○
政府委員(
平田敬一郎君)
所得税につきましては御
承知の
通りシヤウプ案が法制化されてから各
方面でいろいろ批判がございますし、私共も事務的の
見地から事前におきましてもいろいろ意見の交換をしたのでございますが、その後におきましてもできる限り
実情に即する妥当な案を作成すべく
努力いたしたいのでございますが、その際今問題になりましたやはり
勤労者控除を従来の二割五分を一挙に一割に圧縮する、これは理屈は確かにあると思うのです。つまり
事業所得と
勤労所得の
負担の
バランスを図るというのが主たる目的でございまして、そういう
見地に立ちますとやはり確かに
シヤウプ勧告も私は有力な
理由があると
考えておるのでございますし、現在もそうでございますが、併し如何にも一拳にしまして二割五分を一割まで圧縮するということは、これは本当に大したことない
ようでございますが、実は大したことでございまして、余りにも影響が大きいのでこれを緩和したいと、少くとも一割五分に持
つて行きたいと、これを第一に調整したいという
考えでございました。これは幸にいたしまして、
最後にやつと
通りまして提案いたしておりますが、これで
シヤウプ案に比べますと約百三十億円
程度の
税額の
減收に相成るのでございます。
それからその次の問題は、
基礎控除の問題でございますが、
基礎控除は、ともかく一万五千円が二万四千円に
シヤウプ案はな
つていたのでございまして、はなから申しますと相当な
引上げでございます。それから
家族控除の方も、従来の
税額控除の千八百円から、
所得控除一万二千円でございますが、これも実はよく調べてみますと相当な
引上げでございまして、これもそうせつつく程のことでもなかろうかと
考えていたのでございます。もとよりこれらにつきましても、将来
事情が許せば
考えた方がよいのじやないかということは
考えておりましたが、先ず二十五年度としては辛抱するより外なかろう、できれば
基礎控除を少し上げたいという気持であ
つたのでございます。
もう
一つ一番問題は、御指摘の
税率の問題でありまして、
税率は結局三十万超が五五%にとどめる。その五五%でとどめるという
考え方は、私は今の税務の実際並びに
富裕税の創設という点から
考えまして、これは
一般にいわれておりますよりも、案外よく
考えてみますと相当合理的な
根拠がある。私共
最初所得税の
税率を五五%に止めるということは、如何にもどうもどうであろうかという感じを強く持
つた点も、率直に言うとあ
つたのですが、併しやはり一方におきましては、今度新らしく
市町村民税としまして
税額の二
制程度附加税みたいなものがかか
つておる。それを入れますと、実は六六%になるわけでございます。
それからその外に
富裕税を起しまして、これで
財産所得に対して重課するというシステムを
シヤウプ案は勧告した。この
富裕税をやるかやらないかにつきましては、実際はいろいろな
議論がございまして、名目的な
財産税として大蔵省でも多年に亘
つて研究して参
つたのでございますが、
実行上の問題その他の点を
考えてなかなか具体的にやろうという
決意は実は今までいたしかねて来たののございます。併し
富裕税を一方において起して、
財産を
標準にして
財産所得に対して一面においては重課する、他面におきまして
所得税の高い
税率はできるだけ下げる、これは確かに有力な
一つの
考え方だろうと、いろいろその後検討してみました結果、やはりロジカルには相当これも通
つておる
議論ではないかと私共も
考えておるのでございます。ただ問題は、この五五%の適用を受ける
所得階級の三十万円が果して妥当かどうか、それからその下の
所得税の
税率の刻み方が果して妥当であろうかどうか、この辺は相当問題にする必要があるのではないかということで、まあいろいろ私共検討して見たのであります。率直に申しまして、理想を申しまするならば、せめて最高は百万円ぐらいのところを五五%を用いまして、それから
所得税の
税率の刻み方が五万円から八万円、十万円、十二万円というふうに小刻みに累進率が上
つて行
つておりまするが、その辺の適用階級を二三落つことしまして、上の方に適用階級を持
つて行きまして、それで
所得税の
税率を構成するということになりますると、余程これは
税率としては姿のよいものになるのではないかということを
考えまして、いろいろ研究はしてみたのでございます。ただそういうふうになりますると、
税額に相当大きく響くのでございます。上の方だけを單に三十万円のものを百万円に持
つて行
つて、二十万円から百万円にいきなり飛んで、百万円だけ五五%ということでございましたら、そう大したことはないのでございますが、下の方から順々にずらして行くということになりますと、
税額に相当響くのでございます。今申上げました趣旨で作りました
一つの案によりますると、それだけで二百億円ぐらいの
減收になるという
ようなことにもな
つたのでございます。勿論そういう案を作りまして、
財政事情が許すならば、或いはそういうところまで行くのも
一つの
方法じやないかというふうに
考えて研究してみたのでございまするけれども、とにかくそこまで本年の
財政事情としては行き難いということになりまして、その問題は、今回提案しました
程度で
一つ今回としては提出し
ようということに決定いたしたのでございます。
それから
基礎控除につきましては、これもやはり少しでも低めた方がよいのではないかという
考え方をいたしまして、
財政の
事情と睨み合せまして、まあ気持だけでございまするが、二万四千円を二万五千円に
引上げて提案すると、この
ような
事情に相成りましたことを、御参考までに申上げておきたいと思う次第でございます。