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1950-03-30 第7回国会 参議院 大蔵委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三十日(木曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————   委員の異動 本日委員伊藤保平君辞任につき、その 補欠として徳川宗敬君を議長において 指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件所得税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○富裕税法案内閣提出衆議院送  付) ○資産評価法案内閣提出衆議院  送付) ○相続税法案内閣提出衆議院送  付) ○法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○酒税法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○通行税法の、一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○所得税法等改正に伴う関係法令の  整理に関する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○国税犯則取締法の一部を改正する法  律案内閣送付) ○国税延滞金等特例に関する法律  案(内閣送付) ○災害被害者に対する租税減免、徴  収猶予等に関する法律の一部を改正  する法律案内閣送付) ○国税徴収法の一部を改正する法律案  (内閣送付) ○米国対日援助物資等処理特別会計法  案(内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 只今より大蔵委員会を開きます。所得税法の一部を改正する法律案富裕税法案資産評価法案相続税法案法人税法の一部を改正する法律案酒税法の一部を改正する法律案通行税法の一部を改正する法律案所得税法等改正に伴う関係法令整理に関する法律案国税犯則取締法の一部を改正する法律案国税延滞金等特例に関する法律案災害被害者に対する租税減免徴収猶予等に関する法律の一部を改正する法律案国税徴收法の一部を改正する法律案、右各案を議題といたしまして御質疑を願いたいと思います。
  3. 黒田英雄

    黒田英雄君 昨日酒税法についてお尋ねした際に、卸売並びに小売の生産者と各業者間の価格についてお尋ねしたのですが、その答えを承つたのですが、それによりますと卸売業者は、一般に皆現在に対しては相当下つているようですが、これはどういう根拠でそういうふうに決まつたのですか。又昨日お答えになりました価格は、生産者卸売業者ところに送ります運賃はそれに含んでいるものですかどうですか。その点をちよつとはつきりして頂きたいと思います。
  4. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 細目の点は又後程別に御説明申上げても結構でございますが、大体におきましては表面上はマージンが下つているようになつている局面もございますが、これは運賃加算等関係からいたしまする技術上の変更でございまして、実質的にはそれぞれ若干ずつ卸しのマージンも現在に比べますと増加するような計画にいたしているのでございます。細目の点は別に計算書がございますので、別途に御説明申上げたいと思います。
  5. 九鬼紋十郎

    九鬼紋十郎君 この通行税改正ですが、今度三等の通行税をなくして一、二等の方を率を上げることになつているのですが、この三等をなくして一、二等を上げるというので、税の方の増減はどういうような予想になつておるのですか。
  6. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 通行税法現行のまま二十五年度に存置した場合と、改正案によりまする比較の増減を申上げてみたいと思いますが、現行のまま存置いたしますると、来年度五十二億五千六百万円程度收入になるところでございます。それが改正案によりますると十億四千二百万円でございますので、差引四十二億一千四百万円の減税ということになるのでございます。これは内訳は三等の分はもう少し減り方が多くて、それから一、二等の分が若干増收になるわけでございますが、大体は、そのようなことに相成る次第であります。
  7. 天田勝正

    天田勝正君 これは恐らく随分質問されたことだろうと思いますけれども、今度の法人税関係については、協同組合等の、普通まあ特別法人と言われているこうした団体を、一般法人と何ら変りなしに同列に置いたという点は一体どういうわけですか。
  8. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 法人税は御承知通り、古くは営利法人に主として課税したのでございますが、特別法人利益があれば、つまり所得があれば法人税を課するというのが、負担理論からいえば公平なのでございまして、昭和十五年の改正でたしか新たに課税することにいたしたのであります。ただその際におきましては、長く免税しておりましたような関係もございますので、税率を特に低くいたしていたのでございますが、その後漸次接近いたしまして、今回は法人税につきましても超過所得税を廃止しまするし、その他の改正を行いまするので、まあ普通の法人並程度でいいのではなかろうかという趣旨で、つまり法人と同様な税率にいたしたのでございます。  それと今回は御承知通り大体法人課税するのはその株主又は出資者に対して課税するのと同じような実質的な意味を持つということにいたしまして、配当金剰余金分配をいたしました場合におきましては、それを個人に総合して課税する際に二割五分の控除を行なうことにいたしておるのでございますが、このような観点からいたしますると、特にこの特別法人に限りまして、低い税率課税するという理由がどうも十分つきにくいのじやないかという点を考えまして、主として負担公平と申しますか、そういう見地から一本の税率にいたしたのでございます。而うしまして特別法人の場合におきましては、現行税法もそうなつておりますが、特別法人の本来の性格特殊性がありまするところのいわゆるその事業分量に応じまして配当する分、これは損金として算入しまして所得に入れないことにいたしております。その他のそれ以外の所得の分でございますれば、理論上から考えまして、どうも一般法人と区別する理由が十分ないのじやなかろうかという見地から一律とすることにいたした次第でございます。
  9. 天田勝正

    天田勝正君 それでは沢山論議されておると思うので、そう喰い下がるつもりもないのですが、今回の農業協同組合は、組合員利用するという建前からできておるのであつて、特別に新組合員等利用する場合には、その利用の限度が制限されておるのは御承知通りであります。従つてこれから利益が上るというのは、本来その利用する場合に、利用価値以上に金を利用者支拂つてつた、こういうところから出て来る仮想利益なのであつて、本来はそれが計算上きちつと実際に利用しただけの価値に、組合の方が利用者から取立てるというのが可能ならば、全然利益というものは出て来ない筋ですが、私共の考え方からすれば、それが超過徴收をしておるという見方をするのが協同組合に対しては妥当な見方ではなかろうか、これが第一の質問する私共の考え方なんでありまして、そういう考え方に立ちますから、当然そこに利益が上がれば組合員に、利益配当という考え方に立つて還付金でなくて、超過徴収をしたものを戻してよこすという考え方に立たなければ、一体協同組合の掴み方というものが違うのではなかろうか、こういう基本的な考え方に立ちますると、どうしても、すでにこれには法人税は一切課さないという理論が成り立つて来るのであります。課すという理論からいたしますると、やはり平等の原則に立ちまして、所得のあるものに課税するという、今の局長の説明のされ方、こういうことに結論付いて来ると思うのですが、これはやはり飽くまでも協同組合の立法の精神からいたしまして、利益にあらずという考え方に立てないのかどうか。
  10. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 御尤もな点があるのでございますが、そういう点がございますので、先程申上げましたように事業分量に応じましてなす配当、これは一種の戻しみたいなものでございますが、この部分損金として計算いたしまして、特別法人段階では課税しない、これはそれぞれの事業者事業收入等になりまして、所得税事業者段階に、組合員段階に直接掛つて行く、こういうことになると思います。そういう見地に関する限りにおきましては、正にお話通り一種通り抜け見たいなところは確かにあるのでございます。これは私は先程も申上げましたように、こういう特別法人性格からして本質的なものじやなかろうか。従いまして大部分收益はそういう形で分配される場合が相当多いようでございまして、法人の中に残る……、その残つたものが出資に応じて分配されるというのは、額から申しますと比較的少なくなつておるのが現実のようでありますが、併し一定出資がありまして、その出資に応じまして配当する分或いはいつかは配当されるものとしまして社内に、法人の中に留保して行く、これはどうも理論的に考えまして、普通の会社等の場合と性格におきましては同じであるのじやなかろうかというふうに考えるのでございます。而もその点につきましては、さつきも申上げましたように、今回は二重課税をしないという原則を立てまして、法人特別法人で一応課税はいたしまするが、その利益組合員分配されました場合におきましては、その分配金に対する所得税税額から分配金の二割五分を控除するという方法によつて、二重課税を避けようということになつておりまして、従いましてそういう見地から申しましても、苟くも所得があれば課税するという原則からいたしまして、妥当ではあるまいかというふうに考えておるのでございます。
  11. 天田勝正

    天田勝正君 局長お話は筋が通つて……。そういう観点からいたしますとよく分るのです。ところが先に言いましたように、私共の観点が違うのであつて、元来一般法人出資をする、株券を持つ、こういう形になりますと、その株を買つた金出資金となり、その後においての負担金等は課せられない、従つてそれから利益上つて会社へ積立てようが、個人所得に還元して来ようが、いずれにしても、それはどちらかで補足するということは筋の通つた話なんですが、ところ地方農業協同組合等出資金などよりも負担金の方が多いという行き方をしておる。こういうふうに考えて参りますと、社内留保した所得というものの構成がこの負担金にかかつておる、これは個々の組合計算して見なければ、何パーセントということは……。それぞれ違いますけれどとにかくその社内留保所得の大部分を構成するものは負担金だ、こういうことがもうはつきり言えると思うのです。恐らく出資金の方は施設等には入つておるかも知れませんが、その他の所得というものは殆んど負担金である、こういうことになる。であるからどうもそれを所得にみなすということは、私共はそういう意味からも理論的に成立たないのではないかという気がするのです。勿論資産を持つておる以上は、今度はそれに施設等については資産税を課するということはありましようけれども、厳密に計算いたしますと、その設備なんかは出資金では不可能なんです、こういうことでありますから、恐らく私のまあ見当では、そういう所得は……、局長等がおつしやつておるものの九〇%くらいまでは、負担金によつて構成されておるということになるだろうと思うのです。そういうことになりますと、これはもうすでに法人税と差を付けての所得税を課するということでなしに、全く所得税を課すこと自体理論的にも妙になつて来る、こういう観点を持つわけでありますが、その点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  12. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 御指摘負担金は、收入として入つて来るという面につきましては、確かに問題があろうかと思いますが、通常の場合は大体特別な費用が要るから、そういう負担金を課しまして、それによる收入がある場合が通常ではなかろうかと考えられるのでございます。従いましてそういう場合におきましては、大体両方で収益が出て来ないというのが原則だろうと思うのでございます。これに反しまして、若しも相当長期に亘つて資金が必要だからというので組合にそういう負担金を出すというのは、どうも本来の性質から申しますと、むしろ出資で行くべきものでありまして、負担金等の形で行くのは実際問題として如何であろうか。普通の経営をやつておる場合におきましては、かようなことにはならないのではあるまいかと、まあ考えるのでございます。で或る期に負担金がたまたま支出よりも多くて残りますれば、或いはその次の期には反対に調節をされることが出て来るのではなかろうかということが考えられます。そうしますと窮極におきましてはいつかは差引かれまして、まあ負担金部分は大体において課税されないということになるのではないか。これは余程特別なやり方をやつておる場合におきましては、負担金收入金に対して……、一般課税されるという場合がなきにしも非ずでございますが、大体におきましては今申しましたような見地からいたしまして、これを特に差別を設けるというのは如何であろうかという趣旨からいたして、負担金等につきましてもこれを収入と見まするし、反対にそれに応ずる支出は一切経費として差引くということになつておるのでございます。ただ今度は法人税法に新らしい一つ規定を設けました。出資金に準ずるような収入金、いわゆる加入金、これについてははつきり利益金に算入しないという規定を設けることにいたしております。九條の三でございますが、法文では、これは当然でございますけれども、そういう出資拂込みといつたようなものに準ずべき収入金利益金に算入しないということにいたしまして、お説のような問題は一端を解決することになつているだろうと思います。
  13. 天田勝正

    天田勝正君 そうしますと、その積立金についても、この法律で行きますと、やはり同じように一般法人と同様に課税することになつておるんですが、これは積立金に対するだけでも別途の考えを持ち得ないのですか。
  14. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 積立金に対しまする課税理由は、さつきも申上げたのでございますが、結局株主或いは出資者に対して課税が遅れて来るということになります。つまりさつきも申上げましたように、法人に対する課税株主に対する実質的には課税と同じだ、こういう見地から見まして、さつき申しましたように、一面においては二重課税を排除することにいたしておるのでありますが、他面におきましては、その理論を徹底いたしますると、その法人利益を上げたときに、政府がその株主なり出資者利益分配したものとみなして、所得税をかけなければならないというのがこの理論的には当然の議論になりますが、それは理論上なかなか困難でございますし、それから必らずし納税の実際に即しないという意味からいたしまして、一応やはり法人段階では、法人利益を上げた場合におきまして、その利益分配しない前は法人段階だけで課税して置こう。株主にその際いきなり直ちに課税することはしないで置こう。但しそれはいつかはなんらかの形で分配されまして、株主又は出費者に税がかかるということになりまするので、その間の権利相当分といたしまして、積立金課税を行おうというわけでございます。従いましてやはりどうも株式会社とか、特別法人とか、そういう出資のある法人につきましては、これも理論上特に差別を設ける理由は十分ございませんので、これも同じような考え方にいたしておる次第でございます。
  15. 天田勝正

    天田勝正君 国税犯則取締法関係ですが、これはこの中に、たばこ專売法のことも附則の方に書いてありますけれども、元来たばこ專売法法律のときにも私は議論したのですが、いろいろこうした、官が取締をなし、又は監督をなす場合に必要な権利官吏の方に認められるという行き方はまあ一応肯ける。ところが不当なる官吏に対するところの今度は処置というのがどう見ても、どこにも出ていないのですね。たばこの場合でもその申告をしたのを間違つておれば、片方には、たばこ耕作者の方には罰則を課するとこういうことになつていて、片方のその見込が違つた官吏の方には、一向なんら罰則も課せられない、こういうことなんですが、一体今度の国税犯則取締法にも見ますると、何もないと思いますけれども、こうしたそれぞれの税法の一部改正といいましても、実は本質的には全部改正法案でありまして、そういう機会に、それに携わる官公吏の方にも義務を課するというような行き方改正する御意思があるかないか。
  16. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 主として国税犯則取締法お話通り收税官吏の権限と申しますか、権能につきまして規定しておる法律でございまして、收税官吏等違法処分をやりましたような場合に対しましては、特別の規定は設けていないのでございますが、これは一般の公務員に対する各種の法規が適用になりまして、それによりまして、それぞれ責任を問うて行くということに相成るのでございます。尚その際に、この收税官吏の任務の特別の性質に鑑みて、一般官吏違つた、更に責任を負わせるかどうかというお尋ねだろうと思いますが、この問題は、たしかにそういう点からしても研究すべき点があろうかと思いますけれども、大体におきましては、一般法規によりまして、適正に執行するということにいたしますれば、そう大きな支障はなかろうかと、むしろそういう際におきましては、それぞれ妥当な実際上の法規の励行を図りまして、責任を明らかにするというような方針を徹底させることによりまして、問題の大部分は解決するのではなかろうかと考えます。ただ金銭を扱う官吏につきまして、何か特別のそういう規定を置かないかということは、たしかに一つの研究問題でございまして、私共研究はいたして見たいと思いますが、大体はむしろ今の法規の下におきまして、これを適切に執行いたしまして、責任を問うというような措置にいたしますれば、相当な効力を発するということになり得るのではないかと、かように考えております。
  17. 天田勝正

    天田勝正君 この直接携わる税務官吏の不当な行為、これをほじくり出しますれば、如何にも、俗な言葉で言えば、小役人いじめというような印象を與えるわけでありますけれども、実際には、そうした出先官僚行為自体が、納税に対する意欲を非常に阻害しているということは、これは大蔵省としてもお認めになつていることと思います。その結果がたしか第六国会当時だと思いますが、高橋国税長官が訓令を発せられまして、そのことが少くともその不当なる処置ということを率直に認めて、これを戒しめたということで、少くとも知識階級には非常にいい印象を與えております。これは長官も来ておられますが、第六国会のときに、私はお褒め申上げておいた点なのです。この不当な官僚に対しては、ここにおられる黒田委員も、曾て第五国会だと思いますが、與党であつても、そうした不当な処置等は、若し例を挙げようとするならば、ここに直ちにその例を挙げることができるということを申されたのを私は記憶いたしております。第一に、常に悶着を起すのは、すでに納税したにも拘わらず、何回となくその督促が来ると、そういう不当なことをやつても、何らその行つた官吏の方には一向何の処罰もなければ、戒告もない。それはそうでしたといつたようなわけで、若し受取を大切にしまつて置かなければ二重に取られる。こういう工合なんです。或いは地方の数ケ村を集めて、いろいろお話になるときに、自分に若し刃向うようなことがあれば、それは必ずお前らの損だぞといつたようなことを村の有力者、つまり村長、協同組合長を前にして豪語いたしましても、それが何ら処罰もされない。こういうようなことを挙げて来れば枚挙に遑がない。確か昨夜お集りの席でも私は私的にその実例を申上げたんです。こういうことを実例がありますれば、忙しいけれども国税庁の監察官などに私個人は連絡しておる。その結果どうなつたのやら、一向処置を講じたということを聽いた例しかないのです。このことをやはり一方的にただ納税者にだけ義務を押し付けるという行き方の、封建色豊かな法律の作り方がそういうことになるのであつて、どうしてもこれは何か若し法律に盛らないならば盛らないで、適当なる処置を講ずる必要がある。でき得べくんばやはり法律にきちんと盛つて、今日一番納税者が苦しい事態になりますると、ますます官に立つて納税を強行せしむる側の方がみずからを苛酷に扱うという行き方を採らない限りは、信用を回復する途はないと思う。勿論そのことは税務職員の適当なる待遇ということにも結び付いて参りますけれども、適当なる待遇がないからそうした不当の処置は平気で行うということでは、国民としては誠に困るわけなんです。そういうことで、私はこれは是非とも国税犯則法にこの際これを加える修正をいたしたいと思つております。だがこれは当然提案者でありまする政府の方において、そうした條文を盛り込むということでなければならないと思いますが、この点について然らば代るべき処置法律上でなく代るべき処置等をお持合せがあれば、一つお示しを願いたいと存じます。
  18. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 税につきましては、税務官吏行動等苟くも国民の信頼に反するというようなことがありましては、只今指摘通り納税者の本当の協力を得るという面において非常に支障がございますのみならず、国民に不当に御迷惑を掛けるという結果に相成りまするので、実は昨年以来務官吏の訓練並びに教育に関しましては、非常な努力をいたして参つた次第でありますが、実は御指摘のような場合におきましては、監察官をして必ず調査をいたしておりまするし、特に昨年本庁並びに各局に苦情相談所を設けまして以来、この苦情相談所にいろいろ書面又は口頭でもつてお申し出になられました方が非常に多いのであります。従いましてそれらの件については、一々検討いたしまして、監察官によつて実は部内職員調査をし、処分いたしました件数が昨年の六月以降年末まで確か四百件近くに上つておるのでございます。特に今後におきましても税務官吏の不正を防止いたしまして又不親切であつたり、又は納税者に不当に御迷惑を掛けるということを絶滅いたしますために、今回政府といたしましては税務官吏に対するところ監督上、監察官に対して或る程度警察権を與えるという措置を講じたいと考えておる次第であります。即ち税務官吏の犯罪は一番多いのが收賄等事件でありますが、その外に納税いたしました金を途中で費消する、公金横領と申しますか、そういうような事件もあり得るのでございましてそんな点に対しましては監察官が直接司法警察官として、部内職員の取調べができるという制度を今国会法律とて提案申上げ、御審議願いたいと考える次第であります。
  19. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと速記を止めて下さい。    午前十一時三十七分速記中止    ——————————    午前十一時五十九分速記開始
  20. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を始めて。それでは休憩いたします。    午前十二時休憩    ——————————    午後一時三十九分開会
  21. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 休憩前に引続いて会議を開きます。  御質問ありましたら……。
  22. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 先般の委員会森下委員から所得税税率につきまして一定変更を加えた場合に、減收額がどのくらいになるかというお尋ねがございました。それを計算いたしましたので、この機会に御説明申上げたいと思います。お話税率は聞き違いじやなかつたと思うのですが、十方円以下は法律案通り、十万円を超える所得に対しまして三〇%、二十万円を超える所得に対しまして四〇%、三十万円に対しまして四五%、四十万円を超える場合に五〇%、こういうふうに二千万円から五十万円の間に適当な税率を出して設けた場合に、どうなるかというので計算してみたのでございますが、これによりますと、賦課額で行きますと、源泉で三十一億九千万円、申告で百六十億五千万円、両方合せて百九十二億四千万円の賦課税額で減少になります。ただ前から御説明しております通り、予算はその年の賦課額源泉は九八%、申告で七三・七%、来年度に入るという計算をいたしておりますので、この差引をいたしますと、二十五年度の收入額におきましては、百四十九億五千四百万円程減收になる、こういう数字になるようでございます。御参考までに申上げます。  それから尚先般木内委員長から、二十四年度の補正予算に使いました課税ベースを基にしまして、それに新税法を適用した場合にどうなるかというと、二十四年度の予算額と較べてどうなるかということを出すようにということのお話でございましたが、それによつて計算いたしてみますと、源泉所得税におきましては、四百六億千百万円の減税、それから申告所得税におきましては七百六十四億八千九百万円の減税、合せますと千百七十一億円程度減收ということになるようでございます。これもこの機会に併せまして補足して御説明申上げて参考にしたいと思います。
  23. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  24. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それじや速記を始めて下さい。  それでは税法関係の諸法案に対する質問は一時中止いたしまして、この際「米国対日援助物資等処理特別会計法案」を議題にいたします。御質疑のある方は……。すでに前回も種々御質疑がありましたのでありますが、御質疑は終了したものと見て、直ちに討論に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます……。御質疑はないので、直ちに討論に入ることに御異議がないようでありましたならば、この際定足数を欠きましたので、本案の討論は暫らく延期することにいたします。   —————————————
  26. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは元に戻りまして、税法関係の諸法案について御質疑がありましたらお願いいたします。
  27. 板野勝次

    ○板野勝次君 私は国税長官お尋ねしたいのですが、地方を廻つてみましても、どうも納税申告制度というふうなものがちつとも尊重されていないわけです。一体どの程度までこの申告制度というようなものが尊重されるのですか。どこの税務署へ参りまして納税者のいろいろなことを聞いてみても、皆出すけれども、申告制度というものは全然ただ形式的に出すだけであつて、税務署が一方的に決めた額に承認しないなら更正決定をよこすのだ、こういうふうな一律に印制したものを出して来て驚かしておる。こういう現状なんです。そうすると申告制度というものはただ民主的な装いを持つておるだけで、一向尊重されていない、こういうことになると思うのです。ところ所得という問題は税務官吏が分るのじやなくして、各個人がどれだけの仕事をやつたからこれだけの收入があつた。例えば鷄の卵は隔日に自分の家の鷄が卵を生んでおる。ところが税務署の方では毎日生んでおる、こういうふうな計算で来る。そこに大きな喰違いがある。そのときに納税者が正当な申告をしているわけです。併しどこにも尊重されていない。こういう現状なんです。それについて一つ長官の見解を質して置きたいと思います。
  28. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 申すまでもなく申告納税制度は、所得については所得を受けた本人が一番よく承知しておられるという意味におきまして、御本人の正確な又正直な申告政府が期待しておるのであります。今で税務官庁で調べましたところによりますると、遺憾ながら正確に御自分の所得申告しておられる方が割合に少いのであります。これは個々の調査によつてはつきりそのことが分るのでありまして、現状がそういうふうな状態であるということについては、甚だ遺憾に感じておるところであります。勿論この制度は日本としては初めての制度でありまするので、今年度が第三年目になつておるのでありまするが、今後尚或る程度の年数を経なければ、本来の申告納税の円滑な運営がなかなか困難ではないかと考えております。併しながら一方過去からのずつと沿革を調べてみますると、第一年度においては申告を税務署におきまして妥当なりとして是認いたしました数は、極めて少かつたのでありますが、昭和二十三年度においてはそれが相当に増加し、昭和二十四年度においては更にそれが相当大きく増加しております。これを数字について申上げますと、昭和二十三年度におきましては、全国で更正決定をいたしました件数が五百二十万件でありましたが、二十四年度におきましては、これはまだ全部完了はいたしておりません、大体の推定でありまするけれども、二百七十万件見当で、後は全部納税者申告をそのまま政府としても是認するということができる段階に至つたのであります。急速な進歩ではないといたしましても、相当その間に大きな改善を見ているということは、今後の申告納税制度の運営について非常に明るい希望を持たせるものでありまして、私共は今後も更正決定の数がますます減少いたしまして、円滑な運営ができることを期待しておるものであります。
  29. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところが実際はそういう数字を出されましても、正当な申告をしておる者が割合に少ない、そういうものは個々の調査によつて分かるというのですが、地方へ行つて見て小さい……つまり税務署の窓口に行くことさえもできないような零細な人たちが、みんな無茶苦茶に何らの調査もなしにやられておると思う。それでは、個々の調査が殆んど行われていないのに割合に正当な申告がされておるものは少ないのだと、こういう私は断定はできないであろうと思う。ところ税務官吏原則としてずつと各納税者ところを実態調査されて、そうしていろいろなものから得た結論から正当に申告されておるのではないという結論が出るとしたならばよいけれども、多くの場合は実態調査というものはやられていないと思います。その点はどうなんですか。
  30. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) お話通り税務官吏の数も不十分でございまするし、又割合に未経験の者が多いというような関係もございまして、全部の納税者について調査をするということは、今日においては勿論、将来においても殆ど不可能であろうと考えます。併しながらできるだけ各人の所得の実相に近いところの数字を掴むということについては、あらゆる努力をいたしておるのであります。そのため、例えば農業所得につきましては、これは各人の方がそれぞれ帳簿を記しておられないというような関係もございまして、御本人であつても恐らくは十分にその実相を掴むことは困難ではないかと思うのでございまして、そういうふうな関係からいたしまして、止むを得ずランダム式に農家を摘出いたしまして、大体全国の各町村に亘りまして、一町村十軒見当、全国で十万軒見当は確実に農家の数字について完全な調査をいたしておるのであります。その調査を基礎といたしまして、各町村に当嵌るところの大体の標準を作りまして、その標準によつて各人の所得を推定せざるを得ない、こういう状態に相成つておるのであります。今後農業に関しましても、青色申告制度に基くところの帳簿を記入されるところの方が順次多くなりますれば、それらの方の尚実相に近いものが得られることに相成りはしないかと考えておるのであります。又営業につきましては、これ又全部を調査することは能力の関係もございますが、同時に営業者の方は帳簿を備えておられないという方が非常に多いというようなことからいたしまして、非常に困難なのでございます。併しながらできるだけ多数の調査をするということがこれは絶対に必要でございますが、実は二十三年度におきましては、全国の営業者に対して実際の数字の調査ができました件数は、約六%に過ぎないのでありますが、二十四年度におきましては只今までのところ、大体一割五分程度は十分できておると考えておるのであります。勿論地域によりまして相当五割以上もできておるというところもございますが、又地域におきましては一割程度かつかつしかできておらないというところもあるのであります。併しながらとに角二十三年度に比較いたしましては、この実態調査、実額調査というものが相当大巾に改善され、正確な所得を把握するのに相当進歩したことは、これは確実であると考えるのであります。更に又昨年の六月国税庁の開設以来、各国税局に調査査察部を設けまして、百万円以上の所得について、法人につきましては三百万円以上のものについて、又は三百万円以上の所得ありと認められるものにつきましては、全部調査査察部の直接の主管といたしまして、これらの方につきましては一人漏れなく全部正確な調査をするという方針を以て進んでおるのであります。そういうふうにいたしまして、その他の方につきましてはどうするかと申しますと、これは売上等の利潤だけが調査できるものについては売上げだけを調査する、又それすらも調査ができないという方につきましては、在庫の商品のあり方でありますとか、又は従業員の数であるとか、店の規模であるとか、又はその他仕入関係の資料でありますとか、各種の資料を総合いたしまして、推定によるところ調査をいたしておるのであります。併しながら各個について今度は必らずその店の状況なり、その他調査し得る事柄については必ず調査するという建前を以て臨んでいるのでありまして、完全な調査とは言い得ないまでも、できるだけその実態に適したところ調査をいたしておる次第であります。
  31. 板野勝次

    ○板野勝次君 私の特に強調したい点は、相当大きな中小企業……、といつても、上の水準のものはいいのですけれども、零細な業者というものは殆んど帳面というものは持つていないし、それから今のように非常に不景気になつて来ると殆んど仕事ができていない、こういう状態の中にあるので、零細な業者こそ真に税務署としては、懇切丁寧に納得の行くようなやり方でやつて貰いたいと思うのです。ところがそれが何処へ行つてもやられていない。一二の実例を申しますと、例えば富山県の高岡税務署、そこの農民がこういうことを言つて来ておるのです。つまり田が五反四畝と畑が一反六畝を耕作しておつて、そうして二十三年度の所得金額として三万三百四十一円の自主申告をしたところが、向うの方では六万六千三百円という、その人にとつては実に莫大な金額の更正決定を受けたから、そこで明細な証拠書類を出した。そうして再審査を請求して、そうして再三税務署に出頭して交渉した、その結果やつと四万八千円に更正決定をしてくれた。ところが自分としては自主申告より多いのはどうしても納得できないから、更にそれに対して異議を言つたところが続々延滞利子が殖えて来る。そうして差押えをするということでやつて来て、そうして税務署に来い、役場に来いというものだから、行つてよく説明してくれというと、向うの方は自分が行つて調査したのではないから分らんというふうで、とても取合つてくれない。そうするとその後延滞の利子というものが重なつて来て取られる、そうすると延滞利子は重なつて来るし、支拂通知が来ても拂えないから、拂わないと差押えをする。そうすると又延滞利息が殖えて来るというふうにして、どうにも多額の延滞金さえも拂うことができないのだ。そうしてそういう状態にあるので、農民はどうすればいいのか分らん、こういうふうな仕末です。私の手許に来ているのは、富山県の六、七十名の人の署名をとつたものを寄越して来ているのですが、こういう実例があるかと思えば、例えば傷痍軍人の人が何ももう……、前に仕事をやつてつたけれども廃めておる。それなのに取引高税を取られるというふうなことが来ておる。非常に困つておるのだ、こういうふうな陳情さえも寄越しておる。それはただ單に富山県の一、二の例だけじやなくて、私が廻りました総ての所で、末端においては、もうずつと前から仕事を廃めておるのに税金がかかつて来る、こういうふうな実情が生じたら、どうして税務署ではお直しになることができるのでしようか。つまり行つて見ても、調査に言つた本人がいない場合……、事実又調査をしているわけじやないのですから、証拠書類を持つてつても取合つてはくれないというふうなことになつてくれば、どうしていいか沢山の人たちには分らん。従つて零細な人たちが正当な納税をやり得るのには、今の国税長官の言うように申告制度というものがまだまだ一般の人が熟練していないから信用できないというのなら、税務官吏の言うことだけが一方的に強行されて来て、零細なものが主張して行くというには、何回でも税務署に出かけて行くのにもう旅費だけで大変なものになつて来る。そういうものを一括して何らかの処理方法を考えて貰わなければ、一方的に税務署が決めた標準の査定額というものについて申しましても、例えば農民の場合におきましては地方というものは畑の一枚一枚でありましても、隣合せでは地方の状態も違つておるが、それが一律に標準としてやつて行く、ところが一方では地力が少いからいろいろな事情で收入が少くなつてつておる。それが税務署に行つてもなかなか解決がつかない、つかないうちに延滞利息がどんどん殖えて来るということになれば、そうなくても拂えない農家や零細な業者というものは、その滞納金だけの方が随分多くなつてにつちもさつちも動けなくなると思うのです。そういうふうな場合の一括処理と申しますか、沢山の者を税務署でもどうするわけにも行かないと思うのですが、一体どういうように処理なさろうとしておるのか、その点も承つて置きたいと思います。
  32. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 農業所得税につきましては、先程お話いたしましたように、各戸の農家の方が確実な帳簿をお持ちにならんということのために、止むを得ず、先程お話しましたような方法によつて推定課税を行うことになつております。従いまして若しも確実な証拠があれば勿論、又確実な調査ができれば勿論その実態によつて課税いたすことに相成つております。もともと一つの標準でありますので、具体的なケースにおいてそれがその標準から外れておるという場合におきましては、その実態に従うのは当然であります。而うして農作物の収穫量等につきましては、主食につきましては最初の申告におきましては、事前割当等の数字を一応採用しておるのでありますが、最終的には作物報告所の実收高調査というものに頼つてつておる。こういうもの以外に、尚確実な証拠というものがあれば勿論それによつて修正するものであります。又小営業者につきましても大体同様な方法を用いておるのであります。それはお話通り実際上帳簿をつけておる方が非常に少いということからいたしまして推定ということも又止むを得ないのであります。而うして、これに対して、どうしてもそれだけの所得がないとお考えなつたならば、やはり審査の請求なり最終的には訴訟にまで持つてつて十分にその点を修正するというより途はないと思うのであります。又延滞金、加算税の問題につきましては、若しもその実態において正しい納税を当初からしておられれば、決してそういうような問題が起らないのであります。何らか実際の所得よりも、より以上減額されるという期待を持つて納税を遅らせるという場合に初めてそういうふうな問題が起り得るであろうと考えます。
  33. 板野勝次

    ○板野勝次君 併し只今の例の中から見ましても、片一方ではどうしても納得のいかない、そういつた場合に税務署が一方的に決めてしまつて、そうして納税者の方でも納得がいかないから拂えないという場合に、加算税延滞金というものがどんどん、どんどん重なつて行く、こういうことになつてつているわけですね、現実は……。そういう実情をもつと国税長官も知つて頂いて、実情に即した処置を取つて頂かなければ、徒らに小さいものだけいじめて来て、そうして延滞金と加算税の方が納税する税金よりも重くなつて来ているという実情は多々あると思うのです。その実情をどうしてももう少し知つて頂いて、直して頂かなければならんと思うのです。この前も私は大蔵大臣にも言つたのですが、岡山でもありました。これはもう七十からになつた後家さんが、未亡人が生活保護を親戚の人達なんかが、受けたらどうか、こういつているようなお婆さんに六万円も税金がかかつて来て途方に暮れている。そうして税務署に行つてもなかなか親切にはやつてくれない、こういうことを涙を流して言つてつた。そういう人達に無理矢理に六万というものが押しつけられるということでは、もうどうにもこうにもならないと思う。一方においては中小企業も倒産し、零細なものも倒産して行つているという実情に即して、そういう実情もある場合においては加算税も、延滞利息も棚上げして、そうして先ず生活を守らせるというふうな応急な措置をお取りになる、こういうようなことを考えて頂きたいと思うのです。
  34. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 具体的なケースの場合において、或る程度誤謬のありましたことは、これは率直に認めざるを得ないと思うのでありますが、併しながらそういう場合におきましても、若しも誤謬であることがはつきりいたしますれば、直ちに修正することにいたしております。而して延滞金、加算税の問題につきましては、現在の法律の建前上これを免除するということはでき得ないことになつております。ただその金額の率の大きさにつきましては、インフレ昂進時における場合と相当趣を異にしておりますので、今般の改正税法におきましては、或る程度これが率を引下げられるということに相成つておるのであります。
  35. 森下政一

    ○森下政一君 主税局長なり、あなたのお話を承つてみますと、例えば税法によらざる税金なんというものは拂う必要はない。何と税務署が言つて来ても納める必要がない……、至極御尤な話ですね。ところがただあなた方から御説明を聞きましても、どうも私共は納得が行かないのです。決して末端に行くとそうでない。あなた方の心持を心としないところの徴税吏というものが充満しているのではないかと思うのですね。極く最近の具体的な例を挙げてみましても、これは或る小さな法人会社でありますが、突然税務署員がひよろつと入つて来て社長に、社長はまだ三十台の若い人で出版事業をやつている人でありますが、小切手を切つて下さいと言うのです。いきなりです。何の小切手でしようか、幾らをどういうわけで小切手を切るのですかといつたら、これこれの額の小切手を書けというのです。何のためですかといつたら、税金だというのですね。その人は二十二年度も二十三年度もすでに納税を完了してしまつている。二十四年度は年度……、昨年の十二月の末に終つている。それから一定の期間の間に申告をすればいい筈だ。その申告計算を今やつている最中だ。ところが二十二年度、二十三年度の更生決定、それから更に何でもそんなようなことで税金の小切手を書け、こういうわけなんだそうですが、これはあつけにとられてしまつているのですね。本人は……。今まで何らの調査に来られたわけでもない。何か不審な点が既往にあつたとか、こういう点はどうであつたという書類が来ていたわけでも何でもない。突然ひよろつと、もう若い、ほんまに二十台そこそこくらいの人がひよろつと出て来て、手をポケツトに突つこんで非常に横柄な恰好で小切手を書けと来られて、それは税金だと言われて、非常に腹も立つけれども、相手は税務署だから仕方がないと思つても、税金を納めるわけには行きません。そんな馬鹿な小切手は書かれるものじやないというわけで、その社長は応待したんだというようなことでありましたが、段々話を聞いて見ると、何でも二百万円そこそこの所得申告をしておるものに対して一千万円というふうな更正だそうです。それに対して税金を納めろというわけで小切手を書けというのだそうですが、その社長の人の話を聞いても、甚だどうも不可解なんですそういう態度というものは。恐らく私の推定なんですが、同業者があそこの会社は非常に繁栄しておるというふうなことから、猜み心であるか、或いは中傷するのか、何か投書でもしたというようなことがきつかけになつて、突然そういう高圧的な態度で来たんじやないかと思いますが、そんな不合理なことはどこまでも頑張つて、そうして審査請求したらいいじやないかといつて私は勧告した。たまたま先日私郷里に帰りますときに、その人を連れて大阪の国税局へ出まして、法人課長というのですが、そういう人に会つて事情はこうだ、どこそこの税務署が所管しておるのですが、審査請求をしておる、早く処理をつけるように、不安定な状態に置かれるのが一番困る、而も机から何からすつかり押えられておるわけです。お客さんが出て来ても非常に体裁が悪いし、そんなことのあるために銀行取引に非常な支障を来す、信用を傷つけられると言つてその若い社長さんが泣くように言つた。私は引合わして善処方を要望して置いたことがありますが、そういつたふうなことは一々例を挙げたらきりがないと思いますが、更に私個人の場合について見ますると、私は何も人に譲渡するような不動産を持つていないのです。ところが税務署から最近あなたが譲渡した不動産について聽きたいことがあるから出頭せいということを言うて来る。明らかにこれは何かの間違いだということは私には分つておる。私はたまたま国会へ出ておりますので、代りの者を遣わしたわけなんです。ところでそういう税務署から呼出状が来ておるということを家からいうて来たので、私に代つて代りの者をやつて呉れ、これは何かの間違いだから行つて呉れといつてつたところがなぜ本人が来ないかと言つて大変叱られたそうです。国会へ行つておりますから来られないですと言つたところが、これはしようがないものですからえらいむつつりした顔をしたそうです。それから段々話を聽かされたところが、たまたま或る財団法人の経営しております学校がありますが、私はその財団の理事をやつておるわけですが、戰災に遭うてしまつて学校がなくなつておる、それを復興するために卒業生から寄附を集めたりして、たまたま私も卒業生だものですから寄附を集めたり何かして土地を買う、一部残つてつたところを他人に譲渡するというようなことにして、成るたけ一校の校地が一まとめになるように努力しておりますが、その財団の理事である私の名によつて他人に譲渡した土地があつたと思うのですが、これは直接私が一々やつておるわけではない、学校当局が私の名によつてつておるのであつて、私自身ではないわけです。そういう間違いがあるということが分つて来たんで、そこで直ぐ私は学校の方に照会して学校長に行つて貰うように言つた。学校長が行つてこれはこういうわけだという説明をして、事情は分りましたということを学校長から私は報告を受けたんです。ところが同じ呼出しがその後でも私に三回も四回も来ております。その都度私は学校にその通知を持つてつてまだ解決しておらんというのでそのはがきを廻送して、又学校長が気の毒なんですが、先年交通事故のために足を片つ方失いまして杖をついて歩いている学校長であります。年は若いけれども、それが遠方の税務署へその度ごとに行つて、私に迷惑がかかるといかんというので事情を釈明して呉れておる。その通知が又出て来るんですからね。私は今度は放つて置けと言つて今度は黙殺してしまつて学校長が気の毒だから、こういう葉書が重ねて来たということを言つてもおりませんが、若し出頭しなければ勝手にこちらで決定するから異議の申立てを受けんとか何とかと書いてあるが、その都度私は甚だ不愉快であります。或いは妙な問題は税務署の役人さんなんというものは、国会議員を呼出していろいろ糾明する、国会議員でも僕がやつつけてやればこうこうなんだというので、甚だ得意な、ところがあるんじやないかと思うんですが、とにかく私が叱られなければならんことがあつて叱られるのは、これは私が悪いんですから納得しますがやはり何かの間違いであることがはつきりしておる。而もそれをちやんと質しに行つて、これは間違つておるということを税務署も分つたというのに何遍でも言つて来るということは、税務署も随分お手数なことだと思うし、そういう通牒を受けるごとに不愉快な思いで現実に今やつておる、たまたま私の具体的な例を挙げたんですけれども、随分私は数少くないことだと思います。私の場合ならばたまたまあなた方もお知合いであるから、余り税務署が非常識なことを言うて来たら、国税庁から一本税務署に注意をして下さいというような便宜も得られると思うのですけれども、それは今の板野君の例に引いたように、六十何歳のばあさんなんというものは、どこのどなたにお話をしたらいいか分らんというような程度の人なんですが、そういう人をいじめておることは枚挙に遑がないと思います。税務署管内の相当有力な人に対してであれば、予算の都合はこうこういうわけで、どうしても国としては予算に出ておるだけの徴税をしなければならんから、助けると思つて納税をして呉れなんというようなことを言つて、拜み倒して懇請に歩いておるというような事実がある。そういうようなものはもう数々私共具体的な例を多年、税務署から来られて仕方なしに納めましたというようなことが私共の耳にも入つておるのです。これは主税局長お話を聞くと、税法によらない税金なんというものは納める必要はないんですとはつきりおつしやる、ところが税務署が頼むんです。これは税法通りにお取りになつたらどうなんですか、そういう本当な課税をされる理由がないじやないか、帳面でも何でも見て下さい、私共非常に正直な申告をしておるというと、これはどこにも遺漏がない、どこにも不正がないということになつて来ると、今度は頼み込んで来る、助けると思つて納めて呉れ、出さないと私が困るんだというようなことを言う。これは結局私はそれで執拗にこの委員会でも地方税の割当ということをなさつておるんじやないか、その割当まではどうしても税務署が取らにやならんということで、今度は税務署長が税務署員に割当をしておるんじやないか、割当てられておるから、その税務署員もその割当額まで徴税しなければ、自分の首にかかつて来ると思うから、納税者に頼んで歩く、こういうことは末端の実態じやないか、ここでお話を聽くと、決して割当なんということはしない、單なる努力目標だと、こう言われる。至極話は私は分るんです。主税局長お話は分つて帰るが、末端の話を聞いて見ると、恐らく主税局長の心を心とせざる徴税が行われておる、これは何とあなた方がいつても本当なんです。だから私は須らく国税長官なんかは国会でも済んだら第一線へ行つて税務署長にお会いになるだけでなくて、納税者の代表ともお会いになつて、一体税務署はどういうことをやつておるか、どんなことがあるか私に聽かして下さいといつて、直接進んでその民衆の声を聞かれるというような機会をお作りになるといいと思うんです。ところが臨時国会が去年済んだときに、あなたといろいろここで議論をして別れまして、国会が済んだと思つたら、即日あなたが大阪へ行かれて、徴税強化に鞭打つておられた事実を新聞で見てびつくりしたんです国会でああいう態度をとつてつて、早くも私が家へ着くより早くすでに大阪へ行つて、大阪の納税成績甚だよろしくないというので、どんどん税務署長に向つて鞭を打つておられる、徴税に拍車をかけておられるというのを見て実は私驚いたようなことを記憶しておりますが、こういうふうに本当に私は税金が高いということは、国家がこういう経済状態のときですから止むを得んということはよく分つておるんですが、あなた方もよく御存じである、所得税については決して安いとは思つておらない、大蔵大臣も財源がある限り減税したい、二十五年度は減税したい、主税局長もそういう考えでおられるが、現実は相当無理な徴税をやつてお分りであるか、第一にやはり納得して税率の高いのは忍ぶといたしましても、税法通りの税金が取られておるということはあなた方しつかり努力しなければいかんと思う。そこに私は税に対する国民の反感ができると思う。脱税した場合何とかしてごまかそうというような考え方になつて行くのじやないかと思う。その脱税とか何とかいうようなことは、二重帳簿を作るとか何とかいう不正を誘導しているものは、或る意味においては税務署の態度自身が一半の責を負わなければならないのじやないかと私は思うが、どうでしようか。
  36. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 税務官吏の中に甚だ妥当でない措置をしている者が尚相当あることを私自身も耳にしておりまして、それらの場合におきましては、そのことごとにその事件調査いたしましてそれを直して行くという努力を進めている次第であります。  尚税法通り税を実行するということはこれはいうまでもなく私共は最も身上とするところでありまして、絶えず職員の指導についてはその点を專ら強調しているのであります。割当課税の問題につきましては、この前の国会におきましてもよく御説明申上げたと思うのでありますが、割当がないということを、最も端的によくお分りになると思いますのは、本年の申告所得税收入成績が今日尚この三月の二十日現在で七〇%である。恐らく或る程度の赤字を出しているのじやないかということを予想しているのであります。併しながら若しもこれが割当であり目標であるならば、私共はこれを必ず收納し得ると思うのでありますが、そういう無理をするということは、予算通りはどうしても取らなければいかんのだというような考え方を持つことが税法を歪める結果になる。従つてそれが赤字になるという見通しがつきましても、決してそういうところに誘導してはいけないということをはつきり私共繰返して申述べているのであります。勿論税の徴收上、各税務署に、おいてどの程度その年度において、または年度末までに收入できるかという見込はときどきとつております。それはそういたしませんとそのときの歳計の予定がつきません。大体の見通しを立てて仕事をするのでなければ、各方面にいろいろな支障が生じますので、見込は立てておりますが、それはどこまでも税務署なり国税庁が見込んでおります。目標とか割当とかいうべき性質のものでは全然ないのであります。  又昨年の国会終了後に私が大阪へ参りましたことについてお話がございましたが、これは大阪局がそれまでずつと引続きその管内におけるところの税務署の執務体制が非常によくございませんでした。御指摘のような所得がないに拘わらず更正決定を寄越すとか、又ははつきりと誤謬であつたに拘わらず、繰返し繰返し督促をされるというふうな事態も大阪局に一番多かつたのでございます。従つてこの大阪局の執務体制を改善して納税者に御迷惑のかからんような、又納得して頂けるような体制に持つて行くということが最善の急務であると考えまして、大阪局に対しましては実は全国各地から相当の応援を派遣いたしまして調査の充実を図りますと共に、できるだけ各納税者の方々の所得の実体を把握するということに懸命の努力をいたさせたのでございます。單に税をとれというような督励をしたわけではないのでありまして、どこまでも税法に則るところの、税法通りの徴税を少しでも完全にやるという意味の督励をいたしたのであります。御了承を願います。
  37. 木内四郎

    委員長木内四郎君) この際お諮りいたしますが、租税関係の諸法案の審議をちよつと中止いたしまして、米国対日援助物資等処理特別会計法案の質疑はすでに打切になつておりますので、この際討論採決に入りたいと思います。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願いたいと思います。  別に御発言もなければ討論は終結したものと見て直ちに採決に入ることに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないものと認めます。米国対日援助物資等処理特別会計法案を議題といたします。賛成の方は御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  39. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 多数と認めます。よつて米国対日援助物資等処理特別会計法案は可決せられました。  只今の可決せられました法案につきまして、本会議における委員長の口頭報告は、この委員会の経過の大体を述べることにいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 尚この報告に多数意見者の御署名を願いたいと思います。   多数意見者署名    九鬼紋十郎 森下 政一    西川甚五郎 平沼彌太郎    油井賢太郎 藤井 丙午    川上  嘉 米倉 龍也
  42. 木内四郎

    委員長木内四郎君) この際御了解を願つて置きますが、法案が可決せられました場合には、一々申上げませんけれども、特に御異議がなければ、委員長の報告はこの委員会におけるところの議事の経過並びに結果の大要を本会議において報告することにし、又多数意見者の報告に御署名を願うことにしまして特に御異議ない場合には、この委員会においては、そのことを恒例によつて取扱うことにして一々お諮りいたしませんから御了承を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  44. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 次に税法関係の諸法案について質疑を継続いたしたいと思います。
  45. 板野勝次

    ○板野勝次君 今年になつて……、これは前からかもしれないのですけれども、例えば営業の所得にして見ても、農業の所得にして見ても、申告制度があるのに、申告する事前に税務署の方から一定の標準というものを示して、お前のところにはこれだけ以上と認めておるから確定申告はつまりこれ以下の数字になつてはならない事情のない限りは税務署の方から定めて来た金額より少い申告をしてはならん、若しも申告する場合には、税務署で止むを得ないから更正決定を行なうことになる。そうすると税の差額を徴收されることは勿論、差額に対して二五%の追徴税と日歩十銭の加算税が徴收されることになる、こういうふうな通知を各納税者ところに出している。これは明らかに申告納税の制度というものを蹂躙したやり方になると思うのですが、こういうふうな通知を出すように国税庁の方では末端の税務署を指導されておるわけですか。
  46. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 御承知通り法律によりますると、申告額が実際の所得額に対して甚しく低い場合におきましては、当然に追徴税を課することに相成つております。又納期が遅れることによつて加算税又は延滞金というものを課することに相成つております。従つてできるだけ各納税者の方々が実際の所得に近いところ所得を正直に申告して頂くということがこれは申告納税制度においては絶対必要な條件であります。税務署といたしましては、予めでき得る限りの手数を盡しまして各人の所得についての実数を把握いたしまして、事前にできる限り税務署の見解というものを申上げ、調査した結果というものを申上げて、そうして御参考に供する、それによつて少しでも追徴税、又は加算税、延滞金によつて、より以上の負担を増すということがないようにという趣旨を持ちまして、これはもつぱら納税者に対して親切の意味におきまして、予め御通告申上げて申告して頂くようにするということを国税庁といたしましても、各税務署に勧奨いたしましてやつて頂いておる次第であります。
  47. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところが先程来問題になつたように、実情を知らずに、そういう見込額というものを出して行つて、最初からおどしつけている。こういう恰好になつているんです。従つて申告納税制度がある以上は、納税者が自発的に正当と思う申告をやつて税務署がそれに対して見解を明らかにされるというのはいいのですけれども、実情を調査せずに、一定の標準率というもので算盤をはじき出して来て、営業を止めているか、実際にやつているかということが、分らんものにさえも、一律にずつと一定の標準率をかけて来ておる。これはもう最初から国税庁の方針というものは、申告納税制度というものを無視して、一方的に税務署が算盤をはじき出したものを押し付けて来る。こういうふうな威圧を、つまり感じることになると思うのですが、できるだけそういうふうに納税者に恐怖心を抱かすような、やや脅迫的な態度を取るような方針というものは、お止めになつたらどうですか。
  48. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 税務署といたしましては、決して脅迫的なとか、又は威圧的というような意図は全然持つておりません。ただ現在の納税者の方方が税法に十分に通じられておるということもなかなか考えられませんので、できるだけ税法規定というものを十分御承知になつて、正直な申告を期限内にやつて頂くということをお奨めしたいという熱意を持つて、非常に手数ではございますけれども、各人の方々に、それぞれ御通知を差上げて、又は直接お伺いをしてそれぞれそういうふうなお奬め方をいたしておるのであります。
  49. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところが実際は、そういう通牒を出しながら、税務署が今度は末端に来て、どんなことを言つておるかといえば、例えば家族が五人とすれば、家族五人を養うためには、一ケ月に何万円收入がなければならん筈だとこういうふうに、つまり家族の数を通じて家の收入というものを計つて行く。例えば申告者の方では月五千円だといつても、一家族が六人もおつてそんな五千円じや食える筈がない、これはどうしても一万円以上の收入がなければならん筈だ。こういつた、つまり人数が、家族が多ければ多い程その收入というものを過大に見積られておる。そうしないと食えないじやないか。こういうふうなやり方を取つて来ておるのが実情なんですが、そういうようなことを言う税務官吏は、私は決して正当じやないと思うのですが、そういうふうなことのないように、又これは一例なんですけれども、それ以外にもいろいろなことが言われておる。そういうことの後を断つような通牒でも出して貰えないか、そうしないと、どこへ行つても同じようなことしか聞かないのであります。人数を計算に入れて收入を計つて来ておる。これはもう明らかに行き過ぎだろうと思うのです。
  50. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 先程来繰返し申上げておりますように、正確な帳簿があります場合においては、そういうような推定の方法は全然必要がないのであります。併しながら正確な帳簿がないという場合、又は帳簿がありましても、その帳簿が、信憑し得ないというような場合におきましては、間接的な方面からそれを推定するということは、これは止むを得ざることと考えます。生活費の面についてお話がございましたが、やはり人間の消費生活から、その所得を推定するということも又推定の一つの方法に相成るかと思うのであります。勿論これのみが使われるということは甚だ間違つた結論に陷る慮れがございますが、併しながらとにかく單に、例えば持ち物をお売りになつたとか、筍をやつているというような事実があり、又その他いろいろな事情があれば別といたしまして、実際に支拂い得た経費の面からその人の所得の面を推定するという方法も又一つの有力な推定の方法であろうかと考えます。
  51. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところがこれはもう常識論ですが、例えば家族が二人しかいないところと六人おるところと大体同じような業態でやつてつて、そうしてがつがつの生活をしておる。ところが一方の家に行つては、それは納得したけれども、一方は人数が多いからといつてこれだけなけりやならんという押しつけというものは、私は行き過ぎだろうと思う。決して正しい見解にはならないと思うのです。ところが今国税長官お話を伺つておると、そういうふうな方面の推定をすることも又止むを得ない、こういうふうに聞き取れたのですけれども、それでは一般の帳簿のないものは、皆人数が多いものは、扶養家族の多いものは、扶養家族の少いものよりも所得がたくさん課けられて来るという弊害がそこに助長されて来ると思う。その点に対する御見解はどうなんですか。
  52. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 消費の面から所得を推定すると申しますのは、例えば收入その他については確実な帳簿をお持ちにならん方におきましても、支出した金額だけは或る程度帳簿と申しますか、何らかの記載をしておられるという方もございます。それからそういうふうな面からいたしまして、経費の面から大体その人の所得を推定するという方法は、他に資料がない場合においては止むを得ざる方法なんで、而して只今いわゆる家族の人数の多い少いによつてというお話につきましては、これはその人の生活程度等によつてそれぞれ大きな差があるのでありまして、單に家族の数が多いということを以て推定をするということは、これは明らかに誤りであろうと思います。
  53. 板野勝次

    ○板野勝次君 併しそういうふうな行き過ぎのないように私は是非末端の行政というものをうまくやつて頂きたいと思う。これは私は先日は岡山の税務署に行つたところが、更正決定が来ておるので、たくさんの人が税務署へ押しかけておる。私も行つたわけです。私は末端の税務行政がどういうふうになつておるのであるかというので所長に会いたい。ところが所長は会つてくれない。これはたくさんの人が来ておるから……。なぜそれなら国会議員である自分に会えないのかといえば、たくさん押し掛けて来ておる。私に会えばその代表者にも会わなければならぬから会わない。ところが自分はたまたまその押し掛けて来ておる人達と同じ時刻になつたけれども、別な立場から末端の税務行政というものがどのように行われて来ておるのかどんなことをおやりになつたのかということを税務署長に聞きたいのだ。それらの代表者諸君は別個の立場から来ておるのだから、自分に会つたからといつて代表者に会う会わないは別問題じやないか……。どうしても会つてくれない。その日に立たなければならないのだから、全く短かい時間でいいからどういう状態になつておるのか会つて欲しいと言つても、その来ておる人達を帰してくれるならば会う。こういうことでどうしても会わない。でも私は仕方がないから帰つたわけなんですが、そのときに岡山の税務署はホースを敷いて、そうして予め民衆に水を打つ掛けるというふうな構えまでしてやつてつたのですが、これは明らかに税務署の行き過ぎといいますか、無茶苦茶なことをやつて税金を取立てて行くという態勢を初めから持つている悪意あるやり方じやないかと思う。元来税務署の査定の方法が悪いからたくさん押し掛けて来ておるのに、予めホースを用意して、水で民衆を散らして行くというこの態度ですね。それから自分はそのこととは別個に会いたいと言つておるのに尚会わないというような岡山の税務署長の態度や、又新居浜に行つたときは、沢山の更正決定が来て皆押しかけて来ている。そこに私が行けば何か番号を持つてつてくれという、誠に人間扱いをしないというふうな態度は、税務署が予め無茶苦茶に天降り的な更正決定をやつておるから弁解が成立たないので、できるだけ逃げようとしている。こういうふうにしか思えないと思うのです。国税庁の方から議員が行つたら成るべく会わんようにせいというような通牒でも出しておられるわけなんでしようか。
  54. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 最近遺憾ながら全国的に相当大衆が税務署に押寄せるということが行われておりまして、そのために税務署の事務の運行に非常な障害を来たしております。只今指摘の岡山の税務署の問題につきましては、実は板野さんがおいでになる二日前、二十日の日に約五百名の大衆が門前に集まりまして書初門内において受付けをしておりましてそれぞれ応接をしておりましたのですが、その応接が到底不可能になつたということで応接の中止をいたしたのでありますが、その際に相当乱暴な行為がございまして、実はその際においては代表の方に税務署長はお目に掛つてそれぞれ応待をしておるのでありますが、とに角その際において門扉も壊されますし、机、椅子等の数脚を破壊されておりまして、税務署員が四名負傷いたしております。そういうふうな状況であります。到底靜かにお話を伺つて、又は本当に実情を極めるというふうなことがなし得る事態では全然なかつたのでございます。二十二日におきましても同様な事態である、その二十日の事態から想像いたしまするに、その二十二日においてはより以上大衆の激昂の模様が見えましたので、その際においてもお目に掛つても冷静にお話を聞き、お話をするというようなことは絶対不可能な状態にあつたということのために、恐らくは板野さんにもお目に掛らなかつたのじやないかと思うのであります。実は大衆が押しかけまして税務署内部が荒される。書類等も散乱するというようなことのために事後の仕事の遂行に非常な障害を来たしておるということも多々あるわけでございます。そんなところからいたしまして税務署といたしましては、できるだけまじめな納税者に対して、十分に説明を申上げて納得をして頂くという努力を個々にいたさなければならない際において、そういうようなことが行われますと事後の仕事に非常に支障を来たしますので、この際はとに角お会いしないで、内部の乱れを未然に防止するということが最も緊急の状態であつたと恐らく署長が判断したのだろうと思います。今更私から申上げるまでもなく、税の決定は個々の人の所得の実態を把握するということでありまして、団体的な交渉によつて又は政治的な交渉によつてこれを決定すべきものでは絶対にないのであります。ところが現在の各地におけるところの状況はそういうふうな政治的な交渉というものを強要されるという風習が非常に多いのであります。この点は私共非常に遺憾に感じておるわけであります。何とかそういうことでなしに、個々の人が靜かに冷靜に税務職員と応待をして頂きまして、そうして所得の実態を把握し、本当に納得をして頂いて納めて頂くという事態に持つて行きたいと考えておるのであります。
  55. 板野勝次

    ○板野勝次君 それはどういう報告が来ておるか知りませんが、署長が興奮してどうにも会えないとい状態ではなかつたので、外の方は私が行つたときには沢山の人が私と一緒に入つて来た。そうしたら人間のバリケートを築いて、梯子段をずつと上まで人が上らせんようにしておる。どうしても署長に会わないと、今晩東京に帰るのだからどこででもいいから更正決定の問題について話を聞きたい。署長が沢山の人に取巻かれて非常に危險な状態にあつたというのなら何ですけれども、そのときに沢山の人達を制して、決して諸君は乱暴してはならないのだと言つて、制して非常に平穏な状態になつてつたのにも拘わらず税務署員は全く職場を放棄してしまつて、沢山の納税者が次から次と異議の申立をして来るのでさえも、受付を放棄してしまつて取合つていない。こういう状態であつたわけです。それはどういう報告が来ていようとも、あれだけ沢山の税務官吏が民衆が押しかけて来たけれども、靜まつておるのにも拘わらず尚梯子段の所に人間のバリケートをずつと上まで築いた。私は諸君は決して民衆は乱暴しようとしておるのでもないのだから職場について仕事をして貰いたい。そうしないと沢山の納税者が異議の申立をして来ているのに、いつたいどうしてやるのかと言つても、一向その人間のバリケートをくずすことなくしして、正午過ぎまで……、私は正午過ぎに税務署を出て行つたのですが、決してそういう状態ではなかつた。一時は激昂したけれども鎭まらして冷靜に帰つたところがもうその日に沢山の人が押しかけて来たから、窓口に行政は一切やらないというので、遥々訪ねて来た人達にも受付さえもやらない。こういう状態であつたわけです。明らかに税務署としては、そういう沢山の人が押しかけて来たのを口実にして、そうしてその押しかけて来た人間のために事務が執れないのだというふうな態度を示させようとする、むしろ税務署の方の政治的な意図があつたと思うのです。非常に困難な状態にあつたからといつても、税務署が色を失つてしまうというふうな事態、何も私は二十日のときの状態は知らない、併し二十二日の状態はそんなに椅子がぶち破られたり、いろいろなことがされたというふうな事態ではなかつたのであります。ただ故意に会わない、故意にそういう事態があつたというふうにして、職場を皆んな放棄してしまつて、折角遠方から更正決定について異議の申立を来ている人達を徒らに帰してしまつた。こういう事態になつておる。それならばいろいろな問題が起つたときに、我々が行つて、勿論国会から議決して行けばそこを調査して行く。これが当り前ですけれども、むちやくちやな状態が行われている場合に、税務署がいろいろな文句をつけて会わないというふうなことだつたら、どうしても末端の税務行政のむちやくちやの行過ぎというものを防止することができないと思います。私はそういう岡山の税務署の態度を改めさして欲しい。
  56. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 板野さんからいろいろ実情についてお話がございましたが、私共の方に来ております報告によりますと、板野さんがお見えになりました二十二日の日におきましても、門前に集つたところの大衆の中に、マイクをつけてずいぶん激烈な煽動的な宣伝を繰返し繰返しやつておられたのであります。而もその前々日におきまして負傷者を四名出して、机、椅子等も相当破壊された。門扉も破壊されたという状況でありました。その後におきまして、丁度これと同じ状態において而もマイクを通じて激烈な煽動演説が行われたという状態の下においては、署長がそう考えるのはこれ又極めて当然のことではないかと私も考えます。勿論国会議員の方が地方の実情をお調べ下さることは、私共も是非お願いいたしたいところでございまして、それらのことを普通の状態において拒否する、或いは十分に御説明申上げないということは絶対いけないことでありまして、そういうふうな点については若干私共も末端の税務署に十分注意をいたしておるところであります。この岡山の場合におきましては、これは税務署長のやつたことはむしろ当然であつたと私は考えております。
  57. 森下政一

    ○森下政一君 先刻高橋長官から割当ということはやつていないという証拠に、申告納税の方は非常に成績が上らなかつたということをいわれておりますが、我々もそういうふうに思つております。併し現在のところは帳簿も何もはつきりしていないし、お前のところは大体これくらいの申告をして来いというようなことを言うて来るということは、これは逆に考えると割当をしているという証拠である。割当はしないとおつしやるから我々はないことを冀うておりますから、信用していいと思います。    〔委員長退席、理事波多野鼎君委員長席に着く〕
  58. 森下政一

    ○森下政一君 併しながら先刻から繰返して申しますように、第一線では非常に……、速記を止めて貰いたいのですが……。
  59. 波多野鼎

    ○理事(波多野鼎君) 速記を止めて。    〔速記中止
  60. 波多野鼎

    ○理事(波多野鼎君) 速記を始めて。
  61. 森下政一

    ○森下政一君 だからいろいろなことを言いましたが私共の真意もそこへ行つて納得の行く納税が円滑に行われるという態勢を一日も早く持つて来なくちやならんと私は思うのです。これはひとつ国税長官はよく肚の中にそのことをたたみ込んで頂きたい、これを衷心から私はお願いしたいと思うのです。
  62. 波多野鼎

    ○理事(波多野鼎君) 速記を止めて。    〔速記中止
  63. 波多野鼎

    ○理事(波多野鼎君) 速記を始めて。
  64. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 税の割当という問題につきまして、只今森下さんから事前にこれだけの納税をして貰いたいというような通知をすること自体が割当の一つの証拠じやないかというお話がございました。これは実は昨年の六月の予定申告の際におきましては僅かなケースをとつて見まして、前年度の大体の一つの比率を見ると、大体これくらい今年入りそうだから申告して下さいということを申上げました。又確定申告の際におきましては、相当各個人について調査を進めておりましたが、その調査に基いて更正決定をいたしたのであります。又審査の請求等がありました場合におきましては、それらの十分の調査ができなかつたものにつきましても爾後において相当調査を続けて参りまして、誤謬のあつたものにつきましてはどんどん訂正をいたしておるのであります。又大阪局におきましては特に執務態勢を非常に改善するために努力をいたしまして、実は各税務官吏に対して必ず胸に名札をつけ、机にはその人間の名前を必ず明示さして置くということをいたしておるのであります。ですから納税者の方々がどの人間がどういうふうなことをして募るということをよく知つて頂いて、齟齬があつた場合、いつでもあの税務官吏は妥当でないというふうにお知らせ願いたいという趣旨を以ちまして、実は税務官吏に対しては何か不信用な感じを與えまして気の毒な感じもいたすのでありますが、そういうような処置でもとらなければ、あの場所における本当の改革は困難じやないかという考え方から、先程お話いたしましたように全国から相当応援をいたしますと共に、それぞれの税務官吏につきましては、一人残らず胸に必ず名札をつけ、又机には名前を明示させるという処置をとりまして、税務官吏の態度を最も民主的に又親切に、そうして本当に納税者の方々に納得の行くような方向に持つて行こう、そういう努力をいたしておるのでございます。
  65. 森下政一

    ○森下政一君 それはそのくらいにしてあの法人税でございますが、この頂きました要綱にも示されてありますが、貸倒れ準備金の制度を設けて、一定額を貸倒れ準備金として損金に算入するというのがあります。これは法律の面にはありませんね、政令で決めることになつておりますか。
  66. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 所得計算方法につきましては政令で決めさせて頂いております場合が相当にあると思いますが、貸倒れ準備金はもともと何期間かを通じますと当然損金になるのです。或る期間は当然損金として認めるという性質のものでございますので、これもその例によりまして政令で決めるということになるわけでございます。大体の考え方といたしましては、最高限を貸倒れ金の百分の二を最終の残高の限度にいたしまして、毎期積立ることのできる限度は、更に別に利益金額の二割を原則として積立のみでございます。但し金融機関の場合は取敢ず特例を設けることにいたしまして、三割程度積立ることができるということにいたしたいと考えております。それから尚毎事業年度におきましても、利益が非常に多い場合におきまして、多く積立るということも如何かと考えまして、別に毎事業年度に積立てる限度は年にいたしまして、期末の貸付金等の千分の三程度を制限いたしまして、    〔理事波多野鼎君退席、委員長着席〕
  67. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 積立ることのできるようにいたしております。金融機関につきましては、千分の三以下でいいかどうか、尚この辺は若干検討いたしておるのでございます。大体はそのような方向へ政令で規定いたして行きたいと思います。
  68. 森下政一

    ○森下政一君 それから所得金額を決定するときに、事業所得の場合、その総所得の中から必要経費を差引くというようなことが行われておつたと思うのですが、その必要経費なるものの見解が、いつも企業者側と税務署との間に一致しないということで、ごたごたが起るのが非常に多いと思うのですが、そういうことは、今日社会通念として、一般的に会計検査において、こういうものは恐らく企業を経営する上における必要経費は明確にして、企業を経営しておりますものが帳簿を作る場合にも、これは当然必要経費に入るというふうに、税務署で一目瞭然に判断できるということになるのがスムースな調査になるのじやないかと思いますが、こういう点はどうですか。
  69. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 誠に御尤もな御意見でございまして従来申告納税でなく、税務署で規定しまして納税していたという場合におきましても、それ程細かいことをしなくとも、大体賄えていたわけでございますが、御承知のように申告納税になつておりまして、先ず税金は会社側から納税者自体計算して納めて頂くということになつておりますので、御指摘のような点につきましては、極力明確にいたしたいと考えております。で法律におきましては、これもなかなか問題がございますので、非常に大原則と申しますか、大きな規定を設けているわけでございますが、これに基きまして、今のお話通り、でき得る限り会計原則と即応しまして、更に政令等の規定規定し切れない分につきましては、国税庁の訓令を公表いたしまして、それによりましてよるべき基準を明らかにいたしたいと考えております。例えば修繕費と資本支出と申しますか、これが実際問題としましても、なかなか紛争があるのでございますが、その点につきましても、政令で最近の会計学者が一般に認める定義を與えまして、先ずよるべき基準を明らかにはつきりいたしたい、更に併しそれでははつきりいたしませんので、できますならば、訓令で個別的に例等を挙げまして、例えばこのようなものは收益に見る、このようなものは資本支出に見るというように、できる限り具体的な基準を明らかにいたしたいと考えております。そのような意味におきまして棚卸し資産等につきましても、今回特に法律にも一つ規定を設け、それによりまして、政令でいろいろな会計学上認められておりまする方法をいずれか納税者に選択して頂く、従いましてそれに関連いたしまして、相当技術的に詳細な規定を設けるように計画しておるのでございます。そのようにいたしまして、でき得る限り各納税者税法と、政令と、それから国税庁の訓令等を見ますれば、大体においてよるべき基準が明らかになるというふうにもつて行きたいと考えておるのでございます。そしてアメリカ等の例によりますと、解釈の差によりまして、やはり相当裁判によりまして確定するという例が多いようでありますが、私はやはり、今後は法人税課税等の場合におきましては、或いは見解が違う場合におきましては、民事訴訟で見解を明らかにいたしまして、最高裁判所の判決等で更に相当ケースができて来る、こういう方向に、問題によりましては、行くことによりまして、成るべく事柄を明瞭にしまして、先程来お話がありましたような、法律通り納税及び徴税ということが実行できますように、私共としましても期待し、且努めて参りたいと考えておる次第でございます。
  70. 木内四郎

    委員長木内四郎君) この際大蔵大臣が来ておられまするので、大蔵大臣に対する御質疑がありましたらお願いしたいと思います。
  71. 川上嘉

    ○川上嘉君 昨日、大蔵大臣に予算委員会で税制問題について質問したのでありまするが、昨日の問題に関連いたしまして、更に引続いて質問いたしたいと思います。大体実額調査をなし得る現在の税務機構能力、つまり納税者の大体一割程度を実額徴税する能力があるといようなことを昨日答弁されたのでありまするが、昭和二十五年度における青色申告の見込数ですね、どの程度になるのでしようか。
  72. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 青色申告につきましては只今法人個人を通じまして申告制度の普及に努力いたしておるのであります。只今まで出ております正確な数字は政府委員よりお答えいたします。
  73. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 法人につきましては、これは最近の数字をまだ集めていないのでございますが、二月の十五日現在で法人におきましては、全体の数に対して四割四分だけ提出されております。又個人におきましては、十七万余り同じ日までに提出がございます。これは予想されます総体の納税者に対する比率としては二・七%くらいに相成るかと思うのであります。
  74. 川上嘉

    ○川上嘉君 そうしますと、これ以上は出ない方がいいのですね。いくら一生懸命申告しろ申告しろと奨励しても、これ以上は出ない方がいいわけですね。
  75. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) いや、これは沢山出た方がよいと希望するのであります。青色申告制度は、課税の適正を期します上におきまして、非常にいい制度だと考えておりますので、我々はできるだけ青色申告の書式を簡單に分り易いようにいたしまして、できるだけ出して頂くようにいたしたいと考えております。
  76. 川上嘉

    ○川上嘉君 そうしますと、実額調査をなし得る能力は一割しかない。ところが青色申告を出したらそれを実際に実額調査しなくちやならん、そうすると現在一割しかない、能力がないのにすでに個人で二・七%出たとすれば、これを消化するのにさえも大変な問題じやないかと思うのです。
  77. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨日の予算委員会における御質問は、今までどのくらい調査しているか、こういう御質問であつたのであります。従いまして今までは大体一割前後、いいところでは一割五分ぐらいのところがありましようが、余りいつてないところは一割消えるだろう、こう申上げたのであります。而して昭和二十五年度におきましては、昨日も申上げましたように、取引高税、或いは織物の消費税の撤廃、その他事務の簡素化、又税制改正によりまする納税人員の減等を見込みまして、普通ならは九千人近くの減員をし得るのであります。それを減員をせずにやつて行こうという関係上、昭和二十五年度におきましては、私は二割、納税者の二割、或いはいいところでは三割くらい実額調査ができるのではないかと考えております。
  78. 川上嘉

    ○川上嘉君 そうしますと、大体予想として税務署の実額調査をなし得る能力は、大体三割乃至二割、こういうことになるわけでありまするが、現在で、個人別で二・七%青色申告が出る見込があるとしますならば、これ以上出るとすでに消化し切れないということになる。従いまして、表面では奨励しているけれども、内心じやこれ以上出るのを慮れている、ひやひやしている、こういう工合に考えられるわけなんです。それで私も、これ以上に心配しますことは、現在でさえもいろいろの問題を起している。従いまして、法人ではすでに過年度分が全納税者の大体二割程度の未済があることと思いますが、個人においてさえも過年度分の決定の未済が残るのじやないか、かようなことを心配するのですが、そういう点についての御懸念はないでしようか。
  79. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今青色申告の出ておりますのは二月の十五日までにこれは二%でございます。二割或いは三割を実額調査しようとしている我々でございますから、まだ相当出ましてもお説のようにはならない、三%余りしか出ていないのであります。実額調査は二〇%乃至三〇%やろうと思つておるのでありますから、出て参りましても相当できると思うのであります。而して又実額調査と申しましても、実額調査とは如何なるものをいうかと申しますと、これは收支がはつきりついたものを実額調査といいたいのでありまするが、中には経費の方についてははつきりしない、併し売上げと仕入ははつきりしておる、こういうものも実額調査の中に入りましよう。又中にはどうも売上げははつきりしておるけれども、仕入の方ははつきりしていない、併し売上げ調査を掴えたものもこれは実額調査とも言い得るのであります。実額調査は非常に、度合のあるものでございまして、而も青色申告で出て来た場合につきましては、これはもう書類が非常に整然としておりまするから、そういうもののない人の実額調査よりも、余程時間的にはセーヴできるわけでございます。こういう観点から私は青色申告につきましては、実額調査しなければ更正決定はできない、青色申告が出ていないものにつきましては相当の実額調査をやつて行くと、こういうのであります。
  80. 川上嘉

    ○川上嘉君 二%ですか、それとも二七%ですか。
  81. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 二・七%と言つておるのです。個人の方は。
  82. 川上嘉

    ○川上嘉君 個人の方はですね。それでその点は、大体今の個人の場合は了解できますが、法人の場合の未済の場合、現在のところで概略でいいですが過年度分の未決定分がどの程度あるのでしよう。
  83. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 法人につきましても、実は人手不足の関係上漸次決定が遅れまして、昨年度二十三年度末において法人の決定していないところに、既往年度の数が約二十六万件あつたのであります。今年度末におきましては、今年度中非常に努力いたしましたけれども或る程度これを減少し得ると思いますが、併しながら相当に整理はできたとはいうものの、大きくこれを減らすという段階までには至つていないのであります。
  84. 川上嘉

    ○川上嘉君 先程森下委員と板野委員からも、非常に詳細に質問があつたのでありますが、同じような質問を私も又繰返すことにいたしたいと思います。昨日この問題は予算委員会で触れたのでありますが、大蔵大臣の見解ではそういうたものは割当とは考えられない。こういうような御見解であつたのでありますが、勿論私もこれを、割当というものがなくても、目標というものがなくても、ただ実質的にはそういつた圧力を、納税者が受けておる、税務職員も、そういつた圧力を受けておる、こういつた点を指摘したいのであります。今、現在いろいろな、大きな問題が税金問題に関して起きておるのでありますが、その言うておるところは皆、実情に副わない課税をしておるのだ、実地調査もやらずにぽかんと決定が来ると、これだから割当と、こういう工合に解釈しておるわけです。そこで実情に副わない課税であるが故に、更正決定の一括返上、或いは異議申立に対する実地調査が済むまでは、差抑へをやるとか、或いは滞納処分をやるとか、こういつたことは反対だ。こういつた運動が起きておるわけです。そこでその実情に即した課税をするということは、取りも直さず実地調査をすることでありまするが、而もその実情に適つた実地調査もせずに、課税したということになれば、納税者は割当されたと、こういう圧力を受けたことになるのです。こういつた点に対して、これを割当という言葉で表現してはいけないわけでしようか。
  85. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨夜もお話申上げたのでありまするが、組合交渉ということが、実はずつと昔から行われておつたのであります。制度としてはこれはあまり感心したものじやないと思うのです。併しこのことは、私は税務署の方へ、組合交渉をやろうといつたつて、何も納税者の方でやる必要はないのでございます。両方からある程度、話合で行こうというところで行つておるのであります。而してこれを納税者が、厭なら、全体何々組合で、これこれくらいで一つ話をしようかということにも応じなければいい。これに応じておいて、後から割当だとか、何とか言われるのじや、これは両方とも何のことか分らないということになつてしまうのです。我々といたしましては、原則として、そういうふうなことはしない方がいいという考えで行つておるのであります。でこれを納税者の方でそういう組合状態のときに、組合の指導で行つたときに、飽くまで割当だと言われるならば、おやりにならない方がいいのじやないかと私は考えております。川上君如何でございましようか。私はそういうのは、普通の人が割当だと言つておるのは、そういう制度に対して認識が足らんのじやないかと、こう考えるのであります。
  86. 川上嘉

    ○川上嘉君 実はこういつた問題は全国各地に起きておるのです。まあ九州あたりでこういう運動が起きたのは、殆んどなかつたのです。ところが現在では福岡市においては、大衆が押しかけて来て、硝子窓をぶち壊したとか、或いは久留米においては、市長が吊し上げをされたとか、それから大分県におきましても、中津税務署管内、宇佐税務署管内、国東税務署管内、臼杵税務署管内、日田税務署管内、皆同じような運動が起きておるわけです。それから宮崎県においても、宮崎税務署、鹿兒島県においても、鹿兒島管下にこういつた運動が起きておるのですがね。これについては先程も申上げました通り実情に即さない課税をしておるんだ、だから実額調査をやれ、実額調査をやれといつておるのです。ところが現在の税務署の機構から見て、実地調査をやり得るものは、精々三割乃至二割しかできない、これが実情でありながら、絶対にそういつた推定式な、認定式な課税はやらないのだ、できるだけ実額調査をやるということを宣伝するからいけないと思うんですよ。本当に税務機構の現在の実情を、つまり、白書を出して、いくら実額調査をやるやるといつても、三割以上はできないんだ。あとはこうこうこういうわけでやらざるを得ないんだと、こういう苦しい立場を本当に大衆に分るように、政府は白書を出す必要があるんじやないかと思う。それを一方においては実額調査をやるんだ、公平、適正に課税をするんだと、こういうことを言うから、政府はああ言うておるに拘わらず、俺のところは実地調査を受けたことは一回もないのだ、実情も見ずにぽかんと来ておるのだ。例えば例を申しますと、ここに美容師がいまして、十一月に美容師の資格を取つて、ただ名簿に登録されただけで以て二十万も三十万も課税決定の通知が来ておる。これは行つて話せば勿論取消にはなります。取消にはなりますが、そういつたことが、つまり権威のないことが幾らでも起きておるんですよ。これはどういうことかというと、実際手が足りないんだ、こういつた実情をできるだけ国民に分らすべく積極的に努力する必要があるんじやないかと思う。こういつた点についての大蔵大臣の御見解を伺つて置きます。
  87. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 誠に御尤な点があると思うのであります。我々といたしましては、政治の基をなしておじまする税務行政について、万全を期すべく努力はいたしておるのでありまするが、何分にもその行政自体が非常にむづかしい行政でありますし、又事務が急激に多くなつて来ました関係上、これを補充いたしますのにもかなりの補充難に陷つておるような状況であるのであります。御承知通り年々税務官吏を殖やして参ります。十年前に較べますと、大体十倍になつております。十倍近くになつておると思うのでありますが、これを一度にさつと殖やしたからといつたつて、未熟練者が入つて参りますると、なかなか二人のところを三人にしたからといつて、直ぐ能率が上がるものではない。それよりも二人を能率を上がるように事務の簡素化を図つて、或いは又いろいろな執務態勢をよくするような方法で徐々に直して行かなければならんと思うのであります。仕事は減りましても、人を殖やします、それからいろいろな点で改善して行こうとしているのでありますが、今回の税制改正により、又大分現在職員も慣れて来つつありますので、二十五年度に至りましては、相当の実額調査もできることと思うのであります。まあ最近一割とか一割二、三分というのも、これは昔に比べますと、可なり成績はいいのでございます。ここ十五、六年前はそこまでも実は調査が行つていなかつた、こういうふうな状況であるのであります。どうも私は今見てみるのに、税務署内の執務態勢が有機的に行つていないのじやないが、年齢も少いし、能力も昔程にはないと思いますが、それにしても本当に能率的に動いていないのじやないかという嫌いがあるのであります。例えば外の機会で申上げたと思うのでありますが、滞納額整理簿も十分にできていないから、同じ人のところへ四度も五度も滞納処分に行く、こういうようなことは事務の今までの処理をうまくやつて置くと、非常に人手が少くて行くと思うのであります。十四、五年前には都内の税務署でも庶務課というところは二、三人しかいなかつた。この頃は庶務課でも二、三十人いる、こういうふうな状況であるのであります。いま少しく人を減らさないどころか殖やします、そういうような点で改善して参りますが、署内における執務態勢をもつと効果的にやることによりましても、一般納税者に御迷惑をかけることが少くて済むのじやないかという考えを持つておるのであります。
  88. 川上嘉

    ○川上嘉君 まあ能率を上げるという理由でそういつた点を考慮されるということは、それは理由にはなりましようが、つまり十五、六年前には、僅かの実額調査も問題が起きなかつたということは、納税者が担税力が相当あつたのでありまして、現在では非常にまあ税金が重いために、担税能力も殆んどぎりぎり一杯のところまで来ているやそこで少しでも不均衡があつたり、或いは少しでも実情に副わない点があつたりすると、こういう問題が起るわけであります。そこでやはり実額調査をなすのが理想でしようけれども、全部について実額調査はなし得ないのだ、こういつた実情を本当に、繰返して申上げますが、やはり大衆に訴える、できないくせに、今度は実額調査をやるんだ、盛んにやるんだ、やるんだ、それから公平適正に課税をやるんだ、こういうことを宣伝されるから、今のような大きな問題が起るとかように考えるのであります。それでやはりそうでないと、実際の能力はこうだということになれば、或る程度不均衡、不公平があつても、それは不均衡、不公平なら、実際は調査が足りないのだから、我々も税務署へ行つて話せば何とかなるだろう、こういう気持に納税者もなるだろうと思います。そこをよく考えて、殊に今日のように納税者と税務署との摩擦が非常に強くなつておるときに、そういう点に特に注意される必要があると思います。  尚今の人員の問題でありますが、人員につきましても、これはどうしても人手不足だ、こういうことを指摘せざるを得ない。それは現在の人員でできるように仕事を整備するということも勿論必要でしようが、その仕事を整備するどころか、今の情勢では段々殖えておる、却つていろいろな事務が殖えて来ておる、余計な青色申告納税者を啓蒙しなくちやならないというような仕事もいろいろ段々重なつて来ておるし、仕事はますます複雑になる一方ですから、人員は当然殖えなければならん。これは予算委員会指摘したのでありますが、それにも拘わらず昨年度より徴税費は九億八千万円も減額になつておる。    〔委員長退席、理事黒田英雄委員長席に着く〕 こういう点を見ると、政府が本当に実額調査をやるのだ、公平適正にやるのだというその誠意が、熱意がどこにあるのか分らない。できるだけ実額調査をしよう、或いはできるだけ公平適正に課税をやろうというなら、当然人員も殖やし、その仕事の向上をやる、それだけ出張とて実額調査をするごとになれば、当然旅費も殖えなければならない、徴税費が殖えなければならない、ところが殖えるどころか減つておる、こういう理由が分らない。どういうわけで徴税費を減額されたか、この点がどうも分らない、一つお願いいたします。
  89. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨日も申上げました通りに、昨年におきましては、予算では御承知通り七万五千人の定員であつたが、それを実人員が六万四千人しかいなかつたというので、一般の行政整理で二割落しました。その関係で一万五千人に相当する分が本年はなくなつた、それは或る程度予算を補正しております。予算を補正しておりまするが、退職資金が昨年はそれによりあつた、それから別に取引高税の交付金が五、六億円ございましたが、併し取引高税もなくなつたので、五、六億円の交付金が要らない、織物消費税の交付金も要らない、こういうことになつたのでございまして、実質的には何ら減つておりません。而も納税者も減り、それから今の税種もなくなつて来たのに、人員を千五百人殖やす予定になつておりますので、私は余程改善されることと考えているのであります。
  90. 川上嘉

    ○川上嘉君 それじやこの程度の徴税費で以て政府の実際まあ上程され、これから実施しようとする税法を実施するに十分である、この税法を公平適正合理的に実施するにこれだけの徴税費で十分だ、こうお考えですか。
  91. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 敗戰によりまして、国の行政組織はできるだけ圧縮しようという方針で我々はやつているのであります。併し税の実情はお話のような点もありますので、他の官庁は減らしましても、税務署の方は殖やす、こういう方針で行つているのであります。それは私は十分であるとは申上げられませんが、こういう諸般の事情を考えまして、この程度ならまあまあやつて行ける、こういう心境であるのであります。
  92. 川上嘉

    ○川上嘉君 まあ再々繰返すようでありますが、今度の税制改革を指示したシヤウプ氏も、税務職員の数は殖やせ、予算によつてこれは妨害されるべきじやない、人員を殖やすとか、徴税費を殖やすとかいうことは、予算が少いということによつて妨害されるべきものじやないということを言つている。こういつたシヤウプ氏の言をどういう工合にお考えですか。
  93. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) シヤウプ氏のお話は、私はできるだけ重要視し考慮いたしているのであります。その結果こういう予算にいたしたのであります。
  94. 川上嘉

    ○川上嘉君 徴税費は非常に少い、少いのだから、もつと積極的に殖やして頂きたいということを要望いたしまして、次に先程の青色申告に戻りまして少しく質問したいと考えます。先程のお話でございますと、現在二月十五日現在では二・七%ぐらい個人としては青色申告をする大体予想とのことですが、大体今から一生懸命青色申告をしろしろと指導、奨励したら、大体見込数は……来年の見込の概略でいい、もう一度お願いいたします。一生懸命にやつているわけですから……。
  95. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) それが今回提案されました税法によりまして青色申告の届出期限が五月末までに延期されましたので、各地におきまして簿記の講習会でありますとか、青色申告に関するところの講習会を全国的に只今開催いたしますと共に、税務署員も実は一月頃におきましては、確定申告その他の仕事が非常に繁忙であつたために、十分御承知のように御指導申上げる余裕がなかつたわけですが、今日は相当積極的にその指導に努力いたしております。五月末頃におきましては、それは極めて大雑把な推定ではありますけれども、少くも一割程度以上は出るのではないかという見込も立てております。
  96. 川上嘉

    ○川上嘉君 聞くところによりますと、この納税者の理解が行くように、納得ができるようにその青色申告についても記帳を具体的に、記載方法とか、記載例とか、その範囲等を明確に指示するということのできる人は、青色申告について今日十分に説明できるという人は、一税務署に一人しかいないということを聞いておるのですが、これはどういうものですか。
  97. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 先程お話いたしました通り、年末並びに一月の当初におきましては、お話のような状態であつだと思うのでありますが、その後相当訓練をいたしておりますので、今日では相当数十分に指導し得る能力を持つている者があると思うのであります。
  98. 川上嘉

    ○川上嘉君 そうしますと、これからそういつた連中を指導し、納税者を指導して行くのは大変だと思うのです。そこでそういつた点から考えて見て、この青色申告制度というものは、訓練という意味においては大変効果的であるかも知れませんが、これを実施するという面においては時期尚早ではないか。どういう工合に考える。つまり納税者もこれを読んで分るのは殆んどいない。むずかしいですから……。それは専門家である税務署職員でも、年度末においては私の言つたように一税務署に一人しかいない。こういつた実情であつたということになれば、これはなかなかその性質においてはいいかも分りませんが、又納税者納税意識を向上して行くといつたようなこと、又納税者税務職員訓練の立場からはいいかも知れませんが、これを実施するということになれば時期尚早だと考えますが、この点についての御見解を承わりたいと思います。
  99. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 先程の説明にちよつと不足がございましたので、補足さして頂きます。青色申告の帳簿様式、要件等につきましては、大蔵省令並びに国税庁の告示を以て指示しておりますが、あの記載は一見いたしますと非常に複雑で、非常にむずかしいように見えるのでありますが、例えば一つの業態を取つて見ますと、この要件は極めて簡單なのでありまして、そんなに困難なものでは絶対にないのであります。又税務官吏としてもあれを当初見ますと非常に厖大でありますために、恐れをなして、本当に分つて指導できるというような自信を持ち得なかつたろうと思うのでありますが、これはちよつと説明して聞かせれば訳なく分る問題でありまして、お話のような、そんな困難な問題ではないのであります。この点は川上君はよく実情を御存じであろうと思いますから、御了承願いたいと思います。
  100. 川上嘉

    ○川上嘉君 又話が逆戻りになりますが、そうしますと、大体今の税金の問題についての本当の実額の調査をやることとか、或いは青色申告を出して、正しい帳簿を正しく記帳することによつて、相当緩和されるのだと、そうして来年度においてはこういつたことによつてこういつた問題も起きなくなるということを現在政府は予想し、現に言うておるのでありますが、今までのお話の経過によりますと、実額の調査をなし得る余力は大体二割乃至三割、個人で青色申告をやるものは二・七%、現在一生懸命にやつても一割ぐらいとか出ない。ということになれば、依然として九割乃至八割の人々は、この税の決定によつていろいろな問題が巻き起る、こう考えます。そこでこういつた問題をやはりもつと抜本的に解決するためには、もつと大きな問題が残つていると思うのです。今青色申告をしてまじめに一生懸命に正直に帳簿をつけたからそれを税務署は認めてやるのだと、こういつたことよりも、もつとその前にやるべきことが幾らもあると思うのですよ。そうしない限り今起きている問題を解決することは殆んど不可能じやないかと思います。先程からもありましたが、森下委員から、税務署員には大体九割増で物を売る。ところがこれ以上の運動が起きているのです。群馬県あたりにおきましても、広島県あたりにおきましても、税務職員に物を売るな、それから税務職員と口をきくなという運動が起きている。こういつた点から見ましても、もつと税務職員の立場というものを大蔵省の上級幹部はもう少し考えて貰いたいと思います。あなた方も曾ては皆税務署に勤めた経験があるのですから、あなた達が勤めた当時より現在は苦しい立場に追込まれている。それは納税者の税金も多額だし、税務署が実額調査をするには手が足りない。どうしてもやらなければならんから、百人のうち二、三人について実額調査をやつて、後の九十七人はその三人を基準にして類推しなければならない。こういつたことから考えて見れば非常にむずかしい立場に追込まれているのです。そうしてその場合に一切の責任が大体第一線にあるのです。つまり税務機構の第一線にある税務署そのものに一切の責任が転嫁されている。こういうふうに結論付けざるを得ないのであつて、そうして上級の大蔵官僚はそれを傍観している。傍観しているのみならず、却つて拍車をかけているのではないか。こういつた工合に結論的に考えざるを得ない。そこで現在、つまり上級官僚とそれから第一線の納税者との間に板挾みになつて、日夜税金の事務に携わつている税務職員の立場というものを考えてもつと抜本的な対策を講じなければいけないと思います。それについて今までの問題から見ますと、昨日の予算委員会でのお話を承つても、何らそういつた点について緊急的な対策が講じられていない。これは誠に遺憾なんですよ。一体あなた達、現在税務署にどんどんデモが押掛けて来る、こういつた実情を本当に自分の苦しみとして考えておられるかどうか。こういう点について一つこれは変な聞き方ですが、本当に税務職員の、第一線で働いている税務職員の立場というものの苦しみを自分の苦しみとして感じておられるかどうか、一つお伺いいたします。
  101. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 先般来お答えした通りでございまして、できるだけ税制の簡素化を図り、又予算におきましても、外は減つてもこちらは殖やすようにというようなことで、税務職員負担をできるだけ軽くというように、税務行政の執行が円滑適正に行くように努力を続けているのであります。私は今お言葉にありましたように、税務職員が最近負傷したとか、こういう問題につきましては同情と申しますか、非常にお気の毒に思い、見舞の電報を打つたりなんかして本当に自分のことのような気持を抱いているのであります。勿論こういう紛争につきましては、税務署におきましても手落ちのところがあると思うのでありますが、納税者の方におきましても全然責任がないということはないのであります。殊に最近のああいう不祥事件というものは、何か外のものが入つてごたごたさせる場合も相当多いと思いますので、そういう場合につきましては、断固たる措置をとるように指令をいたしておるのであります。何分にも経済界の変動の後に減税が来るということになつておりますので、即ちディス・インフレの線が来て、尚前年度の税金を取らなくちやならんというふうな状態でありますので、今が一番困難な状況と思うのであります。併しこの税法が通過いたしまして、又経済界も安定して参りましたならば、今年の今頃のようなことが来年はなく、余程改善せられて行くと考えております。
  102. 川上嘉

    ○川上嘉君 更に加えて質問いたしますが、今言つたようなつまり一種の税金に対する非難の的に税務署がなつているわけなんです。その場合にこれに便乗して、政府はこれの立場を弁明しようということは考えないで、又如何にその摩擦を少くするかという対策は講ぜずにいて、あべこべにその非難の声に便乗して、成る程税務職員は監視する必要があるというので、特に監察官の権限を強化して、そうして税務職員を監視しようというような構想を持つておられる。こういうことを聽いているのですが、この点についての一つ御見解を御発表願います。
  103. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今のいわゆる税金攻勢と申しまするか、この風は税務署の職員だけであつて国税長官、主税局長、大蔵大臣は馬耳東風と、こうお考えになつては私は困るのでございまして、私にも相当な風当りが強いということは御存じだろうと思います。(笑声)決してひとごとのように、川向うの火事というようには考えておりません。税務官吏と同様、それ以上風が当つて来ておるということは、自分も思つておるのであります。できるだけこの風当りを少くしようとして、こういうふうに税制改正案とか予算案とかを御審議願つておるのであります。  次に監察官制度の拡充でございまするが、この税務の非難を受けます一つの原因は、税務職員の中に不心得者がおるのであります。これは私は遺憾ながら不心得者が、これは沢山の数ではございません。勿論極く少数でございまするが、不心得者がいるということが、税務の執行に、又国民の協力に非常に害をなしておるということは川上君も認められることと思います。而してこの不心得者を内部におきましてできるだけ監視し、未然にそういうことのないようにするために制度を設けたのであります。これは私は税務行政刷新の一つであり、国民から協力を得る一つの方法として、税務官吏の中の極く少部分でありまするが、不心得者を早く知つてそうしてこれが誤りのないようにしようとするのが今度の監察官制度であります。
  104. 川上嘉

    ○川上嘉君 私は先程から申上げております通り監察官の権限を強化する前にやるべき手があるのです。それは不心得者が入り得るスキがあるわけです。現在の税法の中に、現在の課税の方法の中にそういつた不心得者が入り得るスキがある。このスキをなくすることが税制の合理化なんです。これが税制の改革でなくちやならん。その入り得るスキがあるということが、すでに税制に不合理があるからです。これは昨夕も話したのですが、大蔵大臣が去年、「財政」の九月号だつたかで述べておられますように、納税者は確かに二重帳簿を持つておる。何といつても持つております。それと同時に税務官吏は、法規集に書いてある税制と、自分の、胸にあるいわゆる胸三寸というようなものと、二つの物差しを持つておる。そうして本当の仕事は胸三寸でやつておりながら、説明は税法を当てはめようとしておる。ここにそういう不心得者が入り得るスキがある。このスキをどうしてなくするかというのが税制の改革でなければならん。ここに適正な課税の狙いがなければならんと考えるのであります。そうするにはどうすればいいかということにつきましては、やつぱり税法納税者が正直に守り得るようにつまり正直に帳簿をつけ、正直に申告ができ得るように税法を改革することであり、又税務官吏も本当に厳格に、それこそ自分の胸三寸の物差を使わなくても厳格にこれを実施して行けて、決して納税者に圧力を加えないでも厳格に実施し得るような税法を作るということが狙いでなければならんと、かように考えるのです。こういつた点について大蔵大臣の御見解を一つお願いいたします。
  105. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 昨夜の予算委員会での御質問と同じ御質問であるのであります。何回でもお答えいたしますが、私は今度の税制改正は、あなたのお話税務官吏が胸三寸でやることが非常に少くなつて参ります。これは最高税率が八割五分というふうなべらぼうなあれでございますので胸三寸の場合が多かつたのでありますが、今度はそういうことがなくなつお話のような税制改正をやつておるのであります。御了承願います。
  106. 川上嘉

    ○川上嘉君 そのお話のようにしようとする狙いは正しいのですよ。大蔵大臣の狙いは正しいのです。その狙いを達成するには、現在の改革の程度では余りにも微力である、余りにも無力である、こうして来ておるのです。その狙いは確かに当つておるのです。併しその狙いを飽くまでも達成するためには、もつと画期的な税制改革案が上程されなければならん。今回の場合は、その狙いを達成するには余りにも微力である。こういうふうに私は指摘しておるわけであります。
  107. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今度の税制改正は相当画期的ではございますまいか。八割五分の最高税率を五割五分に持つて来た点、これは各国におきましても余り例のないことであるのであります。どうも税金に携わつておる人、或いはその経験のある人は、税に一番重きを置いて、外のことは何でもない、又税制をやつておる人は統制が一番で外のことは大したことはない。検察をやつておる人は検察だけで国は立つて行くのだというふうに考え易いものであるのであります。我々も税を取つてつたときには、とにかく徴税がうまく行けば日本は安泰であるというふうに考え勝ちであるのでありますが、併しそれは又一歩退いて考えなければなりません。ものにはやはり程度があるのであります。今の財政状況から申しまして、それは減税をしたいのはしたい、私は誰よりも減税論者であるのであります。併し今の状態においては、この程度で止むを得ないのじやないか、次の年度は又相当の減税をして行く、徐々に直して行くより外ないだろうと思います。非常に必要であるからといつて、外は構わず、採用する人員の質は考えないで、今の六万人を三十万人にするとか、又あなたが昨夜おつしやつた基礎控除二万五千円を三十万円くらいにする、それはよろしうございましようが、それは理想であつて、そこへ行くまではやはり或る程度のステツプがある、これをお考え願いたい。私は税務の方につきましては少しの経験を持つておりますので、できるだけ税務行政の円滑を期するようにやつております。而も又今の場合におきましては、行政の中で重要性の最も強いものであるのであります。この点は忘れてはおりません。忘れてはおりませんが、いろいろな政治全体の振合いを見まして、先程来申上げましたようにこの程度の減税、この程度の徴税費、この程度改正で止むを得ないのじやないかという考えを持つておるのであります。
  108. 川上嘉

    ○川上嘉君 税金に対する問題を重く見るか軽く見るかという問題に入つて来たようですが、私は税務署出身なるが故に税金に重きを置いておるのではないのであります。税金問題の解決こそは本当の意味の政治の根幹である。これは吉田総理が言うておる。第七国会の演説の中に、税金は政治の源であるとはつきり述べておられます。従つてそういう点において税金問題に重点を置いて、税金問題を解決することが、やはり結局これは農業に対する対策であり、中小企業者に対する対策であり、あらゆるものの根本対策だと思う。だからこそ税金問題に重点を置いて、その質問をしているわけで、何も税務署に長く勤めていたからというので、税金問題を質問しているわけではない。国民全体がこれに関心を持つている税金問題に、一番関心を持つているからその問題を大きく取上げて質問している。こういう点を更に附加えて置きます。
  109. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 今回の税制改革についての根本問題といたしまして、池田大蔵大臣にちよつとお伺いしたいと思います。  先ず第一番に最近の経済情勢ですが、大臣は先般の本会議における質問等においても、デイス・インフレであつて決してデフレではないということをお話しになつておられる。併しながら物価が上つている面の方を見ますと、主食が上つた運賃が上つたり、或いは価格補給金がなくなつたようなことから、いわば大企業に属するような事業の物価が上つたりというふうになつていますが、その半面一般の物価は確かに下つている方向に向いているのです。その下つている方向に向いていることは勿論私共としても結構なことだとは思うのですが、その一般の商品を生産する、取扱つておるという人々は大体中小企業者、結局中小企業者は相当今度の物価の値下りについては困難な情勢に落ち込んでいるのが多いというふうに見受けられるわけなんです。それについて、この税制改革によつて、税金は相当減つているんだというふうなお話もありますが、所得税とか法人税とか、そういつたようなものの面について、やはり中小企業者が立ち行かなくなつた場合には相当の減收が行われるのではないかと懸念しております。この点について大臣はどういうふうにお考えになつておられるか、或いは今後の物価というものをもつともつとどんどん下げて行くという方針でいるのか、これを先ずお伺いいたしたい。
  110. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 物価は大体において全体としては横這いと考えております。補給金を外しますものにつきましては、これは上つて参りましようが、お話のような下るものもあります。全体としては横這いと考えております。而うして、最近の情勢から申しますると、中小企業、或いは農業者を根幹といたしまする申告所得税につきましては、御承知通り補正予算で二百億円減額いたしましたが、尚その二百億円ぐらいの收入減が出るのではないかというふうな報告が来ておる情勢であるのであります。
  111. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 今後更に物価を下げて行く方針で以て政治をおやりになるかどうか、この点を一つお伺いしたい。
  112. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は物価は低落傾向に行かしたいという気持があるのでありまするが、なかなか……、最近も新聞を見ますと、ガス料金が上るとか、或いは私鉄の料金が上るとか、いろいろな事情が出て参りまして、必ずしも全体的に下る、非常に下るというふうなことは考えておりません。ただ全体の傾向としては、物価を低落の傾向に持つて行きたいという念願は持つているわけであります。
  113. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 実際市中の雑貨、或いはいろいろの商品について、物価の値下り傾向を見ますというと、ひどいのは三分の一になつたのもあり、或いは半分ぐらいになつたのもあるし、まあ三割から五割ぐらい下つているのは軒並にあるのであります。これは大臣もよくお分りだと思うのでありますが、そういうときにそういうものを生産し、或いは取扱つている中小企業者の大部分というのは、結局税金を納めるような段階には殆んど行かないようなことを今から心配されるのですが、それについて大臣はどんどん物価を下げて行つて、赤字が出たために今度は税金の税率を安くしたが、併し又赤字が出たため納めることができないという階層が沢山できても、それに対してやはり徴税を強行するというような立場になつて来ると、こう思われるわけですが、この点を私は一番心配するのでありますが、その点はどういうふうに考えていますか。
  114. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 赤字の場合は税金を取るということはないのでございます。ただ問題は今が非常に赤字だ、併し所得税法によりますと、一月一日から十二月三十一日までということになつておる、その税金を、所得があつた場合に税金を納めようとした場合に、今が非常に不景気だから税金を免除しようというお話になりますと、これは個々の事情で支拂能力がないということになりますれば、待つより外ないと思うのでありますが、具体的な問題といたしましては、赤字のところ所得がないのでございますから、これは附加価値税なら別問題でございますが、所得税においては問題ないと思います。    〔理事黒田英雄君退席、委員長着席〕
  115. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと油井君にお訊きします。予算委員会の審議の都合上大蔵大臣がちよつと向うに出られなければならないのですが、大蔵大臣は後刻こちらに御出席願うことにして、一応質問を保留して頂いたら如何でしようか。
  116. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 はあそうですか、それでよろしうございます。
  117. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは大蔵大臣には後刻更に御質問願うことにいたしまして、政府委員に対する御質問がありましたら御継続願いたいと思います。    〔「ちよつと休憩にしたらどうですか」「賛成」と呼ぶ者あり〕
  118. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 然らば暫時休憩いたします。    午後三時五十八分休憩    ——————————    午後四時二十七分開会
  119. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは休憩前に引続き会議を開きます。質問がありましたら……。
  120. 板野勝次

    ○板野勝次君 税法の今度改正せられる二十一條の三ですね。この二十一條の三はなかなか厄介なことが書いてあるのですが、結局どういうふうにしようというのです……。
  121. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) この規定は相当詳細に書いてありますので、大分ごたごたして分りにくいかと思いますが、要点を最初に申上げて見たいと思います。この規定はいわゆる予定申告につきまして原則として前年の実績額で申告して貰う。勿論それ以上申告をして頂くことは差支ございませんし、またそれを所得が増加すると認められる場合におきましては、以上の申告を期待しておりますし、法律上もそれが可能にいたしておりますが、大体は前年の申告額まで申告して頂きますれば、更正決定は予定申告段階においてはいたさないというのがこの規定の骨子でございます。ただ前年の実績によらなければ、従いまして常にいけないということになりますと、所得が減少したと認められるような場合に必ずしも実情に即しないことになりますので、そのような場合におきましては政府の承認を受けまして、前年の実績以下で申告する乙とができることにいたしておるのでございます。而うしましてそういう申請が出て来た場合に、次に述べますような場合におきましては政府は必ず承認しなければならないことといたしております。一つは災害とか、或いは営業の全部又は、一部を廃止したとか、或いは譲渡したとかそういう外形的な事実によりまして減少するということが客観的に明らかな場合、この場合におきましては税務署長は必ず納税者の申請を承認しなければならないことにいたしております。従いまして、若し不服があります場合は、異議の申立等ができることにいたしております。それからいま一つは、それ程外形的な基準はないが、一定の帳面の記載等に基きまして前年度よりも二割以上減少すると認められる場合、この場合におきましては、税務署長が承認を與えなければならないことにいたしております。従いまして、そのような場合におきましては、納税者の申請、一定時期までに申請して参りますと、承認を與えまして、その承認を與えた額で予定納税をしてもよろしいということにいたしているのであります。大体の骨子はそのようなことでありましていろいろな場合を想定いたしまして、細かく規定しておりますので、読みづらいと思いますが、そういうことによりまして、あらゆる場合を考えまして、規定いたしている次第であります。
  122. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと、只今の御説明から受取れることは、前年の実績というものを基本にして、それよりは下らないということが、飽くまで鉄則になつているというふうにしか受取れないのであります。併し、現在の実情というものは前年よりも、例えば今年よりも来年度は、更に惡くなるという一般の経済界の見通しが惡くなつて来るという状態があるのにも拘わらず、前年度というものが鉄のごとく動かないということになつて来れば、勿論災害、或いは営業の一部が廃止されたり、譲渡したというふうな場合には明らかだけれども、それ以外の場合においては、殆んど原則的に前年以上の申告をしなかつたならば、例えば少々の減收があつても認められないというふうな結果になることを、法的にここで確立しようというわけなんですか。
  123. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 今申上げましたように、取引の記録等に基きまして、前年から二割以上減少すると認められる場合におきましては、これは税務署長は承認を與えなければならないことにいたしております。その程度に至らない場合におきましては、なかなかその中途の段階においては問題がございますると、却つてそこでいろいろ争うということは、秩序ある税務の運営ができないのではないか。納税者からいたしましても、問題がいろいろございますし、税務官庁におきましても、なかなか予定納税は適正な調査がむずかしうございまして、何しろ見込でございますから、却つて問題が多いから、一応前年の実績で納めて貰い、そうして翌年一月の確定申告段階におきまして、そのときこそ全部一年間の所得に基きまして、申告をして頂きまして、その際に過不足額を、予定申告で納めました過不足額を調整しまして、納税して頂くということに相成るのであります。これは最近までの予定申告の困難性、それに対する、それに関連するいろいろの税務の非常な紛議等を私はこのような方法によつてそれを少くすることが、一番納税者の便宜でもあり、又税務官庁の仕事をうまくやつて行くゆえんではないかと考えております。尚最近いろいろ状況が面白くない営業があるのじやないかというお話でございますが、これは確かに織物その他相当価格が大巾に下落したものがあるようでございます。こういうものにつきましては、私は恐らく或る程度の記録に基きまして今申上げましたどれかの要求に該当いたしまして必ずしも前年度の実績によらないで予定申告をして頂くことになると思います。一般的には大蔵大臣も申上げておりますように全面的に所得が減少するということは私共としては予想しておりません。これはむしろいろいろインフレーシヨンに関連する政策を適切に実行いたしまして、できますならば生産を殖やして、殖えただけ所得が殖えるという方向に持つて行くべく努力すべきだと思つておりますし、又大勢としては私共もつとそのようなふうに行き得るのじやないかというふうに考えております。従いましてこの規定がありますために非常に無理を来すということは先ずなかろうと思います。ただ今申上げましたようにはつきりした記録に基きまして申請がありまして、成る程尤もだという場合にはこれは勿論低い申告ができるわけであります。従いましてこの規定の運用よろしきを得まするならば決して無理な扱いになるというようなことにはなるまいと、政府におきましても運用よろしくやつて適切にやれという要望がございますし、大蔵大臣からもこのようなお答えがあつた次第でございますことを御報告申上げて置きます。
  124. 板野勝次

    ○板野勝次君 併し実際から見れば前年度の申告が押付けられて来るという結果になるので、その前年度の実績というものを基礎にしなければならないという根拠はやはり税法が無理な税法だからどうしてもそういう一定の基準というものを押付けて行かなければ徴税ができない。こういうところに狙いがあつて、税務行政を成るべく簡易にして成るべく一定の基準から取上げて行くという、こういう意図があるわけではないか。
  125. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 板野さんも御承知かと思いますが、今の申告納税所得税が一番納めにくい理由は、勿論税率が高いとか負担が重いとかいうことも主なる理由ではございますが、他の一面におきましては、納税者がどうしても何と申しますか、資金に困つておられる関係もございましよう、いろいろな関係がございましようが、税金は最後まで繰延ばすというのが普通の納税者の実際の実情でございます。これに対しましては納税準備預金等の制度を設けまして、極力準備をいたして貰ふようにしておりますが、どうしても時の勢いで終いまで延ばしておりまして、従いまして一月に確定申告をする際にも十分な申告が出て来ない。税金が高くなる、一時に多くなりますので、税務署が更生決定をやりますと、相当、一年間に納める大部分が確定申告によつて納めるということにならざるを得ない現在の実情でございます。これは考えますと遅れておるから有利だということにもなり得ると思いますが、その結果は非常に納税者納税資金の調達に骨を折られまして、結局前のとき分割して納めて置けばそれ程でなかつたものが、遅れたために非常に納税上困難を感ずるということが非常に多いように見受けられるのであります。そのような点は、予定申告程度法律におきましては、まあ本人の見積りによつてやるということに今までなつておりまして、勢い低く申告されて参つて来ましたのが一番大きな理由考えておりますので、先ず予定申告段階におきましては、大体において前年度の実績額を元にいたしまして、それの三分の一ずつを二期と三期に納めて頂きまして、最後の確定申告の際に一年間の実績、これは本当のそのときの実績を調べまして、それに基いて正しい税額計算して、すでに納めた税額との調整をやりまして、確定申告で納めて貰うということになりますれば、私はひとり税務署の見地からでなく、納税者が実際に納められる点から行きまして心、私は遥かに改善になるのではなかろうかとかように考えております。こういう制度は外国においても多く行われていたのでございますが、最近までは御承知通り経済界の変動が激しくて、どつちかと申しますと非常にインフレで物価が上つて来たわけでございますが、そういう際にこういう制度をやりますと非常に実情に反するというような場合もございますので、やや安定に近付いて来ました今の段階におきまして、このような制度を採りますということは、私は時期から行きましても妥当ではないかと、かように考えております。
  126. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところが先程高橋国税長官にも聽いたのですが、予め……申告制度というものが事実上無視されてしまつて、そうして申告しない以前に税務署が一定の額を決めて来て、それに文句があるのなら更正決定を出すぞという、こういうようなやり方をしておるわけですね、実情は……。そのことのよしあしは別として、そういうやり方をとつておるものなら、何を苦しんで前年度の実績というものを基準にしなければならんのか、法制的な措置を、法律規定を設けなければならないというのはどうも理解に苦しむわけです。無理にこんなものをお作りにならんで勝手にお取りになつておるのならば、勝手につまり額を決めて来られるのならば、ここに決められなくてもいい、ところが殊更に規定を設けて来るというのは、前年度実績という以上こういうことを動かすことのできないものとしようとするところの意図ですね、それがはつきり現われて来るように思うんですが、そういう危険はありませんですか。
  127. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 予定申告に対しまして、いろいろ見積りで更正決定を行いますことの実は弊害を多分に感じておりまして、御指摘通り必ずしもうまく行つていないことが多かつたものですから、むしろこのようにはつきりいたさせまして、極力納税者と税務署との聞の不便を少くしてやる、但しはつきり減少することが明らかな場合は、これは当然減少したものによつてつて行くということに相成るわけでございますから、私は従来に比べますと、予定申告段階における納税は遥かに今までと比べまして、改善されるものと確信いたしております。
  128. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところがですね。前年度よりも二割以上というふうに認められるというふうな場合、これは税務署の認定なんですが、ところがなかなかこういうふうには認めて貰えない、而も一旦こういう手続で調整されて行くからいいとおつしやるのですけれども、翌年度に調整して貰う以前に、その決まつた額に対する拂える能力がなくなつて来ておるというのが現実だと思います。直ちにその悪い部分が調整され得る状態でなかつた納税者は困るのじやないか、そうするとあなたは税金のために金融をするというのなら零細な業者ですね。こういう者に果してその納税のための金融が廻つて来るでしようか。
  129. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) まあ先程私が申上げましたのは、年間の税額を最後に確定申告又はそれに対する更正決定で一遍に納めるというのは非常に納税に困難でございますから、成るべく分割で事前から納めて頂くというのが非常に納税上いいということを申した次第でございまして、それで今度の前年度の実績でやりますると、そういう点におきまして従来と比べますと余程改善になると考えております。営業者の場合におきましても、最初から準備して計画的にやつておられる方々は相当負担が重いのですから困難でございますが、程度が余程違う、実際でございます。例えば勤労所得者のごときは御承知通り源泉差引かれておりますから、実際相当に重税ではございますが、税額も相当に入つておる、この支拂の都度分割されて税金を納めております関係上そのようなことになつておると思うのでございますが、申告納税納税者の場合においてもこのような方法によりまして、或る程度までは一期、二期で納めておくということになれば私は納税者として非常に納付し易くなるのじやないかと考えておるのであります。尚本年度は相当減税になりますので、この最初の前年の実績額に基きまして出て来た税額と二十四年度の分の税額と比べますと前々からお話申上げて置きまするように相当な減額になるのでございます。
  130. 板野勝次

    ○板野勝次君 減税、減税と言われておるのですが、これは大蔵大臣にも言つたのですが、予算の説明書の中にあります国民所得計算の中から見ると、法人所得というのは二十五年度は少く見ておられる。ところ個人所得、中小企業とか或いは農漁村というような所得というものは逆に上つて行くということになれば、名目的には幾らか基礎控除額が上つて来たように見えても、実際は收入が沢山になつたように見せられて、実情ではないけれども沢山あるものだという推定がなされて取上げられる、こういうからくりになつておる、そのからくりを裏付けるために二十一條の三というものが付加えられて来た、こういうふうに見えるわけです。ところがこれは所得計算というものが一体どういうふうになされて来たのか、あの予算の説明書の中に個人営業の所得が殊更に数字が上つて来る、そうして法人所得というものは逆に下つて来るというふうなこの経済界の実情というものは現在ではないんじやないかと思う。若しあるならば我々に納得の行くようにもう少し親切に、一方は所得が上つて行く、こういう状態で計算が出て来た、一方においては法人の経営というものは下つて行く状態にあるのだ、こういうことが説明されて来ないとあの算定の基礎から行けば、必ず二十一條の三というものが盾に取られて根こそぎ納税者が税金を取上げられて来るという結果になると思うんです。と申しますのは、一方においては繊維製品その他が暴落して来た。で倒産者も出て来るということになれば、その倒産者の納税不能になつて来た状態を更に他の残つた業者に転嫁されて来る、こういう危険もあると思うんです。
  131. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 板野さん少し説明書をもう少し御覧願いますればお分りになると思いますが、法人所得の延ばし方と個人の営業の所得の延ばし方を違えておりません。大体生産物価等も同じ標準で延ばしております。それから課税漏れ等が現税法によりまして幾分能率の増加により捕捉されるだろうということも大体同様に見ておるのでございます。ただ法人所得が、課税所得が減りますのは再評価によりまして減価償却だけが殖えて来る。これは正に今度の再評価の一番大きな目的でございまして、最近の時価に基く償却をやらないで法人税課税したのも必ずしも適正でございませんでしたので、今回資産の再評価をやりまして、それに基きまして減価償却費として増加した経費を支出することになつております。その点は課税標準が大分変つて参りますので、その他の点は別に変えておりません。それからもう一つは前年実績課税の問題でございまして、予定申告におきましては前年実績から課税するわけでございますが、その際や今までと違つた所得の決定をして会計税金を納めさせるということにはならないと思うのでございます。私共今までのこの課税漏れの所得につきましては、先程からいろいろ説明がありますように、できる限り実際をよく調査しまして個別的に十分調査した上で妥当な租税負担になるようにいたしたい、かように考えておるのでございます。従いまして予定申告の前年実績制と今お話の点と結び付けて考えられますのは少し如何かと考えられるのでございますので、さよう御了承願いたいと思います。
  132. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 主税局長は予算委員会で是非主税局長でなければならんというので、五分位だそうですから、国税長官もおられますから、それでは主税局長は予算委員会の方を終了次第こちらへお出でを願いたいと思います。
  133. 板野勝次

    ○板野勝次君 問題は税法の二十一條の三が、つまり前年の実績というものを基礎にしてやられると非常に困難な状態が、零細企業に対してかかつて来るという問題を聞いておるわけなんです。二十五年度の国民所得の推定表から行きますと、つまり個人の業種所得というものが、前年度よりも殖えておる計算になつているわけです。そうしますと勢い国税庁で算盤を彈いてお出しになる場合において、所得を水増しして取られる危険があるように我々には見えるわけです。そうしますと、この国民所得の推計からして、個人業種所得というものが上へ向いておるということになれば、二十一條の三の規定によつて、大体前年度の実績より以上でなければならないという考え方が最初から動かすことのできない考えとして、徴税官吏の頭に大きな重しになつて来ると思うのです。ところが実情は、現在は二十四年度よりも更に二十五年度は、この繊維製品その他のダンピングの状態から見ましても、相当経済界は打撃を受ける、これは大蔵大臣自身が中小企業の問題は、五人や十人が自殺しても構わないという言葉で表現されておりますように、非常に四月から惨憺たる状態が起きようとして来ておるのです。そういう中にこの二十一條の三があるということは、そうでなくてさえも先程国税長官も答弁されましたように、税務署は予め税務署が決定したものを、納税者が自分の所得申告しない以前においても押付けて来ているわけです。殊更に二十一條の三というものの規定を設けなくてもいいんじやないか、実情は、取りたいけれども……、お取りになつているなら二十一條の三というものは設けなくてもいいと思うのですが、この質問は少しあなたに筋違いかも知れませんが、主税局長がおられませんから代つて御答弁願います。
  134. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 国税庁といたしましては、予算の数字に囚われることなく、そのときの経済情勢に従つて、各人の所得の実態を把握するということで行く方針でございますので、例えば国民所得の推計の個人業種において相当高く見積られておるというようなことがありましても、実績においてそれが非常に低くなつて来たという場合においては、当然これに対応するだけの推定の数量が減るのは当然でございます。先程二十四年度におきましても、予定の段階において押付けて来ておるという話ですが、決して押付けているのではないのです。大体抜き検査をして今日の経済界の情勢等を勘案して見ますと、この程度の予定をされることが妥当ではないかということをお勧めをしておるのでありまして、決して押付けがましい考え方はいたしておりません。どこまでも税はその人の、その一年間におけるところ所得の実態を把握するというところに生命があるのでございまして、経済界の変動がございますれば、当然にその收入額も変つて来るべきものであると考えております。
  135. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 今の問題は相当重大だと思うのですが、これは二割以上所得が減ずるという場合には更正決定があるというのですが、更正決定は前年度まりも少くても認めるというのでありますけれども、その調査なんかも大変でしよう。だから恐らく法律の成文によつて、大体前年度の所得を持つて行かなければ、金額を記入して持つて行かなければ、受付けんのではないか、そうしますと仮に前年度の三分の一くらいの所得になつている場合でも、恐らくそういうことが起きると思う。そうすると最初の第一期の申告納税はできても、第二期の申告納税は恐らくできないということになつて、一月の更正決定を待つまでもなく、破産状態に陥るということになる危険が非常に多いですね。
  136. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 経済情勢が急激に変化いたしまして例えば上半期において非常に一般的な所得減收が認められるということでありますれば、これは当然に二割以上の限度に相成りまするし、これを承認するのは当然であろうと考えております。ただ現在政府見方といたしまして、大体現在の物価の情勢が続いて行くであろうという想定の下にこの予算が組まれておるのでありまして、従つてその前提の下におきましては、この程度のことはそれ程無理でもない。又実態にも副い得ること、そういうふうに考えておる次第でございます。
  137. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 いや、その予算を組む場合はそういう一定の見通しを立てるととはいいと思う。又立てなければならんと思うのだけれども、法律の上で、これは何ら法律の上でどういう見通しを基礎にしてこういう法律を作るかということに問題があると思う。予算を作る場合はそれは勿論いいと思うが、法律を、税法をこういう形で、政府が今持つている見通しが正しい、疑いないという形で法律を作るということに問題がある。予算の問題とは別だと思う。
  138. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 実態がそういうふうに大巾に変るという場合におきましては、当然税務署においても、前年の予定額よりも低いところ納税額というものを承認せざるを得ないと思います。又承認する義務があると思います。
  139. 波多野鼎

    ○波多野鼎君 ただその場合一般的な大きなパニツクでも起きるとなれば、それは直ぐ分ると思うのですけれど、も、今のように現在なつて、もう一種のパニツクの状態が進行していると僕は思うのだけれども、こういう場合に経済上の弱い連中はぐんぐんぐんぐんひどくなつて行きますよ。これは一般的な非常に大きな激変をしても、そういう変化の中において小さいものは、もう大きいものに比べて何倍かの損害を受けつつあるのです。そういう場合に税金は個々の人間が納めるのだとさつきからやかましく言つている。個々の人間の所得を見るのだと言つておりながら、一般の情勢が大きく、余り変らないと言つたのはおかしいですよ。それは却つておかしくなる。
  140. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) そういう意味におきまして、実は政府といたしましてはできるだけ青色申告をして頂くように、お願いしておる次第でございます。当初一月末までの期限にいたしておりましたのを、非常に延ばしまして、二月の末まで延期したのでありますけれども、我々といたしましては法規の面から行きますと、一月の初めに棚卸表を作り、一月の初めから記帳して頂くということで、法律の面では要求をしておるのでありまするけれども、例えば四月頃からでも記帳し得る人は記帳しておいて頂きたい。そういう考えをして是非青色申告をつけて頂く、そういうふうな具体的な帳簿によつて事実が示されるならば、当然にそれは承認され得ますし、又特殊の業態、例えば衣料等におきまして、確実に衣料商全般について、この程度減收が見込まれるという推定が成立ち得ますならば、当然その承認をすべきものである、せざるを得ないと考えております。
  141. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと僕はあなたに工合が悪いかも知れませんけれどもね、この問題に関連してお伺いしたいのですけれども、この二十一條の三の中に、何項になるか分らんけれども、「政府は、第二項の申請があつた場合において、左の各号の一に該当するときは、納税義務者に対し、承認を與えなければならない。」と書いております。その中に事業の全部又は一部の廃止、休止、若しくは転換、これはもう当然ですがね、その次に「又は失業に因り」と書いてあるのですがね、「失業に因りその前年分の総所得金額の見積額が前年分の総所得金額に比し減少すると認められるとき」と書いてある。失業ということが書いてあるけれども退職というようなことは書いてないですね。勤労所得を取つてつた人が退職した場合などということは余りにも明白なんで、そういう者は当然これは減額した申告をしても差支ないものと思うのですが、この失業と退職ということをどういうふうに考えておられるか、それを失業だと言えばあれはもうちよつと言葉が足らんような気がするが……。
  142. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) ここに失業と申しますのは、勿論只今お示しのような退職の例も含むのでありまして、ただ退職して新らしい職業に就く、いわゆる転職を含まないとお解釈願いたいと思います。
  143. 板野勝次

    ○板野勝次君 今この青色申告の問題が出ましたが、これは川上君の質問したところちよつと関連するけれども、我々が主として非常に心配しておるのは中小企業の中でも零細企業に属するものなんです。この零細企業のものが果してこの青色申告でやらなければならない複式簿記というようなものはとてもつけられないと思う。つけられなかつたならば今の二十一條の三でですね、例えば前年の收益よりも一割少いとこういう人はこの場合には認められていないわけなんですか。税金を取上げられて行くというわけなんですかね。一体その青色申告というものが本当にできるような形で運用されるかどうでしようか。
  144. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) あの省令又は告示を御覧になりますとよくお分りになると存ずるのでありますが、あの規則では正規の帳簿と書いてあるのでございまして、決して複式簿記とは書いてありません。従つて單式簿記でも結構であります。正確であるということ、記帳すべき要件を備えておるということだけで結構であります。  それから物品販売業等におきまして一々の売上品目を書き上げるということは到底困難でございますので、その一月分の総売上げをまとめてお書き願つても結構であるということでありますから、相当零細な企業の方におかれましてもちよつと大体のつけ方を御練習になれば直ぐできる程度のものであると考えておる次第であります。
  145. 板野勝次

    ○板野勝次君 たとえそのようなものでありましても、いちいちそれをやつて行くことが困難だし、上括してやつと行くということになつた場合には、その帳簿を実際に正確であるか、不正確なものかということの判断は、申告者の方にあるのじやなくて税務官吏の方にあるわけだから、此奴はこんなことをやつても駄目だといつて否定されてしまつたら、やはり税金を取上げられてしまうことになると思うのです。そういう危険はないでしようか。
  146. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 帳簿に関しましては特にこの青色申告制度と申しますものは、今後の所得税におけるところの紛争をできるだけ少くして行きたい、正確な事実に基いてお話合いができるという基盤を作つて行きたいという趣旨でこの制度を始めましたのでございますから、税務署といたしましてはどこまでも指導的な立場で、何でもけちをつけるというような考え方でなしに、指導的な立場から絶えず処置して行きたい。そう考えておる次第でございますので、お話のような何でもかんでもけちをつけて、昨年の予定額だけは納めさせるのだというような、そういう考え方は持つておりませんということだけをこの際申上げて置きたいと思います。
  147. 板野勝次

    ○板野勝次君 それがためには国税庁の方から親切に、税務官吏の従来の態度を一擲して、もう少しその指導的ですか、まあ実情に即したやり方を税務官吏がやるように何か具体的な通牒でもお出しになるわけですか。
  148. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 青色申告に関しましては、絶えず当初からそういう態度を以て臨んでいるのでありますが、先程川上委員からの御質問の際にもお答えいたしましたように、実は昨年末から本年一月にかけましては確定申告並びにこれの決定に関するところの事務に忙殺されておりまして、そこまで手が十分に行き届かなかつた点は非常に遺憾だと思いますが、私共といたしましては、商工会議所でありますとか、又は中小企業庁、又は経済安定本部等の機関に全面的にお願いいたしまして、これが指導に異常な御盡力を願つてつておるのであります。殊に最近はややその方に、実際の指導に税務官も従事し得る段階に相成りましたので、最近はどんどん税務官吏が第一線に出まして申告その他の面においていろいろ御指導申上げておる次第であります。
  149. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと青色申告ができる人は、これはやつて見なければ分らんのですが、青色申告のできないような零細な人達はどうしてもこの二十一條の三というものに括られて税金を巻き上げられるという危險性は非常に多いわけですね。
  150. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 正確な記帳があることが一番相互のこの問題についての争いをなくすという意味においてはいいことでございますが、この正確な帳簿がないからというて、大体概念的なこととか、その他いろいろな観察資料から推定し得る場合には税務署は承認を與えなければならないと考えております。
  151. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 外に御質問がなければ僕がお伺いしたいのだが、先程に関連して……。失業したとか退職したということは余りにも明白なる事実であるにも拘わらず、そういうものは移管の書状だけ出せばいいのに、申告を一々税務署に出して許可を申請して、政府の承認を得なければならんということは余りにも煩雑かと思いますが、その点はどうです。
  152. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 失業とか退職とか、又は廃業とかいう場合におきまして、そういうようなケースは我々の見るところでは全体の数からいたしますと割合に少いと考えておるのでございます。特に最近の傾向といたしまして、休業又は廃業等の事実が相当あるようでありますが、一応廃業の形を取りまして、実は実質的には尚継続しておられるという方もちよちよいおありのようでありますし、必ずしも表向きの形式だけでこれを判定するということは非常に実態に副わない状態に陥る虞れがあるのではないかと思います。
  153. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 私は廃業とか、休業ということをお聞きしておるのではない。廃業とか、休業とかいうことは年度の途中で止めるので、必ずしも正確な休業という形になつておらぬので、今あなたのお話なつたような点があるかも知れませんが、退職というのは余りにも明瞭で、而もそれに対して源泉徴收書が附いて行く。何月何日に退職したということになれば、非常に明瞭なことであると思いますが、それについても一々政府の承認を得なければなりませんか。税務当局とすれば、全体としては数は少いかも知れませんけれどもそれを出す、出して承認を得る。納税者の方から見ると、甚だ煩雑なことだと思いますが、少しは納税者を信頼してもいいと思いますが、その点はどうです。
  154. 高橋衛

    政府委員高橋衛君) 失業の場合におきましては、この規定にもあります通りに、当然に承認を與えなければならないのでございまして、いわば一種の届出というくらいにお考えつて結構だと思います。ただ失業した形にはなつたけれども、実際は転業であるとかいうような場合もございますので、その辺の調査はやはり一応はいたしたいと考えておるのでございます。
  155. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 議事進行について……。
  156. 木内四郎

    委員長木内四郎君) ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  157. 木内四郎

    委員長木内四郎君) それでは速記を始めて。
  158. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 主税局長に酒のことで少しお伺いしたいのですが、煙草はこの間の税制改革のまあ一端として値下げしておるのですが、同じような嗜好品の酒の方はあべこべに上げて行くというのはどういうふうに一体お考えになつているのですか。
  159. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) できますれば私共酒につきましても税率を下げまして値段を引下げるというのが好ましいことではあると考えておるのでございますが、ただこの酒税につきましてはやはり相当税制全体の上からしまして、増收を図つた方がいいのじやないか。御承知通り二十四年度の予算におきましては酒税は七百五十億になつておりますが、煙草の方は約千二百億になつておるのでございますが、ずつと戰前の時代におきましては大体酒税と煙草の益金は同額程度であつたのが多かつたのでございます。酒は御承知通り煙草より以上に生産の数量が猛烈に減りましたので收入が少くなつておるのでございます。でございまするが、これはやはり或る程度この收入は殖やすという方向で行つた方がいいのじやないかと、できますればできる限り数量を殖やしまして値段を上げないで殖やすのが一番上策だと考えておるのでございますが、尚最近の実状から見ますと、米につきましても戰前の約四百万石使つておりましたのを、本年はやつと増加いたしまして五十万石という程度でございまするが、なかなかその思うような数量の酒による増收が期待いたせないのでございます。それが実情でございますので今回若干の増税をやりまして、極力増收を図るようにしたのであります。尚シヤウプ勧告では相当嚴しい勧告、数量はむしろ殖やすことはできんだろう、従つて税率を勇敢に引上げて増徴を図つたらどうか。こういう御意見のようでございますが、これは率直に申しまして日本の酒類の実情とやや掛離れておると私共は考えましてできる限り数量を殖やしまして若干の増税を図りまして増收を確保するということにいたしております。  尚先般御説明申上げたのでございますが、純粋の増税による分が約二十億円程度の見込であります。後の大部分は増石による増加、それから地方税の酒の消費税を酒税に統合いたしましたので、それから一方は製造原価等を切下げまして、増收を図つたのと、そういうようなものが大部分であります。純粋の酒税の増税によりますのは、約二十二億円という計算をいたしておるような次第でございます。
  160. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 どうも一方において同じ嗜好品の煙草の方は相当値下げをして、酒の方はまだ負担力があるというような事情でもつて増税されておるのですが、御説明を聞いても別にその根本理由というのは薄弱のように思われる。これは一つ矛盾しておると思いますが、それからもう一つは酒の税金が高いので、密造が相当あるというのが現在の状況です。それを密造を防ぐにはやはり幾分でも税金を下げて安く販売できるような措置をとるのが当然だと思うのです。又これを反対に上げて行くというと、結局密造は殖えて行くというような傾向になると思います。それに対しては主税局長としてどうお考えになつておりますか。
  161. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 結局私は税率の決め方はまあ非常に財政状態が苦しい点もございますから、酒の消化ができる限度と申しますか、生産がありましてそれが売れる限度におきまして、やはり税率を決めざるを得ないというのが現在の状況でございます。煙草の方は御承知通り、数量が相当殖えましたために、むしろ売行きが惡く、思うような計画通り参りませんので、引下げる方が煙草としましてはその数量をもちまして收入を確保するゆえんじやないかというところが煙草につきましては確かにあるのではないかと考えるのでございます。酒につきましても若しも更に非常な数量を殖やすことができますれば、或いはそのような考え方もいえるのではないかと考えるのでございますが、今の段階におきましてはそれ程数量の増加を期待することは無理でございます。或る程度数量の増加を求め、その他に若干増税いたしまして收入を図ろうというのであります。尚率直に申上げますと、シヤウプ勧告書との調整を図つておるという点も一つの事情としまして御了承を願いたいと考える次第であります。
  162. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それからこの前煙草のときも値下げの差額というものはたしか政府において負担するというような話があつたのですが、今度はこの酒の方は引下げに対する差額というものは追徴する法律になつておりますね。それで若し将来下げる時期にはやはり政府においてその値下げのときには負担される意思が今からおありになるかどうか。伺いたい。
  163. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 下げますときは値巾を戻すかどうかという問題は、先般織物消費税の廃止の際にも、或いは物品税の廃止の際にもいろいろ研究いたして見たのでございますが、皆さん御承知通り技術的にいろいろ難点がありまして、遺憾ながらできなかつたのでございます。従いまして酒につきましても下げる際に必ず差額を戻すというようなことを申上げることは、なかなか今の段階においてはむずかしいのではないかと考えますが、どうにもならんような事態が起きた場合におきましては、別途に適当な措置をやるかやらないかということにつきましては、その際に考慮すべきものだと考えますけれども、当然減税した場合に下げるということはなかなか困難であろうと考えるのであります。
  164. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それから通行税の法案について質問したいと思うのですが、今通行税を二等、一等に二〇%かけるという法案ですが、どういうわけで汽車だけが運賃の中に通行税を含むというような方策を採ることにしたか、これは船との関連があるのですが、船の方は御承知のように民間事業になつておりますから、大体交通関係は二等一等あるのは皆これは国有鉄道、いわば国家の機関によつて運行されておるということになつておる。それでその国家機関の方の、一等二等というような、いわば大体資産に余裕のある階層を乘せるところ通行税を国家で結局は持つておるというような形になるんです。而も一方においては民間のやつておる船の方においてはそれだけの余地がない。結局民間の会社で以て負担するというような形になるんですが、この差をどういうわけで調節をお図りになる考えがなかつたか、これについて回答願います。
  165. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 通行税は今回三等の五%は全部廃止いたしたわけでございまして、その財源を以ちまして、運賃の改訂をいたしたわけでございます。先ず定期券を値下げする、それから遠距離の運賃を引下げるということと、その外に最近の二等一等の料金は恐らく戰時中に非常に特別に高い料金で決めておりまして、その当時は恐らく相当そういう方面の旅行を抑制するという必要があつたかと考えられるのでありまして、この件については大分三等に比べまして高くなつていたと思うのでございます。その点をこの機会に是正しようというのでありまして、大体昔に比較しまして二等は三等の二倍にする、一等は以前は三倍でございましたが、これは二等の二倍として、三等の結局四倍ということになつておるようでございます。従いましてそれは税金の二〇%を超えてそのようなことにするのが運賃の建て方としまして合理的であるという見解になりましてそのようなことに相成つておるようでございます。それで問題は二等、一等と三等との開きがそれで果して妥当かどうかということ、殊に税金を込めましてそういう運賃になるのが果して妥当か否かということにあるかと考えますが、従来からの沿革、それから今後におきましては二等車等は相当増結になる可能性があるらしく聞いております。そういうような見地からいたしますと、この対策としては妥当ではあるまいかというので私共も運輸省の案に賛成いたしたようなわけでございます。尚船につきましても同じく三等の通行税は廃止になるわけでございます。その後におきまして料金をどうするかということは、恐らく運輸省、物価庁と目下検討いたしておると思いますが、それぞれやはり船の運賃の実情に応じまして妥当な運賃を決めて行くということに相成るのではないかと考えておる次第でございます。
  166. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 船は結局民間会社で、これは物価庁あたりで運賃を高く許可するということが実現しても、船と汽車の料金の競争上からいつて、今までさえも船会社はなかなか経営が容易でなかつた。而も日本といたしましては海洋汽船というようなものをどんどん作つて外貨獲得に努めなくてはならないというような時代に、この船会社に対して相当の負担をかけるというような形になるんですが、この点は今の政府としてどういう考えでそういうふうな民間企業の圧迫というようなことを敢えてなさつたかという点なんです。それは政府としてはそういう点はお考えにならなかつたでしようか。
  167. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 運賃を決めました事情につきましては、これは大体今申上げました事情を運輸省から連絡を受けまして聞きまして賛成いたしておるような次第でございますが、船の運賃につきましては税法改正に伴いましてそれぞれやはり妥当な改正が行われるんじやないか、三等の通行税は廃止いたしますので、この方で相当船会社等運賃をどうするかという問題が出て来ると思います。直ちに三等の運賃をそれだけ引下げまして一、二等の運賃は従来の五%から二〇%引上げますから、その差額を簡單に引上げて運賃を決めるか、或いは現在の運賃が陸上運賃等と比べまして、コスト等から見て適当でございませんければ、更にそれに一定の調整を加えまして妥当な運賃を決めるか、その辺のところは結局税法改正に伴いまして運賃が決められるんじやないかと考えます。特に船会社に負担を帰属する点はこれは衆議院でも質問がございましたが、船の場合は二等はどちらかと申しますと汽車の場合の陸上運送の場合に比べまして利用率は比較的多い。従つて陸上の場合ならば三等で通行しておる人も、船の場合は二等で通行する人が相当多いから、船の場合は二等は三等と同じに見てもいいじやないかという議論がございました。これは私は確かに一つのそういう見地から言いますとそのような意見も立つがと思うのでございますが、統計をいろいろ調べて見ますと大体船の場合におきましても一、二等の乗客の確か三〇%未満であつたと思います。一等乗客でありますと更に非常に少数になつてしまうのでございまして、大体三等を免税いたしますると七割程度がやはり今後非課税になりまして、二割から三割程度通行税負担するということになるわけでございます。そのようなことでありますれば、この際としましては又妥当ではあるまいか、恐らく陸上の方も二等の乗客も自然に殖えて来るんじやないかと思います。そのような場合におきましては海上の船の二等はこれはいろいろ事情があると思いますが、大体現在のところはそのような考え方からいたしまして二等以上に通行税を課するということにいたしたわけであります。
  168. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 次に通行税は、日本の船の場合ですが、船舶だけにかけ得られるのであつて、外国船に及ぼすということができますかどうですか、その点……。
  169. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 外国人に対する課税の問題につきましては、現在スキヤツピンの特例がございますので、それに従わねばならないと考えておる次第でございます。税法としましてはその制限がございませんならば、やはり外国船につきましても日本で運賃を支拂われる場合におきましては課税になるというふうに解釈いたしておるのでございます。ただ具体的に現在はドルで支拂つておるようなものにつきましては課税にいたしておりませんので、そのような問題につきましては尚よく研究いたしまして、十分その点におきましては公平な課税になるように努めたいと思つております。
  170. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そうしますとまだ通行税を外国船の旅客に対する課税の方法は決まつていない、こういうことになるんですか。
  171. 平田敬一郎

    政府委員平田敬一郎君) 現在のところまだそういう状況でございます。
  172. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 先程の大臣のお話で、税法改正によつて相当税の軽減をお図りになつたという趣旨は分るのでありますが、併しながら一面におきましては地方税が大分高くなる、結局今の政府といたしまして矢表に立つ分は減税をしていながら、実際面におきましては地方税で以て相当補足するというような形になるわけなんですが、その点が先程私が物価の下落に伴つてどういう結果を来すかということを伺つた次第であります。併しながら政府としては別に所得や何かの算定が狂いがなかつたとしても、中小企業者が実際に赤字が出た場合には、政府に対する国税負担はなくても、地方税は今度は遠慮なしにやはり取られるという形になつて参るのですが、その加減は大臣といたしまして、お考えになられたかどうか。この点をお伺いいたします。
  173. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は国民負担に重大な関係のある仕事を持つておりますので、中央、地方を通じまして常に考えております。赤字の場合に、例えば地方税がかかつて来る。赤字があつても家に住んでおる以上は不動産、固定資産税がかかるのであります。これはそこに自分の家を持つておるというところの担税力を掴えて課税するのであります。これは止むを得ないことじやないかと思うのであります。  次に附加価値税につきましては、これも例外として、赤字がある場合にも課税になる場合がありますが、これは例外で稀なケースでございまして、これを以て全般を推すわけには行かんと思うのであります。で附加価値税の施行につきましても、いろいろな問題もあると思うのでありますが、そういう建前の税を置くことがどうかという問題は、私は根本的にあると思いまするが、今までの事業所得税よりは、やはりこれは一歩進んだ試みではないかと考えております。
  174. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 附加価値税は聞くところによると、世界で初めての試みだというふうな形になつて、而もそれがやや取引高税とも性格が似た点があります。そういう点からいたしましても、国税と対応して地方にそういういわゆる余り合理的でない税金を委せたということ自体が、どうも納得が行かないのですが、大臣はそれでもやはり地方でそういうふうな税金を処理し、すべて地方的に赤字が出ても何でも負担するということで差支ないとお思いになつておられますか。
  175. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お説の通りに附加価値税は世界でも余り例のない税であります。その性格はどういうものかにつきましては、私もシヤウプ博士と議論いたしたのでありますが、なかなかこれは考えようによりまして、外形標準的の営業税的の税だという見方もありますし、或いは流通税の一種だという見方もあるのであります。いずれにいたしましても私は地方の財源に或る程度の担税力を持たせるという意味におきまして施行して差支ないのじやないか、こういう結論に達しましたので、シヤウプ博士の勧告に基きましての、いわゆる閣議が賛成の意を表しましてやつたわけでございます。当初におきましてはいろいろな問題が起ると思いますが、私はこれはうまくやつて行けば可なり面白い税ではないかと考えております。
  176. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 地方税はまあ大体うまくやればいいとおつしやるのですが、併しこれは政府の見積りより、一般の見るところでは相当増税になるのじやないかというふうに言われております。恐らく政府の見積りの倍くらいの課税が行われるのではないかというふうな見通しになつておりますが、大臣としてはどういうふうにお考えですか。
  177. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は今回の地方税につきまして、うつかりすると、お話のような点が出て来るのじやないかと思います。固定資産税におきましても、或いは附加価値税につきましても、そういう懸念のないことはないのであります。併しこれは考えようによるのでございまして、当初でございまするから、やり方によつて案外沢山入つて来る場合もございましよう。例えば固定資産税におきまして、最もいい例なのでありまするが、評価をどうするか、こういう問題になるのであります。で、この評価の仕方、土地と家屋につきましてはこれはもう決まつておりますから抜差しなりません。併しそれ以外の固定資産につきましても、評価金が大変なことになるのであります。そこでやはり大体予算のスケールとしましては、固定資産税は五百二十億と、こういうことになつておるのでありますから、その程度にすべきだと考えておるのであります。固定資産税について申上げまするが、土地家屋につきましても、初年度だけでございます。二年度から又課税標準を変えることになつておりますから、適当にそこの初年度、次年度とを見合つて課税の仕方をうまくやつて行かなければならんと思つておるのであります。附加価値税につきましても、まだ細目の点は決まつておりませんが、これは私は一般で言われておりますように、倍額の千四百二十五億円でございましたが、その倍額になるということにはなる程遠いのじやないか、それで大体は、四%と三%だつたと思うのでございまするが、これも標準税率でございまするから、そこらの間は抜差しならんのじやないか、こう考えておるのであります。で、平衡交付金の分け方もありまするが、とにかくその年によりまして、できるだけ都合いいように取らないで、今後は国税の問題よりも、地方税の問題が重要なので、今までのように取れれば幾らでも取るという、こういう考え方では、国民はとても堪まりません。従来にも増して彈力性のある税法を……或いは初年度では相当の税率を盛り込んでおりまするので、地方の議会が十分行政の衝に当る人を監視いたしまして、財政スケールの殖えないように一つつて頂かなければならん。そういう考え政府も指導して行きたいと考えております。
  178. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 まあ大臣はそういうふうに指導をなさるおつもりであつても、実際地方の今の税の機構というのは、恐らく国税を取るいわゆる国税庁の輩下の、沢山の経験とまあ技術を有しておる人々と違つて、新らしい人を使つて而も不慣れのために、相当トラブルが起きると思うのです。どつちから見てもどうも地方に余りに重い負担納税者の側にもかけ、又地方側の方にもかけておるということに思われるのですが、その点は大臣は何ら差支なくスムースに行われるとお思いになりますか。
  179. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは問題を分けて行かなければならんと思いますが、府県におきましては、相当今までにも或る程度経験者があるのであります。事業税その他につきまして、これを今少しく強化し、又税法が行亘つて申告がうまく行けば、大した問題じやないんじやないか、府県の方におきましては。それから市町村の方では住民税は今までやつておりますので問題ありませんが、固定資産税の中の評価、これには問題があると思います。併しこれは御承知通りに、国税の方で認めました資産再評価によるものを地方に連絡いたしまして、これによつてやり得ると考えておるのであります。勿論お話通り地方の徴税機構というものは十分じやございません。国税に比べまして、これは私から申上げるのはどうかと思いまするが、そう十分じやないと思つております。併し人員を或る程度殖やしまするし、又大した困難な税ではない、所得税のようなむずかしい税ではないと考えておるのであります。
  180. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 ちよつと速記を止めて下さい。
  181. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 速記を止めて。    〔速記中止〕    〔委員長退席、理事黒田英雄委員長席に着く〕
  182. 黒田英雄

    ○理事(黒田英雄君) 速記を始めて。
  183. 板野勝次

    ○板野勝次君 大蔵大臣にお尋ねしたいのですが、固定資産再評価を任意とされた根拠がどうも分りにくいのですが、任意にすると産業界にいろいろな、何というんですかびつこをひいたような形が出て来ると思うのですが、どういうわけで任意にされたか、任意制度を採用されたか。
  184. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは一律にやる物差がなかなかできにくいのです。これがためにこれを行政的に一律にやりますると、物価その他経済界に非常な変動を起す、こういうことで、私は初めから任意制度を主張しておつた。で、最後まで議論しておつたのが、この問題と一割控除の問題、シヤウプが帰りますときに、大体これは任意制度にして呉れそうだという見通しがついておつたのですが、シヤウプ博士が帰られるときに、新聞記者との会談で言われましたが、私は、これは非常に注意しなければならんと思つて、大蔵省から特に人を派せまして遣つた、そのときにユニバーサルという言葉を使つた。これはまあ、大体あれだ、どつちやら分らんというのでその後においても折衝を、帰られてからも続けておつた。日本の経済に激変を起さないで、而も資産再評価によるいいところをあれするのには、やはり原則として任意制度を採つた方がいい、まあ大体向うではそうなつたのであります。然るところお話通りに全部フリーにしてしまつたらちぐはぐになるのじやないか、こういう懸念がありますので、これは資産再評価につきましても指導しようというので、別に機構を設けまして、委員会等を設けまして、余りにひどいちぐはぐのないようなことにして、実際面におきまして……、そういう考えで任意制度にいたしたのであります。
  185. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと任意に資産再評価するとして、資産再評価のできるものと、資産再評価のできないものとが業界ではできて来ると思う。勢い産業界においてはいろいろな産業構造の上にびつこをひくという形が出て来ないか。例えば資産再評価をやつてやり得る、つまり設備、資本の関係からしてやれるものとやれないものとが出て来ると思う。たとえ任意にしても、そうするとやれないところとやれるところと偏頗な状態が出て来ると思う。そこの調整の方法がついて来ないと、非常に日本の産業構造が変ると申しますか、中小企業なんかが影響を受けて潰れて行く、そうして独占的な企業のみがのし上つて来るとこういうことになりはせんかと思うのです。
  186. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は、そうそこまで心配は要らんと思います。では反問いたしますが、資産再評価をやること自体につきましてはどうお考えになりますか。
  187. 板野勝次

    ○板野勝次君 私の方では、やること自体については、無理にやらなくでも、今まで提案理由の説明の中にも……つまり資本の蓄積ということも一つの目的だと言われておるのですが、今まででも法人税というものの脱税が適当に隠されておつて、そうして、帳簿外のものによつて、結構資本の蓄積はできておつたと思うのです。今までについて見ても、別段資産再評価を是非今やらなければならないというふうな事情はないように思うのです。
  188. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それは私と認識が又違つておる。資産再評価をやらなければ非常なちぐはぐが起きる、新たな設備をした新会社と古い会社との間に非常なちぐはぐが起きる、このちぐはぐがもう耐え切れないからというのでやるので、その再評価を任意にしたときのちぐはぐは前のちぐはぐに比べれば非常に微々たるものだ、そういう我々は認識の下にやつておるのです。
  189. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところ資産再評価をして、やつて行けるところは、勢いこれは物価にも影響して来ると思う。だからそういうことのできないような業体というものが段々押潰されて来るという現象が起きないか、むしろその方を心配しておる。
  190. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 資産再評価をして資産を膨らまして償却して、そのために公定価格を動かすというようなことは無論いたしません。自由価格の問題につきましても、値上げということがありましようが、これは今の値上げは売れないようになるということも考えなければならん、今までのような売手市場ではないのですから……そこで私は調整できると思うのです。
  191. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと、資産再評価の最高限度を決めて、あと任意にされて来た意図はもつと別にあるのじやないかと思うが、別段それはないのですか。
  192. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 別に意図というものはございません。ただ例えば私鉄なんかで申しますと、資産再評価をして私鉄の賃金が上げられては困るというような気持もありますから、私鉄なら私鉄については、或る程度の基準を設けまして指導して行く、最高限度を設けなければ、これは償却すべき資産でありますから、無茶苦茶に評価をいたしまして、そうしてどんどん償却して行くということになれば利益が出て来ない、課税上困る、こういうようなこともありますので、最高限度だけを定めたのであります。別に他意はございません。
  193. 板野勝次

    ○板野勝次君 それでは、例えば私鉄とか電鉄とかいうようなものが資産再評価の結果、運賃の値上げは絶対にやらないというわけですか。
  194. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 資産再評価によりましての運賃の値上げは認めないつもりでございます。ただ、附加えて申上げまするが、地方税の方の関係もございまして、例えば附加価値税の問題とか、或いは固定資産税の問題とか、こういうような問題がありまして、私鉄の運賃引上げの問題が起つておりますが、私は資産再評価によつて直ちに運賃とか何とかいうものを上げるという考えはございません。これは将来の問題として影響することはございましようが、直接の影響としては、固定資産税については今までは土地家屋以外の資産についてはかかつておりませんでしたが、今度は固定資産税課税されることになります。これが原因になつたら又運賃に影響もいたしますが、再評価のために直ちに物価とか運賃に、それのみによつて影響するということは私は望ましくないと思つております。
  195. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと、そういうものも勿論全体の税の体系の中で固定資産というものの再評価というものを見なければならん。そうしますと鉄道運賃その他の問題は多少値上りされたとしても、とにかく抑えて行くとすれば、勢い企業の合理化を推進めて行けば首切りも、更に推進めて行かなければならない。或いは又実質的に賃金を切下げて行つて、労働者の負担の方に転嫁されて来るという危險性はないのでしようか。
  196. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 労働者の負担とか或いはその相手方の負担とか或いは株主負担とか、なかなか業種によつてむずかしいと思います。ただ極端な場合は労働者の負担が多いからこれはどうだというふうな結論には行かんと思うのであります。ただ私の念願といたしましては、資産再評価によつて物価に著しい変動を與えたくないということが、任意制度を採つた最も大きい理由であるのであります。誤解があるといけませんが、とにかく物価に余り影響を及ぼしたくないという念願であります。将来永久にそういうことはない、関係はないと、こうは申上げられません。
  197. 板野勝次

    ○板野勝次君 それでは先程も誰か質問されておりましたが、外国人の課税の問題ですね。この問題とも資産再評価の問題に関連して来ると思うのですが、外国人の課税特例を設けて来るということになりますれば、資産再評価の場合において最高限度が決められて来る。そうしていわゆる外資導入という問題に絡みついてそこに任意な資産の再評価というものが外国の資本に対して非常に有利になつて来る。こういうふうな状態が起きて来ると思うのですが、これは積極的に外資を導入して来るためにもこういう用意をするというふうな意味資産再評価の中に含まれておるように思いますが、その点は外資導入の受入態勢としてのこの資産再評価というのは、意味があるのではないでしようか。
  198. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは、外資導入ということは何と申しましても日本の経済をですな、安定した信用のおけるものにしなければいけない。幾ら片山内閣、芦田内閣が外資導入、外資導入と言つても、ああいう状態では外資は来つこないということは、あなたも十分御存じだろうと思う。我々はとにかく外資導入の前提として、日本の経済を立派なものにする、ガラス張りのものでなく本然の姿にしたいという念願なのであります。資産再評価というものは本当の今の経済事情に合つた、いわゆる記帳価格にしたい、こういうわけであります。外資導入と直接の関係はありません。外資導入を前提條件としている日本の経済が信用のある立派なものという素質を拵えなければならない。素質を拵えるという一つの手段としては、資産再評価はしておかねばならん仕事だと思うのです。
  199. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと、それに今度は関連して入つて来るものには課税の問題というものが非常に重要な意味を持つて来るので、聞くところによれば五〇%ぐらいは控除してそうして後課税する、而もその課税の水準が安いということになつて来ればですね、国内における産業が外国人の名前を利用してそしてどんどん課税の面でも資産再評価の面でもどんどんやつて行ける、とこういうことになつて来て、勢い外国の資本が入つて来るか、若しくは外国人の名前を使つてつておるものは非常に有利になつて来るけれども、そうでない業体というものが非常に不利益になつて来ると思うのです。その点はどうでしよう。
  200. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 板野さんは、他の政府委員に、外資並びに外国技術者に対しましての減税の考え方をお聽きになつたのですか。
  201. 板野勝次

    ○板野勝次君 聽きません。
  202. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それをお話をして行かなければよく分りませんが、外国為替管理法という法律がございます。申しますと、大体考え方は外国の投資を期待しておる。外国の投資があつたとき社債とか貸付金、こういうようなものに対しましては、利子を源泉で徴收します。課税を百分の二十というのを百分の十にしよう、こういうのであります。向うからの株式の投資については減税はいたしません。社債等でございます。それからもう一つの減税は、個人の勤労所得税、これは日本の例えば造船とか炭鉱とか或いは発電とかというものに技術者が必要なのです。こういう技術者については、向うから来ている人達の生活費は、こつちの生活費は高いのでございますから特別の措置を講じよう。外国人全部にやるという意味ではございません。特に政府の認めた日本経済復興に必要の人にのみやろうというのであります。そこで、日本人が外国人の名前で株を買うというのですが、その金はどこから来ますか、外国から外資が新たに来なければいけません。ただ問題になるのは、今まで敗戰後、外人がこちらで円を貯めています。円を貯めた分で株を買うという場合におきましても、一定の認可制によりまして買う。而もその円は今特別の措置によつて凍結している。それを外して外国人が日本で株を買うというときには、これは外国為替管理法並びに大蔵委員会に届出ましてはつきりさせるというのであります。日本人が外国人の名前で株を買つたといつても、これには何らの措置ができない。日本人が外国人の名前で、社債を買つたからといつてそれはもともと向うから金が来ていないのですからその部分の適用はない。その点は御安心なさつて然るべきだと思います。
  203. 板野勝次

    ○板野勝次君 これは将来、今はそうなろうとしてやられて来ても、段々そういう形になつて来ると思う。そういう危險が生じて来ると思うのですが、そういうことは全くないでしようか。
  204. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは外国為替管理法があります。
  205. 板野勝次

    ○板野勝次君 それはそうですが、外国為替管理法の性格から言つても、段々向うの資本が入つて来て、日本の実権を外国の資本が握るような構造に管理法というものはできていると思うのです。段々進出して来て、そして向うの力でなければやつて行けないようにして行けば大蔵大臣の言う意図とは反してですね、日本の産業の実権というものが外人に渡つてしまうということになつてしまうと思われますが……。
  206. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それは取越苦労でございまして、例えば我々の私経済で言つても燒出されて貧乏している。これから仕事をして行こうというときに金がない。よそから金を借りたら自分の家は債権者の支配になつてしまうから金は借りない。武士は喰わねど高楊枝で八千万の人間が小さいあばら家で我慢しよう。それはいかんと思う。だからこの制度も五年間というように年限を区切つてつている。そういう御心配は私は決してない。我々は喉から手が出る程外資が今欲しいのであります。今はアメリカの援助がありますから何とか輸入超過をカバーしておりますが、段々減つて来るということになると、どうしても外資の受入態勢を整えなければいかんだろうと思います。
  207. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところがですね。今まで来ている向うの品物についてここで議論しようとは思いませんけれども、入つて来ております輸入の滯貨が生じて来ておる現象である、入つて来ておるものに、輸入の補給金を出して行かなければならないというふうな実情からして見ると、必ずしも外資の力によつて、つまり日本民族自体が立上がれるというふうなことは考えられないと思う。そうして今例えばカルテツクスにしても、その他の入つて来ておる外人の所得というものは、日本人の所得とは非常に差が大きいと思う。そういう点について大蔵大臣も御存じだと思いますが、向うから来ておる特定の国の人と言えば我々にも分からないのですが、どういう国の人々に対して、そういう特例を設けられるのか。それからそういう特定の国の所得の状態と、現在の日本の勤労者の状態とどれくらい差があるようにお思いになつているか。これは個々に調べて国内の一般的な大体勤労者の收入というものの差ですね。
  208. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは国内におきましても非常に差がある。六千三百七円ベースの人もありますし、或るところの方は二十万円のペースの方もあるのでございます。これは負けた日本人でもそういうふうに差があります。特に勝ち誇つた、そして経済の優勢を誇つておるアメリカのものと、日本のものとは、それは相当の差がある。我々はこの差をなくすように経済を発達させて行こうといたしておるのであります。それでこれから向うの方の金の支拂方が多いというのは、それだけの能力があれば仕方がない。今度の外国人課税特例は全般に影響する、一定の條件にはまつて……。
  209. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 法人税は、この点も主税局長に伺つたのですが、協同組合に対する課税ですね。これを今まで二五%だつたのをやはり外の法人と同じように、三五%に上げられたのですが、大体今の政府考え方として、中小企業者の生きて行くべき途は、やはり協同組合を組織して、それによつて資金の面の便宜を図つたり、或いは大企業との対抗をされるべきであるということを言われておるのでありますが、ところが今度の法人税では、実際に今まで恩典を與えておつた協同組合に対して何ら特典もなくしてしまうということになるのです。これはどうも中小企業者に対して親切なやり方でないと思うのでありますが、どういうわけで、やはり今まで通りのように開きをおつけにならなかつたか。
  210. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは私は議論のあるところだと思います。御承知通り昭和十五年に特別法人税法というものを設けました。あれから我我の考え方は、税の方からは普通法人と差を設けるべきでない。段々近寄らせて行く。ただこの施行の当初におきましては、剰余金利益率が年三分以下のときには課税しないというように、特例が沢山あつたのでありますが、徐々になくして行つた。今では税率の違いと、それから組合員事業分量に応じて分配する分は、組合性質からいつて課税しない。これだけで協同組合の特性は事務分量に応じたものだけに課税し、外の所得は当然普通法人と一律にすべきではないか、税の政策であの政策、この政策というようなことは、税法の簡素化から言つてよくないんじやないか。こういう税理論を強く言う人は……シヤウプ勧告案でも御承知のようにそうなつておる。最もひどいのは公益法人でも課税する。こういうふうなことはとにかく税制の合理化からそれは止むを得ないのじやないか。外の方面で協同組合、中小企業の方は育成して行くべきではないか。こういう考えなつたのであります。今までの考え方と大分変つて来たということを御了承願いたいと思います。
  211. 板野勝次

    ○板野勝次君 もう一つお伺いいたしたい点は、この基礎控除の問題ですが、先程のように、能力によつて大きな差があるので、勿論日本でもこれは二十万円貰つている人は、大蔵大臣は貰つておられると思いますが、極く少数の人だと思います。そうすると基礎控除というものが、今度上つたと思いますが、あれは一体あの程度に上げられた基準の基礎ですね。少くともこの基礎控除というものは、最低生活が保障される程度のものでなければならんと思います。ところが現在では生活保護法の適用を受けて、全額貰つている者には税金がかかつて来ないが、その程度收入のある者には税金がかかつて来るという計算になつて来るのでありまして、最低生活を保障される程度の基礎控除とはどうしても思われないのでありますが、随分考慮されたと思うのでありますけれども、あの基礎控除の算定の基礎というものは、どうしても納得できないのであります。あれは最低生活を保障しようという建前から割出されておるのではないのですか。
  212. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 最低生活保障のための基礎控除とお考えになるから了解に苦しまれると思います。そういう意味ではありません。我々はこの基礎控除を決めましたのは、できるだけ負担を軽減しよう、片方には財政支出がこれだけある、こういうので私は財政支出と見合つてできるだけ上げようというので、一万二千円を二万四千円に上げた、月千円上げるべきだというのでやつたわけであります。千円上げたことによつて三十八億円減るわけであります。考え方としては基礎控除はできるだけ上げたい、千円上げることによつて三十八億円減ります。基礎控除の問題と税率の問題、これは密接不離の問題でございまして、まあ税率があの程度であるならば、基礎控除をとにかく上げたいというのでやつたのであります。
  213. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうしますと今度は累進課税というものが非常に制限されて来て、今までのものよりずつと引下げられて来た、沢山の所得のある者は今度は全体として五五%で止まるということになるのですけれども、片方について見れば二万四千円ということは月額二千円だ、月額二千円では、つまり生活が成立たないわけであります。そうすると最低の生活をし、そうして労働をやつている人達は、がつがつでも税金を取られる、併し高額の所得者は非常に余裕がついて来る、こういうことになつて来ると、政府はしばしば負担の公平化ということを言われておりますけれども、ちつとも公平じやないと思う。もう少し基礎控除が上げられて、ずつと大巾に引上げられて来ないと、今度の高度な累進課税というものはずつと緩和されて来たから、実はその高額の所得者というものは、非常に保護されて来たけれども、少い所得、而も生活の最低線を生きられるか生きられないか分らないというふうな線にある者との公平化ということは、全然なつていないと思います。その点はどうなんですか、公平化されておりますか。
  214. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) それはあなたは高度の累進税率が適当だという前提の下に立つている。私は所得税の累進税率には限度あり、而も資本蓄積、経済再建を図るためには、高度の累進税率が住民税を加えまして七、八〇%で止まるべきじやないか、こういう考え方で行つたのであります。而して又財政の許す限りにおいて減税しようとして、今の基礎控除の税率を決めたわけであるのであります。だから結果におきまして、割合にいたしましたならば、私は中産階級以下の人も相当の減税になつていると考えております。
  215. 板野勝次

    ○板野勝次君 併しそれは減税々々と言いますけれども、所得の面で見ると、幾らかの数字で、地方税は増徴されている。今資本の蓄積ということを言われましたけれども、資本の蓄積されて行く半面には、今度は労働力の方面には大きな負担がかかつて来る。つまり資本の蓄積の半面には、貧困が蓄積されて来るという逆な現象を大蔵大臣は見落しておられる。成る程資本の蓄積は、今の資本主義経済の下に第一の條件になるでしようけれども、この蓄積を強行されるためには、一方には今後の貧困の蓄積、つまり食えない者ができて来るという現実はますますひどくなつて来ると思う。ところが今の二万四千円、月二千円というふうなものに対する最低線彷徨しているというふうな人達には、殆んど税の問題について関心が寄せられていない。勢い或る程度のものは負担させなければならないというふうな建前に立つておられるように思うのですが、その点は飽くまでこういう最低線にいる者にも負担をさして行こう、そうすることによつて資本の蓄積を増大さして行こう、こういう建前ですか。
  216. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 少額所得者につきましての減税はお認め下さる……。少額所得者につきましても相当の減税をしている。
  217. 板野勝次

    ○板野勝次君 減税しているとは思わない。
  218. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は減税しておる、而うして又片一方大所得者に対しましても、今までの負担というものが行過ぎであるというので両者を合せて適当な税制をやつておるのであります。併し今度の減税で私は満足いたしてはおりません。今後におきましてもできるだけ早い機会に沢山の減税をいたしたいというのであります。我々の措置を非常に非難なさるようでありますが、私はこれだけでもよく減税できた、まあちつぽけだとおつしやるかも分りませんが、それだけでもよく減税ができたのだ、これは私は国民の努力だと思います。
  219. 板野勝次

    ○板野勝次君 ところが大蔵大臣は、数字の上で基礎控除が幾らか上つたというのですが、その半面において物価というものが上つて来ておる。例えば鉄道運賃にしても、ガス、電気料金にして見ても、その他上つたものが多いと思います。そういう計数の中で、今度の基礎控除というものは判断しないで、ただ一つの数字的に囚われて行つて、何ぼか基礎控除が上つたからこれで減税になつたんだといつても、一方ではつきり物価が上つて来ておる。それに応じて賃金というものは上つて来ていない。こういうふうになると思います。併し我々は本当に減税になるかどうかということの判定はやはり物価と税金というものと、賃金というこの三つが三位一体の中で本当に減税になつておるかどうかということを見なければならない。大蔵大臣の言われる減税というのは、この物価と税金と賃金というものを切離してしまつて、そうして基礎控除の中から二万四千円までに下げたから、これは減税になつておる。こういうふうなただ数字上だけのように見えるのですが、この物価と税金と賃金というこの三位一体で本当に減税になつておるんだ、こういう立証をして貰わないと、減税になつておる事実を認めるか認めないかという判定の基礎にはならない。
  220. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 御尤もな御発言でございまして、私は他の機会に一月から主食も上げました、いろいろなことで生計費に影響しておる、こういうので各階級に分けて減税と物価高と、賃金は同じにいたしました、賃金は同じ、賃金と物価と減税というものを兼ね合せた表をお手許に差上げたり、いろいろな場合で説明しておると思う。それを御覧下さればお分りになると思います。私は減税したからといつて物価の方は何も考えずに申上げておるのではございません。その三つを一緒にした表を御覧に入れておると思うのであります。そうして又大体昨年の四月頃からは、例のCPIも下つて来ておるじやありませんか。これは我我が忌憚なく言えば、私は大体勤労階級は暮し向きが楽になつたと本当に言い得ると思います。それはいろいろな、生活水準を上げるにはなかなか苦しいです。苦しいが、二十四年度の予算案の御賛成を得ましてから後の分は、CPIも下つて来ておりますし、物も買いよいようになつたし、私は本当に国民の肚を割つたら割に暮し向きがよくなつた、これは特殊な人は別ですよ、と私は信じています。
  221. 板野勝次

    ○板野勝次君 計数上では作り方はどうでもなりますが、例えばそれは主食の場合においてもどんどん外国から食糧が入つて来るから闇価格において下つて来たということはあると思うのです。ところが電力料金が大巾に上つて来て、例えばアパートで生活をしている人達は何十世帯あつても、メートルが一つしかないから一世帶に見られているために非常に大きな負担をかけられて来ております。この負担は大蔵大臣のような生活の中にある人は電気料金というものがこたえないかも知れないけれども、月額二千円以上に対してほんの僅か、例えば三千円取つておるという人に税金がかかつて来るというふうな場合には大きな負担になつて来て、むしろこれは困窮して来ていると思う。そういう負担の公平化という見地から見ますと、資本の蓄積に対する勤労者の税負担というものは決して均衡がとれていない。だから従つて私は先程から言うように、資本の蓄積の犠牲の下に貧困が蓄積されて来る。増大されて来る。こういうふうにしか見えないわけです。これは事実が証明している。私はあなたの方から出された計数を実は見ていないのですけれども、計数というのは作り方でどうにでも、どこにでもとれるのです。併しアパートの一つの電力料金の値上げというものが大きく家計に響いておるという事実も又大蔵大臣はお認めだろうと思うのですが、その点は家計に響いておらないように思つておられるのでしようか。
  222. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 電力料金の特に上つた人につきましては家計に響くわけです。併し数字というものは、これは正確なものでございます。而も数字を作りますときには全体の問題として考えなければならない。だから特殊の場合を御覧になつてそれでやられるということは、丁度あなた方が私の言うことが変に聞えるように、私から見るとあなたのおつしやることが少し変なのです。色眼鏡で我々を見ておられる、こう判断せざるを得ない。全体的に我々は考えておる。国民全部を相手にしておるのであります。それを御承知願いたい。    〔理事黒田英雄君退席、委員長着席〕
  223. 木内四郎

    委員長木内四郎君) 本日はこの程度にいたしまして、明日午前十時から再開いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十七分散会  出席者は左の通り。    委員長     木内 四郎君    理事            波多野 鼎君            黒田 英雄君            九鬼紋十郎君    委員            天田 勝正君            森下 政一君            玉屋 喜章君            西川甚五郎君            平沼彌太郎君            櫻内 辰郎君            油井賢太郎君            徳川 宗敬君            小宮山常吉君            高橋龍太郎君            藤井 丙午君            板野 勝次君            川上  嘉君            木村禧八郎君            米倉 龍也君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    大蔵事務官    (主税局長)  平田敬一郎君    国税長官   高橋  衛君