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政府委員(宮幡靖君) 税の直接の取立て及び
一般の行政をや
つております国税庁の長官からは、国税庁としてのお立場の
説明がありました。これは
陳情の方々にも御了解願えた面と願えない面が恐らくあろうと思います。御
陳情の方々の御意見を聞いておりますと、根本問題は税法の悪いことであります。生活費を引きました残りに税がかかるならば、これは百%かかりましても敗けた国民といたしましての本当の心構えに立ち返るならば御辛抱も願えるかも知れません。食
つた残りでなく、生活費に費えたものもやはり課税の対象となりまする現在の税法、世界的に見まして生活費を控除した後の残額、これに税をかけるという
制度は
只今のところではないのでありまして、私の知
つておりまする限りでは、過去にもないように思
つておりますが、
制度としては悪い
制度でありながら、まあ世界的に見て一応止むを得なのじやないかということになりますわけであります。根本は生計費のうちに占めます飲食物費の割合ということになるのでありまして、戰前におきまする日本の平常の経済の場合におきましては、生計費のうちに占めます飲食物費の割合は概ね四〇%
程度でありました。ところが経験後の一番甚だしいときになりますと、六八%乃至七五%、極端な個人生活を指摘いたしますと、八〇%を超えております。これが百%になれば乞食と同じ裸でありまして、ただ命をつなぐために生きておる、これが生活の全部になります。従いましてもう七五%というようなことになりまするというと、これも全く乞食に近いという生活を強いられておる。而もその消費された七五%も若干の基礎控除以外は税の対象になる、これでは食べられないわけです。結局申告に嘘をいたさなければならない、こういう羽目にな
つて参ります。━━━━━━━━━━。
従つて皆さんの御
陳情の点は非常によく分るわけでありまして、若しこういう公開の席上でなか
つたならば、私個人といたしましてももつと鋭い考えと、もつと正確な材料を持
つておるわけでありますけれども、これは又言い過ぎにな
つてもいけませんから差控えますが、要するに
皆さんの御
陳情は極めてよく分るのであります。さりとて、と申しまして国家が若し税收入に多大の欠減を生じたといたしましたならば、国家財政はもとより国の行政は行えないことになりますので、これも又併せ考えなければならない。結局むずかしいことは運用によ
つて片付けるということになりまして、税法の運用の上におきまして私共も嘘を言わない。若し利益がこれだけあると正確に生活費まで含んで中小商工業者が申告いたしますと、私共の勘定によりますと、百円の利益に対して大体東京都あたりでは百六十三円八十銭くらい税金を納めなければならん。これは利益以上にかかるじやないかといえばその通りであります。実際はそうであります。そのうち損金として処理されます地方税的なものはありますけれども、概ね損金として処理されない所得税が根幹であります。そういうことで段々インフレ進行時代で、名目の所得が累加されて参るときには、この所得でどうやら賄い切れたのでありますが、インフレが停止し、或いは極端に申せばデフレ的
傾向濃厚であります。先般も大蔵大臣に私は個人といたしまして
産業資金梗塞打開の一構想という書面を出しました。又総理にも出しましたし、我々知
つておりますところへ全部ばらまきました。そうしてこの年末金融に対しまする
措置を講じて貰い、金詰りの原因をいろいろと申しますが、單なるデブレとかいうものではないのでありまして、実は今まで昨年までの間は專門家でない限り或いは御存じないかも知れませんが、アメリカの援助資金にかかります物資が国内に放出されまして、その国民の購買力から吸收いたしました通貨を、又再び輸入
補給金なり或いは価格調整費なんというような面を持ちましてこれを国民のこの財政的資金の中に撒いてお
つたのでありますが、これは今度は対日援助見返資金特別会計というようなことで別個にな
つておりまして、現在私の方の省で担当しております数字で大体八百五六十億の積立てはしております。ところがこれが放出されておりまするものは二百十六億、二百二十億ぐらいでありますが、差額の六百億以上というものは
皆さんのお用いにな
つておる札を取上げまして、悪い言葉ですが取上げまして、そうしてここにあるぞということを見せておる。有効なものに貸してやるぞということにな
つておりますが、これが最大の金詰りの原因であります。これを放出いたしまして、物のついた購買力を伴
つておりまするところの通貨でありますので、速かに回転せしめて、これを大なる
電気の発電事業であるとか、或いは鉄道だとか通信というようなものに、長期投資というようなものに限定すべきではない、即ちこれは民間の金融に流れ込むような間接投資をやるべきだということを私は力説しております。この間接投資なるものは証券市場を通じまするところの現在の株もたれということで、
事業者が増資いたしましても、社債を発行いたしましても消化力がありません。消化力のないことによ
つて自己資金の調達ができなければ、そこにすべての
産業を通じまするところの国民経済の循環ということに支障が起きて参るわけであります。これを力説いたしまして幸いにして、容れられまして昨日あたりの
措置といたしまして取敢えず預金部資金から百億の金を各銀行に紐付き的に差上げまして、各今お組みにな
つておりますが、見返資金の一部金額はここで申しかねますが、これと併せならしまして年末の金融梗塞の打開に当ると、かようなことをと
つております。併しながら現在の金融は金融国営主義のようなことからは程遠い金融の民主化を狙
つておりますので、飽くまでもこれは市中銀行の自由操作でありまして、大蔵大臣に強権があ
つたり、監督権を発動するというようなことはこれはできないような
状態でありますので、ここにも又むずかしい問題があります。特に先程国税庁の長官から
お話がありましたが、私共納得いたさない点がありますが、
皆さんも納得いたさないと思います。私は
政府間の意見の不一致を申すのではなくて実情を申すのでありますが、我々が中小企業庁を中心として中小企業方面を眺めまするというと、先ず税の面で、一家三人くらい、これの的確な数字を持
つておりませんから厘毛以内の数字をここで申上げかねますが、一家三人くらいで若しその家庭の御生活が月に一万円で足りることを想定いたしますと、その一万円の生活費を償うための所得というものは勤労者の面におきましては大体二十万円の所得があれば税も拂
つてや
つて行けるのであります。源泉徴收で、先程成績のよいというその所得税が拂
つて行けるのであります。ところがこれが中小企業の商人になりますと、小さなお仕事をなす
つておる方でありまするというと逆に三十五万円の所得がなければ月一万円の暮しの費用が出て来ないというのが…。現在の税は決して勤労階級に重くして商工業者に軽いという観念をお持ちにな
つたら、これは国税庁長官を前において申して甚だ失礼でありますが、大きな間違いである。これ程中小企業に無理なものがかか
つておるのであります。何故これを無理なままに今までや
つて来たかというと、今までの申告が皆嘘でありました。皆嘘であります。大体正直に申しますれば、我々柳か税のことを裏をよく知
つておりますが、百円儲か
つて従来の観念で五十円の申告をしておる人は私は良心的だとお褒めしてよろしいのじやないかと思います。かように考えております。大体申告納税になりましても六、七割乃至八割の申告を若し自発的におやりにな
つたら、これは税に対する本当の神様であります。
制度の上から言
つたら表彰できませんが、精神の上から
言つてその人を表彰したいくらいに思
つておる。これは今まではそれで通
つて来たが、先程来
陳情の方からも帳簿の話があり、国税庁の長官からも
お話がありましたけれども、帳簿の問題は今からつけ始めるということは、これは大変であります。到底なかなか
皆さんに…。我々の方も青色申告用紙に適応しますところの帳簿書式を
経済安定本部の方で作りまして、一月から早々街頭に出まして
皆さんに是非お使い下さるようにと宣伝し、普及することを
計画の中に入れております。こんなものをとこぼすかも知れません。今からつけるのは無理だと、そのお気持は分りますが、それよりもつと一歩越えて頂きたい。これは逆に
陳情者に対して妙なお言葉を申上げるようなことになるかも知れませんが、帳面をつけないでや
つて来たという商売の行き方というものが、今にな
つて漸く帳面をつけることを覚えなければならないことにな
つたという、この二つを思い合せて頂けば、御無理でありましてもこれは是非帳面をおつけ願う、殊に今度はシヤウプ勧告案にはいろいろ日本に適応しない税制がございますことは私共も否めない事実と存じておりまするが、その中でやはり一年の財産の、個人においても総ざらいをやらなければならない。理屈を言えば貸借対照表を作ると書いてあります。つまり借金と財産の総ざらいを年一回やりまして、そうして実際資産が殖えておるとか、減
つておるというところにおいて儲か
つたか儲らないかということを勘案する
状況にな
つております。而も所得税、相続税、今度又地方の譲渡所得と相続税が入
つております。いろいろな四税が相交錯いたしましてこの純資産が殖えて行
つたか行かないかということを絡み合いまして、今までのように帳面を書いて置くよりも税務署の役人なんかに頼んだりして、俺の方に百円あるけれども、五十円、八十円で落ち着くだろうというので、帳面を書くのを止めて置きましたその慣習からどうしても税逃れがありますが、今度四つの税の交錯がありますから、これはもうただ今までのように書いて置かない方が、案外税務官吏にうまく頭を下げて
一つごまかしてや
つたら何とか、まあ百円儲か
つておるが八十円で済むだろうというような気持が帳面をつけない本当の気持なんである。これをおやりになりますと、重税であるととは、国税庁長官がもう本年は一番重税の極点でありますとおつしやる通りであります。だけれどもその上にこの手を打ちますと、これはとんでもない。それは全く店を閉めなければならないことにな
つて来る。又お示しのような悲劇や煩わしいことが起
つて来るとも当然であります。これは是非困難でありますが、帳面をつけること、先ずこの主要な税種のものにおいてはどうしても
皆さんにおやりを願わなければならない問題だと思います。抜目のないようにな
つておるのが今度の税でありまして、どつかで何か嘘をいたしましたと仮定いたしましても、実際は百円あるけれども、俺のところは三十円だと言
つたところで、どつかで必ず絡み合
つて浮いて来るのが今度の税でありますから、これは一層
一つ御注意をお願いいたしたいのであります。現在り
制度につきまして述べられることは、通商
産業省は御存じのように一殊に中小企業庁をも
つてや
つておりますように、中小企業のともすれば倒壊したり、倒れんとしております実情を是非とも押し立てまして、日本の輸出
産業振興の先ず基礎的な
産業といたしたい、かように考えておりますので一
政府当局間の連絡といたしましてはここで申上げかねる点が沢山ありますので差控えまするけれども、この税の運用及び軽減並びに
制度の改善におきましては切々と実は申入をいたしております。私も柳か税には自分の体験を持
つております
関係上、これは可なり無遠慮なことを大蔵大臣にも申します。主税局長にもお願いいたします。国税庁の長官とはまだお互いに忙しい立場でゆつくりこういう問題は話したことはございませんけれども、十分これは
皆さんの利益でもあり、日本の中小工業のために、中小企業のために是非
一つ頑張
つて頂きたい。併しこういうことが漸次改善されて行くには時の流れがありまして、今御
陳情の
趣旨御尤も千万と心得ながら、至極
皆さんに適切なる回答を與えることができないことは誠に申訳ないのでおりますが、これは
皆さんにも十分お分りのことと思います。今日は中小企業庁の振興部長も作
つておりますので、若し尚御
質問願うことがありましたならば、時間の
関係でこの席が不適当でございましたら中小企業庁へどうぞお出掛け下さいまして実情をお知らせ下さいまして、
政府とり連絡は極めて緊密にして、どうかして
官民が力を一体としまして、納税旋風と言われますが、どうしても然るべしそれだけの税を取
つて行かなければ国の財政は賄えない。この危機を
一つ乗り切るようにいたしたいと考えておりますから、御遠慮なく
一つ御苦情を
一つお聽かせ願いたい。これについては可なりの手配はいたしておるわけでありますが、ここで我々の方で考えることは、大蔵省の方では時には気に入らないという面もございますので、さようなことを一々ここで対照的に申上げることは無効だと思いまするから申上げません。お心持はよく分りますので、
委員長及び参議院の各
委員の方方の御要望も体しまして、中小企業庁としてでき得る最大の努力を拂わして頂くことを、御
陳情に対しまする誠にささやかなお答えでありますけれども、誠意を披瀝して本日の
皆さんの御
陳情にお報いしたいと、かように考えております。