○末広
参考人 先ほどの御
質問で一部お答えしたと思いますが、もう少し、今の
大蔵大臣のお答えがありましたのに連関して、詳しく申し上げますが、私どもは先ほど川崎さんから
大蔵大臣に
質問された点に関しまして、あの四十五億というものについて、問題は何と申しましても七月の十万人の解雇、あの
予算が一体非常に足りなか
つたということが一番問題であるのであります。そうして昨年以来のいわゆる九原則に基く産業合理化において、この大量解雇に要する費用については、おそらく
政府も同意をしておられるのだと思いますが、銀行は金を貸しておると思います。現に首を切るんならば金を貸すということは、あらゆる場合に聞かされる
事柄なのであります。それで国鉄六十万のうちの十万人というものを首切ることによ
つて、非常に大きな
経営合理化が行われるわけです。それに要した費用を今年度だけでまかな
つてしまおう、しかも
予算を與えないで、まかな
つてしまおうというところに、公共企業体としての公社に、非常に不合理なことをしいておるものだ、こういうふうに私どもは
考えたのであります。
従つて企業体としてこれを育成して行くという建前から行けば、民間一般の企業の場合と同じように、この解雇に要した費用を一応貸し與え、次年度以降において適当にこれを償還させることが
経営学的に非常に合理的で、また実際公社の
経理でそれができるということを、私ども判定したことが、あの四十五億というものが出ているもとであ
つて、しかもその金は、実を言うともう少し大きいものをということであ
つたが、公社の
経理などのことを
考えて、四十五億というところに私どもしたのであります。でありますから
——私はこれから今川崎さんの聞かれた本問題に移りますが、過去四年間、日本の大小の労働争議の調停に、おそらく私くらいたくさん当
つた人はないと思うのでありますが、問題はストライキを押えることが調停ではないのでありまして、労働者を納得させて、争議が片づいたあと、気持よくみなが働いて、労働意欲が増進するということが、調停の目的であるわけであります。それで一九四七年の例の有名な二・一ストが、マッカーサー元帥の指令によ
つて中止されました二月一日の晩に、いろいろな情報が入りまして、非常に心配になりましたので、時の中労委の事務局長の鮎澤さんと私と二人で、芝の白金の官邸に吉田総理
大臣をお訪ねしました。約一時間にわた
つて、私は二・一ストがマッカーサー元帥の命令によ
つて治ま
つたことは、まことに御同慶であるけれども、問題はこれからなんだ、つまりどうしてこういうストライキにまで発展するように
なつたかということをお
考えにな
つて、これを正常にもどすために、ひ
とつ格段の御努力を願いたいということをお話しましたところが、総理
大臣も非常に快く聞いてくださ
つたのであります。その結果、あの二月にかけて給與も相当に改訂され、労働協約も締結されるようなことで、どんどん進みまして、一応とにかくあそこで片づいたのであります。およそ労働問題というものは、むりを言うて押しつけてみても、それはストライキがないというだけで、労働問題の解決ではないのであります。すなわち日本は今なお生産の
程度が戰前に比してきわめて低い。私ども実は今年の四月に安定本部から出した経済白書の数字を見、それから最近にスイスの国際労働機関の
関係から出たもの
——それは一九三八年を一〇〇として、一九四八年と比較をと
つておるものですが、それを見まして、あの経済白書の数字というものは、非常に間違いだということを私は信ぜざるを得ないのであります。それほど実は日本の経済の復興は、まだ非常にできおらない。これにはいろいろの見方もありますが、労働者に一生懸命働いてもらわなければ、だめなのであります。幸いに労働者が合法的な線に沿うて、大いに働こうという機運ができて来た今日、労働者を納得させずに事を片づけようということは、私は労働問題に対処する道では断然ないと思
つております。それで初めに申しましたように、今度の四十五億というものは、決してむりなこと
——いわゆる経済九原則的な
考え方から言
つて、むりなことを申しておるのでなくして、またもう一つは、昨日、一昨日も、ほかの
委員から詳しく申しましたように、実を言うと公社に移りかわる前後に、いろいろ経費にむりがあ
つたために、実質賃金が切り下げられてお
つたので、これは賃上げではない、それをむしろ正常の状態にもどしてやるべきだということを言
つておるのであります。これを経済政策的に見ても、また今申しました点から申しましても、これほどむりのないことを私ども申しておるのであるから、
国会に、ほんとうに
政府もこれ以上はできないということを十分懇切に
説明し、
国会においてもこれを十分に御
審議いただいて、これ以上できないということになれば、これは労働組合も
——昨日も菊川副
委員長から言われたように、
国会がそういうふうにやられたならば、これはしかたがないとい
つて治まるでありましよう。さもない限り、私どもは日本の労働組合運動が、せつかく合法の線にまさに乘ろうとしておる今日、再びこれを非合法の方面に追いやることになるだろうと感じておりますということを申し上げる。
あとの、お前はどうするかという問題は、仲裁
委員会としては積極的にどうすることもできませんが、これが
理由なしに踏みにじられるならば、私どもは仲裁
委員というものを今後お引受けしておるわけには参りませんということを、明らかに申し上げます。