○
政府委員(
瀧本忠男君) それでは私から
人事院の
勧告につきまして御
説明申上げたいと思います。お
手許に差出してありまする
資料を
御覧になりながら、
説明を御聽取願いたいと思います。
先ず
最初にこの
勧告の
俸給表を
作成いたしました経緯というようなものをお話を申上げまして、そうして今回の
俸給表が従来の
俸給表に比べてどういうふうに変
つてやるかというような点も申上げたいと存じます。尚この
俸給表を
作成したわけでございまするが、これが現在の
経済情勢の下で考えた場合に、果してどういうふうに我々は考えているかというような点もお話し申上げたいのであります。
先ず
最初に
作成方法でございまするが、
人事院の
俸給表改訂の
勧告案の
作成をいたしました場合に、
基礎資料といたしましては、本年の四月に
人事院で行いました
民間給與調査というものがございます。この
資料と、それから
経済安定本部から出されておりまする
食糧需給計画、これは
昭和二十四年の七月から
昭和二十五年の六月まで、この間における
食糧需給計画、並びにそれに基きまする
国民一人
当りの
栄養摂取量、それから本年の五月に
総理府の
統計局において行われました
特別消費者価格調査、この
三つが今回の案を
作成いたしまする際における主要な
資料でございます。次に我々は昨年六千三百円
ベースの
俸給表を
勧告いたしました後におきまして、この
勧告案即ち六千三百円べースというものが、その後の
経済情勢にどういうふうに適合しているかというようなことを絶えず
研究してお
つたのであります。そういうことを
研究いたしまするためには、我々は一般に信用されておりまする
統計、即ち
労働省において行
なつておりまする毎月
勤労統計、それから
総理府統計局において行
なつております
消費者価格調査、いわゆるCPL、その
外各種の
物価指数というようなものがございまするが、そういうものを
長期観察をいたしまして、そうして
経済の
変動、即ち
賃金の
変動、
物価の
変動、
生計費の
変動というようなものを絶えず
観察を続けて来たのであります。併しながら
只今も申上げましたように、本年の
勧告の
基礎資料と
なつておりまするものは
民間給與調査、それから
食糧需給計画に基く
栄養攝取量、それから
特別消費者価格調査、こういうものでありまして、これは大体去年の六千三百円
ペースを算出いたしました所に用いました
資料とほぼ
類似のものであります。我々は六千三百円
ペースがこれが本当に現在の
民間の
賃金状況、或いは
物価事情、
生計費の
事情とどれくらい相違しているものであるかというようなことを的確に
判断いたしまするためには、やはりそれと
類似の
資料がなくてはならない。毎月
勤労統計、或いは
CPIというようなもので
観察しております間は、これは大体の動きとしてそういうようなものであるということは
分りましても、なかなかこういう
資料からは的確な
判断ということはできないのであります。
国家公務員法の二十
八條に基きますると、
人事院が
俸給表の額を五%以上げ下げする必要があると認めた場合に、こういうふうに書いてございますので、例えばいわゆる
スライデイング・スケール式のような、
CPIの五%以上げ下げした場合、或いは毎月
勤労統計を五%上げ下げした場合には直ちに
俸給表を上げるというふうは書いてないのであります。
かくのごときでありまして、我々が
給與算定に必要な
資料を全部入手し終わりましたのはこれは本年の九月中旬でございます。九月中旬におきまして使用し得る毎月
勤労統計の一番新らしい
資料は、当時におきましては本年の七月分の
資料が一番新らしい
資料として使い得たのであります。即ち我々が案を
作成……本当に六千三百円
ベースというものが現在の
経済情勢に合わない、
従つてこれは変えなければならないということを的確に
判断いたしましたのは、
只今も申上げましたように、この
算定の
基礎に
なつております
三つの
資料がほぼ揃いましたときにおいて初めて的確な
判断ができたわけでありまして、そのときに毎月
勤労統計で使用することができました一番新らしい
資料、即ち本年の七月の
資料、これを用いて
只今申上げましたような
民間給與調査でありますとか、その外の
資料を七月の
基準に調整したのであります。従いまして我々の
計算が七月を
基準としている、こういうことになるのでございます。
それで
民間給與調査というものはどういうことをや
つたかということを簡單にお話し申上げたいと思います。毎月
勤労統計というものが、これが單に
賃金の動向を長期的に
観察して行くという場合の
資料としては十分使い得るということは申上げるまでもないのでありまするが、毎月
勤労統計に出ておりまする
平均賃金というものが、やはり
民間長期の
平均賃金として
受取つていいかという点になりますと、これは多分に疑問があるのであります。即ち毎月
勤労統計におきましては、
我が国の
事業場中百人以上の
事業場はこれは全部調べることに
なつております。それから
事業場の
規模が三十人以上百人未満というような
事業場につきましては、その一割の
事業場を調べるということに
なつておるのであります。そうして三十人以下の
事業場はこれは全然調べてございません。ところで現在十分な
資料があるわけではございませんが、
規模別に
事業場の
賃金水準というものを見て参りますと、
規模の小さい程
賃金水準が低くなるという
傾向が現われているのでありまして、この
傾向はこれは例えば
労働省において行いました
賃金調査等によりますと、はつきり現われているのでありますが、そういう
事情があります際に、百人以上の
事業場を全部調べたようなそういう
平均賃金というものが、これが
民間の
賃金の
平均の
水準であるというふうにはなかなか受取れない。又
民間の
事業場におきまする
労務者の
構成、
労務者と
職員の
構成、或いはそういう人々の
年齢構成、或いは
男女構成、こういうものをいろいろ考えて見まする際に、
政府の
職員と必ずしも同じでない。
民間と均衡が取れたということは一体どういうことであろうかというふうに考えて見まするに、これは
政府において行
なつておりまする仕事の
内容、いわゆる
職務の
複雑、
困難性、
責任の
程度というようなものと、
民間で同じような
職務の
内容、或いは
複雑、困難なる
程度、
責任の
程度、こうい
つた同じようなものを比較して初めて
民間の
賃金と
官庁の
賃金とがどつちが高い低いという比較ができるのであります。
只今申上げましたようなわけでありますから、毎月
勤労統計の
値いそのものを取
つて見まして、これで
官庁賃金を比較しようとすることは大凡無理があるということは明らかであります。従いまして我々はこのような
調査をやりました、即ち
官庁の
職務と同様の
職務内容を有しまする職種をピツク・アップいたしまして、そういうものを
民間において調べた。我々は約四千の
職員につきまして
民間調査をしたのでございまするが、この四千の
職員を整理いたしまして、一級乃至十四級、こういうふうに分けたのであります。即ち
官庁の
職務の一級乃至十四級に該当いたしまする
職務の
困難性、或いは
責任の
程度というものとほぼ同様の
職務内容並びに
責任の
程度を有しておりまする
民間の
作業を
調査した、そういう
作業においては一体幾らの
賃金が取られておるであろうかということを
調査いたしました。
かくのごとき
調査におきまして初めて
官庁の一級乃至十四級の
賃金というものと、
民間のそれと同様の
職務の一級乃至十四級の
賃金というものが比較できるわけであります。お
手許に差出しております
資料のうち十六ページに我々がやりました
調査の概略が掲げてございまするが、十六ページの一番右の欄に掲げております
数字、即ち三千五百九十三円、一級でございます。二級の四千百三円、それからずつと参りまして十四級の二万百九十八円、この
数字が我々が
人事院において行いました本年四月の
民間給與調査の結果からこれを七月の
値いに直した、而も
民間の
給與額というものの中にはいろいろの要素が含まれておりますから、これを
官庁の
俸給表に掲げてありまする類と比較し得るように調整したものであります。即ち
官庁に相当いたしまする
家族手当の額を控除し、又
特殊勤務手当に相当いたします額を控除し、そうしてこれを補正し、これは四月現在の
数字でございまするが、これを毎月
勤労統計の
上昇率を用いまして七月の
値いに直したのであります。その
数字が一番右に掲げた
数字、こういうことになります。我々は
かくのごとくいたしまして、初めて
官庁のこの
級別の
賃金というものと、当時における
民間の
賃金というものを的確に比較することができるということになるのでございます。
次に今回の
勧告案の
基礎に
なつておりまする
基礎数字は、先程も申上げましたように
経済安定本部で作
つておりまする
食糧需給計画に基く
国民一人
当りの
栄養攝収量、即ち千八百九十四
カロリー、今度は七ページを
御覧願いたい。
経済安定本部におきましては、
昭和二十四年の七月から
昭和二十五年の六月の間におきまして
我が国の
食糧生産事情はどういうふうであるということ、又
輸入食糧がどういうふうに予想されるかというようなことを勘案いたしまして、そうして
国民一人
当りの
食糧需給計画というものを立てておるのでありますが、その
食糧需給計画に基きますると、
国民一人
当り一日千八百九十四
カロリー攝取が可能である、こういうことに相成
つておるのであります。尤もこの千八百九十四
カロリーというものはこれに
国民一人
当りの
カロリーでございまして、この中には大人もおりまするし、子供もおりまするし、或いは老人もおりまするし青年もおる、いろいろの者がおるわけでございます。而もこれはいわゆる
グロスの
カロリーと申しまして、
食糧というものは大
凡可食部分と
廃棄部分とこうあるわけであります。それは
食品によ
つて違うのでありますが、これを
平均して見まするというと、
可食部分というものは何割か内輪になるわけであります。この千八百九十四
カロリーというものをこの
可食部分で
計算いたして見ますと、千八百四十九
カロリーということになるのでございます。尚千八百四十九
カロリーに相当いたしまする六三
ベース算定の
基礎になりました
数字は、その左に書いてありますように、これは千八百五十
カロリーでございます。この千八百五十
カロリーの
可食部分だけを
計算いたしますと、いわゆるネツト・
カロリーは千八百四十九
カロリーということを申上げたのでありますが、これは
成年男子一人に換算いたしますればどうなるかと申しますと、二千二百八十五
カロリーということになるのであります。昨年の六三
ベース算定の際に用いましたこれに相当いたしまする
数字は二千二百
カロリーでございます。即ち本年度は
成年男子が、ネツトの
カロリーにおきまして昨年よりも八十五
カロリー殖えておるということでございます。即ちこの点は昨年よりも余程
食糧事情が好転しておるということであります。この二千二百八十五
カロリーは
官吏を含めまして
国民全部に許された
数字であります。ここでこういう問題が起きて参ります。
給與ベースを
算定する場合、去年と
違つた基礎を用いては話にならんじやないかということが起きるのであります。これは一応尤もな御疑問と思うのでありますけれども、併しながら
国民全体が許されておりまするならば
官吏も又この
数字が許されて然るべきではないかというふうに我々は考えております。尚
成年男子が軽労働に従事いたしまする場合に一日に必要な
カロリーは二千四百
カロリーということに
なつておるのでありまして、この二千二百八十五
カロリーという
数字はまだまだ我々の標準的な
要求には満たない
数字であるということを附加えて申上げて置きます。この二千二百八十五
カロリーを
基礎といたしまして、いわゆる
マーケツト・バスケツトというものを
作成したということであります。
マーケツト・バスケツトとはどんなものかと申しますと、これは二千二百八十五
カロリーを攝取いたしまする場合には、具体的にはいろいろな
食品を取るわけであります。例えばその
食品が持
つております
カロリーを合計して見ると二千二百八十五
カロリーになる、こういうわけであります。即ち二千二百八十五
カロリーを取るのに必要なような
食品の配列と言いますか、量まで考えました
食品の分布と言いますか、そうい
つたものを我々は作らなければならない。而もそれを作ります場合に勝手なことはできないのであります。これは
経済安定本部の
食糧需給計画に基きまして、例えば米の
生産並びに
輸入というものはほぼどれくらいである、
国民一人
当りの
カロリーはどのくらいであるかということが決ま
つております。従いまして、そういう
範囲内において我々は
マーケツト・バスケツトというものを作らなければならない、こういうことがあるのであります。この
マーケツト・バスケツトを
作成いたします場合に、我々は
厚生省の
栄養調査というものを用います。この
厚生省の
栄養調査というものによりますれば、これはいろいろな世帯がいろいろな
食品を取
つておるわけでありまするけれども、この
調査世帶のうちで五%以上が取
つておるような
食品だけを選び出しまして、そうしてそれらを適当に
食糧需給計画の
範囲内で量まで決めまして、そうして
マーケツト・バスケツトというものを
作つたのであります。この
マーケツト・バスケツトというものができておりまするならば、そのときどきの
実効価格を
食品別によ
つて合計いたしますると、所要の
金額が出るということになるのでございまするが、そのようなことを我々は
東京都の
実効価格を用いまして
計算したのであります。その
数字がその下に書いてございます六十八円十一銭、一日一人
当りがこういう
数字になるのであります。一日一人
当りが六十八円十一銭でございまするが、これを一月に換算いたしまするのにこれを三百六十五倍いたしまして、そうして十二で割る。これは年間の月に長い月と短い月がございまするが、これを
平均する
意味においてこういうことをいたしたのであります。去年のこれに相当いたしまする
数字は千七百四十二円八十二銭という
数字でございます。昨年はこの算出の場合に三十一倍いたしました。ところで我々は今
東京の
マーケツト・バスケツト、七月現在の
マーケツト・バスケツトを得たのでございまするけれども、これを実は
俸給表算定の
基礎にするためには、
勤務地手当の附かない
地域に換算しなければならないという問題が起きます。ところで我々はこの
計算をいたしまする過程におきましていわゆる
CPSというものを非常に
基礎にして考えておのでありまするから、
東京の値を
CPSにおけるいわゆる小
都市に一度換算するのであります。そうしてそれを更に
勤務地手当り附かない
地域に換算する。
計算の都合上そんな面倒な
方法を探
つたのでございます。我々が
生活して参りまする際に
食料費以外に
被服費でありますとか
住居費、
光熱費、
雑費、こういうものは当然必要に
なつて参ります。本当の
意味における
マーケツト・バスケツトというものはこういうものまで勘案したものでなければならないということは申上げるまでもないのであります。併しながらこういうものまで入れた
マーケツト・バスケツトというものはなかなか作りにくい。従いまして我々はこの際はこういう
被服費、
住居費、
光熱費、
雑費というものにつきましては
CPSにおけるいわゆる小
都市の
平均価格というものから一人
当りの額を
計算して出したのであります。その
数字がそこに掲げておりまするように、例えば
被服費でありますると三百二十六円、
住居費二百八十五円、
光熱費三十八円、
雑費八百九十三円、小計千五百四十二円、こういう
数字になります。
東京で作りました
マーケツト・バスケツト、
CPSの小
都市において作りましたこの
食料費以外の費用、こういうものを更に小
都市に換算いたして見ますると、その合計が三千百五円という
数字になるのであります。この三千百五円という
数字はこれは
生活をして行くためにどうしても手取りで必要な
金額ということになります。ところで我々は
給與を得まするとその中から
共済組合の掛金或いは
厚生年金というようなものが出るのは勿論でありまするし、又
所得税というものががか
つてそういうものが差引かれる。その残りが三千百五円ということになるのでございますが、それではそれが三千百五円になるためには我々の
グロスの
賃金はどれだけが必要かということに
なつて参りますとこれは三千六百六円ということになるのであります。
勤務地手当の附かない
地域におきまして本年七月において
成年單身男子が現在の許された
食糧需給計画の
範囲内において
生活いたしまするためには、三千六百六円の
賃金が必要である、こういう
結論を得たのであります。従いましてこの
数字と先程申しました
民間給與調査の二つの
数字を
組合せまして我々は
俸給表を
作つた、こういう次第に相成るのであります。そこでこの三千六百六円を昨年のこれに相当いたしまする
数字、即ち二千四百七十円と比較して見ますると、相当に大巾な増額に
なつている。この点は非常に注目して頂きたいと思う点であります。ただ問題はこの
計算の
基礎に
なつておりまする
カロリーというものが昨年と今年は違うということであります。それと同時にこの
勤務地手当の附かない
地域というものが昨年と今年は違
つているのであります。このことは我々は
CPSというものからこの
地域差指数というものが
計算されておりまするが、それをずつと昨年以来
観察しておりまして
地域差というものが次第に減少しつつあるということを
知つてお
つたのでおりまするが、本年五月の
特別CPS、全国三百八十一部市に
調査して見たのでありまするが、その結果を得まして、初めて
東京に対しまして
地方の小
都市、
町村というようなところの
生計費というのもは、非常に
東京に近づいておるという事実を確認いたした次第であります。このことは
勧告の本文中にも書いてございまするが、輸送が非常に円滑に
なつたというようなこと、その外いろいろ
事情がありましようが、とに
かく東京と
地方の小
都市、
町村との
生計費が漸次近づきつつある。昨年の現在におきましては、その差が三割が妥当であるというふうに考えられたのでありまするが、本年の七月においてはこの差が二割でよろしいというふうに考えられたのであります。従いましてこの三千六百六円が
計算されておりまする
地域というものはこれは
東京に比べて二割だけ低い、
生活費が低くて済むという
地域がと
つてある。昨年の二千四百七十円の場合におきましては、
東京に比べて三割だけ低い
地域である。従いまして、二千四百七十円と三千六百六円は対比されるべきものでありまするけれども、その基盤というものは相当違
つておる、こういうことをお認め願いたいと思うのであります。
只今この
地域差というものが漸次減少しつつあるということを申上げたのでありまするが、それに関連いたしまして、従来の
地域給というものの決め方が如何に不
合理であ
つたかということを本年の五月の
資料によりまして我我
研究したのでありまするが、その
状況を十ページに掲げてございまするからついでに
御覧置き願いたいと思うのであります。十一ページの
絵図を
御覧になりますると、
特地、
甲地、
乙地丙地というものがそれぞれ
違つた線で示してございます。若しも従来の
地域差というものが的確に現わされておるといたしまするならば、例えばここに示してありまする
数字はすべて
東京を一〇〇といたしまして、そうしてその
都市がどのくらいの
東京に対する
指数に
なつておるかということを表示してございます。この
絵図の縦の軸は、
町村、
都市の数、それから右に向いまして、
東京を一〇〇とする
指数が掲げてございまするが、こういう図面における従来の
地域の
区分というものがうまくで来ておりまするならば、これは
特地という所はこういう右の方にかたま
つて出なければならん。それから
甲地がかたま
つてその次に出る。
乙地がかたま
つて出る。
丙地が左の方にかたま
つて出るということでありまするならば、従来の
地域区分というものはこれは
合理性があ
つたというふうに一応考られるのでありまするけれども、この
絵図を
御覧になればお分かりになるように、
特地も
甲地も
乙地も
丙地も重なり合
つておるのであります。即ち従来の
地域区分というものは凡そ出たらめであ
つたということがこの
絵図でお
分りになる。理由なくしてあの当時、いわゆる
組合の力が強いところがこの高い
地域を獲得したということがあるかも知れませんが、これは凡そ
生計費とは
関係のないことでありまして、
地域差というものはやはり
生計費が
東京に比べてどのくらいあるかということが元になりまして
計算されるべきものであります。ところが、その観点から見ますと、凡そ
意味のない分類に
なつてお
つたということが、この
絵図を
御覧になるとはつきりお
分りになるというように考えるのであります。
かくいたしまして、我々は従来の
地域給というものをもう一度白紙に返して考え直さなければならない、こういうことを考えておる次第であります。
以上のごとくいたしまして、三千六百六円という
数字とそれから
俸給表の基になりまする先程十六ページで
御覧願いました一級乃至十四級に相当する
民間賃金というものは七月現在においてどういう
数字であ
つたか、こういうことが二つ分
つたわけであります。この二つの
数字を
基礎にいたしまして我々は
俸給表を
作成いたしまして、二千六百六円という
数字がこの十六ページの
数字を
御覧願いますと、一級の三千五百九十三円、二級の四千百三円、この間にあるということは明らかなことであります。即ち
成年單身男子が
生活に要しまする
賃金三千六百六円というものは一級乃至二級に定めたらいいということが分るのであります。
ところで、我々は本年この
東京にあります各省各庁において、五級以下の
職員を全部調べ上げまして、そういう人々の年齢或いは扶養家族を持
つておる
程度というようなものを調べたのであります。その結果は、二級職というものが満年齢で十八歳、それから扶養家族が殆んどないという事実を発見いたしました。これはこの差上げてありまする
資料の中にそういうことが書いてございまするから、又お暇のときに
御覧置きを願いたいと思うのでございまするが、二級職はそういうものであります。十八歳と言いますと、労働
基準法等によりますると、これは準成人として取扱われる年齢であるのでございます。又現在の二級一号の任用資格というものはどういうものであるかと言いますと、新制中学校を卒業いたしまして一年乃至二年経
つた者が任用されるという
基準に
なつておるのであります。このようなことを勘案いたして考えまする際に、我々は三千六百六円を二級一号に押えることが適当であるという
結論に到達いたしました。それから十四級職の二万百九十八円、これを七十号に一応想定いたす。これはちよつと無理でございます。十四級職は六号に分けておるのでありますから、七十号と押えることは多少無理があるのでありますけれども、我々は七十号と押えたのであります。この二級一号、即ち通しの号俸で申しますならば三号俸、三号俸を三千六百六円と押え、七十号俸を二万百九十八円と押えまして、そうしてその間を等比級数で結ぶ。そういう言葉はむずかしいのでありますが、お
手許に差上げてありまする
資料の二十八ページに図表がございますから、それを
御覧願いますれば、口で申上げますよりはつきり分るのでありますが、二級一号を三千六百六円、七十一号を二万百九十八円というふうに押えまして、その間を等比級数で結ぶ。何故等比級数で結ぶかと申しますと、
職員の昇給というようなことは、従来の
統計を解析いたしてみますると、これがほぼ
指数函数で結ぶのが一番適しておるということを我々は
知つておりました。これを
御覧になりますれば、そのことはもうおのずから明らかなのでありまするが、この
民間給與の三千五百九十三円、四千百三円から二万百九十八円というものは、これは期せずしてそういうカーヴに
なつておる。我々はこの三千六百六円から二万百九十八円というものを結ぶ等比級数の線を作
つてみますると、これが大体このカーヴの彎曲において
民間の実際の
状況とほぼ合するのであります。
かくのごとくいたしまして、我々は俸級表を
作成した。尚そこに図表に書いてございまする下の
数字が現在の
俸給表の額でございます。これをこのように上げようということが今回の目的である。
かくのごとくいたしまして、俸級表を
作成したのでありまするが、その俸級表が昨年と比べましてどういう
状況に
なつておるかということを掲げておりまするのが二十一ページでございます。二十一ページから二十二ページに亘
つて第十四表を掲げてございまするが、ここにおきましては一号乃至七十号俸に相当しまする六三
ベースの額と新俸給額とを並べて書きました。そうして一行置きまして、この俸級額から新俸給額がどれくらい増額したかということを
数字を掲げておるのでありますが、一号あたりにおきましては四二・七%の増額と相成
つております。それからずつと見て頂きますと、その
数字は漸次減少いたしまして、例えば三十号俸くらいになりますと、三二・六%というようなこと、これがずつと次のページに亘りまして七十号俸のところに
なつて参りますると二〇%、こういうふうに今回の従来の俸級額に比べて増加率を見てみますると、号俸の進むに従いまして漸減しておる。こういう
事情があるのであります。このことは大変問題があるところであろうというふうには考えまするが、とに
かく我々は
民間の
給與というものを参考にいたしまして、今回の
俸給表を
作つた結果は、このように相成
つておる。これを結果的に見てみますると、今回の
改訂におきましては号俸の下の方が随分優遇に
なつておるということが言い得るというふうに思うのであります。
かくのごとくいたしまして我々は
俸給表を
作つたのでございますが、この
俸給表の中で一番
基礎になりますものは一般
俸給表であります。これは
勧告の本文の八ページに一般の
俸給表がございますが、このような
俸給表ができたわけであります。この一般の
俸給表は従来の
俸給表に比べますと、少しく形が変
つた点がございます。それはどういう点かと申しますと、この一般
俸給表におきまして、二級乃至六級のところの号俸が一号乃至十号というふうに相成
つておるのであります。古い現行
俸給表におきましては二級乃至四級のところが七号まであ
つたのであります。即ちこの間が延びております。これはどういうことかと申しますと、これは現在二級乃至四級というあたりにおきまして、相当頭打ちの人がおるわけであります。こういう人を救済するために特に号俸が延ばしてある、こういうことに
なつております。尚六級及び十級というところに、当初の号俸でいいますと飛んでおるところがあります。それは現在の俸級表におきまして、六級の一号から二号というのが当初の号俸でいいますと二十一号から二十三号、それから二号から三号のところが二十三号から二十五号というふうに飛んでおるところがあるのであります。それから十級のところにおきまして、十級の一号が当初の号俸で四十三号、二号のところが四十五号、三号のところが四十七号、ここも又二号ずつ飛んでおるところがあるのであります。このようなことは少しおかしいのでありまして、理由なくしてそこが二号飛んでおりますために大巾の昇給をするということに
なつております。このことは不公平な点がございますので、今回はそれを改めるという措置をとりました。号俸はスキツプしないという措置をとりました。今回の
勧告の中には特に検察官の俸給というものを新しく作るということになりました。これは検察官は一般職であるから従来四十六号以外の法律で
規定されてお
つたのでありますが、そういうことは無
意味である。今後は成るべく
俸給表をかためましてや
つて行くのが
合理的であるという
意味におきまして、検察官等の俸給も四十六号法律に含めるのがよろしいということになりまして、新たにそれが加わ
つた次第であります。
かくのごとくして我々は俸給を漸次……その
俸給表が持
つておる性格というものは概略
只今申上げた次第でございまするが、尚お
手許に差出してあります
資料の二十六ページを
御覧頂きますならば、新俸給額によりまして新
給與案によります実際の手取りなどはどういうふうになるかというようなことをとびとびに示しております。これも又お暇なときに
御覧を願いたいというふうに考えるのであります。以上のごとくいたしまして、我々は
俸給表を完成いたした次第であります。一体この七月現在で考えておるものが現在通用するのであるかどうか、又一部の方とは本年の四月以降においては闇
物価も相当下落の
傾向に向
つておるし、すべて
生産は順調であるし、昨年ドツジ・ラインが行われまして以来漸く四月以降にその実効を現わし、
経済が安定しておるにも拘わらず今こういうことをやるのはおかしいじやないかというような御見解がある向きもあるのであります。我々は長期
傾向といたしまして、
物価の動向、
賃金の動向、或いは
生計費の動向というものを見ておりますと、これから約半年間に亘りましていろいろな
状況があるのでありまるけれども、そういうものをすべて勘案して考えて見ますると、
賃金も先ずそう下ることはない、先ず先ず持合いであろう。これは少しく下るであろうと
観察することもできまするし、或いは少しく上るかも知れんという
観察もできるのであります。先ず先ず持合いであろうと我々は
観察いたしております。それから
物価にいたしましても、闇
物価が現在下
つておるという
状況はございまするが、併し今後におきまして各種の補給金が削減せられるというような
事情も予想せられまするし、又米価或いは運賃というものの
改訂が行われることもまあ今後相当確実に予想し得るところでありまして、こういうことを勘案いたして見ますると、闇
物価と雖も必ずしも今の価格の下落の
傾向が続いて行くというふうには考えられないのであります。むしろここ数ケ月間は持合いを示すのではないかというふうに考えております。まあ
生計費の
事情等にいたしましても、これ又余り大きな変化がないという見通しを持
つております。現に我々は七月以降における各種の
資料を検討しているでありまするけれども、我々が作りました
俸給表というものが、七月以降において非常に高過ぎる、或いは安過ぎる、それで工合が悪いというふうには考えておりません。ここ数ケ月間は現在の
事情でよく適するものであるというふうに考えておる次第であります。我々は現在の
公務員の窮乏の
状況を見まする際に、このような
給與改訂ということが一日も早く行われるということを希望せざるを得ないという現状にあるわけであります。何とぞ
只今申上げましたような点をお酌み取り願いまして、今後もいろいろ御検討を願いたいと考えます。以上を以ちまして御
説明を終ります。