運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1950-04-27 第7回国会 参議院 運輸・労働連合委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年四月二十七日(木曜日)    午後二時二十一分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体労働関係法第十六條第二  項の規定に基き、国会議決を求め  るの件(内閣送付)   —————————————
  2. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) それでは只今から運輸労働連合委員会を開会いたします。  本日、運輸委員長はよんどころない用がありまして出席をいたしませんので、前例によりまして私が連合委員会委員長の職を務めさせた頂きたいと思いますが、甚だ代用品でその点は了め承知を願つておきまして御了承を得たいと考えます。
  3. 内村清次

    内村清次君 この際運輸大臣提案理由に入ります前に実はお伺いして、これはまあ委員長に実はお伺いしたいのでありますが、今日は委員長が見えておられませんが、代表の方を通じましてお伺いしたいのですが、今回の国鉄公社及び国鉄労働組合紛争に対する仲裁委員会裁定は、三月の十五日に裁定が出されておるようでありまするが、そういたしまして政府の方は、これは後で説明があると思いますが、この点は抜きますが、とに角公労法の十六條によりまして本国会に対しましては、十日以内に承認を求めるというような手続きをされたことと聞いております。ところが衆議院におきましては、これは衆議院先議の形で政府の方で提出しておられるようで、この案そのもの予備審査の形になつておるようでありまするが、まあそういうような予備審査の形において、今日まで長くこの委員会付託がされなかつたのであるかどうか。或いは又この議院運営委員会におきまして、当委員会付託さるるにつきまして何か條件が、どういういきさつでこの委員会に御付託になつたのかどうか。この点を委員長の方ではこれを十分確めておられるのか。これが今後のこの案を審議いたしまする上について、相当重い感覚をもつておるわけです。この点先ず一つ委員長の方にどういういきさつがあつてのかその点を経緯をお伺いして置きたい。
  4. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 今私申上げたのは実は今日は私もよんどころない用事があつたのですが、急に電話で呼出されてここへ来て委員長仕事を取扱うということになつたので、その間の経緯ということについて少し私存じておりませんが、ただ内村君の御質問要点は今日まで何でかけなかつたかということと、又今日まで法案としてかける経緯についての御質問らしいですから多少私といたしましても、この法案をかけるということについては多少の疑義は持つておりますが、委員長として今日までこれをどうしてかけなかつたかということにつきましては、ちよつと御説明が出来かねるのですが、いずれ又委員長に聞きまして、そのことは爾後に申上げたらどうかとかように考えますが。
  5. 内村清次

    内村清次君 今丹羽理事のいうことは御本人といたしましては御尤もであると思います。そうしてここに議運委員をしておられる方もおられるようですが、とにかくこの結論が本委員会付託されたという、即ち議運に何か決定事項があるかどうか、この点が私達は聞きたい。そうでないとどうも私は委員会付託された事体というものが明確でないのと、それからあとで政府で何故国会に提出されたのであるかという点につきまして、どうも私は疑義を持つておるのですが、そういう観点からここに中村君もおられるようであります。中村君から大体議運状態を発言して頂きたと思います。
  6. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 中村君。今内村君のお話議運において本法案経緯ということについての御質問があつたのですが、今貴方にそのことを一応議運経緯状態を聞かして呉れということでありますが、一応お分りの点はここで説明して頂きたいと思います。
  7. 中村正雄

    中村正雄君 この点につきましては、私は運営委員長から運輸委員長付託するにつきましてのことは、お伝えがあつたと思いますわけなのでありますが、恐らくこれには委員長がお見えにならないので、代り理事の方では詳細に伝えていなかつたのではないかと思うのですが、簡單に申しますと、御承知のようにこの案件は十六條の二項によりまして、裁定が示されましてから十日以内に国会に出されておつたわけでありますが、御承知のように第一次の裁定に対しまして衆議院参議院議決が異る。支もその異つた議決の取扱い方につきましては、各方面に異る意見がありまして、そういう関係から参議院におきましては、仲裁委員会裁定の扱いをどうするかということは、一応議院運営委員会の問題といたしまして、過去二ケ月に亘つていろいろ議論したわけなんです。そうして先般の議院運輸委員会で、一応の結論を出しましてこの運輸委員会に一応付託した、こういうわけであります。そのときの結論だけ申上げますと、案件の取扱い方につきまして、形式的には議決を求める件が正しいか、十六條の二項そのもの解釈承認を求めるというのが正しいか、それは予算書をつけるべきであるか、又は予備審査、本審査という区別をせずに両院同時の提出が妥当ではないか、いろいろな案件の取扱い方につきましての議論があつたわけでありますけれども、これは現在の憲法建前並びに公労法の十七條、三十五條、十六條、これが一貫しておらないために、いろいろの解釈がとられるという関係で、議院運営委員会では全会派一致いたしまして、次のような結論を下したわけであります。と申しますのは、第一に公労法を改正しなくてはいけない。従つて公労法の改正を所管常任委員会である労働委員会に、運営委員会付託いたしまして、調査立案準備をさせる。そのときの態度といたしましては、度々議院運営委員会大臣も呼び、又関係の人も呼びまして議論されました点で明らかにされましたように、公労法規定というものは憲法で認められておりまするところの労働者基本的人権である争議権というものを公労法の十七條で奪つておる。併しこの十七條で奪つておる代りに、三十五條で以ちまして仲裁委員会裁定というものを認めておつて従つてこの仲裁委員会裁定自体効力というものは、憲法上の基本的人権と同じような効力があるものである。この基本的立場に立つた一貫性のあるところの公労法を改正すべきであるということを全会一致決定いたしまして、労働委員会立法準備付託したわけであります。それと同時にこの案件につきましては、いろいろの取扱い方の解釈はありましようけれども、会期が迫つておる関係で一応運輸委員会付託して、そうして労働委員会との合同審査をやろうということに決定なつたわけであります。今申上げました点は、そのときの速記録にもはつきり載つておりますし、恐らく運営委員長から運輸委員長にその旨は伝言になつたものだと考えております。大体要点だけ申上げますと以上の通りです。
  8. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) それでは公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件を議題といたします。  先ず政府より提案説明をお願いいたします。
  9. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 只今から昭和二十五年三月十五日、公共企業体仲裁委員会が、日本国有鉄道国鉄労働組合との間の「昭和二十五年四月以降の賃金ベース改訂に関する紛争」について下しました裁定を、国会に上程いたし御審議を願う次第につきまして、御説明申上げます。  国有鉄道国鉄労働組合との間の「賃金ベース改訂に関する紛争」については、御承知通り、先きに昭和二十四年十二月二日に第一回の裁定が下されたのでありますが、その後本年一月五日に、国鉄労働組合日本国有鉄道に対して、本年四月以降の賃金ベースについて「本年四月一日より平均九、七〇〇円。二級一号を四、七五〇円とすること」の要求を提起したのであります。国鉄当局は、前回の場合と同様に、財政上の見通し、その他諸般の状勢上組合要求を全面的に容れることはできないとして、これを拒否いたしましたので、組合では国鉄中央調停委員会に対し調停申請をいたしたのであります。  同委員会では、先に前回紛争に関し、同委員会が示した調停案は本年四月以降をも含めた賃金ベースについて定めたものであり、且つその後の諸般條件にも重大な変化はないので、その意見を変えるべき事由はなく、従つて、同委員会調停によつてこの紛争を円満に解決することは殆んど不可能であると認めて、調停案を提示することなく、同委員会より仲裁の請求を行つたのであります。よつて仲裁委員会は審理の結果去る三月十五日に、只今お手許にありますような仲裁裁定第三号を下した次第であります。  そこで政府におきまして本裁定を検討いたしましたところ、その第一項及び第二項共に新なる予算措置を必要とするものと認められましたので、公共企業体労働関係法第十六條所定の手続を以ちまして、裁定国会に上程いたし、国会の御審議を願う次第であります。  何卒愼重御審議の上、国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第であります。
  10. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 本日は右の件に関しまして証人といたしまして、国鉄労働組合書記長星加要君、日本国有鉄道総裁加賀山之雄君、及び公共企業体仲裁委員会井一雄君をお喚びしてあります。その経過につきまして順次御説明を願うことに御異議はありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) それでは御異議はないものと認めます。  では証人の方は順次に宣誓をお願いいたしたいと思います。では御起立をお願いします。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕     宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 加賀山之雄     宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 今井 一男     宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 星加  要
  12. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 今証人においでになつたお方に対して、何か御質問があつたらお尋ね願いたいと思いますが、先ず今井君からこのお話説明をして頂きたいと思います。かように考えておりますが……
  13. 今井一男

    証人今井一男君) 順序から申しますと、或いは私一番最初に申上げるのは工合が惡いかも知れませんが、裁定書に掲げました要点につきまして、極く簡單に御説明申上げます。  第一回裁定、即ち前回裁定当りましては、御承知通り給與ベース改訂しない。併し従来実質的な待遇引下げを受けた面を是正するといつた線に副いまして、本年三月までの給與につきまして裁定を行いました。その際理由書の中に詳細委員会見解は述べられてあるのでありますが、今回問題になりました本年度給與ベースの点につきまして、仲裁委員会といたしまして、今まで採つておりました基本的な考え方と別に変つておるところはないのであります。前回基礎に置きましたいろいろの資料を再検討いたしました結果、今後の経済の傾向につきましていろいろの見通しはございますが、その点の見通しは暫く措くといたしましても、前回我々が断定いたしました凡そ八千五百円程度という結論につきましては、変更すべきものを認めない。即ち民間給與との開きというものが縮まつて行く。国鉄の現在の給與が低きに失するといつた点につきまして、見解を変えるという結論には到達しなかつたのであります。ただ問題は、これをベース改訂の形で行うかいなかという点はございますが、あらゆる職員に共通に支給されますところの基本給というものが、給與中心をなすものであることは理論上からも申上げるまでもございませんし、又職員生活安定という点から申しましても同様でございますし、又年度改訂という機会は最もそれに適応しておる機会であると認めまして、私共本来ならば前回裁定に掲げましたような八千五百円程度基本給というものを示唆すべきであつたのでありますが、裁定書にございますように、本年度経理状況が著しく改善されたにいたしましても、尚且つ年度始まつたばかりでもございますので、これを或る程度引き下げる、低いところに置くことが、諸般情勢から適当と考える、ただ如何に引き下げましても、一応前回六千三百円ベースのときにとられました実質賃金の線だけを確保するといつた立場から、八千二百円という数字を出したのでございます。問題は、前回裁定両院におきましての取り扱いぶりを見ましても、すべて中心経理状況にあるやに考えるのでありますが、本年度国鉄経理は、御承知通り従来に比べまして著しく改善を見る予定であります。今まで赤字に苦しんでおりました経理が約二百億という、いわば利益に相当するものを生み出しまして、これを建設に充てるといつた段階に相成つたのであります。従来国鉄が平時の経理の時代におきましても、建設資金というものは相当の部分外部の資本によつて賄われて参りました。又人件費物件費関係から申しましても、又労働生産性向上から申しましても、又一般民間企業経理建前と比較いたしましても、一切の余裕は、挙げて建設に充当する、併し給與面には、如何に経理上の余裕が生じても、一文も與えないという立場は、我々といたしましてとり得ないと考えたのであります。少しく数字を申上げますと、例えば労働生産性の面におきましては、国鉄を計算いたします場合に一番よく使われまする百万十トンキロ当りを見ましても、二十三年の五人八分が、本年度には五人一分、一方列車キロ当りの人員も二十七・三が十八・七、相当の生産性向上、いわば一面から申すと、労働の強化ということが現われておるのであります。又最近の新聞紙に見られました安本の推定によりますると、昨年度民間の法人が、一切こめまして、自己資金内部保留で、固定設備に向けましたものは四百十億とかいう話であります。それと比べましても、今年得られました国鉄の二百億というものが、全額が建設に充てられるということは、相当問題かと考えるのであります。而もその中には、專門家の意見を徴しますると、従来余り必要性がなくてのびのびになつておつた点までも本年度着手されるという向きもございます。こういつた、あらゆる状況変化がありましても、生産性向上がありましても、收益改善がありましても、一切給與はそのままといつたような考え方で、果して国鉄再建運営というものが好都合に行くものであろうかどうであろうかということは我々委員会におきましても最も議論した点であります。その結果この程度ベース引き上げをいたしましても、国鉄の経営には別に支障がないといつたことを確認いたしまして、こういつた裁定の第一項を下した次第であります。若し民間でありますならば、戰災の復興等は原則といたしまして増資なり、或いは社債なり、或いは借入金なりによつて賄われるものでありますが、国鉄に限りましては従来そういつたことが、制度関係もありまして、全然行われて参りませんでした。それにも拘わらず、即ち自己資金によりますところの、これを一面から申せば低賃金によりますところの捻出による戰災復興によりまして、今やその復興振りも他の産業に対して決して劣つておらない。少くとも国鉄回復の遅いために、日本産業復興を妨げられておるという面は、これは殆んどないと申しましてもよろしいかと思うのであります。而もこういつた経理状況改善、更に生産性の点、その他を勘案した点を御了承願いたいと考える。  第二項につきましては、第一項の八千二百円は最少限度でもございますし、又二十三年七月のマ書簡の精神から申しまして、政令二百一号の冒頭に掲げられておる文句からいたしましても、従来組合員労働協約等によつて得られておつたところのいろいろの利益労働條件等はこれを確係するという建前が、二十四年の予算の非常に苦しい関係から切下げられた点につきましては、前回裁定で詳しく申上げて置いたところと存じますが、この点が昨年の十二月一部昇給のありました以外に殆んで改善を見てはおりません。その点からいたしまして、この分は大部分がいわゆる現物給與福利施設の類に関するものでございまするが、従来の六四三百円ベースというものが、現金給與の方で六千三百円、外の現物等によりまして幾ら幾らとありました。主といたしましてその現物の面が切下げられました分、まあ現物以外に普通の観念では給與とは言い難いものも入つておりますが、そういつたものの不利益はやはり速かに改善する必要は少しも変つておりませんので、これを第二項に加えたのでありますが、ただ従来Aという形で貰つてつたものが、今回二十四年度中に削られまして、これを回復いたします場合には、これをBという形で取上げましても十分不利益解消の結果を得られます。その意味におきまして、ものによりましては前の形で現状回復することが適当でないものもございますので、我々といたしまして、この点は主といたしまして両者間の話合い等によつて現状回復が実質的な現状回復となることを期待したものであります。この関係から、これは金額といたしまして直ちに今何十何億円ということをはじくことがむずかしいと認めたものであります。特に例えば昨年末に行われましたところの昇給等につきましても、その昇給の結果等は、我々裁定に対しましても未だに具体的な数字を掴み得なかつた状態等からも、ここで金額というものを確定することは不可能であると、かように認めた次第であります。ただここで一言申し添えて置きたいことは、一般によく言われております昨年あたりから物価が非常に安定したのにも拘わらず、なぜ労働者生活が苦しいということ、殊に国鉄職員生活が苦しいというようなことを申すのかといつたような点につきまして、外部から御覽になりますというと誠に御尤もかとも思うのでありますが、この一番大きな原因は、やはり超過勤務手当というものが、非常に現実に貰うものが減つたせいであります。数字で申上げますと、二十四年の一月から三月、即ち二十三年度の下三ケ月分、すでにベースは六千三百円になつてつたのでありますが、その三ケ月間の平均給與、要するに職員の貰いました一人当りのありとあらゆる現金給與は八千四百三十六円に相成ります。ところが二十四年になりまして一月から十二月まで、確か二十月末の特別手当は入つておりませんが、いわゆるレギュラー・ペーで申しますというと、これが総給與で七千百四十六円と、千二百円以上、とに角前よりも実質的に收入が減つておるのであります。その減りました一番大きな原因は、超過勤務手当が、これが二十三年度中でありますが、二十三年度一ぱいで千二百三十三円、それが二十四年に入りましては四月、十二月の九ケ月間の平均が二百三十三円、丁度そこに千円という開きが出ておるのであります。従いましてベース基本給だけの上から見ますというと、六千三百円になりましてから別に昇給が遅れた等のことはございましても、実質的に下つておるわけではございませんが、職員全体の收入は明らかに著しく減らされておる。多少の物価関係が仮に好影響を及ぼしたといたしましても、到底こういつた点まではカバーする程のことはないことは、これは十分御了解頂けるのじやなかろうかと考えるところであります。以上甚だ要を得ておりませんが一応の御説明といたしまして、後は御質問に応じましてお答え申上げます。
  14. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 先に証人の陳述を得たいと思つておりますから次に星加君にお願いします。
  15. 星加要

    証人星加要君) 私が国鉄労働組合書記長星加でございます。私の方の昨年の九月に生活の実態、或いは民間給與、若しくは物価情勢、これはCPS等を参考といたしまして、現在国鉄職員が是非とも確保しなければならない給與はどれだけであろうかというところを検討いたし、且つは国際情勢、若しくは占領下にありますために、GHQの要情等をも勘案いたしまして、九千七百円ベース決定いたしたのであります。この九千七百円ベースに対する信念は今日と雖も変つておりません。けれども、これが調停並びに仲裁という制度をくぐりました場合において、我々はやはりこれを尊重したいということであります。それで一応調停委員会において基準内賃金といたしまして、八千五十円というものが第一次裁定の場合出されておりますが、これに対しましても私共は調停委員会の上に仲裁委員会があるということを知つておる。けれどもこれは非常に不満な金額ではあるけれども、やはり調停委員会というものが、公共企業体労働関係法によつて定められて、これが最初に下した調停であるとすればこれを尊重したい。従つてこれを尊重する建前から現実といたしましてはその調停案を受諾したのであります。けれども運輸当局側は、これでは受諾することができなかつたので、ということはやはりベース改訂、或いは賃金値上げということができないという、ただそれだけの理由で、これはもう政府からそういう方針を授けられておるのであろうと思うが、それに対して自分の理想を堂々として断行をする勇気に欠けておるし、又官僚である以上いたし方もなかつたのであろうかとも思うけれども、要するにこれを受諾することがなかつたのであります。従つて我我といたしましては、仲裁委員会にこれを持ち込まざるを得ない。それで仲裁委員会にこの問題を提起いたしましたところ、一応ベース改訂ということは四月以降のこととして見送り、政府の施策がどのように現れるか、そのときまでまあ待つてみよう。そうして賃金が実際に低下しておつた面を、仲裁委員会としては千円と見積りまして、この低下した面の総額を四十五億と算定いたしたのであります。そうして三十億を十二月に支拂え、後は毎月五億づつといたしまして、月千円づつの回復をしてやろう。この金額ベースを上廻らすものではないけれども、とに角今まで低下しておつたものに対する保障として出そうということであります。これに対しましても、勿論その文句の言える筋ではありませんので、これを尊重し、且つこれに従うことにいたしましたが、この問題の実現が甚だ困難であつたので、今日裁判問題となつておりますところは、その際にどれだけの金額支拂われるか。年末に三十億支拂えと言われたものに対して、ここへ来られております加賀山総裁は、やはり概算十八億円は可能であるということでありました。けれども政府は公務員との関係も考慮いたしまして、そうして十五億円というふうに決定をされたのであります。それで我々はここに十五億円という支拂いを受けまして、後の金額残つてしまつたのであります。ところがそのままの状態でこの四月を迎えることになりました。四月以後の賃金をどうして呉れるかということについては、経済情勢その他を勘案いたしておりましたけれども、それらはやはり何ら変化がありませんので、我々といたしましては九千七百円ベースを、尚これを実現せしむべく新しい問題として提起をいたしました。この際調停委員会運輸大臣説明いたしましたように、やはりこの前に調停をしたときと情勢も変らないから同じ考えである、且つ調停委員会がここでやりましても、すぐに又仲裁へ持込まねば仕方がないような結果になつて来るであろうということで、調停委員会というものは自分がなぶられるのが馬鹿々々しいから、仲裁委員会にすぐに持ち込んでしまつた従つてここに調停委員会に尊重するという態度を若し欠き、国有鉄道に対して信念をやはり貫かせるということなく、これを操り人形のようにしておつたのでは、むしろ調停委員会を早く止めさせたほうが人件費の節約になるということであります。調停委員会はあるけれども、自分仕事をしない。すぐに仲裁委員会のところへ持つてつて呉れ。それで仲裁委員会に問題が移りまして、仲裁委員会裁定をされたのが八千二百円ベースということであります。  本国会において只今問題になつておりますのは、八千二百円ベースをどうするか、並びにそれの第二項に附加えられておりますところの実質賃金低下の面を復旧せしめよという裁定を、どのように実現するかということであります。従いまして私共としましてはこれを実現して貰わねばならない。実現して貰わねばならないけれども、この問題がやはり国会においても第二義的に取扱われまして、国会が今や数日を出ずして終ろうとしておる今日ようやくここに提案をされ、この際これがたとえ可決になりましたとしても、二十五年度予算案がすでに通過しておる今日において、果して鉄道職員給與をかくしなければならないと決定があつても、近くすぐにこの決定従つて、又予算案まで変更されるということの困難な事態を招いておるのであります。従いまして事情が実際問題としてかくのごとく推移いたしました以上、これを元に帰してどうこうというわけには参りませんから、本国会において速かにその結論を出されて、そうして予算案が修正されまして、これが一日も早く国鉄従業員の給料として実現するように御協力を願いたい。そのときは前に遡つて支拂うというようなことをも、こちらのほうでは楽しみにして待ちたいと思う次第であります。従つてこれが期日その他の関係で尚遅れるというようなことがあつても、愼重審議をする建前上やむを得ないかと思います。この点は非常に重要ですが、実は無理を強いるということはできません。前の第一次裁定のときに衆議院の決議と参議院の決議が異なりまして、参議院としてはよくその事情を明察されまして、我々に有利に決定をして頂いたけれども、衆議院のほうではそうでない決定をしておる。ここで国会としての議決の成立というところから見た場合に、両院が違つたものを議決した、そうして会期が済んだというので、その問題はそのまま立消えになつてしまつて、それで国会で再び結論を出すかというと、本国会においてはそれをやはり採上げなかつたということであります。従つてこの給與問題がこれが国会の都合によつて立消えになるというようなことがあつては、これは我々にとりまして絶体絶命の問題であつて、そういう取扱をされては困る。愼重に御審議を願うことにして、若しこの国会で山掛頭独ないというような場合は、次の来るべき臨時国会においても継続してこれを審議されるような方途を講ぜられて、そうして必ずこれの実現を図つて頂かねばならんということであります。  次に一言附加えさして置いて頂きたいことは、労働組合運動の性質及び裁定というものとの関連であります。これは我々が三億円の問題につきまして裁規定がら離れまして、裁判所、東京地裁へ強制執行の訴えを起した判決がほぼはつきりと、法律的な明記をもつて説明しておるように考えますが、私共の考えは、実は公共企業体労働関係法というものは、労働組合を認めた主なる趣旨、すなわち対等の立場に立つて団体交渉を行わすという趣旨を壞しておるのであります。それは公共企業体労働関係法の十七條におきまして争議行為を禁止しておるからであります。なぜ団体交渉の趣旨を壞しておるかということは、争議権というものがない以上、話合を進めただけでは、非常に困難の中から給與を支出するというような場合においては、労働者要求というものは、貰うほうですから、出すほうに人間よりは弱い、そうしてぎりぎり一杯のところまでのやはり成果をあげることができないということであります。  今回私は昨年末から米国へ出かけまして、米国の国務省で座談会を開きました。日本における労働組合運動についてということであります。我々の運動が米国へ伝わつておりまして、まあ日本組合運動ということになると、国鉄労働組合運動が第一番であるから、一つ星加君からその模様を話して貰いたいというので、話をしたのであります。その際公共企業体労働関係法の話をしまして、実は私がハンガー・ストライキをやつたことが米国に伝わつておるのですが、米国ではこのことが理解できない、どうしてハンガー・ストライキのようなことをやらねばならないかと言う。罷業権がないからそれでこういう方法でもして反省を促すよりほかに方法がないのだということを説明しました。そうすると国務省の役人は、罷業権がなくては団体交渉にはならないではないかという反問をしてくれたわけであります。かくのごとく米国では不思議に思われておる。そこで私は答弁といたしまして、実は我我も罷業権というものはぜひ必要であると思つておるが、労働組合の実績というものがやはり罷業権の濫用に落ちたという反省も持つておる、且つは我我は敗戰国民として日本の再建を急がねばならないときに、ストライキを濫発して再建を遅らすということもできない、ここに罷業権を失つたという点については、残念ではあるけれども、やはりこれは耐え忍ぶべきところであろうかと考えておる、それについては罷業権よりは弱いけれども、罷業権を失つたところを補強するために調停並びに仲裁制度というものがあつて、多少カバーされておるのであるという説明をして、とに角向うの人間に国鉄労働組合が、罷業権を持つていないという点での了解をして貰つたのであります。  又米国での実情では、鉄道が重要な交通機関たる地位を今日と雖も失つておりません。この鉄道が如何なる法律の下に労働組合運動が規制されておるであろうかというならば、鉄道労働法という法律によつて規制されております。これは罷業権がどうであろうかと見ますと、普通の場合は罷業権は普通の組合と同じであります。けれども、罷業権が大規模において行われようとするような事態には、大統領が非常事態宣言を行います。大統領のエマージエンシーが出されますと調停委員会が開かれ、その調停委員会に要する期間は三箇月間であります。その調停案を見ましてから組合が納得するしかないか、納得しない場合は又ストライキということになるのでありますが、尚三ケ月間を経た後でなければストライキをすることができない。従つて重大なる争議となる虞れのある場合は、大統領のエマージエンシーが出まして、調停に要する期間最大三箇月、それから冷却期間三箇月、合計合せますと六箇月間になります。大統領のエマージエンシーを出したような重大事態の予想される争議ですら、六箇月間の期間を経過した場合は、やはりストライキが断行できるというふうにこの調停制度ができておるが、やはり最後に問題を解決する押しの鍵として争議権というものが認められておるわけであります。かかる観点からいたしまして、争議権というものが如何に重要であり、それがあることによつてつて米国等においては問題の解決が促進されまして、争議の件数が非常に少いわけであります。  又米国の昨年から今年にかけて行われておる大争議としては、大体一応解決を見ましたが、炭鉱労働組合の争議があります。それと自動車ではクライスラーの争議というものが、今も尚継続しておるだろうと思います。これらはすべて賃金問題を以てストライキに入つておるわけであります。それで賃金問題でこのようなストライキが勃発をするということは、調停或いは斡旋というような制度日本以上に完備しておるわけではあるけれども、そういうところでは他の條件での紛争が解決されるけれども、賃金問題である限りどうしても本質的に或る程度の満足が双方に得られない場合は、解決し得ないということを示唆しております。米国の労働組合はストライキの件数が相当多いというのが一般的な常識になつておりますが、ここでTVAを見ますと、TVAでは争議というものがありません。けれども法律でこれを禁止しておるかというと、そうではなしに、賃金問題を解決する方法を定めて、その方法を実行しておるのであります。他の労働組合は争議をしておる。如何に調停、斡旋等の手続を経ても、実際その争議というものが治まつておらない。その原因が一体どこにあるかというと、賃金問題であります。ところがTVAの方はこれは争議が今までにない。そのない原因は一体何かというと、賃金算出の方式が定められておつて、その定められた方式で賃金が実現することになつております。これはTVAが存在する地域の平均賃金、プリヴェリングウエーヂを算出しまして、それを従業員に支給する。組合側とTVAがプリヴェイングウエーヂの多寡を廻つて資料に基いて国体交渉をするからであります。かくのごとく賃金問題の解決ということが、労使の間の平和関係を維持するための第一の條件であります。それが実行されて行くところに労使の紛争というものはなくなり得るという証明に私はなるのではないかと考えております。  そこで国有鉄道に対しまして我々が強制執行を含む仮処分を東京地裁に提出をしました際も、これは法律で明らかに労働者、即ち労働組合側の債権としてこれを認められまして、これを保全するために強制執行を止むなし、その理由といたしましては、やはり民主的な労働組合運動を守らねばならないという意見であつたと私は考えております。労働組合運動が左翼化しようが、或いは合法になろうが非合法になろうが、それは組合の自由であるから、勝手にせいということを言うのが、これが政府の役人の言うことであります。こういう政府の役人が世の中におつていいかどうか、政府の役人だけでなしに、政治家もそういうのです。これはまあ大屋運輸大臣は言わんかも知れんと思うけれども、これの代理をして来た者が裁判所でそう言つておる。それで果して国会議員の皆さんは、参議院の皆さんはいいと思うであろうかどうかということ。私はまあえらそうに言うわけではありませんが、一応昨年の七月、八月、九月頃を想起して貰いたいと考える。そのときは六月一日から公共企業体労働関係法が実施をされておりまして、罷業権のないときであります。そのときに共産党が今だ主流をなしておりまして、そうして先ず第一に起つた問題は何かというと、これは列車妨害であります。その列車妨害事件が頻々として起りまして、一種の社会不安となつ情勢をあなた方は忘れておるであろうか。思い出して貰いたいと思う。その次にはどういう問題が起つておるか。今は国鉄総裁は加賀山さんですが、その前は下山さんであつた。その下山さんは一体どういうふうになられたのであるか、それをはつきりと言い切ることができますか。彼は自殺したのであるということをはつきり言うことができるか。彼の裏にはやはり誤つた労働組合運動、極左的な労働組合運動というようなものの暗い影がまつわつておるということはやはりあるであろうと思う。その次には三鷹の電車区で電車がひとりでに動き出したということ、けれどもこれがひとりでに本当に動いたか。これ又極左的労働組合輸動の影濃いものがあるのではないか。その外福島においてもある。いろいろ重大な問題を起しまして、今日に来た場合に、そういうことを忘れてはならないということ、我々が民主的な労働組合運動ということを唱えて今日国鉄労働組合の主流をなしておる、国鉄労働組合が民主的であるということの具体的な主張なり、或いはその差異というものはどこにあるかというと、合法的な労働組合運動をするのである。合法的な労働組合運動を推し進めるところに民主的な労働組合運動があるということ。その合法を軽んずるような発言をするとは一体何事かと言いたい。合法であろうが、非合法であろうがまあ好きなようにして貰いたいと言う。こういうことではこれは国を亡ぼす、何といいますか、実にこの国のうちに置いて置くべき人間ではないと思う。これは共産党以上に惡いと思う、そういう連中は。それでとにかく合法的に組合運動を進めて行こうとする場合に、我々の取るべき手段というものは、法律上許された方向を辿つて行かなければならん。そうして仲裁、その仲裁案が出て、それで問題が解決されないということでは、私といえども合法運動に限界ありと言わざるを得ないではないか。そうなつたならばこれを合法運動即ち合法を看板とするところの民主的合法組合が死んでしまうから、私は限界があるというようなことは言わない。あくまでそういうふうに誤つたものを覚めさすために、やはり行動をして行かなければならない。無理が通れば道理が引込むというけれども、我々は道理の立場に立つて引込んでおつたんでは、これは国家のためにならん。飽くまでもその道理を押してやり抜いて見せる覚悟であります。従つて合法的な立場を守るために飽くまでもその政府の陰謀なり、当局の無気力なりによつて裁判所を蹂躪し、いろいろなことをする場合には、我々としても法律を守る日本人というものを亡ぼさないために断乎たる態度を取る必要があると考えておる。で願わくはそういう無茶なことを言わんように是非ともこういうふうにしてやつて行かねばならないと決めて、そうしてやられたことはそれを少々の無理は通してもこれを実行して行つて日本の国が民主的に立つて行けるようにして貰いたいと思う。そういう労働組合が成り立つて行けるように考えて貰う必要があると思うのであります。私は特に言うて置きますが、この国会においてこの裁定が完全に実施されるように御盡力を願いたい。けれどもそれが間に合せんというならば、次の臨時国会まで待つのも止むを得ないから、これでうやむやに葬むるようなことがあつてはならんという、その点を特にお願いいたしまして、私の一応の証言といたします。
  16. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 次に加賀山君にお願いいたします。
  17. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 只今今井仲裁委員並びに星加さんから第二次裁定の出るまでの経過その他についてお話がありましたが、経過につきましては御両君の大体言われた通りでございますので省略さして頂いて、この問題に対する私共の考え方を述べさして頂きたいと思う、かように存ずるのであります。  根本的に国鉄として取つております立場といたしまして第一に申上げたいことは、労使間の問題はできるだけ自主的に解決したい、これが私共の第一の念願であり、我々の努力いたしておるところであります。労使間における紛争といたしましては、大小さまざまあるわけでございますけれども、そのうちの最も主要なるものは何と申しましても給與の問題になるわけであります。今回第二次裁定が出るまで、すでに昨年の九月から労働組合から九千七百円ベース改訂要求が出ておるのでありまして、この根本問題について解決されざることすでに日が久しいのであります。なぜこれがこんなに解決ができないか。星加君は当局が意気地がないからだと簡單に片附けてしまわれたが、確かにそういう点もあるかも知れませんが、これにはやはり根本の問題として考えて頂くことがありはしないかと私は存ずるのであります。予算の査定なり、運用なりについてのイニシアティヴがどのくらい国鉄の頼る当局が持つておるか、これは勿論これ程の大きな予算を動かすのでありまして、勝手に経理でき得るとは我々は考えておりませんが、この点についてもう少し自主性を持たない限りは、なかなかこの労使間の重要な問題を自主的に解決することはできないと私は考えておるのであります。ですから裁定の問題といたしましては、重要問題が出れば両者の折衝を待たずして調停に持ち込まれ、調停から仲裁、全く水の流れるごとく、非常に自然といえば自然かも知れませんが、そこに何ら話を進める余地がないくらに相成つておるという事実をここに申上げて置きたい、かように存ずるのであります。これは一つはいわゆる公共企業体労働関係法の不備もございましようけれども、この法律の不備を直しても、私が今申上げた点について実質的改善が加えられない限りは、問題はやはり解決いたすものではないというふうに考えておるのであります。  次に私といたしまして問題になつております給與について考えて見まするに、国有鉄道従業員の給與は昨年の六月一日から公務員から離れたのでありまして、まだ始めてから日が浅いので、公務員と関連して考えられることも止むを得ない点もあろうかと存ずるのでありますけれども、併しながらやはり仕事の質を考えた場合に、より地方鉄道従業員等の関連が考えなければならないのじやないか、或いは身分から考えて、いわゆる法律上の性質が同じでありますところの專売公社の従事員との比較権衡がより切実に取上げられても私はおかしくはないのではないかと、かように考える次第でありまして、その点から考えまして、先程から今井君、星加君からもお話がありましたが、私は現在の給與は決して十分なものではないというふうに考えております。次に、併しながら我々が如何に給與をよくしようと考えましてもこの企業体といたしましては、いわゆる收入のあるところに支出が許されるのみでありまして、收入がなければいたし方がないので、この收入を以て支出をするのだという鉄則は動かすことができないのであつて、その点で従来はとかく運賃が低く抑えられ、又給與も非常に低く抑えられて来たというのが現状であつたと思う。幸いにして貨物運賃が本年一月より国会の御審議を頂いて引上げることができ、終戰後において昭和二十五年度予算といたしましては、初めていわゆる経営費といたしましては、赤字のない時期を迎えた次第であります。経営費として赤字がないということは、更にいわゆる経常收入の中から建設改良費を二百億繰入れることができたという私は昭和二十五年度予算は、終戰後画期的なものであるということを私は申上げることができる、かように考えるのであります。一方人件費が少い、つまり賃金が低いといいながら、そういう建設改良をするのは怪しからんじやないかということでありますが、そこがいわゆる経営としての私は重要なポイントになつて参る。先程今井仲裁委員が指摘されたポインとになつて来ようと考えるのであります。各産業に迷惑をかけているという事実はないというお話でございましたが、これは私共の口からはまだまだ国有鉄道は私は経営を合理化し、更に輸送の能率を挙げて行かなければならん面が沢山あると考えております。況んやこれは新しい建設になりますともうなすべきことは盡し得ないくらい沢山あるわけであります。そこで今後の経営費を能率化し、合理化するためにはどうしても古いものを除却して、新しいものと取換えて行かなければなりませんし、又例えば線路等につきましても、タイプレートを付け、アンチクリーパーを付ける、こういうもので保守費を軽減して行くということに全力を注いで行かなければならん、いわゆるそれが工事費の勘定として二百億、これにエードファンドを加えまして二百四十億が計上されておるゆえんでありまして私共の考え方としては、御審議を頂いた予算は、国有鉄道の経営については本年度としては、是非そうあらねばならんという予算であると考えるのでありまして、ただそこに一つの私は欲目をいうならば、先程申しました二百四十億の中には、新設になつてその後経費を非常に減らし、或いは收入を増加するというような新設工事も含まれておるのであります。これらのものは最も国有鉄道が健全な姿であつた当時におきましても、自己資本においては賄なつておらなかつた、いわゆる借入資本によつて賄なつて来たものでありまして、これらのものは、更に或いは鉄道債券によりますとか、その他の方法で借入れる余地ありとすれば、私はこれを以て支弁をして、それでできた額だけはこれは経営費の方に戻して貰うことができれば、更に私は国有鉄道の経営にとつてはよくなつて、そうしてそれを私が先程から高いと思つていない、十分でないと思つておるという人件費に廻すことができれば、どんなによかろうかということを考えておる次第であります。  御参考までに申上げますが、経営上、例えば損益勘定の中からいわゆる節減をして、これで以て人件費を賄なつて行く余地はないのかというふうな考えがあろうかと思いますが、只今成立したばかりの予算、而もこれに幾箇所もの査定を受けてでき上つた予算でございますので、私はここに余剰ありとは信ぜられないのであります。信ぜられませんが、万一例えばこの昭和二十四年度年度末において三億の金が残つた残らんというお話がございましたが、そういうふうにして、例えば当てにしておつた雪が減つた、暖かかつたというようなことで、予算というものは全然もうこれで一文も残る見込みはないということも言えませんし、又確実にそういうものが出るということもできないのが私は予算であろうと思います。若し損益勘定の中に、或いは工事勘定の中にそういつた節減ができた、そういつた場合に、これを以てこの予算を如何に経理するかということ、これをいわゆる経営側に私は委せて頂けるならば、私は経営の妙味もそこに発揮でき、又従業員としても、努力の上にも努力を重ねる私は強い意思が生れることになりはしないかと考えるのでありまして、この点は今後の国有鉄道が企業体として動いて行きます場合に、私は非常に重大なポイントになろうかと考えるのであります。更に御参考までに申上げますが、国有鉄道労働組合との間においては、私は先程星加君は昨年の忌わしい事件を思い出せというお話がございましたが、私共もこれは永久に忘るることができない事態でありますが、只今の事態といたしましては、私は労働組合の行き方は実に健全であり、又合理的なものであつて、互いに信頼の度を高め合いつつあるということを私は御報告できると思うのでありますし、又従事員といたしましても昨年の人員整理以来、これ又日を逐うて私は勤労の意欲を増し、国鉄の再建に邁進しつつあるということを申上げられることを私は光栄といたすのであります。  以上簡單でございますが、御証言申上げます。
  18. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) ちよつとお諮りしますが、運輸大臣がよんどころない用事があつて三時に行かなければならんのを、三時四十分になつておるのでありますが、運輸大臣に対しての質問があれば次回の運輸委員会質問するようにしたらどうかと思いますが……
  19. 内村清次

    内村清次君 十分大臣がお急ぎのことは先程から私も分つております。問題は決して長く引き止めたいという考えは毛頭持つておりませんが、ただ漸くにいたしまして折角今日からこの合同審査会が始まつたこの機会に、一応政府提案理由の点につきまして、私は若干質問して見たい、時間は大してかからないと私は考えます。この点だけ一つ大臣に御答弁を要求いたします。
  20. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 極く簡單に願います。
  21. 内村清次

    内村清次君 先程大臣から今回の裁定につきまして提案の御説明があつたのでありまするが、提案説明の一番末尾のところにおきまして、本仲裁委員会裁定が三月の十五日にあつて政府は二十五日の日に国会に、いわゆる十六條の精神でお出しになつておるようであります。そういたしますと、これはすでに運輸委員会におきましても、前回の第一次裁定の点につきましても、この間六條の第二項の問題、この問題と連関いたしまして、第一項の問題につきましても相当これは論議があつて政府でもこの十六條の精神につきまして裁定がどうあるべきかということは知つておる筈と思うのです。それがやはり今回の提案説明を見てみますると、依然として御態度が変つておらない、その一つとして具体的に申しますると、形式的にはお出しになつたが、今日までもうすでに三月の二十五日からでございますから約一ケ月以上経つておる、その間に当時の第一次裁定のときにおきましてもなぜ予算をつけて出さないか、或いは又この裁定自体についてどういうお考えでお出しになるかという点は十分論議された。只今ここでお出しになつてみると、やはり国会で愼重審議をした上で意思を表明して頂きたい、立法の機関でありますところのこの国会に対しまして、又仲裁裁定全体の問題をここで審議せなくてはならないというような御形式を取つておられるのでありますが、この点につきましても政府のお考えを、只今説明では大体只今のが政府のお考えでしようが、併し大臣といたしましては、どうしてこういうような御態度に出られたのであるか、その点からも一つお聞きしたい。
  22. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 内村君の只今の御質問でありまするが、政府はよく御承知通り第一次裁定に際しまして、いろいろな国会におきまして論議がありましたときにすでに政府の所信は申上げて、内村君もよく御承知であると思うのですが、態度を変えておりませんで、第二次の今回の裁定当りましても、三月十五日に裁定が出まして、法定期間の十日の、三月二十五日にこれを国会に、公労法の第十六條に基きまして予算上資金上裁定の下した金額を支出することは不可能であるという趣旨に従いましてこれを国会に提出した、従つて第一次の裁定のときにも予算を付しませんでした、今回も又予算を付す必要はないという考えの下に、第一次と今回は終始一貫した趣旨の下に予算を付せず出すという方針でやつておることを御了承願います。
  23. 内村清次

    内村清次君 そういたしますとお尋ねいたしますが、この裁定につきましては、この国会議決を求められるお気持ちとしては、裁定自体はここに予算関係をつけて来ております。そうしますると、この裁定自体予算関係につきましては、政府は十六條の即ち第一項によつて公社の資金及び又は予算上において不可能なものであるという御態度で、拒否の態度で出して来られたのかどうか、そういたしますと……、先ずその点から……
  24. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 拒否だとか拒否でないとかいうことは当らないのでありまして、要するに裁定が下した第一項も二項も、二項は抽象的に御承知のようになつておりますが、これは加賀山国鉄総裁からは政府に対しまして所信が披露されておりますが、政府はこれを予算上資金上支出を不可能であるというつまり認定の下に、特に予算政府がそれに対してとやかくの予算というような数字はつけないで、これは第一次と同じであります。そうしてこれを公労法第十六條の規定によつて国会に提出し、国会の御審議を求めるという態度を取りましたので、拒否でも拒否でないとも……。要するに十六條の精神に基いて、予算上資金上これば支出不可能であるということで国会に提出したのであります。これでよくお分りだろうと思います。
  25. 内村清次

    内村清次君 どうもその点で納得が行きませんのは、政府委行政権限を以て、憲法にもありますように予算権はあなたの方で持つておられる、そして国会は立法の権限を持つておるのでありまして、勿論行政権が出した来たところの予算措置に対しましてのいろいろな観点から見ましても、十分審議はいたしますが、一体これを以て、あなたの方では予算をつけて来られないが、どういうふうに、これは正しい、正しいが併し予算自分の方ではつけんと言つては、どこから……、政府の方から予算を出す……、どういう点から出すという材料も一つもないじやないですか、それでその問題につきましては、すでに第一次の裁定のときにもあつたように、丁度あれは十二月二日と思いますが、十二日の日にお出しになつた、それから十七日、その間二回私達も質問をやるし、本会議では緊急質問をやりまして、漸く年末になつて一週間ばかりお経ちになつてから、十五億五百万円というものだけは認められますというような予算措置をして、そうしてこれで正式な、あとの残額については政府としては拒否の態度を取るというような正式な御態度の表明があつた筈です。こういう点から考えて見ますると、政府の御態度というものは、今回はそのときの態度で、すでに認められておりながら、更に今回は逆戻りして何ら予算をおつけにならないし、又これば拒否であるか、或いは御承認であるか、そういう態度に、只今大臣お話では少しも私達はその点がはつきりいたさないのでありますが、ここを明確にして頂かないと、どうも私達の今後の審議状態につきまして重大な支障があると思います。
  26. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 加賀山総裁はこの二項の金額的の意思表示としては、四十億程度支出して欲しいということを政府に申達して来ております。併し政府はこれが是非は、無論これは公労法第十六條の規定によりまして、国会の無論審議を経なければできないので、只今繰返します通り予算をつけて出すのもつけて出さないのも、法律には規定がありませんので、政府の自由であつて、要するに裁定予算上、資金上不可能であるから、これを国会審議をして下さいということを、つまり申達しておるわけなんで、これはもう第一次裁定のときにしばしば論議されて、幾ら内村委員と押問答をいたしましても、それが政府の法律に書いてないのですから、予算をつけるということは……、或いは予算をつけて出さなければ審議のしようがないじやないかというお話でありますが、これはつけるもつけんも法律の規定はどこにもないので、これは政府の自由でありますから、従いまして第一次の裁定のときに政府最初予算をつけて出さない、従いまして今回の第二次の裁定予算をつけて出さないのです。十六條の規定上一応予算上資金上不可能であるという事柄を以ちまして、これを国会に提出し、御審議を願う。こういうことなんで、第一回以来政府がしばしば表明したのでありますが、幾らこの点を御追及になりましてもこれ以上の御答弁はできないのでございます。
  27. 内村清次

    内村清次君 只今加賀山総裁からのお話も聞いておりますと、確かに公社予算に対するところの政府の権限が少し余計にある、これはまあ日本国有鉄道法の改正のときにも十分我々は意見を申したわけでありますが、その点は分りまするが、先程の大臣お話では四十五億の借入金というようなお話であるが、実際においてこの点は六十七億の、第一項即ち今回の第二次裁定の第一項のベース改正に対するところの資金として、六十七億の借入金を出しておられるというような、私はこれはあとで加賀山総裁からも答弁して頂きまするが、大臣の方では、それが数字的に間違つておられはしないか、及どういうような経緯があるのか、お伺いしたい。
  28. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 先程言葉が足りなかつたのですが、最初に第一項に履行に対してはおよそ六十七億要るという趣旨の総裁の意思表示がありました、第二項の抽象的な文句を一応金に換算すると約四十億の金が要するという意思表示がありました。
  29. 内村清次

    内村清次君 この点につきまして監督大臣といたしまして、今日まですでに一ケ月もかかつておりますが、どういう経緯を取つた御努力をなさつているか。
  30. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 十六條の規定によりまして裁定をつまり国会に移して審議をお願いした手続きを取つたことはすでに御承知通りで、而して果して第一項を履行する場合には、他の公務員の給與ベースを上げるかどうかということは、我が吉田内閣の賃金政策の基本問題に触れる点があり、且つ第二項に対しましては、いわゆる給與実質賃金の切下げという問題の抽象的に書いてある文句加賀山君が、国鉄総裁が、これを金に換算して四十億という趣旨でありまして、両方を愼重に今日まで政府としてはあれこれ検討はしておりますが、それを何も国会に意思表示する義務はないのでありまして、国会には所定の規則に従つて審議を移讓して、国会審議を待つている、こういうことだと思うのであります。
  31. 内村清次

    内村清次君 すでにベース改訂の問題は総理の施政方針でもはつきりなつておりますことから、敢て今大臣が言われなくても分つているが、併しながらただ大臣としては国有鉄道、即ち公社の経理内容から見、或いは又従事員の方々の勤労條件の点からいつても、而もまたこれは先程から言つておるように基本的人権代りといたしての裁定である。こういうような点もお考えになつて、而もいま一つは公務員の給與は考慮しなければならないことも考えなければならん、民間給與も考えなければならん、考慮という点がある。そうすると先程言つたように仲裁裁定がどういうような、基本人権を切られた、そういう力をもぎ取られたところの国鉄賃金問題であるという点をお考えになるとすれば、一応改訂というところに余り大臣としては頭を悩ましておられる、又はそこにこびりついているようですが、だからこれを八千二百円の問題が本当にこれが現実国鉄給與、企業体の経理内容からして、或いは労働の質の問題からしてどうであるかということを本当に努力されて、そうして公社の総裁が出されたところの借入金の問題について、一つも努力された形態が只今の御答弁では見えないのでありますが、この点どうお考えになりますか。
  32. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) 内村君なかなかお上手で私の考えを小口から引出そうとしておりますが、私の立場簡單に申しますと二つあります。つまり裁定が、政府が十六條の規定従つて国会にこれを御審議つており、国会が御審議するのはお勝手であるわけです。飜つて私は運輸大臣でありまして、国鉄の従業員に対しては給與はできるだけの範囲で厚くしてやりたいという念願を持つていることは人一倍間違いないことである。ところがこれは資金上、予算国鉄の財政を見て賄いきれるものならば、その範囲で成るべく厚くしてやりたいのはやまやまでありますが、而もこれは国会の御審議に與らずして、総裁だけで乃至政府だけでできる範囲のことであれば、十二分に国鉄の従業員にも裁定の線に従つてして上げたいし、従つてそれが外の公務員に均衡的の影響があるならば、外の公務員にもして上げたいという考えはやまやまであるのであります。如何せんこの裁定を実行するために予算上、資金上政府だけではできない、国鉄総裁だけでは勿論できない。できないから国会にこれをお委せいたすわけです。而して借入金の点に対して何ら政府は努力をしないと内村君は言われたが、これはやはり筋違いということで、これは国会に御審議つて予算上の措置ができなければ政府が勝手にできない。かかる故に国会に御審議をお委せ申上げた。而してこれを国会の御審議を俟つてそれに副うて政府はこれをやり得ると御了承願いたい。
  33. 内村清次

    内村清次君 今の大臣の御答弁では満足行かない。すべて国会に責任転換のような、これは私としては何回言つても、あなたがそういうお考えならばいたし方ない。併し問題は今日までこの仲裁裁定が実施せられずにおつて、そうして今国鉄の従業員の方々が、総裁自体が非常に現場の運用の監督者といたしまして悩んでおられる。実際第一次の裁定から、昨年の七月から給與問題についてはこれは渾沌といたしまして、そうして生活は困窮しておることは裁定自体にもはつきりしておる。これを今日まであなた自身がただ内閣のこの方針はこれだからというようなことで、国会でこれをして貰つたならば国会において、即ちその過程において努力をいたして行こうというような考え方は、これは成るたけ直して頂かなければならない。この問題は監督の責任を負つておられるといたしましたならば、直接この点に対しては十分なる、何と申しまするか打ち当つて頂きたい。この間私が緊急質問をしたときに、或いは又予算委員会におきましても、この問題を採上げようとしたときにもあなたはお出でにならないが、予算の前にこれを加賀山総裁の方でも是非修正を頼むということを、これは監督者のあなたに出してある筈です。そうすると私達もこれは二十五年度のあの予算の前にこれを解決しなければならない問題だということで、当の、即ち所管大臣に対しましての御努力を頻りに希望いたしておつたのであるが、国会に御出席にならなかつたという次第です。この問題は遂に御努力の足らなかつた点において今日まで延びましたことを非常に遺憾に存じておるのでございます。併しこれはどこまでも国会審議に出されます過程におきましては、やはり予算をお取りになるくらいのことは、政府は一体この問題についてこういうような努力しておるのだという具体的事実を先ず明らかにしておいて頂きたい。この点をはつきりして頂かんと、今後どこをどうやつて審議していいか。これはもう只今証人のお言葉を聽きましても聽いただけである。結局はこれを掌つておるところの政府の御態度次第でありまして、政府の御態度自体をはつきり意思を表明して、先ず審議にかからせて頂きたい。この点を大臣にもう一度御答弁を願いまして、大臣に対する質問を終ります。
  34. 大屋晋三

    ○国務大臣大屋晋三君) いずれにしましても要するに四十億、第二項の履行に欲しいというのが総裁の意嚮なのでありまするが、その四十億を出すにいたしましても、所詮これは大蔵大臣予算の款項目の流用によりましてはこれは処置ができないし、又借入金にいたすにいたしましても、これは予算的措置がなければならない。従いましてこれらの解決は挙げて国会の決議、予算の修正という措置を採らざる限り手も足も出ないというのであります。但し或いはこれから先の推移を国鉄経営上の観点から見まして、四十億欲しいと国鉄総裁が言われるうちの一部分は、或いはこの一例を上げますならば、人件のつまり減耗に対する給與の不必要というような点から余剩の金額ができるかも知れません、という程度を申上げて置きます。
  35. 内村清次

    内村清次君 次に加賀山総裁にちよつとお尋ねします。
  36. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) よろしうございますか。ちよつと運輸大臣どうしても行かなければならんので、後日に運輸大臣の方は讓つて頂きまして、証人の方から先に……
  37. 内村清次

    内村清次君 加賀山総裁にお尋ねいたしますことは、第一次裁定のときの御証言で年度末においては公社の資金内容で十八億だけは可能であるという御証言をなさつておる。    〔委員長代理丹羽五郎君退席、労働委員長原虎一君委員長席に着く〕 そういたしまして政府の方では、これは当時の状態といたしまして十五億五百万円だけは、これは出されようということで、その発言からいたしまして、衆議院の方ではそういうような十五億五百万円の残額は、これは拒否の態度である。十五億五百万円だけは年末に出さるるというような議決をいたしたのでありまするが、参議院の方では当時、即ち二十三日の、年末近い二十三日のこの委員会であつた関係もありまして、当時の議決といたしましては十五億五百万円で、あと残額については当然資金内容において可能な状態なつたときには速やかにこの裁定を実行すべきであるということをはつきり義務付けられたのでございまするが、この点にこれはまあ政府態度といたしましては、全部衆議院議決そのもの国会承認がなかつた、異つた議決のために承認がなかつたというような一方的な考え方からいたしまして、そうしてその後の問題は政府自体が取扱つておる。そこで私が聽きたいのは、総裁といたしまして、この当時労組の方で地方裁判所にその実行の手続を取つて判決が下つた。そうすると総裁自体は十八億の可能な資金があるというような御発言をここでなさつておるにも拘わらず、総裁自体が上訴をするというようなお気になられました、そこの一つ経緯を率直に説明して頂きたい。
  38. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 昨年の十二月に第一次裁定があつて、十二月二日でありましたが、そうして我々としては、いわゆる資金上、予算上可能部分を何とかして殖やさなければならん、こういうことでまあ予算を隅から隅まで検討いたしたわけであります。    〔委員長代理原虎一君退席、運輸委員会理事丹羽五郎委員長席に着く〕 これを人件費に廻すことに国鉄の経営に傷を付けることは、これはできないが、何とか経営に傷が付かないような、一つここのところで予算上不可能となれば国会へも行かなければならないのだから、我々の手でこれを動かせるところでできるだけ出したいと言つて考えたのが十八億だつたわけであります。当時はいわゆるその当時も本委員会で御説明申上げましたが、相当無理をした案であつて、修繕等も一部繰延べるという行き方をしておつた。ところがこれが政府の否定において十五億五百万円に相成つた。この範囲は予算上、資金上可能である以外は不可能であるというようにはつきりとけじめを付け、これが国会において衆議院参議院の御決議は今言われましたように、異つたところがありましたが、承認を得られなかつたわけであります。従いまして我々としては当然十五億五百万円以外は従業員の給與として支出することは不可能と相成つたのでありまして、早速この方を支出いたしますと同時に、これは我々のもともと修繕費等を繰延べるというような形を取つたものを元へ戻して、早速修繕をやらなければならん。従つてそれらの金額は実際的にももう予算上消化されてしまつている。これが十八億が十五億五百万円になつたから、三億ぐらいはそのまま取つて置くということは経理上できることでもなければ、又なすべきことでもない。従つて私共の考えは事実上もうその三億はないし、法律的義務から言つてもないというのが我我の見解つたわけです。ところがその後一月、二月と過ぎ、三月を迎えるに至りまして、除雪費等に又思わない余剰が出たことがはつきりして参つた。これはその時期が来なければ分らない性質のものである。前に十八億と十五億五百万円と言つたときの推測とは全然これは性質の違つたものであつて、出て来る原因も違つている。そこでこの問題について我々としては、これは若し認められるならば出支ができる限界になるわけである、というわけで政府でも御努力願つたわけでありますが、これも支出不可能と相成つた次第で、裁判所において争つておりますことは、飽くまでもこのいわゆる法律的の義務に属することでございまして、この義務については、私はこの義務に違反しているという考え方は絶対に持つていないのであつて、法律的には我々はこれで義務を果している。尚三億の義務を負つているという意味がないから、それで控訴もし、又その処分についても争つているということであります。
  39. 内村清次

    内村清次君 いやこの三億の問題は、すでにここで御証言なさつている事件内容からも、一応十五億五百万円でも、当時の鉄道諸修繕費の流用ということは、これはあなた自体の御権限ではできないので、政府自体の大蔵大臣もこれは認めて、そうしてこの十五億五百万円というものは支出さした。併しながら、この公労法の十六條の中にありまする政府の拘束を受けるところの資金内容になつていない。十八億までは公社の即ちこの資金内容で、政府自体が拘束を受ける資金になつておらない。そういたしますとなつておらない点は、当然三十五條の精神によつて、公社自体は責任を以つてこれには服従しなくちやならないということがあるのであります。そういう点があなたの証言によつても明らかである。明らかであるのに今回裁定がこの執行の判決があつたにも拘わらず、その三億の問題に対しましても不服であるからというようなところで、上訴されたというその論拠がどうも私達には納得いかない。而も当時この参議院は御承知のごとくあとの残額についても義務があるというように議決までしておる。参議院自体といたしまして、あなたが而も御証言なさつたその十八億の中で、これを支拂つて行くのが何故不服であるか、その御態度、それがどうしても私達は納得いかないのでありますが、ここを率直に、如何なる又これには政府の方の拘束があつたのであるか、その点を或いは総裁御独自で、勿論これは裁判所にはあなたの方の名前で控訴もやつておられるようでありますが、どういうようなお考えでやつておられるのか、その点をお聽きしたいと思います。
  40. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 重ねて申しますが、私が正しいと証言したのはそのまま予算上可能となつたということに相成らないことが一つであります。それから裁判はもともと法律上の問題であるわけでありますので、裁判に対してはやはり法律的見解を以てこれをはつきりいたすということが私は正しいことで、私情を以て処理するということは考えられないと私は考えるのであります。
  41. 内村清次

    内村清次君 そうしますと今回のことは、勿論あなたの御精神或いは当初の見解からいたしましても、今回の強制執行に対しまして、更にこの問題についての不服から控訴されたということについては、どういう点でそういう手続をとられたのか。
  42. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 国鉄の運営に支障を及ぼしては絶対にいけないという私は観念から、停止の申請をいたしたのであります。
  43. 内村清次

    内村清次君 その第一点は、支障を及してはいかないという論拠、この具体的な事実を御説明願いたい。それから第二点につきましては、先程の御証言でも言われたように、国鉄の職がに対しましては相当給與問題についても考えてやらなくてはいかない、そうして又裁定自体自分は自主的にこれは解決しなくちやいかないというような御発言もあつた。そういたしますると、これは国鉄職員はすでにあなたの最初のここの御証言によつて、あの六百五円というものはこれは当然、これだけはすでに残額として頂くものである、これだけは何とか早く取りたいという気持は、すでに現場の監督者として身にしみておられることであろうと思うのであります。そういうことを遷延すること自体が、国鉄の復興も遅らせて行くというようなお考えは十分持たれるだろう。ここで御証言なさるときには成るたけ労組の、即ち現在の民主的な行き方、建設的な行き方については非常に賞揚されておられるけれども、実質的にこの一番急迫しておる賃金問題に対しては、どうも喰い違つた御答弁又お考え方があるようでありまするが、その点と、この二点をお伺いしたいと思います。
  44. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 第一点は、労働組合としての態度は私ははつきりいたしておりませんが、如何なることをいたしまするにしろ、国鉄の財産は国民のために運用されておるのであつて、これを如何なる部分でも差押えられることは、国鉄の運営に支障があると私が判断をいたしたからいたした次第であります。第二点は、内村さんは私の感情とか希望とかいうものと、その正常な措置を行うということをごつちやにしておられるのであつて、私が先程申しましたのは、私の感情がそうである、私の気持として従事員の給與が少しでもよくしてやりたいと考えておる、又自主性がないということも、もう少し私共に自主性が欲しいということを希望として申上げたのである。然らば従業員の給與が低いと思つておるから直してやるために、極端に言えば泥棒をしてもとつて来てやつたらどうかということは考えないで、飽くまで法律上の手段、行政的な手段、これらを盡して従事員の給與をよくして行くのが私共の立場であるということを考えておる次第であります。
  45. 内村清次

    内村清次君 第一項の件につきまして、どうもあなたの法的といいますか、或いは信條と申しますか、誠に少しも私の納得行かない点がある。労働組合がどういうふうな点を強制的に執行するように考えておるかその点は知りませんが、とに角三億円の……、一人当り六百五円を、これを支給をしてさえ貰うならば問題はない。或いは今回の強制執行に対するところの中止の問題につきましても、これ自体は控訴の問題であるからして、その点は法的にあなたに質問することではないのです。併し民法の五百條の点につきましても私共は疑義がある。又ああいうような、何といいますか、とに角二時間ぐらいで即ち仲裁委が中止の指令を出すというようなことについても、法的に私たちは緊急止むを得ない、又はその執行をすることによつて、事態が非常に重大であるというような事項に該当するものであるということについても、私たちもまだ疑義がある。これは法律的にあなたに申上ぐる問題でもないのでありまするが、ただそれだけの金は当然拂う、自分の方では十分これだけは資金内容でできるといつてここで証言されて……、「良心従つて」証言された人が、二回もそれを拒否するようなことをやつて、そうして果して労働意欲というものが起きて来るかという事態、この事態をどう考えておるか。私この点が……どうしてもあなたのお気持の点につきまして納得いたしておりませんが、まあ一つそれを……。
  46. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) どう思われても、何度説明申上げてもいたし方ないのであつて、それは内村さんの見解であつて、私は私の信ずるところに従つてつているだけのことであります。
  47. 内村清次

    内村清次君 そうしますと、総裁は今回の第二次裁定につきまして、六十七條の第一項の予算を提出せられておるというが、全体的におきましてこの問題をどう処理しようとお考えになつておるか、これを一つ……ただ先程は経緯だけであつたが、現在のすなわち二十四年度からは、一旦決算期というものが来ておりますがそれくらいの剩余というものがあつて、そうしてこの剩余に対して又は二十五年度予算経理内容からも、どういうふうな点までに見込があるというお考えがあるかどうか、この点の解決の方法を一つ……
  48. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) ここでは証人としてお喚び出しをして頂いたと思つておりますので、私がここで私の意見を、こうするのだと申上げることもどうかと思うし、又申上げても余り意味がないのじやないかと思いますが、先程私が申上げたことをよく頑味頂けば、その中に私がどういうことを考えているかということがおのずからお分りになる筈じやないかと思うのであります。
  49. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) ちよつと内村委員に申上げます。今井証人が四時から何か会議があると言われておるので、今井証人に対する御質問があれば、先に今井証人に御質問を願いたいと思いますが……
  50. 内村清次

    内村清次君 ちよつとお尋ねいたしますが、先程の仲裁裁定を御審理なさいましたときの、又は御決定なさつたときの、第二項とそれから第一項との連関性と同時に、第一次裁定のときの残額の問題、この問題とは第二次の裁定とどういうふうな繋りがあるかという点につきまして一つ……
  51. 今井一男

    証人今井一男君) 第一次裁定におきまして千円という審理をいたしました。この千円という積算の根拠は、この前参議院の場合では詳しく御説明する機会がなかつたかと記憶いたしまするが、いろいろのものからでき上つております。その大部分超過勤務手当で、尤もその外に現物給與的な物及び旅費及び本来本給に加わるべきものの昇給の足らなかつたもの等が合さつておりますが、先程も触れましたように、これがそのままの形一つ一つ、十幾種類にもなるものが一つ一つそのままの形で元の通りに戻ることは、これは実際上不可能な面もあり、又不適当な面もある。併しながらこういつたマ書簡の精神に反するような実質的な待遇の切り下げをそのままにしておくことは、これは甚だ以て当を欠くという点につきましては、少しも変つておりません。公社の方でもその裁定の趣旨に従いまして、十二月の末に一部昇給を行われました。それでカバーされた面が若干ございます。その点はただ私共裁定の最中で数字的にまだ確認できる段階に至りませんでした。それが一つ、それから更に今後、先程も申しましたように、例えどAの形で切り下げたものをBの形で取戻すということが行われるでありましようし、又行われて結局組合側との話合いで満足を得られることもありましよう。そういつた場合に実際幾ら幾らの支出をしたならば、結局積り積つて、第一回の裁定の千円になるかということは、これは今直ちに計算不可能であります。その意味から我々といたしまして、これは金額を示さなかつた趣旨は飽くまで第一回の裁定の趣旨がその通り実現する。その残つておる部分、大部分つておりますが、実現するということであります。それと第一項の関係はこれは別に具体的な関係はございません。ただ第二項の金額自身は、先程も申上げました通り具体的に話を進めていきませんと、公社側の方ではこれだけの被服なら被服、靴なら靴という問題から、これで一人当り百五十円なら百五十円の一体待遇の改善穴埋めをしたと称されても、組合側の方では、いやそれは百二十円だとかなんかという問題は当然起つて来るであろうと我々は予想しておりました。従いまして、最後の段階には又仲裁委員会の方で、お口出しをいたしまして、大体この程度であれば、少くとも前回裁定の趣旨はカバーされたものと認めるというようなお口添えは、恐らくしなければならんだろう。こう考えておりました。
  52. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 他の委員諸君で、今井証人質問がありましたなら……
  53. 村上義一

    ○村上義一君 ちよつと今井さんに一、二点お伺いいたしたいのでありますが、この裁定書に、本文に二十五年四月以降の賃金ベース改訂に関する云々という、紛争について次の通り裁定するとありまして、第一項に基準賃金を八千二百円にするという裁定になつているんですが、この賃金ベースという意味と、基準賃金の意味と同じくお取扱いになつておりますのですかちよつと伺いたいと思います。それから理由書の方によりますと、C・P・Iによつて実質賃金の線だけは最少限度確保すべきであるという立場から、基準賃金は八千二百円とすることとなつたとありますが、国鉄従業員の平均基準賃金はたしか七千百二十二円だと記憶いたしておるのでありますが、これをお用いになつたのか、又これをお用いになつたとするならば、C・P・Iを、最初のスタートをお取りになつた時期はいつをお取りになつたのか、これを伺いたいと思います。
  54. 今井一男

    証人今井一男君) 賃金ベースという意味は村上さん御承知通り、いろいろと人によつて解釈が異なるものであります。ただ国鉄職員は極く最近まで国家公務員でありました関係から、国鉄組合なりが使いますところの賃金ベースという意味はこれは具体的にはつきりしております。その内容は本給、家族給、勤務地手当の三つだけでございます。従いまして我々はそれを基準賃金という言葉で現わす方がより誤解が少いであろうといつた意味合で使つただけのことでありまして、深い意味はございません。一般に俗に賃金ベースと申しますと、我々と同じような意味合に使われます場合もございますし、更に民間では地域によりましてそういう凸凹のある、生産奬励的な意味を籠めてお使いになる、或いは能率給的な意味も籠めてお使いになる場合もあるのでありますので、そこでベースという言葉を特に避けた、若干意識的に避けた、こういうことであります。それから八千二百円の点は只今の六千三百七円ベースが人事院の勧告によりましてでき上りました基準の二十三年の七月でございますが、二十三年の七月のC・P・Iと最近のC・P・Iとを比較いたしまして、その基礎になりましたその当時における基本給、基準賃金国鉄が適用を受けました二十三年十二月現在六千五百八円という数字がございます。これが只今村上委員のおつしやいました七千百いくらと申しますのは、行政整理の結果非常に若い人間が首切られまして、高給者が残つたものでありますから、その後平均賃金は上つております。その上つた数字を使いませんで、元のままの数字を使つたのであります。従いましてこれを一面組合側の立場から申せば、職員の内容構成が変つた結果による賃金の上るべき点は見落されておる。そういつたような理窟は十分立つことを認めながらこの程度に納めたのであります。  尚序ででありますから御参考のために申上げて置きますが、この点は偶然ながら私鉄総連を代表して今度中労委の委員になられました別所さんが、私鉄総連と較べまして国鉄とのベースの比較という計数を特に参考のために頂いたのでありますが、それを我々やはり一種の参考にいたしましたが、この計数を使いましても、大体この数字に落ちたことをこの機会に申し添えて置きます。
  55. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 今証人に対して何かお尋ねする点はありませんですか、他の委員の諸君は……。ないと認めます。  では甚だ本日は御多忙のところを恐れ入りました。今井証人だけお帰りを願つて、後の方は御苦労樣ですがもう少し。(笑声)他の証人に対してお尋ねをする点がありましたら御遠慮なくお尋ね願いたいと思います。
  56. 原虎一

    ○原虎一君 加賀山総裁に一つお聞きしたいのですが、前回裁定に対する裁判所の判決であります。先程内村君の質問に対して、判決については法律上服し得ないからこれを拒否しておるという御答弁であつたのですが、その法律上服し得ない論拠を御説明願いたいと思います。
  57. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) これは勿論私は法律家ではないのでありますが、つまり国有鉄道として支出し得る分は予算上可能な分で、且大蔵大臣の認証等を得た金額に限られるというわけであります。これが得られないものは何等支出することができない、のみならず国会において承認を得なかつた部分、つまり予算上、資金上不可能な部分に属するという部分に対しては、私は当然裁定自体が遡つた効力が発生しないということになつて従つて国有鉄道といたしましてその義務を負わないということに私は解釈しております。
  58. 原虎一

    ○原虎一君 そうすると国会承認を得られなかつたということが大きな理由になりますが、国会承認を得られないというその論拠はどこにありますか、伺いたい。
  59. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) これも私の判断ではありませんが、私が聽いておりますところのそれに関する判断といたしましては、両院の一致した御承認が得られなかつた従つてこれは国会としての承認を得られなかつたというふうに解釈しております。
  60. 原虎一

    ○原虎一君 只今解釈はどこからして……、総裁は総裁自身の考えでないと言われましたが、それはどこがそういう決定をなして、それがあなたを拘束したのですか、その点をお伺いいたしたい。
  61. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 私自身がそれをさように解釈しているのであつて、その解釈をした原因は誰かと言われても困るのでありますが、法律家、或いは政治家等の判断から来ておるのであります。
  62. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 証人に対して大分長い間御迷惑をかけておるので、証人への質問がなければここで証人に対する質問を打切つてお帰りを願いたいと、こう思つているのですが、他の委員諸君はどうですか。
  63. 内村清次

    内村清次君 加賀山総裁の方ですね。先程第一次裁定の裁判に対して今度は控訴していますが、その書類がこちらに提出願えますか。
  64. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 承知いたしました。
  65. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) それではその写しを労働運輸と両方に一部ずつお願いいたします。
  66. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 承知いたしました。
  67. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) それでは加賀山星加証人には、甚だ今日は御多忙のところを長い間引つ張りまして恐縮でしたが、十分よく御意見を各委員呑み込まれて非常に参考になりました。長い間どうも恐れ入りました。
  68. 加賀山之雄

    証人加賀山之雄君) 何分よろしく御審議を願います。
  69. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 両大臣が来られましたが、御質問があればこの際願います。
  70. 内村清次

    内村清次君 この裁定の問題が、今回のこうやつて運輸委員会審議することになつたのでありますが、そこで法務総裁兼大蔵大臣の殖田さんにちよつとお尋ねしたいのですが、実はこれは先程これと連関しておりまする、即ち昨年の第一次裁定の残額の件につきましての労組からの提訴、それから地方裁判所の判決というようなものにつきまして、この度労働組合の方で強制執行をやつておる、そこに政府が介入いたしました点の経緯、及び又今回の高裁の強制執行の一時中止の法的根拠、その根拠につきまして、法務総裁としての御見解を先ず承わりたい。
  71. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) つまり政府といたしましては関係が非常に深いのでこれに介入をいたしたのであります。普通の政府の機関の訴訟におきましては法務府がこれを指揮するのであります。国有鉄道の場合には法務府はこれを指揮いたしません。ただアドバイザーとして相談に乘つておりました。そこで特にこれにその点を許可する必要がありましたのと、政府関係するところが深いので、それで介入をしたわけであります。それから只今の控訴しておりますのは、政府見解はたびたび申上げました通りで一貫した見解を持つております。先般の裁判所の判決とは全く違つた見解を持つております。従つて政府見解をそのまま貫徹をしたいという考えを持つておるようなわけであります。
  72. 内村清次

    内村清次君 このの執行の中止が高裁で発せられましたその経緯が民法の五百條で、例えば有力なる証人があつて、そうしてその証人が介入して強制執行を一時停止の申請をするというような点が、五百條の主体的な精神のように見えまするが、あれが今回の執行停止の理由なつた法的根量でありましようか。
  73. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) そこのところは私もそう技術的になると分りません。分りませんが、執行停止は国有鉄道が執行停止の申請をしたのであります。政府は介入はしておりませんけれども、それで国有鉄道があの仮執行を不都合であると考えて、そうして執行停止の請求をいたしました。これが認められたというだけのことであると思います。
  74. 内村清次

    内村清次君 これには政府は一つも介入していないということを断言できますか。
  75. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 政府は介入と申しますかどうでありますか知りませんが、鉄道の監督局長の状況判断が違憲として訴えられておると思います。そういうことであります。政府自体がその訴訟の主体にはなつておりませんのであります。
  76. 内村清次

    内村清次君 労働大臣も見えておりますが、今回この第二次裁定委員会付託するに当りまして、裁議院の議院運営委員会では、いわゆる公労法の十七條という、即ちこれは基本人権的な罷業権の問題でありますが、この問題が削除せられておる関係といたしまして、当然三十五條、即ち仲裁委員会裁定を以て労働組合経済的な運動の一番最後である、支も又「当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」というような点、この点を重く考えて、そうして罷業権を剥奪したところの事態を、今後平和的に処理して行くというような法律的な改正をせなくてはならんという点が、これは與党議員の方々も御賛成で満場一致になつたわけであります。これに対しましては、労働大臣は今回の裁定、即ち第一次裁定、第二次裁定国会に出しておられる十六條の見解からいたしまして、只今では一貫した考え方で出しておられるようでありますが、こういう点を勘案せられまして政府といたしましてこの公労法の改正をして行こうという御気持ちがあるかどうか、この点を先ず伺います。
  77. 鈴木正文

    ○国務大臣(鈴木正文君) 御質問の前段に関しまして、三十五條が原則的の考え方である、併し予算上、資金上の関係から不可能だという事態も予想されるし、そういう場合を処理するために十六條の規定国会の機能に期待して行こうという考え方、それについては、従来から今日におきましても少しも変つておりません。それから御質問中心は過去の運営の経過に鑑みて、十六條関係を是正するというような意味の改正ということを、政府は、或いは労働大臣は現在考えておるかおらないかという点にあつたと思います。この問題は非常に微妙な問題でありまして、敢えて十六條と言わず、公労法が完全無欠のものであるというふうには思えない点もありまするし、又話が少し横へそれますか知れませんが、私共は公労法といわず、労働関係法規というものは容易に動かすべからざるもので、むやみに手をつけて動かしてはいけないという考え方を持つておるが、併し曾て取られましたように改正即改惡というふうな窮屈な態度はいたしません。これは單に公労法ばかりではありません。広く労働関係の法律すべてを指しておりますが、情勢変化に鑑みまして必要な改正を行なうということは曾ての労働組合法の改正に当つての取つた態度と同様、そういう態度を根本的に取つております。只今質問中心でありますところの、公労法の十六條を現在改正する意思があるか、或いはその調査等に着手しておるかという御質問でありましたが、現在においてはその決意はしておりませんし、そういつた準備を進めておりませんということをお答え申上げます。
  78. 内村清次

    内村清次君 これは労働大臣としては、決まり文句の御答弁ですが、問題は今回第一次裁定から第二次裁定までにおいて十六條乃至三十五條を續ぐりまして、これは恐らく今回の公労法の、昨年六月からの裁定からいたしまして大きな條文には矛盾があるので、これは一つの内閣の性格そのものでどうにも解して行かれるということは、当事者といたしましても十分今回は論議をされたところであります。実際の運用面におきまして、それでまだ一貫して、あなたの方ではやはり自分の今まで取つたところの態度というもをが正しいのだ、これが公労法の十六條なら十六條の精神であるというようなことでおられる、自分で今のところでは改正の意思もないと、或いは又そういうような着手もしてないというお考えでありますが、併しこれは実際において前の、この委員会でもはつきりしましたように、あなたの御答弁で、この賀來才次郎……、その局長の著書でもはつきりなつておるように、これは私も予算第一分科の席上でもはつきり言つたのですが、当然この問題は将来によつては改正の希望もあるということで、又局長も言つておるようでありますが、大臣自体はこれを運用されて見て、確かにこれは内閣が送る度ごとに、この罷業権を取られたところの組合仲裁判定を以て最終とするというような、民主的な労働組合の行き方が、それで阻害されはせんかというお考えも何もないのでありますか、この点をもう一度卒直にあなたから答弁をして頂きたいと思います。
  79. 鈴木正文

    ○国務大臣(鈴木正文君) 幾多の考か方が出て参りましたけれども、例えば内村さんが今私の答弁を先に言つてしまわれたのでありますが、政府は決して歪曲した考え方を持つておりませんし、今日でもそれで正しいと思つております。併しこれにつきましては改正改正という声もありますけれども、靜かに聞いておりますと、全然別の角度からの改正意見が二つ出ておるので、内村さんの御意見は、三十五條を最終的なものとして、決定的なこととしてしまうという方向の改正を言われたのではありませんが、その前提としておられるようにも聞こえます。その反対のああいう絶大なものを以て、そうして予算上でも一切、現在の日本の実情の下において、不可能なものをどうしてもやらなければならんという形で以て、ひねくり廻すというようなことは、とてもやり切れるものではないというような面からの改正の意見もあるように聞いております。それらの意見は、それぞれの立場からも、角度からもあると思います。又御指摘のようにこの半年近くの間、完全に円滑に運用されたとばかりは私も言えないと思いますが、併しその中には、初めての経験、初めての提訴であつて、随分政府も、関係各当事者達も、議員の皆様もいろいろな形で以て検討を続けて来たのであるから、これはスタートにおける検討時代として相当いろいろな形で以て問題が取上げられたということはありますけれども、必ずしもその全部が法の不備のみによるものではなくて、経験もまだ足りなかつたという点も入つておるだろうと思います。これらの点を総合いたしますときに、私は決して十六條を改正する意思は絶対に持つていないというようなことは申上げませんけれども、今俄かに内村さんの御質問に対しまして明確に御答弁をいたしますとか、又、今準備をその方向において進める考えを持つていないということだけは申上げましたけれども、将来或いは永久にいたしませんとかいたしますというまで申上げる段階には至つておらないのであります。
  80. 内村清次

    内村清次君 ただ仲裁委員会の任務といたしまして、公労法で任命された仲裁委員会という性格と、性格が審議期間中におきましてはこれは当時者の相当経理内容も、又は一方労働組合の即ち賃金問題に対するすべての要素、この要素につきましても、十分な公正な即ち判断の下に両者の状態を十分審議して、そうして決定するという民主的な一つの仲裁機関であるといたしましたならば、これは一方におきまして三十五條がすべてを最終的に解決する問題である。ところがこの問題について、ただ当時の政府の性格によりまして、資金の内容、予算の内容、内容においてそうして不可能であるという額それ自体というものは、一体明確に政府自体が、この点が資金内容としてはどうしても政府としては金がないのだというところの事態をはつきり出して、そうしてまあ第二項、第十六條の第二項によつてこの点についての国会承認、又はこれに対しての諸般審議という、国会審議というものを第二項によつてこれを正しく国会に運用して貰うというような行き方ならばよいのであるが、とにかく政府はもう予算は一つも考えない。この裁定自体が正しいか、或いは又正しくないか、国会はどうお考えになるか、それだけの十六條の方で常に政府の方は一貫して来ておる。ここに私は解釈の点が非常に政府との喰違いの点が明確に出ておると思う。ここを政府は今まで同様にやはり機関として、政府自体が裁定を否定するような態度ですべてが即ち拘束される問題だと、すべての即ち資金が拘束されるのだという御態度で出て、後は国会審議に幡つ、こういうようなことで、大分喰違いがあると私達は思うのですが、その点を労働大臣、あなたの正確な御解釈を願いたい。
  81. 鈴木正文

    ○国務大臣(鈴木正文君) 御質問の中には、曾て問題になりました予算を必ずつけて出すべきである、そういつた御議論をも含んでおるのかどうかしつかり受けとれませんけれども、仮にそれをも一部分含んでおられますといたしますれば、それに対する我々の考え方は、これはつけ得る場合につけてもいいし、それから法文上どうしてもつけなければならないものでもないという考え方を前からとつているので、その御説明は前にしばしば申上げた通りであります。今御質問になりました、可能であるか、不可能であるかということを実際の予算上或いは違金上の実際に当つて照し合せて、具体的に詳細に検討して、そうして公平な結論に導くべきであり、内閣の性格等によつて、その持つて行き方に相違があつてはならないという考え方でありますが、私共は別にその考え方には決して反対ではないのであります。内閣の性格によつての問題でなくして、これは私が申上げるまでもなく、專売公社の場合には大蔵大臣国鉄の場合には運輸大臣から詳細御説明があつたろうし、今後もあると思います。政府は何が故にどこまでが可能であるか、或いは全部不可能だという説明をするときには、何が故に不可能であるか、予算上資金上不可能であるということを委曲を盡して、事実を挙げて、そうして国会に御説明申上げる立場をとつておるのでありまして、そのことは今までもいたしました筈でありまするし、今日以後でも国会の御質問に応じて、当該の大臣から十分お答えすべきであり、又すると考えます。決して内閣の性格によつてというふうな問題でなく、飽くまでも公労法の指示する通り予算上資金上可能であるか不可能であるかという一点によつてのみ、この問題は国会の最後の判断を願う。これが現在の公労法解釈上最も妥当な解決である。正しい解決であると私達はそういう解釈をとつておるのでありますし、その線において十分御説明を当該の大臣からやつて来たと考えております。
  82. 内村清次

    内村清次君 大蔵大臣にお尋ねするのですが、公社の二十五年度予算経理内容からいいましても、相当裁定の中にも謳つてありますように、予算面に百八十億も組んである、それは非常にファクターが、給與面が不均衡であるという点を指摘されて、裁定自体も出ておるのでありますが、公社の総裁は六十七億の第一項の資金としての借入金を申請しておる。こういうような借入金を申請した場合に、これは当然今後は経理内容で相当收入が黒字になつて来るという見通しがついた場合のときに、借入金の申請に対して大蔵大臣としてのお考え方、こういう点が何故惡いのですか。何故又これを受理してやらないのであるか。そういうような点についての借入金問題に対する御所見を先ず大蔵大臣にお伺いしたい。
  83. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 借入金をたしますることは債務を負うことでありまして、これは公債政策にも影響して参ると思います。それから又六十七億の支出をするということは、どういたしても新たに予算上の措置をしなければならない現在の財政状態におきまして、この巨額の支出をすることは殆んど不可能であります。又公債を増発することも不可能であります。従つて折角国鉄総裁も陳情はございますけれども、これに応ずることができないというのが只今の現状であります。
  84. 内村清次

    内村清次君 大蔵大臣簡單にそう言われるがね。私が申そうとするのは、経理内容においてですよ。十分この公社の即ち運用が、経理内容によつて、もう十分できて行くんだという見通しがある。それで先程から公社の総裁も言つているように、もう少し一つ予算関係において、自主性を持たして欲しいということをはつきり証言している。これは私共も運輸委員会においても、日本国有鉄道法の一部改正の法律を審議した過程においても、殆んど全員の方の御意見もそこに集中せられている。一つも自主性がない。ただ大蔵大臣が調節権、又編成のとき、一つのこれを調整して行くというような権利を持つているが、一方において、公社の運営というものが非常に自主性を持つている。この点で、而も機能というものが、本年度予算においても、十分それを編成するだけの能力というものができている。それが只今お話では、借入金そのもの自体というものをどういう点で惡いのであるかという点の御答弁がまだ欠けているようでございますが、なぜ惡いかですね。どういう点で悪いという、即ちそう考えを出しておられるか。これを一つ。
  85. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) それは具体的の場合につきましても考えなければならん問題でありますが、只今の問題は、二十五年度が始まりました今として、或いは将来黒字になるかと思いますが、併し只今のところ出と参らないのであります。それからもう一つ、相当黒字が出ましても、只今のとこを、それは一体財産の償却に当てるべきものなのであります。償却費が足りない。現在の予算において、まだ十分に償却をしていない。それは鉄道の財政上それができないから、それだけの余裕がありませんから、しておりません。それでどうもここでサープラスとして出ましても、その償却に当てるべきものなのであります。償却をしませんで、そのいわゆる表面の黒字を以て、それを給與に当てますことは、資産へ食つて給與に当てるということになる。只今それ以上の見通しはできないのであります。従つてこれを多少黒字で出るといたしましても、それは本当の黒字ではないのでありまして、これを以て給與に当てるということは、到底不可能であろうと思つております。
  86. 内村清次

    内村清次君 償却が足らないからとおつしやるんですが、償却はもう二十五年度予算で十七億五千万円ははつきり組んである。そうして勿論これが再評価される性質のものでもないとすれば、問題は十七億五千万円ちやんと組んである。償却は組んであつて、而も益金というものは、百八十億ははつきりと残る計画、而もこれは予算として政府は提出したところの予算額である。その額自体の経理状態を見ましても、相当にです。今後この三十億円、政府に借りた三十億円は政府に返して行く。返すだけの予算というものがはつきりできておる。それにこの予算総則の第九項でございますが、これにも借入金というものは百億だけは認められるということもはつきりしてある。それから三十九條によりましても追加予算の方につきましても、十分追加的な予算計画もでき得るということもはつきりいたしておりまするならば、今回の仲裁裁定ということを、それを重んじて、そうしてこれが罷業権を取られたところの組合の最後の解決場所だ、解決するところのものだということを御認識なさつたならば、私はこれはただ一概に大蔵大臣が言われるような、すげないところの、御認識になつておらないところの考え方の言い方ではいけないのではないか。こういうふうに私は思うのですが如何でございますか。
  87. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 御尤もでありますが、お話の三十億を一般会計に返すということは実はやつておらないのでありまして、まだ返す計画は立つておらないのであります。それから百億の今のお話でありますけれども、これはただ資金の便宜のために、一時百億の借入金ができる。現金の一時の使用に充てるために借入金ができるのでありまして、いわゆる今ここで給與に拂つてしまう。その永久の借金をしていいというわけではないのです。それは現金の不足の場合に一時借りることができる。併しその借入金は必ず直ちに返さなければならない借入金であります。これは現金の出入りだけの調節のために充てる借入金でありまして、ここの今お話の借入金には当らないのであります。それから只今のところ、まだ資産再評価をしておりませんけれども、これを本当に評価いたしますと、年間に二百数十億の一体償却をしなければならない。只今のところはそのうちとてもそれだけの金額を出ませんから、それを百八十億程度の特別補充取替費という名目で、実は支出に計上されておるのです。まだその間でございますから、約八十億不足を生じておるのです。これだけのものを支出しませんければ、本当な現在の鉄道の資産をそのまま維持管理をすることはできないような状態にあるのであります。甚だ鉄道の内容が惡いのです。従つてそこに多少のサープラスがある見込があるからと申して、それを給與に充てるということは到底不可能である。こう考えております。
  88. 内村清次

    内村清次君 今日はちよつと重大なことを聽いたわけですが、百八十億の補充費というものは、これは現実建設の費用又は線路改良費用、停車場の改良費用。こういうような問題に充てるのでなくして、減価償却費というものの中の二百八十億に充当する予算を組んであるというようなお話であるが、それは事実ですか。
  89. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 鉄道は再評価いたしておりませんので、簿価で申しますと、十七億ということになるわけでありますが、これを資産再評価いたします……、一般の企業も再評価いたしますが……。それを約七千数百億に再評価するとなると思いますが、それに相当するものを別に建設の方でやつて行きませんと、資産を喰い潰すことになる。その減価償訳に相当いたしますものを、損益勘定の方から特別補充取賛費として、これを建設勘定の方に入れておる。こういう関係になります。
  90. 内村清次

    内村清次君 そうすると、二百八十億という償却費のこれは、一時の何と申しますか、あなた方の今後もくろんでおられるところの額……、そうするとこれは今回日本国有鉄道も一部改正されて資産が四十五億か……、何か見返資金を四十億要る。これを含めてのその資産の再評価ですか。
  91. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 鉄道で若し普通に再評価されるといたしますと、年間において二百四十億程度のものが要るわけであります。ただ再評価するかしないか、いろいろ問題でありますが、少くともそれだけのものは資産が毎年減耗して行くわけです。従つて二百四十億を入れればよいと思いますが、鉄道の会計の現況からして不可能でありまするから、損益勘定の方から八八十億を入れて差別補充取替費という名目で入れてあります。その外の見返資金は四十億を借りて建設をいたしておるのであります。こういう関係であります。尚今年度予算でも評価した場合におきましては、まだ金が足りない。こういう関係になつております。
  92. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 今の内村委員質問は四十億を借入れた。四十億を入れたと同時に資産再評価をしたら七千億になるか。こういう質問じやないですか。
  93. 内村清次

    内村清次君 いや、その七千億の根拠として九百倍に資産の再評価をやるという場合のときにおいて、四十億を含めての資産再評価であるかどうか。こういうのです。
  94. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 現在の二十七年度末の資産を再評価するという場合にそういうふうになるのでありまして、四十億は含まつておらないわけであります。
  95. 内村清次

    内村清次君 含まつておらない。その点と明確にして貰いたいと思つたのです。そうするとこの特別補充費というものは……、この補充費の中から一つも建設改良、こういう点はやつて行きませんか。現実においてはそういうふうに運輸省とあなたの方では約束しておりますか。
  96. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 特別補充取替費と申しますものは、その資産が毎年二百何十億か現在の価額にいたしますと減価して行くわけでありますから、それに相当するものを別に更に支出して資産を殖やさない限りそれだけの喰い潰しになる。そういう恰好で特別補充取替費は新しく百億ぐらい、こういう名目で出ておるわけであります。従つて嚴格の意味の減価償却とは、おつしやる意味とは少し違うか存じませんが、考え方は同じであるという意味でございます。
  97. 内村清次

    内村清次君 そこで問題は、これは自己資金で今回二十五年度の千三百六十億の予算が組まれた。自己資金でそういふうな百八十億の補充費を出さんという予算計画の内容になつたのですが、問題は私は大蔵大臣の考えも聽きたいのですが、鉄道の今まで、何と申しますか、戰災的な修繕、或いは又建設的な修繕に対しましては、今回の日本国有鉄道法においてもはつきりしておりまするように、公債発行ができるようになつておるのですが、こういうような建設公債的なものを発行いたしましてもですよ、鉄道公債というものの価値からいたしまして、それだけは建設面に使うだけの費用というものは、この方から一部を賄つてつてもよいのじやないか。予算全体に組まれておるところの自己資金の中からこれを出して行くというような考え方、この考え方は少し無理ではないかと私共は考えるのですが、これよりも何故そういう大蔵大臣といたしましては今まで低賃金の犠牲になつておるところの給與の方にいま少し重きを置いて行くべきではなかろうか。同時に又これは総裁とされても法的に仲裁委員会裁定というものを又更に尊重されるといたしましたならば、その方に、建設の面については公債でも発行してやる、こういうようなお考えに何故ならないのであるか、こういう点を私は更に質問いたします。
  98. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 今お話通りでありますから、そこで見返資金から四十数億を借りる、こういうことをいたしておるのであります。併しながら公債の発行には無論限度があります。建設公債を発行してよろしいと申して、自由に発行することには行かない、一定の公債計画の下に発行いたしまして、最大限度の四十数億を公債によつておるのであります。その上に給與のために又公債を発行するというわけに、只今の財政状態では参りませんので、止むを得ず給與は今の程度で我慢して貰うという建前になつております。
  99. 内村清次

    内村清次君 この国鉄法の第四十四條に給與準則を決めなくちやならないということがはつきりしてありますが、この給與準則は今決めてありますか。
  100. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) そういう名前はありませんが、実態、それに当るものを国鉄総裁が決めておるそうであります。
  101. 内村清次

    内村清次君 名前はないといつても、この給與準則を確かに決めなくてはならないということがもう法律的に明記してある。
  102. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 給與準則は、これはまあ抽象的なものでありまして、国鉄職員給與規定であるとか、そういつたいろいろな規定ででき上つて国鉄総裁の達と申しますか、そういうものででき方つておるわけでありまして、そういう給與準則の名前を必ずしも使つておるわけではございません。
  103. 内村清次

    内村清次君 これはもう現在変えて行くというようなお考えはないのですか。現在のままで行くというようなお考えですか。
  104. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 現在のままで行くという考え方でございます。
  105. 内村清次

    内村清次君 そうすると大臣の今回、これは予算関係にもなりますが、予算を提出されましたときにおいて、給與準則においては、この給與額は事業年度内において変えてならないという四十四條の規定になつておるのですが、なつておるが、今回の給與準則を設定するに当つて運輸大臣の許可を得たならば、即ちその給與額を変更してもよろしい、増額してもよろしいということが認められたという点が残つておるのだが、この点につきまして、これは大蔵省の主計局長あたりはどう考えておるのですか。
  106. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 国鉄法にございまするが、給與準則によつて支拂われる給與の総額が予算で定めた金額を超えてはいけない、こういう規定があるわけであります。従いまして給與準則がその適用によつて給與総額の範囲内であればできるわけでありますが、今回の裁定に基いて履行しようといたしますれば、給與準則は変えるわけでありますが、それは給與総額を超過する、予算に定められた給與総額を超過するということであれば不可能である。従つて給與準則を変えることはできない。こう考えております。
  107. 内村清次

    内村清次君 そうすると運輸大臣予算委員会に対するところの説明、これは重大なんです。これは読んで見ますよ、実際「この予算総則の第一條においては給與、寒冷地及び石炭手当の総額は四百五十六億二千万円と定めた、これは事業年度に変えることはできない」という、あの四十四條の、「ところがこの給與総額の範囲内において給與準則を作成することになつておりまするが、その給與準則を実施するために必要があれば運輸大臣承認を受けて増額が可能であるということを規定しておるのであります。  これによつて公務員の給與準則とは別に公共企業体としての給與準則を作成することができるようになつた次第であります。」こういうような説明なんです。これはあなたの言うのと大きな喰い違いがある。
  108. 河野一之

    政府委員(河野一之君) どういう趣旨で運輸大臣が申されたか知りませんが、給與準則によつて支給される総額は、予算の枠を超えてはいかん、これはもう法律にはつきりあるわけであります。でありますから予算の際の範囲内でやればできるわけであります。給與準則を変えるということはできるであろうと思います。それを若しそういう準則をどうしてもやるのであるということになりますれば、給與総額を、従つて予算の方も直さなければこれはできないと、こういうふうに私共は考えております。
  109. 内村清次

    内村清次君 そこが大きな問題なんだ。私達はこの問題を、即ち大臣説明も聞いて、そうしてどうしても今回の裁定自体というものは政府態度を改めて貰わなくちやならん、加賀山総裁予算を提出しておる期間のうちに修正して貰いたいという、これは大蔵大臣に六十七億と出しておる、そうすると聽いて見ると、給與準則というものは改正法律で、四十四條になつて準則を決めなくちやならない、だからして労働組合の方でも団体交渉が、事業年度間に給與の総額というものが、変更できないということになれば団体交渉の対象に一つもならない。そうすると団体交渉というものは、これはもうあつてなきがごときものであるという点で、総額の改正その他についても相当関心を持つてつた関係もありまするが、併し大臣のこの説明を聽いて、そうしてこの給與準則を必要があれば、運輸大臣承認を受けて増額が可能であるというような説明を聽いておるのだからして、それでは早く一つ給與準則を決めて貰いたい、運輸省ではなぜ決めないかということを、これは公社自体が決める問題であるが、併し運輸省が監督者としてなぜ給與準則を早く決めて、そうしてその後に運輸大臣承認を受けて、或いは適当にこの裁定自体も織り込んでなぜやらないかということで私達もそのとき、今決まつておらないけれどもが、早速そういうような点で考えましようというような答弁で今日まで来ておつたわけです。ところが大蔵省と運輸省との間にこういう喰違いがあるのならば大ごとですが、これは事実大蔵省の言い分の方が正しいのですか。
  110. 星野守之助

    説明員(星野守之助君) 只今運輸省と大蔵省の間に喰違いがあるのじやないかというお話でございますが、先程の河野主計局長の御説明で、運輸省も同じ立場に立つております。
  111. 内村清次

    内村清次君 そうするとこの運輸大臣説明要旨は丸つきり嘘ですか。
  112. 星野守之助

    説明員(星野守之助君) それはいつのでしようか。
  113. 内村清次

    内村清次君 二十五年のものですよ、見てごらんなさいよ、これで審議して来たのですよ。
  114. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 運輸大臣がどういうふうな御説明を申されたか付度で申上げるのは非常に失礼なんでございますが、例えば一定の給與準則に基いて扶養手当を支給するということになつた場合に、家族が殖えたというような場合がございましよう。それから勤務地手当は三割、二割、一割とやりますが、その勤務地の勤務する職員の数が変つた、そういつた場合にその結果給與準則の金額を、或いは給與総額の金額を超えることがあろうかと思います。そういう場合においてはこの増額が、よそから流用するなら運輸大臣はそういうことを承認していいわけでありまして、この準則を適用した結果起るということは考えられると思いますが、準則を全面的に改正して給與総額の範囲を超えるということはできないというふうに法律の問題としては解釈いたしております。
  115. 内村清次

    内村清次君 大蔵大臣に最後にお尋ねいたしますが、この裁定の問題が、ここに議決を求めるの件となつて現われて審議することになつたのでありますが、大蔵大臣の今のお考えでは裁定を如何ように、政府立場からいたしまして解決しようとなされるのであるのか、同時に又現在の公社自体がどれくらい資金内容においてはつきりした支出すべき金額があるか、又資金内容が政府の拘束力によつてどうしても出されないという点が、どれぐらいの金額があるかということをはつきりして頂きたいと思います。
  116. 殖田俊吉

    ○国務大臣(殖田俊吉君) 公社からも、鉄道総裁からもいろいろな要望があつたようでありますが、それも検討をいたしておるのであります。併しながら只今のところ今日の予算におきまして、又その他一般の財政政策におきまして、折角要望ではありまするが、これを容れる余地が只今のところ全然ないと、こう考えます。
  117. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) 他に御質問はありませんか。
  118. 原虎一

    ○原虎一君 質問が他になくて閉会するのでしたら、次回には必ず総理と労働大臣に出席を願いたい。
  119. 丹羽五郎

    委員長代理丹羽五郎君) それでは次回には吉田総理と、それから労働大臣に来て頂くようにして、本日はこれを以て散会をいたします。    午後五時二十二分散会  出席者は左の通り。   運輸委員    理事      丹羽 五郎君    委員            内村 清次君            横尾  龍君           前之園喜一郎君            高田  寛君            村上 義一君            早川 愼一君            中村 正雄君   労働委員    委員長     原  虎一君    委員            山田 節男君            村尾 重雄君            大屋 晋三君            寺尾  豊君            田村 文吉君            鈴木 清一君   国務大臣    大蔵大臣臨時代    理    法 務 総 裁 殖田 俊吉君    運 輸 大 臣 大屋 晋三君    労 働 大 臣 鈴木 正文君   政府委員    大蔵事務官    (主計局長)  河野 一之君    大蔵事務官    (主計局次長) 東條 猛猪君    運輸事務官    (鉄道監督局    長)      足羽 則之君    運輸事務官    (鉄道監督局国    有鉄道部長)  石井 昭正君    労働事務官    (労政局長)  賀來才二郎君   説明員    運輸事務官    (国有鉄道部労    政課長)    星野守之助君   証人    公共企業体仲裁    委員会委員   今井 一男君    日本国有鉄道公    社総裁     加賀山之雄君    国鉄労働組合書    記長      星加  要君