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1949-12-20 第7回国会 衆議院 労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月二十日(火曜日)     午前十一時三十一分開議  出席委員   労働委員会    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 篠田 弘作君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君    理事 川崎 秀二君 理事 春日 正一君    理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    小淵 光平君       押谷 富三君    菅家 喜六君       佐藤 親弘君    田渕 光一君       塚原 俊郎君    中村 幸八君       福田 喜東君    船越  弘君       松野 頼三君    福田 昌子君       前田 種男君    稻葉  修君       石田 一松君    柄澤登志子君   人事委員会    委員長 星島 二郎君    理事 小平 久雄君 理事 高橋 權六君    理事 藤枝 泉介君 理事 成田 知巳君    理事 中曽根康弘君 理事 土橋 一吉君    理事 逢澤  寛君 理事 平川 篤雄君       池田正之輔君    岡西 明貞君       丹羽 彪吉君    丸山 直友君       柳澤 義男君    松澤 兼人君       川上 貫一君   運輸委員会    委員長 稻田 直道君   理事 岡村利右衞門君 理事 關谷 勝利君    理事 米窪 滿亮君 理事 林  百郎君       尾崎 末吉君    尾関 義一君       滿尾 君亮君    松井 政吉君       上村  進君    石野 久男君  出席国務大臣         法 務 総 裁 殖田 俊吉君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         労 働 大 臣 鈴木 正文君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       加賀山之雄君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員         長)      末広嚴太郎君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 堀木 鎌三君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合中央執         行副委員長)  菊川 孝夫君         労働委員会專門         員       濱口金一郎君         労働委員会專門         員       横大路俊一君         人事委員会專門         員       安倍 三郎君         人事委員会專門         員       中御門經民君         運輸委員会專門         員       岩村  勝君         運輸委員会專門         員       堤  正威君     ————————————— 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第一号)     —————————————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまより昨日に引続きまして、労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。  これより公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件につきまして、質疑に入ります。松井政吉君。
  3. 松井政吉

    松井(政)委員 昨日からいろいろ質問及び討論がなされまして、大体同じような事柄になろうと思いますが、私は運輸委員といたしまいて国有鉄道法改正のときにも、三十八條以降四十四條に至るまでいろいろ論議をいたした関係から、この点をちよつとお伺いいたしたいと思うのであります。  第一番に運輸大臣にお伺いいたしますが、公労法十六條の規定に基いて、運輸大臣監督立場におきまして、国有鉄道法法律にのつとつてこの問題に対する処置をする場合におきまして、いわゆる国有鉄道経理範囲内で取扱われるということは、既定予算であるという御解釈をお持ちであるかどうか。それから既定予算であるといたしますならば、公労法十六條によつて取扱われるものは、当然三十九條の追加予算と四十四條の借入金、それに続きます四十五條政府からの貸付金條文従つて処理をして行かなければならないものと考えるが、この問題について最初にお伺いいたします。
  4. 大屋晋三

    大屋国務大臣 御質問の第一点の精神は、既定予算範囲内のことでございます。
  5. 松井政吉

    松井(政)委員 ちよつと今はつきりわからなかつたのでございますが、既定予算経理範囲内、以外の問題、これの條文に対する取扱いの御解釈であります。どの條文によつてどういう御解釈をなさつたかということを、もう一ぺんお伺いいたします。
  6. 大屋晋三

    大屋国務大臣 それは国鉄総裁自己既定予算の中で、支出可能であるかどうかということを判定するのが第一段でありまして、政府はその国鉄総裁申達に従いましてそれを判断する、こういう段取りになつておりますので、あくまで既定予算以外のものは含まない、既定予算範囲内において支出可能であるという点が立証されましたものであります。  第二段の支出不可能の面に対しては、あるいは資金的、あるいは予算的措置を必要とするという見解国鉄総裁がとりまして、それに対して政府判断を下し、その判断に基いて、十二月十二日に国会の方に、いわゆる十五億五百万円以外のものは国会において御裁定を願いたいというふうに、処理いたした次第でございます。
  7. 松井政吉

    松井(政)委員 そういたしますと、加賀山総裁にお伺いいたしますが、本日資料をいただきました中に、国有鉄道法三十九條により別紙追加予算通り借入金をもつて支弁することにしたいと思うから、所要の手続を講ぜられたく申請する、こういう手続をいたしておるのでありますが、これはこの資料通り解釈してよろしゆうございますか。
  8. 加賀山之雄

    加賀山説明員 日本国有鉄道といたしましては、その見解に基いて政府に要請をいたした次第であります、
  9. 松井政吉

    松井(政)委員 運輸大臣にお伺いいたしまするが、そういたしますると明らかに国有鉄道総裁は、ただいま運輸大臣答弁された通り国有鉄道法三十九條の規定に基きまして、所定手続をしたと思うのであります。そういたしますと三十九條によつて国有鉄道総裁所定手続きをいたしましたのに、今回これの提出は、十日に出しておるのであります。十日に国有鉄道総裁が三十九條の追加予算に対すを手続をなしているのに、運輸大臣はこの議案提案理由説明の中におきまして、資金上、予算上可能な支出であるかを検討いたしましたところ、この金額を支出することはとうてい不可能でありますので、と明瞭に出しておるのであります。そうするとこの関係においては、この法律規定に違反したものはたれたれかということになりますると、国有鉄道側ではなくて、政府ということになりまするが、そういう解釈でよろしゆうございますか。
  10. 大屋晋三

    大屋国務大臣 政府は毫も違反してないので、国有鉄道総裁自己の処理し得ない範囲のものについて、いわゆる資金上、予算上云々の條文に従いまして、これを政府を経て国会処置を得たい、かように考え申達したのであります。それをいかに処理して出すかは、政府の自由でありまして、政府はその所見に従いまして国会提出したもので、少しも法律の違反ではないのであります。
  11. 松井政吉

    松井(政)委員 そういたしますと、三十九條の二項によりますと、御承知通り「前條第二項から第四項までの規定は、前項の規定による追加予算について準用する。」とありますので、三十八條予算における第四項あるいは第三項、これは運輸大臣大蔵大臣協議をいたしまして国会にかけなければならないと規定してあるのであります。そういたしますると、国有鉄道総裁追加予算、すなわち予算を組んで出したものは、そのまま国会にかけなければならないことになりますので、今回の提案につきましては、当然予算が伴わなければならないという法律解釈をするのが正しいと思うのでありますが、それについてはどういう見解でございますか。
  12. 大屋晋三

    大屋国務大臣 通常の場合の予算編成の径路を考えますると、国有鉄道法三十八條以下の規定がそのまま適用されまするが、今回の分は、裁定の実体に対して国鉄総裁が、自分で処理し得るものと、しからざるものとを分類して——その処理し得ない、しからざるものの取扱いについては政府の自由でありますから、必ずしも三十八條規定従つて予算をつけて提出する義務は、政府にはないと解釈いたしまして処置いたした次第であります。
  13. 松井政吉

    松井(政)委員 そういたしますると、これはおかしなことになるのでありまして、国有鉄道総裁は三十九條の規定により追加予算手続をとつておるのであります。そうすると三十九條の二項において、三十八條予算のところの第四項が生きるということになつている。そうすれば、追加予算提出国有鉄道総裁が申請したときには、政府はやはりこの予算をつけて国会提出しなければならないということが、條文に明確にうたつてある。これを政府予算をつけないで、最初に出されたように四十五億の支出が不可能であるからという、いわゆる不可能の承認国会に求めている。これは明らかに違法である。これをそうでないという立法解釈がありますれば、條文とその項目解釈を明瞭にひとつなしていただきたいと思います。
  14. 大屋晋三

    大屋国務大臣 公労法第十六條をごらんになつたならば、予算上、資金上不可能なものに対しては、国会承認を求めなければならないということがございまして、それには予算をつけろとか何とかいうことは、明示してないのであります。
  15. 松井政吉

    松井(政)委員 それならば運輸大臣にお伺いしますが、国有鉄道法改正のときに、運輸委員会において、たとえば国有鉄道従業員現行ベース資金計画変更を来した場合、及び手当ボーナス等によりいわゆる資金上、国有鉄道補正予算を必要とした場合、資金計画を必要とした場合に、こういう條項に該当するかと言つたときには、それは該当いたしますとあなたははつきりお答えになつておる。国有鉄道法公労法十六條の規定から、経理範囲外によつてまかなわなければならないものは、国有鉄道総裁はその手続をとつて三十九條によつて予算を出しておる。そうすると国有鉄道法三十九條によりますと、いわゆる監督者である運輸大臣は、当然国有鉄道総裁予算を、大蔵大臣協議の上、その予算をつけたまま国会提出しなければならないという三十八條の四項が生きるのでありますから、明らかにその手続をとらなければならないと思うのであります。公労法十六條は、裁定がなされた場合における、国有鉄道法その他の條文規定した事柄に対する手続をうたつておるのでありまして、この問題は明らかに国有鉄道法に対する矛盾だと思いまするが、この点について、もう一ぺん明確にお答え願いたいと思います。
  16. 大屋晋三

    大屋国務大臣 明確に申し上げまするが、この裁定のいわゆる支出の可能、不可能の問題につきましては、不可能のものは公労法の十六條に従いましてこれを政府から国会提出付議しなければならないという條文によりまして、政府処置いたしたのでありまして、あなたのおつしやる日本国有鉄道法の普通の場合の予算を組む法律は、この場合は、私どもは考えておらぬのであります。十六條の規定従つて処置したのであります。
  17. 松井政吉

    松井(政)委員 裁定の十六條による規定の場合は、この予算を必要としても、それには関係ないというのはおかしな議論であります。公労法十六條は裁定でない場合、国有鉄道国有鉄道法その他の規定によつて取扱う手続を明瞭にしておるのでありますが、その手続を明瞭にしなければならないということになりますれば、いわゆる裁定によつてつた補正予算を必要とする場合でありましても、ほかの関係における資金計画変更を生じた場合、ほかの問題に対する補正予算、あるいは追加予算を必要とした場合も、同じ取扱いを三十八條以下の規定によつてなさなければならないということは明瞭であります。従つて裁定だからということで、いわゆる三十九條、三十八條手続をしなくてもいいという理由にはならないと思うのであります。従つて公労法十六條だからということで、その手続をしなくてもいいということになりまするならば、明らかにこれは違法だと考えるのであります。従つて十六條をもう一ぺんあなたの方でもひとつ研究して御答弁願います。
  18. 大屋晋三

    大屋国務大臣 十二分に研究いたしましたが、十六條の規定をあなたがよくお読みになつたならば、私の解釈がよくわかると思います。
  19. 松井政吉

    松井(政)委員 十六條の規定は、御承知通り、はつきりしているように、承認を求めるということであつて不承認を求めるということではないのであります。従つて承認を求めるということは、不承認を求めるということではないのでありまして、不可能だから承認を求めるということの議案提出の仕方は、明らかに違法であります。従つて昨日から参考人方々の御意見にもあります通り、また国有鉄道総裁は少くとも今度の問題について補正予算を組んで申請いたしておるのでありまして、それが国会に付議されて、いわゆる承認を求めるのでありますから、その具体的な問題についての承認不承認は、国会によつてされるのであります。しかるに具体的なものをとらないで、あなたが一番最初の日に説明されたように、不承認承認を求めるがごとき事柄は、違法だと私は言つておるのであります。これは公労法十六條と国有鉄道法の三十八條以下の規定に従いまして、立法的な取扱いの場合には、明らかに違法を行つておる。こういうことになると私は申し上げておるのであります。それでもないとおつしやいますか。
  20. 大屋晋三

    大屋国務大臣 松井君は非常に何かまわりくどいことをおつしやいますが、要するにわれわれは不承認を求めたのじやないのであります。この不可能の分に対して承認不承認かは、国会審議によつてきまることなのであつて、その審議を求めたのであります。
  21. 松井政吉

    松井(政)委員 それならばお伺いいたしますが、そういたしますると、国有鉄道総裁法律によつて予算提出した。しかるに予算はつけないで、承認不承認国会にしてもらいたい、こういうことになりますと、予算というものは国会がかつてにつくるのが妥当な解釈であるのか、予算というものは政府が立てて、国会がそれについて審議をするということが妥当であるのか、この点について明瞭にお答え願いたい。
  22. 大屋晋三

    大屋国務大臣 政府最初出しましたこの提案理由を、昨日訂正いたしたことは御承知通りであります。つまり御審議資料といたしまして、政府見解は、この三十億のうち十五億は、国鉄総裁において支出が可能である、その残り分に対しては支出不可能でありますという意見を付して、国会提出したのでありますから、それの国会の御審議は御自由であります。
  23. 松井政吉

    松井(政)委員 それじやお伺いいたしますが、昨日訂正された中には予算がついておりますかどうか。
  24. 大屋晋三

    大屋国務大臣 それは予算をつける必要はないのであります。政府意見を付して提出いたしたのであります。
  25. 松井政吉

    松井(政)委員 これはわれわれが納得できないことはもう明瞭でありますが、運輸大臣とやり合つておりましても水かけ論になりますので、これは他の委員方々にさらに私の足らざる点をついてもらうことにいたしまして、次に移ります。  それならばもう一点、昨日もどなたかお伺いしたように考えておるのでありますが、国有鉄道総裁提出いたしました、国有鉄道経理範囲内でまかなえる分に対しては、これには十八億とありますが、それに対して昨日の運輸大臣説明によりますと、十五億五百万円ということに相なつておるのであります。これは一体どういう関係でありますか、そのいきさつについてひとつ明瞭に御答弁が願いたい。
  26. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいまの御質問でありますが、国鉄総裁は十八億円を流用いたしたいというふうに言つて参つたのであります。実は運輸大臣といたしましても、最初は十八億を出したいと思いまして、いろいろ各方面からこれを検討いたしました結果、やはりその内容を吟味いたして参りまして、国鉄総裁申達の十八億の内容修繕費の繰延べというような点から考えますと、多少むりではないかという点が数点ございましたので、それを削除いたしまして、結局十五億五百万円ということに相なつたので、その項目の詳しいことがもし必要であれば、資料もございますから、差上げてもよろしゆうございます。
  27. 松井政吉

    松井(政)委員 加賀山総裁にお伺いいたします。裁定書に明確にうたつてありますように、国有鉄道経理範囲内で取扱えるものは、ただちに支拂い準備をするということになつておりますので、あなたの方はその手続準備をただちにやつたということになりますならば、あなたの方の考え方で、経理内容でまかなえると思われる十八億円というものについては、すでに準備をし、支拂いを完了してもいいような解釈を持つのでありますが、それが政府において十五億五百万円に削られた、こういうことになつておりまして、これは裁定書内容とはなはだ矛盾を来しておるように考えますが、その点について国有鉄道総裁はいかなるお考えを持つておりますか。
  28. 加賀山之雄

    加賀山説明員 昨日この席でも申し上げたと存じますが、国鉄総裁としては十八億を何とかしてこの苦しい予算の中から、しぼり出そうと考えたわけであります。これは御承知のことかと存じますが、国鉄総裁一存では出せる建前にはなつておらないのでありまして、予算流用ということは、大体大蔵大臣認証がいることは御承知通りであります。国鉄総裁自分考えたものが、そのまま出せるということにはならないわけであります。
  29. 松井政吉

    松井(政)委員 そういたしますと、さらにお伺いしたいのでありますが、定員法による首切りのときには五十四億円を使つております。これは昨日どなたかもお伺いしたようでありますが、私は別の角度からお聞きしたいのであります。この五十四億円というものが昨日の答弁で不明瞭でありましたので、お伺いするのでありますが、この五十四億円というものは、最初国鉄が予定されたのはたしか十七億だと記憶しておるのでありますが、それよりはるかに越えた額を使用いたしているのであります。これにつきまして国有鉄道総裁はどういう形においてこの使用をいたしたか、監督にある運輸大臣はこの使用に対してどういう態度をおとりになつたか、これをひとつお伺いいたしたいと考えております。
  30. 加賀山之雄

    加賀山説明員 御指摘の通り、十七億ではなく私は十八億だつたと記憶しておりますが、退職資金退職手当の額が、当初の予算の見積りよりは足りなかつたことは事実であります。その不足額に対しては予算流用をもつて支弁せざるを得なかつた。そういう手続国有鉄道総裁一存ではできないのでありまして、大蔵大臣認証を受けてかようなはからいをいたしたわけであります。
  31. 大屋晋三

    大屋国務大臣 実は加賀山総裁も申し上げました通り給與最初予算が、單位のとり方や何かで、鉄道の方の希望と、大蔵省との査定が食い違いがございまして、非常に寡少の予算が見積られておりましたのが、退職人員退職手当を拂いますときに、そこに非常に差が出て来たのでありまして——と申すよりも、最初から実はわかつてつたのでありますが、緊縮予算のために、運輸省の意見大蔵省に取入れられなかつたというようなこともありまして、はなはだまずいことではありましたが、かれこれの流用によりまして、まかなつたような次第であります。
  32. 松井政吉

    松井(政)委員 はなはだまずいことでありましたが、そういうことをやつたということにつきまして、まずいということをお認めになつておるようであります。それならば五十四億円から十八億を差引いて足らざる点は、まずいと思つただけではなく、まずいと思いながらも、どこから持つて来たかということを明瞭にお伺いしたいと思います。
  33. 加賀山之雄

    加賀山説明員 どこからと申しましても、一つのものから單純にということではございませんので、そういつた認証を受けます場合は、その後の経営内容をよく検討いたしまして、そして経営に支障のないように、たとえば石炭が節約できる見込みが立てば石炭費、また修繕費が節約できる見込みが立てば修繕費、そういうものからこれを持つて行くという措置をとるわけであります。
  34. 松井政吉

    松井(政)委員 それで、さらに加賀山総裁運輸大臣にお伺いしたいのでありますが、首切りのときには、まずいと思いながらも、三十何億かいろんなところから生み出して来て使おうとする国有鉄道総裁、それに政府立場監督立場において認証を與えた運輸大臣である。ところが今度の裁定の場合におきましては、首切りに使う金ではなくて、この裁定守つて従業員の賃金べースが改訂されるまでの間、この裁定によつてやる——裁定書に基いてやるということは、これは国有鉄道能率をさらに増進し、従業員の生活を安定するという、生きた金に使う部分であります。その生きた金に使う部分については、わずか三十億円、あるいはその程度のこの予算措置、しかも国有鉄道総裁はちやんと法規に基いて予算を作成している。これができないということは、はなはだどうもわれわれは不可解千万に考える。首切りのときには、まずいと思いながらも、いずれかの方向から持つて来て使おうとする国有鉄道総裁、まずいと思いながらもそれに認証を與える運輸大臣が、今度は生きる金を使わなければならぬときには、国会にこれを白紙のまま出して、いわゆる不承認承認を求めるというような形で持つて来る、こういう事柄について、それで大臣としての監督、あるいは大臣としての立場がとれるとお考えになるか。それと、国有鉄道総裁はそれでもよいという考えをお持ちであるか。この点を明瞭にお伺いしておきたいと思う。
  35. 大屋晋三

    大屋国務大臣 今回のは裁定でございますから、国有鉄道経理が許すならば、裁定を全面的にのんで、従業員の苦痛を救つてやりたいという気持は十分に持つておりますので、国鉄総裁といたしましても、でき得る限り最高の経理面のくめんをいたしたことと信じております。その結果、国鉄総裁の裁量の範囲は、御承知の十八億でありましたが、政府がそれを検討いたしまして十五億余になりました次第なので、これの処置に対しまして松井君の熱心な御意見は、まことに私も同感でございまするが、いわゆるない袖は振れないというやつで、まことにどうも申訳がございません。
  36. 松井政吉

    松井(政)委員 ない袖は振れないということでありますが、それならば裁定書において裁定委員会は、その使途の方法について、あるいは償還の方法についてまで、詳しくはうたつておりませんけれども、そういう方法を指示している。さらに加賀山総裁の出した補正予算の中にも、明瞭に予算内容その他がうたつてある。さらにまたわれわれが考える場合に、ない袖は振れないというのでありますけれども、参考人の御意見にもあります通り、運賃の八割値上げ、さらに従業員がいわゆる労働基準法を違反してまで、協力するような立場をとつている今日の形におきましては、能率の向上は期待できる。いろいろな角度から、ない袖は振れないというりくつにはなり得ない。たとえば予算によつて政府が四十五條規定で貸出しをする、国有鉄道は四十四條の規定によつて借入れをするという場合においても、十五億五百万円出して、足らざる三十億程度のものは、ない袖ではない。やはり時間をかせぎますならば、国有鉄道経理範囲で逐次これを償還して行くことが可能だというようにわれわれは考える。ない袖は振れないというりくつにはならないと思いますが、それでもない袖は振れないという考え方であるかどうか。これは明瞭に加賀山総裁運輸大臣とから御答弁を願いたい。
  37. 加賀山之雄

    加賀山説明員 二つの点についてお答えしなければならないと思いますが、国有鉄道として考えた最大限度は十八億でございまして、これが監督上の立場からいたしまして十五億五百万円、これが限度であるわけであります。この数すら、実を言うと貨物運賃の八割改訂が国会議決を受けたためにできたことなのでありまして、これがなかりせば、今回いかなる裁定を得ようとも、われわれとしてはいかんともし得なかつた、この点は御了承願いたいと思うのであります。それ以外のいわゆる予算上不可能な点につきましては、国有鉄道としては裁定に服する建前でおる。これはいかにしても、政府において処置をとつていただいて、国会議決を得なければならないのでございます。また国有鉄道としてもこれを希望いたしておりますが、これにつきましては、何と申しましても国の財政政策なり、その他のいろいろな事情によつて判断を受けるわけでございまして、ただ私といたしましては、提出いたしました資料通りであるということを申し上げて、お答えといたします。
  38. 大屋晋三

    大屋国務大臣 しからば国鉄総裁が希望した十五億以外のものを、政府がなぜ考えないかということでございますが、これは松井君の最初の議論にもどるわけでありまして、政府はこれは予算上、資金上の手当がいるものだという見解で、十六條の規定国会提出したわけであります。
  39. 松井政吉

    松井(政)委員 そこでさらに念を押してお聞きしたいのでありますが、ただいまの御答弁によりますと、加賀山総裁はこの予算を組んで政府に申請した通り出したい気持はお持ちである。そこでさらに加賀山総裁に伺いたいが、この組んだ補正予算は、国有鉄道内で時間をかしていただければ、借入金の形で返済することは可能だとお考えになつておるかどうかを、ひとつ明瞭にしていただきたいと思います。
  40. 加賀山之雄

    加賀山説明員 非常に仮定をもつて申し上げなければならないので、今ここで能力があるかどうかということをすぐに申し上げても意味がないと思いますし、この点につきましては、昨日のこの連合審査でも申し上げた通りであります。
  41. 松井政吉

    松井(政)委員 それではもう一つお伺いしたいのでありますが、昨日からの加賀山総裁の御答弁の中にも、公務員と国有鉄道の公共企業体の従業員の賃金の問題とは、両方考えて見なければならないというようなことをしきりに御答弁なさつておられる。それから政府の方も、公務員の年末資金と今度の裁定の問題を混同して考えておられるような答弁を、しばしばなされておるのであります。そこで、今回の裁定というものと、年末賞與的な形において出す金と混同していないということならば、混同していないという点を、ひとつ明確に運輸大臣から御答弁願いたいと思います。
  42. 大屋晋三

    大屋国務大臣 それは私は混同していないのであります。そうして総裁の方から申達がありました十八億円を、実は私も出したいと思いまして、初めて申しまするが、熱心にあらゆる努力をいたしたのですが、終局は、あらゆる角度からこれを検討いたしまして、私の意思が徹底できなかつたのであります。公務員の方の給與は、はなはだおこがましいのですが、国鉄のその線から援用されて、あそこまで行つたのではないかと考えております。
  43. 松井政吉

    松井(政)委員 加賀山総裁運輸大臣にお伺いするのでありますが、そういたしますと、今回の十五億五百万円、これは三千一円になる。公務員の方の年末賞與は二千九百二十円、こういうことになりますならば、こう解釈してよろしゆうございますか。十五億五百万円の三千一円は裁定に基く経理範囲内で拂う金であつて、これは年末賞與ではない。従つて公務員に右へならえをするならば、二千九百二十円に該当する年末賞與は別に出さなければならない、こういうりくつになりますが、そういうことが準備されておるか、そういう解釈をしていらつしやるか、明確にお答えを願いたいと思います。
  44. 大屋晋三

    大屋国務大臣 松井君のような考えは、実はいたしておらぬのであります。
  45. 松井政吉

    松井(政)委員 そうすると、裁定と年末賞與とは混同してないと言うが、混同した考え方ということに解釈してよろしゆうございますか。
  46. 大屋晋三

    大屋国務大臣 国鉄の方の分は、裁定の一部履行という形でございまして、公務員の方は、年末の給與金ということに相なつておるのであります。
  47. 松井政吉

    松井(政)委員 そもそもこの問題の裁定までに至つた原因は、御承知通り賃金べースの引上げが中心になつてつた問題であります。そこで加賀山総裁にお伺いするのですが、賃金べースのときには公務員とやはりにらみ合せなければならぬということで、極力これに反対せられた。ところが今度は裁定が下りまして、裁定取扱いをやるときには、公務員の年末賞與と裁定とを同じようにお考えになる、これは大きな矛盾だと思いますが、矛盾とお考えになりませんか。
  48. 加賀山之雄

    加賀山説明員 私としては一向矛盾を感じておりませんので、裁定に従えば、年末賞與というようなものは認めるわけに行かないということを、はつきり裁定書に言つておるのでありまして、そのかわりということではないと思いますが、今回の裁定が認められておるということであります。従つてそこに何ら矛盾を感ずるものではありません。
  49. 松井政吉

    松井(政)委員 それから労働大臣にお伺いするのでありますが、これは参考人方々の御意見の中にもありました通り、労働協約の点からも裁定に服さなければならない、こう明瞭にあるのであります。従つて国有鉄道の労働組合と公社側において締結いたしました協約にも、裁定案を守らなければならないという意味のことをうたつてある。こういうことになりますと、労働協約の点からも、裁定に服さなければならないということになる。ところが今回その裁定の一部だけしか履行できないということになつた場合、国会裁定の一部でよろしいという決定を見た場合におきましても、ほかの法律による労働協約は明確に生きると思います。もしそれをやらないということになると、労働協約の違反に相なると思いますが、この点について見解を明らかにしてもらいたい。
  50. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 御指摘のようにはならないと解釈しております。不可能な部分につきましては、十六條の條文によつて明らかであるように、国会承認不承認が効力を決定するのでございまして、不可能であり、不承認と決定いたしましたときには、債権、債務を生じないし、それからまた今申しますような協約の関係というふうな点におきまして、御指摘のような結果は出て来ないと考えます。なお協約その他につきましての疑義の専門的な法律解釈につきましては、政府委員から説明いたさせます。
  51. 倉石忠雄

    倉石委員長 稻葉修君より、ただいまの御質疑に対する関連質問があるそうでございますが、これを許します。簡單に願います。
  52. 稻葉修

    ○稻葉委員 ただいまの松井君と大屋運輸大臣の間の質疑応答の中で、ちよつと明らかにいたしておきたい点を、一点お伺いしたいのであります。裁定書内容によれば、このたびの三千一円というこの国鉄従事員に対する支拂いは、公務員の二千九百二十円という年末手当的な支拂いとは、全然その性質を異にするのでございまして、裁定書によれば、年末賞與は出さないということがはつきりきまつており、この十五億五百万円は、裁定書内容によれば、過去の引下げられておつた待遇を是正するという性質のものであつて、年末手当というふうに新聞等にも書いてありますけれども、全然年末手当ではありませんで、過去の待遇の切下げに対する是正、補正という意味であります。一方公務員に対しては、年末手当二千九百二十円を出し、国鉄従事員に対しては、そういう手当は出ていないということになりますが、その点、松井委員も指摘されたように、混同されて考えておられるのではないか。もし混同されているとするならば、国鉄従事員に対しては年末手当がゼロ、公務員に対しては年末手当は一人当り二千九百二十円というように、明らかに裁定書内容から結論づけられると思うのですが、この点もう一度お願いしたい。
  53. 大屋晋三

    大屋国務大臣 稻葉君の最後に仰せられた通りでございます。
  54. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎秀二君。
  55. 川崎秀二

    ○川崎委員 簡單に質問いたします。国鉄公社総裁は、十八億円の経費計上が可能であると言い、大屋運輸大臣は、政府の最後決定ではありますけれども、十五億五百万円が最高の線であると言つて、本日対立をいたしておるのでありますが、先ほど来の御言明によると、本日ただいま初めて申すのであるけれども、あらゆる財源をあさり、あらゆる努力をしたということを言われております。そこで私がお伺いしたいのは、あらゆる財源とはどういうものを洗つたか、たとえば追加予算の計上であるとか、あるいは預金部の資金の運用であるとかいうものについても御検討があつたと思うのでありますが、それがどういうことで不可能になつたかといことが第一点。  第二の点は、十八億のうち十五億五百万円にお削りになつ内容について、懇切に御説明を願いたいと思います。
  56. 大屋晋三

    大屋国務大臣 あらゆる財源を洗うというような考えは一応も二応もいたしました。率直に申しますと、加賀山総裁の希望した精神で、その額において運輸大臣もこれを貫徹いたそうという努力を十二分にいたしたのですが、結局の判定は十五億五百万円にした次第でございます。  またただいま川崎君の後段の御質問は、十八億の内容も、たとえば修繕費の繰延べ、石炭費の節約、工事勘定の中止というようなことに相なつておりますし、十五億に査定しました分も、その線のある部分をその三つの面から拾い出しまして、縮減しておるのでございまして、御希望でしたらば、加賀山君からお答えをしてもらうことにいたします。
  57. 川崎秀二

    ○川崎委員 加賀山さん、どうぞ。
  58. 加賀山之雄

    加賀山説明員 大体修繕費の面といたしましては、四つくらいの項目にわかれるのであります。線路関係、建物関係、電気通信関係、車両関係というものにわけて、われわれは検討をいたしたのでありますが、そのうち線路につきましては、たとえばどうしても軌條が入つて来ない。昨日もこれは申し上げたと思いますが、そういうようなもののほかは、非常に関係がある。あるいは側溝と申しまして横に溝をつくつて水通しをよくするような設備をするわけでありますが、こういうようなものは、線路の保守に非常に関係がありますから、これはやはりただちにやる方がいいのだというような関係になつております。それから建物関係といたしましては、これは全部この際延ばすなり、あるいはこれをやめて、また来年度新たに考え直すということでいい、ということに相なつておるわけであります。     〔委員長退席、稻田委員長着席〕  そのほか、たとえば防雪林などの保守なども込めておりますが、これもすでに降雪期になつておりますので、ただいま防雪林を手入れするには少しおそい、こういうようなわけで、これもやめる、それから建物関係といたしましては、これも昨日申し上げましたが、庁舎、官舎、教習所、病院等の建物の補修費であります。それから電気通信面といたしましては、通信自体は輸送に非常に関係が深いので、これは直接輸送そのものではありませんが、輸送を確保する上においても、やはり手を加えるべきであるという見地に立つております。ただ電燈の配線、こういつたもので、官舎、庁舎等のものは、さしあたつてこの際やらなくても済むというような関係にあります。それから最後の車両関係につきましては、従事員の努力で節約するものはいいけれども、この際たとえば戰時規格の機関車を正規のものに直す。これは戰時規格のものでも現在使えるには使えるわけで、ただ保守上多少手がかかるというようなことがあります。使えるのだから、われわれといたしましては、先に繰延べてもいいとも思いましたが、これはやはり保守にも非常に関係いたしますし、従事員の骨折りにも関係を持つておりますので、この際やるというようなことで、そういう内容が集まつて十四億くらいというふうに相なつておるわけであります。
  59. 川崎秀二

    ○川崎委員 公共企業体の最高責任者たるところの総裁が、十八億は可能である。独立採算制の責任者がそういうことを言明をしており、仲裁委はすでにそれを上まわるところの費用の捻出が、国鉄自体において可能であるということを言われたのに対して、政府が十五億五百万円に削つた。そのことについては一体加賀山総裁は、これで満足をして、今後労働組合の了解のもとに十分なる業務の進行ができると思つておられますか。
  60. 加賀山之雄

    加賀山説明員 昨日も申しましたように、国鉄の経営としては、確かに設備と人と、両面をにらんで見なければならぬわけでありまして、片方に偏してはならないのであります。国鉄総裁としましては、どうしても従事員に近く接しております関係で、非常に実情もわかりますし、それに人情もわきますし、何とかしてやりたい、そういう気持も持つわけであります。しかしそこに新たにまた政府監督の目も注がれて、そこで適当に国鉄の経営も成立つて行く。いかに総裁たりとも、オールマイテイで自由自在にしたのではいけない。自主性はできるだけわれわれ持つて行きたいと思つておりますが、そういう点が今度の結論によく現われておると考えるのでありまして、私といたしましてはこの定められたわくをもつて、労働組合と団体交渉をいたし、労働組合の納得を得たいと考えております。
  61. 川崎秀二

    ○川崎委員 いろいろまだ質問したいと思いますけれども、私もちよつと時間の都合がありますので、大屋運輸大臣にいま一度お伺いいたしたいことは、仲裁委の裁定も明らかに指示しておるように、一部は借入金をもつて支拂い、少額の借入れによつて、四十五億の支出は可能であるということを指示しておるのである。そのことについて末弘委員長が、先般具体的に預金部の資金を借入れたらどうかというようなことまで、委員会の席上において言われたのであります。当然政府部内においてはその検討があつたと思いますが、大蔵大臣から伺う前に、私は、どういうわけで預金部の資金の運用が困難であるのかというような点について、運輸大臣として御答弁を願いたいと思います。
  62. 大屋晋三

    大屋国務大臣 その点は、この問題解決の最も重大なるキイ・ポイントでありまして、先国会補正予算審議いたします際も、川崎君はじめ皆様よく御承知通り、均衡予算で、インフレーシヨンを激発するような要素のあるものは、一切取入れないという精神が、一貫して貫かれておるのでありまて、私たちといたしましても、たやすく借入金なり追加予算というものが組めるという場合でありますならば、非常に事がたやすいのでありまするが、大蔵大臣からもしばしば申されましたように、ドツジ・ラインの堅持、インフレーシヨンの收束という点に対しましては、十分に政府としてもその困難性を承知いたしておるような次第でありまして、もしも借入金なり追加予算がたやすく組まれるという状態でありましたならば、また非常に事柄が違つて来ると存じております。
  63. 川崎秀二

    ○川崎委員 預金部の資金の借入れがドツジ・ラインに衝突をする、こういうお話でありましたあが、われわれはそういうふうに考えておらない。非常な多額の経費であるならば別でありますし、また賃金べースの改訂ということになれば、これは常時的に加算せられなければならぬので、それが自然に物価体系の上に及んで来るという見解も一応はあります。しかしながらそれについてもわれわれは反対をしておる。反対をしておるが、少くとも国鉄の裁定のごとき一時的な裁断によつて、しかも四十五億というようなものは、今日の日本の国家財政から見れば、はなはだ厖大な金額だとは私どもは思わない。そうしてすでに、予算の内部ではあるけれども、十五億五百万円というものは運用することができるということが言われておる現在、一方において預金部の資金の二十七億や二十八億を計上することが、インフレーシヨンに大きな拍車をかけるとは、われわれは断じて考えないのであつて、その点の関係方面に対する了解工作ないしは経済政策に対するところの信念が、欠けておるのではないかとさえ私どもは考えるのでありますけれども、そういうことに対して運輸大臣はどういうように考えますか。
  64. 大屋晋三

    大屋国務大臣 大体国鉄の経理原則は独立採算制でありまして、この間補正予算で三十億本会計から借入れたというのも、運賃の値上げをいたす時期がずれたというような点のいわゆる借入金でございます。預金部の資金その他の借入金をいたしますのに、給與の支拂いの目的に借入金をするというようなことが、なかなか通りにくいというような事柄も、あわせて川崎君において御念頭に置かれたならば、今回の国鉄総裁借入金をしてくれという希望が、政府においていかにこれを承知しがたいかということが、おわかりだろうと存じます。
  65. 川崎秀二

    ○川崎委員 この際仲裁委の委員長ちよつとお伺いいたしますが、公共企業体労働法の立法の趣旨から申しまして、これは当然国鉄従業員に対する保護立法でございます。公務員法の本質的な改正と並んで、昨年公共企業体労働法を制定するのに大きな波瀾があつたことは御承知のごとくでありまして、現業の従業員から争議権を剥奪するということは、世界の労働運動史上に徴しましても、きわめて重大な問題であります。われわれは現業の従業員からストライキ、サボタタージユの権利を奪うというようなことに対しては、徹底的に反対をした一人ではありますが、しかしながら国家の今日の現状から見まして、やむを得ず制定された法律であつて、労働運動の健全化のために、過渡的な立法として行われたものと私どもは解釈をいたしております。従いまして公共企業体において争いの起つた場合においては、仲裁委の裁定が絶対の権力を持つということは、三十五條においてもこれはすでに明白になつておる。しかるに今回においては、この仲裁委の裁定というものが、まつたく蹂躙された形において出て来ておるのでありますが、今後労働運動が健全に発達する上から見まして、この仲裁委の裁定というものが、まつたく蹂躙された形の後におけるわが国の労働運動に対しての、末弘委員長の御見解をこの際煩わしたいと思います。さらに仲裁委としては今後どうなさるつもりであるか、この点も明確に御見解を承りたいと思います。
  66. 末広嚴太郎

    ○末広参考人 すでに一昨日からしばしばお答えしましたことと重複すると思いますが、幸い大蔵大臣が見えておられますから、多少重複する点も申し上げます。  いうまでもなく、公労法は国鉄及び専売の労働の特殊性を考えて、公務員ではないにもかかわらず、争議権を奪つておるのであります。争議権を奪うということは、要するに——これは実際の労働関係を御承知の方は——争議権があるというのは、争議をやたらにやるということではないので、最後に争議権を持つているということは、団体交渉が有力に行われるということなのでありまして、争議権のない団体交渉権というものは、からみたいなものであります。これは実際に触れてごらんになれば、よくわかることであります。争議権があると、やたらに争議をするとお思いになることが、実は間違いなのであります。しかしそれにもかかわらず、その争議権を奪うということは、よくよくのことなんでありまして、つまり言葉をかえて言えば、団体交渉が行き詰まつたときには、争議権ということによる最後の押えでなしに、調停及び仲裁にかけるというのが公労法の精神であります。  そこで今のお問いのうちの、順序が逆になりますが、この仲裁というものの実現については、むろん根本は公労法十六條、三十五條及び国有鉄道法等の法規に従つて法律的に処理されることは当然のことでありますが、いやしくもこの公労法の精神を踏みにじるような方法で、仲裁が実現されないということがありますれば、私は日本の今後の労働運動に対して非常に惡い影響を與えると思う。これはせつかく組合運動がだんだんと軌動に乘りかけておる今日のことでありますので、政府におかれましても、また国会の皆さん方におかれても、この点を十分重視してお考えを願いたいということを考えておる次第であります。それでこの十六條の解釈については、すでにしばしば申し上げましたように、予算上、賃金上可能である部分というものは、これは客観的にきまつておるわけであります。むろんそれを判断するについて、実際上いろいろな見方から議論はあつても、客観的にきまつておるわけであります。これはすなわち公労法によれば、一つの協約がなされたと同じで、拘束力があるのでありまして、その客観的にきまつておる分については、一つの私有財産でありますから、これは政府はむろんのこと、国会といえども、憲法による所有権のあの規定従つて尊重しなければならないので、これは奪うことはできない。すなわち今回公社は政府と相談されて、十五億五百万円ということにそれを一応ごらんになつたが、かりにこれが十八億だとか二十億ということになれば、残りの部分については、明らかに法律上いつでも拂わなければならない債務、従つて権利があるというので、これを侵すことは明らかに私有財産の侵害であります。  それから残りの部分につきましては、つまり予算上、資金上できないという部分につきましては、これは国会が最後の判断をするのであります。政府を拘束しないというのは、政府はどうしてもいいということではないので、最後の判断国会がなさるのだから、国会判断をしいいようにするだけの、最大の努力をすることは、政府として政治上の責任のあるものと私は考えております。それであの文字の中から、予算をつけて出すとか出さないかというような末の議論をしないで、そういうことにとらわれないで、どうしたらば労働組合の者に、また天下の一般の者に、この残りの部分をなぜ国会承認してやることができないのかということを、わからしていただきたい。そうしてまた労働組合の者には、特にその点がわからなければならない。それにはただ頭から、予算がないから残りの部分は全然できないとかいうことでは、公労法の平和的に労働関係を片づけようという精神は、完全に蹂躙されるものだと考えるということを、重ねて申し上げます。
  67. 川崎秀二

    ○川崎委員 ただいま末弘委員長から見解が明示せられましたが、もう一度お伺いしたいことは、私の質問で漏れておる点があります。仲裁委の委員長として今後の労働運動に対してどう考えるか。これが蹂躙された後におけるところの労働運動に、もし合法闘争の範囲を逸脱するような傾向を生んで来るおそれがないかという点、あるいはまた仲裁委としてはどういうふうに処置をせられるか、こういうようなことについての御見解がなかつたと思いますが、その点を今後のことに関連をいたしまして、お尋ねをいたしたいと思います。  そこで今の末弘委員長見解通りに、少くとも政府は拘束されないというようなことの解釈だけではなしに、実際問題として、資金上、予算上不可能なる支出、残りの部分について、一体国会を通じて国民がどういうふうに納得をするかということは、結局財源の問題と関連をして来ると思うのであります。先ほど大蔵大臣は御退席中でありましたので、大屋運輸大臣に伺いましたが、たとえば預金部資金の運用とか、あるいは追加予算提出ということができなくなつた。それはドツジラインに背反するからである、あるいはまたインフレを激発することになるのであるから、というような御答弁があつたのでありますが、そういうことについてもう少しく懇切丁寧に、池田大蔵大臣からこの際御見解を伺いたいと思う。
  68. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどこの席におりましたときに、ある委員から、三十八條以下の條文国鉄総裁借入金の申込みをすれば、これを国会に付議すべきではないかという議論があつたようであります。この問題とも関連いたしまするが、あの三十八條以下の規定は、予算要求の手続を書いてあるので、従いまして、国鉄総裁から予算の要求があり、運輸大臣から協議がありましたときに、政府といたしましては、この要求を調整して、国会に付議すべきであるやいなやということを決定するのであります。従いまして、三十八條以下の規定がありましたから、そうしてまた国鉄総裁予算を要求したからというて、政府国会提出しなければならぬ義務はございません。これははつきりいたしております。これと関連いたしまして、今後におきまして裁定通りの支給をしたい、あるいはそれ以外になりましても、政府が今回予算上の措置をとりました十五億五百万円を越える金額を、借入金その他でやろうとした場合にどうするか。私はそれはよくないと考えまして、国会には提案しないと考えております。(「なぜ要求しないか」と呼ぶ者あり)なぜ要求しないかということでございますが、私は現下のわが国経済の復興途上におきまして、この程度裁定に沿つて行けばいいと考えておるのであります。
  69. 川崎秀二

    ○川崎委員 今のこの程度裁定に沿つて行けばいいというのは、きわめて独断であるわけでありまするが、一体追加予算を組むことができないか、あるいは預金部の資金を運用することができないか、そういうような問題について、もう少し丁寧にお答え願いたいと思うのです。
  70. 池田勇人

    池田国務大臣 私は裁定案によりまして、予算上できるだけのことをいたしておるのであります。しかしてこれ以上国鉄が借入金をして、新たに收入をふやすということは、わが国の現在の経済状況から考えまして、適当でないと考えております。
  71. 川崎秀二

    ○川崎委員 今の池田大蔵大臣答弁では、はなはだ不満足であります。いろいろ聞いてみても、いつもそういうような木で鼻をくくるような答弁なのでありまして、実に私は不誠意きわまると思う。先ほど私が申し上げましたことについての末弘委員長の御見解を、この際労働問題と関連をしてお伺いをしておきたいと思います。
  72. 末広嚴太郎

    ○末広参考人 先ほどの御質問で一部お答えしたと思いますが、もう少し、今の大蔵大臣のお答えがありましたのに連関して、詳しく申し上げますが、私どもは先ほど川崎さんから大蔵大臣質問された点に関しまして、あの四十五億というものについて、問題は何と申しましても七月の十万人の解雇、あの予算が一体非常に足りなかつたということが一番問題であるのであります。そうして昨年以来のいわゆる九原則に基く産業合理化において、この大量解雇に要する費用については、おそらく政府も同意をしておられるのだと思いますが、銀行は金を貸しておると思います。現に首を切るんならば金を貸すということは、あらゆる場合に聞かされる事柄なのであります。それで国鉄六十万のうちの十万人というものを首切ることによつて、非常に大きな経営合理化が行われるわけです。それに要した費用を今年度だけでまかなつてしまおう、しかも予算を與えないで、まかなつてしまおうというところに、公共企業体としての公社に、非常に不合理なことをしいておるものだ、こういうふうに私どもは考えたのであります。従つて企業体としてこれを育成して行くという建前から行けば、民間一般の企業の場合と同じように、この解雇に要した費用を一応貸し與え、次年度以降において適当にこれを償還させることが経営学的に非常に合理的で、また実際公社の経理でそれができるということを、私ども判定したことが、あの四十五億というものが出ているもとであつて、しかもその金は、実を言うともう少し大きいものをということであつたが、公社の経理などのことを考えて、四十五億というところに私どもしたのであります。でありますから——私はこれから今川崎さんの聞かれた本問題に移りますが、過去四年間、日本の大小の労働争議の調停に、おそらく私くらいたくさん当つた人はないと思うのでありますが、問題はストライキを押えることが調停ではないのでありまして、労働者を納得させて、争議が片づいたあと、気持よくみなが働いて、労働意欲が増進するということが、調停の目的であるわけであります。それで一九四七年の例の有名な二・一ストが、マッカーサー元帥の指令によつて中止されました二月一日の晩に、いろいろな情報が入りまして、非常に心配になりましたので、時の中労委の事務局長の鮎澤さんと私と二人で、芝の白金の官邸に吉田総理大臣をお訪ねしました。約一時間にわたつて、私は二・一ストがマッカーサー元帥の命令によつて治まつたことは、まことに御同慶であるけれども、問題はこれからなんだ、つまりどうしてこういうストライキにまで発展するようになつたかということをお考えになつて、これを正常にもどすために、ひとつ格段の御努力を願いたいということをお話しましたところが、総理大臣も非常に快く聞いてくださつたのであります。その結果、あの二月にかけて給與も相当に改訂され、労働協約も締結されるようなことで、どんどん進みまして、一応とにかくあそこで片づいたのであります。およそ労働問題というものは、むりを言うて押しつけてみても、それはストライキがないというだけで、労働問題の解決ではないのであります。すなわち日本は今なお生産の程度が戰前に比してきわめて低い。私ども実は今年の四月に安定本部から出した経済白書の数字を見、それから最近にスイスの国際労働機関の関係から出たもの——それは一九三八年を一〇〇として、一九四八年と比較をとつておるものですが、それを見まして、あの経済白書の数字というものは、非常に間違いだということを私は信ぜざるを得ないのであります。それほど実は日本の経済の復興は、まだ非常にできおらない。これにはいろいろの見方もありますが、労働者に一生懸命働いてもらわなければ、だめなのであります。幸いに労働者が合法的な線に沿うて、大いに働こうという機運ができて来た今日、労働者を納得させずに事を片づけようということは、私は労働問題に対処する道では断然ないと思つております。それで初めに申しましたように、今度の四十五億というものは、決してむりなこと——いわゆる経済九原則的な考え方から言つて、むりなことを申しておるのでなくして、またもう一つは、昨日、一昨日も、ほかの委員から詳しく申しましたように、実を言うと公社に移りかわる前後に、いろいろ経費にむりがあつたために、実質賃金が切り下げられておつたので、これは賃上げではない、それをむしろ正常の状態にもどしてやるべきだということを言つておるのであります。これを経済政策的に見ても、また今申しました点から申しましても、これほどむりのないことを私ども申しておるのであるから、国会に、ほんとうに政府もこれ以上はできないということを十分懇切に説明し、国会においてもこれを十分に御審議いただいて、これ以上できないということになれば、これは労働組合も——昨日も菊川副委員長から言われたように、国会がそういうふうにやられたならば、これはしかたがないといつて治まるでありましよう。さもない限り、私どもは日本の労働組合運動が、せつかく合法の線にまさに乘ろうとしておる今日、再びこれを非合法の方面に追いやることになるだろうと感じておりますということを申し上げる。  あとの、お前はどうするかという問題は、仲裁委員会としては積極的にどうすることもできませんが、これが理由なしに踏みにじられるならば、私どもは仲裁委員というものを今後お引受けしておるわけには参りませんということを、明らかに申し上げます。
  73. 稻田直道

    ○稻田委員長 ただいまの末弘委員長答弁に関連をいたしまして聞きたいというので、これを許します。石野君。
  74. 石野久男

    ○石野委員 ただいま裁定内容につきまして、委員会といたしましては確信を持ち、またその権威を保持するために、強い御決心のほどを伺つたわけでございますが、特にこの裁定の第四項に書かれてあります「本裁定解釈又はその実施に関し当事者間に意見の一致を見ないときは本委員会の指示によつて決定するものとする。」、この裁定の第四項は非常に重要であろうと私は思うのであります。ただいま委員長のお話によりますと、どうしてもできない場合には、お引受けできないという御発言があつたのでございますが、それに至ります前に、この裁定の第四項の処置について、今日確かに当事者間における意見の不一致が見られておるものと思うのでございまして、この裁定の第四項をいかように処置されようとお考えになつておるかということについて、一言お伺いいたしたいと思います。     〔稻田委員長退席、倉石委員長着席〕
  75. 末広嚴太郎

    ○末広参考人 ただいまの第四項につきまして、先日も御説明しましたように、実は裁定従つて協約の実施上、その解釈または適用について争いがあつたときに、またあらためて調停を申請し、また仲裁をやるということになつては困るから、そこであの規定を置いておこうというのであります。しかしそのおもなねらいは、実はたとえば十二月中に拂うものを、これのわけ方などについて団体交渉をしろということを申しておりますので、これがきまらなければ、こちらから用意した案もあるからそれを指示しよう、こういうようなつもりでありまして、国会でおきめになるような点まで、こちらが立ち入ろうというのではありません。私どもとしては、たとえば十五億五百万円は少な過ぎる、もつと拂えるはずだなんということは、あの條項から出て来るつもりではないのであります。つまり既定の、実施的段階になつている程度のものの実施について争いがある、こういうような場合を予想して書いたものであります。これだけお答えしておきます。
  76. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの川崎君の質疑に関連いたしまして、前田種男君より発言を求められております。これを許します。前田君。
  77. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は大蔵大臣に対して質問をいたします。今大蔵大臣はいろいろ答弁をしておられますが、私は根本を忘れておると考えるのであります。それというのは、一体仲裁委員会がどうしてできたか、あるいは公労法がどうしてできたかという根本を、大蔵大臣考えられておるかどうかという点に出発すると考えます。裁定案の取扱い等につきまして、先ほど国有鉄道法にあります三十八條以下の規定と関連なくして、公労法第十六條によつて処置していると政府は言つておりますが、一体昨年公労法が制定されますときにおいて、吉田内閣がいかなる説明をし、いかなる答弁をしておるかということは、速記録を調べてみますならば、明確でございます。一つには国鉄に対して罷業権を禁止しております。罷業権は禁止いたしますが、その反面に労使の関係はすべて平和的に処理するという根本から出発いたしまして、調停が不可能である場合には、強制仲裁の決定に従う。そこまで道を開いて、従業員立場を擁護するということになつておるわけであります。その根本を忘れて、政府の都合で、できないということにはならないと私は考えます。特に十六條の対策等につきましても、裁定案の処理の仕方等に対しましては、すなおにこの法律解釈いたしますならば、国鉄総裁予算的措置の申請に基きまして、運輸大臣並びに大蔵大臣は閣議の承認を経て、当然その内容国会に上程するということが、正しい解釈であるとわれわれはあくまで考えます。そうでない限りにおいては、強制仲裁の裁定というものは、踏みにじられてしまうのでありまして、どうしてもこの裁定には従わなければならないというのが、公労法の精神であると私は考えます。よもや政府並びに国会は、裁定案の決定にあたりましては、そうした不人情のことはしないであろう。常識的に考えましても、仲裁委員会の決定いたしました決定に対しましては、少くとも政府並びに国会はそれを忖度して、それに承認を與えることが、正しい公労法の運用であるとわれわれはあくまで見ておるのであります。要するに罷業権は禁止するが、そのかわりに強制調停まで設けて、従事員の労働條件は確保してやるから、公労法を成立さしてもらいたいということで、いろいろ努められた結果、政府の意に沿うような法律が今日できたのだと思います。しかも仲裁委員会の委員の選任にあたりましては、組合側は拒否したにもかかわらず、委員の指名等は、職権委嘱をもつてこの委員会が構成されております。こういう経過において制定された仲裁委員会のこの裁定案に対しまして、大蔵大臣は、これ以上はドツジ・ラインからいつても、経済事情の線からいつても、聞けないと言つておられますが、これは最初から政府は聞く意思がなかつたから聞けなかつたのではないか。私はもつと政府に熱意があつたならば、必ずやこの程度借入金等は、聞き得る内容であつた考えます。しかも内容に盛られております十五億五百万円は、いろいろ努力して出したと言われますが、最初から聞く意思がなかつたがために、いろいろの点で頭打ちをした。その結果が、今日のこの醜い現状を露呈しておるということになると私は考えます。そういう点から、少くともこの点についての大蔵大臣の熱意がなかつたということは、明瞭であると私は考えます。私は今日出されますところの五十三億八千万円という金は、これからまた税金がとられる。おそらく税金を計算いたしますならば、十三億前後の税金が大蔵省に返つて来ることになると考えます。はね返りによつてそれだけの税金がさらに大蔵省に入る。しかも国鉄では、修繕費その他の物件費を節約して十五億の金を捻出したが、その捻出した金から、大蔵省がさらに税金でとるという結果になると考えます。このはね返り等の財源は、さらに十五億にプラスするという内容が盛られなくてはならないと考えます。その意味において公社の総裁が提案いたしました十八億という問題も生きて来るかと思いますが、この点に対する大蔵大臣見解をお聞きしたいと思います。
  78. 池田勇人

    池田国務大臣 公労法に基きます裁定につきましては、十分その線に沿うような努力をいたしまして、国鉄につきましても十五億五百万円を出した次第であります。十五億五百万円の内容をごらんいただきましても、人件費からは千三百万円、物件費の流用が十四億九千万円、これで私は及ばずながらの努力をしたと、おくみとりいただきたいと思うのであります。第二の御質問の、十五億五百万円を支拂えば、その次に自然増收が出て来るのではないかというお話でありますが、もちろん自然増收は出て参ります。その自然増收を国鉄の給與に出すということについてはどうか、という御意見のようでございますが、私は、そのために予算を補正したり、それ以上出すことは考えていないのであります。予算範囲内におきまして、できるだけの努力をいたしまして、十五億五百万円を出したいと考えております。
  79. 倉石忠雄

    倉石委員長 川崎秀二君。
  80. 川崎秀二

    ○川崎委員 大蔵大臣は先ほど、裁定の線に沿つてこれくらい出すことが、日本の経済の限度であるというぐあいに言われて、具体的な説明がなかつたのでありますが、先ほど来予算委員会においても、同僚中曽根君あたりから、いろいろと預金部資金の問題について議論がありました。この際はつきりお伺いをいたしたい焦点でございますが、預金部の資金というのは、今日はすでに千億以上に上つておるかとも思うのであります。あらためて言うまでもなく、国民の零細な金を集めて、その累積が預金部の資金の大部分になつておると思うのでありまして、これを民間の建設資金に放出いたしますことは、いかなる意味からいつても、私はインフレのもとにはならぬと考えるのであります。むしろこの資金を国民経済に還元しないということが、デフレの要因になるのではないかという考えを持つておるのであります。その点に関して、たとえば給與だから、給與のようなものに対しては、預金部の資金などというものは、運用することは困難だというふうに、先ほど池田大蔵大臣は言われたのでありますが、私はこの国鉄のような、日本経済の大動脈をになつて活動しておるものは、最も対象として適切な事業ではないかというふうにも考えるのであります。その点に関して大蔵大臣の明快な見解をお伺いいたしておきたいと思います。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。国鉄の従業員に対しまして、裁定に基いて預金部から金を出して、裁定の線に沿つて、もう少しふやして行くというお考えの点につきましては、現在御承知通り経済九原則にのつとつてつております。しかもまた、別に経済三原則というのがありまして、一般の会社におきましては、借金をして給料を上げてはいけないという原則が、はつきり立てられておるのであります。公共企業体の建前から申しまして、他に惡影響がなければ、ある程度のことは考えられないかという点がありますが、私はただいまの経済再建の途上におきましては、預金部から借入れをして、そうして裁定に沿うという線は、とるべきでないと考えております。  次に、預金部の資金の運用についての御意見であります。まことにごもつともでございまして、その線に沿つてつております。千数百億円の預金部資金がございますが、これは国債を持つたり、地方債を引受けたりして、適当に運用いたしております。最近の貯蓄状況が非常によいので、預金部の運用し得る資金は、ただいまのところ百九十億円あまりございます。しかし今の運用の範囲は、地方債の引受けが、当初は二百三十億円であつたものが、三百五十億円になりましたが、この地方債の引受けと、食糧五公団への融資に限られておるのであります。この公団への融資は、四、五箇月前から動き出したのであります。それでやりまして、国の余裕金が百九十億円になつた。しかしこの金は、お話のように中小商工企業の長期資金に持つて行きたいと考えまして、先般の国会の財政演説におきましても、農林中央金庫を増資して、債券を発行し、あるいは商工中央金庫を増資して、二十倍の債券を発行したい、それには長期資金を使いたい、こういう意図を持つております。関係方面との折衝が長引きまして第六国会には出し得ませんでしたが、第七国会においては、大体了解がつきましたので、農林中金の、四億円を八億円にし、二十倍の債券を発行する。これには預金部資金が行き得ることと期待いたしておるのであります。
  82. 川崎秀二

    ○川崎委員 食糧五公団並びに地方債の問題に関連しての説明がありましたが、私は預金部資金というものは、こういうものに対しては積極的に関係方面の了解を得るよう、交渉すべきであるというふうに考えるのでありまして、その点においては意見は対立するものであります。私の質問は終りますけれども、今度の裁定に対して政府のとつた態度については、さきごろ菊川闘争副委員長の言われることには、これはスポーツで言えば、まつたくグラウンド・ルールを無視しておる、ちようど監督が審判の命令に服さないで、相手の審判をなぐつたというような事件と同じだというようなことを言われて、ちようどこの春起つた巨人軍対南海軍の試合に結びつけてのような比喩がございました。私をして言わしむるならば、これは監督加賀山さんも承服しておるのを、オウナーである。またスカウトであるところの経営者自体がグラウンドにおりて来て、池田オウナーが末弘審判員をなぐりつけたというように解釈しておる。驚くべきところの裁定に対する政府の無誠意と、まさに労働運動の将来の方向を誤らしむるような今回の措置に対しては、私は断然不服である。従いまして、いろいろ質問いたしたいと思いますが、時間が来ましたので、これで打切ります。
  83. 倉石忠雄

    倉石委員長 林百郎君。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣にお聞きしたいのですが、本朝の新聞に、あなたは吉田総理の代理として、国鉄裁定の問題並びに公務員の年末手当支給の問題について、マッカーサー元帥に懇請の書簡を出した、それから十八日に至つてブッシュ代将から返事が来たということの記載がありますが、これが事実かどうかということをまずお伺いいたしたい。
  85. 池田勇人

    池田国務大臣 書簡が来たことも事実でありますし、私が予算流用その他につきまして、決議した点につきましての承認を願いたいという手紙を出しましたことも事実であります。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 その書簡の内容について、もう少し詳しく本委員会において、仲裁委員会の裁定の問題についてはマッカーサー元帥にどういう懇請をしたか、具体的数字をもつて説明願いたい。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 裁定についての懇請はいたしません。私の職権に属しまする予算流用についての考え方を申し出たのであります。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、この裁定内容については、何ら懇請をしておらないというように解釈をしてもよろしいかどうか……。
  89. 池田勇人

    池田国務大臣 私からはいたしません。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、ブッシュ代将の返答というのは、これはサゼスチョンと解釈してよいかどうか……。
  91. 池田勇人

    池田国務大臣 サゼスチョンという言葉がわかりませんが……。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 これはいわゆるデイレクテイヴだとか、命令だとかいつて国会あるいは政府を拘束する、国会の決議いかんにかかわらず、とにかくブッシュ代将の書簡というものが拘束力を持つのか、あるいはあなたの所管に属する——政府を代表したか、私信か知らないが、その手紙に対するブッシュ代将の單なる返答という意味に解釈して、国会は独自の行動をして当然よいとわれわれは解釈しますが、そういうふうに解釈してよろしゆうございますか。
  93. 池田勇人

    池田国務大臣 これはスキヤツピンではないと考えます。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 そこであなたにお聞きしたいのだが、加賀山総裁は、国鉄の既定の予算並びに資金のうちから、十八億出し得るのだということを言つておるのを、あなたは努力をして十五億五百万円にしたと言いますが、これはどういう理由によつて査定されたか。
  95. 池田勇人

    池田国務大臣 現在の予算の成立過程から考えまして、出し得る、流用し得る最大限であると私は考えております。それは加賀山総裁には意見がございましよう。私は閣議に諮りまして、最大限度として十五億五百万円を決定いたしました。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、四十五億という裁定内容でありますが、十五億五百万円を越すそれ以外の三十億については、政府はどういうように考えておりますか。
  97. 池田勇人

    池田国務大臣 公労法の十六條の規定によりまして、政府裁定を尊重いたしまして、のみ得る、すなわち拘束せられる金額は、十五億五百万円でございます。しこうしてそのあとの問題は、国会に付議しておる次第でございます。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 これは国会承認するかしないかの場合の、われわれの材料として使わなければならないのだが、かりに承認した場合は、どういう財源をもつて充てようとしておるか。
  99. 池田勇人

    池田国務大臣 仮定の問題でお答えするのはどうかと思いますが、私の私見をもつてすれば、国会が差額を支給すべしという決議をなさつた場合におきましては、国会法律上の責任はございませんが、政府としては政治上の予算提出の責任は負わなければならぬのではないかと考えております。ただ問題は、国会予算提出権がないというのは御承知通りであります。従つて裁定につきまして、どうしても法律的に政府が出さなければならぬということでなしに、政治上の問題だと私は考えております。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 公労法の十六條によれば、国会承認を経て、初めて政府並びに国鉄は支拂いの義務を負うわけである。この裁定国会承認を得た場合には、どうしても支拂わなければならぬ義務が発生する。その義務を、政府予算を組んで裏づける義務が生ずる。かりに国会で残額を支拂うべしという議決があつた場合には、政府は具体的に予算を組んで、国鉄の支拂いのできるような道を開いて行かなければならない。だからここで政府がどういう財源を充てるかということによつて、われわれが承認を與えるか與えないかの判断の重要な資料になる。そこでかりに国会承認した場合には、具体的に池田大蔵大臣は、どういう財源から出すかということを考えておく義務がある。それを聞いている。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 初めの第一段の仮定の問題についてお答えしたのでありますが、第二段の財源の問題につきましてはお答えできません。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 お答えできない理由をお聞きしたいと思います。それが答えられないというところに、われわれは政府の不誠意があると思う。あなたも御承知通り予算の編成権というのは国会にないわけである。だから政府予算を組んで、かりに国会承認する場合には、これこれこういう財源があるけれども、これは大蔵大臣並びに政府見解としてはむりだとか、むりでないとか、そういう見解のもとに、この裁定案が国会にかけられない限り、われわれは審議の対象はないわけです。だから少くとも政府は、あなたもそうだし、大屋運輸大臣もそう言つているが、裁定の趣旨には沿うと口では言つているけれども、腹では裁定はけつてもらいたい。けりたいけれども、その責任は政府が負いたくないから、国会または、考え過ぎかもしれないが、関係方面の名をかりてまで、けろうとしておるというように、われわれは解釈している。もしあなたが真に裁定に忠実であるという建前ならば、かりに国会承認するとするならば、大臣としては、財源はこれこれこれより考えられない、しかしこれは政府考えとしては、むりならぬりということが示されない限り、あなたの誠意はわからない。その点についてもう少し具体的に、もし残額を拂うべしというならば、政府はこういう財源を考えるよりほか道がないということを、あなたから聞きたい。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 それは国会が残りの金額につきまして支出すべしという決議があつた場合に、私の考える点であるのであります。従いましてただいまあなたの御質問に対しましてはお答えはできません。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、政府の実際の腹は、十五億五百万円の残りは政府としては支拂いたくないのだというのかどうか、その点をまず聞きたい。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 支拂いたいとか、支拂いたくないとかいうことは、あなたのお考えにまかせます。政府は十六條の規定によりまして、予算上、資金上可能なる最大限度まで出します。その他は国会の御意見を聞いておるわけであります。
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 十五億五百万円以上越せば、なぜ、しからばあなたは不可能か、どういう根拠から、これが不可能かということをお聞きしたいと思います。私はこういう点は時間がありませんから、あまり深く入りたくはないのでありますが、少くとも裁定の中にもこういうことが書いてあります。公社の経営はこれを解決を與えるだけの能力を持つているということをはつきり言つております。それから昨日それぞれの専門家の意見を聞いてみましても、とにかく企業の合理化をし、人員を整理したために、六十億の金が浮いて来た。それから旅客運賃の値上げによつて、二百三十億から二百四十億の余裕が来年度は出て来る。石炭も三十億儉約した。しかもこの儉約したのが、退職資金法律上当然政府が見てやらなければならない金を、石炭の節約という形でこれを埋めている。しかも国鉄の資産は一兆だ。これにわずか三十億の金が出せないはずがないということは、大体仲裁委員会並びに専門家の意見つた。だからあなたが何か財政的な見地から、四十五億出すことが不可能なら不可能という、その理由をはつきり聞かしてもらいたい。
  107. 石田一松

    ○石田(一)委員 ちよつと関連して……。これは重要な問題と思います。政府国会に対する発言が全然食い違つているということであります。それは昨日の議院運営委員会において増田官房長官は、この十五億五百万円以外の残余の部分承認を求めるという件は、具体的に申せば、不承認を求めたいのであるということをおつしやつているのであります。要するに政府は、十五億五百万円は可能な範囲支出できるものであつて、残余の部分支出不可能であるから、ぜひこれを国会不承認してくれ、そういうことを求めているのであるということを、淺沼委員質問に対して言明している。にもかかわらず、大蔵大臣の御答弁を聞いておりますと、十五億五百万円は可能な限度においてやつたのであつて、残余の点については国会の意思を問うのであるとか、また先ほどの御答弁から察しますと、もし国会が残余を支給すべしという議決をなされたときには、それは政治上の責任が生じて、予算を編成しなければならないということをおつしやいますけれども、残余の部分に対する承認不承認かは、国会の意思によつて決定されるので、政府は何らそういうことについて今考えておらぬ、それは林君が御随意にお考えなさいということをおつしやるということは、まつた政府の残余の解決を求める発言の仕方が、食い違つているということであります。この点について私は明確に大蔵大臣から御答弁を願つておきたいと思います。
  108. 池田勇人

    池田国務大臣 林君の御質問にお答え申し上げます。ただいまの国鉄予算の編成の過程から申しまして、時期的、あるいはまた一般会計からの繰入れ、しかも年度がもう第四・四半期に入らんとしているとき、財政法上、また国会の意思等を考えまして、私どもが流用し得る金額は、十五億五百万円が最大限度であるのであります。これが十五億五百一万円になつたとか、あるいは十五億を切つたとか、こういうことは枝葉の問題であるから、答えません。しかもこの十五億五百万円というものは、国会で御審議を願つたところで、大蔵大臣あるいは国鉄総裁の独断でできまする分は、人件費の千三百万円にすぎないのであります。十四億九千万円は、これは財政法上違反ではありませんが、国鉄総裁並びに運輸大臣大蔵大臣等の考えで、とにかく国鉄の運行に支障を来さない限度におきまして、最大限度を流用したのであります。  次の御質問にお答え申し上げますが、ある国務大臣が議会に本案を提案議決を求めた場合におきまして、通してもらいたいとか通してもらいたくないとかいうことは、これは私情でございまして、これを云々すべきではございません。私が今お答えいたしましたのは、法律並びに国会規定によりまして、真正面からお答えした次第であります。
  109. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣にお聞きしたいのですが、国鉄職員の給與ベースは幾らとお考えになつておりますか。
  110. 池田勇人

    池田国務大臣 給與ベースは、正確な数字は存じませんが、平均が六千八百円程度ではないかと思います。
  111. 林百郎

    ○林(百)委員 その国鉄職員に対して、べースの賃金を支拂う義務を、監督者としての運輸大臣並び政府は財政的に負うかどうか。
  112. 池田勇人

    池田国務大臣 もう一回……。
  113. 林百郎

    ○林(百)委員 国鉄の給與というものはきまつております。この給與を支拂う義務というものは、国鉄並びに国鉄の監督者であるところの運輸大臣、並びに財政的には最終的な責任者はあなたですが、国鉄職員の給與の支拂いについて、そのベースに関しては支拂う義務を持つておるかどうか、責任を持つておるかどうかということです。
  114. 池田勇人

    池田国務大臣 べースに関して、支拂い義務は持つておりません。各人の給與額の支拂い義務は持つております。
  115. 林百郎

    ○林(百)委員 そこでお聞きします。各人の給與額について責任を負うとすれば、規定の給與額が実質的に欠けてしまつておるという場合には、その個人に当然給與すべきものを補うだけの義務はある。その給與がプラスになれば別として、欠けておるものを補うだけの義務は、当然政府は負うべきだと思いますが、その点はどうですか。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 支拂うべき給與というのが問題でありますが、これは各人各人によつて、給與規定によつてきまつておるわけであります。その給與規定によつてきまつておりまする給與は、支拂わなければなりません。
  117. 林百郎

    ○林(百)委員 このたびの裁定は、あなたが責任を負わなければならないという給與が欠けて来たのだ、その給與プラスではなくて、その給與が欠けているのだから、少くともこれだけを埋める義務はあるのだということを言つておるのですが、その点をあなたはどう考えておりますか。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 裁定案は各人の給與をきめるものではないのであります。裁定案は十六條によつて予算上、資金上可能な範囲内におきまして、政府を拘束するのみであります。
  119. 林百郎

    ○林(百)委員 どうも池田大蔵大臣ははつきりしないと思う。その四十五億というのは、既得の権利が阻害されておるから、少くとも既得の権利だけは守つてやらなければならないというものの総計が四十五億なのです。だからあなたに言わせれば、池田財政を守るためには国鉄の労働著の既得権を削つても、国鉄の労働者が死んでも、池田財政だけは守ればいいということに、極言すればなるのです。だから池田財政というのは、人民の生活を安定させるための池田財政なのか、あるいはインフレーシヨンを押えて、あなたに言わせればデイス・インフレと言うが、デイス・インフレのためには人民は死んでもいいのか。人民のためのデイス・インフレだと思う。そういう意味で、少くとも既得権に対しては、この裁定だけは、政府はこれを負う義務があると思いますが、この点はどうですか。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 前の給與の問題で私が問い返しをしたらよかつたのであります。とにかく給與規定によりまして支拂わなければならない金は、支拂う用意がある。また支拂わなければならないのであります。しかし仲裁裁定が與えられたら、政府はただちに裁定に基いて給與を支拂わなければならぬと私は考えておりません。十六條の規定からいつても、あなたのような議論は出て来ないのであります。
  121. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣裁定書を全然読んでいないと思いますから、この点はいくら言つてものれんに腕押しだと思いますが、大体調停の過程から、それから裁定の過程を通じて、政府答弁としては経済九原則、賃金三原則を持つて来ておるのでありますが、この賃金三原則にしても、経済九原則にしても、少くとも賃金の安定、規定した賃金だけは確保してやるということが賃金三原則の大前提だと思います。こういう意味で、この裁定に従うということは、あなたの守ろうとするいわゆるインフレーションを押えるということにも触れない。この点は、仲裁裁定書を読みますと、非常に細心な注意をもつて、少くとも何とかして現実に金を出してやろうという考えから——給與ベース・プラス幾らということになれば、あなたの心配になるインフレーションとか何とかしうことが起るだろうけれども、既得権ということになれば、この点はインフレーシヨンには触れないのだ、インフレーシヨンには影響はないのだということを言つておるのですが、あなたが十五億五百万円しか出せないと言うことは、そうした大きな国家的財政から言えば、これがインフレーシヨンになるのだ、公務員の給與に関係し、民間産業に関係し、これがインフレーシヨンになるという考えなのか、あるいはそうでないのか、その点をお聞きしたい。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 公共企業体第十六條によりまして、考えておる次第であります。
  123. 林百郎

    ○林(百)委員 もう一つお聞きしたいのは、ここに年末手当という言葉が使つてあるのですが、あなたとしては、これは年末手当考えておるのか。この三千幾らというのは、あるいは裁定書に基く——いわゆる裁定によりますれば、六千三百円べースを実質的に切り下げられたのを補うものなのだ。だから年末給與なのか。裁定に基く実質的な給與の切下げの回復——これは一人当り六千円年末までに出さなければならないのでありますが、それをわずか三千円で切りかえておるわけであります。年末手当なのか、あるいは既得権のそこなわれたものを補つてやるという、仲裁裁定の精神に基いて出すのか、その点をお聞きしたい。
  124. 池田勇人

    池田国務大臣 年末手当とかいうことは、御審議になつておるうちに入つていないと思います。公共企業体十六條の裁定の線に沿つてつておるのです。
  125. 林百郎

    ○林(百)委員 裁定の精神だと言えば、既得権が侵害されているので、既得権だけを補つてやらなければならないというのだから、仲裁裁定の精神に沿うということならば、既得権がそこなわれたのを補つてやるという気持で出しておるのかどうか。そこをあなたは、うんと言えばうんでいいのです。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 裁定案を尊重いたしまして、十六條の規定によつて出しておるのです。
  127. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、裁定によりますれば、国鉄従業員は六千三百七円ベースに対して、実質的に既得権が侵害されておるのだ、少くともその侵害された既得権だけは何とかして補つてやらなければならないわけだが、それをあなたは認めるのかどうか。仲裁裁定の精神に従うと言うならば、当然それを認めなければならない。
  128. 池田勇人

    池田国務大臣 仲裁裁定が、相当な金額をこの際出した方がいいという御趣旨でありますので、出すことにしたのでありますま。
  129. 林百郎

    ○林(百)委員 出してないではないか。  その次に、これは先ほどの質問にもありましたが、この十五億五百万円のうち、給與所得で所得税はこの中から幾らまたあなたの方へもどつて来るか、その点の総計を聞かせてもらいたい。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 各人々々によりまして給與金額が違いますと同時に、また納税の金額も違つておるのであります。ただ問題は、一般会計、特別会計あるいは国鉄、専売、公団等を合せまして五十三億円に相なるのであります。それで五十三億円の給與の支拂いがあつた場合におきましては、大体平均俸給から申しまして、十三、四億か十五億ぐらいの收入はあると考えております。
  131. 林百郎

    ○林(百)委員 先ほど末弘委員長からも話があつたのでありますが、民間では、ドツジ・ラインに沿つて企業の合理化のために首を切る場合には、その首を切る資金というものは融資しておるのであります。いわゆる首切り経営合理化のための融資は認めておるのでありますが、この点をあなたは認められますかどうですか。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 民間の企業の経営合理化につきまして、一時資金の支給につきましては、日本銀行からあつせんしておるということは聞いております。また事実も認めております。
  133. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、国鉄では吉田内閣の政策によつて、大体十万人ほど整理があつたのであります。この整理のために使つた予算が、最初退職資金十七億円と組んでいたのでありますが、これが大体五十四、五億になりまして三十七、八億は当然融資されるべきものを、政府から借入れなくて、企業の中でまかなつているのであります。もしこれを民間の産業と同じように、経営の合理化のために使つた費用であるから、これを政府法律上当然貸し付けるべきであるし、国鉄が貸してもらいたいということを申請した場合には、政府は貸す意思があるかどうか、この点をお聞きしたいと思う。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 そこで先ほど来国鉄の予算の編成の経過等を考えて、出せないということを申し上げたのであります。御承知通りに二十四年度の当初予算におきまして、行政整理の計画は大体できておるのであります。しこうしてその結果におきまして、整理資金等が予定よりもたくさんいつた。その後の国鉄の運用につきまして、今年度たくさんいつたというために、先般の国会におきまして大体三十億円の一般会計からの借入れをしておるのであります。この上、前に起つた退職金でしようがないのだからというので、借入金をしようとするならば、あなたのたとえをもつてすれば、企業体が合理化をして、そうして社債なり借入金なんかしたその上に、また借入金をする、こういう理論になつて来ると思うのであります。
  135. 林百郎

    ○林(百)委員 そういうりくつを言い出せば、たとえば今国鉄は二十六億の戰争後の復旧——これはもうだれが見ても当然独立採算制の企業の範囲内ではなくして、外部から援助してやらなければならぬという金が二十六億ある。しかも予算の編成当初に非常なむりがある。こういうむりを押しつけておきながら、独立採算制、独立採算制で行つて、最も企業の中で重要な勤労者の既得権をそこなうものを、詰めてやることすら政府考えなくて、そういうりくつを言うならば、私はこういうことになると思う。結局あなたも御承知通りに、仲裁の裁定というのは紛争を平和的に解決するために——一九四八年の七月二十二日のマ書簡にもありますように、特に公共企業体の労働者諸君の保護のために、平和的な紛争の解決の方法としてこの裁定の制度が設けられ、また公労法の第一條によりますれば、当事者は最大限の協力をしてこの仲裁の裁定には従い、公共企業体労働関係法の精神に従わなければならないということが書いてあるのであります。この第一條の二項によりますと、「主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を盡さなければならない。」といつておるのでありますが、あなたの今までの答弁を聞けば、全然政府側は誠意がない。これでは平和的な紛争の解決ということは不可能になる。今後労働階級にどういう事態が起きても、あなたは自分池田財政のためには、労働者がどんなに窮迫し、この年の瀬が越せなくてもいいのかどうか。今後起る労働階級の一切の紛争に対してはあなたは責任を負うかどうか。この点だけはつきり聞いておきたいと思います。
  136. 池田勇人

    池田国務大臣 私は国会の決議に基きました予算並びに法律に基きまして、日本国民全体のためによくなるような考え方で、政治に携わつておるのであります。
  137. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、日本国民全体のために考えていると言うが、仲裁の裁定に従うということは、日本国民のためにならないというように解釈していいですか。
  138. 池田勇人

    池田国務大臣 仲裁の裁定に従わないとは言つておりません。法律にきめられた範囲内におきまして、できるだけ裁定の線に沿うよう努力いたしておるのであります。それが今回訂正いたしました理由であるのであります。
  139. 林百郎

    ○林(百)委員 池田大蔵大臣は口では従う従うと言つておりますが、実際は従う意思がないということは明瞭であると思う。たとえば財源にしてみましても、一千何億という復金融資が焦げついておる。これもとろうと思えばとれる点が十分ある。しかも法人税もあなたが知つておるように二百二十七億も自然増になつておる。もし脱税を少しついて行けば、法人税のごときは倍額も自然増になる。せめてこのうちのほんの三十億ぐらいを、なぜ労働者に出せないのか。結局あなたは池田財政計画の一切の犠牲を労働者にしわ寄せして、池田財政を盛り立てようとしておる。あなたの池田財政のもとには、数万人の労働者の白骨が踏みにじられておるということになるのであります。わずか三十億ぐらいのものをなぜ出せないのかということを私は言いたい。そういう意味で池田財政は労働者の犠牲のもとになされ、労働者の生活の破壊のもとになされるという結論を私は持つておるのでありますが、この点についてあなたの御見解を聞きたい。     〔「そんなこと答弁できるか」と呼び、その他発言する者多し〕
  140. 倉石忠雄

    倉石委員長 静粛に願います。——静粛に願います。
  141. 池田勇人

    池田国務大臣 歳入確保につきましては万全の措置を講じております。従いまして復金につきましても、今年度におきまして百数十億円の引上げをいたしておりますし、来年度におきましても、元利合計百八十数億円の收入を見込んで、着々回收に努めております。また税の徴收にいたしましても、法人税その他につきまして十分査察を加えまして、自然増收を生み出しておることは御承知通りであります。そういうようにいたしましても、なおかつ歳出は十分にまかなえないのであります。国会で協賛を得ました範囲内におきましても、最大限度の流用をしたことは、金額の点から見てもおわかりと思います。
  142. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの質疑に関連いたしまして、春日正一君より発言を求められておりますからこれを許します。簡單に願います。
  143. 春日正一

    ○春日委員 ごく簡單にお聞きしたいのですが、大体仲裁委員会も、あるいは加賀山総裁も、運輸大臣も、尊重して出せるものなら出したいと言つておる。あなたもその点は間違いありませんね。——そこでさつきの発言の中で、重要な問題だからこれははつきりしておきたいと思うのですけれども、あなたは労働者の生活はこの程度でいいと思うということをたしか言われた。これは重大な問題だ。だからこの点をはつきり確認してもらいたいと思う。国鉄労働組合の代表も来て聞いておるから、あなたがこの国会の席上で、労働者の生活はこの程度でよいと思うということを言われた、この点をはつきりと確認していただきたい。
  144. 池田勇人

    池田国務大臣 私は勤労者のみならず、日本国民全体がよりよくなることを望んでやつておるのであります。この程度でよいとは申し上げていないのであります。
  145. 春日正一

    ○春日委員 この程度でよいと言わぬというなら、非常にけつこうですけれども、あなたは国鉄労働者の生活を御存じかどうか。どういうふうに見ておられるか。この点を聞きたい。
  146. 池田勇人

    池田国務大臣 国鉄労働者のみならず、公社では専売公社の職員並びに一般公務員の状況を知つておりますから、国会審議を願いました予算案につきまして、できるだけ努力いたしまして、今回のように臨時の年末手当を出すことにいたしたのであります。
  147. 春日正一

    ○春日委員 よく知つておるという話ですけれども、それで三千一円ですか。これが実際渡ると下の方の受取る分は二千円ぐらいにしかならぬ。しかもこれらの人たちは非常に大きな借金を負つておるし、日本人で二食の人もたくさんあるのですよ。それでこの二千円の金を出したから、これで間に合うというように言えるか。ほんとうに生きて行かせようと思えば、三千億ぐらいの金が出せないはずはないのだ。民間企業たつてずいぶん苦しいんだけれども、それでも何とかやり繰りして、越年資金も出すようにしておるというときに、政府の当局にある人が、これで最大限やつた、どうにでもしろということになつたら、一体これはどうなる。そこで私もうそれ以上あなたの考えを聞いてもしようがない。あなたはとにかく三千一円出して、これで何とかやつて行けると思つておるというなら、これはしようがない。しかしもう一つ聞いておきたいことは、先ほど来あなたもそう言うし、政府もそう言うけれども、何か質問にぶつかると、十六條々々々と言う。結局この公共企業体労働関係法の死活のかかつているのは、この十六條だ。ところがあなたが今言われるように、十六條に従つてできるだけのものをという形で、この裁定の金額を踏みにじつて行くというようなことをやられるとすれば、これは公共企業体労働関係法が死んでしまうことになる。そこで特にこの点についてはつきりさしておきたいのだけれども、專売の仲裁ももう始まつておる。将来こういう仲裁に対して、この十六條という見解をあくまで固執するかどうか、この点だけはつきりさしておきたいと思います。これは労働運動に対しても、重大な問題だ……。
  148. 池田勇人

    池田国務大臣 十六條は現行法でございますから、この線に沿つて行くよりほかにありません。
  149. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの質疑に関連いたしまして、福田昌子君より発言を求められております。これを許します。簡單にお願いいたします。
  150. 福田昌子

    福田(昌)委員 簡単に質問させていただきます。この十五億五百万円は、裁定の一部を履行する意味でお出しになつたということを私はお伺いしたのでありますが、もしこの裁定が出なかつた場合においては、国鉄従業員に対してどういう御処置をおとりになるお考えであつたのでありますか。
  151. 池田勇人

    池田国務大臣 裁定がなかつた場合につきましては、なかつたときの状態で進んで行くよりほかないのであります。
  152. 倉石忠雄

    倉石委員長 ただいまの質疑に関連いたしまして、川上貫一君より発言を求められております。これを許します。川上貫一君。
  153. 川上貫一

    ○川上委員 私の質問は簡單であります。実はただいま予算委員会で大蔵大臣のおいでを待つたのでありますが、こちらにおさしつかえでおいでを願えなかつた。そこで承りたいと思つてつたのでありますが、この問題はただいまいろいろ議論が出ておりますけれども、單に労働者が食べられる、食べられぬという——これは重大でありますけれども、これだけではないと思う。これは日本の労働政策と日本の政治、このものを決定して行く一つの大きなかなめだと思う。それゆえにこの問題は、来年度において大蔵大臣がいかなる賃金政策を持つておられるかということを承つておきませんと、核心をつかない。了解ができない。そこで承りたしことは、来年度において賃金べースをおかえになる予定であるか。来年度予算は六千三百円でお組みになる予定であるか、この点がお聞きしたい第一点であります。
  154. 池田勇人

    池田国務大臣 この前の補正予算を御審議願いましたときにも、十五箇月予算と申したことがあるのでありますが、昭和二十五年度予算につきましては、現在の六千三百円ベースで進んで行くつもりで予算を組んでおります。またこの予算を、今回年末手当を出したからといつて、かえる気持は私にはございません。
  155. 川上貫一

    ○川上委員 それに関連してお尋ねいたしますが、そういたしますと、大蔵大臣は人事院の裁定を妥当だとお考えになつておられますか。この点をお答えを願います。
  156. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちよつとお待ちください。人事院関係の問題は、冒頭に私が申しておる通りに、なるべく国鉄裁定の問題に限るように希望いたしてありますので、なるべく人事委員会にお願いいたしたいと思います。
  157. 川上貫一

    ○川上委員 了解いたしました。それでは裁定委の裁定を妥当とお考えになつておりますかどうですか。これをお伺いいたします。
  158. 池田勇人

    池田国務大臣 裁定を尊重いたしまして、できるだけ予算上、資金上の措置をとつたのであります。
  159. 川上貫一

    ○川上委員 尊重を聞いておるのじやありません。妥当とお考えになりますか、これは妥当でないとお考えになりますか。これを聞いておるのです。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 私は大蔵大臣として財政的にはとにかく十五億五百万円しか出せない。その程度において最もいい裁定だと思います。
  161. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと私には了解ができない。この年末の給與というものは、この年末の年を越すために、ただ年越し金をもらう、これではありません。長い間労働者は安い賃金で借金をしております。あるいはいろいろな買掛金も持つておる。それを埋めるものでありますから、この年末にこれたけのものを出されまして、来年になつて賃金べースをおかえにならぬということになりますれば、これはつじつまが合わないと思う。  そこで一点お伺いいたしますが、来年は六千三百円でも、今日の状態よりか何かの理由で生活がもつとよくなるんだというお考えがありますか、どうですか。それがありませなければ、年末に出しておいて来年はベースをかえないというりくつが合わぬと思います。この点をお聞きしたい。
  162. 池田勇人

    池田国務大臣 来年度におきましては、減税その他政府各般の施策がよろしきを得まして、実質賃金の上昇があることを確信いたしております。
  163. 福田昌子

    福田(昌)委員 十五億五百万円は裁定の趣旨を尊重して出されたということになりますると、裁定内容から申しまして、結局これは七月以降の給與の切下げに対する一部の補充だと見ていいと思うのであります。そういたしますと、これに対しまする課税というものに対しましても、ある程度特別の考慮が拂われなければならないと思うのでありますが、それに対して大蔵大臣の御答弁を承りたい。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 全般的の問題でございまして、減税につきましても、この前審議願いました以上のことをやるべく努力いたしております。また物価政策につきましても、できるだけ低物価になるような施策を講じております。また主食の配給につきましても、できるだけ今の二合五勺を上げて行こうという政策を考えておりますので、来年になりましたならば、今年の七、八月ごろよりもよほどよくなつて来るではないかと思つております。
  165. 倉石忠雄

    倉石委員長 この際、ただいまの質疑に関連いたしまして、石野久男君より発言を求められておりますので、これを許しますけれども、石野君はいつもたいへん御雄弁で、時間がかかりますが、今日は時刻もおそいのでありますから、ごく簡單にお願いいたします。石野君。
  166. 石野久男

    ○石野委員 一つだけお聞きします。大蔵大臣裁定の線に沿つて、十六條の規定に基いてこれを付議したと、こう言つておるのでありますが、それによりますると、この付議された趣旨説明のときに、四十五億という支出につきまして、それが予算上、資金上可能な支出であるかを検討いたしましたところ、この金額を支出することはとうてい不可能でありますので、法律規定するところに従いまして、裁定国会に上程いたし国会の御審議を願う次第であります。」こう言つております。われわれが本日いただきました資料によりますると、十日にすでに国鉄の総裁からこれを追加予算の形で政府に具申されておるのであります。そして国鉄法三十八條によりますると、当然これに対するところの処置がなされなければならなかつたわけだと思うのであります。ところがこの説明によれば、全額ができないという趣旨になつておるのでございまするから、従つてこういう提案の仕方というものは、国鉄法第三十八條規定という点から見ますると、矛盾があるというように私は考えておりまするし、もしこれが矛盾でないとするならば、政府は全然追加予算に対しての誠意がなかつた考えがなかつたというふうに見てよいのじやないかと思うのであります。  そこで私は大蔵大臣にお尋ねいたします。この最初提案されましたところの趣旨は、趣旨の中に誤りがあつたのではなかつたかどうかということについて、国鉄法三十八條とのにらみ合せの観点から、御答弁をいただきたい。
  167. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどこの席で答えた通りでございます。三十八條以下の規定は、一般の予算要求の際の手続規定をきめておるのであります。私といたしましては、裁定に対しましては、十六條の規定によつて一応やるべきだと考えております。しかして他の場合におきましてどうこうというときには、三十八條以下で行くのが法の精神だと考えております。
  168. 石野久男

    ○石野委員 三十九條の規定追加予算規定しておるのでございまして、その第二項には第三十八條がこれに準用されるということが書いてあるのでございます。だから三十八條は経過規定規定しているのではなく、国鉄から出ておる予算は明らかに追加予算として出ておるのでございますので、当然三十八條は適用されなければならないと思うのでございます。昨日の仲裁委員長の発言によりましても、これは明らかに政府は違法であるということを言つておる。そういう見解を仲裁委員長は持つておるのでございますから、ただいまの大蔵大臣答弁は、その点非常に齟齬がある、見のがしておる、こういうふうに考えるのでありますが、いま一度その点につきましての法理的な観点からの御説明を願いたい。
  169. 池田勇人

    池田国務大臣 私は大蔵大臣といたしまして、国鉄の三十八條、三十九條は十分よく知つております。しかして予算の要求があつたならば、これを調整して閣議を経て国会に出すのであります。これは裁定の問題とは別個の問題であります。私は十六條は既定予算範囲内でやるべきだと考えておるのであります。別に予算を出すというときならば、これは三十八條、三十九條で行くのであります。
  170. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにて暫時休憩いたします。     午後一時五十一分休憩      ————◇—————     午後四時四十六分開議
  171. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  この際政府より発言を求められております。これを許します。大屋運輸大臣
  172. 大屋晋三

    大屋国務大臣 昨日の午前の本委員会におきまして、石田君、林君、赤松君の開会璧頭の御意見に対しまして、私から述べました件を今回さらにここで復唱いたしておきます。去る十二月十二日に、政府から公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き国会議決を求めるの件を、国会申達いたしておきましたが、昨日右の前文及び理由書を別紙の通り訂正をお願いするように、国会にあらためて訂正の文書を提出いたしました。その前文と理由書を読んでみます。   公共企業体仲委員会の別紙裁定中、十五億五百万円以内の支出を除き残余について公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定により、国会議決を求める。     理 由   昭和二十四年十二月二日、公共企業体仲委員会が、国鉄労働組合の申請にかかる賃金ベース改訂の問題に関して下した裁定につき、十五億五百万円以内の支出予算資金上可能であると認められるので、この限度において右裁定を実施し、残余は、公共企業体労働関係法第十六條第一項に該当するので、同條第二項り規定により国会に付議する必要があるからである。  右の次第でありますから、何とぞ愼重審議をお願いいたします。
  173. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより質疑を継続いたします。石田一松君。
  174. 石田一松

    ○石田(一)委員 私は去る本会議におきましても、この裁定に関しまして、緊急質問の形で政府当局に質問をいたしたのでありますが、いまだ釈然としない点もございますので、二、三関係大臣質問をいたしまして、その所信をお伺いしたいと思うのであります。まず最初に私が聞いておきたいと思いますことは、これは法律的な問題なのでありまして、法務総裁に特にお伺いしたいと思つたのでありますが、法務総裁は今お見えにならないようでありますので、この法律解釈問題については一応留保いたしまして、労働委員会などが開催されたとき、法務総裁の出席を願つて質問をいたしたいと思つております。  そこで、ただいま大屋運輸大臣は、昨日の当合同審査会の開会劈頭、私たちが異議を申し出まして、お尋ねしましたことについて、今日ただいま運営委員会で、これは訂正としてこのまま受理されることに決定されましたので、そこであらためて私はお伺いしたいと思うのであります。この理由書に、「残余は、公共企業体労働関係法第十六條第一項に該当するので、同條第二項の規定により国会に付議する必要があるからである。」と説明してあるのでありますが、これは少くともこの理由書のみから考えましても、また公労法のいわゆる十六條の規定から考えましても、予算的措置において不可能なもの、すなわち公共企業体の予算上、資金上不可能なもの、そのうちの十五億五百万円は支出が可能であるので、この残つた金額についてのこれは問題である、こういうふうに考えるのであります。でありますと、ここに提出されておりますところの仲裁委員会から裁定された裁定そのものというものの厳密な内容は、第一項、第二項、第三項、第四項とわかれておるのでありまして、この政府理由書によりますと、これは第二項のうちの前段の方をさすもの、いわゆる第二項に、「前項の当により本年度に於ては、公社は総額四十五億円を支拂うものとする。」とある、この四十五億円といううちの十五億五百万円以内の支出が可能であつて、残余の三十億未満の金が支出不可能である、この点を国会に付議されているものと、こう了解してよいのでございましようか、この点に関する運輸大臣の御見解を承りたいのであります。
  175. 大屋晋三

    大屋国務大臣 ただいまの石田君の御質問でございまするが、政府といたしましては、この裁定の金額四十五億を問題にいたしまして、この四十五億のうち十五億五百万円以外が、いわゆる金銭的に見まして、予算上、資金上これが支出不可能である、この分に対しまして国会審議をお願いいたすという趣旨でございます。  なおこの裁定の第一項ないし第三項、第四項がございまするが、これもむろん国会が自由意思において、適当な御審議をくださるか、くださらぬか、これは国会の都合であると思いまするが、政府は主としてこの資金的面に対しますることをお諮りいたしたいと考えております。
  176. 石田一松

    ○石田(一)委員 ただいまの御答弁によりますると、政府はこの裁定の第二項の四十五億円のうちの、支拂い可能なる十五億五百万円を除いた残余の金額についての問題を、主として国会に付議したのであつて、第一項、第三項、第四項は、国会審議してくださるか、くださらぬかは、国会の意思によるという御説明であるようでありますが、しかしただいま政府がお出しになりましたこの理由書によりますと、「残余は、公共企業体労働関係法第十六條第一項に該当する」——第一項に該当すると申しますと、第一項は、「公共企業体の予算上又は資金上、不可能な資金支出内容とするいかなる協定」であります。これを三十五條の但書で、裁定と読んでもよい、読むべきだというお話でありますが、「裁定も、政府を拘束するものでない。」「又国会において所定の行為がなされるまでは、そのような裁定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」とありまして、これは理由書によりますと、資金的な面、すなわち支拂い不能な面のみに関する第一項の規定である、私はこう解する以外にないと思うのであります。しかもこの理由書によつて、「同條第二項の規定により国会に付議する必要があるからである。」というのは、同條第二項の規定によつて国会に付議する必要がございますのは、「前項の協定をなしたときは」——これは裁定と読んでもけつこうですが、裁定をしたときは、政府は、その裁定がなされた日から十日以内にこれを国会に付議して、その承認を求めなければならない。すなわち政府は十日間という期間内に、この裁定の、いわゆる前項の協定でありますから、支拂い可能な、要するに協定、資金の面である。これがこの第十六條の本旨であると思いますので、結局は政府提出されたこの提案理由というものは、まつたくこれは資金関係のみである。予算措置のみであつて裁定にいうところの二項を除いた一項、三項、四項、これは政府提案された理由書を見ても、あるいはまた前文を見ましても、この中に含まないものである、政府提案の中に含まないものである、審議の対象以外のものであるこういうふうに私たちは理解してよいかどうか、その点について御説明を願います。
  177. 大屋晋三

    大屋国務大臣 石田君の御意見通りでけつこうだと存じます。
  178. 石田一松

    ○石田(一)委員 ただいままことに明快なる運輸大臣の御答弁を私は承つたのでありますが、そういたしますと、ここに第三項に記載されてありますところの、「組合の要求する年末賞與金は認められないが、公社の企業体たる精神に鑑み、新たに業績による賞與制度を設け、予算以上の收入、又は節約が行われ、それが職員の能率の増進によると認められる場合には、その額の相当部分を、職員に賞與として支給しなければならない。」という項目、第四の「本裁定解釈又はその実施に関し当事者間に意見の一致を見ないときは本委員会の指示によつて決定するものとする。」という項目、しかも第一項の、「賃金ベースの改訂はさしあたり行わないが、少くとも経理上の都合により職員が受けた待遇の切下げは、是正されなければならない。」こういう裁定書の意思というものは、当然に本衆議院においてこれが議決された後といえども、この一項、三項、四項は、ただいまの大屋運輸大臣の明白なる御言明によつて、明らかに効力はそのまま存締するものであると私は理解したいのでありますが、それでけつこうでありますか。
  179. 大屋晋三

    大屋国務大臣 いや、私が申し上げたのは、この資金的面を審議するように、訂正の理由書に書いてあるのでありますが、しかしながら、それを逆説的にいたしまして、この三項は政府が何事も触れたいがゆえに、これは政府裁定を認めたというふうな石田君の御所論には、遺憾ながら反対であります。この精神は、昨日からの質疑の中で、御質問がしばしばありましたので、やはりたびたび私が触れておりますが、公共企業体になぜしたのかというと、いわゆる公務員制度にあらざる公共企業体という新しい試みで、日本国有鉄道の運営を能率化し、合理的なものにして行きたいというねらいで、こういうものをこしらえたのでありますがゆえに、国鉄の従業員の努力によつて能率が改善し、国鉄の運営が非常によくなり、そこに営業の収益が非常にあがつたような場合には、国鉄の職員にその利益を還元してやりたい。こういう考えは、これを二段にわかつて考えることができるのであります。現在の制度におきましても、いわゆる国鉄のさようないい結果が生れた場合には、国鉄総裁から政府に具申したら、政府運輸大臣並びに大蔵大臣の認許を得まして、いわゆるプロフィット・シャーリングのような考え方で、国鉄の職員に還元することができる場合もあろうかと思います。さらに進んで、私は昨日もこの点に触れたのですが、運輸大臣大蔵大臣の認許を要せずして国鉄総裁自身のはからいによつて、その上つた成績を従業員諸君に還元して行くような制度に将来改めることが、より理想的であるという考え方を私は申し上げたので、その意味に御了承願いたいと思います。
  180. 石田一松

    ○石田(一)委員 まことにけつこうなお考えと思うのです。私はこの仲裁委員会の裁定の、いわゆる第三項というものが裁定されない以前において、運輸大臣のただいまのような御意見を承りますとすれば、まことにけつこうなお考えであろうと思うのであります。しかし現実にこの問題について、直接具体的にこの第三項が触れております。しかも第三項あるいは第四項あるいは第一項等の問題は、第二項というものを切り離して考えた場合に、ただちにこれが第十六條の公共企業体の予算上または資金上、不可能な資金支出内容とする裁定ということには、これは何と考えてもならないのであります。要するに第一項も第三項も第四項も、いずれも、どんなに読んでみましても、公共企業体労働関係法の十六條にいうところの、いわゆる不可能な資金支出にはならぬということ、しかも今政府が訂正なさいましたいわゆる理由書の解釈においても、あるいはまた訂正を要求なさいましたこの前文においても、どの面から考えても、この裁定書の第一項、第三項、第四項は、国会提出された審議の対象になつていない、こういうふうに解釈する以外に、これを正しく審議の対象とすることになり得ない、こういうふうに考えるのであります。この提案あるいは訂正の理由も不備ではないか、こういうことを考えるのでありますが、この点についての見解をお尋ねいたします。
  181. 大屋晋三

    大屋国務大臣 主として——主としてと言うと、はなはだ薄弱になりますが、政府の意図は、第二項の資金的の措置に対しましてこれを問題にいたしておるのでありますが、さらばと申しまして、ただちにしからば一項、三項、四項はこれを認めたかという考えは、少しも持つておらないのであります。
  182. 石田一松

    ○石田(一)委員 これはまことに重大な問題であると思うのであります。実は公共企業体労働関係法によつて、十六條に規定してあるものは、要するに予算的措置を伴わなければ、政府あるいは公共企業体が今ただちに実行できない、こういう資金上、予算上、不可能な支出内容とする裁定であつたときには、これはなるほど国会に付議して、その承認を求めて支出をしなければならないのでありますが、現在予算的な措置を必要としないところの——少くとも第四項に「本裁定解釈又はその実施に倒し当事者間に意見の一致を見ないときは本委員会の指示によつて決定するものとする。」こういうような予算的措置を伴わない仲裁委員会のいわゆる権限とか見解、そうした意思が発表してある。その仲裁委員会の予算措置を伴わない意思をまで、国会でこれを議決の対象として否認し、あるいは承認するという形がなされるかどうか。こういうことをはつきりこの際政府当局——もし運輸大臣、あるいは労働大臣において御意見があるならば労働大臣の御意見も承りたい。それでどうしても解釈上はつきりした責任ある答弁ができないとおつしやるのでしたら、政府部内においていわゆる法律解釈については権威を持つていらつしやる法務総裁から、はつきりした御答弁を聞いておかなければ、私たちは今後審議を進めて行く上において、どの部分審議して、どの部分審議して悪いのか、これはまことに混乱に陥るというふうに考えるのであります。この点について政府当局としての責任ある御答弁、具体的に申しますと予算的措置を伴わない裁定そのものに対して、国会審議権を持つておるか。政府はその裁定をも、予算措置を伴わないにもかかわらず、これを公労法の第十六條第一項、第二項に関係するといつて国会提出することは違法ではないか。このことをはつきり御答弁願いたいと思うのであります。
  183. 大屋晋三

    大屋国務大臣 石田君は資金的事項にあらざることの記載してある事柄は、すべて予算的に見て、これは支出不可能な事項ではないじやないかとおつしやいますが、それは当らないのでありまして、この場合、十六條の規定政府措置をとるべきものは資金上の問題であります。そうしてたとえばこの一項のごときは、こういう文言でありますが、「賃金ベースの改訂はさしあたり行わないが、少くとも経理上の都合により職員が受けた待遇の切下げは、是正されなければならない。」ということ、これは資金関係とは別問題で、それから最後のアービレーシヨンの疑義の問題、「本裁定解釈又はその実施に関し当事者間に意見の一致の見ないときは本委員会の指示によつて決定するものとする。」ということが、予算的事項の、つまり支拂いを不可能としないものであるから、即政府がこれを認めたものであるという意見は、まことにこれは私には理解できないのでありまして、重ねて申し上げまするが、政府の扱う問題は、十六條の規定によりまして、資金支出を不可能とする面を国会に対して提出いたしましたので、従いまして一、三、四の文句をただちに承認するとかしないとかいう問題は触れておらぬのであります。     〔倉石委員長退席、稻田委員長着席〕
  184. 石田一松

    ○石田(一)委員 どうもはつきりしないのでありますが、私の申しますのは、これは今運輸大臣説明していらつしやる、予算的措置を伴う——要するに資金上、予算支出が不可能である、資金支出が不可能であるといつて提出されたことはわかつておるのです。それが第二項にいう四十五億円というものはとても支拂えない。これはよくわかります。それで十五億五百万だけ拂うのだ。その残余の部分について、要するに国会議決を求められたとおつしやる。その残余は金額の残余であるのか、それとも一項、二項、三項、四項に規定するところの、この裁定そのもの全部の——十五億五百万を除いた全部そつくりの裁定内容をさすのか。こういうことを、私ははつきりお尋ねします。
  185. 大屋晋三

    大屋国務大臣 はつきりお答えいたしますが、資金的に見た四十五億マイナス十五億五百万円の残余を問題に供しておるのであります。
  186. 石田一松

    ○石田(一)委員 これは残余の解釈でありますが、ただいま——これは仮定のもとに立つようでありますが、もし国会がこの政府提出いたした本件に対して承認すべからず、これを不承認という議決をいたしたといたします。さて不承認いたしましたあかつきに——しかし承認された部分の、いわゆる可能支出部分の十五億五百万を各労働者に配分する関係、これらの点について当事者間に疑義の生じたときに、これは政府があらかじめ——昨日新聞などで私は拜見したのでありますが、給與額に三分の一をかけて、それに七百円を加えるという関係で生れて来る数字、たとえば三千一円というものが支給される。こういう私は方程式を見たのでありますが、こうしたことについて、もし従業員の間に異議があつた、あるいはまた国鉄当局においてもお考えがあつたりしたときに、政府国会提出されたこの案件そのものは、四十五億の支出可能な範囲以外の残余のものを決定するのであつても、特に第四項によつて、当事者同士の解釈に疑義があつた場合、これは仲裁委員会の指示に従うべきものじやないか、こういうふうにこの裁定の一部分は生きて来るのじやないか、こういうことについて今お尋ねしておるので、この点に関して私は今後非常な疑義を残す、こういうふうに思うのでありますが、この点に関してお伺いいたします。
  187. 大屋晋三

    大屋国務大臣 私に意見を求められるならば、私がただいま申し上げた残余とは、四十五億マイナス十五億五百万円の問題だけを取扱つております。
  188. 石田一松

    ○石田(一)委員 たいへんこれは重要な問題でありまして、運輸大臣をのみ責めても、この法的解釈の問題については、政府のしつかりした御説明は求められない、こういうふうに思うのであります。そこで私はここにちよつと御参考までに申し上げたい。これは国鉄側から出された資料でありますので、これは間違いないと思いますが、職労第百八十八号、昭和二十四年十二月五日、日本国有鉄道加賀山総裁から運輸大臣あてに出されたこれは一つの通達でありますか、通告でありますか、その中のいわゆる本文を読んで見ますと、国鉄は仲裁委員会の裁定に基いて、とにかく拘束されておる、このことをはつきり認めておるのであります。だといたしますと、拘束されておる国鉄は、今後国会議決をなされた後に、ただいま申し上げる第四項であるとか、第三項であるとか、あるいは第一項に関するような問題は、国鉄当局として、この裁定された内容自分で履行する義務を負わないのか。要するに国会議決は今運輸大臣がおつしやつた通り、四十五億から十五億五百万円をさつぴいた残余が不可能であるということに対する議決をするのでありますが、その他の要するに残つた問題は、国鉄当局あるいは当事者間において取上げられないのか、生きて来な、いのか、こういうことを今聞いているのであります。
  189. 大屋晋三

    大屋国務大臣 非常に質問が明瞭になりましたが、国鉄の経営者、組合が裁定によつて拘束をされること、もう嚴として事実間違いないのであります。但し政府関係におきましては、予算上、資金上本可能であるという面を、政府国会に御審議を願うというふうに、はつきりいたしております。
  190. 石田一松

    ○石田(一)委員 そういたしますと、国鉄はこの裁定に拘束されておる。国会でたとい残余のものが支拂い不可能であるからというので、これを承認すべからずという議決をした場合にでも、この裁定そのものの効力は、国鉄当事者双方を拘束するものである。そういう見解は今運輸大臣によつて明らかにされたものとして了承いたしました。その了承のもとに立ちまして、私は——違いますか。違いますれば、もう一ぺん……。
  191. 大屋晋三

    大屋国務大臣 石田君の今繰返されたことは全然違います。国鉄は裁定に服従する。国鉄の組合も経営者も服従するのでありますが、これは予算上、資金上、可能な面において服従するのでありまして、不可能な面におきましては、政府を通じ国会審議を願うので、石田君は国会が不可能であるという場合においても、政府は拘束されないかもしれないが国鉄は拘束されるのだという言いまわしをされましたが、それは事実でありません。その場合には——私はその点末弘さんとも意見が違うのでありますが、国会で否認になつた場合は、国鉄の義務は免責である、かように考えております。
  192. 石田一松

    ○石田(一)委員 よくわかりました。私は今これをこまかくついて、運輸大臣の不用意な発言の言質をとらえよう、そんな考えで言つておるのではありません。要するに私がほんとうに聞いておきたいと思いますのは、この不可能な支出の面に対して、国会議決するんですね。その点について、国鉄当局もこれはもう拘束されないことになるという政府見解を、仮定として一応了承するといたしましても、しかし今の四十五億の中の一部支出可能な面のみがなされる。それはいいんですよ。そのときに第三項ですか、「組合の要求する年末賞與金は認められないが、公社の企業体たる精神に鑑み、新たに業績による賞與制度を設け、予算以上の收入、又は節約が行われ、それが職員の能率の増進によると認められる場合には、その額の相当部分を、職員に賞與として支給しなければならない。」という條項がありますが、これは直接四十五億には関係がなく、これは今後の問題であります。しかも今後国鉄の従業員諸君の能力、能率によつて、これだけのものが出たというときには、これの一部分を労働者諸君に賞與として支給するようにしなければならぬというような裁定が三項にあるのです。これは四十五億とは別個の問題です。だから政府は、四十五億の一部分を組合員諸君に——残余の部分を国全に提出して、運輸大臣のおつしやるように、国鉄が拘束されぬ部分の決定を求めようとする。ところがこの議決以外の内容であり、また今後出て来る問題であると解せられるところの第三項、あるいはこの十五億五百万円の配分等に関しても、もし議決があつたときには、これを生かして支給できるかどうか、この点に関しまして、私は国会で否決され光ものは政府を拘束しないが、国鉄を拘束するのだ、そういうことを今申し上げようと思つておるのではないので、残余の問題は別問題であります。今後の問題が第三に規定されておりますが、これを国会提出して、たとえばもしこれを国会が否決したとなるとどうなるか。全部拘束がなくなるのかどうか、この点をはつきりお伺いいたします。大屋国務大臣 石田君の御質問の趣旨よくわかりました、すなわち一、三、四ですね。特に三のごときは、これは仲裁委員会の国鉄に対する態度といたしましては、第三の文言は、将来に対してかようかようのことが実は望ましいという勧告でございますから、国鉄は十分この勧告の趣旨を尊重して、これを遵奉する義務があると私は思いますが、さてその場合に、さらに予算的措置国鉄総裁限りで可能の場合でありましたならば、ただちに実行してよろしゆうございます。またそれが不可能であつた場合には、今回と同じように政府を通じ、国会にその措置国鉄総裁としてとらなければならぬという問題が残るので、私は石田君の見解とここで完全に一致したと思います。
  193. 石田一松

    ○石田(一)委員 私の意見と一致したというなら、まことにけつこうなんですが、ちよつと違いますね。(笑声)ただいま運輸大臣は、これは政府に今後こうしろという裁定委員会の勧告だ、こういうように言うが、これは勧告じやない。要するに公労法規定に基いて——法律規定に基いて、公共企業体の労使双方に紛争の生じた場合に、これを解決する最後の機関として、法律で構成しておるところの仲裁委員会がなした、最後決定たる裁定なんです。これは勧告じやございません。できるならこうせいというのではありません。この第三項をお読みになつても、はつきり賞與は支給しなければならないというような強い表現を用いておる。これは裁定でございまして、決して勧告ではございません。しかし今運輸大臣がおつしやつたように、この案件を解釈関係で勧告とおとりになつたとしても、ただいまのお言葉の中に、その義務は国鉄側が負わなければならぬ、こういう御説明でございましたので、私はこれ以上多くこの問題について、運輸大臣に御説明を求めようとは思いませんが、この十五億五百万円が支給され、しかも残余の分が国会でもし不承認という形の決議がなされたといたしましても、ただいまの運輸大臣のいわゆる運輸監督行政の面において、国鉄当局は、この第三項を勧告ととろうと、裁定ととろうと、その意味における義務を負つて、今後こうした面で、いわゆる利益のあがつたときには、予算以上の收入があつたときには、これが職員に相当ある部分は配分される。こういうふうにしたい、こうおつしやつた運輸大臣の言明を了承いたしまして、私はこの点に関する質問を一応法務総裁あたりに確かめるということを留保いたしまして、打切りたいと思います。  そこで、私はここにもう一つお伺いいたしたいと思いますことは、昨日運輸大臣は、政府裁定そのものの内容を初めから否認したのじやない、全面的に拒否しようとしたのではない。しかしその後一部分十五億五百万円というものが承認され、その他は不可能だというので、その他の問題について、今国会議決を求めようとしておるのだ、こういうふうにおつしやつたのでありますが、これは要するに政府としてはその他の部分承認してもらいたいというのか、それとも否決してもらいたいのか。もちろん政府の意思は否決してもらいたいという意思であることは、個人的にはよく了承するのでありますが、昨日の運営委員会あたりにおいては、増田官房長官は具体的に言えば不承認議決を求めておるのだ、こういうことをおつしやつておるのでありますけれども、今日またも官房長官は、不承認あるいは承認議決を求めておるのだというふうに、言葉がかわつて来ておる。これは要するに予算の編成権のない国会に、政府のなさんとするところの労働組合の要求に対する処置に対しての結果を、国会議決というものに責任を転嫁しようとする、まことに卑怯な表現ではないか、こういうふうに私は思う。この際政府は、この前最初にお出しになつたときには、四十五億は不可能であるといつて、はつきり言明したが、今度も、最初にお出しになつたときと同じように、今提出なさいました十五億五百万円だけは可能だが、あとは政府としては予算上、資金上不可能なのだから、これは何とかして国会において不可能なものであるとして、不承認議決をしてもらいたい、こういう意思表示をなさることが、私は正しいあり方ではないか、こういうふうに思うのでありますが、その点についてはいかがでございましようか。
  194. 大屋晋三

    大屋国務大臣 石田君はこの形で政府提出したのは卑怯であるとおつしやいましたが、政府は卑怯ではないのであります。法律條文に従いまして、政府処置をとつておるのでありまして、この残余の面は国会におきまして、名誉ある国会議員の自由なる御審議を願いたいと思います。
  195. 石田一松

    ○石田(一)委員 これは先ほども林委員あたりから相当強く質問された部分なのでありますが、国会がこの政府提出した案件を承認すべからずと議決したため、この裁定書に盛られたいわゆる四十五億という総額が支拂いが不可能になつた、こういうことには、ただいまの大屋国務大臣のお答えではならないと私は解するのでありますが、それとも大屋運輸大臣の今の御答弁は、支拂い不可能なりというその事実は、国会議決によつて生ずるのであるか、それとも支拂い不可能な事実が現にあるから、これを提出なさつたのか、そのことをはつきりここで言明していただきたいと、こう思うのであります。
  196. 大屋晋三

    大屋国務大臣 国鉄総裁におきまして、国鉄の経理判断いたしました際に——なおかつ政府がこれを判断いたしまして、残余の支出が不可能であるという事実を国会提出したものでありまして、これが客観的に支出が不可能な事実が存在しているとか、あるいは不可能に——石田君のお言葉はどういう言いまわしでしたか忘れましたが、その仮定を二つ設けて、政府が出したのでありませんから、自由に御審議なさつて私はしかるべきであると思うのであります。
  197. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうしますと、たとえば公労法の十六條を読んで見ましても、要するにこれは資金上、予算上においては不可能な処置であると政府は認めて出しておるのだ、要するに不可能なのだ、であるからこれを国会議決を求めておる、不可能であることの議決不承認議決を求めているのだと私は解したいと思います。しかしこれは一方的な私の意見でありまして、これ以上この点について論議する必要も認めないと思いますが、ただ一点労働大臣にお伺いしておきます。十六條に規定し、あるいは三十五條関係等により冒して——ここに記載してありますが、公共企業体労働関係法規の中で、仲裁委員会が当局と労働者の間に生じたいわゆる労働條件に関する紛争で、これに裁定が下された場合に予算上、資金支出不可能でない裁定があり得るとお考えでありますか、どうですか、その点ちよつとお聞きしたいと思います。
  198. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 そういう場合もあり得ると思います。
  199. 石田一松

    ○石田(一)委員 私は非常に不明にして——労働組合が自分の生活権を擁護するために、経済上の一つの要求をひつさげて当局といわゆる団体交渉をする過程において、この問題を解決するのに、少くとも予算上、資金上の問題に関連しないものはない。しかも私は労働組合の要求が、もし十要求したものが一つでも仲裁委員会においていれられた場合においては、公共企業体の予算上、資金上これは当然支出さるべき金ではないか、この場合には、新たなる要求をしておるのでありますから、既存の予算とか、資金の上では限定をされていて出すことができない問題であるので、必ずこれは団体交渉によつて争議の対象となるのであります。全然予算上あるいは資金支出可能な問題であつたならば、組合も当局側も、こんな頑迷なことを言つて、仲裁委員会にまでかけて争う必要はないのでありますが、ただいま労働大臣のおつしやつた予算的措置を伴わない仲裁委員会の労働紛争に対する解決、裁定があり得るとすれば、その実例を上げて御説明くだされば、まことに仕合せだと思います。
  200. 鈴木正文

    ○鈴木国務大臣 これは初めてのケースでありますし、現実の実例上いうものにはぶつかつておりませんけれども、考え方といたしましては、そういうことはむろんあり得る。不可能なものと、予算上その他の措置をとらずに可能なものとが、あり得ると考えております。
  201. 石田一松

    ○石田(一)委員 理論では、あるいはそういうことは言い得ると思いますが、おそらく今後仲裁委員会がなす裁定——労働者の現在の生活状態をそれ以下に切り下げて、労働者が公共企業体当局に一箇月百円ずつ納めるというような裁定をすれば、それは当局側は一切予算的措置をこうむらない裁定がなされますが、それ以外に労働者の待遇改善、労働條件の改善、厚生施設、あらゆる問題を含めて、仲裁委員会が裁定を下した裁定書で、その公共企業体の予算上、資金上可能な、当面の支出裁定内容になるなどということは、絶対に私はあり得ないと断言をしておきます。理論上、判断の上、考えの上においてはあるかもしれませんけれども、それは実例がなければ、架空な問題としてお伺いをしておきます。  幸いちようど殖田法務総裁もお見えになりましたので、先ほど私が伺つております点を、明快にしていただきたいと思うのであります。と申しますのは、もう一ぺんお伺いいたしますが、公労法の十六條の第一條、第二項によつて現在国会提出されましたこの案件なるものは、裁定書の一項、二項、三項とあります中の二項の、要するに四十五億の全額が支拂い不可能で、十五億五百万円が可能で、残余の部分についての議決を求める、こういうふうに出されております。もしこれに対する国会の意思が決定しまして、残余の部分支拂い不可能であるということを国会で認めて、これを議決して承認すべからずとした場合、そのときに第三項の問題は、現在の国鉄の予算的あるいは資金的に可能か不可能かという問題ではない。これは将来に属する裁定の問題であります。要するにこの三項とか、あるいはまた今可能な部分の十五億五百万円の配分等について、もし疑義が生じたようなときに、第四項によつてこれが処理されるのではないか、こういうような説明を私は求めておるのであります。運輸大臣は第三項を一応勧告的な意味で、国鉄当局も義務を負うというような意味の御答弁があつたのでありますが、これを法律的に明快にしておきたい、こう思うのであります。
  202. 殖田俊吉

    ○殖田国務大臣 運輸大臣からすでにお答えを申し上げたことと存じますが、この裁定の中で、第一項と第二項とはよほど密接な関係がありまして、これは大体一体をなすものと存じます。第三項及び第四項は、これはすでに効力を発生しておるものであります。従つて国鉄総裁が拘束をされるものと考えます。
  203. 石田一松

    ○石田(一)委員 私はまことに、さすがは法務総裁の御判断は正しいと思います。私はただいまの法務総裁の明快なる御答弁によりまして、私は満足して引下がる、こういうことにいたします。
  204. 稻田直道

    ○稻田委員長 次は大橋武夫君。
  205. 大橋武夫

    ○大橋委員 末弘委員長の御出席をお願いしてありますが、末弘委員長の御出席はどうなりましたか……。御都合悪ければ留保いたします。
  206. 稻田直道

    ○稻田委員長 大橋君は都合によつて留保されますから石田君の発言に関連をして、關谷勝利君に発言を許します。關谷勝利君。
  207. 關谷勝利

    ○關谷委員 ただいま法務総裁がはつきりと答弁をせられたのでありますが、予算あるいは資金上の措置を要せないものは、当然国鉄を拘束するので、そうして効力を発する。こういうことになりますと、この裁定の第三項でありまするが、公共企業体の性質にかんがみ、新たに業績による賞與制度を設ける、こういうことになつておりますので、との賞與制度そのものをつくるということは、この際国鉄当局としてはしなければならないことになると解釈すべきものかどうか。これについて……。
  208. 大屋晋三

    大屋国務大臣 そのあれは服従の義務があると思いますが、これは條件付だと思います。
  209. 關谷勝利

    ○關谷委員 どのような條件がつきますか。
  210. 大屋晋三

    大屋国務大臣 国鉄の運営をいたして参りまして、やはり業績を勘案いたしまして、適当に能率が上つて賞與制度を設けてもいいという時機が到来した場合において、国鉄総裁がこれを実施する。いわゆるコンデイシヨナルな、條件付で、今手放しでただちにこれをやらなければならないというふうには、私は解釈いたしておりません。
  211. 關谷勝利

    ○關谷委員 私はこのように解釈をするのがほんとうじやないかと思います。それは賞與制度という制度だけは設けておいて、今度新たにその賞與を出す場合において、資金あるいは予算措置がいる、その予算資金の場合に、これは国会承認を経るのであつて、その制度そのものはただちに国鉄が設けなければならない、こういうふうに解釈をするのがほんとうだと思いますが、運輸大臣の御意見を伺いたい。
  212. 大屋晋三

    大屋国務大臣 賞與制度をただちに設けても、賞與が出せなければしかたがないのでありまして、それは私あくまで国鉄総裁判断によるので、今ただちに賞與制度を設けたければならぬという意味合いではないと思います。国鉄総裁が賞與制度を設けていいという時機に到達しましたときに、賞與制度をかようかように設けて、こういうような賞與金が出したいからということを政府申達して参つたというような場合には、政府もこれを十分考慮いたしますが、右から左に賞與制度が設けなければ相ならぬとは、私は考えないのであります。     〔稻田委員長退席、倉石委員長着席〕
  213. 關谷勝利

    ○關谷委員 どうもその解釈が私にはふに落ちぬのでありますが、これは私ども、賞與制度というものを設けたからといつて、業績があがらなかつたならば、これは出す必要はないのでありますから、ただちにこの裁定案によつて賞與制度は設けらるべきであつて、そして次に実際にこの予算資金を伴う支出をする場合、その際にこれを国会に諮る、こういうことになるのであつて、制度そのものは国有鉄道としては、ただちに設けなければならないものであると、このように解釈するのが至当であると思います。もう一度運輸大臣の御意見を伺いたい。
  214. 大屋晋三

    大屋国務大臣 実際問題としましては、賞與制度を設けても、実際にその賞與を出すだけの業績があがらないというような場合には、実効がないのであります。しこうして国鉄はコーポレーシヨンであつて、公務員ではない。しかも一般の民間には賞與制度というものがある。いわゆる一般の賞與制度を持つ民間と、賞與制度のない公務員制度の中間のものに対して、仲裁委員会がこういう條項を設けたのでありまするから、これは賞與制度を設けておいても、実行のできない場合には、実際の効力がないと思いまするが、あるいは關谷君の言うように、設けておいて実行ができればやるし、実行ができなければやらぬというような行き方も、一つの行き方というところまで、私も解釈を進めましよう。
  215. 倉石忠雄

    倉石委員長 稻葉修君。
  216. 稻葉修

    ○稻葉委員 一昨日から本日まで、本件に関しまして労働、運輸、人事合同の審議会が続けられて、今日に至りましたが、私はこの際野党連合の本件に対する総括的な態度を、はつきりと表明するために、発言を求めたものであります。われわれ野党連合の総括的な態度は、四点に集約されるのであります。まず第一に、このたびの国鉄裁定に対する政府の態度は、まつた公労法を蹂躙するものであると断じます。そのゆえんは、そもそも公労法立法の精神が、企業の公共性にかんがみてやむを得なかつた処置として、罷業権は剥奪いたしましたけれども、組合を保護し、これを健全に発達せしめ、わが国の労働運動を健全化せしめるために、一方組合を強固に擁護するために、調停委員会、最後の手段として仲裁委員会の制度を設け、裁定に最終決定的な効力を與えたものでありまするが、政府のこのたびの仲裁委の裁定に対する態度は、私どもとしてははなはだ誠意なきものと認めざるを得ない次第であります。それは裁定書が明らかに四十五億を支拂うべきものとしておるにもかかわりませず、しかも組合側は、最も低い線にきめられたこの裁定にも従順に服従をいたしまして、しかもこれは仲裁委に問題の処理をかける際に、国鉄労働組合といたしましては、たとい一文も獲得できない場合があつても、裁定には従うのだという、あの悲壮なる決意のもとに、あげて裁定を待つた次第であります。この裁定が当初の要求とははなはだかけ離れた低い線であるにもかかわりませず、法治国民としての法秩序を維持せんとする熱意から、これを全面的に受入れました。しかるにもかかわりませず、これに対して政府の態度は、公労法第十六條の規定をまつたく形式的に解釈をいたしまして、予算上、資金上、支出不可能なる部分については、何らの新たなる追加予算的の措置を講ぜずして、そのまま裸で出し、まつた国会審議の対象にならないものを出して参りまして、そうして国会がこれを自由に審議して、そうして否決された場合には、あげて仲裁委裁定内容の実現のできな面かつた責任を、国会に追い込まんとするがごとき態度でございまして、それは先ほども申しました、公労法全体の精神を貫いて帰結されるところの第十六條の精神、すなわち予算的措置を講じて提出すべきものと私ども解するその精神を、まつたく蹂躙するものであると断ぜざるを得ない次第であります。従い在まして、われわれ野党派の総合的態度の第一点は、国鉄裁定に対するこのたびの政府の態度は、まつた公労法を蹂躙するものであると断定いたしたわけであります。  従いまして第二に、そういう蹂躙をしないで、組合側のように、法治国民として法律をまじめに守るという態度を政府がとろうとするならば、裁定によるところの四十五億、この予算上、資金上不可能な部分については、政府はただちに適当なる措置をとつて、その支給の手続をとるべき義務があるものと断定をいたします。  第三に、このたび政府は主文及び理由変更して参りまして、初めは四十五億、まつたく出ないものとしてあつたのを、十五億五百万円だけは支給できるとして発表いたし、これに合せて一般公務員に対しても、一人当り二千九百二十円という発表をいたしましたが、国鉄従事員に対する三千一円という支給と、公務員に対する二千九百二十円という支給とは、まつたくその性質を異にするものであり、後者は年末手当的の性質を有し、前者、すなわち国鉄従事員に対するものは、過去の待遇切下げに対する補填であつて、年末手当としてはゼロなのである。そういう違いを、あたかも両者とも年末手当であり、しかも一般公務員の二千九百二十円に対して、国鉄の方が三千一円で多いようなふうに国民に思わしめるがごとき、あえて私は欺瞞と申すのでありますが、そういう粉飾をいたしまして、事を解決せんといたしておる次第であります。かくのごときは、紛争の平和的な処理を目的とするところの公労法の精神を、まつたく蹂躙するものであります。従つて以上の三つの点から、政府のこのたびの改訂に対しましては、私どもは断固として反対の態度を明らかにしておきたい次第であります。  第四番目に、裁定の第一箇條にあります通りに、賃金ベースはしばらく改訂をしないということにしておりますが、すでに一般公務員につきましては、去る四日人事院総裁より政府並びに国会に対し、一般公務員の給與を七千八百七十七円に改訂すべきことを勧告しております事実にかんがみ、また仲裁委裁定も、その理由及び解説には、明らかに改訂すべきものではあるけれども、政府の実質賃金向上という強い政策が、どの程度功を奏するか、お手並を拝見するまで、しばらくやめておくといつている意味合いからいたしましても、国鉄の当局並びに政府は、すみやかに国鉄従事員の賃金ベースの改訂の措置をとるべきものと存ずる次第であります。  以上要約いたしまして、もう一度その箇條を申しますならば、第一、国鉄裁定に対する政府の態度は、まつた公労法を蹂躙するものである。第二、これを蹂躙せざらんがためには、裁定によるところの四十五億を、政府はただちに支給する手続をなすべき義務がある。第三、このたびの国鉄十五億五百万円支給は国鉄労組を欺瞞し、国民も欺瞞するものである。従つて紛争の平和的処理を目的とするところの公労法の精神を、まつたく蹂躙するものであつて、われわれ断固としてこれに反対するものである。第四、国鉄並びに政府はすみやかに賃金ベース改訂の措置をとるべきものである。以上に要約いたしまして、われわれのこの連合審査会における野党各派の総合的な態度を表明いたしました次第であります。
  217. 倉石忠雄

    倉石委員長 これにで連合審査会を散会いたします。     午後五時五十一分散会