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1950-03-24 第7回国会 参議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十四日(金曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○解散団体財産収入金特別会計法案  (内閣提出衆議院送付) ○米国対日援助見返資金特別会計法の  一部を改正する法律案内閣送付) ○製造たばこ定価決定又は改定に  関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国庫出納金等端数計算法案(内閣送  付) ○退職職員支給する退職手当支給の  財源に充てるための特別会計等から  する一般会計への繰入及び納付に関  する法律案内閣送付) ○薪炭需給調節特別会計法廃止等に  関する法律案内閣送付) ○旧軍港市転換法案衆議院提出) ○財政法の一部を改正する法律案(内  閣提出衆議院送付) ○連合委員会開会の件   —————————————
  2. 黒田英雄

    理事黒田英雄君) これより大蔵委員会開会いたします。  本日は先ず、解散団体財産收入金特別会計法案米国対日援助見返資金特別会計法の一部を改正する法律案国庫出納金等端数計算法案退職職員支給する退職手当支給財源に充てるための特別会計等からする一般会計への繰入及び納付に関する法律案、新環需給調節特別会計法廃止等に関する法律案製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案、以上六案を議題といたしまして、先ず政府より提案理由説明を求めます。
  3. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 只今議題となりました解散団体財産收入金特別会計法案外法律案提出理由を御説明申上げます。  解散団体財産管理及び処分等に関する政令に基き、国庫に帰属した現金及び現金以外の財産処分等による收入金につきましては、従来これらの現金及び收入金を以て外国貿易特別円資金を設け、この資金は、これら財産に伴う債務支拂に充てる外、外国貿易特別会計に繰入れで貿易のために使用することとし、外国貿易特別円資金特別会計を設置して経理して参つたのでありますが、今回この経理方法を改め、国庫に帰属した右の現金及び收入金は、債務支拂及び特に政令で定める経費に充てる外は、一般会計に繰入れることにいたしました関係上、その経理方法が根本的に変ることになりますので、現行外国貿易特別円資金特別会計廃止し、新たに解散団体財産収入金特別会計を設置してその経理を明確にいたそうと存するのであります。  次に、新特別会計法案の従来の特別会計法と異ります主なる点について申上げますれば、先ず第一條におきましては、会計設置に関する事項を定め、その第四條におきまして、新会計における歳入及び歳出となるべき事項規定いたし、第八條において、一般会計へ繰入れる額の計算方法規定いたした点であります。  而して右以外の規定は、新会計予算の作成、執行、繰越及び決算等に関するものでありまして、現行外国貿易特別円資金特別会計法及びその他の各特別会計法規定しはあります例規的な事項を定めた内容のものであります。  次に、米国対日援助見返資金特別会計法の一部を改正する法律案提出理由を御説明申上げます。  今回改正しようといたします要点は、三点であります。その第一点は、一米国対日援助見返資金運用又は使用に関する規定改正でありまして、同資金を、連合国最高司令官司令部民間情報教育部の指導により行われる、国又は地方公共団体民間情報教育事業に使用する途を開こうとするものであります。第二は、従来認められておらなかつた、歳出予算における支出残額繰越に関する規定を設け、支出残額を順次翌年度繰越して使用できることにいたそうとするものであります。  第三点は、援助資金の私企業に対する運用事務を円滑にする等のため従来国がその事務日本銀行にだけ取扱わせることができるようになつておりましたのを、農林中央金庫等大蔵大臣の指定する金融機関にも取扱わせることができることととし、且つ、日本銀及び指定金融機関に、援助資金運用に必要な資金を交付し得ることとしようするものであります。  次に、国庫出納金等端数計算法案提出理由を御説明申上げます。  この法律案を立案いたしました趣旨は最近の経済情勢に鑑みまして、国庫金出納及び国税地方税課税標準額計算事務を簡素にし、経理事務の能率の増進を図ろうとするものであります。  本案の要点といたしましては、先ず第一に、国及び公団等における收入金文は支拂金につきましては、原則として、その金額に五十銭未満端数があるときはその端数を切捨て、五参十銭以上一円未満端数があるときはその端数一円として計算し、その金額全額一円未満の場合は、收入金についてはその全額を切捨て、支拂金については一円として計算し、又、国又は公団等の相互の間の支拂金につきましては、その金額を切り捨てることといたそうとするものであります。  第二に、收入金又は支拂金を分割して收納又は支拂をする場合の計算でありまするが、この場合は、先ずその総額についで、前に述べました原則により計算した後、分割金額を算出し、その分割金額一円未満端数があるとき、又はその金額全額一円未満であるときは、その端数金額又は一円未満である分割金額を最初に收納する金額又は支拂金額に合算することにいたそうとするものであります。  第三に、国税又は地方税課税標準額を算定する場合、課税標準額に百円未満端数があるとき又はその全額が百円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切捨て、又政令で指定する国税又は地方税につきましては、課税標準額一円未満の数があるとき又は全額一円未満であるときは、その端数全額又は全額を切捨てることいたそうとするものであります。  第四に、国税又は地方税を一時に収納する場合に、その税額に十円未満端数があるとき又はその全額が十円未満であるときはその端数金額又は全額を切捨て、又政令で指定する国税又は地方税につきましては、その税額一円未満端数があるとき、又はその、全額一円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切捨てることといたしたいのであります。  又、税の分割収納につきましては、先程申上げました分割収納規定を準用することとし、税の還付金につきましては、その金額一円未満端数があるとき又はその全額一円未満であるときは、その端数金額又はその全額一円として計算することといたそうとするものであります。  尚、この法律案は、国及び公団等のすべての收納金又は支拂について適用することが理想でありますが、国及び公団等收入金又は支拂金につきましてはその性質等からこの法律適用を受けさせることが不適当と認められるものもありますので、これらについてはこの法律適用を除外することにいたしたいのであります。次に、退職職員支給する退職手当支給財源に充てるための特別会計等からする一般会計に対する繰入及び納付に関する法律案提出理由を御説明申上げます。  この法律案を立案いたしました趣旨は、政府又は公団等退職職員に対する失業者退職手当支給が、今般公共職業安定所で行われるようになるのに伴い、その財源についで、必要な措置を講じようとするものであります。即ち先ず第一に、政府又は公団等職員退職しましてから一年以内に失業しております場合には、失業保険法保険金支給條件に従つて計算いたしました、失業保險金相当額と退職時に支給された退職手当額との差額を、失業者退職手当として支給されるのでありまして、この支給につきましては、現在は旧勤務所におきまして行われているのでありますが、今回これが公共職業安定所支給されることになりますので、その支給財源に充てますため、各特別会計又は公団等負担額を、予算の定めるところにより、一般会計へ繰入れ又は納付する途を開こうとするものであります。  次に一般会計前記退職手当支給財源を各特別会計及び公団等から受入れ、精算の結果過不足が生じた場合の調整の措置を設けようとするものであります。即ち受け入額が各特別会計及び公団等負担額を超過した場合には、翌年度負担額に充当いたし、尚余りがありますときには、翌翌年度までに各特別会計及び公団等に返還し不足した場合には、翌翌年度までに各特別会計及び公団等より補填するようにいたしたいのであります。  次に、薪炭需給調節特別会計法廃止等に関する法律案提出理由を御説明申上げます。  政府におきましては、薪炭需給の統制と薪炭需給調節特別会計廃止することを前提といたしまして、昭和二十四年七月三十一日以降、新たな買入を停止し、残務の整理に努め、又その整理を促進させる必要上、今国会においで御審議を仰ぎ、この会計債務支拂財源に充てるため、五十四億七千万円を一般会計から繰入金をする等の措置を講じた次第でありまして今回昭和二十三年四月一日を以てこの会計廃止することといたしたいのであります。  尚、この会計の昨年十二月当時においては、年度内において一切の薪炭証券及び大部分の債務償還が可能であるごとく予想され、又これを可能ならしめるべく鋭意努力をいたして参りましたが、諸般の情勢から清算事務が思うように進捗せず、現在の見通しといたしましては、遺憾ながら年度末において、尚若干の收入未済債権年度償還不能の薪炭証券その他の支拂未済債務が残ることが予想されるのであります。よつて止むを得ず、昭和二十四年度において、この会計の借換証券償還財源を充てるための証券を発行することができることとし、この会計に属しまする資産及び負債の一切を一般会計に引継ぐことといたしたいのであります。又、この特別会計法廃止後の昭和二十四年度歳入歳出決算の作製及びこの特別会計法規定を準用しておりました国営競馬特別会計法をも併せて改正する等、この会計廃止に伴い必要な措置規定しようとするのであります。  次に、製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由説明いたします。  現在製造たばこ定価につきましては、財政法第三條の規定に基きまして、製造たばこ定価決定又は改定に関する法律が制定施行せられ、ピースいこいハッピー等につきまして、それぞれその最高価格決定せられているのでありますが、光、富貴煙アストリヤ及び桃山につきましては、財政法第三條の特例に関する法律附則第三項におきまして、該法律施行の日即ち昭和二十三年四月十六日において現に効力を有する定価を以て、財政法第三條の規定に基いた定価とみなされているのであります。従いまして、たばこ製造能力戦前に復しました今日、全面的な国民生活の安定と実質賃銀の向上を目途とする政策の一環として製造たばこ定価の引下げを行うに当りまして光及び桃山につきましては、製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の定める価格表に追加する必要があるのであります。尚この際他の製造たばこにつきましても価格表を整備すると共に、商況及び嗜好に応じて試製品販売することができるようにするため、この法律の一部を改正することとした次第であります。次に改正要点について説明いたします。先づ従来価格表なつた光、富山貴煙アストリヤ及び桃山についてその標準規格及び最高価格を定め、その最高価格を光については一〇本当四〇円、桃山については五〇瓦当り二〇〇円にそれぞれ引下げることといたしました。  第二に、右に伴い製造たばこ価格表を整備するため、他の製造たばこにつきましても、その標準規格を一部変更し、その最高価格も十本当りピース五〇円、いこい三〇円、ハツピー、二〇円、新生二〇円に、日光については四〇瓦八〇円にいづれも引下げることといたしました。  第三に、日本専売公社は、商況及び嗜好に応じて試製した製造たばこを他の製造たばこ小売定価に準じた小売定価で、概ね六ケ月の期間を限つて販売できるものといたしたのであります。  以上が右六法案提出いたしました理由並びにその大要であります。何とぞ御審議の上、速やかに御賛成あらんことを切望する次第であります。
  4. 黒田英雄

    理事黒田英雄君) この場合、只今提案理由説明のありました中で、製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案について御質疑のおありの方は、御質疑を願いたいと思います。……私からちよつとお尋ねします。この提案理由説明に、いずれも最高価格とあるのですが、これは法律最高価格というような何か規定があるのですか。
  5. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 財政法には最高価格ということはございませんで、国の独占に属する専売品価格ということになつておりまして最高価格というものはございません。
  6. 黒田英雄

    理事黒田英雄君) 最高価格とあるのは、それではそれより安く売つてもいいわけですか。
  7. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) この財政法の第三條の規定によりましてたばこ定価法律で定めることになつておりまして、この法律が二十二年の四月から施行になりましたのですが、その際から最高価格を決めましてそれでそれ以下で売ることは、法律上はいいような形に相成つております。
  8. 黒田英雄

    理事黒田英雄君) それから試製製造たばこ規定が今度決まつたのですが、試製をするような、何か今計画はおありでありますか。
  9. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 只今ところ差つてすでに計画があるというわけではございませんが、これから専売公社もちよつと商売気を出しまして、国会の開かれておらないときにおきましても、国民嗜好に即しまして、新しいたばこを出して売つて見たいというような場合に、今まででありますと、この法律にその新しい銘柄の品質のものを掲げなければ売出せなかつたわけでありますが、今度はそれを国会閉会中におきまして、新しいたばこを発売いたしまして、その販売状況を見まして、評判が非常によいというようなことであれば、改めてこの法律に追加いたしまして、それで恒久的に販売したいという趣旨でございます。
  10. 黒田英雄

    理事黒田英雄君) それじやもう一つ伺いますが、現在定められておりますピ—スの六十円というものは、制定当時我々は六十円ということは適当じやない、売行が悪いに違いないということを言つて反対したわけですが、その後果してどうもピースは六十円ではなかなか売行きは思わしくなかつたように聞いておるのですが、そのために公社としては……専売局当時からあつたようですが、宣伝大分力を入れられたように聞いておるのですが、その宣伝費というものは、一体どれくらいかかつたものなのですか。ここに資料提出されておりますが、それによると、広告費というのが出ておりますけれども、この広告費の中に入つておるわけですか、それは……。入つておるとすれば、この中どれくらいがピースに対する特別の宣伝費ということになるわけですか。
  11. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) たばこ関係宣伝費といたしましては、大きく分けますと、たばこ販売宣伝と、それからたばこ専売法の違法を防止するための宣伝とこの二つになつております。先程提出いたしました資料は、その中のたばこ販売のための広告費だけを掲げたものでございまして、防犯の宣伝も入れますと二十四年度七千万円、二十五年度予算では六千六百万円程でここいます。その中で販売のための広告費がこの表のような数字になつております。それでこの中ピースのための宣伝費幾らかということになりますと、これは最近専売公社たばこが段々よくなつて来たというような、たばこ全体としての宣伝もございますし、それから特にピースだけを目標にした宣伝もございますし、それから又年末等におきまして、贈答用として一般的な宣伝もいたしておりまして、この中で特にピースのための宣伝費幾らかということは、只今資料持合せございませんので、尚調べてお知らせいたします。
  12. 小宮山常吉

    小宮山常吉君 たばこ値下げをしましても、これで品質には変りはないのですか。又専売公社としてあらゆる收支に影響はないのか。こういうふうに値下げができるんだつたら、この前のときに値下げをして、国民に安いものを喫煙させたらよかろう。今度値下げしまして、品質が落ちるかということと、公社の方はこれによつて收支のあれについては、差額はないか、こういうことでございます。
  13. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 先ず品質の点でございますが、戰争以来専売局たばこ品質は、その前と比較しまして、非常に低下いたしました。その原因といたしましては、原料である葉たばこにおきまして、外国の葉が全然入つて来ないというような点と、それから葉たばこは一年間ストツクいたして置きますと、段々成熟いたしまして、品質がよくなつて参りますか、そのストツクがなくなりましたために收納した葉たばこを直ぐ使うというようなことで、味も悪いし、それから又火をつけても直ぐ消えてしまうというような点で、先ず原料葉たばこの点で、戰前と比較しまして非常に低下いたしましたのです。それから更に巻紙にいたしましても、糊等におきましても品質が悪くて、そのためにたばこ全体とし品質が非常に低下いたして参つたのでありまするが、最近におきましては品質原料におきましても、外国の葉は最近におきまして、印度葉が若干入つて来るというようなことにもなつておりますし、それからたばこストツクが非常に多くなりまして、そのために成熟した葉たばこ原料として使えるような状態なつて参りまして、その外紙にいたしましても、糊にいたしましても、段々戰前に戻つて来ております。今度値下げをいたしましても、品質の改善につきましては今まで以上に努力しまして、戦前のようなたばこに戻したというふうに考えております。この値下げによつて品質を落すというようなことは全然ございませんです。それから今までたばこ値段が例えばピース六十円、光五十円というように高くなつておりましたのは、財政上の要求から千二百億円の益金を出せということに相成りますと、今までは製造数量が非常に少なかつたものですから、それが少い数量にかかつて参りますために、高い値段で売らなくちやならんというような状態でありましたのです。二十四年度販売数量は、六百五十億本でございますが最近製造能力も回復いたしまして二十五年度はそれが七百八十億本と百二十四億本を増加いたしますので、そのために品質を落さないでも、たばこの十本あたり定価は、今までよりはずつと安くできるという状態なつて参りましたために、今度定価を下げましても、千二百億円の益金は十分確保できると考えております。
  14. 黒田英雄

    理事黒田英雄君) ちよつとこの場合法案の御質疑を中止願いまして、文部委員長から発言を求めておられるのですからお許ししたいと思います。
  15. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) 委員長並びに委員各位の御厚意によりまして、本日当委員会におきまして、富裕税のことに関しまして発言の機会を與えて頂きましたことを非常に感謝いたします。実は文部委員会といたしましては、前国会以来委員立法といたしまして、文化財保護法というものを立案中でありまして、これはすでに関係方面の方に送付いたしてありまして、日ならず帰つて参りますと、やがてこちらに提出される筈になつておるものがございます。その節には又皆様の御協力を是非お願いいたしたいのでありますけれども、それはそれといたしまして、この只今我々がやつておりまする方の文化財保護法案と、それからこの委員会提出されておりまする富裕税法案との間には関係するところがございますので、文部委員会といたしましては、我々の方の委員会意向を当大蔵委員会の方に十分に知つて頂き、皆様の御理解と御批判に訴えたいこういうふうな決議を実は委員会でいたしたのでございます。そういうふうな決議に基きまして、実は私が文部委員会を代表いたしまして出席いたしましたようなわけでございます。それでこの富裕税法案と、それから文化財法案とどこに関連があるかと申しますと、富裕税法案の第九條即ち非課税財産の点についてでございます。この第九條によりまするというともうすでに皆さん御承知の通りに、「左に掲げる財産価額は、第七條規定による課税価格計算財産価額に算入しない。」こういうふうに規定されてございまして、それが一号、二号、三号となつておつて、第四号のところには、国宝であるとか、或いは史蹟名勝、天然記念物、それから重要美術品というふうなものが価額に算入されないというものに入つておりますので、この点我々といたしまして大変結構な法案であり、有難いと思つておるのでありますが、それだけなら問題はないのでありますけれども、それの第三項のところにおきまして、今のようなものに対しましても、百万円を超えるものに対しては、これは課税対象になるということが第三項に出ておりますので実はその点が我々の方としては非常な問題になつておるわけでございます。折角こういうふうな七條の一項で以て文化財保護規定しておりながら、直ぐそのあとで又それを覆すに等しいような項目が入つておるということは、保護建前からどうも非常に我々憾みに思つておるのでありまして、当委員会におかれましてもこれらの点につきましては昨日御質疑があつたように伺いまして、十分の御審議があることと存じておりまするけれども、文部委員会意向を是非お聽取りを願いたいと思うのであります。で、大体の趣旨只今委員長の御許可を得ましてお手許に差上げてありますプリントの中に書いてございますから、一つそれを御覧願いたいと思うのでありますがそれを極く簡単に私申述べて見たいと思うのであります。  只今申しましたような国宝重要美術品、或いは史蹟名勝、天然記念物いうようなものは、我が国の文化の象徴であり又その発展の基礎として懸替えのないものだと思うのであります。従いまして、これは十分保存維持を図らなければならないものでありまするが、そのためには文化財所有者に対しまして、相当の制限或いは負担を加え、又さまざまな義務を課するというようなことになつておるのであります。即ちそれらの所有者は、それが自分の私有物であるにも拘らず、自由を許されないところの公的な制限を受けておるのであります。それでありまするからしてそういう制限を受けておるならば又一面において公益保全というような建前から、保護を加えてやることも当然だと思います。従いまして富裕税の第九條の第一項で以て、ああいうふうな表し方をいたしておりますのもやはり同じ精神から出ておるのだと思いますし、我々もその点非常に結構なのでありますが、只今申しましたように、第三項がありまするために、今の精神は著しく破壊されておると思うのであります。そこで我々の方といたしましては今の案にありますような、私の方の意見としまして、第三項を抜いて頂きたいと思うのでありますが、それにつきまして二、三点その理由を申述べて見たいと思うのであります。  勿論富裕税財産税でありますし、又国宝というふうなものを所有しておるとかいうことはこれは一つ財産には相違ないけれども、この財産只今申しました通り、普通の財産と違いまして、多くの制限を加えられておる財産であります。例えば、公共のために皆さんに見せる上から行くと、出品の義務を負わされておる。或いは又保存のためには十分な管理、或いは維持を図らなければならない、そういうふうな責任があります。或いは又調査をするというふうなことになりますと、この調査を拒むことかできないというふうなわけでありまして、普通の財産のように個人の勝手にはならないところがあるのであります。そういう非常に制限された財産であるばかりでなしに、これは又生産的な財産でもないのでありまして利子もこれからは生れて参りませんし、収益も挙らない。而も逆にそれを維持するためには、大分維持費がかかつて来る。こういうふうな性質のものでございまするから、これに富裕税をかけて行くということはどうも我々から見ますと、適当でないように思います。  第二点といたしましては、この富裕税は年々課税されて行くものでありまするからして、そうでありまするというと、個人の所有者ではこれを終いに持ちこたえられなくなつて来るのではないか。つまり保存費の方で所有者は相当に金がかかる上に、又これを持つておるというので、年々課税されて行くというものでありますと、家重代の物であつても手離さなければならんというような結果になつて来ると思うのであります。そういうような結果は、この重要な文化財というものが転々として動いてしまつて保存をするとか、社会の活用に供するというような上からも、いろいろな欠点が出て来ると思う。こういうふうに考えられるのであります。  第三には、こういうふうな年々課税をされるというのでは堪らないから、この課税を免れたいというようなつもりから今度の戰災で焼けてしまつたとか或いは何らかのことでなくなつてしまつたというようなことで隠蔽する危険が非常にあるのであります。で、税がかからなければこんなことはしないと思いますけれども、こういうふうに年々取られるというようなことになりますと、そういう忌わしいようなことをすることが起らないとも限らないのでありまして、そういうふうでありますと、文化財保護保存が十分にできて行かないと思います。  第四番目には、文化財所有者というものか、どういうものが所有しておるかと言いますと大体において国とか、社寺とか、或いは公共団体というのが多いのでありまして、個人の所有というものは極めて少いのであります。一例を私申上げて見たいと思うのでありますが、この国宝所有者の表をちよつと申上げて見ますと、二十四年八月一日現在の表によりますると、国宝が千九百七十一あるのでございまするが、その中個人の所有は三百一になつております。つまり六分の一にも達しないぐらいのものが個人の所有でありまして、六分の五以上が寺社等の所有になつているのであります。而もこの個人の所有と申しましても、三百一というのは三百一人の人が持つているというのではなくて、一人で何点も持つているものがあるのでありまして、個人の所有は大変に少いのであります。然るにこの寺社であるとか、公共団体等の持つているものには、これは税はかからないのでありますが、    〔理事黒田英雄君退席、委員長著席〕 個人の方だけこれですとかかるのでありまして、大変に少い個人のものだけ富裕税がかかつて、そうして寺社等はかからないというのでありますと、非常にこれは不公平な……大部分を持つている寺社等にはかからないで、そうして少ししか持つていない個人の方にはかかるものというのは、非常に不合理ではないか。  それから又第五点といたしましては、全体として見ましても、この方から上る税金というものは極めて微々たるもので、国宝にいたしましても、今のようなわけで個人が少いのでありまするし、その他のものにおきましても、個人の所有というものは少いのでありまするから、これから上る税金というものは極めて少いので、これが若し免税になりましても、国家の收入に非常な差を生ずるというようなことは毛頭ないのでございますから、一方で、我々の方で文化財保護法というようなものを作つている建前上、又我々が作つているというよりも、これは国家として、而もそうならなければならないので、文化財保護建前から、一つ第三項を皆さんのお力によりまして削除して頂ければ非常に有難いと我々は思つているわけでございます。勿論もう皆さんの方においてこの問題につきましては十分案があると思うのでありまするが、我々の方の委員会といたしましては、この点非常に大事に考えましたので特に私が出ましてお願をしているような次第でございまするが、この点については、どうか一つ皆さんの御理解とそれから御明断とをお願い申上げたいのでございます。
  16. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 山本委員長の御発言に対して、若し御質疑でもありますれば、この際……
  17. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 只今の山本委員長のお話、誠に御尤もだと思うのでありますが、ちよつと一点お聴きして見たいと思う点は、国宝に指定されたり或いは重要美術品として認定されるということに対して、相当いわゆる民間のそういうものに該当する物を持つている方々が熱意を持つているというか、或いは熱心に運動するというようなことをたびたび聞くのでありますが、そういうふうな状態であるとき、只今のお話とちよつと矛盾する点がありはしないかと思うのですが、この点如何でしようか。
  18. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) 今民間の人が運動するものがありはしないかというお話でありますが、私のところには未だ曾つて富裕税をまけてくれという請願は一つも出ておりませんし、個人的の話は私は一つも今聞いておりません。むしろなぜ民間の連中はこういうものか出るのに請願しないのかと私は思つているぐらいでありまして、今までのところでは委員の人からもまだ私その話を聞いておりません。  それからもう一つ申上げたいと思うことは丁度ここに出ていることでございますが、例えばこの間法隆寺が焼けたとか、或いは又長楽寺が焼けたとか或いは北海道では国宝の城が焼けたとかいうようなことがありましたが、ああいうふうな焼けたものが、どつちかというと個人の所有でないものが焼けているのが多くて個人で所有しているものは非常に保存の上で大事にしている。だから個人の所有がいいという意味で私言うのではありませんが個人の所有のものは非常に国宝を大事に保存することに努めておつて、むしろ公共なり社寺なりよりも保存に努めているのに、どうも税がこういうふうに個人だけにかかつて来るのは不合理ではないか、こういう気がします。
  19. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 ちよつと私の申上げようが悪かつたかも知れませんが、国宝に指定されたり、重要美術品として認定されたりしたいがためにいろいろ運動して、相当費用もかけて、それぞれの筋へ運動して指定して貰つたり、認定されたりという例が沢山あるのです。そういうのはやはり価格を、国宝なつたがために或いは重要美術品なつたがために相当高く世間から認定され、結局場合によつてはそれを販売するときには、そのために非常な利益があるというようなことになるためにそういうことがあるのです。私はこの点をお伺いしたい。
  20. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) その指定等のことは、私はそれに関係しておらないのですから、どういうふうな建前で指定になつて行つたかということについては、僕は責任を持つてのお答はできないと思うのです。あなたのおつしやるようなことも稀には聞かないでもございませんけれども、恐らく指定のあれは相当な委員があつてつて行きますので僕はそんなに動かされることなくやつて来たであろうと想像しているのであります。それから万一国宝に指定された場合、これを他に売るというようなときには、それは当然にそれだけの値打のものとして税がかかつて来る。富裕税とは別なあれで、売買した場合には売買した価格相当の税がかかるのでございます。
  21. 木内四郎

    ○木内四郎君 これに関連しましてちよつと主税局に伺いたいのです。山本さんのおつしやること、誠に御尤もだと思うのですが、主税局もその趣旨は十分御承知で、九條の二項のような規定を置いて経済的利益を生む場合でなければ、これを課税価格の中に入れないという規定を設けておると思うのですが、それにも拘らず三項で百万円を超える場合には課税価格に入れる、この百万円というようなことは、どういう意味でここに入れられたのですか。
  22. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 昨日もお答えいたしたのでありますが、確かに国宝重要美術品はいろいろな制限を受けておりますので、私共も全部何するのも一つ方法かと思つていろいろ研究して見たわけでありまして、審議の途中におきましては、昨日も申上げたのでございますが、実はそういうあれも作つて見たことがあるのでございます。ただいろいろそれも更に検討いたしました結果、やはり国宝等の中にも相当書画骨董に類するもので、比較的交換価値と申しますか、処分価値があるものが相当あるように思いまして、そういうものにつきましては、無條件に免税するということになりますと、財産をそういう形で持つというような傾向が助長されますので、大した問題は富裕税全体としてはないと思うのでございますけれども、やはり富裕税を設けました本来の趣旨からいたしまして、少し行過ぎになりはしないかという点でございます。従いまして一定の限度を置いてやりますれば、そういう問題はないだろうというので、百万円というのは別に確たる根拠がないのでございますが、大体富裕税の課税最低限度が五百万円でございますから国宝重要美術品等につきましては、これだけ別に百万円の控除を行うことに相成りますからその点で一つのラインを引くのも一つ方法ではないかかような意味におきまして結局最終案をまとめまして御審議を煩わしているような次第でございます。
  23. 木内四郎

    ○木内四郎君 勿論只今お話しになつたように、交換的な価値があつたり、それによつて財産の隠匿と言いますか、そういうようなことになることを虞れておやりになつたと思うのでございますが、そういう方面は資産の再評価の法律で、あれのそのままの定義を、或いはこれに類似した規定を設けることによつてこれが売買された場合にはそれを取る、或いは又再評価のようなことでなくても所得税でも、讓渡所得ですか、そういうもので取るというような方法を考えて、富裕税から除いてもいいというようなことは考えられなかつたのですか。
  24. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) 財産の隠匿という点から考えますと、これは課税した方が、或いは隠匿するかも知れないと思いますか、私申上げましたように、財産国宝なり重要美術品の形で持ちますと税がかからなくて、無條件にかからなくなつて来るということになりますと、やや負担の公平を失することが多くなりはしないか、その額が相当多額に上りますときには、特にその感が強いから、やはり一定の制限を設けましてその限度を超えた場合には課税した方がいいのじやないか、このような考え方であります。
  25. 木内四郎

    ○木内四郎君 今お話になつたようなことも考えておるのですが、それは讓渡した場合に取るということによつて長い眼で見たら目的を達するのじやないかと思うのですが、そこはどうですか。
  26. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) その点につきましては二つの問題があるのですが、富裕税は、財産を所有しておるということに担税力を認めまして、比較的軽度な課税を年々やつて行くという税でございます。従つて同じ財産、例えば重要美術品の形で所有しておる、或いはその他の土地家屋、公社債等の形で所有しておるという場合におきまして富裕税の本来の負担の公平の上から言つても、これはやはり課税するということに行かざるを得んのじやないか。ただこういう品物の価格の評価につきましては、一定の拘束を受けておりますので、そういうことを前提にして評価しなければならないというふうに考えるのでございます。従いまして例えば書画等のごとく、比較的容易にとは申上げがたいのでございますけれども、比較的有利に処分し得るようなものは、これは比較的適正な時価がそれに応じまして定め得ると思うのでございますが、その半面建物等のごとくなかなか処分がむずかしい、仮にこの法律制限の下におきましても処分し得る場合があると思いまするが、そういうものを処分しようと思う場合においても、なかなか処分できない、こういうものにつきましても、評価と共に十分な考慮を加えなければならないと思うのでございますが、いずれにしましても処分するならば、これだけに売れるという価格につきましては、これは財産の一種として課税するのが富裕税の理窟から申しまると、妥当ではないかというところではないかと思います。ただこれは国家が特別な目的で保存する必要があるから少しこういうものにつきましては有利にしてやるのがいいのだ、こういう見地から確かに考えられたわけでございまして従いましてそういう負担公平の理論から考えまして、その額が小さくて余り相反しないというものにつきましては、免税は妥当であるというふうに考えておるのでございますが、余り額が大きくなりますると、どうも如何であろうかというのが限度を設けました趣旨でございまして、従いまして限度等につきましてはいろいろ観方がございましようが、一応そういう考え方から限界を設けまして課税の範囲を定めた次第でございます。それから讓渡した場合におきましては、これは一般の財産、家屋その他全部の場合におきましては、取得価格に比べまして高く処分した場合におきましては、その差額に対しまして取得税がかかるわけでございます。書画骨董につきましても同様で、この種のものにつきましても同様でございまして、今後の取得したもののような場合におきましては、取得した価格と売つた価格差額等に課税するのでございます。従いまして値上りがございませんければ課税になりません、元の価格で処分したような場合におきましては……。それから又一面におきましては、ずつと昔から持つておるものにつきましては、財産税課税価格から、やはり再評価法に基きまして、再評価をいたします。その再評価をした価格を超えまして処分した場合におきましてはこれは所得税がかかることに相成るのでございます。再評価以外の分につきましては六%の再評価税がかかる。そういう関係になるのでございますが、その課税はやはり富裕税と違つたカテゴリーの課税でございます。それがあるから直ちに富裕税を全部なくてもよいということは、少し如何だろうかという問題は、従いまして課税の負担公平の原則から、文化財を大いに助長する必要性と、その調整をどういう点で図るかというところに、この問題の所在があるだろうと、私共考えておる次第でございまして、政府の案を作りました経緯、並びに大体まとまりました最終案の考え方は、先程申上げました通りでございますことを申上げて置きます。
  27. 木内四郎

    ○木内四郎君 政府の考えも一応理由はあると思うのですが、富裕税の考え方だけから言えばそうでしようけれども、利益を生む場合には当然これは課税価格に算入される。利益を生まないものを持つておつた場合は、それに対しては今あなたの言われた再評価の場合、又は讓渡所得の場合にそれだけ捕捉すれば足りるのではないかというように考えるのですが、殊に文化財で而も利益を生まない、而もその保存に経費がかかるこういうものですから、冨裕税の理論だけでなしに、利益を生むものは当然二項で行くのですから利益を生まないものだから、それは他の税法でそれを捕捉して、免除して貰つたらどうかというふうに考えるのですが、困難ですか。
  28. 平田敬一郎

    政府委員(平田敬一郎君) お尋ねがありますと、ますます課税説を主張せざるを得ないと思うのですが、今度の富裕税は、大体においては財産から生ずる所得を、間接に財産税の形で捕捉するということを目的とするのでございます。例えば自家用自動車も、收益は直接生んでいませんがやはり……、相当大きい家に住んでいるような人の場合は、やはり富裕税の形で所得税の外に若干の課税をするのが、負担公平の理窟から言つてもいいだろうということになつているわけでございまして、従いまして財産税を所得税の補完税として特に設ける根拠としまして、学者の説明するところ等によりますと、やはり無收益の財産に課税するのが長所であるという見解でございますが、苟もも財産税を所得税の外に課税し得る税制理論上の根拠といたしましては、そのような所得税では、或る財産が無收益財産に投資された場合におきましても課税できないのであるが、それを財産税の形で若干の課税をいたしまして、補つて両方相俟ちまして、税制として公正な税を打ち立てよう、こういう趣旨が若干加味されておると思いますが、どうも課税の理論から申しますと、これを引かれるようにするということは、なかなか簡單には出て来ないのではなかろうかと思います。私は重ねて申上げますが、評価につきましては拘束を受けておるというようなことは十分考慮に入れまして適正な評価をいたさなければならない。従いまして免税するかしないかは、やはり文化財としまして、国の見地から、これをどの程度に考えるかというような問題が、やはりこれに対する考え方の分れ目になるのではないかと、かように考える次第でございます。
  29. 木内四郎

    ○木内四郎君 委員長、主税局のお考えは大体この程度にしまして、山本さんもお出でになりますが、山本さんに対する御質問もありますから、この程度にして置きます。
  30. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) 今の平田主税局長のお話を承つておりまして、勿論負担の公平ということは当然の話でございまして、我々もそれは十分考えておるわけでありまするが、今のこういう国宝等から利益が生じない。そういう利益が生じないというだけならば外にも利益の生じないものがあるのだから、課税してもいいのだということを今言われたように思うのでありますが、私が先程主張しましたのは、それも入つておりますけれども、それ以外にこの財産は非常に制限を受けている財産であるという点が大きいのでありまして、これは是非平田さんもその点はよく考えて頂きたい。それから尚先程油井さんのあれのとき私少し言洩らしたと思いますが、今度文化財保護法案通りますれば、あの制限が今度は非常に尚強くなつて来ているのであります。従いましてこの国宝をどういうふうなものを選ぶかということは、非常に厳重になるばかりでなしに、今まで国宝であつたものも、今度は一度選ぶ会を当然やりますので、国宝の数が減ると思うのであります。或いは殖えるかも知れませんけれども、減るのじやないかと思うのでありまして、今までに或いは何らかのことがあつたかも知れませんが、併しまあ大体なかつたろうと思いますけれども、今後においてはそういうことは、尚今度の法案が嚴重なものになつて来ておりますから、その点は少いと思います。従つて国で国宝に指定したとか、重要文化財に指定したとか、こういうものを又保存すべきものである、保護すべきものであるということを国で決めて置きながら、片一方においてこれは課税するのだ、課税するのだということは、私にはちよつと理解できないのであります。殊に取られるのが寺社等が持つていれば宗教法人で取られない。個人が持つているとそれだけは取られるのだということは、非常な不公平だと思います。而も個人が持つている数は、先程申しましたように非常に少いのであります。尚建造物の問題なんか十九くらいしかございませんですね。さつきのは全体のあれですが、建造物の場合でありますと、大変に個人の持つているものは少いのであります。国宝の建造物の場合の全体で六百七十四あるのですが、そのうち個人が持つているというのは十九だけなのです。そうすると六百七十四あるうちの、大部分は課税されないで、この十九のものだけが課税されるというような、これこそむしろ不合理じやないか。個人が持つているが故に課税されるというのは非常な不合理じやないかと思いますが、この点皆さんの非常な御理解と御明察をお願いいたしたいと存じます。
  31. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 山本委員長に対して御質疑がありませんければ……
  32. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 山本委員長ちよつとお伺いしたいのですが、国宝に指定されて国家で以てこれは保護すべきであるというようなふうなものなら当然国家で以てその維持をするだけの費用を出すのが当り前だと思うのです。そういうふうな点にお力をお入れになつて、この富裕税と別に、その方でどんどんとお取りになる方を積極的におやりになつたらどうなんでしようか。
  33. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) 大変いいことを言つて頂きまして誠に有難うございました。この点は我々文部委員会でどれだけやりましてもなかなか取れませんので、現にこの間のときには二億円のあれを申しましたところが、減らされて一億五千万円にしろということで、減らされて、一生懸命にやりましてね、漸くまあ二億円にだけしたのでありますが、そんな二億円くらいで、長い間もう修理も何もできておらなかつたのですから非常に困りますので、是非ともうんと皆さんのお力によつて取れるようにして頂たいのであります。併しながらまあ御存じの、ここらが本職のところですから、こういう財政状態でありまするから、それはとても僕らはできるだけ骨を折るつもりでありまするし、又御援助願いたいのでありますが、実際的にそうは取れないと思うのです。とすると、せめてこのくらいしてやつてもいいのじやないか、こういうことになるのじやないかと私は思うのであります。
  34. 森下政一

    ○森下政一君 山本さんに一つお伺いしたいのですが、このさつき平田主税局長が有価証券その他の形で財産を持つておれば税金がかかる。税金がかからないのは、国宝の場合に税金がかからないとすれば、国宝の形で持つておれば一番いいんじやないか、理窟を言えばそれがいいが、財産を税金を免かれるために、国宝の形で持つという馬鹿はないと思う。先ずそんなものはないだろうと思うのですが。ところでそうなると国宝に指定されておる物を持とうという程の人は、外にもいろいろな財産を持つてつて、たまたま美術的な嗜好によつて重要美術品を買うとか、或いは国宝に指定された物を買うとか、つまり相当経済力のある人が初めてやり得ることなんで、恐らく税金がかかるから困るから、そういうもので財産一つ構成しておこうなんという勘定で持つとは考えられないと思うのですね。そういうことになると、ただ自分の財産の一部分でたまたま自分がそういうものに趣味を持つておるとか、非常に関心を持つておるとかいうことで、一部分国宝で持つておるというような人なら、儀かな税金なら、仮に年々かかるにしたところで、負担に堪え得るのではないか、ただ併しながら祖先伝来伝わつて来ておつた、物で、たまたま持つておるが、現在の所有主というものは経済的には非常に落魄しておる、非常に窮乏しておる。たまたま祖先から伝わつておるものであるが故に持つておるが、それが国宝に指定されておつて、今の自分の境遇ではとても困るんだというような人があつて、そういう人の財産が、若しこの富裕税の賦課対象になる程持つておるということがあれば、これはちよつと気の毒だという気がせんでもないのですが、つまりたまたま自分の持つておる物が祖先から伝わつた国宝ばかりである。それを売るわけにも行かない、ところが日常の生活に困つていると、そんな極端な例があるかどうか知りませんか、若しおありとすれば気の毒だと思うのでありますが、実情はどうですか。
  35. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) 全く森下さんがおつしやつた通りであります。大体今までの国宝は祖先伝来のものか、乃至はお金があつてつていた人なんでありますが、その人達かこの急変によつて没落したために随分その物を持つているというよりも売つた場合が非常に多いのです。尚又持ち続けている、どうしでも離せないで持ち続けているという人かあれば、今度は富裕税なり何なりで非常に困るというのが実情でございまして、今度は新たに沢山儲けた人が国宝を買おうという場合には、それは高い金で買つて、それは当然買うときに税金がついて来るからいいと思うのですが、今まで持つている人が、このあれをかけて行かれたんでは非常にお気の毒で、それはあなたのおつしやる通りの実情でございます。
  36. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 如何でしよう。山本委員長のお発言は、これは承つておきまして、当委員会においては愼重審議して行くということで、この委員長の御退席をお願いしたいと思います。
  37. 山本勇造

    委員外議員山本勇造君) 誠に有難うございました。どうかよろしくお願いいたします。
  38. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 次は製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案の御審議をお願いいたします。
  39. 米倉龍也

    ○米倉龍也君 今の製造たばこのことではありませんが、丁度政務次官がいらつしやいますから、一遍お尋ねをし、所信を承りたいことがありますが、発言を許して下さいますか。
  40. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) どうぞ。
  41. 米倉龍也

    ○米倉龍也君 丁度次官がいらつしやいますので、政府として或いは大蔵省としての御所見を承りたいのでありますが、従来私共は金融機関の大蔵省の検査の結果というものについては、殆んど発表されないことであると承知しております。恐らく大蔵省は毎年金融機関の嚴重なる検査をなされるでありましようが、未だ曾てどこの銀行を検査した結果、こういうような指示をしたとか勧告をしたということを、新聞記事等によつて承知したことがないのであります。多分今日と雖も大蔵省の検査の結果というものは極めて祕密に取扱つており決して他に漏洩するような処置はしなかつたことと思うているのですが、併し現在は何かの事情で、一応金融機関の検査をした場合にも、場合によればその内容等の片鱗でも、正式にこういうような勧告指示をしたというようなことを発表になるような御方針になつたかどうかということを、先ず一点お尋ねをいたすわけであります。  それから若しそういうふうな方針が変えられたといたしますれば、これは政府の考の如何でありますので、議論にはなりますが、止むを得ないことと思います。従来通り金融機関というものは非常にデリケートなものでありますので、それの内容等は極めて愼重に扱わなければならないという従来の御方針であるならば、極めて遺憾なことの新聞記案弄したわけであります。それは日本経済新聞の三月二十二日に記載された記事でありまして、それは農林中金の再検討、大蔵省から勧告というような見出しで、最近農林中央金庫の検査が、総司令部の指示にもよつたでありましようが、あつたということを聞いております。そうして多分その結果何らかの指示というようなことが、当然銀行検査官から農林中央金庫にあつたと私は想像いたします。然るにそのことが二十二日のこの新聞に出まして、私共それを拝見しますというと、何もそれ程のことではない面もありまするが、又見ようによりますれば、現在の農林中央金庫の業務内容、財産内容というような点、現在の経理事情というような点について世間が非常に心配を、世間と申しましても、これは御承知の通り農林中央金庫は相互組織の金融機関でありまして構成団体は農業団体、或いは水産団体、林業団体というような協同組合組織の団体が構成団体でありまするからして、この団体に関係しておるものは、こういうような記事を見ましても、それ程苦にせんだろうとは思いますけれども、併し現在のような農村金融の逼迫の際に、地方におきましては、尚農業協同組合一方の金融関係では非常に心配をしているときであります。そのときに一番元である、最後の拠点である、どういうことがあつても我々の最後の拠点である農林中央金庫の状態が磐石の安定を持つているというその安定感の上に一生懸命に努力をしておるわけであります。それに対して新聞記事にありまするような、貸付の焦げつきがどのくらいあるとか、或いは資金が系統外に流出する状態にある、或いは又非常にコストが高くなつ経理面が困難である、従つて年度は全部の剰余金は配当に廻すことなくして、焦付償却にしなければいけないのだというような、事細かな具体的のことを発表されておるのでありまして、これは地方の今の農村金融の事情から申しますと、地方の農村の人々が非常に不安を感ずるようになりはせんかと心配を、私はこの新聞を見たときに感じたのであります。ところがやはりその通りでありまして、地方から上つて来る人のお話、或いは地方からの報道等によつて、どうしてああいうものが発表されるのか、非常に大事なときではないか、大蔵省としてはどうしてああいう軽率なことをされるのか、十分よく聽いて見てくれろ、今後決してああいうようなことのないように、どういう理由でああいう記事が出たか。私は若しこれが今までの方針通り、大蔵省の方針が変らないならば、事務当局が或いは疎漏であつたか、とにかく綱紀に関係する問題になりはせんかと思うのであります。この点について大蔵省の御所見がお伺いしたいし、尚又現在この記事ばかりではなく、地方にありまする新聞等には、しばしば現在の農村金融の極めて逼迫の事情を告げると同時に、その金融の事務を扱つておる金融機関である農業協同組合の取付けというようなこと、或いは事業閉鎖というようなことの寸前にある、極めて危険な状態にあるというようなことが間々報道されております。これは報道の自由でありますから、止むを得ないのでありますけれども、事苟も金融の不安、或いは金融を撹乱するような契機になるような事柄について、政府としても十分今後善後処置をお取りになつて、或いはこのことのために、農村金融なり、或いは中小金融なりに対する国家の大きな施策をこの際考えなければならないのではないかと思うのであります。どうかこの点は政府においても十分愼重にお取扱いを願い、今回のことにつきましての御所見が伺いたいと思います。
  42. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 只今の、御質問の問題でありますが、仰せの通り金融機関の問題は非常に微妙な問題でございますので、大蔵省としては、絶対に金融検査官が検査した金融機関の内容を世間に発表しない、この方針は今も全然変つておりませんで、現に日本全国の金融機関を毎日やつておるのですから、全部の内容は分りません。これは一切外部に洩らしたことはございません。又絶対に洩らさないという方針でやつておりましたところ、たまたま只今のような問題がございましたので、どこからこの記事が漏洩したかというのは本日、先程まで私の方で調査いたしましたが、役所の中から洩らしをいう事実は、今のところないということになつておりますが、尚この点については、もう一歩調査いたしまして、若しこれが今言つた、綱紀に触れるというような問題でしたら、嚴重にこれは我々の方で措置する、こういうつもりでも、一歩調査いたしますが、今後と雖もこの内容について、絶対これを世間に公表するというようなことはないようにいたしますが、この記事の問題については、一応もう一歩私の方で調べさせて頂きます。
  43. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 製麺たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案に対しで、御質疑がございましたら、御質疑を願いたいと思います。
  44. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 今度たばこが相当値下がりになりますが、小売業者が持つているたばこに対する価格差損金はどういうふうな処置を取つておりますか。
  45. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 小売人の値下げの当時の在庫数を調査いたしましてこれに対しましては、差損金を支拂うことになつております。
  46. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それは値上りのときはそのまま、値下げのときは要するに補償するこういう措置ですね。
  47. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) その通りであります。
  48. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 政務次官にもお伺いいたしますが、同じ政府であつてたばこのような場合には、そういう制度をお採りになつて、織物の消費税などはそういう制度をお採りにならなかつたかというのは、根本方針でその点はどう違うのですか。
  49. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 一確かにそういうことは言えますので、消費税場物品税場を取るときも非常に議論された問題でありますが、技術的な問題、その他で非常にこれはむずかしい問題でございまして、たばこと違つて現状を捕捉することがむずかしいあの種の問題には、遺憾ながらその差益金の場合は取つたが、その後は拂わないという方法を採らざるを得なかつた事情でありますので、御了承を願いたいと思います。
  50. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは重大な問題でしてね。上るときはどんな隅々までも行つて政府は推定でやつておる。今度下るときは技術上困難だといつて、今度はそれに対して補償をしないという形、或る業種に対しては物品税とか消費税というようなものに対して取つて、非常に政府が安易感を持つて国民に臨んでおるということで、この点だけは政府は非常に反省して頂かなくちやならんと思う。将来これに対していろいろ問題が出ましたら、もつと誠意を以て政府は取扱つて頂きたいと思います。
  51. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 只今、例えば農業報奨物資というようなものにつきましては。これは明らかに政府に事は責任が、ありますのでそういうものの値下りについてはどうするかという、一般のそうした補填する方法を現在我々の方で考えております。それと同時にこの差益金の問題につきましても、実情に応じて善処したいという考慮を現在やつておりますので、そういう点に対する今までの円満に行つていなかつたところはこれからでもこれは十分是正したいと思つて、現在施策を考えておりますので、これも御了承をお願いいたします。
  52. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 そうすると今の政務次官のお話で大変心強くする点があるのですが、過去において不合理だつた点については、将来政府は相当それに考慮を拂つて、是正する考えがおありなんですね。そう解釈してよろしいか。
  53. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) そうするつもりでおります。
  54. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 次にたばこの将来における方針なんですが、まあ、非常に数量を殖やして値下げをして、収入の面においてはバランスを取つておるという形なんですが、将来共やはりたばこはどんどん殖やして、それで値下げをして行く方針なのであるか、或いは作付反別なんというのは大体今のところで抑えて、人口の自然増加等を見合わした程度の増加をやつて行くつもりであるか、これを一つお聽かせ願いたい
  55. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) たばこ数量の問題でございますが、戰争以来たばこ数量は非常に減少して参りましたが、戰前におきましての数量は、国民の一八一日当りで計算いたし一まして、一番多いときで二・六本ぐらいになつております。それが来年度昭和二十五年度におきましては、二五本まで増加いたしまして、一応の数量といたしましては、大体戰前に戻つて来ておるということが言えると思います。併し国民の中で喫煙の割合は戰前と比べますと、最近におきましては、婦人の喫煙者の割合なんかも段々増加しておるのではないかというふうに考えられますので、これが戰前よりは或る程度多くなるのじやないかというふうにも考えられます。それで差当りの目標といたしましては、昭和二十五年度製造数量は八百億本になつておりますが、二十六年度はそれを八百五十億本、それから二十七年度は八百七十億本まで増加したい。まあその辺まで行けば、差引需給関係は丁度よくなるのじやないかというふうに考えております。両アメリカあたりの例を見ますと、国民一人一日当りが九本にもなつておりまして、日本の数倍になつておりますが、たばこが安くなりましても、これは習慣でございますから、一挙にそう高くなることもないのじやないかと考えまして、大体八百七十億本程度できればいいのじやないかというふうに考えております。
  56. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは政務次官にお伺いしたいのですが、たばこは未成年者には喫わせないという法律が確かあつた筈ですが、現在では殆んど行われておらないような状態で、而もその未成年者の数というものは相当多くて、その方面に使用されるのが相当の部分を占めておると思うんですが、まあ成年になつて、体格がもうすつかり固まつてからならば害も少いのですが、青少年、殊に未成年者においての、たばこの害は相当あると思うのです。政府は徒らにたばこによる收益のみを目標として、販売の増大を図るよりはそういう方面に対しても、相当考慮を拂わなくてはならないと思うのですが、これは一向にお拂いになつていないようですが、その点についてどういうふうな処遇を取られるのですか。
  57. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 確かに御説のように、未成年者にたばこを喫わせるということは悪いことでしで、未成年者に対する禁止法もあるのでありますが、この取締というのは大蔵省の方の問題でありませんので……
  58. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 これは政務次官としてあなたにお聽きするのです。
  59. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) これは徹底的に取締りたいと思いますが、私の方でも最近ポスターに成るべく子に喫わせるように、女に喫わせるような宣伝が多いと、いろいろなお叱りを受けておりますので、こういう点は十分気を付けたいと思つております。
  60. 木内四郎

    ○木内四郎君 さつき政務次官から油井君に対する御答弁で、値下りの場合の損失を補償することを考えておられることは非常に結構だと思う。そこでこれは税法の審議にも重大な関係がごございますので、具体的に税法の審議中にどんなことを考えておられるか、一つこの委員会提出して頂きたいと思います。  それから冠木君にちよつとお伺いしたいと思いますが、たばこ値下げは何か私の記憶違いでなければ、この一月か二月に下がるというようなことを政府か発表したと思うのですが、そういうことはありましたか。
  61. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 一月か二月に下げることを、そういうことを考えたことはございますが、発表したことは全然ございませんです。
  62. 木内四郎

    ○木内四郎君 どうもちよつとおかしいと思うのですが、考えておられたことを、どういう方法発言したことがないと言われるのか知らないが、新聞その他に洩れ、喫煙者は相当期待をしておつたにも拘らず、二十四年度内には値下げがなくて、今日になつてこれを提出されて来た。まあ非常に我々は失望しておつたのですが、何か二十四年度中に値下げできなかつた理由はありますか。
  63. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 本年のたばこ販売の状況でございまするが、これが余り芳しくございませんので、予定の販売たばこの專売益金が出そうもございませんような状態でございましたので、従いまして値下げの方も延び延びになつたような形でございます。
  64. 板野勝次

    ○板野勝次君 私ちよつとお尋ねしたいのは、外国たばこと日本のたばことの関係ですね。将来日本のたばこの生産、それに対する当局の対策を承つて置きたいと思います。そうして外国たばこの現在の状況についても、価格、入つて来ておる数量等も併せてお知らせ願いたいと思います。
  65. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 只今の御質問は、外国の闇たばこの問題でございましようか。
  66. 板野勝次

    ○板野勝次君 そうです。闇たばこであろうとも、とにかく国内に入つて来ておるたばこと、国内との関係を無視するわけに行かんですから……放出たばこもありましよう。
  67. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 先ず放出たばこの点でございますが、これは今までに進駐軍の方から護られた分がございまして、それを今まで売つてつておりますが、その数量は大したものではございません。今日資料としてお配りしておると思いますが、特殊たばこ販売実績という中で、国産と放出とございますが、この下の方が放出たばこでございます。これで見ますと、紙巻たばこが一億一千七百万本、それからあとパイプたばこ、それから葉巻が若干というような数字になつておりまして、これもずつと前に入りましたものを、最近まで売つておる状態でありまして、最近は放出になつたものはございません。  それから次に闇たばこの問題でございますが、これは相当の数量が入つておるように思われますが、その数量がどのくらいになるかということの推定は非常に困難でございまして、或いは十億本ぐらい入つておるのじやないかというような見方をする人もございますが、正確なところは勿論分りませんです。この外国の闇たばこの問題は、非常に困つた問題でございまして、專売公社でも、この取締には非常に苦心しております。この闇たばこの取締のためには、千八百人程の監視の職員が従事して、非常な苦心を重ねておりますが、尚十分な成果を挙げないで、闇たばこが市中にも見られるというのは非常に困つた問題と考えております。この点につきましては、今後更にその取締を嚴重にして参りたいと考えております。
  68. 板野勝次

    ○板野勝次君 更に、私の伺いたい点に触れられていないのですが、そういうふうな闇たばこ若しくは放出たばこがどんどん出て来るということになれば、勢い国内における葉たばこの生産というものに、非常に影響を與えて来るに相違ないと思いまする今後の外国から来る、そういつた放出若しくは闇たばこ状態と、それと睨み合せなければ、今あなたは一千八百人からの監視員を置いて云々と言われましたけれども、そういう監視員をもつと沢山置いてみたところで、外国からの品質のよいたばこ、聞くところによりますとフィリツプ・モリスというふうなものは、二十本が百円くらいだということになれば、日本の光と比較して見て、ずつと品質はよい。そういうことになつて来れば、勢い外国たばこによつて、日本のたばこというものの生産が圧迫されて来て、勢い農村における副業として、若しくは本業として重要な農産物である葉たばこの生産というのが、非常に圧迫されて来る。それに対して対策をどういうふうにお考えになつておられますか、これを承りたい。
  69. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 只今御心配の点は、私共といたしましても誠に御同感でございまして、專売公社の高級品の売行きが余りよくないと言いますけれども、この原因は外国たばこに押されるという点も相当影響していると思います。従いまして、そのために專売公社の製造の方が少いということになりますと、この葉たばこの耕作の方もそれだけ勢い減つて来るということと相成りますので、外国たばこの取締には、今後尚一層の努力をしなければならないというように考えておる次第でございます。
  70. 板野勝次

    ○板野勝次君 放出たばこが今のところないと言われますが、二十五年度においては相当量放出されて来るというふうな、お見通しはないのでしようか。
  71. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 只今のところそういうような見通しはございません。
  72. 板野勝次

    ○板野勝次君 それから国内の葉たばこに対する保護政策というふうなものは、これはあなたの方でなくて、農林省の方かも知れませんけれども、お考えにはなつていないというわけですか。
  73. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) たばこの耕作面積等につきましては、專売公社たばこ製造の数量に応じまして、それによつて計画を立てておりまして、目下のところでは、段々製造数量が、先程も申上げましたように増加して参りまするので、たばこの耕作面積も二十四年度は五万町歩でございますが、それが二十五年度は五万二千町歩というふうに増加いたしまして、更にその後五万四千町歩まで増加したいというふうに考えております。
  74. 板野勝次

    ○板野勝次君 それは増加して行く方向ですけれども。農家経済が成立たないように増加して行つても仕方がないので、外国たばこの放出というものが、放出権というものが、日本の政府が握つてつて、そうしてこれが国内の生産の問題と調節し得るという状態にあるのならばよいのですけれども、日本の政府が放出権というものを握つていなければ、勢い外国たばこに圧迫されて来る。そういうのは、一方においてはたばこの作付の反別を殖やして行くとしましても、生産が成立たなくなつて来るのじやないか。勢い外国たばこが氾濫して来て国内の葉たばこの生産が圧迫されて来る、こういう見通しも立つておるときに、どういう積極的な対策をお持ちになつておるのかということをお聽きしておるので、それは作付反別を単に殖やす殖やすと言つても、成立たなければ殖えるのでなくて逆に作付の反別が少くなつて来る、こういう状態なつて来るのじやないかと思います。そういう点についてお尋ねしておるわけです。
  75. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 先程も申上げました通り、二十五年度におきまして放出たばこが更に出て来る、外国たばこの放出があるという見通しは今のところ全然ございませんし、又そういうことは日本として余り喜ばしいことでないことは御同感でございますので、そういうことにならないように努めたいと考えております。
  76. 板野勝次

    ○板野勝次君 それはただ單に希望的な観測で、放出権を日本の政府が握つておればいいのですがね。それは希望的観測であつてそのことは問題にならないと思う。そこでもう一つだけお尋ねしたい点は、今度値下げをされる。ところがその値下げをされるのに、今度出されておるような程度までに引下げられた根拠と、それからたばこのそれぞれの原価からどの程度まで……もつと下げてもいいのか、この、程度に止められた理由というものを、原価と見合せて、或いは消費の量と見合せて、もう少し納得の行くような説明をして頂きたい。
  77. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 値下げの数字の根拠でございますが、これは大体專売益金全体としましては、財政上の要求を大体前年度と同じように考えまして、生産数量が増加いたしますために、單位当りの財政負担が軽くなりますので、それによりまして只今提案しております値下げの数字になつておるわけでございます。尚高級品の方を値下げいたしまして、下級品の方は大体据置きということにいたしましたのは、戰争以来高級品に対して数回に亘つて非常に高く上げて参りましたために、その十本当りの收益率は、下級品の割合が非常に高くなつて参りましたのを、大体段々戰前に戻すという考えで、高級品の方を値下げいたしまして、下級品の方は、例えばきんし等の値上げ、戰前との比較を見ましても、大体物価水準の移動と同じくらいの割合になつておりますので、この際は下級品の方は据置いて、高級品の方を下げるというふうにいたした次第でございます。
  78. 板野勝次

    ○板野勝次君 製造の原価については……
  79. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 原価の調べにつきましては、前に昭和二十五年度製造たばこ收益調べというのが提出してあると思いますが……
  80. 森下政一

    ○森下政一君 ちよつとお尋ねいたしますが、今板野委員からもお話があつた放出たばこですが、二十五年度の放出の見通しは持つていないというお話なんですが、これは何ですか、二十四年度に放出のあつたというのは、もとより政府の要請によつたものじやないと思うのでありますが、これは一体どういう事情で放出されることになつたのですか。
  81. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) たばこの放出のございましたのは、大量にございましたのが昭和二十二年にございまして、その後はそのストツクを段々売つ参つておるというようなことになつております。
  82. 森下政一

    ○森下政一君 その放出の大量に行われたのは、どういう事情によるのですか。
  83. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 昭和二十二年、その当時におきましては、日本の專売局の製造煙草の数量が非常に不足しておりまして、一般的に煙草の不足に国民が困つておるというような当時でございましたので、特に進駐軍の方から好意を以て放出するというようなことになつたわけでございます。尚報奨物資といたしまして、例えば農家等に対する報奨物資といたしまして、こういうものが適当だからというようなことで、まあこれが放出になつたようなことでございます。
  84. 森下政一

    ○森下政一君 それではそれは政府の要請によつたのですか。
  85. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 政府の要請と言いますよりも、むしろ向うから與えられたようなものでございますが、政府といたしましても、その当時といたしましては、たばこが非常に不足しているときでございますから、喜んで受入れたわけでございます。
  86. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 それは放出たばこの專売局の買入値段販売値段の差をちよつと……
  87. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 放出たばこ販売値段でございますが、これはお配りいたしました表の下に載つておりますが、紙巻二十本人で三十円になつております。パイプたばこが一包みが、自由販売はこれは一本になつておりまして、自由販売が百円で、特配用が三十円、葉巻たばこが一本十五円ということになつております。尚買入値段は紙巻の二十本入が三円になつております。それからパイプたばこが三円三十銭になつております。葉巻はここに数字がございませんので、ちよつと分りません。
  88. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 その差額はやはり專売の收入の分に入つているのですか。
  89. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) さようでございます。
  90. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 どういう科目で……
  91. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) それは收入の方は、販売値段数量をかけたもので入つて参りまして、その買入値段の方は歳出の方へ入つているわけであります。(笑声)尚これは予算には計上してございませんで、
  92. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 予算に入つていないのですね。
  93. 冠木四郎

    政府委員冠木四郎君) 予算には計上してございません。
  94. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 その差額はどのくらいあるのですか。……それではこの次に資料を出して頂くことにいたします。
  95. 森下政一

    ○森下政一君 政務次官にさつきお尋ねしかけたのですが、臨時国会の当時に、総理大臣がたばこを民営に移したいとか何とかいう希望的意見を発表したということですが、相当これが国会の問題になつたのですが、その後、鳴りをひそめておるのでありますが、政府はもう断念したのですか。
  96. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) まだ断念したとか、しないとかいう問題では。ございませんが、審議会を作つてそこで研究して頂いて、その答申によつて政府は態度を決めたい、こういうことで、最初から必ず民営にして行くとか、しないとかいう考えで出たのじやありませんで、民営問題を研究して貰いたいという態度で審議会を作りまして、そこで研究を願つてつたのでおります。こういう建前でありますが、まだ審議会から最後の結論を得た答申が、本日までに参つておりませんので、従つて政府もどつちにするという本当の研究を始めていない、こういう状態に現在なつておるのであります。ですからまだ今後の問題になるわけでありまして、ただいろいろ審議会の方の審議の中間報告みたようなものを見ますと、なかなか時期が尚早だというような意見もございますので、政府としても早く決めてくれというより、ただ急がないでおるという状態であります。
  97. 森下政一

    ○森下政一君 現在審議会は何か審議をやつておりますか。
  98. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 最近は余り審議をしていないようでございます。(笑声)
  99. 森下政一

    ○森下政一君 それは一つ政府は督促して、結論を求めることを急がれたらどうですか。そういうものを作つて置いて、何かそう国民にどうなるのだろうというふうな、将来のたばこは民営になるのか、今日と同様の態勢で経営されて行くのか、不明瞭な状態に置くということは、私は望ましくないと思うのであります。殊に私は、自由主義経済を謳歌しておられる自由党の建前から行けば、恐らく民営にやりたいという気持を持つておられることは、私は当然のことだと思う。自由主義経済を信奉するものとしては、ひとりたばこだけではない、恐らく鉄道でも、或いは電話でも、電信でも、アメリカ合衆国がそうであるように、民営にやるということも、一つの信念として自由党が持たれたとしましても、これは訝しいことじやないと思う。ところで審議会というものを折角設けて、一結論を出して貰いたいと言われた。殊に政務次官の言われるように、結論によつて政府も決意しようというような考があるなら、開店休業のような動脈硬化したような状態審議会を放置して置くという手はないと思う。例えば理想としては民営にすべきだという自由党の理想であつても、審議会の結論の結果、今日の日本の財政事情と睨み合せて妥当でないというなら、国民はこれは納得することになつて来ると思います。又自由党の支持者であるところの国民大衆も納得するだろうと思います。やはりそういうことははつきりされたらどうですか。
  100. 水田三喜男

    政府委員水田三喜男君) 十分承知いたしました。(笑声)
  101. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 今の政務次官に木内委員からの質問に対する御答弁などを、午後の委員会へ成るべくならば一つお出しを願います。速記を止めて。    〔速記中止〕
  102. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 速記を始めて。それでは、製造たばこ定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案について、質疑を終局して討論に入ることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 御異議なしと認めます。討論に際しては賛否を明らかにして御発言を願いたいと思います。
  104. 板野勝次

    ○板野勝次君 共産党はこの法案に対して遺憾ながら賛成いたします(笑声)。これは少しでも下つて参りますからという意味で、全面的に賛成するわけではないのです。現在の採算から参りましても、今の国の予算の面から見ましても、これはもつと大幅に引下げて行くこともできるわけです。大体共産党は、その原価に対して、倍くらいの価格で売出すべきだという、こういう主張を持つておるので、できるだけそういう方面に政府も配慮して貰いたいと思う。それからもう一つは先程の外国たばこの放出の問題につきましても、放出される状態が少しも日本政府の自主性の下に放出されて行くというふうなことがないのであつて、できるだけ急速に外国葉たばこに対しで、国内の葉たばこに対する保護政策、いろんなものを樹立することなしには、日本のたばこの生産は将来圧迫されて来ます。段々段々窮地に追込められて来ると思います。そういう施策に対しても、乃至の対策を立てて頂きたい。以上を以ちまして條件を附してこの法案に賛成いたします。
  105. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 外に御発言はありませんか。
  106. 油井賢太郎

    ○油井賢太郎君 民主党はこの案に賛成をいたします。併しながら政府財政上千二百億というような大きな財源のこのたばこに対しまして、ただ売らんがために、どんな方法でも採るというような手段をお採りにならず、やはり値段をおいおいもつと下げて行くという方向に向つて努力されて、闇の撲滅を図り、又一面におきましては、未成年の喫煙等を嚴重に取締つて、その分がやはりたばこ嗜好者の方へ十分に廻つて行くというような方策をお採りになることを希望いたしまして賛成いたします。
  107. 森下政一

    ○森下政一君 社会党はこの案に賛成します。ただ一つ希望を申して置きますが、将来更に製造能力が増して段段品物が多く市場に出ることができるというふうなことになつたら、願わくばもつと、例えばきんしであるとか、新生であるとか、一般労働者が好んで吸うというような品種の点で、もつと利益率を少くする。それを若し断行することができれば、それらの定価を更に格安に下げることができれば、闇たばこなんというものは忽ちに吹飛んでしまうと私は思う。今度の改訂の定価は、僅かにきんしだけが外のものと下廻つておるようでありますけれども、新生あたりは殆んど他の高級品に比ベて、利益率、收益率という点から言えば、大体同じような程度になつているのです。格安に、もつと收益率を少くして定価を下げられるということを希望して賛成いたします。
  108. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 外に御発言はございませんか。……では討論を終局して採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕」
  109. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 採決いたします。製造たばことの定価決定又は改定に関する法律の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の方の御挙手を願います。    〔総員挙手〕
  110. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 全会一致と認めます。本案は全会一致を以て可決すべきものと決定いたします。  尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御証人願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして委員長が議院に提出います。   多数意見者署名     黒田英雄   森下 政一     西川甚五郎  平沼彌太郎     木内 四郎  油井賢太郎     小宮山常吉  藤井 丙午     板野 勝次  米倉 龍也
  112. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 御署名洩れはありませんか……なしと認めます。  それでは午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩    —————・—————    午後一時五十一分開会
  113. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 休憩前に引続きこれより大蔵委員会開会いたします。先ず佐々木鹿藏君外二十三名の方から発議されました旧軍港市転換法案について御審議を願いたいと存じます。先ず提案者からの提案理由の御説明を願いたいと存じます。
  114. 佐々木鹿藏

    委員外議員(佐々木鹿藏君) 本委員会に旧軍港市転換法案を取り上げて頂いたことに対して、提案者を代表いたしましてお礼を申上げます。そこで提案理由を御説明申上げたいと存じます。横須賀市、呉市、佐世保市及び舞鶴の四都市は、御承知の通り、旧軍港が置かれ、巨額の国費を費し、又長年月に亘る設営努力により、日本海軍の四大根拠地として、終戰時まで発展して参つたのであります。  即ち一小漁村であつた横須賀市が、明治十七年東海鎮守府が置かれて以来、逐年軍港規模が拡張せられ、市の人口三十八万に上る大都市となり、全市即ち軍港というように一体として発展し、ために一般産業の興る余地がないままに、市の財政も多額の国庫助成に負うような状態にあつたのであります。呉市はもと呉浦を囲んだ半農半魚の村落に過ぎなかつたのでありますが、明治二十三年に第二海軍区鎮守府開設を見て以来、海軍の諸施設の整備拡充が行われ、戰争中は四十二万の人口を擁する大都市に膨脹したのであります。又佐世保市について申上げますと、これ又明治二十三年、当時人口四千に過ぎなかつた一寒村が軍港都市として発足して以来、同様の急激な発展を遂げ、又舞鶴市についでも事情はほぼ同様でありますが、然るに今次大戰が我が国を殆んど潰滅の状態に陷れ終末を告げるに至りました結果、これらの四都市は一瞬にしてその在在の意義、立市の根抵を失つたと申しても過言はないのでありまして、その受けた打撃は精神的にも又経済的にも、他の戰災都市に比較すべくもなく甚大であつたのであります。  即ち、例えば呉市のごときは、四十二万に上つた人口が終戰直後十三万に激減し、約四ケ年を経過した今日においても漸く十九万人に過ぎず、他の三市についても事情はほぼ同様であります。又四市いずれも一挙にして工廠等の職場を失いましたため、新たに依存すべき産業が皆無に近く、夥しい失業の群を擁して、市民生活は誠に暗澹たるものがあるのであります。四市の中、特に横須加市におきましては、基地司令官の積極的なる指導と理解ある措置により、特定の区域における旧軍用施設の転換は、すでに実施を見てはおりますが、そこに立地せる転換事業体は、尚現行国有財産法に基く国有財産処理方法を以てしては、その事業は経済的に成立せず、意気銷沈たるものがあるのであります。いわんや他の三都においては、計り知るべきものがあると思われるのであります。又巨大な海軍の軍需品製造設備や港湾施設は、市当局その他関係方面の努力により、若干工場の誘致を見たものもありますが、その大半は平和産業のため活用せられることなく、遊休のまま放置せられ、特に造船施設は旧軍港であるの故を以て、その産業は極度に制限を受け、その転活用を阻まれているのが現状であります。又右に申述べました実情からしますると、当然の結果として、四市経営の立直りに充つべき、課税等の收入も極めて僅少でありまして、いずれも極度の財政難に喘いでいるのであります。  一方において、我が国は新憲法において戰争を永久に放棄し、平和国家として新しく発足いたしたのでありますから、四市往時の軍港市としての繁栄を再び取戻すというがごときは望み得ないことは当然であります。のみならず、今日四市の市民の間には、憲法の精神に副うて、立市以来の軍港色を市の性格から根本的に拂拭し、平和産業港湾都市として新たに出発し国の内外に対して、都市として厳粛な平和宣言をしたいとの願望が力強く漲つているのであります。申すまでもなく、四市の市民は今日市民生活の建直し、市の建設にみずから立ち、みずからの補う悲壮な決意を持つて努力しているのでありますが、右に申述べましたような特殊な事情がありますので、その自力にのみ委ねることなく、国家としてこの際出来得る限りの有形無形の援助の手を差伸べることが、極めて必要であると痛感されるのであります。  本法案は以上申述べました趣旨に基きまして、旧軍港市である四市に平和都市として新しい性格を與え、遊休状態にある旧海軍の諸施設を活用して産業の振興、港湾の発展に充て、以て平和日本の理想達成に資することを明らかにしますと共にその建設に対する国の援助を骨子として規定しようとするものであります。その大要を申述べますると、この法律は全文八ケ條から成り、その第一條には右申述べました通りのこの法律の目的を掲げ、第二條において、その目的を達成するための計画と事業又びそれと特に重要密接な関係にある都市計画法又は特別都市計画法との関係を定めたのであります。第三條におきましては、重要な意義を持つところの転換事業の促進と完成とに対する国及び地方公共団体関係諸機関ができる限りの援助をすべき旨の特別規定を設け、第四條及び第五條において、国有財産特に旧軍用財産の処分についての、特別の措置を定めたのであります。即ち旧軍用の土地、施設その他の財産を拂下げる場合には、通常は旧軍用財産の貸付及び譲渡の特例等に関する法律により、時価の二割以内の減額をした価格で譲渡されるものでありますが、特に本法おいては、その割引率を五割以内まで引下げることができる。又その代金支拂の延納期間も三年となつているものを、最も長い十三年にまで延納の特約をすることができることといたし、更に旧軍用財産一般につき、国が旧軍港市転換計画の実施に寄與するよう、有効適切に処理するよう義務のあることを示し、従つて必ずしも時価拂下げ方針に拘泥せず、必要に応じ一時使用許可方針を併用する趣旨を含めしめ、又普通財産の讓與につき、国有財産法の特例を開いております。このように国有財産、旧軍用財産の処理、讓與に関しまして特例が設けられておりますので、第六條におきましては、これらの処分の適正妥当を期するため、大蔵省に旧軍港市国有財産処理審議会を設け、その委員の構成については、大蔵事務次官建設事務次官、関係府県知事、旧軍港市の市長、関係各省官吏の外に有力な民間の学識経験者を加え、これを以て最も実情に適合し。権威ある決定をなさしめんとするものであります。更に第七條におきましては、本法による転換事業の実施の進歩状況を事業の執行者は六ケ月ごとに建設大臣、大蔵大臣両大臣に報告し、内閣総理大臣はこれを国会に報告いたすこととし、第八條は、四市の市長及びその住民はおのおのその市の平和産業、港湾都市建設に当つて、不断に活動と協力をなさねばならん旨の規定を置いております。  尚この法律は憲法第九十五條にいわゆる一つ地方公共団体のみに適用される特別法に当りますので、附則第二項に本法案国会議決後、各市において住民投票に付さねばならん旨を明らかにいたして置きました。  以上が本法案の大要でございます。何とぞ各位におかれましては、その必要性をお認め下さいまして、御賛成賜わらんことをお願い申上げます。
  115. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) この際お諮りをいたします。本案に対して発議者の方に直ちに御質疑を願つてもよいのでありますが、本案は頗る広汎に各省に関係がありますので、例えば地方行政委員会とか、或いは建設委員会等から連合委員会を開催をして貰いたいというお申出があるではないか、こう考えるのであります。従つてこれらの委員会から連合委員会の開催の申出がありました場合においては、これを本委員会としては受入れることにいたしまして、連合委員会を開くということに予め御了解を願つて置きたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) それでは改めて連合委員会で発議者に対しては質問をするということで、本日は本案に対しては提案理由説明を聽くだけに止めて置きたいと思います。左様御承知を願います。
  117. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) それではこれより財政法の一部を改正する法律案の御審議を願いたいと存じます。ちよつと速記を止めて。    午後二時九分速記中止    —————・—————    午後三時十三分速記開始
  118. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 速記を始めて。では討論を終局して採決することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 御異議ないと認めます。これより採決いたします。財政法の一部を改正する法律案を原案通り可決することに賛成の方の御挙手を願います。    〔挙手者多数〕
  120. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 多数と認めます。よつて本案は多数を以て可決すべきものと決定いたします。  尚本会議における委員長の口頭報告の内容は、委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  121. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 御異議ないと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして、委員長が議院に提出する報告書に多数意見者の御署名を願います。  多数意見者署名    黒田 英雄   森下 政一    西川甚五郎   平沼彌太郎    木内 四郎   油井賢太郎
  122. 櫻内辰郎

    委員長(櫻内辰郎君) 御署名洩れはありませんか……なしと認めます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後三時十八分散会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     櫻内 辰郎君    理事      黒田 英雄君    委員            森下 政一君            西川甚五郎君            平沼彌太郎君            木内 四郎君            油井賢太郎君            小宮山常吉君            藤井 丙午君            板野 勝次君            川上  嘉君            木村禧八郎君            米倉 龍也君   委員外議員    文部委員長   山本 勇造君            佐々木鹿藏君   政府委員    大蔵政務次官  水田三喜男君    大蔵事務官    (主税局長)  平田敬一郎君    大蔵事務官    (主計局法規課    長)      佐藤 一郎君    大蔵事務官    (日本專売公社    監理官)    冠木 四郎君    造幣庁長官   松崎 健吉君