○
竹中七郎君 私は
宗教団体関係の
社会事業に関する
調査の報告をいたしたいと思います。
我々
調査一行は
広島の日程を終りましてから、予定の通り一月十二日より十四日に至りますまでの間を
大阪、
京都地方の日程に入りました。この両
地方の日程中には、特に塚本、藤森、山下三
委員もそれぞれ参加せられまして、本
調査に御協力願いましたことに対しては厚く感謝を申上げる次第であります。
大阪、京都の両市の
調査の目標は、一つは
共同募金に関する
地方状況と、一つは
宗教団体の
社会事案に関する状況の
調査でありまして、その中の
共同募金問題につきましては、
只今草葉委員から一括御報告になりましたから、私は専ら
宗教団体の
社会事業に関しまする問題につきまして、概要御報告をいたしたいと思います。一つは本
調査の対象といたしまして、本
調査の目標はすでに明らかであります通り、
我が国の
社会事業中におきまして、その七割までが
民間社会事業でありまして、而もその大多数が
宗教関係の経営の
社会事業であるという事実に基きまして、これが適正な振興を促進する必要から、その
素材観察のために現地の査察をするという、極めて広い奥行きを持
つておるのであります。ただ何分にも短い期間でありまして、そうして局限された
地方という條件がありますので、本
調査はなかぐ困難であ
つたのであります。併し幸いにも
大阪は
商工業を中心といたしまする比較的
代表的近代経済都市でありまして而も戦災の復興と
件つて、民間の
社会事業におきましても目覚ましい
復興振りを示しておりますのみならず、各
宗教団体におきますそれぞれの特色である
社会事業が、自由活溌にその美しい競争を見せている
地方でありまして、比較視察するためには最も好都合の
地方であるというので、ここでは主といたしまして各
宗教社会事業の
施設につきまして査察することといたしました。今回視察いたしましたのは次の五ケ所でありまして、更に
施設関係代表者の会合に当りましては
座談会を催しまして、この間
種々査察に努めたのでございます。その
視察個所を申上げますと一、
仏教台宗大本山四天王守経営の
財団法人四天王寺病院、これは医療ど
助産施設であります。ニ、
キリスト教聖公会派信徒奉仕財団法人博愛社、これは
養護施設であります。三は
仏教浄土宗正念浄住職奉仕財団法人四恩学園、養護、
乳児保護施設であります。次は四といたしまして
天理教大阪教区経営天理教大阪助産所、これは
助産施設であります。五は
キリスト教フランス・
カトリック派愛徳童貞会経営聖心隣保館、その中におきましては養護、
母子保護、
乳児医療保護、
隣保事業、これだけであります。次に又京都では御承知の
通り仏教大本山が非常に集ま
つているところの
代表的地方でありまして、且つ戦災を免れているので、ここでは主といたしまして
仏教の各
宗大本山と
社会事業の
関係も査察すると共に、この
大本山の
燈台下におきまするいわゆる
仏教社会事業が、如何に運営されているかという点と、如何にしてその
地方におきまする公共の
社会事業施設については、どんな状況にあるかという点を明らかにいたしたいと考えまして、その
施設を観察しまして、更に
大本山関係代表者との
座談会に臨席いたしまして、
仏教社会事業の促進について
種々意見の交換を行な
つたのであります。今回視察いたしました
施設は、イといたしまして
府立賀茂川母子寮、これは母子だけの寮であります。口、
府立洛北寮、これは
浮浪者、
養老保護施設であります。ハ、
府委託東本願詳派住宅紫草園、これは
婦人保護であります。二、
府立京都寮、これは
盲人授職の寮であります。ホ、
浄土宗住職経営大
照学園、
盲聾唖兇養護でありますペ、
浄土宗総本山知恩院後援財団法人平安養育院、これは養護、ト、
京都仏教和敬会経営財団法人同和園、
養老保護であります。チといたしまして
市立指月寮、これは
乳児院、
乳児養護、第三といたしまして
調査の結果につきましては何分
調査目標は広汎であり、而も数多い
施設のうち僅か数ヶ所の視察を以てしてはこれを明らかにし得ないことは勿論でありますが、ここでは観察したままの極めて大まかな問題につきまして、若干の所感を交えて申上げたいと存じます。先ず第二に、
宗教団体の
社会事業として現在現われておる
状態はどうであろうかという問題についてであります。この点については
大阪の事例では、
大阪におきまする
宗教法人の経営する
事業施設会計四十三ヶ所の内におきまして、
大阪市内におきましては二十三ケ所、隣接十都市内におきまして十、郡部におきまして十、計四十三となるのであります。
我が国社会事業分布の
状態そのまま、即ち
都市集中の現象を呈し、郡部乃至農山村
地方社会福祉は明らかに等閑視され来
つた沿革そのままに現われております。そしてその郡部十ヶ所は最も
仏教の寺院偉そのまま利用しておるものであ
つて、六ケ所は
農村保育所であり、他の、四ヶ所は概ね
大阪市民社会に胚胎する事象に基く
收容施設で、即ち
少年教護又は
養護施設として公共の
委託事業であります。更に又
宗団別の特質を見まするというと、
仏教系が二十五で、内
保育所のみのものは十四、
キリスト教系のものが十四でありまして、内
保育所のみのものが三、
天理教系のものが二でありまして、内
保育所のみのものが一つ、
助産所のみのものが一つ、
神道系のものが一でありまして、
委託少年教護をしております。
金光教系のものは一つ、これは
診療所で計四十三となるのでありまして、即ち
施設の数から見ますると
仏教系統が第一位にありまするが、併し
施設の
事業種類から観察いたしますると、村落における
寺院建設物事を殆んどそのまま利用できる便利があ
つて、而も
社会事業特有の困難な
ケース・
ワークのごときは、殆んど必要としないで済むところの
晝間保育所施設が全数の半分を占めておるのであります。それで他の半分即ち例えば
収容施設乃至は
事業対象者の
ケース・
ワーク或いは
地域集団等のグループ・
ワーク等のごとく比較的
社会事業中の
特別技術を必要とし、これがための
特別施設を要する
事業について数えますと、
仏教系と
キリスト教系では全く同数の
施設が
大阪市又は
隣接都市に期せずして集中されておるのであります。この状況だけによ
つて見ますると、
仏耶両宗教の
我が国における沿革並びに
国民生活べの
浸透状況に照らし、
社会事業界における
事業活動においては、
仏教関係よりも
キリスト教関係の方が勝
つておると感ぜられました。尤もこれは今回の
調査によ
つてのことではありますが、この趨勢は恐らく全国的にも当嵌まるものではあるまいかと思われます。
第二点として、各
宗団の
大本山又は総本部と、その
宗団系統の
社会事業施設の
関係はどうな
つておるかという点でありますが、この問題につきましては一般的には各
宗団とも、その
宗団の
大本山と
社会事業活動とは何ら組織上の
関係を持
つていないことが明らかに判明しました。但し或る
宗団におきましてはその
宗団の
教役者は、努めて
社会事業活動を伴うべきことを必須の
慣行事項として今日に至
つておるものがあります。そしてこれらの
宗団におきましてはその
社会事業活動のための
人件費は、すべて
宗団がこれを賄うわけであります。
従つて社会事業活動とその
教役者の
宗教生活とは不可分のものとして精根を傾けて事に当
つておる
状態であります。その例といたしましては
キリスト教におきましては
カトリック宗が即ちこれでありまして、又
救世軍がこの類であります。
仏教においては
四天王寺の経営する
事業施設との
関係にのみこの類を見るのでありまするが、特にカトリック教団の
社会事業活動は、いわゆるカトリック・チャリティーといたしまして、各国の文化都市にも、又未開発の地に幾多の業績を示しておることは、古来周知の事例でありますが、詳細はここでは省略いたしたいと思います。尚近来天理教及び金光教の各
宗団が医療助産等の
社会事業に、又或いは神道
宗団が教護
事業に着手したことは刮目すべきことでありますが、これは今後の事績を待
つて改めて観察したいと存じます。
第三点といたしまして、然らば現在の
宗団社会事業の実態はどうであるかということと、その振興に関する問題の点であります。前に述べました諸点によ
つて明らかであります通り、
カトリック宗団におきまする宗教的奉仕の国際活動によりまするものを除きましては、いわゆる
宗団社会事業は、その
宗団の責任経営にかかるものは一つもないのが実態でありますけれども、即ち
仏教におきましては、
大阪の
四天王寺の例を除いては、概ね一ケ寺の住職中、特に熱心なる個人がその
事業に当
つており、又
キリスト教におきましては、牧師その他の
教役者は、むしろこの
事業に遠ざか
つておりまして、信徒の中熱心なる者が、同志の協力を求めまして、殆んど献身的活動を続け、辛うじて今日に及んでおるというような
状態に過ぎないのであります。従いましてこの
事業施設が如何に現在の業績を示しておるといたしましても、これは結局
事業運営の原動力とな
つておるところの、その
施設の責任者でありまする
社会事業家個人の能力だけに終りまして、或いは
社会事業に世襲なしという言葉の通力、その本人の在任中だけの
社会事業に終るという弊害があるのではないかと思うのであります。そうしてたとえ、その経営主体が、財団
法人組織でありましても、財団の理事者必ずしも
社会事業適任者ではないのであります。のみならず財源や維持組織等の実態から見まして、その
事業の永遠性は望めないというような感じがするのであります。この点はもとより
我が国の
民間社会事業に共通する問題でありましようが、この際特に
宗教関係社会事業におきます著しい問題として鑑みられるのであります。又
地域社会事業の進展を必要とする今後のわが国の社会に、福祉態勢を期待し得ない結果を招く危険が多分に感ぜられる次第でありまして、これは国政上から見ましても誠に放置できない條件と鑑みられるのであります。而してこの危険性は、
キリスト教宗団の
社会事業におきましてよりも、むしろ
仏教宗団の
社会事業においてより強く感じましたのでございます。前者は特に
社会事業活動におきます強大な国際的背景を持
つておるのみでありませず、いわゆる宣教師活動が、その部面において活溌でありますが、
仏教の
社会事業におきましては、殆んどこれに比べまするところの力は持
つておらないような現状であるのであります。よ
つて京都におきましては、特に
仏教各
大本山社会部長、並びに
社会事業、
関係者諸君との
座談会におきまして、これらの問題を中心といたしまして、
仏教社会事業振興に関しまする
座談会をいたしたのであります。
座談会ば凡そ五時間に亘りまして種々の意見が交換されたのでありますが、各宗それぞれ
宗団の事情を異にする点もありますけれども、我々の一行の積極的な意見、即ち
仏教社会事業振興促進の結論にはもとより異論がありませず、むしろ積極的にこれが促進方の要望が盛んでありまして、遂に別項のような決議がなされまして、その適切なる実現方の熱心な要望を受けたのであります。決議文を朗読いたします。
決議
仏教社会事業の振興を期することは平和日本建設の基本と思料せられるから本日会同した我等工同は「日本
仏教社会事業連盟」(仮称)を結成して積極的に
仏教社会事業の進展を図り以て文化日本の興隆に資せんことを期する。
尚之が具体的準備は参議院
関係者によりて進められんことを望む。
昭和二十五年一月十四日
仏教社会事業関係者懇談会
真宗大谷派本願寺藤津黎
真宗本願寺派條周存
浄土宗知恩院大河内貫靜
臨済宗大徳寺派野村円海
臨済宗南禪寺派鈴木以心
融通念仏宗木霊禪仙
真言宗御室派佐藤明義
浄土宗西山深草派板倉修峰
天台寺門派山本光照
日蓮宗毘尼薩台諒
西本願寺母子寮井上徹也
仏立宗積慶園古村正樹
知恩院平安養育院前田孝雄
相国寺和敬学園樋口圭一
東本願手紫草苑常盤隆澄
大覚守壽楽園鬼山弘憾
西本願寺社会部林龍雲
東本願書社会部月光恵雲
知恩院社会部泰隆慎
こういう決議文がなされたのであります。この決議文に明らかにしてあります通り、この日本
仏教社会事業連盟の従来、促進の準備につきましては、参議院
関係者によ
つて進められたいと記してありまするが、当日の模様から見ましても、この
関係者とは本
委員会の諸君を指しておるものと解釈せられるのであります。願わくば厚生
委員会諸君におかれましてもうこの間の事情を御洞察下さいまして、この決議の趣旨を採択されまして、速かに適切なる方途を講ぜられるようお願いする次第であります。以上は誠に概略でありまするが、これを以て報告といたします。
次に要望事項といたしまして、
大阪の民生局から要請されたものを朗読いたして置きたいと思います。
要望事項、公益質屋について。
当
大阪府下には二十一店舗の公益質屋が運転資金総額四千三百七十八万円をも
つて運営されております。一昨年頃よりのインフレもやや安定の域に達したように見えましたが、引続き発生した金詰りは、
国民生活を窮迫のどん底に追込み、勢い公益質屋の利用者も急激に増加する結果となり、貸付資金の極端な不足を告ぐるに至りましたので、昨年度において政府より二百二十万円の貸付金と、更に本年度に八百七十万円の
地方起債を得て辛ろうじて維持運営しておりまするが、尚相当な貸付不能者を出しておる状況に鑑み、昭和二十五年度には運転資金として三千百万円と、更に庶民金融の性質上、少数人店舗主義を排し、分散小店舗主義を理想として
地方の要望に応へ、
大阪市、豊中市、吹田市、枚方市外ニ町村六店舗の創設費及び運転資金総額一千九百万円の
地方起債を申請準備中であります。由来当府は中小
商工業を基盤として発展せる
地方事情もあり、生活資金の貸出しと共に、生業資金の貸出しが中小企業に寄與して来
つたところ大なるものがあります。右事情御賢察の上、公益質屋の資金増額に格段の御配慮を強く要望する次第であります。
次は、消費生活協同組合について。
消費生活協同組合法は昭和二十三年十月一日から実施され、当
大阪府においては、二十七組合、産業組合法による組合が七十冥計百十二組合の設立を見ており、この外に法人でない任意組合が少くとも百余あり、これらの組合員は十五万に達し家族を合せるときは約六十万の消費者がこの恩恵に浴しており、今後この組合は法の普及と相俊
つて益々増加の傾向にあるのであります。然しながらこの有意義な組合も一般の業者と同様、資金の澗渇を来たし、組合存廃の岐路に立
つている
状態であります。これが打開と振興の方策は資金を優先的に注入するより外に途はないのであり、既存の金融機関よりの借入れについては極力努力し援助は続けているのでありますが、この成果は遺憾ながら甚だ微々たるものであります。一方組合内部の充実は資金と共に重要なことでありますので、この点にも十分留意の上組合の普及指導に努力いたしています。右事情御賢察の上左記事項の実現について何分の御高配を賜りたくお願いする次第であります。
記
一、預金部資金を組合へ貸付けること。
二、組合のための親銀行を新設すること。
三、組合普及指導費の国庫補助増額について。
以上
次は未復員者……