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政府委員(
網島毅君) この
民間放送の出現に対しまして、果してこれに與えるところの波長があるかないかということにつきましては、
国民の方々も非常に
関心を持
つておられることと存じます。御承知のように現在の
日本放送協会は、
全国に
放送の
電波を普及させるという
目的を與えられましたために、
全国に亘りまして約百局に近い
放送局を建設、維持、運用しております。従いましてこれに使
つておりますところの波長の数も
相当夥しい数にな
つております。一方国際條約によりまして、
放送、殊にこの
中波の
放送に割当てられておるところの波長の幅は五百三十五キロサイクルから千六百五キロサイクルまででございまして、その数に限度がございます。従いまして今後の
民間放送というものはこの波長の割当ということを
考慮せずには、その
計画を実現されるわけには行かないのでございますが、この
日本放送協会が
相当局を持
つておりますところの現在におきましても、これを合理的に再編成することによりまして、その波長を再編成することによりまして、尚
民間放送としてこれを
全国的に
考えました場合に、三十局前後の
放送局が割込み得るのではないかというふうに
考えております。勿論この数は純技術的に、いわゆる混信の面を
考慮いたしまして出した数字でございまして、今後できますところの
電波監理委員会がどういう政策を以てこれを
民間放送に対処して行くかということによりまして、この数が変
つて来ることは当然でございます。
只今申上げた数字はこれは
全国的に
民間放送ができるという場合を想定してのことでございますが、さて実際問題としてこれを
考えまするならば、田舎の人口の稀薄な町には
民間放送というものが今直ちにできるということは
考えられません。この
民間放送が
広告收入を
基盤としておりまする
関係上、どうしてもこれは
広告効果の多いところの都会に集中しておるということは当然でございます。現に約四十に近い
民間放送の出願がございまするが、これらは殆んど東京とか大阪に集中しておるという状況でございます。
ところでこの
一つの都市を中心として
考えまする場合には、ここに
電波と
電波の間の分離という問題が非常に重大にな
つて来るのでありまして、特に
我が国におきまして現在普及されておりまするところのこの
受信機は残念ながら他の国では見られないような程度の低いものであります。従いましてこの
電波の分離性も非常に惡いんでありまして、これが今後
放送局の数が制限される非常に大きなフアクターにな
つているということを非常に残念であります。併しながら
我が国の
国民の経済
状態からいたしましてこれらの
受信機を一足跳びに改善するということは、これは不可能であります。
従つてとにもかくにも第一歩として現在の
受信機を一応
対象として
計画を進めなければならないということになるのでございまして、そうな
つて参りますと、東京とか、大阪とかいう所には五つ、精々五つ、或いは技術的に
相当な制限を加えまして六つという程度の
放送局しか置けないということになるのであります。現在すでに東京、大阪にはそれぞれ第一、第二及び進駐軍
放送と三つの
放送がございまするからして、そう
考えますると、ここに割込む余地は二つ、或いは非常な技術的
考慮を拂
つて三つということになるわけであります。従いまして差向きそう多くの
民間放送ができるということは、これは技術的見地からいたしましても、これは不可能でございます。但し
受信機が逐次改善されて参りまするならば、この
放送局の設置し得る数は逐次増加して参るのでございまして、現にアメリカの一部市のごときは
一つの町に
放送局が十二も十三もあるという町はざらにございます。将来
政府とそれから
国民が一致協力いたしまして、できるだけ速やかにこの
受信機の向上を図
つて、更に多くの
民間放送というものができて行くということを希
つておる次第でございます。