○
來馬琢道君 第二
分科の
審査の
経過並びに結果について御
報告を申上げます。第二
分科は
裁判所、
法務庁、
内閣、
文部省、
厚生省、
労働省、
運輸省及び通産省の各
所管事項について
審査いたしたのであります。
昭和二十二
年度の
決算は、第五回
国会に
提出になりまして、
審議を進めましたが、
審議半ばで
会期が終了したため、
審議未了に
終つて、第六回
国会において引続き
審議いたしました。然るに
会期が短かかつたため終了するに至らず、漸く今回に
至つてその全部を
審議するに
至つた次第であります。
第二
分科は、この間しばしば
会議を開きまして、
政府当局及び
会計検査院の
当局の説明を聞き、質疑を重ね、
愼重審議いたしました。尚、
昭和二十二
年度決算検査報告に記載されております
既往年度並びに
昭和二十三
年度に関する
批難事項、及び
昭和二十一
年度決算検査報告に記載されてある
昭和二十二
年度に関する
批難事項についても、併せて
審議いたしましたことを附言して置きます。而して最後に、本年三月十六日
議決をいたし、その
審査報告書は、文書を以て
委員長に
提出いたしました。これが
只今皆様のお
手許に配付されてありますから、朗読いたします。
決算委員会第二
分科審査報告書
昭和二十二
年度一般会計歳入、
歳出決算並びに
昭和二十二
年度特別会計歳入歳出決算中、
裁判所所管、
法務庁所管、
内閣所管、
文部省所管、
厚生省所管、
労働省所管、
運輸省所管及び
逓信省所管の部を、
審査した結果左の
通り議決した。
第一、
会計検査院が
検査報告中に、指摘している
不当事項については、いずれもその
検査報告と
見解を同じくする。
第二、
決算の内、その他の
事項については
異議がない。
第三、左の十四
項目については、
内閣に対し将來の
注意を促すため、特に
意見を付する。
(一)
過大の
予備費使用の
決定を受けたり、又
予備費使用決定額の大半を
大蔵大臣の
承認を経ないで、他の費目に流用したものなど、
予備費の
支出当を得ないものがある。(
検査番号第四四号、第四五号、第二五二号、第三四二号)
予備費使用の
決定は
内閣に委かされていることに乘じて、このような非違を犯すことのないよう、
内閣はその
決定並びに
使用に当
つては、細心の
注意を拂うべきである。
(二)
会計検査院の
検査報告によれば、
支出官に対する
予算支拂計画の
示達が遅延し、甚だしきは
年度経過後に
示達されたものさえあるため、好ましからざる
事例が少からず生じている。即ち、
地方在勤職員に対する
給與を、
地方費等で立替
支拂したり、
年度末に
至つて工事施行又は
物品購入等の
契約を締結して
年度区分を紊る結果を生じたり、
補助金交付につき時期を失する等の
事態を生じたりしているということである。
支拂計画の
示達は、
国庫金の
状況に制約されることもあるから、
内閣は一方にま
国庫収入の
促進を図ると共に、
他方には
示達手続を
促進して、
予算の
執行を円滑ならしめるよう、十分の
注意を拂うべきである。
(三)
工事の
施行又は
物品の
購入に当り、事実を作為し、
年度内に
完成又は納入されたものとして
経費を
支出し、
経費の
年度区分を紊つたものがある。(
検査番号至第二一号、第八八号、第二五〇号、第二七三号、第三六二号乃至第三六四号、第三七〇号)
かくのごとき
経費の
年度区分を紊る
会計法規違反事件は毎年その跡を絶たず、
却つて増加の
傾向にあるのは誠に遺憾である。その
原因の主なるものは、
予算の
示達が遅れたり、
繰越の
手続が煩雑に失するがたれである。すでに前
年度決算審議報告にも指摘した
通り、
予算配賦の
促進並びに
予算繰越手続を早期且つ敏速に行うため、
内閣は適当な
改善方策を講ずることが、肝要であると認める。
(四)
会計検査院の
検査報告によれば、公共
事業費の
使用については、從來認証
手続が複雑に過ぎたため、
予算の配賦が著しく遅延した事情に鑑み、二十二
年度第四・四半期から仮認証の便法を講じて、
予算配賦の遅延を防止することに
なつたが、仮認証後における主務庁の処理が、おそいため、
予算実行の
促進には大した効果がなく、依然として公共
事業費支弁事業については、
年度内完成を條件としながら、その不可能であることが明らかな
年度末に差し迫
つて、
予算の
示達を行うような
事例が多いと云うことである。
内閣においては、公共
事業費の
予算実行の
促進を図るため、更に一段の
考慮を拂うべきである。
(五)
補助の指令が遅れたもの、
補助の事業及び所要
経費の実情を調査することなく
多額の
補助金を
交付したため、
補助超過の結果をきたしているもの、指定
通りの事業が実施されていない場合に、
補助金の全部又は一部の返納の
取扱を怠つたもの、其の他
補助費の
交付等について
措置当を得ないものが多い。(
検査番号第九〇号乃至第一〇一号、第二五六号乃至第二六七号、第二七四号乃至第三〇三号)
これらは或は
補助金の
交付につき
注意を欠いたもの、或は
補助金交付後の
措置適切ならざるものであ
つて、前
年度決算審査報告にも記した
通り、
内閣は、その
目的達成のため効果的に
支出するよう十分の
注意を拂うべきである。
(六)
予算の
目的に
経費を
使用し、又は
予算を流用して
職員の
官舍等を新築し、或は
職員の
厚生施設を行な
つたもの等がある。(
検査番号第三四三号、第三五一号、第三六五号、第三六六号)
これらのもののうちには実情に照して、その情状を諒とすべきものがあるが、会計法をみだることは絶対に許されない所であるから、
内閣は、よろしく
予算上の
措置を採
つて合法的にこれを行うよう、
注意を拂うべきである。
(七) 特殊物件は
昭和二十二
年度までに、その大部分の処分を終つたが、二十二
年度迄の
徴収決定額四十二億八百余万円中、
収納未済額は十一億九千五百余万円の
多額であり、又
徴収決定すべきものが、十六億五千百余万円ある外、
運輸省及び逓信省で処分し
徴収決定した、特殊物件は二十二
年度までに、それぞれ三億二千余万円及び一億百余万であるのに、その代金として
一般会計に納入したものは、尚少額である等、或は
徴収決定を怠り、収納を怠り、或は又特殊物件を、ほしいままに処分する等、特殊物件の処分に関し
措置当を得ないものが多い。(
検査番号第四九号乃至第八四号、第三四一号、第三四六号、第三六〇号)
内閣は特殊物件に関する
徴収決定、及びその収納につき、更に一段の努力を拂うべきである。
(八)
物品の
経理は前
年度の
決算審査報告にも指摘した
通り、と
かく軽視される
傾向があり、その
出納保管上の
措置当を欠くものがある。
内閣は
物品の
経理改善につき更に一段の
注意を拂うべきである。
(九) 寄附により新営等を行い、又は寄附金で新築させた建物を受けることによ
つて庁舍の整備を行つたものがある。(
検査番号第四号乃至第十一号、第三〇八号乃至第三一二号)
このような国の機関の庁舍は
国会の
議決を経た
予算の範囲内で、これを設備すべきものであ
つて、寄附により設備することは妥当でないのみならず、寄附が形式的には自発に基く場合でも、実は半強制に類するものが多く、国民に対して法規に基かない負担を課することとなり、又
歳入・
歳出に外に
経理を行う結果を來すから、
内閣は、このような寄附を受けることを嚴に愼むべきであり、又寄附を受ける場合には、これを
歳入に受け入れ、所要
経費は、
予算に計上して
支出するの、
処置を採ることを励行すべきである。
(十) 登緑税の賦課当を得ないものがある。(
検査番号第一二号、第一三号)
不動産及び船舶の登録税については、
昭和二十一
年度決算検査報告において課税標準
価格は適正な時価によるべきであるのに、その
決定が著しく低きに過ぎ、登録税の賦課当を得ないものがあるとの指摘を受け、参議院においても、その指摘を認めているにもかかわらず、更にこの非違を犯していることは遺憾である。
内閣は、将來この処理の適正を期するため、課税標準
価格を経済事情の変動に即応して遺憾のないようにし、又登記官吏が、その判定を誤らぬよう、最善の
措置を講ずべきである。
(十一)
会計検査院の
検査報告によれば、現金又は
物品を亡失、き損した
事件は極めて多数に上り、その
金額は少くないが、その大部分は盗難及び火災事故によるものであるということである。
内閣は、これら被害に対する防止方法などに関し
適確な
措置を講ずべきである。
(十二)
職員の
犯罪により、国に損害を與えたもの及び
職員の業務上、その他の
犯罪が増加の
傾向にあることは官吏が業務に忠実、公正であり、範を
一般に示すべきであることに鑑み誠に遺憾である。(
検査番号第一八号、第三〇五号乃至第三〇七号、第三七六号、第三七七号)
近時
我が国一般に道徳の
程度が低下しており、自然その影響が官界にも及んでいることは歎息すべきことであるから、公務員の
綱紀粛正に関して、
内閣の
嚴重なる
注意を望む。
(十三)
運輸省に於て、
多額の死退蔵品を売却するに当り、特に財団法人鉄道弘済会を指名し、高率の割引をしている等、鉄道弘済会に対して特別の便宜、
保護を與えている。
鉄道弘済会が退職鉄道
職員に関する福利施設であり、
運輸省が之に対し特別の関心を有することは諒とするが、
保護の
程度厚きに失し、国庫に不当の損失を與えているものがあると認めるから、
内閣は、この種の問題について特別の
考慮を拂うべきである。
(十四)
不当事項に関する責任者の処分が、時にその
内容に照して軽きに失し、或は処分することが妥当であると思われるものに対し、全然処分を行な
つていない等、処分の適正を欠くものがある。
終戰後社会秩序急変の影響を受けて公務員の責任感の弛緩に基く
不当事項の発生も少くないと思われるから、
内閣は是等の
不当事項の発生を未然に防止するため、責任者に対する処分の適正を期するよう特別の
考慮を拂うべきである。
第四、
政府当局と
会計検査院との間に
見解の相違を見ている
項目に対する
審査の
経過並びに結果の要領、及び特に
審査の
経過につき一言するを適当と認めた
項目に対する
審査の
経過並びに結果の要領を述ぶれば次の
通りである。
(一)
検査番号第四号(
法務庁所管)は寄附により、庁舍を整備し、
予算の制をみだつたものとの指摘を受けているものであるが、
当局は、八王子支部庁舍については一部寄附によるものでなく、全部を買収したものであると説明している。
右は当時の
関係文書等に照し、
会計検査院の指摘の
通り、
予算の不足分を寄附によ
つて補つたものと認める。
(二)
検査番号第四九号(
内閣所管)は、内務省で終戰直後全国
農業会に売り
拂つた放出物件たる松根原油につき、その処分代金は原則とて、処分当時の
公定価格を基準とすべきであるのに、特に低い
価格で売り
拂つたのは
措置当を得ないとの指摘を受けているものであるが、
当局は
本件物件は同一物件である連合国軍から返還を受けた松根油につき各方面と協議の上決済したものの
価格を基準としたものであ
つて、その
措置は一応当を得たものであると考える。而して松根油の
公定価格は戰時中の特殊用途に充当するため、急速な大量生産の要請に基き不当に高価に
決定されていたものであり、松根油の戰後における需給
関係の根本的変更に鑑み、別個の観点から適正な
価格を定める必要があつたので、
本件松根油の
価格は漁業用燃料として、これと競合
関係にある鉱物油B重油の
価格とにらみ合せ、当時の市価をも参照して
決定されたものであると説明している。
松根油の戰時中の
公定価格は、特殊用途に充当するため
価格政策により、
決定されたものであり、終戰後これを全然別個の用途に充てる場合、これと競合
関係にあるものの
価格と睨合せて、
本件放出物資の
価格を
決定したことは了解し得るものであ
つて、その結果、
公定価格より低
価格となるも止むを得ないと認めるが、全国
農業会は松根油を精製して拂下当時の目標であるB重油の代用燃料として漁業用に販売した
数量は、極めて少量で、大部分は他の用途に販売し、更に、その精製によ
つて生じた副産物を売却して、
多額の利益を収め、これを全国
農業会の赤字補填に
使用していること等に鑑み、
本件価格の算定に当
つて愼重を欠いた点があると認める。
(三)
検査番号第四六号(
内閣所管)は、
予算に積算のない、
内閣所管価格調整費から石炭増産報奨金を
支出したことは、
予算の
使用当を得ないものであるとの指摘を受けたものであるが、
当局では、二十二
年度において石炭増産報奨金につき
繰越予算額では不足を生じたので
商工省において
予算の増額方につき
大蔵省と折衝の結果、
大蔵省から右不足額は、これを
価格調整費の
予算から
支出するよう指示があつたため、この
措置を採つたものであり、又石炭に増産奨励金を
交付することは、本來の
価格調整の
目的に適合するから、本
措置は
価格調整費の運用として妥当であると説明している。
石炭の増産対策として奨励金を
支出することは当時の状勢に鑑み妥当であるが、
予算制度は嚴守すべきであ
つて、單に本來の
価格調整の
目的に適合するの理由で、
価格調整費を運用し、この費目から
予算に積算のない石炭増産報奨金を
支出することは妥当ではない。
なお、右の
措置を採つたのは、
商工省から石炭増産対策諸費の増額方の折衝を受けた
大蔵省の指示に基いたものであるから、
予算執行につき監督の地位に立つ
大蔵省としては大いに反省の要あるものと認める。
(四)
検査番号第三五五号(
運輸省所管)は、労務配米を貯蔵品
購入資金で
購入したのは当を得ないとの指摘を受けたものであるが、
当局では労務加配米は從來国有鉄道共済組合の運用資金を以て
購入していたが、終戰後の経済界の変動により、その資金が枯渇したことと、労務加配米の調達は
一般に事業主がすることにな
つているので、その確保を計り、も
つて本
特別会計事業の運営を円滑に遂行するために、これを貯蔵品扱として
経理の
整理をなし、その
取扱の嚴正を期することとしたものであると説明している。
労務加配米調達の確保を計る必要のあること、及び之がためには
多額の資金を要する等の事情の存在することは了解し得るところであるが、
予算制度は嚴守すべきであり、国有鉄道の作業資産である貯蔵品とは認められない労務加配米を、国費で
購入することは妥当でないと認める。
(五)
検査番号第三五六号(
運輸省所管)は、短革靴の原料、真綿製チヨツキ等を貯蔵品
購入資金で
購入したのは、当を得ないと指摘を受けたものであるが、
当局では是等は需給極度に逼迫し、これがため国鉄從業員の作業能率の低下を招いていたので、鉄道の経営に直接
使用する物資と必要度において大差ないものと認めたのみならず、これら物資の調達には相当額の資金を必要とするので、このような
処置を採つたと説明している。
これ等の物資が国鉄從業員の作業能率に影響することは了解出來るが、前号と同様の理由により妥当でないと認める。
(六)
検査番号第三五八号(
運輸省所管)は大阪鉄道局が大阪府から受取り戰災
職員救済用として配給した防寒襦袢及び袴下等に対し、その買取單価が内定單価に比し、著しく高かつたのに、その差額を
職員から徴収せず、これを省外売却差損に計上したのは不当であると指摘されたものであるが、
当局では
本件被服は、旧軍からの放出物資であ
つて、同一品種である名古屋鉄道局が三重県から引渡を受けたものの單価を基準として
職員から代価を徴収したところ、大阪府から引渡を受けたものについては、大阪府の財政状態並びにこの種物価の昂騰甚だしかつた当時、その
価格決定の著しい遅延により、右よりも高価に
決定されたものであ
つて、これが差額を省外売却差損として処理することは実情止むを得ないと説明している。
本件物資が製造原価計算に
関係のない放出物資であること及び大阪鉄道局が引渡を受けたもののうち、大阪府より、一ケ月前に
決定した京都府の分が相当に安価で
決定している事実に鑑み、
本件物資を他に比較して著しく高価で買入れたことについては、
愼重の
考慮を欠いたものと謂わざるを得ず、その結果
多額の省外売却差損を計上するに
至つたことは不当であると認める。
(七)
検査番号第三六五号(
逓信省所管)は
予算上認められた共済組合福祉施設
補助金の外に、
予算を差し繰
つて農場、製塩、漁撈、製炭等の事業を
施行しているのに対し、たとえ從業員に対する
厚生施設であるとしても
予算に認められた以外に更に
多額の
予算を
示達して
支出し、しかも
本件施設のうちには、成績のあがらないものの多いのは、
予算の
使用当を得ないとの指摘を受けているが、
当局は
昭和二十三度において成績の挙らないものは
整理閉鎖し、採算可能の施設のみについて運営を継続しているが、今後は
予算の
使用は極力これを抑制すると共に
一般経済情勢とにらみ合せ善処する。なお、二十二
年度に於て、成績のあがらないものについては必ずしも責任者の責に帰するものとは認めないので、責任者の処分は行ていないと説明している。
本件に対する
会計検査院の
批難の主眼点は上述のように
予算に認められた以外に、更に
多額の
予算を
支出している点であ
つて、この
批難は妥当であると認める。然るに
当局に於ては、單に施設の成績の良否についてのみ説明し、この主眼点たる
予算外の
支出についての反省を欠いているのは甚だ遺憾であり、又その責任者に対しての処分を怠つたのは妥当でないと認める。
右の
通り議決した。よ
つて報告する。
昭和二十五年三月十六日
決算委員会第
二
分科副
主査 來馬 琢道
決算委員長 谷口 彌三郎殿
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