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1950-03-13 第7回国会 参議院 人事委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月十三日(月曜日)    午後三時五分開会   —————————————   委員の異動 三月七日委員羽仁五郎君辞任につき、 その補欠として千葉信君を議長におい て指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件 ○政府職員の新給與実施に関する法律  の一部を改正する法律案内閣送  付) ○国家公務員職階制に関する法律案  (内閣送付) ○国家公務員給與問題に関する調査  の件 ○中小企業庁長官及び水産庁長官の罷  免問題の件   —————————————
  2. 中井光次

    委員長中井光次君) これより人事委員会を開会いたします。  先程來の打合会でお打合せいたしました職階制に関する法律案の取扱いにつきましては、お手許に差上げた資料に基きまして御勘考の上、明日改めて御協議を申上げたいと存じます。   —————————————
  3. 中井光次

    委員長中井光次君) それでは木下君から御質問がありますからこれを許します。
  4. 木下源吾

    木下源吾君 折角総裁が暫く振りで見えたのでお尋ねしたいと思うのでありますが、今職階制に関する法律案に対しては、これも段々最終段階に近ずきつつあるわけであります。そこでこの職階制は同時に給與の基準になる。で、かねての人事院お話によりますれば、現在よりも給與は下げないのだということが明確になつておる。そういたしまして、職階制ができまるするというと、いろいろ今までの凸凹というものが修正されるわけであります。つまり修正と言いますか、そういうものが段々正確になる。そうしますと、今までの上の者を下げないとしますと同時に、下の者が給與が高くなつて行くということが考えられる。そういうことが考えられる、そういたしますというと、この職階制法律が通過いたしますると、二十五年度予算にこれが至大な関係を持つて来るわけであります、この二十五年度予算に、それらの点を予算の中に考慮されているか。考慮されていると人事院がお考えになつておりますか。この点を一つお聴きして置きたいと思います。
  5. 淺井清

    政府委員淺井清君) 私の見まするところにおきましては、この職階制の成立ということを二十五年度の予算は考慮していないのじやないかと、こう考えております。ただ併しながら、この職階制法律にもございます通り、一応只今給與はそのままに、職階制の格付けを引継いで行く。こういう形を取つておりまするから、その点は一応はよろしいと、こういうふうに考えております。
  6. 木下源吾

    木下源吾君 まあその点は先きにすることにして、次にお尋ねしたいのですが、我々の手許政府職員の新給與実施に関する法律の一部を改正する法律案廻つて参つております。この法律案政府において提案しておるのでありますが、人事院と何らか連絡があり、おやりになつておるかどうか。これが提案されたものか、どうか。
  7. 淺井清

    政府委員淺井清君) その連絡というお言葉意味にかかつておると思うのでありますが、この法律案立案に関しましては人事院は一切関知しておりません。その理由は申上げる必要もないと思つておりますが、ただこのよう法律を出すから了承して貰いたいという通告を受けたのでございます。内閣の方から通告を受けました。若し連絡という言葉がこれに当りまするか、どうですか、存じませんが実情はさようになつております。
  8. 木下源吾

    木下源吾君 通告を受けましたことに対して、人事院が何らかの意思表示をしたかどうか。
  9. 淺井清

    政府委員淺井清君) それは意思表示を改めてせずとも、人事院立場は明確でございます。若しも……それより先にちよつと前置きをいたしますけれども、御承知ようにこの法律案は四月から給與が拂えるかどうかという問題を一応解決するところのものと考えております。つまり只今給與法は御承知ように三月三十一日を以て効力を失いまするからして、只今のままで捨置きますれば、四月から給與が拂えなくなるわけでございまするから、如何なる機関にもせよ、どこかでこの効力を延ばすか何とかする法律国会提案する必要があると思います。勿論国会御自身の立法ということも考えられるのでありますが、一応政府側から出す、若しその場合人事院がこれの立案を命ぜられましたならば、人事院といたしましては、第一條、即ち六千三百円ベースを七千八百七十七円ベースに替えるという改正案と共に、その法律案を出すより外はございません。従いまして若し内閣からただそれだけのお手許にありますだけの法律案立案せよと言われれば、これをお断りする外はございません。そういたしますれば、内閣側においてそのよう法律を御自分で立案せられる外はないように思つておりますから、この点は、人事院考え方は初めから明確であろうと思いますので、更め意思表示の必要はないよう考えるのであります。
  10. 木下源吾

    木下源吾君 只今の御答弁を承りまして、結局人事院はかかる法律案に対しては反対であるということに解決してよろしうございますか。
  11. 淺井清

    政府委員淺井清君) その反対という意味にかかつているのでございますが、若しも政府の意向が一ヶ年六千三百円ベース措置いたまま効力を引延すのである、こういうお考えならば固より反対でございます。併しながら給與上げ下げの問題はまだ未解決である。併しながら四月からどうしても給與は拂わなければならん、その応急措置というならば、人事院といたしましては何も申すところはないよう考えております。
  12. 木下源吾

    木下源吾君 今総裁お話では、この法律案提案するということの連絡はあつた。併しながらそれには何らの意思表示をしておらないのでありますが、独自の立場で、つまり主観的に、四月一日からの給與を容易ならしめるためにであろうというふうに忖度している、こういうよう考えておりますが、実はこの法律の内容を見ますと、二十五年三月三十一日から翌年三月三十一日ということが明確に謳われているわけでありまして、この面から見ましても、この一ヶ年は六千三百円ベース措置くのであるという意思表示は明瞭であると私は思うのであります。この点においても、尚総裁が先程言われたように、四月一日からの給與を円滑ならしめるためのみであると、やはり考えておるのでありますか。
  13. 淺井清

    政府委員淺井清君) これは余談に亘りますが、只今問題となつております賞與の問題に関して、人事院が取つている立場とよく似ているのでありますが、私は日本の従来からの慣例であるところの賞與というものについて必ずしも反対ではございません。非常に窮迫しております公務員生活幾分なりとも潤いますことは結構であります。併しながら政府が若しも給與ベースは上げないのだから、その代りとして賞與を出すのだということならば反対でございます、併しながらその給與上げ下げの問題とは別問題で、ただ公務員生活の窮迫を幾分でも楽にするために賞與制度を採ろうというならば、反対すベき理由はない、それと丁度話は似ているように思つているのでございます。
  14. 木下源吾

    木下源吾君 私の只今質問は、総裁はこの法律改正せられなければ四月一日からの給與の根拠がなくなるのである。であるからそれをつまり緩和するには、これより外にしようがなかろう。併しながら二十五年一ヶ年に亘つて六千三百円ということには反対である、こういうようにおつしやつておるのだが、実はこの現物は、法律は一ヶ年の延長を明確に出しておるということが、何よりも人事院のあなたのお考えになつておる一ヶ年据置ということを言つておるのですが、これについても尚四月一日からの給與を容易ならしめるということのあなたの御忖度が当つておるとお考えになつておるのかどうか、これをお尋ねしておるのであります。
  15. 淺井清

    政府委員淺井清君) 法律案の形で申しますれば、木下さんのおつしやる通りでございましよう。ともかくもこの法律は一ヶ年間現行給與ベース据置、こういう形になつておることは、これは法律案としては明確でございます。でございますから、その意味ならば人事院はこれに賛成はいたしません。併しながらここは只今直面しております問題といたしまして、ともかくこの法律効力というものを何程か延ばしませんければ、四月から給與が拂えないということはこれ又事実でございます。この点を御了承願いたいとと思います。
  16. 木下源吾

    木下源吾君 総裁お話は肝心なところが抜けておると思うのです。やはりこのように明確に出て来た場合には、連絡がありました場合は、今お話ようなことを政府にこれを一つ勧告するか、非公式の勧告というか、そういうことをせなければならんものと私は考える。人事院の意図することを実現するためにも、ひれが又公務員に対する親切であるわけなのですが、そういうようなことについては何らの、つまり話もしたことはない、こういうように受取られるのですが、そうではなくて何らかの話は、政府総裁の方から公式でなくてもせられたものと考えておるのですが、その辺はどういう、一つざつくばらんにお話を願いたいと思う。
  17. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を止めて。    〔速記中止
  18. 中井光次

    委員長中井光次君) 速記を始めて。
  19. 木下源吾

    木下源吾君 賞與に関する問題を先程お話なつた。これは人事院としては賞與制度反対すべきであるし、反対する建前で今日まで来ておると思うのでありますが、総裁お話では、今度は賞與そのものには敢えて反対しないという今の御答弁がありましたが、これらに関連して何か賞與でも出すのだという匂いを、何らかの形で人事院に分るよう方法政府がしておつたかどうか、この点を一つお尋ねしたいと思います。
  20. 淺井清

    政府委員淺井清君) その点に関しましては、私は政府態度に対して非常な不満を率直に申上げたい。この席に官房長官のおられないのは非常に私は実は残念に思うのでございますが、ともかくこの人事院という機関を設けまして、賞與制度を掌らせておりますのは、成るべく人事院にそういう賞與に関する問題はやらせる、こういう建前を無視できないと思つておるのでありますが、併しながら賞與制度に関しましては、昨年の場合も今年の場合も、何ら相談を受けたことはございません。尚近頃伝わつております給與審議会はどこまで具体化されつつあるお考えでございますか知りませんが、そういう点については、一切相談を受けたことはございません。
  21. 木下源吾

    木下源吾君 只今の問題については、尚官房長官も御出席を要求しておるのでありますが、総裁の言われるように、来ておらんことを非常に私も遺憾とする。いずれ官房長官内閣責任者をここへ来て貰つて、これは糺明したいと思つておりますが、飽くまでも只今お話よう反対であるということをはつきり一つつて頂きたい。ただ従来のよう人事院政府と闘うのであるとか、政争の具だとかいうようなことで、曖昧にしないよう一つここでお願いして置きます。  次にもう一、二点でありますが、現在の公務員一般職にふさわしくないものが、例えば林野庁の労務者のごとく、いろいろそういうものがございます。これらはやはり進んで人事院は調査せられまして、一般職から外ずすということ、又は公務員にふさわしくない者は除外してしまうとかいうようなことについて、お考えがあるか。若しあつたならば、それらについてどういうような現在進行状態にあるかをお尋ねしたいと思います。
  22. 淺井清

    政府委員淺井清君) その問題でございまするが、これはまあ余程根本的な問題になると考えております。一体只今の行き方といたしまして、公務員一般職であるということを原則といたしまして、そうでない少数の者を外ずす、こういうふうに考えております。つまり原則一般職で、例外が特別職だ、そこで只お示しようないろいろな問題が起つて来るのでございます。例えば林野関係労務者等は従来からしばしば問題になつておる。殊に国家公務員法が制定せられましたときと、その後の改正とにおきましては、一般職範囲が非常に只今示し点等に関して変つておるように思います。これはちよつとここで将来どのように取扱いまするか、確定的なお答えはでき難いのでありまするが、それは十分今後の研究問題にいたしたいと思つております。
  23. 木下源吾

    木下源吾君 すでに当初一般職原則とするというように決められた時期と、非常に今日違つておる。というのは、定員法ができまして、定員法が一律な首切のために、実際必要な者までもこれは現実に首を切られて、業務の遂行は困る、そのために、定員法のために特別にそういうものができておる場合も沢山あるのであります。これはその当時の一般職原則とするという事情と今日は非常に違つておるという事態を御覧になれば、もう分るのでありますから、速やかにこの情勢の変化に応じて、人事院においては善処して貰いたい、かように希望します。
  24. 淺井清

    政府委員淺井清君) 尚これは木下さんの方から申されて然るべきことと思いますが、最近問題になつておりまする地方公務員法における同様の範囲というものの釣合い等も考えまして善処いたしたいと思つております。
  25. 木下源吾

    木下源吾君 次に法律第百七十一号の廃止ということが閣議で決まつているように聞いておりまするが、第百七十一号の廃止について、これが非常に労務者に対する賃金問題に関係があるのですが、これについて何らか人事院で関心を持つておる点がございますかどうか。
  26. 岡部史郎

    政府委員岡部史郎君) 法律百七十一号の廃止に伴いまして、新給與実施法の第二十九條に改廃を加える必要が起つて来ることが予想されるわけであります。で、できるだけ改廃を加えたいと存じて検討をしておるのでありまするが、場合によりましては、これに直接に二十九條を改廃いたしませんでも、或いは人事院規則でやれる道がありはしないかということを検討いたしております。いずれにしろ、どうしても法律的な手続が必要があります場合においては、その方法を採らざるを得ません。そうでない場合においては、人事院規則でやり得る場合においてはやろうとこういうふうに考えて、今検討中でございます。
  27. 木下源吾

    木下源吾君 この問題は、御案内の通り一般職種別賃金というものの基礎がなくなるわけでありまして、それは数百万の労働者の非常に不安定を招来する問題でありますので、閣議決定により、この法律廃止実現されると同時に、これを救済する道、救済するということは単なる救済ではありません。一つ賃金制度としての維持をしなければならないと考えておりますので、その用意を怠らずに、同時におやりを願いたい、かよう考えております。
  28. 淺井清

    政府委員淺井清君) 実はそういう点も、若し今回の効力を延ばしまする法律案人事院立案をしておると仮定いたしますれば、只今の問題も当然その中に加えて出すべく、実は、すでに用意はあるわけでございますけれども、但しその場合は先ず第一條給與ベース改正條項を除いては人事院として出し得ないと、こういうことでございます。
  29. 木下源吾

    木下源吾君 如何なる事情があろうとも、百七十一條廃止になる場合においては、この一般職種別賃金というものの基礎が崩れないように、法律的措置、或いは規則等においてこれをやつて頂きたいと、この点を申上げておるのであります。
  30. 岡部史郎

    政府委員岡部史郎君) そういうよう考え検討いたしておるわけであります。
  31. 千葉信

    千葉信君 人事院総裁にお伺いいたしますが、先程の木下議員質問に関連いたしてでございますが、政府案の新給與実施に関する法律の一部を改正する法律案、これによつて四月一日から支拂えない給料を支拂うといふ政府方針に対しては、これは人事院参裁としては反対である、こういうことについては私も人事院としては当然の態度だと思うのでございますが、私は、人事院は申上げるまでもなく、一つ行政機関という形において、態度が消極的であつては、人事院が実際にやらなければならない責務を遂行したものとは思われない。例えば先程の場合におきましても、人事院としては当然公務員に対する給與ベースを改訂すべしということを勧告しておるわけでございますが、そういう場合に、総裁が先程言われたように、政府方針としてはどこまでもこの法律案を出して、これが通れば従来の六千三百七円のベースを強行して行こうという気持がはつきりしているわけなんです。これに対してやはり私は人事院としては当然、人事院の職能から言つてもつと積極的に、先程のお話では反対であるということはおつしやつておりますけれども、それの具体的な意思表示としては、人事院としてはなされておらない。こういうことについては私はやはりもう少し人事院としては積極的でなければ、本当に公務員福祉を擁護するという人事院立場というものを守つておらない、私はこういうふうに考えて、非常に先程の御答弁に対しては不満なわけなんです。私のお聴きしたいことは、実は今度公務員給與ベース改訂勧告後において、勧告に対して人事院はこれの実現のためにどういう措置を講ぜられたか、そのことを先ず最初にお聴きいたしたいと思います。
  32. 淺井清

    政府委員淺井清君) 少しく前置きを附けて恐縮でございますけれども、この勧告という制度は、事案として国会人事院が出し得るものではないのでございます。それから又この勧告が出ますれば、これを受けて国会の方で、これ勧告をお認め下さるという何かの措置をお採り下さることが、この勧告制度基礎でございます。又これは政府に対しましては、私は只今政府やり方に非常に不満でございます。即ち人事院勧告というよう制度、或いは国鉄の裁定でも同じことで設けてありますことは、これを一応尊重して行く、考慮して考えるということが建前でございます、凡そ法律はこの執行をいたします者が、善意を以て当らなければ、悪意を以てこれに当りますれば、これは始めから如何なる法律制度も問題にならないことでございます、従いまして人事院勧告が十二月四日に提出されたのでございまするが、この勧告が出ます前に、すでにもうベースは上げないのだというようなことを表明されたことは、私は非常に不満でございます。一応人事院勧告内閣が取上げて検討して、それから財政、その他の立場考えて研究されるのが至当のことであろうと思います。その意味におきまして、只今人事院が消極的であるということをお責めになりましたが、私はこの国家公務員法人事院に認められておりまする権限範囲内においては、十分努力を続けて来たことでございます。ただこの人事院勧告制度を頭から飽くまでも否定するよう態度を取つておる内閣やり方に対しましては、私ははつきり不満である、こういうふうに考えております。
  33. 千葉信

    千葉信君 只今総裁答弁に関連いたしまして、私は私の聴きたいと思うところが、実は総裁は御答弁になつておらないように思います。私は、具体的にはどういうふうに勧告実現のために人事院措置を取つたか、そのことを私はお伺いしておるのです。
  34. 淺井清

    政府委員淺井清君) 答弁が不十分で申訳ありませんが、その点でございますが、人事院は決してこれまでの勧告を放棄しようとは考えておりません。のみならず仮にその法律案通つたといたしましても、尚いろいろのデーターを研究いたしまして、適当のときに国会え報告もいたし、又更に新らしい勧告が必要と認めたときは合せて勧告をいたしますることは、これは国家公務員法で当然認められておることでもあり、為すべき業務であるよう考えております。それ以上どういうような手を打てば、これらかよろしいのかということは、ちよつとここで御答弁いたしかねると思います。
  35. 千葉信

    千葉信君 次の質問でございますが、人事院は若しこの政府勧告を履行しなかつた場合、これを実現させなかつた場合には、人事院としてはどういう措置を講じるつもりか。それから又同時に勧告の一部分だけが実施されて残余の部分残つた場合に、人事院はそれに対してどういう態度を取るつもりか、そのことについて総裁の御意見を承りたいと思います。
  36. 淺井清

    政府委員淺井清君) この勧告が容れられないという見通しのときにはどうするかという点については、只今申上げました通り、一層更にこの勧告実現いたしますよう努力をすると申上げる外はないのでありますが、ただこの勧告の一部が容れられ、他の一部が容れられないというのは、どの点をお指しになるか分らないのでございますが、この人事院勧告は全体として一体をなしておるものであつて、例えば早い話を、一番問題になる点を申上げますれば、給與ベースは上げてあるけれども、地域給は下げてあると、若しも政府給與ベースは上げないで、下げた地域給部分だけ受容れる。こういうようなことは絶対に私共は反対でございます。
  37. 千葉信

    千葉信君 今度の国家公務員法の第二十八條により勧告が、現在の状態では非常に私は見通しが困難な状態で、政府が頑迷に突つ張つておる状態だと思います。そうなりますと、一体この憲法の第二十八條で……、国家公務員法を改悪する場合に国家公務員から取上げた団体交渉権であるとか、或いは又罷業権であるとか、こういう権利の代償としての立場において、国家公務員福祉を擁護するという人事院の権能は、この勧告が蹂躪されるというようなことになつては全うされない。そういうことになりますと、これがやはりこういう状態になりますると、改めて私共はこの国家公務員法に対して考える必要があると思うのです。本当にそういう罷業権なんかを取上げた代償として、こういう勧告によつて公務員の利益を擁護するという立場を取つておりながら、それが実現しないということになれば、これはやはり国家公務員法のあり方について、我々は十分この際考えなければならないと思うが、人事院総裁は、この法律改正ということについて何らか御意見をお持ちになつておられるかどうか。
  38. 淺井清

    政府委員淺井清君) お示しように、一方において団結権が非常に制限されておる。そのため二十八條が入つておるという点は十分了解し得る点であろうと考えております。併しながらこの二十八條の限界と申しまするのは、人事院が何が科学的であるか、何が科学的な給與であるかということを勧告することを認めておるものでございまして、これを国家財政一般立場からどうか決定するかということは、これはその最高の権限国会にあるわけだ、こういうふうに考えております。従いまして人事院としてはこの二十八條に従つてなすべきことをしたわけでございまするからして、これは最終的には国会において然るべくお考えを願う外は、この制度上は止むを得ないのじやないか、こういうふうに考えておるわけでございます。でございまするからして、勧告実現しないということになれば、直ちにこの二十八條効力はない、或いは効力をなくしてしまわなきやならんということは如何なものでございましようか。私共必ずしもさようには考えておらないのでございます。
  39. 千葉信

    千葉信君 今人事院とそれから政府の両方の立場考えて見ますると、政府の方では賃金ベースを改訂しないということの理由一つとして、これは昨年の三月から実施したものであるから、その後における物価の変動を見ても、大体横這い状態である、こういう点について今日なんかも国家公務員給與に関する資料というようなものを作成して発表しているようでございますが、こういう政府の私は主張というのは、人事院の科学的な資料なり、或いは又本当に理論的な主張から較べると、むしろ政府のこういうふうな態度というのは私は非常に非民主的であり、而もむしろ暴力的な形においてああいう主張政府はやつているというふうに思いますが、併し一面から考えますと、私は事ここに至つた大きな原因はやはり人事院にも一つの過ちがあつたのじやないか。と申しますことは、御承知ように現在の六千二百七円が国会提案せられました当時は、その提案理由といたしましてこういう説明がございました。それは政府提案しましたあの給與提案理由説明の中で、CPIの、二十三年七月のCPIから十一月までに五%上つている。今後八%上るものと見通して、上つた場合にも適合するよう政府の五千三百円の賃金ベース提案するものだ、こういう御説明がございました。それが国会の中におきまして、御承知よう人事院勧告の線に副うて決定されたわけでございますが、その後私共はCPIがどうなつているかということを検討いたして見ますると、昨年の一月、もうすでに二〇・三%CPIが上つておる。そうすると最初の政府の五千三百円は勿論のこと、人事院といたしましてもこれはもう当然七月から較べると二〇・三%上つているということになれば、これは御承知でもございましようが、人事院政府勧告するようになつている二十八條建前から言いましても、もうこれは公務員給與というものは、二十八條の第二項から言いましても、五%以上の変動を来たしております。而も更にこれが昨年の三月頃までに更に上昇を続けておる。そして三月になつてから、例えば今政府が言うように本当に三月から物価が横這い状態に来ているにいたしましても、その三月までにすでに六千三百七円の基準となつ考えは崩壊しておる。そうすれば当然これは人事院としては昨年の十二月まで勧告を延ばしたごとき、これはまあ人事院のなされた措置というのは二十八條の第二項による措置つたと思いますが、その以前に第一項によるところの措置が、当然これはもうなされていなければならない。一年に一回以上国会に報告するその場合に給與ベース勧告をなす。第二項の方ではなく第一項の方で、すでに人事院としては当然もう勧告をしていなければならなかつた筈であつた。而もそれを人事院がなさないでおつたということは、私はこれはやはり人事院の非常に消極的な態度であるという点からいたしましても、そういう消極的な態度が今日の賃金ベースの問題を大きく展開させてしまつた原因ではないかと、私はこう考えているのですが、これに対して総裁の御意見を承りたい。
  40. 淺井清

    政府委員淺井清君) 最初にお示しになりました政府が申しておりますこと、即ち六千三百円ベースは二十四年の三月施行されておるということは明らかな間違いでございます。第一法律的に見ましても、それは二十三年十二月一日から施行するということは明確に書いてございまするし、人事院給與の公開審議をやりましたときに、当時大蔵省の給與局長でありました今井氏は、宣誓した証人として明らかに二十三年十二月に六千三百円ベースに達していたということを立証されておるのでございまするから、私は政府がどういうわけでかようなことを申すか、誠に不審に思う次第でございます。  それからいろいろ数字をお述べになりましたが、人事院といたしましては、この七月一日のデーターによつて、六千三百円をやつたのでございます。本回は更に七月から基準にして、その後の上昇を見るということは、これは当然のことがあろうと考えております。ただ消極的であるということについて申上げますれば、あれ以上早く人事院勧告をいたしますることは、この正確なるデーターを七月に取ります以上、どうしてもでき上るのが十月頃に相成ります。それからいろいろの手続をいたしますると、どうしてもあれより早くはできないのであるという事情は、一つ御了承を願いたいと思つております。ただもう一つ消極的ということに対しましては、すでに山下人事官等から申上げたかも存じませんが、政府給與白書等を以てこれを天下に公表した。これに対しまして人事院も亦給與白書を以て天下に公表したらば積極的であろうとお考えになるかも存じませんが、人事院といたしましては、建前は独立をいたしておりまするけれども、一応は内閣の所轄庁になつておりまするからして、政府給與白書に対し白書を以て対抗するということは如何かと思つております。ただ人事院は独立して国会に勸告し得る権限を持つておりまするから、その国会に対する勧告の補足資料として、この人事委員会等に幾らでも給與白書に等しきものを出すことは自由であろう、その傍らそれが公表されてももとより自由であろう。又このような席上におきまして、人事院側の我々といたしまして、十分その所信を披瀝することも自由であるというので、随分積極的に努力はいたして来たつもりでおります。
  41. 千葉信

    千葉信君 先程の総裁お話の中に、この人事院勧告というものは国鉄專売裁定におけるところの仲裁裁定と同様なんだというお話しでございましたが、私も全くこれに対しては同感でございます。御承知ように、国鉄專売におきましては、あの仲裁の決定を以て労働争議の平和的な解決を図るという趣旨でございます。国家公務員の場合におきましては、これは申上げるまでもなく、この人事院勧告によつて従業員の、公務員福祉をもたらすという建前になつておる筈でございますから、人事院勧告は直接專売の裁定と同じであるということに考えることは、総裁意見と同様でございます。そこで私は先程から人事院態度が非常に消極的であるということを何度も申上げて、総裁は御不満ようでございますが、尚私は重ねてその点について一つ申上げたい。ということは、昨年の十一月二十日の衆議院の労働、人事、運輸連合合同委員会の席上で、国鉄の仲裁に当りました末弘委員長がこういうことをおつしやつておる。当時の新聞に出ておりましたが、「裁定の精神が理由なしに踏みにじられるならば、仲裁委の職に留ることはできない。」こういう非常に強硬な態度を表明されました。私はこういう態度というものは、問題の解決に非常に有利に作用しておるのではないかというふうに考えておるのでございますが、只今総裁がおつしやつたように、この仲裁裁定の場合と同様の人事院勧告というものは、これは全く同様でございますばかりでなく、同時に末弘委員長立場というものと、人事院総裁立場というものとは非常に以ておるのではないか。その点について淺井総裁は末弘委員長言葉をどういうふうに感じておられますか。総裁の御意見を承りたい。
  42. 淺井清

    政府委員淺井清君) その点でございますけれども、仲裁の委員長と人事官の立場は多少違つておるように思います。又そのような東洋流の玉碎主義は、必ずしも人事官としては取りにくいというか、職を辞めまして解決することはございましようかも知れませんが、職に留つて飽くまで奮闘することも考えられます。そういうふうに御了承を願いたいと考えております。
  43. 千葉信

    千葉信君 最後に総裁にお願いして置きますが、総裁が今言われますように、玉砕主義によるよりも、最後まで踏み留まつて問題を解決したいという御所信については、私も同感でございますから、どうぞそのつもりで総裁一つ頑張つて頂きたいことをお願いして置きます。
  44. 木下源吾

    木下源吾君 段々お話を承つてつて、どうも痒いところに手が届かんようでございます。たまたま総裁は日本における憲法学者の雄でありますので、この機会にお伺いして置きたいと思いますが、生存権が確立されて、確保されるということは、公務員に取つては言うまでもなく賃金の充足であります。これは賃金の充足を保護するために、それを確保するためには、憲法の二十八條によつて労働の基本権、それが認められておる。ところが二十八條の基本権がです。十二條、十三條、憲法によつて公共の福祉のために労務を提供する者なるが故にそれが制限されておる。従つて公務員が生存を維持する、守るという権利を行使することはできないようになつておるのであります。ところがその代りに今の制度が設けられた。その制度を実施しないということになれば、私は憲法に二十五條に明らかに抵触しておるものと考えるのですが、あなたは只今前段に言うように憲法学者であられるのですが、その点についての見解はどんなものです。これを一つお伺いして置きたいと思います。
  45. 淺井清

    政府委員淺井清君) 誠に御尤もと考える次第であります。これは公務員に限つて公共の福祉のために、普通の労務者が持つておる権利が制限されておるわけでございますから、従つてそれだけその国民、雇主である国民に代つて、数十万の公務員を預つております政府としては、模範的な雇主でなければならん。こういうふうに考えておるのでございます。ただここに問題があるのでございますけれども、成程内閣やり方では惡いと、併しながらそれだからというて、許されていないストライキでも何でもこの際はもうやるべきではないかということになりますれば、惡いものが二つ集まつても良いものにはならないのでありますからして、その点は問題の限界があろうかと考えております。併しながら御趣旨につきましては私は或る程度御同感に存ずる次第であります。
  46. 木下源吾

    木下源吾君 総裁の今のお話の中に、政府は保護の義務を果さないから公務員がストライキをやるという問題ではないのです。生存権を確保する、守るために手段を奪われ、尚政府がこれを自分の責任義務を果さない場合においては、労働基本権の上にある生存権を擁護する立場に立つ者は、そういうことを行なつておる政府は憲法に私は違反しておるじやないか、抵触するんじやないか、この点をお尋ねしておるのであつて、従つてそういうことが明確になれば、進んで総裁は今のよう政府反対だとそういうような消極的な言葉ではなく、進んで政府を憲法違反で私はこれを追究することの勇気があつていいと思うのですが、それのために私はお聽きしておるのでございます。
  47. 淺井清

    政府委員淺井清君) そうなりますると、もう一つ憲法問題を考える必要があろうかと思つております。即ち憲法上人事院は、国会に対して連帶責任を持ておりまする内閣の下にある所轄庁でございます。その内閣の下にある所轄庁が憲法違反を以て内閣に反抗することが憲法違反でなかろうかと、もう一つ逆の方の憲法違反の問題が考えられますからして、御趣旨には非常に御同感の点が多いのでありまするが、人事院内閣に憲法違反を以て闘えと仰せられまするならば、これは又問題になろうかと考えております。
  48. 木下源吾

    木下源吾君 只今淺井さんから、私の趣旨には同感である。私は現内閣の、政府のやつておることは明らかの憲法二十五條に違反であるとういことを申上げたので、あなたから同感であるというお言葉を聽いて、極めて満足いたしました。つきましては我々は何らかの手段を以て、これを憲法を擁護しなければならん立場から手段を取るであろうということを申上げて置きますが、その場合にはどうか総裁は、他方においては憲法の権威者でありまするから、只今主張を堂々と一つおやりを願いたい、かようにお願いして置きます。
  49. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 公務員給與に関する問題については、木下君、千葉君からのいろいろ質疑に対して総裁から御懇切な御答弁があり、腑に落ちない点もありますが、大体今日はそれで了承して質問は差控えますが、ただ今日は久し振りに総裁が、お見えになつておりますから、私が平素考えておつた人事院について、公務員の任免、黜陟に関する問題について、御感想でもいいが、率直に一つ御所見を承りたい。御承知通り、先般中小企業庁の蜷川長官と水産庁の飯山長官が、恰も大根の首を刎ねられるように、極めて簡單に首を刎ねられてしまつた。この問題につきましては、実はその間にいろいろ……殊に蜷川長官の場合は、中小企業の三月危機説を唱えられたという理由の下に、閣議決定にしてこれを罷免する、併しながら蜷川長官は、罷免される前に自身でおやめになつようでありますが、最後まで辞職をしなかつたところの飯山水産庁長官に対しては、遂に公務員法の罷免権を発動してやめさせたと、これは公務員から見ましても、又国民全体から見ましても、実に私は不愉快な仕打ちであつたとこう考えておるのであります。新聞の伝えるところによりますというと、農林大臣の談として三つの事項を挙げておつたようであります。いわゆる服務規律に反する三つの事項、そのうちの一つの、俺の家に来んからということだけは抜きにして、農林省関係の幹部の会合に出て来ないと、それから俺に無断で北海道かどこかに出張したと、この簡單な理由で、あの罷免権を発動して昔でいうと懲戒処分に付した。実に残酷極まる仕方である。あの筆法で行くと恐らく何十万の公務員は一人も残らんと思います。そら遅刻した、早退けした、出張等で、それは或いは上司がおらずに黙つて行くこともありましよう。それは大臣も現にやつておる。そういうことを一々取上げて行けば、恐らく公務員の身分というものは保障されないと、こういうふうに考えておりますが、尚これを具体的に例を引いて申上げますと、昔の政友会と憲政会の二大政党のときに行われておつたことが、今日繰返さるるということを私考えますと、非常に公務員の身分保障のために心配をしておるのでありますが、これに対して総裁はどういうふうにお考えになつておるか、一つお聽きしたいのであります。
  50. 淺井清

    政府委員淺井清君) 只今の御質問は、私は非常に嬉しく拝聽する次第であります。何故ならば、初め国家公務員法が制定されまするときに、国会、殊に参議院であつたと思いますけれども、日本においては、政党の勢力というものは弱かつたのである。だから政党のスポイル・システムというものが官僚の中に入つて来ることはないであろう。よつてそれを防止するために、国家公務員法を制定するということは無用であろうという御論議があつたのでありますが、只今の御質問は丁度その問題がここに起つておるということを意味します。これを逆に申上げますれば、即国家公務員法並び人事院の存在理由が却つて明らかになるのじやないかと、こういう意味で、只今の御質問は非常に有難く拝聽したのでございます。そこで只今示し水産庁長官の問題に関して、只今私の所見をお質しになりましたことは、これはちよつと困るのであります。何故かと申しますと、人事院え提訴して来るかも知れません。その場合に人事院では公平委員会でこれを処理いたしまして、これを人事委員会にかけて決めるのでございますから、丁度裁判官が裁判の前に意見を発表することになりまするから、これはちよつと申上げかねると思うのでありますが、ただ一般論としては申上げて少しも差支ないと考えております。それは私は、これまでの日本の官僚と申しまするか、ビユロークラシーと申しまするか、それは幾多の欠点があつた考えております。殊に国会及び内閣に対して従順でなかつた。面従腹背的な態度を取つて来たということは認めざるを得ないと思つております。でありますからして、これからの官僚というものは、国会及び内閣に対して従順であるべきであります。併しながらそれがために一般職に属する公務員は身分を保障されておる。これは国家公務員法上明確な事実でございます。従いましてこれを罷免させます場合にも、ちやんと国家公務員法に明確に規定されておりまして、それ以外の事由ではその職を奪われることはない筈でございます。従いまして、それを不当に奪うということになりますれば、人事院といたしましては、これを保護する職責を発揮することに努めるより外はないと考えます。
  51. 岩男仁藏

    ○岩男仁藏君 実はこの公務員は国民の公僕であります。政党の公僕ではないのであります。ところが御用党が絶体多数を取るということになりますと、どうも協力しないと、協力しないということが官吏として正当の業務を果しているにも拘らず、協力せんということは、如何にも俺の方の政党、御用党のためにならない、こういうことでまあそこに感情も入りましようが、ばりばりやられては、公務員は立つ瀬がないものと私は思うのであります。日本が昔の源平の戦争、政党の争いの起らないように、提訴がありましたならば、極めて至公至平の立場において一つお裁きを願いたいということを特にお願いして置きます。
  52. 中井光次

    委員長中井光次君) 別に御質問もございませんければ本日はこれを以て閉会いたします。明日例の職階法に関しまして午前十時から会議を続行いたしたいと思います。これを以て散会いたします。    午後四時一分散会  出席者は左の通り。    委員長     中井 光次君    理事            木下 源吾君            小串 清一君    委員            吉田 法晴君            大山  安君            寺尾  博君            千葉  信君            岩男 仁藏君   政府委員    人事院総裁   淺井  清君    人  事  官 山下 興家君    人事院事務官    (法制局長)  岡部 史郎君