○
政府委員(
伊東五郎君)
只今東京都の方から、この
法案についての御
意見の開陳がありましたが、これにつきまして私共の本案を作成いたしました考え方を御
説明申上げたいと思います。
第一点の
建築主事を置きましてこの
事務を取扱うのを
都道府県の吏員に限ることにしたい。
現状通りにして貰いたい。こういう点でございます。この問題につきましてはかねて各
都道府県から反対的な御
意見がありますことを十分承知いたしております。ただこれを
都道府県のそれを取扱う者の側のみからこの問題を
結論を得るということはできませんので、もう少し広い視野から
地方自治の
立場、
建築、
都市計画等の
担当者として
都道府県というものを
主体として、従来長い間や
つて参りましたが、
市町村の
自治、
都道府県の
自治、これを両面考えなければならないが、それからこの
規定の適用を受けます
一般国民の側に立
つても亦考えなければならんと思うのでございます。
一般的に申しまして、警察とか
消防とかいうようなものは段々
市町村にその
事務が移されて参
つております。
建築、
都市計画などにつきましても、
市町村の
自治体自身のこれは問題でありますので、その点については、原則的に申しまして、当然
市町村自体がその
都市をよくするためにやることでありますから、
市町村自体にこれを移す方がいいのじやないかとこういうふうに私共は考えておるわけでございます。
原則論としては、これについて
都道府県におきましても異存はないものと従来は承知してお
つたのでございますが、ただ多年や
つて来ておりますことでありますから、これを俄かに移すという場合に、いろいろなそこに、
支障と申しますか、
混乱と申しますか、一時そういう事態が起きやせんかということは懸念せられますので、その点につきましてはこの
法案を作成いたします場合に、十分に考慮したつもりでございます。即ち、元来ならば
市町村にそのまま移讓して
行つてもいいのでありますが、又
地方自治の精神から言いますとこれに対して市に移した以上は
都道府県とか、或いは
建設省とかいうものがやたらに喙を容れる必要がない、容れない方がいい、
地方自治を確立しますためにはそういうふうに
はつきり行くのが理想的ではあると考えますが、その
移り変りの
混乱というような点も考えまして、移す場合に特に
都道府県と
協議をして、
協議が
整つた場合でなければできないという点とか、
都道府県がこの
市町村に移した場合にいろいろな助言を与えるとか、
援助をするとかいうことの外に、
監督をする、若し
市町村の
やり方がこの法の主張を滅却するような場合には
都道府県みずからその執行に当る、或いは
建設大臣みずからこれに当るというような、
地方自治の側からいいますと非常に変則的な、強い統制的な
規定まで入れたわけでございます。又
建築主事の任命につきましても、これは
建設省の
検定を必要とする、而もその
検定を受けられるのは、これこれの資格のある者に限るといつたような、直接
事務の
責任者である
建築主事についてもいろいろな制約を加えたのであります。そういつたようなことでこの
移り変りに
混乱、
支障を起さないだけの十分の
用意はいたしておるつもりでおります。今その
理由としていろいろ挙げられましたが、多少の御尤もな点もあるのでございます。例えば第一に、この
法律の
施行に当りましては、
建築技術のみならず、
機械とか科学とかいつたような
知識も必要とする、こういう点もございます。それがために
人員が増加しやせんか、能率が低下しやせんか、こういつたような
心配もあるのでございますが、そういう場合も考慮いたしまして、さような場合には
都道府県がこの
援助をすることができるということに
なつておりまして、そういう専門的な
知識を要するものについて、これを担当する
市町村に適当な人がなければ、
都道府県に
援助を求める、そうしてその人に一切の
事務を手伝
つて貰う、こういう途を開いたのでございます。
それから
建築に関する他の
法令がいろいろございますが、それとの
関連がどうかという点も無論十分に研究したのでございまして、
旅館とか
公衆浴場とか、
興行場、そういう特殊の
建築については別に
法令によ
つて、
建築についても
許可、
認可が要るという場合があるのであります。これが県の
事務に
なつておるものもあるのでございます。但しこれらのもについては最近
法律が改正せられまして臨検などは市に移讓されております。人の
関係も非常に密接なものであります。特にこの
建築物については
予防消防の
見地が非常に大きく
関連を持ちますが、
消防につきましては現在御承知の
通り市にその
事務が移されております。この
関係から申しますと、むしろこの市の方が
関連性がいい、こういう点もありますこれは一利一害でありまして、必ずしも
都道府県の方が密接な
関連を持つという
結論も出ないのでございまして、これはいずれともこれだけの
理由では決定しかねる問題だろうと思います。
それからいろいろな
建築工場とかその他
危険建造物とかいうような
危険物を收容するものとか、いろいろ周囲にいわゆる
公害を及ぼすというようなものにつきまして判断を要する場合があるわけでありますが、そういうものは成るべく
都道府県といつたような広い範囲で考える方が適当だろう、こういうような御
趣旨でありましたが、この点につきましては、この
都市計画というものは、市を
単位にしてや
つておりまして、
都市単位でやれば十分と思
つております。
府県単位に段々に
地方計画というようなものも将来段々考えなければならんのでございますが、一軒一軒の家を建てる場合、
地方計画まで考える必要がない、
都市計画だけで十分である、従
つて市で総合的にやれば十分である、この点は市の方がいいと考えております。
四番目に、どういう御
趣旨でありましたか、例えば
温泉都市なんかで、その
都市が市の発展のために勝手なことをする、そのために危い
建築、不適当な
建築物ができて、外国から来る
お客さんなどに御迷惑がかかるようなことがありはしないかというような御
心配でありますが、そのことについては県でも市でも同じようなことだと思います。ただ実際問題から考えますと、
現状におきましては、特に中小
都市等の場合に市の目先だけのことを考えまして、将来のことは考えにくい、県ならば一応大きな
立場から見ているから、その点は県の方がよりいいという
結論が出るじやないかという点もありますが、これは理論的にそういうことではないのでありまして、その市の発展のために目先だけではなく、将来のことも考えて行かねばならんことは当然でございますので、根本的にこれは市に移すということの反対の根拠にはならんと考えております。
市町村の移す場合につきまして以上のようにいろいろと比較検討いたしまして、御
心配に
なつた点を十分に考慮してこの案を作つたということを申上げて置きます。
それから二番目に、
用途地域の
関係でございますが、この
用途地域につきましては、大体従来や
つて来ておりました
通りのことをこの
法律に直接
規定いたしましたような
関係に
なつておりますが、御指摘があつた点について若干の修正を加えたわけでございます。即ち
住居地域その他に
工場を建てる、大
規模の
工場は
公害が多いということから、或る一定の物指を置きまして、それ以上の
工場は
住居地域にはいけない、
商業地域にはいけないというふうに従来ともや
つておりますが、その物指を今回、今まで
馬力数で
規定しておりましたものを
床面積、
作業場の
床面積で
規定したのでございます。これはどういうわけかと申しますと、
馬力数で
規定いたしますことは、何分
機械の
馬力というものは
建築物を建てる場合に直接の問題ではないのでございまして、その点から申しまして非常に
制限がやりにくい、つまり
馬力というものはその
工場の
作業に伴
つて始終動くものであります。非常に
作業が忙がしくなりますと
馬力を殖やすとか、生きものでありますので、非常に掴みにくい又
馬力を殖やして非常によくなる場合がある、同じ
作業をや
つておりましても、いろいろと衛生的な点を改善するために
馬力を殖やして
機械を良くするというようなことも始終起きるのでありまして、これは多年やりまして、
只今東京都からの御
意見はありましたが、別の却
つて逆の
意見が多年非常に多か
つたのであります。
馬力で以て
工場の害を或る程度測定するということは非常にやりにくい、却
つて工場の
作業場の改善を阻止する、或いは工業というものの発達を阻害する、こういつたような非難が非常に多か
つたのであります。そういう点に鑑みまして、
作業場の
床面積に改めたわけであります。この
作業場の
床面積にしましても昼間はそこで寝て、夜
作業するというようなこともありまして、これも掴みにくいのでありますが、いすれにしましても、この
工場の
規模、周囲に及ぼす迷惑の程度をこういう物指で
規定すること自体が非常にむずかしいことでありますので、いずれにしてもむずかしいのだが、むしろ
床面積でやる方がまだ実害は少いだろう、こう考えまして、これを改めたわけでございます。この
床面積にしますと不適格なものが相当できるということも言われましたが、これは
馬力にいたしましても、現在
住居地域内に三
馬力を超えるものが随分沢山ある、つまり不適格なものが沢山あるのであります。その点はいずれにしましても同様だと考えております。
それから二番目に、この
用途地域の
関係で、原則的にこの
規定に書いておることに合わん場合に、
知事などの
許可を受ければよろしいということに
なつております。そうしてその場合には
建築審査会の同意を得るということに今回したわけであります。従来は
知事の独断でこの
許可をするせんということを決めたのでありまして、極めて非民主的であり、非立憲的でありました。こういう重要なことを
知事に任してしまうということはよろしくないと考えまして、この
建築審査会という政治的な色彩のない。
技術的なメンバーで構成されておる
建築審査会というものの同意を得た上で許否を決定する、こういうことにしましたが、これは一歩後退ではなくて、取扱う者の便不便から考えますと、如何にも厄介でありますが、民主化ということから言いますと一歩前進した
規定でございます。
第三番目に、この
地域の
指定を
知事に任せるという点でありますが、これは
都市計画法との
関係もございまして現在
都市計画に応じてこの
指定は大臣の
指定に
なつております。但し大臣は一方的に
指定するものではありませんので、
地方の当該
市町村からの申出でによりまして、そして当該
市町村のあらゆる
関係者から構成されております
都市計画審議会というものの
意見を聴いて、そうして形式的には大臣が決定する、こういうことに
なつておりますので、この点につきましては
都市計画法との
関係もありますので、今回は一応従来
通りの
手続にいたして置きました。近い将来にこの
都市計画法も再検討したいと思
つておりますので、その際は
只今の点は更に考えて見たい。但し現在のところでは別に差迫つた弊害もないと考えますので、原案の
通りにいたしたわけであります。
それから三番目に、
建築物の
面積と
敷地の
面積との割合について御
意見があつたわけでございますが、つまりこの
建築物の
敷地に対する密度、結局は
都市の平
面積並びに
建築物の密度に関するものでございます。この
建築物の密度につきましては、強くすれば強くする程防火の点なり、
都市計画の点なり、そういう点から申上げますと理想的でありますが、一方
土地所有者側の利害
関係を考えますと、無暗に強くすることはできないという、両面から考えなければならない問題だと思います。現在においては
住居地域とか
工業地域では、
敷地に対する六割まで建ててよろしい、それから
商業地域では八割までよろしい、こういうことに
なつておるわけであります。これを若干
強化をいたしたわけでございますが、その点につきましては、すでに
特別都市計画法によりまして戦災
都市については
敷地の最小限を三十坪としております。これは我が国は木造の小さな
建物が密集する、結局
敷地が、一筆ごとの
敷地が非常に小さくなるということによりまして、非常に密集して不良地帯になる、こういうことからこういう
規定を置いたわけでありますが、私共この案では、三十坪を最小限とすることが一応は
特別都市計画法との
関連においては正しのでありますが、これは少し行き過ぎじやないかと考えまして特に
住宅について九坪の空地をプラスする、こういう方式で参つたわけであります。
このこちらの方は(図示)現在や
つております
住居地域の例でございます。つまり二十坪の
土地がありますと、これに十二坪の
建物が建つわけでございます。これはどういうことになるかと言いますと、この
通り周囲に三尺、半間の空地と言いますが、間隔を置きますと、これで
制限いつぱいになる。これはただ
建物の中心線から取
つておりますから、基礎とか何とかはこれからははみ出す。上の方から屋根の廂とか軒というものがこれにずつと出て参ります。この辺は三尺ぐらい出て参りますから、つまりいつぱい建つ。こういう小さな特に小さな
建物について、小さな
敷地について、これではとても防火の点からも、衛生の点からい
つても不適当だ、これが段々大きくなりますと、百坪のところへ六十坪建つのだ、まわりに若干の空地が取れる、小さいものではこういう
状態でありまして、これがいつぱい建つたならば非常な密集不良地帯になる、こういうことはいかんと思います。それでこの程度に上げたわけです。これは一間ぐらい大体取れることになります。まわりに一間ぐらい、
敷地が、これは三十坪の場合ですが、これから九坪引いて、その六割ですから、十二坪半になります。
土地が十二坪、物置だけが半坪この程度のものでございまして、これはまあ地価が高い所ではこの程度までは止むを得ないだろう、もう少し地価の安い郊外でありましたならば、もう少し空地帯も取れるが、町の商業地に近いような所ではこの程度で止むを得ないだろうということで、こうやつたわけでございます。この
図面で御覧になれば、決した苛酷な
制限ではないということは、すぐにお分りになるだろうと思います。従来や
つておりましたことが、空地の
制限をや
つておりましても何の
意味もないと、むしろこちらの方でありますと、まあ放任しておるも同様だということがお分りになるだろうと思います。これは
都市の極く小さな
土地を持てておるような人には、若干痛い
規定だろうと思いますが、この市民の大多数の利益、生命、財産の保護、こういうことから申しますと、これは止むを得ないのじやないかと考えまして最小限の
強化をいたしたつもりでございます。
商業地域の方の八割を七割にしたということは、これは大した
制限の追加にはならんと考えております。特に
商業地域などは、多く
防火地区などに
指定されますが、
防火地区に
指定されまして本
建築をやる場合には、一割増しということに
なつておりますから、これで八割になります。又角地でありますと更に一割増し、九割になるということになりますから、これは余り問題じやないと思います。
それから第四番目に、
補助をやるということが決ま
つてからこの改正をやるベきである、こういう御
趣旨のようでありましたが、これはこの
補助につきましては政府としても真剣に考えております。来年度は是非実現したいと思
つております。併しこれも、
一般にこの
法律によりまして強制をするという前提がありませんと、なかなかこの
補助も実現がむずかしいのでございまして、これは
補助がなければやれないということになりますと、いたちごつこになりまして、非常に大事なことが結局いたちごつこでいつまでもできないということになる虞れもありますので、必要最小限度のものは基準法で
規定いたしまして、これだけのことはやると、そうしてその上で、この資金的な
援助必ずしも
補助のみには限りませんが融資の途なり
補助の途なりを考えるということにすべきだと考えまして敢えてこの
法律にこれを
規定したわけでございます。
以上簡単でございますが、御
説明を終ります。