○吉川末次郎君 私は、申すまでもなくこの
法案についての議決権を委員会として持
つていらつしやる
建設委員会の者ではありません。むしろこの連合委員会においてお客さん的な立場で、
地方行政委員の
建前から
意見を申述べるということが、これに加わ
つて来ている我々の主たる
目的かと思いますので、多少
意見に傾くかと思いますが、
質問をかねて申上げたいと思うのでありますが、第一にこの
法案につきましては、一昨日の本会議におきましても若干触れて申上げたのでありますが、全般を通じまして簡単に申上げまするというと、失礼なようでありますが、この
提案理由の
説明並びに
法案を通じて、これを
提案している人が如何にも
国会議員らしくない、一国の政治家らしくないところの、まあこの
別府という小
都市の
地方議員のアイデアであるならばうなずけるのでありますが、苛くも
日本国家の、一国の政治を
審議すべきところのこの
国会議員といたしましては、甚だ知性の欠けた皮相なるところの見解に基いて
提案理由が
説明され、又
法案が提出されているということを先ず私の感想として、失礼ながら最初にそういうように感ずるということを申上げなければならんと思うのであります。
第一に、
提案理由の
説明によりまするというと、
別府というところの
一つの
温泉都市だけを取上げまして、それが何か
世界に冠絶するところの
観光地であるかのようにお
考えにな
つているようであります。それは如何にも
世界を知らざるところの本当に田舎者的な皮相なるところの見識でありまして、大体我々は子供のときから、
日本の誤れる国粹教育によりまして、
日本くらい
世界で景色のいい所はないというようなことを随分読本で教えられて来たのでありますが、さて、
世界を廻
つて見ますというと、
日本くらいの景色を持
つておる所は至るところにある。温帯地帯にありまするところの
国家でありますならば、どこの国にでも
日本が持
つておるような海もあれば、山もあれば、川もあるのでありますからして、立派な優れたところの
観光に値する景色のいい所はもつともつと沢山、もつともつと大きなスケールにおいてあるということを我々は海外へ出て初めてそれを痛感したのであります。殊に
日本のごときは海国でありまして、非常な湿地帯で気候のごときは我々は子供のときには読本で、気候は
世界で一番いい所であるというようなことを教えられて来たのでありますが、これも又まつかな嘘なのであります。だから真実
世界における景色のいい
観光に値するような所のうちにおいて
別府というところを取上げて、それが
世界的なスケールからして
考えたときに、どれだけの価値を持
つておるものであるということを先ず第一に
考えて物を
考えて行く必要があると思うのであります。
さて、次には、先程来
岡本地方行政委員長からも
お話がありましたが、又赤木さんからも
お話がありましたが、そういう蚤の睾丸のような識見に基いてこの
法案が出されておると
考えられるのであります。さて、こういうようなものがこの
国会を通じて制定されるといたしまするというと、赤木さんもおつしやいましたように、
熱海にも同じような
法律を
作つて呉れ、奈良にも
作つて呉れ、京都にも
作つて呉れというようなことで、至るところの
都市がそういうことを要求して来るだろうと私は思うのであります。或いは又長野県の長野市のごときは善光寺があるからというので、これは国際寺院
都市建設法案というようなものも
出して来るかも知れんと思うのでありますが、そういうことは十分に想像できるのでありまして、今日又すでに
熱海その他の
都市から同様な
法案が提出されておるのでありますが、これは我々
地方行政の委員の立場からいたしますというと、
日本の
地方行政組織というものの全体系というものをば、そういう特別法規を個々に
作つて行くことによ
つて破壊してしまうということは、これは
地方制度の上において極めて重大なる問題であるということを、どうぞ議決権を持
つていらつしやる
建設委員の方に十分お
考えを願
つて、この御決定に当
つて頂きたいと思うのであります。それについては私は本多国務
大臣或いはその他の自治行政の担任者の
政府委員からの見解が是非聞きたいのでありますが、今日は来ておられんようでありますから、この次の機会においてでも是非そのことについての
答弁を願いたいと思
つておるものであります。
それにつきましては、
岡本委員長も先程言われたのでありますが、昨日の
地方行政の委員会におきまして、全国市長会の会長代理でありますところの神奈川県の川崎市の市長が、二百幾つの
日本の市の代表者として参りまして、こういう特別法規が頻々としてこの頃
地方行政委員会でなくして、
建設委員会を通じて制定されて行くようであるが、怪しからんことである、そういうことを声を大にして言
つて帰つたのでありますが、私は誠に尤もであるということを感ぜざるを得なかつたのでありまして、この問題は是非
建設委員会におきまして、委員の
方々が重大なる問題として特別の御
考慮を願いたいと思うのであります。
それから一昨日の本会議におきまして、私はこの頃の衆議院が、非常に杜撰なところの、
地方的な利害にのみ捉われた、
国会議員らしくないところの、愚劣なるところの
法案を頻りに議定して参議院へ廻して来るから、参議院の諸君は二院制の立前からしつかりして呉れというような
意味のことを言つたんでありますが、是非そうした小さな
地方的な利害に疑われているところの
法案については、これ又その決定について先程申上げたことでありまするが、
建設委員の諸君が特にその上院議員としての矜持とその責任において、この
法案にも対処せられんことをお願い申上げたいのであります。それで先程申上げたことに関連いたしまして、全国市長会というものが組織されておるのでありまして、これは法規的にも
相当の
重要性を、ウエイトを置いて
政府の方においても今日まで対処して来られたのであります。即ち自治委員会というようなものの構成につきましても、その市長の代表者というものを一枚加えて、そうしていろいろな
地方行政に関することを決めるようにして行かれるのでありますが、その市長会の
意見というようなもの、市長会というようなものも、
政府がこういう
法案を出されるならば、それに加わ
つているに違いないのでありますから、その市長会を通じて
国会に運動しなさるというようなことが私は必要じやなかつたかと思うのでありますが、少くとも全国市長会との関連性ということも
考えて行かなければならん。又御
承知のように今日
日本の
地方行政制度というものをば大変革をしなければならないというので、
地方行政組織調査会議というものが組織されておるのでおりまする、ということは
建設委員の方もよく御
承知のことだと思うのであります。これはシヤウプ勧告に基きまして、
地方自治体におけるところの事務の配分というようなことを再検討するという
意味におきまして、
政府が組織いたしておりまするところの重要なるところの
地方行政に関する機関でありまして、こういう特別法を特に
一つの
都市に限
つて作るというようなことにつきましても、当然にこの
政府がその
法案を
国会を通じて制定いたしまして、その委員もすでに任命されております。即ち鶏澤聰明、或いは高橋誠一郎、或いは杉村章三郎、神戸正雄、渡辺銭藏であるとか、こういう五人のいわゆる
大臣級と言
つておりますが。その
大臣級の委員において重要なるところの
地方行政組織に関するそういう調査会議というものを組織されておるのでありますから、当然にその調査会議がこれは
審議すべき
一つの問題であると思います。そういうことの関連性ということも
提案者もお
考えになる必要があると私は思うのでありまするが、そういうことについての御
答弁も後程頂きたいと思うのであります。
それからもう二つ、一昨日私は本会議においても言つたのでありますが、この項の衆議院の行動について甚だ怪しからんことが極めて多いが、その
一つの例として、例えばこの
別府国際観光温泉文化都市建設法案という、この私の見たところ極めて知性の欠如したところの愚劣なるところの
法案を、衆議院におきましては直接本会議におかけにな
つてからに、これを付議すべきところの
地方行政委員会にも、
建設委員会にもかけないで、みんなの人が知らん間にこういうものを本会議にかけ、うやむやのうちに議定して参議院へお廻しにな
つているということでありまするが、これは甚だ手続の上においても怪しからんことであると思うのでありますが、そういうことについても
一つ提案者の方から御
答弁を得たいと思うのであります。
それから、これ又赤木さんからも
お話に
なつたことでありまするが、
観光施設におきまして、私は何も
日本だけがそれ程景色のいいところであるとも思いません。又
別府はそれ程国際的に冠絶した立派な
温泉都市であるというようには思
つていないのであります。
外国にも
温泉都市は沢山あります。ドイツにしても、ここに熊本のドイツに長くいらつしやつた何がいらつしやいますが或いはカルルスパードとか、ウイースバーデンであるとか、いろいろ
温泉都市があります。又ハンガリーの首府のブタペストのごときも非常に立派な
都市でありますが、別に
温泉で立
つている
都市ではありませんけれども、これは
温泉を持
つておりまして、いろいろな
温泉施設を持
つております綺麗な
都市であります。何も
別府温泉が
世界で一番いいところの
温泉都市であるというようなことの
考え方は、誠に私は、そういう卑小なるところの見解に與することはできないのであります。併し
観光施設を
政府が或る
程度の
援助をいたしまして、そうして
観光客を海外から招いて、
日本の景色を見せると共に又
外貨の獲得をするということは、私は十分必要なことだと思います。又ひとりその国際的に
外国の
観光客を得て
外貨を獲得するということのみでなくして、
日本国民の
観光施設、或いは厚生
施設といたしまして、
温泉のようなものはできるだけこれは国民大衆の利用するようにしなければならんということは、国策的に必要なことであると思います。でありまするから、そういう自然的な基礎を持
つておりまするところの
温泉等につきまして、そういう見解の上から
政府が適当なるところの
施設をするということはいいことであると思うのでありまするが、私は先ず
国立公園、或いはその他の
観光施設に関するところの
政府の
保護政策というものについて、今詳しい具体的なことを申上げる知識を十分持
つておりませんけれども、併し
国立公園その他のものにつきましては、そういう見地から
政府も今日まで
相当する国の
予算が許す範囲内においての私は
保護をや
つて来たと思うのであります。でありまするから、既存のそうしたところの
国立公園法、或いはその他の
観光施設に対するところの
国家の
保護の法規の一環の中へ、或いはその体系組織の中へ
別府というものを利用したならば、
別府をその中に入れて、そうしてその
国家全般的な
観光施設に対するところの国策というもの、或いは国の
保護というものをば利用させる。その組織体系の中に
別府を入れて行くというように
考えることが私は妥当なんじやないかと思う。ひとり
別府というものだけを引抜いて、そうして
日本の自治行政組織の全体系を破壊するようなこういう
法案を、又私の見るところ極めて知性の欠けた卑小なるところの識見に基くところのこんなものをお
出しになるということについては、私は賛成することができないのであります。以上申上げましたことにつきまして、
政府側、或いは
提案者の側からそれぞれ御
答弁を願いたいと思います。