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1950-03-31 第7回国会 参議院 大蔵委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三十一日(金曜日)    午前十一時三十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員黒田英雄君辞任につき、その 補欠として大隅憲二君を議長において 指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○輸出信用保険特別会計法案内閣提  出、衆議院送付) ○所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○富裕税法案内閣提出衆議院送  付) ○資産評価法案内閣提出衆議院  送付) ○相続税法案内閣提出衆議院送  付) ○法人税法の一部を敏正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○酒税法の一部を改正する法律案(内  閣提出一衆議院送付) ○通行税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○所得税法等改正に伴う関係法令の  整理に関する法律案内閣提出・衆  議院送付) ○災害被害者に対する租税の減免、徴  收猶予等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送  付) ○国税徴收法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国税犯則取締法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○国税延滞金等の特例に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 只今より会議を開きます。  この際輸出信用保険特別会計法案議題として審議することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めまして輸出信用保険特別会計法案議題として審議を進めます。
  4. 米倉龍也

    米倉龍也君 この法案は表題から新らしいのですけれども、前の議会に輸出金融補償特別会計というようなもので出たものと全然違うのですか。あの考え方を更に続けて名前を変えてこういうものをお出しになつたのか、一応その点をお聞きしたい。
  5. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 私は通産省の政務次官でありまして、この法案に密接な関係があるので大蔵政府委員が現れませんので代つてお答えいたしますが、この法律案といたしましての件名は、前国会のものと相違いたしておりますが、内容は全く同一のものであります。さよう御了承願いたいと思います。
  6. 米倉龍也

    米倉龍也君 内容は同じでも結局違う。あの二十四年度の十一月の補正予算に出ておる輸出金融補償特別会計と全然違う法案と思うのですが、内容は同じであつても、その時に成立もしないものが新らしいものとして出たものと思うのですが、それにも拘わらず予算には、前の補正予算の時のあの特別会計予算が続けられておると思うのですがこういう点はよいのですか。
  7. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 前国会におきまして予算の方だけは可決せられておりまして、それに伴つて実施いたします法律案審議未了の形になつておりました。従つて特別会計運用も開始せられなかつたのでありますが、今回の国会におきましてこれを議決御公布を願いまするならば、前国会で議決せられました予算は有効に実施に移されるものと考えて御審議に備えておるわけであります。
  8. 米倉龍也

    米倉龍也君 そこがちよつと私共に分らないので、全然違う法律案じやないかと思います。前国会では予算通つて法案が通らなかつた以上、勿論それは予算を執行することはできませんから予算は残ると思います。その残つたものを新らしい違う法案特別会計予算へ継承して行くということは一体いいのですか。そういうことを聞きたいのです。
  9. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 大蔵省の政府委員がおりませんが、稻村説明員が参つておりますので説明員から答えさせて御異議ありませんか、    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。
  11. 稻村光一

    説明員(稻村光一君) 特別会計法といたしましては、この前に御審議願いました輸出金融補償特別会計法内容においては変つておりません。
  12. 米倉龍也

    米倉龍也君 内容が同じであることは分つておりますが、この前に輸出金融補償特別会計法といつものは成立しなかつたのですから、予算の執行はできなんだと思うのですが、その点はどうですか。
  13. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) 経緯につきましては御指摘通りでありまして、二十四年度の補正予算成立いたしました時に、同時にその補正予算内容といたします法律案を提出いたしまして御審議をお願いする予定であつたのでありますが、諸般の情勢上、その法律案成立までの運に至らなかつたわけであります。その後更にいろいろと新たな情勢に基きまして、只今審議願つております保険法案、又その保険法案実体内容にいたします特別会計法案につきまして、この委員会で御審議願う運びに至つた次第であります。従いまして御指摘通り予算内容法律案内容とは、必ずしもぴつたりと件名乃至いろいろの技術的の点におきまして一致しない点があるのではなかろうかという点につきまして、御指摘の点は多少ございますが、一応成立いたしております予算実体的な保険法内容におきまして食違いのないように、いろいろその後の情勢変化を勘案いたしまして食違いのないように措置いたしてございます。従いまして成立いたしておりまする補正予算、二十五年度予算、それから今回の両法律案内容におきましては食違いなく実施できる。かように存じておる次第であります。
  14. 米倉龍也

    米倉龍也君 食違いないように運用ができ得ると言うけれども、それはそうなんでありましようけれども、前の法案成立しなければその予算は使うことができませんから、それを違う法律予算へ継承して行くということが、実際そういうことはよいのですか。そういうことを法律上私は聞きたいのです。
  15. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) 法律が若しこの二十四年度の年度内に成立をいたさないという事態が起こりますと、二十四年度の予算といたしまして成立をいたしておりまするところの経費が使えなくなる、法律予算とは一体的なものではないかということにつきましては、お話の通りでございまして、ただ私共といたしましては、二十四年度内に、非常にぎりぎり切迫いたしておりまするが、是非この保険法案並びにこれに伴いまする特別会計法案成立をお願いいたしましてそこのところに食違いが起らないように御処理頂きたい、かような次第でございます。
  16. 米倉龍也

    米倉龍也君 どうもその食違いがないようにというのは、補正予算で決めた政府出資になりますか、政府で出すものですね、新らしい法案にそれを加えて出すことはよいでしようけれども、前のものを引継いで行くというようなことがどうかというのです。全然違う法律だから私はどうかと思うのです。これは法律が違う。内容は同じでも、とにかく名前も違うし、法律は違うと思うのです。この前の国会出したものと私は違う法案だと思う。その点なんです。
  17. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) 保険の名称並びに実体におきましては、前回お願いいたしましたものと、今回お願いいたしておりまするものにつきましては名前におきましても、実体的の内容におきましても、違いはないのでございます。従いまして私共といたしましては、前回殆んど同じ内容法律案を予想いたしまして成立いたしておりまする補正予算でございまするから、今回同一内容法律案法律として成立いたしますれば、前の補正予算はそのまま使用できると、かような解釈をとつておる次第でございます。
  18. 波多野鼎

    波多野鼎君 政府委員説明が不十分です。ほぼ内容が同じだと言つてみたり、全く同じだと言つてみたりするから誤解が起るので、この前の不成立終つた特別会計法、これを一遍調べて見たら分るので、その辺曖昧な返事をしては駄目だな。
  19. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) 言葉が足りませんで誠に恐縮でございますが、件名並びに実体的な内容においては同一であると、ただ技術的な用語の末におきましては違つている点があると、かようなのが内容でございます。
  20. 波多野鼎

    波多野鼎君 そこでやはり米倉さんが問題にされておつたのは、相当重大だと思うので、これはこの前補正予算審議する場合に予想しておつた法案と、技術上の点においても多少違うところがあるとすれば、その補正予算において通過した予算を、そのまま使えるかどうかということは疑問だと思うのですね。その辺の法理的な解釈はどうなんですか。
  21. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) 先程来御質問にお答え申上げておりまするように、政府といたしましては、件名実体的な内容におきまして同一内容でございまするので、すでに成立いたしておりまするところの予算を、今回お願いいたしておりまする法律の目的に従いまして使用することは可能であると、かような解釈をとつております。
  22. 波多野鼎

    波多野鼎君 その点では、我々の方で一遍考えて見なければならんと思うのです。これは重大な問題になるね。一応この点の質問は、政府側意見はそうだとして、我々側の意見は一応まとめなければならんので、この点は留保して置きます。
  23. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) 通産省通商振興局長でございます。実体内容の、この前提出いたしました法案と違う御説明をいたしますと……
  24. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと條文で言つて下さい。特別会計法の何條ですか。
  25. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) 私の申上げているのは、実体法のことでございます。特別会計法は違つておりません。
  26. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと皆さん配つて條文について言つたらどうですか。
  27. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) 只今四部しか持つておりませんので……。これは要するに、この前の法案につきましては、補償対象となりますものが輸出手形でございまして、それが今度は輸出契約に拡げましたというところでございまして、今まで信用状が来ましたときに初めて補償対象になりますものを、輸出契約成立と共に補償対象にしたいというところを考えたわけでございます。
  28. 波多野鼎

    波多野鼎君 それは何條になつているのですか。
  29. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) これは第三條のところに、「輸出信用保険は、輸出契約に関し」となつておりますのを、これが前におきましては、輸出の尚為替手形になつてつたのでございます。これが一番大きな内容変化でございます。その外に、同じく三條の四号と五号との間に一号ございまして、航路の変更等の事由を補償するというのがございましたのでございますが、これは普通の海上保険の操作においてやれますので、それを削りましたというのが改正でございまして、外は保險のテクニツクに関しまして、保險法案らしく若干の條文をいじりましたという程度でございまして、内容は先程申上げました程度の違いであります。
  30. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうしますと、今の第三條の第一項を、この前の補正予算審議する場合には、これは輸出手形に関しての損失を補償するということであつたのを、今度は輸出契約というふうに、ずつと補償の範囲を拡げたわけですね。拡げたから、従つて補償全額というものも大きくなければならんわけですね。
  31. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) 補償全額は勿論大きくなります。
  32. 波多野鼎

    波多野鼎君 大きくなることが、当然予想されますね。
  33. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) そうであります。
  34. 波多野鼎

    波多野鼎君 だからこの前の予算の金額とは食違て来るなければならないいうことになる。
  35. 岡部邦生

    政府委員岡部邦生君) 平たく申上げますと、この前の予算におきましても、予算折衝において法案を作成いたしますときには、輸出契約いたしたかつたのでありますが、関係方面の意向で、それが尚為替手形に限定されておつたわけでございます。予算を組んで貰いますときには、輸出契約という考え方で組んでおつたのが実態でございます。従つて予算上は別にいじつて頂かなくても十分であろう思います。
  36. 波多野鼎

    波多野鼎君  そういうことを言い出すと、余計いかんね。そんなことを言い出してはまずい。まるでそれでは予算において我々を欺瞞したということになる。
  37. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止〕   —————————————
  38. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは速記をとつて……。輸出信用保険特別会計法案については、尚御質疑があるようでありますが、これは議事都合あと廻しにしまして、この際通行税法の一部を改正する法律案議題として審議することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。  それでは通行税法の一部を改正する法律案議題といたします。御質疑がありましたら……尚通行税法の一部を改正する法律案議題にすることを申上げましたが、その他の国税関係法案十一件についても、この際併せて御質疑を願つた如何かと思いますが、御異議ありませんか。
  40. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは議事都合上、国税関係法案通行税法の一部を改正する法律案外十一件について御質疑のある方は御質疑を願いたいと思います。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私この国税関係について余り質問いたしませんでしたので、すでに皆さん方が御質問されて重複する部分もあるかも知れませんが、そういうときには委員長が注意されますれば、速記を見て消しますから、成るべく重複しないようにしてお尋ねしたいと思います。  先ずお伺いいたしたいのは、御承知通りシヤウプ税制勧告が非常に総合的な中央地方を通ずる税体系を作つたわけでありますけれども、従つて地方の方の税がどうなるか、それから又交付金との関係も出て来ると思います。が、その交付金関係如何によつて、それとの釣合において又地方の税も考えなければならんわけです。本来なら大蔵委員会でもこの税法を検討する場合に、平衡交付金法がまだ出ていないというのでは本当は建前としてはおかしいと思うのです。そういうものが全体として出て来て、そうして完全な総合的な税体系というものが分つて来るわけなんですが、この点これは主税局長にお尋ねしても無理なんですが、昨日も本多国務相に催促して置いたのですが、まだやはり平衡交付金法というものは出ないのですか、まだ提出されておりませんか。
  42. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 実質的な問題はもうすでに木村委員が御承知通りで動くことはないと思います。要綱或いは政府説明が変るようなことはないと思つておるのでございますが、ただ財政委員会構成につきまして若干問題が残つておりまして、その点が残つておりまする関係上、最終的にまだ提案に至らないという次第でございます。実体的な点につきましては、前々から説明しております通りに働かないと私の方でも考えておりますので、そのつもりで御批判願つてもいいのではないかとかように考えております。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点出たか出ないかということをお伺いしているわけなのです。まだ提出されていないのですか。分らなかつたあとでもいいのです。一つお確かめ願いたいと思うのですが、これは予算審議の方でもその問題でやはり揉めておりますから、然るべく……。  それから、中央地方を通じて減税になるか或いは増税になるかということが非常に議論の焦点になつているわけなのです。いや増税になるという人もある、いや減税になるという人もある計算のしようによつていろいろあると思うのです。で大蔵委員会公聽会で全銀連の前の委員長ですか、大倉氏が公述したのですが、東京都の例をとりますと、五万円以上の収入者については、地方税を入れますとむしろ税が殖えてしまう、増税になつてしまう。こういうふうな計算をされて、これを公述されておるのです。それからそういう計算は無論主税局の方でもされておると思うのですか、中央地方の税を通じて増税になる人はどういう所得階級の人か、この点御計算があつたらお示し願いたいと思います。
  44. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今の点につきましては、先般この委員会におきましても相当詳細に御説明申上げたのでございまして、お手許にも国税及び地方税の直接税総合負担額表という表を差上げております。この表は未定稿といたしておりますが、作りました際には地方税の率が決まつておりませんでしたので未定稿として差上げておるのですが、大体地方税法案もこの通りに決まりまして提案になりましたので、この表をよく御覧願いますれば、大体のことはお分りになるかと思います。平均しまして見ますと、私共の計算では大体下がる人の方が多いと思うのです。例外としまして独身者の場合は、これは若干大きな家に住んでいるといつたような人の場合は、上がる人があるかもしれません。それから所得が割合に少くて、大きい家に住んでおる人、こういう人も或いは上がることがあるかもしれませんが、平均して見ますると、この表の示すごとく、給與所得者農業者或いは営業者の場合におきましても下るようです。扶養家族が多ければ多い程下る率も多い。扶養家族が少ければ下る率も少くて、例外としては、或いは上る人もあるかも知れません。地方税も、地方によつて現在の負担大分違つておりますので、都民税の賦課の方法等も、東京都或いはその他の地方とはいろいろ方法が違つておりますから、地方によつて若干区犬であるということもあるかと思います。お手許に差上げました表は、大体地方税につきましての全国平均の、二十四年度の負担額を基にしまして、それにこの改正案を適用した場合の比較であります。いずれも地方税はやはりこの表に示しております通り、二倍乃至二倍、大体三倍前後上るというふうに計算いたしました。尚且つ扶養家族の多い人は相当下る。独身者の方はすれすれか、ちよつと下る、従いまして平均的な事情で、ございませんでさつき言いましたように、若干異例に亘る人の場合には上る人が出て來るかも知れませんが、反対にこの表よりより以上に下る人があるかも知れませんというふうな考えでございます。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点をお聞きしているのですが、平均なんです。だから全国平均ですと、例えば地方税については五十万の都市、それからもつと小さい都市、それによつて八百円、四百円ですか、四百、六百、八百とあるのです。ですから東京都の一番最高のところを捉えて計算してみると、それはむしろ上つてしまうと思うのです。そういうような計算をして、最高のところをとつてみて、そうしてどうなるか、こういうふうな御計算はありますか。
  46. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今度の税制改正は、御承知通り、全体として或る程度減税を図りますと同時に、負担の公平を図ろうというわけであります。従つて従來地方税等負担が比較的高かつた所は減税が多くなる。反対地方税負担が低かつた所は減税が少くなる。場合によりましたら増税になる所があるかも知れません。そういうわけで、ここのところは、ケースは千差万別でありまして、私共全体の姿を眺めます場合におきましては、平均的なものによりまして御判断を願いまして、その表をよく御覧願いまして例外的な場合はどうなるかという御推察を願いますより外ないかと思いますので、そのような見方が一番正しいのではないかと、かように考えておるのでございます。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはですね、税の負担という考えは、この場合は意味がないと思うのです。そういう平均的な見方はただ財政バランスを見たりするときはいいのです。七百億の減税が、中央減税して、地方で四百億増税すると、結局三百億減税になるんだと、こういうことは意味がないと思うのです。全然意味がないことはないのですけれども、ただ財政バランス考えるときはいいが、税を考えるどき所得階層別に見て、どういう階級がどれだけ減税になるか、どういう所得階層がどれだけ増税になるか、その階層別増税率減税率考えなければ、税負担の公平というものはこれは分らないものです。これを非常に例外的なことを主税局長は言われておりますが、東京都の例をとつて計算になれば、確か増税になると思います。そういうのは隠しておるわけではないと思いますけれども、そういう例をお出しになれば、何で減税になる減税になると、一般の国民は、普通の国民は、税金が全体として政府の宣伝によれば軽くなると思つているのです。皆が誰でも軽くなると、そういう意味に理解していると思うのです。国民は三百億減税になるとすれば、そこで段々分析して見ますと、租税転嫁考えなくても、そういうところに減税になるなら、そういう東京都の例をとつて見て、最高都民税住民税ですか、そういうところをとつて見て、一つサンプルをお示し願いたいと思います。どのくらい増税になるか。
  48. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この表でも、例えば勤労者の場合に、六万円の独身者、十万円の夫婦者夫婦子供一人、子供二人、それから十五万円の同様に夫婦子供一人、それから夫婦子供二人というふうに、若干バラエテイは違えました計算をしております。この表でも御覧になれば分りますように、例えば十五万円で奥さんと子供二人の場合でありますと、現在が地方税を掛けて一五%の負担が、改正後においては一一%になります。独身者の六万円の場合でございますと、現在が十二・三%の負担が、改正後におきましては十二・〇九%とほんの僅かの差が付いております。従つてこの辺のところは、大きな家にでも住んでおりますと、固定資産税のはね上りが影響して、負担が殖えて來るだろうと、反対に。この平均的なところよりも小さい家に住んでいる人の場合は左程殖えないと、或いはもつと減るというわけでありまして、その辺のところは御總明木村委員、これだけの表を作つて差上げて置けば御判断が付くのではないかと思います。併し私共もあらゆる人に下るとは決しで申しておりません。負担の公平を図るのでありますから、家族の多い人程、その負担はより以上下るが、独身者負担は、場合によつて、直接税は下らんかも知れませんが、併し入場税等が下りますから、ですから消費税等を加えると下るかも知れません。併し今までは合算しているから、今度は合算をやめたから、同じ独身者であつても、今まで叔父さんの所得合算している場合に、合算を排除して下つたという、そういういろいろな関係があるわけでありまして、それが税制全体の改正案構成しているわけでございますから、その辺のところは、すべての角度から具体的にお考えになりまして御判断なつたらどうだろうかと思います。私は家族少い人所得が比較的少くて、大きな家に住んでいる人ははつきり申上げて置きますが、今より負担が殖えるだろうと思います。併しその方が全体として今よりもより負担の公平を図るゆえんだと考えて、税制改正案を提出しているのであります。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはよく分りましたわけですが、そういうことをお尋ねしているのではなくて、別に詳しいことをお尋ねするのではなくて、東京都なら東京都の例ですね、住民税最高になる所の例を一つつて、そうして一つサンプルにして見て頂けませんか。それは今直ぐでなくてもいいが、後程でもお願いします。  それから次にお尋ねしたいんですが今度の税制改革附加価値税ですね、あれは取引高税営業税か、どういう性格なんですか。
  50. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この問題はもうたびたび大臣からも話をし、私からも本委員会においても説明しましたが、この税の性質は、率直に申しまして、はつきりしないところがあると営業税的に見る見方と、むしろ取引高税的な、流通税的に見る見方と両方あると思うのでありますが、いずれにいたしましても、地方応益課税といたしましては、純粋の收益課税標準にするよりも、この附加価値標準とする税を徴收することによつて、或程度の財源を府県に與えることが、全体の税制構成上妥当であるというところから附加価値税提案しているのであります。税の性質は、これは従つて私共政府の方で解釈を下すよりも、むしろ学界等における批判とか、或いは研究に残して置いた方がいいんではないかと考えておりますが、確かに負担転嫁を予想しているのであつて、純粋な営業税的なものと考えることは無理だろうと考えております。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、前の取引高税みたいに、負担転嫁を予想しているわけですね。そうすると転嫁を予想していると、地方税全体で四百億増税になるといつて、いわゆる附加価値税において増税になる場合、それが誰に転嫁されますか。
  52. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 御承知通り取引高税が廃止しないとすれば約四百億ぐらいある。それから今の事業税が、そのまま置けば、そのまま四百五十億或いは五百億ぐらいになるわけであります。それを両方合せると、九百億ぐらいになると、それに代るものと考えますと、九百億ぐらいのものが四百二十億ぐらいの附加価値税になるわけでありますからして、いずれにしてもその見地に関する限りにおいては、全体として負担が下がる、附加価値税につきましても、この前申上げましたように、中小の商業、小売商の場合は現在の事業税に比べまして著しく下がるというのでございます。反対に大工業の場合は、これは相当に上がるように思います。殊に純益の少い大工業は、これは比較的上がる、平均の利潤を上げておるような工業の場合でございましたら若干殖えるところぐらいのものじやないか、かように考えておりますが、全体といたしましては、取引高税と従來の事業税を廃止いたしまして、附加価値税を代りに置きますから、私は必ずしも物価等に及ぼす影響も少いのじやないかと、かように考えております。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 物価の方に前転というのですか、前に転嫁する。ところが今度の附加価値税になると、大企業の方に行く、そうしてまあ実質的には給料ですか、賃金に附加価値が入つて來るわけでありますが、そうするとそれが賃金の方に影響して來るということはないのですか。後転についてですが、そういう後転と言つていいのか、賃金の方に税が転嫁されるという、こういう虞れはないのですか。
  54. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは私はその時の経済情勢に影響されると思いますが、必ずしも賃金に行くとも限らないと思います。やはり企業としましても、附加価値を採算に入れて経営をやる。従つて先ず商品を合理的に生産して果して附加価値を拂つてやつで行けるかどうか、その辺のところで生産をやるというところでありまして、その商品の買主に転嫁される場合が考えられる、それが売行きが悪くて転嫁されない場合は生産の縮小をする場合もあります。仕入の原料の値段を低く買つてやる場合もある。全体として企業の合理化を図りまして、附加価値税を拂うという場合もあります。やはりいろいろな場合があり得ると思うのであります。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併し前の別の取引高税とか、或いは事業税の場合とを比べて、この附加価値税の方は賃銀の引下げに影響する度合というものはまあ多いのじやないのですか。
  56. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 賃金の方に行く度合が多いとばかりは私は言いにくいのじやないかと思います。やはりその辺は木村さんも御承知通り、税の転嫁法律で決めるわけでございませんから、やはり経済情勢の動きに応じまして企業がどのくらいにやつて行くかということになるかと思うのでございます。特に賃金の方に余計に行くものとも私は考えておりません。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はその点、今度の附加価値税は、そのかけ方から見て、賃金の方に転嫁する名目が割合に前の事業税よりもやり易いようなどうも気がいたしますので、その点は私は相当その影響が勤労者に対して悪いと思つておりますが、これは見解の違いになると思いますから、この点は申上げません。  次にお尋ねしたいのですが、それも誰かもうお尋ねしたか知れませんが、今度の公共事業費でございますね、九百九十億ですか、この場合附加価値税は影響しませんですか。
  58. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 公共事業費に附加価値税が直接影響するというのはどういう面ですか、もう少し……。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういうわけなんです。あれは九百九十億出ますね、主に土建業者が請負うわけでありますが、土建業者の方に多く金を使う、今度附加価値税の実施によつて、そういう多く人を使つておる人ですな、土建なりその請負なんか……、そちらの方の税は今までの事業税よりも非常に多くなつております。そうすると金額は大きいですからね。九百九十億、そうするとそれだけの税を土建業者が拂うとなれば、今までの附加価値税考えないで事業税を考えておるときの公共事業費の金額で行うところの事業量と、附加価値税を取つた後におけるところの事業量とは相当違つて來ると思います。これはどの程度計算にお入れになつておるか伺います。
  60. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今までは御承知通り、昨年から申しますと、取引高税と事業税と両方土建の業者が実際拂つて來たわけでありますが、それと今回の附加価値税と、負担がどうなるかという比較でございますが、具体的に言うと、土建業だけの場合について特別に計算をいたしておりませんが、或いは若干殖え氣味かも知れませんが、私はそれ程大きな影響はないと思います。若干は殖えるかも知れません。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは調べて見て頂きたい。というのは公共事業費九百九十億計上して、これは有効需要を非常に刺戟してこれが復興予算である、こういうふうに言われて、これが非常に今の政府の重要な政策の一つになつているのです。ところがそれから税が差引かれると、実際のそれが有効需要になつて働く度合、それから又実際にどの程度の事業量に応ずるかということが非常に狂つて來ると思うのですね。ですから、これは私は相当大きい影響があるのじやないかと思われますので、その点一つ御検討をして見て貰いたい。どのくらいの影響があるか、今直ぐじやなくてよろしいのですが……
  62. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 仮に頭の中で計算して分るかも知れませんが、千億としまして、四%全部かかるとしまして、四十億でございますが、従來取引高税、事業税をそれぞれ負担している、その差額は、私は全体に対して及ぼす影響はそれ程大きなものじやないと考えます。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全体じやなくて、今度附加価値税によつて特に土建業者の方は影響が大きいでしようと思うわけですね。或いは重工業方面ですね。炭鉱とか……。そこで事業税より税率は下りますけれども、その附加価値計算によつて相当大きくなるのじやないか、外は平均は同じになるかも知れませんよ。併し特にそういう從業者が多いところですね。
  64. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) それから公共事業費は、大分府県等でやる直轄事業としてやる場合もございますが、そういう部面につきましては、比較的影響が少いということになると思います。いずれにいたしましても、全体として考えましても、私は木村さんの御心配のごとく。公共事業費を殖やしたのは本当に殖えたことになるかならないかという問題に影響する程の問題じやなかろうかと考えます。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうですか。
  66. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと木村委員にお諸方いたしますが、本委員会議事都合、或いは本会議の方の運営の事情等もありまして、この際お差支なければ通行税法の一部を改正する法律案議題にして審議を進めたいと思いますが、御異議ありませんか。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それならよろしうございます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  68. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それではそういうことにいたします。御質疑ありましたら、御質疑願いたいと思います。
  69. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 附則の方で、当分の間国有鉄道運賃法の第三條、第六條に規定する運賃とか、外の料金に百分の二十の割合を乗じて計算したものを調整したものと書いてありますが、「当分ノ間」というのは、どの程度を定めるおつもりでありますか。
  70. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この規定は、運賃を税込で定めます場合の、関連する意味におきましてこのような規定を設けております。当分のうちと申しますのは、普通あります通り、何年ということは予定されませんが、一種の恒久的なものでないという意味で、使つておるのであります。
  71. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そうしますと、これは若し将來修正なり、訂正なさるという場合にはどういう含みをこれに持つて考えられるのでありますか。
  72. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 運賃法との事情が変つて來まして修正するような場合には、比較的早くこの方は修正するかも知れません、という含みはあるかも知れませんが、何年間でどうするというようなはつきりした考え方はとつていないのであります。
  73. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 外に御質疑なければ質疑は終了したものと見て直ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。それでは通行税法の一部を改正する法律案議題として討論に入ります。賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。
  75. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私はこの法案反対をするものであります。  その理由は、大体今度の通行税法を変更いたしまして、今まで三等の料金め三倍の二等料金が、一躍倍に引下げられた。而もその倍の料金引下の中に税金まで込めてあるという点は、現在の日本の情勢から見て余りに階級的に恵まれ過ぎやしないかという点が第一点であります。当然これは料金は倍であつて、その他に通行税を負担するというような制度が好ましいと私は思うのであります。それから反対の第二点は、船でありますが、船の二等というものは大体汽車の三等と匹敵する待遇を受けておるというのは、これは常識であります。その二等もやはり普通の汽車、電車のような工合に通行税をとるということは、これは当を得ていない、やはりこれに対しましては免税するのが至当ではないかと、かように考えるものであります。よつてこの二点の修正をいたしたいのでありますが、遺憾ながらこれは修正するわけには参りませんので、この税法反対をいたすものであります。
  76. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて差支ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。それでは通行税法の一部を改正する法律案の採決をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 通行税法の一部を改正する法律案に賛成の方の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  79. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて可決せられました。委員長の提出する報告書並びに本会議における口頭報告については、御異議がなければ恒例によつて取計らいたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。では御署名願います。   多数意見者署名     玉屋 喜章  西川甚五郎     平沼彌太郎  大隅 憲二     九鬼紋十郎  小宮山常吉     高橋龍太郎  藤井 丙午   —————————————
  81. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に酒税法の一部を改正する法律案議題として審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。質疑のある方は御質疑を願いたいと思います。  すでに酒税法の一部を改正する法律案につきましては、当委員会において愼重御審議に相成りましたものでありまして、質疑は終了したものと認めて御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは直ちに討論に入りたいと思います。賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。
  84. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 この配税法の一部を改正する法律案に私は反対をいたすものであります。  ただ同じ嗜好品でありながら、一方において煙草の値下を図つて置きながら、一方においてやはり国民大衆の嗜好品である酒類に対して相当の大幅の増税をもくろんでおるという、この点が反対の理由であります。やはり現在までも酒税が高過ぎて相当脱税が行なわれ密造が行なわれるということを防ぐためには、或る程度税率を引下げて、密造などをしなくとも十分国民大衆が必要に応じて酒を買うことができるという制度にすべきであると思います。こういう点につきまして一今回の税制一般の改革案に根本から矛盾しておる酒税の値上を含むところの税法改正には反対をいたすものであります。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私もこの法案反対いたします。  それは税制全般から見ましてやはり所得税中心の方に変つたとは言え、大蔵省から配付された資料を見ましても、イギリス、アメリカあたりに比較して所得税の比率が非常にまだ少い。私はやはりもつと所得税を中心に徹底すべきであり、所得税についてはこれまでもたびたび質疑いたしたのですが、所得の捕捉というものは非常に不十分であり、特に今度の税制改革においては、二十三年度のインフレ期における所得を基礎にして税制改革をやつたのであつて、我々はそれに対して非常に不満がある。外のものから相当税がとれるのに拘わらず、こういう大衆の嗜好品の方から相当の額を取り、而も日本の税制度で煙草とか酒が租税収入の中で非常に大きな比率を占めるのは変態的であると思うのです。こういう意味で私はこの法案反対であります。
  86. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 外に御質疑がなければ、酒税法の一部を改正する法律案については討論は終局したものと見て直ちに採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 酒税法の一部を改正する法律案について採決をいたします。賛成の方の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  88. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます、よつて酒税法の一部を改正する法律案は可決せられました。尚委員長の提出する報告書及び本会議における口頭報告については、恒例によつて処置することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  89. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。では御署名を願います。   多数意見者署名   九鬼紋十郎  玉屋 喜章   西川甚五郎  平沼彌太郎   小宮山常吉  大隅 憲二   藤井 丙午   —————————————
  90. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次は所得税法の一部を改正する法律案議題として審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 本案については、当委員会は数回に亘りまして質疑をいたし愼重審議して参つたのでありまするが、更に質疑のある方は御質疑を願いたいと思います。
  92. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 主税局長に伺いたいのですが、所得税法と富裕税の関係ですが、いつかあなたの発表だと思いましたが、百万円まで最高の率を決めた最初の案に対して、所得が百万円までで五五%取り、それ以上の所得のある人はどうせ富裕税でも補足的に取られるのだから、結局は最高の五五%が、やはり八〇%とか八五%まで行くのだというような御意見を発表になつてつたようですが、その点の関連性をもう一度はつきりと御説明願いたいと思います。
  93. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 所得税の最高税率につきましては、私共シャウプ案が発表されましたとき三十万円以上で五五というのは今の最高税率の適用を受ける所得階級としてどうであろうか。これは日本の所得の課税、所得税の構成状況が最近非常にフラットになつておりますが、それにいたしてもひど過ぎる、これは或る程度、五五%はいいにしてももう少し高い方がいいのじやないか、こういう考え方を持つたことがあるのでございます。そういう際に百万円というものも有力な一案であつたのでございますが、その意味合において申上げておるのでありまして、富裕税と直接関連せしめまして考えるということまではいたしていなかつたのでありまする富裕税につきましては、むしろ最高税率の問題としましては、富裕税五千万円を超えますと百分の三でございますが、この百分の三の富裕税の税率は、概算額に対しまして所得税の一割もある場合におきましては所得に対しましては三〇%の課税になるわけです。従いまして相当な高額財産所得者でございますと、所得税の五五%と富裕税の所得に換算した場合の負担の三〇%を入れると八五%程度になる。従つて相当大きな高額の財産所得者の場合におきましては、今度の税制は、一部で言われておりますように税は、累退税率といつたようなことは勿論ない。資産所得に対しましてはこの税制としましてはやはり相当累進税率の原則が適用になるように考慮しておるという点はたびたび申上げたかと思います。主としてそういう点が私問題だろうと思います。面接百万円と富裕税との関係につきましては、それ程立入つた説明なり考え方は現在のところも持つていないのであります。で所得税の最高税率を五十万円に踏みました点につきましては、いろいろ検討いたしました結果、結局三十万円を、五十万円程度のところで案をまめましてここに提案いたしたような次第でございます。
  94. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 只今の御説明にもあるように、まあ結局相当の資産家が八五%までやはり税金がかかるというふうに常識上考えられるのですが、その場合において地方税においてやはり例えば住民税が五八%見当というふうなことになると、結局まあ資産による所得よりも税金の方が超過するというような現象が出るのですが、そういうことはあり得ることですか。
  95. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この富裕税は若干今お話のような場合が出て来るのでございます。例えば自家用住宅なんかの場合におきましては、所得がないのに対しまして富裕税を納めると、こういう要素を税制の上に若干加えた方が所得税のシステムとしてはいいというのが財産税を主張する見解の一つでありまして、さような意味におきましては補完税的な意味で若干そういうような傾向になりましても、それよりも全体として公平な直接課税を行うというのが意味があるだろうと、今こういう意味合で富裕税を提案いたしておるような次第でございます。確かに富裕税と所得税を加えますと、実際問と題しましては無收益財産、或いはそれ以上平均よりも利廻が低い場合には御指摘のようなことがあると思いますが、併し財産を以ちまして行く場合におきましては、やはりそういう課税システムをとつた方がいいのではないかと考えております。従いまして富裕税の性質につきましてはそこにおのずから限界があるのであります。これは余り高くなると補完税たる性質をなくして来るのであり示すから、今度の富裕税の税率の最高は少くとも相当の高率の名目財産になるであろうとかように考えております。
  96. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 もう一遍富裕税の関係を伺いますが、確かに大蔵大臣と思いましたが、百万円までの所得者とそれから五十万円以上の富裕税とを睨み合せて丁度バランスがとれるという説明を受けたと思つたんですが、これが五十万円で取られたために、非常にそこに一般国民大衆に及ぼすいわゆる課税の何といいますか、重圧というものが加えられると、こういうふうに思われるのですが、局長といたしましては前の百万円という案と、今度実際にお出しなつた五十万円とのこの案をお比べになつて、どちらが一体今の日本の国民にとつて適当であると思われるのですか、この点ははつきりと一つお答えを願いたいと思います。
  97. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 所得税の税率につきましてはたびたび申上げたように、現在の財政事情と睨み合せて考えておるのでございます。従いまして将来財政事情が更に許すということになりますれば、更に、今度の改正も私は相当改善であると思いますけれども、更に一層改善を図る余地があるだろうということは、前にも申上げた通りでございます。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の油井委員の御質問に関連しますが、今所得税法改正審議になつておりますが、所得税だけを、所得だけを切離して御質問しても意味のない点もあり、勢い外のものと関連した点に亘ると思うのですが、この税制は恒久的税制というようにシヤウプ勧告案に言われているのですが、最初大蔵当局あたりで受取つた感じと、それからその受取つた以後において研究されて提案されたのですが、この提案された法案は相当値入的な税制とお考えになつておるのですか。
  99. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 私は税制のコンストラクションと申しますか、大体の構成、特に国税地方税直接税間接税、そういうもののシステム、制度、これは相当恒久的なものとして私共考えております。又シヤウプ勧告案もそのようになつております。但しこの前にも申上げたのでありますが、税率とか控除とか、こういう問題はある意味におきましてはそう変え得ない一定の限界がございますが、或る範囲内におきましてはやはりそのときの財政事情なり、或いは国民経済の情勢に応じまして妥当な調整を加うべきだ、こういう点につきましては、私は必らずしも恒久的ということを申上げる必要はないものと思つております。その辺のところにつきましては、やはりそのときの事情によりまして妥当なものを決めて行く、財政状態とか国民経済、国民生活の状況を照合せて決めて行くということになると思います。ただ所得税でも例えば合算制度、控除の制度を変えましたり、変動所得につき平均課税を行つたり、或いは取引高税をやめるとか、織物消費税をやめましたり、又地方税につきましては、県に附加価値税を設けるとか、市町村の固定資産税とか市町村民税を財源とする、こういう税のコンストラクシヨンと申しますか、システムは相当長期に続くものとして我々考えておりますというふうに御了解願つたらどうかと考えております。
  100. 木内四郎

    委員長木内四郎君) お諮りいたしますが、午後に継続して如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 所得税法の一部を改正する法律案に対する質疑は午後に継続することにいたしまして午後一時まで休憩いたしたいと思います。    午後零時三十八分休憩    —————・—————    午後二時二十三分開会
  102. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは只今より引続き開会いたします。  所得税法の一部を改正する法律案に対する質疑を継続いたします。
  103. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先程公共事業費についての御調査をちよつとお願いしたのですが、先程の主税局長のお答えですと、附加価値税と事業税及び取引高税との合計の比較をされましたが、御承知のように取引高税は完全転嫁ですから、それを除いて事業税との比較ですな、そうするとどのくらいになりましようか。
  104. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 木村さんのお尋ねの趣旨がよく分らないのですが、附加価値税がかかるために公共事業費の費用が余計掛かつて、そのために何というか事業の分量が減るんじやないか、こういう点についてでございますと、やはり取引高税と事業税と両方入れたところで見なければいけないのじやないかと思います。どういう見地からのお尋ねでございますか、もう一遍伺いましてからお答えいたします。
  105. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 九百九十億の公共事業費を計上しておりますけれども、今度の附加価値税考えれば、予算に計上されておるような事業の分量は達成できない。従つて若し今計画されておるような事業をやるとすれば、もつと公共事業費を殖やさなければならんことになるだろう、こういう意味なんです。その場合に先程主計局長のお話では、取引高税と事業税を加えた額と附加価値税の額とを比較すれば、その方が多い。ですから附加価値税はそのように両方プラスしたよりも多いのじやないから、そんな影響を與えない、こういうお話がありましたが、取引高税の方は安全転嫁ですから、比較する場合には附加価値税と事業税との比較をしなければならんと思うので、そうしますとその差はどのくらいになりますか。
  106. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今のお話のように、取引高税は完全に転嫁するということになりますと、その分が正に事業場の分量に食込むわけであります。そういう税がなくなつた点は、従いましてそういう見地から考える場合におきましては、同じく取扱うべきものしやなかろうか。つまり取引高税がかかつていたとするならば、あれは昨年はかかつていたわけでございますから、そういう場合にはそれだけ事業のコストが高くなつて来る。費用が……
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 費用が掛かるのですが。よそへ転嫁する……
  108. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 土建業者の、何というか請負金高にかかつておりますから、それから従来取引高税は原材料その他にもかかつておるわけであります。従つてその費用は政府が、結局公共事業費として政府が出す場合におきましては、その費用の中に転嫁されて来ることになります。従つてそういう見地から考えますと、私は尚更両者を合せたところで比較すべきじやないか。ただ先程私が申上げましたのは、全体としては半分になるということを申上げたので、土建業の場合とかいろいろの場合に若干のニュアンスはあるだろう、その差はあるだろう。その差は或る程度土建業者の場合は従来の取引高税と事業税を加えたものよりも高くなることがあるかも知れない。併し両者を考えますと、今のお話のように、公共事業費の分量が相対的に、そういう見地から相当マイナスして考えるべきであるという程度のものでなかろうかということを申上げたわけであります。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこが少し見解が違います。私は取引高税はお客さんに転嫁してしまうのですから、それは事業量に……まあその点はそれでよします、私は相当影響あるので、公共事業費九百九十億と言つておるけれども、附加価値税がかかつて来ると、もつと予算を殖やさなければ計画通りのあれはできないと考えております。  次にお伺いいたしたいのは、これは新聞に出ておりましたが、無記名預金、公社債の登録、それと株式の名義書換、あれは中止されるような新聞記事がありまして、大蔵大臣にもあれは伺つたんですが、あの点はシヤウプさんも非常に強調しておるのであつて、合法的な脱税ということを言つております。それをああいう形でやれば非常に弊害があるということであれば、何かそれに代つて、そういう合法的な脱税を取る措置を考えて行かないといかん。もう一つは、譲渡所得は半分控除は依然としておやりになるのかどうか。
  110. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 譲渡所得の半額控除は今後は取止めまして、全額課税いたします。その代り今までのインフレによる値上り部分に対しては六%の再評価税だけを課税する。再評価額を超えて売却譲渡した場合のその差額だけが所得税の課税所得になる。これが本当の実質的な値上り所得ということになるかと思います。  それから今お話の名義書換等につきましては、別途に名義書換に関する機関を設けまする法案提案の見込でございます。そういう機関ができまして、十分に機能を活用するときでございませんと、どうも最近の事態では、まだ株式の流通を余りにも阻害し過ぎはしないかということを考えまして、従つてそれに関連したときは一応もう少しよく審議した上で決定したらどうかという意味で、見送ることにいたしておるのでございます。ただ無記名預金の件だけは、これは別に法制的措置を必要といたしませんので、実際問題といたしまして、そのようなことをやらないということでうまく行くものと考えておるのであります。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは今度提案されましたが、国税犯則取締法、あれは非常に強化するわけでして、特にこの場合に問題だと思いますが、ああいう形で片方では非常に厳格に所得を捕捉し、それで税金を取つて行く。ところが片方では無記名預金その他、或いは架空名義預金、こういうものに対して処置を講じないということは、私は国税犯則取締法の強化とのバランスにおいて非常に平衡を失するのじやないかと思うのです。片一方でそういう今までいわゆる脱税と言われたものはこれだけ押えている、はつきりやつておる、だから外でも厳重にやるのだ、こういうことなら分る。ところがそちらの方については措置を講じないで、今までこうするつもりであつたのを中止してしまつて、そういうところは相当割切れない感じを抱くのです。何らそれについて措置を講じないで、バランスがとれない、余りにこちらが苛酷であると思うが、そのバランスの点はどうお考えですか。
  112. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 国税犯則取締法につきましては、先般もちよつと御説明したのでありますが、今度の改正は、大体むしろ新らしい刑事訴訟法に合せまして、従来解釈土できたことをむしろ具体的にはつきりさせるとか、或いは場合によりましては、むしろ今までの政府に対しまして或る程度の制限を加えるという改正の点が実は十多いのでございましてお話の点は第三條の二「收税官吏臨検、捜索又ハ差押ヲ為スニ当リ必要アルトキハ錠ヲ外シ」云々という條文かと思います。これは従来の解釈では、第二條の捜索の範囲に当然入るべきものと実は解釈いたして参つてつたのでありますが、新らしい刑事訴訟法その他におきましても、成るべくこのようなことに具体的に法律に明らかにした方がいいという 趣旨に応じまして今回この規定をはつきり設けまして、その趣旨を明らかにいたしたのでございます。別段拡張とは考えておりません。それから一方女子の身体の捜索につきましては、これも従来からできたのでございますが、むしろ立会わしめるその人につきましては制限がなかつたのであります。成年者であれば誰を立会わせてもいいということになつてつたのでございますので、それも新刑事訴訟法の趣旨と合せまして、必ず成年の女子をして原則として立会わしめなくちやならんということに変更したのであります。従いましてこの辺のところは、従来のものを実質的に拡張したというよりも、或る事項はむしろ具体的にはつきり條文で書いたことと、一つの事項は更に、一層制限いたしまして人権の保護を完璧ならしめようという趣旨でございますので、御了承願いたいと思います。  尚それから譲渡所得なり無記名債券或いは預金等の調査につきましては、飽くまでも私共脱税に関連があると認める場合におきましては、やはりこのような規定を適切に運用いたしまして、適切な調査をいたすつもりでございます。株式の譲渡所得につきましては、一々譲渡したたびごとに名義書換せしめておきますと、資料かおのずから多く集まり易いということがありまして、確かにそれをやりますれば適切な課税の効果が挙ると私共考えておるのであります。ただ今の現状といたしましては、如何にも株式の流通を阻害するという点がございますので、漸次そういうような機関の整備と相俟ちまして、妥当な処理を図つて行くようにいたしたいという考えでございます。個別的な株式の讓渡等によりまして、相当大きく收益を挙げておつたような人につきまして徹底した調査を加えるというような方針は、別に毫も変えておるわけではないのであります。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 地方税制の方で、罰則の強化があるわけですね。あれは強化ということをはつきり謳つておるのですよ。
  114. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 従来、地方税は実は国税程罰則を科していなかつた例が間々あつたのでございますが、今回はやはり地方税を適正に賦課するという必要が強くなつて参りましたので、大体国税並の罰則を科するということになつておるのでございます。具体的には、税の種類によつて若干違いがあるかと思いますが、従来は地方税国税程徹底した処罰規定を設けておらなかつたのが相当ありまして、そういう面につきまして徹底した措置をとるということに相成つたものと御了承願いたいと思います。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 国税については、今までの国税犯則取締法ですか、それについては、今までやつてつたことを明確化したという程度だとおつしやいますが、やはり受ける感じは、明確化しただけに、それを楯にとつて、非常にきつくなると思うのです。地方税についても国税犯則取締法程度に強化するということになると、やはり相当今後この運用については問題が起ると思うのです。それとのバランス上、どうも今の脱税部分に対する捕捉が、これはバランスを得ないと思います。今は中止して、今後はずつとやらないというわけではないのですね。
  116. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今申上げました通りでございまして、株式の名義書換等の励行が行なわれました場合におきましては、そのようなことと関連しまして更によく検討するということにいたしたいと考えておるのであります。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから次にお伺いしたいのですが、法人税、これが今までの……
  118. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 木村委員ちよつと申上げますが、今は所得税の方を、主としてやつておりますから……
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ああそうですか。農業の方の所得税、これについて公聽会でもいろいろあつたのですが、農業所得を押える時期、これは収穫物があつたときということになつておるようですが、金の入つたときというふうに変更できないものですか。
  120. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは多年所得税法解釈上さように運用して参つたのでございますが、農作物等の場合におきましては、その農作物を収穫した年の、年度の所得にするということに一貫して来ておるのでございます。問題は、むしろ売ります物よりも、農家が自家消費します分について、消費した年度に見たらどうかという意見が一方において相当あるのでございますが、これは一つの見解ではあろうと思いますが、私共長い期間を通じて見ますれば、むしろやはり收獲した時に、売る物も自家消費する物も一致して一貫してやつた方かいいのではないかという考え方でありまして、現在もそのような見方をとつておる次第であります。
  121. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もう一つ、農村における予定申告の時期ですね、これはやはり十一月はまだ繁忙で十二月にするのが適当である、こういう專門家の意見があるのですが、その点はどうですか。
  122. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 單作地帯等におきましては、十一月と翌年の二月と二期にいたしまして、十一月に予定申告をすると、それ以外の場合におきましては七月と十一月と翌年の二月になります。そういうことに相成るのでございますが、まあ最近におきまする農家の供出現金化の状況から見ますると、大体十一月の末でございますから、まずこの辺で異議はあるまいという考えでございます。
  123. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも私は公聽会その他でいろいろこの農村の専門家の御意見を聞くんですが、この農村方面においては今度シヤウプ勧告の税制については、いろいろ意見が出ておりまして常に問題になつているのです。ところが今度の税制改革についてそういうような農家経済の実態から見て、非常に実態に即した具体的な意見が出ているのですね。繁忙期だから十一月を十二月にしてはどうかとか、收穫物があつたときにするか、一定金額が入つたときにするか、そういうような問題、それからその他農村関係においては相当いろいろ具体的意見があるのですが、今度のシヤウプ勧告についてはそういうようなことを余り考慮されていないと、私は農林大臣にも随分この点を言つたんですが、一体シヤウプ勧告が行われているとき、農林大臣としては税制改革にどれだけのことを、意見を述べ手を盡したか。これまで沢山研究されておるのです。今までの税制で不完全なところは非常に研究されているのです、それがちつとも反映されていない。こういうことは非常に私はおかしいと思うのですが、今後そういう農業経営の実態に即して、是非ともそういう点については改正して行くべきじやないかと思うのですか、この点についてただここで私が主税局長質問するから、主税局長が私に答弁するというだけでなく、やはりそういう問題農村経済と税制の問題について今後相当御研究になる必要があるんじやないかとこういうふうに思うのですが……
  124. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今回の改正におきまして納期につきましては相当従来と違つた納期を定めておるのです。例えば確定申告は一月を二月にいたしました。予定申告につきましても、一般の申告と時期を異に定めまして、極力実情に即するようにしております。その時期につきまして若干農業団体の立場からするともう少し遅らして実れという要求があるようでございますが、私共農林省或いは主税局関係ある方面といたしましては、やはりこの程度で我慢できる応あろう、欲を出せばもう少し遅れるのがいいというところではないかと私は考えております。一番大きな問題はむしろ源泉課税をやつたらどうかというシャウプ勧告の考えでございます。これは技術的にできればその方が納税者も便利でいいのではないかということでいろいろ研究しましたが、この点はむしろ農業者の方々もどうも余り実際上問題が多くて面白くないんじやないかという意見がありましたので、これもそういうような実情に応じまして、実は取止めたような次第でございまして、その点は私共極力考えると共に、シヤウプ勧告それ自体に必ずしもよらないで極力実情に即するようにしたい。尚いろいろ細目ににつきましては問題があると思いますが、さような点につきましては今後も研究いたしたいと思つておりますが、大分よくなつたと思います。  それから負担につきましては顯著な下り方をしまして、農民は今度の税制改正税負担の下る人々じやないかと考えるのでございまして、来年の今頃は余程農村の課税は今年と比べて、違つた様相を呈して来るとかように確信いたしております。
  125. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に一つつて置きますが、国税の方においてはそうかも知れませんが、地方税その他を考えますとまだ問題があると思うのです。国税においてはそうかも知りませんが、地方税においては、国税と総合いたしますと必ずしもそう顕著に減税になるとも思えないのです。それから確かにこれも従来から問題であつたのですが、シヤウプ勧告のときに、これを実行に移す場合に、農業所得を勤労所得と見て、勤労控除みたいにしたらどうかと、大体こういうものは一応研究の対象なつたんではないのですか。
  126. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) シヤウプ勧告では、この問題を主としていわゆる勤労控除の差別を少くするという方法で解決しろということでございます。一割五分にいたしましたのは、シヤウプ博士が事業所得者と勤労所得者のバランスを少くする、つまり勤労控除を農業者にやる代りに、勤労控除を少くいたしまして全体で必要な財源の範囲内におきまして、基礎控除、扶養控除、税率等によつて税制バランスを図つて行く、こういう方向から問題を解決するということになつておるのであります。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この逆をお考えにならなかつたのですか。どうも勤労控除を少くして、それで基礎控除を上げたようですが、そこが相当勤労者に対する問題で問題にならなかつたか。やはり農業所得についても勤労控除を認めることについて……
  128. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 少額事業所得に勤労控除をいたしますと、殆んど納税者の大部分につきまして結局控除を認めてしまう、御承知通り資産所得者が最近は非常に少うございまして、所得税の納税者の大部分が勤労所得者が農業所得者、然らずんば営業所得者になります。農業所得者に控除することになりますと諸常業所得者にもやることになる。そうすると殆んど大部分の所得税に控除をしてやらなければならんことになりまして、結局同じことになりますから、結局幅を圧縮することによつて簡素化ということを考えて両方のバランスを図つたらどうかというのが、シャウプ勧告案の意見のようでありますが、私共も大体そういう方向に従いまして立案いたしたような次第であります。
  129. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私のこれに対する質疑はこれで終ります。
  130. 天田勝正

    ○天田勝正君 私の本来の質問をいたします前に、先ず一つ予備的に伺いますが、それは七十一條の関係で「所得税に関する調査に関する事務に従事している者又は従事した者」、こういうことですが、このことは税務官吏とは違うという意味でありますか。
  131. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは税務官吏も当然この中に入るわけであります。
  132. 天田勝正

    ○天田勝正君 入るけれども、その外は……、
  133. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その外は、従来は例えば所得調査委員というのがなりまして、それがここに該当していたのでありますが、特別に委嘱を受けて調査したような場合があるとしますれば、そういう人は入るだろうと思います。
  134. 天田勝正

    ○天田勝正君 そうしますと、具体的には六十四條に「收税官吏は、所得税に関する調査について必要があるときは事業をなす者の組織する団体に」、云々「諮問することができる。」とこういう條項があるのですが、例えば同業組合式のものに諮問する場合もこれに含まれますか。
  135. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今回の改正によりまして、直接所得に関する事蹟は諮問できないことにいたしたのでございまして、大体団体が平素団体員の営業の状態等につきまして知り得ざる事項を税務官吏が質問しまして、それによつて適正な課税の資料にするということにいたしておりますので、そのようなことは今後においてはなかろうかと思いますが……
  136. 天田勝正

    ○天田勝正君 いや、改正法の六十四條と関連して私は質問申上げているのであつて改正法の六十四條にも「諮問」という言葉が出ておりますが、七十一條のこの「調査に関する事務に従事している者」というのは、この諮問された人も入るかというわけです。どういうわけで特に「事務に従事している者」という言葉、税務官吏という言葉でなしに、こういう言葉を以て表現したのは、税務官吏も当然含むと思うから、その具体的なものが六十四條の中に含まれるのではないか、こういう質問をしているのです。
  137. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 改正前の税法でございますれば、或いはそういう場合があつたかと思いますが、今度の改正後の税法によりますと、大分諮問の事項を限定されておりますので、先ずそんな場合はなかろうかと思うのでございますが、併しこれは正規に一定の権限を得て税務官吏以外の者が所得に関し一定の事項を知り得た場合、これは勿論その規定によることに相成ります。この規定は古くは所得調査委員という制度がありまして、その調査委員所得に関しいろいろ調査いたしたのであります。その調査委員と税務官吏と両者を含める意味で、かような字句になつてつたのであります。従いまして最近におきましては大体むしろ収税官吏といいますか、税務官吏の方がこれに該当するというふうに私共は考えておるのであります。
  138. 天田勝正

    ○天田勝正君 それはここに「従事する者」というふうに漠と書いてあるか、これは税務官吏だけだ、こう解釈してよいのですか、それなら……
  139. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 実際問題としては、大体現在は税務官吏になると思いますが、一定の正規の権限或いは調査の委託等に基きまして、本来の税務官吏以外が必要なる資料等を出し調査するような場合がありますれば、その場合はやはりこれに該当するかと思います。
  140. 天田勝正

    ○天田勝正君 そうするとそういうものも、前の所得税調査委員のごときものがやはり予定されておる、こういうふうに承知してよろしいのですか。
  141. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今申しましたように、実際問題としては先ず殆どなかろうかと考えております。
  142. 天田勝正

    ○天田勝正君 では五十二條を一つお開け願いまして、この五十二條によりますと、「前條第二項に規定する訴においては、裁判所が相手方当事者となつ国税庁長官、国税局長又は税務署長の主張を合理的と認めたときは当該訴を提起した者がまず、証拠の申出をなし」、こういうことなんです。これは所得税法のところで質問しろと言うから、ここで申上げておるわけですが、このことはどこにもみんなあるのです。資産再評価法の七十六條ですが、ここにもあるし、相続税法の四十八條それから富裕税法の三十條七それから法人税法の三十七條、国税徴收法の三十一條の四、こういう工合で、まあ大体同趣旨のものがみんなあるのです。元来納税者がまあ申告するわけなんですが、そいつがいよいよとなつて最後は裁判になる。こういう争いが起きた場合に、当人は仮に十万円だと言う。税務署の方はそれを十五万円の所得だとこう言う。ところがこの所得税法五十條の規定で行きますと、当人が十万円だと言つておるのに、十五万円だと、こう役所側が決めてかかる、そうするとそれが十五万円でないという証拠を当人に出せ、こういうわけなんです。むしろ普通の常識からすれば、片方が十万円だというのを、無理に十五万円と主張するのだから七十五万円であるという証拠の方を出して行くべき筈であるところがあべこべに十五万円でないという証拠を納税者の方に出せと、こういう話なんですが、一体これはどういうわけなんですかね。不思議な條文だと私は思つておるが、この点を、一つどうぞ……
  143. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 訴訟の場合の証拠提出の順序につきましては、従来からはつきりした規定がなくて、裁判でも若干の、何と言いますか違つたそれぞれ扱いをしておるようでありますが、先ず証拠法の原則からいたしますと、原則としまして原告でありますか、一定の事実が違うというその証拠を先ず原告側が提出するのが順序であるというふうに私共は解釈いたして参つたのでございますが、それが非常にはつきりいたしませず、又常に如何なる場合においてもそのようなことにするのはこれ又必ずしも実情に即しませんので、ここに書いてありますように、国税庁長官、国税局長、又は税務署長の、主張を裁判所が合理的と認めたときはと、こういうふうにいたしまして、併し勿論それにも拘わらず、当事者は資料、証拠の申出でができることにしてあるということにいたしまして、現在非常にはつきりしていないのを、或る程度はつきりいたしまして、訴訟の際における証拠の提出の順序等から来る問題の解決を容易ならしめるという趣旨でございます。尚シャウプ勧告は、無條件に原告に証拠を提出せしめたらどうかということを言つておりますが、その辺まで行きますのは、ややどうであるかというような気がいたしまして、一応裁判所が税務署長の主張を合理的と認めたときはと、このような方法によるというふうにいたしたのであります。
  144. 天田勝正

    ○天田勝正君 これは併し全くなくもがなの條文だと思いますが、このようなことを規定することが、どうしてこの改正に必要なんですか。私共はこれがなくても一向差支ないものだと思つておるのですが、そうお考えになりませんか。
  145. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この問題は、この規定がございませんと、一般の民事訴訟の原則によりまして裁判所で決めるということになると思うのでありますが、それは非常に漠といたしておりますので、むしろこの程度の規定を置きまして、秩序を明らかにして訴訟の合理的な改正を図つた方がよろしかろうという考えでございます。裁判所が合理的と認めるときはという字句がございますので、お話の通り必ずしもこれでぴたつと確定するわけではございませんので、御議論のような点が出るかと思うのでありますが、かと言いまして、必ずこの訴えを提起した者が出さなければならんというのも、これ又少し行き過ぎであるのでありますし、この程度の規定にいたして置きますと、余程実際問題として訴訟が起きた場合に裁判所が裁判し易くなることではなかろうか認めまして、この規定秘設けることにいたしたいのであります。
  146. 天田勝正

    ○天田勝正君 私は弁護士なんかの裁判の專門家ではありませんから分りませんが、習慣的にも裁判所は恐らく官の言うことの労を民の言うことよりも信用する、こういう伝統があろうと思う。では一体どつちを合理的と認めるかというと、官の方が言つておることを合理的と、こう認めるので、合理的のここに基準でも、こういうことが合理的だということが何か規定されるならば又話は別になりますけれども、合理的と言われますと、結局はいつでも官の方だけを合理的と認める、こういうことは実は分り切つておるお話です。であるから結局いつでも自分の方が十万円を主張しておるのに、官の方が、税務署の方が十五万円だというと、十五万円ではないという証拠を出さなければならん。これはおかしな話であつて、どうしてもその場合若しこういう順序を付けるならば、官の方が、お前は十万円と言うが間違つておるのだ、こういう証拠を突き付けなければならないと私共は思う。そうしなければいわゆる民主的な法律ではない。昨日も実は私指摘しましたように、何か罰則のことになりますと、民の方だけは罰則を適用を受けるけれども、誤つた官の方は一向罰則を適用されないという行き方が一貫して專売法でも何でもあるということを挙げて言つたわけですが、こういうことなどはじかに罰則というわけではありませんけれども、何か国民の人が嘘を言うということを頭から考えて規定しておると考えられる。であるからむしろそうした被告扱にするという意味條文などはどうしても一つこの際避けた方がよいと思う。何かこれを付けるだけの利益が一体あるかどうか、こういう話を聞いておるわけなんです。
  147. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 先程から申上げておる通りでありまして、一応裁判所が合理的だと考えるということは、これは勿論いろいろ外形的な状態等によりまして合理的なりや否やを裁判所が判断すると思いますが、そういう際におきましては先ず原告に証拠を出させる、こういう方法によりまして裁判はよりスムースといいますか、より早く処理されるだろうという考えでございます。具体的な問題になりますと、具体的ケースが出て参りませんと述べにくいかと思いますが、私共の見解としましては、全然規定がないよりもこの規定があつた方が裁判所が合理的なる裁判をする上において非常に適切だろう、かように考えたのでございます。
  148. 天田勝正

    ○天田勝正君 つまり私がお聞きするのはその逆の場合ですね、官の方が先に証拠を提出する義務がある、こういうふうにしても又裁判はスムースに行くだろう、こういうふうに考えるのです。そういうふうには一体ならんものかどうかというわけなんです。どうして民の方を先にした方が官の方を先にしたよりもよいのか、こういうことが私共には不思議だと言つておるのであります。
  149. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この法律にございますように、税務署が更正決定をやります場合には、青色申告の場合は必ず帳面を調べまして、それに基きまして決定をやるわけであります。それから青色申告がない場合におきましても、従来もそうでございますが、今度も法律に明かにいたしまして收入、支出の状況、資産の増減等によりまして更正決定ができるということにいたしておるのでございますが、そのようなことによりまして更正決定をやるわけでございますが、その額が一応裁判所が合理的と認めた、場合におきましては、これを覆そうという原告の方から証拠の申出をするというのは私共順序だと考えるのでございまして、問題は裁判所で合理的と考えるか考えないか、その基準がどうかということにあると思いますけれども、そこまで細かく規定しますのは如何かと思うのでございます。それは所得税の納税者の実情等によりまして、それぞれ裁判所が判断するものと考えておるのであります。
  150. 天田勝正

    ○天田勝正君 七十條以下の罰則について伺いますが、先ず七十條の一項で、一年以下の懲役、二十万円以下の罰金、こういうのがありまして、一号から十二号までずつとございます。それから七十一條に、今度はその調査をする方の、従事しておる者の罰則があつて、七十二條が法人の関係、七十三條が密告とでも申しますか、そういうものの関係、こういうことになつておりますが、これをずつと見てみますと非常に罰則が強化されまして、とにかく強くなつておる、こういうことが言えると思うのです。納税者或いはそれに準ずる者の方の罰則が非常に細かに規定され、且つ強い罰則が設けられておりまして、僅かに官の方と申しますれば七十一條でありまして、これの方は罰金にいたしましても二万円、こういうことなんですが、実にこれは両罰主義で、同じように私は科すべきだと思うのですが、どうしてこういうことになりましたか。
  151. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この七十條の罰則は、いわゆる直接脱税犯には該当しないのでございますが、脱税を誘発せしめるような虞れのある行為をそれぞれ処罰しておるわけであります。従いましてこれは一種の税法犯でございますから、金銭罰におきましては脱税犯と同じく若干額を高くすることにいたしております。懲役刑の方は反対にこの規定にございますように、七十條の方は一年で、七十一條は二年以下で、七十三條は三年以下ということになりまして、必ずしもお話のような趣旨にはできておりません。納税者の税金違反に対しましては、この金銭的な義務でございますので、罰金刑は從來より少し高くなつております。その方が妥当と考えておるのであります。
  152. 天田勝正

    ○天田勝正君  この七十一條の罰則は、税務官吏が祕密を窃用した、こういうような場合には二万円以下の罰金とありますが、二十万円でも三十万円でも、拂える拂えないは別として、ともかくこういうふうに二十万円の罰金を科するならば、やはり同様程度に罰する必要があろうかと思います。どうしてそうしてはいけませんか。
  153. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは私はむしろ懲役刑が主でありまして、罰金刑はどちらかと申しますと從ではないかと思います。必要な場合におきましては、適当な懲役刑を科することにいたしまして十分目的を達成し得るのではないかと考えます。
  154. 天田勝正

    ○天田勝正君 七十三條の罰則と五十四條は対照されるわけでありますが、結局五十四條は、所得税についてこういう嘘があるということをいわば密告した場合の規定だろうと思います。こういうものに対して折角これこれの者にこうした虚偽な申立をしておると親切に言つて呉れた者に対して三年以下の懲役にする、こういうことでは恐らく課税の誤を申立てて來る者はなかろうと思う。なぜこういうような規定にしなければなりませんか。これは改正前からこういう規定がありますが、改正に当つてこういうものをとる必要があろうと私は思いますが。
  155. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 当委員会におきましてはそれと逆な質問がございまして、密告制度もいいけれども、虚偽の事実等を報告して不当に人を陥れようとするような場合には、その弊害が心配されるという御意見もあつたのでございます。私はやはり一定の報告は必要と思いますが、その報告は飽くまでもやはり正確な報告を期待しておるのであります。報告する人が虚偽な報告だということを知りながら密告するという場合は、これは却つて弊害の方が大きいと考えますので、やはり七十三條のごとき規定を設けまして、このようなことのないようにすることが正しいと考えております。これは勿論飽くまでも虚偽の事実であるということを知りながら報告をしたという場合に七十三條が該当するのでございます。
  156. 天田勝正

    ○天田勝正君 六十九條のところでありますが、「前項の免れた又は還付を受けた所得税額が五百万円をこえるときは、情報に因り、同項の罰金は、五百万円をこえその免れた又は還付を受けた所得税額に相当する金額以下となすことかできる。」とありますが、第一項で「詐欺その他不正ので為により、」という形容詞があるのでありまして、そうすると詐欺やその他の不正行為によつて税金を免れた。いわば五百万円を超えるというような大口の脱税のものについてはまけてやる。こういう規定が次の六十九條の二にあるわけですが、一体少額のものをまけるという話ならば分るのですが、大口の脱税をやつた者に対して逆にまけるという規定をなぜ設けなければなりませんか。
  157. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今の規定はお話と反対でございまして、二項はいずれも五百万円より高い罰金を科することができるとこういう意味でございます。
  158. 天田勝正

    ○天田勝正君 逆ですか、でも「金額以下となすことができる。」となつております。
  159. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 免れた所得税額に相当する金額以下でございます。例えば免れた所得税額が一千万円でございますと、一千万円以下の罰金に処することができる。最高限は一千万円まで行けるという規定であります。
  160. 天田勝正

    ○天田勝正君 それならば分りました。一応終ります。
  161. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 外に御質問ありますか。川上嘉君から特に通告がありまして、天田君のあとちよつと簡單に質問したいというお話ですが、川上君やりますか。
  162. 板野勝次

    ○板野勝次君  それでは私がやります。これは昨日も大蔵大臣に対する質問が終つてしまつたので、今度は主税局長にもう少し昨日の問題を続けて質問して行きたいのですが、幾ら考えて見ても、この所得の基礎控除額というもの、この基礎控除をやる精神ですね、それを一体どこに置いておられるかということを、もう少し明瞭に納得の行くように御説明して貰いたいと思うのですが、先ず最初に……。
  163. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その問題は本委員会におきましてもたびたび申上げておるのですが……
  164. 板野勝次

    ○板野勝次君 ですけれども私は納得が行かない。
  165. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 私これは恐らく板野さんとの間には見解の相違ということになるかも知らんと思うのでございますが、まあそのときの財政事情、それから勿論明民の生活状況等を考えまして、そのときどきとしまして妥当なものを定めるということでございます。簡單に申上げますが、これはもうたびたびこの委員会でも申上げましたので、簡單に申上げて置きます。
  166. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと政府はこの基礎控除が二万四千円、月額大体二千円で、これが妥当な根拠としては、例えば物価と税金というような、国民生活の中からこの程度にされたという、その別段の根拠といつてはないわけですか。ただいい加減にまあこれくらいにして置こうというような算定でやつておられるのですか。或いは又今の日本の国情から見てこの程度のものは必要だと政府が思われたのには、何らかの根拠がなければならないと思うのです。根拠がないとするならば、ただ大掴みにこの程度にして置こうと、こうやつたのだと断定しても差支ないということになるのですが。
  167. 平田敬一郎

    ○政、府委員平田敬一郎君) これは私は二プラス二イクオール四といつたよう数字から出て來るというものではない。そのような意味における根拠はないと思う。むしろこれは全体としての財政事情と国民生活の状況等から適切に決めるのであります。いい加減に決めたかと言うと、勿論そうではない。やはり財政の実情、生活の状況その他所得税全体の賃租並びに各税の負担の状況等を照合せまして各方両からいろいろ検討を加えまして、この際としてはこの程度でよろしかろう、で財政の事情等が許しますれば更に将來これを引上げる方向に行きまするということは、政府としても勿論考えておるということは大蔵大臣が言われた通りでございます。
  168. 板野勝次

    ○板野勝次君  そうしますとこの問題、基礎控除の問題は、併し収入の問題と更に地方税の問題とからんで政府はお立てになつておられるに相違ないのです。一つ税体系をお作りになる、全体の中からこの基礎控除というものをお考えなつたわけです。殊に法人税を安くしようとされるのですが、提案の理由の説明によつても、税制改革というものが負担の公平化という面に重点を置かれておるのなら、この基礎控除の問題と法人税を安くして行く資本の蓄積との間にはです、国民として納得の行く基礎控除でなければ、法人殊に巨大な会社のみが非常に税の軽減を受けながら、零細な人達は自分の生活の中に食込んでも、尚この生きるか死ぬかという瀬戸際に置かれておる人からも、尚税を取立てて行かなければならないという日本の現状に対して、国民は納得できないと思うのです。その納得できるような説明は今の答弁の中からは聞くことができなかつたのです。そうすると今の国の財政の状態から見れば、ほんの僅かな、つまり生活の保護を受けておる人達が貰うような、それと前後する程度の収入を持つておる者からも税金を取上げるようにしておるのに、一方においては非常に法人税を優遇して行く、こういうことになつて來るわけですから、從つて基礎控除額というものをこの限度にしなければならないという事情を、この所得税の軽減と睨み合せてもう少し納得の行くように説明しで頂きたいと思うのです。
  169. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これはお手許に資料を刷つてお配りいたしておりまするが、基礎控除を一万円引上げて極く僅かだとおつしやるのですけれども、実際は相当これは大きいのでございまして、賦課税額で行きますとこれで三百九十九億円の実は減收になるのでございます。千円当り大体三十六万円くらい、これは上になりますと減税になるのでございますが、これは相当私共としましては大幅な三十六億円の減税になるかと思いますが、今回の引上によりまして相当私は下層所得者の負担の大幅の軽減を図つておるつもりでございます。で従いまして勿論基礎控除は例えば据置きまして、所得税の最高税率だけ下げて行く、或いは法人税だけ下げる、こういうのならば、域いは御非難の点に当るかもしれないと思いますが、基礎控除におきましてもできるだけ妥当な引上を行いまして、いろいろな方面において是正を加えまして、そのときにおきまして最も妥当な税制を打立てよう、こういうわけでございます。
  170. 板野勝次

    ○板野勝次君 私は何遍聞いても同じだと思うのですが、今おつしやつておるのは、それくらいの基礎控除を引上げて來ておるために三十六億円くらい減收になつた、こういうふうな数字の魔術を私は質問しておるのじやなくて、最低線の中に生活しておる人達の現状から尚負担して貰わなければならないというその理由は、ただ單に基礎控除をそれだけ上げたかも三十六億円の減收になるのだということだけでは、法人税の減税と睨み合せて、最低生活の線にある人達の生活の具体的な事実の中から、これだけの程度で十分生活ができ得るからこの程度の基礎控除で辛抱して貰えるのだという理由にはならないと思うのです。ただそれは全体の中で三十六億円、それだけでも、減收になるのだという説明であつて個々の家庭生活というものが只今主税局長説明の中からは受取れないと思うのです。
  171. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) ちよつと数字を誤解なさつておるようでありますが、一万円の引上で三百九十九億の減收となつております。この外に千円引上げますれば更に三十六億程度減るだろうということであります。従いましてその点は誤解のないように願います。これは基礎控除をどうするかということによりまして、所得税の税額は相当大きく違うのでありまして、そのことは他面におきまして多数の所得税の納税者の負担が大きく違うということを意味しておるのであります。私は基礎控除につきましては、これはたびたび説明しましたから、繰返すのを省略いたしまするが、全体としての今回の税制案の立案、バランス、それから予算の状況その他からいたしまして、この程度で二十五年度としましては妥当である、このように考えおるのでございます。勿論私共は国民生活の実情に応じまして控除等の引上を行なつた方がいいということは考えておりますが、現在と比べますとこれでも相当大幅の減税になりまするし、それから尚財政状態は、二十五年度におきましても、二十四年度と比べますと余程緩和して参りましたけれども、尚相当な負担をして頂かざるを得ない実情でございますので、まあこの程度で最も今の段階といたしましては妥当ではないかという考えを持つております。
  172. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと、大体生活保護を受ける程度の収入がある人達がですね、これで更に地方税というものが決してかかつて來ないわけじやないので、地方税との具体的な考慮の中で、全体として減税になつて來るという具体的な数字を、この委員会においてお示しになり、しばしば説明されたというのですから、お示しになり、そして最低生活の中にある人達が、税金を取られて行つても尚且つ食生活において心配がないという具体的な根拠をお示しになられたことがあるのですか。
  173. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これはとつくの前に資料を差上げまして、国税及び地方税の直接税総合負担額表という表と、税制改正と補給金削減等による公価の改訂等の勤労者の生計費に及ぼす影響という表と、これは相当大きなのを二つ、とつくの前にお配りしまして、先般秀油井委員に対してこの表は相当詳しく御説明申上げましたのですが、その表につきまして十分御検討を願いたいと思います。
  174. 木内四郎

    委員長木内四郎君) まだありますか。
  175. 板野勝次

    ○板野勝次君 まだ幾らもある。
  176. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 川上委員から質疑の手続がありますが……
  177. 板野勝次

    ○板野勝次君 それじや……
  178. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 川上委員
  179. 川上嘉

    ○川上嘉君 相当具体的な問題になりますが、この勤労所得税について、最近非常に中小事業者が不振のために、従業員に対する俸給が遅れて出ているのですよ。こういつた人達に対する勤労所得税の徴收猶予とか、こういつたものが必要じやないかと思うのですが。
  180. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今の点につきましては、確か大臣からお答えになつたと思いますが、実際問題としまして、納税に困難な場合におきましては、分納等をされましても、それは拒否をしない。それでもよろしいということになつているわけでございます。ただ残つた分につきましては、これは必要な督促をいたしますし、場合によりましては差押処分を行います。それはそのときの状況によりまして必要な措置を講じて行くということに相成るわけであります。
  181. 川上嘉

    ○川上嘉君 そういつた考え方を統一する意味で、この徴收法の第七條の徴收猶予のところに、何らかこういつたような條文を謳つた方がいいじやないでしようか。
  182. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは納税者の状況に応じまして、いろいろ違つて参りますので、この條文で画一的に規定するのはなかなかむずかしかろうと思う。この辺は運用の衝にある者が行政の責任において妥当を期する方法で行くべきじやなかろうかと思います。実際問題としましては、納税に当りましても、本当に納税困難であるという場合におきましては、或る程度の分納も認めておりますし、それから又確実に計画に従つてつて参ります場合におきましても、そう一律に無理なことをしない。どうにもいかんという場合においても最後に止むを得ざる方法といたしまして、競売処分等を行うというのでありますが、これはなかなか一律にも決め難いのでございます。やはり行政当局の責任におきまして妥当な運営を図つて行く方向に持つて行くのが、私共妥当ではないかと思つております。
  183. 川上嘉

    ○川上嘉君 そうすると困難な場合は事務当局でやつて差支ないと了解していいわけですね。
  184. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今申上げました通りでございます。
  185. 川上嘉

    ○川上嘉君 それと、これも随分永い間問題になつているのですが、まあ不当な課税を受けた、誤謬決定でもいいし、認定の誤りでもいいし、そういつた場合に取消方或いは訂正方の申請をした、そして申請すれば直ちに赴いて実地調査をやつて速かに訂正するなり、又は訂正できない理由を明らかにすべきですが、現在の人手不足とか或いは仕事が山積しているので、手が廻りかねて随分日が延びるということが事実です。そこでそれがはつきりするまでは、事情によつては税金の徴收を猶予すると、こういつたことは考えるべきじやないかと思うのですが、この点についての御見解をお願いします。
  186. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その点も御説明申上げたと思いますが、比較的はつきりした誤謬でありまして、即座に直していいものは直す、調査を要すれば成るべく早く調査しまして適正な価格に直す。大体におきまして、はつきり処分ができないが、直る見込のものにつきましては、お話の通り徴收等につきましても適当な措置を講ずるという場合があるかと思います。これもやはり個々の場合に応じまして、それぞれ妥当な処置を図つて行くという以外に、余り具体的には、一般的には申上げにくいと思いますけれども御了承願います。
  187. 川上嘉

    ○川上嘉君 それならどうしてもやつはりこの七條の二項に、徴收猶予は、「非常ノ災害ニ罹リ政府ニ於テ其ノ被害調査ノ為時日ヲ要スルトキハ其ノ間税金ノ徴收ヲ為ササルユトアルヘシ」こういうのですが、その次に、やつはりそういつた面に対する措置を講ずべき何らかのものを是非とも第二項として設けるべきじやないかと思うのです。その方が却つていろいろ現在町に起つておるところの課税、税金に対する紛争を処理するゆえんじやないかと思うのです。そういつた問題から一つ一つ片付けて行くということが、これは今お話の通りに、直ちに行つて実額調査ができればいいのですが、なかなかそうは行かないのですよ。納税者の場合には一月以内に異議があれば申立をしろということになつておりますが、税務署の場合には必ず一月以内には実額調査をやるべきだという條文があればいいのですが、一ケ月経つても二ケ月経つても三ケ月経つても來ない。その間に税金を納めないと差押される、こういつたことになれば余りに一方的じやないかと思うのですよ。そこで是非ともそういつた條文をここに、第七條の二項に設けるべきじやないかと思うのです。
  188. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今御指摘のように税務署長は相当の事由があると認めたときは、税金の全部又は一部の徴收を猶予し、又は滞納処分の執行を停止することがあるという規定がありまして、この運用に当りましては今申上げておりますように十分納税者等の立場も考慮して適切を期すべきだと考えますが、具体的に今お話のように一律に一定の場合においては必ず猶予するというようなことは、なかなか実際問題としてはむずかしかろう。私共は飽くまでも行政の運用面におきまして、そのような点について妥当を期するように努めたいと考えておるのであります。
  189. 川上嘉

    ○川上嘉君 それからもう一つ、これは具体的な問題になりますが、大工とか左官とかそれから日傭労務者とかいつた一人親方の場合ですね、これが請負業者の所に行つて働く場合には、日給で働く場合には、勿論源泉で税金は引かれるわけですが、個人のところに行く場合、個人の場合には拂つた人が当然に徴收義務があるのですが、そういつたことが分からないためにそのままになつている。そのままになつて所得が捕捉し難いという理由によつて、実際は勤労所得性質でありながら、それが事業所得として課税されて行く、これは大きな問題と思うのです。実際日傭者が貰うのだから日給であつて、飽くまでも勤労所得性質でなければならない。ところが今言つたようなわけで、捕捉し難いため、事業所得をかける。事業所得をかければこれに関連して地方税においても相当な負担がでて来るわけです。それでそういつた人達に対する税金の負担乙いうものか非常に過重になつて来る。これに対して何らかの措置を講ずべきではないかと考えるのですが、この点については、非常に今大きな運動がある、要望があるのです。こういつた点についての一つ御見解を伺いたいと思います。
  190. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) これは実際にあつた事実があります場合におきまして、税法をどういうふうに当嵌めるかということに関連して、お話の通りこれはなかなかむずかしい問題のようでございますが、私共若干そういうことに関しまして問題を聞いておるのでございますが、これはなかなか事実問題は錯綜いたしておりますので、所得自体も給與所得と見るか、事業所得と見るかなかなか限界線が引きにくい。本来給與所得であつたものを事業所得と見ることはないと思いますけれども、実情によりまして、その辺のところについては適切を期する必要がありますが、これは非常に具体的な問題になりますので、更に別途の機会によく調査しまして、それに基きまして妥当な処置を加えて行くように取計らいたいと考えております。
  191. 川上嘉

    ○川上嘉君 今の問題ははつきりする必要があるんですよ。これは勤労所得性質のものか、事業所得性質を持つものかはつきりしないと、例えば一人の親方で、君は釘を少し持つてつたじやないか、それから板を持つてつた、材料を持つてつたのだから請負だといつて事業所得をかけられるのじや大変だと思う。大工だから板少しくらい安く買えるのだから、主人に代つて板を買つて置いて或いは便宜を図つたのかも知れない。それを一々自分の家に買つて置いて、安く買つて置いて手許品を使つた、だからそれに相当な利益を見てその家に売り付けた、こういう工合に見られてそこに事業所得として課税される、実はそうではなくて便宜上、そこへ日給で働いておるのだ、まあ如何なるものよりも主人が大事であるということから、便利がいいから実費で買つて、それを実費で渡したということで、何ら物品販売の性質がないのです。それを一々事業所得だとして課税されたら大変だと思う。これももつとはりきりとしなくちやいけない、早急にやらなくちやいけない問題だと思う。
  192. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今のお話のように材料等を提供して、一定の仕事を引受けてやるという場合におきましては、これはもう法律上当然請負でございまして、これは事業所得になるのでございます。これが全く賃金だけで、一日幾らというふうに日給だけ貰つておるという場合には、私はやはり日傭労働者と同じように勤労所得であると思います。実際問題としまして今のお話のような状態の人は、両方の仕事をいたしておる場合だろうと思います。そのどちらの性質が強いと認めまして実情に応ずるように課税するか、この辺は御指摘通りなかなか問題があるのでございまして、従いましてこれはむしろ実態に応じまして妥当な措置を図るように具体的に指導して参りたいと考えておりますので、それによつて御了承願いたいと考えるわけであります。
  193. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今の問題に関連しまして、大蔵大臣が衆議院においてこの問題について相当はつきり述べられておるのですが、これは主税局長もお知りだと思うのです。この問題は前から私も実は主税局長に、その土建労働組合の方から、依頼を受けておりますが、この問題がはつきりしないので税務署等との間でいざこざが起きておりますので、これは至急に処置ざれることを望むものですが、大蔵大臣のお話ですと、そういう組合とよく話合つて、そうしてその実情に応ずるような処置を講じたいというようなことを言つておられましたが、その場合ですね、考慮して頂きたいのは、組合といつても親方の組合もあるんですよ。そういう親方の組合、それから本当に勤労的なそういう日傭労働者的な組合もあるんですから、そのときにやはり一番問題になつておるのは、土建労働組合の方で問題になつておるわけですから、それで一つ御考慮して頂いて、これは至急、非常に迷つておりますから、実際問題としてもどの程度という認定は非常に困難だと思いますが、何かそこで安心できるような……そうすればその納税についでも相当協力できる、こういう状態にありますから、至急処置されることを要望して置きます。主税局長それに対して一つ
  194. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) お話の通り衆議院大蔵委員会におきましてもお話がございまして、まあ大臣からも大体私がお答えしました趣旨でお答えしてあるのでございますが、一面これにつきましては、財務局で余りにも便利な方法を確か認めまして、組合等で源泉課税をやるのと同じような方法をやつてつた例があるようでございますが、それですと如何にも法律にびたつと来ない点もございます。どうも成るべく実際的解決を図りたいと思いますが、同時に法律との関係もよく考慮いたしまして適当な処置を講ずるようにいたしたいと考えております。
  195. 板野勝次

    ○板野勝次君 この日本人の所得税の問題と関連して、外国人の所得の問題を日本の今度の税の体系というものの中から見て、外国人には非常に税の負担が重いから、外国人の所得に対する特別処置を講ぜられようとして来ておるわけです。そうしますと外国人と日本人との間に、非常につまり差別待遇が行われて行くということは、外国の資本と日本の資本においても非常な差別待遇を行なつて行くのであります、こういうようなことになりはしないかと思うのです。
  196. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その問題は近く法律案なども出しますから、その際に是非詳しく御検討頂いたらどうかと思いますが、法人課税については特別扱いいたしません。大臣からお話になつたように、個人の給與所得でございまして、これは中心は如何にも所得の高さと申しますか、及び生活水準が全体としてアメリカと日本等と違うために、向うの所得は例えば一万ドルの所得でありましても、日本に参りますと三百六十万円とかになるのでございます。やはり所得税の負担が違つて来ることになりますので、その辺の調整を図りまして、日本に必要な外資の導入等ができるようにいたしたいと、こういう趣旨で立案しておるのでございます。この法案は近く提案いたしますので、その際に更に詳しく御審議願いたいと思います。
  197. 板野勝次

    ○板野勝次君 併しこれは切り離して考えるわけにはいかんので、この所得税の問題とあらゆる地方税も、固定資産再評価の問題も、外資導入の問題も、外国人の所得に対する特例をやられようとしておることも、或いは外国人の資産の取得に関する政令五十一号を更に変えようとしておられる、こういう一体的なものにからんで来て今度の税というものを見なかつたならば、日本が一体どうなつて行くのかということを見失つてしまうと思います。従つて私が聞くのは、そういう処置を、外資導入法案を作るときに国の資本が自由に日本の中で行動できるというふうな体制を作つて行くならば、日本の事業というものが、外国の資本の力によつて押潰されて行くと、こういう結果が出て来ると思います。大蔵大臣は昨日は外資導入結構であつて、外国からどんどん入つて来るならば、日本が建て直つて行くのならそれで結構だという、それは日本の国でなくなつてしまつて植民地になつてしまつても、この日本の国がどこの国の手に渡つてつても、美しくさへ再建されておればいいという考えの下に外資導入をやられるのは、それは結構だ、そういう観念でこの税法改正がやられておるとしか見られないから、外国人に対する所得を、而も特定法人に対する所得を軽減して行つて、そうして財産の取得その他の方法についても、あらゆる手厚い援助が行われて来るならば、日本の今までやつて来ておる、殊に中小企業というものの立ち行く途が、外国の資本の特典と到底太刀打をして行くわけには行かない、そうすれば勢い中小企業も、民族資本も段々と外国資本によつて、駆逐をされて来るのではないか、こういう中で税体系を見なければならないと思うのですが、そういう点についてはちつとも政府の方ではお考えにはなつていないわけでありますか。
  198. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) どうも板野さんの御質問を承つておりますと、昨日大臣に御質問になりましたのと全く同じようなことだと考えております。大臣は昨日お答えになりましたように、そういうところまで大きなことになるなら、これは誠に結構だけれども、恐らくそういうことになり得ないだろうと思う。日本としては少しでも外資が欲しいからこの際としてはできるだけの措置をいたしたいと、こういう御説明のようであつたのでございます。少し大きく問題を誇大にとられているように私は感ずるのであります。いずれこの法案は具体的な姿で提案いたしますので、その際によく御審議願つたらどうかと思います。この法案がどう転んだかということによりまして、基本的なものにそう余り大きく影響はなかろうと私は考える次第でございます。
  199. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところが昨日もこれは問題になりましたが、二十一條の三によりまして前年度の所得以上に申告されなければならないという規定から見れば、現在の状態から見れば非常に苛酷だ。苛酷であることが分つておるから、国税犯則取締法改正して行つて、婦人でさえも丸裸にしてそうして税金を取上げて行く。こういうふうな算盤勘定を彈いて行かれて、更に罰則で罰金も、懲役も強化して行つて取上げて行く。こういうことになれば、日本の一般の勤労大衆というものは手を挙げて行かなければならん。そういう苛酷なやり方をとつて来て、そうして外資導入の更に地平らしをやられる。これはあなたに聽くのじやないのですけれども、この十八日の日本経済新聞には大蔵大臣が言つたと言われておるのですね、つまり芸者でも相手を選り好みするようではその芸者は一流の芸者ではないと思う。(笑声)だから選り好みをする必要はないのだ。大蔵大臣はこう言つているのです。あなたが言つておるのじやない。そういうふうになつて来ると、選り好みをせずにどんどんと入れて来て、そうしてとにかく外資が導入されて行くならば結論として落ち行く先は同じスタート・ポイントじやないのであつて、一方において非常に手厚い援助が行われて来るのならば、日本の独自の民族資本というものは外国の資本と太刀打ちができないことになりはしないのですか、このことをお聽きしたい。
  200. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 板野さんは、さつきから申上げておりますように誇大にとつておられるようでございますが、まあ結局見解の差ということになるかも知れないと思いますけれども、それ程問題を何と申しますか、こじらして考える必要はないと私は考えるのでございます。この点は大臣も昨日お話になつ通りでございまして、私共といたしましては日本の本当の復興を図る意味におきまして、できるだけ外資が余計入つて参りまして、日本の復興ができますれば、日本としては非常に仕合せではないか、こういう見解の下にそれに必要な措置を講じておるだけのことでございます。
  201. 板野勝次

    ○板野勝次君 私は何も誇大に言つておるのではない。誇大に言いたいのは、そういうふうに外国の資本に対して非常な特例が設けられて来るのなら、仕舞いには外国人に看板を貸して、そうしてやつて行かなければ商売が成立たないようなことになつて来るのだ。こういう問題と為替管理法の問題について話して見たのです。事実又そういう外資導入の法や或いは政令五十一号を改正して行けば、外国人の看板が掛かつていなければやつて行けないという結論が出て来るというわけなんだ。それを今から防ぐ用意なしにこういう税体系改正をやられて行くと、事業上成立たないものが沢山できて来る。殊に二十一條の三の規定と軽んで没落する危険性があるのじやないか。危険性ではない、没落して行く。そこへ持つてつてつて刑務所にぶち込まれたり、女の人は丸裸にされなければならない。こういうふうにひどくなつて来るのであつて、段々と巧妙に外国の資本の力が特例によつて加わつて来る。そうすれば外国の資本が入つて来ておる産業と入つて来ていない産業は、同一の産業であつても太刀打はできない。こういうことになろうかと思う。何も私は誇張して言つておるのではなくて、そういうふうになりはしませんかと聽いておるわけであります。
  202. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 先程申上げました通り、又大臣からも申上げた通りでありまして、結局見方の差と申しますか、見解の差であろうと思います。街従来のことは、国税犯則につきましてまだお分りになつていないようでありますが、女子の身体の検査につきましては政府がむしろ制限を加えようという規定であります。並びに「臨検、捜索又ハ差押ヲ為スニ当リ必要アルトキハ錠ヲ外シ戸扉又ハ封ヲ開ク等ノ処分ヲ為スコトヲ得」ということをはつきり規定したというだけで、従来の規定を拡張したわけではございません。その点一つ誤解のないように願います。政府の見解としてはつきりこのことを申上げて置きます。たびたび申上げましてもすぐ反対のようにとられまして引合いに出されては迷惑いたしますから、どうぞ御了承願いたいと思います。
  203. 板野勝次

    ○板野勝次君 その点は併し止むを得ない場合には、例えば婦女子の身体を検査するという止むを得ない場合には独自にやれるのでしよう。そういうことになるのではないのでしようか。
  204. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 現在の規定によりましても婦女子の身体の捜索はできるのでございます。ただ現在の規定によりますと、成年の者を立会わしめればよいので、女子でなくてもよいということになつております。これは如何にも新刑事訴訟法下におきまして適当ではないとして「成年ノ女子ヲシテ立会ハシムベシ」ということに、むしろどつちかと申しますと、女子の立場を考慮した規定を新たに設けたわけでありまして、その点を非常に変なことをするというようにお考えになるのは少しどうかと思うのでありまして、認識を新たにして頂きたいということを申上げて置きます。
  205. 板野勝次

    ○板野勝次君 私は何も変なことをするというのではなくて、そういうふうにして行つて、婦女子にそういう脅威を與えるようなことをしながら、やはり算盤勘定をひどく弾いておるというところに問題がある。婦女子を丸裸にするということに興味があるのでなくて、丸裸にするという脅迫の中に政府は弱い者から、算盤勘定と弾きながら税を取立てて行くということに問題がある。なぜ罰則なんかを、罰金や懲役なんかの罰則を強化されなければならなかつたのか。それは今までの徴税というものがめちやくちやだつたからいろいろな人達が拂えないでいろいろなことをする。そうするとそれの逃口というものを塞ぐだめに罰則を強化されたのだと請うようにしか理解できないのですが、その点どうですか。
  206. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 何遍お答えしても同じになりますから簡單に申上げますが、婦女子につきましては今申上げました通り、現在の法律よりもむしろ制限を加えたというように御了承願いたいと思います。それから罰則等につきましても非常に強化しておるというお話でございますが、必ずしもそうではないのでありまして、それぞれ最近の情勢に応しまして妥当な罰則の改正を加えたのであります。地方税法は先程も木村委員も言われましたが、今の罰則が国税等に比べまして不十分な点がありましたので、これは強化する点もあると思います。国税につきましてはお話のように大したことはございません。ただ一点だけ申上げますと、正当な理由がなくて申告しなかつたような場合、これは今まで全然罰則がなかつたのでありますが、これらにつきましては必要な罰則を設けることにいたしたのであります。
  207. 天田勝正

    ○天田勝正君 予定申告が前年の税以上でなければならん。そういうことに二十一條、二十六條辺りにちよつと書いてありますが、これは恐らくどなたかもうすでにお聞きになつているとは思いますけれども、殊に農業所得などについてははつきりと年々下つて行くということが予想されまして、農業恐慌来たるという感が深い、このことについて農業団体等は、いろいろ最低価格の保障であるとか、いろいろ考えられていることは政府の方でも御存じだと存じます。こういうふうにはつきりしている場合に、どうして前年以上の予定申告を提出しなければならないのか、簡單に言えばそういうことになるのですが、或いは又地域的に瀬戸内海沿岸の四国等では年々土地が沈下いたしまして、これが農林関係で大きな問題になつております。こういう所も、これは常時所得が低下しているということがはつきりしているわけなんです。それにも拘わらず前年よりも上にしなければならない。尤も上にして見たところで、実は確定申告で又幾らでも直せるのだから……こういうことになりますけれども、こういう点について私共は非常に不安なんです。なぜかと言えば一旦出したものをなかなかそれ以下に官の方で直して呉れる気遣いは今まではなかつた。やはり前の例によつて判断する外に方法がありませんから……、そこでこの点を何か今法律で直せば一番いいんでありますけれども、政府がこの法律の通過を一生懸命に念願しておられる点からすれば、何かこの点は行政措置等で緩和するかどうかしなければ……、結果においては年々所得は下つて行く。実際には前の高かつた当時の所得に応じて申告しなければならない。それは特に政府の許可を受ければ別にそういうことをしなくてもいいんですか、その許可というものがこれ又なかなか過去の例からすれば、いろんな許可について容易でない。こういうことも予想されて、結果的には苛歛訣求という形に陷つて行きはせんか、こう思うのです。そういう点で何か緩和される御用意があるかどうか。ついでに伺つて置きますが、これは実は国税犯則のときに伺つてもいいことでありますけれども、現在私はこのシヤウプ勧告案が出ましたときに、自分の所の所管の税務署やら、或いは又国税庁に行つてこの申告等について、先ず納税者を教育したければならない、ところがこの教育に先だつて税務官吏自体が教育されなければならない。その確信があるかということを尋ねましたところが、非常にこれには疑問を持つて、実はそういう確信がないということを、人の名前を挙げては申訳ありませんから言えませんが、率直に申されている。こういうことと睨み合せまして、今の予定申告というものは確定申告でどうしても納税者の方はどうにもならないという窮地に追い込まれる危険がありますので、特にこの質問をするわけです。
  208. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 前段の問題につきましては、本委員会でもたびたびお話申上げたのでありますが、或いはこういうふうに申上げたら却つてお分りいいかと思いますが、結局予定申告のときにおきましては、前年程度まで申告して頂ければ、それに対しては更正決定をしないということであります。勿論予定申告は、大体原則に予定申告という原則を壊しておりませんので、そのときの見積りが高ければ、高く申告をして頂くのが本筋でありますが、前年の高さまで申告して頂けば更正決定をしないのであります。それから下りました場合におきましては、承認を求めて来ます場合に、一定の要件に該当する場合には、政府は承認をしなければならないことにいたしているのであります。又要件に該当しな場合におきましても、実情によりまして極力妥当な運営を図るようにいたします。全体といたしましては今年度におきましてはいろいろ所得の状況等が変つているようでございますから、勿論この條文運用につきましては、御意見のように十分適切を期する方針でございます。  それから第二番目の問題につきましては、これは非常に重要な問題でございまして、現在まだ十分熟練していない税務官吏が相当多数いるのでございますが、その訓練には国税庁におきましても鋭意努力いたしております。最近におきましては、昨年度の予算で計画いたしました通信教育等の方法もやつと軌道に乗りまして、今その印刷物等も地方に発送いたしまして、勉強をして貰うことにいたしております。これはやはり職員の心掛けと、それから役所の指導の仕方でやはり改善し得るのではないか、又改善し得る方向に仕向ける必要があるというふうに考えております。御意見の点十分よく承わりまして、政府としましても十分善処いたしたいと思つております。
  209. 森下政一

    ○森下政一君 主税局長にくどいと思われるでしようが、最後に一つだけもう一遍板野君の質したことを聞きたいのであります。この点は本国会でも又前国会でも池田大蔵大臣の所信を質した。あなたとも論争したことがあつたかと思いますが、今度の根本的な税制改革の機会にもう一遍質しておきたいのは、それは基礎控除の問題です。先刻来の御説明財政上とか、予算関係とかと言つて、それらと睨み合して今回の改正においては、基礎控除というのは二万五千円に引上げる、この点が妥当だと解釈しておる。そういう政府の見解が私には分らない。基礎控除というのは一体何だ、何故そういうものを設けるのだという根本の精神です。つまり理想から言えば、板野君がさつきから言うように、最低の生活費は租税の圏外に置くのだという意味のものだと私は考えたい。ただもとより人によつて最低の生活費というものは非常に違いがあるでしよう。だけれど、社会通念から概ねこのくらいのものが今日本人の最低生活の費用だというものを掴むことは困難じやないと思う。理想から言えば、その額を基礎控除にしたい。但しそのときの財政事情、予算関係等と睨み合わせて、必ずしも理想通りには行かん。現段階においては二万五千円くらいが妥当だと思う。こういうことなら私は政府説明は一応分る。だけれど最低生活費を租税の圏外に置くのだという精神は、全然基礎控除という中にはないのだ、そうでなくてただ所得の中から或る一定の額のものを基礎的に控除するのだ、こういう意味ならこの基礎控除とは一体何だ。二万五千円が高いとか低いという問題じやない、何だということについて大蔵当局の見解をはつきりさせて頂きたい。
  210. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その点は前々から申上げている通りでありまして、確かに基礎控除の性質につきましては、人によつていろいろ意見が違うと思います。学者等にも最低生活費として必ず控除しなければならないと言う人もあるかと思います。確かにいると思いますが、例えばシヤウプ勧告ではその点につきましては政府のサーヴィスの費用、これも一種の生活費と考えてもよかろう、こういう見解を述べているようでありますが、併しいずれにいたしましても確かに国民生活状況、それから生活費の状況、そういうものが基礎控除を決めます場合の重要な一つ判断材料になるということは私も間違いないと思います。と同時に併し他の一面におきましては、財政の状況、これによりまして所得税にどの程度考慮するか、そういう方面と両方両から考えまして、そのときとして妥当な控除をするということにせざるを得ないのではないかと思うのであります。従いまして最低生活費は必ず控除するという特にそういうところまでは、私共必ずしも賛成いたしかねるのでございますが、そういう事情を十分考慮して、同時に財政事情も考えつつ、そのときとして妥当な額を決めるということでありますれば、私の意見としましては、その通りだと考える次第であります。
  211. 川上嘉

    ○川上嘉君 ちよつと総括的なことで聞きますが、税制の改革は一番問題点は課税が不合理である、不適正である、負担が重い、この三つの点を合理化するのが改善の狙いである。そこで現在出ておるこの程度法案でこれらのものを合理化できるという自信があるのかどうか、その点を一つお伺いいたします。
  212. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) その点もたびたび申上げておりますように、私共は現在に比べますと余程合理化されておるものと解釈いたしております。ただ所得税の税率その他におきましては、慾を出せばというが、財政事情が許せば、更に一段と改善というか、よくする方向に向けたい。併し今度の改正におきましても従来と比べますと、相当な合理化が行われておるというふうに解釈しております。
  213. 川上嘉

    ○川上嘉君 それでは決して満足はしておられないものと、こういうふうに了解いたします。そうすると、そこをできるだけ合理化するためには、やはり税務職員か手心を加えなくちやならないということになるわけですか。
  214. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 現在の財政事情の下におきましては、私共はこれで満足いたしておるのであります。将来財政事情が許しますならば、更に一層やりたいというわけでございますから、反対にお取りにならないようにお願いしておきます。
  215. 川上嘉

    ○川上嘉君 それでそういう完全でない法律ですから、これを厳格に税務職員が実施する、税務官庁は法律を施行する機関ですから、厳格にこれを実施した場合には、どういう結果になるでしようか。
  216. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 税務官庁の能率を段々よくいたしまして、税法通り執行する。納税者も一面におきましては負担が軽くなりますし、税法も合理化されましたから、私は余程従来よりも税法通りの納税は促進されるものと考えております。
  217. 川上嘉

    ○川上嘉君 これは、現在の政府の行政管理庁の政務次官である一松君が二十五年一月十二日、大分に行つた。それで日田の松本税務署長といろいろと対談して、そうして非常に聽き捨てにならん言葉があるというので、日田税務署の総務課総務係長の酒井君と、直税課査係主任の冨士本君と、直税課の後藤君と三人で以て行つて、一松君の言うた言葉を追及したのがここにすつかり記録が載つておるのでありますが、実はその一例を採り上げますと、先ず一松君が署長に向つてこういうことを言うた。「現在延滞金の徴収はどう扱つているか。」こう言つたところが、松本署長は「延滞金は法に定めてある通り納期限の翌日より納付の日までの日数に応じ、日歩二十銭の割合を以て徴収している。」こう正直に答えた。ところが一松君曰く「貴下はインフレの最も激化時代に定めた法律の延滞金を、今日依然として馬鹿正直に徴収するのは余りに苛酷ではないか。」こう言われた。こういう若し考え方を、政府の閣僚諸公が全部しておるのではないかと思う。法の根本を直さずにおいて運用に手心をさせようとするから、いろといろな問題が起る。この点をよく考えて貰わなくちや困ると思う。尚「私共は公的な立場から貴下がさようなことを言われるのはおかしいし、御承知のようないろいろな問題が起つているのに、或いは誰かがあなたの名前を借りて署長を牽制する目的で、こういつたことをやつたのじやないかという疑もあり、事実を確かめ且つ貴下の真意をお聴きするために、わざわざ三人が参上したのである。」ということで、いろいろ問答が出ておるのです。それでその答弁として更に次のようなことが出ております。「そんなことは言つていない。物事がさように歪曲されて取上げられるのは大いに困つた問題だ。税務署は現在国民の怨嗟の的になつている。昔は泣く兒に警官が来ると言えば泣き止んだものだが、この頃では税務署が来たと言えば泣き止むと言われるくらい、税務署は一般から極端に恐れられている。」こういうことで更に面白いのです。次が「税務署は他の官庁と違つて税務署としての法律もあるが、仕事に手心のできる役所である。」こういうことを現に吉田内閣の政務次官が税務職員にはつきりと言つておる。手心でやれと、そこに大きな問題があるのです。厳格に実施できるような法律を作らなければならない。法律を厳格に実施すれば必ず相手が潰れる。ここに法律の欠陷がある。だから厳格に実施しても必しも納税者側から恨まれもしないし、憎まれもしない、そういう工合に税法を定めるべきである。而もこういつた政府の一員が手心のできる役所であるから大いに手心をやりなさい、こう言われた。更に税務職員が引続いて「手心とは法の運用に関することであるか。それであれば税務署に限つたことではないと思う。」こういうことを言つて次々と問答が出ておるわけであります。それから更に随分これはパンフレツトができるぐらい資料があるのですがね、こうです。「私は税務職員の数を殖やすことについては反対する。何のための行政整理だ。繰返して申述べるが、一般情勢から考えて、税務署が二十三年より二十四年を何割か増して決定するのは無理があると思う。」無理があると思う予算ならば、最初から予算反対すべきだ。それから「個々の課税については、知る限りではないが、延滞金の問題にしても、本税さえ満足に納められないのに、高率の延滞金まで納めなければ差押をする、そして財産を公売するというやり方は苛酷である。」こう税務署員に言つておるのです。この中で言えばいいのです。堂々と。それを全く本末を顛倒しておる。自分達がこの法案に賛成をしておつて、而も執行機関である税務職員には大いに手心をやつて法を守るなと言つておる。こういう考え方を大部分の現在の吉田内閣の責任者の連中が考えておる。考えておるからこそ、かかる税法をまだ平気で出すんじやないか。欠陥のある税制を正しいものとして出す。この税法は厳格に若し税務職員がこれを実施したならば、今の中小商工業者は全部潰れます。納税者は殆んど納めることができない。こういうことをよく考えて貰いたい。これはまあ主税局長政府委員であるから現吉田内閣の責任でもないから、これに対する責任ある答弁を求められないと思うのですが、今のことから考えてみて、どうもこの税法は満足すべきどころか、不合理だらけなんだ。私は税務職員がぎりぎり一杯忠実に厳格に実施しても、尚且つ国民は拂い得る、喜んで拂い得る、こういう税法でなくちやいけないと思うのです。こういう問答に対する、大体一括して一つ主税局長の御答弁をお願いします。
  218. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) どういう問答が行われましたかにつきましては私関知しませんので、そのこと自体については申上げることは遺憾ながらできないのでございますが、傾向としてそのような傾向が程度の差こそあれあつたということは、私も率直に認めておるのであります。従いまして今回の税法におきましては、いろいろな面におきまして合理化を図つておるのでありまして、川上委員が何ら合理化をしていないということになりますと、大いに見解の差があるのであります。私共は今御指摘の延滞金につきましても、最近の経済情勢に合せて、大幅に引下げたのであります。その他控除、税率等につきましても、仔細に御検討になれば分ると思いますが、私は相当従来に比べまして改善になるものと確信いたしております。
  219. 川上嘉

    ○川上嘉君 この問題はここでやつたんじや水掛論で、正しいか正しくないか、それじや昭和三十五年度には税金問題において絶対に問題が起きないかどうか、これが立証するのです。あんた達の言うその税法が正しく守られたらどういう問題が起るかということは、二十五年度の実績によつて分る。この点だけ私は附加えておきます。果して二十四年度と同じような問題が来年度に起るか、これを一掃することができるか、この税法、これによつてはつきりすると思いますから、私はこの点についてあんたが勝つか私が勝つか、あんたの言うことが勝つか私の言つておることが勝つか、これは二十五年度にはつきり分るのです。
  220. 木内四郎

    委員長木内四郎君) この程度にて(「委員長」と呼ぶ者あり)質疑を終了し討論に入ることに、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。よつて質疑は終了いたしました。  所得税法の一部を改正する法律案について討論に入ります。賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの所得税法の一部を改正する法律案反対をするものであります。これまで我々はこの法案についてこの委員会に出席しなくてもいろいろ調べ、又委員会においても相当検討もいたしましたし、且ついろいろ質問も拝聴いたしたのでありますが、この画期的な税制改革案といわれておるこの法案について、私はこの法案がこの税制改革の目的から見て、その目的を達成していない、そう断定せざるを得ない。この税制改革の目的は大きく分けて二つあると思う。その一つは、吉田内閣はこれによつて減税をするということを言つているが、この法律案は單に所得税の改正案としてだけ見ることはできないのでありまして、いわゆるシャウプ勧告に基いて改正せられる法律案なんでありますから、中央地方を通じての総合的な税制改革として我々は見なければならないのでありますが、中央地方を通じての税制改革の結果果して減税になるかどうか。私は減税にならない、中央において多少減税になるとしても、地方税においては増税になり、而も地方税の取り方がまだはつきりしていない。精々予算として枠は決まつておるようでありますが……、住民税附加価値税固定資産税本多国務相の答弁を聞きましても、標準税率以上にとつても差支ないことになつておる。実際にやつて見ますれば不当に、予定の枠以上に税が取れるかも知れない、こういう意味で私は果して政府の言つているような、中央において七百億減税し、地方において四百億増税する、差引三百億の減税になるというこの減税の金額についても、私は非常に疑問を持つておる。従いまして大衆の税負担が、負担ばかりではなく私は高額所得の資本家の方面も、或いは産業資本その他については却つて私は増税になるのではないかと思う。この意味で、先ず第一にこの税制改革案で吉田内閣の狙つておる減税措置が宣伝しておるように実現されないと思うので、これが反対一つの論拠であります。  それから第二の反対の論拠は、この税制改革が狙つたもう一つの目的である租税負担の公平化、この見地から見ますと、極めて私は不公平な税制改革であると思うのであります。折角シャウプ勧告を機会に恒久的な、そうして非常に民主的な、合理的な税制改革が行われることを期待したのでありますが、遺憾ながら今回提出されましたこの税制改革案はその精神に沿つていない。この二点から私はこの法案反対するのでありますが、更にこれを具体的に反対論拠を申述べますと、先ず第一に減税にならない、この点を検討して見ますと、それは二重に資本蓄積を狙つておる。二十五年度の予算に片一方において債務償還として一千二百億の強制資本蓄積をやりながら、更にシャウプ税制改革において、税制を通じて資本蓄積を行わんとしておるわけです。即ち高額所得者、或いは法人、そういうものに対して著しく減税措置を講じておるわけです。そういう税制を通じても資本蓄積を強行し、又強制的にも大きな蓄積をやる。そうして強制的にも任意的にも資本蓄積をやる。その結果が非常なデフレを来たしまして、そうして最近の不景気という現象になつていると思うのです。先程主税局長は、現在の財政需要から見て税制改革が満足するものであると申されましたが、財政需要そのものが現在の……二十五年度の財政需要そのものが満足であるかどうか、問題の焦点になると思います。この財政需要そのものが、例えば一千二百億の旧債務償還をするための財政需要、そのために税金をとるということになれば、その財政需要の不合理から、即ちそういう財政需要のために非常な不景気が、デフレが起る。そういう不合理な財政需要から、私は不合理な税徴収が起る、そう思うのであります。こういうようなところに私は非常に無理がある、税そのものが私は非常に苛酷であると思うのです。併しながらそれではこんなに沢山税を取らなければ日本の経済は成り立たないかと言えば、政府から我々に配付された国民所得、これを見ましても二十五年度においては等価値計算で戰前の大体九割九分まで、戰前と殆んど同じくらいまで国民所得は増加するということになつておるのです。それだけの国民所得が殖えながらどうして税負担が軽くならないのかと言えば、結局二重に非常に苛酷な資本蓄積をここでやろうとしておるからであると思うのです。川上委員もたびたび言われましたが、どうして税の問題についていろいろな紛糾が起るか、或いは又税務署に押しかけるとか、そのために自殺するとか、そういうことが起るかと言えば、問題は結局税そのものが多過ぎるのである。生計費の中でとにかく絶対的に多い。こういうところに問題があるのであつて、それではそんなに税を多く取らなければ経済が成り立たないのかと言えば、そうではなくて、片つ方では資本蓄積のために沢山の税を取り、而も又強制的にも資本蓄積を行なおうとしている、そういうところに問題があると思う。一例を上げますと、これは大蔵省で調べたものでありますけれども、昭和五年に千二百円の免税点でありましたが、この等価値計算でやりますと千二百円の昭和五年の収入が、昭和二十四年度においては二十九万七千六百二十四円、この税金は九万三千五百六十二円で、三一・四%です。戰前に免税になつていた比、その比が現在では三割一分の税負担になつておるわけです。如何税負担が重いかということが、絶対的に重いかということがこれで分ると思うのです。シャウプ税制の狙いどころは非常な税率の、高税率をやめて、そうして余り高税率になると脱税する、それで高税率をなくす。そうして低税率にして、低脱税にして、多く国民所得を捕捉して財政を確保するということにあつたと思うのですが、今度の税制改正では、私は低税率にしたけれども、逆にそれが高脱税になつて来た。そういう結果になると思うのであります。その証拠には、本委員会においてもたびたび御質問いたしましたが、この税制改革案の一番基本になつているのは、インフレーション期である昭和二十三年度の階層別所得を基礎にして、そうしてこういう税制改革をやつておる。ですから私はそこに非常に基本的な矛盾があると思うのでありまして、そういうインフレーション期における所得階層別所得を基礎にして税制改正をやつたところに非常な私は不合理が、基本的な不合理がある、そのために所得の捕捉が十分でない。更に又シャウプ勧告で言われておりました合法的な所得を掴む努力をしていない。先程も御質問申上げましたが、シャウプ博士があらゆる機会に指摘している脱税については、これを捕捉するために政府は十分努力していない。例えば譲渡所得について、或いは又無記名預金、公社債の登録、株式の名義書替、この問題は、これを禁止するために法律案を出そうとしておりましたが、中止してしまいました。こういう実情であつて、これは脱税を公然と政府が認めておるということになつたわけでして、シャウプ税制勧告は、こういう脱税を一方で嚴重に捕捉して、そうして公正な税をかけるということを建前としているのに、政府の今回提出された税制については、その点はむしろこれはオミットしちやつて、これではもう絶対的に税額が多いんでありますから、税のために非常に徴税困難になつておるので、十分納得でき得ないと思う。こういうような政府が合法的に脱税を認めているという点については、これは私は絶対に反対せざるを得ないのであります。特にこの法人につきましては相当脱税が多い。更に今度の法人税の改訂につきましては、これは所得税と非常に関連があるわけですが、累進課税はやめてしまう、配当課税もやめてしまう、そういう清算所得課税、或いは超過所得課税、こういうものをやめてしまう。こういうように非常な私は不公平な税制改革だと思う。このためにこの税負担が、一方で大きな脱税が捕捉できませんから、結局大衆に皺寄せしてしまつて、もつと勤労大衆に実際において減税できるのに、それをしていない、そういう実情になつております。それで私の方の労働者農民党としては、今度の税制改革については、具体的な意見を持つておる、政府税制改革とは相当意見を異にしております。先ずその主な点において具体的に申上げますが、基礎控除についてはいろいろ検討した結果、私は基礎控除及び勤労控除を含めて十万円までこれは控除すべきである。第二に扶養控除はこれもいろいろ計数を検討した結果、これは生計費から計算しまして二万四千円、それから青色布告に対してはこれは早過ぎる、むしろ青色申告をやれば、ますますこれは不公平になる。実体的な調査はその一割くらいしかできないという実情であつては、却つて私は不公平になる危險性があると思う。それで税務官吏さえこれに進んでおらない。精神には私は賛成でありますが、実際問題としては、これは却つて不公平になる。これによつて厳重に所得を捕捉して、そうして今の税をかけますと、むしろ増税になることが私は出て来ると思う。これは大きい大資本家、高額所得者については、所得を捕捉することが非常に困難である。結局青色申告によつて十分厳格に所得か捕捉されるのは、中小業者、或いは農民、勤労所得者で、これらについては十分捕捉されておるが、これは、却つてそういう人の弾力性のない所得の捕捉になつて、却つて増税になる。そういう危険性があると思う。我々は青色申告の精神には賛成でありますが、今直ぐ実施することについては、私は反対であります。更に農業所得税については、先程も主税局長質問いたしましたが、今回の税制改革のように、十分これまで研究された又農村方面から要望された意見が余り取入れられてない。更に消費組合とか、或いは協同組合、そういう方面に対しての減免税措置が考えられておらない。更に法人税については、どうしても累進課税をすべきである、法人において一番脱税されている。法人と個人との税の比率が余りに少な過ぎる、法人が少な過ぎる。事変前においては大体個人五割、法人五割程度であつたのが、二十四年度においては法人が九%、個人が五六%、こういうようなことになつている。二十五年度予算においても、こういう傾向が是正されていない、これは余りに不均衡だ。むしろ脱税の多いのは法人でありまして、本委員会においても、高橋国税庁長官の報告によれば、百四十億も法人のいわゆる追徴金、そういうものが取れたと言われる、百四十億点……。如何に法人において脱税が多いがということは推して知るべきだと思う。こういうものに対して十分税をとらないで、脱税を見逃しておいて、そうして低額所得者、或いは勤労者の方に税を重課して行く。こういう意味において法人にも負担の公平化という面から言つて、法人に累進課税をどうしてもかけるべきである、こういうふうに思う。結論として結局我々益体の審議を通して見ましたところでは、どうもシャウプ勧告の中、大所得者とか、大資本にとつて都合のよい面は勇敢に取入れている。ところがそういう天所得者とか、大資本に都合の悪い面は、むしろやめてしまつて、シャウプ勧告でやれというのにやらない、そういう私は税制改革と思う。吉田首相は、このシャウプ勧告が発表されたときに、一大朗報だと言われましたが、成る程仔細に検討して見ると、大資本、大所得者の擁護をする、そういう基盤に立つている吉田内閣としては、自由党内閣としては大朗報かも知れませんが、まじめに働く勤労者或いは中小企業者、こういう人に対しては大朗報どころでない。折角の一大税制改革であるところのこのシャウプ勧告案を民主的に生かしてない、そう断ぜざるを得ない。こういう意味で労働者農民党は、この税制改革案に断然反対するものであります。
  223. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 私は民主党を代表いたしまして今回の所得税法の一部改正案反対するものでありまするが、先程木村委員からも発表がありましたが、今度の税制所得税なら所得税だけをとつて見ては論じ切れないのでありまして、他の税法と関連した点が非常に多いのであります。而も現内閣が昭和二十四年度の予算を組む当時に当りましては相当賃金バースも変更されており、当然基礎控除、扶養控除、或いは勤労控除というようなものも訂正を加えなければならない段階におきまして、シャウプ博士がやつて来て、日本の税制体系をよく検討し、その上で以て本当に国民にいい税制を作るから、それまで待つて呉れるようにというような発表で以て今日に至つたわけなのであります。ところが今回の税制改革を一貫して見ますというと、決して政府国民に公約したような減税の趣旨に合うような実現はされておらない。而も国税におきましては比較的減税のような形を示しております。その半面におきまして地方税においてはむしろ非常な増税を来たしておる、この両方を合せますというと、結局国民にとつては何ら有難い改革であつたとは言い切れないというのが、これが真実であります。この所得税だけをとつて見ましても、只今申上げましたような観念で以て昭和二十四年度におきましてはすでにもつと安い税金であつてよかつた筈のものが、相当多額の租税を課せられて、而もその基礎となつたものが、結局中小企業者であり、又一般国民大衆であり、農村の農民の方々であつた、こういつたような形になつてしまつておるのであります。その結果といたしまして今日成る程インフレは止まりましたが、購買力の減退、税金の支拂によるところのいわゆる有効需要というものがすつかり減退してしまつた。結局今日世間に見られるようなデフレによるところの経済界の破綻があちらこちらに現出しておる、かような結果を招来しておるのであります。併しながら今まで若し政府委員説明によるように、今度の税制改革による減税の率を昭和二十四年の予算に当嵌めたらどうであつたかと言いますと、一千百億くらいの二十四年度においては税金が軽減されたであろうというような話があるのです。これは反対に言いますれば一千百億円もの大きな税金を国民負担しておつた。そのために今日のような経済状況を示しておると言つても過言ではないのであります。これを改正するに当りましては相当そういう分をカバーするだけの大幅な税の軽減が行われて、始めて今までの政府の公約というものが果されるのではないかと思うのであります。併し今日の税制改革に当つては先程木村委員からも話がありましたが、昭和五、六年、或いは十年頃に比較いたしまして非常な年收入の低い階層にまで、やはり税の負担というものを及ぼしておるのであります。例えてみますれば、今日年收約二万五千円という基礎控除に丁度匹敵する一番低い收入の者があつたとしまして、その人々の昭和五年或いは十年頃の立場はどうであつたか、恐らく月給か十円から二十二、三円程度の人々である筈です。そういう人々が今日相当国家財政負担しなくちやならないという状態になつておる。これは少しも改善されていない。この前の税制においても約八百万人の所得税負担者があつたのでありますが、今度の改正についても、別にその人数は減つていないのである。こういう点から見ましても如何に大衆を相手とした税制であるということがこれは明瞭であります。而も累進税の関係におきましても五十万円までの間は非常に段階的に五%ずつどんどん上げて行つて、五五%までの税率を取つておきながら、それから先の高額所得者に対しては五五%で打ち切つておるというような点なども、これは甚だ高額所得者といわゆる国民大衆との均衡が取れていない。かように考えるのであります。又先程申上げました地方税関係ですが、国家においては取り易い税金、いわゆる税はこういうふうに下げたのだというような宣伝になるような税に直したかのように見えますが、地方に対してはじや地方税は相当高くなるのだがということを質問いたしますというと、地方財政の確立ということに重きを置いておる。これによつて地方財政は健全に賄われるというふうな回答をされるのであります。而もその地方におきましては、国家で以て、徴收しておるような租税体系とは違つて租税に関するところの機構は非常に薄弱であります。而もその薄弱な機構で以て、実にむずかしい附加価値税固定資産税というようなものを取つて行かなくちやならん。こういうような建前になつておるのでありまして、恐らくこの税制によりまして、地方においては地方の当局者と、地方住民との間に紛争というものは今までよりも数倍輪をかけたような状態が惹起されると思われるのであります。これは甚だ国家といたしましては、易きに付いて、地方に難きものを負わせたという結果になるのではないでしようか。かような点から見ましても我が民主党は今回の所得税法改正については、地方税と関連いたしましてもつともつと軽減を図るべきであるということを強く主張するのであります。殊に今回の税制改革について我々痛感されるのでありますが、地方に行つて税金の取立の苛酷であるというようなことの問題が起きた時に、税務署の当局者は何と言うかというと、これはあなた方国会議員が決めたのである。我々は国会議員が決められたその法律従つて動いておるだけである。こう言われるのがいつでも落ちであります。今回の税制改革について果して然らば我々はこの改革によつて地方に行つて同じような問題が起きた。今度は我々は本当に税金を安くしたのだと言い切るだけの自信は、これは私には到底できません。こういう点から見ましてももつとこの税制というものについては、国民大衆というものを中心にし、もつともつと減額されるのが至当でなかつたかと思われるのであります。かような見解によりまして我が民主党は今回の所得税法の一部改正案に対しては賛成することができないのであります。
  224. 川上嘉

    ○川上嘉君 私も無所属懇談会を代表いたしまして本案に反対するものであります。税制の改革は負担の過重を軽減するということと、課税の適正合理化と公平を期する、こういつた点がなくちやならないのであります。大体反対の理由は、第一点は税負担は決して軽減されない。第二点は、税率が不公平で控除額が余りにも低く過ぎる。第三点は青色申告は時期尚早である。第四点は公平適正な課税をしようとする積極的な熱意も対策もない心第五点は運用面の合理化に熱意がない。こういう点であります。  先づ第一点でありますが、政府が頻りに労働攻勢や又税金に対する国民の不満を緩和するために、いつでも宣伝しておる唯一の切札は税金を軽減する、つまり減税であります。これは昨年の一月の総選挙以来民自党の公約であつたのでありまするが、この税制案でみますというと、この前触れに比べましてどうも大したことはない。先程両委員からも御発言があつたのでありますが、主として高額所得者とか大企業、又は外国人、こういつた者に対しては相当な軽減をされるのでありますが、農民や漁民、勤労者や中小企業者の所得税は極く僅かの減税にしかならない。却つて大幅に増額されるところの地方税と睨み合して、不動産税、住民税附加価値税など、こういつた税金と睨み合して見ますと、いよいよ結果から見れば相当増税になる可能性がある。こう断定せざるを得ないのであります。  次に第二点でありますが、政府はシヤウプ勧告に基いてこれをやつたと言つております。これは先程から木村委員からも特に指摘があつたのでありますが、この政府の案は勧告案を公平に守つてはいない。大口所得者とか資本家に都合のいい面は成る程木村委員の言われた通り嚴格に実行しております。ところが都合の悪い面は、修正削除しておる点が多々あるのであります。シヤウプ勧告で指摘されております通り、常に本質上この勧告書は技師の研究報告のようなものである、従つて詳細な点が採用されなければ何にもならない、大して効果はない。こういうことを特に注意しております。そこで脱税に対して特に細かく指摘しておりますところの無記名定期預金や、更に我々が長い間叫んで来たところの銀行調査の問題等に対しましては、依然とじて何らの対策も講ぜられていないのであります。  次に税率と控除の問題でありますが、税率は非常に高い、そうしてそのために帳簿も正直に記帳することができない。つまり高度の脱税者がいた、この高い税率と高度の脱税が現在の税制の不合理をなしていたのであります。この不合理を断ち切るために税率の引下げ、更に基礎控除を上げよう、上げなくちやならない、こう考え政府の狙いは、確かに正しいのでありますが、出て来たものは余りにもそれが無力であるのであります。税率は五十万円を超ゆる者は百万円以上でも二百万円以上でも上五百万円以上でも全部同率になつておるのでありますが、ここに大きな不公平が、あるのであります。これを是正するために富裕税を創設したというのでありまするが、この理由は極めて微弱であるのであります。従いまして恩典は高額所得者に非常に厚い。低額所得者には非常に薄いということができるのであります。  次に基礎控除の問題でありまするが、これは戰争前は免税所得が千二百円だつたわけであります。これを今日の価値に換算いたしますと二十一万六千円となります。池田蔵相の言によつても大体十万円以上になります。尚各国の免税点を我が国の貨幣価値に換算いたしますと、大体アメリカが八十六万円、イギリスが四十三万円、西ドイツでさえも二十二万円、こういう工合になつておるのでありまして、今回の改正案の二万五千円は余りにも苛酷である、こう指摘せざるを得ないのであります。  次に青色申告について木村委員から意見があつたのでありまするが、この実施が時期尚早である。その理由は税法上から見ましても、又納税者の立場から見ましても、税務官庁の現在の実情から見ましても、どの点から見ましても日本の実情に即していない。先ず理由の第一点は、記帳方法が余りにも複雑難解で、納税者は到底これを消化することはできません。第二点は、税務官庁でさえもこれを消化し切れない。現に去年の十二月頃、つまり青色申告を指導し奨励していた頃には、一税務署にこれを本当に分つている人は、この係をやつている一人の人しかいなかつた。こういうことを聞かされております。納税者の理解が行くように具体的に記載方法、記載例一その範囲等を明確に指示して懇切に指導できる能力、余裕を現在の税務機構は持つていないのであります。次に第三点参は、このために職場を混乱に陷れる危険が十二分にあるのであります。本年度におきまして政府は、納税者の大体三割を目標として実地調査をやろうと、こういうことの計画を立てて極力努めたのでありまするが、その結果は東京、大阪のような大都市におきましては一割程度地方の署の成績の良好な所で一割五分程度に過ぎないのであります。従いましてこのことは現在の税務官庁の実地調査をなし得る能力の限界を示しているわけであります。三割以上の実地調査は現在の機構では絶対にできない。こういうことを立証しているわけであります。従いましてこの結果、若し個人所得におきまして二、三割以上青色申告をし、そうして正直に記帳する者が出たら、もはや税務署がこれを消化し切れない。それで個人所得においてさえも過年度分の未決定分か残らなくちやならない、こういうことになります、尚現在においてさえも過年度未決定分が二割以上も残つておる。法人税においては一層それが予想されるのであります。従いまして結論的に言いますれば、現在税務官庁では青色申告をしたらいいのだ、帳簿をつけたらいいのだと言つておるものの、こういつた実情から申しますれば、成るべく青色申告を出す者がいないことを心では念願しておる。こういうことになるのであります。次に第四点でありますが、現在各地においで税金問題でいろいろの問題が起きております。そうしてその問題の狙いとするところは、大体実額調査をやつていない。実額調査もやらずにおいて、実情に沿わない決定をやつておるのだ。それで更正決定の通知も一括返上、更に異議申立に対する調査が済むまでは滞納整理とか差押競売は止めろ。こういつたような運動が起きておるわけであります。このことについては常に大蔵大臣は再々そういつた実情に沿わない課税はやらないのだ。いわゆる目標額、責任額なるものの割当的な従来の課税はやらないのだということを宣伝していたのでありますが、宣伝は別として、依然として今言つたように実質的には目標割当なるものの圧力に苦しめられておる。納税者も苦しめられておるし、税務職員も苦しめられておる。こういつたことが現在起つておる事実によつて見られるわけであります。これに対して何ら積極的な対策が講ぜられていない。   〔委員長退席、理事九鬼紋十郎君委員長席に着く〕  次に第五点、最後でありますが、第五点は運用面の合理化に熱意がない、こういうことが言い得るのであります。運用面を合理化することは再々私に強調しておるのでありますが、現在税務官庁が手不足でありますからもつと税務職員を増員すること、更に素質を向上すること、更に待遇の改善、諸手当、福利厚生施設の改善等一切を含んだ徴税費を大幅に増額することが急務中の急務であります。このことは私が申上げるまでもなくシヤウプ勧告にもはつきり出ております。決して税務職員の待遇の改善とか、或いは徴税費を殖やすことを、予算がないからということによつて、そういつた理由によつて妨害すべきことでない。こういつたことをシヤウプ勧告もはつきりと指示しておるのであります。ところがこういう方面に何ら対策を講ぜずに、あべこべに徴税費の全額は前伸度に比較いたしまして九億八千万円の減額になつておるのであります。このことは明らかに現在の実情を無視したものであり、そうして運用面の合理化に対する何らの熱意を持つていないのみならず、シヤウプ勧告に反しておると、こう断定せざるを得ないのであります。以上の五点から私は本案に反対するものであります。
  225. 板野勝次

    ○板野勝次君 私は共産党を代表してこの改正案反対するものであります。細かい面につきましては今までの反対論者によりまして指摘されたと思います。   〔理事九鬼紋十郎君退席、委員長着席〕  勿論共産党は大衆課税の撤廃を多年主張して参りました。大衆課税をかけないのならば青色申告の問題も、或いはいろいろな厄介な複雑な規定を設ける必要もないのでありまして、戰前の状態に比較して見ましても誠に苛酷になつて来ておる。その上この税法改正は、すべての反対論者が地方税その他の問題と結付けて考えなければ、このからくりが分らないと異口同音に申しております通り、この改正は全くの改悪でありまして、地方税と更に富裕税、資産再評価の問題、更に外資導入の問題、又現在の国内の経済の状態、いろいろな問題と結付いて来て、而も今度の税制改革全体を通して見られますものは、誠に巧妙にして日本の勤労大衆が丸裸にされて行く巧妙なからくりを持つておる。これは恰かも徳川專制時代におけるあのような農民その他の露骨な收奪政策ではなくして、巧妙なからくりの中に或る場合には極めて巧妙な民主主義的な装おいを持ちながら、勤労大衆全体が丸裸にされて行く点は全くの改悪でありまして、今度のいわゆる税制改革というものを通して、まじめな資本家の人達も反対であるという点は、日本の民族的な資本家さえ心が参つて行かなければならない。これ程に巧妙にして精巧な、蜘蛛の巣のような張り廻らし方で、日本国民全体が税を收奪されて行つて、内外の独占資本に淘汰されて行く、ここに私達は反対しなければならない大きな問題が潜んでおる。この巧妙なからくりの中に我々の知ることができることは、二十五年度の予算を通して予算と結付いてこの税制を見ますときに、全くの植民地化への方向というものに拍車をかけて来ておると思うのであります。これはこの税制改革の問題と外資導入の問題を通じて我々の知らなければならないものは、外国人に対しまして課税の特別措置の法案が用意されて行き、或いは外資導入の徴税法案が用意されて行つておる。そうしてこのからくりの中でいわゆる税制改革というものを見るときに、国全体が植民地化されて行き、従属化されて行かなければならない。而も外国人の日本におけ偽財産の取得も完全に自由にする状態に持つて行き、そうして国内におきまして一定の外国人の事業活動というものは自由になつて来る。そうして外資導入によつて得たところの利益や投資額の承認というものは外貨予算によつて保障されて行く。こういうふうに巧みに現内閣は外国の資本の力というものを国内において自由に振わせるようにしておる。而も外貨予算につきましては国会におきましても審議権がない、こういうふうにされて行く。又この外国為替及び外国貿易管理法によるこの外貨予算の問題を通しまして、ますます日本に対する外国資本の圧力が加わつて来る。そうした中で今度の予算におきましても債務償還というものが重要な比重になつて行き、更にこれからは外債の償還というものが中心になつて行われで行く。そうして外資の利益金、或いは損失を補償するために飢餓輸出をやつて行かなければならない。而もその飢餓輸出というものは戰略物資の輸送に充てられて行く。こういう状態の中でそれでは果して民間外資が入つて来るかと言えば、決してなかなか入つて来ていない。すでに導入されました外資は石油生産の一、二の例を除きましては大部分が技術の導入となつて来ておる。例えば青写真の特許権を入れて来るとか、或いはその他のいろいろな技術導入をめぐつて特許権も入つて来る、而もその代価として市場の株式を握つてつて、そうしてむしろ日本から資金を吸上げて行く、こういう形で入つて来るのでありまして、この形が今後いよいよ一層強化されて参りまして、これが外資導入の主派となつて行く。而もこれが主流となりながら外貨予算の操作を通じまして国内から資金を吸上げて行く、むしろ国内から資金が吸上げられて行くという外貨導入が行われて行く。こういう中で外国人の所得税が軽減されて行きながら、国内の勤労大衆を初め我が国のまじめな資本家が参つてしまわなければならないという方向に導いて行く。これでは日本の国の独立を守つて行くということもできないのでありまして、全体といたしましてはどうしてもここでいわゆる税制改革と言われておるものの全体の体系を鍛え直して、そうして日本が真に独立した税制体系の中に日本の独立が守り得るような体系を作り上げないならば、日本の将来は誠に思いやられるのであります。殊に現在外国人の所得と日本人の所得を比較して見ましても大きな差があるのであります。例えば日本におきますところのこのカルテツクス石油会社の従業員の中で、約二百各の従業員の中の二十名は外国人でありますが、これに対します給與の総額というものが約八百万円乃至一千万円、平均一人が四十万円乃至五十万円であります。そうしますと、これをドルに換算いたしますと、約一千一百乃至一千三百五十ドルになると言われておるのであります。これに反しまして、残りの百八十名の日本人に対するところの給與の総額というものは約二百万円、一人が平均月一万一千円程度のものであります。又、シエール石油会社の全従業員は約八百二十名でありまして、中二十名が外国人でありまして、これの給與は最高月九十四万円、最低二十五万円で、平均約三十万円と言われておりますのに、八百名の日本人の給與の平均は月額一万二千円であります。これを外国における状態と、外国から来ている日本における外国人の收入の状態とを比較いたしてみますと、一九四九年の七月、アメリカの工場労働者の平均所得というものは、五十三ドル六十六セントでありますから、月に換算いたしまして約二百十五ドルとなる。でありますが、これに比較しますと、カルテツクスの一千一百乃至一千三百五十ドルの給與というものは、実に本国におけるよりも四倍以上の收入であります。こういう中に、更に特例が設けられて、日本の国民の生活はますます困難になつて来ておるときに、極端な低賃金が押しつけられて参りますならば、日本の将来はどうなつて来るかはもはや明らかであります。我々は、細かい規定の中に全体の税体系を見失うことなく、税体系全体を通して日本が独立し得るような態勢を作り上げて行く。ところが遺憾ながら今度のいわゆる税制改革の中には、みずから日本の自主権を放棄し、独立を失う税体系となつて来ておりますので、この意味におきまして、共産党はこの一環でありますところの本案に対しまして反対するものであります。
  226. 天田勝正

    ○天田勝正君 日本社会党は本法案反対いたします。基本的な考え方につきましては、先程木村委員並びに油井委員が申されましたから、私はこの大きな基本的な問題につきましては省略したいと存じます。要するに、地方税国税とを総合的に考えました場合、今回の改正案は何ら軽減にならないということが、その大前提でございます。そこで、ここに具体的な問題を五つ挙げて反対意見を明らかにいたしたいと存じます。  先ず所得税につきましては、その税率が少額所得者の場合は、五万円、八万円、十万円、十二万円という工合に、極あて小刻みに刻んでありまするが、二十二万円を越えますると、実に三十万円の差を以て五十万円まで飛んでおる。こういうことからいたしまして、先ずこうした措置が不当であると私共は考えまして、別に五万円、八万円、十二万円、二十万円、三十万円という工合に、二十万円を超えますると十万円差によつて計算をいたして見ましたらば、百五十億円の減ということになつて参ります。そこで一応この計算をいたすにつきましては、最高五五%ということに抑えておりまするから、政府案と比べますと百五十億円の減ということになるのでありますが、現行法によりまする高額所得者に八五%まで課するということになりますれば、百五十億円を十分埋め得るということになるのであります。従いましてここに出ました計算は、少額所得者が百五十億円、高額所得者よりも余計の負担をするという結果になるのであります。かようなことによりまして、成る程給與所得者等は、計算上におきましては、一応軽減されるというがごとく見えまするけれども、高額所得者の優遇から見ますれば、誠に微々たるものでありまして、結局これは少額所得者の不利、高額所得言の優遇こういう結果に陷つて行くという点であります。  第二点は、退職所得の不合理でございますが、この点は、曾てはこの退職所得の半額に対して課税をするというのでありましたが、今回は一五%を控除して課税する。このようにこの面では増徴される。長年勤労いたしまして僅かの退職所得を得た場合に、すでにそれに課税をするということ自体が誤りであるにも拘わらず、現行法よりも加重するというに至つては、全く私共は驚かざるを得ないのであります。  第三点は、先程の質疑によつて明らかにされましたように、若しこれが最後的な裁判の争いになつた場合に、一方的に国民の側に訴訟責任がある、こういうようなことは、仮に裁判所が合理的と認めた場合と申しましても、実際的には常に税務当局側を合理的と見るのが日本の例でありまするから、結局これは一方的な、恰かも罰則に等しいものであるということであります。  第四点は、これらの税体系を通じまして、国民の方の側には幾多の罰則が設けられておるのでありますが、不当なる課税を行なつた官の側には何らの罰則を加えておらないという点であります、かようにいたしまして、現在の民主的な法律と銘打ちつつも、実際的には今日までの旧憲法時代における法律と何ら異なるところのない税法によりまして、恰かも極めて多額の軽減を行い、且つ極めて民主的に行うごとき偽装を行なつておる。  最後に、青色申告の問題につきましては、幾多の委員から申述べられましたが、私は現在の農民の知識程度、民度からいたしまするならば、結果におきましては、この青色申告によつて庇護される点が、全農民がその庇護から除外されるという結果になるということであります。私共は農民運動を実際にやつておりまして、農家経済に対する記帳をたまたま指導するのでありますが、この單なる家計簿の記帳すら今日の農民は行えないという状況であります。そこで、青色申告をすることによつでいろいろな庇護が行われておるのが今度の改正ではありますけれども、さて実際には、それを行えないのが国民の四割を占めるところの農民であるという状況、こうしたことを考えまするならば、この極めてむずかしい、而も嚴格な申告制度によつて、救われるのはむしろ先に川上委員指摘いたしましたように、脱税をするところの法人、或いは極めて知識階級と申しますか、むしろ極端に言えば脱税知識を持つておるような人達の方が庇護されて、最も庇護されなければならない農民階級等は、蚕くその庇護から除外されるという結果になるという点を考えて見ましても、本案に反対しなければならんと思うものであります。
  227. 藤井丙午

    ○藤井丙午君 只今まで各党から誠に傾聽に値いすべき反対討論が出たのでありますが、私は緑風会を代表いたしまして、本改正法案に賛成するものであります。本改正法案は、申上げるまでもなく今回の税制改革一つの根幹をなす、極めて重要性を持つものでありますが、成る程国民的な見地から申しますならば、本改正法案にはまだまだ幾多不満の点があるのであります。併しながら従来の所得税法に比べますれば、例えば基礎控除、或いは扶養控除その他相当国民負担軽減という点に改善された点がありますし、又徴税方法等につきましても、合理化の相当見るべき点があるのでありまして、私共は今後財政事情の改善と相俟つて国民税負担の軽減に向つて一層努力せられることを期待して本法案に賛成するものであります。ただ一、二希望意見を申しますならば、先程皆さんから御意見が出ておりましたように、例えば春色申告と今回の税法には相当一般の納税大衆にとつては、複雑難解な節等がありますので、これらにつきましては十分国民に周知徹底せしめるような適宜な措置が講ぜられることは勿論でありますが、更に又従来ある税務行政の欠陥乃至は第一線の非常な苛酷な税金の取立て等から、苛斂誅求といつたような国民怨嗟の声が出ておることも事実であり、又そのために幾多のいろいろの紡争摩擦が生じておるのも現実の事実である。更に又税金苦から自殺者が出るといつたような深刻な社会問題も惹起して齢るような状況でありまして、今後経済事情が悪化するとも好転の見通しのないような現状におきましては、我々はこういつた事態の起ることを一層憂慮するものでおります。従いまして政府におかれましても税務機構乃至は徴税專務等につきまして特段の改善刷新を加えられまして、税の適正合理化を図ることは無論のこと、特に税務官吏の心構におきましても十分国民の血の通つた、條理を議した一つ徴税の運営するように政府としては特段の指導が必要を存ずるのであります。国民が適正な税金について気持よく納税義務を果すように、政府としても今後一層の努力をされることを要望いたしまして賛成するものであります。
  228. 平沼彌太郎

    ○平沼彌太郎君 私は最後に自由党を代表しまして本案に賛成いたします。(笑声)戰後の国民の納税層はいろいろに変化しておるのでありまして、現在の税法では、この新事態に適しておるとは言い得ないと思います。世間にいろいろと問題が起つておりますが、これは勿論税金が苛酷であるという点もありますが、併し税法の適当でないということも又窺い知ることができるのであります。今回のこの改正所得税を租税收入の根幹とする点、文国民税負担の公準と合理化を図つて来た点などがありますことは、これは富裕税又は相続税その他税法と睨み合せて見て、全く理想的とは言えませんけれども、新時代に適しておるのではなやかと思うのであります。併しどのような画期的な税法改正は、これは実施して見まするといろいろな問題が起り易いのでありまして、一部に思わん不公事が起ることもあるのであります。その点につきましては一部の国民が苦しんだり、又は産業を萎縮したりすることのないように、税務当局といたしましては、この実施に当りまして十分注意して、速かに完全な納税の負担の公平になりますよう御努力願いまして、本案に賛成いたします。
  229. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 別に御意見もなければ討論は終局したものと見て、直ちに採決に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議がないようでありますから、所得税法の一部を改正する法律案を採決いたします。本法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  231. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます、よつて所得税法の一部を改正する法律案は可決せられました。  尚委員長の提出する報告書及びこれに対する御署名及び本会議における委員長の口頭報告は、恒例によつて処理することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  232. 木内四郎

    委員長木内四郎君) では御署名願います。   多数意見者署名     大隅 憲二  九鬼紋十郎     玉屋 喜章  西川甚五郎     平沼彌太郎  小宮山常吉     高橋龍太郎  高瀬葭太郎     藤井 丙午  徳川 宗敬   —————————————
  233. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に所得税法等改正に伴う関係法令の整理に関する法律案議題にして、審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  234. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。本法案につきましてはすでに慎重審議を重ねまして、質疑も十分盡されておりますので、質疑は終了したものと見て、直ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  235. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。賛否を明からにして御意見をお述べ願いたいと思います。……別に御発言もなければ所得税法等改正に伴う関係法令の整理に関する法律案を直ちに採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  236. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。所得税法等改正に伴う関係法令の整理に関する法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  237. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて所得税法等改正に伴う一関係法令の整理に関する法律案は可決せられました。  報告書及びこれに対する署名、委員長の本会議における口頭報告については、昨日御了解を得ましたように恒例によつて処理することにいたしたいと思います。それでは御署名願います。   多数意見者署名     大隅 憲二  九鬼紋十郎     玉屋 喜章  西川甚伍郎     平沼彌太郎  櫻内 辰郎     油井賢太郎  小宮山常吉     高橋龍太郎  高瀬賎太郎     藤井 丙午  徳川 宗敬   —————————————
  238. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に国税犯則取締法の一部を改正する法律案議題にして審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。よつて国税犯則取締法の一部を改正する法律案議題といたします。本法案についてはすでに慎重に御審議を願つたのでありますからして、質疑は終了したものと見て直ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  240. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。……別に御意見もなければ討論は終局したものと認めて、直ちに本案を採決することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  241. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。それでは国税犯則取締法の一部を改正する法律案を採決いたします。本法案を原案通り可決することに、賛成の諸君の御挙手をお願いいたします。    〔挙手者多数〕
  242. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて国税犯則取締法の一部を改正する法律案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。では例によつて御署名願います。   多数意見者署名     大隅 憲二  九鬼紋十郎     玉屋 喜章  西川甚五郎     平沼彌太郎  櫻内 辰郎     油井賢太郎  小宮山常吉     高橋龍太郎  高瀬駐太郎     藤井 丙午  徳川 宗敬   —————————————
  243. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に国税延滞金等の特例に関する法律案議題として審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  244. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないようでありますから、国税延滞金等の特例に関する法律案を議第といたします。  本法律案につきましては数回に亘り愼重なる御審議が重ねられたのでありますが、この際質疑は終局したものと認めて、画ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者有り〕
  245. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて法律案の討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。……別に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて国税延滞金等の特例に関する法律案の採決をいたします。本法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  247. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて国税延滞金等の特例に関する法律案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。では御署名願います。   多数意見者署名     波多野 鼎  大隅 憲二     九鬼紋十郎  玉屋 喜章     西川甚五郎  平沼彌太郎     櫻内 辰郎  油井賢太郎     小宮山常吉  高橋龍太郎     高瀬盛太郎  藤井 丙午     徳川 宗敬   —————————————
  248. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律の一部を改正する法律案議題として審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて災害被害者に対する租税の減免。徴收猶予等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。本案に関しましても慎重審議を重ねられたのでありまするから、すでに質疑は終局したものと認めて直ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。……別に御発言もなければ討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律の一部を改正する法律案の採決をいたします。本法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  252. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて災害被害者に対する租税の減免、徴收猶予等に関する法律の一部を改正する法律案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたししました。それでは御署名願います。   多数意見者署名     波多野 鼎  大隅 憲二     九鬼紋十郎  天田 勝正     玉屋、喜章  西川甚五郎     平沼彌太郎  油井賢太郎     小宮山常吉  高瀬荊太郎     藤井 丙午  徳川一宗敬   —————————————
  253. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に国税徴收法の一部を改正する法律案議題として審議を継続することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて国税徴收法の一部を改正する法律案議題といたします。
  255. 波多野鼎

    波多野鼎君 ちよつと休憩して下さい。
  256. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を止めて下さい。    〔速記中止
  257. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を始めて。御質疑ありませんか。別に御質疑がなければ質疑は終局したものと認めて直ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  258. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて討論に入ります。国税徴收法の一部を改正する法律案につきまして御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願いたいと思います。
  259. 天田勝正

    ○天田勝正君 社会党はこの法律案反対いたします。その理由は極めて簡單でありまして、差押事務を地方税と同様に扱うことは結局差押の競争という恰好になりまして、納税者に甚大な圧迫を與える。第二の点は、すでに所得税法の討論におきまして述べました通り、訴訟責任が一方的に納税者ばかりにあるという結果を招く。第三は、官吏に対する一種の不当措置に対しても何らの規定を設けておらないという以上三点で反対いたします。
  260. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 外に意見がなければ討論は終局したものと認めて、直ちに本案を採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。国税徴收法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  262. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて国税徴收法の一部を改正する法律案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。では御署名願います。   多数意見者署名     大隅 憲二  九鬼紋十郎     玉屋 喜章  西川甚五郎     平沼彌太郎  油井賢太郎     鷹井 丙午  徳川 宗敬   —————————————
  263. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に輸出信用保険特別会計法案議題として審議を進めることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  264. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。
  265. 波多野鼎

    波多野鼎君 この輸出信用保険法ですね、これに関しては、先程政府委員からいろいろ説明があつたが、あの説明があつたために却つて分らなくなつてしまつたような事情があるので、この際政府側から二十四年度の補正予算関係、それからあの法律案が流産になつ関係、それから今度の法律案との関係、そういう点について一応御説明を願いたいのです。
  266. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 只今波田野委員の御発言は御尤もと思います。政府の側としての説明の足らないところがあつたと存じますので、この際補足さして頂きます。前国会提案いたしました輸出信用保険法案なるものは、実は関係筋の御審議によりまして、政府の希望いたしますところの案ではなかつたのでありまして、政府関係筋との交渉を始めるに当りまして、特別会計の編成をいたしまして、政府原案そのままの特別会計を作つてつたのであります。ところが当時の情勢におきまして、未だ輸出契約後の保険には行過ぎがあろう、いわゆるビルに対する保険程度でどうだというような御意向で、不完全たるところの法案が、実は特別会計を設置いたしますその法律とは趣旨の違つた法律案が、衆議院に一応提案されたのであります。ところが衆議院におきましてはこれが御不満でありまして、少くとも特別会計に一致いたしまする政府の構想しておるところの法案の熟するまで、これは審議を取り止むべきだろう、かような御意見反対意見も激しく出まして、それらを関係方面へ搬出いたしまして御了解を得ました結果、幸い政府考えましたような、即ち特別会計を作りました当時の政府原案に一致する法案を今回提出することができたわけであります。それで今回御審議を煩わすような次第になつたのでありまして、そういうような意味から申しましても、妙な言い方になりまするが、前国会提案いたしました、即ち衆議院に出ておりますところの法律案それ自体から申しますと、却つて特別会計の設置法案の方か合つておらなかつた。今度漸く直つて出て来たものが、たまたまこれに一致するというような状況になつたことを特に御了解を頂きたいと思うのであります。
  267. 波多野鼎

    波多野鼎君 この特別会計のあれを見ますと、一般会計からの繰入、その他借入金、そういうような問題がありまするが、これは今年度のこの特別会計運用資金と言いますか、歳入と言いますか、これは総計どのくらいのお見込ですか。
  268. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 資金として繰入れますものは五億でございます。二十四年度の補正予算においても五億でありまして、それから二十五年度も又五億を見積つてあるわけでありまして、この特別会計はその性格上やはり独立採算でありまして、再保険料の徴收によりまして事務費等は全部負担いたします。保険金給付に対しまする資金繰りのために、資金を置いてあるわけでありまして、全部十億円の運用をいたして参る、かような状況になつております。
  269. 波多野鼎

    波多野鼎君 そこで問題が一つあるのは、二十四年度の補正予算で五億というものが可決されたわけでございますが、これが法律ができなかつたため使えなくなつてしまつて、今寝ている。二十四年度は今日一日ですね、ところがその二十四年度に可決されたところの五億をどう扱うかということが、一つ問題だろうと思うのであります。この輸出信用保険法案を見てみると、前年度の剰余金を繰入れることができると、こうなつておるわけですね。二十四年度の補正予算で決めた五億を前年度の剰余金と見るかどうかということが、一つ問題ですね。どういうふうにお考えですか。
  270. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) いろいろ御議論もございましようが、一応通商産業省当局としての考えは、本年度は時間的に申しますれば、今晩の十二時までの間に、一応この法律成立し、公布されました場合には、剰余金として二十五年度会計に繰入れることができるものと考えてもこれを二十五年度の予備費に計上して取扱つたのであります。最初の構想におきましては、もう少し早い時期に案が成立し、或いは二十四年度には保険実務が行える、そうして政府の再保険義務が発生するという予定の下にやつたわけでありまして、たまたま時間がズレて参りまして、こういう切迫した時期になりましては、一応御意見のような点もあろうと思いますが、事情御諒察の上にお願いいたしたいと思うのであります。
  271. 波多野鼎

    波多野鼎君 昨年その五億の予算を組んだ場合の五位という数字は、大体昨年の十一月頃から保険事務を始めるという意味で組んだと思うのでありますが、それが事務が始まらないというので又寝て来ておる。今年度の運用資金として五億を見積つたのは、すでに昨年使わないでおつた五億があるということを前提にして、五億だけを見積つたものなんですか。
  272. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 或る意味において考え方といたしますと、さようなことになりますが、これを本法に施行いたしましても、まだ保険会社とは、もう内交渉はいたしておりますが、契約自由の原則と申しますか、すべて輸出業者と保険会社との契約におきまして、細目の点は政令等で定むることをやめまして、約款の規定に讓つております。約款の必要なる條件だけはその法律に指示しておりますが、その外は当事者間の契約に任せたい、その事務的な交渉は勿論通産省としては保険会社とやつているのでありますが、未だ輸出業者と保険会社との間につきましてのお仕事というものは、実際は相当期間かズレるだろう、若しこの法案が一月か二月に成立いたしましたとしても、実際の事務開始は今年度になるだろう、かような見通しの上で、残念ながら二十四年の補正予算のお認めを願いました五億は、二十五年度に繰越しになる、かような想定の下に編成をいたした次第でございます。
  273. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると、どうしても十億は要るということが前提ですね、そうですね。
  274. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) お説の通りでありまして、この十億の資金がないと、保險給付に支障を来たす。従つて保險の範囲が縮まつて参るというような心配があるわけでございます。
  275. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御質問ありませんか。
  276. 板野勝次

    ○板野勝次君 この特別会計法案はもう一つ輸出信用保險法案と関連して考えなければならないと思うのでありますが、この輸出信用保険法案というものは、恐らくローガン構想による貿易の失敗からキヤンセルやクレームが沢山出て来た。この負担国民負担によつてやらせようというところに狙いがあるように思われるのでありますが、この輸出信用保険法案というものはどういう背景の中から出て来たわけですか。
  277. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 誠に失礼ですが、どういう背景という意味ちよつと分らないのでありますが、御質問の……
  278. 板野勝次

    ○板野勝次君 申上げますと、そういう貿易の不振、キヤンセルやクレーム等が出なかつたならば、こういつたような形では出て来なかつただろうと思いますから、そういうこれが出て来るようになつた背景について、政府のお考えを伺いたい、こういうわけであります。
  279. 宮幡靖

    政府委員宮幡靖君) 私の申上げますことが、御指摘の背景という言葉に当るかどうか存じませんが、輸出をローガン構想によります輸出自由の原則に立ち帰れというような声が起つて参りますることは、輸出業者と言わず、或いは輸入の方においても同様のことが言い得るのでありますが、従来貿易手形を優遇しておりましたような、そういう生ぬるい金融措置では到底いかん、何とか輸出の事前金融をして貰わなかつたならば、輸出の振興を期し難いということが、業者間の声であります。特に通産省に設けられました顧問会議に一応諮問して見ますと、輸出の事前金融というものは絶対必要だ、而も事前金融には国家が或る程度損失を補償するという裏付けがなかつたならば、十分なる金融は達成できないだろう、かような御意見もございましたので、これが業界全面的の声であると信じ、又輸出振興の一助といたしまして、やはり輸出金融に対しまする損失補償こそ喫緊であると考えまして、関係筋と先ず損失補償制度につきまして折衝を開始したのであります。ところが関係筋の御意向といたしましては、先ず以て英国式の保険制度を取入れるのがよろしい。国家が保険契約に対する再保険という形で行くべきで、飽くまでも損失を補償するところの精神というものは取上ぐべきものでない。かような御指示がありましたので、それに従いましてこれが保険契約になつて参るのであります。尚御指摘の御意見を噛み碎いて申上げますと、従来の輸出契約なるものが、外国人のバイヤーによらず、国内の或いはサプライヤーによらず、とかくLCの開設、或いは決済方法の明示等のない場合の輸出を怠りまして若干行き過ぎの契約もあり、不完全な契約もあつた。今度はこの保險によつて金融が、事前金融も達成せられます代りには、消極的な効果としてはさような、濫りな取引、不完全な貿易契約というものをしないというような効果も、この法案の狙つておるところでございます。
  280. 板野勝次

    ○板野勝次君 波多野君のときに何か数字が示されたと思うのですけれども、予算についてちよつと御説明願いたいのですが……
  281. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) 特に問題になつておりますところの繰越しの関係等を中心といたしまして、予算の計数を申上げますと、昭和二十四年度におきましても二十五年度におきましても、おのおの五億円の一般会計からの繰入を予定いたしておる次第でございます。尚昭和二十五年度の予算におきましては、先程通産次官から御説明がございましたように、昭和二十四年度に、すでに五億円の受入れが行われまして、その受入れを中心にいたしましたところの二十四年度の歳入剰余金が二十五年度に入つて参るということを予定いたしまして、やはり総額五億五千万円程度を前年度剰余金受入れといたしまして計上いたしております。話題になりましたことを中心にしまして、計数を申上げますと、そういう次第であります。
  282. 波多野鼎

    波多野鼎君 どうも前年度剰余金という字句に少しこだわるのですが、何ら事業もやつてないのに剰余金というような概念は少し変な気がするが、いろいろな問題があつたらしいことを聞くので、今後そういうことを前例に絶対しないということを政府の方で入れて置いて貰つて……。剰余金ではおかしいですよ、実際、予算委員会ではそれはどういうふうになつているのですか。
  283. 東條猛猪

    政府委員東條猛猪君) この点につきましてはやはり予算委員会で勿論特別会計予算の一環として御審議を願つておるのでありますが、この特別会計法の規定とも相待ちまして、お説の通り誠に異例なことではありますけれども、この法律案が本日成立を見まして、二十四年度の補正予算の実行の面といたしましては五億円が繰入れられるならば、前年度剰余金の受入れということで、予算的にはよろしかろうということに大体御説明もし、御了承願つていると存じます。
  284. 波多野鼎

    波多野鼎君 そうすると結局問題は、大蔵委員会にかかつて来るわけだな。ちよつと速記を止めて下さい。
  285. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を止めて。   〔速記中止
  286. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を始めて。他に御質疑がなければ質疑は終局したものと見て直ちに討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  287. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。よつて輸出信用保険特別会計法案について討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願いたいと思います……。別に御発言もなければ討論は終局したものとして直ちに採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  288. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。輸出信用保険特別会計法案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  289. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて輸出信用保険特別会計法案は多数を以て可決すべきものと決定いたしました。では御署名願います。   多数意見者署名     波多野 鼎  大隅 憲二     九鬼紋十郎  玉屋 喜章     西川甚五郎  平沼彌太郎     油井賢太郎  藤井 丙午     徳川 宗敬   —————————————
  290. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に法人税法の一部を改正する法律案議題として審議を進めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  291. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは法人税法の一部を改正する法律案議題として審議を進めます。御質疑のある方は御質疑を願います。……別に御質疑もなければ質疑は終局したものと認めて直ちに討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。賛否を明らかにして御意見をお述べ願いたいと思います。
  293. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 民主党は法人税法の一部を改正する法律案に対して反対をいたすものであります。その反対の理由は二点でありまして第一点は一率に三五%の法人税を決めたという点ですが、これは或る程度の超加所得というようなものも勘案し、その代り三五%を幾分低下して、せめて二つぐらいの段階にすべきが妥当ではないかという点が第一点であります。  第二点といたしましては、法人税中に規定されておるところの積立金に対して二%の課税があるのでありますが、今日日本の経済界において、法人の内容というものが、相当悪化しておる、而もインフレの経過上名目的の利益に対して相当高額所得の課税をさせられまして、非常に法人の内容が惡くなつております。こういう点から見ても、積立金等の制度によりまして、今後法人の基礎を強化する必要があるのではないかと思われるのであります。その点から見て、積立金に対しての課税ということは、これは反対すべき点であると思われるのであります。  尚最後にもう一点、協同組合に対する課税でありますが、協同組合に対しましては、今まで他の法人と違つて特別法人として、一〇%の軽減を図つてつたのでありますが、今回これを廃止するという点であります。これに対しまして、我々といたしましては、現内閣が常に主張するところの中小企業に対する、或いは農民の人々に対するところの協同の精神ということに相当税法によつても支援すべき点があるのではないかと思われるのであります。こういう点からいたしまして、中小企業者の団体である協同組合、或いは農民の団体である農業協同組合、こういうものに対してはやはり恩典を與えて一〇%ぐらいの税の軽減を図つてやるのが至当ではないかと思われるのであります。然らざれば大資本、或いは大企業に対して中小企業或いは農民階層というものが常に圧迫ばかり被るという欠陥を生ずるのであります。こういう点からいたしまして、法人税の修正を私共は希望いたしておるのでありますが、この修正の期間もありませんから、以上三点によりまして反対いたすものであります。
  294. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 他に御発言もなければ討論は終局したものと認めて直ちに採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 木内四郎

    委員長木内四郎君) では直ちに採決に入ります。法人税の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  296. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて法人税法の一部を改正する法律案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。では御署名を願います。   多数意見者署名     大隅 憲二  九鬼紋十郎     玉屋 喜章  西川甚五郎     平沼彌太郎  藤井 丙午     徳川 宗敬   —————————————
  297. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に相談税法案議題として審議を進めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  298. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを頂きたいと思います。……別に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて直ちに採決をすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。相続税法案の採決をいたします。原案通り可決することに賛成の諸君の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  300. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて相続税法案は多数を以て原案通り可決すべきものと決定いたしました。  尚只今までに可決いたしました諸法案につきまして、委員長の報告及びこれに対する署名及び本会議における口頭報告は、御異議がなければ、恒例によつて処理いたしたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  301. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは御署名願います。   多数意見者署名    大隅 憲二  九鬼紋十郎    玉屋 喜章  西川甚五郎    平沼彌太郎  藤井 丙午    徳川 宗敬
  302. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            波多野 鼎君            九鬼紋十郎君    委員            天田 勝正君            森下 政一君            玉屋 喜章君            西川甚五郎君            平沼彌太郎君            大隅 憲二君            櫻内 辰郎君            油井賢太郎君            小宮山常吉君            高瀬荘太郎君            高橋龍太郎君            徳川 宗敬君            藤井 丙午君            板野 勝次君            川上  嘉君            木村禧八郎君            米倉 龍也君   政府委員    大蔵政務次官  水田三喜男君    大蔵事務官    (主計局長)  平田敬一郎君    大蔵事務官    (主計局次長) 東條 猛猪君    通商産業政務次    官       宮幡  靖君    通商産業事務官    (通商振興局    長)      岡部 邦生君   説明員    主計局法規課  稻村 光一君