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1950-03-14 第7回国会 参議院 法務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月十四日(火曜日)    午前十一時七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件証人喚問に関する件 ○少年法の一部を改正する法律案(内  閣提出) ○少年院法の一部を改正する法律案  (内閣提出) ○商法の一部を改正する法律案内閣  送付)   —————————————
  2. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではこれより法務委員会を開きます。先ず最初にお諮りいたしたいと存じますのは、昨日委員長に御一任願いました五井産業事件証人に関しましては、明日喚問することに、証人加島義成宗像三郎松本彊、以上三人を午後一時から召喚することにいたしたいと思います。御異議ありません。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 伊藤修

    委員長伊藤修君) ではそのように決定いたします。   —————————————
  4. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では少年院法の一部を改正する法律案、並びに少年法の一部を改正する法律案を議題に供します。昨日に引続き質疑を継続いたします。
  5. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 佐藤長官が見えておりますから、昨日もちよつと触れた問題でございますけれども、長官の御意見を伺いたいと思います。それは決定機関執行機関とを一元化なさるような、今直ぐというわけには勿論参りませんでしようけれども、仕事の上からそういうお考えはございませんでしようか。
  6. 佐藤藤佐

    政府委員佐藤藤佐君) 御承知のように新らしい制度になりましてから、少年保護処分につきましても審判機関執行機関を判然と分けたのでございます。従来は少年審判所において審判をなし、又みずから責任を負つて執行を掌るという工合に行つておりましたのが、執行機関審判機関をはつきり分けたために、非常に責任の分担が定まつていい面もありますけれども、審判を掌るものが執行について全然認識がないために、どうも審判そのものが適切を欠く虞れがあるのであります。さような運用状態を見ますると、ときに昔のようにやはり少年保護処分については審判執行とが一体となつて運用すべきものじやないかというような意見もぼつぼつ出ておるのでありまして、私共といたしましてもその点を十分検討いたしておるのでありまするが、新らしい制度運用が始まつてからまだ年も経ちませんので、今後の運用の結果を見て、御意見のような方向に進むような場合が或いはあるかも存じませんが、今のところまだ研究の域を脱しておりません。将来どうなるかという見通しについては、まだ申上げかねるのでございます。
  7. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 この少年鑑別所鑑別の結果が、家庭裁判所裁判の上に事実利用されておりますでございましようか。
  8. 佐藤藤佐

    政府委員佐藤藤佐君) 制度建前といたしましては、家庭裁判所において少年審判する際に、鑑別所鑑別を有力な参考資料として適切な審判をするという建前になつておるのでありまするが、昨日も御指摘を頂きましたように、少年鑑別所施設が十分に充たされておりませんので、その機能もまだ十分に発揮できないような状態であります。又家庭裁判所の方としましても、新らしい制度を十分に活用するということに十分慣れておりませんので、両方の面からして十分に利用されてない憾みはあるのでありまするが、これは少年鑑別所を今後十分に整備を充足して、そしてその鑑別の結果を審判所の方で当然取入れて頂くようになるだろうと期待いたしておるのでありまするが、今のところどうも施設が不十分であり、又専門のお医者さん、或いは学者等を迎えるのに思うように行きませんので、甚だその点は遺憾に存じておるのでありまするが、整備いたすにつれまして、家庭裁判所の方でも十分これを活用して頂きたいと考えております。
  9. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 これは家庭裁判所の方に伺う方がいいのでございましようが、連関しておりますからちよつと伺うのでございますが、全国の家庭裁判所を歩いて見ますというと、昨日もちよつと触れましたけれども、判事さんが実に子供興味のない、審判をしつぱなしでおるといつたような感じのところが多いのでございます。それでこれは少年係らに判事になるという希望者が少ないのじやないかと思うのですが、その点如何でございましようか。それと、少年審判は特別の興味と、それから子供に対する理解がなければできない仕事でと思うのでございますせけども、何か或る期間限つて判事さんの教育というと言葉は甚だ当を得ないかも知れませんけれども、何か特別に指導されるような機関でもございましたら大変いいかというように考えておりますが、如何でございましようか。
  10. 佐藤藤佐

    政府委員佐藤藤佐君) 全く御同感でありまして、以前の少年審判所時代におきましては、御承知のように審判官が非常に少年興味を持ち理解を持つて審判の職責を果され、又執行の面にも当つておられたのでありますが、新らしい制度になりましてから、審判官は全く審判だけをやるということで、執行の面を盛ておりませんので、従つて少年に対する興味と言いますか熱の点におきましても、理解の点におきましても、従来の審判官よりその程度が薄いということは、これはどうしても否み難い事実であろうと思うのであります。従つて意見のように、少年保護処分については審判執行とを一元化する必要があるのじやないかというような御意見も出ることと思われるのであります。この点は裁判所の方におきましても疾しにお気付になつておりまするので、殊に現在の裁判官分布状態を見ますると、判事の数が少いために、どこでも家庭裁判所では大体兼任の判事が片手間で少年審判をやるという現状でありまするために、尚更少年に対する理解興味というものが薄いのでありまして、これを是正するために裁判所の方では判事増員を図りますと共に、今後判事補時代に一年とか二年一定期間限つて、必ず家庭裁判所仕事を修得させて理解興味をわかせようというような企てがあるように聞いておりまするので、さようになりますれば、少年保護処分についても適切な審判がなされ得るだろうと思いまして、私共はその結果を大いに期待しておるような次第でございます。
  11. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 重ねてお伺いいたしますが、試験観察という制度は非常にいい制度だと私共も存じておりますけれども、この試験観察が今どのくらい本質的にされておるかということについては、私は疑問を持つておりますが、如何でございますか。
  12. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 試験観察制度は、宮城委員の御説の通り少年法取扱についても妙味ある制度と存じておりますが、現在何分にも専任少年保護司の数が少ないために、専任少年保護司は専ら調査のみに追われておるというような関係で、行届いた試験観察ができておらないというのが実情でございます。併し調査の合間に、熱心な保護司がこの試験観察を行なつておりまして、少数でありますが、非常にいい成績を挙げておる裁判所もございます。この度の国会で、裁判所少年調査官少年調査官補増員でも行われれば、多少なりとも試験観察の効果を従前より増して挙げることができるのじやないかと存じておる次第であります。
  13. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 局長が見えておりますので伺いますが、家庭裁判所の方で子供審判いたしますのに、どうも、先程も佐藤長官ちよつと伺つたのでございますが、判事犯罪事実によつてだけ決定するというような傾向があるかに私は見受けますけれども、子供審判は、ただその現われております犯罪事実だけによつて決定されるというのでは、甚だ欠けておるというように思つておりますが、今もお話がございましたように、今までの名称を使いますれば少年保護司が、数も少いし、又質も幾分不足の点もあつたりして、十分な審判がおできにならんという点もあるかも知れませんけれども、根本はやはり判事さんに子供に対する理解興味がないという点に落ち着くのじやないかと思つておりますが、局長は如何な御見解でございましようか。
  14. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 何分にも家庭裁判所が発足いたしまして、一年数ケ月しか経ちませんので、少年審判という新しい制度を従来の地方裁判所の民事、刑事の裁判官がこれに当つておりますけれども、慣れておらんというような関係上、今宮城委員の申されたような数々の不都合な点があるのであります。併しながら最高裁判所といたしましては、昨年度においても二回少年係裁判官研修を行いまして、少年に対する理解興味をそそり、尚且つ少年問題に対する科学的な研究等もいたすように努力いたしておるような次第であります。今後においても最高裁判所では研修ということを実施いたしまして、少年係裁判官少年問題に対する熱情を、又科学的な教養を加味して行くようにいたしたいと考えております。
  15. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから重ねてでございますが、今までの嘱託少年保護司というのは今度はどういうことになりますか。
  16. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) ……
  17. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それではもう一つ重ねて、少年保護司名前少年調査官になりましてございましよう。專任は。そうすると今までまだ嘱託保護司というものが事実仕事をしていらつしやるのでございますが、それはもう保護委員ということに名前は変つておるのでございますか。
  18. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 家庭裁判所の方には嘱託少年保護司制度はございません。家庭裁判所発足の当時からすべて官吏たる少年保護司少年調査官となつております。
  19. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると事実においては今までの嘱託少年保護司委員会の方の司法委員になつておるのでございますね、実際は……
  20. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) さようでございます。
  21. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ところが今私が伺いまする意味は、少年保護法が制定されまして殆んど三十年ぐらい使い古しました少年保護司という名前少年調査官という名前になりまして、そうして今までの嘱託少年保護司という名前のものが司法保護委員と一時なりましたのが、今度は又保護司になるのではございませんか。そうすると名前の上に非常に私はこう混雑いたしまして、何が何か分らんということになりますので、この名前を変えるなんていうことも余程愼重にしないと、下部に参りますというと、余り猫の目のように変つてしまうという結果になつてしまいはしないかと思います。
  22. 關之

    説明員關之君) 只今の問題でありますが、こういうふうに変えることになると思うのであります。従来のあの嘱託少年保護司でございますね、これはその方の身分として、官吏として採用し得る資格があるかどうかという点からいたしまして、少年保護観察所の方の職員として採用するというような方向に近くなるのではないかと思つております。そうしまして、従来の司法保護委員でございますが、これは今度中央更生保護委員会の方から保護司法というものが出まして、従来の司法保護委員保護司という名前を変えまして、新らしくスタートを切ると、こういうふうになつておりまして、その法案只今準備中で、この国会に御審議をお願いするようになる予定でございます。そういうふうになるだろうと思つております。それで尚この点は大変無責任のことでございますが、この場で私考えましたので、尚後でよく調査いたしまして、御返答申上げたいと思います。
  23. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私の解釈では昔の嘱託少年保護司の全部が、その中の大部分かは知りませんが、パール法ができましたときに、当時の司法保護委員の方にお廻りになつておるのです。だから前の少年保護司という名前はそのときになくなりまして、そうして少年保護委員という名前になつておりますのが、今度はそのもともとから使われておりました少年保護司が、今度は調査官になりましてそうして一時名前がなくなつております。司法保護委員が今度少年保護司に代るのだろうと思います。私はそういうふうに解釈しております。そこで私は今余り……名前はときによつてどう附けてもいいと言いますけれども、併し名前によつて仕事内容というものが大体一般的に納得されておりますときに、余り変ることはどうかという点について、私は今申上げておるのです。変り方はたしかそうだろうかと思うのでございます。
  24. 關之

    説明員關之君) 名前変り方でございますが、犯罪者予防更生法は二十四年七月一日に施行されたのでございます。七月までは裁判所関係少年保護司少年審判所関係少年保護司と、二つ名前が、法務庁裁判所の側に二つのものが存在いたしたのでございます。そうして犯罪者予防更生法施行法が七月一日に施行されまして、そうしてその下に従来の嘱託少年保護司の方は大部の方は少年保護観察所関係職員に入つて頂いたのでございます。そうして当時の司法保護司関係保護委員の中に入つて頂く方と二つに分れまして今日までに至つたとこういうふうに思つております。
  25. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) この度家庭裁判所少年保護司名称調査官調査官補に切換えるわけでございますが、この点につきましては、法務府の方の御意向として従来の司法保護委員保護司という名前に切換えて、そうして民間の方によつて保護観察をやりたい。司法保護委員という名前余り少年にいい影響を與えないというような意見があるというようなことで、さような御意向なつたと聞いております。家庭裁判所少年保護司名前は強いて変えたいわけではなかつたのでございますけれども、実質が調査官であり、少年保護という名前執行の方に名前がふさわしいというような意見もありまして、かてて加えて現地で家庭裁判所少年保護司名刺などを出した場合に、民間の従来の嘱託少年保護司の方が身も少年保護司だというような名刺を又取交わすと非常に混乱して困ると、或る所では少年保護司が検挙されるというような新聞記事があつた、それは実は民間嘱託少年保護司経済違反であつたというようなことを聞いたんであります。そういうような場合に非常に家庭裁判所の信用にもかかわるというような意見などもありまして、結局この際職務内容を直截に現わした調査官という名前がいいんではないか。そこで調査官名前に変更になつたのであります。併しながら一部では従来から用いられておる少年保護司という名前は非常にいい名前であるから、これを続けたいという意見もあり、又調査官という名前は非常に硬過ぎるというような意見もあつたわけで、悩んだ末、結局少年調査官という名前なつたわけであります。
  26. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 これは私はこの裁判所法等の一部を改正する法律案として出されました提案者に対してお尋ねするんですが、この一部改正法律案独立の形で出ておりまするが、一條から五條に亘つて書かれてあります第一條の方は裁判所法、それから第二條の方は検察庁法弁護士法検察審査会法少年法とかこういうふうにして條項を起して独立法律として出しておりまするが、これは曾ての例を余り私は知らないんですが、こういうようなふうなことになりますると、後に法律整理上において非常な不便を感ずることになるのではないかと思いますが、これはどういうことからこういうふうな特殊な方法になつて今度まとめてお出しになつたのか。
  27. 野木新一

    政府委員野木新一君) 只今鬼丸委員が仰せになりましたように、立案の形式として裁判所法の一部を改正する法律案検察庁法の一部を改正する法律案と個々に分けて書いた方が、法案整理の上から便宜であるという御議論は確かに傾聴すべき点があると存ぜられるわけでありますが、これは結局裁判所法の一部を改正する点が主になりまして、後は全部それに関連してその該当部分だけを整理するという整理的なものでありまするし、ばらばらでありますと国会の方でも審議の際に或いは前後したりしてはいかんじやないかというようなこともありまして、この程度のものは裁判所法等の一部を改正する法律案として出した方が、むしろ審議の御便宜の上からいつても都合がいいのではないかという考えでこの法案はこうしたわけであります。
  28. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 審議便宜を考慮されての提案であると、恐らくそうであろうと存じたのでありますが、併しながらすでにこの法案改正法律案として、独立法案としてこれを出すことになるのでありますから、そういたしますとやはり各関係法の中においても、改正検察庁法中においても今度は法律策何号というふうになると、幾つか重なつてしまつて、非常に後に整理する場合に非常に混乱をして来ると思いますが、成る程裁判所法の一部改正に伴う関係法には違いありませんけれども、この種のことは今度に限らずしばしばこういうふうなことがあると思います。殊に今度に限つて條項をしてこういうふうに書かれておることは、余り便宜に走り過ぎて後のことは余り審議に便ずるに急なる余り後の混乱を全く無視した行き方と思いますが、この点はたとえ僅かな改正であるといたしまして、改正であるということは法律として軽んずべきではないと思う。おのおの独立してその法律改正をやられることが正しい行き方ではないかと思いますが、どんなものでしようか。
  29. 野木新一

    政府委員野木新一君) この改正法律案裁判所法等の一部を改正する法律でありまして、これが出ますと事務的に申上げますと裁判所法等の一部を改正する法律番号がつくわけでありますが、併し後に裁判所法になり検察庁法なりを外の法律に引用する場合は、一番初めのときの番号をつけて引用するということに事務的には取扱つております。それでありますから他の法律法律番号を引く場合は混乱が起ることはないと考えております。それでこういうような関連法規改正する場合は裁判所法等の一部を改正する法律等というような文字をつけまして各條にやつておることは税法などになつてつたのでありまして、立法形式が妥当であるかどうかということはいろいろ異論があるかと思いますので、それらの点は尚将来委員会における議論などを参酌いたして私共といたしてもいろいろ研究して行きたいと思います。
  30. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 この際私は裁判所お尋ねしたいのですが、この書記官書記官補事務官、これはおのおの一、二級、三級とそれぞれありますが、この書記官職務規定事務官との区別、更に書記官補との職務関係、これについて任用資格、殊更こういうようなふうに名前を変えなければ職務の上において不便があるかというような、どういうような理由があるのか知りませんが、その点を一応お尋ねして置きたいと思います。
  31. 野木新一

    政府委員野木新一君) 私から一応御説明申上げまして、尚足りないところは裁判所説明員から御説明いたします。裁判所書記官というのは、前には裁判所事務官という一職のものの中から特に裁判所書記官を補するということになつてつたわけでありまして、それがこの間の改正裁判所事務官の外に裁判所書記官という独立の官を置くことになつたわけであります。その理由裁判所事務官と申しますと、広くいわゆる事務的のことを行うものでありますが、事務官の中から書記官に補せられた者は裁判官と殆んど同体見たいになつて、主として裁判所事務に関連する仕事を行うということになりまするので、人事、会計その他庶務的のような行政事務を扱う事務官と別個に、裁判所書記官という制度を設けた方が、新らしい訴訟行き方に適合しているということで分けたのであります。そうして尚裁判所書記官を、裁判所書記官書記官補二つに分けましたのは、裁判所書記官というのは今言つた法廷における事務及び調書の作成とかいうような非常に重大な仕事を行うのでございますので、この地位は新らしい訴訟法などに関連いたしまして、従来の書記よりも一層高めつ必要がある。そのためにはたしか採用基準なども、今までのいわゆる裁判所書記よりも高い標準で採つて行きたい。例えば大学卒業程度を採つて、それで講習して裁判所書記官にして行きたいというふうに裁判所側から聞いております。そうしますと、今までの裁判所書記を全部裁判所書記官に直ちに任用するわけには行きませんから、裁判所書記官補という制度作つて、今までの書記裁判所書記官の補充に充てることにしたわけであります。こういうふうにいたしまして、裁判所書記官というのは将来非常に高い地位にして行きたい、そうして、裁判官密接不可分関係で働くのでありますから、そういうことによつて裁判の適正迅速を尚一層期して行きたいという考えでできたのであります。  任用資格の点は、後程尚調査して申上げることにいたします。
  32. 磯崎良譽

    説明員磯崎良譽君) 裁判所の方のことでございますが、只今政府委員から御説明申上げました通りに、大体同じような考えでございまして、裁判所事務官から分ちまして、裁判所事務官、更に書記官書記官補を設けました点は今申上げました通りであります。丁度裁判官特別職でありまするように、裁判官一体となりまして裁判事務を遂行する裁判所のいわゆる書記は、やはり特別職として、将来相当な待遇をしなければならないというふうな見解の下に、一般の官吏たる裁判所事務官とは別個の系統で制度考えて行くという考えの下に出発したのであります。そうなりますと、非常に熟練の足りない裁判所書記は、裁判所書記官と同じような待遇をするということは勿論できません。相当に経験を持ち、学歴を有する者の中からのみ裁判所書記官を任用するというようなことでありますが、具体的な任用資格の点につきましては調査いたしまして、又あとから詳細にお答え申上げたいと思います。
  33. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 この制度は、私は趣旨においては全然同感でありまするが、併しながら、こうした新らしい制度作つて、現在の書記を優遇する趣旨においてのものであるか、或いは又今後一定資格ある者の中から採用して、そうして各実共内容の整つた人材裁判官に当らしめる趣旨においてこの制度を行うかどうか、この点が私は伺いたいのです。今の現職員を優遇する趣旨か、結局今後に、こうした優遇の制度にして置いて、そうして人材を今後に求めるという趣旨か、この点が私の承わりたい要点であります。  それから尚裁判所に特に伺いたいと思いまするのは、この裁判所法等の一部改正法律案内にありまする裁判所書記官研修所であります。これを新らしく定めることによつてこの法案改正されるようであります。すでに司法研修所というものが別にあるのじやないかと思います。これは専ら裁判官の再教育と申しまするか、そうしたことのために設けられておる制度と思いますが、そういたしますると、裁判所書記官研修所とそれから判事研修所と二様に新らしいくできることになるのだと思いますが、それでよろしうございましようか。
  34. 磯崎良譽

    説明磯崎良譽君) 先程お尋ねのありました現在の裁判所書記を優遇するためにこの程度のものを考えたのか、或いは優秀なものを将来得るためにそういうふうな制度を置いたのかというお尋ねの第一点であります。私達の考えといたしましては、ただ單に現在の裁判所仕事に従事しておる職員を優遇するという狙いよりも、もつと将来非常にいい待遇を受け得る裁判所書記官というふうな制度の下に人材が集まつて参りまして、裁判事務が円滑に運ばれるというふうなところに高い狙いを持つて裁判所書記官特別職員の含みを以ちました裁判所書記官という制度考えたのであります。従いまして現在の書記の盡くが裁判所書記官には無論任用されないことになつております。それでは現在の裁判所書記はいつまで経つて裁判所書記官になれないのかという点でありますが、現在の裁判所書記も相当な実務経験がありますので、この実務経験を土台といたしまして、いろいろと訓練教養を施して裁判所書記官に任用する資格を與えるというわけであります。そのために今度の裁判所法等改正法律案の中に、新たに裁判所書記教養訓練というものを目的としました裁判所書記官研修所というものを含んでおります。  第二点の司法研修所の中にそれは一緒に含めて行くべきじやないかというふうな御趣旨お尋ねでございますが、御承知のように、司法研修所裁判官教養訓練、而もそれは極く短期間の、精々一月或いは二月程度訓練を主とした臨時的な訓練考えたものでありまするが、裁判所書記官研修所の方は、一年乃至二年の長期に亘りまして、いわば書記官学校ともいうふうな建前制度考えておりまするので、單に裁判所書記官というものを別個のところで教養訓練をするということ以外に、実質的に、片一方は短期であつてしよつちゆう代つて行くと、片一方の方は一年乃至二年というふうに相当長期に亘つて書記官のみを対象とした訓練をするというふうな点に違いがありますので、やはりこれは二本建で行つた方がよいのではないかという考えの下に、司法研修所と別個に書記官研修所というものを考えたわけであります。
  35. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そういたしますというと、書記官或いは書記官補事務官等、それぞれ定員数がありまするが、現在この定員数の範囲内においては、やはり只今説明のごとく、新進な優秀な人を新らしく講習いたしておるのでありますか。それとも現在の定員は従来の書記を以て大体補つておるのであるか。その点を一つ伺いたい。
  36. 磯崎良譽

    説明員磯崎良譽君) 従来の裁判所事務吏が書記でありました当時の試験は、大部分書記官としての資格を與えるに十分でない者が多うございますので、それらはすべて裁判所書記官補といたしております。ところが御承知のように、裁判所書記官補は單なる補助者でありまして、書記官としての一人前の仕事はできないのが建前でございまするが、それでは裁判所書記官が十分にその定員数が埋まるまで裁判事務の円滑な遂行が期せられませんので、当分の暫定措置といたしまして、書記官補裁判所事務を行わせることができるというふうにいたしまして、裁判事務の運営に支障を来さないように措置いたしておる次第でありますが、書記官といたしましては、幹部におりますところの従前の書記の大部分はこれに任用されております。
  37. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 そういたしますというと、現在の定員が、これまで改正前のものが百五名、更に新らしく増員されるものが、書記官としての二級官が七十二名、三教官が増員の分が二十五名、これだけでありまするが、そういたしますというと、この書記官の方の二級官の方、それから三級官の書記官、これは現在において、この制度が布かれてから後に任官した者はこのうち何名あるのか。それから新らしくこの書記官に適格な人として迎えることの何か方法を現に講じておられるかどうか、講じたりと雖もまだこれを充たし得ないのであるかどうか、それとも或いは現在の書記官補に再教育をして、この書記官補をして書記官の方にやがて昇格せしむるという準備のために、こうした定員を法律において求められておるのであるかどうか。この点をお伺いします。  それから、最初書記官及びに書記官補も、事務官ということについての御説明伺つたのでありまするが、これでは書記官書記官補との職務範囲というものが十分明確でないと思う。というのは、書記官或いは書記官補という二様の官名がありますに拘わらず、両方とも二級官というものがあり、三級官というものがある。そういたしますというと、一方は書記官であつても三級官がある、書記官補であつても二教官がある、こういうことで以て、甚だ首尾合わないようにも思いますので、ここで書記官という資格者と、それから書記官補という資格者とは、こうしてやはり級は違つてつても、特に区別しなければならないという趣旨が、どうも私には理解し難いので、その点の御説明を併せてお伺いしたい。
  38. 磯崎良譽

    説明員磯崎良譽君) 最初のお尋ねの要点は、結局裁判所書記官を新らしく充足任命する計画はどうかというふうな御趣旨と解するのでありますが、幸いに本年三月に新らしく大学を卒業した者で、裁判所書記官を希望しておる者が相当数ございまして、近く採用の運びになるように聞いております。又裁判所書記官補の中から、最初に試験をいたしまして、これに合格いたしました者が相当数ございまして、これらの者も新らしく裁判所書記官に任命できることと相成りまするので、近い将来、少くとも四月以降には、相当数の書記官ができるというふうな見通しでおります。尚書記官研修所ができまして、ここで一年間訓練を受けますれば、これ又相当数の新らしい書記官というものができまするので、こうした計画が着々進められて行きます場合には、現在の定員数の書記官が遠からず埋まるというふうな見通しの下に計画を進めております。  それから書記官補にも二級があり、書記官に三級があつて、確かにこれは制度建前といたしましては、飽くまでも書記官が上であつて書記官補は單なる補助者に過ぎないのでありまするが、書記官は、御承知のように、嚴格な試験或いは資格の下に採用することにいたしておりまするので、長年書記官補としての実務経験がありながら、その試験に合格しないために書記官になれないというふうな気の毒な人も中にはあり得ると考えまするので、そうした人を優遇いたしまする趣旨で、書記官補の中にも、極く少数ではございまするが、二級官を置くというふうなことが妥当ではないかというふうに思いましたので、書記官補の中にもやはり二級を置いたわけであります。又書記官の中には、相当若くして試験に合格し、或いは大学を卒業して経験がなくてもなるものがありまするので、これはやはり三級の待遇でよいのではなかろうかというふうな考えの下に、書記官の中にも三級があるというふうなことになつております。
  39. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 先程の御説明によつて、この裁判所書記官研修所司法研修所とを併設することになつ趣旨は分かりましたが、併し私共は、新憲法下において司法権が独立いたしまして、司法の独立を見まして後、あらゆる角度から司法関係において裁判所の機能を十二分に発揮すると同時に、その権威をも維持して貰いたいことにおいては、平素強く希望いたしておるものでありまするが、併しながら、御承知通りに、国費が非常に窮屈になつておりますので、一方においては公務員の行政整理とかいうふうなことによつて、しばしば経費の節減のために努力されておりますることは御承知通りであります。ところが、その司法裁判所裁判所関係において、予算の独立裁判所独立等がありましてから後に、いろいろと新らしい計画をされまして、熱心に御研究を頂いておりますることについては、敬意を拂いまするが、余程予算の伴いまするものについてはよく自重してやつて頂きませんというと、余り行き過ぎるというとやがては特殊な又批判を受けるようなことになつてはならないと思います。例えば只今の御説に中にありました司法研修所内に裁判所書記官研修所を建設すれば、教養の期限が短期、長期というような区別があるために別々に作る方がいいだろうということからこの制度を布かれたということでありますけれども、一つの研修所を作るにも相当な費用を要するのであります。裁判所関係においても、又法務関係におきましてもますます今後多々必要な経費がどの面から見ましても要望されておるのであります。私共はちよつと一見いたしまして、成る程別に作ることが便利には違いありますまいけれども、折角司法研修所があるならば、教養の短期とか長期とかいう問題でなく、これを一ケ所にまとめて一つの研修所として行かれます上においては、運用の面においても十分にこれはできると思います。これを殊更にあれもこれもといつて新らしい制度を布き、新らしき設備をするということに対しましては、余程私は国費の窮屈なことを考慮に入れられまして行かないというと、やがて折角国民が挙げて裁判所独立したことを機会に大いに裁判所の向上拡充のために努力して行こうということに対する希望を捨てられるようなことになりはしないかと思います。言うまでもなく、その辺は十分に考慮されておることと思いますけれども、余りに飛躍的にいろいろな制度を政治全般の上からこれを睨み合せることなく、無遠慮に裁判所だけがどんどんやつて行きますということになりますならば、やがて批判を受けることになりはせんかと心配するのであります。ここで私は、法務府の方にお尋ねいたしたいと思いますが、丁度裁判所書記とややその軌を一に従来いたして参つております。いわゆる検察庁の書記に対しまする面において、この裁判所書記官制度が布かれましたについて、これと従来やや同等の行き方をいたしておりました検察庁の書記の方の点についてこの制度を、何か似寄りな新らしい制度を布かれられるかどうか、それについてお考えがありますならば、それも併せて伺いたいと思います。
  40. 佐藤藤佐

    政府委員佐藤藤佐君) 昨年裁判所の方で、従来の裁判所書記裁判所事務官裁判所書記官並びに書記官補とこういう二つの職種に分けましたので、法務府の方でもこれに合せて検察事務官の職種につきまして、もう一度考え直したらどうかというような意見もありましたので、研究を続けておるのであります。御承知のように終戰後間もなく検察補佐官制度を設けまして、検察事務官の中で特に捜査事務に当る事務官を検察補佐官として任命する制度を一年余り実施いたしたのでありまするが、検察事務官をかように捜査に專従する事務官と外の検察事務に專従するものと二つに分けますると、おのおのその職種に従つて責任が明瞭になつて仕事の能率も上るという長所もありまするけれども、他面検察庁の内部におきまして、検察事務官と検察補佐官との間の人事の交流がうまく行かない、又検察事務官検察庁法の下においてすべて捜査に当り得ることになつておりまするので、一旦大きな事件の捜査をするというような場合には、平素は事務に專従しておる者でも場合によつては捜査の方に従事せしめなければならん必要も生じまするので、そういう捜査に対する機動力という点から考えましても、検察事務官をその職種に従つて分けるということはどうも弊害もありまするので、今のところ、職階制に基いて検察事務官の職種を更に細分すべきではないかというような意見もありまするけれどもその点は尚研究を続けておりますので、今のところ検察事務官については裁判所裁判所事務官及び裁判所書記官というような区別に従つての分け方をとつておらないのであります。
  41. 鬼丸義齊

    鬼丸義齊君 伺いました趣旨はよく了承いたしましたが、丁度この機会に伺いたいと思いますのは、検察補佐官の制度が我が国において行われましたることのために、検察事務の非常な助けをなしておることは私共もよく承知しておりまするが、従来検察官並びに裁判官といたしましての国民的信憑というものは恐らく他の官吏において一段と秀でて厚かつたのであります。これは従来の裁判官並びに検察官の職務執行そのよろしきを得て、非常な、いわゆる信用が累次累積されて参つたものと思つて喜んでおるのでありまするが、この検察補佐官の制度が検察庁において布かれましてから後に、検察補佐官の職務執行振りに関しましてとかくの批評を聞くに至つたのであります。而もその補佐官の制度が布かれました丁度折から戰時中でもあつたことのために、人員を補充いたしまするために大変苦慮されておつたというようなところから、大体においてその大部分が捜査に経験のある警察方面から得られましたように承知いたしております。ところがこの警察官の犯罪捜査に対しまする経験というものは、大体長所だけを持つて来て呉れたならばよかつたけれどもが、どちらかといえば弊害の方を余計もたらしたかのように思います。折角多年築き上げましたる検察官のこの信用というものを、この検察補佐官の職務執行振りから少くとも相当に傷付けたのではないかと、私共憂えるのであります。  これに対しまして、すでに法務庁におかれましても気付かれまして、検察補佐官の再教育、その他非常な苦心を拂われておるとは聞いておりまするけれども、私はこの検察補佐官の地位というものも一つの画然たる資格を確立されまして、相当教養のある人を採用されまして、やはり検察庁本来の、従来の行き方ではなく、精神的方面からも教養されまして、その職務に当らして貰わないというと、折角多年築き上げましたこの信用も、これがために、この制度のために蝕ばまれるようなことが私はありはしないかということを憂えるのであります。幸い只今長官の御説明もございまして、すでに考慮中と承わりましたが、検察庁の書記の優遇はもとよりでありまするし、又この検察補佐官の制度に対しましても、又どうか或る程度教養資格の一つにいたされまして、いわゆる既成捜査官と申しまするか、そういう方面よりも、やはり相当な教養のある人が捜査の経験を経て検察庁の名に背かざる職務執行振りを、私できるようにして頂きたいことをこの際希望いたします。
  42. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 最高裁判所から昨日の宮城さんの質問に対するところの説明の不十分なる点を御釈明願いたいと思います。
  43. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 昨日の答弁中、宮城委員並びに鬼丸委員の御質問にかかる家庭裁判所裁判官定員並びにその欠員の問題、及び家庭裁判所上席少年保護司に女性を任命する問題について私の所管事項でなかつたために明確にお答えすることができなかつた点がありましたので、本日ここで改めて御答弁申上げます。家庭裁判所の專任所長を任命する問題につきましては、従来家庭裁判所裁判官の定員はもとより、他の下級職員の定員も僅かでありました関係もあり、又独立の建物を建設しておらないような関係などからして、地方裁判所長に兼務させて置くことが、人的にも物的にも経済的に好都合であるというような理由から大部分の專任所長の任命を見なかつたのですが、この国会において裁判所職員の定員に関する法律の一部を改正する法律案が幸い通過いたしますれば、定員も増加いたしますし、又家庭裁判所の新庁舎も漸次建設せられつつありますので、成るべく速かに專任所長を任命いたしたいと考えております。  次に家庭裁判所裁判官の定員の問題でありますが、現在判事が百十三名、判事補が四十六名になつておりますが、現在の判事については三十五名、判事補については二十九名の欠員がございます。尚判事補二十九名の欠員については、先程申上げました通り、この四月に司法研修生が百数十名研修を終いまして判事補に任用せられますので、欠員二十九名は四月中に全員充員せられることになつております。又判事の欠員については、在野法曹並びに元司法官の復職希望者が現在においても七十一名ありますので、遠からずこれらの欠員も充員せられると存じております。  最後に女性の上席少年保護司の任命につきましては、家庭裁判所の性格上、宮城委員の仰せのごとく誠に結構なことと存じますので、その人を得るならば任命したいと考えております。  以上であります。
  44. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質疑ありませんですか。
  45. 松井道夫

    ○松井道夫君 私前回は出席しておりませんでしたから質問が重複するかと思いますけれども、一、二質問いたしたいと思います。今度少年院法の一部を改正して従来の「少年観護所、少年鑑別所」というものを一本にして「少年保護鑑別所」というものを作るという趣旨かと思いまするけれども、従来はこの少年観護所と少年鑑別所というものの関係はどういうことになつてつたのか。附置ということになつておるのですが、これは具体的にはどういうことになつてつたのか。例えば人員の関係であるとか、或いは予算等の関係、或いはその仕事一体どういうふうなことをせられていたのか、そういうことを承わりたいと思います。
  46. 關之

    説明員關之君) お答えいたします。従来におきましては少年院法第十六條、第十七條にございますが、観護所、及び少年鑑別所のことが記載されておりまして、これらは附置ということになつておる。これは裁判所制度改正前は検事局は裁判所に附置させるということの規定がございましたが、それと関係は同じであるというふうに條文の字句の上から解釈しております。附置ということにはなつておりますが、役所としては全然別個の役所であつたわけであります。それで官制の上から見ますると、役所としては全然別個のものでありまして、二つそこに役所がある。従いまして予算の面も建前としてはこれは別になるわけであります。職員といたしましては、少年観護所の職員というふうに別々になつておりまして、その数につきましては直ぐ正確な数字を調べましてお答えいたしたいと思つております。機能といたしましては、少年の観護所は、これはデテンション・ホームというものでありまして、要するに簡單に申上げますと、少年家庭裁判所において審判中に、一時そこに拘束する。性格上全く同じではありませんが、要するに成人に対する拘置所に類するような機能を持たすのであります。鑑別所の方は全然そういうものがありませんのでございまして、要するにその観護所に拘束されている少年、その他少年院乃至は少年保護観察所の方面から委託されまして、少年の資質を鑑別する、純粹なそういう鑑別の技術的な役所であつたのであります。それで両者はそれぞれ異なつた長があり、全く異つた方法によつて運営されて来たわけであります。それが大体の建前であつたのでありますが、そうしてこれを実際面から考えて見ますると、少年鑑別所の方は職員はさように專門的でありますことと、そうしましていま一つには何分にもこの種のことに対しまして、財政方面からの十分な予算を得ることもできなかつたという二つの点から、鑑別所の方では十分な職員を得ることができなかつたのであります。大体のところ、職員としましては、鑑別所の方にはそういう專門的な機関が全国で七十三人しかいなかつたのであります。観護所の方はこれに比較いたしまして、全体として約八百人の定員を得ることができたのであります。そんな関係がありまして、所によりましては一人、多くて二人というような職員しかそこに配置することができなかつたのであります。それで、勢いおのずからその事務的な、資質鑑別の技術的な以外の日常の経費の面であるとか、いろいろなそういう事務的な面は全部観護所の職員に兼務さしてやつていたわけであります。それらのいろいろの事情から考えまして、どうも予算的措置などが不十分であつたので、この際これを一本にした方が官庁の経済上よくはないかというふうに考えまして、この度一本としたわけでございます。    〔松井道夫君発言の許可を求む〕
  47. 伊藤修

    委員長伊藤修君) まだ沢山ありますか。
  48. 松井道夫

    ○松井道夫君 少々ございます。
  49. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは午後にして頂きたい。  それではこれで休憩いたしまして、午後一時半から開会いたします。    午後零時二十四分休憩    —————・—————    午後一時五十五分開会
  50. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 午前に引続きまして法務委員会を開きます。商法の一部を改正する法律案を議題に供します。前回に引続きまして逐條の審議をいたします。二百八十條ノ二から政府委員の御説明をお願いします。
  51. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 第三節ノ二は授権資本の制度を採用いたしましたことに伴いまして、新たに規定いたしたものでございます。即ち新株の発行に関する規定でございます。逐條御説明を申上げます。  二百八十條の二は、新株発行につきましては、本法に別段の定があるとき、又は定款を以て株主総会が決定するという定がありまするならば別段ですが、この場合を除きまして、新株の発行につきましては取締役会の決議によつて、一号から四号までの事項を決定して行くということを規定いたしたものでございます。この各号につきましては総括的な説明を申上げました際に觸れましたので、特に申上げることもないかと思います。第一号にありまするこの種類及び数というのは二百二十二條によりまして、定款に種類株を発行するという定があることが必要であることは申上げるまでもないことと思います。  二百八十條ノ三につきましては、これも総括的な説明の際に触れましたので、特に申上げることはございません。  二百八十條ノ四は新たに設けました規定ですが、新株引受権の定義的な規定でございまして、即ち「新株ノ引受権ヲ有スル株主ハ其ノ有スル株式ノ数ニ応ジテ新株ノ割当ヲ受クル権利ヲ有ス」という定義的な規定を掲げたのに過ぎません。  次に、二百八十條ノ五でございまするが、これは新株引受権の行使の手続を規定したものでございまして、従来は全くこの規定を欠いておりまして、多少法規の不備を感じておつた恰好でございますので、改正法案におきまして明確に規定いたしたわけでございます。即ち新株の引受権を有する者があるときにはその者が引受権を有する株式の額面無額面の別、種類及び数並びに一定の期日までに株式の申込みをしないときには、その権力を失うべき旨をその者に通知することを要する。この通知が第三項にありまするように、一定の期日の前、三十日前になされなければならない。それから無記名式の株券を発行いたしておりまする場合には通知をいたすことができませんので、公告をしなければならないということにいたしたのでございます。新株の引受権を有する者が期日までに株式の申込をしないときには、当然その権利を失うということにいたしまして、引受権の処理について手続を簡單にいたしたわけでございます。  次に二百八十條ノ六でございまするが、これは株式申込証に関する規定でございます。一号から六号までは、その記載事項でありまして、これは設立の際における株式の申込証に比較いたしますというと、多少簡單にいたしております。内容につきましては特に御説明を申上げることはございません。  それから二百八十條ノ七でございまするが、これは「新株ノ引受人ハ拂込期日ニ各株ニ付其ノ発行価額ノ全額ノ拂込ヲ為スコトヲ要ス」ということを明らかにしたのでございます。この規定は二百八十條ノ九と関係を持つものでございまして、引受人が若しこの期日までに発行価額の全額の拂込をなさない場合には当然失権いたすことになりまするし、又この拂込期日に引受人が拂込をなしますると、その期日より株主となるということになつておりまするが、その意味におきましてこの二百八十條ノ七の拂込期日は重要なる意味を持つわけでございます。  次に二百八十條ノ八でございまするが、これは現物出資に関する規定でございます。これも総括的な説明のときに触れましたので、特に申上げることもないかと思いまするが、現物出資者に対して與えまする株式の数が、発行済総株数の二十分の一を超えまする場合には、必ず裁判所の選任する検査役の調査を経なければならないということにいたしておるのでございます。この検査役の調査の結果は、必ず裁判所へ報告をいたしまして、裁判所はその報告に基きまして現物出資の評価、或いはこれに対して與える株式の数が不当であると認めた場合には変更を加え得ることができるという関係は、設立における現物出資の関係と同様にいたしておるわけでございます。裁判所の変更に服しない現物出資者は、この株式の引受を取消することができる。裁判所の通告後二週間内に取消のないときには、現物出資に関する事項は「通告ニ従ヒ変更セラレタルモノト看做ス」ということにいたしたのでございます。  次に二百八十條ノ九でございまするが、現行法の増資の場合におきましては、拂込期日から利益又は利息の配当については、株主と同一の権利を有するということになつておりまするが、この二百八十條ノ九におきましては、拂込期日よりあらゆる関係におきまして、株主として待遇をされる。言い換えれば利益、利息の配当についてのみならず、議決権或いは新株の引受権につきましても、当然株主としての待遇を與えられるというわけでございます。現行法の増資におきましては、若し拂込期日に拂込をなさない場合には、更に催告を受けて失権するということになつておりまするが、成るべく新株の発行関係を明確にいたすという趣旨におきまして、拂込期日に拂込み又は現物出資の給付をしない場合には当然権利を失う。従つてその株式は引受のない株式となるのでございまして、更に発行することを妨げないわけでございます。尚この現物出資の点につきましては、二百八十條ノ十四におきまして、百七十七條第三項を準用いたしております。百七十七條の第三項によりまして、百七十二條が準用いたされておりまするので、「現物出資者ハ拂込ノ期日ニ出資ノ目的タル財産ノ全部ヲ給付スルコトヲ要ス但シ登記登録其ノ他権利ノ設定又ハ移転ヲ以テ第三者ニ対抗スル為必要ナル行為は会社成立後ニ之ヲ為スコトヲ妨ゲズ」ということになるわけでございます。失権した新株の引受人に対する損害賠償の請求は当然でございまするが故に、二百八十條ノ九ノ三項におきまして、その規定を設けておるわけでございます。  次に二百八十條ノ十でございます。これもしばしば問題になりまして、多少説明申上げた点でございまするが、「会社ガ法令者ハ定款ニ違反シ又は著シク不公正ナル方法若ハ価額ニ依リテ株式ヲ発行シ之ニ因リ株主ガ不利益ヲ受クル虞アル場合に於テハ其ノ株主ハ会社ニ対シ其ノ発行ヲ止ムベキコトヲ請求スルコトヲ得」という規定を設けておるのでございます。この規定は株主の衡平法上の権利と申しまするか、不当なる価額或いは不公正なる方法によりまして第三者が会社の株主になりますることは、旧株主の利益を害するものでありまして、この場合に旧株主は株主として有する権利を保護する途を認めるのは当然でございます。それで二百八十條ノ十によりまして、この場合にその株主は会社に対しまして発行を止むべきことを請求することができるというふうにいたしまして、実体上の会社に対する請求権を認めたわけでございます。従いまして会社がこの請求を受けまして、みずからその措置の不公正であることを認めて発行を差止めればこれはよろしうございまするし、若し会社がこれを認めない場合には訴えによらざるを得ないことになるわけでございます。この場合には株主は自己の権利を保全するために仮処分の請求をなすことができると考えております。価額の不公正という問題は、市場価額とか、或いは会社の業績その外公の監督機能が十分になりますると、比較的その会社の株式の価額というものは算定の易いかと思いまするので、著しく不公正な価額というものは、その判断に左程困難はないかと思います。問題になりまするのは「不公正ナル方法」ということになるのでございまするが、アメリカにおきまする一般の解釈によりますると、取締役が自己の地位を保全するために特定の縁故者或いは株主に対して株式を発行するということ、或いは将来或る一定の会社における勢力を獲得するために、それを見越して或る特定の株主若しくは第三者に株式を発行するというようなことは、たとえその発行の価額が公正でありましても、不公正なる方法とされて差止めを求められるというふうにいわれておりまするが、本條の解釈に多少参考になろうかと考えております。又この現物出資はしばしば問題になりまして、恐らく現物出資等に関連いたしまして、二百八十條の十の規定の解釈が注目すべきものになろうかと考えますが、裁判所の選任いたしまする検査役の検査を終りまして、そうしてその検査の報告によつて裁判所が現物出資の評価並びにこれに対して與えた株式数というものが公正であると判断せられました場合には、その判断によりまして一応この公正発行というものが裏付けを得たと解釈し得るのではないかと考えまするが、それを除きまする場合におきましては、一般に現物出資につきまして不当な評価、それに対して與える株式の種類或いは数というものが評価に対して不当であるというふうな場合には、当然不公正発行若しくはこの不公正なる価額において若しくはこの不公正なる価額において株式を発行したという場合に該当するのではないかと考えております。  次に二百八十條の十一でございまするが、これも相当論議の対象になる規定ではないかと考えます。即ち取締役と共謀いたしまして不公正なる発行価額を以て株式を引受けました者に対してこの会社に対する一種の損害賠償の責任を認めたものでございます。この賠償額というものが問題になりまするし、又事実この株主は有限責任を負つておるのでございまして、発行対価以上の会社に対しては責任を負わないのが原則でございまして、アメリカにおきましても無額面株式の場合におきましては「フル・ペイド、アンド、ノン・アッセサプル」という言葉がございますが、苟くも無額面株式の発行対価を支拂えば、それ以上会社から追及を受けることがないということでございますが、これは引受人が善意でありまして、そうして善意の場合に限るべきでありますが、苟くもその引受人が取締役と通謀いたしまして著しく不公正なる発行価額を以て株式を引受けるという場合に免れて無責任であるということは、余りに旧株主の権利を害することになりますので、この場合に限りましていわゆる有限責任の原則の例外といたしまして、公正なる発行価額との差額を事実上追出資せしめるということを認めますことは極めて妥当ではないかと考えまして、この規定を入れたわけでございます。でこの場合引受人から追出資、事実上追出資いたしました金額は申上げるまでもございませんが、資本にはもとより組込まれませんし、又資本準備金にも組込まれ得ないわけでございますから、これがいわゆる法律上の出資になるわけではございませんで、法律上のこの性質を申すならば、これは損害賠償の特例と申さざるを得ないかと考えます。でこの不公正発行につきましては、何と申しましても取締役がこの第一次の責任者でございまして、不公正発行に対しては取締役が責任を追及されることは当然でございます。然らば取締役の責任と引受人の責任とはどういう関係になるのかと申しますと、目的は共通でございまするが故に、この不真正連帶債務の関係に立つのではないかと考えております。  次にこの第二項によりまして取締役の責任を追及する訴えの規定を準用いたしておりまするが、取締役と通じて不公正な株式を引受けたわけでございまするから、取締役がその引受人の責任を追及いたすということは事実上殆んど期待し得ないのではないかと考えます。これを以ちまして、個々の株主に引受人の責任を追及をする代表訴訟を認めた次第でございます。  次に二百八十條の十二でございますが、これはこの設立の場合におきまする百九十一條と同趣旨のものでございまするので説明を省略いたします。  又二百八十條の十三は設立の場合におきまする百九十二條の一項、三項と同趣旨でございまするが故に、これも説明を省略させて頂きたいと思います。  次に二百八十條の十四でございまするが、これは本節に特別の規定のないものを除きまして株主申込証、株式の割当、発行価額の拂込、取扱場所、それから現物出資給付の時期、それから拂込取扱機関の変更、拂込取扱機関の証明、それから権利株の讓渡等につきまする設立の際の規定を新株の発行の場合に準用いたしたものでございます。  それから二百八十條の十五から十八までは新株の発行無効の訴えに関する取扱を規定いたしたものでございます。で概ね現行法におきまする増資無効の訴えの規定を採用いたしたものでございます。  先ず二百八十條の十五は、「新株発行ノ無効ハ発行ノ日ヨリ六月内ニ訴ヲ以テノミ之ヲ主張スル」ものといたしたのでございます。新株の発行は一体如何なる場合に無効であるかということは、これ又相当論議されるべき性質の問題かと考えまするが、私共の現在理解いたしておりまするところでは、授権質本の額を超えました発行、或いは取締会の決議が全くないにも拘わらず、株式を発行されたというふうな場合は、この新株の発行は無効ではないかと考えます。この場合に何人でも如何かる時期においても主張し得るということになりますると、新株発行に伴いまする諸般の法律関係を鎖雑紛糾せしむる結果に相成りまするので、増資無効の場合に準じましては必ず訴えを以て主張しなければならない。而も訴えの期間余りに長きに亘つて認めますると、これ又不測の損害を会社或いは第三者に與えるという結果になりますので、期間を六ケ月と限定いたしたわけでございます。で、この訴は株主又は取締役のみに認めることにいたしたのでございます。  二百八十條の十六におきましては訴の管轄裁判所、それから口頭弁論は発行の日から六ケ月経過後でなければ開始することはできないという規定、数個の訴が繋属したときには弁論及び裁判を併合するという規定、それから訴の提起の場合に、会社が公告しなければならないという規定、それから原告の請求を容れまして、新株の発行を無効とする判決がありました場合には、その判決は第三者に対しても効力を生ずるという規定、それから、無効の判決が確定したときは、本店及び支店の所在地において登記をなすことを要するという規定、原告が敗訴したときは、悪意又は重大なる過失あるときに限つて、会社に対して損害賠償の責任を負うという規定をそれぞれ準用いたしたわけであります。  二百八十條の十七は、無効判決の効力を規定したものでございまするが、先程申したましたその訴によつて無効を主張することといたしたのに対応いたしまして、その判決の効力は新株を将来に向つて無効たらしめるということにいたしたのでございます。そうしてこの場合には、会社は遅滞なくその旨及び三ケ月を下らない期間内に、株券を会社に提出すべき旨を公告し、且つ株式及び登録質権者に対して通知することを要するものといたしております。  次に二百八十條の十八ですが、これは増資無効の取扱いをそのまま踏襲いたしたものでございまして、無効の判決が確定いたしました場合には、会社は新株の株主に対して拂込んだ金額の支拂をしなければならないということを先ず原則として掲げたのでございます。併しながら、株主に支拂うべき金額は無効判決確定当時における会社財産の状況に照らして決定するのが合理的でありまして、若し拂込みましたる金額が判決確定当時における会社の財産状況に照らして不相当に低い場合には、その増額を認めるのが当然でございまするし、若しその金額が不相当に高い場合には、減額を認めるのが当然でございまするので、裁判所がこの措置をとるのができることにいたしたのでございます。これが第二項でございます。  第三項はこの新株の上に存しました質権の保護を図るために二百八條、二百九條の一項、二項を準用いたしまして、株主に拂込みたる金額の支拂いをなす場合に、この規定によつて質権者を保護することにいたしたのでございます。委員長、次に参りましようか。
  52. 伊藤修

    委員長伊藤修君) いやここで……。以上の部分に対しての御質疑がありましたら。
  53. 松井道夫

    ○松井道夫君 それでは一、二お尋ねいたしたいと思いますが、今日御説明になつて條文にも出て参りますので、主としてこの前の御説明のときに問題となつて点でありまするけれども、便宜上御尋ねしたいと思うのですが、今の代表訴訟というのは、これを起すのは個々の株主が提起するということだろうと思いますが、それは会社のために起すので。こういことになつておるようですが、これは原告としては一体誰が原告ということになるのでございましようか。
  54. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 株主が原告でございます。
  55. 松井道夫

    ○松井道夫君 株主が原告ですか、そうすると敗訴の場合の訴訟費用なんかは誰が負担するのですか。
  56. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 敗訴いたしました原告たる株主の負担でございます。
  57. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうすると、これもこの間問題になつたわけなんでありまするが、今の悪意であつた場合に、会社に対して損害賠償の責任云々ということになつておるようなんですが、この損害賠償というのは、例えばどんなことを予想して損害賠償というふうになつておるのでしようか。
  58. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) この代表取締役その外の取締役に、違法或いは不当な行為ありとして訴えを超すということになりますると、少くとも信用を重んずる社会におきましては非常な迷惑を蒙らされまして、事実上その訴え提起によつて相当金銭に見積り得る損害を蒙らされる場合もあるのではないか、或いは多少その信用が害されましても、その損害というものが殆んどなきに等しいという場合もあり得るとは考えまするが一応信用が毀損されれば、それに伴う何らかの損害がある。その損害は然らば何人が負担するか。会社が泣寝入りをするかということになりますると、この場合に原告たる株主が悪意を持つて訴えを起したという場合には、株主に負担せしめるのが相当でありまするので、二百六十八條の二の二項の規定を置いたわけであります。如何なる損害があるかということになりますると、折角のお尋ねに明確な御説明ができませんが、会社の信用を害して、損害を與えるというのが普通考え得る損害ではないかと考えております。
  59. 松井道夫

    ○松井道夫君 それからもう一点念のために……。現行法上も多少問題があるかとも思うのでありまするが、現行法でいえば、増資の場合、もあ改正法でいえば只今説明なつた新株発行の場合でありますが、会社に対する債権を相殺差引きまして、株券の拂込に代えるということは、これは可能なのでしようか、どうでしようか。
  60. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 相殺につきましては二百條の第二項によりまして、株主はこの拂込について相殺を主張することができないというふうにいたしておりまするが、現行法の建前をそのまま踏襲いたしたわけでございます。この二百條の二項の説明の際に触れたと思いまするが、アメリカの取扱におきましては、会社がソルヴェント、支拂能力がある場合には相殺を以て対投することは差支えない。インソルヴェント、支拂い能力のない場合におきまして、相殺を以て対抗いたさせろということにいたしますると、その当該の株主のみに不当な利益を與えるという意味におきましても、それを否認いたしているのでございまするが、一応改正案におきましては従来の取扱を踏襲いたしまして、会社の資産状態如何に拘わらず相殺は許さないということにいたしたのでございます。
  61. 松井道夫

    ○松井道夫君 「相殺ヲ以テ会社ハ對抗スルコトヲ得ズ」ということなんでありますが、会社側で相殺は一向差支えない。或いは会社の整理、これは法律上の整理じやございませんが、実際上の整理に関連いたしまして増資をなす場合にはしばしば問題になることでありますが、学者の説によりますと、現在現行法ではどうもいかんと解すべきだという学者もあるようであります。併し新法では今の新株の発行その他取締役の手腕によりまして相当自由にやれることになつておるのでありますが、会社の方でそれを認めるということも、要するに政府委員の御見解としてやはり禁止したということなんですか。
  62. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 私の見解を申上げますれば、会社側からいたします相殺は差支えないのではないかと考えております。
  63. 松井道夫

    ○松井道夫君 いや会社側からする相殺でなくて、株主の方から、これは言葉は同じことになるかも知れませんが、ただ受動債権とこつちからの積極的の債権と、これは観念上は違うので、株主の方から相殺を主張して、会社の方でそれに異議がないとき、そういうことがやはり改正法の建前として認められるかどうかということです。
  64. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 相殺は一方的の意思表示でありまして、債権消滅の効果を生ずるものでありまするが、会社側の方で相殺をすることは妨げないというこの立場を取りますると、引受人の方で相殺を主張いたしまして会社側も異議がない、よろしいということになりまするならば、この会社側から相殺をしたことと実質におきましては差異がございませんので、そのような相殺は有効と考えてよろしいのではないかと思います。
  65. 松井道夫

    ○松井道夫君 これは又前回の御説明の聴き落した点になりますが、総会の決議取消の訴えを起す期間を今度三ケ月に改められたと思うのでありますが、これは学者の側の一部、或いは実際界において、これは主として経営者でありますが、伸長することは、一ケ月を三ケ月に伸ばすことは、これは今の訴えの建前から言つて、その理由を発見するに苦しむ、むしろ弊害があるという説があるように思うのでありますが、特に三ケ月に伸ばさなければならない理由をもう一度お尋ねして置きたいと思います。
  66. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 二百四十八條の第一項におきまして、現行法の一ケ月を三ケ月に伸長いたしましたのは、全く株主の保護を図るという以外には理由がないのでございます。で、現行法の一ケ月で足りるのではないか、殊に経営者側からいたしますると、不当な訴え提起によつて会社が妨害を受けるという機会を成るべく與えないという意味から行きますると、現行法の一ケ月で十分だというお考えも一応立つかと考えまするが、私共実務をやりました経験から申しますると、一ケ月の期間は必らずしも十分とは考えませんで、多少期間を置くのがいいのではないか。審議会におきましても、いろいろ御相談いたしました結果、先ずこれは三ケ月に延すのが適当であろうという結論に達しまして、審議会の商法部会には、実務家或いは証券界、その外産業界の方々も御出席になつておりまして、三ケ月に伸長いたしますることについては別段の異議もなかつたものですから、私共の見解と一致すると認めまして、三ケ月に伸長いたしたわけでございます。
  67. 松井道夫

    ○松井道夫君 今の点ですが、何か特別の強い要望が外から出た、短か過ぎて困るということで特別の要望でも出たのですか。
  68. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 速記を止め下さい。
  69. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を止めて……    〔速記中止〕
  70. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 速記を止めて……  外に今日の部分の御質問はありませんか。  二百八十條の十五をちよつと一、二ばかりお聞きして置きたいのですが、この期間を経過した後の発行された株券の効力はどうなるんですか。
  71. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 六ケ月経過後になりますと、無効を主張すべき訴を提起できないわけでございまするから、株券は有効な株券として取扱われるわけです。
  72. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると、授権資本を超過した多数の株が皆有効として認められるわけですか。
  73. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) この無効原因を如何ように考えるかということが問題でございまして、或いは、授権資本超過の発行は当然無効なんで、別に訴によらなくても何遍でもこの無効を主張し得るという見解もあり得るかと思いまするが、私共の現在考えておりまするところでは、たとえ授権資本を超過したものでも一旦株式として成立して、而もその無効が主張されなかつたということになれば、取引の安全から申しましても、その株式は有効とするのがよろしいのではないか。或いはその無効発行によります損害といいますか、或いは任務懈怠について関係取締役が責任を負うということは別でございまするし、又この場合は、定款変更の手続をとりまして授権資本の範囲を拡張するということになりますると、その無効発行の株式にも遡つて欠陥を補完されることになりますので、このような場合には強いてその株式は当然無効で、如何なる場合においても如何なる形式においても、これを主張し得るというふうに取扱う必要はないのではないか。むしろ取締役が自己の職責任務に対して誠実であるということに徹底いたしまするような、そういうふうな超過発行は、比較的簡単に瑕疵を治癒されるのではないかというふうにも考えられますので、一応六ケ月の期間で足りるのでないかと考える次第でございます。
  74. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると二百八十條の十五というのは当然無効の場合を含むわけですか。
  75. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 私共は一応はさように考えております。
  76. 伊藤修

    委員長伊藤修君) そうすると実際において、会社の資本構成が定款その他と合致しない状態を醸し出すことになるわけですね。
  77. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 極端な場合にはそういう場合もあり得るかと思います。ただこれは、恐縮ですが、疑問といたしまするのは、例えば定款に種類株に関する規定が全然ないにも拘わらず、取締役会で優先株を発行したというふうな場合には、一体これは新株の発行になるのかどうかという問題がありまするが、かかる場合は定款に全然ない種類の株式の発行というものは、むしろ当然無効であつて、二百八十條の十五による訴を以てしなくても、その無効を主張し得るのではないかと考えまするが、如何なる場合には当然無効か、或いは如何なる場合には訴えによつて無効を主張し得るものであるのか、その限界はもう暫く検討をいたしたいと考えますが、現状におきましては、今申しましたように特別な場合を除きまして、一応新株の発行無効というものは、必ず六ケ月内における訴えを以て主張しなければならないものと、かように考えております。
  78. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 他に御質問ありませんか。  では第四節「会社の計算」の御説明をお願いいたします。
  79. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) この第四節におきましては、授権資本制度及び無額面株の制度を採用いたしましたのに伴いまして、第一に資本の構成に関する規定を設けたのでございます。  第二といたしまして、現行法にありまする法定準備金を資本準備金、利益準備金との二種類に分かつことにいたしまして、資本準備金として積立を要する金額の種類を挙げております。第三に新株発行に必要なる費用の均等債却を認めることにいたしました。第四といたしまして株式による配当制度を採用し、第五に準備金を資本に組み入れる制度、第六に株式分割の制度を採用いたしたのでございます。更に第七といたしまして二百八十一條に掲げまするいわゆる計算書類の附属明細書の作成事務を認めたのでございます。只今申しましたのが第四節における重要なる改正点でございます。  二百八十二條は監査役を廃止いたしまして、会計監査役を採用いたしましたことに伴いまする條文の整理が主たるものでございまして、別段申上げることもございません。  二百八十四條も同様でございます。  二百八十四條の二は、只今申しました資本の規定に関する規定でございまして、相当重要な規定かと考えます。これも本日までしばしば御論議になりまして御説明を申上げたかと思いまするが、会社の資本は原則といたしまして、「発行済額面株式ノ株金総額及発行済無額面株式ノ発行価格ノ総額トス。」これは現行法の建前と大体一致するかと考えます。  第二項におきまして無額面株を発行いたしまする際に、その発行価格の四分の一を超えない金額を資本に組み入れないで拂込剰余金としてリザァーブすることができる、留保することができるということにいたしたのでございます。設立の際に発行いたしまする無額面株式につきましては、特に設立の際における会社資本の充実を図る趣旨におきまして、最低発行価額を定款に記載せしめることにいたしてありまするが、拂込剰余金は最低発行価額を超ゆる部分であつて、且つ発行価額の四分の一を超えない金額というふうに二重の制限を設けたのでございます。  それから五百八十六條の二でございますが、これは現行法の二百八十六條と同趣旨でございまして、新株発行に要しました費用は貸借対照表の財産の部に計上いたしまして三年内に均等債却が許されるということにいたしたのでございます。この規定によりまして株式発行による費用の負担を緩和せんとするものでございます。  次に二百八十八條でございまするが、この度の改正案におきまして法定準備金を資本準備金と利益準備金との二種類に分かちまして、利益準備金につきましては現行法通り資本の四分の一に達するまで、無決算期の利益の二十分の一以上を積立てなければないらないということにいたしたのでございます。現行法におきましては法定準備金の中には額面株式における超過額、いわゆるプレミアムも入るわけでございまして、会社が非常に業績が良くて株価が高いという場合には、相当多額のプレミアムが利益準備金として積立てられます関係上、会社の毎決算期における利益積立の負担が比較的軽い場合もあるかと考えますが、改正法案におきしては、只今も増しましたプレミアムは二百八十八條の二によりまして、資本準備金として別途に積立てることにいたしまして、その金額如何に拘わらず別に利益準備金として毎決算期の利益を別途積立てなければならないということにいたしたのであります。  二百八十八條の二は、只今申しました資本準備金として積立てる費目を規定いたしたのでございまして、一号は只今も申しました額面以上の価額を以て額面株式を発行した場合の額面超過額、いわゆるプレミアムは資本準備金として積立てなければならないということになるわけでございます。  二号は無額面株式の発行価額中拂込剰余金として資本に組入れない金額というものを留保いたしました際、これを資本準備金として積立てなければならないということにいたしております。第三号はいわゆる評価益でございまして、一営業年度における財産の評価益から評価損を控除しました残額は、いわゆる評価益として積み立てることを認めたのでございます。第四号はいわゆる減資差益金でございます。即ち資本の減少によりまして減少しました資本の額が株式の消却、又は拂戻に要しました金額及び欠損或いは填補に充てました金額を超えたその超過額は、資本準備金として積み立てなければならないということにいたしたわけでございます。  第五号はいわゆる合併差益金でございまして、合併によつて消滅した会社から承継した財産の額が、その会社から承継した債務の額又はその会社の株主に支拂いました、いわゆる交付金並びに合併後存続する会社の増加したる資本の額、又は合併によつて設立した会社の資本の額を超えました超過額、これを合併差益金と申しますが、これを資本準備金として積み立てることを要するということにいたしたわけでございます。この資本準備金と利益準備金を別途にいたしましたという関係が際の資本の充実が図られることになると考えます。  次に二百八十九條ですが、これは大体現行法の規定と同様でございまして、利益準備金及び資本準備金は資本の欠損の填補に充てる場合を除く外は使用することができないということにいたしたのでございます。尤も後に述べますように準備金から資本に組入れるということは許しておるのでございます。まず欠損填補の場合に使用されますものは利益準備金でありまして、利益準備金を使用いたしましても、尚欠損が填補できないという場合に資本準備金をもつて不足額を填補するということにいたしております。これが二百八十九條の第二項でございます。二百九十條は現行法通りでございまして別段申上げることはございません。  二百九十一條はいわゆる建設利息の配当に関する規定でございまして、大体これも現行法の建前を踏襲いたしたものでございますが、授権資本と無額面株を採用いたしましたことに伴いまして必要な整理をいたしたものでございます。第一項に「一定の株式」という言葉を用いておりますが、これは授権資本制度の採用によりまして、現行法におきますように利息の配当を受ける株式の範囲が定まつておりませんので、予め一定しておく必要があるからでございます。現行法には但書がございまするが、但書を割りましたのは無額面株の採用によりまして、利率の算定が不能によりまして、利率の算定が不能となりましたのでこの但書を割つたわけであります。尤も但書に変えまして第三項を新設いたしております。この三項の規定の実質は現行法の第一項の但書と同様でございます。それから第二項につきまして変更につき裁判所の認可を要することにいたしておりますが、これは現行法の二百九十二條と同趣旨でございまして、定款の変更を裁判所の認可事項といたしておるのと同様でございます。二百九十二條を削除いたしておりますが、これは資本増加の規定を排しましたのでこれは削除し、その内容は二百九十一條の方に移したのでございます。  次に二百九十三條の二について御説明を申上げます。これは改正法律案におきまして新しく採用いたしました株式による利益配当に関する規定でございます。第一項におきましてはこの株式による配当は株主総会の特別決議によらなければならないということを定めたものでございます。そうしてこの株式配当は必ず利益の配当に代るものでなければならない。言い換えれば配当をすべき利益の裏付がなければ株式配当は許さないということにいたしたのでございます。  第二項におきまして、然らばその株式による配当につきまして、いわゆる発行価額をいかようにするかという問題でありますが、額面株については必ず券面額によらなければならない、無額面株につきましては、券面額がありませんので、その価額は特別決議において定めるということにいたしたのでございます。重ねて申上げますると、発行すべき株式の券面額の株金総額、或いは無額面株の発行価額の総額に配当する利益がなければ、株式による配当は許されないのでございます。  第三項は株式による配当をいたしまする際に、配当すべき利益の額が券面額又は発行価額に満たないような端数を生ずる場合があり得るわけでございまするが、この場合の取扱を簡便にいたすという趣旨におきまして、この端数につきましては株式配当をいたしませんで、金銭配当をするということにいたしております。無額面株につきましては、一般の株式の発行におきましては、佛込剰余金という制度を認めておりまするが、これは全然必要がないと考えまして、無額面株を株式配当いたす際におきまして、佛込剰余金というものは認めないということにいたしたのでございます。株式の配当におきましては株式申込書も必要がございませんし、又佛込期日というものもございませんし、又現実の佛込も認めないわけでございまするから、一体いかなる時期において配当をされる株式が株主に帰属するか、言い換えればいかなる時期において新株について旧株主は株主となるか、そういう時期が問題になりまするので、五項の規定を設けまして株主総会の終結のとき、言い換えれば株式配当を決議いたしましたる株主総会の終結のときに株主になるということにいたしたのでございます。この株主になりまするならば、二百二十六條の第二項の規定を準用いたしまして、旧株主は当然新株券の交付を請求することができるわけでございます。又二百九條の第三項によりまして、登録質権者は新株式について当然質権を及ぼすことができることに相成ることでございますので、二百九十三條の二の末項に取締役は株主総会の決議があつた際には、遅滞なく株主及びこの登録質権者に対して株式配当の必要事実を通知することを要し、又この無記名式の株券を発行しておりまする場合には、これを公告することを要するということにしたのでございます。  次に二百九十三條の三でございますが、これも新しく採用いたしました制度でございまして、準備金の全部又は一部を資本に組入れる途を開いたのでございます。これによりましてこの会社のいわゆる法律上の資本というものはいよいよ充実いたしまして会社の信用を増すことにもなりますし、会社の経理上会社を健全にいたすためにはこの措置が非常に有効に働くのではないかと考えます。準備金の資本への組入れの場合におきまして、会社において適当と考えました場合にはこの株主に対して新株を発行し得ることをいたしたのでございます。これは第二項の規定でございまして、この場合におきましては株主は取締役会の決議のときから新株について株主となるということにいたしたのでございます。株式の発行につきまして若し端数を生ずるというふうな場合には株式の発行ができないものと解釈いたしております。言い換えれば株式が各株主に行き渡つていないと株式の発行は許されないと解釈いたしております。株主及び登録質権者に対して重大な影響がございまするので、株式配当の場合と同様にそれぞれ株主、登録質権者に通知し、或いは公告をいたすという規定を準用いたしておるのでございます。  次に二百九十三條の四でございます。これも新しく認めた制度でございまして、株式の分割に関する規定でございます。会社は取締役会の決議によつて株式の分割ができることと規定いたしております。これも一般的な説明の際にも申上げましたように、株価が異常に高いために、新株の発行にも支障を来たし、或いは株式の流通の上にも妨げられる、株式の市場性についても十分でないというふうな場合には、株式の価格を引下げるために行われるものでございます。株式の分割は株主を平等の原則によらなければならないことは当然でございますので、無額面株全部につきましては同一の比率によつて分割が行われなければなりませんし、分割によりまして株式の数が増加することは当然ですが、増加します株式の数が定款に定められておりまする授権資本の枠外にはみ出るというような場合には当然定款を変更いたしまして、先ず採権資本の枠を拡げなければならないことにいたしたのでございます。一般的な説明のときにも申上げましたが、本條の規定いたしておりまする株式の分割は無額面株式に限るわけでございます。額面株式の場合には当然券面額の変更を伴いまするので、定款変更の手続を採らなければならない関係上、取締役会の決議のみによりましては分割ができない次第でございます。  分割前の株式と分割後の株式とは同一性を有するのでありまするから、分割前の株式を目的とする質権は分割によつて株主が受くべき新株式の上に当然効力を有するわけでございまして、二百八條にその趣旨の規定を設けております。一株を二株以上に分割するという場合には、新株券を発行すればそれで宜しいわけですが、二株を三株に分割するという場合には株式の併合を伴いますので、旧株券を会社に提出せしむる必要があるわけでございます。従いまして株券の提供を必要とするという場合には、資本減少の場合における株式併合に関する規定を準用する必要がありまするので、二百九十三條の四の第二項を設けたわけでございます。  次に二百九十三條の五でございます。これも一般的説明の際に申上げた点でございまするが、会社の業務及び財産の状況を一般に公示する、株主に公示する趣旨を以ちまして、附属明細書というものの作製業務を認めたのでございます。取締役は又決算期より四ヶ月内に第二百八十九條に掲げますいわゆる計算書類の附属明細書を作りまして、これを本店及び支店に備えておかなければならない、この附属明細書に会社の業務及び財産の状況を相当詳細に記載することを要する、ことにその期における会社資本及び準備金、これは法定準備金でございます。資本及び準備金の増減、それから取締役、会計監査役、株主と、会社との間の取引、それから会社がなす担保権の設定、会社が金融を業としない会社である場合におきましては、その会社のなす金銭の貸付、それから他の会社の株式の取得並びに固定財産の処分につきましては必ず明瞭にせしめなければならないということにいたしたのでございます。只今申しました事項は会社の財産を営業年度における関係において、いかようになつたかということを示す上に重要でありまするのみならず、得て会社の財産に損害を生ずる虞れのある取引でありまするが故に、特にこれを明確にいたすことにいたしたのでございます。この附属明細書につきましては、株主は営業時間内いつでもこれを閲覧又は謄写することを求めることができまするし、又会社の定めておりまする費用を支拂つて、その謄本又は抄本の交付を求めることができるということにいたしたわけでございます。  次に二百九十三條の六及び七は、しばしば問題になりましたいわゆる会社の会計書類の閲覧権に対する規定でございます。発行済株式の総数の十分の一以上に当る株式を有する株主は、会計の帳簿及び書類の閲覧又は謄写を請求することができることにいたしまして、この請求の手続は必ずこの書面を以てする。そうしてその書面にはその請求の理由を明示しなければならないということにいたしております。この請求がございました場合には、会社は株主の請求が、権利の濫用であるとか、或いは株主一般の利益を害するという特段の事由がない限りは拒むことができないということにいたしたのでございます。そうしてその特段の事由を二百九十三條の七に明らかに規定いたしております。特段の事由として認めまするものは、株主が株主の権利の確保若しくは行使に関し調査を為すためではなくして請求したとき、又は会社の業務の運営若しくは株主共同の利益を害するため請求したとき、言い換えれば、株主としての正当な権利の確保のためではなくて、他の目的のために閲覧を請求した、或いはその請求が会社の業務の運営、又は株主一般の利益を害するために行われたという場合には、会社はその請求を拒み得るわけでございます。第二といたしまして、請求いたしました株主が会社の競業関係にあるものである場合、或いは競業関係にある会社の社員である場合、或いは株主である場合、又は取締役である場合、又は会社と競業関係にあるもののためにその会社の株式を有するものであるという場合には、会社は請求を拒み得るということにいたしおるわけでございます。第三は、株主が書類の閲覧又は謄写によつて知り得た事実を利益を得て他に通報するために請求したとき、又は請求の日の前二年内にその会社著しくは他の会社の書類の閲覧又は謄写によつて知り得た事実を利益を得て他に通報したことがあるものである場合、言い換えれば、会社の営業上の事実を利益を得て他に漏らすということをなしたるもの、又はそういう目的で請求した場合には、これは会社の株主共同の利益に勿論反しまするけれども、特にこの場合には、当然会社はその請求を拒み得るということにいたしたわけでございます。第四といたしまして、如上のような場合でなくても、株主が不適当なるときに閲覧又は謄写の請求をなした。例えば決算期が目前に迫りまして会社の経理関係の従業員が非常に忙しく帳簿の整理、或いは調査をいたしておるというふうな際には、会社としては閲覧請求を拒むことができるということにいたしまして、会社の正当な運営が害されないというふうにいたしておるのでございます。  次に二百九十四條は授権資本を採用いたしました関係上、資本の十分の一とありまするのを、各法人株式の十分の一に改めました点と、監査役を廃止いたしましたので、監査役に代えまして代表取締役といたしたという点を除きまして、現行法には何らの修正を加えておりません。
  80. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それじや以上の点についての御質疑をお願いいたします。
  81. 松井道夫

    ○松井道夫君 二百九十三條の二、利益の配当の全部又は一部を新たに発行する株式を以て為すことを得とありますが、これはやはり会社の資本は必ずこれで増加することになるのでしようか。
  82. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) さようでございます。言葉が足りませんで恐縮いたしますが、配当すべき利益を配当いたしませんで、社内に留保すると同時に、その留保された金額を資本勘定に繰入れるわけでございます。従いまして資本の額は増加いたすわけでございます。
  83. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうするとこの場合は、今の全額、利益の配当に当る全額について資本の増加が生ずるわけでございますか。
  84. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) さようでございます。と同時に額面株につきましては、その発行価額は必ず券面ということにいたす。又額面株につきましては、ペードインサープラスの場合でも、発行価額は発行価額であるわけなんでありますが、その拂込剰余金を含まない金額を発行価額としなければならないということにいたしておる次第であります。それが二百九十三條の二の第二項の規定の趣旨なんであります。
  85. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから二百九十三條の三、それに「準備金ノ全部又ハ一部ヲ資本ニ組入ルル」という制度ができておりますが、これはその第二項に「株式ヲ発行スルコトヲ得」ということがあるのですが、これは額面株だけを発行する会社の場合には、必ず株式を発行しなければならんことになりますか。
  86. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) これも一つの論議になる問題かと考えまするが、現行法におきましては、この株金総額が直ちに資本になるわけでございまして、株式の券面額と、それから資本との間に非常に密接な関連があるわけでございます。尤も利益を以てする株式の消却というものも認めておりますので、この場合に資本が減少しないという解釈をいたしますならば、この場合にのみ株式と資本との間の関連が多少崩れて来るということはありますけれども、現状におきまして、殆んど利益の償却の株というようなものはないようでございますので、先ず株式における株式総額が即資本になるということが言えるかと思いますが、改正案におきましては、株式の発行対価の或るものと、資本との間に相当深い関連があることは、これは勿論否定できませんが、この発行対価の総額即資本という建て方を採つておりませんので、必ずしも準備金から資本への組入れの場合におきまして、その会社が額面株式のみを発行いたしておりまする場合には、必ず株式を発行しなければならないか、或いは無額面株式を発行しておる会社においては、発行することが許されないかということは一概には言えませんで、額面株式でありましようとも、或いは無額面株式でありましようとも資本との関係における関連を無視いたしまして、必要があれば新株を発行することができる、かように考えて差支えないのではないかと思います。
  87. 松井道夫

    ○松井道夫君 改正案の建て方は、私よく頭に入つていないかも知れませんが、額面株の場合は、それは額面以上の発行のときはいいが、額面以上の発行の場合は問題にならないと思いますが、要するに資本というものは、発行株式の額面額というものが一応資本になるというように私思つているのでありますが、とにかく無額面株式という制度ができて、資本と今の無額面株式の発行といいますか、それとの関連は、これは断ち切られたと一応考えて差支えないと思いますけれども、どうもこの額面株式の場合は、従前の制度とどの程度違うのか、その点をよく伺わないと、従つて今のお答えがはつきりと理解し難いのであります、この額面株式のみを発行する会社において、この二百九十三條の三の、準備金の全部又は一部を組入れるという場合に、今の額面株式の金額の合計が資本に一応なるという一つの建前とはどういうことになりまか。
  88. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 松井委員の御見解は御尤もでございまして、額面株式のみを会社が発行しておりまする際には、額面株式というものの意義から考えましても、株式総額が即資本になるというふうな構成が少くとも望ましい。妥当であるということは、一応言い得るのではないと思います。従いましてそのような会社がここに準備金を資本に組入れました場合には、この組入れた準備金に対応いたしまする額面株式を発行して、旧株主に與えるというこの措置が妥当であろうと考えます。併しながらこれは法律上の義務である、必ずしなければならないというここが言い得られるのか、或いは若し無額面株式のみを発行いたしておりまする会社がこの準備金の全部又は一部を資本に組入れた際には、株式は全然発行することを許されないと、この法律上解釈しなければならないかという点になりますると、私はさように窮窟に解釈しないでもよろしい。有力な研究家、或いは学者の中には松井委員のお説のような見解をおとりなつている方もあるかのように承つておりますし、又アメリカにおきましても、確かイリノイでございましたか、或いはそういうような取扱いをいたしているかと思いますが、この二百九十三條ノ三をそれ程嚴格に、窮窟に解釈いたしまして、資本金というものと額面株式の株金総額との間に不可分の関係を必ず維持しなければならないということは私は言い得ないのではないか、この点は比較的自由にいたしまして、会社の株式の発行高、或いは市場の価格というようなものを検討いたしまして、取締役会の賢明な裁量によつていかにも措置し得るのである、幅を持たせて置いて差支えないのではないかと考えます。
  89. 松井道夫

    ○松井道夫君 今の点は一応この程度にいたします。それで今度二百九十三條ノ四について……。この場合は無額面株の場合のみの規定に当るのだということになるのじやないかと思いますが、この場合、資本の方は全然増減がないことになるわけでありますが。
  90. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) 株式分割によりまして株式数は増加いたしまするが、資本には何ら変更は来さない、かように考えております。
  91. 松井道夫

    ○松井道夫君 それから次に今の二百九十三條の三と今の分割の場合、これは分割の場合はいいとしましても、今の二百九十三條ノ二、三で、これは取扱いを異にしておる。片方は株主総会の特別決議で行う、片方は取締役会の決議によつて行うということになつておるのですが、その取扱いに差を付けたのはどういうふうな理由ですか。
  92. 岡咲恕一

    政府委員(岡咲恕一君) アメリカの法制におきましては全部取締会の決議によつて行うということになつているように承知いたしておりますが、利益配当の取扱いがアメリカにおきましては、取締役会の事項とされておるのに対しまして、我が現行法におきましては利益配当は株主総会の決議によらなければならないという立場を取つておりまするし、株主の権利といたしまして利益配当請求権というものは極めて重大な権利である。ところがこの株式による配当ということになりますると、株式数は殖えますけれども株主としての実質的権利には殆んど変動がないのではないか、絶無と申されませんが、先ず変化はない。会社の利益が配当されないで社内に留保される、それに対して株が発行されて株式が分量的には殖えますけれども、大した権利の変更がないということになりますると、株主総会の普通決議によつていたすこととしてはやや利害関係が重大に過ぎるのではないか、株主総会に或るべく大多数の意嚮を尊重してやることが適当であると考えまして、三百四十三條の特別決議によるということにいたしたのでございます。  それからこれに加えましてもう一つの理由として考えられるかと思いまするが、株式による配当は普通株のみを発行いたしておりまする際に主として行われるであろうと考えられまするが、若し数種の株式を発行いたしておるということになりますと、株式配当の利害関係は極めて錯雑して参りまして、必ず普通株主の総会の外に種類株を有する株主の決議をも必要とするというふうなことが当然考えられまするので、いずれにいたしましてもこれは実質的に会社の株主総会の特別決議によるといたします方がそういう場合の解決にも合理的である、かように考えましてその点のみはアメリカの法制とは異つた取扱をいたすことにいたします。
  93. 松井道夫

    ○松井道夫君 以上。
  94. 伊藤修

    委員長伊藤修君) それでは商法の一部を改正する法律案に対する質疑はこの程度にいたしまして次回に譲ることにいたします。   —————————————
  95. 伊藤修

    委員長伊藤修君) では次に午前中審議を継続しておりました少年法の一部を改正する法律案並びに少年院法の一部を改正する法律案の質疑を継続いたします。
  96. 松井道夫

    ○松井道夫君 先程鑑別所と観護所のことを質問したのでありますが引続いてお尋ねしますが、そうすると先の現行法で「附置する」という意味は、結局建物が観護所に附属的にある、そういう意味しかない。実質上それだけの意味しかないということになつておりますか。
  97. 關之

    説明員關之君) 実を言うと建物が観護所と一緒にある、或いはそこへ傍にあるという意味であるかと思うのでありまするが、それ以外にも何と申しましようか、要するに観護所のある傍には必ず鑑別所がある。そうしてその建物が少しは或いは遠いところにあるかも知れんけれども、要するに観護所があれば、必ずそこに鑑別所はつきもので、必ずそこには建てられる、こういうような意味だと思うのでありまするが。
  98. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうするとその鑑別所と観護所が離れて作られておるというようなところもあるのですか。
  99. 關之

    説明員關之君) 現在といたしましては概ね同一或いは隣合つているのでございます。ですが、建物の都会でちよつと離れているところがあるかも知れないという点は予想されます。
  100. 松井道夫

    ○松井道夫君 先程の説明では要するに一つという言葉になつておるが、実際上二つの役所なんであるということであつたので、それで法律で「附置する」ということの意味がよく分らない。実際問題として独立に「附置」などという文字を用いないで、二つの役所にして置けばそれでよさそうだと聽える。今の御答弁によると聽えたわけであります。それじやまあ一体「附置」ということはどういう意味か。何か観護所の機能と鑑別所の機能とを関連して、而も組織上も関連して作る、今の法律趣旨と解せられるので、それでまあ具体的にどういう関連があるのかということをお尋ねしたわけなんでありますが、その点どうですか。
  101. 關之

    説明員關之君) 今までの御説明で一点重要な点を失念しておりました。それでその点と申しますのは、裁判所構成法時代裁判所に検事局が「附置」するという、この「附置」の意味は、今御指摘の建物の問題もございましようが、会計上同一であつた。それで検事局の支出負担は全部当時裁判所長さんがやつていたわけであります。そこで会計的にそれが一つの役所であるという点に「附置」ということの実際的な意味があるのではないかと私は思うのであります。そこでそれを観護所と鑑別所に当嵌めてみますと、やはり予算的、会計的には鑑別所の支出負担については観護所においてこれは扱うというようなことになつていると思うのであります。そこに「附置」という意味があるのではないかというふうに考えております。
  102. 松井道夫

    ○松井道夫君 先程質問いたしたことの中に、今の人員だとか、予算だとか、それは予算の中には会計の関係も入るという趣旨つたのですけれども、一応「附置」の意味は分りましたけれども、併し実際上そういつた会計を同じくし、同じくすると申すと語弊がありますが、要するに会計を観護所でやつている。それから建物も離れた場合もあるけれども、大体ついているということで、「附置」はまあそれでよろしい。別に「附置」の理窟を言つているわけではないので、要するに現行法の趣旨としては、この観護所の機能と鑑別所の機能とは、これは離すべからざる関係があると思つて、そういうことをしたのじやないかと思うのですが、その点はどうですか。
  103. 關之

    政府委員關之君) 観護所と鑑別所の「附置」という関係に立案の当時に規定いたしましたのは、一面においては極めて両者の間に密接な関係があると同時に、又それが「附置」という程度関係において別々にしたものがよろしいというふうに考えられたからだと思うのであります。それはこの観護所の方は身柄を拘束するという作用になるわけであります。鑑別所の方は少年の資質を医学、精神学等のそういう学問的な見地に立ちましてこれを鑑別するというわけで、全然機能が違うわけであります。そうかと言いましてその鑑別するのは、要するに主として観護所に拘束されている少年鑑別するわけでありまして、それでその関係におきまして両者は密接な関係がある。併し又他面におきまして、鑑別所を観護の中に全然入れてしまうのもどうかというような考え方があつたと思うのであります。併し予算が十分取られまして又人が十分に得られますならば、或いは別々にするという立案当時の考え方も私は理由があると思うのでありますが、実際の運用一年の予算的な措置の問題或るいは人を得る難易の問題等を考えますと、そういう小さい役所を別々に建つておくということは、国家の行政組織の経済面から見まして、どうも不向きである。やはりそこは一本にしてやつた方がすべての都合がいい、こういうふうに実際上思われて参りましたので、これ一本にいたした次第であります。
  104. 松井道夫

    ○松井道夫君 現在これは勿論観護所と鑑別所では、やつていることの内容が全然違つておる。ですから、どちらが重要なことかというようなことは、これは議論にならないと思いますが、犯罪少年或いは虞犯少年、そういつた者の処遇上実際面においてどういうことになつているのでしようか。鑑別所は附置ということになつておるのだが、むしろ鑑別所仕事の方が、今の少年の処遇について重要性があるというようなことに見られておるのでしようが、この点、実際の面においては、どういうことに考えておられるのですか。
  105. 關之

    説明員關之君) お尋ねの点につきましては、観護と鑑別の機能の、少年保護全体の上における地位、役割などからみますると、私は鑑別の機能の方が重要視すべきものであろうと考えておるわけであります。観護所の機能は、ただ、ただという言葉は、適当でないが、少年の身柄をそこに一応拘束しておく。そうしてその鑑別の機能は、その少年が如何なる動機によつて、如何なる犯罪を犯し、将来これをどうすれば矯正ができるかということを科学的に鑑別して、裁判所審判、そして少年院の矯正保護をそれに役立たせるものでありますから、この点は鑑別の機能が少年保護上からは重要視すべきものであつて、それをますます整備拡充すべきものと、かようなふうに考えているわけであります。
  106. 松井道夫

    ○松井道夫君 そうすると、今の一本にするという意味の中には、観護所の機能というものを、附置じや可哀そうなんです。鑑別所の機能というものを十分に一本にしてやつて行こうじやないか、そういう意味も加わるのですか。
  107. 關之

    説明關之君) 改正されました鑑別所名前、その性格などのことにつきましては、いろいろ議論がございまして、名前としては、これはただ少年鑑別所にするのがよくはないかというような意見もあつたのであります。それは今お尋ねの、要するに拘束の機能とそうして鑑別の機能をどういうふうに見るかということになるわけであります。鑑別の機能は、そういうわけで、非常に少年保護上からは重要は仕事でありまして、将来はそれをますます整備いたしたい、そういうような意味合もありまして、一本にしたわけでございます。
  108. 松井道夫

    ○松井道夫君 次に、その点はそれといたしまして……    〔宮城タマヨ君、「ちよつと今の問題について、私発言をお許し願いたいのですが」と述ぶ〕
  109. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 松井さんの発言中ですから。
  110. 松井道夫

    ○松井道夫君 ちよつともう一点だけですから、お待ち願います。  少年法関係お尋ねするのですが、第二十七條の二の規定によりますと、例えば年齢の関係で、これは全然審判権がない、そういうものを少年と誤認いたしまして、今の保護処分をやつた、或いは少年院なら少年院へ入れたところが、その後少年でないということが分つた。その場合に、家庭裁判所保護処分を取消す、こういうことが書いてあるのであります。それからその三項に、十九條の第二項が準用されまして、恐らく事件を管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致するということになるであろうと思うのであります。この場合に、仮に起訴されまして裁判を受けるということになりますと、少年院に収容せられたということが余分なことになつてくるのであります。これは保護ということになつて保護処分ということになつておるのですから、有難いようでありまするが、併しながらやはり自由を相当拘束されておる場合があるわけでありますから、一つの害悪と言えば害悪と見られるのであります。要するに余つた害悪については、何らかの手当をすることも勿論考えられると思うのでありますが、その点について何か立案に際して研究せられたかどうか、この点一つ伺います。
  111. 關之

    説明員關之君) お尋ねの点は、実はこの法案を作成するに当りまして、一番法律上の問題の点に関連しておるわけであります。それは憲法第三十九條にいわゆる二重処罰の禁止の規定がございまして、少年法第四十六條には、「罪を犯した少年に対して第二十四條第一項の保護処分がなされたときは、審判を経た事件について、刑事訴追をし、又は家庭裁判所審判に付することはできない」というふうに、保護処理の効果を一応批判力的なものを持せまして、それだけであとの訴追は、しないというようなふうの規定があるわけであります。この規定との関係上、一応いたした保護処分を取消しまして刑事訴追をすることが、憲法のこの規定、尚少年法四十六條の規定を如何に理解すべきかということが、この法案を一番の実は法律問題であつたわけであります。お尋ねの点は、それとも関連いたしますからして、それらにつきましての、私共で研究いたし、かような立法に至りました経過を御説明申上げたいと思うのであります。  検事の起訴は、申すまでもなく刑事処分であります。それで憲法第三十九條に規定してあるのは、アメリカのいろいろな判例なども調べた結果、私共としましては、要するにそれは刑事処分にのみに関する規定である、かようなふうな解決に到達したのであります。そうしまして、この少年法に規定されたる保護処分は、保護処分であつて刑事処分ではない、成る程そこに若干の自由の拘束があつて、手続その他においては処分に自由の拘束の働きがそこにあるにはあるけれども、やはりそれは保護処分であつて、刑事処分ではない、従つて先の保護処分を一応取消して刑事訴追をしたとしても、憲法三十九條の規定には該当しない、特にアメリカの方の判例などを調べてみますと、被告人において非常に作意をいたしまして故意に嘘を言つて裁判所の審判を誤らしたような場合には、二重処罰の禁止にはかからないというような判例が多うございまして、それらの規定が見ましても、手続的に見ましても、二十七條に規定するような場合には、本人が年齢を強いて嘘を言いまして、そうして受けるような事例が多いのであります。これは参考資料の中に、今日までありました例事の一部を提出して置きましたのでありますが、例えば二十五歳の少年が十八歳と僞る、それはいろいろの、例えば親に分るとか、或いは少年院の方が処分が軽いからとか、いろいろな理由によりまして裁判所に嘘を言いまして、そうして少年院に送られて処分の終る頃一月二月繋続しておるうちに、ちよつと口を滑らして初めて本人の年齢がわかつたというような次第になつておるわけであります。憲法第三十九條につきましては、さような見解からこれは保護処分を取消して刑事訴追をいたしましても、三十九條に違反しない、こういうような結論に到達したのであります。併し御意見のごとく保護処分を相当の自由の拘束をなすから、その精神においてはそこに若干全然違反しないというようなことを言い切れないものがあることは私共も十分に考えたわけでありまして、その点が実はいろいろに議論が積んだ点であるわけであります。つきまして、仮に保護処分を取消して、刑事訴追をするということになりましても、それは問題は刑事訴訟の方に移るのでありますが、御承知のごとく、刑事訴訟法におきましては、検事の起訴は便宜主義になつておるわけであります。従いましてこの点は改正法に規定しなくても、その点便宜主義の規定上、当然に検察官の方において十分に考慮いたしまして起訴、不起訴を決定し、或いは求刑その他の問題においてそれらの点を十分に考慮して起訴するであろう、或いは事件を処置するであろう、かように考えまして、本法案の中にはその過去の保護処分のことを考慮しろとかいような規定を実を設けなかつたのであります。その点と、いま一点、若しこの中にさような点を規定いたしますならば、保護処分と刑事処分とが同じようなものに考えられるような疑いがあるわけでありまして、その点を考慮いたしまして、実際の刑事訴訟便宜主義の規定上、当然にそのことは考慮するであろうというふうに考えまして、かような規定といたしたのであります。
  112. 松井道夫

    ○松井道夫君 成る程大多数の例が起訴されて刑務所へ入れられるよりも少年院の保護処分がいい、楽だというようなことは、これは作意でそういう結果になる場合もあるのでしようが、併しながら世の中には間違いということがあるのであつて、如何なる状況で、如何なる理由でそういうことにならんとも限らないのであります。又検事の今の便宜主義、起訴の便宜主義ですか、それは成る程検事も、勿論常識でやられるのでありますから、大体においてそれに委してあつて間違いはないのでございまするが、これも今申したように、間違いがないとも限らないのであります。であるからして、これは国民の権利として何等かの方法をもつて教育するということでなければ不十分なのであります。ただいい考えがない、いい方法がないというのならいたし方がないのであります。それで私お尋ねしたわけでありますが、別にいい方法はない、その方法について考えられたことはないということですか。
  113. 關之

    説明員關之君) その点につきましてはいろいろ研究してみたのであります。只今申上げたように一つとしましては、過去に受けました保護処分を刑事訴追をする場合に考慮すべしというような規定を設けますると、刑事処分と保護処分は違うという、その建前が崩れて来はしないかという法律的な理論的な一つの問題であるわけであります。それで置かないほうが法律上正しくはないか。いま一点は、今の刑事訴訟法の問題になりまして、検事の起訴の便宜主義上過去に受けた保護処分については十分に考慮をして処置されるものである、こういう二点から今のお尋ねのような点はこの法律上には明記しないのが宜かろう、こういうことになつたわけであります。
  114. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 先程松井委員の質疑に対しましての政府委員のお答、それから午前中にも同じことがございましたのですけれども、観護所がただ單に一時的の身柄の拘束をするという、いわばアメリカなんかで申しましたデテンション・ホームに当るものだという御説明がございましたのでございますけれども、それなら鑑別所と一緒になさらないで、家庭裁判所の中にお置きになる方が都合がいいのじやないのでございますか。どうして家庭裁判所と一緒になさらないで、鑑別所と観護所と一緒になさつたのでございますか。
  115. 關之

    説明員關之君) 今のお尋ねの観護所、鑑別所を審制機関である裁判所との関係において如何なる所に置くかという点は、これは一つの根本問題であるわけでありまして、立案の当初におるわけでありまして、立案の当初におきましても、いろいろこの点は問題になつた点であろうと思うのであります。それで家庭裁判所よりそれを離しまして観護所、鑑別所というものを別な法務府系統の役所といたしましたのは、私の推測いたしますところでは、要するに裁判所審判だけ執行する、身柄の拘束その他の点は別な機関をして扱わしめるのが相当であるというような考えからそういうふうになつたものであろうと私は考えておるわけであります。
  116. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それでは單に繋続します官庁が違うからというだけでございましようか。昨日も私はそういう根本の問題がございますから法務総裁にいろいろ伺つたのでございますけれども、やはり今対象としました問題につきましては、子供のためにどうすれば一番いいかという立場に立つて立法もして貰いたいし、若しもそれが家庭裁判所の構内にでも置く方が必要だといういうなことでございましたら、これはもう根本的に考えて頂かなければならん問題じやないかというように思つておるのでございます。実際観護所を廻つて見ますと、昨日も申しましたように、刑務所以上にひどい部屋の中に入れまして、子供はなんにもすることなしにただ坐らしてあるというようなかわいそうな状態である所もございますが、又或る所では大人の刑務所の中に、塀の中に入れてございまして、大人の刑務所の犯罪者と同じものを食べさせておるというようなところもありまして、実に私は大問題だと思つて見て参つたのであります。それで若しもそれがただ身柄の拘束ということでしたら、運営上から家庭裁判所の中にということが若しもできないならば、家庭裁判所に極く近いところに置く。そうして審判するのにも都合のよいようにということにした方が、私はむしろよいので……、そうじやなくて私はもつとこの観護所と鑑別所を一緒にしたというところには、子供のためにその方がよいという建前ではないかというふうに今までは理解しておつたのです。東京鑑別所の成田所長はもう少年他が通過いたしまして以来、子供鑑別をしていらつしやり、さすがに一貫したお仕事をしていらつした方と思つて、この間敬服して参りましたとこは、あの鑑別所に参りましたときに、犯罪少年はすべて病人です、ですからその病人を先ず第一に病院に入れて、病室に收めけなればならないというて、事実病室に当ります部屋に子供を寝かせてやつて子供はもう来ると、非常に病人と同じように寝かされて、その願かされておるうちに静かに精神を落ち着けて、身体も落ち着けて、そのうちに本当の鑑別できるのです。だからこれは病院の診療室であつて、だから大きい病院に病室があつて、そうしてその病人を診察する診察室があるのだ、ですからこれはもう一つの大きい病院なんですという説明をされましたときに、私は本当にこういうふうに子供がされるのだつたら、ここからもう一度罪を犯そうという子供は出る筈はないというように考えて、実は東京鑑別所を喜んで出たわけです。これに反して、刑務所の中にございます観護所へ行つて見ますというと、全く問題になつております子供に手錠を篏める、そのことが非常に子供に害になるということ以上に、私はあの背の高い刑務所の中に身柄を拘束されておるというようなことは、これは保護処分を受ける子供達にとつて大問題になるというように考えて来たのです。むしろ私は昨日からも各委員からお話が出ておりますように、鑑別所と観護所を一緒にされたことは、非常にいいことである。もう一つ私は家庭裁判所も一緒にして、この三つを、もう場所的に言いましても同じところにあるということにした方が、本当にこの審判の、或いは保護教正の運営がよくできるのではないかというように考えているのでございますけれども、その点は如何なものでしようか。若しもこれが、理想としましては三つのものを一緒にするというような御構想でも、或いはあるのではないかというように考えておりますが、如何なものでしようか。
  117. 佐藤藤佐

    政府委員佐藤藤佐君) 昨日、昨日じやない、今日の午前にも申上げましたのでありまするが、審判機関と、執行機関とを一緒にする方が、少年の保護教正のために最も適切な制度ではないかという有力な意見がございまするので、只今宮城委員の御意見に非常に傾聴いたしておるのであります。その点につきましては私共もかねがね新制度運用に鑑みまして、もう一度考え直す必要があるのではないかという観点に立つて研究いたしておるのであります。制度といたしましては今審判機関執行機関が分れて発足したばかりでありまするから、もう少し運用の結果を見て検討しなきやならんと考えておるのでありまするけれども、元々家庭裁判所子供審判する、その有力な資料として先ず子供鑑別するということが必要なのでありまして、その資質を鑑別するためには一定の場所に收容して、そうして適正な鑑別をなし、又その鑑別に基いて適正な審判をするということを考えておるのでありまするから、理想としては家庭裁判所の近くに保護鑑別所を設けることが最も望ましいことなのでありまして、東京の家庭裁判所において、日比谷の一角に少年審判部を設けられるということを聞きましたので、できればその地下室なり、或いはその隣りに観護所を設けて貰えないかということを懇談したことがありまするが、地形の関係上、それは到底余地がないということで、御承知のように、少年観護所及び鑑別所を設くるのに、至るところで余り歓迎されないで、今以て工事が進捗いたしておらない。先般漸く地均しを終えまして、着工式を終えたに過ぎない程度になつておるのでありまするが、将来の制度運用といたしましては、できれば家庭裁判所の近くに少年保護鑑別所を設けて、そうして審判のために素質を鑑別し、又鑑別するために一時收容する。それは制度としては置かれておりましても、目的はいずれも少年を保護し、矯正するという同じ目的を持つておるのでありまするから、目的を達するために、どういうような運用の仕方をしたら一番適切であるかということに目標を置きまして、制度は置かれておつても、互いに協調してやりたいという考えを持つておる次第でございます。
  118. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 宇田川局長ちよつとお尋ねたいします。今の問題に連関するのでございますけれども、家庭裁判所で不開始になります事件でございますね、前の少年法の一号、二号、三号の処分に当るような、つまり軽くて無罪放免になるような子供でも、やはり帰る家がないし、保護者がないし、又例えば雇人を奉公先に帰すというような、帰してもいいというような軽い子供でも、やはりその辺を浮浪して歩きましたので、ちよつと髪も剪つてやりたいし、着物も替えてやりたいし、風呂にも入れてやりたいしといつたようなことで、一晩か、二晩泊めて、それぞれすつきりして、身体も綺麗にし、心も綺麗にして替えてやつて帰すというような子供も事実あるだろうと思います。そういうことのためにいわゆるデテンション・ホームというようなものを家庭裁判所に附設して置こうというようなお考えはございませんでしようか。
  119. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 少年裁判官の会同、少年保護司の会同においても、そういうような意見がしばしば出るのでありますが、さような取扱いをいたしますと、往々現在の少年観護所の機能と重複する虞れがありますので、現在研究中であります。
  120. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 実際お取扱いになりました判事などはやつぱりその必要をお感じになつてるのではございませんのですか。
  121. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) その必要は大いに感じておるわけでございます。殊に地方から家出して参つて、東京で持つて来た金を使い果し、結局他人の物をとる。くにの保護者に渡せばその子は再び善良な少年になり得るというような場合に、家庭裁判所の中に、保護者が来るまで二、三日でも保護するということは非常に必要なのであります。そこでさような制度は先程申上げたように研究中であります。尚、観護所に一時観護の措置をとつて入所せしめるということによつても一応賄われないことはないので、さような方法も現在とつております。
  122. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その不開始処分の中に、そういつたような、一号、二号、の処分に当るような事件はどのくらいございますでしようか。
  123. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) ちよつともう一度……
  124. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 全国の家庭裁判所の統計によりますると、不開始処分が非常に多うございます。所によりましたら六〇%、七〇%、それから全体の統計を見ましても、やつぱり五五%ぐらいは不開始処分になつておりますように記憶しているんでございますけれども、このことは後日私は問題にして見たいと思つておりますが、この中には前の少年法による一号、二号、三号処分になるものもございますだろうと思うのでございますけれども、それはどのくらいの数かということを、大体でもお分りございませんでしようか。
  125. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) 不開始処分に神には、旧少年法の一号、二号、三号、四号、というようなのに当るものは、その率は分りませんが非常に多くあると思うのです。併し旧少年法の一号から四号までのような保護処分に相当する手当は、現在家庭裁判所でも行なつております。不開始処分と申しましても、その場合やはり保護者を呼び、そして保護者に渡すというようなことは、まさしく旧少年関第四條の処置に出ているものと、こう考えております。尚、不開始処分が非常に多いという点につきましては、原因はいろいろございますが、旧少年法当時は、経済違反というような特別法犯は殆んどなかつたのでございますが、現在は犯罪ともなれば、刑法犯であろうと、特別法違反であろうと、何でも来ているというような点もありますし、又少年保護委員会の保護監察が従来少年保護監察所が整備しておらなかつたために、少年保護委員会の保護監察に附することが非常に少なかつたような事情にあります。併しながらこの点についても、最近法務府の格別の御努力によりまして、少年保護委員会も非常に活溌に活動し始めましたので、将来は恐らく不開始処分も、その面からは非常に減少するのではないかと、こういうふうに考えております。
  126. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 不開始処分に内訳が分りましたら、家庭裁判所の方から材料をお出し頂きますようにお願いいたします。
  127. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) その点については調査いたしまして、又機会を得まして御報告申上げます。
  128. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 本法案審議までに御提出願うんですか。
  129. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 いいえ、そうでございませんでもよろしいのでございます。
  130. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御参考に、後ででもよろしいですか。
  131. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 はい。それからいま一つ、少年調査官調査官補でございますけれども、これはできるだけ優遇して頂きましたらいい人が集るかと思うのでございますけれども、それにつきまして、これはただ優遇という意味だけじやございませんが、少年を同行して行きますときなんかに市電のパスなんかを保護司が持つておりましたら大変都合がよくて、子供を逃がすようなことも幾分防げると思うのですが、昔はございましたが、今そのパスをとるということは困難でございましようか。
  132. 宇田川潤四郎

    説明員宇田川潤四郎君) パスを少年調査官少年調査官補全員に渡すということは、一面望ましいことでありますけれども、一面家庭裁判所という裁判所の性格上、余り自治公共団体とか、その他私設の法人あたりから優遇を受けることは、裁判所の公正の精神にも反し、廉直の精神にも反するというところから、一部では遠慮すべきではないかというような誤もありますので、その点については家庭局といたしましてもどつちに考えていいかということについて、現在迷つているような状態であります。併しながら他の面で家庭裁判所調査官調査官補を大いに優遇すべく目下努力中でございます。
  133. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 十九條に二項の、家庭裁判所調査の結果本人が二十歳以上であることが判明したときは、こういう前段の文字だけでは、いわゆるこの條項犯罪者のみを限つておるということの趣旨が出て来ないのですが、後段の規定からはそういう解釈が出て来るとは考えられますが、この点に対する御説明を伺つて置きたいと思います。
  134. 關之

    説明員關之君) この点につきましては当初から一応考慮して見たのでありまするが、大体これで賄えるという考えであります。これは第十九條の第一項の関係においてさように解釈いたしておるのであります。この十九條の改正追加いたしました二項と申しますのは、要するに犯罪者であつてそれが二十歳以上である場合の処置であるわけであります。それで第十九條の第一項には、「調査の結果、審判に付することができず、」この「審判に付することができず」のうちには、虞犯少年犯罪少年二つの場合を含んでおるわけでありまして、その場合には審判を開始しない、不開始の決定をするわけであります。そういうような第一項がありまして、その次にこの第二の家庭審判所が、調査の結果、本人が二十歳以上であることが判明したときは、前項の規定に拘わらず、「決定をもつて、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官に送致しなければならない。」この事件を「管轄地方裁判所に対応する検察庁の検察官」という表現によりまして、これが刑事事件を意味しておるというふうに、当然論理的に解釈できるわけでありまして、それで追加した二項の場合には虞犯少年は含まれていない。虞犯少年の場合は一項によりまして、「審判に付することができず」という、このうちに含まれておる。開始の決定をすることができない、かようなふうに解釈し得るものと考えておるわけでございます。
  135. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御異議がなければ採決してもよろしうございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御異議ないと認めます。では少年院法の一部を改正する法律案並びに少年法の一部を改正する法律案両案の質疑はこれをもつて終局することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御異議ないと認めます。では質疑はこれをもつて終局いたします。  討論はこれを省略いたしまして直ちに採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御異議ないと認めます。では直ちに採決することにいたします。  両案を一括して、これを採決いたしたいと思います。両案全部を問題に供します。両案に御賛成の方の御起立を願います。    〔起立者多数〕
  139. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 多数と認めます。よつて両案は多数を以つて原案通り可決するものと決定いたしました。尚本会議におけるところの委員長の口頭報告の内容につきましては、委員長に一任することを予め御了承願いたいと思います。  多数意見者の署名をお願いいたします。   多数意見者署名     岡部  常  宮城タマヨ     鈴木 安孝  遠山 丙市     松井 道夫
  140. 伊藤修

    委員長伊藤修君) 御署名洩れはございませんか。御署名洩れはないものと認めます。  では本日はこれをもつて散会いたします。明日は午後一時から五井産業事件について証人の証言を求めることにいたします。    午後四時四十四分散会  出席者は左の通り。    委員長     伊藤  修君    理事            鬼丸 義齊君            岡部  常君            宮城タマヨ君    委員            鈴木 安孝君            遠山 丙市君            松井 道夫君            松村眞一郎君            羽仁 五郎君   政府委員    刑 政 長 官 佐藤 藤佐君    検     事    (法制意見総務    室第一局長)  岡咲 恕一君    検     事    (法制意見総務    室第四局長)  野木 新一君   説明員    法務事務官    (刑政長官総務    室主幹)    關   之君    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長) 宇田川潤四郎君    最高裁判所長官    代理者    (務総局第二課    長)      磯崎 良譽君