○羽仁五郎君
委員会及び
委員長の非常な御尽力によ
つて、
参議院の本
委員会が大体御
決定に
なつた分の多くの
部分が
衆議院の
了解を得たと思いますが、それから残る
部分は先程
菊井課長から報告されました
部分についても、十分に尚
委員会及び
委員長の御尽力を願いたいと思うのであります。その理由につきましてはたびたび本
委員会において申述べましたので余り繰返しますことは恐縮でありますが、詳しくは繰返すことを避けますが、簡単にこの際もう一度慎重にお考えを願いたいと思う点だけの発言を許されたいと考える次第であります。で、私が申上げたいと思いますことは四つございます。
第一は
前回に
参議院の
委員会において大体多数の皆樣の御
賛成を得て、
衆議院側に申入れましたうちの第四十八条の
修正意見でありますが、即ち
選挙人であ
つて、
選挙の当日警察に抑留されている人に対してその
選挙権の行使をなすことをできるようにするという
修正案であります。これは
前回にも申上げましたように、第一にはその刑務所におられる人々に対して不在投票を認めておりますので、それとの公平の見地から警察におる人々に対しても投票の自由を行使することができるようにすべきではないか。
第二には、それに対して多少技術的な困難はありますが、併しこと苟しくも基本的人権に関することでありますので、たとえ重大な犯罪の嫌疑を受けた人であ
つても、その人の基本的人権を尊重することが、やがてその人々がそうした嫌疑が晴れ、又はその嫌疑が裁判その他によ
つて確定して刑を受けられた場合でも、その後に善良なる市民として更生せられるという
意味から国がそれだけの丁重な取扱をすべきではないか。で、その二つの点から
前回において多数の方の
賛成を得ましたので、現在
選挙に関する基本法が制定せられておりますときに、国会の殊に
参議院の高邁な識見というものを現わして頂く
意味から、重ねてもう一度
衆議院と
交渉をし、或いは
修正案というものに入れて頂きたいということをお願いいたします。
第二は、百二十七条に関する点であります。これはいわゆる現行法においては何人も教育上の地位を利用して未成年者を
選挙運動に利用してはならないと、こうありますのを、今回
衆議院において、教育者が学生を
選挙運動に利用してはならないというふうに改められたので、これは極く簡単に申上げますと、第一に現行法がその精神が全く失われたということであります。現行法では未成年者を
選挙運動に利用するということはよくない。なぜならば未成年者は政治上自由なる
意思というものを必ずしも持
つていると判断されておらないのでありますから、未成年者を
選挙運動に利用するということはよくない。これは例えば未成年者を政治上に利用した最も悪質な場合は、御承知のようにドイツのナチス、或いはイタリアのフアシズム、或いは日本の過去の侵略戦争時代に行われたことであ
つて、未成年者を通じて成年者の国民の政治上の判断を牽制するということは実に憎むべきことであります。何人も或いは親或いは教師というものは未成年者によ
つて動かされるという人情上の弱点があるために、未成年者を政治上に利用するということは現にナチスやフアシズムがこれを行
なつた悪例がまだ我々の記憶から決して拭い去られていない。そのときに我が民主々義下の日本の新らしい
選挙基本法において、未成年者を
選挙運動上に利用するということができるように改めるということは、これは許すべからざることではないか。
それから第二には、若しこの教育者のみをここで
制限するということになれば、これは教育者が持
つている教育上の地位というものと並んで考えなければならない。他の社会上それぞれ重要な影響力を持
つておる人々の、そういう影響力というものを
制限しないという点において不公平となる、これも避けなければならない。それから第三には、学生というふうにした結果、すでに成年者であ
つて政治上の完全な権利を持
つておる人の
行為をこれによ
つて束縛するということになる。これはすでに本
委員会においては随分前に皆さんの大多数の方々の御
賛成を得て
衆議院と
懇談会の席上にもこれを述べ、
衆議院の法制部長の
説明がありましたが、それらについて私は一々理論上の根拠を挙げて反駁し、その
懇談会に出席しておられた
衆議院議員の方々も
賛成をせられたのでありますので、どうかこの
修正案を維持して頂きたいと考えます。
それから第三は、第百四十六条、即ち著述、演芸等の広告が
禁止行為を免れる目的を以てなされる場合に、主としてその
候補者の氏名を広告することを以てするということを
制限すべきである。現行法においては「主として」という字があるのであります。この「主として」という字を削られたのは、たびたび
質問の結果明らかにな
つたのは、全く
法律の技術上その「主として」という字を必要としないというので削られたのでありますが、併しこの点については「主として」という字が現行法にあるのを削られたために、一般においてはこの制度が非常に厳しく
なつたというふうに感ぜられております。極く最近も実は中央公論その他の出版社から問合せが私の方に参りまして、依然として国会はこの「主として」という字をお取りになるつもりであるか、即ちその
質問の
趣旨は
選挙期間中における出版、演芸等の合法的な自由な活動というものを御
制限になるつもりであるかという
質問が参
つておりますので、事実一般にそう解釈され易い、又取締上そういうふうに取締られ易い、その
意味からやはり「主として」という字を入れて頂きたい。これも
衆議院との
懇談会の場合には、
衆議院議員の多数の方が「主として」という字を存しておいた方が親切であるという御
意見が多か
つたのでありますから、今一層御尽力を
願つてこの
修正案を維持して頂きたいと考えるのです。
それから第四は、この二百六十三条において、
選挙管理委員会が
選挙のときだけでなく、
選挙のないときにおいても
選挙及び政治思想の啓蒙について御尽力をして頂き、その
費用を国が負担するということであ
つて、これはたびたび
選挙管理委員会の方から本
委員会に対しても御希望があり、その御希望には十分の根拠があることでありますので、大した予算を増額する必要がないことでありますから、我々としては
選挙管理委員会に絶えずいろいろお世話に
なつておるのですから、ただこの要望にだけは是非応えて頂きたい。そういう
意味でこの
修正案も維持して頂きたい。
最後に第五に、二百七十条に関する点でありますが、療養所における人々の
選挙の自由、
選挙の権利、基本的人権を尊重せられます
意味から、是非この第二項、第三項を削られたい。で、この第二項、第三項は、
法律的に見ましても非常に曖昧でありまして、第二項においては或いは
選挙を
制限するごとくであ
つて、第三項においてはその挙挙の権利を認めるごとくに
なつております。こういうような、一方においてこれを奪い他方においてこれを認めるような第二項、第三項を置きますと、これは極めて主観的な解釈が行われ易いのであります。ですからこの第二項、第三項は全く
法律上、法文としても蛇足である。この二項、三項がない方が却
つて今諸君が立法せられようとしておる
選挙基本法の精神を誤りなく発揮するのであ
つて、この二項、三項があるために却
つていろいろな誤解を生じ、特にこの点についても全国のそれぞれの療養所からこの本
委員会に対しても陳情請願が多数の署名を以て出ておりまして、療養所で療養しておられる諸君が、恰も現在の国会によ
つてその
選挙権を著しく
制限され或いは奪われるかのごとき感じを抱いておるというようなことでは誠に面白くないと考えますので、これも多数の方方の御
賛成を得て
衆議院に申入れられておりますので、どうかこの点についても従来の態度を維持して頂きたいと考えるのであります。
以上各委員の良識に訴えてお願いをする次第でありますが、最後に一言を許されるならば、現在諸君が立法しようとしておられる
選挙法は、日本で初めてあらゆる
選挙について基本的な
規定をせられるのでありますから、その上にどうか現在の国会の理想民主々義的な識見の高さを発揮して頂きたいと考える次第でありまして、又その
意味から今申上げました五つの点について、特に皆樣の御
賛成を賜わりたいと考える次第であります。