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1950-02-07 第7回国会 参議院 厚生委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月七日(火曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件 ○社会保障制度に関する調査の件  (厚生行政に関する件)   —————————————    午前十時四十一分開会
  2. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) これより委員会を開会いたします。  厚生行政諸般に関しまして質問の通告がありますので、順次これを許します。中平委員
  3. 中平常太郎

    中平常太郎君 国際観光ホテル整備法は第六国会におきまして立法されたのでありますが、これはその当時におきましてすでにいろいろの方面において疑義がありまして、運輸委員会の方とも協議し、又相談をして貰うようにと言つたのでありましたけれど、運輸委員会は遂に合同審査をせず、そのまま運輸委員会において委員会を通過し、それが本会議を通過したのでありますが、当時丁度身体障害者の問題がありまして、運輸委員会におきましてはいろいろ折衝を重ねた状態があつたのでありますので、遂にこの方面はそのままとなつて運輸委員会の方で議了してしまつたわけであります。当時から疑点となつておりましたものが、未だに氷解されていない。又厚生行政の面におきまして、この国際観光ホテル整備法の定むるところによる、その監督行政並びにその厚生省におきましてできておるところの国立公園法、又旅館業法温泉法等とどういう関係を持つておるか、又その監督行政分野はどうなつておるか。この点が極めて不明瞭でありまして、今後この登録ホテル或いは登録旅館認許可等の問題、衛生上の問題又殊に必要な環境衛生問題等運輸省がどの程度までタツチしておるものか。国立公園内にはとかくこの観光ホテルが設置される可能性があるのでありますが、そうすると公園法という一つのまとまつた法律があつて厚生大臣がこれを監督し万全を期しておられる筈である。その中に建つておるところの旅館旅館業法国立公園法によつて制約を受けておるという関係、並びに温泉等はそういう所にとかくあるのでありますが、その温泉温泉法によつて厚生大臣がやつておる。そういう場合にこの国際観光ホテル整備法をのぞいて見ますというと、部屋の数、或は浴場の問題、或いはあらゆる設備等につきまして悉く運輸大臣の方から監督を受けるようなことに租成つておりますというと、今後の厚生行政は、厚生大臣においてはどういうお考えでおられるか。そういう登録ホテル登録族館につきましては、厚生省管轄外となつておるのでありますか、いわゆる治外法権的なものになつておるのであるかどうか。それから又その業者は二重監督を受けることになるのであるが、この点を明確にして置きたいと思うものであります。  次に固定資産などの耐用年数というものが大分嚴重ホテル整備法には出ておりますが、厚生省の方におきましては、私は寡聞にして余り深く調べていないのでありますが、その厚生省の方の行政の面には、この耐用年数はこれは一致しておるかどうか。それから厚生省は今日まで設備或いは経営の改善などにはどういうふうの斡旋処置をとつてつたのかどうか。次に運輸省の中にホテル審議会というものができておりますが、この法律主務大臣と書いてありますが、これは運輸大臣と読換える性質のものであろうと思われるのでありますが、何故に初めから運輸省ホテル審議会を置くということがあるに拘わらず、主務大臣主務大臣といつてカモフラージユしておるか、何故運輸大臣とそこに明らかにしないかという点。審議会構成分子には運輸省厚生省建設省の官吏が一名づつ加わることになつておりますが、そういうような大事な問題に、まあ運輸省も一名であるから厚生省も一名であると言えば、それきりでありますが、余りに客分的な恰好であつて、重い役目を持つていないように考えられております。それから外客宿泊に適するように造られた施設であつてホテル以外のものであつたら、或いはこれを登録旅館という、となつておりますが、これまでの旅館ホテル外客宿泊した場合において、今までしておるのでありますが、今後はこの登録旅館登録ホテル以外には外客は泊めてはいけないのかどうか。一切外客はこの規則に嵌められたところの登録ホテル登録旅館以外には外客は一人も宿泊できないのかどうか。これが厚生省旅館業法との関係はどうなつておるか、この点。それから登録ホテル登録旅館業には内地人宿泊はできないのかどうか。できるとすればその監督制約運輸省がするのか、厚生省がするのか、この点。その場合における認可許可などはどこへ書類を提出するのか。それから耐用年数その他の規則が複雑で、これらの規約通りにはとてもできないというような旅館は、一切外客を泊められないのかどうか、この問題。希望があつても拒絶して泊められないのかどうか。国立公園内及び旅舘業法のうち取締は今後ずつと厚生省運輸省と、これは二重になるものであるか。設備さえしたらあとは全部厚生省が引受けられるのかどうか。設備の分だけが運輸省がやかましく言うて、それからできた後の厚生行政移つて、全部厚生省あとはお引受けになるのかどうか、相変らず運輸省が廻つていて自分の許可したところの分に対する厚生行政をやるのかどうか。それから二重の監督を受けることになりますと、監督指導の面においては各種の食違いができると思われる。認可許可の場合、或いは複雑煩な手数と、思わざる違反行為になる虞れも予想せられるのでありますが、こういう複雑なことを業者にやはりやらしめる考えがあるかどうか。それから外客日本における趣味というものを満喫したいという気持が誰にもあるのでありますが、殊に日本の風景、日本趣味というものは東洋趣味として相当発展しておりますから、外客は或いは年がら年中洋間に坐つておるけれども、むしろ日本趣味に満ちたところの日本の座敷、その他庭園乃至茶の間、そういうようないろいろな日本趣味を満喫したいために泊りたいという考えであるのに拘わらず、そういう方面を閑却して又元通り外人の常平生使つておるような洋間を拵えて、それでいいと考えておるのかどうか。この條件に適合しない旅館は、例えは外客等が希望しても泊めてはいけないのかどうか。例えて見れば、登録旅館は都市であるならば、例えば十室以上の洋間が要る、田舎であつたならば五室以上の洋間が要ると書いてありますが、この條件通りでなかつたならば、たとえ十室が八室であつたときには、最早それは外客誘致をしては違反になるのかどうか。私はそういう方面におきまして、極めて不徹底なこの法案につきましては前回の議会におきまして十分に討議すべきであるに拘わらず、遂にこのままで通過いたしてしまつたのでありますから、他日どうしてもこの問題は厚生大臣にお伺いし、運輸省にお伺いしてこの厚生行政及び観光ホテルに対する監督、その他に対してはどういうふうに今後運用されますかということについて明らかな御答弁を両方からお願いしたいと思つてつたのでありますが、本日はこの機会におきまして、先ず厚生大臣のお考え並びに運輸省のお考えと明らかにして頂きたいと思いまして、先ず最初に質疑をいたした次第であります。
  4. 林讓治

    国務大臣林讓治君) この国際観光ホテル整備法主務大臣の問題につきましては、今までにいろいろ議論がありまして、遺憾ながら現在では行政管理庁を中心といたしまして、各関係省が目下討議中で、未だその結論に達しておらん実情にあるわけであります。第六回国会におけるその法律の成立の経過に徴しましても明らかなように、この原案の運輸大臣主務大臣と改めましたのは、各省設置法による各省権限及びその所掌事務に抵触なからしめないようにする趣旨を以てできたわけであります。  その内容について申上げますと、厚生省設置法によりますれば、国立公園及び温泉に関する観光事業を指導育成し、これらに関する利用施設整備改善を図ることが厚生省所掌事務となつておるようなわけで、又現に資金であるとか資材の斡旋の実績も十数件に及んでおるようなわけであります。国立公園の区域内にあるホテル、或いは旅館、又は温泉等の公共の浴用に供するような施設を有するホテル及び旅館につきましては、その主務大臣はやはり私共の厚生省従つて厚生大臣となつておるようなわけであります。  将来の問題につきましては何かこれを一つまとまるように、又周囲の外客等ばかりでなしに、あらゆる方面について便宜なような一つ結論を見出すことが必要であろうとは考えますけれども、なかなかこの所管の問題につきましてはそれぞれの利害得失があるものですから未だその決定を見るまでに至つておりませんで、只今申上げましたようにこの所管事項に対するところの設置法によりましてこれを緩和して行つておるような実情であります。尚細かい問題につきましては所管政府委員の方からお答えをいたさせます。
  5. 中平常太郎

    中平常太郎君 政府委員の方からお話があると存じますが、その前に一つ運輸省運輸という目的を持つておる省でありまして、外客誘致という問題は全国的な国民のこれは要望であり、どこの省といえども、外客誘致に反対するものはない。だから外客誘致という問題を運輸省が取扱う性質のものではないと私は思う。厚生省厚生行政はこれはもう專門でやるべきものでありますから、どの省といえども外客誘致には協力しなければならんことはもう当然であると思うのでありますが、運輸省の面における協力は何か、こういうことを考えて見たければ、運輸省外客誘致のための道路、或いは輸送という面に万全を期して、そのなすべき職籍を盡す、これが外客誘致運輸省における私は立場と思うのでありまして、すでに旅館という名前もつき、ホテルという名前がついた限りは、そこへ輸送する、そこへその前まで送りつけるだけのものが運輸省のこれはもうなすべき正当な任務でありますけれども、一度入つたらその旅館をどういうふうにこれを企画を持たしめるか、外客にどういう満足を與えしめるかという問題は、これはもう厚生省の問題となつて厚生行政と全く不可分の問題と相成るのでありまして、便所水洗式にするとか、或いは各居間に鍵を下ろすとか、廊下は何メーターの幅だとか、どういうところにはどういう窓を明けなければならんとか、これは旅館業法に対する、ホテル方面としてはこれはもうちやんとしてなすべきことは厚生大臣の方にあるはずでありまして、そんな辺まで運輸省の方から中へタツチしてやるべきものではないと私は考えておるのであります。だからして何もこの観光ホテルの問題に対してとやかく二重行政なつたり、複雑多岐に亘るようなことはあり得ないと私は思うておるに拘わらず、これが国際観光ホテル整備法から見ますと、国際観光ホテルというものを、外客誘致というものは運輸省が全部その責任を担つてしまつておるかのごとき感を国民に與えておることは私は遺憾であると思うのであります。もとより無限の援助は運輸省はなすべきでありますけれども、おのずからそのなすべき分野というものが明らかになつておるのであります。私は厚生大臣がこの問題に対しましていわゆる政治力が弱いと考える。私は厚生大臣はこれは副総理になつておられるのですけれども、これがなんとこれくらいの問題に、旅館の中の便所のことまで運輸省に世話燒いて貰わなければ厚生行政ができないということはあり得べからざることと私は考えるのであります。速かにこういう問題は閣議においてなり、省内において明らかにして釈然たるものとして十分な厚生行政をお進めになる必要がある。それが荏苒としてなまぬるい感じでおられるところに、私は大臣に対して極めて遺憾の意を表するのであります。  例えてみればホテル旅館の中をなんぼ綺麗にしたところで環境衛生が悪かつたらどうするか、環境衛生は誰が見るか、国立公園法というものは厚生大臣が見ておる。私はこういう分り切つたことにまで繩張争いを、繩張争いはやつてもいいが人の方の繩張まで来ておるということは、これは私は運輸省としては考えねばならない問題であると思うのであります。随分運輸省も忙がしい仕事をなさつておられるからとてもそこまで手をお延ばしにならんでもよいと思います。これは厚生大臣になさしむべきものであると私は考えております。にも拘わらずこの国際観光事業助成に関する法律案を見ましても整備法におきましては主務大臣主務大臣と言うて、そこをカモフラージユしてあるにも拘わらず、観光事業助成に関する法律案につきましては公けに運輸大臣ということが書かれてはおる、公けに運輸大臣と書かれるのであつたならばこの観光整備法にも初めから運輸大臣と書いたらよい。それを主務大臣主務大臣と言うてどちらに決めるか分らんが一応主務大臣にしておこうという考えで、まあ大臣名前を書かず、省の名前を書かず、主務大臣としておいたらよかろうというような、誠に幼稚な而も不徹底な考え方でこの神聖なるべき法律をカモフラージユしておることは、私は極めて不純なものが中にあると思うのであります。やるのならばやるで初めから運輸大臣と書いてよろしい。私はこれに対しまして大臣の今後どういうふうにこれを処理されて厚生行政分野を明らかにされるか、もう一度その腹のあるところをお聞かせ願いたい。
  6. 林讓治

    国務大臣林讓治君) 厚生省といたしましては今、中平さんのおつしやつたのと全く同じような考えを以て現在まで進んで参つて来わけであります。併しながらこれを一度その所管の問題になりましたという場合においては、なかなかこれが一致を見るということはこの問題だけではございません。種種この所管の問題を決めます上におきまして一致しかねるわけであります。現に余計な話ですけれども、今日厚生省からとしては水道の法案を出してみましたところが、建設省から同じようなのが問題が出て参りまして、そうして大臣の間にこれをまとめますまでには事務的に実際にまとめかねるような形になつて参りました。この観光ホテル問題等もこれは議員の方の実は提案に基いたものでありまして、私共の方も事務的といわず政治的といわず種々努力をいたしました結果、多少「ぬえ」的のようなところがありましようけれども、実際の問題をこの外客を控えまして先ずこのようなことによつて進んで行くより外に仕方があるまいということで、今日の実情になつておるわけであります。いずれこの機構の問題等につきましても何か将来まとまるところにはまとめ得られるようなことに私共も進んで行かなければならんとは考えておりますが、これは実際にこれがどうまとめるかということにつきましては、なかなかちよつと政治力が足らんということになるかも知れませんけれども、なかなか実に納まりにくいその欠陷は現在のようになつておるということの御了承を願いまして、将来はすべてに対しまして一元化すべきものは一元化するように、この問題ばかりでなく全体に対しましても我々は心掛けて行かなければならんという心持は十分に持つております。併しながら幾度も申上げました通りその実際ということの問題になつて参りますと、非常に困難だということが今日の実情であることを御了承願いたいと思います。
  7. 中平常太郎

    中平常太郎君 それではこの登録ホテル内部、それから登録旅館内部に対しましては、厚生行政という面は運輸省にお讓りになつておるのでありますか。運輸省のやつておる規則の中に入り込んで厚生行政をなさるお考えか。その点をお伺いいたします。それとも或いは二重行政をおやりになるお考えか。
  8. 林讓治

    国務大臣林讓治君) 私共はやはりそういう方面は、厚生省がやつて行きたいと思います。
  9. 中平常太郎

    中平常太郎君 登録ホテルの中も……。
  10. 林讓治

    国務大臣林讓治君) そうでございます。
  11. 中平常太郎

    中平常太郎君 設備だけは運輸省規則従つて……。
  12. 林讓治

    国務大臣林讓治君) まだ決まつておらんそうであります。
  13. 中平常太郎

    中平常太郎君 それから規格に適つておらん旅館が今日沢山日本にあるのであつて規格通つた旅館は殆んどないといつてもよいと思うのでありますが、今後の整備法によつて建設されるところの登録ホテル登録旅館はそれはできもしましようが、これまでのホテル旅館というものは殆んど規格に適つておらんものが大部分でありますが、規格適つたホテル旅館ができるまで外客は一切宿泊ができないのでありますかどうか。宿泊さしては違反になるのかどうか。
  14. 林讓治

    国務大臣林讓治君) そういうようなものにつきましては宿泊は自由であります。
  15. 中平常太郎

    中平常太郎君 運輸省の方から見えておるから一つ答弁を……。この点がそこまで行つておるかどうかということを……。
  16. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) この法律只今厚生大臣からお話がございましたように議員提案でできたわけでございますから、この法律趣旨はむしろ私よりは提案されました方から御説明願つた方がもつと適切かと思いますけれども、我々も委員会その他の法律條文を読んで知つておりますので、その見地においてお答え申上げますが、この法律ホテル設備をどうしろとかというような命令権規定したものではございませんで、一応法律に書いてありますような一定の基準に合致いたしておりますものは、外客宿泊に適するものであるというふうに登録をいたしまして、その登録をいたしましたことについてどういう法律的効果が起りますかというと、実質的には一応登録されて、外人宿泊して立派なものだという折紙をつけるという効果が出て来るものと思いますが、法律的に申しますと、税法上の恩典が加わわつて来るというわけでございます。従つてその法律によつて運輸省厚生省環境衛生の問題にタツチするとか、或いは便所をどうしろとかいうふうな、具体的な衛生行政をどうこうしようという意思もございませんし、又法律にさような規定が入つておるわけでもございません。主として法律上の効果を発生いたしますものは、税法上の恩典にかかつておるわけでありまして、この点に関しましては大蔵大臣並びに地方自治庁の方に関係するわけでございまして、そういう点を考慮されまして主務大臣と書いて、その実質に応じて従来のような所管権限が分れて、来るものと思います。尚その所管権限につきましては私の方としては、私の方の主張がございますし、厚生省としては厚生省の方の御主張もございましよう。そこで行政管理庁において只今厚生大臣からお話がございましたように、目下調整が行われておるわけでございます。  尚この外人が泊まれるか泊まれないか、又日本人登録ホテルに泊まれないかという御議論がございましたが、そういうふうなことに関しては何らの法律的に拘束されていないのでありまして、オフ・リミツトのところにおきましては外国人といえどもそのホテルに泊まれますし、その他の登録ホテル以外のホテルにも泊まれますし、又日本人がそのホテルに泊るということも自由でございます。  尚運輸省がこの観光ホテルの問題について出て来るのは、非常に出しやばりではないかというような御意見もございましたけれども、これは戰争前から日本国際收支改善という意味におきまして、運輸省に古くから国際観光局ができまして外客誘致事務を実際扱つて来ておつたわけであります。戰時中その事務が一時停止したわけでございますが、又どうしても我が国におきまして、見えざる輸出として観光收入を殖やさなければならぬという事態が参りましたので、我々といたしましては従来の経験と、いろいろの向う樣との関係を辿りまして、現実に国家のために見えざる輸出を殖やすということに努力しておるわけでございまして、別に厚生省領域に入り込んでどうしようというような考えは毛頭持つておりません。
  17. 中平常太郎

    中平常太郎君 大変穏かな御返答でございまして、何ら厚生行政との間に二重なものは持つてないとおつしやるのでありますが、この整備法を見ますというと第一表、二表、三表といつて随分むずかしいところの規格を定められてありますが、これが外客誘致登録ホテルであり、これが登録旅館であるということは明らかになさつておられる。でこれに従つてやるものはこうしなければならんとか、ああしなければならんという規則が明らかにここに出ておるのでありますから、規則方面では運輸省から出しておらんとおつしやるのはこれは私は詭弁ではなかろうかと思う。現在出ておる耐用年限でも鉄筋はどう、木造の家はどう、何年のものでなければならん、或いは椅子、テーブルは備え付けなければならんとか開口部には防虫用の金網まで張らなければならん、卓上電話は呼鈴がならなければならんというところまでこの設備法には明らかにされておるのであります。そんなことは旅館業法の中の外客誘致をしなければならん、これは厚生大臣でもちやんとなさつておられる筈でありまして、ここに整備法の中に入れて規則嚴重になさるということはやはり厚生省の方の厚生行政の方に入つていると言われんのであります。私は運輸省に対して旅館の門口にまで送られるここに向つて十分なる御努力があれば、それから後は厚生省登録旅館登録ホテルというものに対しては積極的に外客誘致の方法を講ぜられる必要がある。それは何となれば国立公園法を持つている、旅館行政法を持つている、温泉行政法を持つていて、十分に謳つて行かれて行きつつあるのだから、どうもこの点が私は二重になる。それでこういうふうに運輸省の方からお出しになつた以上は運輸省は日々の行政監督はそれならばなさらんお考えでありますか。全部この法案に出ておることを運用しようということに対しましては、日々の責任行政はお取りにならんのでありますか。法案を出しつぱなしでそれで後は厚生省にやれというお考えでありますか。この点をお伺いします。
  18. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) この法律には日々の業務監督するという規定はございませんで、この法律に基いて旅館業務の運営について一々監督するとか、指示する、命令するという考えは持つておりません。同時にその権能も持つておりません。ただその耐用年限をどうしろ、こうしろというようなお話がございましたけれども、鉄筋について耐用年限幾らにしろという命令をいたすのではございませんで、ただ鉄筋のものですというと耐用年数幾らということの計算になりまして、それは税法原価償却をいたす、原価償却をいたして、それで支出の面の損金に立てるといういわゆる税法上の計算の根拠として耐用年限幾らにするという、こういう趣旨でございまして、耐用年限をどうしろ、ああしろというところに行かないのであります。いろいろ基準が出ておりますけれども、ホテルというものは基準をこうしろというものではございませんで、その法律趣旨はこれこれの基準を持つているものは登録ホテルになるということが、実際的に或る程度のラベルを貼らされるということで、実質的の効果はそこに出て来るわけでございますが、先程申上げましたように、法律的に税法上の対果が発生して来る、免税の対果が発生して来る。こういうわけでございまして、今おつしやられるように、その法律に基いてその業務をどうこうしろということは全然ないのでございまして、若しそういつた必要のあるといたしますれば、旅館業法その他の業法によつて規律されるかように考えております。
  19. 中平常太郎

    中平常太郎君 それでは国際観光ホテル整備法案というものは、運輸大臣監督に属する法律となつているように思いますが、その運用につきましては、もはや全部厚生大臣厚生行政に入つてしまつてつてよろしいという考えで、何らここに矛盾がないのですが、たとえて見れば登録ホテル内部における問題などはその二重行政にされるのか、厚生行政一本で厚生大臣一本で行くのでありますか、その点をもう一度明らかにして下さい。
  20. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) この法律厚生を直接に規定いたしているとは私は考えないのでございまして、この法律を運用することが、いわゆる厚生行政領域を侵すというものではないと考えるわけでございます。
  21. 中平常太郎

    中平常太郎君 厚生行政をそのまま見ますと、その目的外客誘致でありますが、外客誘致をやるための、その旅館法がいわゆる登録旅館登録ホテルというものの内部というものに対しては、それならば厚生大臣に全部お委せしておられるという立場でありますか。
  22. 荒木茂久二

    政府委員荒木茂久二君) それは厚生省設置法規定されている限りにおきましては、その限度において厚生大臣権限を行使されるものと考えております。
  23. 中平常太郎

    中平常太郎君 その点はこれで結構です。
  24. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 国際観光ホテル整備法に関連しまして……。
  25. 井上なつゑ

    ○井上なつゑ君 ちよつて運輸省の方に小さいことでございますが、お伺いしたいのですが、東京のステーシヨンは只今修理中でございますが、東京のステーシヨンのステーシヨン・ホテルをお持ちになるということでありますが、それからこの整備法によりまして、日本の非常に大きな停車場にステーシヨン・ホテルをお作りになるような御計画がおありでございますか、伺つて置きたいと思います。
  26. 間島大治郎

    政府委員(間島大治郎君) 只今の御質問に対しましては、東京のステーシヨン・ホテルは実は戰争前は御承知の通り、国鉄の直営でございましたが、戰災を受けまして国鉄としても復旧の計画を持つてつたのでありますが、御承知の通り国鉄が赤字財政になりまして、設備の改良も主として輸送施設の方に資金を投じなければならんという実情に相成りまして、国鉄みずからの手では当分の間やることができないというふうな状況に相成りましたので、適当な民間の方々の手によつて、あのホテルの復旧を図つて行きたい、こういうふうな趣旨で今進んでおります。まだはつきりは決まつておりませんが、或る程度は計画が進んでいるというふうに聞いております。それから今後できるああいうステーシヨン・ホテルについての方針につきましては、別にはつきりした方針はございませんが、併し国鉄といたしましても、将来の停車場計画といたしましては、いわゆる民衆駅というような名前を使つておりますが、民衆、公衆の便利に供するような施設を総合的に設けるといつたような方針の下に、相当規模の停車場にはやはり或る程度宿泊施設というふうなものを作つた方がよいというような考え方で進んでおるのでございますが、併し何分今申し上げましたような資金難のために、なかなかそういつた方面に金を投ずることができません。現在ではそういう方面にちよつと手をつけるわけには参りません。併し又一方停車場会社というふうな構想もございまして、現在停車場会社というふうなものの手でステーシヨンを造つておりますのは、池袋の駅が漸く着手いたしました。それだけでございますが、地方に尚二、三そういつた計画が進んでおるというふうに聞いております。
  27. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 観光事業整理法に関しまする質疑、この程度で打切つてよろしうございますか……。   —————————————
  28. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 次に私設社会事業の問題に関しましての質疑を願います。
  29. 中平常太郎

    中平常太郎君 この私設社会事業の面におきまする中での主として授産事業の問題につきまして、当局に御質疑を申上げたいと思うのであります。授産事業の方は、昨年から厚生省におきましては、大分その整備にお骨を折られまして、嚴重な授産事業の刷新につきまして、各局県に指示を與えられ、それに準拠すべく各市町村におきましても、その所在の施設に対しまして嚴重に調査ができた筈でありまして、昨年末全部そういつた方面の調査が全国的にできた筈であります。これは誠に必要な問題でありまして、授産事業の名の下に搾取をしたり、或いは又個人が利益をなすところの状態に置かれておるような施設、乃至全く授産事業のカモフラージユの下に営業的なことをやつておるものというようなものが、この終戰のどさくさからできて参りまして、美名の下に隠れて一個の営業のごとくなすものがあつたということは、これは誠に遺憾なことでありまするけれどもが、今日これは整備しなければならない対象と相成ることは、これはもう当然でございまして、我々も双手を挙げて賛成するところでございます。然るところ、この整備の方針につきまして、その嚴重にすることはよろしいけれどもが、その発達を阻害し乃至はその経営の不可能を強要しておるがごとき、整備の厳格な指示を與えられておる点がかずかず見受けられるのであります。日本は御承知の通り、生活保護者の一歩手前、ボーダー・ラインにおるところの線を上下しておるものというのは随分沢山ありまして、一歩誤れば生活保護者になつて、国の御厄介にならなければならない。どうでもして何かの仕事をしてそういつた状態にならないように家計を維持して行きたいという考えがあるところの貧困階級というものは、随分沢山あります。その中には世帶主の收入ではどうしても足りないということのために、妻が授産場に行つて僅かでも働いて儲けたいというものがある。又娘或いは子供を行かして、そうして生活の足しにしようと思つてつておるものも沢山あります。そういうものを打ち切つてしまつたなれば、すつきりとするように見えますけれどもが、それは直ちに生活保護法の増加を意味するのでありまして、決してこれは敗戰日本の困難な社会情勢におきましては、とるべき策ではないと私には思われるに拘わらず、この授産事業の整備要綱の中には、嚴重にそんなものを吐き出してしまえ、適格者でなければいかんと、こうなつておりまするが、適格者というのは、第一番に身体障害者はもうもとより或いは低能、或いは一般の企業体のところに雇用をして貰えないところの稼働力の弱い者、そういう者に限る、こういうことになつておるのでありますが、それらはもとより授産場の適格者には相違ないが、貧乏な家庭におきましては少しでも收入を増そうと思う場合には、健康な娘も来る、又健康な母親も来る、又健康な弟が来ることがある。又妻が働いておつて食えない場合には健康な夫が来る。そうして妻の收入と合せて自分の生活を維持しなければならない。ただ来たところの人を見れば、お前はここに来てはいかん、お前はしんでしまえ……。ところが、ここに極めて困難な問題がある。この整備要綱にこう書いてある。「然るに、授産事業の現状は、このような作業員の厳格な適用が守られておらず、独身の婦人、未亡人、引揚者、失業者等、稼働能力のある男女、即ち一般工場において働けば一般男女並の労働賃金を獲得し得る人々が作業員の大部分である事例が多いことは、授産事業を一般企業と判然と区別し難い大きな原因をなしている。又このような人々は職員の指導訓練が必要であるからとの理由の下に授産事業に收容することも、明かに労働省所管の職業補導施設との混同である。」こう書いてある。「このような稼働能力のある男女作業員を收容しなければ経営して行けないような授産事業は、社会事業としての性格を逸脱しているのであるから、断乎としてこれを授産事業の分野から排除して行かなければならない。更に又、このような作業員を先に列挙した收容し得る資格のある作業員の中に若干でも包含している授産事業は、直ちにこれらの人々を事業より締出す方策をとらざる限り、授産事業としての適格性を認めない方針とする。」とこうなつておりまするが、この独身の婦人、未亡人、引揚者、失業者などが直ちに一般労働者並の賃金が取れるであろうというて、工場に雇うて貰えるかどうか。今日それでなくとも立派な身体を持つておる人間に数百万の失業者がある。失業者が満ち満ちておる。それが今日仕事をしたくとも雇つて呉れるところがない。そういうような社会情勢であるのに、授産場の方に行つて独身の婦人や未亡人が働くのに、お前らは出て行つて商売人のところへ行け、企業家のところへ行けと言つたところで、行く先がない。又、労働省の職業補導設備というものが日本幾らある、誠に蓼々たるものである。その補導設備たるや、どこへ行きましてもただ大工の端くれを拵えるか、小間物の端くれをするように仕事を教える労働者の職業補導所というものは、決して一般的に誰も彼も行つて、その習おうと思う仕事を中年なら半年行つたところで、到底一般人の熟練した工員さえ失業している中に、職業補導所を出たところのうろうろするような情けない状態の者を一般の企業家が雇う筈がない。職業補導所を出れば、これは幾らかの賃金を貰つて食べて行けますが、出たら直ちに失業者として流浪をしておるのが現在の状態であります。それを文書の上で直ちに職業補導所へ行けと言うて書くのは早いけれども、行き先がない、行つたところが雇つてくれない。こういう実情がありながら、僅かしかない職業補導所で何か金科玉條のように言うて、厚生省の側から、授産場からしめ出して出て行けということは、社会の情勢を知らんも程があると思うのであります。しめ出すどころか独身の婦人、未亡人、引揚者、失業者等の、一時的な、いい職業のある間、一時でも働こうとする間は、労働勤労意欲を持つておるものは、授産場へ吸收してこそ、私は初めて授産場の使命があると思う。しめ出すどころではない吸收すべきであると思うのです。この点が指導擁護と大変な違いがあると思うのです。これに対するお考を聞かねばならん、お伺いしたい。  それからこのような趣旨を徹底するためには、授産事業の作業員は居住の市町村長の、資格の認定を受けなければならないということが書いてありますが、これは誠に結構なことでありまして、これは我々は隻手を上げて賛成する條項でありますので申上げることはないからして、私が今申上げたような難儀な家庭、ボーダー・ラインのものは市町村長が直ぐに証明してくれますから、授産場で仕事をさせて貰えるだろうと私は思うのでありますから、この前申上げたのとそこに違いが出てくるわけであります。  それからこの作業の運営の面におきまして、授産事業は、一般企業家に見られるような利潤から、経営並びに役職員、事務員の費用と、固定資産の償却その他資本蓄積に必要な諸費用を控除した残りを工賃として支拂うべき形態を決してとるべきではない、これはもう私は当然であります。そういうものをとつて後の残りを工賃に拂うというようなことはすべきでない。ないがこれは机の上の議論でありまして、実際におきましては授産場は一年の経営をやつて見て、そして收支計算をしてみて余つたら、それから後にその雇用者の、従業員に賃金を拂うといつたら、それなら一年の間従業員には金はやらない、差引勘定がどうなつているか分らない、差引勘定をして見なければ、余りがなければ貰えんというと、これ程矛盾な無慈悲なことはない。そういうことがあり得べからざることであるからして、これは数行を費やして書いているのですけれども、そういうことをする授産場は今日あるまいと思う。少くともその日さえ喰えん、一ケ月の給料が待てない、我々の経験から見ると、一ケ月の給料が待てないで、従業員には十五日目、十五日目に工賃を計算して、その日までのものを渡して漸く生活の足しにしておる。いわんや一年のしまいに調べてみて利益があつたら配当しようというような、そういうようなことは、授産場でやれるものでは決してない。たとえ損がいこうとも利益があろうともなかろうとも、とにかく一定の決めた工賃はちやんと十五日、十五日に渡して生活の安定を保障しておるところに、授産場の特質があるのでございます。利益がなかつたならば共同募金も来ましよう。又それで足りなければ寄附者もありましよう。とにかく利益がなかつたらその工賃を渡さんというのではいけない。利益があろうがなかろうが工賃というものはでき高によつて渡すべきだ。或いは日数に応じて渡すべきだ。大抵の授産場は能率給であります。自分が一生懸命働きさえすればそれだけ收入が増加するようになつております。ところがそれが一つの企業体のごとく見られる。それは又見る筈でありまして、原料、工程、製品を出さなければならん。その間に買う資金があり売つた資金もある。又買うにしても相当の運動が要る。売るにしても相当の販売係が要るのであります。又それに対して仕組が要ります。特にインフレということになりますと、四、五年前の資金が十数万円でできたのが、今日百万円でなければ同じ事業をすることができません。してみれば借金もしなければならん。あらゆる面において経営に困難であるに拘わらず、失業者を少しでもこの困難な家庭を救おうと思つてつておるところの授産場は沢山にございますが、それを構わんで一方から整理してしまつたならば、そのボーダー・ラインの者がどこへ行くか、直ちに生活保護法に顛落する以外はないじやありませんか。それを利益があつたら渡すというようなことではいけない。もとより利益のあるなしを論ぜず工賃として渡さなければならんことは当然であります。工賃なるものはどうかというと、初めから規則があり、この仕事をすれば何ぼ取れるということが明らかになつておるが、授産場に来ればどこの授産場でも傘を作り、草履を作り、縄をなうが、一個何ぼ、一本何ぼ、百枚何ぼという規則が出ておる。それによつてつたならば熟練した者は日に百円になり、熟練しない者は五十円、そういうことになる。だから熟練するに従つて收入が殖えるということになりますが、それを何じや、授産場外の企業体の賃金より少くなつたら搾取したとこう言う。賃金と同じ程やつたら授産場なるものは大きな何かの特長がなければやれるはずのものじやない。だから初めつからこの点に、一個何ぼ、一本何ぼ百枚何ぼと決めて置けば搾取じやない。固定された資金を渡すといえば搾取とは言えない。それは安いことは安いけれどもが少くとも娘を行かさにや家が持てないということを言うて来る以上は、そこに来て一家を支える、一家を扶助するという意味でありますから、安くとも授産場で働くことを喜んで来る。それをお役人は、官僚の方はやつて来て、お前は五十円でやつておるのか、この仕事をした者の年齢で五十円でやらせて、これは何じや授産場が搾取しておるということを言うならば、果して授産場が保てるか保てないか、保てんなら閉場しなければならん。閉場したら何十人が直ちに生活保護法を受けなければならん。働ける以上は五十円取る者があつたり百円取る者があつても、それはその人の技楠の巧拙からできてくる問題でありまして、それを能率給でやるならば搾取ではない、それを市場の賃金より渡してないものは搾取と認める。こういうような考え方を持つということは、私は授産場の経営におきましても間違いきつた考え方であると思うのです。  それから出納等を明らかにしたい。これは当然でありまして、いいことも大分ありますからいいことはここに申上げるまでもないのでありますが、それで授産場は営利でないからして、そう突飛なことはないが免税の点もあり擁護される点もありますので、共同募金も貰えるというので、政府の方からは別に補助金が貰えないのである。それは憲法八十九條が示しておりますから貰えないのでありますが、又事務費なんかも貰えない。事務費を貰うところのものは特別に市町村がやつておるということはありましようけれども、大抵の場合は事務費は貰えない。ただ共同募金にすがつておる一本でありますが、そういうふうに事務費も出さず、補助金も出さないという授産場であるならば、その目的さえ立派にやり、その業績さえ上つておるならば、すべてそれをそういう整備の対象にする必要は私はないと思う。それから又入つておる従業員が盡く生活保護者でなければならんと考えるのは間違いである。少くとも收入の過少なものは入る條件に適う適格者であると考える。收入が少ないから来て働こうというのだから、そういうものは今日日本に何程あるか分らん、何も生活保護者ばかりそこへ来なければならんことはない。むしろ生活保護者というのは五人家族で六千円在貰つておるのでありますが、ボーダーラインの線の六千円貰えない、四千円か三千円の收入しかないので、女房や娘がいつも難儀して授産場に来て働いておるものが沢山ある。それが働いて取つて帰るために生活保護にかからない、それで辛抱して生活をやつておる。これが一朝転落したら五人家族で六千円、国家が損する、早い話が……。私がやつておる授産場などを例にしますと、大変申訳ないのでありますけれども、団扇をやつております。団扇で八十五人か九十人程来ておるのでありますが、この中に三分の一くらい生活保護者がおりますが、後は生活保護者じやありません。皆收入過少者であります。貧困な階級であつて、万一廃めたら私共の受産場だけで五十人くらい生活保護者が出て来る。出て来るというのは一軒の家庭に五千円渡そうということになれば五五、二十五万円一カ月に殖える、そうすると一ケ年には三百万円の国費と市町村費、県費が要る。三百万円の負担の殖える仕事を、私共の方で団扇をやつて、六七百万円の団扇を作つておりますが、そのために女が三千円程度の收入を取り、男が四千円程度の收入を取つておりますが、それで生活保護にかからないで済んでおるものが五十人くらいある。そういうものは皆不具者かというとそうじやない。皆貧困階級で、何とかして働かにやならんが仕事がない、仕事がないからしてここへ来て働こうというので娘が来ておるところも、女房が来ておるところもある。又女房がどつかへ行くために亭主が来ておるものもある。それは皆生活が困難極まるので来ておるのであつて、それから收入を得ておるのでありますが、一見したところそう不具者ばかりおらん、おらんから、お前はここへ来る資格がないじやないか、出て行けと、一方から例えば県庁から来て出してしまつたらその人はどうするか、泣きの涙で以てここに置いて呉れとすがりつくに違いない。それをどうするか、一概に搾取という考えでなくして了解の下に入り、その家庭を助けるということになれば、何も差支えないと思つてつておるのでありますが、而もそれが條件に適わんからいかと言うので、私は県庁へ行つて聞いたら、あなたの所はもう結構ですと言うて呉れましたけれども、やはり日本国中どこの授産場におきましてもこういうことはあり得るのでありまして、まだ外の授産湯ももう一つつておりますが、これも四五十人働き、下駄を作らしておりますが、男は四五千円取り、女は二千五百円取つております。やはり必要です。だからその内容充実ということを考えて行かんと、それに対しましては多分に金融機関を何して、私もいつも百万円程度から百五十万円程度に実印を押して一文も取れんのに、自分がないのに私は実印を押して銀行で頭を下げて金を借りてそこへ使わしておる、それを廃めてしまつて、もう一年、一年で切つてしまうような授産場ならば、今年切つてしまえば来年できない。来年しなかつたらその仕事は決して人も集まりやせん。方々で難儀して生活保護法に引つ掛かつてしまう。仕事も碌な仕事にならん、休みつつやつたならば碌な仕事はできない。あれは技術の問題でありますから、引続いてやればこそ製品が市場へ出ることができるのであります。私の方で作る品物は今年はフイリツピンの方にも輸出するということになつております。とにかくにも授産場の整備に対してはその内容をお考えにならんというと、ただ身体障害者ばかりを入れた授産場だつたならば、日本国中の授産場は皆潰れてしまう。絶対に経済が持てないのであります。又毎年々々大きな赤字を出したならばその赤字を誰が償うか。廃める域外はない、廃めても何もその人は困りやせん、困るものは従業員が困る。私共は小さい商業じやけんにやつてつた。だから何もせんだつても食えんことは一つもないけれども、借銭にも何ぼでも判を押しておる。犠牲を拂つておるけれども、それがというのが貧困な階級にどうぞして生活問題に潤おいを與えようと思つてつておる。それが整備に……私の方はよかつたけれども、その他のもので潰れるものがあつて難儀した話を大分聞きますので、ボーダー・ラインのものの行先を少しでも塞ぐということのないように厚生省はお考えにならんといかんと思いますが、この点に関して申上げたいことは沢山ございますけれども、大臣並びに木村局長から親切な、そうして十分思いやりのある方法を以てやるという御決意をお聞きしたい。
  30. 木村忠二郎

    政府委員(木村忠二郎君) 授産場の事業の問題について非常に詳細に亘りまして御質問があつたわけでございます、御説誠に御尤もでございまして、授産事業そのものが必要でありますること、並びに健全な授産事業というものを育つて行かなければならぬということにつきましては、至極同感でございます。只今厚生省でいたしておりまする授産事業の整備要綱におきましては、只今中平さんがおつしやいましたようなふうなことに相成つておるのではないのでありまして、今お読み上げになりましたものにつきましては、只今厚生省で研究中の授産事業に関する方針の何といいますか、まだ外に出してないものにつきましてのお話であつたように承わるわけであります。これにつきましては、只今本省といたしましても内容を検討いたしておるようなわけでありまして、一つの案でございます。昨年の十二月末にやりました整備はそれとは全然違つたやり方でいたしております。それからその後に起りました事態に対応いたしまして、検討いたしておりまする案につきまして、いろいろと御意見があつたようなわけでございまして、これにつきましては十分御意見を尊重いたしまして、健全な授産場ができて行くようにいたしたいと思つております。作業員の資格の問題につきましては、我々の考えといたしましては、少くとも授産事業というものは失業対策ではないというふうに考えておるのであります。失業対策でありますれば、厚生省はこれを所管いたしておらないのでございまして、一切を挙げて労働省が失業対策をお考えになることになるのでありまするし、又失業対策の責任はすべて労働省が負つておられるのであります。従いまして、就業能力のありまするものにつきましての対策を立てますることは、すべて労働省でお考えにならなければならない。勿論これに職を與えないでやることにつきましては、これは厚生省考えなければならない。最後の線は厚生省考えるのでありますが、就業能力のありまする者につきまして職を與えることによつて、つまり仕事を與えることによつてこれを保護するということはすべて労働省が考えなければならない。又労働省が責任を負つておるわけでございます。従いまして、厚生省がその線に入るということは絶対にできないわけでございます。災いまして厚生省といたしましては、労働省でできない分野につきましては厚生省でやらなければならない。つまり就業能力が正常でないもの、これは身体的の場合もありまするし、精神的な場合もありまするし、或いは環境的な場合もあるかと存じまするが、そういうようないろいろな事情によりまして、就業能力が正常でないものにつきましては、これは厚生省考えるということに相成るわけでございます。従いまして厚生省所管いたしておりまする授産事業につきましても、その限度内におきまして仕事を沢山しなければならんということになるのであります。従つて厚生省所管いたしております授産場におきますところの作業員の資格というものはそういう意味で制約が與えられているわけであります。従いまして單にその者が生活に困つておりますとか、或いはその者が收入が現に少いとかいうようなことは、これはその要件にならないのであります。実際にその者が環境上普通の職業に就けないということが証明されましたならば、それが如何なる状況でありましても、厚生省におきまして処置しなければならんということに相成ろうと思います。その辺に授産事業におきまして入れます人の限界を置かなければならんというふうに考えたのであります。  それから尚もう一点厚生省でいたしますことは、最低生活の確保でございますからして最低生活の確保ということにやはり一つの線が引かれるのではないかと考えます。大体その辺の線で以て作業員の資格という問題は考えて貰いたいというふうに我々は考えております。  それからもう一つ御質問のございました授産場の経営の問題でございまするが、これにつきましては、授産場で搾取があるかないかということが問題でございます。只今申上げましたように、搾取があるかないかという判定は非常にむずかしいわけでございまして、一つの企業的なと申しまするか、企業ではありませんが、一つの物を製造いたしましてこれを販売するとかいつた形になりますと、どうしてもその間にどこが本人に、つまり製造に従いました者に渡すべき正常なる給付であるかということを決めることはなかなかむずかしいであろうと思います。ただ授産場が社会事業であるという面からいたしまして、普通の企業とは異なつたところがどうしてもなければならないというのが我々の考えでありまして、従いまして授産事業が完全に成り立たないというような形にいたしますることは、我々の本意ではないのでありまして、授産事業は飽くまでも成り立つようにいたさなければならない。ただそれにはそれが普通の企業と同じような経営の仕方であるということは、どうしても社会事業として認めることはできないわけでございます。普通の事業とはやはり違つた社会事業である。つまりここに何らかの特別なものがなければならないので、その点を非常に強調いたしておるのが現在の考えであります。勿論今後の考え方といたしましては、民営の授産事業というものと公営の授産事業というものとの行き方は若干変えなければならんのではないか、ということも考えるのであります。又授産事業につきまして、特別な保護を與えますものと考えないものの差別というものも考えなければならんのではないかというふうに考えます。又授産事業の名称を使わないものもあり得るのではないか。つまり特別なものだけに授産事業という名称を使いまして、その他のものにはそれは使はないということにしまして、仕事と経営を続けて行くということは差支えないと思うのであります。つまり社会事業としての授産事業というものはどうしても限界がありますので、その限界をどこに引くか。その他のものにつきましては社会事業という看板をかけない。或いは社会事業法でいう社会事業という看板をかけないということで以て線を引いて行くようにいたしたいと考えております。つまり授産事業の純粋性を保つという意味におきまして、我々といたしましてはどうしても或るところに線を引かなければならんというふうに考えておるわけでございます。従いまして、それから外しましたものは直ちに閉鎖するということは我々は考えていないのであります。それらが普通の事業といたしまして継続するということは、やはり沢山の人達に対するところの就職の場を與えるということにつきまして、各種の法制の下におきまして違法でない取扱いで以つてできますものは、そういう取扱いで続けて行きたいというふうに考えるのであります。
  31. 中平常太郎

    中平常太郎君 搾取という問題につきましては、まだお伺いしたい点があるのでありますが、先程の私が申し上げましたその授産場の、弱い力の授産場が失業者を救済して、貧困者を救済しようという問題につきまして、この仕事をすれば一枚何ぼ、この仕事を一個すれば何ぼというふうに工賃が決められて、それを熟練すれば日に百円にも二百円になる、下手なのは五十円しか取れないということがどの授産場にもあるのでありますが、一定の決まつた賃金があつて、その賃金を承諾して入所しているところの入所者は、その賃金程度貰うならば、これは搾取とは言えないと思いますが、その点は、この事業が立とうが立つまいが、これくらいの賃金を以てやらなければならないという公定の賃金があつて、その割で渡す以上は搾取とは言えないと思いますが、その点をお伺いしたいと思います。もう一つは労働省との関係は私も初めからその点はよく分つているのでありますが、ただ労働省の補導機関というものが極めて貧弱でありまして、とても失業者を救済する程の資格は殆んどない。又失業者は野に溢れている、それで健康な者と言えば少しでも仕事をしようと思つてつている、こういうような現在の情勢から言いましたなれば、授産場に入る者が一ケ年なり半ケ年なりいい仕事が見つかるまでは生活の足しにその授産場に入つて仕事をするということは、これは当然厚生部門においてなすべき一つの安全弁であると思うのでありますが、その点をお伺いしたい。  それから貧困にしてその生活がどうしても維持できないというのであれば、その貧困のために生活保護法にかかつている。その生活保護法にかかつている者が授産場に行つて千円でも二千円でも何ぼうか取つたということになつた場合におきましては、生活保護法で五人で六千円なら六千円を與えておつたところのものを、当然の結果として授産場の千円か二千円かの收入を控除されて、生活保護法の金を控え目に控除されてお渡しになるというのが建前でございますが、そうするというと、黙つてつてつて自分の家におつたならば六千円貰える。朝から晩まで行つて働いて二千円程の收入になれば、その二千円のために生活保護法の金が差引かれる。こうなるとその貧困のそういう生活保護者の半ばの生産意欲というものは没却されてしまつて、自分の家で遊んでおつた方がいいという結論に到達する。これをどう厚生省はお防ぎになるつもりか。これは社会局長が非常に同情のあることを前にお話になりましたが、或いは作業衣の支給面とか、或いは下駄とか、その他外出のための労働着などに思いをいたされて、できる限りその二千円の収入の方はカムフラージユして、やはり六千円の生活保護法の金を控除されないようにできるだけの方途を講ずるというお話もありまして、誠に局長は思いやりの深いことをおつしやつたものと私はそのとき喜んだのでありますが、その点は法はそうではなかろうと思いますけれどもが、法をそういうふうにして理解して使うということが厚生省のなすべきことである。今日のような社会情勢におきましては失業者は授産場には吸收できないと言われますけれども、失業者を吸收する先は何ぼもありません。失業者は決して労働省の職業補導所だけでは吸收し切れない。又先程も申しましたように、労働省の職業補導というものは非常に不徹底で、大工の片割れを作るようなのが関の山である。そうしてとにかく授産という広い意味で何千円という收入を與えているというそのやり方は、日本には必要欠くべからざるものであると私は思うのでありますが、これに対して余りに嚴格な方法を以てお臨みになつたなれば、これは誰も利益を考えてやる仕事ではないから、余りにやかましく言われたならば廃めてしまえといつて廃めてしまう。誰が損するでもない、廃めてしまえということになる、廃めた人間は困らない。困るというのは廃められたために收容して貰つていた人が追い拂われてしまつて直ちに生活保護法に転落するということで国家の損失を招く、生産意欲を阻害するという現象を呈して来るのでありますが、貧困者が、そういうふうに失業という限界におきましては、やはりいい仕事があるまではそこへ行つて仕事をするという形式はお認めになつておるかどうか。それから又失業という面で、仕事がないから私はここに来ておりますと言うて来たならば、お前はどこぞによい仕事があるだろうからしてここに来ることはいかん、お前は失業者じやないか、失業者ならば授産場に来てはいかん。労働省に行けと言う一方で、行先もないのに野つ原に放り出して置いて迷わすのか。その点を一つ。失業者ならば救済しないとおつしやつた一言は、失業者ということになつた以上は授産場に置かれないのかどうか。その点を一つ明らかにして頂きたいと思います。
  32. 木村忠二郎

    政府委員(木村忠二郎君) お答えいたします。第一の授産機関におきまして、これだけの賃金を拂うというふうに示した賃金を拂えば、搾取じやないのではないかという御質問でございますが、明示いたしました賃金を拂いましても搾取のある場合とない場合とがあろうかと存じております。それは明示いたしました賃金が妥当であるかどうかということでございまして、一般の企業といたしまして妥当な賃金を拂いましても、授産場として考えますれば妥当でないということはあり得るだろうと考えます。と申しますのは、一般の企業におきましては、一定の利潤というものを考えまして、その考えました利潤を考慮に入れまして賃金を考えておりますので、従いまして、それと同じような考え方で以て授産所の賃金が明示せられておりましたならば、適当でなかろうと思つております。それから本人がその賃金に納得いたしまして参つておりますから、これは搾取でないということが言えるかどうかという点につきましても、その場合に搾取である場合と、搾取でない場合があろうかと存じております。従いまして、すべてその賃金が妥当であるかどうかということは、賃金の決め方が妥当であるかどうかということは搾取があるかないかということになるのでありまして、今の御質問につきましては、どちらとも私は御返事いたしかねるのでございます。ただ中平先生のおやりになつております授産場は、ずつと伺つておりますと非常に立派な授産場でありまして、そういう授産場におきましてはそういうことは絶対にないと考えられますけれども、一般的にはそうでないものが相当私共はあるように聞いておるのでございます。そういうようなものにつきまして、この際或る程度整備いたして参りたい。そういたしまして、授産場の良いものが世間から非難を蒙むらないように、つまり悪いもののために良い授産場が非難を蒙むらないようにいたしたいというように考えておるわけであります。  それから労働省との関係でございますが、労働省のやつております失業対策が不十分であるかどうかということは、私共といたしまして批評いたしますことはどうもいたしかねるのでございます。飽くまでも労働省は完全にやつて頂かなければならないというように考えておる次第でございます。失業者につきまして、私共の方で構わないというわけではないのでありまして、失業者に対しましても、それに対しましては最後の生活の援護の手段は講じなければならんという責任は持つておるのでありますが、そのものに対しまして就職の機会を與えるということによりましてこれを保護するということは私の方の仕事ではないのであります。この点につきましては飽くまでも労働省にやつて貰わなければならない、労働省が責任を持つておるのでありますから、よそからその責任を分担して行くということは、一つ権限を侵すことにもなりますので、私共としては避けたいと思つておるのであります。ただこの場合に、失業者であるからどうこうということではなくして、就職能力があるかどうかという点が問題でございます。失業者でありましても、就職能力が不十分なるが故に失業しております者につきましては、これは労働省におきまして恐らくこれを取扱うべきでないということに相成るかと思つておりますが、そういう者につきましては、私共の方で何とか措置しなければならんということになるかと思つております。従いまして、失業者であるかどうかということによりまして判定してはならないのであります。それで就業能力が正常であるかどうかということが考えられるのでありますが、就業能力が正常であるかどうかということにつきましては、労働省で判定して頂かなければならんというふうに考えておりますので、今後の取扱いといたしましては、職業安定機関との関連性におきましてその点を明らかにいたす措置を講じたいというふうに考えておるわけでございます。  それから失業者が次の就業をするまでの経過的な間でも授産場に置いた方がいいかどうかという点でありますが、これにつきましても、やはり只今申上げましたような原則で行く以外になかろうというふうに考えておるわけでございます。  それから最後に生活保護を受けております者が授産場に参りまして、收入を得ました場合の取扱いでございますが、最後まで法律の建前といたしましては、最低生活の維持ということだけが生活保護法で考られておりますので、どうしても收入を全部本人にプラスする、最低生活をプラスするということはできないのであります。どの程度までその收入を控除せずに置くかという点が問題のわけでありまして、現在では大体一人收入三百円前後の金額を決めまして、それまでのものは全然引かない。それ以上のものは三百円前後のものを差引いた残りを引くということにいたしておるわけであります。働いた分が殖えますれば、やはりそれだけ生活の方に若干でも行くようにいたしたい。これをどの程度まで大きくするかという問題でございますが、我々といたしましては、働き工合によりまして差違を設ける方がいいというふうに考えておりますが、どういう基準を以て差違を設けたらいいかということにつきましては、只今ではまだいい考えが出ておりません。これにつきましては各方面の御意見を十分参酌いたしまして、適正なものを作りまして、労働意欲というものを十分に発揮させるようにいたしまして、それによりまして実際の生活保護の費用が無暗に殖えるというようなことは防止いたしたいと考えておる次第であります。
  33. 林讓治

    国務大臣林讓治君) 只今中平委員より種々その実情に基きましたお話を伺いまして、私共としては非常に嬉しく感ずるわけでありますが、私共規定はどうせ設けなければならんと考えてできたものと考えまして、それらの問題につきましては実際の面より考慮いたしまして、その場合においては厚生省といたしましては、温い気持でその途を解決付けて行くというような方法を講じてやつて行きたいと、今後も私共考えておりますから、その点御了承願いたいと思います。
  34. 中平常太郎

    中平常太郎君 大臣から大変含みのあるお話がありまして、非常に嬉しいのでありますが、局長のお話の中に、賃金を明示して入所者を入れた授産場が賃金通り支拂うのは搾取であるや否やという問題は、それはそういう場合に搾取の場合もあるし、搾取でない場合もある、こういうふうに言われました点は、それは私も同感であると思います。その精神上において搾取の考え方を持つている者は、たとい賃金が明示してありましようとも搾取のある場合もあろうかと思いますが、ただここに私は一つ考えて置きたいことは、入所者、授産場に入つて仕事をしたいという希望のある者が五十円の金でも構わん、取りたいというて来て働いておるというものを、ここは搾取であるからお前は出てしまえと言つて、五十円でも構わん、取りたいから来ているのでございますから仕事をさせて呉れというのを、それはいかん、ここは授産場だからしてお前は五十円で働いているのは間違つている。どこぞへ行つてつておれと言つて追出すというようなことは、これは外に仕事があるときならばいいが、現在それが仕事がない、失業者が溢れているときに、五十円でも百円でも取りたいという考えの者が授産場に来た場合は、これを抱き入れて仕事をさせるのがこれが本当の厚生行政だと思うのでございますから、その点は大臣お話のような含みを持つべきだと思うのであります。  もう一つは生活保護法は六千円貰つている。それが働きに行つて二千円取つたら、それなら差引いて四千円出したらいい。授産場において働いたために三百円貰つたら差引いて五千七百円というふうなことになれば、これではとてもやりきれない、それよりも自分の家におつてつていた方がいいというふうになつてしまう慮れがあるのであります。何となれば最低生活者というものは食うことのためにカロリー計算によつてやられるが、下駄も年に二足ぐらいしかありません。その外入浴もなかなか余計できない。だからして一枚子供にシヤツを買うとか、或いは女房が羽織一枚買うとか、娘が働いて取つて来たからといつて銘仙の一枚でも買うということができないのであります。生活保護法は最低生活でありまして、そういうことまで計算のうちに入つておらん。そういうことをしたいから少しでも働いて、授産場で賃金を與えて娘に働かして、娘の取れるくらいの賃金はお前の着物にするがよかろう、こういう意味で娘が嫁入構えを自分がしよう、こういうことさえもお前は立派な身体を持つておるから授産場で働いちやいかん。職業安定所へ行かなくちやいかんと言つて、職業安定所に直ぐに仕事があるなればいいのですが、ないことは決つておる。そういう場合にはやはりそれらが取つたものは生活保護法から差引かれることになるというと、実に可哀そうなことが現象となつて現われて来る。最低生活を国家が保障しておられますが、そういうふうに働いたものは、自分が平常いつもいつも足りない足りなという生活をしておるものから言つたならば、その千円、二千円の金ではまだ足りないところへ持つて来て、それを差引かれてしまつたら全然私はこれはいけない、こう考えておる一人でありまして、生活保護法にかかつておる者が授産場へ行つて働いた收入は勿論十分含みのある方法でこれを排除せずと、成るべくその本人のこれを收入にさして、それが五千円も六千円も取れば、もとよりそんなわけには行かないから生活保護法から削除してよろしい。併し千円や二千円の金を取つたから一々生活保護法の金を差引くというやり方は、私は同情のないやり方であると思うのでありまして、そういうようにやつて行くなれば、国民皆労という立場からも、又個人の国家に依存しておるという生活保護法の金を少しでも活用する上から言つても、私はそういうことは十分含みのある方法を取るべきだと思うのでありますが、この点は三百円と局長が言われたのですが、前にはエプロンとか或いはシヤツとか、或いは上つぱりを買うとかいうような場合には、それは就業のための経費だから差引いてよろしい、そういう話があつたのですが、單に三百円でよかつたのですか、そういう点を一つ……。
  35. 木村忠二郎

    政府委員(木村忠二郎君) 経営的にやりますのは三百円でございます。勿論働きに行きますために特別に要るという経費は、これは又考慮しなければならんものだろうと思いますが、三百円というのは、三百五十円乃至二百五十円ということに相成つておりますから、平均して三百円ということに相成るだろうと思います。これは経営的に差引いてあります。その外にどうしてもそれがなければ働きに出られないというものにつきましては、臨時のものとして考慮して行くものであるというふうに考えております。  それから仰せの通りに生活保護法の運用とか、それから社会福祉の仕事一般につきましては、先程大臣からお話があつたように、單に理窟一点張りではいかないということはお話通りであります。ただ我々としましては、私の扱つておりまする経費というものはすべて国民の税によつて出ておるものでありますからして、やはり扱いにつきましては十分嚴格にやらなければならんというふうに考えるわけであります。従いまして、この際我々としまして考えなければならんことは、最低生活の線をどこへ持つて行くかということが一番大きな問題だろうと思います。先程申上げましたように、最低生活の線が極めて低いために非常に気の毒な状況というものが出て来るわけあります。仕事をうまくやります上におきましては、どうしても最低生活の線を今のような本当のどん底生活といつたような状況に置かないで、もう少し上の方に引上げるということが是非必要じやないかと考えております。そういうふうになつた上で、そうしてこれを適正に運営して行くということが極めて必要なのじやないかと思いまして、この点につきまして微力ながらも努力いたしているのでありまして、これらの点についてはよろしく御後援願いたいと思います。
  36. 中平常太郎

    中平常太郎君 授産場の特性といたしまして、私共考えているのは、授産場は雇用関係はないからして一つ制約を受けない、それで働く者はたとえ五十円でも百円でも取りたいと思うて来る、適当な職業がないためにいつときでも働こうというので来る。そういう場合に拒絶するのは、あんたは立派な身体を持つているからここへ来ちやいかんというて拒絶するのは、私は授産場の目的に反すると思う。私は今までで二十五年もそういう授産場を二つも三つも持つておりますから、いろいろな方面をやつておりますが、つまり入るを咎めず出ずるを咎めずやつている。仕事がないからどうしても何か一つしたい、そうしなければ家が持たんというて来る者は入れてやる、いい仕事があつてぽつと出る者は、ここにも仕事が詰つておりましても、それは結構だ、就職祝いをやりましようと言うて、自分の方に幾ら大事な役目を持つてつても、それはよかつたとその人を祝してやる。入るを咎めず出ずるを咎めず、一つの雇用関係を持たずに入所者の自由にしてやる。入所する者が多い場合は仕事を殖やしておる、入所者が少ない場合には仕事を減らしておる。企業体というものは事業の盛衰繁閑によつて人を制限するのでありますが、授産場は人の多い少ないによつて事業を制限する。ここに授産場の本使命があるのでありまして、企業業体であるとなれば、製糸業にいたしましても紡績にいたしましても、自分の仕事の盛衰によつて従業員を殖やしたり減らしたりしております。如何に難儀な場合ができようとも首にしてしもう。ところが授産場はそうでなくして縋つて来る者が多くなれば仕事を殖やす、縋つて来る者が少なくなれば仕事を減らす、つまり人の増減によつて仕事を増減する、授産場の使命はここにある。だから授産場は今日入つても明日いい仕事があつたら出てよい。企業体であつたらお前は何だ、入つたばかりで出て行くのか、或いは減らす場合であれば、お前はいい仕事があつたら行つて呉れと言うて賃金を減らす手もあるけれども、授産場は本人の希望を第一にするから入るを咎めず出ずるを咎めずで、かように今日入つて明日出てもいい、雇用関係がないから……そういうところに授産場の使命があるのでありまして、それと一つは搾取がない、一つも誰かの懐ろに入れない、それで会計は公開してある、何人にも公開して見せてやる、県庁なら県庁、或いは厚生省監督を受けている。そういうふうに明らかになつているところに授産場の使命があるのであつて、入つて来る者が、仕事が今当分ないから授産場に行つて働こうと言うて来る者を、お前はここへ来ちやいかん、失業者だから職業安定所へ行けということを言つちやいけない。これは私は授産場の目的に反すると思うのでありますが、それで企業体であるかどうかということは、授産場の使命の根本、私が申上げたようなふうなことが運営の面におきましては根本に必要であると思うのであります。それで希望者が五十円の收入でも構わんから働らかして呉れと言うて来たならば、その人を五十円で働かして、もつと慣れたならば百円になる、それは結構なことだからやらしてよろしい。それが年輩の人だから、二百円取れる、年輩だから百円じやいけないと言うてこれを搾取の面に向ける、或いは又ここで働くのは間違つているから出なさいというようなことは言うべきではないと私は思うている。これは含みも何もない、当然言うべきじやない。皆に働らかして生活の面を助けて上げることこそ授産場の使命であると私は根本に考えておるのでありまして、搾取というようなものは、その経営体が密かに搾取をするというところの精神が出ている経理の状況がいかんのであつて、実際社会情勢から出て来る困難な者を救うという立場から言うたならば、私はそれ程に幅の広いものであると思う。この点もう一度御質問いたします。
  37. 木村忠二郎

    政府委員(木村忠二郎君) 中平さんの御意見識に御尤もでありまして、授産事業の精神は飽くまでもその通りでなければならんのです。中平先生はずつと長くから授産事業をやつておられますので、本当に授産事業の精神をよくお分りになつておりますのでございます。従いまして中平先生のおやりになつております授産事業につきましては、何らの拘束を加えるとか、いろいろなことをする必要はないのでありますけれども、世の中沢山ありまする授産場の中には非常に社会事業を美名といたしまして、いろいろなことをやつておりますものが沢山あるのでございます。従つてそういうふうなものについてはルーズにやつておりますと、どうにも始末が付かんということになりまするので、或る程度ここに線を引かなければならんということになつたわけであります。従いまして私共の方といたしましては、一応線を引きますのは、我々の方でいろいろ制約を加えなければならない授産事業についてだけ線を引くのでありまして、一般に世間に授産事業と同じようなそういうふうな広い気持で以てやつて頂く企業というものがありましても一向差支えないというふうに考えております。従つてこれによりまして閉鎖を命ずるとか何とかということでなしに、つまり何と申しますか、今度の意味での授産事業というものがこういうものであるという線をどこかに引きまして、そうして授産事業の看板をかけまして何かいいことをしようということのないようにいたしたい。と申しますのは、最近各種の企業が非常に苦しくなつて来るにつれまして、授産事業の名前におきまして、いろいろなことをやるものが殖えておるのであります。古くからやつておるものにはそういうものがないのでございますが、新らしいものにそういうものが多いのでありますから、これらに対しまして何らかの処置を講じないと本当の意味の授産事業というものはなくなつてしまう、できなくなつてしまう。そういうことがないようにしたいというのが我々の念願でありまして、従つてこの際できるだけ怪しげな授産事業を整理いたしたいと考えておるようなわけであります。只今先生がお話のような趣旨でやつておりまする授産事業は、今後においても異常なく残り得るものだと考えております。
  38. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) ちよつとこれに関連して疑義且つ希望を申上げたいと思うのですが、今の中平君の重ね重ねの質疑応答の中で、授産事業と生活保護法との関係ですが、今度新らしい予算が成立し、厚生省の方針によると、生活保護法による扶助額は六大都市におきましては大体標準家族に対する五千六百円程度まで支給することができるようになると、この場合第十一次改訂になりますか、そういう際に今一つこの授産事業のことと併せて御配慮願い、改訂を加えて頂きたいことは、今中平君が申されておりました少額の勤労所得の差引でありますが、木村局長の話によると、経営的な経費として二百五十円なり三百五十円というものはその少額勤労所得からは差引く。それだけは余分につまり扶助額を上げることになる、こういうことであるが、二百五十円乃至三百五十円という程度はこれは又非常に低いじやないか。この程度の思いやりでは、尚三百五十円乃至五百円程度の所得を上げようという勤労意欲というものが阻害せられる憾みがある、そこでこの額はもつと引上げる必要がありはしないか。そういうことをやつておると結局生活要保護者というものは、永久的に最低生活に締め付けて置かれてしまうという結果になりはしないか。できるだけこの少額の勤労所得の控除を多額にして、できるだけ早く自立できるような、つまり生活保護法の保護を受けなくても自立できるような状態に貯蓄をさせて行くというようなふうに仕向けて行かなければいかんのではないか。国家の政策としてもその方が賢明なやり方だということはしばしばこの厚生委員会でも多数の委員から申上げておるところでありますが、この点に関しまする何か積極的の御意見はありませんか。
  39. 木村忠二郎

    政府委員(木村忠二郎君) 御意見識に御尤もでございまして、私共といたしましても、收入額の差引というものにつきましての控除額というものをどういうふうにしたら最も合理的であるかということにつきましては、検討いたし、又いたさせておる次第でありまして、適切な案がございましたならば直ちに実施するようにいたしたいと考えております。尚今の三百五十円乃至二百五十円の額というのは大体食糧費だけを考えておるのであります食料費以外のものを考えておりません。食糧費が大体予定それだけ掛かるということから出しておるのでありまして、その他の経費というものは全然見ておりません。従つてその他の経費をどの程度見るかということをこの際考えて見なければならんと思います。それにしても働かない場合の最低生活費というものが、食費以外のものの割合が現在のような状況でありますれば、これを引上げるということは相当困難だろうと思います。従つて飽くまでも最低生活というものをもう少し内容的に向上させるように考慮いたしたいと思つております。もう一つ考えたいと思つておりますことは、これはなかなか財務当局あたりから納得を得るには困難があろうと思いますが、例えば子供達が働いております場合においての控除については、相当考慮する必要があるのでないか。この点を考慮しないと、本当に子供が親のために犠牲になりまして向上できないというようなことに相成りまするので、これらの点につきましても、この控除の際には何か考慮しなければならんのでないかと考えておる次第であります。そういうふうにその控除の仕方を、働く人の身分関係というかによつて考え直すというようなことも考えて見なければならんのでないかと考えておるわけでありまして、何とかいたしまして生活扶助を受けておりまする階級から向上するための措置を講じて参りたいと考えております。その第一歩といたしまして、先般来お約束いたしておりまするように、扶助を始めまする場合にどん底に落すということは成るべく避けたい。どん底に落ちないうちに扶助を始めて更生するようにいたしたいと考えておりまして、これにつきましては、近くその方針を明らかに決めたいと思つておるわけであります。内容的に関係筋と折衝いたしておりますので、この折衝が済みましたならば積極的に進めたいと思つております。或いは全国的には内示いたしておりますので、所によるとその内示によつてつておるかも知れませんが、関係方面との折衝が済みませんために、公にはいたしておりません。
  40. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 今のことに関連して、少額收入を僅か平均三百円程度の控除のものにするということは、先程皆さんのおつしやる通りに、現下の生産意欲の減退といつたようなマイナスの面が出て来る。そこで私はこういうこともちよつと考えて見るのでありますが、貧しい暮しの中の子供の教育なんですが、これを少しでも高めたいと非常に努力しておる家庭が多い。そこで生活扶助額の、これは程度でありますが、大体私は三分の一程度の、六千円ならば二千円くらいまでの收入があるのは差引かないで、その二千円の中の或いは半分なら半分といつたようなものが或いは教育貯金といつたようなものに、これは十分監督いたしてこれを積立てる。将来の子供の教育資金にすると同時に、一方では国の財政の幾分の役にも立つわけで、貯蓄奨励の一端にもなるわけで、そこに非常にそれが生活上の待機にもなりまして、一層勤労意欲も高まり、一日も早く生活扶助を受ける境地から自立自活の生活に入りたいというふうになるということを私共考えるのであります。そういうふうな一つの方法も考えたらよくなかろうか。或いはその他若干の條件を付けまして、余力複雑のない程度にいたしましていわゆる健康で文化的な生活が進めて行かれるといつたような導きを與え、呼び水を注いでやるという方法を講じられるとか、むしろ生活保護費などの国家負担を低めて行く一つの有力なる道筋になるかと考え、この際は意見を申述べましてこの辺に対する当局のお心構えを伺つて見たいと思います。
  41. 木村忠二郎

    政府委員(木村忠二郎君) 生活保護法の経費が非常に多額のようにお考えになつておられまして、いろいろお話があるのでありますが、收入を差引く場合に、余り差引額を高くするということは困難なことは、現在一人の場合の生活費というものは千五百円であります。ですから千五百円以上の收入があれば一人が食えるというのが現在の生活保護法の建前であります。従いまして働いた場合の控除額をどうこうするというときに、この線を基礎にして考えなければならんということになる。従いまして先程申しましたように、子供が自分で働いているというような場合には、これは相当考えなければならん。子供を持つておりまするものについて特別な考慮をするというような、何かいろいろな制限を付けて考えなければならんことに相成るわけでありましてそういう場合にどういうふうにしたら公正を図りながら最低生活を維持させて行くことができるかということでありまして、これの基準を立てるいい方法がありますればいいと考えるのであります。これはなかなかむずかしいものでございます。只今検討いたしておりますが、いい案が出て来ないのであります。一般的に何千円というようなことはちよつといたしかねるのであります。一応三百五十円と出ておりますのは、一人働くのに千五百円というところを基礎にいたして考えております。そういうふうに御了解願えればよいと思います。尚これにつきましては、そういうふうに個別的に具体的なケースを分析いたしまして、どの場合にはどのくらいということから基準を定めて参りたいというふうに考えております。
  42. 姫井伊介

    ○姫井伊介君 今一つは、殆んど内職的の收入が経常的にずつと進んで行き、ほぼ安定した收入が得られるといつた者は、例えば六ケ月なら六ケ月それを見て、そうして今の控除額を成るたけ少くして行く。六ケ月くらいにするならば、逓減法によつてその間三分の一を控除額を増して行くとかといつたような、順次に目立せしめるような方法も又考えられるのじやないかということを一応附加えまして、質問を終ります。
  43. 藤森眞治

    ○藤森眞治君 先程御説明の、授産事業に或る線を引くというお話がございました。これは我々もよく分るのでございますが、併し今大臣なり局長のお話を聞くと、温かい気持で臨む、これは我々もそうであつて欲しいと思いますが、併し実際こういうことをやつて見ますると、いつも心なき末端取扱者が極く杓子定規になりますために、折角のいい考え方がこわされることは、これは始終我々は見受けるのであります。殊に生活保護法の適用を受けるというような我々が非常に考えなければならん階級を取扱いまする場合には、余程これはデリケートなところが沢山できるので、こういう点に将来過ちがないように、十分あなた方の温情がそのまま末端の取扱者に行くように御指示をお願いしたい。かように存ずる次第であります。
  44. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 一応授産事業に関連しましては、質疑をこの程度に、時間の関係もあるので止めたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 塚本重藏

    委員長塚本重藏君) 御異議ないものと認めます。明日午前十時から委員会を開きます。  本日はこれを以て散会いたします。    午後零時三十五分散会  出席者は左の通り。    委員長     塚本 重藏君    委員            中平常太郎君            山下 義信君            寺尾  豊君            藤森 眞治君            井上なつゑ君            小杉 イ子君   国務大臣    厚 生 大 臣 林  讓治君    政府委員    厚生事務官    (大臣官房国立    公園部長)   飯島  稔君    厚生事務官    (社会局長)  木村忠二郎君    運輸事務官    (大臣官房長) 荒木茂久二君    運輸事務官    (大臣官房観光    部長)     間島大治郎君