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1950-02-08 第7回国会 衆議院 労働委員会人事委員会大蔵委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年二月八日(水曜日)     午後一時四十二分開議  出席委員   労働委員会    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 篠田 弘作君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 青野 武一君 理事 稻葉  修君    理事 春日 正一君 理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    小淵 光平君       金原 舜二君    佐藤 親弘君       塚原 俊郎君    小川 平二君       船越  弘君    松野 頼三君       前田 種男君    川崎 秀二君       柄澤登志子君    石田 一松君   人事委員会    理事 高橋 權六君 理事 藤枝 泉介君    理事 成田 知巳君 理事 中曽根康弘君    理事 土橋 一吉君 理事 逢澤  寛君       庄司 一郎君    柳澤 義男君   大蔵委員会    委員長 川野 芳滿君    理事 前尾繁三郎君 理事 河田 賢治君       鹿野 彦吉君    高間 松吉君       苫米地英俊君    西村 直己君       三宅 則義君    田中織之進君       竹村奈良一君    奧村又十郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       秋山孝之輔君         参  考  人         (全専売労働組         合中央執行委員         長)      平林  剛君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 堀木 鎌三君         労働委員会專門         員       濱口金一郎君         労働委員会專門         員       横大路俊一君         人事委員会專門         員       安倍 三郎君         人事委員会專門         員       中御門經民君         大蔵委員会專門         員       黒田 久太君         大蔵委員会專門         員       椎木 文也君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第二号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 私が本連合審査会委員長の職務を行いますから、どうぞよろしくお願いいたします。  これより労働委員会人事委員会大蔵委員会連合審査会を開会いたします。  本日は御多忙中にもかかわらず、特に御出席を願いました参考人各位に対しまして、厚く御礼を申し上げます。何とぞ隔意なき御意見の御開陳をお願いいたしたいと存じますから、よろしく御了承をお願いいたしたいのであります。  これより公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件、議決第二号につきまして、まず政府趣旨説明を求めます。池田大蔵大臣
  3. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいま議題となりました、公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定規定に基き、国会議決を求めるの件について、その提案理由説明いたします。  本件は、全專売労働組合が九月二十日、日本專売公社当局に対し、賃金月額十八歳六千円、十九歳六千七百円、以下逐次逓増して、四十一歳で一万七千九百五十円の年齢別最低保障給実施及びその支給と、越年資金一人一万円の支給等要求を提起したことに始まります。日本專売公社当局は、これに対しまして、公社財政現状その他諸般情勢考えれば、現在の段階では組合要求に応ずることができないと拒否いたしました。そこで組合は、十月三日この問題を專売公社中央調停委員会調停申請をいたしましたが、同委員会におきましては、両者間になお団体交渉の余地ありとして、その申請を受理しなかつたのであります。日本專売公社当局と全專売労働組合は、その後も団体交渉を重ねましたが、妥結に至りませんので、組合は十月二十日、公社は同月二十一日、それぞれこの問題を專売公社中央調停委員会調停申請をいたしました。同委員会はこれを受理し、十二月二日に賃金平均月額を、本年十月以降八千百三十八円に改訂すること、それが実現するまでの措置として、現行の生産報奨金制度を拡充して、総月額三千七百九十万円を全職員に増加支給すること、但し越年資金支給しないという調停案を示しました。この調停案に対しまして、組合側はこれを受諾いたしましたが、公社側は依然として、諸般事情からこれに応ずることはできないとしたのであります。そこで、十二月十四日專売公社中央調停委員会は、調停委員全員一致により、問題をさらに公共企業体仲裁委員会仲裁申請をいたしましたところ、同仲裁委員会は、同月二十八日に、ただいまお手元にありますような裁定を下した次第であります。  この裁定による一億二千八百三十万円の資金は、大蔵大臣承認を得て予算流用または移行を行わなければ、支出できないものであります。しかも諸般事情を考慮いたしますと、この際これを認めることはできませんので、同法第十六條第一項の「予算上、資金上不可能な支出内容とする」ものであり、同條第二項の規定に従いまして、国会に付議した次第であります。  以上をもちまして御説明を終ることにいたしますが、御審議の上、すみやかに国会の御意思の表明をお願いいたしたいと存ずる次第であります。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより本件に関して、関係各位意見を求めることといたします。まず日本專売公社総裁秋山孝之輔君の御説明を求めます。秋山君。
  5. 秋山孝之輔

    秋山説明員 私は日本專売公社総裁秋山孝之輔であります。  ただいま裁定の問題につきまして、大蔵大臣より説明のあつた通りでありまして、私ども公社といたしましては、調停委員会調停にも服することはできない、その結果は、調停委員から仲裁委員会に提訴いたしまして、ただいま大蔵大臣のお話のように、裁定を十二月二十八日に受けたのであります。  御承知のように公労法は、ある拘束力を持つているということから、私ども愼重公社予算について検討をいたしました結果――この場合ちよつと御説明を申し上げたいのは、公社独立企業体ということで発足いたしましたけれども予算運用等につきましては、各省各庁の予算といささかも違わないので、款項目の流用につきましては、大蔵大臣の許可を要する、こういうことから検討の結果――不用になつた額、あるいは節約をし得るという額について検討いたしました結果、二十八日と記憶しておりますが、大蔵大臣予算流用を願い出たのであります。しかるに大蔵省は、この予算流用はいけないということで、ただいまわれわれは予算流用の不可能な状態に陷つておるのであります。この解釈についてはいろいろあろうと思いますが、国会愼重な御審議によつて、私ども流用を願い出た趣旨が貫徹するようにいたしたいと思つております。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に全專売労働組合中央執行委員長平林剛君のご意見を求めることといたします。平林
  7. 平林剛

    平林参考人 この問題の経過については、大蔵大臣説明した通りであります。ただ仲裁委員会から、いわゆる專売裁定が行われましてから、今日に至るまでの政府の態度につきましては、特に大蔵大臣措置については、組合員及び組合は、まつた理解しがたいものを感じておるのであります。そして政府に対して非常な不信を抱いております。公共企業体労働関係法についても非常な疑義を感じております。もともと公共企業体労働関係法につきましては、私ども組合幾つかの矛盾を感じておつたのであります。後において吉田首相が、外資導入を口実にいたしまして、專売公社を民営に移そう、こういう考えを抱くほどの企業体でありまして、タバコ製造企業に携わるわれわれは、少くとも肉体労働者として、労働者としての基本的権利を持つてつたのでありますが、これを奪うような、憲法違反的な法律であると考えておつたからであります。公共の福祉を増進してこれを擁護する、こういう名目で、私ども專売公社従業員をこの法律適用下に置いたことは、ただ專売益金の一千二百億が確保されなければならない、国民大衆からの、大衆課税であります税金を徴収するための犠牲にさせられておる、こういうふうに考えたからであります。私どもから罷業権を失うようにいたしましたその代償として、調停委員会仲裁委員会を設ける、こういうお約束であつたのでありますが、どうもその当時の政府説明に対して、一抹の不安を覚えておつたからであります。このため組合としては、第一に公共企業体労働関係法につきましては、制定当時からその反対を表明いたしまして、その撤廃を要請いたしておつたのであります。そうして公共企業体労働関係法に対する幾つかの矛盾疑義は、遺憾ながら本日現実ここにおいて、私ども主張が裏書きされるようなことになつておるのであります。しかし私でも組合としましては、公企労法に対する疑義は別といたしまして、法律に基いて下された今度の專売裁定につきましては、守られなければならないと考えておるのであります。組合專売公社要求いたしました要求額と比較いたしまして、もちろんわれわれは相当の不満を持つておるのでありますが、法律の第三十五條には「裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」と定められてありますから、われわれは裁定がすみやかに実施をされ、この法律のもとに拘束されることを、やむを得ないことだと考えておるのであります。だからそういう建前から、組合專売公社に対しましても、裁定第一項をすみやかに実施するような手続要求して参つたのであります。第二項以下の問題につきましても、具体的に協議を進めるようにして参りました。幸いにして專売公社裁定を尊重することにつきまして、公共企業体の正常な運営を最大限に確保するという、法律一條趣旨を正しく理解をしてくれたのであります。そうして大蔵大臣に対しましては、昨年の十二月二十八日、公共企業体仲裁委員会裁定に対する措置についてということで、裁定第一項を履行するための流用財源承認方を稟議してくれたのであります。特に裁定実施するための経費は、大蔵大臣行政的承認を得れば、公共企業体労働関係法の第十六條第一項に該当しないものであることは、その総裁から提出をいたしました通牒の内容をごらんになつても明らかであります。このようなわけで、組合公共企業体労働関係法第十六條第一項の解釈は、既定予算のわく内のものである、予算上可能な資金支出でありますから、政府はただちに法律を尊重して、裁定通り履行すべきものであるということを主張しておるわけであります。ところが冒頭申し上げましたように、私ども理解しがたいことは、ここに私が参考人としてこのようなことを申し上げなければならない、国会に付議されなければならないという今日までの経過であります。どうもここのところが私どもには理解に苦しむところであります。私どもは、專売裁定国会審諸を煩わさなくとも、大蔵大臣行政的措置で解決できるものと解釈をいたしておつたのであります。これは公企労法解釈例規その他を見ても私どもが十分承知いたして、それが正しい法律解釈であると考えておつたのでありますが、遺憾ながら法律解釈には二つあつたようであります。公企労法の第一條第二項には、公共企業体重要性にかんがみ、この法律で定められた手続に関與する関係者は、経済的紛争をなるべく防止し、かつ主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を盡さなければならない、これが法律として規定をされてあるのであります。專売公社総裁意思は、先ほど申し上げました通りでおわかりですが、その專売公社総裁意思を封殺いたしまして、最大の責任者になりました、大蔵大臣は、この法律の第一條趣旨を具体的に実行することなくして、すべての責任国会に転嫁しておることであります。政府法律制定趣旨理解して、專売裁定の実現のために努力しておらないように考えられます。それだけでなくして、政府政治的な考え方から、多分政府政策を遂行するためだと考えますが、その政治的な意図から、專売裁定を否認しようとしておるのではないかと思うわけであります。大蔵大臣はたびたび組合要求に対しまして、一月十日にも、大蔵大臣としては日本現状考えて、科目流用までして出すことは同意できないと当時答えておるのであります。一月十八日のときにも、文書回答をもつて諸般事情を考慮してこの際予算流用を認めることはできないと回答しておるのでありまして、これらはまつた政府政策的な方針のために、法律上の手続としての裁定犠牲にしてしまう結果になるのではないかと思うのであります。そのほか私ども政府関係者にお会いいたしましても、まことに理解に苦しむことが多いのであります。一億二千八百万円が予算上、資金上不可能だと言つておるのでありますが、国鉄裁定国会に付議いたしましたときにも、国会の各政党がこれを十五億と三十億に明確に区分しておる状況を聞きました。当時の国鉄経理状況と、專売の現在の状況とを私どもが概念的に比較いたしましても、不可能であるという判断はどこからも出て来ないように考えるのであります。私ども一億二千八百万円が実施不可能であるということは、常識で考えましても、判断できないのであります。増田官房長官にお会いいたしましたときにもそうでありましたが、一億二千八百万円を支出することは、収益專売を破壊するということをお考えになつておるようでありますが、公社流用申請を行つておりますのは、歳出予算不用分であります。しかも專売公社総裁は、収益專売のためにも、これから專売益金を確保して行くためにも、裁定実施した方がよろしいと証言をしておるのであります。いずれにしても政府は、このようにただ政府のみずからの方針政策を強行するために、法律を超越しようとしているように見えるのであります。そうしてただ專売益金の今後の見通しがこうだからということだけで、裁定を無視しようとしておるように見えるのであります。私ども政治というものは筋道通つたものであることを欲しておるのであります。これは国民全部がそうであろうと思うのでありますが、わけのわからないことで物事が解決されて行くようなことを欲しておらず、筋道通つた、明るい政治を望んでおると考えるのであります。公企労法の立法の趣旨にいたしましても、このように政治的な問題として私どもの問題が飜弄されてしまいまして、そういう飜弄の結果でなければ、職員生活が保障されないというものではなかつたはずであります。昨年の暮れのように、結局は給與ベース改訂と実質的に同じようなものをひねり出すように、労働者が何か騒がなければ何も出ない。私ども公企労法を現在より以上の形で欲するものではないのでありますが、もし国会におきまして、專売裁定実施が不可能なような状態になりましたならば、組合員組合は、政府に対する不信はもちろん、公企労法の存在に対して疑義を持つようになるだろうと思うのであります。合法的な手続をふんで参りました仲裁裁定申請などは、もう行う必要はない、こういう考えを持つようになるだろうと思うのであります。政府は少しも法律を守つてくれない、われわれだけが法律を守る必要があるだろうか、こういうふうに考えるだろうと思うのであります。合法とか非合法とか言われておりますけれども、一体その解釈は何によつてきめられるのだ、こういうような煩悶にさえ陷るだろうと考えるのであります。今私ども專売裁定即時実施をすることは、国会審議を煩わさなくてもできるものである。だから組合員生活考えて、一日も早くこの実施をしてほしい。こういう要求に対して、一般の新聞でも、社会における輿論でも、われわれ組合主張正当性をみな是認をしてくれております。日本労働者のほとんど全部は、われわれの主張が正しいことを認めてくれております。そしてこれを支持してくれております。組合員自分たち日常生活を保持するために、一日もすみやかに裁定実施がされることを待つておるのであります。繰返して申し上げますが、專売裁定に要する財源は、予算上、資金上可能なものだと考えます。專売公社においてはこれを支出する能力が、大蔵大臣の行政的な承認によつて、いつでもあるものだと解釈をいたします。またその通り現実になつておると考えるのでありまして、国会の民主的な結論を期待をいたしております。
  8. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に公共企業体仲裁委員会委員今井一男君、堀木鎌三君の御意見を、順次お述べ願いたいと存じます。堀木鎌三君。
  9. 堀木鎌三

    堀木参考人 実は、先ほど私ども仲裁委員会裁定をいたしました專売裁定について、政府提案理由を承つておりまして、そうして私はそこから何ものかを見出したいと考えておりましたが、ただ諸般情勢上、資金上、予算上不可能な事実として国会議決を求めるのであるという一言でありましたので、真意が那辺にあるのかをつかむのに、非常に苦労いたしたのであります。お手元に行つておると思いますが、私どもの下しました裁定におきましては、その理由の第三を読んでいただきますとはつきりいたすのでありますが、「本委員会公社経理状態を調査した結果、公社はその予算上又は資金上今年度内に主文第一項に記して金額を支給し得る十分の経理能力を有し、従つて公労法第十六條第二項に関係なく、その支給に必要な措置をとり得べきものと認める。」ということを私どもは言つておるのであります。従つてども見解に従いますれば、本問題は先ほど平林委員長が言いましたことく、政府国会議決を求めることを要しないものであるというふうに所見を明らかにいたしたのでありますが、結局この問題が意見の違いとなつてここに現われたと見るよりほかにございません。従つてその点について、私ども見解を少しく申し述べさせていただきたい、こう思うのであります。よく問題にされます公労法の三十五條が、どうもはつきりのみ込めていないのじやなかろうか。よくこの文字を方々で聞かれるのでありますが、「仲裁委員会裁定に対しては、当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。但し」云々、これがあとで問題になるわけでありますが、一体仲裁委員会裁定はどういう効力を持つているのか、文学の上では「当事者双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。」という文句で、非常に平明なのでありますが、裁定効力に関しまして、一ぺん考え直してみると言いますか、思いをひそめてみる必要があるのじやなかろうか、こういうふうに私は考えるのであります。労調法の三十四條をごらん願いますと、「仲裁裁定は、労働協約同一効力を有する。」という文句があるわけであります。本来裁定について、公労法に基きます裁定と、労調法裁定とは、その効力において異なるところがないはずなのであります。ただ公共企業体労働関係法に基きます場合は、当事者意思によつて仲裁裁定が行われるだけでなく、当業者の意思によらずして、仲裁裁定が行われることがあるわけであります。その点は公共企業体労働関係法の三十四條をごらん願うとはつきりしているわけであります。三十四條に一号から五号まで書いてあるわけでありますが、これは当事者双方によらなくとも仲裁が行われることを規定している。しかるに労調法によります場合は、労働組合法の二十七條の一項の三号によります労働委員会による仲裁は、常に当事者意思によつて行われるのであります。すなわち関係当事者双方から申請された場合、または労働協約に基きまして、申請をされた場合があるわけであります。この公共企業体仲裁は、当事者意思にかかわらず行われますために、表現の方法が、「最終的決定としてこれに服従しなければならない。」という文字で表現したものと見るのほかありませんで、仲裁裁定効力そのものは、労調法のいう「労働協約同一効力を有する」というのと、まつたく同じ性質のものであるということが考えられるわけであります。労働協約と同じ法律上の効力を有します以上は、労働協約が成立したと同じように、法律上の効力は、裁定が行われますと、ただちにいわゆる債務的効力規範的効力とが発生することに相なるのである、こういうように考えるのであります。この労働協約同一効力を有するということによりまして、公共企業体労働組合との関係に、法律関係解釈いたしませんと、十六号がいろいろと誤つて解釈されるようになるのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。従いまして裁定が起りました以上、公共企業体労働組合との間に、ただちに法律行為が生ずるのであります。従つて両者の間に債権債務関係が生ずると解釈するのが、正当だと考えるのであります。  ただここで問題になりますことは、先ほど後者の総裁が言われましたように、財政に関しては公社は国の機関と見なされていることが、公社法にも規定されているわけでありますが、そういう関係もありますし、政府全額出資公共企業体でありますので、この債権債務予算上、資金上不可能な支出をも拘束することになりましては、事実として非常に不都合な場合を生じて参る。そういう意味におきまして、私ども考えるところによりますと、国会規定予算国会において議決を得ましたところの予算を越えて協定を結んだ場合に、どう処理すべきかという問題が、この十六條で規定した場合である、こういうふうに考えざるを得ないのであります。そういうふうに解釈いたしませんと、まだあまり論議されておりませんが、十六條の第一項の後段をお読みになりますと、そういう関係が予想されている。つまり十六條で「又国会によつて所定行為がなされるまでは、そのような協定」――というのは、予算上、資金上不可能な資金支出内容とする――「そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」こういうふうに書いた理由がはつきりして参るのであります。すなわち公社組合との間におきましては、規定予算の範囲内ではまかなえないところの経費支出を生ずるところの協定がある。しかしその協定においても、かつてにそれをされては困るので、国会によつて所定行為がなされるまでは支出してはいけない。つまりこの法文自身が、国会承認をされました予算以上の協定が、両者の間に起り得ることを予想しているということは、十分言い得るのでなかろうか、こういうふうに考えるのであります。すなわち、その場合に債権債務が発生いたしますが、予算が伴いませんときには、その協定に基いて支出をしてはならないという、法律上の債務者側における明らかな対抗要件を備え、これに伴つていわゆる私法上の債務者遅滞あるいは損害賠償等の事柄が起らないように――こう考えなければならないのでなかろうか、こういうふうに考えるのであります。それでありませんと――もう一つこの点について考えを及ぼしていただきたいと思いますことは、こういう労働協約同一効力を何ゆえに與えるようなことになつたか、これは公労法のできました沿革をお考え願えば、十分御理解のつくことであります。すなわち公共企業体をつくりますときに考えられましたことは、御承知通りマッカーサーの書簡に基いてこの法律がつくられるようになり、また国家公務員についても別な法律ができ上ることになつたのでありますが、ともに労働者権利を擁護しようという趣旨に出ておることは明らかであります。公務員の場合には、いわゆる団体交渉権を全然有しないものといたしまして、公務員法によつてその従事員諸君労働者権利が擁護されるような建前をつくります。しかし公労法の場合におきましては、国家公務員と違いまして、罷業権国家公務員と同じく奪つたわけでありますが、しかしながらこの公労法によりますところの手続によりまして、しかも最終的な拘束的性質を帯びた仲裁裁定を裏づけとして、労働者権利を擁護しようとしたことは明らかなのであります。私この間ある人に会いましたら、こういうことを言つてつた。これはまことにうがつておると思うのでありますが、公共企業体労働関係法は、罷業権を奪つた公共企業体従事員諸君権利を、いかに擁護するかということを考えておる。ところが今回起りました事件は、むしろ公共企業体労働関係法を、その正常な権利の擁護をはばむような姿に解釈するから、変な解釈が起るのだということを言つておるのは、まことにうがつた話である。こういうふうに考えざるを得ないのであります。こういう権利が発生するといたしまするならば、十六條のよく問題になります「公共企業体予算上又は資金上、不可能な資金支出内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。」ということが、何を意味するかということは、十分ただちに平明に理解されることではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。私ども考えるところに従いますと、この公共企業体予算上または資金上というのは、国会議決を経た予算をさしておるというふうに考えざるを得ない。つまり国の予算と同じように、公共企業体予算が憲法上のいわゆる予算であるかどうかは、公共企業体公社法を見ますと、「国の予算とともに」というふうにいつておりますので、ただちに国の予算であるとは存じませんが、しかし「国の予算とともに」国会議決を要するものとなつておりますから、これは国会議決をされたこの予算というものに解釈しなくてはならない、こういうふうに考えるわけであります。またもう一つ、やはり十六條の原文を見ました場合にも、「アプロプリエイデッド・コーポレーシヨン・バジェット」という文句が使つてあるわけでありますが、これが国会議決を得ました予算であるということは、私は疑いないと思うのであります。この予算の範囲内ならば、これは当然支出ができるはずのものであります。先ほどの法律上の性質を分解しました点で申し上げまするならば、この範囲におきましては、ただちに債権債務関係が発生いたしまして、そして履行しなければならないものに相なるわけであります。それを越しました場合に、債務者側が正当な理由――この十六條の二項によりまして国会によつて承認された場合に支出ができて、それまでは拂えないという正当な対抗要件が生じて来る、こういうふうに考えざるを得ないのであります。従いまして、この文句もそういう点から考えまして、予算以上の資金支出の場合には政府を拘束するものでありませんが、以内の場合には政府を拘束するものと考えることが当然である、こういうふうになつて参ると考えるのであります。そう考えましたときに、この二項の、前項の協定をなしたときは、国会にこれこれの所定の手続をしなくてはならないという規定が生きて参るわけであります。つまり二項の場合には、国会議決を得た予算の範囲外の協定も、必ずしも協定そのものは無効でない。しかしながら、そういうことを政府が單独に決定しないで、議会の協賛を得た予算でありますから、それ以上のものは、国会承認を得て初めて効力を発するものとしたという点が、明らかになつて参るのでなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。この見解は率直に申しますると、政府の事務当局者が最初打合せましたときにも、大体この解釈はオーソライズされておつたようであります。しかるに現在は政府を拘束するものでないという文句を非常に強調いたしますと同時に、この議会の予算上、資金上、不可能な資金支出内容とは、先ほど專売裁定について公社総裁が言われましたように、公社総裁流用移用すれば可能としたものを、それが一方におきましては、いわゆる予算流用移用の承認権、あるいは予備費の保管が財政大蔵大臣にあるために、大蔵大臣の認定によつて、その限界がきめられるというがごとき解釈をとつておられるのでなかろうか、ということが考えられます。しかしこの点につきましては、私ども財政法上の大蔵大臣の権限というものは、なるほど財政法上は制限はしてありませんが、大蔵大臣の自由裁量権は法規裁量であつて、広汎な、自分の判断から来た、かつて解釈できめられるものだとは、絶対に考えられないのであります。およそ行政上の自由裁量がまかしてありますものについて、便宜的な問題としまして、まかされているものがあります。その場合には、政府は全体の公益上の問題から批判することができる。公益上の不適当なる行為かどうかということを判断する。間違つた場合でもそれが違法の行為とは言えないのであります。しかしこの場合に債権債務が発しておるとすれば、これは権利義務を制限するものでありますので、これが法規の要求するところであるかどうかという、裁量によつて問題を考えるべきである。つまり国民権利義務に対しまするところの裁量は、法規裁量でなくてはならぬ。国法の命ずるところを考えなければいけないものであるというふうに考えるのであります。従つて裁量が間違いました場合は、私どもは違法の処置と断ぜざるを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。  今大蔵大臣財政法上の地位と、公公労法に関する十六條に関連いたしましての関係を申し上げた次第でございますが、従つて私は、大蔵大臣財政法上の権利をもつて、私権を奪うことはできないものであるというように考えておるのであります。なお申し上げたいと思いますことは、実体的の予算との関係でありますが、先ほど公社総裁も言われましたように、この裁定が起りますと、ただちに公社はこの裁定法律関係が、公社とその労働組合との関係に立つて拘束――規範的な効力と、債務的な効力の発生したのを認められたゆえんだと思うのでありますが、十二月二十八日に、全体では四十億の予算の節約あるいは不用のものがある。本年度予算におきまして四十億の流用、移用の財源が浮き得るのである。このうちから、一億二千八百万円を支出したいということを、大蔵大臣提出されておるのであります。先ほどの私の見解によりますれば、この点を大蔵大臣は自由裁量でおきめになつたようでありますが、私は、政府公労法の精神に従つて公労法に準拠して、この問題を解決すべきものであるというように考えるのであります。  この点について、実は私ども国鉄裁定專売裁定について考えられますことは、何か政府が特に公労法をじやまもの扱いにしておられるのではなかろうか。公労法をごらん願うと、実は先ほど申しました三十四條におきましては、運輸大臣もしくは大蔵大臣または労働大臣が仲裁委員会仲裁を請求すること。大臣みずからが主管大臣として、われわれのところへ仲裁裁定をお求めになる場合すら予想されるのであります。だから、各大臣ともみな公共企業体をこれだけ御信用になるべき基礎に立つて、われわれの委員会というものはできているのであります。  なお先ほど平林委員会が引用されましたように、公労法の第一條第二項は、関係の方がひとしく見落してはならない規定でありまして、この第一條の第二項を読みますと、「国家の経済と国民の福祉に対する公共企業体重要性にかんがみ、この法律で定める手続に関與する関係者は、経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を盡さなければならない。」この「最大限の努力を盡さなければならない。」の中には、当然政府関係者でありまして、最大限の努力をお盡しにならなければならない義務があるので、みずから制定された法律によつて、みずから拘束されていることを、十分お考えにならなければならないと思うのであります。  大体以上によりまして私の説明を終つて、あとは今井君からお願いしようと思いますが、ただここに、さつき平林委員長から言われました増田官房長官が、つまり益金繰入れによつて政府財政計画に支障を来すから、これは予算上、資金上、不可能だと言つたということでありますから、その点について私は一言述べさしていただきたいと思います。  專売公社の本年度の予算で、私どもは益金に不足を来すかどうかということについては、少しく疑いを持つておるのであります。しかし私ども自身がこの公共企業体の経営責任者でありませんから、その点についていろいろ考えられることはありますけれども、それはさておきまして、專売公社の本年度予算におきまして、輸入塩の購入予定数量が、年初百二十五万トンであつたのであります。ところが、過般の補正予算において、これが百三十万トンに増加いたしておるのであります。さらに今回百五十七万トンを実施しようとして、これに要する購入代金の増加額は、約十四億五千二百万円と私どもは推定しておるのであります。これは單に行政処置によるところの流用によりまして支拂いされる、しかもこの塩につきましては、本年度の予定数量をお買いになりますと、来年度、日本の食料塩約一年分近くが持ち越しになる、これはお買いになる。これは行政上の流用権でもつて大蔵大臣流用する。しかも実は專売公社予算を見ますと、塩は売れる見込みが少いと見えまして、塩の売拂い代金におきまして、つまり歳入におきまして十七億の収入減を見込んでおられますにかかわらず、この十四億をふやそうとしておる。しかるにわずか一億二千八百万円につきましては、この議会に予算上、資金上、不可能な支出として御提出になつておる理由は、私どもその真意那辺にありや理解に苦しんおるのであります。なおこれらの点について、詳しく申し上げれば切りがないことでございますが、ともかくも私どもといたしましては、大蔵大臣がこの法規裁量であるということをお忘れになりまして、自分が、政府が自由裁量権があるのだということで、うしろからひもつきになりまして、公社総裁団体交渉の対象たる能力をお失いになるようなことがありますと、労働者権利を擁護する建前の公労法は成立たない。私は実は法律の專門家でございませんので、いろいろとお聞き苦しい点もありましようし、また皆さんのとつくに御承知の事柄も多かつたと思いますが、私は公労法一條の第二項の趣旨によりまして、政府に十分に御反省願うということを切願してやまないものであります。下手な法律論をやりましてお耳に入れた次第であります。予算上の問題につきましては、大蔵省出の今井君が予算に関連して説明してくれるそうでありますから、これで私は失礼します。(拍手)
  10. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に今井一男君。
  11. 今井一男

    今井参考人 堀木委員の陳述に若干補足させていただきます。今回の專売裁定に対して仲裁委員会といたしましては、予算上可能という結論を出しました。政府におきましてはこれと反対の御見解で、ただいま御審議に相なつておるわけでありますが、またこの法律論につきましては、ただいま堀木委員からもいろいろとお話が、ございました。もはやこれを補足する必要もないのでありますが、ただ私どもがそういつた見解をとりました意味におきまして、堀木委員の言われた以外に、一点だけを最初に補足させていただきたいと思います。  それは財政法と公労法関係でございます。申すまでもなく予算がない場合に、予算の範囲を越えまして国が債務を負担するということは、予算の根本原則を打ちこわすものでございます。現に財政法の十五條にもその点を明確にうたつておるのであります。「歳出予算の金額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会議決を経なければならない。」こういう明文がございます。しかしまた一方公労法の第十六條には予算上、不可能な協定をした場合には云々とございまして、予算上、不可能な協定をしてよろしいと、またはつきり書いてあるのです。この両者をどういうふうに調和して考えるか、私はそこがこの法律論として、一つのはつきりした考え方を出すわかれ目でなかろうか、かように存ずるものであります。その点を最初に一点だけ申し上げておきます。  次に今回の裁定国鉄裁定と違いまして、調停委員会調停案を基礎として行われたという点につきまして一言申し上げます。御承知通り公労法におきましては、調停委員公社側から五名の候補者を出します。その五名のうち組合側がこの人ならよろしい、こう申しまして一名をきめます。また反対に組合側も五名の調停委員の候補者を出しまして、それを公社の方で一人より出すわけであります。従いましてこの調停委員二人に対しましては、両者ともに納得ずくできめた人であります。しかもこの両者が話合いまして、中立のもう一人の人を選びまして、そこでその人が委員長になつて話を進めて行く、こういつた建前をとつておることは申し上げるまでもありません。この関係労働委員会におきますよりも、さらに一層当事者意思を反映するものかと考えます。従いまして、また両方が納得したその人にきめられたことということは、労働問題というものが納得ということを基礎にして解決されなければならぬ建前から申しまして、一番民主的なところでなかろうかと考えるものであります。特に專売調停につきましては、九月の初めから調停委員諸君が団体交渉にも立ち合うような御熱心さで、種々あつせんを重ねられまして、ほとんど話がまとまるといつたところまで事実上参つたのであります。その点必要ございますれば、私どもよりもむしろ調停委員の方から直接お聞きになれば、おわかりになると存じますが、そういつた経緯にもかんがみまして、私どもとしては極力われわれの考えと基本的に違わない限りにおきましては、調停委員会意見を中心に事を進めたい、こういつたことが今回の裁定の基礎となつておることを次に申し上げておきます。  それから法律問題はやめにいたしまして、末弘委員長がかつて国鉄裁定の際に申し上げましたように、労働問題というものは、法律論で、片づけるべきでないといつた説に、私ども賛成するものの一人といたしまして、以下公社側予算上はたしてどういうことになつているかということにつきまして私どもの調べた一端をお耳に入れようと思います。公社の御見解によりますと、本年度に歳出が二十六億余る、しかしながら歳入の方が三十一億足らなくなる、こういつた振り合いにお見込みになつておられるようにお見受けするのであります。政府がこれを予算上、不可能とお考えになりまして、国会提出されました最大の原因も、この五億だけそのために益金が少くなる、これは一大事である、歳入欠陷という意味合いから不可能である、かような御判定をなさつたように承つておりますので、この点をいま少しく解剖してみたいと思うのであります。  問題はタバコの売れ行きの見込みであります。もちろん公社の経営者のような、こういう厖大な経理を扱つておられる責任者といたしまして、いずれかと申せば、どうしても歳入は内輪に見、出す金は一ぱいに見ておく、これは私ども人情としてやむを得ないことであるとは考えますが、しかしながら少くとも労働問題を背景とする立場から考えますと、やはり公正な、少くとも第三者的な見方をそこに加える必要がありはしないかと思うのであります。まずタバコの販売数量でありますが、販売数量につきまして四月から十二月までの実績を見ますと、本数は昨年よりも実は二割以上ふえておるのであります。ところが公社の今回の一―三月のお見込みは四・三%しか昨年よりふえない、こういつたきわめてかたいそろばんをとつておられます。もちろんその間いろいろこまかい事情もございますから、私どもも決して四月から十二月までのその二割以上ふえた勢いでずつと行く、こういう極端なことは申しませんが、もしかりにそういつた線をひつぱりますと、五十七億売れ行きはふえるのであります。また公社のお見積りによりますと、四月―十二月には相当高級品が売れた、しかしながらだんだん購買力も低下しておるから、そこでいわゆる下級品しか売れないようになつておる、従つて一つ当りの單価は下る、かようにごらんになつておられます。この点も私ども相当ごもつともな点はあると思うのでありますが、その下りぐあいは四月―十二月に対しまして大体五パーセント近く單価が下る、かように織り込んでおられるのであります。もしこれをかりに前の線でそのまま売れると仮定いたしますと、大ざつぱに見てそこに約十八億円ばかり出て参るのであります。何も四月―十二月の実績その他を、そのまま機械的に延長すること自身に、私ども正しいということをがんばろうというものではありませんが、そういうような見方をいたしますと、とにかく七十億とか八十億とかいう数字は出て来る余地がある。こういう点から申しましても、この五億だけ足りなくなるという点につきましては、私ども多大の疑問を感ぜざるを得ないのであります。実は專売益金と申しますのは、簡單に申すと、タバコ屋に売りましたときをつかまえまして、これが益金になります。従いまして三月に売りましたものが四月になつて消費者に渡りましても、三月中にタバコ屋の手に渡れば、これはその年度の益金になるわけであります。現在タバコ屋さんはおおむね二週間分程度の手持ちを持つておられるようであります。従来戰前のレギュラーな時代には、一箇月分くらいはお持ちになつておられたというお話でありますが、この五億という金は、実はタバコの一箇月分の売れ行きの約四パーセントであります。率直に申せば一日分程度であります。従つてこれを売れると見ることも、売れないと見ることも、どちらとも言えるという程度の金額に相なる次第であります。こういう見地から、私どもここは極端に申せば手心いかんであると思うのでありまして、專売局の政策いかんによつては、三月により多くタバコ屋に売つて、その年度の益金を多くするといつたようなことが、従来実際にも行われて参つたことがあるのでありますが、そういう手かげんのほんの一部で解決する金額であると申し上げて、まず間違いなかろうと存じておるのであります。なお一方歳出の方面につきましても、公社のお立場から申し上げまして、何分あと三箇月の間の経済界について、有効需要等の問題でいろいろとお考えになるようなお立場もありましようから、従つて不用額の二十六億につきましても、先ほど申し上げた通り相当かたく見ておられるのでありますが、このほかに不用額が出ないかと申しますと、私ども官庁の経理に多少経験を持つた人間から申しますと、これは出ないとはどうしても断じ切れないものであります。予算というものは、予算制度というものの持つ、いわば基本的な、宿命的な欠陷かもしれませんが、特殊な経費は別にいたしましても、普通末端に配付しますれば、大体これは使われるものであると見るのが率直に申しておおむねの実情であります。しかしまたこれを若干減らしましても、はたして経理にさしつかえがあるかと申しますと、そうでない場合も少くないのであります。今回問題になりました一億二千万という金は、全体の一年間の予算に比べますと一・何パーセントという数字であります。この一―三月に比較をとりましても、これも一%に満たない程度の金であります。私ども一部調べました点から申しますれば、公社のおあげにならなかつた費目の中からも、まだ数千万円あるいは一億といつたような費目を出すことは、事業の経営に影響なしに可能であるという見方をとらざるを得ないものであります。  それともう一つ費用という立場から考えまして、ここで非常に問題になりますことは、先ほど堀木さんの触れられました塩の問題であります。塩は本年度の当初予算では百六十五万トンの予算で、年間の計画を立てられたのでありますが、実際に売れますのが百四十万トンを割る。しかるにいろいろの事情から買う方はよけい買わなければならない。輸入塩につきましては、ただいま堀木さんのお話のように、当初の百二十五万トンを百五十七万トン、すなわち三十二万トンのよけいな、本年度に売れないものを買わなければならない、こういつた形に相なつております。このために当初の予算よりも塩の購入代金として三十億近い金が必要に相なつて来ております。しかもそのために塩の包裝費であるとか、倉敷料でありますとか、こういつた関係につきましても、たとえば数量がふえたために、運賃だけで三億ばかり、保管料も二億五千万ばかり、これだけ本年度によけい経費を出さなければならない問題が起きております。しかしながら、こういうものは明年になつてまた売れるのであります。今年はいらないかもしれません。またその保管費や運賃の方、あるいは特に目減りというような問題が起るかもしれませんが、原則といたしましては、明年度に売れれば、明年度の益金になるのであります。これがもしも会社の経理でありますれば、繰越し商品といたしまして、この三十億という金は当然に資産の上に上りまして、決して経費には浮きません。しかしながら今の專売の会計は、純然たる官庁会計を使つておりまするがゆえに、三十億の金を使つて物にかえますと、それだけ益金が減る。こういう経理法をとつておるのであります。従いまして一億、二億の問題よりも――その関係にあります以上、しかもこの三十億円近い、こういつた年度当初になかつた見込みの増というものは、実は率直に申しまして、労務者の方には何にも関係のないことであります。單に経営の御都合で、やむを得ずお買いになつたものであります。そういつたために、もしも拂えないとか、拂えるとかいう問題が起りますと、これはまつたく中立的に見まして、労務者諸君に気の毒でなかろうか、かような感じがいたすのであります。  本年度のタバコが、例のピースその他が非常に売れないということは、すでに新聞等でよく承つておるところでありますが、とにかくそれにいたしましても、公社並びに組合側の非常な御努力によりまして、当初本年度は六百四十五億本しか売れないであろうと見積られたところが、六百九十五億本、すなわち約一割近い増産ができた。そのために下級品をよけい売りまして、そうして益金をほとんど支障のない程度まで持つて行けるという見通しがついたということなども、私としてこの機会にお耳に入れておきたい一点でございます。ついででありますから、ここに專売事業の生産性という点を一言触れますれば、大ざつぱに申しますと、昭和初年に比べまして、生産性は約二百になつております。また近年をとりましても、二年前と比べますと数量の方は四五%以上ふえておるように思いますが、人員は二割もふえておりません。その点は経営者、労働者ともに、この悪條件下にかかわらず、非常に努力されておるという点がうかがい得られるのじやなかろうかと思います。  なお経理と関係いたしまして私どもふに落ちない点、いわゆる政府が不可能とお考えになる――もつとも政府国会に一切をまかせるというお立場のようでありますが、私ども納得しにくい点をちよつと二、三申し上げますと、昨年の年末手当は、御承知通り基本給の三分の一、職員一人当り七百円、こういつたことで画一に全部切られたことは、政府の発表にもある通り明白であります。国鉄会計につきましても、それが予算上不可能の線である。專売につきましても、それが予算上不可能の線である。こういつたことは、偶然の一致にしては、あまり一致が過ぎてやしないかと思う、こういつた感じを持ちます。特に公社提出されました予算上歳入欠陷が五億出るという見通し、この案でありますが、私ども裁定を出しましたのが二十八日、年末手当が出たのが二十四、五日であつたかと記憶いたしますが、その間著しい変化もなかつたといたしますと、その当時からすでに五億の歳入欠陷の見通しがあつたのじやなかろうか。すなわち一億二千八百万円だけが、ちようど歳入欠陷になつたというのならば、これは私どももつともと思いますけれども、十二月の末に、公社側はすでに五億歳入が足らぬということを政府の方に申請しておられますから、五億足らぬということは、おそらく年末手当が支給されるころにも、五億足らぬというそろばんが出ておるはずでありまして、もしも五億足らぬということが理由でありますならば、私は年末手当は出せなかつたのじやないかと思う。ところが年末手当の線までは可能である。その上に一億二千万円乗つかると不可能であるという点につきましては、私どもも納得しかねるやに思うのであります。  なお次に、皆様方の御理解に多少の助けとなるために、今の專売経理状況をきわめて簡単に一括して申し上げようと思うのであります。專売にはただいま正確な原価計算はできておりませんし、またいろいろこまかい点もございますが、そういつたことはあまり実際の御審議には必要でなかろうかと考えますので、私が私なりに我流ではありますが、やつたものを申し上げようと思います。タバコは申すまでもなく光とかピースという高級品と、ゴールデンバットその他によりまして、益金が違います。しかしこれをならしまして、みんな一本にして考えてみた方が簡單だと思いますので、そういつた形にして、光五十円というものにならして考えますと――現実の光の計算ではありません。タバコというものを光に代表させて考えるといたしますと、光が五十円の場合に、この中に益金が約三十七円、四分の三が益金になつております。実際の專売局の原価は、私の計算では約十円ということになります。残りの三円はタバコ屋の販売手数料です。その十円の中で葉タバコの原料代すなわち耕作農民に渡すものが五円五銭というそろばんが出ました。そのほかに紙代、箱代その他の副材料みたいなもので一円十三銭、それからこれをまた運送したり、保管したりするために八十六銭、なお、今の官庁会計の建前から、いわゆる工場その他の建設費が実はその年度の歳出となりますから、これが九十二銭ばかりになります。そのほかいろいろこまかいものがありまして、結局労働者の賃金、專売職員の賃金は八十銭であります。むろん必ずしもこの割合の小さいことが、問題を小さからしめるゆえんではございませんが、とにかく日本の産業の中では、非常に労賃の割合が少い事業であるということは申し上げられると思うのであります。タバコ屋の手数料が三円、労賃は約八十銭であります。しかも今回のこの裁定案は五十円のうちの約三銭であります。ごく達観いたしまして、どこからでも出せる程度の金じやなかろうかと思うのであります。現にこういつたことがございます。タバコ屋さんに対しましての手数料の話でありますが、これが以前は配給分は一割、ピース、光等の自由販売品は四%ということでやつておられました。それをひつくるめますと五・九%になる。これではめんどうだということと、自由品が多くなつた立場から、公社がこれを六%に統一されたのであります。もちろん経理上もつともなことと思いますので、別にその点をとやかく申すのではありませんが、そのために公社の損したものが年にやはり一億二千何百万円、ちようど今回の裁定額に当るのであります。すなわちそれくらいの金額である。端数整理をどつかでやると、すぐそれくらいの金は出るといつた一つの例として、この機会にお耳に入れておこうと思います。  なお最後にもう一点だけつけ加えさしていただきたいことは、マ書簡との関係であります。公労法がマ書簡に基いてできたことは申すまでもございませんが、マ書簡は申すまでもなく、国家公務員公社職員とを截然と区別しております。国家公務員につきましては、政府は国体交渉をなす立場にない。すなわち一九三六年の有名なルーズベルトの言葉を引用いたしまして、国家公務員国民の使用人である。従つてこれの使用者は国民である。いわば国民代表たる国会である。ゆえに政府は、同じく国民にサービスすべき立場として、これが団体交渉をやる地位にない。こういつた有名なルーズベルトの言葉を根拠にして、あのマ書簡が出ておることは御承知通りであります。一方公社につきましては、これには団体交渉を認めろ、団体協約を認めろ、こういう立場ではつきりうたつてあります。従つて国家公務員の給與につきましては、国会が直接おきめになるということが、マ書簡の精神に沿うゆえんであるということは申すまでもありませんが、しかしながら公社につきましては、団体交渉できめるのが本則だろうと思うのであります。ところが、これはもちろん法律問題でも何でもありませんが、ただいまの運用で参りますと、結局賃金に関しましては、全部国会でおきめ願う結果、国家公務員公社職員とは何も差がない、こういうことになりはしないかということを、私は憂うるものであります。特に明年度の予算総則にはつきり條文が入りまして、公社につきましては給與総額は幾ら幾らである、これを一円上げる場合にも国会がきめる、こういつたような案が出ておるようであります。これは行政改革にもないとかいう話でありますが、公社にだけそういつたような條文が入りますと、これは少くとも給與につきましては結局国会でおきめ願わなければならぬ。私ども国会でおきめくださること自身が、必ずしも本質的にどうという意見ではございませんけれども、とにかくマ書簡といたしまして、公務員公社との截然たる区別という見地から申せば、そこに御検討の余地があるのではなかろうか、かように存知まするがゆえに、あえてつまらぬ一言を申し上げた次第であります。これをもつて終ります。
  12. 倉石忠雄

    倉石委員長 次回は明後十日午前十時より開会いたします。なおその際は、参考人各位の御出席を再びお願いいたしまして審査を進めたいと存じますから、本日御出席参考人各位は御足労ながら、次回の連合審査会にも御出席をお願いいたしたいのであります。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時十三分散会