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1950-03-27 第7回国会 参議院 在外同胞引揚問題に関する特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月二十七日(月曜日)    午後一時三十六分開会   —————————————   委員の異動 三月二十七日委員草葉隆圓君、池田宇 右衞門君、伊東隆治君及び紅露みつ君 辞任につき、その補欠として今泉政喜 君、岡田喜久治君、淺井一郎君及び大 隈信幸君を議長において指名した。   —————————————   本日の会議に付した事件在外同胞引揚問題に関する調査  (所謂徳田要請事件に関する件)   —————————————
  2. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 只今から委員会を開会いたします。  本委員会残留実態調査を継続して参りまして、尚去る二月十四日に久保田善藏君外三百六十八名から本院議長宛に徳田要請問題に関する調査懇請がありまして、今日まで鋭意調査に当つたのでありますが、大体先週土曜日に委員長理事打合会を開きまして、お手許に配付してありますような案を一応作つたわけであります。これを報告書として提出することをばこれからお諮りして行きたいと思うのでありますが、その前に、只今手許にお配りいたしました調査経過概要の中で、多少字句をば挿入して頂きたい個所がございますので、簡単な点でございますので、挿入方をお願いいたします。調査経過概要のところで、後から三行目の「各種事象があつたことも逐次に明白となつた」。その次にちよつと書き入れて頂きたいのであります。「又二月十四日には久保田善藏君外三百六十八名より本院議長宛いわゆる徳田要請問題に関する調査懇請があり」。それだけを入れて頂きたいのであります。続いて「本件に関し、」となります。  尚この際、委員長理事打合会におきましてできました案に対して、これを報告書として提出することにいたしたいと思うのでありますが、御意見のあります方は、この際意見の開陳を求めます。
  3. 中野重治

    中野重治君 その前にちよつとお尋ねするのですが、これは質問はやらないのですか。これに書いてあることは、非常に分らないことが沢山あるのだが、何を意味しておるのか、つまり或る事柄について意見を述べるためには、その或る事柄それ自体が明らかになつていなければならない。然るに私の見るところでは、これに印刷されておる事柄それ自体が明瞭でない。それについて質問したいと思うのですが……。
  4. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 尚一応中野委員に申上げて置きますが、一応の御意見を承わりますと同時に、報告書は、少数意見報告ができるわけですから、その点もよくお含み下さいまして述べて頂きたいと思います。
  5. 中野重治

    中野重治君 その点は勿論含んでおりますが、少数意見報告をするためにも、少数意見を提出するためにも、これが多数意見になるかどうかは知らないけれども、その基の、それを仮に多数意見とすれば、多数意見そのものが明瞭でなければ、それに関する少数意見も作り上げられないということは委員長よく御了解だろうと思うのです。若し少数意見の提出が自由であるからというので、それでないところの報告原案そのもの内容を明らかにすることを許さないとすれば、それはやはりその原案そのものが曖昧な性格帶びるのですから質問ということをここで一応やつて、そうして原案性格が明確になつてからそれについての各委員意見を述べるというふうにして貰いたい、こう私は要求したい。
  6. 門屋盛一

    門屋盛一君 今ここへ印刷で出されたものを委員長中間報告として、本会議でこういう報告をしたいという委員長の御提案なんですか。
  7. 岡元義人

    委員長岡元義人君) いや、中間報告書として提出する報告書について今お諮りしておるのです。
  8. 門屋盛一

    門屋盛一君 だからこういう報告を本会議にしたいという、本会議でする報告書をここで審議しているわけですね。
  9. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 門屋さんに申上げますが、それは報告書委員長報告とは又別になると私は考えます。門屋委員のおつしやる本会議における委員長報告というならこれは又別なんで、一応報告書として出すか出さないかという案を今お諮りしておる。並びに……。
  10. 門屋盛一

    門屋盛一君 どこへ出すのですか。
  11. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 議長宛に出すのです。
  12. 門屋盛一

    門屋盛一君 議長宛にこれを報告書として出す、そうして又その取扱順序を皆の納得行くように言われた方がいいでしよう。これを議長宛報告書として出して、更に委員長報告をやる。
  13. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そう。
  14. 門屋盛一

    門屋盛一君 併し委員長報告をやられるとしても、報告書骨子に沿うておやりにならなければならんわけです。
  15. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  16. 門屋盛一

    門屋盛一君 だから言葉を換えて言えば、委員長は極めて最近の時期にこの問題に対する在外同胞引揚底別委員会中間報告としてこの問題を報告したい、こういう御趣旨でこれを今この委員会にお諮りになつておるのですかと、こう伺つておる。
  17. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 門屋委員のおつしやる通りであります。
  18. 門屋盛一

    門屋盛一君 そういたしましたならば、これに対するところの質疑応答は許さなきやならんわけで、少数意見云云というやつはこれは又後の問題になる。
  19. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それではどうぞ。
  20. 北條秀一

    北條秀一君 門屋委員発言に対して関連してお聞きするのですが、この前の委員会報告書委員長理事において一応作つて委員会に諮るということであつたのですが、門屋委員理事の筈だと私は思つておりますが、今聞いて見ますと、理事委員長との間に打合せが十分でないところがあると思いますので、その点を一つはつきりして頂きたい。
  21. 門屋盛一

    門屋盛一君 その報告書骨子を作ることには理事として関係しました。今日のここの運び方で今中野委員質疑をしたいということに対して委員長が逡巡されておるようだから念を押しただけのことであります。
  22. 北條秀一

    北條秀一君 私そういう打合せもできていると思つていた。(「進行」と呼ぶ者あり)
  23. 三好始

    三好始君 私の受けた感じが、或いは間違つているかも知れませんが、委員長最初発言はこの報告書を直ちに採決するようなふうに感じたのでありますが、これに対して中野委員より内容についてはつきりしない点があるから質疑を許されたい、こういう発言があつたわけであります。この報告書委員長理事打合会で一応決定されたもののようでありますが、文章もそう長いものでないわけですし、この程度内容でありましたならば、一応朗読するなり御説明をした後で、はつきりしない点があつた質疑を許し、その上で採決する、こういうふうに運ぶのが適当なんじやないかと思いますが、如何でしよう。(「賛成」「その通り」と呼ぶ者あり)
  24. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 只今三好委員からの御発言通り運ぶことにいたして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 中野重治

    中野重治君 その前にこれの性格をもう一遍委員長から。如何なるものとして議長に出すための報告原案ということをもう一遍明瞭に言つて下さい。
  26. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それじや中野委員にお答えいたします。当委員会がいわゆる残留実態調査をば従来やつて参りましたが、しばしばの委員会のいわゆる報告書というものはまだまとめてなかつたわけであります。今回二月十四日の久保田善藏君外の懇請に基きまして、更にいわゆる徳田要請問題を調査いたしました。それでこの際に今までの委員会調査経過をばここにまとめまして議長報告書として提出しよう、中間報告をしようということにいたして、先週土曜日の委員長理事打合会で案ができたわけであります。そこで勿論これは先程三好委員からもお話がありましたからもういいわけでありますけれども、先程委員長がお諮りしたのは、委員長理事打合会においてこういう案ができかたら、これに対する御意見を求めたいということを申しておるので、直ちに採決という意味で申上げたのではありませんでしたから、その点は一つ了承を願います。(「了承」と呼ぶ者あり)それでは三好委員の御発言通りこの報告に基きまして一応委員長から内容をばお読みいたしますから、それとももう……。
  27. 北條秀一

    北條秀一君 その前に私はここに注意をして置きたいと思うのですが、調査経過概要と書いて、何の調査であるかということについてはつきりしていないのですが、本日の公報によると在外同胞引揚問題に関する調査ということになつておりますが、題名は極めて報告書性格を表しますから、それははつきりして置かなきやならんと考えるのです。従つて只今配付されました報告書案を見ましても、本件々々ということが書いてあるのですが、それは單なる調査経過概要というだけでは何を指しておるか分りませんから、その点は最初委員長はつきりして置かれる必要があると思いますから、その点を明確にし頂きたい。
  28. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 北條委員の御発言御尤もでございまして、これは表紙を別にとつてありましたために私の説明が不十分であつたと思いますが、案件としましては、    在外同胞引揚問題に関する特別委員会報告書   在外同胞引揚問題に関する件   右の件に関してはまだ審議を完了しないが、ここに中間報告としていわゆる徳田要請事件調査経過並びに結果を多数意見者署名を以て報告する ということが前に付くわけであります。(「了承」「はつきりした」と呼ぶ者あり)
  29. 中野重治

    中野重治君 読んで下さい。
  30. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止
  31. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それでは速記を始めて。    在外同胞引揚問題に関する特別委員会報告書   在外同胞引揚問題に関する件   右の件に関してはまだ審議を完了しないが、ここに中間報告としていわゆる徳田要請事件調査経過並に結果を多数意見者署名を以て報告する。    調査経過概要   在外同胞引揚問題に関する特別委員会において、昨昭和二十四年四月吉村隊事件として伝聞された残留同胞間の不祥事件調査して引揚促進に資せんとした際、偶々四月十四日所謂人民裁判に関連し津村謙二証人によつて、従来から伝えられていた所謂反動分子引揚港より奧地への逆送並びにその引揚遅延の事実が証言された。   爾後引揚の進捗に伴う残留同胞状況把握を目的とする本委員会逐次の調査の発展によつて、事態は更に判然となり所謂反動分子帰還遅延否定を許さざる事実であり、且つ本件繞つて更に各種事象があつたことも逐次に明白となつた。又二月十四日には久保田善藏君外三百六十八名より本院議長宛いわゆる徳田要請問題に関する調査懇請があり、本件に関し、昨二十四年五月六日以降本年三月二十四日までの間、調査の為委員会を開くこと十回、喚問した証人は四十九名に及んでいる。    調査の結果  一、ソ連関係地域からの帰還については、帰還の実況がこれを証明し、又武地の状況に関する諸証言にも明かなる通り、某時期に特に所謂精鋭分子を集団帰還せしめた事実及び反動分子帰還遅延せしめた事実は、之を認めなければならぬ。  二、引揚者受入態勢強化に関する昨昭和二十四年四月二日附日日本共産党指令第三四七号(別紙参照)が、その年の帰還輸送開始前既に各地区委員会宛発せられていたこと及びその内容より、前述の抑留者帰還の情況に即応せんとしたもので、指令発令者連絡を得て帰還輸送の実際を事前に承知しありたるものと、判断される。  三、抑留者に関する公式の調査或いは個々の既引揚者のこれに関連する陳述によつて、その実態が内地において明かにされた場合、その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られたことも、右の連絡を立証している。  四、ソ連ウオロシロフ地区内各收容所を回覽されたる徳田書記長よりの收容宛書信は、去る三月十八日龜澤富男証人がこれを証言した且徳田球一証人もこれを認めたのであるが、その内容共産主義者に非るものの帰国を欲しないとの意味に他ならず、且又久保田善藏他三六八名から参議院議長宛提訴せる所謂徳田要請内容も、徳田球一証人はこれを否定しているが多数証人が肯定している。これに関する証言において、従来反動分子帰還遅延というが如きことは專ら日本人指導者によつてのみ口外されていたにも拘わらず、所謂徳田要請についてはソ連政治部将校自ら之を語つたことが、その重大性を物語るものである旨の証言もあり、要請という事実が現実にあつたやの疑いは濃厚なものがある。    結 論   以上当委員会が屡次調査して得たる結果より判断するに、所謂徳田要請なるものは、單に国内問題たるに止らず、ひいては国際的にも重大なる影響を與うものたることを確認いなければならぬ。   固より徳田球一書記長証人として本件に関する政治上の責任自己にある旨明言している。従つて同人が進んでその証言通り政治上原徳上の自己責任を明かにする行動に出づべきを国民と共に期待する。而も、事の重大に鑑み、委員会としては、政府に対し、本件に関する真相究明につき緊急万般の努力を拂い且つその処置についても断乎たる方針を以つて臨むよう、強く勧告するの要を痛感するものである。   なお、本年三月十二日附アカハタ紙小島清に関する記事は、小島本人証人として取材の経緯内容等について証言した事実に照らし、意識的なるねつ造なることは極めて明かなるところで、同紙が真実を伝えず故意に事実を歪曲し所謂徳田要請をひたらすら陰蔽せんとしたことは、世を惑わさんとする策謀たるに止らず、正に「プレスコードに」違反せるものと断ぜざるを得ぬ。 以上であります。
  32. 中野重治

    中野重治君 質問をいたします。調査経過概要の初めから二行目の「偶偶四月十四日所謂人民裁判に関連し、」云々とありますが、この「所謂人民裁判」即ち人民裁判と称せられて日本新聞で伝えられていたものが、内容がどういうものであつたかということは明らかにされたとこう見ていいのですか。言い換えるならば人民裁判民主的分子の気に食わん者を吊上げたというふうに新聞に書立てた問題は、決してそういうものでなくて、階級を僞つて早く帰ろうとしたり、又戰犯的な人間が混つていたことがナホトカでしたかへ来てから暴露されて、そうして兵士大会によつてそういうことが皆んなの前に明らかにされた。そのことを指すのだということを、それがいわゆるここに「所謂人民裁判」という「所謂という言葉を付けて、こうだ。人民裁判内容は明らかにされているとこう見ていいのですか。
  33. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員委員長からお答えいたしますが、ここに書いてある「所謂人民裁判に関連し」と、これは人民裁判の、確か津村証人が二回目に出頭されたときに、その際に反動分子引揚の途中引返されたという証言が……五十何名帰したと。併し今中野委員の言われておりますようなだけではなくて、現に兵隊だとか、そういう者もその中には一緒に帰されたということがこの当時の会議録を御覽になれば分りますように明らかにされております。
  34. 中野重治

    中野重治君 「所謂人民裁判」と書かれておりますものは、私の先に言つたような内容のものであるということが明かにされていると見ていいのかというのが私の質問です。
  35. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それは中野委員だけのお考えはお考えで、そういうふうに解釈されるならばそれでいいのです。
  36. 中野重治

    中野重治君 「所謂反動分子帰還遅延否定を許さざる事実であり、」というのは、例えば輸送開始をされた四六年の十二月末、四七年の初めか半ば頃には、昭和二十二年四月には、即ち吉村隊事件の、いわゆる吉村隊長自身も帰つて来ておるというふうなこととの矛盾は、もう解明されたこととしてあるわけですか。
  37. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと今の質問は分らないのですがね。
  38. 中野重治

    中野重治君 「所謂反動分子帰還遅延否定を許さざる事実であり、」ということが書かれておる。然るに俘虜の帰還が始まつたのは四六年の十二月からであつて、四七年即ち昭和二十二年四月には、いわゆる吉村隊事件吉村氏も帰つて来ておる。反動の巨魁も帰つて来ておる。そうするとそういうことと、「反動分子帰還遅延否定を許さざる事実であり、」ということとの間の矛盾はもうすでに解決されておるて見ていいのかというのが私の質問です。
  39. 北條秀一

    北條秀一君 委員長に対する質問ですけれども、今中野委員質問された点は、吉村隊長反動分子でありながら日本に帰つて来ておるじやないか。だから先のいわゆる反動分子引揚遅延さしたということを言つておりながら、実際はあの通りつて来たじやないか。その理由はどうだ、こういうことだと思うのでありますが、問題は遅延なんでありますから、吉村隊長はもつと……それはそういう事象がなかつたから判定はできませんけれども、もつと早く帰つたと思うかも知れないですね。それが一昨年吉村隊長が帰つて来ていたからその間に若干の遅延があつたということは、皆さん証言によつて立証された、こういうふうに解釈されれば今の質問はおのずから解明するのじやないか。
  40. 中野重治

    中野重治君 北條君のような解釈も成立たんではないということにして次の質問に移ります。その下の「且つ本件繞つて更に各種事象があつたことも」、各種事象というのはどういうふうなものを指すわけですか。これはすべてを上げられなくても二、三の実例だけで結構だと思います。
  41. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これはもう委員会会議録等を御覽になれば分ると思いますが、或いは吊上げその他によつてチタ地区内のハハトイ收容所事件中野委員は御存じだと思います。すでにこれは告発もされた。そういうふうないろいろな事象が起つて来た。
  42. 北條秀一

    北條秀一君 私もその問題に関連して御質問するのですが、あとで意見は申しますが、使われている文字が、こういう事象という字を使うから中野委員質問が出て来ると思うのであります。事象という場合と事件という場合と、おのずからそのニユアンスが違うわけですから。これは單に各種事象だけでありましたが、その他の各所にも私に言わせると、私は少し潔癖かも知れませんが、修正したい点があるわけでありますが、併し折角委員長理事各位が鋭意、晝夜を分たず御努力されて、ここに調査経過概要をまとめられたのでありますので、成るべくそういう質問意見を申上げることを差控えたいと思つておりますが、特にこの点は、参議院に正式に報告されるのであり、且つ本件が、最後に書かれてありますように「單に国内問題たるに止らず、ひいては国際的にも重大なる影響を與うる」という非常に重要性を持つた報告書として意識され、その意識された報告書が作られておりますために、できるならば私はそういつた表現に極力正確な表現を出すべきだ。そういう点から言いまして、今の中野委員質問に関連して、私はやはり各種事象という言葉が適切ではないというふうに私も考えるのであります。どういう意味各種事象ということを言われているのか、今の委員長の御説明ですと、むしろそれは各種事件といつた方が、より正鵠であると私は考えます。
  43. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 委員長理事打合会におきまして、大体のこうした調査経過概要ができておるのでありまして、今その質疑応答のさ中でありまするが、大要は、ここまで持つて来られるのは相当審議された結果だろうと思うのであります。そこで只今北條委員が言われましたように、その字句の訂正とか、或いはそういう程度のもので、大要というものはすでに委員長理事において打合せなされたことでありますから、勿論各委員のそれに対して質疑もございましようが、大体そういう範囲において一つ進行頂きたいと思うのでございますが、一つそうした点をお諮り頂きたいと思います。
  44. 中野重治

    中野重治君 私は北條委員が途中から質問されたから私はそれを敢て止めなかつたけれども、私の質問の途中で北條委員が話されたということは北條委員も認めなければならんと思います。私は今調査経過概要、言わば前文について質問をしたので、実際は質問は、調査の結果、これは結果と言つても本当の結果ではなくて、中間報告ということが言われておるように、途中です。これは併しながら途中ではあるけれども、とにかく一応結果をまとめる、ここに書かれておる四つの項目、これが議論されて行く途上、これが非常に大事なのであつて、私はまだ質問のとばくちへかかつたばかりであつて、この調査経過概要についてはもう質問いたしませんから……。  次に調査の結果の項目へ入つて質問したいと思います。今淺岡君から委員長理事においてこの報告案をまとめるには相当審議をされた、だから北條委員のような質問趣旨もよく中身を活かすようにして円滑に運びたいという言葉がありまして、これはその限りにおいて尤もですけれども、併しながら相当審議を経たということは、相当の捏造がそこで意識的、無意識的になされたということを必ずしも否定しておらん。その点が私の気にかかるところですから、調査の結果の項目について簡單に質問します。この第一のところで、「某時期に特に所謂精鋭分子を集団帰還せしめた事実及び反動分子帰還遅延せしめた事実は、之を認めなければならぬ。」こうしてあります。この「某時期」というのはどういうことでしようか。どういうことかという問は二つのことです。なぜ「某時期」とこういう表現を用いたかということの理由と、事実においてはそれはいつのことを指すか、この二つです。
  45. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは当初は病弱者その他が帰つて来ております事実、併しながら昨年の六月輸送開始から一定の間はいわゆる精鋭分子というものが集団帰還せしめられた事実があつたというので、その或る時期にはという時期をはつきり、これはまとめたものでありますから、或る時期にはこういうことがあつたという意味でこういう字句を使つたわけです。
  46. 中野重治

    中野重治君 それは「某」という字句使つた理由ですが、それはいつ頃ですか、つまり昨年の六月頃という意味ですか。(「七月か八月だ、その通りだ。」と呼ぶ者あり)
  47. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ああそういう意味です。
  48. 中野重治

    中野重治君 「所謂精鋭分子」というのは何ですか。私がなぜこういうことを聞くかというと、さつきの委員の話にもありますけれども、これは結論のところで、この種の問題は單に国内問題たるに止まらず、延いては国際的にも重大なる影響を與えるということを確認しなければならん。それから政治上の責任とかいろいろそういう政治上、道徳上の責任とか、こういうことに関して国民と共に何ごとかを期待するというようなことが出ておるわけでありますから、予めその基礎を明らかにして貰わなければならん、こういう意味で尋ねるわけです。
  49. 岡元義人

    委員長岡元義人君) お答えしますか。
  50. 中野重治

    中野重治君 勿論私は、答えを求めて質問しておるのです。
  51. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えしますが、成る程この精鋭分子はもつとはつきり書いた方がよかつたかも知れませんが、要するに精鋭分子というのは、十分にいわゆる共産主義教育を徹底せしめられた人達をば指しております。
  52. 北條秀一

    北條秀一君 先程私申上げましたが、成るべく表現は正確を期する必要があると思うのです。特に当委員会性格から言いまして、正確を期さなくちやならんことは言うまでもないところでありますが、今質問中野委員一人によつて独占されておるのでありますが、ずつと順序を逐つて行くならば、その都度質問があれば皆さんの、他の委員からも質問を受けるようにされたらどうかと思います。
  53. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 議事進行について……。今北條委員からもすでに話が出ておつたのですが、併し先程のようなふうに中野委員質問、或いはそれに対して委員長が答える、更に質問をして行くという、そういうふうな行き方で行くのがいいのか、或いは各委員質問があれば、その質問を聞いて行くのがいいのか、或いは一つ一つの事項について全委員質疑し合つて行くのがいいのか、そうした問題を委員会がお決め願えれば……。さもなかつたら或いは委員長理事でお打合せ願つて皆さんにお諮りして行くと、何か一つの行き方をしませんと、とても……。例えば一つの事例を挙げて見ましても、精鋭分子とはどういうものかというようなことになりますと、これは委員長だけの説明では足りない点があるのじやないかと思うのです。例えばまあ私は土曜日の委員長理事の打合会におりませんでしたけれども、そうした精鋭分子ということを一つ言われたという点についても、これだけの資料がある。この資料を一々読んで、例えば一つの例を挙げて見ましようか。これは「マル共の戰術に対する自己批判、第一列車上野行を見送つた党府委員岡本俊一は京都前現場において各参加細胞の責任者を集め「あれだけ注意しておいたにも拘らず君達は何故一番先に押しかけて一般大衆を引揚者に会せないのか、鬪争の最大の欠陷はここにある。マル共と引揚者のみではどうにもならない。革命は決してマル共のみではでき得ない。これ等大衆の力を以て始めて可能になることを再認識されたい。」というようなことで、肉親と会わしたとか、会せないとかいうような問題に対してもこういうふうな批判がなされている。こういうようなものを一々取上げた結果において、一応こういうような大要委員長理事においてなされた。でありまするからこの一つ一つの問題を挙げて行くということになれば、これは昨年のいわゆる人民裁判以来から今日までの問題を全部委員会で一々検討して行くということになれば、これはとても一月や二月でできるものではない。そうした範囲を一応区切りをお切りになつて頂いて、そうして各委員の承認の下に、例えば先程北條委員が言われたように、時期のこの点がいかん。或いはこうした点は書き直すべきだという点で、一つ審議を願わんと、なかなか結論には到達しない、中間報告もでき得ないということになるのじやないかと思いまするから、そうした点を一つお諮り頂きたいと思います。
  54. 中野重治

    中野重治君 北條君及び淺岡君の意見に私は賛成です。併し淺岡君の今の発言の中に、何か細かいことをいろいろ読み上げていられたようでありましたが、そういうことを誰も問題にしておらない。私自身も問題にしておらない。字句の問題、「某時期」とかいわゆる「精鋭分子」とか「集団履還せしめた」とか、こういうことが重大なのであつて、こういうことについて一致した意見を見なければならない。少くともここに書かれておるものは何か意味するか、それで各委員はそれに対してどういう見解を持つかということを明らかにしなければならない。そのことをやらないで、重大な結果というものを結論に持つて行くことは、つまり重大な結果でも何でもないものを、重大な結果として捏造して行くということになりますから、論理的に……。だから四ヶ條だから、この四ヶ條について、さつき北條委員発言のあつたように、各委員からやはり質問をして、そうして分らないところは分らして進んで行く、私一個が質問を独占しようとはしておらないんだから、そういうふうに運んで貰いたいと思います。よければ私は質問を続行する。
  55. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 先ず中野委員質問が続いておりますから……、ちよつと速記を止めて。    〔速記中止
  56. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記をつけて。
  57. 中野重治

    中野重治君 「集団帰還せしめた」と次にありますが、これは集団帰還以外の何か帰還があつたわけですか。
  58. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えします。それはただここの集団というのは、そういう人達だけをまとめて集団帰還と、こういう意味であります。
  59. 中野重治

    中野重治君 「この某時期に特に所謂精鋭分子を集団帰還せしめた」、それから「帰還遅延せしめた」と、これは誰がせしめたというんですか。
  60. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは前からのなにで、ずつと出ております通りに、これは会議録をもうお読みになつてお分りと思いますが、いわゆる反動分子というものが遅らせられたということは、日本新聞の幹部の人達とか或は民主グループの一部の者によつて、そういう者が逆送せしめられたということは、しばしば今まで証人証言によつて明らかになつております。それを指しておるのであります。
  61. 中野重治

    中野重治君 いろいろな色彩を持つた証人がどう証言したかということは一つのことです。委員会がそこから一つの結果を導き出すのは、委員会の仕事であります。委員会は、誰が帰還させたか、誰が遅延させたかと、ここでは言つておるわけですが、送還ということは誰がやつたのですか。
  62. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは中野委員もずつと、あとをお読みになれば分ると思いますが、前にも日本新聞調査経過概要でなにが出ております。
  63. 中野重治

    中野重治君 私はさつき淺岡委員発言されたように、日本新聞にどう出ておるのか、例えば久保田証人のような特殊な人物がどういうことを言つたかということは、別に委員会の提出する報告として、委員会がここにこう書いた、このことは何か意味するか、つまりこの文章における送還者は誰か。これは我々がこの報告を出すのだから、我々がこれを何のつもりで書いておるのか、つまり一の項目における動詞の主語は何かということです。
  64. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 共産党だよ、それははつきり書けばいいのだよ。
  65. 北條秀一

    北條秀一君 それは違うね。
  66. 天田勝正

    ○天田勝正君 ちよつと速記を……。
  67. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止
  68. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を始めて。
  69. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 先日の、土曜日の日に委員長理事打合会があつたのですが、不幸私はその会議に出席できなくてこうしたことを申上げることは甚だ相済まんと思つておりますが、この調査経過概要なり中間報告書を出されるに当りまして、例えば今三好委員から指摘がありましたが「本件繞つて更に各種事象」云々と言われたのですが、その「各種」というようなことでなくして一つ一つの事例を二、三上げたらどうかというお話があつたのですが私誠に結構、その通りだと思います。それでそのときに、委員長理事の打合会におきましてそういうような意見は勿論出たのでしようか、出なかつたのでしようかということが一件と、それからこうした実際の具体的な例を挙げるということになりますと相当数あるだろうと思います。そうした点についてどの例を上げるかというようなこともまあ一応お話が出たか、出ないか、それらの点についてどんなふうであつたちよつと簡單に一つお話願いたい。
  70. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 淺岡委員に申上げます。五月十一日の増淵俊一君はその犠牲者として、ナホトカにおいて民主グループの熊木氏が非常にいきり立つて要するに我々はここでは一歩たりとも敵に妥協はしない。断乎鬪争をするのだといつて……。
  71. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 いやそういうことは私も知つておるわけなんですが、つまりそういうふうな事例を一つ二つ挙げるということになりますと、相当長いものになる。そういうふうに中間報告というものが長いものであつていいのか、或いはこういうふうな簡單なものでなつていいのかというような点について、その日の委員長理事打合会においてそのようなお話が出たのですか。
  72. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 委員長理事打合会におきましては、要するにこういう骨子だけを一応報告書にいたしまして、そうしてこの骨子に基きまして、詳細な報告委員長報告するということに打合せをしたわけであります。
  73. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 了承。それでは委員長、そういう点をお諮り願つて一つ議事の進行を願いたいと思うのでありますが。
  74. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 三好委員の御質問にお答えいたして置きますが、只今淺岡委員委員長から申しましたように、その内容についての事例はできるだけ要約したものを報告書として、従来の形式に倣つてできるだけ要約したもので中間報告書を出す、こういうふうなことに十分努力した。極端に申しますれば、そういう意味でここにまとめた、要約したわけであります。できたら御了解を願いたい。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 三好始

    三好始君 報告書を簡潔にするために、こういう形になつたことは了承いたしますが、表現の仕方で、「本件繞つて更に各種事象があつた」という、「各種事象」が、恐らく帰還遅延せしめたがごとき各種事象なんだろうと思いますが、そういうことがはつきり現れるような表現の仕方ができればとられた方がいいのじやないか、殊更細かい例を挙げなくても、表現の仕方でそういう点をもつとはつきりできるのじやないか。こういう意味で申上げたのですが、これは私としてこれ以上申上げることは差控えて置きます。
  76. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 そうしますと、今三好委員の言われましたように、「本件繞つて更に各種事象があつたことも逐次明白」云々、こう書いてありますが、こうした面に対しましては、委員長報告において詳細に述べられることになつておるのですか、おらんのですか、それを一つ
  77. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それは淺岡委員にお答え申上げます。先程もお答えいたしましたように委員長報告で詳細に報告することになつております。
  78. 淺岡信夫

  79. 中野重治

    中野重治君 そうすると先程の天田委員のお言葉からも、「せしめた」、帰還せしめた、遅延せしめたという書き方では、主語が曖昧になつて、重大な問題にも関連して来るから、問題はそうではなくて、ここであつたことは事実であるという、そのことが分ればいいのだ、こういうふうなお話でありましたね。
  80. 天田勝正

    ○天田勝正君 私はそう受取つております。
  81. 中野重治

    中野重治君 その点は委員長異議がないわけですか。
  82. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 異議ありません。
  83. 中野重治

    中野重治君 そうするとこの輸送の問題では、一九四六年の十二月十九日のソ連地区引揚に関する米ソ協定に基いてこれが行われたということは勿論認められておるわけでありますね。
  84. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 認めております。
  85. 中野重治

    中野重治君 次に第二に入りたいと思います。
  86. 北條秀一

    北條秀一君 二に行く前にちよつと質問しますが、一の中で反動分子ということが書いてあるのですが、これはあとにも出て来るのですが、もう一ケ所だけ、それは四の最後の方に反動分子と出ておるのですが、全体読みまして、「所謂反動分子」、「所謂」云々というのが書いてありますが、ここだけ特に「所謂」という字が拔けておるわけですが、これは私共委員会ではこれらの字句に該当する反動分子だと別にきめつけるということはないのですから、「所謂」という字を入れることが正しいと思うのでありますが、どうですか。
  87. 天田勝正

    ○天田勝正君 それは誠に賛成だ。
  88. 岡元義人

    委員長岡元義人君) よろしうございます。次に第二項の……。
  89. 中野重治

    中野重治君 「引揚者受入態勢強化に関する昨昭和二十四年四月二日附日本共産党指令第二三四七号」、これは確か日本共産党何とか事務局と書いてあつたあれだろうと思いますが、この四月二日附のそういう指令は出ておらないのです。併し三月二十日附の指令というのは、あれは事務局、こういうふうな名前は付いていないが出ているのですが、それの間違いではありませんか。私がお尋ねするのは、この前はやはり四月二日附というので委員会で問題になつております。日附の詳しいそのときの取調は、問題ががあがあしたものだから、なかつたようでありましたが、これは従来共産党の指令だというので贋指令が沢山出ておる。そういうものはどこか、いろいろ違つているのですが、四月二日附というのは、それは明らかに贋指令なんであるが、贋指令も何ものかに基いたということがあるとすれば、それは三月二十日附の指令指令という名前であつたか、通達という名前であつたか、私は今正確に覚えておりませんが、あれの間違いではないか。だから四月二日附云々ということが基礎になるとすれば、私はそれは贋物であるということにならなければならんのですが、その点どうでしようか。
  90. 北條秀一

    北條秀一君 その点は、これは委員長理事諸君に責任があるのではなしに、むしろこの前の証人として徳田書記長を喚問した際に、委員長が特に二十四年四月二日附日本共産党確か事務局指令第三百四十七号を御存じかと言つたときは、事務局から出した指令だから、政治的なら責任を負うけれども、自分としては詳しいことは知らん、こう言われたので、そういう証言に基いて確かこれは間違いないと考えたのだろうと私は思います。
  91. 中野重治

    中野重治君 そうすると問題は日附如何にあるのではなくて、中味に書かれていることを、こういうふうに扱つていいということになりますね。
  92. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  93. 中野重治

    中野重治君 そうしますと、ここでも内容が問題になつているのでありますが、「その年の帰還輸送開始前既に各地区委員会宛発せられていたこと及びその内容より、前述の抑留者帰還の情況に即応せんとしたもので、」というのは、この「前述の抑留者帰還の情況に即応せんとした」ということは、いわゆる精鋭分子が集団帰還して来るというそのことを、この文書を書いた人は指そうと思つているわけですか。
  94. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そういう意味です。
  95. 中野重治

    中野重治君 その次の「指令発令者連絡を得て帰還輸送の実際を事前に承知しありたるものと、判断される。」指令発令者日本共産党になりますね。
  96. 岡元義人

    委員長岡元義人君) その通りです。
  97. 中野重治

    中野重治君 「連絡を得て」というのは、何との連絡ですか。
  98. 岡元義人

    委員長岡元義人君) この「連絡」というのは、それはソ連……、いわゆる民主グループと言われている、いわゆるそういう政治指導をやつてつた人達との間に、日本共産党との連絡がある。或いはソ同盟におけるところの共産党委員会、この間何と言いますか、中央委員会と言いますか、あなたの方が言つておられました、何かそういうふうなところとの何かの連絡があるという意味ですね。
  99. 中野重治

    中野重治君 何かがあるのはいいのですが、何との連絡ですか。日本共産党と何との連絡ですか。
  100. 北條秀一

    北條秀一君 取つた方がいいのだよこれは。「連絡」というのは。ちよつと委員長速記を止めて下さい。
  101. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと速記を止めて下さい。    午後二時二十九分速記中止    —————・—————    午後二時四十分速記開始
  102. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記をつけて下さい。今ちよつとお諮りします。三月二十日附というのが本当なんだという中野委員発言がございましたが、従来当委員会証人喚問に際しましては、四月二日ということで証言を求めて参つたわけでありますが、この三月二十日、内容においては一緒だ、一緒なんですね。
  103. 中野重治

    中野重治君 私は今両方、別紙を附けていないものだから、この前貰つた何を今持つて来ていない。正確につき合せることはできないが……。
  104. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 我々委員会といたしましては、資料は四月二日ということになつておりますが、この点どういうふうに取計らいますか。
  105. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 それは十六日の、とにかく徳田書記長証人喚問のときに、委員長は「先ず要請問題についてお尋ねいたします前に、一応徳田書記長にお伺いいたしますが、只今手許に差上げました指令第三百四十七号、昨年四月二日」と、こうはつきり言われておる。「日本共産党中央委員会事務局より、」このままずつと発展して来ておりまして、そうしてその結論に私の質問はつきりと言われておるのですが、これが政治問題になるならば私は政治責任を負う、こういうことを言われておるのですが、その日時を今中野委員からそれは三月二十日だと言われても、それを変更するそれ自分がおかしいじやないか。若し変更するとするならば、これは数字を今直ぐ決めるわけにはいかんと思います。私は納得できないと思う、こういうふうに思います。
  106. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 四月二日とこのままにして御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それから今問題になつております「連絡を得て」ということは、これも勿論原案ですが、その前の原案には「当然ソ同盟との連絡がなければ」ということがはつきりと原案に書いてあつたわけです。
  108. 中野重治

    中野重治君 ここに、原案に書かれておる「指令発令者連絡を得て」というのは何との「連絡を得て」か、何との連絡かという私の問いです。
  109. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ソ同盟との……そういうことですね。これはそういう意味を指しておる。これは委員長報告説明でもいろいろ出て参りますから……。
  110. 中野重治

    中野重治君 そうすると、さつき、北條委員の話もありましたが、それは北條委員の言つた意味とは違うわけですね、全然。
  111. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと……。
  112. 中野重治

    中野重治君 北條委員のはラジオもあるし、新聞もあるし、世界中いろいろなことが分つておる。これは例えば舞鶴の援護局においても今度は精鋭分子が、いわゆる精鋭分子が来るというので……。
  113. 北條秀一

    北條秀一君 何故……。そんなことは言わない。
  114. 中野重治

    中野重治君 君は言わないけれども、僕が説明するのだ。ソ連領からの引揚者中共産主義教育により相当尖鋭化された者もあり、引揚業務を妨害し、秩序破壊その他の煽動を行なつておるが、これら尖鋭分子を他の引揚者中より引拔き、分離して業務を円滑に推進するため、内偵捜査の従業員は苦労を重ねましたが、これに要した経費中、更に経費は領收書が徴收できませんでしたが、支出及び金額に相違ありませんから御承認をお願いいたします。これは京都府警察隊長、こういうものが警備隊、警備課勤務、そういう人から出ておる。そうしていろいろな金が数万円受渡しがある。こういうことも要するにソ同盟との「連絡を得て」こういう準備、手筈を整えて手ぐすねひいて待つているということになる。そういうような意味であるならば、つまりこれは何にもならない。だからそういうものならば何のためにこういうものに入れなければ一定の結論へ持つて行けないかというのが疑問になるわけです。だから北條委員の言うのとは全く違うと、何か特定のソ同盟との連絡ということになるのでなければ話にならないと私は思うのですが、そういう意味に解していいわけですか。
  115. 北條秀一

    北條秀一君 関連してお伺いしますが、今委員長はこのソ同盟との「連絡を得て」というふうに断定されましたが、既往の証人喚問、その他調査の結果、そういうことはどつかで実証されておりますか。
  116. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 北條委員にお答えしますが、先程私はそれはいろいろ連絡先があるだろう。併しいわゆるソ同盟というものと考える。だがそれがはつきりすればそれははつきりできるわけです。そこのところは一番最後に「ありたるものと、判断される。」とこういう工合に言つているわけですから、これでいいんだと思う。
  117. 北條秀一

    北條秀一君 それは今中野君が誰と「連絡を得て」というそれを聞いておるわけですね。それに委員長はソ同盟と「連絡を得て」とはつきりと余り委員長が断定し過ぎたから、だから僕は言つたのです。
  118. 岡元義人

    委員長岡元義人君) まあ説明で分るように……。
  119. 北條秀一

    北條秀一君 説明なしに、中野委員質問に対して委員長はソ同盟との連絡を得てと、こういうふうに回答されましたから、だから……。
  120. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 今北條委員の言わんとしたるところは、いろいろと北條委員説明されましたが、併し簡單に言えば彼の地というぐらいでいいんじやないですか。
  121. 中野重治

    中野重治君 え、何……。
  122. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 彼の地……。
  123. 中野重治

    中野重治君 彼の地とは何だ。
  124. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 彼の地とは彼の地だ。そういう意味表現でいいんじやないか。字句が惡ければ字句を訂正を願いたい。
  125. 中野重治

    中野重治君 訂正かどうかということはまだ問題で、私はここに書いてあることが誠にいぶかしいから何事を指すのか尋ねておるのです。
  126. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 廻りくどいよ。
  127. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと靜かにお願いします。
  128. 中野重治

    中野重治君 何との連絡かということが……。
  129. 岡元義人

    委員長岡元義人君) じやあお諮りいたします。二項につきましてもう一定の問題となつております「指令発令者連絡を得て帰還輸送の実際を事前に承知しありたるものと、判断される。」と、このところの「連絡を得て」ということが問題になつておるのでありますが、この点はこのままでよろしうございますか。それとも何か修正の意見がございますか。
  130. 中野重治

    中野重治君 その点に関して、だから修正するかどうかについては……ここではこういうことでしよう。極く大雑把に言えば、こういう不完全な案文を作つた人の頭の中に立入つて考えて見れば、今度相当いわゆる筋金の入つた奴が帰つて来るんだ。だからこれをそのつもりで受入れる態勢を整えろと、こういうことを日本共産党が言つた。これは日本共産党とソヴイエト同盟と連絡がある証拠だと、こういうわけですね、大雑把に言えば……。そういうふうに大雑把に言われたくなければ、正確に言い直して貰えればいいですがね。併しそれならば今度の日本の警察が、今度は相当筋金の入つた奴が帰つと来るんだ。だからこれを引つこ拔いて、そうして内偵調査を進めなければならん。その仕事をするこの特高スパイ的な従事員は大変苦労を重ねておるが、これに要した費用はいろいろな関係上金は渡して使わしたんだが、領收書は取られない。だから領收書はないけれども、とにかく承認して呉れと、こういう、警備課勤務の柴田芳助という人が……京都府警察隊長の柴田芳助君が出しておる。その受取も来ている。これはやはりソ同盟と連絡があつたということになりはせぬか。そこがそうならないならば、その差別を本質的にちやんと決めなければ駄目だと思う。そうじやなければどう修正するかという意見は出ないと私はこう考える。その差別を明らかにしなければ、修正意見を出せる人があれば、私はその人の頭脳の構造を甚だ疑わざるを得ない。
  131. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 他の些末の問題は別といたしまして、この問題だけに対することは連絡ということにお決め下さいませ。
  132. 北條秀一

    北條秀一君 今質問しておるわけですから、修正意見はあとにして……。
  133. 岡元義人

    委員長岡元義人君) いや、北條委員の先程質疑があつたわけですが、一一この一項目の修正があれば意見を何した方がいいんじやないかと思つてつたわけでか。
  134. 北條秀一

    北條秀一君 じやどうしますか。
  135. 中野重治

    中野重治君 併し委員長はその前にこの「指令発令者連絡を得て」と書いてあるのは、私の間によつて、それはソ同盟との連絡だと、こう答えられたことは事実であるわけですね。それだからそこから、それについていろんなそういう書き方は、穏当か不穏当かということから、遂に委員長も修正を求めるところまで来たわけでしよう。だから案文については前述のごとくであつたということになつておる、こう認めていいわけですね。
  136. 岡元義人

    委員長岡元義人君) どういうことですか。最後のところをちよつと……。
  137. 中野重治

    中野重治君 こういうわけです。これは天田君は最初第一項のことについて、事情はこうであつたが、責任を回避するわけではないということで、お話はよく分りました。これは第二項についても、或る程度及ぶかも知れんと思う、だからそういう点について、責任をどうこうという意味でなく、ここに「指令発令者連絡を得て」云々と書いてある、そこでここに書いてあることは、指令発令者は何との連絡を得てであるか、これをこの案文の筆者に尋ねたのです、私は。ところがそれはソ同盟との連絡を得てということである。
  138. 天田勝正

    ○天田勝正君 中野委員の問を発しておるのに私が、途中で引取つては申し訳ないのですが、このことがさつきまで、第一項の解釈にも、第二項の解釈にも、私とはどうも解釈が違う、私は第一項の方だつても、誰が帰したとか、帰さないようにしたとかいうことよりも、こういう事実であつたということを総合的に、要するに第一項を先ず表現したのであつて、今の問題になつております「指令発令者連絡を得て」という意味の文句は、何もソ同盟であるとか、どうであるかは別として、或いはそれが、日本新聞であるか、或いは向うのアクチヴであるか、或いはソ同盟であるか、その範囲はいずれでも、とにかくこの調査をいたしました指令三百四十七号、又はそれに基いての証言を求めた結果は、どうしてもそれらの、内地以外の、向う側の、まあさつきの淺岡君の言葉のように、彼の地ということに総合的にはなるのですが、とにかくそういうたつた一つのものを送したのではない。とにもかくにも「連絡を得て」ああいうものが出されるものだと、こういうふうに私は総合的にものを判断しておるのです。私は中野委員の問は問として続けて貰うのはいいとして、又私は全般的にそう考えておつた
  139. 岡元義人

    委員長岡元義人君) この際お諮りして置きます。今の「指令発令者連絡を得て帰還輸送の実際を事前に承知してありたるものと、判断される。」と、この通りでよろしうございますか。(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  140. 北條秀一

    北條秀一君 その都度々々、部分部分の意見を言うということは、全体についての採決があるときに、それに対する態度を決めなければならんわけですから、私は敢て発言したくないのですが、今「指令発令者連絡を得て帰還輸送の実際を事前に承知しありたるもの」、こうなつておりますが、実際はですね、事実上は「連絡を得て」ということと「実際を事前に承知し」ておつたということと、二つつておるわけです。ですから「連絡を得て」というのは、取つた方がいいという意見を申述べたのですが、小杉委員から、これはあつた方がいいと、駄目詰めなんだ、碁で言いますと駄目詰めなんで、駄目は詰める必要はないので、これは取つた方が正しいと思いますから……併しお決め願つてから言つてもしようがないのですが、重ねて私はそういうことを申上げて置きたい。
  141. 中野重治

    中野重治君 私のさつきの問は答えられていないのですがね。この案文に「指令発令者連絡を得て」と書いてあるのは、何との連絡かという私の問に対して、それはソ同盟との連絡ということである。こう答えられたことは、そのままになつていると、こう私は承知していいですね。
  142. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員に申上げますが、中野委員は答えられないというけれども、僕は二度答えないだけで……。
  143. 中野重治

    中野重治君 答えられたというのです。答えられておると承知していいかというのです。いろいろな修正意見や、その他出たから。
  144. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員に申上げます。最初私がここに「判断される」と書いてあるように、じやどことどこの部分であるか分らなんが、例えば今言つたように民主グループの人達とか、或いは日本新聞の人達とか、そういうような人達を指しておるのだと、或いはソ同盟であるかも分らんから、だから、そういうことをば……ソ同盟というのは落しておりますが、最初から私は答えておるのですが、あなたは又それをのけてしまつて、これを聞いておられる。
  145. 中野重治

    中野重治君 何をのけて……いや、あなたがソ同盟との連絡ということだと答えたでしよう。
  146. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 最初私は答えてあるのだ。だからあなたがどういう意味かと言われるから説明としては私は申上げただけなんです。
  147. 中野重治

    中野重治君 それじやもう一遍繰返して下さい。私の問は「指令発令者連絡を得て」というのは、誰との、何者との、何との連絡かということかと、これが私の問です。
  148. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 委員長から改めて中野委員にお答えしますが、ここに書いてあります連絡というのは、いわゆる抑留者の中に作られましたところの民主グループとか、或いはそれの指導をしておりましたところの日本新聞の幹部であるとか、或いはソ同盟であるとか、そういうようなどこかに連絡があるものと判断しなければならん、判断せられるという意味で、ここに「連絡を得て」と、こう書いてあるんです。それがはつきり分つておれば、あとで判断する必要はない、もう決定的なものになる。
  149. 小杉イ子

    ○小杉イ子君 北條委員に反対するようですが、「指令発令者連絡を得て帰還輸送の実際を事前に承知しありたるもの」とございますが、この指令があればこそ帰還輸送が正確に行われて来た。行われて来たというのは、指令発令者によつて連絡があつたと、こういうように私は解釈いたしますが……。
  150. 北條秀一

    北條秀一君 その指令は違うんです。
  151. 岡元義人

    委員長岡元義人君) まあこれは済みましたから……。質や三項につきまして……。
  152. 中野重治

    中野重治君 「抑留者に関する公式の調査或いは個々の既引揚者のこれに関連する陳述によつて、」というのの一番初めの「公式の」というのはどういうことですか。「公式の調査」というのは。
  153. 岡元義人

    委員長岡元義人君) この「公式の調査」というのは、政府側並びにこの委員会に示されておりますところのものを指しておるわけです。
  154. 中野重治

    中野重治君 こうすると次の問ですが、その「実態が内地において明かにされた場合、その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られたことも右の連絡を立証している。」とありますが、これはどういうことですか。私の尋ねるのは、その「実態が」から、「内地において明かにされた場合、その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られた」ということはどういうことですかということです。
  155. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これはまあ簡單に分つて頂くように、引例いたしますが、例えば水原選手が帰つて来た、それがこういうことを内地で言つて、こういう工合になつたということは、直ちにそれが向うにそのまま間髪を容れずして、そういうことが批判を加えられて行つておる、そういうことが何らかの連絡があるものであると、こういう意味であります。
  156. 中野重治

    中野重治君 もう一遍今の例だけでいいから具体的に言つて下さい。
  157. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 具体的に今例を取つて申上げた。
  158. 中野重治

    中野重治君 批判とい何とかいつても、いろいろな批判があるから。水原選手……一つ二つでいいから、どういうことか。つまり私の尋ねるのは、こういうことですよ。「その実態が」というのは何ですか。これは向うにいる人の実態ということですか。要するに「その実態が内地において明かにされた場合、その都度抑留者に対する処遇及び指導の変化が見られた」と、こういう場合に、そのつまり実態というのは何のことか、それから「抑留地」というものは、ソ同盟のことでしよう、「処遇及び指導の変化」と、これはどういうことですか。
  159. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 今中野委員に御説明申上げたのでは足りませんか。
  160. 中野重治

    中野重治君 全然分らないのですが、どういうことですか。
  161. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 尚これは例えば昨年戸の帰還者とか、帰つて来てその帰還者が内地において向うで考えておつたような、例えば十分にこれは教育されている者だ、併しながら内地に帰つて来て実際に皮が剥がされた、そういうものに対しての又批判が向うでは直ちに加えられておる。それから例えば舞鶴に上陸する際に、その上陸のいろいろなその事態が起つたことをば、あとで帰つて来る者にはもう直ぐ連絡がとれておるように、はつきりと又改めた方法を持つてつて来るというようなことの意味を指しておるのであります。何らか連絡があるという工合に考えられておりますね。
  162. 中野重治

    中野重治君 そうすると第二項の「連絡」ということで大分話が縺れたようですが、「右の連絡を立証している」というのも、そういうことを指すわけですね。
  163. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  164. 北條秀一

    北條秀一君 この三の中でお尋ねしたいのは、抑留者という言葉と、既引揚者という言葉と、残留者とこういう三つの使い分けがしてあるのです。どういう意味で三つの使い分けをされたか、私にはよく呑込めない、抑留同胞と言つた場合には確かにこれは抑留者であるということが分るのですが、抑留者と單に言つた場合には、これは抑留しておる方の、人間だというふうにも取れる。ところがそれに対して公式の調査ということはとにかく言えない。それも抑留しているのはソ同盟でありますから我々は調査する、これはできつこないのでありますから、その間の三つの使い分けが何故こういうふうな、複雜怪奇とき言いませんが、複雜なる使い分けをされたのか、これについて御説明願いたいと思います。
  165. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 北條委員質問趣旨は、そんなん深く考えていなかつたのです。確かに字句は、こういうふうに使い分けしないで一つの字を使つてもいいんじやないか、別にそこまで深く考えていなかつたのです。お答えいたします。
  166. 天田勝正

    ○天田勝正君 これはですね、普通の慣例に従つて抑留者と言えば我々が通常会話の意味に使う場合は、今まで言うにおつた者といつたような工合に使つておるからなんであつて、正式な用語と、北條委員が今質問と言うけれども実は指摘なんだな。我々の責任追及とも見られる、責任追及に該当するのですよ、確かに……。抑留者といえば、これはこの場合ソ連同盟とか、或いは中国とか、中国共産党、こういうことになるんです。だから確かにこの用語は修正する要があるとまあ私もそう思います。
  167. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を止めて。    〔速記中止
  168. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を始めて。
  169. 中野重治

    中野重治君 「その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られたことも、右の連絡を立証している。」とありますが、処遇及び指導の変化があつたということは誰が確認したのですか。誰が見たのですか。
  170. 北條秀一

    北條秀一君 只今中野委員の御質問は、ここに出ております公式の調査及びこれに関連する陳述によつてその変化が見られたというわけでありますから、おのずから分つていると考えます。
  171. 中野重治

    中野重治君 公式の調査は、日本政府の調査及びこの委員会における陳述等々である。又個々の引揚者のこれに関する陳述というものは、その言葉通りのものである、そうすると、その人人がそういう処遇及び指導の変化があつたと、こう言つておる、こういうのでしよう。
  172. 北條秀一

    北條秀一君 うん。
  173. 中野重治

    中野重治君 ところがそれは誰によつて見られたかといえば、この個々の人々だ、或いは日本政府の調査だというのでは、これは循環論法で、そこらら「右の連絡を立証している」ということをこの委員会がどうして引出すことができるか。そこのところを説明して貰えば、私の疑問は氷解するわけだ。
  174. 北條秀一

    北條秀一君 速記を止めて下さい。
  175. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を止めて。    〔速記中止
  176. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記をつけて。今中野委員の申しておられるいわゆる「右の連絡を立証している」というのは、こういう「連絡」そのものではなくて、この「立証している」、この上にかかつて来る。要するに公式の調査、そういうような委が会を通じて、「その実態が内地において明らかにされた場合、その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られたことも」、前にこういう連絡があるものと判定されるということを立証しておるというのですよ。分りますか。
  177. 中野重治

    中野重治君 ちよつと速記を止めて下さい。
  178. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を止めて。    〔速記中止
  179. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を始めて下さい。それでは最後のところは「処遇及び指導の変化が見られた」として、あとは打切ります。(北條秀一君「見られたことも明らかにされたというのだよ」と述ぶ)訂正します、「処遇及び指導の変化が見られたことも明らかにされた」といたします。  次の四に移ります。
  180. 北條秀一

    北條秀一君 簡單なことでございますが、最初の「各收容所を回覧されたる」の「を」というのは「に」の違いですか。各收容所に回覧されたのだろうと思いますが。それからもう一つは、それから下りまして、「收容所宛書信」というものは、これは正確な表現ではないと思うのです。要するに残留者の誰かに宛てた書信であろうと思いますが、違うのですか。それははつきりしておるのですね。
  181. 中野重治

    中野重治君 「收容所宛書信」が誤りであることは明らかにされましたが……。
  182. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうではないのです。
  183. 北條秀一

    北條秀一君 それを今聞いておるのです。收容所宛の手紙を……。
  184. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 証言はつきり宛名は各收容所宛になつております。証人証言では。
  185. 中野重治

    中野重治君 それは証人証言ですね。
  186. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  187. 中野重治

    中野重治君 証人証言委員会の決定とは違いますね。証人証言委員会が一定の結論に自主的に到達するための一つの條件であります。
  188. 岡元義人

    委員長岡元義人君) その通りであります。
  189. 中野重治

    中野重治君 証人收容所宛書信だといつておることによつて、直とに委員会がそれは收容所宛の書信である、この認定することは直ちにはではない。若し收容所宛書信であるということになるならば、收容所宛書信であるということを委員会として認定する論理的手続が説明されねばならん、それはどうなるか。
  190. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えいたしますが、その後をずつとお読み願えば余りにもはつきり分ると思います。これはいわゆる龜澤証人証言されたそのままをここに持つて来ただけである、だからあとで「認めたのであるが」……。
  191. 中野重治

    中野重治君 書信はすべて受取人に宛てられておる。こう常識的にも解釈されるのであつて、これはこういうふうに書いてあると、龜澤富男証人証言が客観的にも正確であり、直ちにその通り徳田球一証人がこれを認めたというふうになつておるが、それでいいのかということです。
  192. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員の御質問趣旨は、收容所というものの解釈が收容所長であるか、或いはその收容所の中にいるいわゆる抑留者のことであるかという点がはつきりしないから、そういう御質問になるのじやないかと思うのですが、どうですか。
  193. 中野重治

    中野重治君 そうです。私は書信というものは受取人に宛てられると思う、こう考えるのです。
  194. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ところが証人らラーゲル宛、收容所宛と、この通り証言されておるわけです。宛名がこう書いてあつた……。
  195. 中野重治

    中野重治君 それで收容所宛書信が送られたということを龜澤証人でないところの徳田証人が認めたということにこれではなつておる。私は徳田証人政治責任を負うということを発言された際の証言内容は、受取人宛に送られた、その往復葉書の片ぺら、これに関してであつたとこう記憶するのです。
  196. 岡元義人

    委員長岡元義人君) その内容については、とにかく徳田証人証言を認められたのですね。祕書が出したということに私は記憶しておりますが。
  197. 北條秀一

    北條秀一君 ちよつとお話し中ですが、私は先程そういう質問をどうして出したかと言いますと、この「收容所宛書信」は確かに中野君が言つておるように疑義があるので、この「收容所宛」ということがなければ、この書信が、ここに意図された表現ができないかということなんです。「收容所宛」という四つの字を取ればいいのじやないかと思うのです。だから各收容所に回覧されたる徳田書記長よりの書信は、それを言えば最も正しく意味を表す、こういうのが私の見解です。
  198. 穗積眞六郎

    ○穗積眞六郎君 この書信というのは葉書のことを言つておるんですか。葉書だけのことを言つておるんですか。
  199. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。今北條委員の言われるような内容だとすると、非常に意味が違つて来ると私は思うのです。要するにここに書いてあります意味は、ソ連ウオロシロフ地区内各收容所を回覧されたる徳島書記長よりの宛名の書いてあつた書信を示したのであつて、單なる書信というのと、これが全然ないところの書信とは非常に違います。
  200. 北條秀一

    北條秀一君 委員長の今のお話で明白になりましたが、收容所宛の手紙であつたか。実際問題としてロシアから来ておるところの……捕虜の通信は、個々の捕虜宛に通信が出されておる。従つて徳田書記長証言内容も、何万通か、これは別に捕虜達の通信ではありませんが、国内、国外その他徳田書記長の公私の手紙が沢山来ておる。それについて、一々祕書が返事を書いておる。捕虜の手紙に関しては、捕虜の通信は御承知のように常に個人宛になつておる、だから收容所宛の書信はないのじやないか、それは中野君の言つておるところなんで、又それについては私も同様な考えを持つわけです。「收容所宛」といつたのは龜澤証人が名前を忘れたのであつて、宛名人の名前を忘れたのであつて、そこに貼り出してあつたところの徳田書記長が誰かに宛てた手紙の一枚が、名前は知りませんが、それが貼り出されてあつたことだと私は今日まで解釈しておるんです。
  201. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと北條委員に申上げますが、その点はこの間の証言を聞いておるときに、非常に重ねて質問されて、宛名はこういう宛名になつておるということをはつきり龜澤富男君が証言しておるんです。
  202. 北條秀一

    北條秀一君 それなんいいんです。それならば、龜澤証人がこれを証言し、といつてありますから、龜澤証人証言に関する限りそれはこうだということだから、それは差支えないと思います。併しそれを徳田書記長が認めたかどうかという問題は、これは軽々に判断できないと考えるのです。
  203. 中野重治

    中野重治君 その点に関して言えば、こういうことであろうと思います。徳田証人責任を負う云々と証言したのは、徳田書記長の名によつて葉書が送られたということと、その葉書の文面の内容に関してであつて、その名宛が收容所であつた收容所長であつたか、或いは特定の人であつたかということに專らかかるのではない。だから、「去る三月十八日龜澤富男証人がこれを証言し且つ」と直ぐ続けておりますが、龜澤証人証言と徳田証人のこれを肯定したという意味証言とは、その点において内容が違う、その点がはつきりすると次の点に行つていいと思います。
  204. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えしますが、中野委員の御質問は、十六日と十八日との関係があるので、それを先ず観念に置いて今のお尋ねであつたのじやないかと思いますけれども、とにかくこの資料としては、ずつと以前に、天田委員からと私からの質問で徳田証人がこれを認められた、認められた内容は、いわゆるこれを更に本人から十八日に証言が求められておるわけなんですから……。
  205. 中野重治

    中野重治君 他の面から委員長に私の質問説明しますと、問題が明らかになるために龜澤証言がこれを証言し且つ徳田球一証言もこれを認めたのであるが、この龜澤富男証人におけるこれと、徳田球一証人におけるこれとそれぞれ明瞭に限定すめば、その点は明らかになると思います。
  206. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止
  207. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記をつけて。
  208. 中野重治

    中野重治君 そういう「書信は、」ということになると、「且徳田球一証人もこれを認めたのであるが、」というこれは何になるのですか。書信は提出されておらないのです。書信そのものは……。
  209. 北條秀一

    北條秀一君 私が言いましたのは、收容所宛書信一般を指すのでなしに、去る三月十八日龜澤富男証人証言した「ソ連ウオロシロフ地区内各收容所を回覧されたる徳田書記長よりの收容所宛書信は、」これが先般の委員会において質問されて、それについて徳田球一証人が、極めて的確ではないということは前に徳田証人言つております。そういう沢山の中だから記憶は十分でない。併しながらとにかくそういう書信は出したということは、自分は直接出さなかつたけれども、祕書が出したのだと、而もそれは自分の責任に属するということを、こういうことを徳田書記長は言われたのでありますが、先般私が申しましたように、その收容所宛書信は、徳田球一証人もこれを認めたのであると言つて差支ないと私は思います。
  210. 中野重治

    中野重治君 従つて、お前の書いた鉛筆はこの鉛筆であるかと、然りこれが私の書いた鉛筆である、というふうにこれを認めたのではなくて、書信が、これが認められたというのは、その内容であろうと私が前から言つておることはそれでいいのですね。
  211. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それでいいです。
  212. 中野重治

    中野重治君 従つて「その内容は」と、こう話も付いておる。ここで「その内容共産主義者に非ざるものの帰国を欲しないとの意味に他ならず」云云。念のために読めば、「且つ又久保田善藏他三六八名から参議院議長宛提訴せる所謂徳田要請内容も、徳田球一証人はこれを否定しているが多数証人が肯定している。」その内容について徳田証人政治責任を負うと証言しております。その内容は、共産主義者に非ざる者の帰国を欲しないとの意味に外ならないということは、どうしてですか。
  213. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えしますが、お元気でソ同盟強化のため邁進され、立派な闘士として帰国され、反動に対して共に闘う日の来るのをお待ちしております。このことは、これはやはり反動として帰ることはこれは勿論欲しない。立派な闘士として帰国されということは、立派な共産主義者になつてつて来ることを欲しているということじやないですか。
  214. 北條秀一

    北條秀一君 その点は私はこういうふうに考えております。その内容は、徳田証人の手紙にあります通りに、民主主義者として帰還することを欲するとのポツダム宣言の線に沿うてはいるけれども、それは一つの擬装とまあ言えるかどうか別にしまして、そういうふうな擬装であつて、実はその内容は、共産主義者、共産主義信奉者にならない者の帰国を欲しないとの意味と解されると、こういう私は意味だろうと思うのです、この狙つておるところは。お分りになりましようか。
  215. 中野重治

    中野重治君 それだから、そのことがどうして成る程度でも妥当と認められるかということを私は聞いておるのです。
  216. 北條秀一

    北條秀一君 私は自分の見解は別にいたしまして、極めて第三者的な今言い方をしたのでありますが、ここに原案が出ておるのは、今私が言いましたような内容であると私には理解されたのです。でありますから、若しこれに私がそういう立場から直すとすれば、その内容共産主義者にあらざる者のと言うよりは、まあ共産主義信奉者と言う言葉はおかしいですが、共産主義信奉者にならない者の帰国を欲しないとの意味に解されると、こういう原案の指摘せんとした意図ではないかと私は思うのですが、如何ですか。
  217. 中野重治

    中野重治君 ソ同盟を強指するために闘つて貰いたい。反動と闘う強い民主主義者となつて貰いたいという希望を述べたという、それが、その内容共産主義者にあらざる者の帰国を欲しないとの意味にどうしてなるかということを私は聞いておるのですが、これについては各人各説があるというのならば、百歩を讓つて日本共産党員が国の中にあると外にあるとを問わず、多くの人々に共産主義者ためことを希望すると、こうした場合、そしてそれが今問題になつておるソ同盟に抑留されておる人々に対してそういう希望を発した場合、それはどうして共産主義者にあらざる者の帰国を欲しないということになるか。私が岡元委員長に、岡元委員長共産主義者になりなさいと言うことは、どうして共産主義者にあらざる者の帰国を欲しないということになるのか。その関係をちよつと……。
  218. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それは今中野委員が言われました通りに、各人各様の判断があると思いますが、今までこの委員会調査して来ている向うの情勢等を考慮に入れて来ている言うの情は、又当然その情勢というものをば判断の中に考慮すべきだと私は思う、そういうところから考えて行けばこういうことが言えるのじやないか。
  219. 中野重治

    中野重治君 どういう情勢ですか。
  220. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それは民主グループとか日本新聞その他によつて、現に政治教育が指導されている。そういうような向うの收容所の状態ですね、そういうことはこの委員会によつて明らかになつて来たのであります。そういうところから考えて、こういう手紙が行くということは、その手紙自体考えた場合には、こういうような解釈が私は成立つと思う。各人各様解釈が違う。
  221. 中野重治

    中野重治君 だから委員長がそういう解釈を下すとするならば、そのそういう情勢と、共産主義者にあらざる者の帰国を欲しないということとが結びつらけれるのは捏造でないという根拠はどこにあるのですか。
  222. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それは今までの証言その他によつて、今まで決められて来た各項によつてもそういうことが明らかにされた。
  223. 中野重治

    中野重治君 今まで決められて来た各項は、私はその文句についていろいろ申しましたが、それはそういうことを立証する準拠には一つもなり得ない。その各項と独立に、ここでこれが、その内容共産主義者にあらざる者の帰国を欲しないということにどうしてなるのかということを一つ簡明に説明されませんか。
  224. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えしますが、さつきの私の質問は余り簡單過ぎて……できるだけ簡單に説明したのですが、お分りになつて頂けませんか。中野委員了解できませんか。
  225. 中野重治

    中野重治君 それを了解しろというのは非常に無理なことだと私は思います。特にそれを私が言うのは、こういうところからして、この第四項の最後の結論ですね、「所謂徳田要請についてはソ連政治部将南自ら之を語つたことが、その重大性を物語るものである旨の証言もあり、要請という事実が現実にあつたやの疑いは濃厚なものがある。」これは委員会自身の言葉ということになります。委員会自身の言葉がこういうところから引出されているのであるから、單に或る証人がこう言つた……、それは現実に我々が委員として耳に聞いたということでは済まない問題でありますから、重ねてそこをお尋ねするわけです。
  226. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 私は中野委員にもう一回お答えしますが、いろいろこの問題について、私の意見、いわゆる主観を入れて御説明すれば、それは当然討論になつてしまいますので、できるだけ避けたいのでありますが、あなたが先程質問されますときに、日本内地において岡元が共産党に入るのを希望すると、そういうようないわゆる状態におけるところの判断と、この手紙の判断とは、私は同一と判断すべきではない。いわゆるこの手紙の内容は、先程も申しましたように、いろいろそのときの客観的情勢も違いますし、又いろいろな状態の中でこういう手紙が来た場合においては、おのずと私は解釈も出て来ると思う。そういうことは又あり得ると思う。
  227. 中野重治

    中野重治君 ソ同盟を強めるということは、現に世界の現実に即して見て平和を確保するための大きな砦であるということは明らかでありますから、ソ同盟を強めるということは世界平和を確実ならしめるところの非常に大きなフアクターになる。反動と闘うということは我々ここに集つておる者の任務である。且つ民主主義者となるということは当然のことであります。それでいろいろ久保田証人等々から証言がなされて、そうしていわゆる徳田要請として提示されておるものの内容が、どうであつたかということはロシア語のできる人、できない人、近くにおつた人、遠くにおつた人からいろいろ証言が出ている。一番確実なのは今まで出た資料について見れば菅通訳の言葉だと私は考えますが、そういう内容、例えば徳田証人によつてはあれが否定されておるけれども、そのことを一応離れて、我々が正しい判断を下すための便宜上の事柄として或る仮定を持出して見ると、よく準備された民主主義者として国に帰ることを望む、又他の証人言葉を使えば、ソ同盟の強化のために反動と闘うと共に、手をとつて闘うということが、どうして何か疑いの目を以て見られなければならないことであるのか、何か犯罪的な影を引くものとして扱われねばならないのか。私はこのことは極く当り前のことだと思うのですが、そのことがどうして共産主義者にあらざる者の帰国を望まぬということに論理上結び付けられるのか、これは岡元君自身の主観を聞いているのでなくて、論理的結び付きの手続を聞いているのです。
  228. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員只今質問は、私が先程お答えしたことと全く同じになる。それはおのおのこれ以上のことはお互いの見解の相違となつて来るのであつて、それ以上ここで中野委員意見を述べ合つても結論は出なくなるのじやないか。例えばあなたの言う民主主義と私の考えている民主主義と異なつて来ることもありますし、それを一つにして、それで出そうということは非常に困難なことである、尚この……。
  229. 天田勝正

    ○天田勝正君 僕は先程申上げたように殆んど結論になつたと思つて、昨日の理事会におきましては途中で帰りました。そのことのために何か申上げると責任回避になると思つて発言を成るべく差控えておつたのでありますが、私がこれを大体においてこういう趣旨であるということを申上げたいのは、それは先に北條委員が申されたあの表現が最もそのときの気持としては的確ではなかつたか、こう考えることと、そのことが反動は帰すなという意味に外ならぬということは別といたしまして、通ずるという御議論はこれはもう本委員会が第一国会以来何回も何回も聞いた結果、いわゆる反動とは、さつきもこの点を北條委員が指摘されましたように、我々が民主主義者とか、反動とか、こういう場合、いわゆる反動と闘うということは非共産主義者と闘う、こういうことを意味するのだということが、私らの判断にはずつと系統的に来るのであります。何回も聞いた……そういう意味で文章になつて来ると、先に北條委員が言つたような形の表現が最も正しくなつて来る。けれども反動を帰すなときめ付けるということはどうして表現されるかということになれば、これはずつと今までの委員会におけるいわゆる反動というものからすれば非共産主義者ということになつて来るのだから、やはり帰つて来ることは好ましくないというふうなことになつて来る、こういうことも廻りくどい話でありますが、そういうふうに解釈しております。結局昨日の理事会でもそうではなかつたかと思います。
  230. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 天田委員の今言われました通りなんです。
  231. 中野重治

    中野重治君 まだ私にはその論理的な結び付きの手続が答えられたとは思わぬが、そのことを立場如何に拘わらず、主観如何に拘わらず誰でも当然できるべきものと私は考えますが、その手続をとる代りにそれは主観の相違であるというふうに持つて行こうと委員長はされるようでありますから、それは又その場面で主観の相違の問題で、これは議論することにして、次の点を質問します。この趣旨は一、二、三とも結び付けるわけですが、「多数証人が肯定している。これに関する証言において、従来反動分子帰還遅延というが如きことは專ら日本人指導者によつてのみ口外されていたにも拘わらず、所謂徳田要請についてはソ連政治部将校自ら之を語つたことが、その重大性を物語るものである旨の証言もあり、」というのは「従来反動子分の帰還遅延というが如きことは專ら」云々ということも「その重大性を物語るものである旨の証言」の中へ入るわけですか、文章としては……。
  232. 岡元義人

    委員長岡元義人君) もう一回その最後のところを……
  233. 中野重治

    中野重治君 文章が下手なので私も質問するのに困るのでありますが、最後の第四項のこつちの頁、最後の頁の二行目に「徳田球一証人はこれを否定しているが多数証人が肯定している。」その次の「これに関する証言」から「やの疑いは濃厚なものがある。」までは一文章になつております。この一文章はやや煩雑な構成になつておりますが、私の尋ねるのはこれに関することであります。「これに関する証言において、従来反動分子帰還遅延というが如きことは專ら日本人指導者によつてのみ口外されていたにも係らず、所謂徳田要請についてはソ連政治部将校自ら之を語つたことが、その重大性を物語るものである旨の証言もあり、」この「物語るものである旨の証言、」これは誰の証言か、その証言内容は「従来反動分子帰還遅延というが如きことは專ら日本人指導者によつてのみに外されていた」ものを含むのか、この「従来」から「物語るものである、」ここまでが「旨の証言」ということになるのか、それは誰の証言かということです。
  234. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは、後の証言につきましては「係らず」からここで切れまして、その次です。
  235. 中野重治

    中野重治君 「係らず」の次ですか。
  236. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 次、「所謂徳田要請」……。
  237. 中野重治

    中野重治君 それでは証人は……。
  238. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは十八日のですね、これに前にあつたですね。
  239. 中野重治

    中野重治君 そうすると、「従来反動分子帰還遅延というが如きことは專ら日本人指導者によつてのみ口外されていた」というのは、この原案の起草者の認定、こうなりますか。
  240. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつとお待ち下さい。中野委員にお答えします。先程私が申上げました通りに、「所謂徳田要請についてはソ連政治部将校自ら之を語つた」ことになつておりまして、その以前の分に対しましては、従来の委員会調査した範囲において日本指導者からこういうことがあつたと、こう言われておることをば基礎にして、ここに書かれております。だから証言は「徳田要請についてはソ連政治部将校自ら恒を語つた」、その以下が証言になつております。
  241. 中野重治

    中野重治君 そうすると、「従来反動分子帰還遅延というが如きことは專ら日本人指導者によつてのみ口外されていた。」というのは「口外されていた」とこの原案起草者が認めると、こういうわけですね。
  242. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  243. 中野重治

    中野重治君 「従来反動分子帰還遅延というのが如きことは專ら日本人指導者によつてのみ口外されていた。」ということを立証するものはどんなものですか。
  244. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それは中野委員の方が、十分もう会議録をお読みになれば、しばしば証人が喚問されて、その証言によつて委員会においては明らかにされております。
  245. 中野重治

    中野重治君 そうすると、それは従来呼ばれた証人言葉と、こういうわけですね。
  246. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  247. 中野重治

    中野重治君 この「その重大性を物語る」というのは、何の重大性ですか、何が重大だというのです。
  248. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 重大だというのは、今までは向うの方の、抑留されておる間においては、日本新聞の幹部であるとか、或いは民主グループの一部からそういうことが口外されておつたけれども、先日の証言にもありました通りに、ソ連政治部将校から直接、そういうようなことを言われたということ自体が、今までは日本人の民主グループその他から言われておつたのだが、併し今度はそうではない。ソ連自体の口からそういうことを言われるということは、これは非常に重大な問題である。こういう意味ですね。
  249. 中野重治

    中野重治君 何が重大だというのです。
  250. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員に申上げます。例えば日本人同志では勝手に言うこともあるだろうということも考えられますが、向う側の者が言うということは、これは絶対的なもの、こう普通解釈するのが当り前じやないかと思います。
  251. 中野重治

    中野重治君 そういうことが事実あつたとすれば重大だと、こういう意味ですね。
  252. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  253. 中野重治

    中野重治君 じや若しそういうことがなかつたにも拘わらず、そういうことを結論として引出したならば、そのことも非常にこれに劣らず、或いはそれ以上に重大だということは認められることになりますか。
  254. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうですね。
  255. 中野重治

    中野重治君 そうすると、この一、二、三は一応質問を終つたことにしていいのですが、これはすべて四にも結びついて来ますけれども、これらの証言の中で徳田証人自身の証言、それからソ同盟の、国としての発表、それから徳田証人によつて証言されたところの徳田書記長の名前が出された手紙の内容、このものは專ら否定されて、何らの論理的手続の説明なしに「その内容共産主義者に非るものの帰国を欲しないとの意味に外ならず、」というふうな断定が都合よく引出し得るような証言だけが、ここに並ベられておるのはどういうわけですか。もう一歩言えばこのすべての証言の並べられ方は「徳田球一証人はこれを拒否しているが」、これ一つであつて、「この否定しているが」ということも、この報告としては否定的に扱われておる。他はすべて肯定的に扱われておる。この一方的な取扱は中間報告として並べるのに妥当なものでしようか。若し妥当だとすればどういう理由によつて妥当であるかということをお尋ねいたします。
  256. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えしますが、成る程この何で見れば、徳田証人一人だけをここに出してあると、こう言われますけれども、やはり菅証人にいたしましても、それから龜澤、上村、小俣という証人にいたしましても、これは別に中野委員自体がよく御承知と思いますが、特別色分けをしてというような内容証人ではなかつたと思うのです。それと前からのこの委員会が長い間しばしば証人を喚問して、そうして得て来ておる判断を加えた結果、ここにこういう工合に出て来ておるのであつて、それは少し中野委員の見方が偏見に過ぎるのじやないかと考えられるのです。尚証人証人として徳田証人であろうと、それから龜沢証人であろうと証言に変りはない。
  257. 中野重治

    中野重治君 誰で証人があろうとも、誰であるかということに関係なく、我々は証人証言であるということを重要視する。こうなければならんと思いますが、私がさつきお尋ねした通り、よく準備された民主主義者として帰ることを望むというふうな言葉が、「共産主義者に非るものの帰国を欲しない」と、こういう捏造へ持つて行くのに都合のいいような証人だけが專ら並べられるということは、委員会報告を妥当ならしめない。なぜそうなるのか、現に証人自身によつて証言されておることを、その方はずつとオミツトして来ておるのはどういうわけか。例えば他の例で説明します。淺岡委員等々から出た問題で、十三地区でチーベル大尉が云々というふうな小俣証人からの訂言がありました。これについてこういうものが私のところへ来ておる。  小俣忠男なる男が「十三地区でチーベル大尉が徳田要請について話をした。」と言つておるが、彼は十三地区の十二分所(アルチヨム)に一九四八年六月十日よりいたのであつて、チーベル大尉が十二分所に来たということは殆んどない。又彼が来て言つたというのは、いつであり、どこで言つたかを確かめて貰いたい、又チーベル大尉が作業員を前にして、政治的な話をしたことは私の記憶に存する限り一回もないが、小俣は私と同じ分所にいてどこで聞いたのか。小俣は十二分所から一九四八年の秋か冬から翌一九四九年の四月頃まで、十四地区の病院に入院していた筈であるが、山形の嵐田という帰還者が、その病院での政治的な活動をよく知つている筈であるから確かめて貰いたい。小俣は不平サボ分子で全員の嫌われ者で、反動分子であつた。(ここには反動分子と書いてあります。)十四地区の二分所(ラズドーリノエ)に一九四八年三月沿海地方南部の憲兵、警察官、これは旧日本の憲兵です。警察官、反動が集められたとき、彼はその前のマンゾフ分所において発電所勤務をしており、その際天皇的な存在であつたことを憤慨されており、マンゾフカを去る前にはソヴイエト人を毆打したという噂があつた程のごろつきで、人を毆るということを最も大きな犯罪とするソヴエイトが彼を処罰しなかつたという事実そのものが……。
  258. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ちよつと、今質問の時間ですから……。
  259. 中野重治

    中野重治君 質問ですが……、(「質問は簡明に」と呼ぶ者あり)意見は私は別に述べます。
  260. 岡元義人

    委員長岡元義人君) どういう問題ですか。
  261. 中野重治

    中野重治君 私は同じ質問を実証しておるわけです。つまり証人が一方的でない、証人証言の並べ方が一方的でない、妥当であるという委員長説明に対して、私はこういうものについてはどう説明されるかどいうことを尋ねる、尋ねるためのこれは第一段階です。それでは続けます。
  262. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員に申上げますが、これはその関係の証人の選定につきましては、あなたの方からも発言があつたのです。ですから別にそう不平等な証人の並べ方はしてないと思うのです。
  263. 中野重治

    中野重治君 それは委員長の御意見で、私は委員長意見としてそれは認めます。答えではない。
  264. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは意見ではありません。私は質問に対する説明に、私の主観を交えることは委員長としてできない、委員会における、理事会における原案ですから……。できるだけあなたの質問に対して、どういう事情からこういう工合になつたかという質問に対して答えておるのです。
  265. 中野重治

    中野重治君 その説明が納得できない。この材料は私の意見ではない、私のところに来ておるのだから……(「委員長説明できない」と呼ぶ者あり)委員長説明できなければ、これ以上は……それでいい。
  266. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 先程この問題については、はつきり二回返答申上げました。それ以上のことは見解の相違だから仕上がありませんとこう答えております。
  267. 中野重治

    中野重治君 それは前の問題でしよう。
  268. 岡元義人

    委員長岡元義人君) いや、今の証人の選び方……。
  269. 中野重治

    中野重治君 答えられるように今私が説明いたしますから……、そのものが彼小俣にとつても如何に立派な国であるかということを、経験せねばならぬ筈である……。
  270. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 発言中ですが……。
  271. 中野重治

    中野重治君 それでは簡單にあと読まないで説明いたしましよう。そこで、これに対して同じ地区から、地区というか、地域というか、或いは收容所というか、そこから帰つておる人が現にあります。それは全く反対のことを言つて来ておる。そういうものも十分調べなければ、中間報告としても一定の結論を出すのに非常に不穏当ではないかと私は思うのです。これはつまり、そういう考えをどうして否定されるかということを尋ねておるわけです。
  272. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 今の中野委員の申されることは、委員会には正規に今まで申し出られたことはなかつたと思いますので、そういうような意見が若し出て来るとするならば、それは逐次又継続して行くわけでありますから……。
  273. 中野重治

    中野重治君 今日までにおいても私はそれを出しておりますが、いろいろ多数決等で否決されておる。これは、こういう問題は多数決だからしようがないというように扱つてはならない問題である。それで今までの委員長説明によれば、この原案に書かれておる事柄は非常に一方的であるという印象を残さざるを得ない。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)それで、あとは意見になりますから、次の項目の、結論の方に入つてつて貰いたいと思います。
  274. 北條秀一

    北條秀一君 先程中野委員から質問があつたところで、もう済んだわけですから私から言う必要はないかも知れませんが、重大性という言葉は私の見解を以てすれば若干の妥当を欠く、この意味せんとすることを別の言葉で現わせば、重大性というのは真実性というか、現実性というか、日本指導者が言つて来たことが、いよいよソ連政治部将校言葉によつてそれの真実性が出て来たというところに重大性があるのだ、こういう意味でありますから、ただ重大性という言葉をぽつと初めにとつつけに出したから工合が惡いので、むしろ現実性、真実性を物語るというか、真実性を裏付けるという、そういう意味に今まで私は理解しておりました。それからもう二点注意したいのですが、それは先程言いましたように、前の行の「反動分子」というところを先程天田委員も申されましたが、「所謂反動分子」と、「所謂」という字を附加えなければならないのではないかということと、ソ連政治部将校ということになりますと、政治部の将校一般を指すということになつて、これも表現が不正確になりますので、今回の証言によつて我々は言つておるわけでありますから、ソ連政治部の一将校といいますか、或いは若干の将校が言つたとすれば政治部の若干の将校、こういうふうに正確に言つておく方が妥当であると私は考えます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 今の北條委員の言われましたように、反動分子の上に「所謂」という字句を入れます。それから「所謂徳田要請についてはソ連政治部の若干の将校自ら之を語つたことが、その現実性を物語るものである旨の証言もあり」こういう工合に訂正いたすことにいたします。
  276. 中野重治

    中野重治君 この点に関して、これは委員長にお尋ねするというよりも、北條委員にお尋ねいたしたいのですが、北條委員各種証人証言の結果、徳田証人が認めたところの葉書の内容が、共産主義者にあらざる者の帰国を欲しないとの意味に外ならないということの現実性を物語るということが明らかになつた、こういう意味ですか。重大性という言葉を現実性という言葉に代えるということは、私には分らなくはないし、それでも結構でしよう。併し何の真実性か、つまり私の言つたことが現実性を帶びて来た、こういうわけですか。
  277. 北條秀一

    北條秀一君 その通りであります。
  278. 中野重治

    中野重治君 もう一つ反動分子、或いは反動というのを、「所謂反動分子」というふうにした方が一層正確になるという、そういう趣の発言があつたようですが、「所謂反動分子」というのは何と解釈したらいいのですか、これは今後も継続して出て来るであろうから、ここで一応明らかにして置いて貰いたい。
  279. 岡元義人

    委員長岡元義人君) これは、中野委員にお答えしますが、先程からしばしば各委員からも御発言があつたのですが、非共産主義者だという意味だと思います。では次の結論の方に。
  280. 北條秀一

    北條秀一君 先税私は、その前の「その内容は」云々のところを、こういうふうに訂正したらどうかという意味を出して置いたのでありますが、それはその通り採択される、いや皆さんの御承認を得たと解してよろしいのですか。
  281. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 只今北條委員から御発言がございましたが……。
  282. 天田勝正

    ○天田勝正君 北條委員に直したところを読んで頂く……。
  283. 北條秀一

    北條秀一君 「その内容は共産主義信奉者にならないものの帰国を欲しないとの意味と解され、」あとはそのままです。
  284. 天田勝正

    ○天田勝正君 それで「且又」と続きますか。
  285. 北條秀一

    北條秀一君 それでいいです。速記を止めて下さい。
  286. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を止めて。    〔速記中止
  287. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記を始めて。尚その前のをもう一回お読みして置いた方がいいと思います。
  288. 北條秀一

    北條秀一君 「四、去る三月十八日龜澤富男証人証言したソ連ウオロシロフ地区内各收容所に回覧されたる徳田書記よりの收容所宛書信は、徳田球一証人もこれを認めたのであるが、」そこで「その内容は」先程私が言いましたところに続くわけです。(「進行」と呼ぶ者あり)
  289. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 只今北條委員から御説明のあつた通り訂正することに御異議ございませんか。    「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  290. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そのように訂正いたして置きます。じや次の結論に移ります。
  291. 中野重治

    中野重治君 「以上当委員会が屡次調査して得たる結果より判断するに、所謂徳田要請なるものは、單に国内問題たるに止らず、ひいては国際的にも重大なる影響を與うるものたることを確認しなければならぬ。」これは徳田要請というものが現実のものとしてあつたということを基礎にしているようなんですが、そうなんですか。
  292. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ここの段階まではそれがはつきり断定してあるわけではありません。その最後に、前にも述べました通り断定はしてないのですが、併しながらこの問題は対外的にもいろいろな問題があるので国内問題だけではない。国際的影響を與えることをば委員会としてはこの問題で考えなければならん、こういう意味です。
  293. 中野重治

    中野重治君 そういうことですか。次に尋ねますが、一部の人々がかくかくの徳田要請というものが、本当であるならば、事実であるならば重大である。こういうのか、それともそういうものがなかつたことが明らかであるにも拘わらず、いろいろの経緯を経ていわゆる徳田要請なるものが、今日現にでつち上げられておる。これが一つあるわけです。徳田要請なるものが、あつたかなかつたかということは別に、あつたにしろなかつたにしろ徳田要請として、いわゆる徳田要請事件というものは作り上げられておる。それが重大だというのですか、どつちですか。
  294. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員の御質問について、あつたかなかつたか、あなたは前の証人の喚問のときにも言われますけれども、それはあなただけの考え方であつて委員会としてはそういうふうな解釈は持つていないということをお答えしてやる。御
  295. 中野重治

    中野重治君 まだ委員長は、私の問いの意味が呑込めないらしいから、重ねて説明しますが、なかつたということは事実であつて、併しそれについては論争しなければ結着がつかない。
  296. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そう……。
  297. 中野重治

    中野重治君 併し私の問うのは、そのことではなくて、若しこれが事実ならば、非常に重大であるという意味なのか、事実で私はなかつたと認めるのであるけれども、或る人は事実であると認める。そういう論争の末に徳田要請事件なるものは作り上げられてある。新聞なんかにも書いてある。あの事件が、問題が国内的、国際的に重要だというのか、どつちですか。
  298. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 両方ともです。
  299. 中野重治

    中野重治君 その次に行きますが、「固より徳田球一書記長証人として本件に関する政治上の責任自己にある旨明言している。」この「本件」というのは何ですか。
  300. 北條秀一

    北條秀一君 それは、私は答弁を委員長だけでなく、理事各位がお答えになるのが当り前だと思うのでありますが、「本件に関する」という内容は、何を意味するかということについての見解が、直ちにはつきりされれば、具体的に中野君の問いに応ずることになるわけですが、その点如何ですか。
  301. 天田勝正

    ○天田勝正君 北條君から、委員長理事から答えるのが当然だと、これは御尤もなことで私は一番しまいまでいればさつさと答えに立つのですが、最後のこの起草されたときに立合つておらないから、自分の解釈したのと、今まで指摘した通り、違つている点もあるから、答弁に立たない。ただ責任を持つというために私は答弁を差控えておる。こういうことなのです。このことを再び確認して頂きまして、そういう意味で今の問いに対してお答え申上げますならば、私は先に問題になりました往復葉書、このことをこの場合にやはりいわゆる徳田要請と……。でそのことが次の頁を見ましても、一番最後にそういうこともあつて、そうしたことが、要請したという事実が現実にあつた疑いが濃厚だという結論を一つここで出しているから、そこでこの場合におきましても徳田氏が政治上の責任は認めるということを確か三回であるか言つておると思います。そういうことをここに導き出して来たのであつて、「政治上の責任自己にある旨明言している。」こう言つておる。私としてはそう解釈しております。
  302. 中野重治

    中野重治君 誰かが「やの疑いは濃厚なものがある。」こう言つているということについて、徳田書記長証人として責任を負うということは一度も言つておらないと私は考えます。これは速記録を明細に読み返して御覽になればどなたにも明らかだろうと思う。証人があの際政治責任を負うと言つたことは、自分が直接ペンを取つて書いたものではないにしても、自分と関係のある共産党員が返事を書いて、その中で立派な民主主義者となつて、そうして共同して反動と断乎鬪おうと書いた。その中身についてはそれが自分が直接筆を取つたものではなくても、党の書記長として政治責任を負う。こういうのであつて、私の言葉に直せば、捏造されたいわゆる徳田要請事件、それにまつわつて世間に流布されておる「やの疑い」というものについて政治責任を取るということは言つておらない。又そういうことは実際上できない。だからこの件というものはどういうことになるのですか。この点については……。
  303. 天田勝正

    ○天田勝正君 どうもその最後までおられた人がさつぱり答えて呉れないので、私が引受ける形になつてしまいましたが、これはこういうことです。極めて簡單で、十六日の速記録の三枚目のところでありますが、「○証人(徳田球一君)私自身書いた覚えはありません。祕書が大体書いて出しておる。」こういうことを言つて、次に「○委員長その事実は御承知でありますか。」こういうことを念を押して、「承知しております。それは」云々とこう続いておる。これは單にこの言葉からいたしましても、すべて自分は書くわけがない。外の者が書くのだということで、この出したということを承知しておられるという点から、結局今の政治上の責任自己にあることを明言しているということに続くのであつて、そのことが、つまり政治責任ということについては、あとになつて私が手紙を読み上げたときも申されておるということを申上げておるのです。
  304. 中野重治

    中野重治君 今天田君の言われる通りであつて、そうすれば「本件に関する政治上の責任」という場合に、その「本件」というものは明らかにされなければならない。天田君の言葉からも明瞭なように、証人としての徳田書記長は自分が直接ペンを取らなかつたにしろ、そういう手紙を出したということは知つている。それからその書かれた内容については政治上の責任を負う。こういうのであつて、世間でわあわあ言つているところのいわゆる徳田要請事件、この事件責任を負うものではない、ですから「本件」という場合はその点を明瞭にして貰わなければ困る。というのは、若しこれをこのまま示すならば、例えば私が盗みをしたと、こういうことを誰かが疑う。が、私は盗みをしておらん。私は正直者である。その正直者を誰かがあれは盗みをしたのであるといつてつているという一つ事件新聞にも書かれているように……、そういうものに対して私が政治上の責任を負うということは、これはできないことですから、この「本件に関する」というのは何に関するのか、これは正確に書いて貰いたい。これは私の意見でございますが、尋ねるのは、つまり「本件に関する」という「本件」とは何かということです。
  305. 北條秀一

    北條秀一君 只今天田理事説明によりましてはつきりしたわけでありますが、これは中野委員の指摘する通り、「本件に関する」とは極めて内容が明確でない。明確にしろということであれば、次のようなことであると私は思うのです。それは日本人捕虜の引揚に関する日本共産党指令、捕虜通信、ソ連共産党宛書簡等に対する政治上の責任と、そうすれば非常にはつきりして来る。勿論証人としてですね、その前に徳田球一と出ておりますからね、前田球一書記長は日本人捕虜引揚に関する日本共産党指令、捕虜通信、ソ連共産党宛書簡等に対する政治上の責任自己にある旨明言していると、そうすれば非常にはつきりして来ると思います。天田理事の御説明によつてこれは非常にはつきり受取れましたから、そういうふうに表現したらいいと思います。
  306. 中野重治

    中野重治君 問題が委員会の一致した見解でそういうところに来たとすれば、更に重ねてお尋ねしますが、「従つて同人が進んでその証言通り政治上道徳上の自己責任を明かにする行動に出づべきを国民と共に期待する。」というのは大変抽象的な言葉が並んでおりますが、どういうことになりますか。
  307. 北條秀一

    北條秀一君 もう一度申しますが、これは徳田書記長政治上の責任があるということを明言されているわけでありますから、道徳上の責任ということについては、これは私は私として別な見解を持つのでありますが、確かに「国民と共に期待する」というのは何か知りませんが、徳田書記長証言に立ちましたときに、タス通信もこれを否定する権限をソ同盟政府から與えられた。自分もアカハタ紙においてこれを否定した。だからはつきりしているじやないかと言われましても、日本国民引揚を余りにも待望する結果もやもやしているのであります。でありますから、そういうことに余り拘わらんでさらりとして、こうだということを言われることは、本日の読売新聞の社説にも出ておりましたが、極めてこれは妥当であると私は考えます。それから余りこの点について中野委員が食い下られない方がいいと、私はそういうふうに思います。(笑声)
  308. 中野重治

    中野重治君 北條委員に尋ねますが、この点について食い下るというのはどの点についてかということと、それからどの点についてであるにしろ、それについて私が食い下らないことがどうしていいのですか。
  309. 北條秀一

    北條秀一君 先程申しましたように、前の徳田証人の喚問及びその後の証人の喚問がありまして、本件は当委員会におきましてできる限りのことをしたわけでありますけれども、余り、委員会経過を見まして日本国民はさらりとしていない。でありますから、そこは淡々として徳田書記長がさらりとこうだと、こういうふうに態度を明確にされるということが賢明なことじやないかと、私はむしろそういう忠告をしたい。そういう意味です。
  310. 中野重治

    中野重治君 北條君は恐らく徳田書記長に対してのみならず、私に対してもより賢明になれと、忠告をしたいということだろうと受取りますが、私はこの点にこそ食い下らなければならんと考えます。併しこれは意見だから、その理由は述べない。というのは「従つて同人が進んでその証言通り政治上道徳上」、この「道徳上」というのは削られるか削られないかは別として、「政治上道徳上の自己責任を明かにする行動に出づべきを国民と共に期待する。」国民が誰と共に期待しているのか、これは疑問がありますが、その点、私は尋ねませんが、このことは若し北條委員が今言われたようなことであれば、これはすでに明らかにされておる。又ますます明らかにされておる。なぜかと言えば「本件に関する」というのは、その内容北條委員その他によつて一致して認められたように、日本共産党書記長の名において、ソ同盟共産党に出されたところの確認された手紙、それからやはり徳田証人によつて確認されたところの日本人捕虜宛の葉書、その内容、こういうものであるとするならば、そのことを実行することが、これが政治上の責任であります。これは実行するということは、すでに証人台に立つて証人としてやつておる。又共産党自身が今日までそれをやつておる。引揚者の引揚の完了の問題、それからこれが單のソヴイエトに関してのみでなく、すべての所からの引揚者の正しい引揚、それからすべての日本人がまじめな民主主義者となつて、そうして反動と戰う、このことをやつてもいるし、その通り書いたのだと、こう本人が言つておる。それ以外にどんな政治上道徳上の自己責任を明らかにするということがあるのですか。手紙を書いたということを自己言つておる。手紙の内容はこれこれであると明らかになつておる。それからそれについては責任を負う。それをやつておる。その外に何を政治上の責任を負うということになるのですか。
  311. 北條秀一

    北條秀一君 その点はむしろ私は中野委員に反問したいのです。これはこの徳田書記長が、若しこういうことが問題になるのならば、自分は政治上の責任をとるということを明言されたわけなんです。然らば、こういうことが問題になるということは、どういうことかと申しますと、先程申上げました通り委員会における徳田書記長証言を通じまして、日本国民が成る程と言つて納得しているかと言いますと、納得していない。何かそこにもやもやしたものがあると私は思うのです。でありますから、もやもやしておるというのが問題になつておる。国民の中に問題になつておる。問題になつておる証拠にはこれ又反動新聞と言われるかも知れませんが、今朝の読売新聞の社説にはつきりこのことを書いておる。でありますから確かに問題になつておるのです。徳田書記長は、或いは中野委員は問題になつていないと言われるかも知れませんが、国民の側から確かに問題にしておりますから、その際には明らかにその政治上の責任を取られるということが最もいいのじやないかということを、私は申上げておきます。
  312. 中野重治

    中野重治君 私は北條委員と全く同樣に、これは非常に問題になつておるし、されておる。こういう見地に立つて北條委員に改めて反問しなければならないのですが、先程「本件に関する」というのは北條委員の明敏な解釈によつて、皆全員一致の見解に達したわけです。具体的な問題に……、問題になつておるというのは何かというと、あの手紙の内容でもない、又あの手紙が出されたということに関することでもない。それが明らかになつているにも拘わらず、北條委員言葉によれば、まだなんだかもやもやしておる。この「調査の結果」の最後の言葉を使えば、「要請という事実が現実にあつたやの疑い」がある。その疑いに対して書記長が政治上の責任を負うということは、不可能でもあり、そういうことは我々求めているのではないということはさつき明らかになつておる。私はさつき泥棒と正直者との例を出して説明しました。読売新聞がどういう新聞であるかということは別として、どうもさつぱりしない、もやもやしておるということを書いておるとすれば、それは読売新聞責任であつて徳田証人責任ではない。
  313. 北條秀一

    北條秀一君 それはそうだ。
  314. 中野重治

    中野重治君 私はこれを盗まなかつた。だからあの鉛筆は盗んだのは誰かということがはつきりしておる。それでもまだ疑う者はある。併しちよつとどうも臭いと言つても、そういうものがあるということに対して、盗まなかつた正直者はどうして政治上の責任を負うのですか。私はかくのごとく歪められたコースにおいて確かにそういう責任を負わせようとすることは、政治的な陰謀であると、こう考える外はないと思うのですが、その点どうでしようか。
  315. 北條秀一

    北條秀一君 それは徳田書記長があのときに声を大にして言われたのは、ソ同盟はタス通信に、この徳田要請が極めて馬鹿々々しいものであるということを発表する権限を與えられたということを取られて、だから俺は説明する必要がないのだと言われたのでありますが、そういう私は廻りくどい説明でなしに事実を、これこれこうだ、だから俺の方から何らそういうことについては要請をしたことはないというふうに、さらりとあのときに言われれば、私はより事態は好転したと思うのです。ところが顧みて他を言うという戰法でやられたために、どうも大分部の委員の諸君も、或いは国民の大部分にも十分な理解が行かないというところに私はあると思う。でありますから政治的な責任を取れ、政治的な責任はつきりしろ、どういうふうに政治的な責任はつきりされるかということは私はこれを推定できませんが、苟くも天下の公党としての、而のその公党を指導されるところの徳田書記長としては、当然やられるべきじやないかというふうに考えるのです。
  316. 中野重治

    中野重治君 どうもよく分らんのですが、その次にも「而も、事の重大性に鑑み、委員会としては、政府に対し、本件に関する真相究明につき緊急万般の努力を拂い且つその処置についても断乎たる方針を以つて臨むよう、強く勧告するの要を痛感するものである。」こういう嚴めしい文句が書いてありますが、それは北條君の言われたような、あの際徳田証人が、徳田証人言葉によれば、愚劣な問いに対して腰を低くして答えなかつた
  317. 北條秀一

    北條秀一君 腰を低くしない。
  318. 中野重治

    中野重治君 或いは腰を真つ直ぐにして、冷靜にして答えなかつたと誰かに思われる、そういうようなことについて断乎たる処置を取れということですか。
  319. 北條秀一

    北條秀一君 それは委員長理事に聞いて頂きたい。私に聞かれては困る。
  320. 中野重治

    中野重治君 私は委員長理事にも聞きますけれども、北條委員から今のような発言がありましたから、つまりもつと私自身の言葉で言うと、そのとにかく愚劣であろうと何であろうと、それはそうじやないのだ、こういうふうに言つて、さつと切り上げないで、余り変なことを問うと、その問いを出した人に食つて掛かつたようなことがあつた。それで委員会の空気としてその反感も生じた、そういうことと、それでまださつぱりしないものは、その結果逆に残つた。こういうふうに北條委員は言われたように受取つておるわけです。それならば、つまりそういうことが、事の重大性とか、政府に対して断乎たる云々というふうになるのかということなんです。
  321. 北條秀一

    北條秀一君 先程私は中野委員に申しましたように、徳田書記長みずからが、これが問題になるならば、自分は政治上の責任を明らかにする、こういうことを言われたわけです。これは中野委員も御承知だと思う。その徳田書記長の言われた通りに、問題が残つておるわけですな。これはこの残つておる問題は、問題が残つておるということは否定できないと思う。これも事実なんです。殊に現にここに本日、当委員会に御出席の委員各位にお聽きになりますれば、確かに問題は残つておると思う。でありますから、問題がある。あるのだからあるならば、やると言われたのだから、問題は現にあるのだから、徳田書記長政治的な責任を明らかにしたらいいのじやないかということを、先程むしろ忠告したわけです。
  322. 中野重治

    中野重治君 何に関する忠告ですか。問題が残つておることは事実だ、私はその点では北條委員と同じ立場に立つておる。問題になつておる。非常に大きな問題に作り上げられておる、それは併し徳田証人責任ではない。
  323. 北條秀一

    北條秀一君 それは責任問題が作り上げられたかどうかは別です。併し現実に問題があるわけです。ある問題に対して徳田書記長政治上の責任を明らかにしようと言われたわけですから、どういう内容であつたかということについては、この点は徳田書記長に改めて聞くより外に方法がありませんが、その点は私は共産党においてよく考えて頂いて、先程も私が申しましたことを繰返して申しますと、苟くも天下の公党の書記長が言われた通りに、問題が成る程ある。俺はないと思うけれども、皆がどうも問題にしておると言われるから、重ねて言つてもちつとも差支ないのじやないか。
  324. 岡田喜久治

    岡田喜久治君 実は私はいろいろ拜聽しておるのですが、今当面の質疑応答というのは、質疑応答のいわば度を過ぎておりまして、要するに文章に現わしておることが事実に違うか、違わないか、或いは従来のこの委員会においての論議と違うのか、違わないのか、こういう意味においての質疑応答は済んでおると思うのであります。そうして畢竟するに段々伺つて見ますと、更にこれに向つて、要するにこういう文章の表現の仕方は或いは妥当であるとか、或いは不当であるとか、或いは適当であるかというようなことに亘つて、様々の中野委員のこれは疑問というか、或いは希望というか、現われておる質問に過ぎないと思うのであります。どうも、こういうものをとにかくこれは全委員会としてのこの草案がいいとか、惡いとかということを諮らなければならん場面であると思いますから、一つこの質疑程度において……、質問意見に終つているのですが、若しくは又希望に亘るようなことを暫く措きまして、一応終えて議事進行を願いたいと思います。私共ここにおるけれども筋道にはならない、そういう果てしない意見になつて質疑応答がされるということは、この場合においては質疑応答の域を脱しておると思うのであります。
  325. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 岡田委員のお説御尤もでございますので、この際各委員におかれましてもこの字句等について尚御意見があり、又訂正する箇所があれば述べて頂くというふうなことで進めて行きたいと思います。
  326. 中野重治

    中野重治君 反対。早く進むことについては私も賛成でありますが、併しこの結論というのは非常に大事であります。すべてはこの結論に来て問題になるのでありますから、もう一遍お尋ねいたしますが、北條委員のいろいろの説明がありましたが、分らないから尋ねます。先程よりもとより徳田球一書記長本件に関する政治的な責任を取ることを明言しておると言われますが、この「本件に関する」とは何のことかということは、さつきほば明確な限定を與えられておりますが、これは委員会全員承知のことだと私は考える。そうするとその次に、従つてこれからあとがこの結論の眼目であつて、「従つて同人が進んでその証言通り政治上道徳上の自己責任を明かにする行動に出づベき」だという場合には、これはどういうことを言うのですか。さつき北條君はもつと賢くなつてあつさりしろと言われたのだが、私には分らない。その点と「而も、事の重大性に鑑み、委員会としては、政府に対し、本件に関する」、この「本件」というのは私はもとより徳田球一書記長証人としてのあの「本件」と同一だろうと思うのでありますが、違えば大変重大問題でありますが、「本件に関する真相究明につき緊急万般の努力を拂い」政府にそれを要求する。それから「断乎たる方針を以つて臨む」こういうことは何のことですか、私はもう余りくどくは聽きません。併し肝腎の結論ですね。これは何の結論でありますか。断乎たる決意とか何とかいうのは、政府に対する「本件に関する真相究明」という場合の「本件」とは何ですか。
  327. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 中野委員にお答えいたします。中野委員は十分お分りになつてつて質問されておるのですから、この「本件」ということなどは、今あなたが重大だと言われましたけれども、重大であるかどうかは別といたしまして、「本件」は徳田要請問題という意味であります。いわゆる徳田要請、それから前の方の中野委員から北條委員にいろいろ質問されておりましたが、その内容について北條委員からお答えがあつたわけでありますが、それと先程の「本件」というの内容でありますが、明らかにされておりますが、その内容について、これは当然この指令三百四十七号という指令に対して、これに対する責任を負うということを証言されておるわけです。ああいうようなことに対して、この際はつきりその責任を明らかに行動に……自分が政治上の責任は取るということを言つておられるのですから、又解釈のしようによつて、あなたの解釈と外の人と解釈は違うか分りませんが、このような手紙が果して国民に、それはもう妥当であるというようなふうに率直に考えられるとは、これはまあ思えないわけですね。それはあなたの方では、それは当り前じやないかというようなふうに言われるかも知れませんが、併しながら一面から見ればそういうふうに考えられない。そういうことに対しても自分はその政治責任を負うと言われた部分に対しては、それをただ負うというだけじやなくて、その責任を明らかにして頂きたいということをここに結論として述べておるわけです。それを期待するということなんです。
  328. 中野重治

    中野重治君 委員長は私の問に対しと答えるのに先立つて、私が分つているけれども問うというふうに答えられましたが、何にも分らないで問うわけではないので、やはり何らかのことが分つていた問うには違いないのですが、併しそれをも含めて私は分らないことを尋ねているのですから、やはりそういうふうに受取つて頂きたいと思う。分つていることをわざわざ問うのだというふうに扱われることは私として承服しない。まあそれはそれだけです。徳田書記長証人として政治責任を負うと言つたことは、私は「政府に対し、本件に関する」という場合の「本件」はいわゆる徳田要請であるというならば、これはやはり筋が違つて来る、こう言わざるを得ない。これは併し私の見解ということになりますから除きましよう。併しいわゆる徳田要請というものは、これは作られたものだから……、これはできたと言つてもいい。誰かがわざわざこれをでつち上げたということが惡ければ、できたものである。これは徳田証人政治責任ということとは直接結び付かないということです。この喚問の前提である……、徳田書記長政治責任自己にあると明言している。だから進んでその証言通り政治的の責任を負うべきであり、国民も皆期待しているのだというような場合、それはあの証言内容からも分るように、非常に共産主義者と共に反動と戰つて行く。それから外国に抑留されている者の正しい引揚を求めてわざわざ手紙を出してまで求めるということがあつて、これは今日もやつているし、今後もますますやる。そのこと以外に何か証人が個人として、党の書記長として政治的の責任を負うということは何かあり得るのですか。例えば吉田総理大臣が何か施政方針演説というものを演説して、その点に関して政治責任を負うという場合は、それを総理大臣として、或いは自由党として実行するかしないかという以外にはないでしよう。それ以外に何かあるのですか。
  329. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それとさつきの質問と繋がりが付かないと思うのですが。
  330. 中野重治

    中野重治君 それじやさの点だけで質問の点は私としては打切りましよう。その点とさつきの問題とどう結び付くか、党の主なる代表者、或いは書記長、或いは自由党の場合は何というのですか、総裁というのですか、何だか知らんが、総裁なら総裁、それが自己の言動に関して、自分のなしたことに関して政治責任を負うという場合には、一個の政府の首班としても、或いはその党派としても、公言したことを実行するということが政治責任を取るということでしよう。それ以外にはないでしよう。徳田書記長政治責任を取ると明言したあの手紙の内容、それからその葉書の内容、これは現物は出て来ておらないけれども、とにもかくにも大掴みに言つて、そのことは党も書記長も我々もこれを実行して来ている。又ますますこれから実行しようとしている。それ以外に責任を取らそうというのは、どういうことかということが、私の問いなんです。これが関係がないというのは私にはどうも分らないから、関係がどうしてないのか尋ねたいけれども、先ずこのことだけで止めましよう。
  331. 北條秀一

    北條秀一君 私は中野委員が盛んに主張されておる点は、一応了解できるのです。と言いますのは、別にここに緊急動議案というものを持つて来られて、これは本日恐らくここで討議されると思うのですが、こういうことになりますと、これは非常に大きな問題になつて来るということを、中野委員が恐らく意識しておるのです。でありますから、この緊急動議案については私は別の考えを持つのでありますが、特にこの際指摘しなければならんことは、結論の最後にこれは「正にプレス・コードに違反せるものと断ぜざるを得ぬ」ということになつておるのでありますが、先般の五井産業事件において、事件調査のときに吉田総理があそこに出られて、そういつた問題はすべて検察庁或いは裁判所にあるんで、裁判所の結果によらなければ分らないということを言われたのでありますが、このプレス・コードに違反しておるかどうかということは、国会の問題でなしに、むしろこれは司法部の問題であると私は思う。でありますから、この本委員会はプレース・コードにこれは違反するものだと断ぜざるを得ないということになると、当然これに対して告発するという準備を我々はしなくちやならんということになるのでありますが、そういうふうな用意が委員長及び理事の各員にあるのか。それは当委員会にはなくて、それはそれで政府に任せるんだという意味であるのかどうか。その点について一つ伺いたいということと、もう一つは、これは意見でありますから差控えておつたのでありますが、どうも日本人は右か左かということを区別したがる。と同時に、單に右か左か区別すればいいのに、どうもそこに重みを付けなければならんので、大右大左、極右極左ということを付けるのであります。潔癖性というか、その習癖がここに現われて来て、今中野委員が指摘しておりましたところを申しますと、「緊急万般の努力を拂い且つその処置についても断乎たる方針を以つて臨む」と、真つ向から大上段に振りかぶつておるのであります。果してその大上段に振りかぶつた結果、そこに振りかぶつただけのものがあるならば、いいのです。それが立証されるならば……。ところが、泰山鳴動して鼠一匹ということになりますと容易でありませんので、これは先ず政府が調査しろ、真相究明に当たれということで、当つた後で、若しそこに事実があるとするならば、それこそ国会におきましても、政府においても、断乎たる処置を採るということで、敢て私は遅くないのでないかというふうに考えておるのであります。  それから附加えまして意見でありますが、その結論の最後の方に「なお、本年三月十二日付アカハタ紙」と書いてありますが、これは明らかに共産党機関紙アカハタのことでありますので、「日本共産党機関紙アカハタ」と書くのが正当であると思うし、その次の行も「証言した事実に照らし、意識的なるねつ造なることは」云々とありますが、これは地方の通信者が意識的に捏造したということは考えられますけれども、アカハタそのものには特にそれを捏造するという考えで編集局がやつたんじやないと、私はそういうふうに一応は理解していいんでないか。でありますから、捏造したのは取材者の意識的な捏造である。こういうことは先般の小島証人の言によつて大体推定できるのでありますから、従つてここには單に「意識的なるねつ造」ということでなしに、「その駐在者の意識的なるねつ造」というふうに正確に言つておくことが正しいという私は考えなんです。ですから、そういう点は修正すべきであるというふうに私は考えます。
  332. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 尚これは委員長理事……。
  333. 北條秀一

    北條秀一君 先に質問したことについて、第一プレス・コードの問題について、委員長理事各位は……。
  334. 天田勝正

    ○天田勝正君 理事会といたしましては、別に北條委員が御指摘になつておるように告発の用意とかそういうことをせなくても、こういう断定は一向差支ないと思う。何故かと言いますと、国会法に照らしましても、こちらがどうしてもしなければならんという場合は僞証の場合であります。この僞証の場合だけについては告発しなければならないと書いてある。その他のことについては、せなければならないとは書ていないのであつて、当委員会としてはこう認めるとか認めないとかは、これから又議論もありましようが、併しこういうふうにプレス・コード違反であるということを断ぜざるを得ないというのは、あなたのおつしやるように強く表現し過ぎるという批評もありましよう。併し告発する用意を持たなければこういうことを書けぬということは私共はあり得ない、こう考えております。
  335. 北條秀一

    北條秀一君 それはプレス・コード違反と断じた、恐らく委員長理事は断ぜられたと考えるのです。でありますから、委員長理事が断ぜられれば当然これは告発をして行かなければ事ははつきりしない。でありますから、私は先程聞きましたように委員会でなしに、委員会になる前に委員長理事はそれだけの決意をされてこの原案を出されたが、こういうことを聞いたのです。委員長理事の各位ですね。具体的に言うと、五人の方が、これは確かにプレス・コード違反である、だから嚴罰に処さなければならん、だけれども委員会に持出して委員会である、委員会で決めたらこうしたらいいということは余りにも原案者として私は権威のないやり方ではないか。原案者はそういう断定を下して委員会に出す。委員会は多数決ですから別の結論を出すかも知れません。併しながら少くとも委員長理事の五人の責任者は、そういう断定を下したということは事実なんであります。その事実を私は言つておるわけです。
  336. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 北條委員にお答えしますが、十分にこの問題につきましてはプレス・コード違反につきます問題は問題が非常に複雑でありますので、事務当局、法制局その他関係の方々とも十分この問題については検討して頂きまして、その結果ここにこういう、その表現の仕方がきついとか弱いとかいうようなことは、今北條委員発言通りにあるだろうと思いますけれども、問題は、こう書いたから告発しなければならない、それでなければ発動はできないというのではないのであります。そういう事実が事実あつたということになれば、これは十分に発動できるものであると北條委員に解釈して貰いたいのです。
  337. 北條秀一

    北條秀一君 いやちよつと問題の焦点を今委員長の言は外れておるのですがね。委員長及び理事の五人の人のこれは正にプレス・コード違反であるという断定を、いわゆる資料から検討された結果下されたとするならば、その皆さん意見が当委員会において受入れられるかどうかは別といたしまして、その五人の責任者は当然プレス・コード違反として、これは容易ならんことでありますから、告発するという措置までして初めて責任が完了し得るのではないかというのが、私の意見なんであります。でありますから、これは強過ぎるとか弱過ぎるとかいうのでない。そういう断定を委員長理事がしたということが問題なんであります。若し私に言わせて貰うならば、私ならばこれは、私先程から修正ばかりやつておりますが、策謀であつてかかる事態は新聞紙の公的性質から見て排斥しなければならん、こういうなら分るのです。排斥しなければならないというならば……。けれどもプレス・コード違反とはつきり断じたのですから、断定したなら断定したように五人の責任者ははつきり言明して頂きたい。委員会の態度はそういうことを言つたわけです。
  338. 門屋盛一

    門屋盛一君 これは私も理事の一員ですが、最後の文章まで見てないということは、甚だ時間の都合上怠慢である……。
  339. 北條秀一

    北條秀一君 怠慢である。
  340. 門屋盛一

    門屋盛一君 だからプレス・コード違反であるかないかということは、他の機関で以て調べて決定することであるが、我々もプレス・コード違反であると、はつきりと今北條委員が言われたようなプレス・コードという言葉を用いなくても新聞紙が正確なる報道をやつていないという疑いは十分あるという結論がこういう文章に現われた。これは理事会の権威の問題を言われたが、当委員会において適当にお直し下さることに異議ありません。
  341. 北條秀一

    北條秀一君 今門屋委員が言われたけれども、これは妥協を許さない問題です。ですから二つのことを言われましたけれども、後で速記録を見れば分りますが、二つを言われた。それは截然と区別しなければいかん。それは要するに断定した……プレス・コード違反だと断定した以上、それだけのことをやつて行かなければいかい。
  342. 門屋盛一

    門屋盛一君 無論……。
  343. 北條秀一

    北條秀一君 先程あなたの言われた新聞紙の公的性質から言つて、こういうことをやるのだと言われましたけれども、それならばそういうふうにここを委員会としては、今後持つて行かなければならない、持つて行くべきだということを申上げたのです。重ねて申上げます。であるからこういうふうな事態、こういうふうな事態が新聞紙の公的な性質から見て、排斥すべきだ、排斥しなければならないというふうに委員会が持つて行くならば、私は……。
  344. 門屋盛一

    門屋盛一君 このことは余計……直さずに言うならば、プレス・コードという言葉は使いたくないのですけれども、ここまで使つて、使うとすれば、違反の疑いは十分あるというくらいは言えるのです。
  345. 北條秀一

    北條秀一君 それならばいいのです。
  346. 門屋盛一

    門屋盛一君 それ以上は法的根拠によつて、これはこの委員会としては、これ以上の調査審議をしてみないとどうなるか分らないのです。容疑を以て告発することは差支ないと思うのです。仮に告発せんならんとしても、疑いは十分に持つているのです。
  347. 北條秀一

    北條秀一君 くどいようでありますが、責任ある委員長理事の五人の各位が検討された結果、こういう結論を出されたわけです。でありますから先程天田委員が言われたように、最後までいなくて文章にならんと言われればそれまででありますが、苟くもそういう問題について委員長理事各位は相当なやはり責任を持つて頂きたい。でありますから、この表現はプレス・コード違反の疑いは十分であるというふうなことを門屋委員が言われましたけれども、それは司法当局が判定すればいいわけであります。任していいと思うのであります。私は……。ですから当委員会としては先程私が申しましたようなところで帰結を決めて行くべきだと思うのです。
  348. 門屋盛一

    門屋盛一君 まあ私はこの断ぜざるを得ないということはどうかと思うが、疑いは十分であるというところ以上には讓歩できない。
  349. 北條秀一

    北條秀一君 私もう少しはつきりしておきますが、それは今門屋委員が讓歩できないと言われましたから、私もこれは讓歩できない。はつきりとしておかなくちやいけない。だから私の言うのは、私はこういう原案を出していませんから、ですから委員長理事五人の人が判定し、又疑いが十分であるというのならば、当然その証拠が……、道義的にも、それから政治的にもその責任を明らかにするだけの態度を持つていなければいけないということを勧告しているのですよ。
  350. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 北條委員に申しますが、一部委員の中から告発をするという人は、これは委員会としての告発の方法がないのです。プレス・コード違反に関しましては……。
  351. 北條秀一

    北條秀一君 ですから委員たる……。
  352. 岡元義人

    委員長岡元義人君) その中でする人は勿論委員会、打合会の中でも勿論はつきり述べておられます。出すということを述べておられます。
  353. 北條秀一

    北條秀一君 勿論そうです。それは委員長理事の五人は決して法人格を持つておられないのですから、それは分つておるのです。ですけれども五人の人は少くとも前段において徳田球一氏の政治責任を追及するなら、我々も又みずから政治責任を追究するということをしなければならないということの勧告なんです。
  354. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 了承いたしました。
  355. 天田勝正

    ○天田勝正君 どうも私は余り言われると執拗な気がするのですが、私は始めから言う通り門屋委員も仕舞いまでいない、私も仕舞いまでいない。これは始めから言うように、誠に申訳ないと思つております。ですが私は極端に言えば、この先に議論をされた各項目から著しく違つた点もある。だけれどもそのことは私は一つも触れないのは、責任だけは取ると始めからお断わりしているからなのであつて、それはこういうものが書かれようが、書かれまいが、私はそのときにどうであろうと、それは責任をとるから、委せると言つて出た以上は責任をとるということははつきりしておるのですから、これはお断りして置きます。
  356. 北條秀一

    北條秀一君 了承しました。
  357. 原虎一

    ○原虎一君 議事の進行ですがね、五時半になりますが、ちよつと休憩されて懇談願いたいと思います。
  358. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 只今委員からの御発言がございましたが、暫時休憩いたすことにしてよろしうございますか。    〔「異議ない」と呼ぶ者あり〕
  359. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 十五分間休憩いたします。    午後五時三十七分休憩    —————・—————    午後六時九分開会
  360. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 休憩前に引続き委員会を開会いたします。  先程質疑応答の後にお手許に配りました「調査経過概要」並びに「調査の結果」、「結論」の訂正いたしました箇所を更に今念のために読上げて参ります。  「調査経過概要」では、後から四行目、「更に各種事象があつたことも逐次に明白となつた。又二月十四日には久保田善藏君外三百六十八名より本院議長宛所謂徳田要請問題に関する調査懇請があり、本件に関し、昨二十四年五月六日以降、」それはその通りであります。  「調査の結果」のところで、一の二行目「ソ連関係地域からの帰還については、帰還の実況がこれを証明し、又現地の状況に関する諸証言にも明かなる通り、某時期に特に所謂共産主義教育の徹底したる精鋭分子を集団帰還せしめた事実及び所謂反動分子帰還遅延せしめた事実は、之を認めなければならぬ。」と……。
  361. 天田勝正

    ○天田勝正君 「所謂」でしよう。
  362. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 「所謂」です。
  363. 天田勝正

    ○天田勝正君 「所謂反動分子」を……。
  364. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それから三項で……。
  365. 天田勝正

    ○天田勝正君 委員長ちよつとお待ち下さい。もう一つ、これは修正されないので新らしくですが、時期に対して「某時期」という用語例は多分ないと思うのです。これは「或る」ということでなければならんと思うのです。
  366. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 「或る時期に」と訂正いたします。「或る時期に特に所謂共産主義教育の徹底したる精鋭分子の集団帰還せしめた事実及び所謂反動分子帰還遅延せしめた事実は、之を認めなければならぬ。」、いいですか。その次には三項の「引揚者についての公式の調査或いは個々のこれは関連する陳述によつて、その実態が内地において明かにされた場合、その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られたことも明かにされた。」……。
  367. 天田勝正

    ○天田勝正君 それ以下を削るというのでしよう。
  368. 岡元義人

    委員長岡元義人君) ええ、削る。
  369. 天田勝正

    ○天田勝正君 「右の連絡を立証している。」を削ると、はつきり言つて下さい。
  370. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 重ねて申上げますが、第三項の一番最後の「右の連絡を立証している。」これを削ります。  第四項は「去る三月十八日龜澤富男証人がこれを証言したソ言ウオロシロフ地区内各收容所内に回覽されたる徳田書記長よりの收容所宛書信は、徳田球一証人もこれを認めたのであるが、その内容は共産主議信奉者にならないもの帰国を欲しないとの意味と解され、且つ又久保田善藏他三六八名から参議院議長宛提訴せる所謂徳田要請内容も、徳田球一証人はこれを否定しているが多数証人が肯定している。これに関する証言において、従来所謂反動分子帰還遅延というのが如きことは專ら日本人指点者によつてのみ口外されていたにも係らず、所謂徳田要請についてはソ連政治部若干の将校自らこれを語つたことが、その現実性を裏付ける旨の証言もあり、要請という事実が現実にあつたやの疑いは濃厚なものがある。」  結論のところで「以上当委員会が屡次調査して得たる結果より判断するに、所謂徳田要請なるものは、單に国内問題たるに止まらず、ひいては国際的にも重大なる影響を與うるものたることを確認しなければならぬ。固より徳田球一書記長証人として日本人捕虜引揚に関する日本共産党指令、捕虜通信、ソ連共産党宛書簡等に対する政治上の責任自己にある旨明言している。従つて」……。
  371. 天田勝正

    ○天田勝正君 ちよつと待つて下さい。どこから削つてどう入れると、こういうふうにやつて貰いたいのです。
  372. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 三行目の「本件に関する」これを削ります。削りまして、「日本人捕虜引揚に関する日本共産党指令、捕虜通信、ソ連共産党宛書簡等に対する」をその「本件に関する」のところに入れるわけです。続いて「政治上の」と、こうなつて行きます。それから後ろから四行目に「なお、本年三月十二日附日本共産党機関紙アカハタ紙」の最後に「正に「プレスコード」に違反せる疑いは十分にある。」こういうように「せるものと断ぜざるを得ぬ。」を訂正します。「違反せる疑いは十分にある。」前の委員長理事の打合会の原稿通りに直しました。以上であります。字句等につきましてもう御異議ありませんか。
  373. 天田勝正

    ○天田勝正君 ちよつと待つて下さい。「調査の結果」のところの四項は、これは北條委員が全部修正されたので、同君が参れば明らかになるわけでありますけれども、委員長報告はどこからどこまでを削るということを言わぬものですから、どうも明瞭を欠いたと思いますから、私はこれを自分の記憶でもう一遍ちよつと読んでみます。四項「去る三月十八日龜澤富男証人証言したソ連ウオロシロフ地区内各收容所に回覧されたる徳田書記長よりの收容所宛書信は、徳田球一証人もこれを認めたのであるが、その内容は共産主義信奉者にならないものの帰国を欲しない意味と解され、且又」こう続けておるのですか。
  374. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  375. 天田勝正

    ○天田勝正君 その次の行の「従来反動分子」の「従来」と「反動分子」の間に「所謂」を入れるのですか。
  376. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  377. 天田勝正

    ○天田勝正君 それからお仕舞いから二行目の「部将校」の間に「若干」を入れる。その下の「重大性を物語る」のところを削除いたしまして、「その現実性を裏付ける旨の証言もあり」、こうなるんですか。
  378. 岡元義人

    委員長岡元義人君) そうです。
  379. 岡田喜久治

    岡田喜久治君 先程相談したことで、今の末項で拔けておりはせんか、こういう問題があつたでしよう。「ソ連政治部将校」の上に「若干」と入れたらどうか。
  380. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 入れました。
  381. 岡田喜久治

    岡田喜久治君 「重大性」の代りに「現実性を裏付ける旨」……。
  382. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それも入れました。別に御異議ございませんか。一応質疑を打切つて討論に入ろうと思いますが、御異議ございませんか。
  383. 中野重治

    中野重治君 議事進行について飼いますが、これはどんなふうに行きますか。中間報告を出すことの可否は討議しないんですか。
  384. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 今中野君から御注意がございましたが、先ず委員長からお諮りして行きたいと思います。中間報告を出すということと、それからその内容についてという御発言があつたのでありますが、各委員にお諮りいたしまするが、先ず中間報告書を提出するということに対して一応お諮りしたいと思います。
  385. 門屋盛一

    門屋盛一君 おかしいですね。それは。中間報告をするということはこの前の委員会で決まつておる。中間報告のその報告事項について理事会一任になつてさんざん今搾られたところだ。今改めて中間報告をするかせんかということが議題になるということはおかしい。
  386. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 門屋委員に申上げます。事務局にこの点ちよつと質したのでありますが、どうも失礼いたしました。    〔「了解」と呼ぶ者あり〕
  387. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それでは報告するということは、すでに前の委員会で決まつておりますので、只今からこの内容において報告書を提出するということについて討論を求めます。
  388. 中野重治

    中野重治君 委員会で決定された中間報告内容に対して私の意見を述べます。先ず賛否を明らかにします。私はこれに反対であります。その理由を各項目並びに全体に亘つて簡單に述べます。  この内容骨子をなすものは、一つは四項目挙げられた「調査の結果」として集約されておるものであり、更に大きいのはここから引出されておる結論であります。第一項目から先ず言いますと、ソ連関係地域からの帰還について或る時期に特に共産主義教育に徹底した分子を集団帰還せしめた事実及び反動分子帰還遅延せしめた事実は、これを認めなければならん、とありますけれども、これは認められないと言わなければ事実に合しない。これはその外の問題にも皆関連しておると思います。例えば抑留せられておる日本人俘虜の数というものについても、問題が関係して来ますが、御承知のように一九四六年十二月十九日のソ連地区引揚に関するいわゆる米ソ協定によれば、本協定の全項目は対日理事会ソ連邦代表と連合国最高司令部の代表との間に完全な妥結を見たものであり、且つ引揚の港及び引揚者の数、その他これに関することについては、第二節の第四項に本協定締結に当り、又代表は予見されない情勢の変化により、所定の引揚港及び引揚者数の変更をなす権限を留保する。このことが明瞭になつておるのであつて、すべてはこれに基いて引揚が行われておる。引揚遅延或いは特定の分子を特定の意図の下に集団帰国させる。こういうことと日本共産党と結付けるということは、この協定に照らして全く事理に合わない。これは明瞭だと思います。それについては現にこれはその後の引揚経過にも関係して来ますが、一九四七年十月二十九日対日理事会においてキチレンコ少将もこう言つております。私はここで特に一九四七年六月二十八日にマツカーサー将軍がデレゼヤンコ将軍と会見を行なつた時の言明を引用させて頂きたい。そこでマツカーサー将軍はこう言明した。「ソ同盟の日本俘虜引揚は好調に行われておる」云々、こういうことをすべて否定しなければ、この第一項は成立たない。遅延せしめた事実はこれを認めなければならんというのは誤りであつて、事実と合致しないのであつて、かかる事実はないと、こう我々は認めなければならん。第二項に行きますと、引揚受人態勢の強化に関する日本共産党の指令、これはすでに明らかになつておるように、これから帰つて来る人間はますますしつかりした民主主義者であるから、受入態勢を強化するというふうに、ここで書き出されるなら内容に関連するものでありますが、そのことからして、その指令を出した日本共産党が何らか特殊、或いは祕密なコースでソヴイエト同盟、或いはいわゆる民主グループ、その他の人々と連絡を持つてつた。こういうふうに断定し、それからそれに基いてどういう帰還者が帰つて来るかということを予め承知しておつたものであるというふうに判断されるという、この判断は全く錯誤と言わなければならない。なぜかと言いますと、一九四九年初め頃になれば帰つて来る人々がソヴイエト同盟における生活経験を通して、ソヴイエト同盟と日本のまじめな人民との関係が兄弟関係であるということ、日本に帰つて日本を今日の事態に置いている惡い勢力と闘わねばならん、こういう確信を懐いて帰つて来るということは当然のことであつて、それは何らか特殊な連絡がなければできないものだというふうに言おうとする人々は、ソヴイエト同盟の現状、世界の現状について全く盲目であると言わなければならん。これは他の項目でも質疑応答のときに言われましたように、特殊の連絡というようなことが頻りに言われておるけれども、若しこういうことで日本共産党とソヴイエト同盟との祕密の連絡というふうなことを言おうとするならば、日本の政府がこの警察機関を動かして引揚者の中から特定の分子を引つこ拔いて、これを内偵する特高警察的なことをやる。そのための特殊な金を受取人の署名なしに発行しているというようなことも、やはり日本の警察とソヴイエト同盟或いは民主グループとの特殊な連絡がなければできないということになつてしまう。若しそういうことになればこれは全くナンセンスであつて、要するに問題はそういうところにあるのではなくて、引揚の問題に関してソヴイエト同盟と日本共産党とは何らか祕密の連絡があるものということを強いてこれを国民一般に吹き込もうと、こういう精神がなければ「事前に承知しありたるものと、判断される。」という判断は導き出されない。かかる判断を引き出すことは誤りであり、且つそういう精神の下心があることを証拠立てている。  次に第三項に移ります。ここで問題になるのは「その事態が内地において明かにされた場合、その都度抑留地において直ちに残留者に対する処遇及び指導の変化が見られたことも明かにされた。」こういうふうに言われておりますが、先程の問答からも明らかなように、水原選手のことなんかが事例に引出されましたが、今日までの多くの証人証言によつて戰犯分子が僞つて引揚を急いだということがあり、その際例えば相当責任のある将校であつたものが、元上等兵であつた僞つてナホトカまで来て、それが暴露されたというようなこともあり、それから水原選手がみずから語つているように、ソヴイエト地区にいたときは民主主義分子であるような顏をして、そうして日本へ上陸すると、その民主主義的仮面を振り捨てて軍国主義的正体を現わしたということもしばしばであります。このことは日本政府と密接な関係がある日本の放送局、NHKが大々的に放送している。又各新聞紙が大々的に書き立てております。こういうことが世界にそのまま、電波そのものとしてキヤツチされない、新聞が人に読まれないとこう考えているものがあれば、これは頭隠して尻隠さずの阿呆であつて、世界は決してそういうものではない。そういうことを基礎にして、そうしてソヴイエト同盟と日本共産党、或いは民主グループと、日本共産党とが何らか祕密の連絡があつて、初めてこのことを予知し得たとか、対策を立て得たとかいうのは第二項の場合に言つたと同様に事理に合わないことであり、かかる断定を下す人々の下心を暴露しておる。  次に第四に入ります。第四項目において、徳田球一証人もこれを認めたと言われておるものは葉書であります。葉書の返事でありまして、それは御承知のように、ソ同盟の強化のために奮鬪して貰いたい。反動と戰うために手をとつて進もう。よき民主主義者として発展して貰いたい。こういう意味内容であつて、それは決して「共産主義信奉者にならない者の帰国を欲しない」というふうに捏造されることを許すものではありません。これをその内容は「共産主義信奉者にならない者の帰国を欲しない」という意味に外ならない、或いはそう解釈されると、こう主張しようとする者は多くの人々が、殊に戰争の犠牲者となつた人々が戰争の侵略主義的の罪惡に気付き、故国をどういう方向で再建して行かなければならないかということに目覚めるのを虞れておる人々である。こう言わなければならない。これは且つ又久保田善藏氏外三百六十八名の提出した文書等等が基礎にされておりますが、久保田善藏氏が証人として証言したことから、どういう人々であつたかということは速記録にも載つております。これは速記録に載ることを虞れて証言拒否の態度に出ようとさえしたということでも明らかになつておる。第一いわゆる徳田要請というものが大きくここに出されておりますが、徳田書記長の名においてソヴイエト共産党中央委員会に出された五月五日附の手紙はすでに明らかになつておる。その内容も、如何にしてこれが送れたかということも明らかになつており、且つこれは内外記者団に発表されて、国内、国際両面で発表されておる、又反動は帰すなというふうな、そういう馬鹿な要請はなかつたということは、ソヴイエト政府がタス通信を通して発表しておる。従つてこういうところから共産主義信奉者にあらざる者の帰国を欲しないというようなことは、どうやつても引出すことができない。それですから何かそういうふうな要請が現実にあつたらしい疑いが濃厚であるというのは全く逆であつて、かかる事実は現実になかつたということだけがここから明瞭に引出されて来る。私は問題を簡單にするために、この四つの項目についてこれだけのことの言いましたが、ここからして結論の「以上当委員会が屡次調査して得たる結果より判断するに、所謂徳田要請なるものは、單に国内問題たるに止らず、ひいては国際的にも重大なる影響を與うるものたることを確認しなければならぬ。」という言葉は、従つて捏造せられたいわゆる徳田要請なるものはその内容及びこの捏造の過程、両方を含めて單に国内問題たるに止まらず国際的にも重大な性質を持つておると、こう言わざるを得ない。我我はこういう結論のみをここから引出すことができる。それでは何故こういう全く人間の健全な理性で考えられないことが生じて来たかということについては、いろいろ原因がありましよう。併し当然これは引揚委員会が今日まで全体としてやつて来たプロセスを顧みて見ればよく分ると思います。第一こういう結論を引出すための証人がどんなふうにして呼ばれたか、これは多くの場合極めて反動的な、或る場合にはそれ以上の言葉をさえも言わねばならんのではないかと思われる、そういう証人証言を基礎として引出されている。そうして徳田書記長喚問の場合は、徳田書記長本人の証言、又その他の場合は比較的健全なる理性によつて、この方が正しかろうと思われるような人々の証言の方は気を付けて排除されておる、こういうふうにしてこの「調査の結果」というものが引出されておる。第二には委員会において証人を喚問した際の証人から証言を求める手続に原因がある、こう考えます。近い例を言うならば、最近の確かあれは龜澤証人、小俣証人、菅証人等々が喚ばれたときのことでありますが、先ず委員長は菅証人に対して、成るべく用意された文書等によらないで答えて貰いたいということを要求しておる。然るに龜澤証人に向つては、委員長が先ず発言して、與えられた問題に関する証言ではなく全般に関する感想を述べて貰いたいということを委員長の方から求める。そうすると龜澤証人はかねて用意された原稿に基いてセンチメンタルな美文を読み上げる、こういうようなことをやつている。これは單にあの日の証人喚問において見られたばかりでなく、その他においても繰返し見られておる。これは私がたまりかねて注意をして、例えば淺岡委員が、そういうやり方を途中で打切られた場合も現にある。これは記録に残つております。こういうふうな手続は証人証言を重からしめるゆえんではない。又それらに基いて我が委員会が一定の結論を引出した場合、その結論を真に妥当なもの、公平なものとして人々に認めさせるには逆効果を及ぼすということは誰しも認めなければならない。それから第一今まで我々が国外からの引揚者の問題について、南方その他のことについては言葉として触れられた場合がないではなかつたにも拘わらず、すべてはソヴイエト地区、或いは中国地区に羅針盤を向けて、そつちの方へ向けられて来て、それですべてを掩おうとするという傾向でずつと流れて来ておる。それから引揚げて来た人々の生活の問題、例えばその就職の問題、住宅の問題、或いは手当の問題ということは非常に惡くやられて来ている。或いは日本政府が引揚者のための費用十億円を他の問題に勝手にそれを流用したというような事実も伏せられるという方向へ、ソヴイエト地区の引揚者の問題が、それを伏せるために惡用されて来ている。数に関しては、例えば三十七万人ということがしばしばいわれておりますけれども、三十七万残つておるといわれていた当時において、日本政府は五万人分の用意しかしていないというようなことが、実にこの委員会でちやんと出ております。又数に関しては、十二月何日でしたか、確か司令部からの発表であつたと思いますが、日本政府の調査に基いてということが言われておりますが、それでは、その日本政府がどんな調査をしているかというと、その調査は全く不確実であるということを、総理大臣兼外務大臣自身が明言している。その後も帰つて来た人々が、証人に立つた人々すら自分が帰つてから死んだという通知が来ていたということで、その通知を持つて証人としてこの委員会に現われている、こういう事実もある。この数の問題は私が今ここで説明するまでもなく皆さんも明瞭だろうと思います。それですから去年十二月二十三日、二十四日の両日に亘つて二十人の証人を喚んだとき、第一日にすでに淺岡委員が、三十七万人残つているという数字を諸君は信じるかということを、これは淺岡委員にどういう意図があつてかは私は触れないけれども、一々について尋ねたところ十人が十人とも三十七万人説を信ずるというふうには行かないで、半分近い人々がこれに大きな疑問を出すというところに行つた。そのせいかどうか知りませんけれども、明くる日の二十四日には淺岡委員はそういう質問はもう止めてしまつた。こういうこともあります。  それから先程も私がちよつと言いましたが、この第一項目、第二項目等々に関する問題としては、日本政府がその警察機構を動かして、引揚げて来た人々のうちのしつかりした分子を引つこ拔いて行つて、そうしてそれに対していろいろ特殊に手当をする、それについては相当金を使う。而もその使つた金の受取はなかなか正式には出せないで、受取は受取人の名前はつけては出せないのだということを、その役人が書きものに残している。こういうことすらもある。こういうことをすべて掩おうと……、本当の戰争犠牲者の生活再建のためになすべきことをなしていないことを、掩い隠そうという方向へ、個々の人々は別ですけれども、委員会の仕事は全体としては強く流れて来ている。こういうことをやろうとする限りは、これは広い意味日本国民の生活の再建を妨害する、或いはこれを恐れるという方向へ行くのですから、日本共産党が單に引揚者の問題についてのみならず、この広い日本の人民と結びついて仕事をして行こう、こういう結びつきを中断するように働かざるを得ない。そういう邪しまな目的を以て働こうとすれば、こういう邪しまな無理な結論をも出さなければならないし、この前私は混乱が起きたとき、あれは委員長の無能のためであつたと、こう言いましたけれども、これは單に委員長個人が無能であるという意味で私が言つたのではなくて、委員長相当有能な方であろうと思いますけれども、日本共産党と広い日本人民との結合を無理にも裂こう、それから引揚の問題について、我が委員会並びに政府が当然やらねばならんことの方へは舵を向けないで、そうしてあらゆる事柄に関して、反ソ感情を煽ろうという方向へ舵を引こうというようなことになれば、どんなに個人的に有能な人でも、委員会の運営については、委員長として無能にならざるを得ない。ここに私は問題があると思います。こういうことからして現にこういう捏造が生れて来ておりますが、ここにも書かれておりますように、こういう邪しまな目的によつて捏造されたいわゆる徳田要請というものは、全く今言つたような重大な国内問題としての意味を持つばかりでなく、国際的にも大きな意味を持つ。これは第一にこのいわゆる徳田要請に絡まる問題で、委員会の空気にはさまざまなものがありましたが、日本人がお互い民主主義者として鬪つて行く、それから反動者流と鬪つて行く、又世界平和の現実的基礎としての社会主義国としてのソヴイエト同盟、新らしく誕生した中華人民共和国、これを強めて行き、これを含んで日本の完全な講和を実現して行く。このことが何か犯罪である、又そのことは何か祕密のルートでそういう国々の人々と連絡をとつて行くのでなければできない筈だというような、こういう犯罪的な考え方、それから世界の今日の交通現状に対する無智、こういうことに基いておる。これは最近の中ソ同盟の初めの部分で、こういう傾向がまだ日本に根強く残つているということを非常に警戒しておる。日本が、実際我々は一生懸命やつていてもまだ国外から相当疑いの目を以て見られておるということは、参議院の高良とみ議員の見聞によつても明らかであります。又政府の発表によつても各国が必ずしも日本はもう民主化された、侵略主義の日本は完全に根絶えになつてしまつたと見ていないということは、もう明らかになつております。我々が議員として努めるべきことは、かかる根を本当に引つこ拔く、そうして民主的な方向で日本を再建して行く。そうしてこの力が国際的にも土台となつて、しつかり確保しているところの社会主義国、人民民主主義国と手を結んで行くということにならなければならない。そこにあらねばならん。ところが初めにも言いましたようにそれを何らか犯罪的なものと見る人があるとすれば、例えばこれは泥棒を捕えろという人に向つてそれは犯罪的であるというのと違わないのであつて、それは泥棒自身であるか、泥棒の利益に自分の利益を合一させておる人々である、こういわなければならない。それ以外には考えられない。若し我々がそういう邪惡な目的なら民主的な拔け出ることができるならば、マツカーサー元帥がデレビヤンコ将軍との会談で述べた言葉、又一九四六年十二月十九日のいわゆる米ソ協定、こういうものを国際的な責任を以て評価することができる。それに基いて引揚がなされておるということができる。これを我々が認めるならば、我々はかかる報告をあの多くの証人から引出そうという流れと鬪わなければならない。これと鬪うことこそ同僚議員諸君の、私とその点においては変らざる義務であると思う。何のためにいわゆる反動とは共産主義ならざるものということを無理にも言おうとするのか、こういう結論が若干の人々によつて、引出されておるということは、日本共産党が非共産主義者と共に日本の軍事基地化と鬪う、日本の世界平和に基く講和、日本の独立、これを共産主義者にあらざる人々と共に鬪い取ろうとしておること、他の言葉で言えば日本共産党が民主主族戰線を強く大きく日本全人民のために張ろうとしていることに対する攻撃として以外にはこういう結論は出て来ない。我々はどうしても日本を平和国家として確立しなければならず、そのためには国内にある本当の反動民主民族戰線を破壊し、講和を崩そうとする、こういう勢力とは、すべて手をとつてつて行かなければならん。我々は若しそういう立場に立つならば政治的被追放人となつておる久米正雄氏の日本米州論、これに対しても鬪わなければならない。或いは新聞なんかにすでに現われているような、台湾に向つて有刺鉄線を送るというような、そういう仕事をも止めるように働かなければならぬ。この点でむしろ共産党は日本の民主的人民及び国内の同胞、人民すべてに一様に訴えておるのですが、これを何らか犯罪的なものとして扱おうとするこの中間報告には私は絶対に反対であります。且つ今日まで証人が沢山呼ばれておりますが、私はこの前の委員会には出ておりませんので、そこで今日の段階において中間報告を出すことは、そこで決定されたそうでありますが、このすでに決定された決定を私は覆そうとするものではありません。併しこういう問題が明らかになつておる現状においては私は中間報告をするためには、更に愼重に証人を呼び、一方的でない、又有能な委員長すらも無能振りに陷らざるを得ないような、そういうやり方でない方式で、十分事実を調べてそうして中間報告なら中間報告を出すべきものであろう、こう考えます。それですから私としては、若しこういう形で中間報告なるものが議長に提出され、或いは本会議報告されるのであるとすれば、私はそれに対しては別の意見を留保しなければならない。もつてありますが、一応終ります。
  389. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 別に御発言もなければ只今からこの報告書の採決を……。
  390. 天田勝正

    ○天田勝正君 私共はこの報告内容に賛成するものでありますが、いろいろとここに意見を述べますと又相当時間を食います。ただ今中野委員が仰せになつた点の中で先程私は実は御訂正をお願いしようと思つた点がありますので、その点だけ一つ申上げて置きます。それは私共何らかの今までの本委員会におきまする証人の喚問に当つて、非違が行われたやの発言がありまして、それに対して又反対事由の発言がございましたけれども、淺岡委員の方から反駁と見られる発言があつた。私共日本社会党から見ますると、この日本共産党並びに民主自由党、或いは緑風会、これらの人々が証人喚問に当つて何か偏頗な措置があるというような発言をされることには非常に私共は不満を持つております。日本社会党は曾てこれだけ何回か、或いは何十人かの証人を喚問する場合に、この者を呼んで呉れという要求をしたことはたつた一人であります、その他は常に、委員の名前を明白にして置いて欲しいのでございますが、淺岡委員或いは委員長、或いは中野委員が来られる前でありましたならば細川委員、こうした人達の要求に基きまして調整しておつたのでありまして、殆んどその証人の出し方、選び方というものは極めて公平であつた、こういうことが言えるのであります。その公平に喚問いたし、又相当、その帰還者のいろいろないわゆる色付けを申しますならば民主主義者、或いは非民主主義者とこう色付けてもよろしいのでありますが、そうした区分をいたしましても、その比率からいたしまして、逆に民主主義者と申される人々の方を、恐らく余計取つておると私は記憶しておる。そういうことからいたしまして、決して不当なる処置による喚問ではなかつた。従つてその者からそれぞれ情報を取り、又それらの証人が本委員会に対しまするいろいろな文書を総合する、この中には勿論日本新聞等も入つておりますが、そうしたことが今日ここに「調査の結果」として四項目となつて参りましたので、最後に中野委員が御指摘になりました何かソ連邦、或いは中国人民政府というものを強化するということが、犯罪的な行為に見ておるというお話もありましたが、私共は決してさようではないのであつて、ただ引揚の問題に関しましては別にソ連を強化する必要もなければ、ソ連を弱化する必要もない、ただひたすら私共は自分の肉親を帰して呉れという悲願だけなのでありまして、その方法といたしまして私共は四つの実は請願を常に繰返して来た、このことは今年度は実現されましたが、先ず第一に冬期間も輸送を継続して呉れといこうこと。第二は残つておる人々の数、その收容所の場所を明らかにして貰いたいということ。第三には死亡の数並びに死因、死せる場所、こうしたものを明らかにして貰いたい。第四は戰犯と言われておる人々の收容所の場所、その訴因等を明らかにして貰いたい。こういうので要求ということではないのであつて懇請懇請を続けて来ましたが、これらの懇請を決して私共に如何に戰勝国に対してでありましようとも、無理な要請とは考えられない、その無理な要請でないものが実現されて来ないということろに、私共がこうした問題を取上げざるを得なかつたのでありまして、そのことが今日私共が結果的に、この徳田要請問題につきましても政府において万般の処置を取るということは、これ又さしたる、特に共産党誹謗でも、或いは又究明した結果が、決してこれは共産党の真意にあらずして、單にそれは利用されたに過ぎないという結果が出るかも知れませんけれども、さようにいたしまし前この問題を究明することを中間報告の中に附加えておるということは、不当なる処置ではあるまいというような観点からいたしまして、私はこの中間報告をするということに賛成するものであります。
  391. 門屋盛一

    門屋盛一君 討論に入つているのですから、簡單に我々の考え方を発表したいと思うのであります。  第一に、今問題になつている要請の点からですね。中野委員が言われましたように、これは民主的に教育された者の帰ることは冀うべきことであつて、これを考えないということは世界の事情に対して盲目的であると言われることは、一応理論としては成り立つかも知れないのですが、在外同胞の引揚という、ただその在外同胞の引揚ということのみを考えました場合に、抑留されているところの同胞が、これはまあ戰犯とか、はつきりした理由の下に帰されないということは止むを得ないことであるが、それ以外には民主的に教育されて民主人として帰ろうが、反動のまま帰ろうが、これは帰して貰いたいという高徳において考えるべきであつて、民主的でないから帰さないとか、反動であるから帰さないとかいうことはあられぬわけです。そのあられぬことがあつたかのようなことがあり、尚そのことに対するいろいろの調査をして呉れという申出があつて、この委員会がそれを取上げた結果、まあ不幸にして中野委員とはものの見方を異にするのでありますけれども、併し各証人からの証言の結果、大体この「調査の結果」に現われている四つの事項がここに出たのでありまして、私達特にこの三月の十六日の徳田証人証言の中では、菅通訳の言つたことは、あれは嘘である、そういう事実がないということを本人が言つていることではないか。ちやんとそういうことは新聞に発表しておるのではないか。朝日新聞を見たら分るのじやいかというようなことをも言われたのでありますが、不幸にして十八日に菅証人を調べた結果は、徳田証言が覆されるというような点もあつたりしまして、甚だ遺憾ではありますけれども、当委員会としては委員会の職責上、又中間報告をすべき時期であり、尚これは捏造したものではなくて、今までの各証人について、又文書等によつて調査した結果、事実をここに例記して結論を出したものでありまして、何といいましても用語字句等についてはまあ多少の議論もあり、質疑応答が繰返されたのでありますが、只今の場合それらもはつきりしたのでありますから、これを中間報告として議長に提出し、尚委員長から発言を求めて本会議報告されんことを希望して賛成いたします。
  392. 淺岡信夫

    淺岡信夫君 私はすでに決まりましたこの中間報告に対して賛成するものであります。この問題につきましてはいろいろ申上げたいことが沢山ありままするが、ただ一点申上げれば、現実に今ソ連のタス通信を以て発表されている数字から申しまするならば、大体ソ連に残つているところの人というものは五千二百有余名ということになるのであります。ところが十二月の二日に、昨年の十二月二日に当委員会から派遣されまして、当時の千田委員長北條委員、本員と共に三名参りましたときに、あそこに全国の留守家族なり、或いは肉親から来ておりますところの書面というものは十八万七千通に及んでおるのであります。そして今年の一月の二十二日に二千五百名帰つて来、二月の九日に更に二千二百三名帰つて来た。そうした点から言いますならば、そこにすでに現実に相当数の開きがあるということは、これは誠に明確なのであります。それからその今の中間報告という面から考えまして見ましても、私の祕書が曾ての共産党のやはり一員であつた田中清玄君なり或いは新聞に報道されているところの面々を見ましても、世界を赤く塗り潰そうとする、このマルクス・レーニン主義という点で行く点からすれば、これは当然あり得たことであるということを、曾ての共産党の諸君も言つておる。今この引揚問題を通じて考えてみますると、とにかく教育という問題と、それからソ同盟の建設とかという問題に結付けられておるということは、これはもう誠に明らかなんであります。これに対して一環の繋がりを持つ日本共産党は、当然私はあるべきものと、こういうふうに断ざぜるを得ないのであります。で、またまた今日現われましたところの現象は、ただ單に二、三、或いは三、四に及んでおりまするが、当委員会に寄せられた書面、或いは私が実際に聞きました帰から行きましても、これからどんどんと出て来るということは疑う余地がないのであります。そこで長く申上げることもどうかと思いまするから、大体このぐらいにいたしまして、私は本中間報告に賛成するのであります。
  393. 中野重治

    中野重治君 他の委員諸君から不満な顔色を示されております。それから各会派がその意見を述べて、そうして討論ということになつておりまするから、私は重ねて述べる必要は、そういう形式論理から言えばないかも知れないけれども、他の会派の方が述べられまして、それがやはり委員長報告に採入れられるでありましようから、それについて簡單に私の意見を述べたい。そうして討論としたいと思います。  天田委員から述べられたことは、例えば、一々反駁をしません。各証人に関して事務局から発表された曾ての発言の問題、或いは吉村元隊長が東京においてどういうふうに取扱われたかという問題、或いは岡村元大将がどういうふうに扱われたかという問題、その他を併せて私の最初に言つた意見を反駁し得るものではない。このことを申上げたいと思います。次に門屋先生のお言葉ですが、民主主義者になつてつて貰いたいというのは尤もでないこともないが、併し民主主義者でなくとも帰して欲しいので痛切な衷情だ。こういうお話でありました。正に日本共産党ばかくのごとき意味要請を五月八日に徳田書記長の名で出しておる。そうして現に共産主義者ならざる人が多数帰つて来ておる。早く帰つて来た人の中には相当惡質な人があつて、さまざまな連絡を取つて証言の準備をしておる。こういう事実が現にあるわけです。それですから、私は若し今門屋委員の方で、日本共産党は民主主義者になつてから帰つて来い、そうでない者には帰つて来いと言つたのではなかつた。こういうふうにお取りになつておるならば、あの手紙の文言は速記録にも載つておりますから、どうかもう一度お読みを願いたい。淺岡委員から舞鶴における溜つておる手紙の数、何万通とか十何万通とかいうことがありましたが、これはそれこそ今まで日本政府の発表した数字の極めていかさまであることを証拠立てるものに過ぎない。一体この日本の政府の発表を信じ、ごまかされて来た遺家族がどんどん舞鶴なら舞鶴に向つて手紙を集中する。ところが、実はその中の相当大きな部分がもうすでに戰死しておる。或いは海に沈んでおる。或いは朝鮮に関しては、委員会でも明らかなように、北鮮の未引揚者数はゼロとなつておる。こういうものが大変ここに編み込まれているということは、誰によつて否定されない。且つ舞鶴における援護庁の役人はどういう人間がというば、これは皆戰犯だ。これは第六国会の時に、我が党の細川議員が政府に対し質問を出しておる。あすこに働いておる人間はどういう人間であるか。ところが政府から答弁がありまして、これは諸君にも答弁書が参つておりますから、お分りでしよう。それでありますから、あれは総司令部の特別許可によつてあすこで働いておる。そうして特別許可によつて働いておるということは、特別許可がなければ、そういう所から追放されざるを得ない人間であるということを証拠立てる以外のものでないということ、かかることを一言附加えて置きたいと思います。
  394. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 外に御発言もなければ、採決いたしたいと思いますが、この原案通り中間報告書として提出することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  395. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 賛成の方は挙手をお願いいたします。    〔挙手者多数〕
  396. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 分りました。多数であります。よつて、これは原案通り中間報告を基礎として提出することに決定いたしました。  尚この際、もう一点お諮りして置きたいと思います。できるだけ速かなる機会に、この報告書に基きまして委員長報告を本会議において求めたいと思うのでありますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  397. 中野重治

    中野重治君 その件に関してさつきも触れましたように、私の見解を少数意見としてこれに併せて報告されたい。但しこれに入れるための文章は今直ぐここでは書いてありませんから、明日なら明日、明後日なら明後日提出することができますということと、それから委員長が本会議報告される場合には、私の少数意見の発表をするものだということをここで留保して置きたい。
  398. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 只今中野委員のは承わり置きます。尚、……ちよつと速記を止めて。    午後七時十四分速記中止    —————・—————    午後七時二十四分速記開始
  399. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 速記をつけて頂きます。  先程の討論の際に中野委員に二回発言を許しましたが、この点はこれは例にないことでありますが、この際各委員に御了承を願いたいと思います。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  400. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 尚本日の案件となつておりました陳情、請願が残つておりますが……。
  401. 中野重治

    中野重治君 議事進行に関して……、そこに入る前に片付けておきたいのですが、さつき私が本会議において少数意見の発表を行いたいということを言いましたが、委員長はそれを委員長として了承する、こういうことがありましたが、私はこの委員会でそのことをはつきり認めておいて貰いたいとこう思うのです。
  402. 門屋盛一

    門屋盛一君 議事進行ですが……。中野委員、その必要はないのです。少数意見は随意にできるのです。
  403. 中野重治

    中野重治君 それは私の議事規則に通ぜざることから来た発言でありましたから、じや先程のようにお運びを願います……。
  404. 天田勝正

    ○天田勝正君 口頭報告に対する注文でありますが、今報告の案が審議されまして、それは一応決定されました。そこで口頭報告内容は、これは大抵慣例的に委員長に一任するという形がいずれの委員会でも採られてはおりますが、だたこのことは相当問題が紛糾しつつ討論をされたのでありまするから、この骨子に逸脱せざるよう御留意の上、口頭報告をされんことを希望して置きます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  405. 岡元義人

    委員長岡元義人君) 外に何もございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  406. 岡元義人

    委員長岡元義人君) それでは先程の案件に出ておりますところの陳情、請願は、本日は非常に時間も経過いたしましたので、一応次の委員会に持越すことに御了解を得たいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  407. 岡元義人

    委員長岡元義人君) じやそのように取計ろうことに決定いたします。  尚、今委員会を閉じますが、暫くの間後程懇談いたしたいことがございますので、そのままお待ち下さることをお願いいたします。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後七時二十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     岡元 義人君    理事            天田 勝正君            淺岡 信夫君            門屋 盛一君    委員            木下 源吾君            原  虎一君            今泉 政喜君            岡田喜久治君            水久保甚作君            大隈 信幸君            木内キヤウ君            阿竹齋次郎君            小杉 イ子君            北條 秀一君            穗積眞六郎君            中野 重治君            三好  始君