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1949-12-18 第7回国会 衆議院 労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十四年十二月十八日(日曜日)     午後二時四分開議  出席委員   労働委員会    委員長 倉石 忠雄君    理事 大橋 武夫君 理事 篠田 弘作君    理事 福永 健司君 理事 三浦寅之助君    理事 吉武 惠市君 理事 青野 武一君    理事 春日 正一君 理事 島田 末信君       麻生太賀吉君    塚原 俊郎君       福田 喜東君    船越  弘君       松野 頼三君    福田 昌子君       前田 種男君    稻葉  修君       柄澤登志子君   人事委員会    理事 小平 久雄君 理事 高橋 權六君    理事 玉置  實君 理事 藤枝 泉介君    理事 土橋 一吉君 理事 逢澤  寛君       池田正之輔君    成田 知巳君       松澤 兼人君    園田  直君   運輸委員会    委員長 稻田 直道君   理事 大澤嘉平治君 理事 岡村利右衞門君    理事 關谷 勝利君 理事 前田  郁君    理事 松本 一郎君 理事 米窪 滿亮君    理事 林  百郎君       岡田 五郎君    尾関 義一君       松井 政吉君    三宅 正一君       上村  進君    石野 久男君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 大屋 晋三君         労 働 大 臣 鈴木 正文君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       加賀山之雄君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員         長)      末弘嚴太郎君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 堀木 鎌三君         参  考  人         (公共企業体仲         裁委員会委員) 今井 一男君         参  考  人         (日本国有鉄道         労働組合中央執         行副委員長)  菊川 孝夫君         労働委員会專門         員       濱口金一郎君         労働委員会專門         員       横大路俊一君         人事委員会專門         員       安倍 三郎君         人事委員会專門         員       中御門經民君         運輸委員会專門         員       堤  正威君     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に  基き、国会議決を求めるの件(内閣提出、議  決第一号)     ―――――――――――――
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 私が連合審査会委員長の職務をとりますから、御了承をお願いいたします。  これより労働委員会人事委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。本日は日曜でありますにもかかわらず、多数各位の御出席をお願いいたしまして、特にこの会議を開きましたのは、当面いたしております問題がきわめて緊迫いたしておりまして、一日も急を要するものと認めましたので、まことに御迷惑とは存じましたが、特にこの会を催した次第でありますから、何とぞ御了承をお願いいたします。  これより公共企業体労働関係法第十六條第二項の規定に基き、国会議決を求めるの件につきまして、まず政府説明を求めます。大屋運輸大臣
  3. 大屋晋三

    大屋國務大臣 ただいまから昭和二十四年十二月二日に、公共企業体仲裁委員会が、国鉄労働組合の提起いたしました賃金ースの改訂及び年末賞與金支給その他に関する紛争につき下しました裁定を、国会に上程いたしますまでの経過その他につきまして、簡單に御説明申し上げます。本件は、国鉄労働組合が八月三十日国鉄当局に対し、現行給與ベースを九千七百円に改訂することと、年末賞與金を一箇月分支給することの要求を提起したことに始まります。国鉄当局はこれに対しまして、国鉄財政現状その他諸般情勢を考えれば、現在の段階では組合要求に応ずることができないと拒否いたしました。そこで組合は九月十四日、この問題を国有鉄道中央調停委員会調停申請をいたしましたが、同委員会は十二月十二日に至りまして、賃金ースは基準内で月額八千五十八円とし、十円から支給する。但し年末賞與金支給しないという調停案を示しました。この調停案に対しまして、組合側はこれを受諾いたしましたが、国鉄側は依然として財政上並びに諸般の事情から、これに応ずることはできないとしたのであります。そこで組合から、さらに問題を仲裁委員会仲裁申請をいたしましたところ、仲裁委員会は十二月二日に、ただいまお手元にありますような裁定を下したようなわけであります。この裁定につきましては、国有鉄道当局及び国鉄労働組合双方とも、公共企業体労働関係法第三十五條規定によりまして、ただちに拘束されるべきものであります。ただ問題は、公共企業体労働関係法第十六條に規定されております予算上、資金上、不可能な資金支出内容とする場合であります。このような場合は、国会承認を得なければ、その効力を発生しない。しかもそういうことがあるならば、裁定国会開催中なら十日以内。閉会中なら開会後五日以内に、国会に付議しなければならないとされているのであります。そこで国有鉄道及び政府におきまして、裁定要求いたします四十五億という支出につきまして、それが予算上、資金上、可能な支出であるかを検討いたしましたところ、この金額を支出することはとうてい不可能でありますので、法律規定するところに従いまして、裁定国会に上程いたし、国会の御審議を願う次第であります。以上をもちまして私の御説明を終ることにいたします。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第であります。
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより本件に関し、関係各位の御意見を求めることといたします。まず日本国有鉄道総裁加賀山之雄君の御意見を求めます。加賀山国鉄総裁
  5. 加賀山之雄

    加賀山説明員 国鉄総裁加賀山でございます。ただいま運輸大臣から経過について御説明があつたわけでごさいますが、日本国有鉄道といたしましては、さきに調停がございました当時、財政状態客観情勢等を愼重に検討いたしましたが、当時といたしましては、この調停にいかにしても従うことが不可能でございましたので、拒否をいたしまして、その結果仲裁委員会に諮ることに相なつた次第でございます。仲裁委員会におきましては、しばしば日本国有鉄道につきましても意見  を求められた次第でございましたが、われわれといたしましては、財政状態経営の実情につきまして、詳細に委員会に述べてございます。ただ仲裁委員会審議中、依然として客観情勢変化なく、国鉄財政といたしましても、かわりはなかつたわけでございますが、その後におきまして補正予算国会審議にかかり、また国有鉄道貨物運賃の改正で、国会審議を煩わした次第でございます。ちようど仲裁裁定が出ましたのは十二月二日でございますので、補正予算並びに貨物運賃八割引上げ国会審議を経て御決定願いまして、それらの情勢は、調停を受けた当時とは、国鉄財政現状において、多少の変化を来したものとわれわれとして考え得るわけでございます。しかしながら本年度におきまして、当時の経済九原則から行きますところの予算損益勘定におきまして、千百五十二億の收入を見込み、またそれに見合う支出を考えた次第でございますが、支出面におきましては非常な困難を感じましたけれども、何とかし  て千百五十二億の中に納めなければならぬというので、経営側といたしましても鋭意努力をいたしますと同時に、また従事員全般に対しましても、強力な努力また協力を要請いたしたような次第であつたわけであります。そういうことでございましたが、收入の面におきましては、貨物運賃引上げのときに御審議願いました関係でよく御記憶かと存じますが、年度内に八十六億程度の歳入欠陷が出ることが予想いたされまして、それを貨物運賃値上げ並びに約三十億の借入れを認められることによりまして、本年度の経費をまかなうということが認められた次第でございます。  一旦裁定が下されますと、御承知のように公共企業体労働関係法に基きまして、日本国有鉄道はその当事者として当然に拘束を受けるわけでございまして、われわれといたしましては、その内容の実現に努力をいたさなければならぬことは、当然のことであろうと存ずるのであります。法律的効果はさようにいたしまして、われわれの考え方はどうかと申しますと、なるほど国有鉄道財政は、先ほどから申して参りましたように、非常にきつい状態でありまして、余裕があろうわけがないのでございます。それだからこそ補正を受け、運賃引上げも認めていただいたことに相なつておる次第でございます。しかしながら日本国有鉄道に切りかわりまして以来、特にこの夏の行政整理中心といたしまして、現在残つておりますところの従事員の働きは、これは私から申し上げるのも、あるいは手前みそになるかもしれないと存ずるのでございますが、非常に面目を一新し、能率を上げつつあるわけであります。その後石炭費を初めといたしまして、物件費の節減にも見るべきものがあるわけであります。またすべての経営合理化の施策について、国鉄労働組合といたしましても協力を惜しまず、その結果といたしまして、国鉄経営は今後著しく改善して行く目途がついたということを、私は確信いたすものであります。なお今後国鉄が立ち直りますかいなかは、従来のいわゆる官庁的経営から脱しまして、せつかく公共企業体と相なりましたところの真  の意義を、はつきりと実施して行くということにあるわけであります。そのためには、従事員が真に企業的精神を発揮して、いわゆる独力でもつて自力更正をする意気込みがなければならない、かように考えるわけでございます。これらの従来の努力を買うと同時に、また今後の国鉄の復元の非常に大きな力になるものは、もちろん残された大きな設備あるいは組織もございましようが、何と申しましても従事員の力というものが、非常に私はかんじんであろうかと考えるのでございまして、この従事員の働く力を、ここで維持あるいはこれを強く養いませんと、せつかく盛り上ろうとしている勤労意欲が、また蹉跌を来すようであつては、せつかくアップ・カーブに向つて来ておる国鉄経営の将来が、あやぶまれるということを私といたしましては最も懸念するのでございまして、なるほど設備も戦災の復旧等につきましては、それぞれ百パーセント近くの復旧をなし遂げておりますが、たとえば建物のごときは、まだ回復率があるいは六十、あるいは七十パーセントというようなところでございます。また車輌にいたしましても、運転に直接必要な部分は今日までにほとんど修繕をいたしまして、運転支障なからしめるようにして来ておりますが、上まわりのサービスにあたります部分につきましては、なお幾多残つている点もあるわけでございます。従つて修繕につきましても、今後ますます手を加えて参らなければならないと存ずるのでございますが、私どもといたしましては、先ほどから申しましたように、修繕の方、あるいは今後の努力で生み出し得るものは、何とかして従事員の力で生み出して、このところはこの労働力保護維持、これにまわすことができないか、かように考えまして、仲裁にかかりまして以来、特に検討を継げて参りました次第でございます。いずれ御審議を願うかと存ずるのでありますが、ごく簡単に申しますならば、修繕費の一部の繰延べは、これは国鉄の破綻ではない。それは永久に失われるものではなくて、必ず一箇月あるいは二箇月後に取返し得るものである。しかもわれわれとして、これが旅客貨物輸送に直接影響があり、また運転の安全に支障があるようでは、その修繕費を繰延べるということは、当然考らられませんけれども、それ以外のもので、半月あるいは一月のしんぼうで取返しのつくものであるならば、この際そのものは人件費にまわし、特に従事員の生活の困窮はわかつておりますし、また先ほどから申して参りましたように、従事員が鋭意能率を上げつつ働いておることが明らかでございますので、さような措置をとりたいと考えておる次第でございます。以上簡單でございますが、私の考えております一端を申し述べさしていただいた次第であ ります。
  6. 倉石忠雄

    倉石委員長 次に、国鉄労働組合中央執行委員長はおさしつかえがありますとのことでありますので、その代理人としておいでになりました副委員長菊川孝夫君の御意見を求めることといたします。菊川孝夫君、
  7. 菊川孝夫

    菊川参考人 私、国鉄労働組合中央執行委員長菊川でございます。本日委員長加藤が参りまして、組合意見を申し述べるはずでございますが、御承知通りに、加藤自由世界労連結成大会に、日本側代表に選ばれて参りまして、帰途今アメリカにおりまして、一両日中に帰る見込みでありますが、本日間に合いませんので、私がかわつて組合意見を申し述べたいと存じます。  先ほど運輸大臣が発言されました組合要求並びに調停委員会に持つて行つた経緯仲裁の出された経緯等については、大体経過はその通りでございます。日付その他については私は間違いないと思います。ただ私がここで申し上げたいのは、調停委員会において最も問題になつた点、組合としてぜひ委員諸公に聞いていただきたい点だけを、一言つけ加えさしていただきたいと存じます。と申しますのは、第一に、調停委員会におきまして、組合側が特に主張したのでございますが、私たちが九千七百円と一箇月の年末賞與支給方要求したことに対して、国有鉄道側は、経理上の都合から、これはどうしても出せないということを強く主張されまして、拒否しました。しかしながら過ぐる六月定員法が実施されまして、七月の首切りの際には、実際には国会を通過した国の予算におきましては、国会議員諸公の前に出すときには、これは石炭を買うのだといつて予算を組んでおきながら、それを首切り賃にまわしたということがあつたのであります。しかも事実これはCPSから考えても、あるいはよそとの関連から考えても、この九千七百円ということについては、決して過大な要求ではない。日本のほかの一般労働組合において、現在九千七百円ベース要求しておるような組合がどこにありますか。これさえも実現できない。特に共産党あたりからは、そういう小さいものを要求してはいかぬということを相当攻撃されております。そういうように、われわれとしてはきわめて謙虚な気持で要求したのに、それを実施されないのにかかわらず、都合のよい首切りをやるときには、国会では石炭を買う金だといつて承認を受けておきながら、首切りにまわした。首切りにまわす金があるならば、これを出せないはずはない。われわれはかように主張したのでありますが、この点が論議の中心になりまして、これが仲裁委員会においても問題になつたということだけを、特に御記憶願いたいと思うのであります。これは将来の問題として、国会国鉄の運営問題につきましての大きなポイントになるのではないかと思いますので、特につけ加えさしていただきたいと思います。  その次には、調停委員会においては、やはり調停される場合に、国鉄公共企業体である限りにおきまして公共の福祉ということを特に考えなければならぬので、国民一般の輿論をまず聞く必要があるという見地に立たれたものと見えまして、あるいは労働者代表、あるいは言論界代表、あるいは政党の代表等を呼ばれまして、そうして公聽会を開催されました。その際私傍聽いたしたのでありますが、日経連の代表として出席された方と私鉄の経営者連盟代表して出席された方、すなわちほんとう資本家代表の方は、国鉄給與を上げることは、われわれの方の労働者がやかましくなるから、これは困るという点を主張されておつた。それ以外の出席された方は、大体において組合のこの要求は、むしろ謙虚に過ぎるくらいであるから、ぜひとも要求をそのまま入れてやるべきであるという支持をされておつたことを、私は申し上げたいと思います。  次に、以上のような調停委員会経過をたどりまして調停案が出されたのでありますが、私たちはこの調停案をもらつたときに、なるべくならば団体交渉によつて問題を解決して、調停の手を煩わすようなことのないようにしたい。しかしながら拒否されてしまつたので、調停行つたのであるが、これを仲裁に行くことなしに、調停案のままを双方がのむことによつて、問題を一日も早く解決したい、こういう考え方に立ちまして、まず塩原で開催いたしました大会にこの議案を上程いたしまして、審議いたしましたところ、大会といたしましても、公共企業体労働関係法が実施されまして、初めて持つて行つたものであり、調停委員会の仕事として初めて出された問題であるからして、将来におきましても調停委員会仲裁委員会等の法的の根拠を持つた機関をあくまで尊重して行かなければ、力と力とのもみ合いということになることは、われわれの好むところではない。こうした法的機関を尊重して、そうして民主的の日本を建設しなければならぬ、こういう観点に立ちまして、大会も大多数をもちまして、調停委員会権威を尊重する、そうしてこの取扱い方は執行部に一任するということを決定いたしました。この決定を受けましたので、帰りまして大会の意のあるところを十分参酌いたしまして、当局側に対して、示された調停案従つて妥結しようではないかという申し入れをいたしましたが、最初の団体交渉のときと同じような理由をもちまして、やはり諸般情勢からというのと、経理上の観点からというのと、この二つの理由をもつて拒否いたしました。やむを得ずわれわれとしては、労働協約の定めるところによりまして、仲裁委員会仲裁申請をとつたような次第であります。そうしてただいま国会の議題になつておりますところの裁定が、十二月二日労使双方の立会いの上で交付されたような次第でございます。  そこで仲裁裁定に対する組合考え方を――とにかく六月一日に実施されて以来、今日まで、われわれは公共企業体労働関係法をいかに考えるか、仲裁委員会裁定というものをどう考えて来たかということをぜひとも御考慮願い、お聞き願いたいと思いまして、この点をひとつ述べさしていただきたいと思います。公共企業体労働関係法は、皆さん御承知通りに、昨年の七月二十二日のマツカーサー元帥の有名なあの書簡に基いて、それから国有鉄道公共企業体になり、これに関連して公共企業体労働関係法が実施されるようになつたわけでありますが、あの当時におきましても、私たちとしては、あくまでも国有鉄道というものは国民国有鉄道である、従つて国民を相手とするものであるからして、われわれとしては、労使紛争もできる限り忍むべき点は忍んで、そしてストライキだとか、あるいはサボタージュという行為に訴えて、問題の解決に持つて行くということは、愼んで行かなければならぬ。これは忍べるだけ忍ばなければいけない。そういう点については、私たち常に考えて主張して参つたわけであります。しかしながら一般労働運動趨勢といたしまして、団体交渉が決裂したならば、ただちにストライキだという気風が、日本の戦争後の労働運動の中には、みなぎつてつたと申し上げては語弊がありますが、これは敗戦後の国の情勢――どこの国でもそういう経過をたどることは、欧洲の方の諸国におきましても、みなそういう動きを示しているので、いまさら御説明申し上げるまでもないと思うのであります。しかしその中にあつても、私たちは戰争に負けたあの日に、汽車が動いておるということだけで、ようやく国民がまだ安心しておつた。そのときの感激を私たちは忘れてはならないために、これはどんなことがあつても、汽車だけはなるべくとめたくないという一点でやつておりました。しかしながら、いろいろそういうような趨勢にも押されて、部分的にはやはり列車がとまるという争議も行われました。しかし今後はそうした精神だけは持つて、できる引けやはりとめないようにする。罷業権は持つてつても使わずに、その圧力だけで問題を解決して行くということを、組合結成以来考えて参つたのであります。しかしながら所々で問題を起して、結局あの書簡が出されることになつて法律をもつて罷業権が剥奪されるという悲しむべき結果になつたのでありますが、これは組合が自制しておつて罷業権は持つておるけれども、凶器として使わない、労働者ほんとうに守るために使うというように使つて行けば、この問題も、将来は必ず私たちの手でもつて組合が正しくこれを使うということで、お互いに切瑳琢磨して、そういう訓練をつけることによつて、この罷権だけはまた必ずいつの日にか獲得しなければならない。そして法律によつて禁じられている行為は、やはり法律によつて禁じられないようにしなければならぬ、そうでなければほんとう労働組合ではない。こういうふうな考え方に立つてつたのであります。しかし禁じられている以上、やはり何かによつで問題は解決されなければならない、かように考えるのであります。罷業権を剥奪するということは、すなわち団体交渉権というものを尊重するということと、それによつて解決しない場合には、調停仲裁等の諸機関権威を十分に尊重して、罷業行つたと同等の結果が得られるように労働者が保障されなければならぬ、かように考えておるものでありますが、われわれといたしましても、この考え方に立つて、今日まで組合員に対しても訴えまして、われわれは公共企業体労働関係法によつて保護されているのだ。少くとも制約も受けているかわりに、あくまでもこの法律によつて保護されているのだ。従つてこの法律によつて定められたる仲裁委員会調停委員会は、われわれは十分にこれを活用して行かなければならぬということを確認いたしまして、今日まで労働組合の中の組合教育こいう面も、その方面に向つて参つてつたのであります。それがたまたまこの裁定が下されまして――この裁定は、昨日院議をもちまして、趣旨を尊重するという御決議がなされた趣でありますが、政府の考えておられることを、われわれ情報として、あるいは新聞の記事によつて察知いたしますと、年内に三十億を支給すべしというあの裁定でさえ、今日の趨勢によりますと、ほとんどその半分も実施されない。少くとも尊重するという以上は、九十五パーセントあるいは九十パーセント以上が支給されてこそ、尊重されると言えるのであるが、その半分も実施されない。こういう尊重のされ方である。院議政府の考えを、このくらい離れている。こういう悲しむべき事態を考えましたときに、私たちはまことに遺憾である、かように考えておる次第でございます。国会の参議院、衆議院の決議から考えますと、私たちの今日まで考えておつたことを、大体において御了承願つてつたと思うのでありますが、政府のお考え方が遺憾ながらそういう状態であるということについては、組合員一同今日まで公共企業体労働関係法に非常に大きな期待を持つてつた、そしてこれにたよつて来ただけに、落胆する点が非常に大きいということだけを特にお考え願いたいと思うのであります。  それから法律的の解釈につきまして、いまさら私がここでとやかく申し上げるのはどうかと思いますが、十六條のあの解釈につきましても、組合側といたしましては、あの法律が制定された当時、すぐに労働省へ参りまして法律解釈についても聞きました。そのときにもはつきりと、もし資金上、予算上、支出のできない場合には、ただちに拂うことはできないのだ、これはそういう意味で政府を拘束することになつているのだ。しかしながら一旦裁定が下された以上、三十五條従つて国会予算をつけて、この予算支給したいと思うと出されて、そして国会におきましてそれが否決されたときには、これは国の最高機関を拘束する何ものもあり得ないのだから、やむを得ない。しかし国会へはやはりスムースに持つて行く、そして実施すべく持つてつてもらわなければならぬ。そして国会において削除され、あるいは全面的に否決されてもやむを得ないのだというふうに私たち説明を受け、また国には最高的な何か権威がなければならぬので、国会が当然憲法の示すところに従つて、最高権威としてこれを決定される分にはやむを得ない、かように考えておつたのでありますけれども、政府国会へそういうことを出そうとせられない、こういう点につきまして非常に不満を持ちまして、まず政府に対しましてわれわれの考えていることを聞いてもらい、われわれの主張を聞いてもらつて、そしてわれわれの主張通りにやつてもらうように、連日首相官邸へ参りまして、増田官房長官にもお目にかかりまして、われわれの考えはこうである。今までそういうふうに労働省からも説明を受けて来た。あなたも労働大臣としてあの法律が立法されている当時には携わつておられたのである。そのときにはそういう説明をされておきながら、今になつて官房長官になつたからといつて、ころつとかわつてしまつて、これは承認承認を求めるのだ。承認を求めなければならないと文章にあるけれども、英語では承認か不承認かきめてもらうことになつてつたのだが、日本語に訳すときにこうなつてしまつたのだという放言をされておりますが、これを法律として国会へ出すときには、そういうことを言つている。十六條の二項におきましても承認を求めなければならないというふうになつているにかかわらず、増田さんがそういうふうな解釈をとつておられて、政府考え方でどう出してもいいのだ。こういう政府側の動きについては、組合員一同非常に不満を持つているということだけを、特にお含み願いたいと思います。そこで増田さんでは話がわからない。やはり総理大臣の吉田さんにぜひ一ぺん聞いてもらおうというので、組合側は大磯の私邸へも、あるいは外相官邸へも押しかけたことも事実でありますが、決して脅追したとか、そういう意味でなしに、門前へ行つてお願したのであります。辞を低くして――決して一国の総理大臣、七十二歳になる高齢者をつかまえて、失礼なことを申し上げるわけでも何でもないが、ぜひとも一ぺん会つて聞いていただきたい。巷間よく行われまするつるし上げ等のごときことは絶対しないから、ぜひともお聞き願いたいということを辞を低くして申し出たにかかわりませず、今日まで会つていただけない。従いましてこれは政府では問題は解決できないだろうというので、やむを得ず国会組合員がそれぞれ訪れて面会室に郷土出身の議員諸公をお呼び出しして訴えたから、一回ぐらいは国鉄労働者の声を、皆様方お聞きくださつたことと思うのであります。そういうふうな状態であるということを、特にお考え願いたいと思うのであります。  次に可分、不可分というようなことをよく諭せられておるのでございます。今回の仲裁委の裁定はなるほど国有鉄道側が債務を負うような事項が多いのでありますが、将来におきまして必ずや国有鉄道はこうこうすべし、国鉄労働組合はこういうことをしなさい。こういうふうな二つの双務的なものが出される時代が来るだろうと思う。そういつた場合に、これが二つとも実行されてこそ、初めて成立つのです。そのうちの一部分を実行したのでは、この裁定を実施したとは言えない。これはすべてが関連を持つて実施されるので、私らはあくまでも不可分である、切り離して考えることはできないのであつて、関連を持つてこそ、初めて成立つのではないか。将来におきまして国有鉄道はこうせい、国鉄労働組合はこうしなさいということがあつて国有鉄道がしなさいということは予算上、資金上の都合が悪いからできないが、国鉄労働組合がしなさいということは、いつでもやらなければならぬという議論が成立つかということにつきましては、私は疑問がある。そういう点も、組合側としても、もしそう出されたときにどうなるか。今回の例は第一回のことでもございますし、重大なる将来の慣行ともなると思いますので、この点につきましても十分御審議を煩わしたいと思う次第でございます。  次に、これは国会議員の院内の発言に対して、とやかく言うという意味ではないのでありますから、その点をお断りいたしまして、ちよつと申し上げたいのでございますが、昨日吉武惠市議員が衆議院の本会議におきまして決議案の御説明の際に、国鉄労働組合が幹部と会つているけれども、全部もらわなくてもいい。そんなことを思つている者はないんだというような発言をされたということを、傍聽していました組合員が聞いて帰りまして、昨日組合本部でいろいろ問題になつて、お前そういうことを言つたのかということを言われたのでありますが、私も吉武さんには一度、ほかの民自党の給與対策委員の方々とともに御面会いたしまして、これは一文切れても尊重にならぬ。ぜひとも今回は第一回のことであるから、ひとつ全額支給していただくようにお願いしますという懇請には参りましたが、決して半分でもよろし、い、値切られてもいいというようなことを申し上げたのではないのであります。お立会いくださいました民自党の給與対策委員の方も今日おいでのはずですから、十分この点につきましては、組合側としてそういう考え方を持つているのではないということだけは――皆さんも同じだろうと思いますが、議員諸公の院内における発言について、われわれは院外からとやかく言うのではないという点だけをおくみとりの上、お考え願いたいと思います。私も加藤君がおらぬために、組合の最高の責任者として、決してそういう考えは毛頭持つておらないのでございますから、ぜひともこの点だけ誤解のないようにつけ加えて申し上げておきます。そしてもし、ありましたといたしましても、私の決して関知しないことでありますし、執行委員会としても関知しない問題であるということだけを、特にうけ加えさしていただきたいと思います。  それから裁定が今後の日本労働運動に及ぼす意義についても、特に私たちはお考え願いたいと思うのであります。これは先ほどもくどくど申し上げたようでありまするが、公共企業体が実施されて初めての仕事であると同時に、日本労働運動の歴史をひもときましても、こうした法的な機関におきまして、仲裁裁定がなされたのは初めてなのであります。アメリカやイギリス等にはあるといたしましても、日本では初めての仕事だ。その初めての仕事が、あるいは政治的な意図によつて、政治的な関係によつて左右せられる。すなわち法律を政治が左右する、時の権力によつて法律が左右されるというような印象を残し、悪例を残したならば、将来私は重大なる問題を残すのではないかと思う。こういう点からも、今回の裁定の御審議にあたりましては、十分愼重な態度をお願いしたい、かように考える次第でございます。  それから次に、すでに御承知通り仲裁委員の選考は内閣総理大臣によつて任命されたのでありますが、その選考にあたりましても、仲裁委員の名簿を組合側にも提示されまして、その当時に末弘巖太郎氏以下十二名の委員を組合側に提示されまして、このうちからひとつ組合が選んだらどうかということを、われわれに示されたのであります。これは本日見えております賀来労政局長もよく知つておるはずであります。これを示されたが、その際に組合側は、この方々ではどうにか賛成できる、やむを得ず賛成できるのは末弘巖太郎先生一人だ、あとの方は遺憾ながら御賛成できかねる、もう一ぺん名簿を出して来てくれということを言つて、末弘さんから失礼なことを言うなと言われた。私は断つた。それがこれで行くんだというので、内閣総理大臣が組合の意向を無視されまして任命されたのが、現在の仲裁委員なのであります。しかもその仲裁委員が出した裁定を、任命された政府が、こんなばかなものは聞けるかと言つておられる。こういうことが一体あり得ることでございましようか。この点をひとつ国会が十分お考え願いたいと思うのであります。自分でけんかの仲裁人を頼んでおきながらそれではいやだと言つたような、政府が頼んでおきながら、政府がそれはできない。こういうばかなことは、りくつから考えてもあり得ないと思う。社会道義上、成立つかどうかということについても、十分国会において御考慮願いたい。組合員がそういうように考えております。法律的根拠よりも、一般労働者はきわめて單純に考えておりますので、そういうことが一体許されるか、これが民主主義であろうか、現在の政府側のお考えになつていること、それから国会に上程された方法等につきましては、きわめて不満を持つているということだけを、十分お考え願いたいと思います。  次にこの不満をどうして爆発させるか、先ほども申し上げましたように、増田ざんにお願いしても、まるつきり反対な考え方であつて、いくら言つても聞いてくれぬ。労働大臣当時におつしやつたことと、現在官房長官になられておつしやつたこととは、著しく食い違いがあるように考えます。しかしいくらお願いに参りましても、一向お聞入れにならない。それではということで、総理大臣にぜひともお願いしようというので上つたのでありますが、これも会つていただけませんでした。やむを得ず、それでは代表をもつてそうした平和的に行うお願いを――歎願と言いますか、組合員の中には直訴状だといつてこしらえて、これを吉田さんにぜひ渡してもらいたいと言つて、持つてつた者がございましたが、しかしそれもできないで、やむを得ずこういうことにしてしまつて先ほど申し上げましたように、われわれの考え方からいたせば、法律が守られないという結果に対する不満が爆発いたしまして、今回みなやつておるハンガー・ストライキになつてしまつたのであります。九日から入りましたのでありますけれども、しかし私は中央の最高責任者といたしまして、少くとも政府の手を離れて、一旦国会に問題が移つてしまつたのだ、それだから今後の国会の動きを見るまで、一応国会にそういう圧力を加えるということは、国の最高機関に対しまして、生命の危險を冒して圧力を加えるということについては、一応考えなければいかぬだろう。しかしいつまでも黙つておるわけにはいかぬと思つておる。一応は考えることにしようというので、十三日に打切り指令を出したのであります。そうしてしばらく国会並びに政府側の動きを見て参つたのでありますが、依然として政府方面の案は、半分にも満たないような案を国会に提出されようとしておる。それでさえもいまだに提出されない。その不満をどうしてやるか。まずやるには私たちの禁ぜられておる十七條を踏みにじる。政府法律を踏みにじつておるんだから、おれたちの方も踏みにじつてもよかろうというので、十七條を踏みにじつてストライキをやるということも考えられます。しかしながらこれは先ほども申し上げましたように、今、年末を控えてそういう行為に出ることは、国民を敵にまわすことになつて国民に対して申訳ないわれわれは決して政府に対して申訳ないと思いませんけれども、国民に対して申訳ない、こういう考えを持つております。公共企業体労働関係法は皆さん御承知通り、これにそむいても罰せられるという罰則規定はないのであります。ただ私が首を覚悟さえすれば、ストライキの指令は出すことができるわけであります。たとえばちよつとした軽犯罪でも科料何円、何千円というようなことで、道ばたで小便をしても罰金を科せられることになつておりますが、この公共企業体労働関係法に違反をしても、どこにも罰金をとられるという規定はない。ただ首を切られることさえ覚悟すれば、やればできぬことはないのであります。しかしこれは国民に対して申訳ない、こういう考え方に立つてわれわれはあくまでも主張しておる。われわれの不満だれかに聞いてもらわなければならぬ、それには黙つてつてもいけないというので、組合員の不満が爆発して、ハンストが各地において行われました。これは決して国会に圧力をかけるというのでなしに、国会でこの不満を十分お考え願つて、そうして愼重な御審議を願いたい、こういう意味であることをひとつ十分おくみとり願いたいと思います。本日各方面から情報が入りまして、二百名ばかりもうすでにハンストをやつておる。そうしてこれがだんだん蔓延する傾向にあるということで、憂慮しておるのであります。特に国会の御議決によつて政府を鞭撻せられまして、この裁定が完全に実施せられ、そうしてこの問題が一日も早く円満に解決するように、御盡力願いたいと思うものであります。  次に国鉄経営につきまして、若干申し上げたいと思うのであります。十六條の第一項によりますると、予算上、資金上、不可能というように国鉄では申されておりますけれども、大体国鉄から第二次補正予算として提出されましたところを見ますと、十八億くらいはやりくりによつて何とかできるというふうな案が提出された模様でありますが、私たちの考えますところによりますと、運輸收入のうち、旅客收入六百九十三億、貨物收入三百九十三億、このうちには今後出荷融資あるいは旅客への宣伝――汽車に乗つたらどうも込むということがあまりにも行きわたり過ぎておつて、そうしてかえつてお客さんが汽車に乗りたくても、まあ込むからというので躊躇しておられるという面も相当あるのではないか。だから今後サービスの改善、事故の防止等に努力する限りにおきましては、この旅客収入と貨物收入双方で約十億ずつくらいは、ただちに今年内には黒字になる見込みがある。この計数についてはあとで御質問がありましたら、資料も提出してよろしゆうございますが、労働組合としては資料をつくりまして、二十億くらいは大体ここから出て来る。そうするとあとの十八億とを加えましたならば、ごくわずかの金でこれが完全に実施されるのではないか。そうして收入がふえることによつて支出がふえるということは、健全財政、均衡予算ということを決して阻害するものではなく、法律に反するものでもなく、またドツジ・ラインにも反するものではない。こういう考え方から私たち予算の組みかえをお考え願いたい、かように考えるものであります。  なお石炭の節約についても、首切るために三十億も去年において節約できたのでありますから、カロリーも大分よくなつて参りましたので、もう少し節約もできるのではないか。かような点を考え合すならば、決して三十億の年内支給は、予算の組み方いかんによつては、私はドツジ・ラインにも反せず、あるいは健全財政を保持しつつ支給できるのではないか、かように考えるものであります。次にそれさえもやれない――われわれはハンストをやり、あるいはきわめて穏健に国会にお願いして、あるいは政府にも交渉いたしておるにもかかわりませず、やれないとするならば――やはり法律というものは、どうしても政治的な問題によつて左右されてはならない。法律はやはり予算に優先するのだ、国の経済には優先するのだ、いかなる事態にあつて法律だけは守られるという習慣を、国民の中に植えつけなければならぬ。こういう考え方に立ちまして、国の司法権の発動を願つて、われわれとしては法廷において問題を争おうじやないか。たとえば仲裁委員長の末弘さんも言つておられるのですが、予算上または資金上云々のこの解釈は非常に微妙な問題だ、国鉄側  はこれは不可能だと言つてしまつても、常識的に見て可能であるということも成立つのであつて、将来におきましても、国鉄総裁がこれは不可能でございますと言つてしまえば、何事も不可能で、一文も出さぬと思えば、出さなくても済むような問題であるが、それがそのまま見過されていいかどうかということも重大な問題になるのでありまして、これは先ほど私が申し上げましたように、年内三十億支給は決して不可能ではない。かように考えますので、もしこれが蹂躪されるようであつたならば、訴訟を起してでもやる、決して自分たちの金を欲張つてとるために訴訟するというのではなく、法律は正しく守らるべきであるという考え方から、訴訟の問題にまで持ち出したい、かように考えまして、今組合といたしましては顧問弁護士を委嘱いたしまして、着々準備しておるということもお考え願いたいと思うのであります。  次に国鉄裁定日本の国内においていかになされるかということは、これは單に国内の問題ばかりでなく、すでにアメリカの問題になつておるそうであります。アメリカ本国におきましても、特にAFL、CIOのような大きい組合においては、重大なる関心を持つてながめておるということであります。それは先ほども申し上げましたように、私どもの加藤が今アメリカに寄つておるのでありますが、特にこの問題の説明のために、ひつぱりだこになつておる、そうして国務省の方にも行つて一々説明しておるそうでありますが、日本がやがて民主化される、講和会議も間近にあるというときに、法律が踏みにじられて、そうして労働運動の常識的な問題さえも実施されないという印象を、もしかりに與えたとしたならば、日本は民主化してない、労働組合のこれだけ穏健、しかも民主的にやつておる運動さえも、踏みにじつておるような日本状態であるとすれば、再び日本にフアシヨが芽ばえておるという悪い印象や與える。決してそうではなくても、そうなるのではないか。今アメリカの大きな問題になつておると、私のところの加藤からたよりをよこしたということを御報告申し上げます。そうした国際問題にまで発展しておるということをお考え願いまして、愼重なる御審議を賜わりましてわれわれの意のあるところを十分御参酌くだされ、いい結論を出されんことを特に期待いたしまして、私の発言を終らしていただきます。御清聽ありがとうございました。(拍手)
  8. 倉石忠雄

  9. 末弘嚴太郎

    ○末弘参考人 お話をすべき事柄は非常に幅が広いのでありますが、いずれあとで御質問がありますれば、こまかいことを申し上げることといたしまして、私からあらましのことを申します。なお本日他の二人の仲裁委員も出て参りますので、あの裁定案のあらゆる部門について御質問があれば、いかようにもお答えできると思つております。  まず初めに何と申しまして申し上げなければならないと思うのは、今度の仲裁の基礎になりました公共企業体労働関係法及び国有鉄道法その他憲法に付属した財政法、その他あらゆる法律関係、この法律解釈というのをやはりはつきりしておく必要があるわけであります。法律論というものは、むろん解釈上は非常に水かけ論になりやすいものでありますが、少くとも私どもこの仲裁をするにあたつては、われわれとしての解釈は十分研究をした上でやつたことなのでありまして、私どもがどう考えたかということを、一言申し上げる必要があると思います。もつとも法律国会の皆さん方がおつくりになつた法律で、釈迦に説法かもしれませんが、私どもはこう考えたということを、やはり申し上げておいた方がいいのではないかと思うのであります。あの裁定を出しましてから、私ども單に新聞紙を通して知つておるだけでありますが、政府がどうもあの法律解釈について、私どもが考えておるのとは大分違つたことを考えておられるように見えるという点から、外少法律論を申し上げざるを得ないのであります。  まず第一に、今度の国有鉄道法及び公共企業体のあの法律を見ますれば、明らかに公社は、もはやこれは行政機関ではないのであります。従つてこの従業員は公務員ではないのであります。またこの公社の予算国有鉄道法によれば、国の予算とともに国会に出すとはつきり書いてある通り、国の予算ではないのであります。つまり公社というものが政府の全額出資の公共企業体であるという関係から、やはり予算については国会承認を得るということになつているだけで、国そのものの予算ではないということを、十分お考え願いたいのであります。それから公社の職員は明らかに公務員ではございません。それで公務員の給與その他の労働條件というものは、特に昨年の七月二十二日のマツカーサー元帥書簡、あれに基く公務員法の改正、こういうことを通して、公務員が国民のしもべである、パブリツク・サーヴアントであるという精神はつきりして参りましたので、国民としては自分らの政治、行政というものが、どのくらいの人間を使つて、どのくらいの能率で働いてもらうか、そんな高い金を拂つて行政上てもらうのはごめんだと言えば、それはもつと減らす、公務員についてはそういう考え方で考えるというのが、今度の憲法に基く公務員の考え方だと思つております。  これに反して、公共企業体は一つの企業体であります。そうして労働関係う法にも明らかに書いてありますように、国有鉄道の従業員の給與賃金といものは、あくまでも一般の民間の給與を十分に参照しなければならないということが明らかにされております。もつともその條文の中には、公務員の給與も参照しろということが書いてあります。しかしこれは決して国有の従業員が公務員だからというのではなくて、一つは公社がまだ独立して間もないことであつて政府の全額出資の企業体であり、それからまた従業員もついこの間までは公務員であつたというような関係から、過渡的には公務員とあまり飛び離れた給與もできないということは、これは常識的に考えられることで、そういう説が現われていると思いますが、根本はやはり民間企業の一種、従つてそれとの振り合いということを考えなければならぬわけで、ごく具体的な例をとりましても、私ども今回單に、前の調停委員の方がなすつたように、民間の私鉄の企業と、国鉄企業との賃金ベースがどうだというような比較をするのみにとどまらないで、私どもは職種別に相当の調査をやつてみました。これは将来に対してもつと十分にやらなければならないむずかしい問題でありまして、現在は非常に不完全でありますが、できる限りのことをやりました。たとえば国鉄と、私鉄の一つ、もしくは二つ三つくらいの会社が同じ駅を使つているようなところの、同じ種類の、労働者賃金の間に、あまりにも大きな開きがあるというようなことは、明らかに労働関係法の精神に反するのであります。     〔倉石委員長退席、稻田委員長着席〕 それで、それを調べてみますと、職種によつて非常に開いておるものもあり、あるいはそうでないものもありますが、大体において国鉄の方が低いということは、きわめて明らかになつたのであります。  それで本筋にもどりまして、要するに公社は行政官庁にあらず、従業員は公務員にあらず、従つてその給與は、まつたく民間の賃金と同じ考え方によつて考えられるべきものであるということを、まず第一に申し上げたいと思います。  次にしきりに問題になつております十六條の協定、三十五條仲裁及び三十七條に労調法の三十四條を準用してあります点、これが一般に十分理解されておらないように見えるのでありますが、今回の仲裁に入ります前に、当事者にはその点をはつきり申しました。つまり三十五條仲裁裁定というものが当事者双方を拘束するということは書いてある通りでありますが、そのあとの三十七條に、労調法の三十四條を準用してあります。この意味は労働関係法による仲裁は、やはり労調法の仲裁の一種であるということであります。労調法の仲裁は、御承知のように強制仲裁はないのでありまして、当事者双方仲裁申請する場合、及び当事者相互間に問題がある場合には、仲裁に付して事を片づけるという労働協約がある場合、この二つの場合だけに限られております。労調法においては、仲裁は両方から頼まれてやり得る。従つていざ仲裁の出たときには、従いますということを初めから約束しており、それに基いて仲裁をやるわけですから、その結果は両当事者を拘束するわけであります。その精神で労調法の三十四條に、仲裁が出たときには、裁定労働協約と同一の効力を有するという規定があるわけであります。つまり仲裁の結果は、当時者双方に対して民法上の債権債務を負わせるわけであります。すなわち裁判所に訴えることのできる債権債務ができるわけであります。でありますから、今回の仲裁案が出ました結果として、労働関係法の十六條の制限の範囲内においては、公社も労働組合仲裁によつて拘束をされる。従つてあの仲裁裁定の中に一定の債務を命じておるところのものがあれば、これは十二月二日の言い渡したその日から、明らかに債務があるわけであります。この債務は私有財産であります。私有財産は憲法によれば保障されておるわけであります。すなわち公共の福祉に反する何らかの特別の理由がない限り、私有財産も国の法律といえども侵してはならないということは、憲法の明記しておるところであります。もしもできるものであるとすれば、戰争に負けて、降伏文書に調印しておる結果、降伏文書に基いて、連合国最高司令官が何らかの措置をとらるるならば、これはやむを得ません。それ以外においては、政府といえども、国会といえども、国民の私有財産は、憲法によつて、特別の理由なしに奪うことはできないはずのものであります。そのことは、いろいろ仲裁内容を検討して行く上において、不敏にして私どもに何か多少の落度があるとかいう問題とは、別問題であります。仲裁がもしも違法であれば、これは裁判所が無効だと申します。しかし違法でない限りは、あとの計数その他の問題は、実際に計算してみればわかることであります。言葉をかえて申しますと、話をまた元にもどしますが、労働関係法の十六條の予算上及び資金上、可能であるということは、客観的にきまつておるわけであります。それが幾らであるかは、実際に国鉄経理に当つてみて、そうして可能であるかどうかということを――現に生きておる経営を見るときには、どれまでが可能であるかということは、経営に関する人の意見によつて多少違つて参ります。何も金庫の中に積んである現金だけが可能だというわけではないので、現在はマイナスでも、これはこういう意味で可能だということもありますし、それから現在金はたくさんあるが、これを今出すことは不可能だということもあります。あの予算上または資金上、可能か不可能かということを判定して行く上について、経営学上の判断という点で、意見が人によつて違うことはあり得るだろうと考えておりますが、しかし客観的にこれはきまつておることであります。従つて十六條及び国有鉄道法であの裁定を実行して行く上について、公社のとつて行かれ  手続はこういうことになるわけであります。これは運輸大臣なんかに相談するのではないのであります。公社みずからがこの四十五億の債務を実行して行くについて、予算上または資金上可能なのはどの程度であるかということを、責任をもつて検討さるべきであります。そうしてこれを検討した結果、四十五億とうてい出せないという場合は、かつてに出してはならないと法律に書いてあるわけであります。その場合にはまず運輸大臣に相談をし、また大蔵大臣に相談をして行くというような手順になるわけであります。もつともこういう問題が一つ予算について法律上出て参ります。すなわち予算上、資金上全体としては可能だが、予算の組みかえをしなければ、支出権がないという問題が出て参ります。だから、経営学的に見ればその程度出してもよいが、実際の予算技術的には、やはり予算の組みかえをしませんと、支出権が出て来ない、こういうことも考えなければなりません。しかし根本的に考えていただかなければならないことは、運輸大臣の監督権はどういうことであるかといえば、公社としてはある金は可能だと思つて出したが、しかしああいう大きな運輸事業を責任を持つてつている公社が、こういうやり方をしては困るではないか。給與はふえたが、さて家がひつくり返るようなことが起つては困るではないかという意見で、監督することが出て参りましよう。ですから、具体的に申しますと、まず三段にわかれると思います。つまり公社の総裁の責任で、すぐにでも出せる金がます第一段にあるわけであります。その次に、大蔵大臣に相談しないで運輸大臣限りでやれる面もあります。それから第三段目が大蔵大臣で、大蔵大臣のところでは、これは主として予算経営上はできるが、予算の組みかえをするという点、すなわち、やはり出すために操作する場面がそこに出てくると思います。あそこに書いてある予算上ということは、国の予算とは全然無関係なことで、いわんや政府財政政策一般なんというようなことは、あの十六條の予算上というところに書いてあるわけではないのであります。ですから、結局において公社の自力で拂える、つまり予算上、資金上可能であるものは、実際は公社の総裁がまずきめ、それに対して運輸大臣、大蔵大臣等が批判があるとしても、ともかく客観的にはきまつていることであります。ですから、かりに可能なるものが二十五億であるのを、政府が、たとえば大蔵大臣が、これは五億しかないというような判断をするといたします。そうすれば、後に組合は裁判所に対して、あれは二十五億あつたわけだから二十億だけ拂え、こういう債務があるわけであります。客観的に二十五億ある。このときに、はたして二十五億あつたかどうかを、裁判所が証拠によつて判断をするというのが法律の建前である。今までわが国では裁判所というものか、何かお上の金のことなどの判断をするような大きな仕事をやつてないものですから、裁判所というものに、そういう問題が問題になるということを、常識的にお考えになれないようであるか、いやしくも公共企業体の今度の十六條かある以上は、予算上、資金上可能であるかどうかということは、今度の裁定の結果、どれほどの債務があるかということが法律上問題になれば、裁判所はそれだけの大きな判断をしなければならない、こういうことになつておるわけであります。従つてここで非常に大事なことは、どうも新聞を見ておると、仲裁はけしからぬから、あれによつては金はやらないが、一般公務員と同じだけのものを、あれとは別にやろうというようなことをおつしやつておるようであります。それはおやりになるのはけつこうですが、それでは決して裁定に基く債務は消えないということで、二軍どりをされることになりますということを、申し上げておきたいのであります。最後の決定権は一体どこにあると申しますれば、つまり予算上、資金上可能でない部分、その部分に金を出してやるかどうかは、国会の皆さんの判断にあるわけであります。皆さんといえども、予算上、資金上可能なるものを侵すことはできない。それは先ほど申し上げました憲法でもつて私有財産とを保障しておるのでありますから、これは公益上の理由がない限り、法律ではそうすることはできないと私は考えておるわけであります。  そこで話を一段進めて参りますが、そういうような債務があるわけですから、つまり予算上、資金上可能不可能ということについては、一応は公社、運輸大臣、大蔵大臣の手を経てここまでは可能だが、残りの部分は不可能だということで、その不可能なのだと公社及び政府の称する部分が、国会の御審議にかかるわけで、皆さんにその点を検討していただく、これは新聞によりますと、予算を出せとか、予算を出さないのは不都合だとか、しきりに御議論をなさつておるということでありますが、これは法律では必要な措置をとれと書いてあります。あの措置はいくらでも考えられます。政府がその残りの不可能な部分について一応予算を立てて、しかし自分は反対なのだと言つても、予算を立てて出すというのは一つの形であります。ところが政府か今出さない、そうしてしきりに参議院、衆議院とももんでおられるようでありますが、私はごく簡単に措置ができると思つておる。それはもしもあれを私の憲法及び財政法の解釈、旧憲法ではきわめて明らかなのでありますか、新憲法及び財政法では少し不明ですから、御議論かあり、特に法制局あたりの立案された方々には、いろいろ御議論があると思いますが、つまり国有鉄道法によると今の公社は金を借りる権利がない。そこで今回に限り幾ら幾ら借りてもよろしいという法律案を国会が提出されるのであります。これが両院を通りますれば、法律ができれば、法律を執行するために必要な予算は、政府は組む義務かある。旧憲法では明らかにそうであつたし、新憲法からははつきりしませんが、今度の財政法を見るとそのようであります。つまり国会がこういう法律をつくつた、それを執行するのに必要な予算、言葉をかえて言いますと、予算を組みませんと、金は借りたか支出権かありませんから、つまり支出権を得るための手続をやるだけの義務か、政府にあるわけであります。それでありますから、政府かもしも、裁定か出たにもかかわらず、その不可能な部分について、どうしても予算を出さないというようなことを言われるならば、国会はよろしくそういうことをやられるべきが当然だと私は思つております。この点は、皆様ひとつあらためて憲法及び財政法の御研究を願いたいと私は考えております。  その次に今度は実質の問題に入ります。この実質の問題は、あとのお二人のお一人は、堀木さんという、国鉄経営のことならば、失礼ながら加賀山総裁よりもだれよりも詳しいと思われる方、それからもう一人は、今井さんという、公務員の給與のことで、過去四年間まともに組合ととつ組んでおられた方がおられますから、この方から申し上げます。私ただ一言こういうことを申し上げます。今度の仲裁をやりまして発見しましたことは、今年度の公社に與えた予算に非常にむりがある。そのむりがあるために、結局労働條件の面を切り詰めたということであります。そのうちの最も大きいことは、あの十万人の人間のやめるということ、これは言葉をかえて言うと、十万人のやめることによつて、あの七月から以降は、公社の経済の中に、人件費六分の一のゆとりができて、経営が合理化されたということであります。その経営合理化のための予算を、新たに十七億幾らというものが計上してあるのであります。しかるに実際にやるためには四十何億というものがかかつたわけで、二十何億というものが、初めから予算が足りないのであります。そうして経営合理化は、この政府ができた初めから、しきりにいわゆるドツジ・ラインと称しで強行しておられることで、その際民間の一般の企業に対しては特に金融をしております。つまり首切るなちば金を貸してやろう。これは労働組合については実に迷惑な話なのですが、至るところで首切るなら貸してやる。これは周知の事実であります。これはまたもつともなことで、首切れば人件費か減りますから、金を貸してもあと成立つて行くから、金を貸そうという、資本主義的に言えば非常に常識的なこと。そこで問題は、国鉄に三十億今貸してやつたらどうですか。たとえば十五億ぐらいは――もつともどのくらい予算上、資金上可能かというのは、私どもにもいろいろな意見がありますが、少くとも十五億は確かなんです。十七億は確かだということを公社が言つておるのですから、十五億は確かだ。そうするとかりに三十億貸してやろう。一体あの一千二百億の大予算を持つた企業が六分の一の人件費を節約する。この合理化に三十億の金を融通してやろうという、このくらい経営学上合理的なことは私はないと思う。この金は一般会計から一時貸してやつてもいいでありましようし、一番簡單なことは、私は預金部の金をかしてやつたらいいと思う。預金部の金が最近の経済不安につれて、非常に郵便貯金がふえつつあることは、皆さん御承知通りだと思う。つまり民間の企業ならばあたりまえにやること、現にやつていること、それをなぜ公社に許さないか。そうしてインフレかどうとかと言うが、インフレを防ぐための経済合理化なのであります。つまり政府の政策にそのまま沿つたことをやらせよう、こういうのであります。ちつとも一般予算に御迷惑をかけようとか、あるいは政府の経済政策を壊そうとか、そういう不都合な、不逞なことを、私どもたくらんだわけではないのであります。非常に従順に、従つて今回の労働條件が特に低下した部分を補償しろということを申して、てして賃金ースの点は、政府もいろいろおつしやつておるから、ひとつお手並拜見いたしましようといつて、御遠慮申し上げた。だが、今の経営学上、一般経営合理化について金を貸すということは常識であります。それでつまり今年六分の一の人を切つたその金を、今年の予算だけから出せというのは、これはすでに経営学的になつていないのであります、二年なり、三年なりに延ばしてやつて行くべき事柄なのであります。ですから公務員の年末賞與の問題については、私は私として特別の考えがありまして、政府ももつと出してしかるべきだと思うし、給與ベースも上げるべきものだというふに思つておりますが、これとは全然違つた話なんです。これを一緒にして扱おうとしておることが、おかしいのであります。それからまたこれも新聞の知識ですが、新聞紙によると、何かあの仲裁裁定を実行することが、九原則に反するとか、賃金三原則に反するとかいうようなことを申すのでありますが、賃金三原則は、一見給與に充てるために金融をつけることは、あのうちの一項に形式的には触れています。しかしこれは一般の場合、経営合理化のために、首切るときには金を貸しています。これは一昨年の暮れ以来すべて一般的にやつていることです。ですから、賃金三原則違反だということは申せません。それから経済九原則に至つては、先ほど申しましたように、あの通りのことを、国鉄の諸君から、その線に沿うてもつと合理的にやつて行きたい。それで私どもが今度の仲裁をやりますについて、根本からの念願は、国鉄公共企業体にした以上は、これをほんとうに企業体として一日も早く育てていただきたい。すなわち国のおせわにならない、そして免税という大きな特典があるのですから、そのうちにもうけが出たらば、昔と同じように政府だ納入金をさせたらよろしい。あるいは外国にいくらでも、もつと健全なるやり方をしておるところで、しかも資本主義の国で、国営事業といえども免税はしてない国があります。たとえばスエーデンのごときはそうであります。スエーデンの水力電気の約三分の一は国営になつておりますが、国営といえども免税すべきではないので、民間と同じスタンダードでやるのがあたりまえなのであります。そういうところまで国鉄というものを育てる。それには今この六分の一の人件費を減らすために、わずか三十億を借むる。それも一年か二年か三年のうちには、りつぱに返せるという見込みがある金を貸すということが、どこがおかしいかということを私どもは申さざるを得ないのであります。それで先日から、これは新聞で見ただけでありますがこの点についてのいろいろな議論が――あの国鉄という企業体をりつぱに育て上げて、税を拂つても自前でやれる、あるいは税のかわりに納入金をさせるというようなところまで、育て上げるという大きな見込に立たないで、どうもりつぱな方々が、裁判所に行つて弁護士が言うようなりくつをしきりに言つて、何とかかんとか言つて、あの裁定法律上の効力を否定するがごときお言葉が新聞紙を通して遺憾ながら私どもに聞えて来ることを、一人の法律家として、また一人の国民として、非常に残念に思うことを申し上げたい。  それではまことに概略でありますが、これだけのことを申し上げます。(拍手)
  10. 稻田直道

    ○稻田委員長 次は仲裁委員といたしまして、今井一男君、堀木鎌三君より御意見がありましたらこの際お述べを願いますが、まず堀木鎌三君より御意見をお述べを願います。
  11. 堀木鎌三

    ○堀木参考人 私ども仲裁委員としまして、お互いに今度のお尋ねになつた問題を研究し合いましたが、全体としての問題につきましては、今末弘委員長より述べました事柄は、私どもも同じく考えておりますので、ここに繰返して述べる煩を避けたいと思います。主として私から国鉄の最近の経理状態につきまして御参考に申し上げたいと思います。やや数字にわたりますが、ごしんぼう願いたいと思います。  それに入ります前に、先ほど委員長からも出ました点でありますが、私一言申し上げたいことは、この公共企業体ができましたゆえんについて、もうすでに世の中が少し忘れかけているんじやなかろうか。もう一度あのマツカーサー書簡を記憶に呼び起していただきたい。こういうふうに考えるのであります。国有鉄道自身の本質から申しますと、一般の民間の公益事業と性質上異なるところがないのでありますが、その規模の大から見ましても、またその使命を果しております性質から申しましても、やはり公共企業体というものが一般公務員から切り離されて、特別なる法律によつてでき上つたという点であります。今に及んで国有鉄道従事員を、国家公務員と同じく考えるということは――あの法律自身が通りましたときに、すでに国家公務員とその本質を異にし、労働條件につきましてはおのずから異なるものがあるということが、あの法律を提出されましたときに、きまつたはずであるにかかわらず、今でも何か国家公務員と同じような観点に立つて論議されておることは、私としては遺憾でございます。その点につきまして一言申し上げるにとどめまして、国有鉄道経理状況についての検討を申し上げます。国有鉄道財政経理状態というものをいろいろな観点から観察いたしたのでありますが、国有鉄道は戰前におきましては、営業收入に対します営業支出の割合は、大体六〇%台を維持しておつたのであります、これは定評として――定評と申しますより学問的にも一つの基準があるのでありますが、大体営業收入に対しまして営業支出の割合が七〇%に相なりますと、その企業は新しく資本を起すだけの能力はないないものとなつて財政が危險な状態になるということがよく言われ、また一般の定説になつておるのでありますが、国有鉄道はごくわずかな例外的な年を除きましては、常に六〇%を維持して参りまして、自分がかせぎました益金による資本増加が年々ふえて参つておる。むしろその点から言いますと、諸外国の鉄道と比べまして、国有鉄道財政状態はよかつたということが言い得るのであります。外国におきましては七〇%を越している鉄道は相当あつたのであります。しかるに終戰とともに急激に悪化して参りまして、国有鉄道といたしましては、初めての赤字を出して参つたのであります。爾来ずつと毎年赤字の累積を重ねて参りました。この原因がどこにあるか、はたして生産性が落ちておるために起つたのか。あるいは人件費が著しく膨脹いたしましたために起つたものであるかといこうことを、検討いたしたのであります。ます生産性の問題として考えられますことは、旅客の輸送数量及びその距離、貨物の輸送数量及びその距離でありますが、旅客におきまして昭和十一年度を一〇〇といたしますと、族官の輸送人員が二十年度におきましては二八一、二十一年度が三〇〇、二十二年度が三一二、二十三年度が三〇四、一十四年度が二八九となつております。しかしこれは運びましたお客さんの指数でございますが、それにお客さんが乗りましたキロ数をかれましたもので見ますと、二十年度が二九〇、二十一年度が三三四、二十二年度が三三六、二十三年度が三〇四、二十四年度が三六六となつて参つております。あまりこまかいことを申すのもどうかと思いますから、貨物を運びましたトン数を見ますと、大体十一年度を一〇〇といたしまして、二十年度は八五、二十一年度が八六、二十二年度が一〇九、二十三年度が十三〇、二十四年度――本年度の見込みが一三四というふうになつております。これを旅客と同じように運びました足の長さ――キロ数をかけますと、年度別に申しますとあまりこまかくなりますからやめますが、二十年度が一七で、本年度の見込みが一六七でございます。これから見ますと、鉄道は輸送において生産活動を営んでおりますので、旅客、貨物とも昭和十一年度をはるかに上まわつておるということは明らかでございます。日本経済の他の復興の足どりというものは、皆さんの御承知通りに、鉱工業平均生産指数は、昭和十――十二年度に比して本年八月はようやく七〇%台に復活しておるのであります。いろいろ指数のとり方もございますが、電力のごとく戰前をすでに上まわつたものもございます。全体の平均で考えますと、鉄道は戰前をはるかに上まわつておるということが言えるのであります。  しからばこの仕事をいたしますのに、一体人間が仕事に対してふえておるのかどうかという点を、さらに検討する必要があると思います。国有鉄道においては、なるほど戰争中にその仕事が非常にふえましたので、従事員数が非常に多くなつておりますし、さらに終戰と同時に従事員で応召したり、外地に参つておりました者が帰つて参りましたので、昭和十一年度末には二十二万七千六百四十八人でごさいましたものが、昭和二十三年度末は六十万四千二百四十五人と相なり、二・六五倍でございますから、二倍を上まわつたわけでありますが、定員法に基きます今回の行政整理で五十万三千七百二十に相なつたわけであります。それでもなお先ほど仕事量を基準にとりました十一年度に比較すると、二・二一倍になつております。しかし仕事に対してこの人間の数が多いかどうかということを見てみますと、列車の走つておりますキロに比較すると、人間は非常に多くなつておるわけであります。走ります列車の本数、それからそれが走つております距離とをかけますと、人間は非常に多くなつております。昭和十一年度は一列車キロ当りの人員が八・八でございまして、これを百とすると二十三年度は三十七・三人になつておりまして、三一〇に相なつております。本年度の見込みではこれが二〇・七人になりまして、二三五の指数を示しておるのであります。だから非常に人か多いということがこの面からは言い得るのであります。運びましたお客さんと貨物とに対して、人間が多いかどうか。これも先ほど旅客貨物において距離をかけ合せましたものを申し上げましたが、昭和十一年度は百万人トン、キロ当りの人員が五・四で、これを一〇〇といたしますと、二十三年度は五・七で一〇六でございます。今度の整理の結果、本年度の見込みは五・二で九六の指数に相なつております。これから見ますと、お客さんなり貨物を一人か背負つておる仕事量から見ますと、多くなつていない。大体とんとんで、今度の行政整理の結果やや低下しておる。低下しておるというのは能率の方が上つておる。一人当りの仕事量は上つておる。こういうことか言い得るのであります。と同時にお客ざんと貨物の数に比例しまして、列車が出ていない。列車はよほど増さなければならない。そうして一人の仕事量がかわらないといたしますと、ある意味におきましては、数量的に見ますと一人の仕事はとんとんでございますが、手数のかかる点から言えば、かえつて一人の仕事が質的にはふえておる、こういうふうに言い得るのだと思うのであります。  まず以上が大体生産性の問題でございますが、それならば先ほど申し上げましたように、昭和十一年度に二十二万七千人であつたものが五十万人になつたので、この給與総額、つまり人件費が非常にふえておつて財政が悪くなつたのかということの検討に入るわけでございますが、その前に一体国鉄の営業費がどれくらいふえて参つたかということを見ますと、営業費の支出額は、昭和十一年度におきましては三億六千二百五十七万円であつたのであります。今から見ますと非常に少くて感じが出ない数字でございますが、その昭和十一年度を一〇〇といたしますと、御承知通り昭和二十三年度は千六十一億に相なり、昭和二十四年度の見込みは千四百四十億近くに相なりますとすると、おのおの二百九十二倍、三百九十七倍であるのであります。つまり営業費は二百九十二倍、三百九十七倍にふえて参つております。ところが今申し上げた人間が非常にふえてはおりますが、その中に占めますところの人件費の総額は、とうていこれに及ばないのであります。人件費総額は、先ほど申し上げました三億六千二百五十七万円に対しまして、昭和十  一年度は二億百八十五万円であります。これを一〇〇といたしますと、二十三年度人件費は三百六十三億、昭和二十四年度の見込みが四百五十億でありまして、おのおの百七十九倍、二百二十三倍というふうな指数を示しております。すなわち営業費全体におきましては、二九二、三九七に相なつておりますにかかわらず人件費総額は百七十九倍、二百二十三倍程度にしかふえておらないのであります。こういう結果、営業費中に占めますところの人件費と、ほかのすべでの費用を物件費といたしますれば、そのバランスははなはだしくかわつてつたわけであります。昭和十一年度人件費が五五・七であつたのであります。そうしてその他の経費が四四・三であつたのであります。ところが最近の例を申し上げますと昭和二十三年度人件費が三六・九でありまして、その他の経費が六三・一に相なつておりますし、本年度の見込みにおきましては人件費が四一になつておりますが、その他の経費が五九になつておるのであります。何ゆえにこの人件費物件費の比率がこうかわつてつたか。大体国有鉄道経理状況におきまして、人件費が五〇%ぐらい占めるのが、まず通常である。私長く中央労働委員会の委員をいたしておりましたが、大体今の私鉄業界におきましては、人件費が五十二、三パーセントというのが普通であります。五〇%ないし五十二%という点をお考え合せになりますと、この比率が国鉄においては非常に低下しておるということは、一見明らかでなかろうかというふうに考えられるのであります。それで物件費内容を検討いたしますと、いつもよく言われますように、石炭費の増が著しく目立つて参つております。これも数字をあげると煩雑でございますが、まずこの石炭費の増が一番目に立つております。一例をあげますと、石炭費昭和十一年度はわずかに三千九百万円程度でございましたものが、現在におきましては二百四十一億円、本年度二百六十四億円くらいになりまして、六百八倍、六百六十五倍、すなわち先ほど申し上げました営業費が全体で二百九十二倍、三百九十七倍程度でありますのに、石炭費だけは六百倍台になつておるのであります。しかしこの点につきましては、近時カロリーの上昇によりまして、あるいは公団の廃止等によつて、節約の実があがつておるのであります。もう一つ修繕費についてでございますが、修繕費がやはり非常に膨脹しておるのであります。国有鉄道の実体からしまして、今の修繕費で足るかどうか、もう少し修繕費を増すべきであろうということは十分言い得るのでありますが、同時にここに一つの問題がひそんでおるのであります。一つの数字をあげますと昭和十一年度五千九百十九万円でありましたものが、二十三年度二百七十三億円、本年度は二百八十三億円でありまして、やはり指数は四百六十一倍、四百七十八倍を示しておる。この修繕費がやはり先ほど申しました営業費の中の物件費のふえております割合よりも、はるかに上まわつておるのでありますが、にもかかわらず、国有鉄道修繕が必ずしも行き届いていないという原因がどこにあるかと探求いたしてみますると、戰災によるところの現状復旧の経費が、やはり平常の営業收支の計算の上においてまかなわれておるということを発見いたすのであります。本来戰争によりましてあれだけの痛手を受けました国有鉄道の戰災の復旧的な費用は、復興の費用と合せまして、その年度にあげますところの收支だけでなしに、他の財源によつてまかなうべきものだと私どもは思う。会社が戰災によりましたものを、当該年度の営業勘定で毎年復旧いたしますとすれば、復旧が遅れるのは当然であつて、みな社債、株式によりましてこの復旧をはかる。国有鉄道におきましても、関東大震災の後におきましては、この種の経費は、別途の財源によつて復興費と合せてまかなつたことを記憶いたしておるのであります。これが年年二十六億に及んでおります。しかも国鉄当局の言うところによりますと、十箇年計画でこの二十六億の特別な修繕費を出しておるというのでありますが、もしも日本の経済復興を五箇年でやるという総合的な観点に立ちまするならば、二十六億のこの種の経費は、他の財源によつて五箇年で処置さるべきものであります。これがやはり国鉄の現在の收支がとりにくいゆえんだと考えられるのであります。先ほど委員長から、いわゆる本年度の整理によりますところの経費、退職手当金四十五億、これは損益勘定だけの数字を言われたのでありますが、全体では、退職手当が本年度五十四億になつておるのであります。それで私ども考えますのは、今言いました修理費と、今度の退職者に対する退職手当の五十四億とは、これは相当別途の財源に求むべきものであろうということが考えられるのであります。この退職手当につきましても、二十三年度におきましては九億、この程度が平年度の退職手当でありまするから、予算には二十一億見込んでありますが、平年度退職手当支給との差額を、すなわち本年度の会計からまかなうのは、いかにいわゆる均衡予算といえども、むりではなかろう、か、と同時にこの面から、世間には問題になつておりませんこの特別な修理費についても、同じように考えるべきじやなかろうか、こういう考えに相なるわけであります。以上によりまして、大体国鉄の生産性、及び人件費が他の物件費に圧迫されて非常に低位にある原因がどこにあるかという点が、ほぼ御推察を願えたろうと思いますが、最後に、何といつて国鉄の收支のとれないことは、やはり運賃が正常な経済的観点においてきめられていなかつたということに、一番大きな原因がある。これが経済的な観点において、国有鉄道が独立採算制をとり、経済的な原則に従つて経営されることを要請されるとすれば、やはり運賃においても同様の処置がとられなければならなかつたにかかわりませず、国家の計画経済あるいは物価政策等から、これが低位にあつたということは、今度国会貨物運賃値上げを御審議に相なりましたときに、おわかりになつたろうと思うのであります。それでこの点はくどくどしく申し上げません。ただ指数一つだけを申し上げておきます。同じく昭和十一年度の物価を一〇〇といたしますれば一般の物価指数をごらん願いますれば、二百十四倍になつておりますにかかわらず、運賃の方は旅客が九十二倍、貨物が七十二倍であるということをごらん願つても明らかである。こういうことが申し上げられると思います。これは貨物運賃のときに御審議を願つたので、あまり詳しく申し上げませんが、こういうふうな実情並びに経理状態にあるのです。従つてこのもとに形式的な、平面的な独立採算制をとるために、いかに国鉄自身が苦労し、その人件費が低位にあつたか、その根本原因はここにあるということを、おわかり願つたかと思います。  なお賃金その他については、今井委員からお話していただくことになつておりますので、私は大体の傾向線だけを申し上げて、責任を果したいと思います。
  12. 稻田直道

    ○稻田委員長 この際申し上げたいことがあります。先刻の末弘巖太郎君の発言中、一部につきまして補足説明をいたしたいとの申出がありますから、この際これを許します。末弘巖太郎君。
  13. 末弘嚴太郎

    ○末弘参考人 先ほど申し上げました結論は何も違わないのでありますが、仲裁裁定の拘束力の根拠として労調法み三十四條が準用されておるということを申しましたが、これは誤りであります。それで労政、当局になぜあれを準用しなかつたかという説明を聞きましたところ、これは公労法の方の三十五條に拘束力があるということが明瞭に書いてあるから、重ねて準用する必要がないということで、準用しなかつたのだということでありますから、先ほど説明を正確にするためにその点を訂正をさしていただきます。  なお先ほど申し落しましたが、今回の国鉄の場合は、今年の十月の何日でありましたか、公社と組合の間の労働協約によつて調停が成立たたなかつた場合には、あと仲裁によるという特別の労働協約を結んでおります。そうでありますれば、公労法の三十五條がなくとも、お互いに事が片づかなければ、仲裁で片づけようという約束をした以上は、その協約の当然の効力として、仲裁も協約と同じような効力があるということがあるわけでありまして、法律的には、二重に協約と同様拘束力があるんだということに御承知おきを願いたいと思います。
  14. 稻田直道

    ○稻田委員長 次は今井一男君より御意見をお述べ願います。今井一男君。
  15. 今井一男

    ○今井参考人 両委員のあとを受けまして、ごく簡単に補足させていただきます。  裁定書をごらんいただきましたら明瞭に相なると思いますが、国家公務員並びに国鉄職員の近年におきまする給與の水準は、昨年の上半期までは、民間給與に対しまして、大体一〇〇もしくはそれ以上でございました。昨年の下半期以降それが開きまして、八十台ないし七十台に低下いたしております。そういつた意味合いから、ベース引上げという問題が当然起つて参る。これが今回の仲裁の一番大きな出発点に相なつたわけでありますが、裁定にあたりましては、このベース引上げということを、現在の経済の推移の状況にかんがみまして、一応見送るという結論を出しております。ただその間見のがすことができませんことは、国鉄職員は積極的に待遇を低下された事実であります。この点は、国鉄職員実質賃金低下状況調べという刷りものをたしかお届けいたしたいと思うのであります。これをごらんいただきますれば、それに詳しく説明してありますので、詳細は省略さしていただきますが、経理の苦しい関係から、公社成立の前後に、相当の実質的な切下げが行われておるということを発見したのであります。もちろん企業でありますから、経営の苦しい場合には、そういつたことも考えられる問題でありまするが、国鉄職員につきましては、先ほど来他の委員も申し上げましたように、昨年の七月二十二日、マ書簡が出まして、労資対等の原則に立つ団体交渉権が確立されておるのであります。ただ国家の都合によりまして、公社の設立が遅れました。その間やむなぐ国家公務員法の適用を受けたわけであります。しかしながらこれは少くとも国鉄職員の労働法上における地位に対しましては、確かにやむを得ない措置とは申しながら、決して正当な待遇をしたわけではございませんので、やはりこういう引下げが行われるとしたならば、この間話合いがあつてしかるべきものと考えざるを得ないのであります。しかもベースさえ引上げようという意見が、合理的に主張されておる際に、こういつたような切下げが行われていることを穴埋めしようというのが、今回の裁定の骨子であります。しかもこの金額を全部埋めようという案ではございません。本年度にわれわれの推定しましたこの金額は約六十億に相なりますが、そのうち国鉄の支拂い能力を検討いたしまして、本年行政整理のために五十四億という退職金を出した。これは昨年度の退職金の予算より四十五億多い。しかもこの四十五億という退職金を拂つたために、明年度以降におきまして、年々六十億あるいは七十億の余裕を生む、さらに今年度におきましては御承知通り旅客運賃貨物運賃引上げ年度の途中から行われました関係から、明年度におきましてはそのために二百三、四十億の收入の増がある。そういつた際に、この経理の苦しさから行われた切下げは、われわれとして不当である――少くとも当を失するという認定をいたしたのでありますが、それをそういつた性質上、後年度におきまして利益を生み得る資本的支出のような四十五億のわく内にとどめる、こういつたことが裁定の骨子をなしておる次第であります。     〔稻田委員長退席、倉石委員長着席〕  従いまして賃金三原則につきましても、もちろんその線内であることを確信いたすものでありまして、これは当の組合側要求よりも大分かわつた線が裁定に相なつた次第であります。  ただこれが総合均衡予算、いわゆるドツジライン等に抵触しないかというような点につきましても、われわれ検討したのでありますが、いわゆる総合均衡予算は、いまさら申し上げるまでもなく、国の一般会計のみならず、特別会計その他政府機関の一切の会計を通じましてバランスをさせ、しかも吸い上げる金を多くして出す金を若干少くする。いわゆる超均衝予算のねらい、これによつてインフレを收束させようというのが骨子だと私ども考えます。しかも二十三年度末と二十四年度末と政府の債務はふえては相ならぬ。ところがこの案はその点に関する限りにおきましては、国会でおきめ願う問題であるので、別に私ども申し上げませんでしたが、腹の底では、先ほど委員長も申し上げましたように、預金部資金なり、あるいは法律をかえて民間の資金なりを借り入れて、三十億、三十五億をお認めいただけたならば、ことに預金部からというようなことに相なれば、少しも総合的均衡予算のラインをこわすことには相ならぬということは、これまた確信を持つて出した結論でございます。  国鉄の資産は再評価いたしますと一兆ございます。一兆ある会社が、年に千三百億も入る会社が、三十億、四十億の金が借りられないという、信用の問題も多分あるまい。のみならずこれに対する償還能力につきましては、ただいまも申し上げましたように、きわめて確実なものがあるというとき、特にその面に力を入れまして、今回の裁定になつたことを一言申し上げようと思います。  それから最後に、これはいささか説明の範囲を脱しますので恐縮でありますが、先ほど委員長の申し上げました十六條の問題であります。この問題は結局は、裁判所できめられる問題であると考えるのでありますが、私どもの研究した結果を御参考のために――特に私の意見を御参考のために一言述べることを許さしていただければ、公労法の十六條の第一項には、予算上不可能な協定、裁定は、国会承認がなければ金を出してはいかぬ、こういうことに相なつておりまするが、この予算上の可能か不可能かは、私も最終的には裁判所できまるということに判断するものであります。そういたしますと、もしかりに国会できめられた金額、たとえば国会予算として出さなければならぬものが、四十億なら四十億あるときめられましたものが、裁判所の認定によりまして公社の支拂い能力はもつとある。従つて三十億だけが不可能の部分であるということになりますると、国会決議は一応十億に関しましては無効である。国会承認を受けることができない。法律上受けることができない問題につきまして、国会決議をしたというような珍事態が起る問題に相なる。こういうふうにどうしても法律論としては相なるわけであります。この点は特に私ども国会権威のために、そういう事態が起らないことを(笑声)国民の一人として、一言申し上げておきたいと思います。(拍手)
  16. 倉石忠雄

    倉石委員長 本日は関係各位の御意見を承りましたが、この程度でもつて散会いたしまして、明日午前十時より再びこの連合審査会を開きまして、関係各位の御出席をお願いいたし、質疑応答を願いまして審査を進めたいと存じますから、本日御出席関係各位は、御足労ながら明日も午前十時より御出席をお願いいたしたいのであります。右御了承をお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十二分散会