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1950-03-17 第7回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会   ————————————— 昭和二十五年三月十七日(金曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————   委員異動 三月十六日委員齋武雄君辞任につき、 その補欠として大畠農夫雄君を議長に おいて指名した。   —————————————   本日の会議に付した案件 ○商法の一部を改正する法律案(内閣  送付)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは、商法の一部を改正する法律案について、昨日に引続きまして公聽会を開会いたします。日本発送電株式会社総務部文書課長北里良夫君。
  3. 北里良夫

    公述人北里良夫君) 只今委員長殿より御紹介にあずかりました日本発送電株式会社総務部文書課長北里良夫でございます。  商法改正要綱につきましての御意見をこれから申上げたいと存じます。商法改正要綱を概観いたしますのに、これに盛られました改正点はいずれも進歩的な制度で、民主的な考え方がとり入れられており、理論的には反対すべきものがないように思われるのであります。併しながら私共会社立場に立ちましてこの法律を実際に適用いたして行くことを考えますると、又異なる結論が出るものもあるのでございます。以下、少しくこれらの点について述べたいと存じます。  商法は、もともと理想法というよりもむしろ現実法でありまして、理想的には問題はなくとも、現実に即しないならばそれは却つて害つて益なきもので、折角の改正も何ら得るところなきものと思います。又、特に会社は一個の活動体でありまして、日々変動する経済界に処して優劣を争いつつ、自己の発展と社会への貢献を期しているものでありますから、これを規整する法律動的観念を持つたものでなければならないと思います。然るに一方日本の現状は、社会的にも経済的にも未だ完全に混乱期を脱していない状態であり、その上国民大衆の意識も、一般的には会社経営に対しましては低い水準にあることと思います。これらの現実恒久法を制定する場合、特に十分に考慮に入れられなければならないところであると信じます。従いまして理想に走るの余り、手続煩雑にして十分なる活動を鈍らせ、費用の増大を来たさせるというようなことは、一部の者の利益を保護したように見えて、それらの者をも含む全体の利益にならないこともあることを警戒しなければならないと思います。要するに会社は、迅速なる活動と、最小の費用を以て最大の利潤を上げることを目的とするものであります。この趣旨に沿わないものは結局利害関係人等利益とならず、却つて会社を殺すものであるのではないかと存じます。これらの観点から見まするとき、要綱相当に問題になる点が多いと思われるのでありまするが、これらは夙に各方面から指摘せられておりまして、又諸先輩よりも述べられていると思いますので、ここで私から繰返すことは差控えたいと存じますが、二、三の点につきましてこの機会に述べたいと存じます。  先ず私は会社の大小、即ち資本金が何億というような会社も、一万円以下というような会社も、株式会社である以上、何でもこの法律で一律に規整しようとするところに一つの大きな基本的な欠陥があるものと思われます。例えば要綱第七の「定款による株式讓渡制限及び株券の裏書の禁止を認めないこと。」となつておりますが、これは大きな会社には問題がありませんが、小さな会社簡單に乗り取られる虞れがあり、経営者は安んじて経営の任に当れないのではないかと思われます。一方資本金が何億で株主数が十万人を超えるような会社現実にあるのでありますが、これらの会社株主総会について考えて見まするのに、一度の総会招集通知状を発するのに一人当り印刷代封筒代郵便料金、その他で十円といたしましても、若しも十万人あれば百万円かかるわけであります。特に私のおりまする日本発送電では目下整理中でございますが、大体十六万人から、或いは十八万人ぐらいに株主がなるのではないかと存じます。このような場合を考えますと、実に百六十万円から百八十万円の招集通知状を発送するのに費用がかかるわけでございます。尚これは普通決議の場合でありまするが、若しもこれが特剔抉議にでもなりまするといたしますと、委任状を集めますのに相当費用がかかるのでありまして、この委任状を求めます費用といたしましては、一人当り大体二十円ぐらいかかるものと思われます。従いまして、十六万人、或いは十八万人に対しましてこの委任状を求めるための準備をしまするとするならば、この費用だけで三百万円を優に超すのであります。その他諸雑費を加えまして、一度の株主総会を、特剔抉議でもありますれば総会を開きまするのに恐らく、四、五百万円の金がかかるのではないかと存じます。尤もやり様如何によりましてはこれを下ることはなくとも殖えることはあるのであります。かかる無駄な費用とさえ考えられるようなことが大きな会社には現実に起り得るのでありまして、これを何とか御考慮を願いたいと痛切に考えられる次第でございます。  次に取締役会制度が設けられますことは誠に我々といたしましても時宜に適した立法であると考えるのでございまするが、ただその文言の中に取締役会業務執行機関であるというふうに書いてありますのですが、この業務を執行するという言葉は非常に曖昧な言葉でありまして、株主総会では今回の要綱によりましてもその決議事項は、法律或いは定款等に決めたことだけになつておるのでありまして、会社自身といたしましては決してこの意思決定というような会社重要事項株主総会だけで決められるというものではないのでありまして、もつと外に、或いはその比較をして見れば小さなことかも知れませんけれども、意思決定機関というものが株主総会だけに限られるというような性質のものではないと存じます。従いまして取締役会制度が改めて設けられるならば、この機会取締役会はいわゆる小さな意思決定機関意思決定会議機関というような考え方をすべきではないかと思います。これは私共大きな会社になりますと、先程も申上げましたように株主総会を開くというようなことは実際上非常に困難な、又無駄な費用を要する場合が沢山あるのでありまして、前々から代表株主総会というようなものが若しもここにありとするならば、非常に便宜な措置ではないかということを実は考えておつたわけであります。このことは別段に規定せられないならば取締役会がいわゆるこの代表株主総会的な意思決定をする会議機関というようなものであるならば、非常に都合がいいのではないかと思います。勿論この業務執行というように改正要綱でも書いてありますことは、即ちそういうことを意味しておるのだろうとは存じます。併しながら業務執行ということは如何にも日常業務個々のことについて執行するというような考え方が、強く我々には印象付けられるのであります。現実社長とか、副社長とかいうようないわゆる業務執行機関らしきものが別にあるのでありまするから、今の取締役会というものはいわゆる小意思決定会議機関として、本当の業務執行機関といたしましてはその社長、副社長、或いはこれは取締役といい、或いは支店長というようなものと区別してお考えを願えたら非常に理論的にも整然とするのではないかというふうに考えるわけでございます。  大体私が主としてこの機会に申上げようと考えておりましたのは以上のことでありまして、他のことにつきましてはすでに各方面から意見が出ておりますので、繰返すことは止めたいと存じますが、小さな点でちよいちよいと気の付いた点だけを拾い上げて申しますると、要綱の十一と五十七に転換株式、或いは転換社債の「転換効力発生時期を転換請求の時」とございますが、これは非常に煩雑なる手続になるのではないかと想像せられます。勿論これが條文化されて、具体的のものを見なければ今俄かにどうこうということは申上げかねるかも知れませんけれども、少くとも毎月末くらいの効力発生に統一して頂きたいような気がいたします。又これは登記との関係もあることだと思いますので、この辺の調整はできるだけ事務手続煩雑にならないようにお願いをいたしたいと存じます。  次に問題となつておりまする要綱の十二の、株主名簿名義書換停止期間は六十日以内とするということにつきましては相当の異論もあつたようでございまするが、特に合併、或いは外国等支店があるような会社につきましては、これは裁判所の許可を得てこれを伸長することができるようにお願いできたらと存じます。この規定がありましても六十日経つて切れたら、又翌日から名義書換を提出するというような脱法的な行為もできないことはないとは思いますが、かかることでなしに、やはり法的にはきちんとしたものにして置かなければならないと存じます。  それから要綱の十四におきまして、少数株主総会招集費用会社負担といようなことになつておりますが、これは一般的に言いまして今回の改正要綱が非常に少数株主、或いは一部のものの利用し易い、会社に対して非常に混乱を生ぜしめるような訴、その他請求等規定されておるわけでありますが、できるだけこういうものは或る一面制約を設けて置いて頂きたいと思うのでありますが、特にこの要綱十四につきましては、苦しも株主総会で否決された場合には少数株主負担とするとか、或いは少くとも一部を少数株主負担するというくらいのことはして置いて頂かないと徒らに混乱を招かせる。徒らなる総会招集請求があるというようなことになる虞れがあるのではないかと存じます。  次に要綱の十九、六十三の、営業譲渡合併の場合の株式買取請求権は、これはやはり一般にいわれておりまする通り争いの種となります。株式会社の本質であるところの多数決の原理と矛盾するのではないかと思いますので、この観点から御一考を煩わしたいと存じます。  尚要綱の二十二のいわゆる累積投票定款によつて或る程度制限が設けられておりまして、必ずしもそれによらざることができるのではないかと思いますが、要綱の中に議決権制限することは、定款による議決権制限は認められておらないのにも拘わらず、議決権が一方において増加することを認めるというのは、要綱の中に或いは軽い意味の矛盾があるのではないかと存じます。こういう観点からいいましてもこの累積投票制というようなものは余程嚴重なる制約が……会社自身といたしましては、若しもこの累積投票総会において採りましたならば、今まで二時間で済んでおりました総会もこのために時間が延長され、相当混乱も予想されるような状況でありまして、現実といたしましては我々はやつて見ないことには今何とも申上げかねまするが、併し想像するところでは相当混乱が予想せられるのではないかとびくびくいたしておるわけでございます。  後は非常に細かい点でございまするが、要綱の二十七の支店に備え置く議事録、これは議事録というものは正本が何通あつてもいいというような考え方もございますけれども、各支店の多いようなところにおきましては、議事録に各取締役の判が全部要る。こういうようなものを備えなければならないというようなことは非常に煩雑でございますので、これは代表取締役の認証のある謄本を備え置くというぐらいのところにして頂きたいと思います。  それから要綱の三十のいわゆる株主書類の謄写、閲覧、交付の請求、その他の問題でありますが、これも相当制約が設けられておりますものの、やはりこれは株主会社との間に担当の争いの定になるものだと存じます。又特に閲覧というようなことになりますと、日常事務が非常に削減される虞れがありまするので、少くともこれは謄本請求にすべてを統一して頂きたい、こういうふうに考えるわけであります。  非常に細かい点まで入りましたけれども、一応いわれておりまするところの反対その他の意見は、全面的に大体私も認めるところでありまして、ただ以上の点だけを追加して申述べさして頂いたわけでございます。
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは公述人に対する質疑は後で一括してお願いすることにいたします。  次に関東電気工事株式会社常務取締役総務部長山本淳一君。
  5. 山本淳一

    公述人山本淳一君) 私は只々御紹介にあずかりました山本淳一であります。商法の一部改正法律案について意見を申上げたいと思います。私が平素会社の実務に携わり、商法を通じてこれを処理して来ました経験から割出しまして、今次の改正法律案はかくあつた方が、会社の運営上又株式関係から見て必要であり、且つ利益であるという点を申上げたいと思います。  先ず改正案に追加して頂きたいと思う事項について申上げます。  (一)株主会社維持発展に協力する義務あるものとすること。理由としては、株主会社に対して拂込義務しかないというのが、一般の学説であります。併し会社株主が共同して事業を営むためにできているものであり、会社のこの目的のために協力すべきは当然であります。然るに株主配当を買うこと以外は会社に無関心であり、往往にして権利の濫用の行為に出ることすらあります。株主権利の濫用は禁ぜられておりますが、会社は、更に進んで株主総会招集の外、その事務を円滑にするために株主の協力を必要とすることが多々あります。併し会社株主に対して何ら要求することができないために、株主総会の定足数を揃える場合には多大の時間と費用を使つております。何とかしなければならないことは、衝に当つておる者なら分り切つているところであるが、どうにもならないことと諦らめておるだけであります。抽象的であるが、こんな規定を設けて頂きたいと思います。  (二)定款は、会社役員及び株主を拘束するものなることを規定すること。理由としては、定款会社の憲法であるということは学説が教えております。併し法律定款とはどんなものかについて何も言つておりません。現在の法律の趨勢は、法律目的を示しておるのであるから、商法においてもこれを明示するのが至当であると考えます。  (三)株主総会招集新聞公告でもなし得るものとすること。理由は、株式民主化伴つて株主が多数となり、会社にとつて通知を出すことは非常な重荷となつております。併し通知をしても株主の反響は少いのであります。定款を以て指定する新聞紙上に公告して、通知に代え得れば望ましいと思います。  (四)取締役共同代表規定を削ること。(商法二百六十一條第二項)、理由は、会社運営の実際に徴しましても、取締役会社を代表する場合に共同して代表するなんて言うことでは、業務が円滑に迅速に進められるものではありません。会社の実際を見ても、共同代表なんていうことはないのではないかと思います。登記等の場合に、共同代表のないことの証明を要求せられ、煩雑でたまらないのでありますので、削除して頂くことを希望します。  (五)配当は、株主総会決議を要さないで取締役会決議でできることにしたい。理由は、米国法を採用する以上当然のことと思われます。少くとも年二回の決算の外、中間配当だけでも、取締役会決議でできるようにして欲しいと思います。  (六)社債の総額の制限を削ること。理由は、社債の見合となるものは、資本金法定準備金だけでなく、收益力が大きな要素をなしているのであります。社債発行金融機関を関與させてこの制度をとり、実情に即して、発行弾力性を持たせることが必要だと考えます。  (七)三百十五條(利礼欠缺の場合の特則)、三百十六條(元利金請求権の時効)は社債発行條件の定めるところによるとしてはどうか。理由は、法文として置かなくても、発行條件にあればそれで有効であります。又時効期間の十年は長すぎると思います。  (八)合併の場合、株式割当に際して、端数ができたときはすべて三百七十九條で処理する旨を明らかにすること。理由は、株式割当の場合には、例えば一対一対、二対一、一対一・五の場合があります。一対一の場合は端数が出ないから問題はありません。又二対一の場合に端数が出たときは、三百七十九條で併合することになつておりますが、一対一・五の〇・五の処置方法については何ら規定してありません。明らかに規定する必要がありません。又合併規定は解散の章から抜いて、独立の章とする方がいいと思います。  (九)会社整理を実際に行えるようにすること。理由は、会社整理債権者株主経営者従業員等の利害が錯綜しておつて、簡單にできるものではないと思います。現行の規定裁判所だけが關與してやることになつておりますが、少くとも債権者の關與が必要ではないかと思います。整理は、和議や破産にまで持つて行かずに問題を片付けるところに意義があります。整理に当つて債権者の発言と協力を要することを規定すべきであります。條文整理より実情に沿うようにして頂きたいと思います。  (十)株主名義書換手数料等はとらないこと。理由は、会社の実際に徹するに名義書換株券の引換、種類変更信託財産登録、抹消、質権設定変更等で、株主からとる手数料なんて言うものは、株主事務に要する費用から見ると取るに足らないものであります。本来株券会社の必要で発行したものであり、これが流通移転株主として当然やり得るところであるから、かかる費用株主に負担させるのは妥当でないと思います。米国では株主に負担させていません。手数料を取らないことは株主名義書換株券併合、分割、新券発行等請求を容易ならしめる効果があります。会社が任意に手数料をとらないようにすれば問題はないのでありますが、取るのを原則としておりますから、法律で禁じた方がよいと思います。  次に法律案にある事項考えて頂きたいと思う事項について申上げたいと思います。  (一)株式発行株券を売ること、社債発行債券を売ることであるとして欲しいと思います。理由は、株式及び社債発行申込証によつて申込を受けて割当をして、然る後株券発行するようになつておりますが、株式発行とは株券を売ること、又社債発行とは債券を売ることであるとして欲しいと思います。申込証によることは形式に流れて実際の効果はありません。理論でなく現実に金が得られ、他面株主社債権者利益が保護せられればよいのではないかと思います。又株券譲渡株式の移転を意味すること、即ち株式とは株券のことであり、社債とは債券のことであることとして欲しいと思います。尚現実発行する株式と、未だ発行はしないが発行し得る。或いは発行し得べき株式との区別の表現がはつきりしていないが、これはつきりさせて欲しいと思います。「会社ガ発行スル株式ノ総数」は「会社ガ発行シ得ル株式ノ総数」とすべきであると思います。  (二)定款による株式譲渡制限を認めること。理由は、改正案は認めないことになつておるが、これは大会社を対象としての考えであります。小会社においては出資者各自が出資者異動をなさないという了解の下にできておるものであつて譲渡制限を認めないときは、出資を危ながり、事業も起らない結果となり、出資者意思に反すると思います。そうかといつて出資者は、有限会社合名会社のような畸形的会社形式による出資は望みません。又一方経営立場から言つて会社の乗取りをやられる危険があつて安心して経営ができません。若しこのことが認められないならば、出資者は相互に譲渡禁止の契約を取り交わすこととなり、却つて権利関係が複雑する結果となるものと思います。  (三)名義書換停止期間を六十日以内とすることに関連して……。名義書換停止期間を設けたのは、期末とか総会前とかに名義書換が輻湊して整理に困難を感ずることから出発したのであるが、この期間書換事務機構を再検討することによつて、又株式上場先取引所が、会社書類請求後何日間内に書換をやらなければならい等書換に期限をつけることによつて可なり短縮されると思われます。一方銀行株式取引員等の証明によつて、印鑑の照合等が省略できれば尚期間を短縮できようと思います。根本的には株式書換手数料等をなくして株主書換請求を容易にし、又既存小株券併合を促進して大株券とすることが近道であろうと思います。  (四)株式買取請求権は認めないこと。理由は、合併買收が円滑に進められるのは、現行商法の特徴だろうと思われます。株式買取請求権を認めることは、徒らに会社株主間の紛争を増すことが予想されます。株主合併買收を好まなかつたならば、処分すれば解決するものであります。結局において株主が損をすることとなるように思われます。  (五)拂込又現物出資の給付をした株式引受人拂込期日から株主となること。理由は、会社成立後の株式発行については、株式引受人拂込又現物出資の日から株主となるということを規定しておりますが、設立の場合においても利益配当の計算について拂込期日から起算するようにして欲しいと思います。かくすることが拂込金に対して、果実を支拂うことについて、設立と増資との間の均衡を得させるゆえんであると思います。  (六)株式の著しく不公正な方法、若しくは価格による発行規定は止めること。理由は、何が著しい不公正な発行であるかは、各自の主観によつて違うものであります。不公正な発行発行価格の問題と株式割当との問題が考えられますが、これらは株主に平等に割当てない限り、一般募集をやつたり、無額面株式発行したりする場合には必ず問題を起すものであります。改正案株主立場に重点を置いておるが、影響を受けるのは株主ばかりでなく会社も同じであります。個々の株主立場ばかりを考えることは、却つて紛争を起す種となる虞れがある。取締役の忠実の義務によつて解決すべきであると思います。  (七)登記後の未引受株式に関する規定は削ること。理由は、株式の拂込については銀行又は信託会社拂込証明が要ることになつておる。(商法百八十九條)その上にこういう規定を設けるのは想像に怯えたものである。  (八)名義書換代理人、又は登録機関について。最後に今度新たに規定せられた名義書換代理人、及び登録機関について所見を申上げます。名義書換代理人、又は登録機関規定せられたことは、米国法を採用せられた結果当然かも知れません。併しこれを設けたからと言つて会社でやる事務名義書換代理人に移したというだけで、会社も全然株式事務をやらなくてよいわけのものでなく、代理人がやる外に原簿整理事務が残ります。代理人のやる事務と、会社のやる原簿整理事務との間に混乱が生じなければよいがと思います。代理人を置けば、経費が安くなるというような考えは誤りであります。株主には幾分便利になる場合もあるかも知れませんが、後の整理混乱に陥ることを恐れるものであります。又名義書換代理人も個人では生命に永久性がなく、信用も薄弱でありますから、信用のある金融機関に限定すべきであります。特に名義書換に附随して株券併合、分割、引換をやらせる場合にも、どうしても株券株主名を入れるまでにした白地券とでもいうようなものを、渡して置かなれればならないから、若し信用の薄い者であつたら危険この上もないものであります。尚、株券超過発行を防止するために、登録機関を置くことになつておりますが、名義書換だけなら米国のように書換の都度、新株券を出すのでありませんから無用ではないかと思います。要するに株主のために名義書換を早くさせるためならば、一、会社請求一定期間内に必ず名義書換をなす義務を負はすこと。二、取引所金融機関書換書類の完備、印鑑照合省略等のため協力すること。三、会社名義書換手数料を取らないようにして名義書換を気軽にやらせ、且つ一株券、十株券等併合を促進すること。これをやるべきであつて、場合によつて株券併合のため新法律を出すべきであると考えます。  私の申上げたいことはこれだけでございます。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御両氏に対して何か御質問ありますか。
  7. 松井道夫

    松井道夫君 北里さんにちよつとお尋ねします。累積投票ちよつと触れられたようであります。数名の取締役を選ばなければならん場合に、実際はどういう方法でやつておられるわけですか。
  8. 北里良夫

    公述人北里良夫君) 現在は私の方の会社では議長の指名による方法を取つております。これは別に議長から氏名を前以て言のではなく、株主の方からそういう発言がございまして、そうして議長の指名によつて選出いたしております。
  9. 松井道夫

    松井道夫君 若し何ですね、議長指名ということでなくて、選挙でもするということになつたら、どういう方法でやられることになりますかね。あなたのお考えとしては……。
  10. 北里良夫

    公述人北里良夫君) 別段今までそういうことを考えたことはございませんが、やるといたしますれば大体株主総会に、私の方では株主数十六万前後に出しておつたわけでございますが、実際に総会に出席して来る人数というものは、大体三十人から五十人の間でございます。他は全部委任状による出席でございます。従いまして、投票ということになりましても、紙を四、五十枚発行いたしまして、そうしてそれによる投票をいたします。併しながら大体におきまして、これは私が従来から株主総会形式に流れ過ぎておるということを指摘しておつたのでございますが、過半数のものは委任状によつて大体会社の方から或る特定の、特定というと語弊があるかも知れませんが、或る株主に委託いたしまして、そしてその委任状を行使することによつて、大体においては会社意思通りに或いは行けるんじやないかと予想いたしております。
  11. 松井道夫

    松井道夫君 それで実際おやりになつたことがないというのだから、どうも……。
  12. 北里良夫

    公述人北里良夫君) やりましてもそういうふうにして割合に簡単に行くのではないと存じます。併しながら……。
  13. 松井道夫

    松井道夫君 これは少数株主の代表を出そうというのは、累積投票制度として入れたわけなんだろうと思うのですが、まああなたのお立場としては少数株主の代表を出してやろうというようなことは考えられないわけですね。
  14. 北里良夫

    公述人北里良夫君) これは私個人の考えになるかも知れませんのですけれども、取締役会制度と睨合せて考えなければいけないと思いますが、少数株主の代表を出しました場合に、その選ばれた方々の誰かはですね、その少数株主を代表するという紐付きの取締役であるかどうかという点を、はつきりしてかからなければいけないと思います。従いまして、そういう紐付きのないものであるならば、少数株主の代表を選んだのだというような、又そういうものを選ばせるのだと言つても、その人が気持ちが変れば何も無意味になつてしまうわけでございます。従つて少数株主の代表を選ぶというようなことが、果して現在の会社において必要であるかどうかということについては、根本的な疑念を持つておるわけであります。それが故に、累積投票というようなものをやるというようなことは、又もう一歩進んで無駄なことではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  15. 松井道夫

    松井道夫君 それじや山本さんにお尋ねしますが、あなたの方の会社で、今の二人以上の株主を議長の指名によらないで、選挙か何かでお選びになつたことがございますか。
  16. 山本淳一

    公述人山本淳一君) どういう意味ですか。
  17. 松井道夫

    松井道夫君 二人以上の取締役を選任せねばならんこととなつた場合にですね、議長の指名ということになれば問題ありませんが、そうでなくて、その外の方法でお選びになつたことがありますか。
  18. 山本淳一

    公述人山本淳一君) 今まで私が永らく関東配電におりましたし、今の会社におりまして株主総会のことを扱つておりましたけれども、すべて議長の指名によりまして、投票によつた例というものはございませんです。
  19. 松井道夫

    松井道夫君 そうですか、結構です。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質問ありませんか。ではこの程度において休憩いたしまして、午後十二時半から再開いたします。    午前十一時三十五分休憩    —————・—————    午後一時十九分開会
  21. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは、午前中に引続きまして公聽会を開きます。  日東紡績株式会社取締役社長内藤圓治君。
  22. 内藤圓治

    公述人(内藤圓治君) 商法改正に関する意見を申上げます。  今回の商法改正は、授権資本及び無額面株式制度の採用を骨子とし、これに関連して株式民主化株主権利保護、取締役の自由裁量の拡張とその責任の強化等に及び、株式会社に関する規定の大巾改正をもくろんでおり、会社の運営に重大な影響を伴うものであります。申すまでもなく我が国の株式会社制度は、大陸法の下で運用され来つたものでありまして、英米法への転換に際して、一時的に摩察障害は避けられぬといたしましても、元来資本活動の自由を建前とし、会社の資本調達を容易にすることを目的とせられておる今回の改正は、産業の発展と経済の再建に多大の寄與をなすことは明らかであると存じまするので、我々といたしましても、これに対して賛意を惜しむものではございません。併しながら今回発表されました商法改正案要綱を拝見いたしますると、現今の我が国の経済常識及び株主意識の程度では、時期やや尚早のものもあるように考えます。即ちち株主権利と保護を重視する余り、延いては会社業務執行を阻害し、他の株主利益に反し、却つて改正の本来の趣旨を覆すようなこともあるように存じます。  その主なるものにつきまして卑見を述べますると、取締役及び発起人に対する責任追及の訴を提起する株主の資格は、六ケ月前から引続き資本の百分の一以上の株式を有する者とすることでございます。取締役及び発起人に対する責任の追及の訴は、現行法では資本の十分の一以上に当る株式を有する株主が、会社に対してこれを請求し得るごとく規定してあるのを、要綱第三十三及び第六を以て一挙に株数の制限を廃して、各株主がみずから訴を提起できることになつております。併し代表訴訟は、代表訴訟を行い得る資格を有する者のみが、如何なる場合でも正当な権利の行使を主張し得るのであつて、これを一株主にまで與えるとすると、会社荒し等の常套手段となる危険があり、現状では却つて弊害のみ多く、効果は期待できないと考えます。併し現行法の規定も嚴に過ぎる憾みもありまするので、その資格を六ケ月前より引続き資本の百分の一以上の株式を有する株主の程度まで緩和するのが妥当であろうと考えます。尚右の資格は、同様の趣旨により取締役に対する行為の差止請求並びに整理開始、解散、清算人の解任、特別清算における検査命令等の申立権にも適用すべきものであると存じます。  その次に取締役の選任及び解任、その他総会決議事項に関する決議方法は、現行法通りとして、特剔抉議会社等臨時措置法の規定改正商法に採り入れること、この理由は、改正要綱によりますと、通常総会、創立総会取締役の選任及び解任に関する決議、並びに特剔抉議の定足数と決議方法を嚴重にし、且つ決議事項によつて決議方法が異なるごとく定めてありますが、最近のように株式の分散化と株主の無関心と申しますか、総会招集並びに開催をますます困難にしておる状態で、実際問題といたしまして、会社の重要な事項決議不能となる恐れがあるばかりでなく、決議事項を異にするごとに決議方法を違えることは、会社事務と手数とを徒らに煩雑にして、株式総会の運用を著しく阻害する。よつて取締役の選任及び解任は、通常総会決議事項とし、すべて現行法通りの運用が望ましいと存じます。  大体私の今日申述べたいことはこの二項でございますが、相当大きな商法改正でありまするので、これの運用につきましては、取締役、監査役等、経営者も又株主にいたしましても、従来のこの慣行から急に大きな改正に相成りますと、当分非常にその運営の上に支障があろうと思いますので、どうか実施期は一ケ年乃至二ケ年訓練期間を置いて、十分にこの新しい商法に慣れる期間、研究する期間を與えられたい。要はこの実施期につきまして慎重なる規定が望ましいのであります。以上私の意見を申述べさして頂きました。
  23. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 内藤さんは何か御所用があるそうでありますが、御質疑がありましたらこの際お願いいたします。別におありになりませんか‥‥。次に東京急行電鉄株式会社文書課長三橋順一氏にお願いいたします。
  24. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) 本日大川専務が参りまして公述する筈であましたが、ちよつと御都合がありましたので私が参つたのであります。商法の今回の改正につきまして簡単に考えておりますことを申上げます。  今回その商法改正は、先程申された通り授権資本制度採用、無額面株式発行、それから株主総会の権限を縮小して取締役会の権限を大きくする。これらはそれぞれ会社経営活動を、会社の資金の獲得を円滑にし、又会社経営活動を時宜に応じて円滑ならしめるものでありまして、誠に結構な改正だと存じます。  次に株式民主化と言いますか、経済の民主化と言いますか、そういう観点から株主の権限を非常に大きくするような改正になつておりますが、株主権の拡大につきましては、先程申されました通り現在の株主が、殆んど会社経営については無関心と言つてもいい程の状態で、株主権を今回の改正の通り拡張することについては、まだ時期尚早と考える次第であります。  その主なる点についての意見を申上げますと、先ず要綱十四に、株主総会招集請求することができる少数株主の資格を緩和することとなつておりますが、現行商法では資本の十分の一以上の株主が、株主総会招集請求できるようになつております。これをそれより緩和するとこう趣旨でありますが、現状といたしましては、十分の一程度を株主総会招集請求の限度とする方がよろしいように考えるのでありまして、これ以下にいたましすと、しばしば株主総会を開催させるようになりまして、又その上費用会社が持つということになりますと、他の株主に対しても迷惑がかかる。尚これが悪意の株主或いは極くの数の株主の自己の利益にするためにこういうような手段が取られますと、会社も迷惑しますし、一般株主を大きな迷惑を蒙ることになりますので、是非これは現行法通り資本の十分の一以上の株主に止めて頂きたい、そういうように考えます。その次に要綱の第十五、通常株主総会決議を嚴重にいたしまして、拂込済株式の半数以上の出席を定足数とするように改めることになつておりますが、現在現行法で定足数を決められておりますのは、極く重要な事項に限つて特剔抉議を要する、これは三百四十三條でありますが、その決議の場合に限つて定足数を求められておるのでありますが、現在特剔抉議をする際には、その定足数を集めるために委任状を発送するように株主に依頼いたしましても、一度では極く少数しか集まらない。更に督促しても尚それを充足することができないで、各株主の個人の宅に行きまして委任状を貰う、そうしなければ総会が成立せんというような現状であります。かように株主総会の定足数を集めるということは、非常に困難な際に、通常株主総会に対しても、拂込済みの株式の過半数の出席を要するということは、株主総会の開催が非常に会社にとつて負担が大きく、又困難なものとなるものでありまして、現在の株主会社に対する認識程度では、かような定足数を定めるということは適当でないと考えるのでありまして、是非これを現行通りに出席株主の過半数を以て決議する、そのままにして頂きたいと存する次第であります。尚改正要綱では定数を以てすれば、特別の定めができるようになつておりますが、原則はやはり現在通り出席者の過半数を以て決する。要綱とは逆に現行通りにして頂きたいと思います。  それから要綱二十一に、取締役の選任の場合は、定数を以ても拡込済株式総数の三分の一以上の出席がなければならん。定数を以てもその制限を下ることはできないというふうになつておりますが、先程申し上げた理由と同じように、これは現行通り出席者の過半数を以て選任できる。さように現行通りにして頂きたいと考えるのであります。  それから要綱第十九と第六十三の両方についてでありますが、要綱第十九には営業譲渡の場合、又六十三は合併の場合に、営業譲渡又は合併に反対する株主に対して、株式買取請求権を認めておりますが、これにつきましては、反対株主に対して株主買取を会社請求し得る方法を認めますことは、先ず実際問題としまして会社が買うといたしましても、買取価格の決定につきまして、公正な価格を協定することが非常に困難ではないかと思います。それで結局裁判所を煩わすか、或いは会社も適当に妥協しまして、適当うな値段で買う、勢いそういうふうになると思うのでありますが、その結果は不当な価格で買えば外の株主に対して迷惑をかけることになりますし、又裁判手続をするということになると、これは又会社に取つて手続の煩に堪えんのであります。それから又会社がこういうふうにして買取つても、尚自己株式としていつまでも保有することができませんので、競売するか、或いは減資しなければならんことなりますが、競売することについても勢い安い値段でせざるを得ないようになるんじやないかと思います。尚市場で売却困難な株式も往々あるのでありますが、かような場合、かような株式については、営業譲渡或いは合併の際、故意に反対しまして買取の手段として利用されるようなことにもなりまして、非常に会社に取つては工合が悪い、又外の株主に取つても不利益な結果になると思いますので、この要綱第十九並びに第六十三の株式買取請求権の項は削除して頂きたい、さように考えます。  それから要綱第三十、これは備付書類のことでありますが、取締役は決算期ごとに会社業務及び財産の状況を詳細に記載したる書類を備えて置くことを要しまして、各株主がそれを自由にいつでも閲覧し、並びにその謄本を取ることができる、こういうふうになつておりますが、会社の細かい内容をいつも書類にして置くということ、会して置くということは、会社が大きくなればなる程、非常な大きな複雑なものになりまして、それを作成するにも可なりの労力も費用も要りますし、これがために会社の正当な業務が阻害されるようなことにもなりますし、又些細なことで会社株主との間の平和を害するようになり、訴訟事件を頻発するようになるかも知れません。先程申上げたように現在の株主会社に関する関心が薄い場合には、勢い一部の株主、或いは会社荒しといいますが、そういうような悪意の株主に利用されることになりまして、会社としても非常に迷惑になるここと思うのであります。現在の株主のためにもよくないと思います。  以上述べたことは要するに株主を保護するために、個々株主権利を大幅に與えるように今回の改正ではなつておりますが、現在の株主の自覚の程度では尚そのような権利を與えることはその段階ではなくて、そのようにすれば却つて逆に悪意の株主、或いは党略のためにする株主のために利用されまして、会社の平和のためにも芳しくない結果になるのではないかと考える次第であります。  制度としては非常に理想的かも知れませんが、現在日本株式会社の運営の状況から見まして、まだ妥当ではないと考える次第であります。以上簡單でありますが、これを以て終ります。
  25. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 質疑は後で一括してお願いすることにいたします。次には弁護士藤林益三君。
  26. 藤林益三

    公述人(藤林益三君) 先ず改正案に対する意見といたしまして、第一にこの改正案と我が国の実情との関係からお話したいと思います。今度の商法改正法律案はアメリカにおいての相当大きな会社を規律する法律をまあ貧弱な我が国の全部の会社に対して輸入しようとするようなふうに感ぜられるのでございます。我が国の十六万余りに上ります株式会社のうちで、資本金の千万を超えるものはそう沢山はない。恐らく数百を算える程度ではないかと私は想像するのでございますが、そうしてその一部のものが証券取引所に上場せられたる株式を持つ会社であろうと思います。そうしてその残りの殆んど大部分はどういう会社かというと、私達の経験するところによりますと親戚知人を以て集められた小さな規模の会社、即ち家族的な小さな会社に過ぎないものが多いのでございます。それからこれは論外でありますけれども、又その中には登記簿上の存在だけがあつて、実体のないものがある。それから又最初からインチキな預け合いなどによつてできました、成立の形式だけは整つたものが多いわけであります。これなんか論外かも知れませんが、大体小さな株式会社というものは元來合資会社有限会社の組織によるべきものであつて、こういう株式会社組織によるべきものでないのかも知れませんが、大体日本の習慣が株式会社でなくては銀行から金が借りられないというようなことで、大体株式会社であれば世間が信用して呉れるというような……株式会社法律が非常に嚴格に外面的にはできておるが、案外それを利用することが簡單である。そうしてこの法律に違反いたしましても罰則というものが表向には嚴重にできておりますが、実際にこの商法の罰則が適用されるということは殆んどない。こういうような実情によつて株式会社制度というものが小さな組織にまで使われておるというような実情でございます。それで日本の現在の実際の状態に先ず着眼いたしまして、それで以て考えなければなるまいと思うのでございます。それで今度の改正案を見ますると、これに盛られておりまする大変結構な優秀な制度も、今日の日本一般民衆の法律知識、或いは又経済の倫理というものの程度の低さとか、それから又株主全般の自衞意識というか、自分の権利の主張の弱さ、弱いどころか殆んどやらないという実態を見ますと、残念ながら今度の新らしい優秀な制度も我が国の会社に適用するのには未だしの感じを禁じ得ないものが多いように見受けられるのであります。そこで実際上の必要のないところにこのようなものを持ち来たりますと、その結果は空文に帰してしまう。それだけならよろしうございますが、却つて逆に一部の人に濫用せられまして、我が国の経済界に多大の支障を来たすのではないかと案ずる点も見受けられるのでございます。  第二に、実際上の必要がないと認められるものを申しますと、先程から問題になつておりまする大きな制度は授権資本制度、これは非常に賛成する人もございますけれども、急にこのような制度を採り入れなくても、いわゆるドイツでできました認許資本のような制度を利用した方が、従来の制度とよくマツチするのではないかと思うのでございます。併し法案によりますと、これは定款の上で会社発行する株式総数というものと、会社設立に際して発行する株式総数、これを最初から定款の上で合致させて置きますれば、実際上は採用しないて済むのでありますから、実際にはこうして採用しない会社も多く出るのではないかと思います。  それから二番目の大きな制度といたしまして、今度の無額面株式制度、これは授権資本制度よりも余程注意しなければなるまいと思うのでございますが、取締役によつて濫用される虞れが非常に多くあると思うのでございます。今日のように株式の値段が額面を下廻つておりますような時代に資本調達に困難を来たすような場合には、額面以下で発行すること裁判所なんかで許可して貰うというような額面下発行許可制度というものを設けたら済むのではないかと私は思うのであります。勿論今度の法案におきましても第二百八十條の十、十一などで株式を非常に安い値段で取締役発行しましたときには、これを株主が差止める権利を認めたり、それから公平な値段と安く売出した値段との差額を株主から会社に返還させる義務を課したりしておりますけれども、これは理屈では成る程そうなるように思いますが、実際これをやるということは大変やりにくいことであり、又やりましても後手に廻つてしまつて、うまく行かないような場合が多いのではないかと思うのであります。併し又、その授権資本制度と同じく、無額面株式制度というものも定款に記しておりますれば、排除することができまするから、実際はこれを採用する会社が多いのじやないかと私は思うのでございます。要するに、この二つの制度は、実際は余り必要ないのじやないかと思いますけれども、定款の上で排除することができますから、何とかなるのじやないかと思います。併しこの両制度を認めますにつきましても、日本のように、先程申しますように大きい会社が少くて、小さい会社の多いような国では、小さい会社にはこういうものは適用ができないように、株式会社を二種類に分けるような方法考えなければならんのじやないかと思います。こういう意見は、日本弁護士連合会でも、この商法改正につきまして、研究会なり委員会を開きましたが、そういう意見でございました。  それから第三番目に、実際上そこまでしなくてもよいと思いまするのは、株式譲渡制限、それから株券の裏書禁止を認めないというようにすることでございまするが、こういう制限をしてはならないということを、法律で以て規定いたしませんでも、自然に会社が大きくなりまして、大衆的に株券を調達して資本を充実しようという必要がある場合には、自分でこの譲渡制限とか株券の裏書による譲渡というものを制限するような規定は撤廃するのが従来のやり方でございますので、何もこれを法律で以てわざわざ窮屈にする必要はないのじやないかとも思われるのでございます。実際問題といたしまして、割合に小さなグループでやつておりまする知合いの会社なんかで、株式が他人の全然知らない人のところへ行つてしまうというようなことは、大変不自由なこともありまして、又そういう一面、何もそうして制限しても、制限が邪魔になる、或いは害になるというような場合ばかりじやないのでございまして、そうして置いても決して差支ないと思うのでございます。実際こういうような規定ができまするというと、日本株式会社の中では、今度直ちに有限会社、そういうものへ組織変えでもしなければなるまいと思われるものが沢山あるように見受けられます。  以上で私の実際に必要がないと思われるものを申述べたのでございまするが、この実際の必要のないところへいろいろの制度を持込んだならば、濫用されるのじやないかという心配のあるもの、これを申述べたいと思います。  第一に、先ず先程から問題になつておりますところの株主権の拡張の問題でございまするが、株主としての地位の保護というものは、主として利益配当請求権と、株価の維持、株の値段の維持に向けられるべきものではないかと思うのでございまするが、この利益配当請求権と株価の維持という限度を越えまして、企業の経営を阻害するというようなことは、考えなければなるまいと思いのでございます。殊に先程から繰返して申します通り、我が国には小規模の会社が多うございまして、その小さい会社におきましては、株主は単なる株主として存在するだけではないので、自分か又は自分の知人が経営に殆んど関係しているものが多いのでございますから、その経営に直接繋がることによりまして、会社利益を享受しておるものでございます。従つて、単なる株主としての立場から、利益配当請求権や株価の維持に関心を有しておるような株主のある会社というものは、大体相当大きな会社であろうと思われます。このような事実からしまして、株主会社に対して、会社法上において認められた権利を振うというのは、大体立派な大会社に対しまして、会社荒しがその権利を振う場合と、それから小さい会社に対しまして、会社の乗取りとか、或いは又いわゆる経営権の争奪でございますが、そういうような方法としての場合と、二大別せられまして、殆んど公正に株主としての会社法上の権利が利用せられる場合は、まあ残念ながら余り多くないのではないかと思います。従いまして、今度少数株主権が、会社資本の民主化に伴いまして、発行株式総数の百分の三、総会招集権なんかでございまするが、百分の三に緩和せられたり、又会計帳簿及び会計書類閲覧権とか、謄写権が新たに十分の一の少数株主に認められたりしましたようなことは、これはまあ止むを得ないといたしましても、各個株主、単独株主に対しまして、先程も問題になつておりまするところの、取締役や発起人に対する責任追及権、これは従来少数株主権でございましたけれども、こういうものや、それから株式買取請求権、それから取締役行為差止請求権とか、取締役株式発行停止請求権、こういうものを與えるということは、大変会社荒しに対しまして好餌を投げ與えるようなことになりはせんかと思うのでございます。従来少数株主権でありましたところの取締役や発起人に対する責任追及権、今度の二百六十七條等でございまするが、これはどうしても認めなければならんということでございまするならば、この訴訟は取下げを認めないようにして貰いたいと思うのでございます。殊に無條件に取下げするということはいけないと私は思うのでございす。ただ会社を脅かして何とかするためにこういう権利を振廻す、ただ訴訟だけ起すというような結果になりまして、会社から幾らせしめたら取下げするというようなことではいけないので、これはどうしても取下げに一定の制限を加えて貰いたい。どうしても止むを得なければそうして貰いたい。殊に二百六十八條の中で、この訴訟に対しましては補助参加が認められておりますけれども、補助参加というやつは、誰かが訴訟を起したのに対して、外の人が補助をするために参加するのでありますから、最初に訴訟を起した人間が取下げた場合には、後でそれに参加した人間はすつかりおじやんになつてしまうというようなことになると、これはどうにもならないことになりまするから、その点をどうか考えて貰いたと思うのでございます。それからやはりこの責任追及訴訟におきまして、二百六十八條の二に、訴訟費用、殊に弁護士の報酬などを、勝訴した方の株主に対して会社から出さなければならんような規定がございまするが、これは結構だろうと思うのです。ところが、外の買取請求権とかいうものを訴訟でやりました場合のことは、弁護士の費用とか、そういう訴訟費用のことは書いてございません。併しこういうものは実際はどうしてこれにはお書きにならなかつたか。ひよつとするとそこまで保護してやると濫訴の弊を生ずるものと思われたのかも知れませんが、実際やる必要のある訴訟ならばどんどん会社から金を出してでもその訴訟費用負担してでもやらしたらいいので、そのを取下げのできないように、それを濫用できないようにして貰いたい。こう思うのでございます。又取締役行為差止請求権、株式発行停止請求権ということが書いてございますけれども、実際に差止めの請求権を法律手続でやりますということは大変にむずかしいことでございまして、こういう点についても何かもう少し考える余地がなかつたものかと私は考えるのでございます。殊にこの責任追及訴訟というものは、株主取締役に対してやるだけでなしに、馴合いで取締役から或る株主を使嗾いたしまして馴合訴訟を起す。そうしてその確定判決の効力が会社株主全般に及ぶことを利用するというようなこともございます。これに対しましては二百六十八條ノ三で再審の訴も起せるということになつておりまするから、なかなか理論の上どこ結構でありますけれども、こういう点も実際は行い難いのであります。こういう実際を余程考えて貰いたい。これが単なる株主に認められたる権利でございますから、私達は非常に大事に思うのでございます。それから殊に株式買取請求権、これは実際は理論的にも日本会社制度では変なものでありまして、民法上の組合とか、合名会社とか合資会社とかの社員の持分権でも論ずるような場合の、ちよつと契約法的な財団法人を論ずるには不向きな法律論であると思うので、理論的にもこの株式買取請求権というものを日本株式会社に認めるということはどうかと思うのでございます。要するにどんなに罰則を強化いたしましても、日本の現在の状態では会社荒しというものは実際上取締りができていないのでございますから、このような現状ではこういういろいろの権利株主個人に認めるということは、狂人に刃物を持たせるようなことになつて、危なくてしようがないと我々は心配するのであります。それから次に株主権の濫用について申上げたいのは、今度の改正案を見ますと、株式会社だけでなく合名会社、合資会社にも関係いたしまして、会社編の規定には訴について担保の提供を要しないものとしておりますが、この株主総会決議取消の訴とか、監査役に対する訴等の訴におきましては、訴訟を起す側におきまして担保を提供しなければならないというふうになつておりましたけれども、今度これを削除することになりましたが、これは訴訟を濫用する弊害をますます助長するのではないかと思いまして心配するのでございます。それからもう一つ、この昭和二十三年の商法改正のときにわざわざ置かれましたところの裁判所の裁量により請求棄却を認める規定が廃止されました。これは例えば二百五十一條におきまする株主総会決議取消の訴等、この規定が削除せられておりますが、これも大いに考えて貰いたいと思うのであります。と申しますのは、例えば株主総会招集の場合に十四日を置かなければならない。その場合に十三日でありますと、ただ一日郵便の消印が遅れたばつかりに、わざわざ多数の費用と労力をかけました株主総会招集が取消されるということは、疵があるから、瑕疵があるからいたし方ないといたしましても余りにつまらぬ、こういうふうに考えます。会社荒しなどのために、僅かな瑕疵に乗せられまして、会社が大損をするような場合が沢山あるのでございます。又アメリカなんかでは裁判所の裁量権を非常に狭くしておるように聞いておるのでございまするけれども、我が国の裁判所では、こういう点につきまして余り間違つたことがあるようには聞いておりません。私達は裁判所をその点は信用しております。それからたとえ少々間違いましても、上訴制度も認られておりまするし、この規定を今度削除されることになりますることは、甚だ残念に思うのでございます。  それから次に申上げたいのは、株主総会とか取締役会におきましても、そういう会社の機関の定足数に伴いまして先程来も申されておりまする問題について申上げたいことがございます。  先ず株主総会につきまして、先程申す通り我が国には小さな会社が多うございまして、中には沢山こういう会社があるのです。殆んど株券がない会社……。今度は株式発行することはどうも会社義務なつたように見受けるのでございますけれども、実際は私達の拵えた会社でも株式発行していない。株券はあらたかそうなものでなくても、画用紙に謄写版で印刷してもよいと思うのでありますが、そういうものさえも発行していない会社があるのでございます。そういうような小さな会社では株主総会の定足数は問題はないので、皆寄つて来ます寄らないでも大体問題がないのであります。問題になるのは結局大会社、それから小さな会社でも会社の乗取りの喧嘩をするような場合の定足数が問題になりますので、こんなのは大して大きな問題ではないと思います。結局我が国産業界で重きをなすところの大会社の定足数が問題になります、財閥の解体とか、株式民主化に伴いまして、殊に企業の再建整備がなされました今日では、大会社株式は数万というか数十万の会社もございまするが、大勢の株主に保有せられております。そうしてこれらの株主総会招集しますのに会社の使いまする手数と費用というものは非常に莫大なものになつておるのでございます。この戦争中の昭和十九年の三月に施行せられましたところの会社等臨時措置法は、本来臨時の特例でございまして、当然今日になりますると廃止せられなければならん運命にあるものでありまして、いたし方ございませんけれども、その中には大きな会社にとりまして非常に便利な規定もございまして、その第三條は定款で定めて置きさえすれば招集通知を公告で以て代えることが許されておりまして、この規定の努力は去年の末を以てなくなりましたが、実際言いますると、私達は今度商法改正になるということを聞きまして、こういう規定を入れて貰いたい、そういうような安易な気持でおつたのでございます。実際大変便利に思いました。然るに時勢は私の考えとは勿論逆行でありまして、証券取引法のこれは百九十四條でございますが、上場株につきまして総会委任状を集めるのに大変な制限を定めまして、それで今日では定款変更など、どうしても定足数を要しまする株主総会の場合には、大会社委任状を集めます努力と経費が大変なんです。そうして折角印刷しましたものをどつさり送りましても、株主の人は全然見えないのでございます。併しこれは仕方がないので、証券取引法が変らん限りはどうにもならんと思うのでございますが、実際そうなんでございます。聞きますところによりますと、アメリカではヴオーテイング・トラスト、議決権の信託という制度や、株主総会委任状が大変数年間も使える。今度の改正案では、それが制限せられましたけれども、アメリカでは現在そういう制限はせられない。数年間も努力のある委任状を使つておる。この委任状をヴオーテイング・トラストの方法で以て定足数を満足さすことが容易になつておるように聞いております。日本はそういうことがありませんので、先程も会社関係の方からおつしやつた通り、大変苦労しておる状態でございます。こういうような実際の状態の際に、通常総会におきましても定款に別段の定めをして置きませんと、発行株式数の過半数に亘る株主の出席をしなければならんということは、どうかと思うのでございます。殊に通常総会でも取締役選任決議の場合には、定款規定によりましても、総数の三分一未満に下すことはできないという二百五十六條ノ二の規定がございまするが、これは大変厄介なことでございまして、今度の改正案によりますると、取締役の地位というものが大変重要になりまして、それを選ぶということは非常に大事なことでございまするけれども、現在の日本の状態から言いますと、それは余計な制限じやないか、こう思うのでございます。それから株主総会に関しまして、取締役の選任について累積投票規定でございまするが、これは多分各会社定款で排除いたしまして、空文に帰するんじやないかと存じます。四分の一以上の株主がこれを望むというならばやらなければならんとありまするが、実際これをやつて呉れといつて出て来る場合は余り想像できないのでございます。それから特剔抉議議決権の数は大変加重されました。従来は頭数と株式数の半数以上が出席して、その過半数でというのでありまするから、大体資本の四分の一でやれたわけでありますが、少くとも資本の半分が出て満場一致でやらなければできないということになりますので、大変これは困難なことじやないかと思います。併し実際は実情から申しますると、数さえ集めますれば満場一致でやりますので、本当は大して問題ではないかとも思うのでございますが、少くとも前の特剔抉議の倍は寄せなければならんということになりますので、大変な制限であらうと思います。併し幸いなことに頭数をのけられましたので、この点は非常に便利になりました。これは非常にいいと思うのであります。それから定款変更なんかをいたしまする特剔抉議におきまして、どれもこれもいつしよくたにむずかしくいたしませんので、原始定款と通常定款と分けまして、原始定款を変更する場合はちつとむずかしくして、それから例えば支店の設置、支店なんかの点を改正するような場合には、もつと簡単にやれるように同じ定款変更でも特剔抉議でも、二つの場合を分けるようにしたらどうかと思うのでございます。  それから株主総会を離れまして取締役会のことでございまするが、取締役会法律規定せられまして、これは実際はこれまで普通の会社では定款で以て決めておりましたから問題ないのでございまするが、この取締役会に定足数をやはり求めておるということは、実際は無理なんじやないかと思うのでございまするが、実際は脱法的な持廻り決議が行われるということになりまして、この持廻り決議をやつた場合の努力、これに対しまして対策はどういうふうになつておるのか、実は疑問い思うのでございます。  大体私の申上げたいのは沢山ございましたけれども、かい摘まんで申上げますと、こんなものでございますが、今度の改正案はこれは通りますと、我が国会社法の基本構造に大変な影響を與えまして、殆んど明治三十枚年に商法ができまして初めての大改革で、殆んどひつくり返してしまうような変化でございまするから、みんながその頭になりまして勉強したり、準備したり、それからこの改正に応じまして組織変更、例えば有限会社に直すというようなのには、相当時間もかかることだろうと思いますので、この改正の附則に定められておりますのは、来年の六月一杯に施行しなければならんということになつておりますけれども、実際はもつと必要なんじやないかとこう思うのであります。殊に外国会社に関しまする規定なんかは、外資導入のために必要な分だけを早くして、残りの分はもう少し先にしてもらいたい、こう思うのでございます。弁護士連合会におきましても、この施行準備期間をもう少し沢山おいて呉れということは一般の要望でございました。併し私は今日は固人の資格で申上げるのでございます。
  27. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では次に全日本金属労働組合副執行委員長林武雄君。
  28. 林武雄

    公述人(林武雄君) 今回の商法改正案は、株主経営に対する監視権を増大すると同時に、取締役会の自由裁量の権限の強化を目的としておるように思われますけれども、総覧しますと、外資の導入には非常に便利だと思いますけれども、必ずしも少数株主権利を十分に保障していないと思われます。特に要綱に比べてこの法律案におきましては可なりの点が骨拔きにされています。その点に対しては例えば総会荒し或いは会社荒しを懸念して、商法の一部を改正したように思われますけれども、この程度の改正ではまだまだ合法的な会社荒しは幾らでもできるのであつて、それに対しての商法改正としては不十分である。むしろ今度の改正において最も会社に対して重大な関係があり、殊に大きな債権者であるところの使用人、その代表的なものは労働者でありますが、これが終戰後の生産復興に非常に大きな力を添えている功績が相当にあるにも拘わらず、これに対する何らの保障規定がない。特に最近においては労働者の賃金の遅配或いは欠配状態が続いておるので、この重要な経営における要素である使用人の地位を法において十分に保障されなければ、ポツダム宣言が目標としているところの経営民主化を達成することができないと考えるものであります。特に使用人に対しては労働基準法によつて法益が認められておりますけれども、この程度の改正においては基準法の精神すら十分に目的を達することができない。一部で惧れているように、使用人を個々人としての債権者として扱う場合に非常に沢山の複雑な手数が要るように言われておりますけれども、むしろこの場合においては給料債権者としての労働者を個々人として扱うのではなくして、むしろ労働組合法に規定されているような労働組合を代表者というふうにして、十分に債権を保護する規定を加えたならば、繁雑或いはその他の不便は十分除かれるものと確信しております。以上の趣旨に基いてこの改正各條項に亘つて申上げたいと思います。  第一番に、改正の二百三十七條、ここにおいては少数株主総会招集請求権が認められていますけれども、要綱にあつたことく招集費用会社負担になつていないために、事実は空文化する虞れがあるので、これは招集費用会社負担ということに改正したい。  次に、改正の二百四十五條、これは要綱の十九ですが、ここでは「営業讓渡又はこれに準ずる場合において、これに反対する株主会社に対する株式買取請求権を認めること。」という規定でありますが、これが更に法律案においては株主総会に先だち会社に書面を以て通知しなければならない要件が加わつております。これは削除して貰いたい。理由はこういう複雑な手数を予めすることになつては、事実上この條文は空文化する。ですから総会において反対する、それによつて成立することでこれは十分足りると考えるわけであります。  次に二百五十五條、ここで取締役の員数は資本の割合によることを明確に規定したい。而もその場合でもそれぞれの場合における最低限の取締役の員数の規定を附加する必要がある。こう考えております。  次に前に遡るようですが二百四十五條の一項の一号を今度の改正案において「一部ノ讓渡」というところに更に「重要ナル」という制限を加えてあるが、これを削除する必要がある。何となれば二号においては委任された場合においてすらここに規定されているのであつて、委任との均衡を失する。特に販売会社なんかを分離して設立する。そのために取締役が不当な利益を得、株主の正当な利益を削除される虞れがある。そういう理由からして「重要ナル」という形容詞は削除する必要があると考えます。  次に改正二百五十六條の三、ここに取締役の選任の規定がありますが、この第一項及び第二項を削除し、株主請求がなくても累積投票によることに改正する必要がある。理由少数株主利益を反映しないのみならず、特に最近銀行、つまり金融先から当該事業について識見、手腕のない者の天下り人事が行われ、却つて経営を悪化させるという実情相当あるので、その点から考えて以上のようにしたい。  次に改正二百七十三條以降において会計監査役の規定があるけれども、この監査役の員数を三人以上たることを要する旨を明らかにして、且つ監査役は職業的に資格のある会計監査人即ち公認会計士又は現在の計理士であることを要する規定を附加すべきである。又要綱の二十二の累積投票の取扱を会計監査役にも適用する必要がある、こう考えます。理由は会計監査の公正を期するために必要であり、殊に労働組合法のごときも、第五條第二項第七号において職業的に資格のある会計監査人の監査を要するということがあるくらいであるから、会社においても勿論その均衡から考えて当然そうすべきであると考えます。  次に改正二百九十三條の五及び六、これに関係して改正二百六十三條、これの中に、会社書類閲覧及び謄写権の規定がありますが、その中に株主と書いてあるけれども、先程申上げた理由によつて、労働組合の代表者という字句を加える必要がある。改正の二百六十三條においては、株主会社債権者株主名簿総会及び取締役会議事録のみは閲覧或いは謄写できるようになつておるけれども、二百九十三條の六に至ると、株主のみがこれができるような規定になつておる。これでは不十分だと考えます。  更に二百九十三條の七、取締役は実際上は以上のような処置ができないような制限規定が行えるように書いてありますが、これは削除する必要がある。特にその中の四号においては「不適当ナル時ニ……請求ヲ為シ」という字句がありますが、これは事実上この字句を利用して、この閲覧権、謄写権を字文化する。理由としては先程申上げた通りでありますが、労働組合の代表者を加えることは、一つは経営民主化のために必要であり、更に重要なる債権者が労働者であるということ、更に労働組合は平生の実情に最も明るいために、他の株主、特に少数株主利益をそれによつて保護する。こういう利益があるからであります。  次に改正二百八十條の八、ここで現物出資についての規定がありますが、現物出資の場合は労働組合の代表者をその資産の評価に参加させることを附加する必要がある。理由は種々の場合において、不適当な現物は、単に評価額の当、不当以上に経営に非常な不利益を與える場合が最近ありますので、これを防止するには経営の職制による関與というものでは、十分目的を達し得ないので、経営に直接関係のない労働組合の代表者が関與することによつて株主利益を十分保護することができると考えるものであります。  次に改正二百八十條の十及び十一、ここで株式発行の不公正についての規定がありますが、「著シク」という字句があるためにこの目的を達せられないので、この「著シク」の字句を削除する必要がある。単に不公正としても濫用される弊害はないと考えます。  次に改正二百八十九條、ここで利益準備金及び資本準備金、この流用できない規定がありますが、特にこの場合は先程申上げた理由から、使用人としての労働者の賃金には流用できる規定を附加する必要があります。理由は一時的な経済事情によつて不当に……最も生活に関係のある賃金、これは一般の売買債権よりも更に喫緊な問題であるが故に、労働組合法、労働基準法その他によつて保護されておる。この場合の流用をここで規定しないならば、非常に不均衡な結果を招くという点からであります。特に労働基準法の二十四條において、一定の期日に賃金を支拂う規定があるのに、このような流用ができる規定がないと、甚だその法益を害すると考えたからであります。  次に二百九十三條の三、ここにおいて法定準備金の資本組入れ及び無償株式発行規定がありますが、これは全文削除する必要がある。理由は只今第二百八十九條について申上げた理由の外に、資本が膨脹することによつて、新たに法定準備金の増額が必要となる。そのために著しく会社の採算上、特に賃金その他において支用人に対して圧迫を加えて結果になるからであります。  次に改正三百四十三條、ここで定款の変更について、仮決議ができるように書いてありますが、この仮決議権を抹消する必要がある。理由は実質上、総会民主化をこの規定によつて空文化する虞れがあるからであります。  以上が要綱並びに改正法律案に書いてある点についてですが、更に二、三の点について附加すべき点を申上げたいと思います。会社成立発行する株式増資の十分の一以内について、労働組合に対し優先的引受権を與える規定を附加する必要がある。特に合併の場合その他を考慮して、この規定会社成立後とするのみならず、会社設立に際しても規定を及ぼす必要がある。設立後に労働組合の結成される場合もあるので、こういう場合を考慮して、株主総会において労働組合の代表者は仮に株主でなくても決議権は持たなくても、発言権を認める規定を加える必要がある。その理由は給料債権者経営に関する理解の程度は、少数株主の比ではなく、その賃金総額は売上金額の三割とか五割を占める場合があるのであつて、資産総額に対しても相当の割合を占めておる事実を思い起せば十分であると考えます。特に株式は非公開、又は非上場の場合があるので、この場合の株式民主化と、経営民主化のために労働組合の参加は絶対に必要である。これを総会荒し、或いは会社荒しと混同するのは誤りであると考えます。  次に商法の第二百三十九條の第四項を抹消する必要がある。理由は、同項には「総会決議ニ付特別ノ利害関係ヲ有スル者ハ議決権ヲ行使スルコトヲ得ズ」と規定してありますけれども、この「特別」ということの濫用を防ぎ、特に先程申上げたような使用人たる労働者の経営に対する発言権、その他を増加する場合において、この「特別」という文字のために事実上その運用で目的を果し得ないことになる結果を防止するためであります。この「特別」と規定してあることの法の目的は、むしろ無記名投票によつてその弊害は十分避け得られると考えます。  次に商法二百九十五條の規定株式会社のみならず、商法上のあらゆる組織について拡張適用する必要がある。理由はその二百九十五條において使用人の賃金、退職金等を含むところの先取特権の規定でありますけれども、これは株式会社の使用人に限定すべき理由はないからであります。  次に確定せる給料債権、これは賃金、退職金等を含みますが、これを弁済せずに、会社財産の譲渡、或いは抵当権、質権等の設定を禁止する規定を設ける必要がある。理由は前と同様の理由によつて労働者の権利の不当な侵害を防止するために必要であるからであります。  次に会社譲渡合併の場合に、労働協約に定めた使用人の権利が承継される規定を附加える必要がある。理由は前と同様で、善意の譲受人、合併者及び使用人の権利を保護するために必要だからであります。  次に財務諸表の規定がありますが、この体系の中から財産目録についての規定を削除する必要がある。理由は実際上貸借対照表を以て足りるのであつて、財産目録を加えることによつて何らの実益がない、手数が重複するのみだからであります。以上で公述を終ります。
  29. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では公述人に対するところの質疑を願います。
  30. 松井道夫

    松井道夫君 藤林さんにお尋ねいたします。会社債権者保護という立場から新らしいこの改正について何か御意見ございませんか。
  31. 藤林益三

    公述人(藤林益三君) 格別に今度の改正について直接感じたことはなかつたので、申上げなかつたのでございますが。
  32. 松井道夫

    松井道夫君 なければ結構です。
  33. 大野幸一

    ○大野幸一君 順次お尋ねしたいと思います。三橋さんと藤林さんの御両人に……。あなた方の観点は主として会社側に立つての御観点会社経営する側に立つての御観点からの御公述であつたのか、百株、二百株の株主の側に立つてのことは余り考慮されなくて、專ら会社自体の側に立つて観点からであつたのでしようか。
  34. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) 私の場合はそうでございます。
  35. 藤林益三

    公述人(藤林益三君) 私の方も大体そうでございますが、実は百株、二百株の株主の保護ということですと、先程申しましたように小さい会社では百株、二百株の株主は、株主としての立場は少いから、近頃の会社ですと今日の段階では、株が不安になれば会社の株を売つてしまう、危なければ売つてしまうというので、株主というものは今日それ程熱意を入れて会社の改革に乗り出そうというような人はないのでございまして、株が惡ければ惡い値段でちよつと上つた時に手放してしますというので、余り株主権利を行使するということがないので、余り考えないのでございます。
  36. 大野幸一

    ○大野幸一君 三橋さんにお尋ねいたしますが、一方あなたが民主化のためにこの法案が提出されたと言いますが、民主化とすればやはり大勢の意見株主総会において反映せしめる、株がものをいうのでなくて、株を持つておる人がものをいうわけです。そこで大株主意見を述べ、小株主意見を述べるところにそのデイスカツシヨンによつて会社経営の向上を図ろう。こういうことが民主化であるのであつて、もう一つはやはり民主化とは、財閥をなくしたあとに、一般の大衆に開放するという意味があるのですが、そういう方面から今ここでお考えになれば、この法案はやはりそういう点を衝いておると考えられないでしようか。会社側から見て……。
  37. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) 理論的にはそういうふうになるのですが、実際先程申しましたように、現在の株主会社に対する関心でありますね。デイスカツシヨンをするだけの関心があれば、総会機会についでも出席できるのでございますから、機会は決してないわけではないのですから……、ところがみずから進んでそういう機会になかなか出ようとしないのでございますね。会社はそれについて手段を盡しておるが、なかなか集らないわけです。そういうように株主会社経営に対する関心をもつと高める方向に何といいますか、民衆を指導することが必要でありますが、現在はまだその段階には達していないと思います。
  38. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると関心を高めるためには、総会の出席数を成るべく多くするということに常に努力し、株主総会が流会になつたというようなことたびたび行われれば、株主は自然とそこに関心を持つて株主総会に出席する、或いは委任状を出そうと、こういうようなことが考えられる。そこでそういうふうに法律によつて指導して行くという方面はどうでしようか。
  39. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) 現在の会社経営の状況から見まして、会社に対して徒らに負担が多くなりまして、会社立場としてはそういう方向については同意しかねるわけです。
  40. 大野幸一

    ○大野幸一君 会社立場として、只今の営利会社としての立場でなくて、企業家としての一種の労働負担、大きい意味の企業家としてです、労働負担として利益は全部に、民衆に開放するという考えで、それを言う意味じやないのですね、どうでしようか。そういう従来の考えから言うお感じでしよう專ら……。それはまあちよつと議論になりまして誠に申訳ありませんでしたが、元へ戻りまして、そこで会社荒しというものは大正年間から昭和年間にかけて、特に戰時中から戰後にかけ段段に減つて来ている傾向はありませんか、どうですか。
  41. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) まだまだ相当あるように思つております。
  42. 大野幸一

    ○大野幸一君 そこで会社荒しをされるには、やはり会社にも若干経理上ふしだらなところがあるからこそ、そこにつけ込むのじやないのでしようか。
  43. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) そういうことじやございません。私は株主総会相当経験しておりますが、そういう場合にはまだ遭遇いたしません。私の経験といたしましては……。
  44. 大野幸一

    ○大野幸一君 一つの脅喝でしよう、会社荒しというものはですね。脅喝されるならば脅喝される理由があるから、これは脅喝されるので、こういうようにも考えられて、今まで相当会社の專横、取締役の專横によつて経理上のふしだらがある、そこにつけ込まれるのであるということはありませんか。
  45. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) 私の経験ではありません。
  46. 大野幸一

    ○大野幸一君 そうすると会社荒しは專らどういうためにしますか。
  47. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) 結局職業的な株主なんでございますね。
  48. 大野幸一

    ○大野幸一君 そういうのを断乎として撃退する勇気もないのですか、職業的ないやがらせ、業務妨害とかと、まあ安易な途を迫るつて妥協するというようなものがあるのじやないですか。全株主を代表して惡を膺懲するというような勇気も今までなかつたのでしよう。
  49. 三橋順一

    公述人(三橋順一君) まあなかなか実情としまして困難でございますね。
  50. 大野幸一

    ○大野幸一君 結構です。それから藤林さんに伺いますが、訴訟の取下げに制限しろというわけですね。
  51. 藤林益三

    公述人(藤林益三君) はい。
  52. 大野幸一

    ○大野幸一君 現在法律では口頭弁論を開始し、答弁書を提出すれば取下げできないわけですね。
  53. 藤林益三

    公述人(藤林益三君) できないと言いましても欠席しますと、休止満了で三ケ月すると取下げとみなされる場合がございます。ただ会社の方で被告になつて応訴して、相手が出て来んでも、勝つてしまえばいいのですけれども、そこまでやりませんので、出て来なければ休止満了取下げとみなされますので、済んでしまうわけです。
  54. 大野幸一

    ○大野幸一君 要するに休止満了のようなことを許されないのだという意味ですね。
  55. 藤林益三

    公述人(藤林益三君) ええ。それから会社と闇取引しまして袖の下を貰つてそれで取下げるとか、そういうこと、まあ結局これを取下げるには或る程度の金を出さなきやいかんというようなことをしましても、その金を会社から取つてしまうということをしますれば、何にもなりません。それから先程の債権者立場からということでございますが、実は私の先程申しましたのは、今度の改正案について異議のある点だけを調べましたので、結構なところは申上げなかつたのでございまして、今度も債権者の保護で結構な規定があると思うのです。私が先程申述べたのは文句のある点ばかり申上げたので、そのつもりでお聽き願いたいと思います。
  56. 大野幸一

    ○大野幸一君 林さんにお尋ねしますが、参考のために御経歴と言うか、略歴というかはどういうお方ですか。現在の……。
  57. 林武雄

    公述人(林武雄君) 学歴ですか。
  58. 大野幸一

    ○大野幸一君 学歴でも経歴でも、学歴というよりむしろ経歴ですね。
  59. 林武雄

    公述人(林武雄君) 学歴は第一高等学校二年で中途退学しまして、日本大学の法律科を卒業して、それから職歴はパルプ関係会社に八年以上勤めました。その間に会計関係、原価関係を担当しております。現在日本鋼管株式会社の鶴見制鉄所の計算課に勤務しております。労働組合関係は終戦後できた関係で、鉄鋼関係の労働組合の委員長になり、更にそれが統合されて、現在金属関係として外の業種も含まれておりますが、その副執行委員長になつておりますが、労働組合として、全国の労働組合の法規対策協議会というのがございます。それの議長をやつておると同時に、労働委員会においては、神奈川県の労働委員を四年、現在勤務中でございます。
  60. 大野幸一

    ○大野幸一君 先程、労組に優先株をということですが、速記を見れば分るでしようが、もう一度あなたの考えられておることを……。
  61. 林武雄

    公述人(林武雄君) 新株を発行する場合に、その十分の一以内について、労働組合に優先的に株式の引受権を認めて貰いたい、こういう趣旨です。
  62. 大野幸一

    ○大野幸一君 それは労働組合とは当該会社の従業員組合ですか、それとは限らないのですか。
  63. 林武雄

    公述人(林武雄君) それで足りると思います。
  64. 大野幸一

    ○大野幸一君 今までそういう例がございますか。
  65. 林武雄

    公述人(林武雄君) 最近増資したところで、殊に株式民主化が言われてから行われたところがありますが、これは会社の方から必要に応じて言われたことで、欲しいという場合にその使用人に優先的に渡る規定はありませんので、そういうのが起きたことはないのであります。
  66. 大野幸一

    ○大野幸一君 それから労働協約が、合併の場合に承継される規定を設けよというお話ですが、私達の考えでは、現在でも合併の前にそれは承継で権利義務が一緒に……、今はそういうふうに承継されていないのですか。
  67. 林武雄

    公述人(林武雄君) 争いが起きる場合がありますというのは、労働協約は労働組合法によりますれば、三年以内の期限というように限つて締結されるわけですが、その場合、中の規定如何によつては非常に使用人の利害関係のあることがある、場合によると新会社合併されるというふうな場合に、従業員としての権利を失つた路頭に迷うということがあるのです。その場合に労働協約に規定があれば、当然引続いて雇用されるという権利は引継がれなければならいので、善意のそういう引受人に対して、明瞭にやはり規定を加えて置かないと、知らずして相手方があとで困惑を生ずる場合があると思います。
  68. 大野幸一

    ○大野幸一君 もう一つ当該従業員組合、若しくは労働組合が株主なつた場合に、従業員が退社或いは死亡したときには、組合内部において買取なんということはできるわけですね。
  69. 林武雄

    公述人(林武雄君) できますね。
  70. 大野幸一

    ○大野幸一君 どうも有難うございました。
  71. 松井道夫

    松井道夫君 林さんにちよつと参考までにお聽きしたのですが、あなたの会社じや今何ですか、経営協議会のようなものをお持ちですか。
  72. 林武雄

    公述人(林武雄君) はあ、大概のところが持つております。
  73. 松井道夫

    松井道夫君 その経営協議会のまあ決定事項ですね、それは株主総会関係を持つて来るというような場合がしばしばあるのですか。
  74. 林武雄

    公述人(林武雄君) 株主総会に影響する場合ですか、しばしばはありませんが、非常に会社が、例えば工場閉鎖とかいろいろ大きな問題が起きた場合には、株主総会に諮るような事項取締役自己の責任において相定程度予め決める、但しこれは株主総会決議を拘束するものじやありませんが、そういう場合は時折あると思います。併し大概の経営協議会においては、例えば帳簿の閲覧権、その他いわゆる経理の公開と言われておりますが、そういう規定は非常に稀なために、いきなり会社によつて従業員の地位が危なくなるような場合にも、経営協議会によつて身を守るというようなことは殆んど不可能な経営協議会の運営状況です。
  75. 松井道夫

    松井道夫君 今労働組合として一番問題にしていることですね、一番というと語弊がありますが、今の賃金の遅配、欠配が問題にされておるところが相当あるわけですか。
  76. 林武雄

    公述人(林武雄君) はあ、それともう一つは解雇です。企業整備による解雇です。その場合は多くの場合、最近は退職金を規定しても事実上は支拂えない。これに対しては例えば国税の優先とかいろいろ規定があるために実質上泣寝入りの状態で、例えば労働委員会、或いは最近においては裁判所がこれに関與しても、非常に長年月を要して、分割して債権を支拂うというふうな規定があるために、事実上殆んど救われない状態で街頭に放り出されておるという実情が多いわけです。
  77. 松井道夫

    松井道夫君 株主総合にですね、まあこれは労働組合でなくとも結構だが、あなた方の要望が反映されるというような方法はあるのですか。例えば株主に誰か入つておれば、株主として発言ができるわけですよね……、こういう利益配当よりは、その一部を賃金、或いは賞與に廻して貰いたい。それだけの要望なんですか、反映させる方法はあるのですか。
  78. 林武雄

    公述人(林武雄君) それにはやはり株式を公開しておる場合に、優先的に引受ける権利とか、或いは公開していない場合でも譲受ける権利が明らかに規定されていません、殆んど株主なる機会がないというのが実情です。若干の会社においては従業員に先程申上げたように、株式を引受けさしておるところもありますけれども、殆んど例外の場合にしか株主総会における発言権がないという状態です。
  79. 松井道夫

    松井道夫君 今の経営協議会乃至は株主総会で一株主として発言ができれば、あなたは今沢山おつしやつたようだけれども、そういつたような必要はなくなつて来るのじやないですか。
  80. 林武雄

    公述人(林武雄君) 株主総会における発言権が得られれば相当その目的を達することができます。
  81. 大野幸一

    ○大野幸一君 あなたも今、藤林さんも今ちよつと附加されたのですが、これは、賛成する点もあるけれどもそれは言わなかつたのだというお話があつたのですが、林さんも批判的の立場から又おつしやる点が多くて、これを換言すれば従来の株式会社法よりは今度の改正案の方がより一層民主的である、労働組合としてどちらに賛成するかと言えば、今度の法律案の方が歓迎されておる、従来の株式会社法よりは……、と思いますかどうですか。
  82. 林武雄

    公述人(林武雄君) 先程意見を申上げた以外の條項については、従来の株式会社法よりも今回の改正の方が妥当であると考えております。
  83. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質疑ありませんですか。……ではお忙しいところ長時間いろいろ貴重なる御意見を拜聴いたしまして有難うございました。  では本日はこれ以て散会いたします。明日は午前十時より開会いたします。    午後二時五十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            大畠農夫雄君            鈴木 安孝君            松井 道夫君   公述人    日本発送株式会    社総務部文書課    長       北里 良夫君    関東電気工事株   式会社総務部長  山本 淳一君    日本紡績株式会    社取締役社長  内藤 圓治君    東京急行電鉄株   式会社文書課長  三橋 順一君    弁護士     藤林 益三君    全日本金属労働    組合副執行委員    長       林  武雄君