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1950-03-15 第7回国会 参議院 法務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月十五日(水曜日)    午後二時七分開会   —————————————   委員異動 本日委員大野木秀次郎君辞任につき、 その補欠として小林英三君を議長にお いて指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件検察及び裁判運営等に関する調査  の件(五井産業事件)  (右件に関し証人証言あり)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではこれより法務委員会を開きます。  本日は検察及び裁判運営に関する調査事件といたしまして、五井産業事件調査することにいたします。同事件につきまして、証人といたしまして松本彊君、宗像警部補加島警部、この三名に証言をお願いいたすことにいたします。  証人にちよつと申上げますが、お忙しいところを御出頭願いまして恐縮に存じます。御承知ではございましようが、例のいわゆる五井産業事件に関連いたしまして、皆様の御承知になつておる事項並びにいろいろお聞きなにつたことにつきまして御証言をお願いいたしたいと存じます。勿論御証言を強いてかくしたり或いは嘘をおつきになつては法律上の制裁があることになつておりますから、この点は予め御了承願つて置きます。御証言をお願いまする前に宣誓をお願いいたしたいと存じます。宣誓は各自朗読をお願いいたします。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 松本  彊    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 加島 義成    宣誓書  良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 宗像 三郎
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では松本さんからお尋ねいたしたいと存じますが、あとのお二人の方は控室で少しお待ちを願いたいと思います。   —————————————
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの御住所お年は……。
  5. 松本彊

    証人松本彊君) 住所は目黒区衾町一三九九番地であります。
  6. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お年はお幾つですか。
  7. 松本彊

    証人松本彊君) 四十一であります。
  8. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの略歴は……、簡単に一つお願いいたします。
  9. 松本彊

    証人松本彊君) どの程度でありますか。
  10. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 学校をお出になつてからでよろしいです。
  11. 松本彊

    証人松本彊君) 十年に東大の法学部を出まして、それから現在の警視庁には、大体三年半程警視庁関係の勤務をしております。世田ケ谷署長監察官捜査課長
  12. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁へお入りになつたのは……、本庁へお入りになつたのは……。
  13. 松本彊

    証人松本彊君) 二十一年の九月頃、はつきり日にちはちよつと記憶しておりません。  大体三年半ぐらいになります。
  14. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうですか、現在どいうい職務をお勤めになつておりますか。
  15. 松本彊

    証人松本彊君) 現在捜査課長であります。
  16. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の大体の機構はどんなふうになつておりますか。
  17. 松本彊

    証人松本彊君) 警視庁機構全体ですか。
  18. 伊藤修

    委員長伊藤修君) はあ。
  19. 松本彊

    証人松本彊君) もう少し具体的にでないと……。
  20. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 機構のあらましですね、どういう立て方になつて、何課があつてどう……。
  21. 松本彊

    証人松本彊君) それは総監の下に部が六つあります。それで、そのうち私の課は刑事部に属しておるのであります。それから刑事部には五つの課があります。警視庁全体のことですか。
  22. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 主としてあなたの方の……。
  23. 松本彊

    証人松本彊君) 刑事部の中の一つの課であります。捜査二課であります。
  24. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑事部にはどういう課があるのですか。
  25. 松本彊

    証人松本彊君) 総務課捜査一課、二課、三課、鑑識課
  26. 伊藤修

    委員長伊藤修君) じや、あなたが二課ですか。
  27. 松本彊

    証人松本彊君) 捜査二課です。
  28. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 二課の下には何かありますか。
  29. 松本彊

    証人松本彊君) 二課の下に係が三つあります。
  30. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、二課のお仕事はどういうことを主としておやりになるのですか。
  31. 松本彊

    証人松本彊君) 一口に言うと、知能犯検挙ですね。
  32. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 知能犯検挙は、すべてあなたのお手許にお入りになるのですか。
  33. 松本彊

    証人松本彊君) いわゆる知能犯検挙は大体私のところでやります。  併し金融関係のような経済警察と非常に関係の深いものなどがありますから、知能犯の範囲をどういうふうに決めるかで違いますけれども……。
  34. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 特に知能犯の中の大きいものだけというような区別がないのですか。
  35. 松本彊

    証人松本彊君) そういう区別は別にありません。まあ併し大体の警察署の方ではそう大きい事件は余りできませんから、従つて私の方で大きい事件をやるというふうなのが実情です。
  36. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると大体あなたの方では大きい事件をお扱いになるわけですね。
  37. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  38. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁の中に警備交通部というのがあるそうですな。
  39. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、ありますね。
  40. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これはどういうことをやるのですか。
  41. 松本彊

    証人松本彊君) 警視庁機構の全体の問題というふうに承知していなかつたのですが、五井産業事件に関するという口実を頂いておりますが、そういうことも私の方では言わなくちやならないのですか。
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 大体の機構を伺つて頂かないとあと審議が……。
  43. 松本彊

    証人松本彊君) それは二課長でなくもつと適当な人に……。
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いいえ、あなたの大体の御承知程度でいいのですよ。専門的にお伺いしようというのじやありません。警備交通部はどういうことをやつておるか……。
  45. 松本彊

    証人松本彊君) 警備交通部というものは、大体警備警察交通警察ということですな。
  46. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それ以外のことはやらないですな。
  47. 松本彊

    証人松本彊君) 以外のことはやりません。警備警察交通警察というと非常に大きいですから……。
  48. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 予備隊というのがあるそうですね。
  49. 松本彊

    証人松本彊君) はあ、あります。
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これはどういうことをやるのですか。
  51. 松本彊

    証人松本彊君) これは警備交通部に属しております。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その中に属するのですか。
  53. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  54. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 以前警察官の幹部であつた人で、現在追放になつていらつしやる方で岡崎英城丹羽喬四郎町村金五、廣岡相川衣川門叶上村、秋山こういうような人を御存じですか。
  55. 松本彊

    証人松本彊君) 名前は聞いておりますが、直接会つた人もあるし会わない人もあります。
  56. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その中でお会いになつた人は……。
  57. 松本彊

    証人松本彊君) 最近会つたことは殆んどありません。
  58. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 以前にお会いになつお方で御記憶に残つていらつしやる人がおありになりますか。
  59. 松本彊

    証人松本彊君) 前に会つたような記憶がしますな。
  60. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どのお方ですか。
  61. 松本彊

    証人松本彊君) そういう人達には殆んど会つたと思います。ずつと前に……。
  62. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ああそうですか、いつ頃のことですか。
  63. 松本彊

    証人松本彊君) 時期ははつきり覚えておりません。併し特に最近に会つたという記憶は……。
  64. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何年前とか去年とかいうような御記憶はありませんか。
  65. 松本彊

    証人松本彊君) 三、四年前ですか……。  併しこれははつきりした記憶はありません。
  66. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰後ですか。
  67. 松本彊

    証人松本彊君) 終戰後会つたこともあるし、前に会つたこともあります。
  68. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰後多くお会いになつたのですか。
  69. 松本彊

    証人松本彊君) 多くと言つてもそんな数が多いという印象はないです。
  70. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 終戰後どこでお会いになつたのですか。警視庁でお会いになつたのですか多くは……。
  71. 松本彊

    証人松本彊君) 会つたとしても向うが来た恰好ですが。
  72. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 恰好ですが、その来たというのは警視庁えいらつしやつたのですか、あなたの私宅えいらつしやつたのですか。
  73. 松本彊

    証人松本彊君) 警視庁会つた記憶もあります。
  74. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどなたにお会いになつたか御記憶は……。
  75. 松本彊

    証人松本彊君) それははつきりしないのですが、もう前のことですから……。
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 原文兵衞という警備交通部長お方がありますね、御存じですか。
  77. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、知つております。
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) このお方は元の警視総監の町村さんの女婿だそうですな。
  79. 松本彊

    証人松本彊君) そうらしいです。
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 土田予備隊長というのは御存じですか。
  81. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、知つております。
  82. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この人は岡崎さんが特高部長時代には有力な部下であつたという話ですが、そうですか。
  83. 松本彊

    証人松本彊君) その点ははつきり私は知りませんが。
  84. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで相当親しいというか、今日でも親しいつき合をしておる方は、そういう方は知りませんか。
  85. 松本彊

    証人松本彊君) よく知りませんです。
  86. 遠山丙市

    遠山丙市君 委員長議事進行について……。只今これは「陰謀の走狗警視庁を民衆の手で粛正せよ」という、図解した大分でかでかと書いてある文書が廻つて来たのでありますが、これは何か本作に関しまして、委員が何か参考資料にでもなるというおつもりで委員長からお廻しを命ぜられたものかどうか。お廻しを命ぜられたといたしますると、これは何者が作つたかよく承知いたしませんが、初めから本作をして一方に片寄り、不正が非常にあるかのごとく書き立てておるのでありまするが、こういうような事前に頭を片寄らしめような書類をお配りになることを命ぜられたかどうかということをお尋ねいたします。
  87. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは御承知通りいろいろな、本作を調査するに当りまして、いい面も惡い面も、いろいろな資料が蒐集されておるのでありまして、たまたまその資料が蒐集されましたものですから、御参考にお配りいたしたものであります。勿論我々といたしましては、その事実があるかないかというようなことを調査しておるわけでありますから、その言葉に捉われる必要は毫末もないのです。又新聞紙上にいろいろ報道され、或いは衆議院においていろいろ論議されておりますが、我々はそういうことに捉われることなく、公平無私な立場において、そういう事実があるかどうかということを本委員会において明らかにすると、こういうことが本旨でありますから……。
  88. 遠山丙市

    遠山丙市君 よく分りました。大体了承をいたしたのでありまするが、そうするとこのいい面も惡い面もと仰せになりますが、委員手許には一方に偏したるところの文書が渡され、而もこれと全然別箇な書類、いい面も惡い面もというけれども、いろいろな書類が廻わされなければならんと思いますが、未だ我々の手許には来ておらないのであります。何かお廻わしになるようなものがありましたら御提示願いたい。
  89. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これから順次準備が整い次第皆様のお手許にお廻しすることにいたします。
  90. 遠山丙市

    遠山丙市君 それからこれは一体手許に廻わされたのでありますが、この文書はどういう方面から委員長手許渡つたものでありますか、御承知であれば御報告願いたいと思います。
  91. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 労農党の議員の方から頂きました。で皆様に御参考に差上げたのであります。
  92. 遠山丙市

    遠山丙市君 労農党の……共産党じやございませんか。
  93. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、共産党からではありません。
  94. 小林英三

    小林英三君 何ですか、今遠山委員があなたに聽きましたこのパンフレツトは、委員長はお読みになりましたですか。
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ええ、読みました。
  96. 小林英三

    小林英三君 読みましたか。今あなたは参考資料にお配りになつたと言うけれども、こういう例えば「増田官房長官の私兵となり、自由党宮廷派ドル箱をつとめているからだ。」というような、こういうような文が書いてあるのを委員長が許可するということは不謹愼じやないですか、その点どうですか。
  97. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、これはですね、その文書に限りません、「真相」の中にもいろいろ書れております。衆議院においてもいろいろ質問されております。考査委員会での調査要求にははつきり責任を以て、云々ということが書れております。だからそういうようなことは我々は一つ参考資料としてやはり蒐集いたまして、皆様がそれに対して全部を目を通されまして、そうして証言をお聽きになつて、公正な御判断を願うことが一番正しいことかと存じます。そうして不利益なことは目を覆い、利益のことのみをとつて判断資料に供するということは、調査の本来の目的を達成し得ないと、かように考える次第でありまして……。
  98. 小林英三

    小林英三君 従来委員会審議資料といたしまして、いろいろな資料が我々にも、あらゆる常任委員会においても頂載しているのであります。こういう一方に偏した独断的な結論を與えているような資料を、苟くもこの公平な委員会に対してこういうものを配らずということは、委員長として極めて不謹愼じやないかと考えております。
  99. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私そうは考えておりません。前言から申上げている通り、すべての資料はすべての委員の人に配るということが一番正しいことと考えております。
  100. 小林英三

    小林英三君 すべての資料と言いますけれども、これはあなたも御覧になつたらよく分るように、一方に独断的に書いた一つパンフレツトです、ポスターに類しておる。これを委員会が、これは公平な判断をする意味において資料として、こういうものを委員会に配るということは、公平の判断を誤る一つ資料となる、そういうものを配るのは、あなたは法務委員長としてこれをいいと思つておるのですか。
  101. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういう文言に拘束れるさ理由はないのです。又新聞その他の表現その他に我々は拘束される理由はないのですから、我々としてはそういうことはそういう事実として承知しておればよろしいんですから……。
  102. 小林英三

    小林英三君 私があなたにお伺いしておるのは、拘束される理由があるかないかということは聞いておるんじやない。自分の権能、権利によつてやるだけです、あなたがこういうような問題を、こういうようなパンフレツトをこの神聖な委員に配らしていいか惡いかということを聞いておる。
  103. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これは一つ資料として皆さんのお手許に配ることが正しいと考えてそういう手続をいたした次第です。
  104. 小林英三

    小林英三君 資料というものは、いい意味資料なら幾らでもいい。これは一つポスターじやないか、パンフレツトじやないですか、こういうものをこういう神聖な委員会に配らすということは、委員長として極めて不謹愼じやないですか。
  105. 大野幸一

    大野幸一君 委員長答える必要なし。小林委員は三ケ年間一度もこの委員会においでにならなかつた。本日突如として委員を交替させて、激烈な口調で言われておるが、あなたには法務委員会における経験がございません。我々は炭鉱国管や或いは又昭和電工事件についてこれ以上の資料委員の諸君に配つたのであります。当時社会党に関係しておりましたけれども、事実を審査するために、我々は一言の苦情を言つたことはありません。こういう意味で、我々の経験上からこういうものは今度初めてじやありません。ともかく法務委員会が他の委員会に違つて公平に今までやつて来たのでありますから、どうか先例を御調査の上、議事進行して頂きたい。特に証人発言中、こういうことを問題にするのは、証言を、発言を遅らしめて審査を遅延せしめる目的以外の何ものでもないということを感ずるのであります。委員長一つ適当に議事進行をお願いいたします。
  106. 小林英三

    小林英三君 今のどなたかの委員の……大野君でありましたか、私に対する発言でありますが、甚だ不可解に考える、如何なる委員会と雖も委員会審議を公平にするということは一番重要な問題であります。私の今聞いておるのは、資料としてお配りになつたとしても、こういうような一方的断定的な一つパンフレツトのごときものを、この委員会に配られるということは、少くとも委員会の神聖を汚すじやないかということを委員長に詰問しておるのであつて、今のあなたの今までの経験とか何とか言われるが、私は今初めて委員会に出ましたが、いずれの委員会であつても、公平に審議するというのが建前であります。そういう意味においてこれは委員長に質問しておるのであります。あなたにそういうことを言われる権利はない。
  107. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では大変お待たせいたしました。土田という人が品川の署長をやつておる当時、岡崎、先程申しました岡崎丹羽、中西、元警務部長でありますが、これ等の人のために、伊藤鑛壽という人から家を借りてやつたというようなことをお聞きになつたことございませんか。
  108. 松本彊

    証人松本彊君) はつきり記憶はありません。
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御記憶ないですか。どなたからお聞きになつたことはありませんか。
  110. 松本彊

    証人松本彊君) ありません。
  111. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 伊藤鑛壽という人は、そういう土田さんこの関係のために相当警視庁に勢力を占めているというようなことはお聞きになつたことはありませんか。
  112. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことは聞いておりませんし、特に五井産業事件についてということで、五井産業事件とそういうことの関係ということが、どういう関係にあるかという点は……、五井産業事件証人ということで来ておるのですから……。
  113. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 五井産業事件に関連した事項についてお尋ねして、こういう面から外の関連した事項が知りたい、かように存ずるものですからお尋ねしておるのです。
  114. 松本彊

    証人松本彊君) 伊藤という男と五井産業事件との関係というものはないと思います。
  115. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今お尋ねしたようなことは御存じありませんか。
  116. 松本彊

    証人松本彊君) 記憶ありません。
  117. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 吉武というがありますね。
  118. 松本彊

    証人松本彊君) おります。
  119. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この人は土田という人の非常に有力な部下でありますか。
  120. 松本彊

    証人松本彊君) そういう関係は、はつきり分らないのです。
  121. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お分りにならないですか。
  122. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  123. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 先程申上げました岡崎丹羽というような人が何かグループをお作りになつておるということは御存じですか。
  124. 松本彊

    証人松本彊君) よく分らんです、そういう点は……。
  125. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御存じないですか。
  126. 松本彊

    証人松本彊君) はあ。
  127. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 名前をもう少しあれして下さい、岡崎何んというのですか。
  128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 岡崎英城、それから丹羽喬四郎、それから町村金五、廣岡相川衣川門叶上村、秋川、こういう今申上げましたような人人らがいろいろ会合をお持ちになつておることも御存じですか。
  129. 松本彊

    証人松本彊君) 私知りません。
  130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) じや、もう一度念を押しますのですが、そうすると昨年の十二月に伊藤鑛壽に対する贈賄事件がありましたですね、これは御存じですね。
  131. 松本彊

    証人松本彊君) これは私の方でやりました。
  132. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その捜査の段階において伊藤鑛壽が今お尋ねしたようなことを申しておりませんでしたか。
  133. 松本彊

    証人松本彊君) その問題は五井産業事件との関係……五井産業事件ということで実はお伺いしたわけなんですが……。
  134. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは先程から申上げておる通り五井産業事件を私の方で明確にするために外郭の関連事項について予め承知して置きたいとかように存じまして、その点をお伺いしておるわけですから……。
  135. 松本彊

    証人松本彊君) 捜査観点から見ますと、伊藤事件五井産業佐藤事件との関係はないように考えてます。
  136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはまああなたの方は捜査事件としてでしようけれども、我々としては又調査観点が違うわけですから。それで関連性をお聞きしておるわけです。
  137. 松本彊

    証人松本彊君) 捜査二課の観点からは、全然別個の観点としてやつておりますが……。
  138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは差支ありませんけれども、我々は全体的に調査する意味において必要ありと認めてお尋ねしておるわけです。関連事項としてお尋ねしておるのですからその意味においてお答え願いたいと存じます。そういうことはありませんでしたか。
  139. 松本彊

    証人松本彊君) いや、あつたです。あつたというのは、伊藤という人間の事件は青写真の原料の紙の事件にからんで贈賄をしたという事件捜査をし、逮捕、起訴までやつたのです。それとこれとは直接関係はないし、又私共の方としても伊藤事件佐藤事件とは全然別の係りでやつております。性質自体も全然別な性質の対象になつておるものですから。
  140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはよく我々も存じております。
  141. 松本彊

    証人松本彊君) 従つて伊藤自身についての事件のことは、五井産業事件についての事項で出ておりますから申上げられないと思います。
  142. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だから伊藤鑛壽事件をお尋ねしておるわけではない。伊藤鑛壽事件をお取調べになつたことがあるかと申上げたらあるとおつしやいましたから、その際に先程お尋ねしたようなことをお聞きになりませんでしたかということをお尋ねしておるのです。
  143. 松本彊

    証人松本彊君) それははつきり記憶がありません。
  144. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御記憶ないですか。
  145. 松本彊

    証人松本彊君) それは紙の事件としてやつたということだけが頭に残つておるものですから。
  146. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その際伊藤鑛壽からそういうことをお聞きになつたことはないかということをお尋ねしておるのです。
  147. 松本彊

    証人松本彊君) その点の記憶はつきりしませんな。
  148. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではその点は御承知でないと言われるなら除きます。この吉武という人はあなたが捜査二課の仕事をさせるには不適任と考えられてその転出方をあなたは具申されたようなことがありますか。
  149. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことはありませんですが……。その点は一般の異動として人事当局がやつたのだと思つております。
  150. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたから御意見を述べられたことはありませんか。
  151. 松本彊

    証人松本彊君) 直接私の方からそういう意見を求めたということはありません。
  152. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたから進んでお申出になつたこともありませんですね。
  153. 松本彊

    証人松本彊君) そういうこともありません。
  154. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなお話はお伺いになつたことありますか。お聞きになつたことは……。
  155. 松本彊

    証人松本彊君) それはどういうことですか。
  156. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 不適任であるとかいうようなことは……。
  157. 松本彊

    証人松本彊君) そういう点についてもはつきりした記憶はありませんですね。
  158. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今申上げました土田さんが宗像警部補をお呼びになりまして、松本課長、あなたのことですね、の言うことばかり聞かなくてもよろしい。吉武の言うことを聞いておれば、土田吉武の線で出世ができると、こういうような意味のことを話されたという事実は御存じないですか、
  159. 松本彊

    証人松本彊君) そういうような、私自身は聞いた覚えはないのです。
  160. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外から御承知なつたことはありますか。
  161. 松本彊

    証人松本彊君) まあその点は私自身がその直接関係していませんから。
  162. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そんなことを聞いた覚えはあるのですか。
  163. 松本彊

    証人松本彊君) これは別の証人もおるようですから、その直接の者は私でないものですから。
  164. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたはそういうことを承知していらつしやらないのですか。
  165. 松本彊

    証人松本彊君) 確認してないものですから。
  166. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 確認しないが、そういう話はお聞きになつたことはありますね。
  167. 松本彊

    証人松本彊君) 別の証人の方にお任せいたします。
  168. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、あなたのあれをお聴きしているわけですから、外の証人からも勿論お尋ねしますが、あなたが御承知になつておるかどうかということを伺います。
  169. 松本彊

    証人松本彊君) 噂には聞きました。
  170. 伊藤修

    委員長伊藤修君) やはりこういうことをお尋ねして、又あなたの供述が得られんかも知れませんが、警視庁の中にいわゆるボス派、粛正派というようなもの、或いは特進派、有資格者派、こういうような一つの派閥があるのじやないでしようか。
  171. 松本彊

    証人松本彊君) その点は私の方はよく分りませんが、そんなものは、少くとも我々は絶対問題にしないで、まじめな捜査をやつているのです。
  172. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、あなたの捜査をとやかく言う意味じやないのです。
  173. 松本彊

    証人松本彊君) そういうものはあるかどうかよく知りませんが、そんなものは、少くとも我々相手にしない、問題にしないという気持で進んでいます。
  174. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論あなたとしては問題になさいませんが、そういうものがあるのじやないですか。
  175. 松本彊

    証人松本彊君) いや、私だけでなく、少くとも仕事をやつておる限りについては、そういう考えでやつておる者はないと思います。
  176. 伊藤修

    委員長伊藤修君) だからそういうような派閥関係で以て、いろいろな事案の上において影響を蒙るということはあり得るのじやないでしようかね。
  177. 松本彊

    証人松本彊君) 涜職事犯を主としてやりますから、いろいろ関係のものは問題があると思いますが、少くとも我々の気持としては、そういうくだらない風評なんというものには毒されないように、まじめに仕事を進めて行くという持前を強く持つて行きたいと思つております。
  178. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたのお気持はよく分りました。けれども少くともあなたがそういうお気持をお持になるだけ、そういうものがあるのじやないでしようか。
  179. 松本彊

    証人松本彊君) その点はよく分らないし、たとえあつても、そんなものは問題にしません。
  180. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方で以て、いわゆる味の素事件というものをお挙げになつたことがありますね。
  181. 松本彊

    証人松本彊君) やりました。
  182. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはどんなような、概略お話し下さるとどんなものですか。極くあらましでいいんですが。
  183. 松本彊

    証人松本彊君) 詳しいことはちよつと記憶にありませんが、DDTにからんで、味の素が厚生省に二百万余の金をやつたということです。
  184. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その端緒とその結末とですね。
  185. 松本彊

    証人松本彊君) 正確な記憶がないのです。若し間違うと……。
  186. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いやよろしいです。
  187. 松本彊

    証人松本彊君) 端緒は、高齢署の管内に厚生省の予防研究所というのがある筈ですが、高輪署の事件から発展して、我々の方で味の素に及んだのが大筋です。
  188. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 結末はどうなりましたか。
  189. 松本彊

    証人松本彊君) 結末は、初め味の素の二人の課長が起許になり、それから次に鈴木恭二という常務が起訴になつておる実情のようです。
  190. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件進行過程におきまして、いろいろ俗に言う揉み消し運動が行われたというのですが、どうですか。
  191. 松本彊

    証人松本彊君) 確証ははつきりしませんが、そういう噂は聞いたことがあります。
  192. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 何だかその事件の内容が事前に漏れたとか、或いは逮捕状のことが事前に漏れておるとかいうようなことがあつたのじやないですか。
  193. 松本彊

    証人松本彊君) その点ははつきり記憶がありませんが、佐藤をやる決意をしたのは、実は味の素の事件にからんで彼が動いたのではないかということで、佐藤自体がそういう状況では、我我まじめな捜査が妨害されるという意図の下にあれをやるという決意をしたわけです。
  194. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そこをお尋ねしようと思つたのですが、あなたがそういう御決意をなさいますその動機、と言つていいかどうか、そういうような捜査を妨害されるというようないろいろな事実があつて、それがためにあなたが佐藤事件をやるというように御決意になつたのじやないですか。
  195. 松本彊

    証人松本彊君) 五井産業事件ですから、佐藤自体については、前に昭電のときにも事件関係がありますし、それからその後又警視庁に出入しておる事実もあります。そこへ又味の素事件もこちらで進めておる過度にそういう疑いがあつたので、結局そういう警視庁に出入する……、まじめに出入する人物なら別ですが、そういう事件関係に干與するような意味で出入するような者は、少くとも捜査二課の涜職を担当する我々としては、そういう者を先に処置しなければ、まじめな捜査ができないだろうという考えでやつたわけなんです。
  196. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 警視庁佐藤が……。
  197. 松本彊

    証人松本彊君) 併し味の素事件そのものは、すでに関係者は起訴になつております。
  198. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、いわゆる味の素事件のですね、揉み消し運動に佐藤が一役買つたわけですか。
  199. 松本彊

    証人松本彊君) 確証はありませんが……。
  200. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなふうにお考えになつたのですか。
  201. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  202. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは佐藤がですね、しばしば警視庁に出入りしているんですか、二課へ、若しくはその他へ、その当時に……。
  203. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。出入してます。
  204. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それで主としてどこへ行くんですか、吉武のところえ行くんですか。
  205. 松本彊

    証人松本彊君) それはあちらこちらだと思いますが。
  206. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いわゆる主任警部補の宗像氏の上席である吉武氏のところえ、何かいろいろのことを頼みに行くんではないですか。
  207. 松本彊

    証人松本彊君) 行つたこともあると思つております。
  208. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうようなことで吉武とこの日野昇とか、佐藤というような者が築地の田中屋とかいうところえしばしば集つていろんな協議をしたということをお聞きになつたですか。
  209. 松本彊

    証人松本彊君) そういう点ははつきり聞いておりませんです。
  210. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御承知ないですか。
  211. 松本彊

    証人松本彊君) はあ。
  212. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤は常にですね、自分は警視庁の幹部連中を盡くよく知つているんだと、警視庁事件なら何でも処理してやると、いわゆる揉み消してやるということを豪語しておつたという話ですが……。
  213. 松本彊

    証人松本彊君) そういう噂は部下から聞きました。
  214. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 部下の人からね。
  215. 松本彊

    証人松本彊君) はあ。
  216. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのような関係で、あなたがどうしても佐藤をいつか検挙しなければならないというお考えになつたのですか。それはいつ頃のことですか。
  217. 松本彊

    証人松本彊君) 九月の終りか、十月の始めくらいだと思います。
  218. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 昨年の……。
  219. 松本彊

    証人松本彊君) はあ。
  220. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その佐藤事件の始めから終りまで、一つ概略をお述べ願いたいと思います。
  221. 松本彊

    証人松本彊君) 全部ですか。
  222. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まあ詳しくなくてもよろしいです。いずれ書類を取り寄せますから。
  223. 松本彊

    証人松本彊君) 正確なところを知つてませんか。
  224. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多少相違はあつてもよろしいですから、事件の概要をお伺いしたいのですから。
  225. 松本彊

    証人松本彊君) 大体十月の始め頃に佐藤の内偵を始めてですね、十二月の七日に逮捕令状を請求して、貰つてます。それでそれは詐欺事件の容疑で逮捕令状を貰つておるわけです。それで実際に逮捕したのは十二月の十四日であります。それから一月の三十日に一旦釈放して、今度は岡田秀男の贈賄の容疑で再逮捕をして、二月二日に釈放ということになつております。最初は詐欺容疑の事件として逮捕したわけです。これが大部分で、詐欺の内容については、大体二千数百万円の詐欺を……、主として繊維関係で……、現物があると称して金を取つて、実際には現物はないというふうな内容なんです。
  226. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから第二の方は……。
  227. 松本彊

    証人松本彊君) 第二というのは涜職ですか。
  228. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 涜職です。
  229. 松本彊

    証人松本彊君) それは岡田秀男との関係で……、金額その他が微妙なわけです、それは正確でないのと、それから御承知のように贈收賄の成立には職務関係が必要ですが、職務関係のあるないという問題と両方で。内容については、金額については非常にはつきりしない、結局贈收賄の容疑ということで御承知願いたいと思います。
  230. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 金額はどのくらいですか。
  231. 松本彊

    証人松本彊君) これが問題なんです。捜査上の問題になつております。
  232. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじや分からなかつたのですか。かなたの御手許では分らなかつたのですか。
  233. 松本彊

    証人松本彊君) これは検察庁へ移して、例の二月二日私共の方からは出すことになつて検察庁で更に在宅で調べて行くということに決つたわけです。検察庁の方でその後在宅で調べておるということです。
  234. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたの方の容疑としてはどのくらいの贈賄があつたかという容疑ですか。
  235. 松本彊

    証人松本彊君) その点はちよつとはつきりしないわけです。
  236. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 前の詐欺事件の方は消防総監か何か、注文によつてその品物を収入するということが詐欺の基礎になつておるのですか。
  237. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  238. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤と消防総監とは非常に心易いらしいですね。
  239. 松本彊

    証人松本彊君) 最初の逮捕状の理由というものは、消防え納めるということで、実際には納めなかつたということなのです、詐欺の大要は……。
  240. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは虚偽の事実を提示して物を納めなかつたわけですね。
  241. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  242. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事実は、品物関係以外においては佐藤と消防総監とは非常に心易いんだそうですね。
  243. 松本彊

    証人松本彊君) その点について、今の佐藤事件について関係があつたということは我々の方としては見ておりません。
  244. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 事件以外に……。
  245. 松本彊

    証人松本彊君) 事件以外の点については、我々の方としては直接全然当つておりません。
  246. 伊藤修

    委員長伊藤修君) けれどもですね、佐藤が全然未知の人なら、そんなことも名前は出さないですけれども、いろいろ心易いため、及び総監の部屋や何か利用したり何かして、相談したりしたというような事態があるのではないですか。
  247. 松本彊

    証人松本彊君) その点ははつきり記憶はありません。
  248. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逮捕状が七日に出まして、十四日に執行されたこの経緯は……。
  249. 松本彊

    証人松本彊君) それは当時この佐藤が大体十月の初めぐらいから内定しておりますし、自分が捜査を受けておるという実情を恐らく感付いたんではないかと思うのですが、逃亡と証拠湮滅の虞れがあると思われましたので、逮捕の手続をとつたわけでありますが、一方勿論逮捕の手続を進めるについては、地検と打合せの上で進めたんですけれども、果して起訴ができるかどうかという点についてまだ証拠が足らないという実情がありますし、上司の方からはその起訴が確実になるまでの証拠を集めるようにというふうな命令がありますし、それは更に地検と打合せて、そういう起訴が確実になるように証拠の蒐集をしろという命令があつたので、その間更に北海道とか仙台の方へ係員を出張させて証拠固めをやつて、そのために遅れたんだと思います。
  250. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逮捕状の請求は……。
  251. 松本彊

    証人松本彊君) 逮捕状は、容疑が十分であるということで逮捕状はとつておるわけです。
  252. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逮捕状を請求することについての御協議をなさいますですね。
  253. 松本彊

    証人松本彊君) どことですか。
  254. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逮捕状をあなたの方から地検の方に請求するために協議をなさいますね。それはどなたと協議なされたんですか。
  255. 松本彊

    証人松本彊君) 現在の一般的なやり方ですか。
  256. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、その場合に、佐藤の場合にあなたは單独の御意思で請求なされたんですか。
  257. 松本彊

    証人松本彊君) いや、これは主任係長というところで請求をする。その請求をするについては、担当検事と相談して意見の一致したところで請求をするわけです。
  258. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その場合に、請求なさつて直ちにこれを執行するということをあなたは強く御主張になつて御要求になつたんではないのですか。
  259. 松本彊

    証人松本彊君) その点、証拠湮滅とか逃亡の虞れがありますから、早く身柄を逮捕して同時に証拠蒐集もすでに前にやつておるんですけれども、まだ足らないという部面があつたので、その足らない部面は逮捕と同時に、北海道とか仙台とかそういう方面に、その被害者の方面の証拠固めをするという考え方があつたわけですが、同時に又一方では起訴が確実でないといけないという考え方があつて、起訴を確実にするために、もつと証拠を集めてか逮捕すると、でそういう意見で延びたわけです。
  260. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それから第一に取り上げられたその田村町の三十五万円ですか、その詐欺事件については、あなたも逮捕するだけの確信を持つて逮捕状を御要求になつたのですから、それに対して証拠を完備しておつたんではないのですか。
  261. 松本彊

    証人松本彊君) 逮捕の容疑はそれでもう十分だからこそ逮捕状が出たわけです。
  262. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 然らばその逮捕状が出ている以上は、直ちに執行して然るべきではないでしようか。
  263. 松本彊

    証人松本彊君) そこがその起訴が不確実である、証拠がまだ不十分であるということで……。
  264. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件についてですか、第一の事件についてですか。
  265. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、そうです。
  266. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは何か特段に、上司の方が暫く逮捕を見合わせてというようなお言葉があつたんではないのですか。そのお言葉に基いて猶予されたと、不満ながら猶予されたというわけではないのですか。
  267. 松本彊

    証人松本彊君) つまり起訴が確実であるという状態になるまで、証拠を蒐集しろという上司の命令があつたわけです。
  268. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 上司というのは総監ですか。
  269. 松本彊

    証人松本彊君) 両方含みます、総監と刑事部長です。
  270. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 刑事部長は誰ですか。
  271. 松本彊

    証人松本彊君) 坂本刑事部長です。
  272. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今おいでになりませんね。
  273. 松本彊

    証人松本彊君) 今は転任しました。
  274. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 逮捕状を取つておいて、そうして執行を猶予された。その間にいろいろあなたの方の意図が、第二課の意図が洩れて、いわゆる佐藤の方に証拠湮滅の機会を與えてはいないのですか。その前においてすらあなたは佐藤という者は警視庁に出入しておつて、いろいろなことをすると、だからあれは検挙しなくちやならないとお考えになつたのですから、そういう点をあなたは御心配になつたわけではないですか。
  275. 松本彊

    証人松本彊君) そういう状態だから急いだわけです。
  276. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 急いだから逮捕状が出ると共に、直ちに逮捕してこそ目的が達せられるわけですが、その間に一週間も間を置いたんでは、あなたのお考えになつている方針というものが自然洩れて行つてしまうでしようが……。そうでなくてさえ、いろいろな幹部に対していろいろな途を持つていたのですから……。
  277. 松本彊

    証人松本彊君) ただ折角逮捕しても起訴ができないというふうな事案では申訳ないので、確実な起訴になる証拠を集めるという考えもあつたわけなんです。
  278. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そのお考はあつたでしようが、第一の事実にはあなたは少くとも確信を持つたからこうして逮捕状を要求されたんだから……。第二の方の贈賄関係について、先程御記憶はないとおつしやつたのですが、との場合佐藤はあなたに対して何か金額を申しておりませんでしたか。
  279. 松本彊

    証人松本彊君) この点は現に二月二日に釈放になつて、現在恐らく検察庁の方でも捜査中だと思うので、ここでまだ未確定な事件言つてしまうのは適当でないと思うのです。
  280. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あなたとしては お聞きになつているのですね、内容は……。
  281. 松本彊

    証人松本彊君) 内容は調べておりませんから……。
  282. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、主任の宗像さんから報告を受けていらつしやるでしよう。
  283. 松本彊

    証人松本彊君) 今の岡田秀男という人も調べておりませんから、それは検察庁の方で調べております。
  284. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いや、佐藤の方が何と言つたかということについては、あなたは御報告を受けていらつしやるのではないでしようか。
  285. 松本彊

    証人松本彊君) これは逮捕状を取りましたから、受けております。受けておりますが、その内容については……。
  286. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この事柄の……。
  287. 松本彊

    証人松本彊君) 正確な記憶がないのと、現に今事件は継続中ですから、まずいだろうと思うのです。
  288. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その事件をあなたの方でいわゆる三日間ですか、三日間で放してしまつたということについてはどういう関係ですかね。何かあなたの捜査を妨害するというようなことがあつたのではないでしようか。
  289. 松本彊

    証人松本彊君) その点は一応検事の拘留に移つてからの事柄です。地検の方の……。
  290. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 検事の拘留に移つても、尚あなたの方では捜査を続けるということがあり得るですね。多くの場合そういうふうにおやりになつていらつしやるのですがね。それをなぜ 打切になつたのですか。
  291. 松本彊

    証人松本彊君) それは検察庁の方の意見から……。私の方としては留めて置く必要がないということで、そういう話しを受けて出したわけなんです。
  292. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 留めて置く必要があるないは別問題としまして、事件をあなたの方として手離してしまう。検察庁に送つて……。
  293. 松本彊

    証人松本彊君) これは併し涜職犯を……。
  294. 伊藤修

    委員長伊藤修君) あと継続してなぜ……。
  295. 松本彊

    証人松本彊君) 涜職犯を釈放して、尚追つて調べるということは、これは涜職犯を若しやつておる経験のある者であれば。更にそれを調べるという物的証拠制も出ておれば別ですけれども、贈賄者も収賄者も二人とも全然出て行つて、調べておるという状態は……調べが極めて困難で、物的証拠の帳簿、その他に載つておるというならば別ですけれども、本人の供述から証拠を固めて行くというやり方から見れば、二月二日に釈放して、あとから調べるということは、私の方の持ち時間の二日が過ぎたあとは、検察庁の方でやられることになつております。私の方としては、そういう状態での取調はしていないわけですから。
  296. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論身柄を留めずしてそういう捜査を御進行になるということは困難でしようが、ただよくそういう場合におきましても、警察関系においては引続き捜査を、傍証固めをなさるというようなことがおありになるでしようが、この事件だけは打切られたのですね。
  297. 松本彊

    証人松本彊君) いや、検察庁の方で調べておられる……。
  298. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 検察庁は勿論です。あなたの方として。
  299. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  300. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今の佐藤の第二の事件は、取調中に佐藤がいろいろ供述しておる事実があるのですが、それについて宗像さんからあなたに御報告になつたか、或いはあなたが書類を御覧になつて承知なつたかは存じませんが、こういうような事実がその時にあつたのではないでしようかね。これは一つ一つ申上げておると大変ですが、それ時の供述の概要として、福田篤泰代議士に四十万円を渡した。それから吉田茂氏に福田氏を通じて三十万円渡した。増田甲子七氏に六十万円渡した。江花靜代議士に四十万円渡した。岡田秀男鉱山保安局長に三十五万円渡した。塩谷司法捜査官に三十万円融資を斡旋した。日野昇中野警察署長に十一万円。これも貸したかやつたか分りませんが、それから吉武捜査係長ですか、三万円。上野刑事部庶務係長に五万円。中西元警務部長に百万円。張本警備第一係長に酒とか鮨とか物品を、間狩国警防犯課長に三万円。増井群馬県国警隊長に五万円。遠藤竹頼、世羅三郎、こういう者にいずれも物品とか、佐藤が金品を贈つておるというようなことをお聞きになつたことはありませんか。
  301. 松本彊

    証人松本彊君) 今読上げられたようなそういう内容のようなことは聞いておりませんが、佐藤が金をばら撤いたことは聞いてます。聞いてますが、その今挙げたようなそういう内容をいうふうには記憶しておりません。金を出したということは聞いております。
  302. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今読上げたような内容というのは数字……。
  303. 松本彊

    証人松本彊君) 数字も人もですね。それからその数字だけでなく、趣旨も事実というか、佐藤言つておるという内容と違つておる点が相当多いのです。
  304. 伊藤修

    委員長伊藤修君) どういう点ですか。
  305. 松本彊

    証人松本彊君) それは一々記憶を、正確な記憶を持つておりませんから、今……。
  306. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 今私は金品を贈つた趣旨のことはお聞きしておりませんですがね。そういう金品を贈つた、そう贈つた理由は分りませんが、そういう事実があつたかどうかということをお尋ねしております。
  307. 松本彊

    証人松本彊君) それははつきり分りません。
  308. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そういうことは、ばら撤いたということはお聞きになつたのですか。
  309. 松本彊

    証人松本彊君) それは聞いております。
  310. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ばら撤いた先が誰が幾ら……。
  311. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことについての記憶はないのです。
  312. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お聞になつたことはお聞になつた。記憶は忘れたんですか。
  313. 松本彊

    証人松本彊君) 聞いております。
  314. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 聞いていらつしやるのですか。
  315. 松本彊

    証人松本彊君) え、つまり金をどうしたということについては聞いておりますが、誰に幾ら幾らということは、今はつきりした記憶はないのです。
  316. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 当時はお聞になつたのですね。
  317. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、聞きました。
  318. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると今、当時聞いたけれども、今は記憶はないと、こうおつしやるのですね。
  319. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  320. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 勿論当時お聞きになつたのですから、そういうことをメモになるとか、或いは調書にお取りになるんでしようね。それをお取りになつたんですか。
  321. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  322. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 調書にお取りになつたのですか、全部。
  323. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、取つております。
  324. 伊藤修

    委員長伊藤修君) その調書はお手許にありますか。
  325. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、その調査を一括して検察庁に送つております。
  326. 伊藤修

    委員長伊藤修君) お手許にはないのですね。
  327. 松本彊

    証人松本彊君) ありません。
  328. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 検察庁にお送りになつたのですね。
  329. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  330. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それはいつお送りになつたのですか。
  331. 松本彊

    証人松本彊君) それは二月の二十七日だと思います。
  332. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 東京地検ですね。
  333. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  334. 伊藤修

    委員長伊藤修君) これはどんな事件に付けて送つたのですか、佐藤の……。
  335. 松本彊

    証人松本彊君) 佐藤の供述調書として送つております。
  336. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 佐藤事件の全体に。あと事件にも前の事件にも関連しまして……。
  337. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、全部一括して。
  338. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうするとその調書を拜見いたしますれば、あなたが記憶を薄らげられたところの数字とか人名とかいうことが分るわけですね。
  339. 松本彊

    証人松本彊君) 分ります。
  340. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では何かお尋ねになりますか。
  341. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私、ちよつと二、三お伺いしたいのですが、佐藤が何がしかの金を贈つたということについての供述をあなたにされ、それを調書にと取れたのはいつですか。
  342. 松本彊

    証人松本彊君) それははつきり記憶して覚えておりませんな。非常に……大体四十日ぐらい入つてつたと思いますから、いつどういう内容の調査を取つたという記憶は、見ないとちよつと言えないのですが。
  343. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 調書を何回お取りになりました。いつからいつまでの間に何回。
  344. 松本彊

    証人松本彊君) 正確ではありませんが二十五回くらいあると考えます。正確でありませんから少し違うかも知れません。
  345. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 よろしうございます。それは日時はいつ頃からです。
  346. 松本彊

    証人松本彊君) はつきり記憶してしておりません。
  347. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 いや、大体でよろしうございます。
  348. 松本彊

    証人松本彊君) はつきり記憶がありませんから……。大体十二月の十四日に逮捕して……。
  349. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 十二月十四日から始まつておるのですね。
  350. 松本彊

    証人松本彊君) 調査は勿論そのときは書きませんが、その後であることは間違いないのです。
  351. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 十四日以降ですね。
  352. 松本彊

    証人松本彊君) はい。
  353. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 以下二十五回に亘つてあなたの取られた調書ですか。
  354. 松本彊

    証人松本彊君) いや私は一度も取りません。主任が取つております。
  355. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 主任ですか。主任は誰ですか。
  356. 松本彊

    証人松本彊君) 宗像主任です宗像という警部補ですが。
  357. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたは直接お取りになつたのではないのですね。すべてこれは宗像さんの作成にかかる調書なんですね。
  358. 松本彊

    証人松本彊君) 大体そうです。佐藤事件については大体そうです。
  359. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 外の方もこの調書をお取りになつたことはありませんか。宗像さん以外の人で……。
  360. 松本彊

    証人松本彊君) 五井産業事件について限定してですか。
  361. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 佐藤に対する調書として、調書を取られたのは宗像さんと外に誰がありますか。宗像さんだけですか。
  362. 松本彊

    証人松本彊君) その点はつきりしておりませんが、主として宗像主任がやつておりますから。
  363. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたは宗像という者の書かれた調書は一応目を通したのですね。
  364. 松本彊

    証人松本彊君) 見ました。
  365. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 大体そうすると一番最初が昨年の十二月十四日ですね。昨年ですか。
  366. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  367. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 昨年の十二月十四日ですね、一番最初は。
  368. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  369. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうして最後は凡そいつ頃でしようか。二月の事件の送致されたその日の間ですね。
  370. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  371. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 本年の……。
  372. 松本彊

    証人松本彊君) 中に入つておるその時……。
  373. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その間に作られたわけですね。
  374. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  375. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうするとこの十二月の十四日の以後、本年の二月二十七日までの間に、佐藤の留置は……。
  376. 松本彊

    証人松本彊君) 二十七日は書類を送つた日であつて……。
  377. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 書類を送つた日ですね。証人の身柄はいつから。
  378. 松本彊

    証人松本彊君) 二月二十一日に出ております。一旦一月三十日に出て又別の贈賄の容疑で入つておるわけです。そういう関係で……。
  379. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 贈賄の容疑で入つて、出たのはその間に幾日。
  380. 松本彊

    証人松本彊君) 三日です。検事拘留が一日ついております。
  381. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 検事拘留ですか、そうすると二十五回の調書の作成は、本人の自由になつてから後にやはり聽取書を取られたこともあるのですか。
  382. 松本彊

    証人松本彊君) いや、そんなことはありません。
  383. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 やはり拘留中……。
  384. 松本彊

    証人松本彊君) 中に入つておる、調べておる間に取つておるわけです。
  385. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 二月までの間にですね。
  386. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  387. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それから私共先程から委員長から聞かれておりますことを、ここで承つておりますと、非常な責任を、あなたが重視しておるがために非常によろしいのですが、あなたの答弁をこちらで伺つておりますと、何だか非常に責任を重く感ぜられておるがために、実際以上に用心深くお答えになつておる気がしまして、非常に何だか大変あなたの職掌柄、犯罪調査の重責に当つております方として、満座の中であなたが良心に基づいて、本当に知つておるままをあからさまにここで表現しておるというふうにとれない感があるのですが、その点の加減をいたしておりませんか。
  388. 松本彊

    証人松本彊君) 別に……。
  389. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたは專門家ですから、ちやんとどういうことを言つておるか、これは事実であるかということは顔を見れば分るくらい経験をお持ちですから、余りに……ここはあなたがすつかり宣誓されて言うのですから、私共はよしあしに拘らず真実を得たいのです。そこであなたが若し職務上祕密を守る意味において、法の規定に基いて、証言拒絶の権限があなたにある。その職務上の機密を漏洩すると困るという趣旨においての、心配されての答弁であるならば、それはその趣旨で私は無理に承わろうといたしませんけれども、然らざる限りにおいては、やはり虚心担懐にあなたの記憶のままを率直にここで証言して頂かないというと、あなたの言葉自体に対して、私共は疑いを持ちながら聞いております。その点をお含み願つて率直にお答え願いたい。
  390. 松本彊

    証人松本彊君) その点はただ不確実なことは申上げないということですから、別に何もありませんから。
  391. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その点は若し不確実でない場合においても、この点は実は記憶は十分にないのだ、これは確な人だということまでの実はお答えを頂いていいと思いますがね。必ずもあなたのお言葉が全部そのまま書面に書いてあるがごとくに、私共はそのまま信ずるか、信じないか、それは私共自由判断にあるのです。その点については極めて虚心担懐に、どなたが聞いてもあなたのお答えは、全く良心従つて少しも僞るところなく、隠すところなく、何らの考えを含むところなく陳述しておるというふうに、私共了解して承わりたいのですが。
  392. 松本彊

    証人松本彊君) そのつもりでやります。
  393. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこでですね、御記憶のないのを強いて私共承わろうとしませんが、これ程重大な事件であります関係上、明確な数字は分らなくとも、凡そ、調書に書かれてある二十五回に亘る宗像警部補の調べに対するあなたが眼を通したということについて、大体何名くらいに金を撒いたというような記憶がありますか。
  394. 松本彊

    証人松本彊君) その点は今一括して、二十五回ぐらいと思いますが、その調書を送つておりますから。
  395. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは調書は私共これから取り寄せてみますけれども、それはそれとしてあなたの陳述を願います。
  396. 松本彊

    証人松本彊君) 相当多いからはつきり頭に記憶がないのです。
  397. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたの記憶する範囲で、凡そ何人くらいかということ、一人か二人か、それとも十人か二十人か、とにかく……。
  398. 松本彊

    証人松本彊君) 十人を越えておることは間違いないと思います。金をやつた先というものは……。
  399. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 例えば今委員長が申されました方の中には、相当知名の人があるようですが、その知名な人の方の名前もその中に出ておりますか。
  400. 松本彊

    証人松本彊君) 非常に複雑なんです。同じ金をやつたということでも、全然犯罪にならない、全然犯罪にならない分も相当あるのです。
  401. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私共それはそうだと思つておる。であるから、そこで事実を公にして、決して罪ありということの確信を我々持つておらないのであるから、一段とこの点は明らかにして、天下の疑惑を結局明らかにすることは一番必要なことではないかという趣旨において伺つているので、それが犯罪になるかならんかということは、もとより私共はならぬことを欲しております。ならないことを欲しておりますが、何だか今承つておりますとあなたの記憶にないと言われますけれども、委員長が今言われたところの名前の方方は相当知名な方もあるのですから、あなたのお立場としてその記憶が実際にないというようなことは、どうもちよつと信ぜられないのです。
  402. 松本彊

    証人松本彊君) いや実際ないのではないのです。具体的にはあるのですが、記憶していることはない。調書はあるがその調書全体は向うに送つてある、こういうことなのです。
  403. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その知名な人の名前の若干を、今あなたの記憶している範囲だけで……。
  404. 松本彊

    証人松本彊君) 而もその調書の内容について現在検察庁で捜査中ということですから、二課長としてはその点はちよつとまずいと思うのですがね。
  405. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その点はあなたの職務上の祕密に属する故に証言をお断りになる、こういう趣旨なのですか、まずいということは。これはもういい惡いということよりも……。
  406. 松本彊

    証人松本彊君) 全然終つてしまつているのでしたらいいと思いますけれども、まだ終つていないのです。捜査中ということですから……。
  407. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこでまずいとかいいとかいうことは私共の領域でありませんから、そこであなたの方で触れにくいならば、それは職務上の祕密を守る意味において証言をしないという申出であるが、それは仕方がないが、あなたの手加減でどうもちよつとここで申すことは惡いというのですか。その点を明らかにして頂きたいと思います。
  408. 松本彊

    証人松本彊君) 留保ですな。(笑声)
  409. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 留保、そこでもう一つ伺いたいのですが、そういたしますとあなた方のお調べによつて十数人に亘つて金が撤かれておる。その事実は法的に多少中には涜職になるのではなかろうかというふうに、あなた方の捜査官としての見解による事件がありますか。
  410. 松本彊

    証人松本彊君) その点ちよつと申上げられないと思います。課長としては……。
  411. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうすると結局、その佐藤に係る事件は涜職罪の成立については確信を持つまでには至らなかつたのですか。それとも或いはその点はありや否やもここでは言いにくい、こういうことですか。
  412. 松本彊

    証人松本彊君) ただ佐藤事件は詐欺容疑というものを中心に重点を置いて、詐欺の事件として立つておるわけです。詐欺の事件を調べるについていろいろなその財産経理、金銭というものを調べるのに非常に手間が掛つてですね、結局詐欺事件を中心に調べておるというために、その方に捜査は進んでいないわけなのです。
  413. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 いや併しながら、やはり派生的に詐欺事件にそうした金の取引のあつたことをも多少の供述が出て来まして、それがやはり少くとも調書に認められています限りは、全然詐欺事件と金の動きの事件と関連のないこともないと思うのです。で私共は佐藤事件にはいずれが主であり、いずれが従であるというそういうことを承るのではなくて、結局佐藤事件を中心とするひとり詐欺事件であるのみならず、やはり涜職その他の金の動きについても併せてこの席で承つているわけです。そこを一つ成るべくお差支ない限りは明らかにして頂きたいと思いますね。受理の関係はどうでもいいのです。
  414. 松本彊

    証人松本彊君) 詐欺事件に重点を置いたために、それ以外の問題についての捜査は進んでいないわけです。
  415. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうですか。併し進んでいないと言いましても、金の撤かれている点までは進んでいるのだから……。
  416. 松本彊

    証人松本彊君) それは佐藤が供述するのです。
  417. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 併し第二回のときには、涜職の嫌疑によつて逮捕状を発行したというのでしよう。
  418. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  419. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうするとこれは詐欺事件ばかりではない。あなた方が人の身体を拒束するには、涜職の嫌疑ありとして、確認の下に涜職の事件について令状を発行した。そうすると詐欺事件ばかりではなく、堂々たる涜職事件として……。
  420. 松本彊

    証人松本彊君) ですから詐欺事件もそうですが、それ以外の点も現在検察庁の方で捜査中ですから……捜査中に属するわけですから、まだ現在は……。
  421. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 捜査中に属するのは、それはあなたの何ですから分りますが、その点について供述するわけに今行かない。こういうわけですか。
  422. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  423. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 この事件については、私共の伝聞しておるところによると、証人は非常に正義感に強くして、敢然としてこの事件捜査に当つて、あらゆる障害に対しては聊かも怯むところなく、勇敢に捜査されておられるということを聞いておりまするが、この捜査進行の途上において、某方面から何か捜査上について容喙されたような事実がないのですか。
  424. 松本彊

    証人松本彊君) 捜査の内容についてそういう……それはありますがね。
  425. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それはありますね。進行上について何か非常に障害があつたことはありませんか。困つたなと思うようなことはありませんか。これは率直に一つ……。
  426. 松本彊

    証人松本彊君) その点ははつきりした進行の妨害ですか。
  427. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 進行途上において、捜査上あなたの方で困るというよなことを、あなたの方で感じられたことはありませんか。
  428. 松本彊

    証人松本彊君) 具体的な事例が同じでないからちよつと思い出せません。
  429. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 極めて自由なる立場において、聊かも妨げとなるようなことなく、あなたの意のままに捜査進行せられたと承知してよろしうございますか。これは或いは余分なことか存じませんけれども、私の方は実は松本証人は非常に正義感の強い方であつて相当に障害のあつたにも拘わらず、敢然としてこの捜査進行をなしたのであるということを承わりまして、本日はあなたの証言によつて事件の大体の概要を実は掴めると期待しておつたのでありますけれども、先程来からの御答弁を伺いますと、大分責任を重感しているような感じがございますので、これはひとつ私の方のためではなくて、国家のために公な席上においてやはりお互いやつていることなのですから、それで率直にひとつ事実をできるならばここで陳述をして頂くと、何人かの国民も又本当に愁眉を開くだろうと思います。そういうような公の大分あなたの捜査上困つたことはありませんか。
  430. 松本彊

    証人松本彊君) 従来涜職犯、特に割と事件の大きいものについてはいろいろな困難があるわけなんですね。大きいものであればある程、ところがこの佐藤事件は直接間接に我々が予想した以上に関係者が、その関係者といいますのは特別に犯罪の関係というのではないのですけれども、関係者が……相当多い実情の被疑者であつたために相当涜職罪について、特に大物についての捜査、検拳の困難な実情というものがあつたことは感じておりますがね。
  431. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこでこれはあなたの方で涜職罪として第一回の令状を執行いたしますのに、その令状の請求についてはすでに検察庁の方と相談をされて、打合済みの上に第二回の逮捕令状の請求をいたしたのですか。あなただけの考えですか。
  432. 松本彊

    証人松本彊君) 涜職の方ですか。
  433. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 ええそうです。
  434. 松本彊

    証人松本彊君) これは勿論検察庁とも打合の上やつたわけです。
  435. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 最初から打合せてやつたのですか。これは検察庁の主任検事は決まつてつて、その検事とあなたの方と十分打合せの上で今度は捜査進行されたわけですね。この主任検事はどなたですか。
  436. 松本彊

    証人松本彊君) これは岡崎特別捜査部長の下で岩松という……担当は岩松です。併し特別捜査部長の岡崎検事の方が事情が詳しいと思います。主任検事は岩松検事ですけれども、これは非常に期間が短かい……。
  437. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうすると岡崎さんが一番詳しいわけですか。
  438. 松本彊

    証人松本彊君) 詐欺事件の方は稲田検事がやります。それから涜職の方については岩松検事が担当したわけです。
  439. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 涜職の方は先程言われておりました田村町の何とかと言うのはそれだけだつたのですか。逮捕状請求の表面に出ておつたのは……。
  440. 松本彊

    証人松本彊君) 涜職の相手の方は岡田秀男です。贈賄佐藤で收賄の容疑が岡田です。
  441. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 その一件だけですか。
  442. 松本彊

    証人松本彊君) それだけです。
  443. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 これは幾らですか。
  444. 松本彊

    証人松本彊君) そこのところがちよつとはつきりしないのです。
  445. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 加島警部はこの事件とは関係があつたのですか。
  446. 松本彊

    証人松本彊君) 関係ありません。
  447. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 加島警部は詐欺の方にも涜職の方にも関係ありませんか。
  448. 松本彊

    証人松本彊君) 全然関係ありません。
  449. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 尚もう一つ、あなたが直接佐藤をお調べになつたということはありませんか。
  450. 松本彊

    証人松本彊君) 直接には調べません。
  451. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 直接に調べたことはないのですか。
  452. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  453. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 顔は知つておりませんか。
  454. 松本彊

    証人松本彊君) 顔は知つておりますけれども調べをしたことはありません。大体課長は直接調べろということはないのです。
  455. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 顔は知つておるのは、警視庁佐藤が出入りしておるという意味において知つておるのですか。事件として顔を知つたのですか。事件以後において顔を知つたのか、或いはそれ以前に……。
  456. 松本彊

    証人松本彊君) 出入りしておるという事実は知つております。
  457. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そのときは顔は知らなかつたのですか。
  458. 松本彊

    証人松本彊君) いいえ知つております。
  459. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 多少あなたも佐藤とは面識もあり交際があつたのですか。
  460. 松本彊

    証人松本彊君) 知つております。
  461. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたの席に来ていろいろ心易く話をされたことがありますか。
  462. 松本彊

    証人松本彊君) 私の部屋に来たことはございません。
  463. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 何かの機会に町で話をしたことはなかつたですか。
  464. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことは、友達関係の、間接ということで知つたことがあります。
  465. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたの知られておる佐藤氏の場合に、ひとり金を動かすばかりでなく、やはり饗応なんかもしていたというようなこともやつておりますか。
  466. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  467. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは相当大掛りでしたか、あなたの感じでは……。
  468. 松本彊

    証人松本彊君) その程度はちよつと分かりません。
  469. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 記憶はないですか。
  470. 松本彊

    証人松本彊君) 金だけでなく饗応もあるということは間違いありません。その饗応が大掛りであるか、ささやかなものであるかということは、これはちよつと……。
  471. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 分りませんか。
  472. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  473. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなたの感じとして佐藤の金を動かすこと、或いは饗応のこと、この行為全体を見て、これはやはり正しい行為だと感じておりましたか、或いはどうも行過ぎではないかという感じを持つておりましたか、どつちですか。
  474. 松本彊

    証人松本彊君) どういう対象ですか……。
  475. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 金を某々氏にばら撤いている、同時に又各所で御馳走しているというような全体の佐藤の行動に対してあなたの感じとして、これは正しい行為だと、或いはこれは行過ぎの行為だということは、どういうふうにお感じになつておりますか。
  476. 松本彊

    証人松本彊君) 犯罪事実とは別ですね。
  477. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 別にです。
  478. 松本彊

    証人松本彊君) 個々の場合は事情が相当違いますから一概には言えないです。
  479. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 まあ大まかに言うと……。
  480. 松本彊

    証人松本彊君) 大まかに言うと好ましくないと思いますね。
  481. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 今日証人として証言される方は、あなたと加島さんと宗像さんの御三方に願うことになつたのですが、これについて実は証言は、どの程度までこれは職責上機密であるから言わないことにしようじやないか、というようなことについて御研究になつたことがありますか。
  482. 松本彊

    証人松本彊君) 特別にそういう……。
  483. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 ことはなかつたですか。
  484. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  485. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 大体陳述の範囲の話をして見えたわけじやないですか。
  486. 松本彊

    証人松本彊君) いやそれ程のことはやつておりません。ちよつと会つて話をした程度です。
  487. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこで先程来から委員長から聞かれておりますときに、こういう事件の範囲で一つ答えましようというあなたの証言を……。
  488. 松本彊

    証人松本彊君) いやそれは警視庁機構の問題とか、そういうことは全然私自身も予期していなかつたですから……。
  489. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 私は委員長に直接聞きませんでしたが、こちらで聞いていますと、あなたは専門で以て捜査をなさる、或いは一つの事実を明らかにする、あらゆる事件のヒンターランドを調べなければならぬ必要もありますからね。
  490. 松本彊

    証人松本彊君) いやもう警視庁機構はいろは的に御存じだと思つていましたのです。
  491. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは併しあなたの陳述は一々ここで速記されておるのですから、それでこれによつて……又出席しない方もありまするし、そうしてやはり大体の事件の輪廓をなるべく多くの人に迷惑をかけずしてまとめて行きたい、こう考えますことはあなた方と同じことなんです。そういう意味において御出席を機会にずつと承つたわけです。それでその後検察庁とあなた方とでこの事件の継続進行について何か打合せがあり、特に今尚連絡をとられて捜査進行中なんですか。
  492. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  493. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうですね。
  494. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  495. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 見通しまでまだ行つておりませんね。
  496. 松本彊

    証人松本彊君) まだちよつと分りません。
  497. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 詐欺事件の方は大体。……。体。……。
  498. 松本彊

    証人松本彊君) 起訴になつております。
  499. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 揃つて起訴されて、それはもう整理ができていますね。
  500. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  501. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 結局詐欺事件の、起訴された事件の総額は幾らなんですか。
  502. 松本彊

    証人松本彊君) 正確な数字は覚えませんが、二千数百万円と思います。
  503. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そのばら撤かれた金というものは、一体全体で凡そ大掴みでどんなものか、覚えありませんか。調書を見れば直ぐ分ることですが、併し調書が更にあなたによつて……。
  504. 松本彊

    証人松本彊君) 記憶ありませんな。
  505. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 裏付けされるわけですから。
  506. 松本彊

    証人松本彊君) 集計して見れば直ぐ分るです。やつたことだけのやつは。
  507. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは分りますよ。
  508. 松本彊

    証人松本彊君) 今の私の頭でざつと幾らという記憶がないですから。
  509. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 ないことはないでしよう。
  510. 松本彊

    証人松本彊君) いや本当にないです。そういうことは隠しても何にもならないことは明らかですから、覚えていれば直ぐ言いますが、はつきり記憶がない。
  511. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それ故に承わる。調書があるから御覧なさいと言つても、あなた方でも許しませんよ。それを御覧なさい、知つているけれども言いません、御覧なさいと言つて承知しますか。
  512. 松本彊

    証人松本彊君) 大体の凡そのところが頭にあればですけれども、相当数が多いものですから、全体を集計……。
  513. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 併しながら事苟くも先程来証言されたごとく、他の事件とは異なつて相当注目を拂つておる事件でありますから、あなたの賢明を以つてそんな……大体肝腎なところになつて来るとちよつと覚えがない、少し無責任な感じがしますがね。
  514. 松本彊

    証人松本彊君) いや、それは決して責任逃れというような気持は一つもなく、調書に書いてあるやつは本当に集計して見ればわけないことです。私自身として覚えておれば申上げますけれども、今のところ……。
  515. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 起訴されたのは二千万近く。
  516. 松本彊

    証人松本彊君) 本当に覚えていない。
  517. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 起訴されたのは二千万円ばかりの詐欺事件として、大体撤かれた金も千万の上ですか。
  518. 松本彊

    証人松本彊君) そうですなあ。
  519. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 千万の上下どちらです。
  520. 松本彊

    証人松本彊君) ちよつと見当が……。
  521. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 大変用心深いから困る。このくらいで結構です。
  522. 大野幸一

    大野幸一君 私は数点ですが、ちよつとその前に鬼丸委員と共に、今日は傍聽人が多いようですから、特にあなた方の職業柄祕密に関することだからとか言つて拒む権利はどの程度にあるかということを、私が参考までに議院における証人宣誓及び証言等に関する法律の第五條をあなたに読んで、お聽き下すつてから愼重に考えて貰いたいと思います。凡そあなた方を訊問する場合に職務上の祕密だと言われると、相当それを広範囲に解釈されると、我我の国政調査権を進行しない。そこで第五條に「各議院若しくは委員会又は両議院の合同審査会は、出頭した証人が公務員である場合又は公務員であつた場合(国務大臣以外の国会議員を除く。)其の者が知り得た事実について、本人」あなたです。「又は当該公務所から職務上の祕密に関するものであることを申し立てたときは、」あなたが申し立てになつたときは、「当該公務所又はその監督庁の承認がなければ、証言又は書類の提出を求めることができない。」一応あなたが祕密であるということを申されれば私達は証言を求めることが出来ない。但しその次に「当該公務所又はその監督庁が前項の承認を拒むときは、その理由を疏明しなければならない。」そこで私の方で「その理由をその議院若しくは委員会又は合同審査会において受諾し得る場合には、証人証言又は書類を提出する必要がない。」私の方で理由があるかないか又委員会で決める。決めて、私の方で証言拒否権がないと、こう言う。そうするとその次にあなたの方というか、国家の方で、「前項の理由を受諾することができない場合は、その議院若くは委員会又は合同審査会は、更にその証言又は書類の提出が国家の重大な利益に惡影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求することができる。」こういうのです。この程度でなければ証言拒否権がない。これを一つあなたの方で御了解なさつて、次に私の問に答えて貰いたい。(笑声)そこで岡田さんに贈賄したという嫌疑を以て逮捕状を請求されました。我々は新聞紙上で常にどのくらいの贈賄金額、幾らあるというくらいのことを新聞紙上で見ております。これはあなた方もその程度のことは新聞記者に語つておいでになるだろうと思うのであります。
  523. 松本彊

    証人松本彊君) いや、そういうことはありません。捜査二課員が語るということはない。
  524. 大野幸一

    大野幸一君 捜査二課では言わないけれども、新聞記者はそれを知り得べき状態にある。だから新聞に毎日贈賄金額ということは出ておるでしよう。
  525. 松本彊

    証人松本彊君) いや……。
  526. 大野幸一

    大野幸一君 お待ち下さい、私が聽くまで。逮捕状に記載された金額は大体どのくらいですか。
  527. 松本彊

    証人松本彊君) それは今現に進行中ですからね、工合惡いのですよ。
  528. 大野幸一

    大野幸一君 そこで進行中だから祕密と言うのですが、国家に重大なる惡影響がありますか。国政調査権と個人の一定の事件捜査権との比較です。それを考えて欲しい。この事件捜査するところの便宜のためと、国政調査権の効用を発揮するところのあなたの証言提出義務と、こういうものを考えて下さい。どのくらいですか、分りませんか。
  529. 松本彊

    証人松本彊君) 課長としてはちよつと工合惡いと思います。
  530. 大野幸一

    大野幸一君 それじやあなたは……。
  531. 松本彊

    証人松本彊君) それから今の新聞捜査二課員が言うということは、最も堅く、くれぐれも言わないようにというふうなことを、恐らく警視庁中で一番特に念を押してやつておる課でありますし……。
  532. 大野幸一

    大野幸一君 それでは結構……。
  533. 松本彊

    証人松本彊君) その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  534. 大野幸一

    大野幸一君 併しこの事件関係者の数が多いのでね、それで新聞に発表されないから、一般市民は、どこか新聞記者の勘の方が強くて、相当後で無罪になるような事件も、初めから迷惑して……新聞に出される場合もあるというと、この事件関係者は非常に運のいい人だと思う。
  535. 松本彊

    証人松本彊君) 弁護士とか被疑者本人、或いは被疑者の属する会社とか、或いは他の官庁とかいう所から新聞記者が腕でとつて来るという記事は、これは我々の方としては如何ともし難いです。止めるわけに行かないわけです。併し捜査の本人がそれを外部に言うということは、これはもう特に捜査二課としてはあの中でも一番強く言つておるわけです。
  536. 大野幸一

    大野幸一君 逮捕状を請求されたときに、あなたは後にそれを勾留してあなたの方で捜査しようというおつもりで逮捕状を請求されたんですか、警視としてはあなたの手許において贈賄事件として、被疑事件として逮捕状を勾留状に切替えて勾留したものを自分でやろうとお考えになつて逮捕状を請求されたんですね、逮捕状を請求された当時のあなたの心持は……。
  537. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  538. 大野幸一

    大野幸一君 そのときに検事が、検察庁が自分の方で調べるとこういつたときに、あなたはどういう感じがいたしましたか。これは何か政治的の考慮を拂われて……。
  539. 松本彊

    証人松本彊君) 困難であろうと思いますね、調べをすることは……涜職犯について贈と收と両方出して調べるということは物的証拠でもあれば別ですけれども、非常に困難なことではないかと思います。
  540. 大野幸一

    大野幸一君 それは先程聞きましたが、大体贈收賄で放してしまおうというようなことは、これはもう体裁のいい揉み消しなんです。これはあなたの方でできる筈がない。だからそれは検察庁でやるということは、これは検察庁でやらないということになるでしよう。まじめに調べるというつもりはなかつたのでしよう。
  541. 松本彊

    証人松本彊君) そこまで考えませんけれども……。
  542. 大野幸一

    大野幸一君 いや私でさえ……あなた方はそういうふうに考えなければならんと思いますね。
  543. 松本彊

    証人松本彊君) 非常にむずかしいだろうと思います。
  544. 大野幸一

    大野幸一君 調べる人が政治的の何はなかつたのですか、検察庁がよもや政治的に動いたのではないかというような感じはなかつたのですか。
  545. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことは考えませんでした。
  546. 大野幸一

    大野幸一君 そこで贈賄の被疑者の関係で、あなたは大物だからと、こういうことを鬼丸委員の問に対してお答えになりましたが、大物とはどういう程度の人を言うのですか。例えば官房長官とか、総理大臣というような名前もその調書の中には現われて来ておりますか否や。
  547. 松本彊

    証人松本彊君) その点は課長としては、現にこの検察庁でその点も一括して送つたについて捜査中ということを聞いておりますので、二課長としてその具体的内容について申上げにくいと思います。
  548. 大野幸一

    大野幸一君 内容ではありませんが、あなたはそれでは衆議院法務委員会で社会党の猪俣代議士が名を挙げて、そういうふうに佐藤警視庁で自供しているではないかという新聞を、あなたは関係者としてあれを御覧になりませんでしたか。
  549. 松本彊

    証人松本彊君) 見ました。
  550. 大野幸一

    大野幸一君 あれは事実か事実でないか、これも言えませんか。
  551. 松本彊

    証人松本彊君) その点検察庁で捜査中ということですから、課長として申上げにくいわけです。
  552. 大野幸一

    大野幸一君 併しその名前がないものなら、その名前はそういうときにないと今記憶しておるくらいのことは言えるわけですが、これを否定した場合はどうですか。あなたは否定の場合なら例えば私の名前が出ていると言つたら、いやあなたは大野議員の名前は出ていないと言つてつた方が有難いですよ。はつきりとそうは言えませんか……。
  553. 松本彊

    証人松本彊君) 否定のことですか。
  554. 大野幸一

    大野幸一君 否定ではできませんか。
  555. 松本彊

    証人松本彊君) その点ちよつと困ります。ちよつと申上げにくいのです。
  556. 大野幸一

    大野幸一君 それじや被疑者の中にはそういう人があつたけれども、名前は言えない、こういうわけですね。それから総監と刑事部長が十二月七日に出した逮捕状を十四日まで、総監と刑事部長の命令によつて執行しなかつた、こういうことでありましたが、被疑者に対してそんな命令を発することは異例でありましようね。
  557. 松本彊

    証人松本彊君) その点考え方が、起訴を確実にする証拠を集めてから逮捕するという考え方と、逮捕の容疑の程度はあるけれども、起訴はまだ調べなければ分らないという場合に、どつちを先にするかということについての考え方の違いというものはあるわけですね。
  558. 大野幸一

    大野幸一君 そうですな、私の問がまだあなたに御理解願えないのですが、佐藤事件であつたから、特に総監と刑事部長の注意を喚起したのでしよう。一般の被告だつたら、あなた方総監や刑事部長に相談するまでもない。あれだけ大勢の留置人を調べるのですから、佐藤昇の事件であるから、総監と刑事部長の注意を惹いた。そこで見解の相違があつたとおつしやるのですね。そういうわけでしよう。起訴の確証がなければ、逮捕状を出してはいけないというのと、一応の犯罪の疏明ができれば、証拠固めをするために逮捕してもいいというのと、見解の相違は種々あるでしよう。併しながら特に総監と刑事部長は佐藤を知つているというわけですね。そういうことですね。それでこそ佐藤のためには或るべく有利に解釈しようという考え方が常識上出るじやありませんか。私だつてそうです。知つている人のためなら……。
  559. 松本彊

    証人松本彊君) この点私自身はつきりしていないのですか、起訴証拠が不十分でありますから、もつと証拠を集めてから逮捕するようにと、こういう考え方で、その線に沿うて遅れたのです。
  560. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 先程のあなたの証言されましたごとく、宗像警部補が二十数回に亘つて調べて調書を作成したという証言がありましたが、もとより佐藤本人に対する調べ方といたしましては、格段本人が陳述をしなければならないような捜査のいたし方はしていすまいね。
  561. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことはないと思います。
  562. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 ないわけですね。従つて強制力を加えて何か非常に本人の全然不本意な覚えのないことを強要したというふうなことはありませんね。
  563. 松本彊

    証人松本彊君) ないと思います。
  564. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 だからその調書は比較的ありのままのものであるわけですね。
  565. 松本彊

    証人松本彊君) そう思います。
  566. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ちよつと一言伺つて置きたいと思うのですが、さつき証人がお述べになりました中に、味の素事件の際に、佐藤という人について調べなければ、今後捜査進行することがでなきいというふうにお感じになつたというときの御説明の中に、どういう意味佐藤という人を調べて見なければならないかという最初の理由として、昭和電工事件のときの事件関係もあつた人ということをおつしやつておられましたが、それは具体的にはどういうことなのか説明して頂きたいと思います。
  567. 松本彊

    証人松本彊君) 昭和電工事件佐藤という人は、検察庁でも調べております。私の方でも調べたことがあるのです。その内容ははつきり記憶しませんが、正確にしてから申上げましよう。今ちよつと漠然としているのです。
  568. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 じや、それはあとで又もう少し正確に伺いたいと思います。
  569. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この証人にですか。
  570. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ええ。
  571. 遠山丙市

    遠山丙市君 ちよつと一、二点お伺いたしたいと思いますが、今大野委員からのお尋ねで明確を欠いている点があるのですが、前後二十五回ばかりに亘つて書類をお調べになつた、そこに現われている名前でありますが、そこえ出て来る名前は皆悉く被疑者であるかのごときお尋ねを大野君がしておつたのですが、そこえ出て来たのは皆被疑者でありましたか、どうですか。
  572. 松本彊

    証人松本彊君) そうではありません。
  573. 遠山丙市

    遠山丙市君 そうではない……あなたが、委員長さんからのお尋ねの冒頭でありましたが、味の素事件で、常務の鈴木恭二でありますが、これは起訴せられておるというようなことを言われましたが、間違いありませんか。
  574. 松本彊

    証人松本彊君) ありません。
  575. 遠山丙市

    遠山丙市君 実は委員長さんの手許に廻つていると思われます調査要求書というようなものには、鈴木は運動したから起訴を免れた……そういうふうに設憶しておりましたが、起訴せられたのですね。
  576. 松本彊

    証人松本彊君) 起訴せられました。それは、日にちは、十月七日に起訴になつております。
  577. 遠山丙市

    遠山丙市君 十月七日に起訴になつておる……それから次は、こういう具合に事件が大分揉めたようでありますが、この坂本刑事部長さんが更迭するに至つた理由でありますが、これに関連して委員長さんもお尋ねになつたようでありますが、派閥のようなものは、自分は何も拘泥していないと言つておられたが、あなたが拘泥する、せんでなくして、坂本刑事部長の更迭には、何かそういうような内部闘争というものの一つの現われがそういうふうになつたようなことをお耳にしたようなことはありますか。どうですか。
  578. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことは問題にしていないものですから、あまり注意していないですね。
  579. 遠山丙市

    遠山丙市君 注意しておらん。
  580. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  581. 遠山丙市

    遠山丙市君 そうですか。それから先程五井事件の大体佐藤昇を四十日間くらい留置して置いたように言われたのですが、五十日くらいじやなかつたのでしようか、多少のところは構いませんが、五十日くらい入れられておつたのじやないでしようか。
  582. 松本彊

    証人松本彊君) その点は十二月十四日に入れまして、一月三十日に出して、二月二日に釈放しましたから、そ間のあれですな四、五十日になるかも知れません。
  583. 遠山丙市

    遠山丙市君 そうすると、それの四十日ということは御訂正になるということになりますね。日にちを計算しますと……。
  584. 松本彊

    証人松本彊君) その計算した日にちだけ留めたわけです。
  585. 遠山丙市

    遠山丙市君 それは御記憶あれば承わるのですが、約五十日の間の中で、前の約十日間というものが、詐欺事件の容疑のための調べであつて、後の大部分、即ち四十日というものは何か大物に対して金でもやつたという、いわゆる贈收賄関係に関するものが、非常に長い間のようでありましたが、大体日にちの点を御記憶でございませんか。
  586. 松本彊

    証人松本彊君) 私の考えとしては同じ佐藤という一人の人間が詐欺をやつておりますから、その詐欺については、財産関係を全部調べるとか、或いは違つた詐欺を調べるということをはつきりして置かないというと、詐欺の事件自体が中心になつて来るわけなんです。従つてそのどこから贈收賄になり、どこからが詐欺事件になるという限界は、同じ人間がやつておることですから、非常に区切りを付けるということはむずかしいだろうと思います。従つて四十日間なり、五十日間なりの間というものは一括して全体を調べて、重点として詐欺事件を目標にしておる、こういう方針でおるのであります。
  587. 遠山丙市

    遠山丙市君 よく分りました。最後に一点ですが、先程鬼丸君の御発言中にもあつたのでありますが、非常に証人は廉潔の人である、正義を重んずる人である、こういうことを承つてつたので私もさように心得ておりますが、社会党の西尾末廣さんと大変御関係が深いようにも聞いております。何かお友達でありますか。
  588. 松本彊

    証人松本彊君) 全然知りません。
  589. 遠山丙市

    遠山丙市君 御承知ないのでありますか。
  590. 松本彊

    証人松本彊君) 新聞で拜見するだけです。(笑声)
  591. 松井道夫

    ○松井道夫君 それじや私の方からお尋ねしますがね今の金の撒かれたというのは大体の御記憶でいつ頃からいつ頃までの間なんですか。
  592. 松本彊

    証人松本彊君) 関係書類を持つて来ませんでしたからはつきり言えませんが二十三年前後……。
  593. 松井道夫

    ○松井道夫君 詐欺事件はいつからいつぐらいまでの間なんですか。
  594. 松本彊

    証人松本彊君) これは極く新らしいのです。
  595. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ちよつと証人の方にお伺いしますが、今関係書類を持つて来なかつたとおつしやつたですね。関係書類はあるのですか。
  596. 松本彊

    証人松本彊君) メモはつけてあります。
  597. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それは御提出願えますか。おありになるのですね。
  598. 松本彊

    証人松本彊君) これは正式のものでなく私物ですから……。
  599. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 私物でも御提出を願いたいと思います。
  600. 松本彊

    証人松本彊君) その点御容赦願いたいと思います。二十一年から二十三年くらいだと思います。大体は……。
  601. 松井道夫

    ○松井道夫君 二十一年から二十三年にかけてですね、亘つてですね、それは詐欺事件の方ですね。
  602. 松本彊

    証人松本彊君) いや今の……、ばら撒いた方ですか。
  603. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうです。詐欺事件の発生はいつ頃ですか。
  604. 松本彊

    証人松本彊君) 詐欺事件は大体二十三年の十二月頃です。
  605. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうすると、詐欺事件で取つた金を今ばら撒いたという関係は認められないわけですか。いつばら撒かれたかその点はどうですか。
  606. 松本彊

    証人松本彊君) その点はどつちが先、どつちが後というふうな、そういう詐欺で取つた金を撒いたかどうかということは前後するかも知れません。
  607. 松井道夫

    ○松井道夫君 詐欺をした金を撒いたということは、はつきりしないという結論になりますね。
  608. 松本彊

    証人松本彊君) 詐欺と金を贈與したということとの関連は、詐欺をして来た金をやつたという直接の関連というものは分りません。
  609. 松井道夫

    ○松井道夫君 それで私先程聞いたのですが、どうもあんたのおつしやること、ちよつと矛盾すると思うのですが。
  610. 松本彊

    証人松本彊君) 時期的に分らないのですが。
  611. 松井道夫

    ○松井道夫君 二十一年から二十三年に亘つて、今の金をばら撒いたという事実があつた。ところが詐欺の方は二十三年の十二だということになると、詐欺の方が後になるような印象を與えるじやないですか。
  612. 松本彊

    証人松本彊君) そうなんです。
  613. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうすると、別に詐欺をした金で今のような人に金をやつたという関連は……。
  614. 松本彊

    証人松本彊君) 分らんです。そういうことはまだ我々は問題にしていないのです。
  615. 松井道夫

    ○松井道夫君 分らないというよりも時期的に不可能じやないですか。撒いたのが先なんでしよう。
  616. 松本彊

    証人松本彊君) 我々の捜査というものは、詐欺事件とそういう金をいろいろな人に贈與したかどうかという問題との関連性は、直接には別にあるということは一ことも考えていないのです。
  617. 松井道夫

    ○松井道夫君 あるということは考えていない。
  618. 松本彊

    証人松本彊君) ええ。
  619. 松井道夫

    ○松井道夫君 ちよつとしつこいようですけれども、そうすると先程あんたの証言されたのは間違つているのですか。
  620. 松本彊

    証人松本彊君) どういう証言ですか。
  621. 松井道夫

    ○松井道夫君 時期的のことですがね。
  622. 松本彊

    証人松本彊君) 間違つておりませんな。
  623. 松井道夫

    ○松井道夫君 金をばら撒いたのが二十一年から二十三年に亘つて、それから詐欺をしたのは二十三年の十二月だ。だからばら撒いた二十三年というのは、或いは十二月押詰まつてつて来るかも知らんので、その点はこれはまあ別ですけれども、とにかく二十一年から二十三年に亘つて撒いた。ところが詐欺は二十三年の十二月、こうおつしやるのですから……。
  624. 松本彊

    証人松本彊君) それは正確ではないが、あの詐欺をした時期よりも前にそういう金をやつておるということを、佐藤が自供しておるのが実際だと思います。それはあなたのおつしやるのは、詐欺をした後でその金をばら撒いたのじやないかと、その疑いですか。
  625. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや、その金をということもありますし、又その詐欺の事実を覆い隠すために撒いたと考える余地があるかどうかという意味で聞いているのです。
  626. 松本彊

    証人松本彊君) その点は時期的には逆です。反対です。
  627. 松井道夫

    ○松井道夫君 時期的には逆になつておる。
  628. 松本彊

    証人松本彊君) ええ、大体のところが……。
  629. 松井道夫

    ○松井道夫君 但し佐藤の自供によればということになるのですね。
  630. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。大体そういう状況だと思うのです。
  631. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから今度警視庁内のあなたの方の捜査運営方法に関係することをお聞きするのですが、すべての事件を警視総監乃至は刑事部長に報告乃至は相談を求めるのではないと思いますが、その辺はどういうことになつて来ます。
  632. 松本彊

    証人松本彊君) おつしやる通りです。すべての事件を全部総監に相談することはありません。
  633. 松井道夫

    ○松井道夫君 ない、どういつた程度事件を……内規でもできておるわけですか。
  634. 松本彊

    証人松本彊君) 別に特別な内規はありませんが、大体の常識と言いますか……。
  635. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたの常識でやつておられる……。
  636. 松本彊

    証人松本彊君) 私個人ではなく、全体のそういう一応の事件々々によつて大体のそういう何と言いますか……。
  637. 松井道夫

    ○松井道夫君 基準、習慣といつたものがあるのですね。
  638. 松本彊

    証人松本彊君) 慣習的な一つのものが、大体のところがあるというふうに見て差支ない思いますけれども。
  639. 松井道夫

    ○松井道夫君 この佐藤関係の詐欺事件ですね、これについてはそういう事件と認めて報告乃至は相談した事実があるのですか、どうですか。
  640. 松本彊

    証人松本彊君) 報告しました。
  641. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたの方から積極的に報告をしたのですか。
  642. 松本彊

    証人松本彊君) 積極的に報告しました。着手の際に。
  643. 松井道夫

    ○松井道夫君 それはどういう関係で報告すべき事件と認められたのですか。
  644. 松本彊

    証人松本彊君) 報告した方が適当と思つたからです。
  645. 松井道夫

    ○松井道夫君 どうして適当だと思つたのです。
  646. 松本彊

    証人松本彊君) それは特別な理由はないのですが……。
  647. 松井道夫

    ○松井道夫君 併し佐藤の個人的の理由から、佐藤の一個人としての特別の理由からなんですか、或いは事件関係で出て来る佐藤以外の者の関係になりますか、どうなんですか。
  648. 松本彊

    証人松本彊君) 何がですか。
  649. 松井道夫

    ○松井道夫君 その報告すべきものと認めたというのは、佐藤は何でしよう、一事業会社の関係者で、普通なら何ら報告すべき事件には当らないのでしよう。そういつたような個人会社の社長でも専務でも結構ですが、そういつたような事件を……。
  650. 松本彊

    証人松本彊君) やはり佐藤自身というものは、佐藤という人間自体について報告して置いた方が適当だと思われるような人物という、これはやはり……。
  651. 松井道夫

    ○松井道夫君 その適当と思われる人物というのは、例えば政治的に知名な人をよく懇意にしておるとかいつたようなことですか、どういうことですか、佐藤にとつては頗る名誉なことかどうか知りませんが、どういうことなんですか、これは別に捜査の秘密にも何にも影響ないんですが……。
  652. 松本彊

    証人松本彊君) 佐藤という人物を報告することが適当だということは、結局佐藤自身というものが大体知つておる者が多いと思われるわけですな。一応つまり全然関係がないという、そういうものならばともかくも警視庁に出入する業者なんですから、一応それをやるということを言つて置くことが適当じやないかと思いました。
  653. 松井道夫

    ○松井道夫君 警視庁に何ですか出入りの業者であると、こういうのですか。
  654. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  655. 松井道夫

    ○松井道夫君 その外警視総監或いは刑事部長あたりと懇意だとかいうようなことはどうですか。
  656. 松本彊

    証人松本彊君) そういう具体的なことは我々は考えておりません。
  657. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうしますと、今の金をばら撤いた関係事件も早速報告なさつたわけですね、あなたから積極的に……。
  658. 松本彊

    証人松本彊君) 報告しております。
  659. 松井道夫

    ○松井道夫君 それも同じ理由である、こういうのですね。
  660. 松本彊

    証人松本彊君) 理由は考えずに、全体としての捜査の内容については、これはやはり報告することにしております。最初報告してありますから、従つてあともずつと報告してあります。
  661. 松井道夫

    ○松井道夫君 それはやはり相当大物の名前が出て来たからというわけでもないのですか。
  662. 松本彊

    証人松本彊君) そういうことは考えませんね。
  663. 松井道夫

    ○松井道夫君 それからこの事件は、捜査中に弁護士がつきましたか。
  664. 松本彊

    証人松本彊君) 勿論つきました。
  665. 松井道夫

    ○松井道夫君 誰ですか。
  666. 松本彊

    証人松本彊君) そういう点は一つ別の証人から聴いて下さい。一番詳しいですから、宗像証人がおりますから、余り誰でも分ることは外の証人がおりますから……隠す意味じやありませんがね。
  667. 松井道夫

    ○松井道夫君 併しあなたの方でですね……これは調書では分らんことですから……。
  668. 松本彊

    証人松本彊君) これは秘密でも何でもない、これは直ぐ分ることですからね。
  669. 松井道夫

    ○松井道夫君 正式に弁護届出を出さないで、あなたに対してこの事件の穏便な取扱と言いますか、言葉を換えて言えば揉み消しですね、そういう運動に来た弁護士はありませんか、あなたに対して。
  670. 松本彊

    証人松本彊君) 私のところえはありません。
  671. 松井道夫

    ○松井道夫君 あなたのところえ今のような運動で来た政治家はありませんでしたか、国会議員……。
  672. 松本彊

    証人松本彊君) 政治家はありません。
  673. 松井道夫

    ○松井道夫君 その他都会議員とか、いろいろありませんでしたか。
  674. 松本彊

    証人松本彊君) 政治家は一人もない。つまり佐藤事件をやらないようにということで私に直接に言つて来たという政治家の方は私の記憶にはないですね。
  675. 松井道夫

    ○松井道夫君 我々は事件が起きると、頼まれて政治家として、或いは弁護士とすれば尚更ですけれども、いろいろそういつた事件については陳情に来たことはしばしばある。それでこういう重大な事件で、結果から見て重大な事件であなたのところへ一人も陳情に行かんということはちよつとおかしいと思う。
  676. 松本彊

    証人松本彊君) 記憶がないのです。全然私のところえはないですよ。
  677. 松井道夫

    ○松井道夫君 これは忘れたかも知れない、あつたかも知れないけれども記憶にないということですか。どうです、このところは全然来たことがないと断言できるのですか。
  678. 松本彊

    証人松本彊君) その点ははつきりしませんが、そういう記憶はないですね、私自身のところへ来たという記憶は……直接私に来たという記憶は……。
  679. 松井道夫

    ○松井道夫君 警視総監、刑事部長のところへそういつた政治家などが来たことは、あなたは見聞きしておりませんか。
  680. 松本彊

    証人松本彊君) その点もよく知りません。聞いてないですね。
  681. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 私ただ一点お伺いします。佐藤氏が初め詐欺事件で一旦釈放されて、その次に贈賄の嫌疑で逮捕されなさつたのは僅かに三日の後だつたんですね、釈放されて……。
  682. 松本彊

    証人松本彊君) 釈放してそのまま又入つたんです。
  683. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それは三日の後だつたんですか。
  684. 松本彊

    証人松本彊君) いや、そのとき一旦出て又直ぐ入つたんです。
  685. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 私の伺いたいのは贈賄の嫌疑は、いつ頃からおかけになつたんですか。詐欺事件をやつていらつしやるいつ頃なんですか。
  686. 松本彊

    証人松本彊君) 詐欺事件をやつていてその間に出て来たわけなんです。
  687. 宮城タマヨ

    ○宮城タマヨ君 それはいつ頃ということは、はつきりお分りにならない……。
  688. 松本彊

    証人松本彊君) 日にちははつきり記憶はありませんですね。
  689. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 証人が、その当時に金を撤いたとか、或いは佐藤が金を撤いたとか御馳走したとかいうことについて数回に亘り調べられたのでありますが、もとより犯罪捜査の任務に当つておられますあなた方としては、一応金がそういうふうにばら撤かれており、或いは御馳走したのであるということは涜職になるのではないかということについての一応の疑いはお持ちになつたわけなんでしようね。
  690. 松本彊

    証人松本彊君) それは最初申上げましたように、詐欺事件を重点に取調べておつて、その詐欺事件については、本人の財産関係とか資金関係、或いは経理面というようなものを調べなければ詐欺事件が成立しませんから、それから派生して来るわけです。それで中心を詐欺事件に置いて調べておるものですから、詐欺事件を調べるためにいろいろ財産を調べたり、その使途を調べたり、或いは会社の経理関係を調べる、そういうことに重点を置いて捜査が進められたわけなんです。
  691. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 それは分りますが先程松井委員のお尋ねいたしましたごとく、詐欺事件は昭和二十三年に行われておる。それからすでに金を撤いたとか、或いは御馳走したとかいうことが二十一年から二十三年に亘つてつて、むしろ詐欺事件より前にあつたわけですね、先程証言されました。そういたしまするに拘わらず、その金を撤いたとか、或いは御馳走したとかいう点についてあなた方が調べたという趣旨は、言うまでもなく徒らに調べたわけではありますまいから、勿論職務上お調べになつたのだから、お調べになるには、いわゆる贈賄の疑いありとしてお調べになつたのですね、一応は。調べてから後は、或いはそれが涜職にならないことが、はつきりして釈放する場合があり、捜査を打切る場合がありますが、ともかくも一応はやはり贈收賄の疑いあるものとして捜査を進められたがために、二十数回に亘つての調書の作成というような捜査行為が行われたわけでありましようね。
  692. 松本彊

    証人松本彊君) その方は、直ぐ贈賄の容疑として調べるというふうにまで捜査が進まないのです。
  693. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 あなた方は徒らに仕事はしない筈です。捜査の任務にある以上はその捜査の任務に従つて、多少なり疑いがなければあなた方の職務行為というものは発動しない。だから職務行為を発動されて、而も当人から調書まで作成されておるということになれば、結果はともかくとして一応やはり贈收賄の疑いあるものなりという見解の下に、その捜査が進られたということに私共は承知してよろしいかどうかということです。
  694. 松本彊

    証人松本彊君) 贈收賄の疑いということで捜査を進めておるというふうには、我々の気持としては言えないのです。
  695. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうすると、その金の出入を明らかにして、詐欺事件を固める傍証固めとして、金の出入が明白にあつた。こういうことですね。
  696. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  697. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこで先程宮城委員からも聽かれましたが、後に涜職罪として逮捕状の令状をあなたの方から求められた。そうして逮捕状によつて執行し、二月一日に執行して……あれは三十日ですか。
  698. 松本彊

    証人松本彊君) 三十日です。
  699. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 三十日に執行して二日に出された、これは逮捕状の期限だけですね。
  700. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。判事勾留には入らなかつた、検事勾留に一日入つた
  701. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうすると、検事勾留は十日に、更に追加すれば、残り十日も延期されますね。そうすると非常に逮捕状の令状を執行して僅か二日か三日しかなかつた。そこでもう出されたのには何か直接の理由があるのじやないですか、涜職として荀しくも令状の逮捕状を執行して検事勾留まですでに出ておる、そのうちの一日を勾留されておるに拘わらず本人を釈放したということに、いわゆる一般の懷疑の眼を以て見られる原因があるのじやないでしようか。ちよつと異例じやありませんか。
  702. 松本彊

    証人松本彊君) そこの見通しの問題が、すでに終つておればともかく現に捜査中に、特に今それは問題ですからここでその点をいうことは非常に不適当だと思うのです。それは事柄の内容は特に検察庁でその点を今やつておる時期なんです。
  703. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そこで私がお尋ねしておるのは、私共職務上お尋ねしておるのである。あなたはやはり証人として聽取されておるのである。あなたが無理に言わぬとするものを、私共は強いて伺おうとは思いません。そこで併しながらお互いに法律によつてつておることならば、あなたの供述が、知つておるに拘わらず言わないというのであるならば、それはこういう法規に基いてこういうふうだから自分は言えないのだ、素人の人ならばともかくあなたは犯罪捜査、人の非行を十分に捜査せられて、或る一つの事実を明白にせらるべき本当の職務を持たれておる人であるが、今日のあなたの証言をずつと一貫して見ますると、ちよつとこれは素人以上に、実は非常に隔靴掻痒の感があるという私は気持を持ている。ですからあなたとしてはやはりこの点は言えないのだ、こういうわけで言えないのだ、この点はこうだというふうにもう少し明瞭に一つ
  704. 松本彊

    証人松本彊君) 今の涜職の鉱山保安局長の岡田秀男という人の涜職の問題については、ここで予断するようなことを言うことは、現在まだ捜査中だから申上げられない、こういうわけです。
  705. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 これは起訴になつていないんですか、岡田という人は……。
  706. 松本彊

    証人松本彊君) まだ捜査中で起訴するかどうかまだ分りません。未定ですからこういう時機に極めて不適当です。
  707. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 岡田秀男さんの事件は、あなたの方で逮捕状を執行した時に、先程来から言われておつた数十人に金を贈られた事件も、その当時金を分配したということは分つていなかつたのですか。その前後にも数十人の人に対して金を撒いておつたということは、岡田秀男の事件を起訴した時分に、あなたの方から令状を求める時にすでに多少外郭も全般的に分つてつたのですか。お手許には……。
  708. 松本彊

    証人松本彊君) その点は犯罪事実として、犯罪としての色彩があるかどうかということについては全然触れずに、そのままで特にそれを調べるという方向に向く暇なく、專ら詐欺事件とそれから涜職の容疑の色彩のあるものを逮捕するという趣旨で、第二段の逮捕状を請求したわけなんです。
  709. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そうすると、結局その岡田秀男事件の分つている時には、大体数十人に金が行つているということは分つたけれども、その中から岡田秀男の事件だけは大体涜職罪の疑いが濃厚なりということで逮捕状の請求をした、こういうわけですね。
  710. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  711. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 ようございます。
  712. 伊藤修

    委員長伊藤修君) この際お諮りいたします。委員外議員の発言の許可願が出ておりますが、板野勝次君より発言の許可を求められておりますが、許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  713. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では板野勝次君に発言を許可いたします。
  714. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) ちよつとお尋ねしますが、先程委員長があなたにこういうことを尋ねられたと思うんです。警視庁の中には自由党宮廷派とか、或いは番町会か分かりませんが、とにかく派閥がある、それに対してあなたの答えは、私はそういうものがあつても問題にしないのだ。こういうふうな証言があつたように思うわけですが、それは警視庁内における派閥を肯定せられたものと思うんですが、そういうふうに理解していいでしようか。
  715. 松本彊

    証人松本彊君) その点は私としては問題が……捜査自体についてそういう影響を絶対に受けないという方向で行くということを申上げたのであつて、派閥自体があるかないかということについての私の考えというものはそこには含まれていないんです。触れていないというふうに御承知願いたいと思います。
  716. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それでは捜査に対する影響というものは、派閥はあろうと、なかろうと、そういうものに影響されずに行つておるとこういう意味なんですね。そういうものに影響されることなく自分としては進めて行つたという意味なんですか。
  717. 松本彊

    証人松本彊君) そういう意味です。
  718. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それでは次に聞きたいのですが、捜査を進めて行く場合に、捜査をする人達に、更に逆捜査を進めて行くというふうなことが言われておる。そうして新聞紙にもこれは報道されておつたと思うんですが、そういう点について耳にせられたことはないのですか。具体的に申しますと、昨年の十二月の九日の読売新聞に「某監察官付警部は逆に同事件担任の捜査官らの身辺調査を行い、捜査に支障を加えるという全く不明朗極まりない事態が発生、このため現在に至るも令状請求には至らず、」ということが報道されておるわけなんですが、そういうふうなことに関連して何も聞いたことはないですか。
  719. 松本彊

    証人松本彊君) その点は具体的にはなかなか申上げにくいのですが、そういう雰囲気があつたことは私聞いております。具体的内容については確認の証拠というものについてまだ私自身聞いておるという程度であります。そういう雰囲気があつたということそは……。
  720. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) あつたということは、聞いておられるわけですね。
  721. 松本彊

    証人松本彊君) はあ。
  722. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それからその前に一つ聞くのを忘れましたが、この佐藤昇という人は東京都の防犯協会というのですか、それの理事長というのですか、若しくは理事というような要職にあつた人じやないですか。そういうことを御存じないでしようか。
  723. 松本彊

    証人松本彊君) 神田の防犯協会の防犯協会長か役員かをしておる筈です。
  724. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 次にお伺いたしたのですが、これは他の委員からもしばしば質問が出たことに関連するのですが、どうしても分らない点は、十二月の七日のときの状態と、十四日のときの逮捕状というのと、逮捕令状を出すか出さないかというこの情勢の変化といいますか、その情勢の変化が先程来のあなたの証言だけでは分りにくいのです。というのは七日の状態からいいますと証拠が湮滅されてはならないから逮捕状を出されなければならないという点で、これならば田村町の吉村商店から出された詐欺事件だけでも起訴すると、こういうまあ私の判断から見れば直ぐやられなければならないものが、それなのに十四日まで延ばされて来た。而もその間にそれだけの期間が経過して行けば証拠湮滅その他のことも行い得るに相違ないわけです。そうして十二月の七日の逮捕状の請求の場合と、十四日に逮捕状が出される場合との手続上の変化というふうなものが窺えるわけなんですが、そういう点についての変化をもう少し具体的に話して頂けないでしようか。
  725. 松本彊

    証人松本彊君) それはこの七日の逮捕状を請求した気持は、前に申しましたように、逃亡とか、証拠湮滅の虞れがあるので、早く逮捕したいという気持でおつたのですが、一方逮捕しても必ずしも起訴になるかどうかは分らんのですね、ですから折角逮捕して起訴にならないで釈放するということは、極めて捜査としてはまずいわけです。従つて起訴が確実になるまでの証拠を集めるようにという総監、部長の命令があつたわけです。その間に証拠を集めに北海道や仙台の方に係官を出張させたわけです。それで大体起訴の見通しができるような状況に証拠が出て来たので、そこで執行した。逮捕した。こういう状況なんです。
  726. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) そこでもう一つ重ねて聽きますが、その場合の逮捕はやはり逮捕状を出す時、七日に逮捕状の請求をされたと同じような手続、十四日の場合においてもやはり同じようなこの上司に対する理由で、逮捕状が出されたかどうかという点をお尋ねします。
  727. 松本彊

    証人松本彊君) いや、逮捕状を七日に請求して貰つて執行を十四日にしたのでありますから、内容は同じであります。逮捕理由は同じです。
  728. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 次にこれも最初に委員長から、例えば福田代議士、吉田茂、増田甲子七というような名前と金額がずつと挙げられていて、それを尋ねられた場合に、証人はつまり今読上げた人と金額ですね、それについて事実と相違しておる点が多いということを言われたわけです。そういう点から想像されて来るものは、金額と名前というふうなものが、あなたの方では大体今でも記憶の中にはつきりしているのじやないかというふうに窺えたのですが、そうでなければ非常に不明瞭な場合に、委員長が読上げた人と金額とが相違しておる点が多いんだというふうな判断はつきにくいと思うのですが。
  729. 松本彊

    証人松本彊君) それは私の方で調書を見たのですから分つておるわけです。併し正確に今頭にないものですから、そこでどういう点が違う。どういう点が合つているということは、ここでは記憶していないわけです。
  730. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それでは違つている点が多いんだということにも断定はつかないわけですね。あなたの記憶の上から行けば……。
  731. 松本彊

    証人松本彊君) その点は調書を見れば一目瞭然です。はつきり分ります。
  732. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それからこの調書を作成された人は、主任は宗像警部補だと言われたのですが、終始宗像警部補だけですか。
  733. 松本彊

    証人松本彊君) 主としてそうですな。
  734. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) もう一人当つておられる人があればその名前を……。
  735. 松本彊

    証人松本彊君) 大部分は宗像主任です。或いは小さなような問題で外の者がやつたのがあるかどうか、記憶しておりませんがね。大部分は宗像主任がやつた筈です。
  736. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それからもう一つお聽きしたいのは、佐藤という人が自供を始めた頃ですね、それは大体いつ頃なんでしよう。
  737. 松本彊

    証人松本彊君) 日にちははつきり記憶しませんな。十二月十四日に逮捕してからそう長くはないと思いますがね。
  738. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 一月の三十日に保釈になつたわけですね。
  739. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  740. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) その保釈というものを起点として記憶を換起されれば、例えば一週間前であるとか、十日前であるという記憶はつきませんか。
  741. 松本彊

    証人松本彊君) いつからどういう自供をしたかという日にちですか。
  742. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) ええ凡そ……。
  743. 松本彊

    証人松本彊君) これは一番分り易いのは、宗像君に聽かれれば一番分り易いと思います。私の方はむしろ報告を聞いておるのですから、間接です。
  744. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 例えば佐藤という人が、その調査をお読みになつて岡崎らと待合で会つておるというふうなことを佐藤という人が自供していないかどうか。或いは増田官房長官も幾度か佐藤という人と会つておるという、そういうふうなことが調書の中に出ておつたかどうかということは御記憶はないでしようか。
  745. 松本彊

    証人松本彊君) はつきりした記憶はありませんな。
  746. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) けれども全く否定するような記憶もないわけですね。
  747. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。
  748. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 肯定もできないし、否定もできない。実に曖昧な記憶の状態にある。そういうふうに理解してよいのですか。
  749. 松本彊

    証人松本彊君) その通りです。
  750. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それでは最後にお聽きして置きたいのですが、田中警視総監と坂本刑事部長が二月の初めに国会の衆議院の予算委員会に呼出された頃だと思いますが、辞意を表明したというようなことを知つておられますか、どうでしようか。
  751. 松本彊

    証人松本彊君) それは聞いておりません。
  752. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 聞いておられませんか、そういう噂も。
  753. 松本彊

    証人松本彊君) 噂も当時聞いておりませんですね。
  754. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 佐藤さんが涜職の嫌疑で逮捕されたことに関連してちよつとお聽きしたいのですが、さつきからのあなた様の御証言によりますと、佐藤さんの詐欺嫌疑の事件調査なさる途中に、それを調査するにつきましては、当然本人の財産状態とか、生活状態を細密に調べなければならないので調べておつたら、またまたその途中に、いろいろ大勢の人に金をばら撒いておる事実が現われて来たので、それでそれが涜職の疑いがあるというので、あなた様が逮捕状をお出しになつたというのでありますけれども、荀くも專門家のお立場においでになりますあなた様が、これに対して逮捕状をお出しになりますのは、涜職の嫌疑が相当濃厚であつたからだと思いますが、具体的にはこの方がどういう人にどれだけ金を渡して、その理由をどういうふうに述べられたか。あなた様には納得できないで、あなた様がどういう疑いをお持ちになつたので逮捕なさつたか。今御記憶にある具体的な事実をできるだけ沢山お挙げ願いたいと思います。
  755. 松本彊

    証人松本彊君) その岡田秀男という人に贈賄したということですか。
  756. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 一つではございません。あなた様が……。
  757. 松本彊

    証人松本彊君) これはいろいろな人に献金をしておるという、そういう問題は今の犯罪、贈收賄になるというふうに考えられておるのではないでしようか。そうではないですか。犯罪になるかならないかということについては、鉱山保安局長の岡田秀男に收賄容疑で逮捕の理由があるというので逮捕したわけです。あとの方は詐欺の方をやつておるために調べが進まない状態であるわけです。ですからいろいろな人にと言いましても、犯罪容疑としては、鉱山保安局長の岡田秀男に対する贈賄容疑が現在までの犯罪関係の容疑なんですがね。ですから金をやること自体が直ぐ贈收賄になるというふうに考えられないわけなんです。犯罪関係があるかないかということについては、今の鉱山保安局長に対するものが逮捕の理由になるということで、岡田鉱山保安局長の分について逮捕状を請求して貰つて逮捕したわけですから、外の者については触れないわけなんです。
  758. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 一応お疑いはお持ちになつたのでございましよう、外の人にも。
  759. 松本彊

    証人松本彊君) それは佐藤が言うておるのを調書に取つたわけです。
  760. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 あなた様はお疑いをお持ちにならなかつたのですか。
  761. 松本彊

    証人松本彊君) 疑いというのは、金を貰つたか貰わないかということですか。
  762. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 贈收賄……。
  763. 松本彊

    証人松本彊君) 贈收賄の疑いというものには、これは今申しましたように、岡田秀男に対する分について疑いを持つて逮捕したわけなんです。後の分については、詳細に調べて容疑があるかないかということを捜査をする、そこまで進んでいないわけなんです。それから明らかに犯罪にならないと思われるのもあるわけなんです。その中には刑事事件にはならないと思われる……。
  764. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 岡田秀男さんという人との関係の問題は、余程それでは明確だつたのでございますね。
  765. 松本彊

    証人松本彊君) 外の者よりはその方が涜職の色彩が強かつたわけです。
  766. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 外に色彩の比較的薄い涜職の嫌疑をおかけになつた問題に、どんなものがあつたのですか。
  767. 松本彊

    証人松本彊君) その点はまだ終つておるわけでないものですから。
  768. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 御捜査中ですか。
  769. 松本彊

    証人松本彊君) 現に捜査中ですから。
  770. 深川タマヱ

    ○深川タマヱ君 そうですか。
  771. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 外に発言はありませんか。
  772. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 さつき伺つておる間に外のあれになつちやつたのですが、最初に委員長から証人にお尋ねがあつて証人の方からは、五井産業事件と直接の関係がないからということだつたんですが、我々としては、この五井産業事件を考える重要な関係があると判断をしてお伺いをしておるので、その点についてお答えを願いたいと思うのですが、この伊藤鑛壽という人に関する事件ですが、これについては現状はどういうふうになつているのですか。
  773. 松本彊

    証人松本彊君) 現状は起訴されております。紙の事件に絡んで起訴されております。
  774. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 ああそうですか。そうすると、それに関するあなたのところで調査をなさつたんですか。
  775. 松本彊

    証人松本彊君) 私の方も検察庁も調査しました。取調べをやりました。
  776. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 そうですか。その取調べの調書がおありになるわけですね。
  777. 松本彊

    証人松本彊君) あります。
  778. 羽仁五郎

    ○羽仁五郎君 それは大体いつ頃からいつ頃までの御調査、調書であるのですか。
  779. 松本彊

    証人松本彊君) はつきり覚えませんが、去年の暮頃出ました。身柄は去年の暮頃出ました。その頃の調書だと思います。十二月頃ですね。
  780. 遠山丙市

    遠山丙市君 ちよつと先程の板野君の発言について、釈明を求めておきたいと思います。先程来から板野君もお聴きになつたであろうと思うのですが、この委員は繰返し繰返し警視庁派閥抗争ということについてのお尋ねをしておつたのです。あなたも重ねてやられましたが、結構でありますが、その中にもあなたは宮廷派という言葉が出た。宮廷派という形でお前は何か言つておるのじやないかと、宮廷派というようなことは証人がまだ一度も話したことも、出ておらん。各委員も一言も出しておらない。これを突如としてあなたがお出しになるということは、これは珍らしい言葉ですからお尋ねするのだが、これにはでかでかと書いてあるが、この紙にはでかでかと書いてある通りですが、これに対しまして、何か前以てこういうことは御承知なんではないでしようか。又はこれに書いてあるから、ここで大物とか、宮廷派、宮廷派とこういうことを特に言われるのかどうか。私は文書自体が出所が誠に怪しいと思う。それでその点を明瞭にして頂きたいと思います。
  781. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) 私は最初から自分の主観について言つたのではなくして、委員長警視庁の中にボス派と、宮廷派であつたか何であつたか聴きそこなつてよく分らないけれども、と言つて、私は言つておる筈なんです。宮廷派のように聴きとれたし、そうでなかつたかもしれないということを前提にして私は質問したのです。これは速記録を見て頂けば分るのであつて、こういうものを基礎にして我々は今少しも、私は言つていないと思うのです。その点は一つ了解して置いて頂きたいと思います。  もう一つ聴き落しておりましたが、これは大野委員から質問されたので、その大物についての定義があつたと聴いておりますが、これは非常に申上げにくいというふうなことだつたのですが、併しこれは大物の内容について、例えば吉田総理、増田官房長官というふうな人達、例えばそういう名前を列挙した場合に申上げにくい。或いはそういう名前が出て来たかどうかということについても、否定はできないというふうな証言があつたと思うのですが、その申上げにくいという言葉の中には、何も機密上申上げにくいという意味じやなくて、つまり職務的な繋がりから、従来の慣例から見ても、いわゆる下級の官吏が上司の不正を粛正するというふうな大それた考え方を持つこどは、自分の例えば左遷されるとか首になるとか、そういうふうな圧迫も加わつて来るから申上げにくいというふうに聞こえまするし、又一方では、人情上そういうふうなことは言いにくいと、こういう二つの場合に解釈できるわけです。そこで職務上そういうことをやつて行くことは、つまり喋るということは、左遷若しくはその他の公務員として、何というのですか、工合が悪い。そういう意味なのか。人情上言わない方がいいというふうな意味なんですか。どちらの場合ですか。
  782. 松本彊

    証人松本彊君) その点は、最初どういう内容だつたか、ちよつと忘れましたが、大物であるかないかの限界がなかなか申上げにくいという意味に私は言つたのであります。どの事件が大物の事件であり、どの事件が小物の事件であるかという、限界といいますか、その区別がなかなかここでは一概に決められないという意味で申上げにくいというふうに言つたのであります。増田官房長官が出ておるかどうかということだから申上げにくいというふうなことじやないのです。大物の事件とそうでない事件との区別が申上げにくい、個々の問題について判断しないとどこまでが大物でどこまでが小物というふうな区別がなかなかむずかしい、こういう意味で申上げにくいと言つたのです。
  783. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) ところがあなたは、大物についての捜査に関しては特に困難な実情があつたというふうな意味のことを証言されたわけじやなかつたですか。
  784. 松本彊

    証人松本彊君) そうです。それは捜査二課として従来そういう実情です。
  785. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) この場合にも大物の限界というものは別として大物の範囲をずつと拡げて行けば、これは必ずしも肩書だけが大物という意味ではなくて、事件の大きな範囲に亘つて網を拡げて来るという場合も大物でしようから、そういう場合のいろいろな困難さがあるし、併しそれはどう言つたらよいでしようか、困難さがあつたが、その具体的な事実については申しにくいというのでないと、後の字句が続いて出て来ないわけなんですね。例えば大物の定義というのが、言いにくいのだというようなことでは後の言葉は続かないので、やはりそういうものがあつて今度の場合にもいろいろ捜査上の困難を極めたのであろう、そういうふうに理解できると思うのですが、それでよいですか。
  786. 松本彊

    証人松本彊君) 後の言葉というのは、捜査が困難であるということですか。
  787. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) ええ。
  788. 松本彊

    証人松本彊君) 大きい事件については一般的に捜査は困難であるという、そういうことを申上げたのであります。
  789. 板野勝次

    委員外議員(板野勝次君) それでは今度の場合について、捜査について困難な実情があつたというふうにも理解していいわけですか、今度のこの五井産業事件捜査等についてもやはり困難な、状態があつたという……。
  790. 松本彊

    証人松本彊君) そこのとろは大物の事件であるかどうかという判断になるわけです。
  791. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 板野さんどうです、この辺で……。  外に質疑もありませんですね。では証人の方にちよつと申上げて置きますが、本日の証言をお伺いいたしておりますと、勿論捜査の祕密の点について御証言を願えない部分は、これは我々としても了承いたしたいと存じますが、その余の部分……関連事項において、重要な点について御証言がなされていないのです。私個人から申上げますれば、委員長として、あなたが必ず知つていると思うことであるのですが、それを当委員会において御証言を願えないということは誠に遺憾に堪えないと思います。あなたの御職掌柄十分この間の事情をお弁えのことと思います。殊に国民の義務といたしまして、当委員会においてはあなたのお立場が如何に困難でおろうと、ここで真実をお述べ願うということが一番望ましいと考えますが、どうかこの点を十分一つお考え下さいまして、次回までに尚一応御考慮を願いたいと存じます。次の機会に又再び御証言を得たいと存じますが、この点特に御考慮を煩わしたいと思います。長時間大変御迷惑でございました。どうぞお帰り願いたいと思います。  それではこの程度においてちよつと休憩いたしたいと思います。    午後五時十五分休憩。    —————・—————    午後五時二十三分開会
  792. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 休憩前に引続いて開会いたします。証人の方に申上げますが、今日わざわざ御出頭願いましたですが、時間も大変予定が狂いまして、遅うなりまして、これからお願いしますと相当遅くなります関係で、来る十八日午前十時より再び御出頭願いたいと、かように存じますが、それで今日はこの程度で終りたいと存じます。そういうことに一つお願いいたします。  それでは本日はこの程度で散会いたします。    午後五時二十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            大野 幸一君            小林 英三君            鈴木 安孝君            遠山 丙市君            深川タマヱ君            松井 道夫君            羽仁 五郎君   委員外議員            板野 勝次君   証人    警     視    (警視庁刑事部    捜査第二課長) 松本  彊君    警     部    (警視庁刑事部    捜査第二課勤    務)      加島 義成君    警  部  補    (警視庁刑事部    捜査第二課勤    務)      宗像 三郎君