○
政府委員(水田三喜男君) 先ず最初に
只今議題になりました
財政法の一部を
改正する
法律案外二
法案の
提出理由を御
説明いたします。
財政法の一部を
改正する
法律案を立案いたしました趣旨は、次の二点について
財政法の一部
改正をいたそうとするものであります。
即ち、その第一点は、現行の
財政法第三十
一條の
規定によりますと、予算が成立しますと、内閣は各省各庁の長に対し、その執行すべき予算を配賦するのでありますが、その配賦の際、歳入予算については、これに「目」までの区分を立て、歳出予算については、「目」を更に「節」に区分して配賦することにな
つておりまして、各省各庁においては、この「目」及び「節」の区分に
従つて歳出予算を執行するのでありますが、予算執行の現状、特に本年度当初からの実施されました支出負担行為
制度の実績を見ますと、歳出予算を「節」までの区分によ
つて執行いたしますことは、手続を煩わしくし、却
つて予算統制の実績を挙げる上に妨げとな
つている実情にありますので、この際、歳出予算の配賦について「節」の区分を
廃止いたそうとするものであります。而してこれに伴いまして、従来の実績に鑑み、「目」の
整理統合を行うと共に、従来の「節」のうち特に流用
制限を行う必要のあるものを「目」に引き上げる等の調整を行う予定であります。尚、これらの措置は
昭和二十五年度予算から実施し得るよう所要の
規定を設けることといたしました。
次に
改正の第二点は、各省各庁の長が予算を執行いたしますには、先づ支出負担行為の計画を作成して
大蔵大臣の承認を経る必要がありますが、現行
財政法第三十四條によりますと、支出負担行為の計画は、管下の支出負担行為担当官ごとに作成することにな
つておりまして、これも従来の実績に致しますと、手続の煩瑣に比較して実効が少い実情でありますので、この際支出負担行為の計画は、各省各庁一本建で作成し、
大蔵大臣の承認を経ることに改めようとするのであります。
次に米国対
日援助物資等処理特別会計法案の
提出の
理由を御
説明いたします。
今回この
法律案を立案いたしました趣旨は、米国対日援助物資の取得及び処分等の処理に関する
政府の
経理を一層明確にするために米国対日援助物資等処理特別会計を設置しようとするものであります。
即ち従来援助物資に関する
経理は、貿易特別会計の援助物資勘定において行な
つて来たのでありますが、今般、新たに独立の特別会計として本会計を設置し、米国対日援助物資の売拂代金、援助物資の価格調整のための財源として一般会計からこの会計に繰入れる繰入金等を以て歳入とし、米国対日援助見返資金特別会計への繰入金、
事務取扱費等を以て歳出といたしまして、これらに関する
政府の
経理を一層明確にすることといたしますと共に、この会計の予算及び決算の作成及び
提出に関する手続
規定等特別会計に必要な措置を
規定いたそうとするものであります。
次に、配炭公団の
損失金補てんのための交
付金等に関する
法律案の
提出の
理由を御
説明いたします。
この
法律案を立案いたしました趣旨は、配炭公団、食料品
配給公団及び飼料
配給公団の損失補てん財源に、先づ公団が国庫に納付すべき剰余金を充て、尚且つ損失金の生ずる配炭公団に対しましては、
政府一般会計からの交付金を以てその補てん財源といたそうとするものであります。
即ち配炭公団につきましては、
昭和二十四年九月十五日に解散いたし清算に入
つたのでありますが、その損失は目下のところ百十九億四千五百万円と予想されるのでありまして、この損失金の補てん財源に、先づ
昭和二十三年度以降の国庫に納付すべき未拂剰予金七十五億八千八百万円を充て、尚不足する四十三億五千七百万円につきましては、同額を限り
昭和二十五年度において一般会計から同公団に交付いたそうとするものであります。又食料品
配給公団、飼料
配給公団の二公団につきましては、
昭和二十四年度末に解散し、
昭和二十五年度中に清算結了の予定でありますが、その損失は目下のところそれぞれ一億一千六百五十万七千円及び五千一百九十八万一千円と予想されるのでありまして、これらの損失金の補てん財源に
昭和二十四年度以降の国庫に納付すべき剰余金をそれぞれ充当いたそうとするものであります。
以上が三
法案を
提出いたしました
理由であります。
次に、
相続税法案外二
法律案の
提案理由を御
説明いたします。
先ず
相続税法案について申上げます。相続税の
制度は、今回の全面的
改正によりまして、相当重要な変更が加えられることになるのであります。従来の相続
税法におきましては、相続税とこれを補完する贈與税との二本建でありまして、相続税は被相続人の遺産の総額に課税し、贈與税は財産を贈與した者に対し、贈與財産の累積額に課税していたのであります。即ち、従来の
制度は相続、遺贈又は贈與による財産の移転があつた場合にそれまでは財産を所有していた者について課税していたのでありますが、今回の
改正では、財産を取得した者に担税力があるものと認めまして、取得財産の累積額を標準として一本建の相続税を課税することにいたしたのであります。いわば
改正後の相続税は、一種の財産承継税或いは財産の無償取得税とも言うべきものになるわけであります。
この課税体係の変更と後で申上げます基礎控除、税率の変更、各種控除の新設等によりまして、相続税の負担は従来と著しく異
つて参るのであります。即ち、例えば五百万円の財産を子供が相続したとすれば従来は相続人が何人でありましても税額の合計は二百三十六万余円であ
つたのでありますが、
改正法によりますと、相続人が成年の子一人の場合の税額は二百二十八万余円、二%余の軽減になり、配偶者と未成年の子一人とが民法の相続分
通り相続したとすればその合計税額は百五十万余円となりまして、三六%余の軽減になり、又配偶者と未成年の子三人が民法の相続分
通り相続すればその合計税額の百三万余円となりまして、五六%余の軽減になるのであります。併しながら、後で申上げます
通り相続税の最高税率は九〇%に改めることになりますので、高額な財産、例えば一億円の財産を配偶者と子供一人とが民法の相続分に
従つて相続した場合には、従来の相続税額五千九百三十六万余円とありますが、これに対して、
改正後は六千四百三十五万余円となりまして八%余増加するのであります。
以下
相続税法案の
内容について、その大要を申上げます。
先ず、相続税の
納税義務者は、原則として相続、遺贈又は贈與によ
つて財産を取得した個人であります。相続税の課税価格は相続、遺贈又は贈與により取得した財産の価額の合計額でありますが、その計算に当りましては、その非課税財産の
範囲を拡張し、宗教、慈善、学術その他公益を
目的とする事業を行う者の取得した財産でその公益
目的の事業の用に供することが確実なもの、或いは政治資金規正法に
規定する公職の候補者が選挙運動に関し寄附等によ
つて取得した金銭で同法の
規定によ
つて報告されたもの等をも非課税財産とし、その全額を課税価格に算入しないことにしたのであります。
次に今回の
改正によ
つて新たに各種の控除を認めることといたしております。その第一点は、少額控除でありまして、同一人から同一年中に取得した財産の価格のうち三万円までの金額は課税価格に算入しないのであります。従来は三千円以下の財産は課税しなか
つたのでありますが、今回その限度を引き上げますと共に控除
制度に改めたのであります。その第二点は、配偶者控除でありまして、配偶者がその配偶者の死亡によ
つて財産を取得した場合には、取得財産の価額の二分の一を課税価格から控除することとしたのであります。これはその場合の取得財産の中には夫婦協同で稼ぎためた財産が多いと認められ、又配偶者間の年齢には大差のないのが普通でありますから、再び相続が開始して相続税を課せられる公算が大きいからであります。第三点は、未成年者控除でありまして、相続人のうち十八歳未満の者がいる場合には、一万円にその者が十八歳に達するまでの年数を乗じて算出した金額を課税価格から控除するのであります。これは未成者が相当の年齢に達して自立するまでには可なりの養育費を必要としますので、予めこれを控除しようというのであります。第四点は、基礎控除でありまして、相続税の課税に当
つては一生を通ずる取得財産の課税価格から十五万円を控除するのであります。これは先に申上げた少額控除の外に認めるのであります。取得財産の価格は十八万円以下であれば課税を受けないのであります。
相続税の税率は、以下のようにして各種の控除をして計算した課税価格に対しまして、二十万円以下の金額に対する二五%から、五千万円を超える金額に対する九十%に至る超過累進税率に改めることにな
つております。御承知のように従来相続税の最高税率は六五%、所得税の最高税率は八五%であ
つたのでありますが、今回の
改正により所得税の最高税率は五五%とし、別に高額な財産を所有する者には富裕税を課することとし、相続税については高額財産の取得に対して高度の累進課税を行い、ためにこのような高率にいたした次第であります。尤も
改正後の相続
税法では公益事業に寄附すれば非課税となり、相続人が多数であれば、その税負担は相当軽減されることになりますので、これによ
つて公益政策上又は社会政策上望ましい効果を生ずるものを期待している次第であります。
次に、同一財産について相続が頻繁に行われる場合の税負担の公平を図るために各種の税額控除を認めることといたしております。即ちその一は、相次相続の控除でありまして、これは従来相続の開始があつた場合に、その被相続人が五年以内に開始した相続について納めた相続税額を今回の相続税額から差し引くことにしていたのでありますが、今回の
改正によりまして、その
期間を十年に延長し、前回の相続から今回の相続までの
期間を十年から差し引いた年数を前回の相続税額の十分の一に乗じて算出した金額を今回の相続税額から差引くこととしまして、この控除
制度を合理化するに努めたのであります、次は、年長者控除でありまして、相続によ
つて財産を取得した者が被相続人より年長者であるときは、その取得した財産に係る相続税額の三分の一を控除することにしたのであります。これは相続によ
つて年長者に財産が移るときは、再び相続が開始して相続税の課税を受ける公算が大でありますので、この控除を設けて課税を緩和合理化するに努めたのであります。
次に相続税の
申告及び納税について申上げますと、その年中の相続、遺贈又は贈與によ
つて取得した財産を基礎にして計算した課税価格、相続税額等を記載した確定
申告書を翌年二月一日から同月
末日までに
提出し、納税して頂くことにな
つております。尤も年の中途で相続又は遺贈によ
つて財産を取得した場合にはその相続の開始又は遺贈があつたことを知つた日の翌日から四月以内に概算
申告書を
提出して納税して頂くことにな
つております。
次に延納物については、従来と同様でありますが、従来年賦延納の場合の利子は一日十銭でありましたが、本年四月一日以降はこれを一日四銭と改めることにいたしました。尚その他相続税の
異議処理、第三者通報、利子税額、加算税額、罰則等については所得税、富裕税等と同様であります。
次に
改正相続
税法は四月一日から施行する予定でありますが、この
改正規定は本年一月一日以後相続、遺贈又は贈與によ
つて財産を取得した場合に適用することにいたしております。
次に
資産再
評価法案につきまして御
説明申上げます。
過去数箇年の間におけるインフレーシヨンによりまして物価が著しく騰貴いたしましたため、企業の
資産についてその取得の当時の価額を基礎とする帳薄価額は、その実際の価額を反映しない低い価額となり、
資産の適正な減価償却ができず、企業
経理は不合理となるに至
つている現状であります。このような
状態を是正して、企業の
経理を合理化し、健全化することは極めて肝要と考えられるのであります。更に又
資産の譲渡等の場合にインフレーシヨンに伴
つて生じた單に名
目的な所得に対しましても所得税又は
法人税が課税されるという従来の
状態を合理化いたしまして、譲渡所得についての課税を適正ならしめ、税負担の軽減を図ることが必要と考えられるのであります。よ
つてこれらの
目的を達成するために経済が正当化に向いつつある現段階において
資産の再評価を行うことといたし、今回
資産再
評価法案を
提出することとした次第であります。
次にこの
法律案についてその概要を申上げます。
先ず再評価は原則として本年一月一日を基準日といたしまして、その日において
法人又は個人が所有する
資産について行うことといたします。
法人の
資産及び個人の事業用の減価償却
資産につきましては、再評価を行うか否かは、所有者の任意といたしますることともに、その再評価額は一定の基準の
範囲内で所有者が任意に定めることができることといたし、企業の実情に応じた再評価が行われ得るようにしているのであります。また個人のその他の
資産につきましては、譲渡所得の計算上の問題のみでありますので、その
資産について譲渡等がありました際に基準日現有で再評価が行われたものとみなすこととしているのであります。
次に再評価の基準といたしましては、原則として
資産の取得価額にその
資産の種類に応じまして卸売物価指数、消費者物価指数又は土地価額指数に基く一定の倍数を乘じまして、再評価額又はその最高限を算出する方式によることといたしております。尚個人が財産税調査時期前に取得した非事業用
資産等につきましては
資産税評価額を基礎としているのであります。
次に再評価の
申告につきましては、再評価を行
なつた
法人及び減価償却
資産について再評価を行つた個人は、原告として遅くとも本年八月三十一日までに再評価
申告書を
政府に
提出しなければならないものといたし、個人の減価償却
資産につきましては、再評価
申告書は
資産の譲渡、贈與、相続又は遺贈があつた場合に、所得税の
申告書の
提出期限と同一の期限内に
政府に
提出することを要するものとしているのであります。
次の再評価税について御
説明いたします。
再評価差額に対しましては、社債や預金等の債権の所有者及び過去においてインフレーシヨンによる名目所得に対して高率の課税を受けていた者の間に公平を図るため、百分の六の税率により再評価税を課することといたした次第であります。この場合再評価税の課税によ
つて企業の適正な再評価を妨げることがないように、納税
方法につきましては企業の税負担の状況を考慮し、延納を認めることとしているのであります。即ち減価償却
資産についての再評価税は、原則として
法人の場合におきましては三年間、個人の場合におきましては五年間に分納することとしているのでありますが、再評価税によ
つて税負担が一時的にもせよ過重となることを避けるために、
青色申告書を
提出する
法人又は個人につきましては、各事業年度又は各年における利益の状況に応じて概ね五年後に至るまでの延納を認めることとしているのであります。次に
法人及び個人の減価償却
資産以外の
資産についての再評価税は、原則としてその
資産の譲渡等があつた際に納付することとしているのでありますが、
法人につきましては、五年後に至るまで尚譲渡されないものにつきましては、五年後において納付することとしているのであります。
次に再評価額、再評価税額等につきまして
政府による更正決定の
制度を設けまするとともに、審査請求、訴訟、加算税等につきましては、概ね今回の
税制改正による他の
税法において採用されている諸
制度に準じているのであります。
尚
資産の再評価を適正ならしめるために、
資産再評価
審議会、全国
資産再評価調査会及び地方
資産再評価調査会を設置いたすこととし、
資産再評価の円滑な
運用を図りたいと存じております。
次に再評価に関する企業の
経理について申上げます。
再評価によ
つて生ずる再評価差額は、損失の補填に充てた額を除いて一応これを再評価積立金として積み立て、三年間は原則としてその取り崩しを禁止することとしております。三年後におきましては、再評価積立金の四分の三の
範囲内で資本えの組入れを認めることとし、五年後におきまして再評課税を完納したときは、再評課積立金の残額の全部を資本に組入れることも認めることとしているのであります。尚再評価積立金はこれを社債の発行限度に算入することといたしたのでありますが、経済の状況をも考慮し、その金額を一時に算入せず、三年間にその四分の三までを限度として逐次算入することとしているのであります。
次に
資産の再評価後における所得税、
法人税等の課税
関係について申上げますと、先ず再評価を行
なつた
資産の減価償却につきましては、再評価額を基準とし、残存価額が再評価額の一割に達するまで
税法上償却を認めることとしております。また再評価
資産の譲渡所得につきましては再評価額を基礎として計算し、インフレーシヨンによる名目所得を排除することとし、再評価積立金に対しては積立金に対する
法人税を課さないこととする等の措置を講じているのであります。
以上この
法案を
提出いたしました
理由及びその
内容の概略につきまして御
説明申上げたのでありますが、この
法律の
制定によりまして、かねて懸案の
資産再評価もいよいよ実施に移されることになるわけでありまして、各企業がそれぞれ適正妥当な再評価を行うことにより資本の維持、
経理の合理化が達成され、
日本経済の健全な発展に寄與するとともに、合理的な
税制の樹立に貢献するところ極めて大なるものがあることを期待する次第であります。
所得税法等の
改正に伴う
関係法令の
整理に関する
法律案について、その大要を申上げます。
従来、特別の法令において所得税及び
法人税を課さない旨の
規定を設けているものが相当あるのでありますが、今回、既に御
審議を願
つております所得
税法及び
法人税法の
改正案におきまして、これらの他の法令中の所得税及び
法人税を課さない旨の
規定を
整理統合し、それぞれ所得
税法及び
法人税法において
規定することを適当と認めたのであります。これに伴いまして、所得税及び
法人税の非課税
規定に関する
関係法令の
規定を
整理するため、本
法案を
提出することとしたのであります。尚、今回有価証券移転
税法が
廃止されることとなりましたので、これに関する非課税
規定をも併せて
整理することといたしました。
何とぞ御
審議の上、速かに御賛成あらんことをお願い申上げます。
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