○
衆議院議員(
田中角榮君)
佐々木議員にお答えいたします。現在、第一問の現在
建築士法を制定した場合、必要な
人員が直ぐできるかというお問いでありますが、これに対しましては、現在大体
一級建築士、本
法案を
施行いたした直後の
一級建築士が一万人、二級
建築士が三万人というくらいに推定いたしておりまするので、現在の状況から
考えましては、この
法律公布直後に不足を来たすということは
考えられないと、こう
考えます。それはもう少し具体的に申上げますと、現在はこの
法律案が
通りましても、
経過規定を設けておりまして、その
経過規定の狙うところは、現在この
業務を、現に完全に遂行しているものは、その
選考から漏れることのないようにという
実情に即したと
考えられる
経過規定を設けられておりますので、現在
事業を行な
つておられる
方々は無
試験で拾い上げられるということになりますから、現在の
人員より減るということは殆ど
考えられないというような
状態であります。
第二には、十二坪に対する問題でありますが、勿論本
法律案は高度の
技術を必要とするものについて
限つて一級、二級
建築士でなければ
工事を
設計並びに
業務監理を行うことができないというのでありますから、大体において、現在十二坪、十五坪、二十坪、三十坪とか、現在の
建築制限令で以て許可せられているようなものは、
法律案ができましても、当然今までと同じく、誰でも
設計できるのでありますから、この
法律案を
施行することによ
つて、経費がかかるということはありません。
第三番目は、
建築士を傭い入れてよろしいかということでありますが、これはいずれで傭い入れましてもよろしいのでありまして、或る
一つの
会社が
建築士を傭いまして、それに
設計を行わせ、且つ
業務監理をさせるということは、現在各
会社が
建築専門家を
営繕係としてこれを雇傭し、
事業の代行をせしめているということと全然
変りはありません。
建築士の
月収でございますが、これはまあ
資格に対して
制限を設けておりますが、
建築士そのものは
自由営業でありますので、現在の
建築事務所と同じでありまして、一人
当り幾らということは算定できにくいと思いますが、大体現在の
建築事務所で
設計を行い、
監督を行い、
業務監理を行うという
程度でも
つて、総
施行額の何ぼということが、現在の
建築士会の
規定にな
つておる
通り、
二分のところがあり、
二分五厘、三分、高度のものは四分のところもあるのでございますが、これは現在とそう違わないと思いますが、違わないというよりも、現在は
法律的にこの
設計料というがごときものの
取締規則がありませんので、場合によ
つては
特殊契約を結んでいるところのものは、高度な
設計料を徴収するという場合も起きて来るのでありますが、この
法律案が
施行せられますと、
審議会において
最高限度という大体の
基準額が決められますので、俗に言う
施行主と
設計者の間にあこぎな真似をすることは
法律において禁じられておりますので、
工事監理を沢山行い、
工事設計を
沢山行つたものは必然的に収入が多くなるわけでありますが、それも現在とはさして
変りはないというふうに
考えております。
第五番は、これは非常に重要な問題であろうと思います。この従来
統制……
ちよつと
考えると
統制というような感じが起るのでありまするが、多少現実的に
工事が遅れるのじやないかということは、これは非常に
考えられる問題でありますし、
法律案ができると何でも遅くなるということは当然であります。私達もこれが普通の
統制のための
統制であり、これが実際の
施行という面に対して
マイナスが起るということは時間的な問題でありまして、これは非常に私達も
考えた面でありますし、重要な御
質問だと思うのでありますが、現在の
建築士というものを法制化したというくらいな
状態でありますので、尚、その上に相当な
責任と同時に権限も付与せられておりますので、そして又一面自由な
営業でありますから、
実績を挙げるという
意味から
考えても、特に偏狭であり且つ特別なる
性格の持主でない以上、
自分の
業務に精を出すということでありますので、現在の
建築士というものが行な
つておる以上に、本
法律案を出すことによ
つて、
施行することによ
つて、工期がうんと遅れるということは
ちよつと
考えられないと思います。ただ先程
北條さんが御
質問になられましたように、特に今までは地元の
大工さんだけでや
つてお
つたものが、山の中でとにかく
建築士に相談しないと図面ができ上らんというような面を
考えますと、多少そこにある
特種な環境にあり、
特種な
條件を具備した
建築に対してだけ、現在よりも時間的に多少遅れるということはあると思いますが、併しこれは
建築士というものが、投げやりではなく、
自分の
設計をし、
工事をしたものに対しては、あらゆる
責任を持たなければならないという
関係上、
工事に着工する場合、直ちに
工事竣功までの全
計画書を作るだろうと思いますから、その
意味においては、多少着工が遅れるとしても、
工事を
竣功までの期間を通算した場合に、私はむしろこれが軌道に乗れば、早くなるのじやないかということも
考えられておるような次第であります。