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1949-12-22 第7回国会 参議院 運輸・労働連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月二十二日(木曜 日)    午前十一時十五分開会   —————————————  委員氏名   運輸委員    委員長     中山 壽彦君    理事      飯田精太郎君            内村 清次君            中村 正雄君            植竹 春彦君            大隅 憲二君            加藤常太郎君            入交 太藏君            高橋  啓君            小野  哲君            高田  寛君            村上 義一君            早川 愼一君            鈴木 清一君            千葉  信君   労働委員    委員長     山田 節男君    理事      田口政五郎君    理事      平野善治郎君    理事      波田野林一君            原  虎一君            村尾 重雄君            平岡 市三君            堀  末治君            門屋 盛一君            宿谷 榮一君            田村 文吉君            松井 道夫君            中野 重治君            水橋 藤作君            平野 成子君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○公共企業体労働関係法第十六條第二  項の規定に基き、国会議決を求め  るの件(内閣提出衆議院送付)   —————————————    〔中山壽彦君委員長席に着く〕
  2. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 大変遅くなりましたが、これから運輸労働連合委員会を開会いたします。前例によりまして私が連合委員会委員長の職を勤めさして頂きますから、さよう了承を願います。  本日の議題公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求める件で、昨日吉田総理出席を御要求になつておりましたが、只今聞いてみますと今朝来感冒の気味で官邸に休まれておりますから、その代り増田官房長官が御出席になつております。これも一つ了承を願つておきたいと思います。今日は連合委員会でありますから、最初労働委員の方々からいろいろの御質問を願いたいと存じておりますが、先刻中村委員から冒頭官房長官質問したいことがあるということでありますから、中村君から一つ
  3. 原虎一

    原虎一君 その前にお伺いいたしますが、総理大臣はいつ出席ができますか、その点をお伺いいたします。
  4. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 今日は御出席ができないそうでありますが、明日のことは明朝の御容態によつて決まるらしいのですが、今日からちよつと予測できないという長官お話であります。
  5. 原虎一

    原虎一君 特にお願い申上げたいのは労働委員会におきまして、私が委員長を通じて総理大臣の、御出席を要求したのであります。と申しますのは前臨時国会におきまして総理は十二月二日と記憶いたしますが、何か野党が故意に審議を遅らせておることは日本民主化を阻むものであつて、痛恨に堪えないということを申されておるのであります。今度のこの公労法に基きますところの裁定は、日本初めての労働問題を民主的に法律によつて解決するために、労働者政府も法を尊重して、これに基いて行動しなければならんのであります。それが行われて来たと思いますが、私は政府に多く欠けるところがあると思うのであります。こういう点について総理に十分質さなければ納得は行かないのであります。我々は日本民主化のために法に従つて行動しなければならん、然るに審議出席すべき義務があるところの総理出席されないのであります。従つて委員長から、十分に総理出席を要求することの希望を申上げまして、私は打切りといたします。
  6. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 承知いたしました。
  7. 中村正雄

    中村正雄君 内容の質疑に入る前に一応政府にお聞きして置きたい点があるわけです。それは議題となりました案件につきましてお尋ねするわけでありますが、この案件裁定書全部を案件としまして議題になさつておるのか、或いは四十五億の中十五億五百万円を除いた残額だけについての議決を求めておられるのか、その点について最初お尋ねしたいと思います。
  8. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 中村さんにお答え申上げます。政府といたしましては裁定中第十六條第一項、第二項に該当する分の議決国会にお願いいたしております。裁定の他の、十六條第一項、第二項に該当しない部分については議決をお願いしていないのであります。それが一つ。それからもう一つ裁定中の第二項にございます四十五億の支出の関係のうち、政府公社予算上、資金上支出可能であるというふうに努力の結果決定いたしましたもの、即ち十五億五百万円を控除した残額についての、裁定中その部分についての国会における議決政府としてはお願いいたしておる次第でございます。
  9. 中村正雄

    中村正雄君 重ねてお尋ねしますが、そうしますると具体的に裁定書によつてお話しますると、裁定書の第二項のこの四十五億の中の一部分について議決を求められただけでございまして、第一項、第三項、第四項は本審議の外だ、従つてこれはもう確行しているものだと、こう解釈していいわけですね。
  10. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 第一項は第二項と関係があるものと思つておる次第であります。従いまして第二項のうち十五億五百万円を除いた分と第一項は関係がある、こういうふうに考えております。又第三項の適用は現在の予算上、資金上不可能でございますから、将来議決をお願いする分というふうに私共も考えております。第四項につきましては、これは裁定解釈の問題でございまして、政府は別に十六條第一項に該当しないと、こう考えるわけでございます。
  11. 中村正雄

    中村正雄君 第三項で資金上、予算上不可能なというのはどういう意味でおつしやるわけなのですか。裁定書の第三項を見てみますると、現実にこれだけ出せというのじやなくして、今後の問題として当事者双方に提示されておるものでありまして、予算上、資金上不可能なというのはどういう解釈によるものかお尋ねしたいと思います。
  12. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 現在公社予算資金上不可能である、又昭和二十四年度の公社予算上、資金上不可能でございまして、昭和二十五年度になつてそうなるか、二十六年度になつてそうなるかは、これは今のところ分りかねる次第でございますので、ともかくも今のこの二十四年度の公社予算上、資金上から考えまして、第三項について一種義務を負うということは政府といたしましては、やはり一種拘束を受けるわけでございましてそういうことは困るというふうに考えておる次第でございます。
  13. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、第三項に「職員能率増進によると認められる場合」というのがありますが、職員能率増進ということが、今後あるということは予定せられないというようなことが結論になるわけですね。又冒頭の「年末賞與金は認められないが」とありますが、これも年末賞與は認められないという点については、政府はこれは服さないという国会議決を求めると、こういう意味なんですか。私は第三項全体を申上げているわけなんですよ。
  14. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 第三項については、実は相当研究もいたしましたけれども、とにかく二十五年度、二十六年度等において第三項所定の事実が現実にできた場合においては、その際改めて考慮するということについては政府はやぶさかではない次第でございまするが、第三項がオブリゲーシヨンとして今日から続くということは今日の予算上、資金上と直接関係がないというわけではない。だからして困るというふうに考えておるような次第でございます。
  15. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、第十六條の資金上、予算上不可能な云々という意味解釈が変つて来ると思うのですが、第三項は将来において予算以上の收入が行われたり、或いは節約が行われたりした場合は、これは云々というわけで、これは資金上、予算上不可能という中になぜ入るのか、余りにもこじつけではないかと思うのですが、如何でしようか。
  16. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) この点は、実は政府においてもまだ研究中のようなこともございまするし、本日は明確に申上げる点は、運輸大臣或いは労働大臣が来るまで留保さして頂きたいと思います。
  17. 中村正雄

    中村正雄君 私が申上げておるのは、本日の案件になつておる議題が何かということを聽いておるわけで、議題内容がはつきりしないのに留保して審議しろ、こんな馬鹿な話はないと思う。而も本案件を出されたのは何日なんです。参議院では本日本付託になつて、我々は本日初めて見ておる。政府衆議院のときから出しておつて議題内容が今尚不明のままで云々おつしやるというのは、政府が余りにも怠慢じやないですか。
  18. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) だからここに参考に申上げておきまするが、衆議院におきましては結局裁定中から、十五億五百万円を除いた残余部分について不承認議決をされておるわけでありまして、我々はこういう議決をどういうふうに解釈すべきかということについて、その後検討をいたしましたが、一、二、三、四というものの中から十五億五百万円を除いた残余部分不承認なつた点であります。この点はまだ昨日夕刻の議決についての検討が、すつかり済んだというわけではございませんが、もう暫く第三項については私のみ……主管大臣がまだ出ておりませんから、私が主管大臣の分まで背負つて政府意思はかくかく決定されたということを、言うというふうにまで申上げるにはちよつと……或いは怠慢という誹りを中村さんから受けるかも知れないが、もう暫く御猶予を願いたいと思います。
  19. 中村正雄

    中村正雄君 委員長お話では、総理大臣が見えないので官房長官代りに来ると、こういう話でこの委員会を開いたわけで、官房長官総理大臣代りとして、而も内閣の代表として来られておつて、そういう言葉を今更放たれるのは納得できません。併し分らないものを幾ら突いて見ても時間を取るばかりですから次に移りまするが、一応常識的に今までの案件から見まして、又十六條から見まして。やはり政府の出されておる案件は、裁定の中の第二項に関係しておるものだけだと、恐らく誰しも考えるだろうという私の意見を申上げて、次に移りたいと思います。今まで本会議でも運輸大臣説明になりましたし、或いはその他いろいろの機会に政府が三十五條と十六條の解釈につきまして、しばしばおつしやつておりますので、この点についてちよつとお伺いしたいと思いますのは、三十五條によりまして、言い換えればこの仲裁委員会裁定、十六條の分につきましては今尚国会意思表示いたしておりませんが、この仲裁委員会裁定は現在鉄道公社拘束しておるものであるかどうか、この御意見を承わりたいと思います。
  20. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 現在拘束しておると思つております。
  21. 中村正雄

    中村正雄君 それは三十五條によつてと、こう解釈してよいわけなんですね。
  22. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) さようでございます。
  23. 中村正雄

    中村正雄君 そうしますと、十六條の條文には、これは当事者公社ということには何も関係なくして、政府国会のことを十六條では規定しておると思うが、政府の御解釈はどうですか。
  24. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 十六條第一項は政府でございます。併しながら第二項によつて国会議決がありたるときは、その裁定というものは裁定の日に遡つて効力を発生するということになりますから、その効力の発生の仕方は公社或いは公社労働組合両者関係においては、効力において影響があるということを十六條二項は言つておるものと、私は考えます。
  25. 中村正雄

    中村正雄君 十六條の一項は明らかに政府拘束するものではないと、こう言つておりまして、二項は第一項を受けておるわけで、従つてこの二項によつて国会が否決した場合におきまして、公社までこの効力が及ぶとはどうにも考えられない。もう一つ、今官房長官の御説明ですと、現在においては公社拘束しておる。而も国会が否決した場合におきましては拘束が解除されるというのは、どの條文によつておるのか、お聽きしたいと思います。
  26. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 十六條の一項は、政府拘束するものではない、これは我々は公共企業体自身とは関係ない。ところが十六條二項によりまして、国会承認或いは不承認なつた場合には協定、これは裁定と読替えられるわけですが、これは裁定のなされた日に遡つて効力を発生する。勿論裁定協定でございますから、その当事者は片や公共企業体であり、片や公共企業体労働組合でございまして、両者について効力を発生する、これは或いはその効力について影響があると消減する場合もありましよう。それも一種効力でございますが、そういうような効力というものは、相変らず政府に限らず公共企業体、並びに公共企業体労働関係法、いずれに対しましても影響があると、こういうふうに政府解釈いたしております。
  27. 中村正雄

    中村正雄君 それはいつから公社効力がなくなるのか、それはどの條文によつてつておるのか、お示し願いたいと思います。
  28. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) それは承認不承認とに分けなくてはいけないと思いますが、或いは先ず仮に不承認という場合だけの御質問であるというふうに解して申上げます。  不承認という場合には、不承認国会によつて決定意思表示があつたときにというのですから、勿論承認があつたというときを考えに入れなければなりませんが、そのときにおいて記載された日付、これは協定でございまするが、裁定裁定がなされた日、これに遡つて効力を発生して、つまり裁定不承認効力が発生する、こういうふうに考える次第でございまして、それまでは公社を縛つておると私は考えております。公社労働産合を縛つておると考えております。ところが不承認議決があつた場合には、裁定の日に遡つて権利義務拘束から免れる。それからこの第十六條第一項による政府関係は、私共は解除條件附政府を縛つておる、こういうふうに考えております。政府解除條件附拘束から免れる、それで不承認というような事実があつた場合には、解除條件が成立しなかつたのですからずつと不拘束というような状態が続きます。而して解除條件というものが成立した場合には、今度は政府に対する拘束が、裁定承認された場合において裁定された日に遡りまして政府拘束するに至る。こういうふうに考えておる次第であります。
  29. 中村正雄

    中村正雄君 公社は現在も尚拘束されておつて、そうして国会承認した場合は、その記載された日付に遡つて効力を発生すると、こういう文句はこのまま意味をなさないことになりますが、官房長官説明によれば……。
  30. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私はこの裁定なり協定効力影響を與える、こういう意味効力を発生するということと解釈しております。初めからこれはもう拘束効力は発生しているのです。何と言いますか基本的な意味においては、承認議決があつた場合には、初めから効力を発生しておるし、承認という議決があつたのですから、いよいよ以てその効力は存続する。併しながら一方、若し不承認という議決があつた場合には、初めから公社拘束しておりまするが、その不承認議決国会において決定的にされた場合には、裁定の日に遡つて効力が発生する。というのはつまり公社拘束するというような、そういう関係がなくなるという意味効力を発生する、こういうふうに解釈しております。
  31. 中村正雄

    中村正雄君 官房長官は專門家かも知れませんが、どう見ても今の御説明は納得できないのです。現在公社にはこの裁定書効力が発生しておる、そうして国会がこの不可能な分につきまして承認を與えられた、そうすると十六條二項は国会による承認があつたときには、この協定は、それに記載された日付に遡つて効力を発生する。この文句は、要らないのじやないかと言つている、現在すでに効力が発生しているとすれば、国会承認のあつた場合は、その記載した日付に遡つて効力を発生するということは、何故要るかということを言つておるのです。
  32. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私は必要だと思います。というのは要するに、もうすでに効力を発生しているのです、而も三十五條規定は、中村さんも御存じの通り十六條以外の裁定というものは将来なされるでありましよう。そういう裁定は無條件効力が発生して両者拘束しておるが、十六條の関係のところは十六條の定むるところにより、十六條第一項、第二項を読んで見ますと、公社予算上、資金上不可能なものは政府拘束しない。こういう状態は、もう予算上、資金上不可能であるという客観的事実があるならば、そのときから政府拘束していない。但し国会承認議決をする、若しくは不承認議決をする、いずれイエイ、ノーの議決はなされ得るのですから、イエスという議決をいたされた場合は解除條件附でございますから、その條件によつて今までは拘束されなかつたけれども、将来は拘束される、而もその間は仮に拘束されなかつただけであつて拘束する状態裁定の日に遡つて政府拘束する、それだけの効力はあるて思います。公社は今まで拘束しておつたけれども、将来も拘束するということになります。これは解除條件の成立によつてつて効力は初めから発しておるのですから、その状態が続いております。不承認という議決があつた場合は、政府は今までも拘束しておる、解除條件も成立しないから将来も拘束する。公社はその條件不承認によつて、今でも拘束されておつたけれども、そのとき以来裁定の日に遡つて縛られる。そのとき以来裁定の日に遡つて、今度は公社並びに公社労働組合裁定拘束から免れる。こういうふうに考えております。
  33. 中村正雄

    中村正雄君 だから今の官房長官の御説明を聞いていると、十六條は公社政府と二つ関連させて説明しようとするから、あなたみたいな辻褄が合わないことになる。十六條は資金上、予算上不可能な部分内容とするものは政府拘束しない、併し国会承認を與えたら裁定の日に遡つて政府拘束するのだ。十六條は政府だけを言つておる。それをあなたは公社まで説明しようとするから、公社は尚現在拘束を受けておる、而も承認以来の日付に遡つて効力を発生する、こういう無駄な條文があるわけです。これは政府のことを言つておる。従つて十六條は政府のことであつて公社のことは三十五條が謳つておる、こう解釈するのが当然だと思います。
  34. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 私共は決してそうは考えておりません。将来予算上、資金上不可能な協定公社経営者と、それから公社労働組合とで締結するかも知れません、月三万円なら三万円、そういうようなものであつた場合は、勿論第一項によつて不可能でありますから、そこで今度は国会議決を求めます。その場合国会不承認をしたという場合は、その協定に記載された日付に遡つて効力を発生する、こういうことになりますから、今の場合はネガテイヴ、いわゆる消極的な効力を発生する。そこで協定は片や公社であり、片や公社労働組合であるということは明瞭であります。この両当事者に対して効力を発生する。或いは消極的な効力を発生すると読めなければ……協定効力を発生するという文句は、そういうセンシテイヴになると考えております。
  35. 中村正雄

    中村正雄君 一般の当事者間の任意による協定文句が合わない。今言つた三十五條は法的に最終決定として効力が発生しておる、而も十六條は政府だけのことになると思います。最後の、国会により承認を得た場合は、裁定日付に遡つて効力を発生するというようなことは、公社に言う必要は全然ないわけです。それを現在尚公社に対して効力を発生しておるのであれば、承認があつた場合は裁定日付に遡つて効力を発生するということが言える、これは幾ら論議しても二本のレールですから止まして、丁度労働大臣が見えたので最初案件内容について御説明願いたい。
  36. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 中村さんに謹んで取消しをいたします。第三項と第四項とは、議決議題外であるということを法務総裁衆議院で答えられておるそうでありますから、政府意思表示として第三項、第四項は議決願つた議題外というふうに御了承願います。
  37. 中村正雄

    中村正雄君 只今官房長官の御説明によりますと、三項四項は十六條には関係なくして、現在公社労働組合との間に効力が発生しておるものだ、国会審議によると……確認いたして間違いないわけですね。
  38. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) さようであります。
  39. 中村正雄

    中村正雄君 私の質問はこれで一応終ります。
  40. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは最初申上げました通り労働委員の方から最初に御質問を願いたいと存じます。
  41. 平野善治郎

    平野善治郎君 運輸大臣出席しますか。
  42. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 運輸大臣は今こつちに来られますが、自宅を早く出られましてまだこつちに来られない、途中であると思いますが、もう直ぐこちらに見えると思います。督促いたしております。
  43. 平野善治郎

    平野善治郎君 それでは、労働大臣が見えられておりますから、労働大臣にお尋ねしたいと思います。  労働大臣は、この仲裁裁定に対しまして公共企業体労働関係法精神によるか、我々はこれは公社労組と両方を最終的に拘束したものだと考えております。従つて公社が主となつて、いろいろその裁定に服するように努力するのが本当でありまして、その努力の結果、足らないところを政府においてこれをいろいろな便宜を図つてやると、こういうので建前かと思つております。然るに我々がいろいろ感ずるところを申しますというと、政府は冐頭からいろいろ政治的考慮の上から、或いは他の関係からこの仲裁を如何にして拂わないようにするか、ということに努力をしているように見られます。併しながら、公共企業体労働関係法を提出した昨年の労働大臣説明によりますというと、非常に公共企業体労働組合から基本的な人権を、これを制限いたしまして、その代り調停仲裁というようなものを作りまして、これを以て労組を保護すると、極力この法案を通す時にはそう言つておられます。従つて私は少くとも労働大臣だけは最終決定を具体化するために、非常に努力をして、そうして行かなければならぬと、こういうふうに考えておりますが、労働大臣の見解によりますというと、公社支拂能力は実際十五億五百万円以外にはないと認められるかどうか、この点をあなたからお伺いしたいと思います。
  44. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 前段の方は御質問でなくて御意見のようでありましたけれども、この際でございますからして、この点についても簡單に私の考えを申上げます。御説のように公共企業体労働関係法は一方の罷業権の制約を加えると同時に、一方においてそれに対応すべき調停的の機関を組織しておるという考え方は御説の通りでございます。  それからこの三十五條及び十六條、只今問題になつておりまする法の解釈等につきましては、もうすでに屡次政府考えを各関係大臣から申上げました。今も論議がありましたあの通り政府考えておるということも事実でございます。私共といたしまして、労働大臣といたしまして御質問の点でございますが、言うまでもなく可能なる部分政府国会、いずれにも関係なしに、直ちに効力を生ずるという考え方は事実でございまして、それから又予算上、資金上不可能なものは最終的に国会議決を、承認不承認いずれであろうとも願わなければならない、こういう考えでこれには間違いもないし御同意願えると存じます。そういたしますと結局労働大臣といたしましては、この方の手続を法に謳つてある通り手続及び法の精神を明らかにし、崩さないようにすることが一つ、それからもう一つ端的に御指摘の可能なる分は、只今十五億五百万円として出ております。この可能なる分をでき得る限り大きくして、最も大きくなつたときには全額四十五億が可能という場合もあつたと思いますが、正直なところ四十五億というものが、実際的に現在の予算上、資金上可能だとはなかなか思いませんでした。然らば十八億という説も出ますし、いろいろの説も出て参りました。この間の関係方面との折衝は政府部内の折衝におきまして、私といたしましてできるだけ、今日では十五億五百万円が決定的な金額でございますので、そこに至るまではできるだけその可能なる分を大きくする、而して国鉄の従業員の方々に報いるという形をとつて活動して参つた次第であります。それらの結果国鉄の現在の経理、現在の予算上、資金上の関係におきましては、十五億五百万円を以て労働大臣としても、これを納得せざるを得ないということに自分でも認めたのでございまして、国鉄の中に尚この十五億五百万円以外の財源が絞ればあるのかどうかという最後の御質問の点に対しましては、私といたしましてはここに大屋運輸大臣もおりますけれども、当該の運輸大臣が責任をもつて探し、大蔵大臣とも折衝したあの金額はぎりぎり現在探し得るところの最大限のものであるということを認めざるを得ないのであります。
  45. 平野善治郎

    平野善治郎君 もう一点労働大臣にお尋ねしますが、私共は国会がたとえ如何なる議決をいたしましても、政府拘束をされないのであるが、公社拘束するものであると、かように考えておる。この点につきまして労働大臣の御見解は如何でございますか。
  46. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 可能なる部分はこれは論外でございますが、不可能な部分につきましては、十六條にも言つております通り、この十六條を読んで見ますると、只今増田官房長官からそう説明しておられましたが、国会議決を以て初めて、効力を生ずるのでございまして、従つて国会承認という場合には全面的に効力を生じ、過去に遡つて効力を生ずると同時に、不承認の場合にはその効力は過去にもその時にも生じないのでございまして、その部分につきましては、従つて予算上、資金上、そういつた関係国会が論議され、議決され、不承認なつ部分につきましては、公社をも実際的には拘束しないというふうに思います。
  47. 平野善治郎

    平野善治郎君 この問題につきまして幸い末弘仲裁委員長も見えられておりますので、同委員長の御意見をお伺いします。
  48. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは御発言の前に宣誓をお願いいたします。    〔総員起立、証人は次のように宣誓を行つた〕    宣誓書   良心に従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 末弘嚴太郎
  49. 末弘嚴太郎

    ○証人(末弘嚴太郎君) それでは只今の点について申上げますが、それよりも前に、どうも先日の審議政府と委員との応答を伺つてつて、尚誤解があるように見えるのですが、つまり予算上、資金上可能であるという部分は実は客観的に決まつておるわけであります。それはただそれが幾らであるかについて、見方によつて議論はあるかも知れませんが、客観的に決まつておる、その部分については。これは政府が十五億五百万円と認めたからといつて、あとは消滅しないのであります。これは両方が約束してそうして法律上、可能な部分は確定的な義務があるので、いわば私有財産で、憲法で保障されておるところの所有権でございます。ですから憲法の規定に基かない限り、政府は無論のこと、国会と雖も削ることはできない。削るならば、憲法の規定に基いて何らか法律を制定しなければ削れないわけであります。それで私共見ておりまして、大蔵大臣が殊に、非常に努力した努力したと言われるのですが、その今の十五億五百万円にすることに努力したと言つておるので、あとの残りの部分のことについて努力をしたと言つておることを終始私ちつとも伺わなかつたのでございます。ですから仮に今ここで議題になつておることで御承認が與えられなくなりましても、可能な部分というのがまだあればそれはちつとも消滅等はしないのだ、つまり公社の債務は十五億五百万円で、あとはまるでなくなるんじやないということを先ず頭に置いて考えて頂かないと、今の御質問の問題は混同が起るわけでございます。これは私有財産だということを是非お考えを願いたい。つまり両方の約束で決めたことなんであります。そこで残りのことなんでありますが、これはこの間衆議院で申上げたんでありますが、今増田官房長官の言われたような議論も成り立ちます、議論としては。併し反対の議論も上派に成り立ちます。というのは、法律が惡いのです。法律が非常に不完全である、ああいう法律が不完全でありますれば法律論が分れます。ですから私個人どう思うかと言われたのならば別でありますが、委員会としてどう思つたかという点については、委員会でも、そういうことは一応どうであろうかということはいろいろ議論しましたが、これは私共はその法律論にも余り重きを置きませんのは、むしろ四十五億の中の、いわゆる残りの部分というものを、政府の僅かの御協力があれば公社は拂えるのだということを私共思つておりますので、実はそれを期待しておりますので、そういう法律論で以て債務がなくなるとか、あるんだという問題について余り深い関心を持たないので、委員会としてこの法律論を最後まで突きつめておりません。と申しますのは、一つの経営体でありますので、今ここで仮に十五億五百万円以上は承認しないといつても、今から後、今年度、少くとも今年度内に可能な部分が又出て来るかも知れない、可能な部分というのは拡がるのです、生き物ですから。それからああいう企業体を政府が決めた。三月までというのは、年度で切つて可能かどうかといつたようなことを考えるのもすでに非常に無理であります。経営体の能力というものは、今はゼロであり、マイナスであつても、ちよつと注射すると非常にプラスになるようなことも幾らでもある。ですからあの法律の程度で、さつきの増田官房長官が言われたようなことをおつしやるのは、非常に私は何でも頭から切つてやれ切つてやれというふうな御精神があるようにしか思えないので、あれを伺つていて非常に遺憾に私は思いました、ということだけ申上げます。これは企業体というものは生きているということですね。これを考えると、私共は仮に十五億五百万円でも、あと僅かなことを、金を貸してやれば行くんだ。この点別に御質問があれば、私共はなぜそういうことを言うかということを御説明いたしますが、今の御質問には直接関係ありませんので……。
  50. 平野善治郎

    平野善治郎君 これは又この問題はあとから突きつめてお伺いしたいと思いますが、加賀山総裁が見えられておりますので……。
  51. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) ちよつと平野さん。末弘委員長は今日午後二時から外の会合に御出席になることになつているので、もう時間も相当近付いておりますから末弘委員長に対する御質問を先に一つお願いいたしたい。
  52. 田村文吉

    ○田村文吉君 末弘委員長さんにちよつとお願ねいたしたいと思うのでありますが、あの裁定なさいました理由書を拜見しますると、鉄道公社職員がこの六月の再編成される時代に、むげに待遇を切下げられたということが書いてあるようでありまして、そこでその当時の情勢から見ますと、鉄道職員のバスの問題であるとか、或いは住宅の問題であるとかいうような点が、他の政府の公務員である逓信従業員であるとかその他のものに比べると、少しくよ過ぎるというような点から、そういうものを是正しなければならないというような点からやかましくされた点が一つと、もう一つは、鉄道が独立採算制をとれば経営上困難になるから十分一つ突きつめて貰いたい。この二つの考え方があつて、待遇が切下げられたというのではないか、こう考えているのでありますが、そういたしますと、ここでむげに下げられたものだからこの際一つ直してやるのが本当だ、一般公務員等が他日増俸される場合には、又公社の経営が引き合う限りにおいては、それは上げてやるべきだ。こういうような御判断に相成つておるようでありますが、ただ私共同当伺いました状況だというと、鉄道の公務員の割がよ過ぎるのだ。だから公務員と同じような大体待遇に直そうじやないかということであつたかと思うのでありますが、この点について御検討がありましたことだろうと考えるのでありますが、この際はつきり一つ承われば仕合せだと考えております。
  53. 末弘嚴太郎

    ○証人(末弘嚴太郎君) 只今の点は十分に研究をいたしました。そうして細かいことは、裁定書の理由書の外に、恐らく参考書として差上げてあると思いますが、その約千円……総額にすると公社がそれによつて経費の上で助かつている金が六十億に近いものになつているわけでありますが、その一つ一つ内容について、これは非常に細かいことで、是非その細かいところを御覽願いたいし、それから若しも御必要があれば午後にでもその点を特に詳しく公社の方から材料を出して頂いて計算をして、今井委員が十分御説明を具体的にいたします。が、只今おつしやつた点ですね、一体我々が十幾つかに亘る項目を拾い上げた中に、今おつしやつたように、国鉄はこれではよ過ぎるというような議論が曾てあつたというような話も多少聞いておりますが、一体公共企業体にして行こうというときに、そのときはむしろ公務員とは離れるときなんです。独立の、むしろ民間と同じ企業体にして行こうというときに、なぜ削るか、ここが私共には納得が行かないのであります。つまり言葉を換えて申しますと、削る墓はどこにあるかと申しますと、運賃が無理なんです。この運賃が無理であることは、もう終始通じて誰しもが分つてつたことなのであります。現にこの前の国会で三十億の補正予算に認められておりますが、あれを何か今度の問題にも連関して、増田長官のごときは先日の放送座談会で、非常に一般の国民を誤るような説明をしておられましたが、あれなどは結局十一月から運賃を上げるのが、一月からになつたために、二ケ月であのくらいやらなければ成り立たたないのであります。あの私共の出しました説明書を読んで御覽になればお分りになるように、要するに経費が足りないという部分を不当に削つておる。だから現在の六千幾らという給與であるけれども、実質賃金は、実は公社になるということのために切り下げられておるのでありまして、こういうものを私共は肯定するわけには行かないということが、我々の精神でございます。
  54. 田村文吉

    ○田村文吉君 大体分りましたが、この中に一般の公務員が又上げられるという場合には、鉄道としても又考えなければならんというようなことがあつたと覚えておりますが、その点と関連しますので、今の問題をお伺いしたわけであります。つまり初めのときに、一般の公務員との釣り合いをとつて公社は勿論今話のあつたように民間企業と大分類似しているのだから、給與というものは全然別に考えて行くと、こういう議論が一応立つのであるが、分れた当時だから成るべくその釣り合をとつて行かなければならんということで、その当時において一般公務員との釣り合をとられて給與が決められたのではなかつたか。そうすると今一方の議論では、公社というものと公務員というものは全然別なのだから、公社の場合には、企業の財政が許す限りにおいて支拂うべきものは支拂うのが当然だと、こういうふうの御趣旨でこの裁定が出されておりますが、一方においてやはり公務員との釣り合というものも考えてこれは出されておるかのように見えるのでありますが、その点が、仲裁の本当の御趣旨はどういう点におありになつたのだろうか。一応の條文は皆拜見いたしましたが、尚仲裁の御趣旨を一つはつきり伺いたい。こう考える次第であります。
  55. 末弘嚴太郎

    ○証人(末弘嚴太郎君) 先程申しました資料を十分御覽願いますとお分りになりますが、恐らく一昨日衆議院委員会の最後の、夜になつてから今井委員が詳しく説明したその記録を御覽を願うとよく分るのでありますが、実は私共見るところ、一般公務員についても、私共が挙げた十幾つかの項目のうち、一般公務員にも触れておるのではないかと、若しも理屈詰めに言われれば、そういう部分は、僅かに金額にすると十何円というような数字を出して来ておる部分だけであります。それ以外は、むしろ経営が当り前ならば削るべからざるものを無理に削つている。そうして今年度の予算に初めから非常に無理があるのであります。これは今年度の予算を御覽願いますと分るのですが、郵政省の場合の予算と、この公社の場合の予算というものに、どうしてあんな開きができたかと思うくらい実はあの公社予算には無理があります。殊にこの経営を合理化するという名の下に、六十万の人間を五十万人、即ち六分の一の人を減らすということによつて公社が受ける利益は非常に大きいわけであります。それから浮いて来る利益は非常に大きなものでありますが、そのために要したところの退職金の予算というものが、十七億ですか、十八億くらいしか含んでおらない。併し実際には五十億から要している。こういうようなことで、そこに大きな、頭からああいう経営合理化に必要な費用さえ予算に十分組まれていないというような予算なのであります。そういう実質をよく御覽下さいますと、如何に経営のために無理に労働者の待遇を低下さしているかということがよくお分りでしようと思うのでありまして、そういうふうに全体を総合的に御覽を願いたい、こう考えます。
  56. 田村文吉

    ○田村文吉君 私の伺いたいのは、これを御仲裁になるときの御意見は、鉄道の従業員というものは、外の現業官庁、例えば郵政省関係の通信従業員等と比べて特に切り下げられていると、又不公正に下つていると、こうお考えなつたのでありますか。そうでなくて、鉄道企業自体からして、こういう生活状態にあるものを今のような待遇じやいけないと、こういう意味でお考えなつた御判断であるか、その点をお伺いいたしたかつたのであります。
  57. 末弘嚴太郎

    ○証人(末弘嚴太郎君) その点は、一般の公務員に比べて切下げられているということを、全体では、或る部分は一般公務員も下つているというような点もあるようでありますが、これは僅かであります。一般公務員に比べて下つているという見解であります。
  58. 内村清次

    ○内村清次君 末弘委員長にお尋ねいたしたいことは、これは裁定の解説の第五に、「国鉄の支拂能力について」という項がありますが、その中に、第四のところに「本年度においては、旅客運賃は五月から、貨物運賃は一月から引上げられた関係上、收入の方は当然窮屈となるが、明年度からはこれが平年度化される。すなわち補正予算に比し約二三〇億円の増收となる。」、でこれの内訳として「人員整理による余裕も七〇億円程度を見込むことができる。それに石炭費の節約も更に期待できよう。」というような点が書いてありまして、公社支拂能力の十分なことについての解説がしてあるのでありますが、問題は、政府の議論の中におきまして、この経済九原則及び賃金三原則に悖るからして、それで不可能だということで、政府自体がこれを考うべきではないというような議論もあるようでありますが、この裁定書の方では国鉄法の三十九條及び四十四條の規定の、事情によつて追加予算、或いは又借入金というものをすべきであるというような裁定内容にもなつておるのでありまするが、政府が申しまするような、これが賃金三原則に悖るものであるかどうかということに対する御意見を承りたいのであります。
  59. 末弘嚴太郎

    ○証人(末弘嚴太郎君) 三原則の問題、九原則の問題は十分に検討をいたしました。それでその点で如何にも給與に充てるために金を借りるというようなことがあると、形式的にはいわゆる賃金三原則に触れるがごとく見えるのであります。ところが一体あの三原則及び九原則が出ましてから以後、実際上民間の企業、従つてそれに対する金融界のやり方、それは裏に無論大蔵当局の統制があるわけでありますが、どういうことが行われておるかと申しますと、一体九原則というものは、いわば産業合理化をして、一本立ちに日本の経済をする。こういう要求であります。つきましては例えば国鉄の場合のように六分の一からの人の首を切る。それによつて大きな経営にゆとりが出て来る。そもそもこの費用を今年度の予算だけで拂つてしまへということそれ自身がすでに、普通の民間企業体の場合であつたならば無理なんであります。普通なかなか金を貸さない銀行が、首切りのためなら金を貸すというのが一般であることは御承知の通りであります。このために随分労働者は、銀行が金を貸さんからということのために、労働者は賃上げに苦しんでいることは御承知の通りであります。それにも拘わらず首切りなら貸そうということは、日本銀行の政策のようでもあります。それで先ず第一には、今年度だけで、あの予算に見込んだ整理の費用とそれに実際に拂つた費用との差額を今年度だけで始末をしてしまおうということがすでに無理なんであります。本来からというとこれは二、三年に繰延べて、その利益が毎月上つて来るのでありますから、その利益を二、三年に繰延べてやつて行くのが普通であります。それからそのために困るならば一時金を貸すというのが当り前である。ですから私共が具体的に申しておりますのは、例えば預金部のようなところから三十億程公社に貸して上げれば、これはもう簡單に今後の、先程お読みになりましたような部分の経営状態なんですから、簡單に返すことができる。で、これは九原則の運用として、今年の春以来一般に行われていることと完全に合つた方針であるので、これを單に給與に充てる金を借りるということは三原則に反するというような、そういう理屈は一般民間では通つておらないと思つております。
  60. 原虎一

    原虎一君 末弘博士に簡單にお伺いいたしたいのでありますが、裁定の理由の御説明の中にも、公労法三十五條によつて裁定当事者間を拘束するものであるから、非常に責任を感じて裁定をしたという趣旨のことが説明があるのであります。今国会において問題になつておりますのは、いわゆる十六條の但書であります。十六條関係であります。十六條関係に対して今までの御説明を伺つて見ますれば、当然政府裁定に基いて予算措置をして、国会承認を経べきものという御解釈の上に立つて責任を感ぜられて裁定されておるように窺えるのであります。今日のごとく政府予算上、不可能であるこういう裁定が出て、予算上、不可能な点だけを審議して呉れという形において国会審議するというようなものであるとお考えになつて裁定されたのでないと考えるのであります。この点を末弘先生から直接御説明を願つて置きたいと思うのであります。
  61. 末弘嚴太郎

    ○証人(末弘嚴太郎君) 私共の委員会では勿論あの四十五億の中の或る部分は、どうしても国会の御審議を経なければならない部分があるだろうということは考えております。而も先程も申しましたように、それは決して今まで、先日来衆議院の方で伺つてたようなああいうふうなお考えの下に、不可能だと考えておられることは非常に私共驚いておるのであります。つまり先ず第一に、この公社予算は、国の予算ではないのであります。国有鉄道法に、先ず第一に国の予算と共に提出しろというようなことが書いてありますので、公社予算なんであります。それで公社予算であるので、それに幾らかの金をこの際貸してやるというようなことを、あの公社の性質上、やはり国会承認を経なければならん。それで私共はこの間衆議院に御審議をお願いしましたのは、若しも本当に国の何らかの政策的見地から、この際、公社にあと幾らかの金を貸してやるというようなことを国会承認されると、国の財政政策なり、経済政策の上で非常に困るので、そういうことは不合理でできないのだというようなことを政府としてはもつと親切に説明して頂きたいということを申したのであります。と申しますのは、何分にもこの五十万の労働組合の人は、あれだけの裁定が出て、そうして実際可能な部分は直ぐ拂われるが、あとは国会承認によつて拂われるというならば、私は予算という形で提出するかしないか、そういう形式論は別にして、もつと国会の方が、国鉄の五十万の組合員及び一般の国民が、成る程これはこの際これ以上の予算措置を付けてやるのは不可能だということが納得できるだけの親切な説明をして頂きたい。然るに今まで全くその説明がされておらない。これでは公労法で、お前らは争議はしないでその代りにいざとなつたら仲裁で片付けろということで、争議権という非常に大事な権利、非常に大事な権利だということは、少し労働組合のことに御関係なつた方、労働者側だけでなく、労働者をお使いになつた方も皆お分りになつておるのですが、あの争議権のない団体交渉権というものは、実に何にもならないものなのでありまして、それで争議を……争議権というものはやたらに争議をやる権利ではないが、いざとなればやれる権利があるということで団体交渉がうまく行くが、その団体交渉が、争議権が法律によつて奪われておるから、どうしてもうまく行きませんから、どうしても最後は仲裁です。そこでこれは仲裁に対して承認を與えられないというのは、国会のお決めになることなので、国会としては余程政府からその点についての、なぜこの残りの部分についてあれを與えられないか、政府としてはどうも承認されては困るかということについて具体的の説明政府が出され、それを国会は十分御審議をして、どうか組合員及び天下の一般の人間が分るようにして頂きたいということを、委員会として初めから希望しておるわけであります。それで裁定書に非常に厖大な説明をしましたのもそのつもりであるわけであります。
  62. 原虎一

    原虎一君 末弘先生にはお伺いする点もありませんが、他の方にありませんければ、続いて労働大臣説明を伺いたいと思います。
  63. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) ちよつとお諮りいたします。もう十二時もかれこれ半に近付きますので、この程度で休憩をいたしまして、二時頃から再開をするということにいたしましたら如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) さように決定いたします。    午後零時二十一分休憩    —————・—————    午後二時四十四分開会
  65. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは休憩前に引続きましてこれより委員会を開会いたします。午前に引続き質疑を続行いたしたいと存じます。
  66. 原虎一

    原虎一君 午前に引続くのですと、私は午前に労働大臣質問を残して、労働大臣質問をすることにして休憩になつておりますが、労働大臣はまだ出席してないようですが。
  67. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 労働大臣は院内におりますがおり場所が分りませんが、もう少ししたら見えられると思います。
  68. 原虎一

    原虎一君 そういたしますと運輸大臣が見えておりますからお伺いいたしますが、本会議で本案の提案理由の説明を願つておるのでありますが、又ここに文書にされて出ておりますが、これで間違いありませんか。
  69. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 原君の御質問、間違いありません。
  70. 原虎一

    原虎一君 そういたしますと、常にこの審議の対象が問題になつておるのでありますが、審議の対象は何でありますか、と申しますのは、提案理由書の理由の説明の二行目から三行目にかけて「裁定を、国会に上程致しますまでの経過その他につきまして、」とこうなつております。裁定国会に上程されたのか。それから最後の方におきまして、最後の四行目の終りから「裁定国会に上程致し国会の御審議を願う次第であります。」そうするとこの文章の上から行きますれば、裁定そのものを審議せよと言われるのでありますが、裁定の中の一部、予算上、資金上、不可能な点を審議せよというのか、その点を明らかにして頂きたいと思います。
  71. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) これは終局の目的は、四十五億円から十五億五百万円を引いた残余の金額に対して御審議つておるので、裁定委員会が出しました一、二、三、四項のうち第二項に該当する分以外は、国会裁定の対象ではないという趣旨であります。
  72. 原虎一

    原虎一君 そういたしますと、この公企労法の三十五條と十六條の関係について、運輸大臣の御見解を明確に御答弁願いたいと思います。
  73. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 裁定が下されましたときには、三十五條規定によりまして、この当事者双方は直ちに拘束を生ずるのでありまするが、その場合におきましいいわゆる十六條の規定がものを言うのでありまして、予算上、資金上、どうしても支出不可能であるという面に対しましては、これが国会審議を経なければ効力が生じない、債権債務が生じない、こういうことに相成ります。
  74. 原虎一

    原虎一君 予算上、資金上、政府が、要するに公社が履行困難な場合におきまする部分を、国会審議を経るということになりますれば、予算上、資金上、困難なという状態を明確に御説明願わなければならん、先程も本調停を、仲裁委員長でありますところの末弘嚴太郎博士は、政府予算上、措置が困難であるという問題を、当事者は勿論、国民全体が納得のできるところの説明がなければならないと言われましたが、これはこの資料と、我々が予算上、資金上、困難であるという部分審議する対 は僅かしかありません。一枚の紙程度であります。この点を十分に御説明を願いたいと思います。
  75. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 予算上、資金上、可能であるか不可能であるかということを決定をいたしまする第一次的の責任者は国鉄の経営者、国鉄総裁でありまして、その総裁の具申によりまして提出されたものを、第二次的に政府がこれを検討いたします。末弘君の所論を原君は引用なさいましたが、これを広く国民が納得するものでなければならんということは、広義におきましては、そういうようなことは、如何なることにも国民の納得の行かない政治というようなものはあり得ないのでありまするが、狹義に、いわゆる法律的に解釈いたしまするというと、末弘君と私は全然見解を異にしまして、さようなことはいわゆる純法律論としては不必要であると考えております。
  76. 原虎一

    原虎一君 国民が納得するかせんかということは第二といたしましても、我々議員が審議をする対象がなくちやいかん。いわゆる裁定そのものの可否を審議するのでありますならば、我々は裁定に基いて審議しますが、予算上、不可能の部分を、ただ十五億五百万円を除く外の部分に対して、予算上、資金上、不可能ということになりますれば、不可能であるかどうかということを我々に審議せよと言われる、その審議を求めておる以上は、政府は不可能であるという建前でこれを提出されているということは明らかであります。その不可能なる理由を明らかにされなければならないと思うわけでありますが。
  77. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 要するに四十五億マイナス十五億の点は、予算上、資金上、不可能であるという断定を下して国会に提出したのであります。それを政府としては、さように表現をしておるのでありますが、若し原君において、御要求があるならば、国鉄の総裁が、政府に提出いたしました原案は、予算上、資金上、十八億は可能である、その以上は不可能である、こういうのでありまするが、それを政府裁定いたしまして、十五億五百万円の範囲に限局いたしまして、それだけはできると認めて、その点は政府が下しましたのですから、その書面を御提出申上げてもよいと思います。
  78. 原虎一

    原虎一君 私の言うのは、勿論今運輸大臣が言われる国鉄公社は、十八億円は国鉄公社の経済、財政の範囲でなし得るということを運輸大臣に申請して来ておる。それを運輸大臣は十五億五百万円に削つた。この問題についても我々は十分に審議したいと思うのでありますが、それは先ず第二といたしまして、いわゆる四十五億円マイナス十五億五百万円、その残余のものに対して、なぜ予算上、資金上、不可能であるかということを審議する、不可能であるという我々に納得できる説明がない。この点をお伺いしておるのであります。
  79. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) これを概括的に申上げまするというと、国鉄の予算は、非常に切り詰められておるようでありまして、先に第五国会におきまして、諸君にこの運賃の値上の法案を御審議願いまして、それで漸くカバーができるというところに相成つておるのであります。今回のこの裁定の給與の増支出に対しましても、勿論本来から言いまするならば、給與という直接の項目においては一厘の余剩金もないのでありまするが、併しながら従業員の生活の困窮の実体に鑑みまして、裁定の四十五億全部が若し捻出できれば結構でありまするが、予算の流用、移用というような事柄を、各この国鉄、現在の予算のあらゆる人件費、物件費全面的に亘りまして検討いたしました結果、最初は国鉄総裁は、十八億はその中から流用によりまして捻出が可能であるという意見でありまして、運輸大臣最初におきましては十八億を可能であると信じまして、その後百方あらゆる角度から検討いたしました結果、三億を減じまして十五億五百万円以上は到底捻出ができないということになりましたので、要するに国鉄の全面的な総予算検討いたしまして、さような結論が出て参つたわけであります。
  80. 原虎一

    原虎一君 国鉄の経済の中から出ないという理由の大まかな点は、今御説明ある通りでありますが、併しながらもともと調停、仲裁によつて国鉄公社が支出を必要とする場合においては、予算がある筈はないのであります。従つて予算の措置は、公共企業体としてなすべき責任と、その責任を前提に調停委員会ができておる或いは仲裁委員会ができておるという解釈考え方予算がないのを骨を折つてつたということは、これはその中の仲裁の三分の一だとか四分の一だとか、零からそれだけ作り出したということが、何も誉れになるのでなければ、努力したということには私はならんと思います。全額を支出すべき義務が生じておるのでありまするから、全額を支出するための努力が本当の努力であります。もともと予算がない中から十五億円、十八億円を出したのだから、これが努力だと言えば努力かもしれませんが、予算がもともとないのは当然であります。そこでやはり大蔵大臣との関係において、国鉄公社と国との予算関係において処理して行かなければならんという問題が生じて来るのであります。それについて、一体運輸大臣はどういう努力をされ、どういう経過を経られたか、この経過、提案理由の説明書の中には、前半は全く問題がない、経過の報告であります。今申します点を、即ち大蔵大臣との関係において、国鉄公社予算上、資金上、困難の点を、協力を求めて来ておるこの点について如何ように努力なされたか。国鉄経済内部におけるところの今の御説明はまだ私は了解するに至りませんけれども、それはそれにいたしまして、国との経済と国鉄公社との関係における努力はどうなされておるか、この点をお伺いいたします。
  81. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 大体が、これは国との交渉という点になりますると二つあるかと思います。一つ只今つておる……広義に言いまするならばこの二つが一つになりまするが、狭義に言いまするというと、予算的に、いわゆる予算というものがないから国会にこれを審議してイエス、ノーを決めて呉れという行き方と、借入金という形において国鉄が借入をするという形、いわゆる広義と狭義の借入金と二つあるのでありまするが、この借入金をいたしますにつきましても、国鉄の規則によりましては、民間の会社のように勝手に借入金ができません。政府の免許がなければいけませんし、又予算面におきましては、国の、国会承認がなければならんということでございまして、国の大蔵大臣といたしましては、国鉄の経理を、さような方法で何か便法があるか、国の経済から、国家の予算から国鉄の方へ更に転入でもするかというような事柄を協議いたしましたが、これはいわゆるドツジ予算で、而も国の本来の予算はドツジの線に沿いました、原君御承知の、きびしい緊縮均衡予算でありまして、国鉄は言うまでもなくここに非常に大きな独立採算制という枠を嵌められておるというような事柄で、国鉄の総裁が、自分で賄い得る以外の点を政府、大蔵大臣と如何ように交渉したかという点は、そういう意味におきまして十分に何らかの方法があるかという点につきまして大蔵大臣と交渉いたしましたが、何らの方法がない、そうして結論は、いわゆる自分で総裁が料理し得る以外のものは、この十六條の規定によつて国会に提出して、これの承認を求める以外に方法がなかつたということを原さんにお答えいたす次第であります。
  82. 原虎一

    原虎一君 御説明は了とすることが残念ながらできませんが、もつと私は根本の問題があると思いますので、その方へ移りたいと思います。  公企労法の十六條に対する解釈、簡單に申しますれば、予算上、資金上不可法な資金の支出を内容のものは政府拘束するものではない。又国会によつて所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いて如何なる賃金と雖も支出してはならない。この第二項におきまして、「前項の協定をなしたときは、政府は、その締結後十日以内に、これを国会に付議して、その承認を求めなければならない。」この国会に付議するという問題が参議院におきまする運営委員会におきましても問題になりました。政府裁定義務を履行するために、即ち公企労法三十五條に基いて義務付けられたところの義務を遂行するために当然必要な予算を組んで、その承認国会に求めるというこの解釈、この解釈政府は、殊に運輸相は間違だとしておる。この点についての運輸大臣の見解を御説明願いたい。
  83. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 国鉄の経営者から政府に送達されましたときには、加賀山総裁は政府に対しまして予算を付けて参つたのであります。これを政府検討いたしました結果、御承知の十五億五百万円を差引いた残余に対しては支出が不可能、十五億五百万円は支出が可能だということに結論が出まして、政府はその予算を付せずして、その説明を付して国会に提出いたしましたので、政府予算を付す付さないは政府の自由裁量であると考えておる次第であります。
  84. 原虎一

    原虎一君 予算を付する付さないは政府の自由裁量である、付することもよし、付さないでもよい、こういう法の解釈は、公企労法が実施された当初からの見解であるかどうか。
  85. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 私はさように信じております。
  86. 原虎一

    原虎一君 次は労働大臣にお伺いいたしますが、今運輸大臣の御答弁は、そのまま労働大臣は御承認であるかどうか。
  87. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 結論におきましては、運輸大臣と私との意見が変つておるわけはありませんが、この際にもう一度私共の見解を申上げますれば、十六條で以てこれを云々つておるのは、裁定案の中の不可能な部分という意味である。だから法律的にこれを言いますれば、裁定案の中の不可能な部分を付することに、その手続きでよろしいのでありますが、一方その承認をという意味は、承認又は不承認と、両方を含むものであると解しております。従つて承認すべきか承認すべからざるかということを国会審議せられるに当りましては、その審議の根拠となり得るような十分な予算的の説明も申上げ、そうして承認の場合におきましても、不承認の場合におきましても、これは午前中末弘さんの御意見にもありましたが、国会にも納得し、国民にも、関係者にも納得して貰えるだけの十分の説明はすべきであるという意味のことを言つておられましたが、その部分に関する限りは、私も全然同一でございます。ただ形の上の予算を付けるか付けないかという問題になりますというと、公労法に言つておりますのは、裁定の不可能なその部分国会に提出いたして審議を抑ぐという意味政府は解しておるのであります。私共もそう解しております。予算云々の問題は繰返して申しますと、どしどしと政府に対して掘り下げて質問をして頂きたいのでありまするし、政府はその質問に誠意を以て予算内容をも御説明申上げ、皆様が承認不承認の判定を下されるだけの資料を提出すべきものであると、そういうふうに考えております。
  88. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 只今衆議院の方から運輸大臣質問がありますので、至急に出と貰いたいという督促が参つたのでありますが、暫く御退席になりますから、一つ御承知願います。
  89. 原虎一

    原虎一君 ちよつとお待ち願いたいが、運輸大臣にお伺いして置きますが、今の労働大臣の答弁と食い違う点が各委員もお分りだと思います。この点は速記によつて明らかに願いたいと思いますが、運輸大臣はそれに対して何か弁明される御意思がありますか。
  90. 大屋晋三

    国務大臣(大屋晋三君) 今の鈴木君の答弁と私の答弁は何ら食い違いありません。ただ鈴木君はこういうことを言つたように私は拜聽しました。予算を付ける付けないは、運輸大臣と同様に自由裁量で、国会審議なさるときに、いわゆるどういうわけでこういうふうになつたかという経路、即ち予算的な内容に対して十二分に政府がこれを御説明申上げます。こういうことを労働大臣が答弁されたと私は伺いました。
  91. 原虎一

    原虎一君 これは重ねて申しますが、労働大臣も同様に、法律が実施された当時からの解釈に間違いありませんか。
  92. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) この点に対しましては、当時殆んど質問もなかつたのでありまするが、大体においてそういう解釈を取つて参りました。
  93. 原虎一

    原虎一君 私は運輸大臣がおられなくてもよろしうございます。私の質問の範囲内におきましてはよろしうございます。  労働大臣にお伺いいたしまするが、そういたしますと、あなたの経営されておる労働省に、あなたと全然逆な解釈をして、法律解釈をして、それを基にして社会に出す、労働組合は勿論、全国民はこれによつて初めて生れた公企労法を解釈をいたして、今日まで労働組合拘束された、資本家も拘束された、国鉄公社拘束されたと思います。そういう事実が生じましたならば、あなたは如何なる責任をお取りになるか。私はここに一つの、これは労働省労政局長賀來才二郎君が著者として本年の九月一日に発行されたものであります。その中の八十八頁であります。即ちこれは、本の題名を申しますというと、新訂公共企業体労働関係法の詳解、附施行法及び施行令、発行は十一組出版部刊行、著者としては今申しますように賀來労政局長として出版されております。この中で八十八頁に即ち第十六條の解釈を次のごとく説明しておるのであります。その前に十六條の解釈をいろいろと説明しておりまするが、時間の関係上省略いたしまするが、即ち十六條の中にありますところの「「所定の行為」とは、国会における予算の可決又は予算に定められた借入金の限度の引上げの承認である。即ち協定履行に必要な国会の行為をいう、」そうして第二項の衛旨目的を説明しております。一応読みまするが、「本項は第一項に該当する協定が締結されたときの政府の行わねばならな義務規定している。第一項においてかかる協定政府拘束されないことを明らかにしているが、併しながらかかる協定について一定の行為が取られて公共企業体の労働関係を安定せしめることは望ましいので、政府が一定の行為をなすべき義務を課している。併しこれは協定により拘束されるのでなく、本項により一定の義務が課せられることになつている。即ち第一項の協定が締結されたときは、その協定を締結後十日以内に国会に付議し、その承認を求めなければならない。この際單に協定承認を求めるのみにては、協定履行は不可能であるから当然予算の改訂案が併せて承認されることになる。」こう言つているのであります。もう一遍読みます。「この際單に協定承認を求めるのみにては、協定履行は不可能であるから当然予算の改訂案が併せて承認されることになる。即ち本項は、協定国会の議に付するのは、協定そのものの成立を国会承認にかからしめているのでなく、協定公共企業体職員又はその組合が締結したときに成立するが、第一項に該当するときはその協定効力国会承認により発生する趣旨である。但し国会が閉会中であるときは、国会が召集されて五日以内に政府はこの協定とこれに伴う所要の予算案等を国会に提出してその承認を求めなければならぬ。かくして国会に提出された協定と、これに伴う予算案が国会により承認されたときは、協定効力発生を規定した日附に遡つて効力を発生せしめることができる。併し国会承認は必ず協定効力発生の日附に遡らなければならぬものでない。」  次に「解釈」といたしまして、「本項において国会協定及びそれに伴う予算案を提出する責任は政府に課せられた義務である。」ここが問題であります。「本項において国会協定及びそれに伴う予算案を提出する責任は政府に課せられた義務であるが、日本国有鉄道法第三十八條」……「の規定により予算案の作成権は、それぞれ日本国有鉄道」……「にあるから政府が本項により義務を果す前提には公共企業体予算案の作成がなければならない。」これだけであります。これはどつちからどう解釈いたしましても、即ち予算上不可能な問題は予算化して国会に提出するところの義務があるということを明かにいたしております。政府と全く対称的な解釈をしているところの法律解釈の本を、而もこの公企労法を制定いたしますときの委員会に、国会委員会には政府委員として責任ある答弁に終始出られた賀來才二郎君であります。その当時は現在の官房長官増田君が労働大臣をされておつたのでありますが、あなたは御存じない筈であります。にも拘わらず労働省が法制定当時から、今運輸大臣並びに鈴木労働大臣は法制定当時からこういう解釈である。然らばこういう本が本年の九月から出版されている。労働大臣はこれを御覽になつていないのですか。その責任は誰が負うのでありますか。それから明らかにして頂くことによつて私はこの法律の審議を進めたいと思います。
  94. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 仮に現在まで私達が説明して来た解釈と食違いの点が多少あつたといたしましたならば、これは勿論責任の衝にある私の持つておる解釈政府の決定的解釈であることは勿論でございます。それから賀來君の市販の書物についての御意見がありましたが、非常に長い部分でありますし、幸い賀來君が来ておりますからして、賀來君の考え方を先ず聞いて頂きたいと思うのであります。
  95. 原虎一

    原虎一君 それはおかしいと思う。賀來君の考え方がどうあるかは私は問題としておりません。労働大臣の所管にあるところの労政局長が、法制定当時から全然趣旨の違うものを本にして出していることに対して労働大臣は如何なる責任をおとりになるかを追及しているのです。賀來君の解釈如何を私は問題にしておるのではありません。法制定当時から運輸大臣労働大臣も一致した政府解釈として法制定当時から間違いない。併しながら賀來君は労政局長として違う解釈、今申しました違う解釈を出版しているのであります。賀來君の考え方はここに明らかに本として出ているので、賀來君から聞く必要はありません。賀來君の弁明を聞くならば、それは私共が要求するか、然るべき手続きを取つてなさるべきである。労働大臣がこういう本を出しているのに対して、そのままやり過しておつたとう責任は誰が負うか、国民を惑わすも甚しいものではないか、その責任を私はお聞きするのであります。
  96. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 賀來君の書物は市販の書物であつて、法律的にそう嚴重な意味を持つたものでなく一般に分り易い意味で書いたと思います。この法権的な解釈といたしましては、賀來君の解釈政府解釈とするやり方で発表をいたしたこともありませんし、終始政府政府としての見解を持つてつたものでございます。
  97. 原虎一

    原虎一君 労働大臣の答弁は余りにも詭弁であります。賀來君が一賀來として、労働省の労政局長の名を掲げず、一賀來才二郎として出した本とは違います。労働省労政局長として賀來君が出している、一個人の賀來君ではない、この解釈がどの程度労働組合員、国民に影響を與えるかということは、あなたが十分に想像できる筈です。政府と全く相反する解釈と申してもよろしい法解釈をいたしている。この本は労働省が全然関知しないと誰が思いましようか。これは皆さんにお見せしてもよろしい、持つている方も多多あります。この解釈によつて国鉄労働組合は今日まで活動して来ている。私は賀來君の解釈のいい惡いを申すのではありません。併しながら先程もお伺いいたしましたように、法制定当時から今日政府解釈しているところの解釈と何ら相違がないということを御存じのあなたが、全然違う解釈の本を出しているのに何らの措置をされてない、それは一個人がやつた仕事であるから知らんであなたは済むか、この本の影響はどのくらい大きいか分りません。法の解釈を、私は賀來君の解釈がいい惡いを言つているのではありません。政府解釈と全然違う解釈をしている本を出している事実を御存じないということを、私は労働大臣の責任がいずこにあるか、今度の公企労法に基くところの調停仲裁は初めてでありまして、労働組合が民主的に合法的に法を信じて今日まで来た。一学究が愛いたというならばとにかく、労政局長の名において書かれた本であります。それを一個人がやつたことですから、そんなことは政府の関するものではないと、それで通るというお考えでありますか。私はそれでは政府の責任というものが、公務員の責任というものが果せると誰が、国民が安心しましよう。十不にこの本を読んで頂いてそうして御判断願いたい。私が申しますように十六條に関する限りにおきましては、明確にこの賀來君の本は政府の責任において予算を出すことは責任であり、義務であるということを明らかに言つている。それとなくして調停の履行はできないということを労政局長賀來才二郎として出版しているのであります。
  98. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 政府解釈自体におきましては、しばしば繰返して申しました通り解釈であるということをもう一度お答えいたします。又賀來君のことは、政府の有権的の解釈ではないということもさつき申上げた通りでございます。ただ本その他についての措置等が、尚研究いたしましてありますならば、それは適宜処置いたしますが、政府解釈自体は終始今日まで御説明申上げました通り解釈をとつております。
  99. 原虎一

    原虎一君 私は政府解釈が賀來君と違うから怪しからんと言つているのではない。政府解釈は飽くまで正しいとあなたは考える。而も法制定当時からそう解釈されているとあなたは言明されている。にも拘らず本年の九月一日に発行され、而も書かれたのは六月であります。労働大臣としてこういう本が出ていることを個人が書いたものだからといつて責任がないとされる。まだ十分に私が読んだだけでは分らないかも知れない。十分にこれを御覧になれば分る。飽くまで予算措置をすることが政府義務として書かれている。それ以外にはないとしている。そういう解釈もあるが、又予算措置をしなくてもいいという解釈ができるということはどこにもありません。そうするとこれが政府義務だ、こう考えている。労働省の労政局長として出した本でありますから、皆これを信じて労働組合は今日まで来たのであります。恐らく……。その責任をあなたは感じないのであるか、労働大臣として一向に感じないのであるか。そういうことは問題にせずに政府解釈によつてどんどん審議を進めろとおつしやるのか。そんな審議ならすることはできない。政治はやはり責任があります。法律解釈のみではありません。政治はやはり道徳の上に立たなければならないのであります。政府の言うこととやることがまちまちであつて、国民がどうして遵法の念を厚くすることができましよう。そういう無責任な政治が行われているところに国会審議が遅れるゆえんがあるのであります。私は総理大臣出席なくしてこの問題は解決しないと思いますから、総理大臣出席を昨日から要求いたしております。総理大臣出席されるまで審議を中止されることを要求いたします。
  100. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 外に御質疑がありまする方は御発言を願いたいと思います。
  101. 平野善治郎

    平野善治郎君 労働大臣にお伺いしたいのでありまするが、そういたしますと、我々は公共企業体関係法を審議する際には、実は只今原委員から加來政府委員の書物に書かれたような趣旨で審議したと記憶しております。詳しいことは速記録に讓ります。併し労働大臣只今のようなことが政府の意図であり、法の意図であるというならば公企法をもつと分り易く、つまり最初から明瞭にして置いた方がいいと思いますが、将来ともそういう改正を行われる意思がおありですかどうか、この点を一つお聞きしたいと思います。
  102. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 大体論といたしましては、公企法に限らず労働関係の法律というものはそうしばしばいじるものでないという考えを一般論として持つております。お尋ねのこの法律の点につきましては、成る程文字の上では完璧な形を取つておらないように思える点がこの章だけでなくして外にもあるように思います。これらの点につきましてどういうふうな措置を将来取るかという問題は、事最も愼重に臨まなければならない労働関係の法律の問題でございますので、そういうことを今回の審議を通し、又以前からもこの法律については感じてはおりますけれども、只今のところどの方向でどのような改訂というようなところまでは申述べられませんが、そういう場合には審議会なり何なり、民主的な形で以てやるべきことであるから、今のところそういつたところは具体的な考えを持つておりません。
  103. 平野善治郎

    平野善治郎君 もう一点労働大臣の御意見を伺いたいと思いますが、労働組合の諸君は恐らく仲裁を以て最後の解決であり、それが公社を絶対的に、公社も自分も縛られておる。そこに公社に対して債権、債務が生じまして、自分達の争議の最終決定で、争議に代るべきところの要求が具現されるものと信じておると思います。併し今回の措置によつて政府の見解によれば、こういう場合においてどうしても平和的に仲裁を受けても、一方の公社の方は国の予算上或いは資金上においては何ら履行しなくてもいいという現実的な問題が起きて来ますというと、非常にこの公共労働組合の諸君の立場になつて見ますと、この法に対して信頼を薄めると思う。又その結果非常にそういう公共企業体労働組合員諸君が自分達の立場に不安を感じまして、それが企業の運営に惡影響を及ぼすと私は考えるのでありまするが、労働大臣は如何にお考えになつておりますか。
  104. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 三十五條及び十六條の両方を睨合せて読みまするというと、裁定は三十五條において最終的なものとして両当事者拘束するが、十六條の場合にはこれこれということになつておりまして、不可能なる部分を伴う点につきましては、その承認は挙げて国会審議に俟つべきものであるとなつておるわけでございます。従つて三十五條に示すように、裁定が行われた場合にすべてそれは国会審議も何も俟つまでもなく全部ができ上るものである。国会は必ずそれに承認を與えるものであるというまでの解釈は拡大し過ぎておる解釈で、そこには国会自体の審議の立場というものが残されて来ると考えております。私自身の心情といたしましては、国鉄の何も何々派の組合がどうこうなどという意味ではなくして、国鉄の従業員諸君の最近の働いておる点、それからいろいろな点をも考慮いたしまして、でき得る限り可能なる部分、それは今回は十五各何百万円がでありましたが、これを多くしてやるべきであるという考え方においては終始して来た次第でございます。それが可能なる部分予算の範囲内、その他流用等をも含めて今回はあれだけきりできなかつたというその内容につきましては、私も無論労働大臣として、大蔵大臣、運輸大臣等から聞いておりまするけれども、その内容の点につきましては、尚皆様の審議を進めるに当つて運輸大臣、大蔵大臣からよく聽取して頂きたいと存じます。私といたしましては、そういうわけで以て仮に十五億以外のものは出せないということになりましても、午前中も審議の中にありましたように、他の條項は生きておるのでございまして、国会審議を俟つまでもなく、あの四つかの中の他の裁定の條項は生きておるのでございまして、国鉄の今後の経営両当事者努力によつて生まれて来るところの国鉄の余力というものにつきましては、運輸大臣もそう言つておるのでありまするけれども、この裁定の可能、不可能というような問題が又生まれて来る場合を予想いたしまして、十分の考慮を拂いたいとこう言つておるのでございますからして、そこに新たなる国鉄の経営の行くべき道というものを開拓して、そうしていろいろな方面から国鉄の給與というものを充実して、賃金のベース自体につきましては、ドツジ・ラインその他のいろいろな関係もございますけれども、実質的に給與を充実して行くという点につきましては、渾身努力を拂うべきものだと考えておりますし、その方向の中に将来に亘つての問題を真に解決して行く道が残されておると考えております。
  105. 平野善治郎

    平野善治郎君 ちよつと私の質問の仕方が惡いのか、御答弁が私の尋ねることと聊か違つておりますが、私は、現実問題について裁定があのように行われない場合において、公共企業体の労働諸君は非常にこの法に対して不安を持ち、不審を持つ。尚自分達の合法的な今までの組合のあり方に対して違つたような傾向を持つ懸念が私はあるとこう懸念するものであります。その点につきまして労働大臣はどういう御見解を表されるかということを主といてお伺いしたのであります。
  106. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 裁定自体が三十五條で一応拘束いたしますけれども、どうしても予算上、資金上不可能な部分につきましては、その裁定承認されないということがあり得ることは、法も明らかにこれを示しておるのでございまして、十分の国会における論議も承る。そうして意を盡くした審議の後に、この部分はどうしても行えないという結論に到達いたしました際には、国鉄の方達もその法が蹂躪されてしまつたというふうには考えられないで行き得ると考えております。常に出たものは国会もその全部を承認すべきものだというふうには法は出ておらないのであります。予算資金上不可能なる部分につきましては、国会審議に俟つということになつておるのでございまするからして、決して法を蹂躪したとか、或いは法の精神を沒却したとかという結果にはならないと考えております。併しこれは法律の理論でございまして、心情といたしましては、私としては只今も申しましたように、あらゆる方面からの給與の充実、而も国鉄は明らかに公務員とは違う独立の採算制の上に立つたところの一つの企業体でございますからして、その面における特異の立場というものは存在することと考えております。
  107. 松井道夫

    ○松井道夫君 問題となつております裁定は、これは憲法に規定された基本的人権に代るべきものとして置かれておるのでありますが、その存重すべきことは、これは政府も同意見であることは申すまでもないと思うのであります。ところで資金予算上支出可能の分についてはこれは当然効力を生じておりますので、その額が如何なる額であるかということを定めまするのに、政府当局並びに国鉄当局におきまして相当の努力をなされたということも、これは認められると存じておるのでありまするが、この裁定を尊重して成るべくその線に沿いたいと言います以上は、確定している支出可能の部分、これは当然なんでありまするから、これに従うということは法律に従うことで、何ら特別の尊重の精神がなくても当然のことである。苟くも存重するという以上は、資金上、予算上実施することができない分、即ち本日ここに議題となつている部分についてその全部乃至一部を認めてやる、何らかの方法を講じて認めてやるというところに尊重するゆえんのものがあるのじやないかと私存ずるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)勿論これを承認するかどうかということは一に国会議決によることでありまして、政府としては何らの権限をそこに持つていないのであります。併しながら国会は金を持つているわけじやない。国会がその裁定を尊重いたしまして、その全部又は一部を承認いたしたという場合は、この裁定を尊重するについて人後に落ちないところの、政府は如何なるこの資金の支出について努力をする御意図があるか。或いは具体的に国会承認したら、こういう方法で一つ是非やつて行きたいというふうな計画があるか。その点をお伺いしたいと思います。
  108. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 松井さんの只今の御質問、極めて明瞭に條理を盡くした御質問でございまして、ただ十五億何百万円かは尊重したことじやないのじやないか、これはまあお言葉尻に反対するわけじやありませんけれども、尊重という意味は先ず最初の段階におきましては、可能なるものをできるだけ余計作り出すことにあつたわけでございまして、金額自体の問題じやない。十五億、あれが多いとか、十分だとか、そういう意味合は申しませんけれども、それを作るまでの間の政府の血の出るような苦心は(「何だそんなこと」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)やはり一部にあつたと思います。それから御質問の点は、そんなところにあるのではなくて、残りの点を可決したならば、全部にしろ、或る部分にしろ、承認ということに国会が可決したならば、政府はどうするのだと、こういう点にあつたと思います。そういう場合には、私自身の考えといたしましては、政府はそこに如何なる困難をも越えて予算的な措置をする政治的の立場というもの、責任と言いまするか、立場というものに立つて来る。そういうふうに考えます。
  109. 松井道夫

    ○松井道夫君 只今労働大臣から力強い御答弁がありまして頗る喜びに堪えないのでありますが、その点に関連しまして、この法律の点についてお尋ねしたいと思うのであります。この第十六條の第一項に「公共企業体予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府拘束するものではない。」こう規定があります。その後いろいろ規定をしておるわけでありますが、ところで政府拘束するものでないという意味についてお尋ねしたいのでありまするが、これは未だ国会承認がない状態のことについて規定しておるのか、或いは国会承認があつても、政府はその裁定実現の責任を負うものでないということを言うたのか、その点をお尋ねしたいのであります。私初めは裁定承認された場合には政府を或る意味拘束いたしまして、少くとも政治的責任を帶びてこの裁定実現に協力しなければならない。さような意味に相成るものと解しておつたのでありまするが、又いろいろ意見を持つておられる方もあるようでありまするから、聞いて置きたいと思うのであります。裁定承認された場合には、政府はこの十六條第一項の規定の反面解釈によつて、何らかの裁定実現のための責任を負うものであるかどうかという点をお尋ねいたします。
  110. 鈴木正文

    国務大臣鈴木正文君) 国会承認が行われますれば承認後に、この十六條のしまいにあります通り裁定の日附に遡つて効力を生ずる、そう解しております。
  111. 松井道夫

    ○松井道夫君 裁定は御承知の通り国鉄とそれから組合、これが当事者でありまして、日附に遡つて効力を生ずるのでありまするから、その日附において公社に対して拘束力を持つ、これは当然なことであると思うのでありまするが、政府当事者じやないのでありますから、この最後の條文だけでは政府がどういう責任を負うかということは明らかでない。ところが第十六條には政府という文字が出て来ております。政府拘束云々という文字が出て来ておる。それで私はお尋ねするのであります。承認後は政府拘束して、政府はその裁定実現のために法律上どういう責任を負うことになるのか、その点をお尋ねしたい。
  112. 松崎芳

    説明員(松崎芳君) 現在公社政府との財政関係というものが、国鉄法におきまして、一般の財政法、会計法の例に準ずるということになつておりますので、公社政府というものは一応分けて考えられますが、予算面におきましては一体的に考えております。それで今も大臣から答弁がありましたように、第十六條の二項の末段におきまして、この協定国会承認いたしますと、目附に遡つて効力を生ずる、そこで政府は今の一体論から行きまして、公社にその協定を履行するための予算を與える責任を生じて来るというように解釈しております。
  113. 松井道夫

    ○松井道夫君 今の御答弁で非常にはつきりいたしましたが、そうすると、十六條一項の「政府」と書いてあるのは、政府と国鉄当局を一体的に見た意味政府だ、かようなことになると了解していいと思うのでありますが、又その後段ですか、又以後ですが、「いかなる資金といえども支出してはならない。」というこの支出してはならない主体も、やはり同一体の意味政府、さように解してよろしいのですか。
  114. 松崎芳

    説明員(松崎芳君) 十六條一項の後段におきましては、これは別にサプジエクトが書いてないのでありまして、政府公社もそういう不可能な資金を出してはいけないという趣旨であります。
  115. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 何か御質問はございませんか。
  116. 平野善治郎

    平野善治郎君 国鉄総裁は見えていますか。
  117. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) ちよつとお待ち下さい。暫らく休憩いたします。    午後三時四十九分休憩    —————・—————    午後四時二十七分開会
  118. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは休憩前に引続きまして開会いたします。
  119. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) あとで運輸大臣労働大臣から敷衍されることと思いまするが、政府といたしましては、先程賀來君の著書が問題になつたそうでございまして、この第八十九頁の二と書いてあります「解釈」、「本項において国会協定及びそれに伴う予算案を提出する責任は政府に課せられた義務である」、「それに伴う予算案で提出する責任は政府に課せられた義務である」、この点は政府は所見を全然異にいたしております。「協定」を「裁定」と読み替えますが、これを国体に提出する責任が政府に課せられた義務であるということは一〇〇%承認するのであります。
  120. 原虎一

    原虎一君 官房長官はどなたの質問にお答えになつたか知りませんが、私の先程鈴木労働大臣質問いたしました政府は法制定当時から今日に至るまで、いわゆる公企労法の第十六條と三十五條との関連の解釈は、法制定当時も今日もちつとも変つていないという御答弁であります。ところが御承知のように増田官房長官労働大臣をされている当時に公企労法は制定されたものであります。増田労働大臣も同様に解釈は今日政府解釈通りだと思うのであります。これはどうですか。その点をお聞きしたい。
  121. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) そう考えております。
  122. 原虎一

    原虎一君 そこで問題は、先程私は労働大臣政府として国民に如何なる責任を持たれるかというきとをお聞きいたしているのであります。この本は先程労働大臣は賀來君個人の意見の発表だから政府の関することじやない、高ういう御答弁であります。これは私は非常に怪しからんと思います。そういう賀來君が一個人として、労働省労政局長賀來才二郎著と書いていないとしたならば、まだそういう逃口上も或る程度承認できるかも知れませんけれども、労政局長が民主的健全なる労働組合を発達助長させる精神を持つて生まれた公企労法の、これを労政局長の方において解釈を與えて普及しているのであります。労働組合も国民もこの解釈に対して今日まで民主的な運営をして来たものが、政府が一朝にしてその解釈を違えて、全然違う反対な解釈をしておる。それで政府の責任は果せるのであるか、その点を私は鈴木労働大臣として、労働大臣所管の局長がこういうことをしているのだからお聞きしたのであります。併しこれは少くとも私は公務員の徳義上の問題であり、国民に奉仕する人間の責任の問題であります。従つてそういうものに対して総理大臣は如何なる処置をするかということをお伺いするために質問を留保いたして置きます。わざわざ御熱心に官房長官が又お見えになりまして、みずから御答弁を先んじてなさいましたから、重ねてお聞きするわけであります。
  123. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) この賀來君の著書の八十九頁の解釈でございますが、私は先程、政府は遺憾ながら、「それに伴う予算案で提出する責任は政府に課された義務である」という言葉に対して、所見を異にするということを申上げた次第であります。併しながらこれを、このことは先ず明確にいたして置きます。所見を異にしておるということ、但し賀來君がどういう意向でこれを書いたかということは、私も当時の労働大臣をしておつたというような立場から付度いたして見まするに、十六條一項によつて予算資金上不可能なる部分裁定政府拘束せず、全部が若し不可能であるならば、その裁定は全部拘束しないし、一部の裁定が不可能であるならば政府拘束いたしません。而してこの場合私は賀來君は、裁定のうち、一部が可能である、一部が不可能であるというような場合を恐らく予想したものではないかと思います。そうして一部が可能であるという場合は、今回は予算措置をせずして経理上の措置だけをいたしております。十五億五百万円を国会承認を経て、款項の流用でもないし、又建設勘定から損益勘定へ廻したわけでもございません。それから新らしい予算的措置を講じたものでもありません。客観的情勢その他の関係で不可能になつた次第でありますが、とにかくも国鉄予算の建前からいつて不可能であつたのでございまするが、十五億五百万円は経理上可能であるし、而も政府で処置することでありました。ところが将来いろいろな場合が私は予測できるのですが、例えば国鉄が沢山財産を持つておる。その財務が仮に処分した方がよろしいといつたような財産である。而も損益勘定や建設勘定に何ら影響を與えないというような場合が想定できないわけでもないのでございまして、そういう場合は、十五億五百万円と仮に数がなつたとします。その予算的措置として出す財源は、国有財産のうち、当然売拂うべき部分が歳入に入り、そうして支出は十五億五百万円の歳出、こういうふうな予算措置を作つたならば、これは当然国会に出すべきものであるというような趣旨を言われたのじやないかと、こういうように考えておる次第でございます。
  124. 原虎一

    原虎一君 お聞きしますけれども、増田官房長官が今おいでになつてちよこつとあすこだけ、即ち八十九頁のしまいから四行目、五行目を読んで言われております。併い八十八頁から全部読みますれば、あなたの言うようなことは詭弁です。私は先程これを読んで皆さんに批判を願つておるのでありますが、改めてあなたに申上げることは時間の関係上遠慮したいと思います。あなたは十分、これを全部、十六條の解釈、即ち賀來君のこの詳解から言いますと、八十五頁の「資金の追加支出に対する国会承認の要件」と題しまして、第十六條、即ち「公共企業体予算上又は資金上」云々として法律を書いて、それから次の八十六頁、八十七頁、八十八頁、八十九頁に亘つて詳細に説明しておるのであります。それは決してあなたが言われるような、そんな不可能なときには云々というようなことで書いておるものではないということを言うのです。私は法律を專門に研究いたしておりませんけれども、そんなことで承諾できる解釈ではありません。もつと十分お読みになつて御答弁願いたい。この問題は非常に私は労働委員会に取りましても、労働委員長がどういう考えであるかも知りませんけれども、やはり政治は責任政治であります。それを吉田総理はやはり責任政治であるということを、先日の第六国会の終りにおいても吉田自由党総裁として声明されております。従つて私は総理の御出席を要求いたしております。政治は單に法律の解釈によつてどうこうで片付くものでなくて、況んや労働問題は尚更であります。責任政治が日本に行われておるかいないかということによつと、私は日本の講和問題も、日本の民主化の問題も測り知られるのであります。そういう点から考えますれば、かくのごとき詭弁によつて委員会が進行するということについては反対であります。時間もこういう時間になりました。五時前であります。政府は十分にこれを検討されて、政府は責任を感ずる必要がないものならば、ないという御答弁を願いたい。感ずるならば、感じてどうするというきとを答弁される。労働階級、国民を騙した本を局長が出したということになると、それで審議をするということは、そんな矛盾はありません。従つて本日は休憩されまして、そうして十分政府が協議した結果、そうして政府はこの問題について処理をされる。それの御答弁の上において審議するということを希望いたします。提案いたします。
  125. 増田甲子七

    国務大臣増田甲子七君) 重ねてお答えいたしますが、先ず第一に、この文書に対して、政府は後段に対しては所見を異にするということは、重ねて明確にいたして置きます。ただ併しながら、今私の例として申上げたような場合は、やはり裁定の中にも、末弘委員長が、予算上不可能であるというような部分については、政府はその不可能なる理由を国会において詳細に明示する必要があるというようなことも謳つてある次第でございますし、そういう意味において将来予算措置をとつて、そうして可能なる部分国会へ出す。それから不可能なる部分不承認に願いたい。承認になるか不承認になるか、とにかく議決を願うというわけで国会に出します。その適当な議決を願う際に、やはり資料としては当然不可能なるゆえんを、又この十五億五百万円を出し得るゆえんを詳細に説明しなければなりません。而して十五億五百万円の予算的措置という場合は、予算措置を当然出すべき責任がある。こういつた趣旨と解釈いたします。私これは賀來君の心持を付度をいたしますが、そういう意味から言えば、この言葉が足りないというところがあり、将来この著書を改める場合には、尚深切に文句を加える必要もあるかも知れませんが、この本そのものを、そういうような場合もあると思いますから、何も取消す必要はないと思います。
  126. 原虎一

    原虎一君 甚だ怪しからんと思います。他の方々はどういう御了解かも知れませんが、これは重大問題であります。これを官房長官のごとき答弁によつて我々が了解することはできません。従つて尚十分速記を見て検討いたしたい。従つて本日はこの速記が飜訳されるまで休憩せられんことを希望いたいます。
  127. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 如何でございますか。只今長官からも御説明があつたのですが、原委員からは、長官の答弁には満足しない。速記を見てから改めるという話がありますが、如何がいたしましようか。    〔「散会」「賛成」と呼ぶ者あり〕
  128. 内村清次

    ○内村清次君 今原君の方で休憩動議が出ておりますから、暫く休憩のお計らいを願いたい。
  129. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 休憩をいたしますか。速記を見てからというと、相当時間がかかると思いますが……。
  130. 内村清次

    ○内村清次君 その点は別に話します。
  131. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) 暫く休憩することはよろしうございます。成るべくもう少し合同委員会は休憩した後も続行して見たいと思います。それでよろしうございましようね。
  132. 中村正雄

    中村正雄君 今日時刻も遅いですから散会しまして、明朝十時から又お聞き願いたい。    〔「異議なし」「賛成」と呼ぶ者あり〕
  133. 中山壽彦

    委員長中山壽彦君) それでは皆さんも御同意のようでありますから、そういうことにいたします。本日はこれで散会をいたします。明日は午前十時から聞きます。    午後四時五十一分散会  出席者は左の通り。   運輸委員    委員長     中山 壽彦君    理事            飯田精太郎君    委員            内村 清次君            中村 正雄君            植竹 春彦君            大隅 憲二君            加藤常太郎君            入交 太藏君            高橋  啓君            小野  哲君            高田  寛君            村上 義一君            早川 愼一君            鈴木 清一君            千葉  信君   労働委員    委員長     山田 節男君    理事            平野善治郎君            波田野林一君    委員            原  虎一君            村尾 重雄君            平岡 市三君            堀  末治君            宿谷 榮一君            田村 文吉君            松井 道夫君   国務大臣    運 輸 大 臣 大屋 晋三君    労 働 大 臣 鈴木 正文君    国 務 大 臣 増田甲子七君   政府委員    運輸事務官    (大臣官房長) 荒木茂久二君    運輸事務官    (鉄道監督局国    有鉄道部長)  石井 昭正君    労働事務官    (労政局長)  賀來才二郎君   説明員    労働事務官    (労政局労働法    規課長)    松崎  芳君   証人    公共企業体仲裁    委員長     末弘嚴太郎君