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1950-03-03 第7回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年三月三日(金曜日)   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国が有償で讓渡した物件略奪品と  して没收された場合の措置に関する  法律案内閣提出) ○海外移住組合法廃止に関する法律  案(内閣提出)   —————————————    午前十一時六分開会
  2. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 只今から外務委員会を開きます。  本日は海外移住組合法廃止に関する法律案、及び国が有償で譲渡した物件略奪品として没収された場合の措置に関する法律案、この二法案議題といたします。先ず国が有償で譲渡した物件略奪品として没収された場合の措置に関する法律案審議をいたしたいと存じます。先ず政府側から提案理由説明を求めます。
  3. 山口喜久一郎

    ○国務大臣(山口喜久一郎君) 只今議題になりました国が有償で譲渡した物件略奪品として没収された場合の措置に関する法律案について、その提案理由説明を申上げます。  本案提出するに当りまして、政府が考慮いたしました点は、次の通りであります。国が曾て有償民間へ譲渡した物件が、後日政府によつて略奪品として没収された場合においては、政府は同一物件を売つて、これを取上げたことになります。そうして又売つた際の収納代金だけを、余分に収得したと考えられる次第であります。そこで善意の被没収者にい対しましては、収納代金に相当する額を拂戻すのが当然であろうと思われます。本法案の対象となつています拂下げられた物は、或いは緊急放出物件として、又は特殊物件として或いは需給計画による配給物件として国より拂下げを受けたものでありまして、なかんずく錫、鉛等非鉄金属類が多いのであります。その次にはミシン、続いて自動車工作機械化学薬品羊毛等がございます。今般政府はこの収納代金に相当する額を交付することといたしたいので、ここに本法案を国会へ提出する運びとなつた次第でございます。何とぞ速やかに御審議のうえ可決せられんことをお願いいたします。
  4. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 何か補足がありますか。
  5. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) 国が有償拂下げましたものにつきましては、御説明を致す程のこともございませんと思いますが、略奪物件略奪財産というものにつきまして、一言附け加えたいと存じます。そもそも今度の戰争に際しまして、略奪財産に関しまする連合国側方針は、すでに一九四三年、昭和十八年でありますが、一月五日連合国宣言と言うものがございまして、それに明らかにされておるのであります。その宣言の大要は連合国交戰関係にある国、即ち枢軸国側でありますが、の占領地にある財産権利及び利益について行われる一切の移転又は取引連合国側で無効とするという権利を留保するというものであしまして、その移転又は取引が明白な略奪や盗み取つたという形体を以て行われる場合は勿論でありますが、一応表面的には合法的な取引として行われたときでも、この原則適用があるとせられるのであります。この宣言に基きまして、連合国側略奪財産に関する基本方針は、終戰直後昭和二十年九月二十二日付、降服後における米国の初期の対日方針という書きものがございますが、その中に現物返還の主義が明らかにされてございます。日本政府に対しましては、この趣旨に基きましたと思われるのでありますが、昭和二十一年四月十九日連合国軍覚書を以ちまして、略奪財産没収及び報告に関する件というメモランダムが出ております。これに基きまして政府基本的法令といたしまして、内務省令第二十五号を交付いたしました。その内務省令に基きまして、具体的、個別的な調査指令又は機械とか非鉄金属とかに亘る一般的調査指令を時々司令部より受けまして、調査を実行いたし、その結果略奪品と判明したものは日本政府がこれを没収いたしまして、各要求国に返還いたしておる次第でございます。簡單でございますがそれだけ付け加えます。
  6. 野田俊作

    委員長野田俊作君) それでは質疑に入りたいと思います。
  7. 團伊能

    團伊能君 只今の次長からの御説明で大体分りましたが、ただ一点、只今の御説明でありますと、正当なる商取引におきまして、日本に輸入いたしましたものも亦没収品の中に規定せられるという話でありますが、その時期に関して、いつからの行為規定するのでありますか。
  8. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) 内務省令を御覧になりますと、第一條に「本令ハ日本軍隊占領セル地域ニ於テ法令規定ニ依リタルト否トニ拘ラズ昭和十二年七月七日以降強制、剥奪又ハ」云々と書いてございます。そうしてこれが今日までの原則になつております。ただ極く僅かでありますが、例外的にそれ以前のものにつきましても二、三の場合、政府から指令を受けまして返還いたしたものがございます。原則はここにあります通りであります。
  9. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 外にございませんか。
  10. 伊東隆治

    伊東隆治君 額は大体どれくらい、総額は……。
  11. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) この前総額は約三十二億見当になつておるのでありまするが、現在までに略奪財産として返還された物件の種類は種々雑多なものがございます。その中で最も目ぼしいものは、金塊が一トン六キロ三百三グラム、約九億円、銀塊が二百四十七トン約十五億円、工場及び機械工具約一万トン、タイプライター及びミシン三千六百三十台、非鉄金属が八千九百トン、自動車四百九台、図書十七万八千七百九十九册、船舶二十二隻、その他綿糸、綿布、羊毛等工業製品及び原料から宝石、時計、輸出品等奢侈品に至るまで千差万別であります。金額只今申しましたる通り金銀時価約二十億円で略奪品の大部分を占めております。その他工場機械器具等時価約五、六億円、非鉄金属の一億五千万円等が主なるものでありまして、図書船舶美術品等評価に困難なものはありまするが、大体三十億から三十二三億という見当を付けておるような次第であります。
  12. 伊達源一郎

    伊達源一郎君 今の御説明のその略奪品金塊でも銀塊でも今そのままあるのでございますか。
  13. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) そのままと申しますか、それはオランダとかイギリスとかへ返還いたしました。
  14. 野田俊作

    委員長野田俊作君) ちよつとお尋ねしますが、今問題になつているこの法律適用を受ける金というのは三十二億より少ないわけですね。
  15. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) 少うございます。一番多くありますのは非鉄金属の類でありまして、大体三千万円から四千万円と思われます。それから先程申上げました自動車が約二百万円ぐらいかと思つております。又ミシン、これは多数ありますが、單価が安く、三百万円程度と思われます。その他細かいものを寄せましても一億以下と見て、おります。併し略奪品として取られたものの中、曾て拂下げましたものというものは、統制がございませんことと、それから申請者が必ずしも全部申請を出すかどうかも疑問でございますので、正確には現在のところ何千万円とは申上げかねる次第でございます。
  16. 伊東隆治

    伊東隆治君 この金塊が大体五億、銀塊が十五億と申しますと三十二億の中の大部分でございますが、これらの没収された相手というのはどういうような人なんですか。
  17. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) 細かい数字を持合わせございません。大体金塊銀塊に関しまする限り、オランダが大部分を占めておる、それはその大部分陸軍の手でオランダから持帰りましたために、それを元の所有国に返還したわけでございます。あと少量ずつ英国、中国等がございます。
  18. 伊東隆治

    伊東隆治君 それは取られた相手ですが、それを略奪と言いますか、それを正当な手段で国から譲受けたその主というものは陸軍でしようか。
  19. 石黒四郎

    政府委員石黒四郎君) 実は今の略奪品金額で申上げまして大部分であります金銀は、今回の法律には関係ございませんので、と申しますのは、それは国の手にあります間に返還いたしましたので、民間への拂下げとなりましたものは、先程申上げましたように非鉄金属自動車ですとか、ミシンですとか、そういうものに限られております。比較的少い金額でございます。
  20. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 速記を止めて。    〔速記中止
  21. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 速記を始めて下さい。  別に御質疑はございませんか。別に質問がなければ討論に入りたいと思いますが、ご異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  22. 野田俊作

    委員長野田俊作君) それでは討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願いたいと思います。
  23. 伊東隆治

    伊東隆治君 この法律案は国が最初に、当然これは戰利品と申しますか、そういう意味では正当にこれは国が処分し得るものだと当時の当局は信して、これを売却いたしたわけでありますが、それらの品物が後に略奪品だということに終戰後、又性質が変更いたしました以上、これを没収せざるを得ないことになつたと思うのであります。併しながら国から有償で譲受けたものは、又国からすべて無償で没収されるということは、極めて不合理なことは明らかであります。それをこの際補償しようということでございますからして、これは極めて当然であり、理に合つたことと思いますので、本案に対しては贊成いたします。
  24. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 他に御意見もないようでありますから、討論は終局したものと認めて採決に入りたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  25. 野田俊作

    委員長野田俊作君) それではこれから採決に入ります。国が有償で譲渡した物件略奪品として没収された場合の措置に関する法律案議題といたします。原案通り可決することに御賛成の方は挙手願います。    〔総員挙手
  26. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 全会一致と認めます。よつて本案は可決すべきものと決定いたしました。   —————————————
  27. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 次に海外移住組合法廃止に関する法律案議題といたします。政府側提案理由説明を願います。
  28. 川村松助

    政府委員川村松助君) 海外移住組合法廃止に関する法律案提出につきましては、その理由を申上げたいと思います。  今現在の情勢に鑑みまして、海外移住組合法廃止に関する法律案を制定いたしまして、いわゆる海外移住組合法廃止することにいたした次第であります。海外移住組合法日本人海外移住を助成することを目的といたしまして、昭和二年制定されたものでありましたが、これによつて府県一つの割で移住組合が設立をされ、組合員に対しましては、海外移住に必要な資金、土地物件等を貸付け、或いは又譲渡する等の事業をやつてつた次第であります。然るに現在全国の海外移住組合は、その殆どすべては全くその本来の活動を停止いたしておりまして、いわば社会的な存在価値が全くなくなつているような次第であります。他面従来の組合はややもすると、国策会社的な組織であると見られまする面もありますので、この際海外移住組合法廃止いたしまして、将来我が国海外移住が許されるような場合になりましたならば、新しい構想の下に再び発足するのが望ましいではないかという考から、今回この法律廃止提案刷る次第であります。  尚細部につきまして管理局長から説明を加えさしたいと思います。
  29. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 法律建前のあらましにつきまして御説明を附け加えたいと存じます。第一條と第三條が海外移住組合法廃止に直接関係する條文でございまして、第一條がその廃止に関する骨子でございますが、第三條が法律廃止せられた後の清算に主として関するところでございます。それから第二條はもともとこの海外移住組合法産業組合法規定をいろいろ準用しておつたわけでございますが、その産業組合廃止せられました際に、この海外移住組合法関係につきまして脱落がありましたので、準拠法が一部なくなつておるような恰好になつておりましたので、外の産業組合法を準用しておりました関係法律は、消費生活協同組合法といものができました際に、その中でそれぞれ準用せられた法律関係に不便がないように活かしてあつたわけでございますが、この海外移住組合法に関しては、それについて落ちておりましたので、この際、海外移住組合法について準用関係を活かすということを先ずやりまして、そして海外移住組合法を完全な形にいたしまして、そして廃止をして頂くという関係から、第二條規定が必要になつて来たわけでございます、  附則のところは第一條、第三條の海外移住組合法廃止するというのは、今年の五月一日から施行される建前にしておりますが、第二條はこの廃止法案の公布のときから施行せられる。つまり完全な形に返すいう條文の方を先行させるという趣旨でございます。それから附則の第二の方は、これはこの廃止する法律の施行前にした行為に対する罰則適用につきましては、この廃止された後においても尚効力を有するということを明らかにした趣旨のものでございます。御説明簡單でありますが終ります。
  30. 野田俊作

    委員長野田俊作君) それではこれから質疑に入ります。御質問ございませんか。
  31. 團伊能

    團伊能君 ちよつとお伺いしたいのですが、この海外移住組合現状といたしまして、各府県にございますが、これは海外におけるものは同じですか。連絡関係が存在しておりますのですか。それを一つ伺いたいと思います。  次はこれはこの消費生活協同組合方自身において、海外移住組合法の中に存在する罰則、その他を修正されるのですかどうか。こちらの海外移住組合法廃止が、他の法律を自由に変化させることはできないと思いますが、消費生活協同組合法自身組合自身が変化されるということの御説明ですか、只今伺つたようでありますが、御説明はつきりしないのですが、一つ伺いたいと思います。
  32. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 現在この海外移住組合連合会というのが一つございまして、それから各県、各県と申しましても栃木、新潟、宮崎の三県にはございません。その外の県に海外移住組合というのがございますが、それは現在は海外との関係が実際上不便になつておりますし、それから従来移民関係を取扱つておりました、その関係がばつたり止まつておる関係上、海外の従来連絡しておりましたところとの、例えば安否の問合せその他の取次をしているという程度でございます。それから尚この従来海外移住組合連合会、並びにその各県の関係外国との関係でありますが、海外移住組合連合会ができましたのは、昭和二年でありますが、差当りブラジル自作農を設けるということで、それからパラグアイにその後自作農を送る。パラグアイ関係は直接に出張所等を置いておりましたが、ブラジル関係では、昭和四年からブラジル拓殖組合というものとタイ・アップしてやつてつたわけであります。それが結局は、現地では御存じの通りブラジル拓殖組合もございますけれど、現状としましては、この移民関係の事務を日本と直接連絡を取つて推進するという関係、それから従来債権債務関係がございましたが、それの処理も現在実施し得ない状況にありますので、従つて先程御説明申上げましたように、現在活動し得ないような状況にございます。  それからこの海外移住組合法廃止法律建前は、多少こんがらがつておりますので、もう一回御説明さして頂きたいと思いますが、第二條関係でございますけれども、産業組合法を準用しておる法律は他にも相当あるようでございます。住宅組合法だとか、農林中央金庫法だとか、その他あるようでございますが、産業組合法廃止せられましたときに、産業組合法を準用しております法律関係では、産業組合法廃止せられても、その準用しておる法律が生きておる限り、その準用せられた條文を活かして準拠法として置く手続が、消費生活協同組合法の中へ書いてあるわけでございます。ところがその一項として、ちようどこの二條に書きましたような、第十四條のところに入ればいいわけでございますが。それが抜けておつたために、この度こういうような準拠法として活かす建前を採らなければならんことになつたわけでございまして、結局はこの準拠法としての限りにおいて、産業組合法海外移住組合法準拠法になるということだけを明確にする趣旨でございます。
  33. 團伊能

    團伊能君 只今の御説明に附け加えてもう少しはつきりと伺いたいのは、先程伺いました趣意は、海外移住組合廃止されることによつてブラジルその他にございます従来の海外移住組合との連絡関係にあるものは、何かこちらにおいて、又連絡を続けるような一つの団体なりを作ることをお考えになつておりますか。
  34. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 清算関係が暫くまだ続くと思います。そういう意味におきまして、清算人法としては残るわでございまして、その範囲連絡は残ります。  それから又今後の移民と申しますか、海外同胞が発展する関係につきましては、新らしい態様で設けられなければならんじやないかというのも一つの考慮でございます。それから各県では各県庁に事務所を置いておるところもありますし、置いていないところもありますが、殆ど時々家族安否その他の連絡があるという程度になつておりまして、政府といたしましては、これを廃止して、直ぐこれに代るものとしてどういうものを設けるかということについては、まだ研究中でございまして、直接まだ申上げるような案にまで固まつておりません。
  35. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 他に質問ございませんか。
  36. 伊東隆治

    伊東隆治君 私は、この法案の各條項について質問をいたすのではありませんが、折角この移民に関する組合法廃止せられする機会に当たりまして、一、二政府当局の大体の御意向をお聽きするのも無駄ではないと、こう思いますので、ちよつとお伺いいたしたいのでございます。  今度の戰争によりまして、我が国が四割五分の領土を失つて、四つの島に限られ、而も三千万の人間が多くなつて、折角人口問題解決のために何十年来政府が心配しておつたこの問題が、戰争によつてむしろ非常に大きなむずかしいものとなつた。こういうことになつておることは、誰人も心配しておるところであります。今度この海外移住法のごとき、こういう態様による移民方法等につきましては、これは今後我が国も改めなければならんのであつて、この法律廃止することについても、これは異存のない次第でありますが、併しながらどうしても我々は、この人口問題の解決ということは、最も重要な我が国の問題でありますので、政府当局においても、この点日夜御研究なさつておることと思うのであります。今日のような国際情勢において、この移民問題を声高らかに言うことが、或いは却つて連合国の誤解を蒙るもとにもなり、人口問題についての有益な解決にならないというような気持も手伝いまして、すべての人がまだ移民の問題に声を挙げていない。これは時節柄、愼重にする意味において、私も同感でありますけれども、何と言つても今後海外同胞を移住せしめなければ、人口問題の解決はできない。人口問題解決のための移民の問題は、これを解決するものではないという結論がとにかく戰前には出ておつた銃劍で囲んでおつて、朝鮮や満州に一年に十万人と出なかつた。又この世の極楽浄土と言われたブラジルへの移民を合わせても、十万そこそこであつた。然らばここに三千万の過剰人口を全部移し終るには、この割合で行けば三百年もかかる次第でありまして、移民という問題は決して人口問題の解決にならないという一応の結論は出ておるのでありますけれども、併しながら、それは我が国移民方法が惡かつたということ、又移民に出かけて行く人の質の問題、それから又我が国政策、即ち銃劍で囲んだが故に却つていけなかつた。行つて威張る。土地の人との融和がうまく行かなかつた。こういう点で行きにくくなるということで、却つて移住者の数が少なくなつた。今や銃劍はすつかり捨ててここに平和日本となつて、心から世界同胞と相親しむ気持になつて、この際我々の移民というものは、世界の人と互に愛し合い、そして世界文化発展に平和的に協力するという意味におきましては、これは却つて銃劍で囲んでいないが故に、一年に三十万、四十万出し得るチヤンスがある。そういう可能性が一層増大しておる。そう私は見るものでありますので、連合国気持を刺戟しない範囲において、どこまでも我が国政策としては、海外日本人を移さしめる、平和的に発展せしめるということをどうしても強く推進して行かなければならないと信ずるものであります。こういうことに関しまして、現在の外務当局においては、大体どういうような見解を持つておられますか、この機会に御開陳を願えれば、国民にも亦何らかの参考になることと思うのであります。政府当局の御政見をお伺いいたします。
  37. 川村松助

    政府委員川村松助君) 只今移民問題に関する御関心につきましては、私共も全然同感でございます。ただ御承知の通り、現在渡航を許されておりまする範囲は非常に狹いのでありまして、国際会議にオブザーバーのような形で出ている場合と、或いは教育文化関係渡航を許されている人達、その他経済関係、特にこれは優先的に外貨を持つている者というような制限を受けておりまして、永住目的のためというようなものは、先方家族か縁者がありまして、先方の国の方で承認を與えた範囲しか、これも許されておらんような状態であります。ただ我が国人口問題に対しましては、外国人々のうちでも、人口問題その他について研究をしている人々は、いろいろ意見を発表し、或いは研究してくれているのでありまするが最も大きな難点といたしましては、長い間の海外に與えました日本人の心証が必ずしもよくはありませんので、我が国移民問題に対しまする同情がこちらの方で希望しているような程度まで進んでおらないのであります。そういう意味におきましても、先ず移民問題を解決するには国内の日本人のあり方、日常生活、或いは人口問題に対する対策、処置というものは相当真劍味が具体的に現れまして、海外からの同情が相当高度にならなければ、この尨大人口処理ということはなかなか困難でないかと考えているのでありまするが、併し政府といたしましては、でき得る限り海外の了解を得まして、一日も早く大量の移民が喜んで迎えられるように、又国民も務めて海外に出まして働く技能、技術を持つひとが多くなりまして、そうして喜んで招聘されるように指導するというようなことと相俟ちまして、解決の線に沿いたいと考えているような次第であります。
  38. 團伊能

    團伊能君 只今政務次官の御説明で非常によく分りましたが、最近新聞紙上に散見いたしますところによりますと、すでに海外から移民を許可する、或いは要請するというような記事がでておりますが、我々その真偽甚だ不明でございます上に、すでにそういう新聞記事を通じまして、海外に移住するということに希望を持つている一部の日本人もあるように思いますが、現在においてこういう提案が果してございますかどうか、又ございまして一部その実行に移されておりますかどうか、その辺の御説明を願いたい。
  39. 川村松助

    政府委員川村松助君) 新聞アルゼンチンのことが出ておりましたが、日本移民を迎えますることがアルゼンチン中央政府の声じやありませので、アルゼンチンの中の一州にそうしたことが取上げられたという程度になつております。
  40. 倭島英二

    政府委員(倭島英二君) 今の御質問に対しまして、少し他の点を補足して御説明申上げますと、最近のいろいろな報道がございますが、現在許されて外に渡航するのを許されておる点は、先程政務次官から御説明されました通りでございますが、その関係新聞ではいろいろの報道の仕方になつております。例えば、先程の永住目的を以て行くことも或る範囲において許されております。で、これは主として海外から呼び寄せの場合でありますが、併しながらこれも例えば北米、主としてアメリカでございますが、すでに約八百人近く向うへいわゆる花嫁さんという恰好で行つておりますし、南米もブラジルアルゼンチン、メキシコ、コロンビヤという方面に相当行つております。例えば新聞でこの前三十二、三名でございましたか行つた。或いは花嫁の問題が出ているといつたようなことは大体呼び寄せの関係でございますが、その呼び寄せの関係が出ますのと、それから今政務次官から御説明されたその点の、最近のアルゼンチン関係は、これも現地の方から……コリエンテスという州でございますが、米を作るために日本人を呼びたいという希望があります。これも大体呼び寄せという恰好でないと、現在の建前では具現しにくいのじやないかと思います。尚技術者の、今後の移民の出て行く、移民と申しますか、同胞海外に発展の現在許されておる型といたしましては、技術者の渡航ということでございますが、その関係もこれは世界各国からぼつぼつ注文が来ておりまして、現在懸案中のものが九十名くらいでございます。特に印度、パキスタン等では中小家内工業等に亘つて、随分多量の人が欲しいということで、先ずそのどういう人が行つたらいいかということの下調べに、間もなくその第一陣が向うに行けるようになるのではないか。今後の移民移民ということは甚だ言葉は大きいのでありますけれども、いわゆるこうゆうような関係で、相当同胞海外に発展できるようになるのではないかと、こう考えております。
  41. 伊東隆治

    伊東隆治君 私の先程の質問に対しまして、政務次官並びに管理局長の答弁、大体そういう程度にしか政府は言えないと思うのでありますが、何としましても、我がこの三千万余に上る過剰人口を、世界の文運の発展のために一つ協力せしめるためには、今までのような観念の移民に非ずして、やはりこの優秀、優秀という言葉は語弊がありますが、勤勉なる日本人一つそういう方面に参與せしめる。これは私、公平に世界国際正義からみて、私は必要なことだと信ずるものであります。今までの移民は棄民というくらいに、ここに何万かの人を或る地域に持つてつて、そして棄てるがごとくにそこに置いて、そこの土地を耕さして、生命を漸く保たしめるような生活をせしめて、これで人口問題の一部を解決したというような一人よがりの、実に姑息な手段でありましたが、今後の、一つ我が国民の海外への移植はそういうことであつてはならんことは、過去の過ちによつて、我々ははつきりとこれを認識しなければならん。その当時から言われておつたことは、先程管理局長さんも言われた通りに、この技術、当時技術移民という言葉もあつたくらいに技術者を先ず出す。優秀なる人を海外に入れて、その周辺に、それらの関係者、関係業務を持つた者が段々出て行くという、そういうことで、根拠ある海外発展、例えば、南米のドイツ国民の発展とか、またそれに次いで出ているイタリー国民の発展、海外移住というような例をよく見ましても、あの過去の移民方法はとにかく惡かつた。それは移民に対する先進国のやはり例も参考して、今我が国は、特に外務当局におきましては、最も重要なるところのこの問題について、例えば地域的に、その土地の習慣と我が国の習慣とを大いに比較研究して、大体のもくろみを付ける。例えば技術移民というならば、技術者方面との連絡も積極的に取つて講和條約ができまして、我々が必ずや講和條約において人種の平等、或いは我々の海外への各地との交通自由、そういうものは完全に許されるということを我々は確信するものでありますからして、外務省は一つそういうことに遅れずして、特に最も重要な海外への日本人の移植の問題、これを一つ科学的に、そうして又非常な力を入れられて研究して頂きたい。又今後ともこの問題につきましては、私たびたび質問もいたし、又国論も漸次これに向けて、真面目に一つ海外に我々が段々行けるようになければならんと思うのであります。今回は大体こういう雑駁なる程度質問にいたして置きたいのでありますが、政府当局におきましても、この点に一層留意せられて、緊急いよいよの時が来た場合に、手遅れにならんように準備して頂きたいという希望も加えて申上げたいのであります。この点に関して倭島局長、何かさつきの問題についてお答えすることがありましたらお願いしたいと思います。
  42. 川村松助

    政府委員川村松助君) これは速記に書く必要のないものでありますけれども、非常に御熱心に御鞭撻頂きますので、一言申上げて置きたいと思います。  私共全く御趣旨には同感でありまして、先般も或る所に青少年の関係の会合がありましところで、現在の日本の実情、特に海外に雄飛するために、向うに行つて喜ばれるような、歓迎されるような組織を持つていなければ、技術を持つていなければ、知識を持つていなければいけないということから、是非現在の若い人達が、将来はもう海外へ出て、世界のいわゆる文化に貢献するというような、高遠なる理想で勉強して貰いたいということを強く要望しておるような事実もあります。尚今後は一層只今の御趣旨に副うように努力いたしたいと考えております。
  43. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 他に御質問ございませんか。——では別に御質問もなければ討 論に入りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 野田俊作

    委員長野田俊作君) では討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  45. 團伊能

    團伊能君 私はこの問題の海外移住組合法廃止に関する法律につきまして贊成をいたす次第であります。  実は将来における新しい日本のあり方といたしまして、移民問題は極めて重要な問題ではございましようが、従来この法律に現れております通り、従来からございました海外移住組合法自身は、すでにこの新らしきあり方におきまして用をなさないばかりでなく、相当形におきまして余り好ましからざるものであり、これを廃止いたしますことは、誠に時宜に適した趣旨と考えまして、又只今説明を承りまして、これを廃止することによつて現在何らの支障を来たさない点もございまして、これに贊成いたします。
  46. 伊東隆治

    伊東隆治君 私もこの法律案に贊成いたします。これがさつき申しましたように、古い形の移民をこの際清算して、新しい発展性のある、又国際協調性の十分ある海外移住日本国民に許される日に、一つ新しい状態に合うような立派な組織ができること希望いたしまして、この古い形の組合法廃止には贊成するものであります。
  47. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 他に御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて採決に入りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 野田俊作

    委員長野田俊作君) それではこれから採決に入ります。  海外移住組合法廃止に関する法律案議題といたします。原案通り可決することに贊成の方は挙手を願います。    〔総員挙手
  49. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 全会一致と認めます。よつて本案は可決と決定いたしました。尚以上の両法律案につきまして、例によりまして多数意見者の署名をお願いいたしますと同時に、本会議委員長の報告は委員長にお委せを頂きたいと存じます。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 野田俊作

    委員長野田俊作君) お署名をお願いいたします。   多数意見者署名      伊東 隆治  團  伊能      淺井 一郎  伊達源一郎
  51. 野田俊作

    委員長野田俊作君) 御署名漏れはございませんか。御署名漏れないと認めます。  それから東大教授横田喜三郎氏を証人としてお呼びすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  52. 野田俊作

    委員長野田俊作君) それでは本日はこれで散会いたします。    午後零時五分散会  出席者は左の通り。    委員長     野田 俊作君    理事            伊東 隆治君    委員            團  伊能君            淺井 一郎君            伊達源一郎君   国務大臣   国 務 大 臣 山口喜久一郎君   政府委員    賠償庁政務次官 橘  直治君    賠償庁次長   石黒 四郎君    総理府事務官    (賠償庁賠償部    長)      勝野 康助君    外務政務次官  川村 松助君    外務事務官    (外務省管理局    長)      倭島 英二