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堀越儀郎君 この休会中に
関東方面を
視察して参りました。
委員としては、私と
木内さんと、それから
同行者としては岸田さんと山木さんと四人で参りました。
茨城、
栃木、
群馬、
千葉の四県を詳細に
視察いたしました。埼玉、神奈川は
機会を見てということにして四県だけに止めたのであります。詳細は種々の
資料を集めまして
専門員室に傭えて置きましたから御覧頂きます。
簡單に大体のことを御
報告申上げたいと思います。
我々主として
先方に参りまして
視察或いは懇談いたしましたのは、その眼目といたしますのは、
教育委員会と
事務局との
関係はどんなふうに行
つているかということ、それから
教育委員会の一部
改正問題に関連しまして、この前の
国会でいろいろ
意見の出ておりました
教育長の
権限強化の問題などのことについて、それから今度の
予算で非常に重要視されまする
平衡交付金の問題に関連しましての
地方の
教育予算の問題、それから
教員の
充実の
状況、更にこれをどういう
方法で補充して行くかということ。次にはいろいろ
細菌取沙汰をされておりまするP・T・Aの問題、それから
社会教育の問題、次には
教科書配給の
状況、更に
新制中学の
建築費に絡んでの
地方の
状況など、
最後に
文化財の
保護がどの程度にな
つておるかということについて、いろいろ調査して参りました。総体的に見ますと、
教育委員会が発足されてから、まだ日も浅いのでありまするが、段々とこの運用が円滑に行
つておるまうでありますが、
事務局との
関係も円滑のところが多いように見受けられたのであります。併し結局それは、
事務局は実際に
教育に堪能の人が集ま
つておりまするのはいいのでありますが、
教育委員会の
委員の人によ
つて相当その間の
事情が違うように見受けられたのであります。観察して参りました県、諸県から結論をいたしますと、結局
委員会の制度でなしに、
委員の入による問題にあるものだという認識を深くして参
つたのであります。幸いに我々が
参つた県は、
委員にその人を得ておりまするので、非常に円滑に遂行され、
事務局と
委員会との
関係が非常に円滑であり、而も熱心に
教育方面の仕事に
関係しておられる
状況を見て心強く
思つて来たのであります。この前の
国会に提出される予定でありました
教育委員会法の一部
改正に
伴つて、
教育長の
権限強化という問題が
相当に論議の的になる
傾向であ
つたのでありまするが、この点
相当突つ込んで
事務当局なり、
委員会の
委員の方の
意見を聞いて参
つたのであります。
事務当局の方は勿論あの
原案を支持されるのは十分首肯されますが、
教育委員会の
委員の人も、あれで結構だ、現実にや
つておることを、ただ法文化するだけであるから、ああいう
改正に対しては、茂々は
異議はないという
意見が多か
つたのでようであります。我々が参りました県では、その
反対の
意見を聞く
機会はなか
つたのでありまして、大体の
改正に対して全面的に賛意を表しておられるように
受取つたのであります。
それから
予算の
関係でありますが、大体本年度の
予算は
地方の総
予算の二五%が全国の
平均ということにな
つておるのであります。つまり
地方における
教育予算というものは、
地方財政の二五%が
平均にな
つておるようであります。我々が見て参りましたところでは、大体二五%から四五%までのようであります。ただ
茨城、
栃木のような河川に
災害を受けて、
災害復旧のために当初
予算よりは
追加予算が殖えた場合に、やはり依然として
教育予算がそのまま据置かれることになる
関係上、一一%まで下
つておるところがあ
つたのでありますが、それは臨時的の措置であ
つて、大体二五%から四五%ぐらいのところを組まれておるようであります。今後の
中央から交付される
平衡交付金の問題については、今度
文部省で立案されておりまする
義務教育の
標準教育費と同じような意味で、普通の平たい
言葉で申しますれば、
中央から交付されるその
交付金に、
教育予算に対しては
紐付きの
予算を是非交付されたい。全般的に
自由裁量で
地方長官に委されるような場合にはどうしても
政治力の強い警察、或いは土木という
方面に使われ易い。そうすると又以前のような、十五年前繰返されたような
教員に対する不
拂いというような不祥事が起る虞れもあり、又非常に弱い
教育委員会の
財政源を持たない
教育委員会の
権限から
考えて、その完全な
義務を遂行する上において非常に苦心をしなければならない、場合によ
つては節を屈するようなことが起るのじやないかというようなことで、
平衡交付金の問題に対しては
文部省が
考えておられる
標準教育費というものは、是非法文化して貰いたい。法律によ
つてや
つて貰いたい。つまり
紐付き予算というものを是非
実現して貰いたい。これは各県とも同一の
希望でありまして、この点を強く要望されていたようであります。この点は我々
文部委員としても、十分に
考慮を
拂つて地方自治庁の
考え方もさることでありましようが、
教育予算に対して当然我々が力を入れてこの
実現を図らなければならないと
考える次第であります。
それから
教員の
充実の問題でありますが、無
資格者の
教員の
相当いることは、これは各
府県とも十分認られたのであります。今後も起る問題であろうと思うのでありますが、各
府県とも
講習会を開いて、そうして
免許状がとれるよう、有
資格者になれるよう十分に
努力を拂
つておるようでありました。又
教員自体にしても、
講習会には万難を排して参加して、
自分の
地位を確保する、
地位の向上に
努力しておる様子が見受られたのであります。この点非常に頼もしく
思つて、
教員自体の
立場から申しまして、又各県の
教育委員会の
努力に非常に敬意を拂
つて来た次第であります。
次にP・T・Aの問題でありますが、これはやはり依然として
寄附金の問題などに絡んで弊害がまだ跡を絶たないように見受けられたのでありますが、併しこの
改善に対しては各県とも非常に
努力しておる。
群馬県のごときは
標準P・T・Aというものの
結成をいたしまして、その
結成に
教育委員会なり、
地方の有志が
努力をして、これに皆見習えというようなふうにP・T・Aの
改善に非常に
努力しておるような
傾向が見受けられたのでありますが、併し何と申しましても
教育予算の
一般予算から比べて少ない上から、今日、P・T・Aの問題は余程お互いに力を入れないと解決し得られないのじやないか、殊に今度の
地方財政において
寄付金を百億円に
シヤウプ勧告案によ
つて決められたのでありますが、以前の五百億を四百億削
つて百億円までは認めるということでありますが、この情勢では恐らく
シヤウプ勧告の線が守り得ないのじやないかという感を深くして参
つたのであります。これは先程申しました
平衡交付金の問題に関連して
平衡交付金の問題が我々の
希望するごとく解決されない限り、P・T・Aの問題も同じように禍根を残すのじやないかということを深く痛感して
参つた次第であります。
それから
社会教育の問題は行
つて参りました県では
相当努力を拂
つておるようでありますが、まだ十分でないような感を與えられて来たのであります。ただ
視覚教育及び
巡回図書館というような
方面においてそれぞれ新らしい企画の下に
努力しておる県を認めて参りましたが、他の
一般の
社会教育についてはいま一段の
努力を拂
つて貰わなければいけないのじやないかという感をいたし、その
意見を申述べて参
つたのであります。
それから
教科書配給状況でありますが、これは
図書が多くなるに従
つて非常に円滑にな
つて参りまして、一昨年あたり非常に
非難の出ておりました
教科書の
配給が遅れるために十分な
教育ができないというような
非難は解除されまして、大体主なものは間に合
つておるようであ
つて、
教科書が来ないために
生徒が非常に困るというような声は非常に少なくな
つて来たようであります。ただ
半面に初年級の
教科書を早く
配給されるために困るというような
反対の
現象が起きて来たように見受けられたのであります。例えば四月の新
学年度から使う
教科書が自然その以前に
配給をされて、そうして
現金を支拂わなければならない。ところが
新制中学あたりになりますと、入
つて来る人数が
はつきりと見通しがつく場合はよいのでありますが、何人入るか分らない、初年級などもそうでありますが、
はつきわ入
つて来る数を捉えることができないのに
教科書だけが先に到着してその
現金を
学校で立替えて拂わなければならないというようなことで、その資金に困
つておる。こういう
実情を聞かされて来たのであります。以前のように
教科書の
配給が非常に遅れるために、
教育上支障を来たしたということでなしに、
半面において今度
反対に一部のものは早く来過ぎる。それを
学校で一時預
つて金を立替えて拂わなきやならないその金の出所に非常に困
つておるという
現象、それからもう
一つは
教科書の使う面が自由にされたために非常に売込みの
運動が激しくな
つて乗る
傾向がある。この点非常に憂慮されて、以前に起
つた教科書疑獄事件というようなものが将来再び繰返されることがあるのではないかと、こういう懸念を我々は持
つて帰つたのであります。その点も将来
考慮して貰わなければならない問題ではないかと思うのであります。
それから
新制中学の
建築の問題は、これは申すまでもなく
地方としては非常に熱心にや
つたために、
町村長が
地位を去らなければならない、国の
補助が少くな
つた、或いは遅れたりしたために責任問題も起
つたというところが多いのであります。これは非常に全国的の問題でありまするから、我んが
行つて地方のみがそういうことが起
つたのではない。
町村長が責任をとられて辞任問題は、
供出米と、
新制中学建築の問題、二つが絡んで大部分それによ
つて地位を去らなければならないという問題が起きておるのであります。
つまり供出の問題と、
新制中学建築の問題が
地方の
町村長の命取である。而も両方とも熱心であればある程問題を大きくしておるようであります。これは勿論供米のことは
文部委員としては別個のものであり、
建築費の問題については
教育に熱心に唱道した
町村長が最も苦しい
立場に追い込まれておるということを見逃してはいけないのではないか。こう思われるのであります。
最後に
文化財の問題でありまするが、見て参りましたところでは大体よく
保存されておるようであります。併しその
修理更には完全な
保存についてはまだ国としても
考えなければならない、
地方としてももつと
関心を持たなきやならんのではないかという感を深くして帰
つて来たのであります。併しながら
文化財保護法というようなものが
国会の
方面で論議され、近くこれが成立を見るということが
一般によく知られて
文化財のことに対する
一般の
考えが非常に深くな
つて来たということは十分に見られるのであります。
地方民に対する
唱蒙運動というものが今まで足りなか
つた。
自分の
地方に非常に立派な
文化賦があるに拘わらず、一部の人しかそれを知らなか
つたということが現状でありましようが、
国会で
文化財保護に対して非常に熱心に論議されておることが反映いたしまして、
地方民もそれに呼応して
地方の
予算を細細ながら盛
つておるところもあります。
千葉県のごときは
啓蒙運動として二十四年度には
国宝及び
重要美術総覧というようなものを印刷して
一般に配付しております。又二十五年度には
天然記念物総覧というような
図書を発行して更に
県民に対する
関心を深めようとしておるようであります。こういうふうに今まで
文化団体とか、一部の者しか
関心を持
つておらなか
つたのが、
国会のこの法案に対する審議の進み方に呼応して、
地方がこれに非常に
関心を持
つて来た。又
地方自治体としてもそれに対して幾らかの
予算を盛り、更に
予算を増して、それに対する
保存、
保護ということに力を入れようとする
傾向が段々顯著にな
つて来ましたことは、非常に我々
文部委員として心強く感じて
帰つたのであります。
大体以上の
通りでありますが、各県の極く特殊なものだけを一、二拾
つて見ますというと、
茨城県においては
教育委員会というものが非常に熱心であり、
教育長なり
次長が
教育委員会と協力して常に優秀な
成績を挙げておりますので、
民政部から
教育長及び
次長が昨年は表彰されております。こういうことは、
教育委員会が発足してから
間日が浅いにも拘わらず非常に優秀な
成績を挙げておることに対して感謝の辞を述べて来たのであります。
それから
栃木県においては
高等学校は週五日制で、つまり現在の六日制を五日制にして、そして
最後の土曜日を各自の自習に当て、又は
教員の
研究及びそれぞれの
解放日に当てておりまして非常によい
成績を挙げておるようであります。そのために二十日間の
有給休暇というものも誰も願出る者がなく、
生徒も十分に
余裕を與えられ、教師も
余裕を與えられて、それぞれの道に進んでおる
状況が見られたのであります。分後
小中学校にもこれを適用するかどうかは
考慮中であるようでありますが、
当局としてはまだそれを断行する
考えは持
つていないようでありますが、父兄の方からは
小中学校はこの週五日制というものはや
つて貰いたくないという
反対意見のようであ
つたようであります。
高等学校の方は
成績はいいのでありますが、
小中学校まで及ぼすということはまだこれは
考慮されなければならないのじやないかと、我々もその感を深くして参
つたのであります。それから
社会教育の面で
栃木県では
公民館を非常に熱心に
考えておりまして、而も
青年団が自発的にイニシアチブをと
つて運動を始めまして、立派な
公民館を建てております。それに刺戟されて、
公民館運動というものが
相当熱を上げておるようでありまするし、これは上からの指令でなしに、
青年団が自発的に非常に熱心にや
つておることを心強く見て参
つたのであります。
群馬県では、先程申しました
標準P・T・Aというものを設けております。この県は
社会教育に、非常に熱心に力を入れておりまして、今年度には
中央図書館を是非設けて、それを三年間の計画で竣工しようと、次には各地に分館を設けようということで、非常に熱心にや
つておるようであります。それから
千葉県では、たまたま
高等学校の分合問題が論議されておりまして、六十六校の
高等学校を四十四校に併合するというこの案でありますが、これは
地方の
事情も絡みまして、
相当政治問題化しようとする
傾向にあ
つたようであります。併し、副知事が非常に熱心であり、
教育委員長及び
教育長が非常に熱心に斡旋をしまして、各界から
委員三十名を選出して、その
委員によ
つて原案を拵えて、
教育委員会がその答申によ
つて併合して行こうと、つまり最低四百八十名から一千二百名を限度として、その
標準によ
つて四十四校に縮めよう。但し、
千葉県の
特殊事情によ
つて、
実業教育に関しては
相当の幅を持たせよう、或いは
水産学校のようなものは二百名、或いは
農学校のようなものは三百八十名くらいまで認める。それ以外の
地方においては、これを
定時制の
高等学校にしようという案で進んでおるようであります。ところが、この
壷時制の
高等学校というものに対して、
一般の
理解が非常に少いようであります。
定時制高等学校というものは、これは廃校されるのだというような誤解を招いておるようであります。これは従前の
青年学校時代の
成績が悪か
つた印象が非常に強いために、
定時制の高校といえば、これは十分な勉強ができないのだと、よい先生も廻されないのだと、これは廃校に等しいのだというようなことで、その
関係地方民が猛烈な
反対を起しておるようでありますが、県としては、
定時制高等学校というものに対する
理解を深めるように
努力し、又
優秀教員をこれに配置するということによ
つて了解を得ようと
努力しておるようであります。ただ今後は、
定時制高等学校というものに対する
県民の
理解がどこまで進むかということで、この問題は解決されるのではないかと思います。これが解決されれば、
千葉県の
高等学校統合問題も円満に妥結を見るのではないかということを
考えまして、
県当局にその線に滞
つて努力するよう、
我我も
意見を申出で、又激励もして参
つたのであります。いずれ近くこの問題も、一時政治問題化されて紛糾を見ようとしたのでありますが、円満に解決されることであろうと思うのであります。
文化財のことは、先程
簡單に申しましたが、その中で一、二
先方の
希望なり、或いは
実情に即して我々も
考慮を與えた方がよいと
思つて参りましたのは、
日光の昨年十二月三十六日のあの地震のための
災害であります。これは
日光の方から、
委員長宛及び
議長宛に
請願が出ておることと思うのでありますが、
相当被害が大きいのであります。その中にも、やはり
国宝に
関係あるものも含まれておるのであります。その震災による
復旧費の見込は、総工費が約大百五十三万円、そのうち
国宝に属する分が五百十二万程あるのであります。この
復旧工事というものは、我々見たところでは、非常に目に立たない石垣の崩れ、或いは基盤の緩みというて、そのまま放置するときには、将来大きな
災害が起るのであります。他の
文化財の
修理と
違つて目に立たないことでありますが、この多額の費用が要るのは甚だ遺憾のように思いまするが、今のうちにこの
修理をしないと、再びもつとそれ以上大きな
災害が起るのではないかということを痛感して参りました。この点
請願も出ておることと思いまするから、
皆様方の御
考慮を願いたいと
思つていたのであります。それから
千葉県では二十五年度に
郷土博物館というようなものを建設して、
郷土の古い
文事化財を
一般に公開し、又
一般にその
考えを深める
事ように
努力したいと
考えておるようであります。その中の
一つとして我々見て参
つたのはあの
移能忠敬の古跡でありまするが、幸い
国庫補助によ
つて伊能忠敬の居宅は完全に修築を見たのでありますが、その中に
保存されておるいろいろ得難い
資料が非常に立込んだ、火災の虞れの多い
個人の蔵に蔵されておりまする。これを何とか完全な倉庫にして
保存したいということが
関係地方民の熱心な要望であ
つたのであります。現在の
予算と睨み合せて、到底今直ぐには
実現はむずかしいのじやないかと我々
考えて来たのであります。将来でき得るならばこういう
希望にも副うて得難い
資料を散逸、或いは焼失しないように、完全に
保存できるように
考えて
行つた方がいいのじやないかというふうに
考えて参
つたのであります。
以上で各県に共通した事柄及びその県における一、二の特異の例を申上げたのでありますが、両詳細なことはいろいろ
資料も
貰つて参つておりますので、
専門委員室でこれを取扱
つておりますから御高覧に供したいと思う次第であります。以上を以て今回の
関東方面の
視察報告を終ることにいたします。