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千葉信君 私は三
法案に対して反対を表明いたします。元来この三
法案の
提出を見ましたゆえんは、現在の状態において旧来の無線電信法を以ては、電波
行政の規整が不可能であるという状態と、もう
一つは、全国に八百四十万人の聽取者を擁するこの無線放送を、
一つの機関に独占せしめないで、民主的にこれを開放する、こういう立場から立案
提出されておるのでございますが、その二つの点を
考えて見ましても、電波
行政に関する
電波監理委員会の設置法或いは電波法におきましては、強力な官僚統制、或いは又国家統制を行な
つて、そうして電波に関する利用を極端に制限して、そうして国家手な
意思をこの電波
行政の加に強力に加えて行く、支もその背後にあるところの国際的な
権力を
考えますると、この電御
行政の規整ということが、必ず将来において大きく軍事的な支配に結びついて行く、
日本の植民地化の問題に結びついて行くという点について、私はこれは反対せざるを得ない。又一方放送の開放にいたしましても、これ又名ばかりの開放を行おうとしておる、これらの点については私は本会議で詳ぞいたしたいと思うので、以上を総括的に申上げまして、個々の問題について具体的に反対を表明いたしたいと思うのでございます。
先ず第一に
電波監理委員会設置
法案におきましては、当初この
法案が
考えられた時には、
委員長は
国務大臣にする。こういう
考え方があ
つたのですが、これは
国会提出以前に
国務大臣にするという條項は削られましたけれども、併しながら
委員長自体が総理
大臣の直接の任命である。
国会の
承認を経るということにな
つておりまするが、この場合において
委員の互選ではなく、直接
内閣総理大臣が
委員長を任命し、
委員を任命するということにな
つておる。そうして又その任命が、公共の福祉に関して公共な判断をすることができる者という條件にな
つておるのでございますが、現在のように利害の相反する対立が明確にな
つて参りました段階におきまして、果して公共の福祉に対して公共な判断をすることができる者があるとかということが問題でございますし、立場立場において、どうしてもこの公共の福祉に対する判断というものが、自己の利害に結びついた判断をする以外は、生まれて来ない、こういう立場から
考えますると、
電波監理委員会における公共の福祉に対する判断というものは、その
委員の構成の中に求めなければならない、その相反する立場の
委員諸君を公平に網羅して、そうして初めて
委員会の結論というものが正しい、公正な判断に結びついて行くのでなければ、これは到底期待することのできない性質のものである。若しくはもつと具体的に言いますならば、その選出するところの母体、或いは階級を明確に法の中に盛るという
考え方でなければ、決して
電波監理委員会における公共の福祉に関する結論というものは、公平な形においては生れて来る筈がない。
従つてこの
法案におけるところの
電波監理委員会というものは、どうしても一方的な形において構成されざるを得ない。こういう立場から私はこの
電波監理委員会設置法に対して
はつきりと反対を表明せざるを得ない。
次は電波法でございますが、特に電波法におきまして我々が承服することのできない具体的な部分は、通信従事者に対して非常に苛酷であるということ、第一が沈黙時間に関する第六十四條の
規定、或いは第百十二條二号の罰則、或いは第四十四條における従業者の免許の有効期間に関する五年という制限のごとき、先程小林
委員も触れたようでございますが、例えば従来の国家試験におきましては日進月歩する医学の場合においても……アスピリンを以て治療しておつた病気が、現在ではペニシリンというようなああいあ進歩
発達をする。或いは又電気通信
大臣は丁度弁護士でございますが、新らしい
憲法が施行されて、そうして
一つの
国会において百数十件、或いは二百件以上という
法律がどしどし施行されて行くら拘わらず、この弁護士に対しても医師に対しても有効期間の制限というものは全然
考えられておらない。日進月歩するという同様の
意味で、無線通信が非常に
発達が早いというだけの理由で五年という制限を加えるがごときは、我々として了解に苦しまざるを得ない。第二は技術法としての本法の中に、第七十四條に暴動或いは非常事態の発生又は発生の虞れ云々とあ
つて、その認定する
責任の所在が明確でない。こういう点で広汎な権限を
電波監理委員会に与えられ過ぎている。我々としてはこの点につきましても不満を表明せざるを得ない。尚第三の点におきましては百
七條、百八條にも同様の問題がありまして、この点についても私は本
法案に対して反対せざるを得ないのでございます。
次は放送法でございますが、放送事業の独占を排除する、そうしてこれを自由競争によ
つて進歩
発達を期待するという当初のこの
法案の立案の目的というものが、果して十分にこの
法案の中に盛られているかどうかということについては私は大きな疑念を持
つている。新らしくできる
日本放送
協会の場合には、八百四十万の聽取者に対してその聽取料は悉く
協会の收入になる。或いは又四十八條においてま所得税、法人税の免除、四十二條におきましては起算三十億というものを保障し、四十九條においては土地收用法の
適用を認めている。而も
一般の放送事業者の場合においては、割当の波長がすでに極端に貧弱であ
つて、到底一地方事業会社の域を出ることができない、或いは又その経営はどうしてもこの
法案では広告料を主として行かなければならない、こういう立場から
考えますると、開放したということは単なる名のみであ
つて、こういう状態においては到底私は
一般放送事業者の事業の発展ということを期待することができない。恐らく許可せられるところの幾つかの
一般放送事業者の会社は、ここ一、二年の間はどうしてもこれは経営至難な状態に放置されるのではないか。こういう点から私は反対するものでございますが、併しながら特殊法人として新らしく出発する
日本放送
協会が全く新らいく
国民のものとしての立場に立
つて出発すべはものであるに拘わらず、これに対して国家的統制の強いということを云々する者があるようでございますが、この
法案の第三十
七條或いは第三十八條並びに第三十九條、第四十條、第四十一條は、これは新らしくできる放送
協会に対する強力な干渉であるとか、或いは不当な拘束であるというような
意見を持つ者があるようでございますが、むしろ私はこういう
予算或いは
資金計画等における
国会の
承認云々の問題は全く当然な
措置である。問題はむしろ
電波監理委員会が放送
協会に対して加えるところの
行政機関としての立場からの強い圧力ということについて、私は十分に慎重な
考慮を払わなければ非常に危険である。というのは御
承知のように新らしく
日本放送
協会の中には経営
委員会というものができるのでございますが、この経営
委員会の
委員は全国における八つの地方から地域別の立場において選任せられる。そういたしますると、たとえ第十六條の一項におきましていろいろな階層を代表して選任せられるということがありましても、第二項において地域的に制限せられるということ、この地域的に制限せられるということは、選任にも非常に困難が伴うと同時に、経営
委員会を開催するということについて常に困難な問題が附随せざるを得ない。そうして又先程小林
委員は、電波監理
委員の待遇が非常に劣惡だということを言われたようでございますが、
電波監理委員会の
委員の待遇は決して劣惡ではない。これは
はつきりと同法の
附則第七項によ
つて特別の職員の給与を与えられるということにな
つておる、これは決して待遇が不当ではない。ところが経営
委員の場合においては実費だけを支給される、実費を支給されて地方から選出された
委員が活溌な活動ができないということは当然でございます。そういたしますると所詮は
電波監理委員会の
行政機関としての強力な
監督並びに放送
協会に設けられる執行機関としての理事会の一方的な運営ということが、将来の
日本放送
協会に対する大きな癌とな
つて残るということは私はこの
法案の
審議に際して痛感せざるを得ないのでございます。
簡単でございますが、私は以上の点から三
法案に対して反対いたします。(「ちつとも簡単じやいな」と呼ぶ者あり、笑声)