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法制局長(
奧野健一君)
公労法の第十六條第二項の
規定に基いて提出する
案件の
取扱いに関する問題でありますが、これは第十六條に
規定しておりますような、
予算上
資金上支出不可能なものを
内容とする
協定又は
決定がありました場合に、
政府が十日以内に
国会に付議して
承認を求めなければならないということにな
つておるわけでございます。而してその
承認を求める
形式につきまして、いろいろ
議論があるわけでありまして、先ず考えられますことは、法文に
規定のあるように必ず
承認を求むるの件ということについて、
国会の
承認を求めるという
やり方と、それから
政府が
承認して貰いたいと
思つて承認を求むる件、
不承認を希望するときは
不承認を求める件というふうに、どつちかで求めるという
やり方と、それから第三に、この前
政府が持
つて参りましたように、單に十六條第二項の
議決を求めるの件ということで提出するという三つの
方法が考えられます。併しながら検討いたしました結果、やはり
公労法第十六條第二項にありますように、その
承認を求めなければならないということにな
つておりますので、
政府は
国会に対して
承認を求めるの件ということで求めるべきではないというふうに考えます。要するに
予算上
資金上支出不可能な
内容の
決定若しくは
協定がありました場合は、たとえ
政府はそれに不服であ
つても、この
公労法第十六條の第二項で必ず
国会に付議して、
国会がそれを
承認するかどうかということを、
国会の意思を聞かなければならないということにな
つておりますので、勿論
国会に付議しないわけには行かないのは勿論でありますが、その付議する
形式は
承認を求めるということでなければならないと思います。若し
政府が
不承認を求めたい、
承認を希望しないという場合に、
不承認を求めるの件というような
形式でこれを提出することができるものと仮定いたしますと、そういうふうな
案件については、
国会の方でこれを
承認したいと思
つても、
不承認を求むる件というふうに出して参りますと、それを否決するより仕方がないで否決いたしますと、その
承認にはなりませんから、
承認の
方法がないということになるわけで、どうしても
不承認を求めるの件ということではいけないと思います。そうなると、残るところはやはり
承認を求める件ということで出さなければならない。又これは法文の
通り、その示す
通りであります。而して法文では
承認があれば効力が生ずるということがあるだけでありまして、
不承認の場合はどうというようなことは法律には全然書いてないのでありまするが、法律的な効果を考えますと、
承認を求めるの件としてその可否を求めるということに提出すべきではないかというふうに考えるのであります。ただ
政府がこの前求めて参
つたように、どつちか
議決を求める件という漠然とした
やり方ではどうかという問題が残るのでありまするが、これは
国会法並びに憲法から言いますと、
国会の
議決は、問題に対する可否の
形式で
議決をして参りますので、單に
議決を求むる件というだけでは可否の決め方がありませんので、こういう
形式はやや漠然とするのではないか。併しまあこういう場合でも、
はつきり十六條の二項の
議決を求めるというのであれば、十六條の二項を読むと
承認を求めなければならないとあるのでありますから、やはりそれでも
承認を求める件というふうに解釈して
取扱うことができると思いますが、本当にただ漠然と
議決を求める件では可否のとりようがありませんから、まあ議案としては
はつきり
承認を求むる件というふうに出すべきてはないかと考えます。尤も
あとから申しますように、この支出不可能な部分に関する
承認を求むる場合に、必ず
予算を伴わなければならないかどうかという問題がありますが、これは
あとで御
説明申しまするように、
予算とは必ず不可分或いは必ずしも
予算そのものではないという
考え方でありますから、若し
政府の方で
承認して貰いたくないという希望があるのなら
予算を付けないということも考えられます。併しながら、その場合も
国会で
承認をすれば
政府を拘束いたしまして、
政府は必ず追加
予算等の
予算的措置をとらなければならない義務を生ずるものと考えるのであります。まあ
案件の出し方といたしましては、
承認を求める件というふうに出すべきである。
次に、これは両院に各別に、別々に出すべきか、一般のように先議後議の
形式によるべきかという問題があるのであります。一般に両院の意思
決定を必要とする場合は、原則としてやはり
国会法八十三條によ
つて先議後議の
形式で出すべきが相当であろうと思います。この点は
あとから申しますように、一部
承認、いわゆる一種の修正ということを認め得るという考えに立ちますと、やはり両院協議会によ
つて変え得るというような機会が、先議後議でありますと、あるわけてありまして、そういう点からいたしましても、これは先議後議の形において提出すべきが相当ではないかと考えます。次に、
予算の提出との
関係でありますが、これはやはり
予算上
資金上不可能な部分の問題でありますから、当然
予算に
関係するわけであります。この点については
承認を求めるというのは、即ち
予算についての
承認を求めるのではないという
議論もありますし、又
予算とは別個であるが、必ず
予算を付けて
承認を求めなければならないという
考え方と、
予算と
承認を求めるということとは別個なものであるという
考え方とが考えられると思うのであります。ここに(3)のBとしてありますように、これは支出不可能な
内容の点について
国会が
承認を與えれば、必ず
政府はそれに伴う追加
予算なり、その他
予算的措置を
国会に追
つて求めなければならない。丁度その
関係は
予算を必要とする法律案と
予算との
関係と同様ではないかと考えるのであります。即ち観念上は二つに分けて考えられて、
承認を求める件と、そうしてその
承認があれば必ず追つかけて
予算の措置を求めなければならない。勿論本当に
承認を求めるつもりであれば、同時に
予算を付けて来るのが原則と考えますが、観念上は
予算とその
承認を求めるということは可分であろうと考えます。この点は調停なり、裁定があれば、必ず十日以内に
承認を求めなければならないのでありますから、その間において必ずしも
予算的措置が完全にできるとは考えられませんから、そういう点から申しましても、
予算と分離できないものではないというふうに考えるのであります。併しながら、いずれにいたしましても国家が
承認すれば、
政府は追加
予算の提出等、
予算の措置をいたす義務が生ずるものと考えます。
次に、修正ができるかどうか、これは
承認を求めるか否かというだけで、その間に修正ということは考えられないということも
一つの
考え方であろうと思います。併しながら全部
承認することもできるし、全部
承認しないこともできるというのであれば、一部分だけを
承認するということもできていいではないか、全部
不承認ということができる以上、一部分の
承認、例えば一億円拂えというものに対して、どうも財政の
関係上半分だけ拂うが相当であるとい
つたような、一部
不承認、一部
承認ということになります。それから又期限の点におきまして、一月に拂えというのに、一月では
予算上どうかと考えるから、二月に拂
つてよろしいというような
意味の一部
不承認ということも考えられるのであります。そういう
意味で修正と申しますか、全面的に
承認を求めたものに対して一部分の
承認ということもできる。殊にこの間の参議院の
議決は、そういう期限の点における一部
承認というふうに考えられると思います。
次に、両院の
関係でありますが、これは別々に出された場合には、別々におのおの
議決して他に通知するということになるのでありますが、先議後議の
関係で出された場合には、
国会法第八十三條の
通り、結局初めの甲院で可決或いは修正した場合には、乙院に送付いたしまして、乙院でそれに対して更に修正いたしますと、甲院に回付をし、それから更に両院協議会というような問題が起るわけであります。それは
国会法八十三條
通りに動くものというふうに考えます。
次に、内閣との
関係でありますが、これは
国会法六十五條によりまして送付すべきものであろうと思います。ただこの
国会法六十五條は、議案が可決或いは修正等によ
つて成立いたした場合の
規定で、そういう場合に結局衆議院
議長から内閣に送付するということにな
つておりまして、六十五條は、両院の
議決が一致しないとき或いは否決されたために成立しない場合については、六十五條は何ら
規定をいたしておりませんので、その場合には実際の
取扱いといたしましては通知をや
つておるようでありますが、この点はむしろ法制的の問題ではなくて、事実上六十五條はもう成立した場合に限ると思いますから、不成立の場合については法制上の所管ではないように考えられますので、ただここでは漠然と一致しない場合には、その旨を通知するというふうに、漠然として
取扱いをするという
意味で書いたのであります。いずれにいたしましても、この場合は内閣に対しまして、この場合送付或いは通知いたしますのは全部衆議院
議長である。以上簡單でありますが……