○
政府委員(
山添利作君) その要綱につきましては、只今の
提案理由に書いてあることで盡きおりまするので、もう一つ別に「
自作農創設特別措置法の一部を改正する等の
法律案における
改正事項」というのが配つてございます。これにつきまして極く簡單に御説明を申上げた方がいいと思います。この活版になりました「
自作農創設特別措置法の一部を改正する等の
法律案要綱」の第一の一に「此の
改正法律施行の日以後」とありますのが、
法律案では今年の二月十一日とこういうふうになつております。その点だけ変わつた点でございます。ここにあります要綱につきましては、以上申上げましたように全部が
提案理由の説明の中に出ておりまするので、「
自作農創設特別措置法の一部を改正する等の
法律案における
改正事項」というのを御説明いたします。
第一は、
一定期日後における政府による農地の
強制買收及び
認定買收の特例と書きましたのはこれは、本年の二月十一以後におきまして、
自作農創設特別措置法第三條に該当するような
不在地主の
小作地、
不在地主の
小作地と言うとおかしいのですが、
不在地主になりましたとか、或いは
小作地が
都府県平均一町歩を超えました場合の、超えた部分というようなものを政府が買收するということをしない。でありまするから、事実上、
自作農創設特別措置法の運用は買收洩れのものを除きまして、今後新たに生じまするいろいろな農地の事情の変化についてはこれを適用していかない、こういう即ち一時期を劃する、こういうのであります。これは牧野におきましても同様でございます。この事柄は、第三條の但し書をつけておるわけでありまして、この
農地改正法案新旧対照の第三條第一項の但し書を御覧下さいますと、こういうことになるのであります。それから
認定買收の特例と申しまするのは、第三條五項の但し書にございまして、耕作の業務が不適正であるというような認定の下に、政府が
強制買收する規定がございまするが、これは五年も六年も先に経つて、お前のやつているところは不適正じやないか、こういうのでは問題がこんがらかつてしまいますので、現に二月十一日以前の状態で不適正であるというその状態が、依然として将來も続いておるというときにのみ、この第三條第五項が適用になるという意味であります。
それから二番目の
農地買収に附帶して買收する牧野、宅地又は建物について、その買收の申請の期日の制限、これは第十五條でございまして、この第十五條の但し書に、昭和二十五年六月二十旧までに政府が買收すべき旨の申請があつたものに限つて買收する、こういうので期限を付けまして、それ以後におきましては、こういうことをやらないというわけであります。
それから第三番目の
交換分合により生ずる
交換差金の徴収、第二十六條の二といいまするのは、これは極めて簡單なことでありまして、現在政府が農地を売りました年賦金の取立てを
市町村にやつて貰う規定がございます。これは農地の政府の
売拂代金のみならず、政府が農地の
交換分合するそのときの
交換差金につきましても、
同様市町村に取扱つて貰う、こういう意味であります。
四番目は、政府にによる
農地先買制度の廃止、第二十八條であります。これは消えるのでございますか、この規定は、政府が農地を売渡した、ところが売渡した人は、これを
自作農目的に共まして、自分で自作を止めよう、百姓を止めようというときには、政府がこれを買戻しまして、そして又、次の
自作農になるべき人に売渡すという規定でありましたのを廃止をいたしました。これは廃止のしつ放しかと申しますると、実はそうではないのでありまして、
農地調整法の方に規定を設けまして、このような場合におきましては、
市町村農地委員会、今度の制度によりますると、
市町村の
農業委員会におきまして
強制移転の計画を立てる、その
市町村の
農地委員会の立てました計画に
従つて、元の
所有者から新たなる
耕作者に土地が強制的に移転されて行く、即ち政府が中に入るという、介入することだけを除いたのであります。実質的には、こういう制度が、別の形で残るわけであります。
それから五番目の
未墾地の
買收対価の基準、第三十一條第三項であります。これは
中央農地委員会というのが法文の上に顏を出したということでありまして従來も時価を参酌してこれを定めるということになつておりましたが、
当該土地の
近傍類似の農地を参酌し、土地以外のものにあつては、時価を参酌するということになつておつたのでございまするが、これを要するに
中央農地委員会というものを表に出したのでありまして、これは現在でも
中央農地委員会が、そういう基準を定めておりました。内容的には変更はございません。
それから、六番目の
一定期日後における牧野の
強制買收及び
認定買收の特例、第四十條の二。この事柄は、先に農地について申上げましたのと同様でありまして、今年の二月十一日以後、
自作農創設特別措置によりまして政府が買收すべきものというような牧野が、
小作牧野等が生じましても、これは政府が買收をしないというのであります。
それから第七番目は、
未墾地の
売渡し計画についての公告、縦覧、
異議申立及び訴願の
手続等についての規定でありまして、第四十一條第二項であります。これは従來と内容的に変つたことはございませんのでありまするが、法律の
準用規定等の手続上の関係で直したのであります。
八番目に、
未墾地牧野の
売渡対価の概定、第四十一條の四、これも内容的には従來と何ら変りはございません。今までは、この條文、
未墾地等の対価の関係は、規則等で規定しておりましたのでありますが、これは当然法律に規定すべきであるというので、これも実質的には変つてはおりませんが規定の整理であります。この八の
未墾地牧野の
売渡対価の規定というのは、結局原則的に申しまして、政府が買いました値段そのままで売る、若しくは政府の所有でありましたものを、
保管転換をいたしまして、
開拓財産等として売るということであれば、その地における類地の価格を
保管転換の価格とし、それによるという
原価主義でございます。ただ問題は、四十一條の四の一番しまいに、
未墾地を、政府若しくは
農地開発営団が、すでに自分の直営の開墾で開墾して農地にした、これを売拂う場合には、当然近傍の類似の農地の価格による、こういうわけであります。從來と何ら変つたことはございません。
九番目は、未
墾地先買の規定であります。普通の農地におきましては、政府が賣渡した人について、自作をやめようとするときに、政府が先ず買戻しをして、次の人に売つて行くという規定を廃止したのでありますが、
未墾地につきましては、その規定を在置をいたすというのでありまして、これは
未墾地の場合におきましては、政府は現在の方針といたしまして、
開墾完了を待たずに
所有地のまま、若し計画がはつきり立ちますれば、できるだけ早く土地の
所有権を
開拓者の方に移すという方針を採つております。今まで場合によりましては、土地は買受けたけれども開墾がよく進まない、若しくは極端な場合には開墾せんというような場合が起るわけでありまして、そういう場合には、結局
未墾地のままになつておりまするので、これを次の
入植希望者等にいきなり売り渡すということにしないで、政府が買戻しをして新しい
開拓者に売り渡す、これはどういうことが起るかと申しますると、政府が中に入る制度を廃止いたしますと、
低利資金の貸付或いは
斡旋等土地を買受ける人に対する
資金的措置はこの法律で規定はしておりまするけれども、何といつもそれは未だ具体的に現在定まつておりませんので、近い機会にその具体化を図りたいと思つておりまするが、それよりも、現在政府が買つて売るという制度になりますれば年賦の期間も二十四年、それから利子は将来変るかも知れませんが、現在では三分ニ厘乏いろ非常に有利な條件でございまするので、
開拓者の保護或いは開墾の助成という意味から考えまするときにについては
先買制度をそのまま存置する、そのためにはいままでは先買の制度を準用しておりますけれども、先のを削りましたからここに規定をするというのであります。
それから第十番目の政府の所有の土地及び物件の開放のための
所管換、及び
所管換の
改正規定第四十三條の二及第四十三條の三、この規定におきましても内容的にはいままでと変つたことはございません。政令で規定してありましたのをかような仕事は、仕事と言いまするか、事項は、法律に書く方が正しいという意味におきまして法律の新しい規定といたしまして、第四十三條の三というその第五項でありまして、
河川敷等で、これを農地に
使つた方がよろしいという場合におきまして、その
河川敷等につきまして今まで府県でありますとか、
地方公共団体が管理の費用を負担しておつたものがございます。その場合にその土地を政府が
保管転換を受けて売つてしまう、
市町村がなんらの関係がないということでは工合が悪いのでありまして、この場合におきまして
市町村が負担しておる費用の範囲内において土地の対價を都道府縣等に交付するというのでありまして、これは実際的に申しますれば、河川敷その他の土地を農地にして、
開拓者と言いますか、
増反者でもよろしうございますか、売ります場合には、その代金を
都道府県等に交付するという規定であります。
それから十一番目は買收又は買取によつて取得した國有の土地及び物件で
農林大臣が
自作農創設の用に供しないと認めたものの売渡の特例第四十六條の二であります。これは
普通農地につきましても、又開拓の用に供するために取得しました
未墾地につきましても、生ずるわけでありまするが、これをやむを得ない事情によりまして、鉄道の敷地にした方がよろしいか、
道路敷地にした方がよろしいとか、或いは又学校の
敷地等にどうしてもそれを充てなければならん、こいいうふうに農地としての用途を変更する、
開墾用地でございますければ開拓以外の用に供するという場合が生ずるのでありまして、かような場合に如何に措置するか、この場合におきましては、これの手にある場合の規定でございまするがこのような場合におきましては、元の
所有者にこれを引渡すというのでございます。これは
自作農創設特別措置法によりまする政府の買收は、
自作農の創設という特別の限られたるもののために取得したのでございまするから、その目的を達することが不可能であるというときには、結局その全体の行爲を元に返すというのでありまして、從前の
所有者又は
一般承継人にその取得の対価に相当する額で元の額で賣渡をする、尤もこのような関係を認めまするのには、永久ということはこれは不適当、煩雑に過ぎるのでありまして、政府が土地の買收後十年を経過いたしましたときには、これは別に
農林大臣において適当にこれを措置できる、かようにいたしたのであります。こういう場合にそれでは、実際上どういう取扱になるのかと申しますれば、現にその土地の上で耕作をしておる人等につきましては、これは
作離料を貰うわけでありまして、それから元の
所有者は恐らくそのような場合におきましては、実際問題として
相当土地が高く売れまするので、その土地が高く売れた価格の中から
作離料を拂つて、尚それ以上の増加するような点ある部分は旧
所有者の手に入るこういうことであります。でありますから、
用途変更をいたしましたときに
相当土地の価格が増加する、それを元の
所有者と並びに現にその土地の上に
耕作等をやつておるというような人の間で適正なる配分、価格上の配分がされる、こういうわけであります。
それからその次は
農地調整法関係でありまして、第一番目はこれは
自作地小作地、
自作採草地、
小作採草地、
自作放牧地、
小作放牧地の定義でありますが、この定義につきましては、新らしいことはございません。
自作農創設特別措置法等において定義せられておる通りでございます。ただ後の條文を書き易くするため、分り易くするためにこういう定義を掲げたのであります。
二番目は農地、
採草地及び
放牧地の
移動統制の規定の明確化、第四條であります。第四條は、もともとこういう規定は、たしか昨年の春頃だつたと思いまするが、最近における
農地調整法の改正でこの第四條を入れたのでございまするが、その趣旨は前と現在と変つておりませんが、規定の仕方を明確にするというために若干字句を変えたのでありまして、即ち第四條第二項に但し書が入つておるのでありますが、農地、
採草地又は
放牧地に関する
所有権その他の権利の設定又は移転について、原則的に第二項一号からずつと六号までの、かような場合には承認をしないということを規定しておるのでありまするが、ただこの場合に、このような規定はこういう場合には当嵌まらない、これは当り前のことが書いてあるわけでありますが、農地、
採草地又は
放牧地を本来それら要求以外の用に供するための権利の設定、即ち農地を潰して宅地にしよう、しなければならんというような場合には、当然一号乃至六号の規定は当嵌まらないのでありまして、それは別の規定で、農地の
改廃統制という規定で処置をされるのでありまして、この規定には関係がない、当り前のことを法律ですから書いたわけであります。その
外いろいろ所有権その他の権利の中で抵当権の設定ということも亦別に承認をするとかせんかということを別に掲げる必要はない、こういうのが但し書の意味でありまして、この第一号は「
小作地、
小作採草地又は
小作放牧地、小作農以外ノ
者ガ当該土地ノ
所有権ヲ
取得セントスル場合」これは「
小作放牧地」となつておりますが、これはミスプリントでありまして、「
小作放牧地小作農以外ノ者ガ……」というのであります。これは前にもこういう同様の規定があるのでありますが、これを明確にいたしました。併しながらこの場合、即ち土地というものは元來自作化して行くもので、その土地の
耕作者が取得して行くというわけでありますが、併し自分で欲しくない、こういう場合には、無理に押付けるわけにも行かない。
従つて又その場合、全然土地の
所有権に対して権利の移動を認めないということも、これ亦不当でございますので、事情止むを得んという場合は
市町村農地委員会が、これを証明するということによりまして他の人に
所有権が移つてもこれは止むを得ない、こういう規定でございます。
それからその次の「
前項ニ掲グル権利ヲ
取得セントスル者ガ」、これも前からある規定でございまして、畢竟第四條は大体前からある規定でございますが、これは今後における
農地調整法及び
自作農創設特別措置法によつて達成せられた
自作農の維持という事柄を規制して行く根本の規定になると思います。
それから第七号を新たに加えたのでありますが、これは政府が一度
自作農創設特別措置法等によりまして売渡した土地即ち言い換えますと、この
農地改革に因縁のある土地でございますが、これらの土地につきましては、
農地委員会が個人と個人の間における
所有権の
移転等をそのまま認めない、これは相対づくはいけない、
農地委員会が、独自と言うとおかしいですが、
農地委員会が計画を定めるところによつて移転して行く、こういう意味が、第七号であります。
三番目は
一定期日域後新たに生じた
不在地主及び在村地主の
法定制限面積を超える
小作地、
小作採草地及び
小作放牧地の
強制譲渡について沢山のことが書いてあります。この規定は先程申しましたように、
自作農創設特別措置法におきまして、今後生ずる
不在地主とか、平均一町歩を超える
小作地について
政府買收を行わない、それに代うるのに、政府はそこに介入しませんけれども、
農地委員会においてかような場合におきましては土地の
移転計画を立てる、その
移転計画に
從つて土地が譲渡されるという規定をずらつと書いてあるのでありまして、これが第五條ノ二から第五條の二十までの規定であります。先ずそのように、新しく誰か都市に農家の人が引越して
不在地主になつた。かような事実がございます場合におきまして、
市町村農地委員会がそれを公告する。誰それの土地で
所有者は誰というような必要な事項を公告するわけでありまして、そうして二ケ月以内にその土地について耕作をしておる人、その他の
関係者が買受の申込をするわけであります。その買受の申込を斟酌いたしまして
市町村農地委員会が
移転計画を立て、それについて又異議の
申立等があればやつて貰う。かような手続が済みました場合に
都道府県農地委員会に持つて行き、
都道府県農地委員会がよろしいということであれば知事が令書を出す。この
強制移転の手続は現在まで行われました
自作農創設特別措置法による農地の買收及び売渡の手続と何ら変りはございませんのであります。ただその間に政府が介入するということがないだけであります。ただ政府が介入しないことによつて生じます差違はどういうところにあるかと申しますると、第一に、政府は先ずこういう場合に
農地証券を発行しない。ですから現金で決済するということになるわけです。その土地を買受ける人には政府が
低利資金の供給について措置を講ずる、こういうわけです。そういうところが違うのでありまして、尤も
都道府県農地委員会においてよろしいという議決をいたしましても、今度は政府が中に入つておりませんから、やはりその値段、対價を拂つて貰わんことには、やはり完全に
所有権を移転さすわけには行かないのでありまして、
従つてその令書の中には対価並びに
対価受理の方法等が規定してございますが、そこに書いてあります期限までに対価を支拂わなければならん、若し支拂わなければ、これは
令書そのものは効力を失う。
但し
移転計画そのものは効力を失うわけではないので、もう一遍適当な時に令書を出し直せばいいわけです。併しどうもこれは金を拂う能力がないのだ、或いは買う意思がない、こういうようなことがはつきりしますれば、これは元の
計画そのものも無効になる。まあこういう建て方をいたしております。條文の数は多いのでございまするけれども、その
手続規定等が多いのでありまして、現在やつておりますることとは手続上の関係においては大して変更はございません。尚それではそういう
強制移転をなすべきような
小作地等が生じた場合に、
市町村農地委員会が怠けておつたらどうなるかという問題がございますが、この場合には
関係者の方から
移転計画を立てるような、請求を
市町村の
農地委員会に出すわけで、
市町村農地委員会が動かなければ
都道府県農地委員会において立てろという指示をする。その指示にも従わなければまあ代執行をする。こういうことに相成るわけであります。
それから尚買手がない場合にはどうなるのか、これは農地につきまして、本来土地は買いたいけれども、ちよつと手元の都合があるので見送りたいという場合があり得ると思うのです。でそのような場合におきましては、
市町村農地委員会は政府を
買受人と立て計画を立てる。で政府が一応それを買つて置きまして、相手方が、相手方と言いますか、
耕作者の方で買いたいというときにそれらの方に売渡す。まあ言い換えてみれば政府が一時金融をしておる。
自作農創設の用に供するための土地を一時取得しているというふうに扱いたいと考えておるのであります。そういう規定になつております。尚非常に生産力の低い
土地等につきましては、これは
強制移転の対象にしない、切換畑でありますとか、非常に
経済的価値の少い、
自作農創設ということに適切でないような土地は問題外に置く。そのような事柄は現在の
自作農創設特別措置法におけると同様でございます。でまあ大体
自作農創設特別措置法と同じような扱いで、ただ政府がその中に人らんというようなところに違いがあるのでございます。
四番目は、
自作農創設及び維持に必要な資金の貸付及び斡旋をなし得る規定、第五條ノ二十一でありますが、その一号は「耕作ノ業務ヲ
営ム者が農地ノ
所有権ヲ取得スルニ必要ナル資金」即ち
自作農創設資金であります。二番目は「耕作ノ業務ヲ営ム者が農地ヲ相続スルに必要ナル資金」これはまあ現在は実際的の問題はございませんのでありますが、農地は御承知のように、実際問題としては一子相続がされておるのです。新民法で均分相続、そういうことが設けられましても、事実は一子相続になつておるのでありますが、そうすれば他の共同相続人に補償金を拂う必要があるわけです。そういうことは、その場合に必要な資金を要求する、現在実際は他の共同相続人が相続権を放棄するという形で処理されておるのが実際でありますがまあ段々そういうことがいいとも言えないし、段々そういうことも変つて来るであろうと思いますので、ここに相続の場合の資金についても掲げたわけであります。第三番目は、「耕作ノ業務ヲ
営ム者ガ農地ノ
所有権ヲ維持スルニ必要ナル資金」即ち維持の資金でありまして、これらの場合に政府は資金の貸付又は斡旋をなすことができる、こういう規定を明確にしたのであります。元來
農地改革前に引続いて長い間政府が農地政策として行なつておりましたのは、まあ小作調停の制度は別といたしまして、いわゆる
自作農創設維持金融措置によるところの
自作農創設維持でございます。
農地改革による成果を維持しまするためには、今後こういう金融措置が中心的な問題になるわけであります。ただ現在昭和二十五年度予算におきましては、これに関する具体的な措置は講ぜられておりません。関係方面等におきましても余程問題の重要性に鑑みて愼重なる檢討はされたのでございまするけれども、何しろドッジ・プリンシプルの下におきまして、又大規模に土地を
農地改革によりまして移転いたしました直後でございまするので、その需要等もそう多くはない、こういう二つの理由から具体的な措置は決められておりませんのでありまして、できるだけ早い機会にこういう金融上の具体的措置を講じたい。ただ法律といたしましては、まあ政策の目玉の一つでございまするので、ここに掲げたのでございます。
次は五日番、許可無しに農地を潰廃した場合
農林大臣又は都道府県知事の潰廃禁止又は停止処分(第六條)であります。第六條の第五項で、
農林大臣の許可を得ずして農地を潰廃した場合には、予め
農林大臣又は都道府県知事が、そのような農地について耕作以外の用に供することを禁止するとか、或いはこれを潰廃しようというような場合に、それを停止するところの必要な措置を命ずることができる、このいう規定を入れたのであります。結局これは実際に如何に動くかということは別問題といたしまして、余りに低い罰則だけでは、なかなか法規の励行が困難であるというような場合も予想せられまするので、從つて法規を励行するという建前におきましてこの第五項を入れたのであります。この運用は運用として適正を期したいというつもりであります。
第六番目は
農地改革の基準及び統制決定法式の変更、第六條の二でありますが、農地の價格にいたしましても、それから小作料にいたしましても、
農地調整法におきましては、一定の時点を掴まえて、それでストップをするというのが建前と言いまするか、そういう建前で規定が設けられてあつたのでありまするが、漸く
農地改革の一応の完了を見ました機会におきまして、又その後非常に経済情勢も違つて参りました機会におきまして、その規定を改めまして、これはストップ価格という考え方でなしに、適正價格を設定して行くという、こういう思想に変えたのでありまして、この農地価格を設定する目的は農地を取得する
自作農の経営を安定せしむることを旨として、農地価格というものが作られなければならん、農地價格が高いということでありますれば、折角それを取得いたしましても、経営が長く続き得ない、非常に危なつかしいというので、これは土地を取得した
自作農の経営を安定せしむることを精神として、農地価格を決めとるいう、その決め方は、
農林大臣が
中央農地委員会に諮問をして、一定の基準を定めるその基準に
従つて、
市町村の方では、これを地方長官、都道府県知事の認可を受けて、一筆ごとに価格を定めるという、こういうやり方でございます。基準は結局どういうことにいたしまするか、今後研究をいたしますわけでありまするが、結局現在できておりまする賃貸價格等を基準にしに、その何倍とか何とかいうようなことを基準のべースにいたしましてその基準の一定の又上下の幅の中で、
市町村農地委員会が、それぞれの各筆について価格を決める、こういうことに相成るわけであります。これは丁度地方税法におきまして、これが課税の標準価格というものがございまして、これは毎年御承知のように一月一日に決めることになるわけであります。それと大体長い先、シヤウプ勧告によりますると、昭和二十七年十月一日から農地の公定價格と課税標準は一致するわけでありますが、それまでは一致をしないのでありまするが、ここに又観念的と言いまするか、額は違いましても、観念的、手続的には同じようなことになるわけでございます。尚これにつきましては、第九項に永小作権、地上権等がありまして、それに価格があるという場合には、これは農地の価格に本来含まれておる、まあこういうようなことを明らかにしておるのであります。
それから七番目の小作料の決定基準及び統制方式の変更、第九條ノ三でございますが、どれも或る時点でストップするという規定の仕方でありましたのを、小作農の経営を安定せしむることを旨として云々ということで、経済情勢に応じて適当なる小作料額を決めるというわけであります。この規定につきましては第九條ノ八というのがありまするが、小作料について絶対的な最高制限を規定したのが第九條ノ八でありまして、これの範囲内で第九條ノ三が動くということでありまして、尚不作等の場合における減免というようなことにつきましては、これをそういう観念を削除いたしております。これは金納にいたしましたこと、或いは農業災害補償法が今段々整備されつつある、こういう両面の理由から最近やつておりませんけれども、減免ということは考の中に入れておりません。
八番目は、農地の利用上必要な農業施設等に関する賃借権の設定、第十四條ノ九であります。これは
自作農創特別措置法におきましては、農地を受けた人がその農地を利用するため必要な農業用施設等の買受けという規定があつたのでございますが、これはなかなか運用上といたしまして価格問題その他もございまする関係上、買受けという制度に代うるのに、ここに第十四條ノ九として、賃借権を強制的に設定する、こういう規定を設けたのであります。且つこれを或る程度広い規定にいたしたのであります。これが第十四條ノ九であります。
それから九番目は、
市町村農地委員会は
市町村農業委員会に改組、第十五條ノ二であります。これは今回は二階條になつたのであります。御承知のように現在の制度、これもたつた一年きり実は施行をしないのでありますが、これは三階層になつているのでありまして、一号、即ち小作的なものとしては、二反歩以上を借受けている人、それから二号は二反歩以上の
小作地を人に貸している者、それから三番目が前二号に該当しない者、こういう分け方をしたのでございますが、今回におきましては、
農地委員会を
農業委員会に変えて、即ち農業全般のことを取扱う
耕作者の、……
耕作者と言いましても、小作という意味ではありません、耕作する農業者の
委員会ということにいたしました。元來階層別の選挙がいいのか、そういうことで選挙がよろしいのかということにつきましては、当
委員会におきましてもしばしばこの御意見を承つているのでありまするが、昨年十月マツカーサー元帥が
農地改革に関しまして内閣総理大臣宛の書簡の形で声明を発表せられました。その中には適当なる
農地委員会という、
農地委員会と言いますか、適当なる
委員会という言葉が使つてありました。それを天然資源局のウイリアムソン農業課長が註釈をされたのにおきましては、十分なる小作農の利益が代表されている
委員会、こういうふうに書いてあるのでありまして、そこで一号が小作者及び小作的な人でありまして、「其ノ耕作ノ業務ヲ営ム
小作地ノ面積ガ自作地ノ面積ヲ超ユル者」、即ち半分以上は
小作地であるという從來からのいわゆる小作の者、それから(ロ)の方が、「二反歩ヲ超ユル面積ノ
小作地ニ就キ耕作ノ業務ヲ」営む者、即ちこの
現行制度と同じでありまするが、併し非常に
経営規模の大きい人はこれを小作的と見ることはできませんで、これを
農林大臣が都府県別に定むる面積を超えない者即ち平均一町歩未満、即ち大きな農家でなくて、中小の農家であつて、二反歩以上耕作しておる。これを一まとめにいたしまして、一号とする。この人数は五名、全員十五名中五名であります。
実際のこれらの、(イ)及び(ロ)の合計が全農家の何%を占めておるかということにつきましては、大体この前、この前、と言いまするとおかしいのでありますが、現在の一号と大した差違はなかろうと思います。即ち約二割強程度に考えていいと思うのであります。併し苟くも或る一定のグループの利益を代表するということのためには余り小人数でも目的を達しませんので、これを五名ということにいたしたのでありまして、約三割相当になつております。それから、その他の人を二号としまして十名であります。今回は
農業委員会という性格に鑑みまして、一反歩以上耕作しておる人が選挙権及び被選挙権の資格になつております。單なる所有ということでは選挙権、被選挙権がないということになつております。尚、年齢二十以上の家族、常時農業に従事しておる者、こういう人が選挙権等を持つておりますことは従來と変りはございません。あと選挙の規定が改正になつておりまするが、これは從來とそう変つた点はないのでありまして、ただ從来は地方の準用條文といたしましては、ちよつと不必要な細かい、実際に適せないようなことまで準用しておりましたのを直してあるわけであります。
十一番目は選挙規定の整備、これは今申上げました通りであります。それから何かこの附録というところで、数式が書いてございますが、これはこういうことなのでありまして、農地を政府から買受けた人が自作を止め、これを他に売る場合であります。ところが、まあ農地の公定價格も、改訂になる、その間買受けた價格と農地の價格とが非常に差が生じまする場合に、その差額をそのまま農地を買受けた人が得てしまうということは、これは公正の原則に合わない。そこで十年も経つてしまいますれば、こういうことは適用しないのでありまするが、十年以内の間でありまして、政府から土地を買受けて五年経つた、そこで自作を止める。ところが買受けた価格と売渡の価格とが、仮に五千円の差があつたといたしますれば、十年中五年持つておつたというのであればその十分の五、即ち二千五百円、二千五百円の増加分は農地の
所有者が取得をすることになりまするが、あとの二千五百円は政府に拂つて貰う、こういう規定でございます。