自由党の名前が出て来るから、これは愼重にやらなければならん、調べるだけは調べなければならんが、愼重にやらなければならんというような結論になるんじやありませんか。
  125. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、そうではありませんで、それは誰が出て来ましようとも、調べ調べとしてやつて行く。真相がどこにあるかということを確かめてやつたのです。
  126. 大野幸一

    ○大野幸一君 未だに起訴起訴決定していないのですね、その岡田に対しては。
  127. 岡崎格

    証人岡崎格君) まだ決定しておりません。
  128. 大野幸一

    ○大野幸一君 或いは岡田贈賄に対しても、起訴、不起訴決定してないのですね。
  129. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ。
  130. 大野幸一

    ○大野幸一君 岡田はその後調べましたか。
  131. 岡崎格

    証人岡崎格君) まだ調べておりません。
  132. 大野幸一

    ○大野幸一君 相当長い時間あつたのに、どうして調べないのですか。
  133. 岡崎格

    証人岡崎格君) これはその当時相当新聞にも大きく出ましたし、却つて刺戟する虞れもありましたので、適当な時期に調べるということで来ております。
  134. 大野幸一

    ○大野幸一君 東京検察庁では、これを国民の前に明らかにするために徹底的に調べる用意はありますね。
  135. 岡崎格

    証人岡崎格君) あります。
  136. 大野幸一

    ○大野幸一君 今のあなたの御説明になつたのは、調書に基いて御説明になつたのですね。その外に捜査のために言えない部分がありますか。
  137. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  138. 大野幸一

    ○大野幸一君 ありますか。
  139. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  140. 大野幸一

    ○大野幸一君 法務庁の方から本件を委員会に記録を提出することにして、捜査上どうかということに対して、照会がありましたか。
  141. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありました。
  142. 大野幸一

    ○大野幸一君 そのときにあなたはどうお答えになりましたか。いや、検察庁としては、どうお答えになりましたか。
  143. 岡崎格

    証人岡崎格君) 検察庁としましては今公判にかかつておる事件でもあるし、尚捜査が未了の分もある。従つて記録をそつくりそのまま出されるということは困る。先程私の申上げましたように概括的なことならば差支ないから、できれば主任検察官を証人として喚問して頂きたい。こういう御回答をしております。
  144. 大野幸一

    ○大野幸一君 それではこの調書が適当な時期に、適当な期限を切つて法務委員会が取寄せを請求しましたら、公判と雖も毎日あるわけじやありませんし、記録謄写のためにあなた方も謄写の余裕を與えてある、その余裕時間に相当する時間があつたならば、当委員会に対して提出するということは何ら差支ないと思いますか、あなたは。
  145. 岡崎格

    証人岡崎格君) 今公判がすでに近く開かれることになつておりますので、これは新刑訴なつてから一件記録が裁判所に行かないものですから、内容を法定で明らかにした後ならば別に差支ないと思いますけれども、それ以前は御勘弁願いたいと思います。
  146. 大野幸一

    ○大野幸一君 いや、あなた方は法律がまだ分つていないと私は思うのですが、国会から、又は委員会から書類の提出を求められた場合には……。
  147. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点は分つております。
  148. 大野幸一

    ○大野幸一君 これは国家の利益に重大なる影響を及ぼす場合に限るのですが、国家の利益に重大なる惡影響を及ぼすとは考えられないのです。我々はそれを公判進行中なりという理由、或いは捜査という理由は……。今拒否されておる理由が分らないのです。
  149. 岡崎格

    証人岡崎格君) いえ、それはこの法律に基いて拒否しておるのではないのでありまして、まあ御勘弁願いたいということでお願いしておるわけです。
  150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大野さんに御注意申上げますが、証人と議論なさらず、それは委員会として適当に処理いたしますから……。
  151. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから伊藤鑛壽の聽取書があるということはいつお分りになつたのでしよう。
  152. 岡崎格

    証人岡崎格君) これはこの前、証人で明らかになりました。警視庁関係で。
  153. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから以後検察庁が取寄せられたわけですね。
  154. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  155. 大野幸一

    ○大野幸一君 それもこの委員会から取寄せようとしておるところを、あなた方がさつと持つてつてしまつたような感じがするのだが、そんなことじやないですか。
  156. 岡崎格

    証人岡崎格君) いやそうじやありません。
  157. 岡部常

    ○岡部常君 ちよつと関連して……。大野委員が御質問なさいました佐藤昇から金が福田氏に渡つた時期でございますね。時期はいつでございますか。
  158. 岡崎格

    証人岡崎格君) 二十三年の春項と述べております。
  159. 岡部常

    ○岡部常君 そうすると大野委員福田代議士と言われたんですが、代議士ではない、まだ代議士になられる前のことでございますな。
  160. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ、そうです。
  161. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 先ず第一にお尋ねいたして置きたいと思うのは、検事としてお調べのときに、警視庁の中には相当の派閥があつて、逆捜査とか何とか言い伝えられておりますが、お調べの上でそういうような臭いというか、点が見受けられたことがありますかどうか。
  162. 岡崎格

    証人岡崎格君) 調べの上では別段私らの方では、その点は佐藤自身につきましては必要もないことでございますから調べておりません。
  163. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから、次は五井産業事件大疑獄に発展かというような、まあ同一見出しで、本月の四日の夕刊と五日の朝刊に、非常に詳細に発表されておるんでありますが、その発表されておりまする事実、その人の名前、員数、それから調書内容等と、証人只今ここでお述べになつて来たのとは、全く同一なことが書いてありますが、事苟くも捜査の段階であろうと思つておりますが、この発表は証人がやられたものでしようかどうでしようか。
  164. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは私も意外に考えております。実はこの委員会でいろいろお喚びになつて明らかにされるものと考えておりましたところが、あの夕刊に出ておりまして、むしろ私の方は司法記者クラブの方から、こういう事実が外の方面から分つて来たけれども、検察庁でこれは正しいものかどうか言えといつて、随分責められたくらいで、私共としましては、非常に意外に感じております。
  165. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると、今日ですね、証人に出て貰います前に、委員長から証人に訊問事項の内容は、細かく書類で書いて寄越しておりますか。
  166. 岡崎格

    証人岡崎格君) いえ、これは概略のお話は聞きましたけれども、書面では頂いておりません。
  167. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 概略の話というと、誰から誰にしたものでありますか。委員長があなたにせられたものですか、文書でなしにですね。そのことをお尋ねする趣旨はですね、先程委員長さんが書拔いておられまする書類によつて、ずつと各人名を挙げてその訊問の内容を、事細かに非常な早口に言われて、我々の記憶にないようなことを言われておりますが、それに対してあなたは一々細かく答えておられまするから、そういうような細かい訊問事項が予めあなたにどういう形で伝えられておるものかどうかという点をお尋ねしたい。
  168. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは代理の方から口頭で概略のことをお聞きしておるのです。
  169. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 遠山さんにちよつと申上げて置きますが、これは訊問の時間の節約と便宜のために、予めこれとこれとの関係、これとこれとの関係をお尋ねするから、調書のメモをとつて頂きたいということを御注意申上げたのです。そうしないというと調書のどこかそこら中からお探し願うことも大変ですし、御記憶としても人事に及ばざるところであり、予めお分り願うために訊問の大体の概略だけを最上げて置いてあります。
  170. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうすると、代理の方から要点だけをあなたにお知られ願つて本日用意しておいでになつた、こういうわけですね。
  171. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  172. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 今これは大野委員からのお尋ねで明らかになつたことでありますが、この犯罪事実関係については、もうあと申上げることはないとこういうようなことを言われた、隠して置くようなことはもうないのだ、こういうような趣旨のことを仰せになりましたが、間違いないですね。
  173. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  174. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そういたしますとお尋ねするのでありますが、横領事件涜職事件と二つの形になつておりますが、横領事件は一、二公判に対しておる。
  175. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 詐欺事件…‥。
  176. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 詐欺事件では一、二公判に付しておる、こう言われたのでありますが、そうすると一、二というのでなしに、幾つ犯罪事実が過去…‥御記憶にあれば述べて頂きたい。
  177. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは第一回の起訴が二つ…‥いえ、三つ…‥。
  178. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 起訴は前後で三つやられたわけですね。
  179. 岡崎格

    証人岡崎格君) 追起訴はあと一回で犯罪事実としましては五つの…‥。
  180. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 全部で五つでしたか。
  181. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  182. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それは全部詐欺事件ばかりですか。
  183. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  184. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 その五つの詐欺事件は、金額は如何程に上つておりますか。新聞では数千万円とか非常に大きいことが書いてありますが、その通りでありますか、どうですか。
  185. 岡崎格

    証人岡崎格君) 二千五百万円ぐらいに上つております。
  186. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 これが詐欺事件でありますね。
  187. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうであります。
  188. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 これは五つの犯罪事実の合算金額ですか。
  189. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうであります。
  190. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そういたしますと、涜職事件はまだ起訴しておられんようでありますが、差支なければお答え願いたいのでありますが、これはお調べの今までの模様では、起訴せられるよう事案がありますか。あるといたしますと幾つぐらいありますか。
  191. 岡崎格

    証人岡崎格君) 今私共の方で涜職関係として問題になる点は岡田秀男関係だけと考えております。これは涜職事件としてでございます。
  192. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それだけ…‥。
  193. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  194. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから次は、前に出られました証人で、はつきりしたようなせんような点もありましたから明らかにしたいと思うのでありますが、詐欺事件という事件は一体いつからいつまでの間に行われた詐欺事件ですか。
  195. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは昭和二十三年の十月頃から二十四年の夏頃までに行われたのであります。
  196. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 それから涜職関係事件はいつからいつまでの間に行われたと見ておられますか。
  197. 岡崎格

    証人岡崎格君) 涜職関係と申しますと……。
  198. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 犯罪事実になつておるのは今言われた通り極く少いようでありますけれども、そういう関係ありという疑いで調書をとられたり何かなさつたと思いますが、それは一体、金のばら撒かれたのはいつからいつ頃までに行われたのでありますか。
  199. 岡崎格

    証人岡崎格君) 昭和二十一年頃から二十四年の暮頃までに及んでおります。
  200. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 二十一年のいつ頃から……。
  201. 岡崎格

    証人岡崎格君) 春頃でございます。
  202. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 春頃から……。
  203. 岡崎格

    証人岡崎格君) 二十四年の暮まででございます。
  204. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そうしますと、お調べ内容は分つておると思いますが、詐欺した金で、その金を以てばら撒いたと見られますかどうか。
  205. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは詐欺の金というのは相当大きな金でありますし、その金かどうかは、これは分りません。この詐欺の金につきましては帳簿上その收支をはつきりしておりますが、その金を遣つた関係の方は額が非常に小さいものですから、この金かどうかは分りません。
  206. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 最後に一点だけ。これからの見通しで、ここに沢山新聞に発表したことは非常に数も多く回数も多く、金銭の授受が行われておりますが、この起訴以外で近く起訴せられるというようなのがございますかどうか。大体これで打切りになつておるものかどうか。それともまだ続いて起訴せねばならんような状況にあると思われるものがありますか。あるといたしますれば、只今あなたが証言された中でどれとどれとが将来起訴になる虞れがあるとお考えでありますか。お差支なければ……。
  207. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは起訴起訴の別は別といたしまして、佐藤自身の被疑事実として今後尚捜査として残つておりますのは、この岡田秀男関係の部分だと思います。ただそれ以外の事実につきましては佐藤自身の問題としてではなく、問題になる部分が多少あるようでございます。
  208. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 ちよつと今、証人には結構でありますが、証人証言で明らかになつた点は、この新聞に四日五日と掲載せられましたる事実、これの発表は証人は全然知らざるところで意外に思うと言つておられますが、この点について、委員長の代理……、委員長ちよつとお尋ねするのでありますが、委員長の代理で、煩雑を避けるがために予め打合せというような形で証人に代理の人が会われておるようでありますが、そうすると訊問される順序、人の名前、内容、こういうものは委員長はよく知つておられる筈でありますが、証人新聞に発表したのでないといたしますと、疑惑を持つのでありますが、まだ証人も何も呼ばないうちにこういうように新聞にでかでかと出ておる、委員長は掲載されたということがありますか。
  209. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありません。
  210. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そういうことはございませんか。
  211. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありません。
  212. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 そういうことの掲載を命じたということはなくても、されるような何か臭いというようなことを感じられたことはありませんか。
  213. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ありませんです。
  214. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 ございませんか。結構です。
  215. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 多額の金を方々に寄付され又は贈與されておりますけれども、当時の五井産業の資本金と個人資産はどのくらいあつたのですか。
  216. 岡崎格

    証人岡崎格君) 資本金は二十万円前後ではなかつたかと思います。記録を見ませんとちよつと今記憶はありませんですが……。
  217. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それでは個人資産はどのくらいです。
  218. 岡崎格

    証人岡崎格君) 個人資産としましては、結局まあ、こう金を廻しておつたわけですから、その点メモを詳細持つて参りませんでしたからはつきり申上げられません。
  219. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうしますと、今の証人証言によりますると、詐欺事件は二十三年の十月から二十四年の夏頃にかけて行われた。こういうのでありますが、今資本金二十万円の五井産業が、その詐欺事件前において、巨額の金をばら撒くというのは、一体どこからどういうふうに持つて来たというふうにその当時お調べなかつたのですか。
  220. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは詐欺事件のこの使途としまして、帳簿上調べてございます。
  221. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうしますと、今証人が言われたように、二十三年十月以前の二十三年の春頃に寄付した、或いは贈與したというその金が沢山あるのですが、その金は調べた結果どこから持つて来た金だつたのです。
  222. 岡崎格

    証人岡崎格君) これはまあ利益金、個人のその財産と思います。
  223. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そういうふうにお解しになつたのですか。
  224. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  225. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それで先程増田甲子代議士に援助して呉れと言つて六十万円を渡した、どこでいつ頃、どういう……、現金でございましたか、小切手でございましたか、それをお聞きしたい。
  226. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは先程申しましたように、三回に、岡崎丹羽に渡しております。この佐藤事務所で渡しております。現金で渡しております。
  227. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それからその後において、岡崎丹羽に連れられて、増田事務所を訪問し、且つ国会で一回あつた、その際に増田がお礼を言つた、こういうのでありますが、何故お礼を言つたのか、その内容についてお聞きなさいませんでしたか。
  228. 岡崎格

    証人岡崎格君) この点については分りません。
  229. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 お聞きしなかつたのですか。何故お礼を言つたのか……。
  230. 岡崎格

    証人岡崎格君) まあ佐藤自身としてもその金のお礼かどうかはつきりしないと申しております。
  231. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 金を貰つたけれども、金のお礼かどうか分らん、こういうのでございますか。
  232. 岡崎格

    証人岡崎格君) 金をやつたかどうかですね。やるときには、この増田氏に援助して呉れというので渡しておるんですが、それが行つたかどうかは佐藤自身には分らない、こういうわけです。
  233. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それから昭電事件頃に、丸の内の岡崎丹羽の共同事務所に毎日のように昭電事件捜査が始まつてから会合があつた。こういうことでありましたが、その当時増田氏がこの丸の内の事務所出入をしたということを聞いておりませんでしたか。
  234. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは佐藤からでなくて、伊藤の供述の中に、昭電事件を起つてから増田が行つておるということはありません。その前にときたまこの会合されておつたときに一回ぐらい出たこともあつたということをお聞きしております。
  235. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それから昭電事件が起きてから、その前は火曜とか、土曜とかに会合しておつたのですが、昭電事件捜査にかかつてから毎日のように会合したということは何らか昭電捜査に関して関係がなくても、ともかく何らかそれに影響すべき何ものかにおいて会合したというようなことじやなかつたのですか。
  236. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは想像になりますから……。
  237. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それは別にお聞きしなかつたですか。
  238. 岡崎格

    証人岡崎格君) 伊藤自身としましても、これは自分の想像を言つておるに過ぎないのです。
  239. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 ああそうですか。それからもう一つ吉武関係でありますが、吉武氏に一万円贈つた、それは罐詰の代金として一万円贈つたというのでありますが、罐詰の代金というのは幾らだつたのですか。
  240. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは僅かなものらしいんです。
  241. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 お聞きしなかつたのですか。
  242. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  243. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 証人に伺いたいのですが、伺いたいことは五つ、六つありますが、第一に伺いたいのは、これは念のためなんですが、証人の履歴の大体をお差支なければ伺いたいと思います。
  244. 岡崎格

    証人岡崎格君) 昭和八年に京都大学を卒業しまして、司法官試補になりまして、昭和九年の末に検事に任官しまして宇都宮の地方検事局におりました。十二年に五月東京に参りました。昭和十七年九月に司法事務官になりました。二十年の四月の末に当時の満洲国司法部の理事官に転勤しました。それから昭和二十二年の九月に帰国しまして東京高等検察庁に勤務し、二十三年の一月地方検察庁に勤務しました。
  245. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 続けて、その間に昭和十九年に司法省刑事局思想課にお勤めになつたことはありますか。
  246. 岡崎格

    証人岡崎格君) あります。
  247. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それはいつからいつまでですか。
  248. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは満洲国へ参るまででございます。
  249. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 昭和十九年のいつ頃からですか。
  250. 岡崎格

    証人岡崎格君) 十九年の一月。
  251. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一月に正式にはどういう……、思想検事というのですか。
  252. 岡崎格

    証人岡崎格君) 司法事務官。
  253. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それで思想関係をおやりになつたわけですか。
  254. 岡崎格

    証人岡崎格君) 思想関係と申しますと……。
  255. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 元の思想検事ですね。特高……。
  256. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは検事の仕事は、いろいろ調査をするというようなことだけで、現実の検事の仕事は司法事務官はやらなかつたのです。
  257. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 主におやりになつたのは思想関係ですか。
  258. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは司法事務官になつてからでございますが、昭和十九年の所属はそうでありましたが、秘書課にも、それから総務課にも兼務をいたしておりました。
  259. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからあなたは鍋山貞親という人を知りませんか。
  260. 岡崎格

    証人岡崎格君) 知りません。
  261. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 第二に伺いたいのは、この佐藤昇という方を逮捕せられたときに、それば昨年の十二月七日に逮捕状が出て、そうして十四日に逮捕せられておるということについての先程の証人証言によりますと、吉村商店に関する三十数万円の詐欺容疑というものがあるが、その外に北海道宮城方面にも詐欺容疑がある。そうしてそれが起訴になるかどうか分らないから、十分の捜査をした方がいいだろうということになつたので、その間に時間のズレができた。それからその十三日に逮捕の筈だつたけれども、その晩に弟さんのお通夜があつたために翌日の十四日になつたと言われるのですが、検察当局はいつもそういうような方針なんでしようか。そういうような方針と言いますのは、この佐藤昇という方についての容疑は相当濃厚ではなかつたかと思うのです。これまでにその容疑が相当濃厚な人であり、而もその容疑詐欺事件と、いま一つの揉消しというような点についても容疑があつたのじやないか。そういう詐欺容疑が非常に濃い、且つ又揉消しということも相当やられるというような人に対して、このような七日に逮捕状が出たのを十三日まで延ばし、十三日は又お通夜であるから十四日にするということが、検察、或いは警察の方針として妥当なりとお考えですか。
  262. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、これは逮捕して調べること自体は、これは三十数万円の事実でありますから、一応その必要があると認められたけれども、それじやこの事実で確実に起訴ができるかという点になりますと、特に取引関係の中にある一つの詐欺となりますから、十分調べが困難なわけなんです。そこで他に何かもつとしつかりした事実が、余罪があれば、そちらの方と一緒に逮捕期間内に傍証を固めて、この勾留期間内に調べをして起訴できる、こういうことになりますから、愼重を期してそこまで行つたわけなんです。逮捕はして見たが、結局何にも出なかつた、これじや非常に工合が悪い、こういうことなんであります。
  263. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その点がどうも御証言の趣旨がよく分らないのですが、逮捕して見たら何も出なかつたという種類の人ではないように我々は判断するのですが、相当に濃厚な容疑があつて、それで警視庁部内においても、この人が揉消しを盛んにやつておる。従つてこの詐欺を除かなければ、今後事件捜査ができないというような証言が、別の機会においてこの委員会になされておる。警視庁部内においても、この人に関してそれ程重大な容疑があるのに。あなた方は逮捕して見ても、何も出ないかも知れないというように判断されたのでか。
  264. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、その何にも出ないというのは、これは極端ですけれども、要するに三十数万円の詐欺容疑がある。これが単なる債務不履行であるというようなことになつ起訴できない。或いはその外にいろいろ疑わしい点はあるけれども、結局本人も言わないし、それから傍証としても出ないということになれば、これは勾留はしても釈放せざるを得ないことになりますので、少くとも確実に起訴できる事実を掴えてやつた方がいいのじやないかということも考えられるわけなんです。特にこれは警視庁の方からもそういう申出があつたものですから、それはその方が確実であろうということで、そうなつたのであります。
  265. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その次に伺いたいのは、佐藤昇という方を釈放されます当時、岡田秀男という方、その外相当重大な問題の疑いがありますが、それらに関する、さつきも御証言の中に、強いて勾留して置かなくても在宅で調べればいいということですが、在宅でお調べになつたのですか、その後。
  266. 岡崎格

    証人岡崎格君) その後調べております、係の検事が。
  267. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 何回ぐらいお調べになつたのですか。
  268. 岡崎格

    証人岡崎格君) 確か三回、詐欺の事実も入れますと、五回ぐらい調べております。
  269. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その後これらの問題について輿論なり、一般国民が非常に疑惑を抱いているということは御承知ですね。
  270. 岡崎格

    証人岡崎格君) それはまあ新聞でそういう非常に疑惑を抱かれているように思うのです。
  271. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 その新聞、仮に新聞紙がそういう疑惑を述べておるとして、それらの疑惑を明らかにするために、詐欺事件及び涜職事件についての捜査については、特別に努力しておられるのですか。
  272. 岡崎格

    証人岡崎格君) それを明らかにするためにですか、ですから私はこの証言において、先程来申上げましたような事実を申上げまして、その疑惑を一掃することにして頂きたいと思つております。
  273. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ああそうですか。それではその点について伺いたいのですが、第一に佐藤昇という方が、詐欺事件などについて疑いを受けている問題の人物が、警視庁にしばしば出入せられて、そうして警視庁の内部の方と非常に密接な関係を持つておられるというような事実があるのですか。
  274. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは本人も以前は日野氏のところ等には情報関係でときどき出入をしておつた、こういうことを申しております。
  275. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういう事実が好ましいとお考えになるのか、或いは好ましくないとお考えになるならば、そういうことについて警察当局は別に捜査をせられる必要はお感じにならないのでしようか。
  276. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点につきましては粛正すべき点は十分粛正しなければならん。併し不道徳なことが必ずしも犯罪に直ぐなるというわけではありません。例えば取調べの間に、日野昇関係について相談を再々受けました。これも涜職関係としまして、非常にこの職務関係がむずかしいものですから、上司と相談の上これは贈収賄事件としてはむずかしい、だからむしろ警視庁の方で監察の問題として、行政監察の方に付せしめるようにということを、こちらから警視庁の方に連絡いたしてあります。
  277. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからそれと関連しまして、いわゆる追放されておる方々が、警視庁の方々とも、又重要な政治家達とも会見したり、連絡したりしておられるという事実があるのですか。
  278. 岡崎格

    証人岡崎格君) この点は特別審査局の方に、私の方から連絡を取つて調査して貰つております。
  279. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それから最後に現在の日本の政府の最高責任者である総理大臣、或いはそれを助けている官房長官という方々について、苟くも疑いをかけられているとこうことについて、検察当局としては、それらの問題が事実そういう疑惑に値いするものであるのかないのかを、お調べになる必要をお感じにならないのですか。
  280. 岡崎格

    証人岡崎格君) 只今申上げましたように、金をやつた関係につきましては、この荻外荘関係は金は行つているわけなんですけれども、そういう関係で犯罪捜査として、そこから先まで検察庁調ベるということはどうかと思うのです。
  281. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは検察庁としては、総理大臣や官房長官に関する疑いについては、十分取調べるという容疑がないというお考えなんですか。
  282. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうじやありません。これは増田氏は今官房長官になつたんでありますけれども、この岡崎丹羽関係において、特別審査局の方で調査しておりますから、いずれこちらに、検察庁に告発されるだろうと思うのですが、その上で検察庁として調べるべきものは調べなければならんと考えております。
  283. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 併しその上でするというふうにおつしやいますが、少くとも一つの国の総理大臣とか、或いは官房長官という方々が、詐欺事件なり、或いは涜職事件の疑いがあるような人物から、その金が詐欺した金であるか、そうでないというようなこととは無関係に、そういう可なり問題のある人物から金を受取つておるという疑いがあるということは、一日たりと雖も、国内、国民に向つても、国際、世界に向つても大問題だと思うのです。例えばこれはアメリカのトルーマンだとか、アチソンだとかいう人が、怪しげ金を受取つたというような噂だけでも我々は聞いたことがない。若しそういうことがあれば、アメリカなり何なりが直ちにそういうことを解決されるだろうと思うのですね。事実がないならばない。疑いがないということを明らかにしなければ、その責任者は辞職するということがあるのです。日本で現在その問題について、それを調べるベき人々が、今お話のような或る程度の時期を待つて、或いはそのどこまで、その金が届いたかは立入ることはできないというような状態で、現在可なり永い間放置されておりますが、そういう問題については、検察当局は一刻も早く調べて国民の疑惑を晴らすなり、或いはその責任を負うべき人に責任を負つて貰つて、なすべきではないかというふうにお考えらならないのですか。
  284. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは犯罪の嫌疑としての捜査ならば、これはできるだけ徹底的にやらなければ、速かにやらなければならんと思いますけれども、この吉田関係につきましては、犯罪の嫌疑として非常にこれはもう嫌疑をかけるのがおかしいように思われるのです。でそういう関係だけで、これは犯罪の嫌疑ということで、そこまで行くべき問題かどうかということは、検察庁としても問題だろうと思うのです。
  285. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この若し仮に渡された金が、荻外荘の建築費に使われておるというようなお話でしたが、そういうことは政治資金として登録されなければならないのではないですか。
  286. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは二十三年の春頃のことありますから、政治資金規正法はまだ施行になつておりません。
  287. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうするとこの重要な、国民の疑惑の的となつていても、それに対していわゆる犯罪としての容疑が成立するかしないかということが明らかでない限りは、検察当局としては動かないということですか。
  288. 岡崎格

    証人岡崎格君) その犯罪の嫌疑があり限り捜査を進めて行きますけれども、犯罪の嫌疑がない限りは、検察庁として捜査をすべきでないと考えております。
  289. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今伺つたような点ですね、これは皆関連していのですが、つまり佐藤昇という方を逮捕せられる当時の検察庁の態度ですね、それからいわゆる釈放後に捜査を続けられているかいないかについての態度、それから又そういう問題がある人物が警視庁の内部において活動しているということについての態度、それからこの追放者と重要な政治家が関連を持つているのじやないかという問題についての態度、それから最後に国民に非常な犠牲を強いている国の政府の代表者が、疑惑を受けているという問題に対する態度、これらを一貫すると、何か検察当局はこういうような政治上、或いはいろいろな複雑な関係のある問題については、犯罪の容疑が動かせないようにならないとはつきりした態度が取れないのじやないかという感じがございますが、その点はどうでしよう。
  290. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは一般的に申しまして、やはり犯罪の捜査として、逮捕し、或いは捜査をするという場合には、その相手方、或いは事件内容と、世間の耳目を聳動するというようなものにつきましては、相当傍証があり、而も犯罪の嫌疑が濃厚である、こういうことなります。そこまで愼重に考えませんと、徒らにこれはこの捜査に名を籍りていろいろ社会の問題を起すようなことにもなる、こういうふうに考えまして、これは涜職事件の限らず、社会の非常に注目するような事件につきましては相当愼重に内偵をし、傍証を固めて、一部でも起訴ができるという確証を掴んでやつておるわけであります。
  291. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 一般のいわゆる市民というか、国民というか、別に政治上重要な地位にいる人でもない。又別に警視庁にそう出入しているような人でもないというような人に対しても、同じように愼重にやつておられますか。
  292. 岡崎格

    証人岡崎格君) この点も新刑事訴訟法の下では、一片の噂、容疑というだけでは、これはやつておりません。
  293. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 どうも有難うございました。
  294. 小林英三

    ○小林英三君 証人にお伺いいたしますが、先程この遠山委員の質問に対しまして証人がお答えになつた中に、この涜職詐欺事件の問題は大体五件ある。それは金額においては約二千五百万円くらいである。それからその詐欺事件のあつたの昭和二十三年の十月頃から二十四年の夏頃までであつた。それから涜職事件と申しますが、いわゆる金のばら撒かれたという問題に対しては、これは二十一年頃から二十四年の暮頃までであつたということであつたのであります。それから尚証人の御答弁の中に、まあ強いて言えば涜職として問題になる、起訴されるようなのは、現在としては岡田秀男だけでもあつて、この外は起訴される虞れのあるものはどうかという問題に対して、佐藤自身の問題だと思う、強いてあれば佐藤自身の問題だと思う、こういう御答弁があつたのでありますが……。
  295. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点は最後のところはちよつと違います。佐藤自身につきましては起訴、不起訴は別として岡田秀男に対する贈賄関係だけが涜職の捜査としては残ると思われるのです。
  296. 小林英三

    ○小林英三君 尚お尋ねしますが、私は今羽仁委員の御質問にありました中で、苟くも五井産業事件につきましては一国の総理大臣に名前も出ておる、現在の官房長官の名前も出ておる、こういう問題は速やかに国民の疑惑を解くたけに明らかにすべきであるということには同感でありますが、それと同時に私は現在の五産業業事件というものどこから漏れるか知りませんが、とにかく各新聞全般はでかでかと我々の知ない間に出ておる。これはどこから漏らされたか知れません。併し今日証人の御答弁を先程から聞いておりますと、私は証人の、この取調に対して重大な地位にあられる証人のこの答弁というものは、これによつて国民が相当疑惑を晴らして呉れると思う。例えば吉田総理の問題につきましては、これはその当時代議士ではなかつたのでありますが、福田という人がたまたま佐藤昇君と非常に知己であつた。そうしてその当時自由党は野党時代であつて荻外荘事務所費用として佐藤氏の懇意のなかから貰つた、これがたたまたまでかでかと五井産業事件として天下に発表されました。国民は恰かも現内閣の総理大臣がこれに関係したかのごとき疑惑を持出し、これは今証人の御答弁によりまして、この問題については吉田総理が貰つておるか貰つていないか知りませんが、とにかくその当時佐藤に対する一つの献金、むしろ個人の福田君が貰つた献金として犯罪の嫌疑をかけることがおかしい、こういう証人の御答弁がありました。それから尚増田、現在の官房長官でありますが、その当時に遡つては官房長官ではなかつた、一代議士であつた、その代議士が誰か……佐藤君と非常に懇意な渡邊さんでありますか、渡邊さんのお言付けによつて増田さんに献金して貰いたいというようなことから、佐藤君が献金したかしないかこれは分りませんが、本人が受取つておるか受取らないかこれは分りませんが、とにかく仮に増田が受取つてもそれは増田への献金であります。又増田が受取つていなければ尚更渡邊さん自身の受取つたものでありまして、こういう問題に対しても政治資金規正法の適用のない当時におきましては、何らこれに嫌疑をかけるのはおかしい、従つて今後これを今日捜査するのはおかしいという証人の御答弁であつたと思いますが、そう考えてよろしうございますか。
  297. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ。
  298. 小林英三

    ○小林英三君 それでよく分りました。
  299. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程の点でありますが、涜職で逮捕してそれを釈放するときに、釈放するかしないかということの協議に與かつた検察当局は誰と誰ですか。例えば検事正とか検事長とか検事総長とか、どれだけの範囲がこれに加わりましたか。
  300. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは検事正と次席検事と、それから検事長、次長検事には事後報告をいたしております。
  301. 大野幸一

    ○大野幸一君 そのときに吉田さん及び増田さんの名前もあるということは……。
  302. 岡崎格

    証人岡崎格君) これはずつと以前に連絡いたしております。
  303. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今小林委員から証人に対して質問があつたのですが、それに対する証人のお答えは、さつきと若干外れておるよう思うのですが、さつき証言されたときには、涜職なり或いは政治資金規正法なりというものには直接がからない、併しながら特審局なり何なりの捜査、又今後の必要に応じて検察当局も動かなければならないという場合があるかも知れないという御答弁があつたように思いますが。
  304. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは特審局で若し事件を告発して来れば、それに必要な範囲内において、例えば増田氏などは最も直接の証人関係になるだろうと思うのであります。
  305. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それからちよつと続けてお尋ねしたいのですが、この事件が起つてから証人増田官房長官に会われたことがありますか。
  306. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  307. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それでは現在の政府の閣僚のどなたかとお会いになつたことがありますか。
  308. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは法務総裁には外の要件で会つたことは一度あります。
  309. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 この要件については……。
  310. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  311. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 自由党の方々とこの問題についてはお会いになつたことはありますか。
  312. 岡崎格

    証人岡崎格君) 全然知つた方がありませんから……。
  313. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 有難うございました。
  314. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 自由党の事務所建築費とか修理費ですが、三十万円やつた、それと福田に連れられて大磯吉田家に佐藤が行つたというのは、やつた方が先ですか、行つた方が先です。
  315. 岡崎格

    証人岡崎格君) 行つた方が先のように聞いております。
  316. 松井道夫

    ○松井道夫君 二、三点お尋ねしますが、先程、今の逮捕を延ばしたことについては警視庁の方から申出があつたちよつと言われたようでしたね。その通りですか。
  317. 岡崎格

    証人岡崎格君) 警視庁の方から次席検事の方に申入があつたのであります。
  318. 松井道夫

    ○松井道夫君 警視庁の方から……。
  319. 岡崎格

    証人岡崎格君) 延ばすということでなくて、逮捕状貰つて、それからその直後に坂本刑事部長から馬場次席検事の方に逮捕状が出たが、起訴は必ずできるかということを聞かれたので、馬場次席検事としては、起訴が確実かどうかということは今は答えられない、こういう答えであつたのであります。
  320. 松井道夫

    ○松井道夫君 それでその次にお尋ねしますが、そうするとあなたの方の特捜の方では、本件の捜査を犯罪としての関係詐欺の方はもうすでに捜査としては打切つておられるのですか。起訴の方は打切つておられるのですか。
  321. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  322. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから今の金の関係ですね。この方もあなたの関係としてはもう捜査は打切つておられますね。そうすると今全然されておられないわけですか。
  323. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、岡田関係につきましてはまだこれは未済になつております。
  324. 松井道夫

    ○松井道夫君 後は全部捜査はしておられないわけですね。
  325. 岡崎格

    証人岡崎格君) 現在のところではやつておりません。
  326. 松井道夫

    ○松井道夫君 それで先程ちよつと言われたのですが、岡田関係以外は道徳的の罪悪で、今の刑法上の罪悪とは言えないという趣旨の言葉があつたように思うのですが、そうでなくて、このうちには刑法上涜職その他の刑罪に触れるものをいわゆる起訴猶予ですね、あれに当るものもあるのじやないですか。
  327. 岡崎格

    証人岡崎格君) 現在までのところでは起訴猶予にすべき事案もないと思つております。岡田関係以外にはですね。
  328. 松井道夫

    ○松井道夫君 責任を持つて言つて頂かなければ困りますよ。大問題です。そういうことで果して警視庁の綱紀というものを守ることができるかどうか、或いは一般官庁の綱紀というものを守ることができるかどうかという大問題ですから、そう簡単に言つて頂くと困ります。これは、この新聞に出たのは大体において調書にあることだというのでしよう。
  329. 岡崎格

    証人岡崎格君) 少し作つたり何かしておりますが、今日申上げたことと一致する点は大分あると思います。
  330. 松井道夫

    ○松井道夫君 それではお尋ねしますが、ここに消防総監関係というのがありますね。ここにこういう項があるのです。二十四年四月から五月の間に五万円を機密費として贈與、佐藤昇氏の自動車を九十万円で消防庁に売り代金を受取つた塩谷総監の申出により贈つた。こういつたようなものがすべて道徳的の犯罪……。
  331. 岡崎格

    証人岡崎格君) その事実は先程申上げましたように、検察庁調べではその部分は記憶違いであるということを申しております。でそれは他人に貸しておるんだ、それをお貸して、誤まつてそれは述べておつたんだと……。
  332. 松井道夫

    ○松井道夫君 誰か述べておつた……。
  333. 岡崎格

    証人岡崎格君) 佐藤がです。
  334. 松井道夫

    ○松井道夫君 それで五万円の機密費、その事実はどうなんですか。その事実はあるのですか。
  335. 岡崎格

    証人岡崎格君) ですから先程申しましたように、それはその自動車を売つて五万円をお礼にやろうとしたところが、丁度そこに自分友人の某新聞記者が来ておつて、そんな金があるなら俺に貸して呉れということで、それに貸したんで、後でよく考えて見たらそういう……。
  336. 松井道夫

    ○松井道夫君 だからそういう、後の供述が本当か、或いは前の供述が本当か、それは外の事情によつて、外の状況によつて決すべきことで、私は先程あなたがその関係で述べておられるときには、恐らくちよつと外に出ておつて聞いておらないのでありますが、とにかくここに金銭というようなその事実が新聞に載つておるわけですね。そうしいその事実が真なりや否やはこれは分らない、実際ですね。ですからここに掲げてあるすべての事実の中に起訴猶予に当るものがない、あなたが事実として、あなたの調べとしてこういうことになつておるという程度ならいいのですけれども、そうでなくして事実としてもう一つ涜職に当るものはないと、起訴猶予に当るものはないんだと断言されるならば相当大きな問題です。結局起訴に当るとすべきものはないと考えるということなら結構ですけれども、ここに何も、犯罪は何もないというふうに言われるのは、相当言い過ぎになるんじやないかと私は思うのですが、どうです。
  337. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは起訴猶予にするには尚疑問があるということです。ですから少くともこの岡田関係についてはこれは起訴猶予にすべきか、或いは嫌疑なしになるか、捜査に点が残つておるのですが、その外の点につきましては勾留期間中に職務関係その他についていろいろ調べをしました結果、これは起訴猶予にすべき事案でもないと、結局刑法犯としましては嫌疑のない事案であつたというふうに考えております。
  338. 松井道夫

    ○松井道夫君 それはそれで分りましたが、要するに検察庁調べの結果として、今の起訴猶予にすべきものも外にはないと思うというのですから、証拠不十分でそのために起訴猶予にもできないという関係のものは相当あるんじやないですか、この中に……。
  339. 岡崎格

    証人岡崎格君) ですからその点は非常にデリケートな問題だと思うのですが、証拠不十分か、はつきり罪とならず、と言い切り得るものか。ですからはつきりこんなものは罪にならずということは私としてはそこまで全部言い切るわけに参りません。
  340. 松井道夫

    ○松井道夫君 結構です。
  341. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 今松井委員からの御質問に対して証人がお答えになつたのは、本件全体についての御意見であると思うのですが、さつき例えば吉田さんについても、或いはその他の方々についても刑法上の犯罪というふうに考えるような証拠が今のところないというふうにお答えになつておりましたが、道徳上において好ましいことでないことは言うまでもないのであります。詐欺事件なり、何なり疑惑のある人物だから、その金を受取られたということが……。殊に国の大きな政党の責任者なり何なりとしては面白くない問題であることは言うまでもないわけであります。そういうような点については検事局としては別に道徳上それをお責めになるとこういうことはできないことだろうと思うのです。
  342. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  343. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そういうことについて何らの疑惑がないというのはテクニカルに、技術的に刑事上の疑惑をそれにかけるということまでには至つていないということであつて、青天白日である、道徳的にも非難の余地がないということではないと了解していいわけですね。
  344. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ。
  345. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 警察関係方面にも相当ばら撒かれておるのですが、例えば塩谷に五万円やつたとか、或いは吉武に一万円やつたとか、富坂にやつたとかいう事件が沢山あるのですが、この方はお調べは済んだんですか。
  346. 岡崎格

    証人岡崎格君) 済んでおります。その警察後援会寄付したものは成規の手続を踏んで寄付をしております。
  347. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 例えば吉武に一万円やつたというようなものでも一つの後援会寄付として認めておるのですか、それとも吉武個人に一万円というようになつておるのですか。
  348. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは吉武個人と考えておりません。
  349. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 警察にやつたと……。
  350. 岡崎格

    証人岡崎格君) その吉武部屋全体のものに寄付したとこういうふうに考えております。
  351. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 それはその処理の結果はどうなつておるのですか。起訴ですか、これは……。
  352. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは事件としてその事実を取上げて、特に起訴猶予とか嫌疑なしとかいう処分はいたしておりません。つまり立検をしておりません。
  353. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 ただ単に金の行先、行途がどうであつたとこういう内容調べただけであつて、刑法上の処理手続はしなかつたということなんですね。
  354. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、初めは一応涜職になりはしないかという嫌疑で調べたのですが、調べた結果がかような事情になりましたから、これは特に立検をしないままにしております。
  355. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 塩谷の五万円は塩谷が受取つておるのですか。
  356. 岡崎格

    証人岡崎格君) この点が先程来申上げますように警視庁で述べたことをまだ勾留期間中に検察庁の方で佐藤について調べましたときに、それは記憶違いであつたと、某新聞記者が丁度そのとき来合しておつて、そういう金があるならば俺に貸して呉れと言つて、そちらに貸したんだと……。この点はその関係者の方もはつきりしております。
  357. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 関係者の方もはつきりしておるというのは塩谷調べたという意味ですか。これは単に結局やつたんだかやらぬか分らぬ。これは記憶違いだとこう言つたところで、それは決して証言じやないのです。証拠じやない。結局塩谷調べれば直ぐ分るのだけれども、何故それは塩谷調べなかつたんです。その場合、勘違いだと言われてああそうかといつてつて置くのはおかしいと思うのです。それは塩谷調べるのが当然だと思うのですが、その場合何故塩谷調べないでおつたのです。
  358. 岡崎格

    証人岡崎格君) ただこの場合、その職務関係としまして何のために機密費としてそれをやるかがやはり多少問題の点も起るかと思いますし、それと、はつきりこの取調の進捗上これは記憶違いであつたと、殊にそれが釈放になつた後でなくて、勾留中に自己の記憶を訂正し、外の部分についてはお礼にやつたこともはつきり申しておりながら、そういう一、二の記憶違いの部分だとか、或いは日時の食い違い、こういう点をいろいろ確かめて行つてはつきりして来たものですから、特にその当時塩谷氏を調べるところまで行つておりません。
  359. 松井道夫

    ○松井道夫君 尚只今いろいろ述べられたのですが、そのうち、立検したのはどれとどれですか。
  360. 岡崎格

    証人岡崎格君) さつき岡田関係の点を立検しました。
  361. 松井道夫

    ○松井道夫君 それは後は起訴とか不起訴とかそういう問題は起らないのですね、初めから……。
  362. 岡崎格

    証人岡崎格君) 初めからでなくて、そのとき起訴すべき必要があれば起訴のときに立検をしてやるわけであります。それから……。
  363. 松井道夫

    ○松井道夫君 併しすでに警察から立検して持つて来るといつたようなものならば、これは起訴とか不起訴の結末をつけざるを得ないわけですね。
  364. 岡崎格

    証人岡崎格君) 警察の方でもそれははつきり犯罪事実として取上げて送致をされたわけではないのであります。追送記録として、関係記録として送付になつて来たのでありますから……。
  365. 松井道夫

    ○松井道夫君 それか検察庁としてそれに対して必ずしも立検する必要もなければ従つて起訴起訴はつきりした結末をつける職務上の義務といいますか、それはないわけですね。
  366. 岡崎格

    証人岡崎格君) はい。
  367. 大野幸一

    ○大野幸一君 その五万円というのは大畠委員の言われたのは自動車消防庁に売つた金でしよう。
  368. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうだと思います。
  369. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると自動車を買つたのは消防総監とした高く買つて、五万円というものはちつとも贈収賄罪の成立に差支ないのじやないのですか。一体岡崎証人にお尋ねいたしますが、涜職罪としてあなたは相当検挙されたことがあるのか、そういう方面には余り関係されなかつた検事でいらつしやいますか。
  370. 岡崎格

    証人岡崎格君) それはやつております。
  371. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると五万円は出した、そんな金ならば……、これは恐喝罪になりますが……。
  372. 岡崎格

    証人岡崎格君) 友人関係でそれを俺の方に廻して呉れ、こういうなごやかな状況であれば、そういう恐喝とかいう意味はないと思います。
  373. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたの検事としてどうもこの事件をよい方よい方へと御解釈されるならばすべて犯罪にこう解釈されたい。国民の疑惑は何といつてもこれは吉田さんや増田さんやその政界の多数の名士が関係しておるから問題になるのです。そういう事件に限つて世間から見ればこれは揉消しされた事件のように考える。あなた方専門家から言えば潰した事件だとも考えられる、そういう誤解がある。だからあなたがことにその他についてもこんなことは犯罪にならんと言われたならば、それは皆委員等は常識としてこれは行き過ぎでないか、言い過ぎでないかということはこれは当り前である、その点ですね。
  374. 岡崎格

    証人岡崎格君) それで御承知のように涜職事件の贈收賄の職務関係につきましては、これは非常にむずかしい問題でございますから、十分にその都度上司の方ともいろいろ検討しまして、こういう場合はどうか、こういう場合はどうかということを検討した上で、例えば收賄の問題、岡田の問題と私一存でなくていろいろ研究しました結果、法的にどうしても嫌疑が薄い、こういうことでそれは処置したわけであります。
  375. 大野幸一

    ○大野幸一君 検察当局としてはこれは全く人権の尊重の立場から濫りに起訴できないという立場であつたら我々は満足する。併し上司とたびたび相談するということが法務総裁から検事総長、こういう人の指令を受けてこの事件はまあ適当に愼重にやつて置けとこういうふうに言われておりはしないか。それでこういうこの特例的の処置が講ぜられていやしないかというところに疑問を持つのですが、そういうことはございませんか。
  376. 岡崎格

    証人岡崎格君) 法務総裁その他この事件捜査中に上司の方からこの事件内容がどうなつておるかということは、一度も上から聞かれたことはございません。ただ二月一日でしたか、この岡田関係涜職事件として再逮捕されて送致された、その日かその前日にある一、二の新聞に非常に大きく掲載されたのであります。そのために最高検察庁の方から、一体こういう事実があるのかと聞かれて説明した。それだけのことなんであります。
  377. 大野幸一

    ○大野幸一君 当り前だね、新聞が報道するままじやないですか。この事件が今になつて手が着けられないでそのままに放置されるということは何としても承服できませんよ。こんなものはいつも御承知の通り一応このくらいの嫌疑がある場合はやるのですよ、今の新刑事訴訟法では……。無罪になる場合もあるのでございましようが、嫌疑のある場合は誰も同じように起訴しなければならない。この事件起訴なつていないで今日まで放任されておるということはこれはどうもおかしいとこう思うのは当り前ですが、顧みてどう思いますか。
  378. 岡崎格

    証人岡崎格君) これはまあ私共の方としましては、法律的の判断に従つて、事実の捜査をしてやつておるわけなんであります。ですからこの程度のことでまあ起訴起訴はしないということで判断をしたわけなんです。
  379. 大野幸一

    ○大野幸一君 釈放後も何故收賄したか贈賄したかをもつと調べないのは不公平な取扱があるが、こういうふうに刑事的問題を起す事件だから殊更に手を着けないでおるのじやないかという点ですね。
  380. 岡崎格

    証人岡崎格君) そういうことではありません。これはこの事件に限らず、例えば外の事件贈賄者につきまして先ず贈賄の嫌疑で大分調べた。ところがこれを相手方を調べるまでもなく嫌疑が不十分であるという場合には、調べないままに処置しておる例もあるわけであります。でこの事件に限つてこういう措置をしたということではありません。
  381. 遠山丙市

    ○遠山丙市君 只今ちよつと委員長からお確かめ願つて御訂正をして頂きたいと思いますが、大野君は証人に対する発言中吉田増田関係は天下の疑惑を生じておる。吉田増田関係しておるということを明らかに言われたが、関係しておるかどうかということを今調べておるのであつて吉田とか、増田というものが名前が出ておるということであればよいが、関係しておるということはどういう意味か。
  382. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは名前が出ておるということです。
  383. 岡部常

    ○岡部常君 まだ名前が出ていないようでございますが、佐藤から金が五万円貰つたか、受取つたかした新聞記者の名前もまだ聞きませんが、それは分つておりますか。
  384. 岡崎格

    証人岡崎格君) 分つております。朝日新聞記者の川手といいます。
  385. 松井道夫

    ○松井道夫君 これは別にこだわるわけでないのですが、僕からも、外の委員からも二、三関連して出ましたから更に聴くのですが、今の五万円を機密費として贈與した云々ですね。五万円をここに書いてあることと、それからあなたが言われたことを総合すると、結局五万円を贈ろうとしたら、新聞記者がわきから俺に寄越せと言つてつてつた。そういうことになりますが、総監の申出によつてつたとここに出ておる。総監が五万円寄越せと総監が言われたから、わきから取つてつた。こういうことになると、賄賂を要求したということになりますね。賄賂要求罪というものが成立する。それで勿論立検も何も調べていないのです。わざわざ不起訴にする必要はないわけです。
  386. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは新聞記事そのものについてお考えになりますからそういうことになるのじやないかと思いますけれども、実際の調べに徴しますと、どうもそういう事実はないのであります。
  387. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうするとこの新聞の出ておることは、総監の申出により贈つたものということは、調書に出ていないのですか。
  388. 岡崎格

    証人岡崎格君) その点は事実と違うように思います。
  389. 松井道夫

    ○松井道夫君 事実と違うのでなくして、調書に出ておるでしよう。
  390. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは調書そのままではありませんから……その新聞……。
  391. 松井道夫

    ○松井道夫君 調書の中にもないと思うというのですか。
  392. 岡崎格

    証人岡崎格君) はい。
  393. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうですか、それならば。
  394. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 さつき詐欺事件の年月ですが、詐欺事件は二十三年十月から二十四年の夏頃まで、これは間違いありませんか。
  395. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  396. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 二十二年じやないですか。
  397. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、二十二年の事実はあり              ません。
  398. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 涜職は二十一年ですね。
  399. 岡崎格

    証人岡崎格君) その涜職と言いますか、金をやつておる関係は二十一年から始まつております。
  400. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうするとこの前に沢山の金をばら撤かれておるのですが、それは証人の御証言によりますと、何かの利益だろうという御証言があつたようですが、こういつた莫大の利益あつたかも知れませんが、併しこれについては別にお調べなかつたですか。
  401. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、これは詐欺の係の検事調べておりますが、私の方でその点について今日用意して来ませんでしたが……。
  402. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 関係が違いますか。
  403. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ。
  404. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 ではこれは調べはしたことはしたんですね。
  405. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ、してあります。
  406. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私は初めからちよつと失礼しておりましたため、まだ十分分りませんが、あなたの担当は、事件としましては特捜部の部長ですね。
  407. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうでございます。
  408. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この事件をあなたがお調べになつたのは、特に指名によつてなされたのであるか。或いは又特捜部の所管事項としてあなたが処理されておるのか。
  409. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは特捜部の所管としまして、警視庁の二課から直接送致になる事件は、特捜部で取扱うことになつておりますので、私の方で所管しております。
  410. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういたしますると、この佐藤事件がお手許に参りましたときに、当初からこの特捜部のこれは所管事項になることにして送られたのですか。
  411. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  412. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その送致されました警視庁ですが、その送られた当時には、佐藤詐欺事件という罪名の下に送られたのでありますか。
  413. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。これは最初は逮捕から、事件送致から詐欺事件で送られております。
  414. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると第一的捜査としては、警視庁の方が手を着けたわけですね。
  415. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  416. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの方から特に犯罪の端緒を得ておつて、指名したわけじやないのですね。
  417. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  418. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 送致事件として検察庁の方に繋属する。
  419. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  420. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで金を撤かれたとかいうような問題は、詐欺時件と併せてあなたの方に指揮を仰いで参りました事件ですか。
  421. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは詐欺事件捜査中に、外にこういう疑いがあるからというので調べたということで、これは捜査の方は十分調べをして貰いたいということで、その間連絡を取りつつやつて来たのです。
  422. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 詐欺事件がまだお手許の方に送致されない以前から、詐欺事件捜査中に、こうした金の撤かれてるおるという事件等が含まれておる。それについての中間指揮を受けて、そうしてあなたの方から指揮をされつつ進行して来た事件ですか。
  423. 岡崎格

    証人岡崎格君) 詐欺事件で一応事件送致になりまして、その詐欺事件起訴が済んでから、その余罪として、連絡をしつつ捜査をしたのです。
  424. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうするとお手許に詐欺事件とした来たときには、また黄白を撤いたということについての問題は、まだお手許に分つていなかつたのですか。
  425. 岡崎格

    証人岡崎格君) 分つておりません。
  426. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 分つていない。その分つたに至つたことは、検察庁事件が繋属してから後に分つたのであるか、或いは又警視庁の方ですでにその事実が分つてつて捜査を継続中だつたと御覧になつておりますか。
  427. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、これは御承知のように逮捕して四十八時間で検察庁送致になりますので、本人身柄は、警視庁勾留して捜査をいたしますので、その間に詐欺事件捜査と並行して、警視庁の方で追及して調べていたわけです。
  428. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは身柄のことは別といたしまして、その黄白を撤いたということについては、詐欺事件としては、あなたの方に送致されまするときに、並行してすでに警視庁の方の手許で明らかになつた事実をあなたに御報告になつた。こういう……。
  429. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。その送致が何回にもなつておりますので。
  430. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 送致でなく、逮捕状の出たのが二回ですか。
  431. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ。そうですが。
  432. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その前の問題ですね。
  433. 岡崎格

    証人岡崎格君) ええ。
  434. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 前の問題の逮捕状による逮捕送致の場合ですね。
  435. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。逮捕しまして送致になりまして、それからまあこの一月の初めになりまして、一月四日に起訴して……。
  436. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 一月の四日に起訴したのですか。
  437. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。その後にこういう金をばら撤いた事実が分つて来た……。
  438. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 並行して分つたのですか。その間に多少の余日があつたわけですか。起訴後ですね、相当の余日があつて後分つたわけですか。
  439. 岡崎格

    証人岡崎格君) いいえ、その間もなく。
  440. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 前後してですね。
  441. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ、前後して。
  442. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、これは十分に私は分かりませんが、逮捕状の執行により身柄附で以て事件送致して来たのですね。その結果身柄をまだ釈放しない以前にあなたの方で起訴して、そうして勾留処分したのですか。
  443. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  444. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 で勾留処分をいたします。起訴前に検事勾留処分による留置期間が若干あつたのですか。
  445. 岡崎格

    証人岡崎格君) それが十日間のところを二十日間まで延長して貰いました。それで一月四日……。
  446. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうするというと、これは第一回の身柄拘束というのは、逮捕状による二日間と、それから検事勾留による二十日間、それを経過して、一杯々々使つて一月四日に起訴されて勾留を継続したわけですね。
  447. 岡崎格

    証人岡崎格君) そのとき吉村商店の事実で出ておりました勾留状ですから、その事実の証拠固めがまだ長引いたものですから、外の事実で起訴しましたから、そこで令状は一回切替つております。つまり起訴と同時に裁判所が別な勾留状を請求して、別な勾留状が裁判所から出ております。
  448. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうするというと、最初の勾留状だけの二十日間を使つた切りで、本人身柄拘束としては、勾留状によるものはない。検事勾留だけで済ましておりますか。
  449. 岡崎格

    証人岡崎格君) いいえ、そのあとも起訴と同時に又勾留請求しまして、で勾留を引続きやつて、一月三十日に保釈になつたわけです。
  450. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 いや、そこであとで請求した勾留というのは、別件による勾留ですね。前の起訴による事件に係る勾留ではないのでしよう。
  451. 岡崎格

    証人岡崎格君) 起訴に係る事件勾留なんです。そこがちよつと法律的にややこしいのですが、甲の事実で逮捕勾留しまして、その甲の事実という吉村商店関係の事実だけでは、まだちよつと証拠が固まらないから、そこでこの余罪の、外の詐欺の事実で三つを起訴するものですから、この勾留の、起訴になつた犯罪事実に基く勾留はそれで無効になつたわけです。ですからこちらの事実を起訴すると同時に、この事実について裁判所に勾留状の請求をする、それでこれは引続き勾留と同じようになつておるとお考え願いたいと思います。
  452. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 別件の意味において勾留状を請求したということですか。
  453. 岡崎格

    証人岡崎格君) はい。
  454. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 このときには逮捕状は出さなかつたのですか、第二の事実については。
  455. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは起訴と同時に裁判所所に請求しますから、逮捕状の必要ありません。
  456. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その第二の事実は起訴したのですか。検事勾留請求を第二回にしたのじやないですか。別件によつて吉村事件で二十日間の勾留が終りますね。
  457. 岡崎格

    証人岡崎格君) その間に吉村事件でない甲乙丙丁の詐欺事実が分つてこちらだけが証拠が固まりましたからそれによつて起訴する、それでこれについてこつちの勾留状が無効になつたから、これについて起訴と同時に裁判所に勾留を求めたと、こういう関係になるのです。その一月四日のときには……。
  458. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 裁判所に勾留を求めるというのは、あなたの方から勾留を求めるのはどういう勾留ですか。
  459. 岡崎格

    証人岡崎格君) ですからこれは捜査のためでなくてですね。裁判所に……。
  460. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 裁判所が職種による勾留ですね。
  461. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。その職権の発動を促すために、運用上です。
  462. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういうことはできますか、検事局で。
  463. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは職権の発動を促すために運用上やつておることなんです。裁判所が……。
  464. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 正式じやないのですね。
  465. 岡崎格

    証人岡崎格君) 訴訟法上の権限に基いているわけではありません。
  466. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで裁判所が、あなたの方に一月四日に起訴された事件に基いて裁判所が勾留をすることになりましたね。その勾留されてから後に権利保釈をしたのですか。
  467. 岡崎格

    証人岡崎格君) しました。
  468. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 どのくらい経つてからです。
  469. 岡崎格

    証人岡崎格君) 一月三十日です。
  470. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この間はすでにあなたの方で一月四日にこの事件の大体証拠の保全はこれで以て完了しておつたわけですか。
  471. 岡崎格

    証人岡崎格君) その詐欺事実につきましては尚関係者調べる必要がありましたので、それと尚詐欺余罪調べもあつたわけです。そこで権利保釈請求に対しましては、一応保釈不相当の意見を附けて裁判所にも廻して置いたのです。
  472. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 これはいつですか。
  473. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは一月十八日でございます。
  474. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 権利保釈相当の意見もあなたの方から附したわけですね。
  475. 岡崎格

    証人岡崎格君) 不相当の意見です。
  476. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 不相当ですか。それから今度一月三十日のときには更に裁判所の方から保釈についての意見を求められましたか。
  477. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは不相当で裁判所に廻した、それによつて却下請求をしないで弁護士の方から裁判所に検察庁の方で暫くすれば同意が得られるだろうから改めて保釈請求をしないで済むようにという頼みがあつたそうでして、それで裁判所の方では却下の決定をしないままで持つてつたわけです。
  478. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この一月十八日の分をですね。
  479. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。ところが一月三十日に私の方に連絡なくして保釈決定になつたわけです。
  480. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それはその程度で、この点はそれといたしまして、現在の場合は岡田関係を除くの外の分は一応五井事件に関する件についての捜査検察庁としては打切りにしているのですか。
  481. 岡崎格

    証人岡崎格君) 刑法の涜職犯は……。
  482. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 涜職犯においては先ず嫌疑なしという……。
  483. 岡崎格

    証人岡崎格君) 岡田関係を除きましては……。
  484. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 岡田関係を除いては、その他のことについてはすべて犯罪嫌疑なしという趣旨において捜査の打切りをしたわけですね。
  485. 岡崎格

    証人岡崎格君) すべてではありませんで、例えば特別審査局へ通知をして、向うで審査をしておる事実もあります。
  486. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは別ですね。
  487. 岡崎格

    証人岡崎格君) はい。少くとも刑法犯に関する佐藤の問題といたしましては嫌疑なしです。
  488. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ところが従来検察庁で以て、随分対世間的に問題になつておりまする検察庁関係、殊に犯罪に、捜査関係いたしまする事件で以て、非常な輿論が高まつておるというようなことに対して、事実と著しく相違し、次から次へと臆測を逞しくして、徒らに世の中で騒ぐというような場合には、検察庁の権限によつて、その疑惑を一掃するために何らかの適当なる処置をとるという方法は、従来検察庁としては考えていないのですか。
  489. 岡崎格

    証人岡崎格君) 考えておりましたが、それは例えば起訴の時期、不起訴の時期等につきまして一部を新聞に発表する、こういう方法をとつております。
  490. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それのみならず、ただいろいろな誤解その他のために検察庁の観察と著しく世の中に伝えられておりまする事実と相違する場合には、やはりこの一般をして安定せしむる趣旨において検察庁の名を以てその疑惑を一掃するような意見等を発表をして、そうしてこの風波を抑えるというような、鎭めるというような行き方の場合も考えられますね。
  491. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  492. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ありましようね。
  493. 岡崎格

    証人岡崎格君) 具体的にはございませんが、本件の場合はむしろこの委員会で取上げられておりますので、検察当局といたしましては、証人として今日この席で事実関係を申上げてその疑惑を解くようにして頂きたいと思つております。
  494. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 成る程、そこでこれが参議院の法務委員会に取上げられまする以前に新聞で御承知であられると思いまするが、衆議院の方において法務委員会の方で取上げると称し、或いは考査委員会の方で取上げると称し、可なり新聞ではこれを大きく扱われて、世の人は相当に疑惑を持たれておりますね。然るにその疑惑たるやどういうふうな証言であつたか十分に分りませんが、結論を伺つておりますと、あなたの本日の観察からいたしますれば、少くとも誤まれる一般に考え方を持つておるというふうな事実があつたといたしますれば、まだその間に成るべく早い機会においてそれを一掃するようなことの適当な措置を取り得られる余地があつたのではないでしようか。この機宜の措置を検察庁として或いは法務庁としてかの側において聊かその手遅れの感がありはしませんか。
  495. 岡崎格

    証人岡崎格君) そのどういう措置をとるべきかですね。実は私の方も何らか意見表示をしたいと考えておりましたが、まあうまい方法がなかつたわけなんです。
  496. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこでそれから尚この事件にはいずれ他の委員の諸君からも聴かれたことと思いますけれども、捜査官のとるべき態度がとかく逡巡して、躊躇しておるような点がある。例えば逮捕状の発令後において相当期間の執行が行われていなかつた、或いは又そのまだ捜査の途上において、通常ならば保釈の許可があり得べからざるに拘わらず、保釈許可が非常に早くできた、身柄釈放が異例に早かつたとか、次から次へと疑惑を深めるような、事実かどうか分りませんけれども伝えられておる、そういうことにおいてあなたの方の手続上に何か行き違いの点はありはしないか。
  497. 岡崎格

    証人岡崎格君) 第一の逮捕の遅れた理由につきましては、先程詳しく申上げましたが、それから保釈の問題は、これはもう起訴が一月四日で、一月六日に保釈請求が出ていたわけなんです。
  498. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 一月の三十日ですね。
  499. 岡崎格

    証人岡崎格君) 請求は一月六日に出たのです。それが事務当局の方なんかで遅れまして、もう一月の中旬に検察庁に廻つて来ておつたのです。本来ならば、これが刑事訴訟法第八十九條の権利保釈の対象になりますから、そのとき保釈相当として、改めて又別罪につきまして逮捕状からやり直して、詐欺余罪捜査、その他涜職の疑いのある事実の捜査をやるべきであつたのですけれども、これは却つて日数を要することになりますし、手続も面倒になりますので、弁護人の方にも、少くとも一月一杯は余罪捜査で、自分の方としては保釈に賛成できないということを申しましたところが、それではまあ何とか相当の意見を附けないで呉れと、そのまま意見書を廻さずに握つてつて呉れというような話もありましたけれども……。
  500. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは一月六日前後ですね。
  501. 岡崎格

    証人岡崎格君) 一月の中旬であります。併し、そういつまでもこちらに留めて置くわけに行かないから、一応相当の意見を附けて置くというので、まあ少くとも一月一杯は一つ御勘弁願いたいというので、裁判所にも連絡をしておつたわけなんです。そういうわけで、他の事実の全貌を明らかにするという点につきましても、一月四日の起訴後、警視庁の方にはできるだけ早く、少くとももう二月になれば保釈になるかも知れないから、一月中に一つ全貌を明らかにして貰うようにということでやつてつたわけです。
  502. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そこで一月三十日に、これはあなたの方には無交渉で出したわけですか、裁判所が……。
  503. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。これはもう前に意見を聞いてありますから……。
  504. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 前に出ておる意見書に基いて、一月三十日に、裁判所の方では、あなたの方には何ら通告なしに、意見を聞くことなしに……。
  505. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  506. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 このために、一月三十日に裁判所が保釈を許して、本人身柄を出したということに対して、あなたの方の捜査の段階は、黄白を撒いた点に対する捜査の段階としては、どの程度に進んでおりましたか。
  507. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは今日申上げましたような事実に関する全貌は、これはもう出盡した形になつておりまして……。
  508. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この一月三十日当時には……。
  509. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。ただ各事実の涜職になりそうな岡田職務関係につきまして、十分な調査ができておらなかつたわけなんです。
  510. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうするというと、只今あなたが証言された岡田関係を除く外の分は、一月三十日の当時には、すでに犯罪の嫌疑なしという結論に至つておりましたか。
  511. 岡崎格

    証人岡崎格君) 犯罪といいますか、近くとも……。
  512. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 金を撒いた、贈収賄ですかね。
  513. 岡崎格

    証人岡崎格君) 贈賄という嫌疑につきましては、これは検討済であつたわけです。
  514. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 一月三十日には……。
  515. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  516. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、或いは贈賄、収賄、涜職の問題に限らず、規正令その他法律関係においての犯則というものではないのだと、だから、これは犯罪の嫌疑なしということに、すでに一月三十日の本人身柄釈放のときには、大体の目安はあなたの方でつけておつたわけですな。
  517. 岡崎格

    証人岡崎格君) 大体の目安はついておつたわけです。
  518. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その後は、そうするというと、新らしく新事実も佐藤関係においては出ないのですね。
  519. 岡崎格

    証人岡崎格君) 出ません。
  520. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうするというと、一月四日に起訴されたことと、それから岡田関係の涜職の一点のみが問題になつておつて、あとはすべてその後新らしい事実は出ないと、こういうわけですね。
  521. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  522. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 従つて本人は、一月三十日の自由を得て後は、依然として自由を得ておるわけですね。
  523. 岡崎格

    証人岡崎格君) いや、二月二日に釈放になりました後……。
  524. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二月二日ですか。
  525. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  526. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 二月二日釈放なつて……。
  527. 岡崎格

    証人岡崎格君) それは、すでに一月三十日に保釈になりまして……。
  528. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 又逮捕状か何か……。
  529. 岡崎格

    証人岡崎格君) その岡田関係の……。
  530. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 この関係ですね。一月三十日に直ぐ保釈で出て、そこで普通であるならば、検察庁の方で強制捜査勾留権限がありますわね。
  531. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは新刑訴では、逮捕状から始めなければならないことになつております。
  532. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 繋属の事件だから……。
  533. 岡崎格

    証人岡崎格君) 釈放した後に、もう一遍逮捕状を発しないと、勾留を継続するというわけに参りませんです。
  534. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 逮捕状を、一月三十日に出したのではないですか。
  535. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  536. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 出したのですね。出したのならば、今度続いて涜職事件を指示してのではないのですか。
  537. 岡崎格

    証人岡崎格君) いえ、これは職務関係調査が残つておりましたので、逮捕期間の、警察の四十八時間と、検察官の二十四時間と、この三日間の中に、職務関係を仔細に検討しました結果、一部分についてのみ問題が残ることになりましたので、それで保釈なつておることを考えて、釈放したと……。
  538. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、この場合に、検事勾留はできませんか。
  539. 岡崎格

    証人岡崎格君) やろうと思えばできます。
  540. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 できましよう……。その検事勾留の手段に出でず、ただ逮捕状だけによつて、こういう涜職なんという重大事件を、僅かに逮捕状勾留というようなことで済まして、特にその勾留状の執行をなさず而も捜査の途上において本人を出したということは、やはり一部の疑惑を招いたということになりはしませんか。
  541. 岡崎格

    証人岡崎格君) それが、すでに保釈なつて、一月半近くも入れておつたものを、保釈になつた途端に再逮捕するということが、これは異例といいますか、余り運用上やりたくない事案なんでございます。
  542. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 ところが、やりたくない事案だつたけれどもやつたのですから、やつたのなら、その結末が……。
  543. 岡崎格

    証人岡崎格君) そこで、その勾留請求しまして又十日間、場合によつては又延長して二十日間ということになりますと、これは見通しとして、非常に起訴できるとか何とかの犯罪ならばともかくとしまして、すでにもう一日以上勾留して調べておつて、その間に大体事実関係としては否認の事実は出ておる。そういうところで、これを勾留して調べて新事実が出るかどうかという点も非常に疑問を持たれる。そういう関係で、これはもう勾留請求をしないと……。
  544. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そのときにあなたの方では、この岡田関係の涜職について、成否についての疑問を抱いたわけですね。確信を失つたわけですね。
  545. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  546. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、見通しとしては、これは起訴まで行く事件かどうか分らないから、もう一つ突き進んで、異例を破つた上にもう一つ異例を破ることはできないという趣旨で、あなたの方では良心的にこれを検事勾留請求をしなかつたと、こういう事情ですね。
  547. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  548. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 それは併し、今日あなたがここで証言されますこと以外に、何かそういうことが明白なことになつていましたか、今まではそういう事情であるということが。
  549. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは世間一般にですか。
  550. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうです。
  551. 岡崎格

    証人岡崎格君) その措置はとつていないのです。
  552. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そのときに何か、その際に或る他の方面から何か検察庁の方に注文をつけるものがあつたというふうなことはないのですか。
  553. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  554. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 全然ないのですか。
  555. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。その措置をとるにつきましては、当時の坂本刑事部長にも、主任の宗像警部補にも、事前に一応話をして、了解を得た上で釈放したのです。
  556. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そういう方面の了解云々は別としまして、それは別としまして、この点について誰からも、併しそれについて、検察庁内においてそういう軟論が出るに至つたことについて何か証人として、多少不可解だな不愉快だなというふうな点はなかつたのですか。
  557. 岡崎格

    証人岡崎格君) これは軟論としましては……。むしろ私が当面の責任者で、この法律的に疑問を持つたわけなんでして……。
  558. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 私がちよつと感じますこととしましては、一ヶ月有余に亘つて捜査した結果、すでに起訴し、勾留に繋属しておる事件釈放されておりますに拘わず、そこであなたの方で敢然として異例を破つて逮捕状の執行をなすというにつきましては、これはあなたが逮捕状請求当時に、曖昧模糊のうちにそういうことになりましたか。やはり逮捕状請求については、涜職罪の成立に対するあなたの確信に基くことでなければならんと思いますね。それが一朝にして、その前にすでに一ヶ月以上に亘つて勾留があるのに、僅か二、三日で以てぽんと出してしまつて、而もその事件は涜職だということになりますると、何らかのそこに介入すべき何ものかがあつたのではなかろうかということの考えを普通なら持ちます。だからそのあなたの、異例を破つて逮捕状執行の、あなたの勇気が挫けているように感じますね。そこは涜職罪の成否について、あなたが疑問を抱くに至つたということは、私には了解しにくいものがある。そこで何かあなたが、これは繋属することは、結局何らか不安である、或いはあなたの予想以上の何ものかがあつた、これは責任問題が起るとかという問題については恐れを抱くような事情がこの間になかつたか。
  559. 岡崎格

    証人岡崎格君) そういう事情はありませんが、一面再逮捕に対しまして弁護人側からはこれは非常に不当であるということは再三申出があつたわけなんです。
  560. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 弁護人……。
  561. 岡崎格

    証人岡崎格君) それで弁護人からそういう申出がありましても、それは我々として余りそういう措置はとりたくない措置でありますけれども、事件事件としてはつきりさせなければならんというので一応逮捕して、それで逮捕期間の三日以内にできるだけ早く調べようとして見通しをつけて、これは起訴できる、或いは新事実が出る見通しならばこれは勾留して、再逮捕で又やつて行く。併しどうも一月以上も勾留して新事実も出そうもないし、一面弁護人の方は人権蹂躙とまでは言われなくても相当問題にされているということで、詐欺事件の公判の結果にも余り影響することになりはしないかという点は考慮したわけです。
  562. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 そうすると、弁護人側の方から、強硬にやはり異例に対する抗議の申出があつたわけですか。
  563. 岡崎格

    証人岡崎格君) 強硬といいますが、私に対しては、これは余りひどいじやないかと…‥。
  564. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 人権の問題を持出して…‥。
  565. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  566. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その弁護人は誰ですか。
  567. 岡崎格

    証人岡崎格君) どなたでしたか……、堂野という方がおられました。
  568. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 堂野……。
  569. 岡崎格

    証人岡崎格君) もう一人……二人です。併し私は別にその抗議を恐れたわけではないのですが、保釈なつておる者について再逮捕をして再勾留をするということにつきましては、相当な見通しを持つていなければ、これは余り妥当な措置ではない、こういうことは十分考えております。
  570. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 あなたの用意の周到なることには敬意を表しますが、如何にも、私共はちよつとここで伺いますと、一ヶ月有余に亘る勾留が繋属しておる期間に、相当な涜職なんというような事件に対する調査は進められておると思います。その進められておることに対して、あなたが異例を破つて勇敢に逮捕状の再執行をしたということにしては……而も事件は涜職なんで、而もその佐藤に絡んでは幾多の疑惑を持つておる人もあるようだ、こういう際に……、又あなたの今度の勾留請求をしないことが異例の異例になつておる。それが非常にあなたの勇気がその間にぽんと立消えになつておるような感がするものですから、やはり自然余計疑惑を深めるのじやないかということになつて、何かあなたがこの際それはこういうわけで決してそういうわけじやないというふうに述べて頂けばいいと、かように思うのです。
  571. 岡崎格

    証人岡崎格君) 只今申上げましたように再逮捕については、職務関係について尚疑問の点が残つたから再逮捕を認めてやつたのですが、その逮捕期間内にまあ問題になつておる職務関係を十分一つ調べて…‥。
  572. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 その結果は得ましたか。
  573. 岡崎格

    証人岡崎格君) 結果は得ました。
  574. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 期間内に結果を得たの。
  575. 岡崎格

    証人岡崎格君) 見通しを得ました。
  576. 鬼丸義齊

    ○鬼丸義齊君 見通しを得たことによつて先ずそうすると一応これで以て身柄釈放しても差支ないというあなたの方に確信を得たところから勾留請求をされないで釈放した、こういうことですか。
  577. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  578. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつきからの証人証言を伺つておると、裁判の結果を見なければ分りませんけれども、相当まあ詐欺をやつたり何かするような方が警視庁の中を随分うろうろしてお金をやつたり、一緒に飯を食つたり、それからそういう人が紹介したり紹介されたりして追放された人々が会合されたり、それがまあ吉田茂とか増田甲子七とかの政府の要路の人とか政党の要人にいろいろ金をやつたりしたということが白晝公然と行われておつても、現在の日本の検察当局としては手は出せないという感じがしますね、結論としては……。
  579. 岡崎格

    証人岡崎格君) いやそうでなくて、白晝公然と……嫌疑の事実があればこれはどこまでもやるのですけれども、まあそれは詐欺をやつておると言いましても、いわゆるその辺の詐欺と違いまして、相当事業をやつておる者が、大きな取込みをやつたわけなんですから、まあちよつとこの事情は違うと思うのですが、とにかく詐欺詐欺なんですが、いろいろ出入りしておりましても、その間に犯罪の容疑としての証拠を掴まなければちよつと手が出せない…‥。
  580. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 つまりその詐欺を行うような疑いを受ける人が警視庁内部に密接な関係を持つたり、或いは追放者と密接な関係を持つたり、或いは有力な政治家と密接な関係を持つたりしておつても、その程度のことでは検察当局としては手が出ないというわけですか。
  581. 岡崎格

    証人岡崎格君) そうです。
  582. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 そうしますと、五井商業事件について起訴されている者、涜職関係起訴されている者は、誰と誰なんですか。
  583. 岡崎格

    証人岡崎格君) ありません。
  584. 大畠農夫雄

    ○大畠農夫雄君 全然ないのですか。
  585. 岡崎格

    証人岡崎格君) はあ。
  586. 伊藤修

    委員長伊藤修君) じやよろしうございますか。じやどうも長時間お忙しいところ有難うございました。本日はその余の証人として警視庁捜査第二課第一係長上田良三君と伊藤鑛壽君と両名が喚問してありましたですが、訊問の証言を求める事項について、伊藤鑛壽の証言を先へ求めたいと思つておるに拘わらず、伊藤鑛壽は四日附の診断書によりまして急性腺嵩性扁眺腺炎兼頸部フレグモーネという病気だそうでございます。和田伴彦という医者の診断書が添えて欠席の届出が出ております。然るに同人はその診断を受けて一週間安靜していなくちやならんというにも拘わらず、四日の日は市内をうろついておつたらしいです。而も参議院に出頭するのは困るが少し延ばしたいと言つて放言しておつたらしいのですが、同人の行動と届出とは非常に食違つておりますから若しこれが事実とすれば出頭拒否に関するところの制裁もあることと存じますから一応明日この医者を、この点だけは簡單に訊問したいと思います。そして本日はこの程度にいたしまして、明日佐藤昇とこの医者とを午前十時から喚問することにいたします。  じやあ本日はこれを以て散会いたします。    午後四時五十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君    委員            大野 幸一君            大畠農夫雄君            小野 光洋君            小林 英三君            遠山 丙市君            松井 道夫君            松村眞一郎君            羽仁 五郎君   証人    検事(東京地方    検察庁特捜部    長)      岡崎  格君