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1950-03-29 第7回国会 参議院 農林委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十九日(水曜日)    午後二時二分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○松くい虫等その他の森林病害虫の駆  除予防に関する法律案   —————————————
  2. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 只今から農林委員会を開会いたします。本日は松くい虫等その他の森林病害虫駆除予防に関する法律案議題にいたします、最初に坂本政務次官から提案理由を御説明願いたいと思います。それでは坂本政務次官
  3. 坂本實

    政府委員坂本實君) それでは只今議題となりました松くい虫等その他の森林病害虫駆除予防に関する法律提案理由を御説明申上げます。普通に松くい虫という名で総称されている穿孔虫類に属する森林害虫が近畿、九州の一角に発生をみたのは、すでに二十年も前のことでありますが、これが戰時から戰後にかけて急速な勢いで蔓延いたしまして、今や殆んど全国の松林、名勝旧蹟の松、海辺の防風林など松という松を非常な繁殖力をもつて喰い荒しつつありますことは、我が国の森林生産に重大な支障を及ぼすものとして、誠に憂慮に堪えないところであります。  この松くい虫は、戰時戰後における濫伐により、森林環境が激変したのに伴つて、俄かに大量発生を見たのでありまして、これが絶滅を期するためには、この際相当強力な措置徹底的に講ずる必要があるのであります。従来相当熱心に実施されていた駆除事業が十分な効果も挙げ得なかつたのは、害虫発生早期発見被害状況調査、それに基く防除計画の樹立、その実施のための措置等の一聯の組織がはつきりしていなかつたこと、森林法に基く害虫駆除法規自体にも不備欠陷があつたため行政庁が有効適切な処分をなし得ず、森林所有者も亦半ば災難と諦め、十分な努力を惜んだこと等にあつたのでありますから、この際防除実施を促進するための制度及び組織を確立することが急務であります。これらの点に鑑みまして、新たに本法提案する次第であります。  次に本法内容を極く簡單に説明申上げます。第一に本法適用範囲であります。従来森林害虫防除は、森林法第八十條及び第八十一條に基いて行われていたのでありまして、駆除対象森林に限られていたのでありますが、松くい虫等防除徹底を期するためには、森林のみならず、街路樹、公園の樹木及び土地から分離した伐採木等に対しても適用する必要がありますので、対象森林樹木及び伐採木等に拡げるとともに、それぞれに対する駆除措置内容を明確にいたしたのであります。  第二に、政府に行う防除措置であります。従来森林害虫防除は、都道府県知事がそれぞれ実情に応じてそれぞれの方法を講じていたのでありますが、森林害虫種類により或いはその害虫発生状況によつては国全体の和益と各都道府県のそれぞれの利益とは必ずしも一致しない場合があるので、そういう場合には、農林大臣が必要な防除措置を講じ得るようにしたのであります。  第三に、農林大臣又は都道府県知事の行う防除措置に対する森林所有者等救済制度であります。防除のため必要な命令を受けた者のために、その命令に対する不服を申立てる機会を與えるとともに、防除のため必要な命令又は処分により損失を受けた者に対し、一定の基準による補償金を交付することとしたのであります。  以上が松くい虫等その他の森林病害虫駆除予防に関する法律内容であります。何とぞ御審議の上速かに可決あらんことをお願いいたします。
  4. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 御質疑がありますればお願いします。
  5. 北村一男

    北村一男君 松くい虫の被害はこの表を見ますと、北海道、それから石川県でございますかなんかが非常に被害が大きいのでありまして、私共も憂慮しておるのでありますが、只今の進歩しました学問とか、いろいろの技術の点で剥皮燒却以外にいい方法がないのでありますかどうか。それから私は新潟県だけ眼に付けておるのですが、割合に二十四年度の被害を見ますと、面積では少いに拘らず、本数とか材積が多いように見受けるのでございますが、これは比較的まだ被害少い県の方であつて割合に大きな県が沢山あるということで、被害面積に較べて本数は別でありますが、材積が多いのでありますが、そういう点を承つて置きたいのと、それからこの松くい虫に対しては、曾て林野庁では長野以北には入れたくないという考で、折角いろいろ御努力をなさるというようなことを承つたことがございますのですが、この長野を通り越して新潟県などにも来ておるのでありますが、そういう点に対して、どんな措置をお採りになつたことがございますか。これを一つ承りたいのであります。
  6. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 被害防除方法でございますが、伐倒剥皮燒却法の外に、燒殺法と申しまして、これは丸太を燒く方法でございますが、十分間ぐらい燒きまして外側が燒ける程度に燒きますと、大体目的を達するという方法であります。それから水に漬けまして、三週間くらい置きますと、十分駆除目的を達し、殺すことができるという方法がございます。それから日射を利用する方法。これは気温が三十度以上のような場合、而も太陽の角度が四十五度ぐらいの、そうして数日間やつて置けばよろしいという方法もあります。それから被害を逓減する方法といたしまして、餌木燒却言つて餌木森林内に置きまして、そこに虫を集めて挽くという方法があります。その外に薬剤を用いる方法がありますけれども、これは極めて経費が嵩みまして、少数のものでありますれば実行も可能で、例えば庭木であるというようなものでありますれば、実行もできるのでありますけれども、何分にも大面積森林になりますと、経費が嵩みまして、なかなか面倒なことであります。只今実行いたしておりません。やはりアメリカから害虫の專門家が見えておりまして、いろいろ御研究を願つたのでありますけれども、その方の結論といたしましても、只今は伐倒剥皮燒却法が最も有効であり、而も実行し易い方法だという結論を得まして、只今その方法を採用いたしておるのであります。それから以前東北或いは北陸の方面にはできるだけこの害虫を入れまいといたしまして、各府県にも嚴重に注意をいたして、防除に努めたのでございますけれども、何分にも害虫の勢が非常に盛んになつて参りまして、遂に早期発見でその区域を極めて小範囲で留めたいという私共の希望が到達されなかつたような状況で、只今ではお話のように北海道以外には極めて少数でありまして、約面積にいたしまして二町歩ぐらいでありますけれども、やはりこの発生を見ております。ただこれはできるだけ小範囲に留めますように、県を督励いたしまして防除に努めている次第でございます。  それから面積が小さい割合材積が多いというお話でありますが一調査機構が非常に只今不十分でありますので、面積割合に單木的になつておりますので、材積だけ上つておるというような状況でございます。
  7. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) これは国庫補償の点ですね、この国庫補償の点をもう少し詳しく説明を伺つて置きたいと思つておりますが、その前に第三條の二項ですね。この二項はどういう意味なんですか、「予算金額をこえない範囲内においてしなければならない。」というのは、その範囲内で命令をして制限をすると、こういうことですか。
  8. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) そういう意味であります。
  9. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) そうすると早期徹底的に命令をしようと思つても、予算というものがなければ、それはできないと、こういうことになるわけですか、命令は。
  10. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) そういうことになります。
  11. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは法律意味ないのではないのですか、予算は一体どのくらいになりますか。
  12. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 二億四千四百万円です。
  13. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それで何町歩できるのですか、その予算で行けば。
  14. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) お手許にお配りしておる資料の中にありまするように、これは資料の四ページの2というところにあるのでございますが、二億四千四百万の経費で、大体石当たり損失補償額が平均して百七十円と考えておりますが、これに対しまして、国が発動いたします場合には、これは補償するのでありますが、府県がやります場合におきましては、大体その四割を国から補償すると、石当り六十八円というものが国から交付される額になるわけです。そういたしますれば、実は国が直接発動いたしまする場合には、現在これに必要なる機構十分整備をいたしておりませんので、これはでき得る限り、絶対必要止むを得ない最少限度にして行きたい、かように存じております。従いましてこれを府県の発動する場合だけに計算をいたして参りますると、三百十七万石というものがこれによりまして補償され得る額になつて来るわけであります。
  15. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) そうすると、例えば二十三年度でいうと、四百六十万石というものが被害になるのですが、その場合に府県だけでやつてもその四分の三しかできない。恐らく二十四年、二十五年はもつと被害が大きいということで、こういう法律ができたんだろうと思うのですけれども、その点はどうなんですか。
  16. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 私共の見通しといたしましては、二十三年を頂上にいたしまして二十四年度は幾分五%程増加いたしておりまするが、二十五年度はずつと下るのではないかというふうな考を持つております。尚松のまとまつた相当大きな蓄積を持つております所は殆んど全部被害を受けまして、これからは割合に松の少い所になつておるのです。喰われるものは全部喰われたというような形になつております。(笑声)少くなるだろうと考えております。(「燒跡の始末ですね」と呼ぶ者あり)
  17. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 ちよつとお尋ねして置きますが、この被害調書を見ますと、全然被害のないのは北海道だけだ。御承知のように北海道には内地の黒松、赤松という松は街路樹に少しありますのと、庭園に少しあるのじやないかと思いますが、北海道蝦夷松とか椴松というものは虫に喰われる虞れがないのかどうか……。
  18. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) やはり多少害虫はつくと思います。まあ害虫がつくと言いますけれども、松くい虫とは種類が違うようでありますが、幸にして只今まで北海道方面では森林状態割合に健全でありますので、この害虫が勃発しておりません。先程提案理由にもございましたように、この松くい虫が湧きますのは、森林が弱りましたときに出て参るのでありまして、まだ北海道状態森林割合に健全でありますので、そういう心配はないのであります。
  19. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 そうすると、内地の松を喰つております害虫は、蝦夷松椴松には喰はないというわけじやないのですか。
  20. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 只今私共の承知いたしております範囲では喰わないようでございます。
  21. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 八條ですね、八條の二項の前段の方は「燒却措置を行うのに通常要すべき費用あとの方は「通常生ずべき損失額」とこうなつていて、前の方は燒く費用あとの方は燒かれたために生じた損失、こういうことなんですが、前段の燒くのに通常要すべき費用というのはどういう費用なんですか。
  22. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 当該地方労務事情、その他の普通通常要件下において、その燒却措置をするのに必要な費用、こういうような意味前段を考えているのでありますが、後段の「命令又は処分により通常生ずべき損失」と申しますのは、三号の命令の場合におきましては、結局これは松くい虫の附着している伐採木等の移動を制限されるのでありますから、従いましてこれによりまして、松くい虫を除去しなければならないということを、間接に強制されるわけであります。従いましてこれもここで言つておりますように、やはり燒却費用というようなものが、そのことによつて生ずる通常損失とかように考えております。  尚前條第二項のこの害虫防除員はく皮燒却等の処分によります損失につきましては、これはそういうことをされることによりまして、一応松くい虫等防除についての措置はやつて貰つて、それ以上処理者としてやることはないわけなのでありますが、場合によりましては、それによりまして樹質を非常に毀損するというふうなことも想定されますので、前條の第二項の場合もここに一応入れたわけであります。
  23. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) そうすると結局人夫賃みたいものですか。燒くに要した……。
  24. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) そういうわけでございますね。そういうもので換算したわけでございますね。
  25. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) こういう点はもつとはつきり説明して貰うといいと思うのですがね。そうでないとあとで問題を残すから……。專門員の方で事前に検討せられて、問題となるような事項があつたら、その点をこの際主張して貰うといいと思います。
  26. 永田龍之介

    專門員永田龍之介君) 專門員としてこの法律を見ました場合に、松の害虫駆除については、徹底的にやらなければならないということが第一條件だと思います。ところが徹底的にやるためには、国が直接責任を取つてやるのが建前で、一番効果的だというわけでありますが一実際問題として国がそれだけの組織を持ちませんために、止むを得ず都道府県知事にその行政措置を委任するという形を取つておるのであります。その点に私共としては何だか物足りない感じを持つております。ただ予算との関係上、国がやつた場合には全額国庫負担でやらなければならん。都道府県に委任した場合は国の経費は四割だけ、あと受益者である山林所有者地方庁負担するというのであります。国費は少くて済む。で実際問題としては、経費は同額だけはどうしたつて要るのですが、国費負担が少くなるという意味であります。それだけに徹底を欠くという心配があるのであります。実はこの問題については、天然資源局の方から強い要求があつて、そうしてその要求によりますと、国が責任を持つてやれということであつたのであります。が予算関係で止むを得ずこんな形を取つたのだと思われるのですが、この点だけが、私共としては若干この法律について物足りないと申しますか、そういうような感じを持つております。  第二の点は今申しましたように国がやる場合と、県がやる場合、それに山林所有者に取つて若干の経費負担に差違があるということ、及びこの法律罰則の所で、第十四條の第一号でありますが、「第三條第一項第四号に揚げる命令に違反した者」、これに対しては「一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する」。ということになつておるのでありますが、その第三條の第一項第一号、第二号に対する違反についての罰則が欠けておるので、この点は何か特別に理由があるように聞いておるのでありますが、この点この際更に明らかにして置いて頂いた方が結構かと思います。以上であります。
  27. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 林野庁の方で、今永田專門員の方から問題になつた点についての報告があつたのですが、それについての事情説明を一つして頂きたい。
  28. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 更に徹底的な松くい虫の駆除をやるべきではないかという御意見は、私共も至極同感でありまして、その点に関してしばしば関係方面とも、或いは予算関係とも折衝を重ねたのでございますけれども、遺憾ながら微力でありまして、この程度きり認められなかつたのであります。  それから第二の点の第三條の第一項第一号、第二号の点でありますが、森林には不在所有者相当割合を占めておるのであります。又相当面積所有者は地元に管理者を置いておるのでありますけれども、現状といたしましては、殆んど所有者がその村におりません。又管理者もいないような場合が少くないのでありまして、そのような所有者に対しまして、命令を受けても実行しない。そういうために罰を科すということは穏当でないのじやないかというような考え方からいたしまして、罰則から除いておるのであります。
  29. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 二番目の点の、国がやる場合と地方がやる場合に、所有者負担に区別があるというのはどういうことなんですか。
  30. 永田龍之介

    專門員永田龍之介君) それは国がやる場合は、全額国庫負担で国の経費でやつて、それから県がやる場合は受益者負担を掛ける。こういう意味なんです。
  31. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それは不公平は止むを得ないということですか。
  32. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) ちよつと只今質問をよく聽き取りませんで、大体推測してお答を申上げますが、国が三條一項の命令を出しました場合、それから県が五條一項の規定によりまして命令を出しました場合においても、損失補償に関しましては、同條第二項に書いてありまする範囲だけにおいて損失補償をするのであります。例えば三條の一号に謳つておりまするような伐倒、はく皮燒却、こういうふうなことを命令をいたしました場合におきましても、結局伐倒及び玉切の費用というふうなものに関しまする費用補償いたしませんで、はく皮及び燒却というふうなものについて要る費用について補償する。そういうふうな補償範囲については、国がやりまする場合におきましても、都道府県がやりまする場合においても、その範囲において食違いはないわけなんです。ただ都道府県がやりまする場合には、国の方から補助金が出る。従つて只今お話は、国がやる場合においては、要するにここで規定してあるところの損失補償額全額は国が出さなければならん。府県の場合は、府県の支出する損失補償額に対しまして国から四割の補助金が行く。従つて国経費としては、国が直接やる場合に比べて経費支出は四割で済む。こういう趣旨のお話のように思つております。
  33. 小川久義

    小川久義君 どうも僕はこの法律の出された根本が分らないように思うのですが、国が必要があつて松くいの防除をするならば、国が全額負担するのは当然だ。金を出すことになる。で今の御説明のように都道府県がやるどきは国は四億で済む。丁度人の褌で角力を取るようなことを考えるかということ。  それから補償の金にしましても切り倒すか、燒くか、皮剥くかしなければ駆除できない。そういう場合に六十円か六十何円かの金で済むという考え方も分らないし、千円くらいの時価だろうと思いますが、それを切詰めにして使用価値を低下さして、そうして六十何円かで我慢しろ、而もその国が出すべき費用地方庁が六割を負担して、国から四割しか貰えない。地方庁にはそういう財源がない。窮迫しておる地方財政にそういう支出する金はないと思う。如何にもずるい考え方で、当てがい扶持の金を出して置いて、全面的な絶大の効果を挙げんとするような考え方は納得できないと思う。あるだけの金しか出さない。都道府県命令するのは農林大臣命令するのですか、その点。又その命令を受けた場合は金がなくとも都道府県でやれということになれば、この法案を作ることが地方財政を苦しめることになると思うが、その点を重ねてお考え方をお伺いしたいと思います。
  34. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 只今の御質問でございまするが、これは都道府県は同時に都道府県としてその管内におきまする森林の経営を改善する、或いは森林に対する害虫駆除するというふうな行政は、当然都道府県自身の固有の事務としてやはりやつて行かなければならない責務があるとかように布ずるのであります。地方財政法建前におきまして、国家的業務については国が全額負担し、又国と地方公共団体とり共通業務については国が経費を分担する。こういうふうな規定がありまする外に、都道府県自身事務につきましても必要なる補助金を交付する、こういうふうな建前に相成つておるのであります。  この法律の裏付けとなつております経費関係についての構想は、その地方財政法で言つておりまする補助金であるとかように実は観念いたしておるのであります。従いまして都道府県が発動する場合には、これは本来国がやるべきものを都道府県に委任してやる、こういうふうな思想は採つておらないわけであります。併しながら国自身におきましても、害虫被害発生状況が顯著でありまして、国として当然責任を負わなければならない、こういうふうな條件の熟しておりまする所につきましては、国自身がこれについて必要なる機構整備してやつて行かなければならないということは、これは当然のことであるのでありますが、これに関しましては予算関係もございまするので、今後我々としましては、漸次そういうふうな方向に持つて行くように機構整備その他を推進して参りたいと、かように存じております。
  35. 小川久義

    小川久義君 この予算関係ということなんだが、事業に対する予算であつて大巾に事業をやらんとしても予算の枠に縛られてやれんということは納得できないので、農林関係法案はいつ見てもそんなので、間口だけを拡げて金のない計画があつたり、これにしてもそうなんで、この金のあるだけでやるならば、殊更先程長官の御説明にもあつた通り、松くい虫は下火になつておる、去年は最高まで行つた、これから段々減少するのだという見込みである。こういうときに殊更こういう法案を設けてやる必要はないじやないか。それで強化されるなら要るだけの金を予算に見るのは当然であつて予算と逆な関係で金を決めて、その金でやれ、あとは如何に防除しても金は渡らない。これじや徹底しないです。必要の経費だけは見てどんどんやるというのでなければいけないと思うのですが、その点どうですか、これで徹底する見込みですか、下火なつたものに対して、殊更この法案作つてまでもやる必要はどこにあるのか、その二つについてお伺いしたいと思います。
  36. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 予算制約下におきまして防除命令を出すことにつきまして、御批判を頂いたのでありますが、予算金額が二億四千四百万円という額で、この額は決して十分な額とは思いませんが、併しながらその額が少なければ少ないほどに、その額のその予算を使用して活動いたしまする松くい虫等防除活動について、層の徹底を期するために、従来の森林法の非常な不十分な点を修正いたしまして、又この森林法の不十分な点の是正は各府県からの一齊の要望でありましたのに鑑みまして、こういう法案をやはり提出して行きますことが必要であると存ずるのであります。  又第二のすでに松くい虫の蔓延については一応峠を越しておる状態において、何でこの法律が必要であつたかという点につきましては、率直に私はこの法律は一年前に出、或いは二年前に出せば、或いは更により以上の効果があつたと、私はかように思うのであります。併しながら現在におきましても、極めて多数の……峠を越したと言いながらも多数の被害発生を見、これに対する緊急の措置を必要としておるというのでございまするので、その意味におきましては、要するにこの法律が出ることも、この目的を遂げる上においての一つの大きな役割を果すと、かように存じております。
  37. 小川久義

    小川久義君 それが納得行かないので、先程申上げましたように、事業遂行のために必要なものは要るだけやるというのは当然であつて、この足らん金を以て最大の効果を挙げんとする、その費用負担を他に転嫁しようという法案のように思われる。国はこれだけしか出せん、併しそれではうまく行かんから、その足らん費用地方庁に出さして、そうして狙つておる効果を挙げんとするような考え方で、この法案がなされたのじやないかと思うのですが、その点僕は納得行かない。
  38. 岩野三門

    説明員岩野三門君) 只今の御質問でございますが、先程林政課長からお答がありましたように、これは金が足らないから仕方がないからこうやるというのでなく、結局狙いは同じ金を使いましても、或いはより少い金を使いましても、従来の経過に、我々やつて参りました経過に鑑みますると、結局駆除方法の欠点にあると存じます。結局一万本なら一万本ここに被害のあるものを、ただ一年間に駆除したのでは何にもならない。結局その虫が飛び立つ前に、それを伐り倒して燒くということに徹底しなければならない。こういうことが従来ですと非常になまぬるい。先程からの提案理由説明等にもありましたように、具体的な指示その他がはつきりしていないようですから、行政庁としては非常にやりにくいわけであります。で今回はこれを具体的にしまして、これを徹底的にやりたい、こういうわけであります。それからもう一つの丁度まあ下り坂になつておるというようなお話でありましたが、これは先程長官の説明にもありましたように、これは従来駆除を始めましたのが、二十一年から大々的に、それ以前に比べますと駆除を始めたわけであります。それを始めまして以来二十二年、二十三年頃から可なり顯著にその効果が現れて来ておる。その効果が現れて来ておるというのは、発生量が減つたというのではないのであります。発生量はぐんぐん増して来ておりますが、その増し方のカーブが今までのように上つては来ない。従いまして二十四年度の推定を先程長官から説明されましたが、約五%ぐらい二十三年度以上に殖えるであろうという御説明のように、まだ殖えつつはある、従来よりも年々殖えつつはある、その殖えるカーブが従来のように急カーブではないという程度に漸くなつて来ておる。でこれをもつと終熄させるには、下りカーブにするためには、適切な時期を選んで早期に発見して、これを伝播する前にやるというところに徹底する必要があると、こういうふうに考えておる次第であります。
  39. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと予算では二億四千四百万円というのは、これを見ると地方に対する補助だけの金額がなつておるようなんだけれども、国がみずから、農林大臣がみずからやる場合の経費というものはどこにあるのですか。
  40. 石川準吉

    ○石川準吉君 そこにあるだろう。
  41. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) これは国有林だから……。それは削減して廻すという意味は予め留保して置かないと、一遍約束したものはというのでなくて、事件が起つたたびに補助金を出すというのですか。
  42. 岩野三門

    説明員岩野三門君) これは実は先程からもお話が出ましたように、天然資源局から非常な強い要請がありまして、是非こういうふうにやれというような話で、極く最近になりまして、こういうふうになりましたものですから、予算面は目の変更をあとにしなければならない。
  43. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) いや私の聽くのは、予め補助金を出して置いて取上げるということはできないから、留保して置くのですね。
  44. 岩野三門

    説明員岩野三門君) それは留保して置くのです。純粋に国費にしまして……。
  45. 山崎恒

    ○山崎恒君 この法律はむしろ数年前に出したならば、こんな大きな被害を受けずに、又損失を被らずに済んだろうと思うのでありますが、この表から見ると昭和三年からこの松くい虫が発生しておる。而も二十年以上今日まで拠つて置いて、森林組合法によつて駆除しておつた。いわばこの日本の象徴とも言うべき松は、殆んどもう食べ盡くされておる。終熄の末期に至つてこういう法律を出さなければならないということでなく、どうしてもつと早くこうしたことをやらなかつたかという、その理由をお聽きしたいと思います。
  46. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 只今御指摘のありました通りに、少くともこの一年前或いは二年前にこういう法律が出ておれば、それはそれだけに更に効果を現したと、かように仰せられます点については、誠に同感であります。ただ松くい虫の防除の技術というものにつきましては、あれの広汎な被害発生いたしまして、実はいろいろ技術陣を動員して、検討を加えたのでありますが、この如何にも幼稚なような、伐倒、剥皮、燒却こういうふうな技術が、とにかく今の最善の防除方策であり、これによつて顯著な効果を現し得るというふうな見通しがはつきりと確立いたしましたのも、これも極く最近のことでございまするので、この方針の確定を待ちまして急速にこれを立法化する、こういうようなことに努力いたして参りましたような次第であるのであります。
  47. 山崎恒

    ○山崎恒君 只今申されましたように、この病害は特に蔓延した原因がこの説明にも、又政府からの説明でも、戰時中に濫伐した木材を而も被害を受けておる木材を、各地にばら撒いた、そのために一勢に、全国的にこれが拡がつたというようなところが、結果的において現在発表されておるのでありまするが、私共はこの法律を見まするときに、むしろ森林法でこの害虫を除去しようというようなこと自体が間違つてつて、而も林野庁は外局として堂々と立派な、一つの大きな組織を持つて、日本の森林行政を全面的に握つて命令を出しておつたにも拘わらず、すでにこの松が殆んど食い潰されているということは、これは誠に歴代政府の大失態である、こう私共は申さねばならんと思います。さような意味で、而もこの予算措置が、もう病気が末期に近ずいておるにも拘わらず、最後のもう防除期であろうと思うのでありますが、二億四千万円くらいでは、到底一挙にこれを撲滅することは至難ではなかろうかと思うのですが、その辺の見解を一つお聽きしたいと思います。
  48. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 誠にお説の通りでありますが、私共といたしましては、別にお認めを願つておりまする技術の普及員の施設もございますし、技術員を十分動員いたしまして、この與えられました二億四千四百万円の経費をできるだけ有効に使いまして、一日も早くこの被害を終熄させまして、皆さまの御期待に副うように努力いたしたいと存じます。
  49. 北村一男

    北村一男君 提案理由でありますから、林政局課長に伺うのは如何かと思いますけれども、この第二の森林害虫種類により、或いはその害虫発生状況によつては、国全体の利益と各都道府県のそれぞれの利益とは、必ずしも一致しない場合があるのでという意味は、これはどういう意味かということが一点。それからこれは技術的なことになるのでありますが、参考資料の第二表を見ますと、これは面積の場合でありますが、二十四年だけでございますから、これを以て全般を推すことは如何かと思いますけれども、四月から八月までの被害面積は、大体三千町歩から四千町歩、それから急に九月から一万町歩を超えて発生しておる。これはこの統計の報告の時期が九月頃からあるという意味で、こういうふうに殖えたのでありますか。私らの常識から言えば、九月、十月はともかくとして、十一、十二月などは被害が減らなければならん時期で、春の方がむしろ発生しやすい時期ではないかと思うのでありますが、これには特別の意味があるのであるかどうか、こういうことを承つて我々もやはり駆除にも重点の置き方があると思うのでありまして、この点も一つ明らかにして頂きたいと思うのであります。
  50. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 提案理由の第二に言つております気持は、例えば針葉樹の分布が割合少い県におきまして、松くい虫が発生した、その県としては、その森林の分布の状態に対応して、或る程度駆除防除工作をやれば、これで十分であるのでありますが、その周辺におきまして、針葉樹の広汎に分布いたしておりまする県がありまして、その県に対して波及する危險が非常に多いこういうふうな場合もあろうかと存ずるのであります。又或る所によりましては、もう松くい虫にさんざん喰い荒されちやつて、これに対してもうこれ以上努力をしてもどうにもならないというふうな、その県自体としては状態になつておる県もあると思うのでありますが、併しながらその県において防柴を築いて行かなければ、更にその周辺に波及をすると、こういうふうな場合もあろうと存ずるのでありまして、まあそういうふうに県だけの事情から見ましてやらなければならない防除程度と、国としてその県に希望する防除程度というものとの間に、食違いが起りましたような場合におきましては、当然これは国として責任を持つて農林大臣が必要な防除措置を、直接その地方について講ずる、こういうような必要を感じて、こういうふうな御説明を申上げたような次第であるのであります。尚この被害面積が九月以降において急増いたしまする事情については、松くい虫等々と申しておりますこの中でも、それぞれ種類によつて違いがあるのでありまして、これはお手許に配付しております資料の七ページの後年を御覧下さいますれば、「まつのきくい」というものは成虫が五月中下旬発生する。それから「しらほしぞうむし」というようなものは七月になつて発生をする、それから「かみきりむし」はこれは五、六月に発生すると、こういうふうな状況にあるのであります。その次にその被害の現れますものが、次の欄に書いてありまするように、要するに九月以降におきまして、その被害が一齊に顯著に現れて来る。いろいろな種類の虫の害がそこで集積して来るとこういうふうな状態にございますので、従いまして九月以降の被害面積が御覧の通りの数字に相成つております。
  51. 山崎恒

    ○山崎恒君 先程からの御説明駆除予防方法が結局伐採をして皮を剥ぐとか、或いは水に漬ける外方法がないのだと、そのために今日まで遅れておつたと、こういうような御説明ですが、世はすでに水素爆弾の時代になつておる。我々のような素人が考えても、なんとか科学的な予防方法がないものかどうか、そういうことを林野庁で一体考えておるのかどうか、樹木等については電流を通じて行うことができないのかどうか、さような点。或いは二億四千万円で少かつたら、もつと予算を取つて一つ科学技術者に一つ予防方法を研究させ、或いはその費用を出すというような方法は考えておるのかどうか、そうした点を一つ。
  52. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) お話のように私共といたしまして、或いは科学的な予防方法もいろいろ研究しておるのであります。私共の方の林業試験場の法でもいたしておりますし、民間でも薬剤などを販売しておる向きもありますが、只今極めて有効であると言われておる薬剤は、虫によくききます代りに、非常に持続性でありまして、身体に悪影響を及ぼすというような、肺を冒すというような恐るべきものがありますので、そういう点を除去できますれば、そういう薬剤も使つて参りたいと考えておるのであります。製造業者も二、三ございますので、その点なども研究いたさせております。尚電流を通じたらばというお話でありますが、電流を通じますと確かに死ぬようでありますが、先程も申上げましたように、これはなかなか莫大なる費用が必要でございまして、庭木位でありますと、そういうこともできるのでありますけれども、山の中に電流を通ずるということはちよつと考えられないのであります。これに化学薬品を用いる方法只今申上げましたように研究はいたしておるのであります。
  53. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと伺いますが、先程の国の二億四千について、国の費用地方に対する費用との内訳がどういうふうなのか、その点を一つ。それからその次はあなたじやないんだけれども、どちらでも結構ですが、分担金の問題は先程問題になつておつたようにいろいろ不公平が出て来ると思う。例えば今林政課長説明されたように、その県が諦めたから国がやる、隣接の、附近の森林所有者というものは恩恵を蒙るから、分担金は森林所有者は出さないが、地方でやる場合の、その県でやる場合の分担金は……。恐らくその利益を受けるのはその県全体だろうと思う。そこで法律規定の分担金を課せられる森林所有者というのは、一体どの範囲かということを先ず明らかにしなければならんと思うんですけれども、その場合にこれは県においてどの部分の人が距離的に見て、どの程度森林所有者が分担金を受け、分担金を負担しなければならないかという問題と、同時に国がやつた場合、地方がやつた場合において、森林所有者に非常に不公平を生ずるのじやないか。従つてそういう場合の負担金というものは、当然森林所有者に課するものじやなくて、これは国が負担すべきじやないか、分担金の区分は……。こういうふうに思われるのですがね。その点一つ分るように説明して頂きたい。
  54. 岩野三門

    説明員岩野三門君) 大体国の方でやります経費が六千万円になります。
  55. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 分担金の問題につきましては、実はこの規定において予測いたしております利益者というものについては、要するにその命令を受けて駆除防災の措置をしなければならん義務を負つております、その森林所有者という範囲において、これを考えております次第であります。尚国が発動いたしまする場合におきましては、これは代執行いたします場合におきましては、行政代執行法の規定によりまして必要な費用をそのものから徴收する、こういうふうなことに相成るかと思います。
  56. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) そうするとあれですか、利益を受ける森林樹木所有者というときには、その松くい虫の害虫防除したために助かつたという森林所有者でなくて、松くい虫に喰われておる森林所有者が利益を受けた、こういうのですか。
  57. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) そういうことです。要するに助かつたものもそれによつて義務を負つて、その義務を……。
  58. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) ちよつと待つて……。そうするとその処分によつて利益を受ける森林というのは、その利益というのはどういう利益ですか。
  59. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) それは当然自分がやらなければならんものを、森林害虫防除員によつて実施して貰うということによつて、その利益を受ける、こういうような意味になるのであります。
  60. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) そうするとその利益というのは、森林法森林所有者防除することを義務付けられている防除を、人にやつて貰つたから利益を受けたのだ、こういう観念ですね。
  61. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) そうです。
  62. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 普通の受益者の観念とは違うのですね。そうすると今私が言つたように、国が代執行をやる場合には別だけれども、国が命じてやつた場合には、その森林所有者は利益は受けておるのだけれども、それは分担金は徴せられた、こういうわけですか。
  63. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) さようでございます。
  64. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それは不公平が生ずるのだけれどもこれは止むを得ないということになるのですか。
  65. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) 国が命じてそうしてやらした場合においては、要するに損失補償は受けられるのです。損失補償の基準になつている金額範囲において補償を受けられる。
  66. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) 民法の規定ですか。
  67. 奧原日出男

    説明員奧原日出男君) これは第八條規定により受けられます。
  68. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 松くい虫の報告は初めてではないので随分何回も聞いたわけですが、なかなか駆除方法がなくて困つておられるようですが、その方法も依然として皮を切つて焼くとか、根つ子を取つて燒くとか、こういう誠にうまくない方法ですが、今後になるかも知れませんが、予算要求する場合に、これ以上要求したのか、これ以上要求しなかつたのか、どうなんですか。
  69. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 当初二億七千万円要求いたしました。
  70. 岡村文四郎

    岡村文四郎君 三千万円ばかり殖えたですね。
  71. 楠見義男

    委員長(楠見義男君) それでは質問はこの程度にいたしまして散会いたします。    午後三時二十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     楠見 義男君    理事            羽生 三七君           池田宇右衞門君            石川 準吉君            藤野 繁雄君    委員            門田 定藏君            北村 一男君            柴田 政次君            深水 六郎君            赤澤 與仁君            山崎  恒君            岡村文四郎君            小川 久義君   政府委員    農林政務次官  坂本  實君    林野庁長官   横川 信夫君   事務局側    常任委員会專門    員       永田龍之介君   説明員    農林事務官    (林野庁林政部    林政課長)   奧原日出男君    農 林 技 官    (林野庁指導部    研究普及課長) 岩野 三門君