○寺本
政府委員 昨
年度労災保険で多額の未払いを残したことは、私とも
当局者として恐縮に存しておるところでございます。しかしこの原因は、石炭鉱業に非常な災害が起
つたということが、最大の原因でございます。労災保険の保険料率は、過去における災害率を基礎にいたしまして計算いたしております。大体過去五年くらいの統計をとれば、一番正確な基礎が出るのでございますが、労災保険施行以来いまだ二年しかた
つておりません。その間の災害率を基礎にして、保険料をと
つておるのでありますが、昨年の前半期から炭鉱における災害は相当増加しております。この点は司令部の天然資源局から、世界第一の災害率にな
つておると発表せられておる通りでございます。従いまして炭鉱災害の
関係で、労災保険の中でこの炭鉱だけの収支をと
つてみますと、約十二億の赤字にな
つております。ことにただいま御指摘のありました三井美唄その他は、昨年の秋、特にここの会社を抽出して調べましたところによりますと、私とものところで保険料として徴収しておる
金額の約三倍——二・八四倍だ
つたと
思つております——の保険金を支払
つておるという状況でございます。そういうような状況で、災害が非常に急激に増加しつつある。そのために保険金の支払いが停滞したといろ遺憾な事態が起
つたのでございます。これに対しましては私
どもといたしましては、この保険料の改訂、支払いの厳重な査定、この二つでこの事態を収拾すべく努力してお
つたのでありますが、保険料の改訂の方は、幸いに労資並びに中立の三者をも
つて構成いたしております保険
審議会においても、事態やむを得ずということで、本
年度四月一日から保険料を従来三銭五厘であ
つたのを、五る五厘に上げるというような同意を得ておりまして、四月一日から保険料の値上げを
実施いたしました。その間先ほどから申します通り、約十億の赤字があるのであります。これは石炭
産業たけから申しますと、もつと赤字が大きいのでありますが、ほかの
産業の異字にな
つておる部分をこちらにまわして、約十億程度に食いとめておるという現在の状況でございます。これが長引きますことは、保険の事務整理にも重要な支障がありますので、大蔵省と交渉いたしまして、
国庫余裕金の繰りかえ使用を認めてもらうということで、第一回分五億は、すでに大蔵省と了解がつきまして現地に流してありまして、目下第二回分の繰りかえ使用を交渉中でありますので、遠からず今滞
つている分はお支払いができるだろうと思います。そういたしまして災害がこれより以上増加し続けないならば、現在の保険料率で、この
年度の保険
経済は十分立て直し、支払いが遅延しないように処理することができるだろうと
思つております。